(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086613
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】内視鏡用処置具
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20240620BHJP
A61B 18/12 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B18/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023202816
(22)【出願日】2023-11-30
(31)【優先権主張番号】63/387,612
(32)【優先日】2022-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕昌
(72)【発明者】
【氏名】塩田 裕亮
(72)【発明者】
【氏名】宮島 千賀
(72)【発明者】
【氏名】山田 晃大朗
(72)【発明者】
【氏名】萩原 大輝
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK06
4C160KK13
4C160KK36
4C160KK57
4C160MM32
(57)【要約】
【課題】送水と吸引とを好適に実施できる内視鏡用処置具を提供する。
【解決手段】内視鏡用処置具は、管路を有するチューブと、前記チューブ内に進退自在に設けられ、高周波電流が通電可能であるワイヤと、前記ワイヤの先端に接続された電極と、前記チューブの先端部に設けられ、前記電極の少なくとも一部を収容可能な先端チップと、を備え、前記先端チップの外周面と内周面に連通する通路を有し、前記通路は、前記管路に連通する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路を有するチューブと、
前記チューブ内に進退自在に設けられ、高周波電流が通電可能であるワイヤと、
前記ワイヤの先端に接続された電極と、
前記チューブの先端部に設けられ、前記電極の少なくとも一部を収容可能な先端チップと、
を備え、
前記先端チップの外周面と内周面に連通する通路を有し、
前記通路は、前記管路に連通する、
内視鏡用処置具。
【請求項2】
前記電極の先端よりも基端側の外周面上に設けられた係止部と、
前記先端チップの基端部に設けられた被係止部と、をさらに備え、
前記電極を最も後退させた第一位置に配置したとき、前記係止部と前記被係止部とが係止すると共に、前記電極の先端が前記先端チップから浮いている、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項3】
前記被係止部は、前記先端チップの前記通路よりも基端側に設けられている、
請求項2に記載の内視鏡用処置具。
【請求項4】
前記電極を最も前進させた第二位置に配置したとき、前記係止部と係止する第二被係止部をさらに有する、
請求項2に記載の内視鏡用処置具。
【請求項5】
前記第二被係止部は、前記通路よりも先端側に設けられている、
請求項4に記載の内視鏡用処置具。
【請求項6】
前記第二被係止部は、前記被係止部よりも先端側、かつ、前記通路よりも基端側に設けられている、
請求項4に記載の内視鏡用処置具。
【請求項7】
前記係止部は、前記被係止部と前記第二被係止部との間で摺動自在である、
請求項4に記載の内視鏡用処置具。
【請求項8】
前記係止部の外周面の一部と前記先端チップの内周面の一部との間に隙間が形成され、
前記隙間は、前記通路および前記管路と連通している、
請求項2に記載の内視鏡用処置具。
【請求項9】
前記係止部と前記先端チップの内周面との一部との間に隙間が形成される、
請求項2に記載の内視鏡用処置具。
【請求項10】
前記通路は、前記先端チップの径方向に向かって前記先端チップの内周面と外周面との間に延びる貫通孔である、
請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項11】
管路を有するチューブと、
前記チューブ内に進退自在に設けられ、高周波電流が通電可能であるワイヤと、
前記ワイヤの先端に接続された電極と、
前記チューブの先端部に設けられ、前記電極の少なくとも一部を収容可能な先端チップと、
前記電極の先端よりも基端側の外周面上に設けられた係止部と、
前記先端チップの基端部に設けられた被係止部と、を備え、
前記電極を最も後退させた第一位置に配置したとき、前記係止部と前記被係止部とが係止すると共に、前記電極の先端が前記先端チップから浮いている、
内視鏡用処置具。
【請求項12】
前記先端チップの外周面と内周面との間で貫通する通路を有する、
請求項11に記載の内視鏡用処置具。
【請求項13】
前記被係止部は、前記先端チップの前記通路よりも基端側に設けられている、
請求項12に記載の内視鏡用処置具。
【請求項14】
前記電極を最も前進させた第二位置に配置したとき、前記係止部と係止する第二被係止部をさらに有する、
請求項12に記載の内視鏡用処置具。
【請求項15】
前記第二被係止部は、前記通路よりも先端側に設けられている、
請求項14に記載の内視鏡用処置具。
【請求項16】
前記第二被係止部は、前記被係止部よりも先端側、かつ、前記通路よりも基端側に設けられている、
請求項14に記載の内視鏡用処置具。
【請求項17】
前記係止部は、前記被係止部と前記第二被係止部との間で摺動自在である、
請求項14に記載の内視鏡用処置具。
【請求項18】
前記係止部の外周面の一部と前記先端チップの内周面の一部との間に隙間が形成され、
前記隙間は、前記通路および前記管路と連通している、
請求項12に記載の内視鏡用処置具。
【請求項19】
管路を有するチューブと、
前記チューブ内に進退自在に設けられ、高周波電流が通電可能であるワイヤと、
前記ワイヤの先端に接続された電極と、
前記管路の内部に連通する通路を有し、前記電極の少なくとも一部を収容可能な先端チップと、
前記電極は、前記電極の先端よりも基端側の外周面上に設けられた係止部を有し、
前記先端チップは、前記電極を最も後退させた第一位置に配置したとき、前記通路よりも基端側で前記係止部と係止する被係止部を有する、
内視鏡用処置具。
【請求項20】
前記電極を最も後退させた前記第一位置に配置したとき、前記電極の先端は、前記先端チップに非接触の状態で前記係止部によって支持される、
