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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086605
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】プライミング用キャップ
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/20 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
A61M39/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023200205
(22)【出願日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】P 2022199858
(32)【優先日】2022-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【弁理士】
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【弁理士】
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 香子
(72)【発明者】
【氏名】浮田 純次
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 寛華
(72)【発明者】
【氏名】林 裕馬
(72)【発明者】
【氏名】陸門 将也
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA05
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD01
4C066EE10
4C066FF01
4C066JJ03
4C066NN04
(57)【要約】
【課題】容器に溜まる液体の種類に関係無く様々な液体のプライミング操作を自動で効率良く行うことができるプライミング用キャップを提供する。
【解決手段】プライミング用キャップ1は、容器20に溜まる栄養剤Lを患者にまで案内する医療用チューブ40のメスコネクタ40bに取付可能に構成される。チューブ40に取り付けた状態で当該チューブ40内に繋がる流体導入空間S1を内部に有するキャップ本体2を備え、ゴム材からなるキャップ本体2は、流体導入空間S1への所定量の空気の導入に連動して拡大変形するとともに所定の拡大状態を維持してチューブ40内の栄養剤Lの流れを堰き止めるよう構成される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に溜まる液体を患者へと案内する医療用チューブのコネクタ部に取付可能に構成され、プライミング操作時に前記チューブ内の空気を移動させながら当該チューブ内に前記液体を満たすよう構成されたプライミング用キャップであって、
前記チューブに取り付けた状態で当該チューブ内に繋がる流体導入空間を内部に有し、該流体導入空間への所定量の空気及び液体の少なくとも一方の導入に連動して拡大するとともに所定の拡大状態を維持して前記チューブ内の流体の流れを堰き止めるよう構成された流体導入拡大部を備えていることを特徴とするプライミング用キャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のプライミング用キャップにおいて、
前記流体導入拡大部は、前記流体導入空間の流体導入容積を所定値まで増加させるよう拡大変形可能なキャップ本体を備えていることを特徴とするプライミング用キャップ。
【請求項3】
請求項2に記載のプライミング用キャップにおいて、
前記キャップ本体は、膨張可能な柔軟材で形成されていることを特徴とするプライミング用キャップ。
【請求項4】
請求項3に記載のプライミング用キャップにおいて、
前記キャップ本体には、前記チューブのコネクタ部に対して当該コネクタ部との間がシール状態となるよう接続され、且つ、前記コネクタ部に接続させた状態で前記流体導入空間と前記チューブ内とを連通させる連通孔を有する接続体が取り付けられていることを特徴とするプライミング用キャップ。
【請求項5】
請求項4に記載のプライミング用キャップにおいて、
前記接続体は、硬質材からなり、前記コネクタ部に対して螺合連結により接続されるよう構成されていることを特徴とするプライミング用キャップ。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか1つに記載のプライミング用キャップにおいて、
前記流体導入拡大部における最大流体導入容積は、チューブ内通路の容積未満に設定されていることを特徴とするプライミング用キャップ。
【請求項7】
請求項1に記載のプライミング用キャップにおいて、
前記チューブのコネクタ部に取り付けた状態で一端開口が当該チューブ内に繋がる貫通孔と、該貫通孔の内側に配設され、前記液体を吸収すると膨張により拡大変形するよう構成された1つ以上の吸液材とが設けられたキャップ本体を備え、
前記吸液材が前記流体導入拡大部であり、前記貫通孔が前記流体導入空間であることを特徴とするプライミング用キャップ。
【請求項8】
請求項7に記載のプライミング用キャップにおいて、
前記吸液材は、前記貫通孔に沿って延びる筒状をなしており、前記キャップ本体を前記チューブに連結した状態で前記吸液材の内側空間が前記チューブに対応する位置となるよう構成されていることを特徴とするプライミング用キャップ。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のプライミング用キャップにおいて、
前記キャップ本体に取り付けられ、且つ、内部に前記貫通孔の他端開口に繋がる流体貯留部が形成されたカバー体を備えていることを特徴とするプライミング用キャップ。
【請求項10】
請求項2又は3に記載のプライミング用キャップにおいて、
前記キャップ本体には、前記コネクタ部に接続させた状態で前記流体導入空間と前記チューブ内とを連通させる連通孔を有する接続体が取り付けられ、
前記接続体は、軟質材料から構成される隔壁部材を備え、
前記隔壁部材は、前記コネクタ部の先端に設けられたオス部が挿入可能なスリットを有し、
前記オス部が前記スリットに挿入されているときは、前記隔壁部材が開いているとともに、前記オス部が前記スリットに挿入されていないときは、前記隔壁部材が閉じていることを特徴とするプライミング用キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用の可撓性チューブを介して容器に溜まる薬液等を患者に投与する準備段階において、チューブ内の空気を移動させながら当該チューブ内に容器の液体を満たすプライミング操作を行う際に使用するプライミング用キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場では、容器に溜まる薬液や栄養剤といった液体を患者に投与する際、患者と容器とを繋ぐ医療用の可撓性チューブ内に溜まる空気が患者の体内へと送り込まれないようにする必要があり、これに対応するために、準備段階においてチューブ内の空気を移動させながら当該チューブ内に容器の液体を満たす、所謂、プライミング操作が医療従事者によって行われる。従来より、このプライミング操作は、チューブの中途部に設けられたクランプを医療従事者が手で操作してチューブ内の通路を閉じたり開けたりすることによって容器内に溜まった液体を容器からチューブ内へ流したり止めたりしながら行われるのが一般的であった。しかし、プライミング操作を終えるまで医療従事者が他の作業を行うことができずに作業効率が悪いという問題や、さらには、医療従事者によるチューブ内の通路を閉じる操作が一瞬遅れるとチューブ内から流体を不意に漏出させてしまうといったように、手作業によるプライミング操作は医療従事者にとって負担が大きいという問題があった。
【0003】
これを回避するために、近年では、プライミング操作を自動で行う器具が開発されている。例えば、特許文献1に開示されているプライミング用キャップは、細長い円筒状をなすキャップ本体を備え、該キャップ本体の一端開口側がチューブにおける患者接続側端部に取り付けられる一方、他端開口には、気体だけを通過させる疎水フィルタが取り付けられている。そして、プライミング操作時において医療従事者がクランプを操作して容器に溜まる液体をチューブ内に流すと、当該チューブ内の空気がキャップ本体に向かって移動するとともに疎水フィルタを介してキャップ本体の外側に排出される一方、チューブ内を移動してキャップ本体内部に到達する液体が疎水フィルタに遮られ、これにより、チューブ内とキャップ本体内とが液体で満たされるとともに、チューブ内における液体の移動が自動で停止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4180669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の如きキャップ本体に取り付けられた疎水フィルタは、患者に投与する液体に界面活性剤が入っていると、親水化して液漏れを引き起こすおそれがあるので、使用する薬剤や栄養剤等の種類が限られてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、容器に溜まる液体の種類に関係無く様々な流体のプライミング操作を自動で効率良く行うことができるプライミング用キャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、キャップにおいて空気や液体を導入する一部領域が所定量の空気や液体の導入に連動して拡大することによってチューブ内の流体の流れを堰き止める構成にしたことを特徴とする。
【0008】
具体的には、容器に溜まる液体を患者へと案内する医療用チューブのコネクタ部に取付可能に構成され、プライミング操作時に前記チューブ内の空気を移動させながら当該チューブ内に前記液体を満たすよう構成されたプライミング用キャップにおいて、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、第1の発明では、前記チューブに取り付けた状態で当該チューブ内に繋がる流体導入空間を内部に有し、該流体導入空間への所定量の空気及び液体の少なくとも一方の導入に連動して拡大するとともに所定の拡大状態を維持して前記チューブ内の流体の流れを堰き止めるよう構成された流体導入拡大部を備えていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、前記流体導入拡大部は、前記流体導入空間の流体導入容積を所定値まで増加させるよう拡大変形可能なキャップ本体を備えていることを特徴とする。
【0011】
第3の発明では、第2の発明において、前記キャップ本体は、膨張可能な柔軟材で形成されていることを特徴とする。
【0012】
第4の発明では、第3の発明において、前記キャップ本体には、前記チューブのコネクタ部に対して当該コネクタ部との間がシール状態となるよう接続され、且つ、前記コネクタ部に接続させた状態で前記流体導入空間と前記チューブ内とを連通させる連通孔を有する接続体が取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
第5の発明では、第4の発明において、前記接続体は、硬質材からなり、前記コネクタ部に対して螺合連結により接続されるよう構成されていることを特徴とする。
【0014】
第6の発明では、第2から第5のいずれか1つの発明において、前記流体導入拡大部における最大流体導入容積は、チューブ内通路の容積未満に設定されていることを特徴とする。
【0015】
第7の発明では、第1の発明において、前記チューブのコネクタ部に取り付けた状態で一端開口が当該チューブ内に繋がる貫通孔と、該貫通孔の内側に配設され、前記液体を吸収すると膨張により拡大変形するよう構成された1つ以上の吸液材とが設けられたキャップ本体を備え、前記吸液材が前記流体導入拡大部であり、前記貫通孔が前記流体導入空間であることを特徴とする。
【0016】
第8の発明では、第7の発明において、前記吸液材は、前記貫通孔に沿って延びる筒状をなしており、前記キャップ本体を前記チューブに連結した状態で前記吸液材の内側空間が前記チューブに対応する位置となるよう構成されていることを特徴とする。
【0017】
第9の発明では、第7又は第8の発明において、前記キャップ本体に取り付けられ、且つ、内部に前記貫通孔の他端開口に繋がる流体貯留部が形成されたカバー体を備えていることを特徴とする。
【0018】