請求項19に記載の内視鏡用処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
この出願は、2022年12月15日に出願された米国仮出願第63/387,612号の利益を主張し、その全文が参照により本明細書に援用される。
[技術分野] 本発明は、内視鏡用処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)などの内視鏡治療において、高周波ナイフなどの切開・剥離用の内視鏡用処置具や止血用の内視鏡用処置具等が使用されている。
【0003】
内視鏡用処置具を用いて止血を実施する場合、術者は送水を行って止血箇所を特定する。止血箇所を特定後において止血を実施するとき、止血箇所の周辺には電解質となる液体がないことが望ましい。そのため、術者は、止血を行う前に、止血対象の組織周辺の液体を吸引する処置を実施する。特許文献1には、送水と吸引とを実施できる内視鏡用処置具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しがしながら、従来の内視鏡用処置具は、止血対象の組織周辺の液体を吸引するときに、液体に加えて生体組織を吸引してしまうおそれがあった。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は、送水と吸引とを好適に実施できる内視鏡用処置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係内視鏡用処置具は、内視鏡用処置具は、管路を有するチューブと、前記チューブ内に進退自在に設けられ、高周波電流が通電可能であるワイヤと、前記ワイヤの先端に接続された電極と、前記チューブの先端部に設けられ、前記電極の少なくとも一部を収容可能な先端チップと、を備え、前記先端チップの外周面と内周面に連通する通路を有し、前記通路は、前記管路に連通する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の内視鏡用処置具は、送水と吸引とを好適に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第一実施形態に係る内視鏡処置システムの全体図である。
【
図2】同内視鏡処置システムの処置具を示す全体図である。
【
図4】先端チップを透過表示させた同処置具の先端部の斜視図である。
【
図5】ロッドが第一位置にある同処置具の先端部の断面図である。
【
図6】同ロッドが第二位置にある同処置具の先端部の断面図である。
【
図7】第二実施形態に係る内視鏡処置システムにおける処置具の先端部の斜視図である。
【
図8】先端チップを透過表示させた同処置具の先端部の斜視図である。
【
図9】ロッドが第一位置にある同処置具の先端部の断面図である。
【
図10】同ロッドが第二位置にある同処置具の先端部の断面図である。
【
図12】第三実施形態に係る内視鏡処置システムにおける処置具の先端部の斜視図である。
【
図13】先端チップを透過表示させた同処置具の先端部の斜視図である。
【
図14】ロッドが第一位置にある同処置具の先端部の断面図である。
【
図15】同ロッドが第二位置にある同処置具の先端部の断面図である。
【
図16】同先端チップの側孔の変形例を示す断面図である。
【
図18】第四実施形態に係る内視鏡処置システムにおける処置具の先端部の斜視図である。
【
図19】先端チップを透過表示させた同処置具の先端部の斜視図である。
【
図20】ロッドが第一位置にある同処置具の先端部の断面図である。
【
図21】同ロッドが第二位置にある同処置具の先端部の断面図である。
【
図22】第五実施形態に係る内視鏡処置システムにおける処置具の先端部の斜視図である。
【
図23】先端チップを透過表示させた同処置具の先端部の斜視図である。
【
図26】ロッドが突出した同処置具の先端部の断面図である。
【
図27】同先端チップの側孔の変形例を示す断面図である。
【
図29】同先端チップの変形例を示す断面図である。
【
図30】第六実施形態に係る内視鏡処置システムにおいて、ロッドが第一位置にある処置具の先端部の断面図である。
【
図31】別の態様のロッドを含む同処置具の先端部の断面図である。
【
図32】別の態様のロッドを含む同処置具の先端部の断面図である。
【
図33】別の態様のロッドを含む同処置具の先端部の断面図である。
【
図34】第七実施形態に係る内視鏡処置システムにおける処置具の先端部の斜視図である。
【
図35】先端チップを透過表示させた同処置具の先端部の斜視図である。
【
図36】同先端チップを透過表示させた同処置具の先端部の斜視図である。
【
図37】ロッドが第一位置にある同処置具の先端部の断面図である。
【
図38】同ロッドが第二位置にある同処置具の先端部の断面図である。
【
図39】同先端チップの側孔を示す同先端チップの正面図である。
【
図40】同先端チップの側孔の別の変形例を示す同先端チップの正面図である。
【
図41】同先端チップの側孔の別の変形例を示す同先端チップの正面図である。
【
図42】第八実施形態に係る内視鏡処置システムにおける処置具の先端部の斜視図である。
【
図43】先端チップ等を透過表示させた同処置具の先端部の斜視図である。
【
図45】ロッドが突出した同処置具の先端部の断面図である。
【
図46】同処置具の先端チップおよび吸引カバーの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態に係る内視鏡処置システム300について、
図1から
図6を参照して説明する。
図1は本実施形態に係る内視鏡処置システム300の全体図である。
【0011】
[内視鏡処置システム300]
内視鏡処置システム300は、
図1に示すように、内視鏡200と処置具100とを備えている。処置具100は、内視鏡200に挿入して使用される。
【0012】
[内視鏡200]
内視鏡200は、公知の軟性内視鏡であり、先端から体内に挿入される挿入部202と、挿入部202の基端に取り付けられた操作部207と、を備える。
【0013】
挿入部202は、撮像部203と、湾曲部204と、軟性部205と、を有する。挿入部202の先端から、撮像部203、湾曲部204および軟性部205の順でそれぞれが配されている。挿入部202の内部には、処置具100を挿入するためのチャンネル206が設けられている。挿入部202の先端には、チャンネル206の先端開口部206aが設けられている。
【0014】
撮像部203は、例えばCCDやCMOSなどの撮像素子を備えており、処置対象となる部位を撮像可能である。撮像部203は、処置具100がチャンネル206の先端開口部206aから突出している状態において、処置具100のロッド2を撮像することができる。
【0015】
湾曲部204は、操作者による操作部207の操作に従って湾曲する。軟性部205は、可撓性を有する管状の部位である。
【0016】
操作部207は、軟性部205に接続されている。操作部207は、グリップ208と、入力部209と、チャンネル206の基端開口部206bと、ユニバーサルコード210と、を有する。グリップ208は、操作者によって把持される部位である。入力部209は、湾曲部204を湾曲動作させるための操作入力を受け付ける。ユニバーサルコード210は、撮像部203が撮像した画像を外部に出力する。ユニバーサルコード210は、プロセッサなどを備えた画像処理装置を経由して、液晶ディスプレイなどの表示装置に接続される。
【0017】
[処置具100]
図2は、処置具100を示す全体図である。
処置具(内視鏡用処置具)100は、局注と切開と吸引と凝固止血とを実施できるマルチファンクションタイプの処置具である。処置具100は、シース1と、ロッド2と、ストッパ3と、操作ワイヤ4(
図5参照)と、操作部5と、を備える。以降の説明において、処置具100の長手方向Aにおいて、患者の体内に挿入される側を「先端側(遠位側)A1」、操作部5側を「基端側(近位側)A2」という。
【0018】
シース1は、先端1aから基端1bまで延びる長尺な管状部材である。シース1は、内視鏡200のチャンネル206に挿入可能な外径を有し、チャンネル206を進退可能である。
図1に示すように、シース1がチャンネル206に挿入された状態において、シース1の先端1aは、チャンネル206の先端開口部206aから突没可能である。
【0019】
図3は、処置具100の先端部の斜視図である。
シース1は、長手方向Aに延びるチューブ10と、チューブ10の先端に設けられた先端チップ11と、を有する。なお、シース1は、チューブ10と先端チップ11とが一体成形されて形成されていてもよい。
【0020】
図4は、先端チップ11を透過表示させた処置具100の先端部の斜視図である。
チューブ10は、可撓性および絶縁性を有する長尺な管状部材である。チューブ10は、例えば樹脂で形成されている。チューブ10の先端には、基端側よりも外径が大きい拡径部10aが設けられている。先端チップ11は、拡径部10aの内側に嵌合して取り付けられている。なお、先端チップ11は、接着剤等により拡径部10aに接着されてもよい。
【0021】
図5は、ロッド2の先端が第一位置P1にある処置具100の先端部の断面図である。
先端チップ11は、略円筒状に形成されている。先端チップ11は、先端部14と、円筒部15と、を有する。先端部14は、円筒部15の先端において長手方向Aに対して垂直な径方向Rに延びる略円板状の部材である。円筒部15は、シース1の長手方向Aの中心軸O1を中心軸とした円筒形状に形成されている。先端部14と円筒部15とにより囲まれた空間を先端チップ11の内部空間16と定義する。先端チップ11は、内部空間16にロッド2の少なくとも一部を収容できる。先端チップ11の内部空間16は、チューブ10の内部空間(管路、ルーメン)19と連通している。
【0022】
先端部14には、貫通孔12が形成されている。貫通孔12は、先端チップ11の先端部14に設けられ、長手方向Aに貫通する孔である。ロッド2は、貫通孔12を挿通する。貫通孔12は、シース1の長手方向Aの中心軸O1と重なる位置に設けられている。なお、貫通孔12の位置はこれに限定されない。
【0023】
円筒部15には、3個の側孔(通路、吸収孔)13が形成されている。側孔(通路、吸収孔)13は、先端チップ11の円筒部15に設けられた長手方向Aに対して垂直な径方向Rに貫通する孔である。側孔13は、先端チップ11の外周面11tと内周面11sとの間を貫通する孔である。3個の側孔13は、周方向Cに沿って均等に設けられている。なお、側孔13の数や態様はこれに限定されない。
【0024】
図6は、ロッド2の先端が第二位置P2にある処置具100の先端部の断面図である。
ロッド(電極)2は、金属製の略丸棒状の部材である。ロッド2は、例えばステンレスなどの素材により形成されている。ロッド2は、導電性を有し、高周波電流が通電される。ロッド2は、ロッド本体20と、フランジ21と、を有する。
【0025】
ロッド2は、長手方向Aに沿ってシース1の先端チップ11の貫通孔12を挿通しており、貫通孔12から先端側A1に突出可能である。ロッド2の長手方向Aにおける中心軸O2は、シース1の長手方向Aにおける中心軸O1と略一致している。
【0026】
ロッド本体20は、金属製の丸棒状の部材である。ロッド本体20の基端には操作ワイヤ4が取り付けられている。ロッド本体20には、操作部5と接続された操作ワイヤ4から高周波電流が供給される。操作ワイヤ4からロッド2に高周波電流が供給されると、ロッド本体20およびフランジ21は、高周波電流を生体組織へ出力するモノポーラ電極として機能する。
【0027】
フランジ(先端拡径部)21は、ロッド本体20の先端に設けられた円板状の導電部材である。長手方向Aに沿った方向から見た正面視において、フランジ21の外周は、ロッド本体20の外周と同心円状に形成されている。フランジ21の長手方向Aに対して垂直な径方向Rの長さは、ロッド本体20の径方向Rの長さよりも長い。なお、フランジ(21は、円板状に限らず、三角形状やフック形状であっても良い。
【0028】
フランジ21の基端側A2には、平面状の基端面21bが形成されている。
図5に示すように、ロッド2をシース1に対して後退させると、ロッド2の基端面21bと、先端チップ11の先端部14とは、密着する。
【0029】
ロッド本体20およびフランジ21は、長手方向Aに沿って延びる第一送水管路22を有する。第一送水管路22は、フランジ21に形成された先端開口22aに連通している。先端開口22aは、フランジ21の先端側A1に設けられた開口である。
【0030】
ストッパ(係止部材)3は、ロッド2の進退範囲を規制する部材である。ストッパ3は、係止部31と、被係止部32と、を有する。