第10の発明では、第2又は第3の発明において、前記キャップ本体には、前記コネクタ部に接続させた状態で前記流体導入空間と前記チューブ内とを連通させる連通孔を有する接続体が取り付けられ、前記接続体は、軟質材料から構成される隔壁部材を備え、前記隔壁部材は、前記コネクタ部の先端に設けられたオス部が挿入可能なスリットを有し、前記オス部が前記スリットに挿入されているときは、前記隔壁部材が開いているとともに、前記オス部が前記スリットに挿入されていないときは、前記隔壁部材が閉じていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
第1の発明では、プライミング操作を開始すると、容器から出てチューブ内を流れる液体が当該チューブ内に溜まる空気を流体導入拡大部へと移動させるので、チューブ内の流体(空気及び液体の少なくとも一方)は、当該チューブの下流端から順次流体導入空間へと導入されるようになる。その際、流体導入空間への流体の導入に連動して流体導入拡大部が拡大し、流体導入空間に所定量の流体が導入されると所定の拡大状態を維持するようになって流体導入空間にそれ以上の流体の導入が不可能になる。すなわち、チューブ内の流体の流れが堰き止められて流体導入空間への流体の導入が自動的に停止し、チューブ内に液体が満たされた状態になる。このように、プライミング操作を自動で簡単に効率良く行うことができる。また、特許文献1の如き疎水フィルタを用いずにチューブ内の液体の流れが自動的に止まるので、容器内の液体の種類に関係無くプライミング操作を自動で行うことができる。
【0020】
第2の発明では、キャップ本体が流体導入空間への流体の導入に連動して拡大変形する構造になっているので、プライミング用キャップの使用前の外形がコンパクトになり、医療従事者にとって取り扱い易い器具にすることができる。また、流体導入空間の流体導入容積を適宜設定することにより、チューブ内の所望の位置でプライミングが完了するように設計できる。さらに、例えば、漏出させると患者や医療従事者に悪影響を与える抗がん剤等の液体のプライミングを行う際、液体の漏出を確実に防ぐことができる。
【0021】
第3の発明では、空気が流体導入空間に導入される際、キャップ本体の外形が徐々に変化していくようになる。したがって、チューブ内の流体の流れがスムーズになり、効率良くチューブ内の空気を移動させることができる。
【0022】
第4の発明では、プライミング用キャップをチューブのコネクタ部に接続したときにプライミング用キャップとコネクタ部との間の液密性が高くなり、プライミング用キャップとコネクタ部との間から液体が漏れ出るのを防止することができるようになる。したがって、医療従事者は、プライミング操作を衛生的に行うことができる。
【0023】
第5の発明では、接続体が変形し難い構造であるので、医療従事者が接続体を持って作業し易くなる。したがって、チューブに対するプライミング用キャップの取付取外作業を簡単に行うことができる。
【0024】
第6の発明では、プライミング操作を開始した後、チューブ内の空気が液体に置き換わって液体がチューブの下流端に到達する手前の位置になった状態において流体導入拡大部の拡大が停止するようになる。したがって、液体がチューブの下流端から飛び出して当該チューブのコネクタ部周り、例えばコネクタ部の外周面に付着することがなくなり、コネクタ部を介して該コネクタ部に接続される患者側の接続部分に液体が付着しない、あるいはコネクタ部と該コネクタ部に接続される患者側の接続部分との間において液体が漏れ出た状態にならないので、衛生的な構造にすることができる。
【0025】
第7の発明では、貫通孔へと導入される空気は、当該貫通孔を通過することによりチューブ内から無くなる。その後、チューブ内を流れる液体は、貫通孔に到達するが、当該貫通孔に入り込むと、吸液材が液体を吸い込んで次第に膨張して拡大することにより貫通孔を塞いで液体の流れが堰き止められるようになる。すると、液体が貫通孔を通過できなくなって、チューブ内に液体が満たされた状態になる。このように、プライミング操作時において、チューブ内の空気だけを効率良く移動させることができる。また、第3の発明の如きキャップ本体を柔軟材で形成するとともにキャップ本体が拡大して液体の流れを堰き止める構造に比べてキャップ本体の大きさが変わらないので、取り扱い易いプライミング用キャップにすることができる。
【0026】
第8の発明では、吸液材が筒状をなしているので、貫通孔に液体が入り込んだ際、吸液材の内面側部分が吸液材の中心線側に向かって同じタイミングで膨張して貫通孔を塞ぐようになる。したがって、吸液材が液体を吸収する効率が良くなるので、貫通孔を空気が通過する際においてチューブ内の液体の流れを堰き止めるまでの時間を短くすることができる。
【0027】
第9の発明では、吸液材の膨張によって貫通孔における液体の流れを堰き止める際において液体が貫通孔を通過してしまった場合、通過した液体は、貫通孔の他端開口を通過してカバー体の流体貯留部に入り込むようになる。したがって、プライミング操作時における作業スペースへの液体の飛散や漏出を防ぐことができる。
【0028】
第10の発明では、オス部がスリットに挿入されているときには、隔壁部材が開かれるようになるので、チューブ内の流体を流体導入空間に移動させることが可能となり、プライミング操作を適切に行うことができる。また、オス部がスリットに挿入されていないときには、隔壁部材が閉じられるようになるので、例えば、プライミング操作後に流体導入空間に溜まった液体がプライミング用キャップの外部に漏れ出すのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態1に係るプライミング用キャップと、患者に栄養剤を投与する経腸栄養用のラインとを示す概略図である。
図2】本発明の実施形態1に係るプライミング用キャップの正面図である。
図3図2のIII-III線における断面図である。
図4】本発明の実施形態1に係るプライミング用キャップの断面図であり、プライミング操作を開始した直後の状態を示す図である。
図5図4の後、プライミング操作が終了した直後の状態を示す図である。
図6】本発明の実施形態2に係る図2相当図である。
図7】本発明の実施形態2に係る図3相当図である。
図8】本発明の実施形態2に係る図4相当図である。
図9】本発明の実施形態2に係る図5相当図である。
図10】本発明の実施形態3に係るプライミング用キャップの斜視図である。
図11】本発明の実施形態3に係るプライミング用キャップの断面図である。
図12】本発明の実施形態3に係るプライミング用キャップの断面図であり、プライミング操作を開始した直後の状態を示す図である。