【0031】
係止部31は、
図4に示すように、略直方体状に形成されており、ロッド2の先端よりも基端側A2に位置し、かつ、ロッド本体20の外周面上に設けられている。係止部31の径方向Rの外側には、先端チップ11の内周面11sに沿う摺動面(第一外周面)31sが形成されている。係止部31は、摺動面31sを先端チップ11の内周面11sに対して摺動させながら、先端チップ11の内部空間16を長手方向Aに進退移動できる。
【0032】
係止部31の外周面の一部と先端チップ11の内周面11sの一部との間に隙間Gが形成される。具体的には、摺動面(第一外周面)31sよりも径方向Rに対して凹んだ第二外周面31tと、先端チップ11の内周面11sの一部と、の間に隙間Gが形成される。隙間Gは、側孔13およびチューブ10の内部空間(管路、ルーメン)19と連通している。側孔13、隙間Gおよび内部空間19は、吸引流路を形成する。なお、第二外周面31tは、平面であっても良い。
【0033】
被係止部(第一被係止部)32は、
図5に示すように、先端チップ11の基端部に設けられた円環状の部材である。被係止部32は、側孔13よりも基端側A2に設けられている。被係止部32は、先端チップ11の内周面11sよりも径方向Rの内側に突出する凸部32tを有する。
【0034】
図5に示すように、ロッド2の先端が第一位置P1のときに係止部31が被係止部32(特に凸部32t)と係合することにより、ロッド2の後退が規制される。係止部31が被係止部32と係合したとき、ロッド2の基端面21bと先端チップ11の先端部14とは密着する。
【0035】
図6に示すように、ロッド2の先端が第二位置P2のときに係止部31が先端チップ11の先端部14の基端面と係合することにより、ロッド2の前進が規制される。先端部14の基端面は、ロッド2の前進を規制する第二被係止部33として機能する。第二被係止部33は、側孔13よりも先端側A1に設けられている。係止部31が先端チップ11の先端部14と係合したとき、係止部31は側孔13よりも先端側A1に配置される。
【0036】
操作ワイヤ4は、チューブ10の内部空間(管路、ルーメン)19を挿通する金属製のワイヤである。操作ワイヤ4は、例えばステンレスなどの素材により形成されている。操作ワイヤ4の先端はロッド2に接続され、操作ワイヤ4の基端は操作部5に接続されている。なお、操作ワイヤ4は、中空のシャフトであれば他の態様であってもよい。
【0037】
操作ワイヤ4の内部には、第二送水管路42が形成されている。第二送水管路42は、第一送水管路22の基端に連結されて流体連通している。
【0038】
操作部5は、
図1および
図2に示すように、操作部本体51と、スライダ52と、給電コネクタ53と、液体供給口54と、吸引接続口55と、を有する。
【0039】
操作部本体51の先端部は、シース1の基端1bと接続されている。操作部本体51は、操作ワイヤ4が挿通可能な内部空間を有している。操作ワイヤ4は、チューブ10の内部空間19および操作部本体51の内部空間を通過してスライダ52まで延びている。
【0040】
スライダ52は、操作部本体51に対して長手方向Aに沿って移動可能に取り付けられている。スライダ52には、操作ワイヤ4の基端部が取り付けられている。術者がスライダ52を操作部本体51に対して相対的に進退させることにより、操作ワイヤ4およびロッド2が進退する。
【0041】
給電コネクタ53は、スライダ52に固定されている。給電コネクタ53は、図示しない高周波電源装置に接続可能であり、導電ワイヤを経由して操作ワイヤ4の基端部と接続されている。給電コネクタ53は、高周波電源装置から供給された高周波電流を、操作ワイヤ4を経由してロッド2に供給可能である。なお、給電コネクタ53は、スライダ52ではなく、操作部本体51に固定されていても良い。
【0042】
液体供給口54は、スライダ52に設けられている。液体供給口54は、スライダ52に形成された第三送水管路を経由して第二送水管路42の基端に連結されている。液体供給口54から供給した液体は、第三送水管路、第二送水管路42および第一送水管路22を通過して先端開口22aから放出される。なお、液体供給口54は、スライダ52ではなく、操作部本体51に設けられても良い。
【0043】
吸引接続口55は、スライダ52に設けられている。吸引接続口55は、チューブ10の内部空間(管路、ルーメン)19に連結されている。吸引接続口55は、図示しない吸引ポンプに接続可能である。吸引接続口55に接続された吸引ポンプによる吸引により、先端チップ11の貫通孔12および側孔13から吸引が実行される。
【0044】
[内視鏡処置システム300の使用方法]
次に、本実施形態の内視鏡処置システム300を用いた手技(内視鏡処置システム300の使用方法)について説明する。具体的には、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)などの内視鏡治療における病変部の局注処置、切開・剥離処置および止血処置について説明する。
【0045】
準備作業として、術者は、公知の方法により病変部を特定する。具体的には、術者は内視鏡200の挿入部202を消化管(例えば、食道、胃、十二指腸、大腸)内に挿入し、内視鏡の撮像部203で得られる画像を観察しながら病変部を特定する。
【0046】
<挿入ステップ>
術者は処置具100をチャンネル206に挿入し、挿入部202の先端開口部206aからシース1の先端1aを突出させる。術者は、操作部5のスライダ52を操作部本体51に対して相対的に前進させ、ロッド2を突出させる。
【0047】
<局注ステップ>
術者は、病変部において局注用の液体(局注液)を注入する箇所をロッド2で穿刺して貫通させる。術者は、粘膜下層の中にロッド2の先端の先端開口22aを入れた状態で、液体供給口54から液体(局注液)を送水する。
【0048】
<切開・剥離ステップ>
次に、術者は、切開・剥離処置を行う。術者は、ロッド2を前進させ、高周波電流を通電させた状態でフランジ21を移動させて病変部の粘膜を切開する。また、術者は、ロッド2を前進させ、高周波電流を通電させた状態で、切開した病変部の粘膜を持ち上げて粘膜下層を露出させながら、切開した病変部の粘膜下層を剥離する。
【0049】
<止血ステップ>