図13図12の後、プライミング操作が終了した直後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0031】
《発明の実施形態1》
図1は、患者Pに対して経腸栄養投与を行っている状態を示す概略図であり、本発明の実施形態1に係るプライミング用キャップ1と、患者Pに栄養剤L(液体)を投与する栄養ライン10とをそれぞれ示す。
【0032】
該栄養ライン10は、患者Pにまで栄養剤Lを案内するためのものであり、栄養剤Lが溜まる袋状の容器20と、患者Pの鼻の穴を介して一端側が胃にまで入れられる一方、オスコネクタ30aを他端に有する経鼻カテーテル30と、該経鼻カテーテル30と容器20とを繋ぐ医療用チューブ40とを備えている。
【0033】
該医療用チューブ40は、一端が容器20に接続される可撓性を有するチューブ本体40aと、該チューブ本体40aの他端に設けられ、経鼻カテーテル30のオスコネクタ30aに接続可能なメスコネクタ40b(コネクタ部)とを備えている。
【0034】
チューブ本体40aの中途部には、点滴筒40cとクランプ40dとがチューブ本体40aの上流側から順に配設され、該クランプ40dを操作してチューブ本体40a内の通路を閉じたり開けたりすることによって容器20から出てチューブ40内を移動する栄養剤Lを止めたり移動させたりできるようになっている。
【0035】
プライミング用キャップ1は、図2及び図3に示すように、正面視で略T字状をなす膨張可能なゴム材(柔軟材)で形成されたキャップ本体2(流体導入拡大部)を備えている。
【0036】
該キャップ本体2は、一端に開口する流体導入空間S1を内部に有しており、当該流体導入空間S1への所定量の流体(空気及び液体の少なくとも一方)の導入に連動して流体導入容積が所定値となるまで拡大変形するとともに所定の拡大状態を維持するようになっている。
【0037】
キャップ本体2における最大流体導入容積は、チューブ40内通路の容積未満に設定されている。
【0038】
キャップ本体2の一端には、軸方向に厚みを有する略円盤状をなすとともに中心線C1がキャップ本体2の長手方向に一致する樹脂製の接続体3が配設され、該接続体3の一側略半分の外周部分をキャップ本体の一端側が覆う状態で互いを溶着することによりキャップ本体2が接続体3に取り付けられている。
【0039】
接続体3は、中心線C1上に延びてキャップ本体2の流体導入空間S1に繋がる連通孔4aを有する内筒部4を備え、内筒部4の外周面は、キャップ本体2から離れるにつれて外径が小さくなるテーパ状になっている。
【0040】
内筒部4の一端開口周縁には、径方向外側に延出する環状延出部5が設けられている。
【0041】
また、内筒部4の外側方には、環状延出部5の外周縁部から内筒部4の他側に延びて当該内筒部4を囲う外筒部6が設けられ、内筒部4の他端部分は、外筒部6の延出端開口部分よりも飛び出した位置になっている。
【0042】
外筒部6の内周面には、図4に示すように、メスコネクタ40bの雄螺子部40eに螺合連結可能な雌螺子部6aが形成されている。すなわち、接続体3は、チューブ40のメスコネクタ40bに取付可能に構成され、接続体3をメスコネクタ40bに螺合連結させると、内筒部4がメスコネクタ40bの内側に嵌合して連通孔4aが流体導入空間S1とチューブ40内とを連通させるようになっている。このとき、内筒部4の外周面とメスコネクタ40bの内周面との間は栄養剤Lが漏出不能となるようシール状態になっている。
【0043】
そして、プライミング用キャップ1をチューブ40のメスコネクタ40bに取り付けた状態でクランプ40dを操作してプライミング操作を開始すると、図5に示すように、容器20から出てチューブ40内を流れる栄養剤Lが当該チューブ40内に溜まる空気をキャップ本体2へと移動させるので、チューブ40内の空気は、当該チューブ40の下流端から順次流体導入空間S1へと導入されるようになる。その際、流体導入空間S1への空気の導入に連動して膨張可能に形成されたキャップ本体2は拡大し、流体導入空間S1に所定量の空気が導入されると、所定の拡大状態へと拡大したキャップ本体2は所定の拡大状態を維持し、流体導入空間S1にそれ以上の空気の導入が不可能になる。すなわち、チューブ40内の栄養剤Lの流れが堰き止められて(図5のX1の位置)流体導入空間S1への空気の導入が自動的に停止し、チューブ40内の空気が無くなってチューブ40内に栄養剤Lが満たされた状態になる。その後、クランプ40dを操作してチューブ40内の通路を閉じた後、プライミング用キャップ1をメスコネクタ40bから取り外すとともに、当該メスコネクタ40bをオスコネクタ30aに接続すると、経腸栄養投与を行うことができる。
【0044】
このように、本発明の実施形態1によると、プライミング操作を自動で簡単に効率良く行うことができる。
【0045】
また、特許文献1の如き疎水フィルタを用いずにチューブ40内の栄養剤Lの流れが自動的に止まるので、容器内の薬液や栄養剤等の液体の種類に関係無くプライミング操作を自動で行うことができる。
【0046】
また、キャップ本体2が流体導入空間S1への空気の導入に連動して拡大変形する構造になっているので、プライミング用キャップ1の使用前の外形がコンパクトになり、医療従事者にとって取り扱い易い器具にすることができる。また、流体導入空間S1の流体導入容積を適宜設定することにより、チューブ40内の所望の位置でプライミングが完了するように設計できる。さらに、例えば、漏出させると患者や医療従事者に悪影響を与える抗がん剤等の液体のプライミングを行う際、液体の漏出を確実に防ぐことができる。
【0047】
また、キャップ本体2がゴム材で形成されているので、空気が流体導入空間S1に導入される際、キャップ本体2の外形が徐々に変化していくようになる。したがって、チューブ40内の栄養剤Lの流れがスムーズになり、効率良くチューブ40内の空気を移動させることができる。
【0048】
また、チューブ40のメスコネクタ40bに対して当該メスコネクタ40bとの間がシール状態となるよう接続体3が接続されているので、プライミング用キャップ1とメスコネクタ40bとの間の液密性が高くなり、プライミング用キャップ1とメスコネクタ40bとの間から栄養剤Lが漏れ出るのを防止することができるようになる。したがって、医療従事者は、プライミング操作を衛生的に行うことができる。
【0049】
また、接続体3が硬質な樹脂材で形成されていて変形し難い構造であるので、医療従事者が接続体3を持って作業し易くなる。したがって、チューブ40に対するプライミング用キャップ1の取付取外作業を簡単に行うことができる。
【0050】
さらに、キャップ本体2における最大流体導入容積がチューブ40内通路の容積未満に設定されているので、プライミング操作を開始した後、チューブ40内の空気が栄養剤Lに置き換わって当該栄養剤Lがチューブ40の下流端に到達する手前の位置になった状態においてキャップ本体2の拡大が停止するようになる。したがって、栄養剤Lがチューブ40の下流端から飛び出して当該チューブ40のメスコネクタ40b周り、例えば、メスコネクタ40bの外周面に付着することがなくなり、メスコネクタ40bを介して該メスコネクタ40bに接続される患者側のオスコネクタ30aに栄養剤Lが付着しない、あるいはメスコネクタ40bと該メスコネクタ40bに接続される患者側のオスコネクタ30aとの間において栄養剤Lが漏れ出た状態にならなくなり、衛生的な構造にすることができる。
【0051】
尚、本発明の実施形態1では、キャップ本体2をゴム材で形成しているが、そのゴム材の具体的な材質として、天然ゴム、SBR、NBR、シリコーン等が挙げられる。また、キャップ本体2は、伸縮可能に柔軟であればその他の材質のもので形成してもよく、例えば、PE、PVC、PBD等の樹脂材で形成してもよい。
【0052】
また、本発明の実施形態1では、キャップ本体2がゴム材で形成されていて、キャップ本体2が伸縮することにより拡大変形するようになっているが、流体導入空間S1への栄養剤Lの導入に連動して拡大するなら伸縮する構造でなくてもよく、例えば、キャップ本体2を布材で形成してコンパクトに折り畳んだ状態にしておき、流体導入空間S1への栄養剤Lの導入に連動してキャップ本体2が広がるような構造にしてもよい。
【0053】
また、本発明の実施形態1では、接続体3が樹脂材で形成されているが、その樹脂材の具体的な材質として、例えば、PE、PVC、PC、PP、ABS等が挙げられる。また、接続体3は、硬質であれば樹脂材で形成されていなくてもよく、例えば、金属材で形成されていてもよい。
【0054】
また、本発明の実施形態1では、キャップ本体2における最大流体導入容積をチューブ40内通路の容積未満に設定しているが、チューブ40内通路の容積以上に設定するようにしてもよい。そうすると、チューブ40内の空気を全て無くして当該チューブ40内の全ての領域を栄養剤Lで満たすことができるようになり、メスコネクタ40bの先端まで栄養剤Lを到達させることができるので、その後、経鼻カテーテル30のオスコネクタ30aにメスコネクタ40bを接続した際に患者の体内に空気を流入させてしまうリスクを回避することができる。
【0055】
また、本発明の実施形態1では、接続体3の一側略半分の外周部分をキャップ本体2の一端側が覆っているが、接続体3の覆われる領域は半分より少なくても良いし、多くても良い。接続体3の外周部分の全てがキャップ本体2の一端側で覆われる構成であっても良い。接続体3の半分以上の外周部分がキャップ本体2で覆われる構成が好ましく、更に好ましいのは、接続体3の2/3以上の外周部分がキャップ本体2で覆われる構成である。
【0056】
また、本発明の実施形態1では、キャップ本体2及び接続体3の接続を、溶着にて実施しているが、その他の接続方法で互いに接続するようにしてもよく、例えば、接続体3を加熱してキャップ本体2に熱溶着させてもよい。また、溶剤接着やレーザー溶着であってもよく、さらには、結束バンド等で互いに外れないように固定するようにしてもよい。
【0057】
また、本発明の実施形態1では、接続体3における外筒部6の内周面とメスコネクタ40bの外周面とが螺合連結されるようになっているが、これに限らず、テーパー嵌合により互いを連結させて外筒部6の内周面とメスコネクタ40bの外周面との間を栄養剤Lが漏出不能に密着させるようにしてもよい。
【0058】
また、本発明の実施形態1は、メスコネクタ40bに雄螺子部40eが設けられるとともに、接続体3に雌螺子部6aが設けられていたが、メスコネクタ40bに他の雌螺子部(不図示)を設けるとともに、接続体3にメスコネクタ40bの他の雌螺子部(不図示)と螺合連結可能な他の雄螺子部(不図示)を設けても良い。
【0059】
《発明の実施形態2》
図6乃至図9は、本発明の実施形態2のプライミング用キャップ1を示す。該プライミング用キャップ1は、一端がメスコネクタ40bに接続可能な略円筒状をなす樹脂製のキャップ本体7と、該キャップ本体7の他端に接続された樹脂製のカバー体8とを備えている。
【0060】
キャップ本体7の一端側には、当該キャップ本体7をメスコネクタ40bに接続可能な接続部9が設けられる一方、キャップ本体7の中途部から他端に亘る領域には、栄養剤Lを堰き止める堰止部11が設けられている。
【0061】
堰止部11は、他端側外周縁部にテーパ面11aを有する円筒状をなしており、その中央には、筒中心線C2に沿って延びる第1孔部h1が形成されている。
【0062】
堰止部11のテーパ面11aに対応する領域を除く第1孔部h1には、当該第1孔部h1に沿って延びる円筒状をなす吸液材12(流体導入拡大部)が配設され、該吸液材12は、栄養剤Lを吸収すると膨張により拡大変形するようになっている。
【0063】
接続部9は、筒中心線C2上を延び、且つ、第1孔部h1に連続する第2孔部h2を有する内筒部9aを備え、内筒部9aの外周面は、堰止部11から離れるにつれて外径が小さくなるテーパ状になっている。
【0064】
第2孔部h2の径は、第1孔部h1よりも小さく設定されていて、第1孔部h1と第2孔部h2とでキャップ本体7の一端から他端に亘って貫通する貫通孔H(流体導入空間)を構成している。
【0065】
内筒部9aの外側には、当該内筒部9aを囲う外筒部9bが内筒部9aから所定の間隔をあけて配設され、内筒部9a及び外筒部9bの堰止部11に近い側の端部は、当該堰止部11に連続している。
【0066】
一方、内筒部9aの堰止部11から遠い側の端部は、外筒部9bの堰止部11から遠い側の開口から飛び出す形状をなしている。
【0067】
外筒部9bの内周面には、図7に示すように、メスコネクタ40bの雄螺子部40eに螺合連結可能な雌螺子部9cが形成されている。すなわち、接続部9は、チューブ40のメスコネクタ40bに取付可能に構成され、接続部9をメスコネクタ40bに螺合連結させると、内筒部9aがメスコネクタ40bの内側に嵌合して貫通孔Hがチューブ40内に繋がるようになっている。