切開・剥離処置において出血した場合、術者は止血処置を行う。術者は、液体供給口54から液体を送水して、止血点周辺を洗浄して止血点を特定する。次に、術者は、確実な止血処置を行うため、術場から電解質である液体を吸引する。術者は、吸引接続口55に接続された吸引ポンプを動作させて、先端チップ11の貫通孔12および側孔13から吸引する実行する。先端チップ11は、貫通孔12に加えて側孔13が吸引口として開口しているため、生体組織に先端チップ11の先端を押し付けた状態で血液や洗浄のための液体を吸引する際に生体組織を吸い込んで吸引口が塞がれてしまうことを防げる。
【0050】
次に、術者は、ロッド本体20およびフランジ21を押し当てながら高周波電流による通電で出血点を焼灼して止血する。このとき、術場に電解質である液体がないため、術者は確実に止血処置できる。
【0051】
術者は、必要に応じて上述の動作(処置)を継続し、最終的に病変部を切除し、ESDの手技を終了する。
【0052】
本実施形態に係る処置具100によれば、送水と吸引とを好適に実施できる。従来、内視鏡200により術場の吸引を実施していたが、内視鏡200による吸引は内視鏡200の移動を伴うことが多く、止血点を捉えた視野を確保し続けることができない。本実施形態に係る処置具100によれば、内視鏡200による止血点を捉えた視野を確保し続けながら、処置具100よる送水と吸引と止血とを実施できる。
【0053】
以上、本発明の第一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0054】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態に係る処置具100Bについて、
図7から
図10を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0055】
図7は、処置具100Bの先端部の斜視図である。
処置具(内視鏡用処置具)100Bは、局注と切開と吸引と凝固止血とを実施できるマルチファンクションタイプの処置具である。処置具100Bは、シース1Bと、ロッド2と、ストッパ3と、操作ワイヤ4と、操作部5と、を備える。
【0056】
図8は、先端チップ11Bを透過表示させた処置具100Bの先端部の斜視図である。
シース1Bは、先端1aから基端1bまで延びる長尺な管状部材である。シース1Bは、内視鏡200のチャンネル206に挿入可能な外径を有し、チャンネル206を進退可能である。シース1Bは、長手方向Aに延びるチューブ10と、チューブ10の先端に設けられた先端チップ11Bと、を有する。なお、シース1Bは、チューブ10と先端チップ11Bとが一体成形されて形成されていてもよい。
【0057】
図9は、ロッド2の先端が第一位置P1にある処置具100Bの先端部の断面図である。
先端チップ11Bは、略円筒状に形成されている。先端チップ11Bは、先端部14Bと、円筒部15Bと、有する。先端部14Bは、円筒部15Bの先端に設けられた略円環状の部材である。円筒部15Bは、シース1Bの長手方向Aの中心軸O1を中心軸とした円筒形状に形成されている。先端部14Bと円筒部15Bとにより囲まれた空間を先端チップ11Bの内部空間16Bと定義する。先端チップ11Bは、内部空間16Bにロッド2の少なくとも一部を収容できる。先端チップ11Bの内部空間16Bは、チューブ10の内部空間(管路、ルーメン)19と連通している。
【0058】
第1実施形態と同様に、被係止部(第一被係止部)32は、
図9に示すように、先端チップ11Bの基端部に設けられた円環状の部材である。被係止部32は、先端チップ11Bの内周面11sよりも径方向Rの内側に突出する凸部32tを有する。
図9に示すように、ロッド2の先端が第一位置P1のときに、係止部31が被係止部32(特に凸部32t)と係合することにより、ロッド2の後退が規制される。係止部31が被係止部32と係合したときも、ロッド2の先端(フランジ21)は先端チップ11Bには接触せずに、先端チップ11Bから浮いている。また、ロッド2の先端(フランジ21)は先端チップ11Bに非接触の状態で係止部31によって支持される。なお、係止部31が被係止部32と係合したときに、フランジ21は先端チップ11Bの内部空間に完全に収容されていても良い。また、別の形態としては、係止部31が被係止部32と係合したときに、フランジ21の少なくとも一部が先端チップ11Bの先端から突出していても良い。
【0059】
先端部14Bには、貫通孔12Bが形成されている。貫通孔12Bは、先端チップ11Bの先端部14Bに設けられ、長手方向Aに貫通する孔である。ロッド2は、貫通孔12を挿通する。貫通孔12Bは、第一実施形態の貫通孔12と比較して開口面積が大きい。先端部14Bの基端面は、第一実施形態と同様に、ロッド2の前進を規制する第二被係止部33として機能する。
【0060】
円筒部15Bは、第一実施形態の円筒部15と異なり、側孔(通路、吸収孔)13を有していない。
【0061】
図10は、ロッド2の先端が第二位置P2にある処置具100Bの先端部の断面図である。
ロッド2は、長手方向Aに沿ってシース1Bの先端チップ11Bの貫通孔12Bを挿通しており、貫通孔12Bから先端側A1に突出可能である。ロッド2の先端が第一位置P1から第二位置P2までの進退範囲においてどの位置に配置されたときも、フランジ21は、先端チップ11Bに接触せず、先端チップ11Bから浮いている。係止部31は、先端チップ11Bの内周面11sと摺動して進退する。係止部31は、ロッド2の長手方向Aの軸のブレを防止する。すなわち、係止部31はロッド2を片持ち梁の態様で支持する。その結果、ロッド2の長手方向Aにおける中心軸O2は、シース1Bの長手方向Aにおける中心軸O1と略一致する。
また、ロッド2の先端が第一位置P1であっても第二位置P2であっても、長手方向Aにおいて貫通孔12Bと係止部31の位置はオフセットしている。具体的には、ロッド2の先端が第一位置P1のときには、係止部31は、貫通孔12Bよりも基端側A2に位置し、ロッド2の先端が第二位置P2のときにも、係止部31は、貫通孔12Bよりも基端側A2に位置する。そのため、係止部31は貫通孔12Bからの吸引を妨げない。
【0062】
本実施形態に係る処置具100Bによれば、送水と吸引とを好適に実施できる。先端チップ11Bは、第一実施形態の貫通孔12よりも開口面積が大きい貫通孔12Bが吸引口として開口しているため、血液や洗浄のための液体を吸引する際に生体組織を吸い込んで吸引口が塞がれてしまうことを防げる。
【0063】