【0068】
また、吸液材12は、キャップ本体7をチューブ40に連結した状態で吸液材12の内側空間がチューブ40に対応する位置になるよう構成されている。
【0069】
カバー体8は、細長い略有底筒状をなしており、その内部には一端に開口する流体貯留部8aが形成される一方、他端には、空気を通すための連通孔8bが形成されている。
【0070】
カバー体8の開口側領域を第1孔部h1における堰止部11のテーパ面11aに対応する領域に嵌合することにより、カバー体8がキャップ本体7に取り付けられて流体貯留部8aが貫通孔Hに繋がるようになっている。
【0071】
そして、プライミング用キャップ1をチューブ40のメスコネクタ40bに取り付けた状態でクランプ40dを操作してプライミング操作を開始すると、容器20から出てチューブ40内を流れる栄養剤Lが当該チューブ40内に溜まる空気をキャップ本体7へと移動させるので、チューブ40内の空気は、当該チューブ40の下流端から順次貫通孔Hへと導入されるようになる。その際、貫通孔Hへと導入される空気は、当該貫通孔Hを通過することによりチューブ40内から無くなる。空気の一部はカバー体8の流体貯留部8aに留まり、一部はカバー体8の連通孔8bを介してプライミング用キャップ1の外側に流出する。その後、チューブ40内を流れる栄養剤Lは、貫通孔Hに到達する。具体的には栄養剤Lはまず第2孔部h2に到達し、その後第1孔部h1に向かって流入する。栄養剤Lが、当該貫通孔H(第1孔部h1)に入り込むと、図9に示すように、吸液材12が栄養剤Lを吸い込んで次第に膨張して拡大する。吸液材12が所定の拡大状態に到達すると、当該貫通孔H(第1孔部h1)は閉塞し、吸液材12は所定の拡大状態を維持しつつ栄養剤Lの流れが堰き止められるようになる。すると、栄養剤Lが貫通孔Hを通過できなくなって、チューブ40内に栄養剤Lが満たされた状態になる。その後、クランプ40dを操作してチューブ40内の通路を閉じた後、プライミング用キャップ1をメスコネクタ40bから取り外すとともに、当該メスコネクタ40bをオスコネクタ30aに接続すると、経腸栄養投与を行うことができる。
【0072】
このように、本発明の実施形態2によると、プライミング操作時において、チューブ40内の空気だけを効率良く移動させることができる。
【0073】
また、実施形態1と同様に、特許文献1の如き疎水フィルタを用いずにチューブ40内の栄養剤Lの流れが自動的に止まるので、液体の種類に関係無くプライミング操作を自動で行うことができる。
【0074】
さらに、吸液材12が筒状をなしているので、貫通孔Hに栄養剤Lが入り込んだ際、吸液材12の内面側部分が吸液材12の中心線側に向かって同じタイミングで膨張して貫通孔Hを塞ぐようになる。したがって、吸液材12が栄養剤Lを吸収する効率が良くなるので、貫通孔Hを空気が通過する際においてチューブ40内の栄養剤Lの流れを堰き止めるまでの時間を短くすることができる。
【0075】
それに加えて、吸液材12の膨張によって貫通孔Hにおける栄養剤Lの流れを堰き止める際において栄養剤Lが貫通孔Hを通過してしまった場合、通過した栄養剤Lは、貫通孔Hの他端開口を通過してカバー体8の流体貯留部8aに入り込むようになる。したがって、プライミング操作時における作業スペースへの栄養剤Lの飛散を確実に防ぐことができる。
【0076】
尚、本発明の実施形態2では、貫通孔Hに吸液材12が1つ配設されているが、これに限らず、細かな形状にした多数の吸液材12を貫通孔Hに配設するような構成であってもよい。
【0077】
また、本発明の実施形態2では、接続部9における内筒部9aの外周面が堰止部11から離れるにつれて外径が小さくなるテーパ状になっているが、これに限らず、堰止部11から離れるにつれて外径が大きくなるテーパ状であっても良いし、テーパがついてない円筒状であってもよい。
【0078】
また、本発明の実施形態2におけるキャップ本体2の第2孔部h2の径は、第1孔部h1よりも小さく設定されているが、第1孔部h1と同じ径でも良いし、大きい径であってもよい。
【0079】
また、本発明の実施形態2の接続部9は、内筒部9a、外筒部9b及び雌螺子部9cを有しているが、メスコネクタ40bに取付可能であるならば、いずれかを省略してもよい。
【0080】
また、本発明の実施形態2のカバー体8は、堰止部11の内側に嵌合する構成になっているが、堰止部11の外側に嵌合する構成であってもよいし、堰止部11と一体成形された構造であってもよい。
【0081】
また、本発明の実施形態2のカバー体8には、空気をプライミング用キャップ1の外側へと流出させる連通孔8bが設けられているが、カバー体8に連通孔8bを設けずに、カバー体8を実施形態1のキャップ本体2の如き空気の導入に連動して膨張する構造にしても良い。また、カバー体8に連通孔8bを設けずに、連通孔8bを堰止部11に設けるようにしても良い。
【0082】
また、本発明の実施形態2のキャップ本体7及びカバー体8は樹脂材で形成されているが、キャップ本体7の樹脂材の具体的な材質として、例えば、PE、PVC、PC、PP、ABS等が挙げられ、カバー体8の樹脂材の具体的な材質として、例えば、PE、PVC、PC、PP、ABS等が挙げられる。また、キャップ本体7及びカバー体8は、硬質であれば樹脂材で形成されていなくてもよく、例えば、金属材や天然ゴム、SBR、NBR、シリコーン等のゴム材で形成されていてもよい。
【0083】
また、本発明の実施形態2は、メスコネクタ40bに雄螺子部40eが設けられるとともに、接続部9に雌螺子部9cが設けられていたが、メスコネクタ40bに他の雌螺子部(不図示)を設けるとともに、接続部9にメスコネクタ40bの他の雌螺子部(不図示)と螺合可能な他の雄螺子部(不図示)を設けても良い。
【0084】
《発明の実施形態3》
図10乃至図13は、本発明の実施形態3のプライミング用キャップ1を示す。図10に示す本発明の実施形態3のプライミング用キャップ1は、患者Pの静脈に点滴により液状の抗がん剤AD(図13を参照)を投与する抗がん剤ライン(不図示)に用いられる。該抗がん剤ライン(不図示)は、経鼻カテーテル30(図1参照)に代えて輸液セット、延長チューブ等(不図示)が備えられている以外は栄養ライン10と同様の構成であるため、経鼻カテーテル30を除く栄養ライン10と共通する構成については栄養ライン10と同じ符号を用いて説明するものとする。
【0085】
プライミング用キャップ1は、正面視で略円形状をなし、かつ、軟質材料で形成されるキャップ本体2を備えている。なお、キャップ本体2の形状は正面視で略円形状を成す必要はなく、略正方形、菱形、略三角形等であっても良い。該キャップ本体2は、例えば、PE(ポリエチレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等の樹脂材、シリコーンゴム等のゴム材、又は、熱可塑性エラストマーで形成されている。キャップ本体2は、例えば、ブロー成形、射出成形、又は、高周波ウエルダー加工により製造されるようになっている。
【0086】
図11に示すように、キャップ本体2は、流体導入空間S1を内部に有している。また、キャップ本体2の一端には、略筒状をなす導入通路部2aが備えられており、該導入通路部2aを介してチューブ40から流体導入空間S1に流体が導入されるようになっている。さらに、キャップ本体2は、流体導入空間S1への所定量の流体の導入に連動して流体導入容積が所定値となるまで拡大変形するとともに所定の拡大状態を維持するようになっている。
【0087】
キャップ本体2における最大流体導入容積は、チューブ40内通路の容積よりも若干大きい容積に設定されている。これにより、プライミング時にチューブ40内の所定量の空気(チューブ40内通路の容積に相当する量の空気)及び微量の抗がん剤ADがキャップ本体2の流体導入空間S1に導入されるようになる。
【0088】
キャップ本体2の一端には、樹脂製の接続体3が備えられている。該接続体3は、中心線C1上に延びてキャップ本体2の流体導入空間S1に繋がる連通孔4aを有する内筒部4を備えている。該内筒部4の中途部には、径方向外側に延出する環状延出部5が設けられている。
【0089】
また、接続体3には、環状延出部5から一端側に延びる袴部15が設けられている。該袴部15は、筒状をなし、且つ、内筒部4の外周側において該内筒部4と径方向に所定の間隔を空けて配設されている。また、袴部15の一端は、内筒部4の一端よりも他端側の位置に設定されている。
【0090】
内筒部4の一端部分は、キャップ本体2の一端側から導入通路部2aに挿入されている。 樹脂材料で形成された硬質の内筒部4を軟質材料で形成された軟質の導入通路部2aに挿入することにより、内筒部4及び導入通路部2aが硬質である場合に比べて容易に内筒部4を導入通路部2aに挿入することが可能となっている。また、導入通路部2aに内筒部4を挿入する、つまり、導入通路部2aの内周側に内筒部4を配設することで、導入通路部2aの外周側に内筒部4を配設する場合に比べて、内筒部4を介してキャップ本体2(流体導入空間S1)内に抗がん剤ADが導入される際に、該抗がん剤ADがキャップ本体2の外部に漏れるのを抑制することができる。さらに、本発明の実施形態3では、内筒部4の一端部分の外周面と導入通路部2aとが接合されている。例えば、内筒部4は、その一端部分の外周面に溶剤が塗布された後、導入通路部2aに挿入されるようになっている。これにより、内筒部4の一端部分の外周面と導入通路部2aの内周面とが溶剤接着されるようになっている。
【0091】
また、導入通路部2aに対する内筒部4の挿入代の割合が60%未満の場合は、内筒部4と導入通路部2aとが適切に接続されないおそれがあり、また、挿入代の割合が120%よりも大きい場合は、組み立ての際に導入通路部2aに対して内筒部4を挿入するために要する時間が長くなるおそれがある。そのため、挿入代の割合は、例えば、60%~120%が好ましい。ここで、導入通路部2aに対する内筒部4の挿入代の割合は、導入通路部2aの一端から導入通路部2aの他端までの長さを100%とした場合において、内筒部4の一端の位置に基づいて決定されるものとする。なお、挿入代の割合が100%とは、内筒部4の一端と導入通路部2aの一端とが一致している状態を指すものとする。
【0092】
内筒部4の一端部分を導入通路部2aに挿入した後、袴部15を加熱しながら径方向外側から径方向内側に圧縮することにより、袴部15と導入通路部2aとが圧着されるようになっている。これにより、導入通路部2aが袴部15と内筒部4の一端部分とにより挟み込み固定されるようになるので、内筒部4が導入通路部2aから抜けてしまうのを抑制することが可能となる。
【0093】
また、接続体3には、環状延出部5から他端側に延びる外筒部6が設けられている。該外筒部6は、内筒部4の他端部分の外周側において内筒部4と径方向に所定の間隔を空けて設けられている。
【0094】
内筒部4の他端開口には、該他端開口を塞ぐように隔壁部材13が配設されている。これにより、内筒部4の他端開口は、隔壁部材13により液密に閉じられている。本発明の実施形態3では、隔壁部材13は、略筒状をなす固定部材14により、内筒部4の他端開口に取り付けられている。
【0095】
また、隔壁部材13は、略円形の薄板形状をなしている。また、隔壁部材13は、外力によって比較的容易に変形可能であり、かつ、外力を取り除くと変形前の状態(初期状態)に復帰するように弾性を有する軟質材料から構成されている。軟質材料は、例えば、ポリブタジエン、軟質ポリ塩化ビニル、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー、又は、イソプレンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム等のゴムである。
【0096】
また、隔壁部材13の中央部分には、その厚さ方向に貫通するスリット13aが設けられている。該スリット13aは、他のコネクタ部41の先端に設けられた略筒状のオス部41aが挿入可能となっている(図12を参照)。本発明の実施形態3では、オス部41aは、内筒部4よりも小径となっているので、オス部41aをスリット13aに挿入して貫通させると、オス部41aが内筒部4の内部に位置するようになる。
【0097】
本発明の実施形態3では、略筒状をなす他のコネクタ部41は、チューブ本体40aの他端に備えられており、かつ、輸液セット、延長チューブ等(不図示)と接続可能に構成されている。
【0098】
他のコネクタ部41のオス部41aがスリット13aに挿入されていないときは、隔壁部材13が閉状態(閉じている状態)となっている(図11を参照)。該閉状態では、流体導入空間S1内に流体を入れること、及び、流体導入空間S1内の流体を流体導入空間S1の外部に出すことが不能となっている。
【0099】