以上、本発明の第二実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0064】
(変形例)
上記実施形態において、係止部31と先端チップ11Bの内周面11sとの隙間が吸引流路である。しかしながら、吸引流路はこれに限定されない。
図11は、係止部31の変形例である係止部31Bを示す斜視図である。係止部31Bは、円柱状に形成されている。係止部31Bには、長手方向Aに貫通する貫通孔31hが形成されている。この場合、貫通孔31hが主な吸引流路である。
【0065】
(第三実施形態)
本発明の第三実施形態に係る処置具100Cについて、
図12から
図15を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0066】
図12は、処置具100Cの先端部の斜視図である。
処置具(内視鏡用処置具)100Cは、局注と切開と吸引と凝固止血とを実施できるマルチファンクションタイプの処置具である。処置具100Cは、シース1Cと、ロッド2と、ストッパ3と、操作ワイヤ4と、操作部5と、を備える。
【0067】
図13は、先端チップ11Cを透過表示させた処置具100Cの先端部の斜視図である。シース1Cは、先端1aから基端1bまで延びる長尺な管状部材である。シース1Cは、内視鏡200のチャンネル206に挿入可能な外径を有し、チャンネル206を進退可能である。シース1Cは、長手方向Aに延びるチューブ10と、チューブ10の先端に設けられた先端チップ11Cと、を有する。なお、シース1Cは、チューブ10と先端チップ11Cとが一体成形されて形成されていてもよい。
【0068】
図14は、ロッド2の先端が第一位置P1にある処置具100Cの先端部の断面図である。
先端チップ11Cは、略円筒状に形成されている。先端チップ11Cは、先端部14Bと、円筒部15と、有する。先端部14Bと円筒部15とにより囲まれた空間を先端チップ11Bの内部空間16Cと定義する。先端チップ11Cは、内部空間16Cにロッド2の少なくとも一部を収容できる。先端チップ11Cの内部空間16Cは、チューブ10の内部空間(管路、ルーメン)19と連通している。
【0069】
第1実施形態と同様に、被係止部(第一被係止部)32は、
図14に示すように、先端チップ11Cの基端部に設けられた円環状の部材である。被係止部32は、先端チップ11Cの内周面11sよりも径方向Rの内側に突出する凸部32tを有する。
図14に示すように、ロッド2の先端が第一位置P1のときに、係止部31が被係止部32(特に凸部32t)と係合することにより、ロッド2の後退が規制される。係止部31が被係止部32と係合したときも、ロッド2の先端(フランジ21)は先端チップ11Cには接触せずに、先端チップ11Cから浮いている。また、ロッド2の先端(フランジ21)は先端チップ11Cに非接触の状態で係止部31によって支持される。なお、係止部31が被係止部32と係合したときに、フランジ21は先端チップ11Cの内部空間に完全に収容されていても良い。また、別の形態としては、係止部31が被係止部32と係合したときに、フランジ21の少なくとも一部が先端チップ11Cの先端から突出していてもよい。
【0070】
図15は、ロッド2の先端が第二位置P2にある処置具100Cの先端部の断面図である。
ロッド2は、長手方向Aに沿ってシース1Cの先端チップ11Cの貫通孔12Bを挿通しており、貫通孔12Bから先端側A1に突出可能である。ロッド2の先端が第一位置P1から第二位置P2までの進退範囲においてどの位置に配置されたときも、フランジ21は、先端チップ11Cに接触せず、先端チップ11Cから浮いている。係止部31は、先端チップ11Cの内周面11sと摺動して進退する。係止部31は、ロッド2の長手方向Aの軸のブレを防止する。その結果、ロッド2の長手方向Aにおける中心軸O2は、シース1Cの長手方向Aにおける中心軸O1と略一致する。
【0071】
本実施形態に係る処置具100Cによれば、送水と吸引とを好適に実施できる。先端チップ11Cは、側孔13に加えて、第一実施形態の貫通孔12よりも開口面積が大きい貫通孔12Bが吸引口として開口しているため、生体組織に先端チップ11Cの先端を押し付けた状態で血液や洗浄のための液体を吸引する際に生体組織を吸い込んで吸引口が塞がれてしまうことを防げる。
【0072】
以上、本発明の第三実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0073】
(変形例)
上記実施形態において、側孔13は長手方向Aに対して垂直な径方向Rに沿って形成された孔である。しかしながら、側孔13の形状はこれに限定されない。
図16は、側孔13の変形例である側孔13Pを示す断面図である。側孔13Pは径方向Rに対して傾いた方向D1に沿って形成された孔である。方向D1は、径方向Rの外側が先端側A1に向かって傾いている。
図17は、側孔13Pの変形例である側孔13Qを示す断面図である。側孔13Qは、径方向Rの外側から径方向Rの内側に向かって広がるテーパ状に形成されている。
【0074】
(第四実施形態)
本発明の第四実施形態に係る処置具100Dについて、
図18から
図21を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0075】
図18は、処置具100Dの先端部の斜視図である。
処置具(内視鏡用処置具)100Dは、局注と切開と吸引と凝固止血とを実施できるマルチファンクションタイプの処置具である。処置具100Dは、シース1Bと、ロッド2と、ストッパ3Dと、操作ワイヤ4と、操作部5と、を備える。
【0076】
図19は、先端チップ11Bを透過表示させた処置具100Dの先端部の斜視図である。ストッパ3Dは、ロッド2の進退範囲を規制する部材である。ストッパ3Dは、係止部31Dと被係止部32と、を有する。
【0077】
図20は、ロッド2の先端が第一位置P1にある処置具100Dの先端部の断面図である。
係止部31Dは、
図19に示すように、略直方体状に形成されており、ロッド2のロッド本体20の外周面上に設けられている。係止部31Dの径方向Rの外側には、先端チップ11Bの内周面11sに沿う摺動面31sが形成されている。係止部31Dは、摺動面31sを先端チップ11Bの内周面11sに対して摺動させながら、先端チップ11Bの内部空間16を長手方向Aに進退移動できる。
【0078】
図21は、ロッド2の先端が第二位置P2にある処置具100Dの先端部の断面図である。
係止部31Dは、先端側A1にロッド2の撓みを防止するパイプ31aを有する。パイプ31aは、係止部31Dの先端側A1に設けられた管状の部材である。ロッド2は、パイプ31a内を摺動自在に設けられている。パイプ31aの外形は、好ましくは円錐状に形成されており、先端側A1の外径が基端側A2の外径より小さい。パイプ31aは、貫通孔12Bを挿通できる。
【0079】
本実施形態に係る処置具100Dによれば、送水と吸引とを好適に実施できる。先端チップ11Bは、第一実施形態の貫通孔12よりも開口面積が大きい貫通孔12Bが吸引口として開口しているため、吸引を継続しても生体組織を吸い込んで吸引口が塞がれてしまうことを防げる。加えて、ロッド2の先端は、先端チップ11Bに対して浮いているが、パイプ31aにより撓みが好適に抑制される。
【0080】
以上、本発明の第四実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0081】
(第五実施形態)
本発明の第五実施形態に係る処置具100Eについて、
図22から
図26を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0082】
図22は、処置具100Eの先端部の斜視図である。
処置具(内視鏡用処置具)100Eは、局注と切開と吸引と凝固止血とを実施できるマルチファンクションタイプの処置具である。処置具100Eは、シース1Eと、ロッド2と、操作ワイヤ4と、操作部5と、を備える。
【0083】
図23は、処置具100Eの先端部の斜視図であり、先端チップ11Eを透過表示させた図である。シース1Eは、先端1aから基端1bまで延びる長尺な管状部材である。シース1Eは、内視鏡200のチャンネル206に挿入可能な外径を有し、チャンネル206を進退可能である。シース1Eは、長手方向Aに延びるチューブ10と、チューブ10の先端に設けられた先端チップ11Eと、を有する。なお、シース1Eは、チューブ10と先端チップ11Eとが一体成形されて形成されていてもよい。
【0084】
図24は、処置具100Eの先端部の断面図である。
先端チップ11Eは、略円柱状に形成されている。先端チップ11Eは、長手方向Aに貫通する貫通孔12Eと、3個の側孔13Eと、を有する。先端チップ11Eは、貫通孔12Eにロッド2の少なくとも一部を収容できる。先端チップ11Eの貫通孔12Eは、チューブ10の内部空間(管路、ルーメン)19と連通している。
【0085】
図24に示すように、ロッド2をシース1Eに対して後退させると、ロッド2の基端面21bと、先端チップ11Eの先端部14Eとは、密着する。
【0086】
図25は、
図24に示すX-X線に沿う断面図である。
側孔13Eは、先端チップ11Eの外周面11tにおいて径方向Rに開口している。側孔13Eは、先端チップ11Eの内部に形成された90度に屈曲する管路11pに経由してチューブ10の内部空間(管路、ルーメン)19と連通している。3個の側孔13Eは、周方向Cに沿って均等に設けられている。なお、側孔13Eの数や態様はこれに限定されない。
【0087】
図26は、ロッド2が突出した処置具100Eの先端部の断面図である。
ロッド2は、長手方向Aに沿ってシース1Eの先端チップ11Eの貫通孔12Eを挿通して進退可能である。ロッド2の長手方向Aにおける中心軸O2は、シース1Eの長手方向Aにおける中心軸O1と略一致する。
【0088】
本実施形態に係る処置具100Eによれば、送水と吸引とを好適に実施できる。先端チップ11Eは、側孔13Eが吸引口として開口しているため、生体組織に先端チップ11Eの先端を押し付けた状態で血液や洗浄のための液体を吸引する際に生体組織を吸い込んで吸引口が塞がれてしまうことを防げる。
【0089】
以上、本発明の第五実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0090】
(変形例)
上記実施形態において、側孔13Eは長手方向Aに対して垂直な径方向Rに沿って形成された孔である。しかしながら、側孔13Eの形状はこれに限定されない。
図27は、側孔13Eの変形例である側孔13Rを示す断面図である。側孔13Rは径方向Rに対して傾いた方向D1に沿って形成された孔である。方向D1は、径方向Rの外側が先端側A1に向かって傾いている。
図28は、側孔13Rの変形例である側孔13Sを示す断面図である。側孔13Sは、径方向Rの外側から径方向Rの内側に向かって広がるテーパ状に形成されている。
図29は、先端チップ11Eの変形例である先端チップ11Rを示す断面図である。先端チップ11Rは、側孔13Rが設けられた外周面11Rtが、長手方向Aの先端側A1から基端側A2に向かって広がるテーパ状に形成されている。
【0091】
(第六実施形態)
本発明の第六実施形態に係る処置具100Fについて、
図30から
図33を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0092】
図30は、ロッド2Fの先端が第一位置P1にある処置具100Eの先端部の断面図である。
処置具(内視鏡用処置具)100Fは、局注と切開と吸引と凝固止血とを実施できるマルチファンクションタイプの処置具である。処置具100Fはシース1Cと、ロッド2Fと、ストッパ3Fと、操作ワイヤ4と、操作部5と、を備える。
【0093】
ロッド2Fは、金属製の略丸棒状の部材である。ロッド2Fは、例えばステンレスなどの素材により形成されている。ロッド2Fは、導電性を有し、高周波電流が通電される。ロッド2Fは、ロッド本体20Fと、フランジ21と、を有する。
【0094】
ストッパ3Fは、ロッド2Fの進退範囲を規制する部材である。ストッパ3Fは、係止部31と、被係止部32と、第二被係止部33Fと、を有する。第二被係止部33Fは、被係止部32よりも先端側A1、かつ、側孔13よりも基端側A2に設けられている。第二被係止部33Fは、ロッド2を最も前進させたとき、すなわちロッド2Fが第二位置P2に位置するときに係止部31と係止する。
また、ロッド2Fの先端が第一位置P1のときも第二位置P2のときも、係止部31は、側孔13よりも基端側A2に位置する。そのため、係止部31は貫通孔12Bおよび側孔13からの吸引を妨げない。
【0095】