一方、他のコネクタ部41のオス部41aがスリット13aを貫通するように該スリット13aに挿入されると(オス部41aがスリット13aに挿入されているとき)、スリット13aが開くように弾性変形して、隔壁部材13が開状態(開いている状態)となる(図12を参照)。該開状態では、接続体3の連通孔4aを介して、流体導入空間S1とチューブ40内とが連通している。換言すると、開状態では、チューブ40内と流体導入空間S1とが開通しているので、チューブ40内の流体を流体導入空間S1に流れ込ませることが可能となっている。
【0100】
また、他のコネクタ部41のオス部41aがスリット13aから引き抜かれると、スリット13aが初期状態に復帰して、隔壁部材13が閉状態となる(図11を参照)。
【0101】
次に、図12乃至図13を用いて、本発明の実施形態3のプライミング用キャップ1の使用方法について説明する。
【0102】
図12に示すように、プライミング用キャップ1をチューブ40の他のコネクタ部41に取り付ける(他のコネクタ部41のオス部41aを隔壁部材13のスリット13aに挿入する)。その後、クランプ40dを操作してプライミング操作を開始すると、図13に示すように、容器20から出てチューブ40内を流れる抗がん剤ADが当該チューブ40内に溜まる空気をキャップ本体2へと移動させるようになる。すると、オス部41aがスリット13aに挿入されることで、隔壁部材13が開状態となっているので、チューブ40内の空気が当該チューブ40内の下流端から順次流体導入空間S1へと導入されるようになる。その際、流体導入空間S1への空気の導入に連動してキャップ本体2は拡大し、流体導入空間S1に所定量の空気及び微量の抗がん剤ADが導入されると、所定の拡大状態へと拡大したキャップ本体2は所定の拡大状態を維持し、流体導入空間S1にそれ以上の空気及び抗がん剤ADの導入が不可能になる。すなわち、チューブ内40内の抗がん剤ADの流れが堰き止められて(図13のX2の位置)流体導入空間S1への空気及び抗がん剤ADの導入が自動的に停止し、チューブ内40内の空気が無くなってチューブ40内に抗がん剤ADが満たされた状態になる。その後、クランプ40dを操作してチューブ40内の通路を閉じた後、プライミング用キャップ1を他のコネクタ部41から取り外すとともに、該他のコネクタ部41を輸液セット、延長チューブ等(不図示)の他のオスコネクタ(不図示)に接続すると、抗がん剤投与を行うことができる。
【0103】
このように、本発明の実施形態3によると、オス部41aがスリット13aに挿入されているときには、隔壁部材13が開かれるようになるので、チューブ40内の流体を流体導入空間S1に移動させることが可能となり、プライミング操作を適切に行うことができる。また、オス部41aがスリット13aに挿入されていないときには、隔壁部材13が閉じられるようになるので、例えば、プライミング操作後に流体導入空間S1に溜まった液体(例えば、抗がん剤AD)がプライミング用キャップの外部に漏れ出すのを抑制することができる。
【0104】
また、特許文献1では、疎水フィルタが抵抗となり、チューブ40内の空気が疎水フィルタを通過するのに時間がかかるので、プライミング速度が遅くなるおそれがある。これに対して、本発明の実施形態3では、特許文献1の如き疎水フィルタを用いていないので、プライミング速度が遅くなるのを防止できる。
【0105】
尚、本発明の実施形態3では、抗がん剤投与を行う際に、本発明のプライミング用キャップ1を用いてプライミング操作を行っているが、これに限らず、容器に溜まる薬液等を患者Pに投与する医療用のライン(例えば経腸栄養、静脈栄養、血液透析、腹膜透析、人工心肺のライン等)においてプライミング操作を行う場合にも本発明の実施形態3のプライミング用キャップ1を用いることができる。
【0106】
また、本発明の実施形態3では、キャップ本体2における最大流体導入容積は、チューブ40内通路の容積よりも若干大きい容積に設定されていたが、上記最大流体導入容積をチューブ40内通路の容積未満に設定してもよい。
【0107】
また、本発明の実施形態3では、接続体3には袴部15が設けられていたが、袴部15を設けなくてもよい。
【0108】
また、本発明の実施形態3では、接続体3の袴部15とキャップ本体2の導入通路部2aとが圧着されるようになっていたが、溶剤接着、又は、UV接着により接合するようにしてもよい。
【0109】
また、本発明の実施形態3では、内筒部4の一端部分と導入通路部2aとが溶剤等を用いて接合されていたが、接合していなくてもよい。
【0110】
また、本発明の実施形態1乃至3では、プライミング用キャップ1を医療用チューブ40に接続するコネクタ部としてメスコネクタ40bが適用されているが、これに限らず、例えば、オスコネクタや瓶針や留置針等の針状をなす接続部であってもよいし、ゴムやシリコーン等の軟質部材からなるファネル状のコネクタであってもよく、医療用チューブ40の下流端(容器20の反対側)においてプライミング用キャップ1を接続させることができるものであればよい。
【0111】
また、本発明の実施形態1乃至3では、医療用チューブ40を容器20に直接接続させているが、これに限らず、アダプタ等を介して接続させるようにしてもよい。
【0112】
尚、本発明の実施形態1,2では、経腸栄養を行う際に本発明のプライミング用キャップ1を用いてプライミング操作を行っているが、これに限らず、容器に溜まる薬液等を患者Pに投与する医療用のライン(例えば静脈栄養、血液透析、腹膜透析、人工心肺、抗がん剤用のライン等)においてプライミング操作を行う場合にも本発明のプライミング用キャップ1を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、医療用の可撓性チューブを介して容器に溜まる薬液等を患者に投与する準備段階において、チューブ内の空気を移動させながら当該チューブ内に容器の液体を満たすプライミング操作を行う際に使用するプライミング用キャップに適している。
【符号の説明】
【0114】
1 プライミング用キャップ
2 キャップ本体(流体導入拡大部)
3 接続体
7 キャップ本体
8 カバー体
8a 流体貯留部
12 吸液材(流体導入拡大部)
13 隔壁部材
13a スリット
20 容器
40 医療用チューブ
41 他のコネクタ部(コネクタ部)
41a オス部
AD 抗がん剤(液体)
H 貫通孔(流体導入空間)
L 栄養剤(液体)
P 患者
S1 流体導入空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13