図30に示すロッド2Fにおいて、ロッド2Fのフランジ21の先端面から被係止部32の凸部32tの先端面までの長手方向Aの長さL2は先端チップ11Cの先端部14Bの先端面から被係止部32の凸部32tの先端面までの長手方向Aの長さL1より長い。ロッド2Fのフランジ21の基端面21bから被係止部32の凸部32tの先端面までの長手方向Aの長さL3は、長さL1より短い(L3<L1<L2)。
【0096】
図31は、別の態様のロッド2Fを含む処置具100Fの先端部の断面図である。
図31に示すロッド2Fにおいて、ロッド2Fのフランジ21の先端面から被係止部32の凸部32tの先端面までの長手方向Aの長さL2は、先端チップ11Cの先端部14Bの先端面から被係止部32の凸部32tの先端面までの長手方向Aの長さL1より短い(L3<L2<L1)。そのため、第一位置P1にあるロッド2Fのフランジ21は、内部空間16Cに収容される。ロッド2Fの先端が第一位置P1のときも第二位置P2のときも、係止部31は、側孔13よりも基端側A2に位置する。そのため、係止部31は貫通孔12Bおよび側孔13からの吸引を妨げない。
【0097】
図32は、別の態様のロッド2Fを含む処置具100Fの先端部の断面図である。
図32に示すロッド2Fにおいて、長さL3は長さL1と略等しい(L3=L1)。長さL2は長さL1より長い。ロッド2Fの先端が第一位置P1のときも第二位置P2のときも、係止部31は、側孔13よりも基端側A2に位置する。そのため、係止部31は貫通孔12Bおよび側孔13からの吸引を妨げない。
【0098】
図33は、別の態様のロッド2Fを含む処置具100Fの先端部の断面図である。
図33に示すロッド2Fにおいて、長さL3は長さL1より長い(L1<L3)。長さL2は長さL1より長い。ロッド2Fの先端が第一位置P1のときも第二位置P2のときも、係止部31は、側孔13よりも基端側A2に位置する。そのため、係止部31は貫通孔12Bおよび側孔13からの吸引を妨げない。
【0099】
以上、本発明の第六実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0100】
(第七実施形態)
本発明の第七実施形態に係る処置具100Gについて、
図34から
図38を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0101】
図34は、処置具100Gの先端部の斜視図である。
処置具(内視鏡用処置具)100Gは、局注と切開と吸引と凝固止血とを実施できるマルチファンクションタイプの処置具である。処置具100Gは、シース1Gと、ロッド2と、ストッパ3と、操作ワイヤ4と、操作部5と、を備える。
【0102】
図35および
図36は、先端チップ11Gを透過表示させた処置具100Gの先端部の斜視図である。シース1Gは、先端1aから基端1bまで延びる長尺な管状部材である。シース1Gは、内視鏡200のチャンネル206に挿入可能な外径を有し、チャンネル206を進退可能である。シース1Gは、長手方向Aに延びるチューブ10と、チューブ10の先端に設けられた先端チップ11Gと、を有する。なお、シース1Gは、チューブ10と先端チップ11Gとが一体成形されて形成されていてもよい。
【0103】
図37は、ロッド2の先端が第一位置P1にある処置具100Gの先端部の断面図である。
先端チップ11Gは、略円筒状に形成されている。先端チップ11Gは、先端部14Gと、円筒部15Gと、有する。先端部14Gは、円筒部15Gの先端に設けられた略円板状の部材である。円筒部15Gは、シース1Gの長手方向Aの中心軸O1を中心軸とした円筒形状に形成されている。先端部14Gと円筒部15Gとにより囲まれた空間を先端チップ11Gの内部空間16Gと定義する。先端チップ11Gは、内部空間16Gにロッド2の少なくとも一部を収容できる。先端チップ11Gの内部空間16Gは、チューブ10の内部空間(管路、ルーメン)19と連通している。
【0104】
先端部14Gには、1個の貫通孔12Gが形成されている。貫通孔12Gは、先端チップ11Gの先端部14Gに設けられ、長手方向Aに貫通する孔である。ロッド2は、貫通孔12Gを挿通する。貫通孔12Gは、シース1の長手方向Aの中心軸O1と重なる位置に設けられている。
【0105】
円筒部15Gには、3個の側孔(通路、吸収孔)13Gが形成されている。側孔(通路、吸収孔)13Gは、先端チップ11Gの円筒部15Gに設けられた長手方向Aに対して垂直な径方向Rに貫通する孔である。側孔13Gは、先端部14Gまで延びて形成されており、先端部14Gにおいて長手方向Aにも貫通する孔である。すなわち、側孔13Gは、先端チップ11Gの長手方向Aに延びるスリットであり、スリットの先端は先端チップ11Gの先端に一致する。3個の側孔13Gは、周方向Cに沿って均等に設けられている。
【0106】
図38は、ロッド2が第二位置P2にある処置具100Gの先端部の断面図である。
ロッド2は、長手方向Aに沿ってシース1Gの先端チップ11Gの貫通孔12Gを挿通しており、貫通孔12Gから先端側A1に突出可能である。ロッド2の長手方向Aにおける中心軸O2は、シース1の長手方向Aにおける中心軸O1と略一致している。ロッド2の先端が第二位置P2にあるとき、係止部31は側孔13Gから露出する。
【0107】
本実施形態に係る処置具100Gによれば、送水と吸引とを好適に実施できる。先端チップ11Gは、第一実施形態の側孔13よりも開口面積が大きい側孔13Gが吸引口として開口しているため、生体組織に先端チップ11Gの先端を押し付けた状態で血液や洗浄のための液体を吸引する際に生体組織を吸い込んで吸引口が塞がれてしまうことを防げる。
【0108】
以上、本発明の第七実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0109】
(変形例)
上記実施形態において、先端チップ11Gには3個の側孔13Gが形成されている。
図39に示すように、3個の側孔13Gが周方向Cに沿って均等に設けられている。しかしながら、先端チップ11Gに形成される側孔13Gの数や態様はこれに限定されない。
図40、および
図41は、側孔13Gの変形例を示す先端チップ11Gの正面図である。
図40に示すように、2個の側孔13Gが中心軸O1を挟んで両側に設けられていてもよい。
図41に示すように、4個の側孔13Gが周方向Cに沿って均等に設けられていてもよい。
【0110】
(第八実施形態)
本発明の第八実施形態に係る処置具100Hについて、
図42から
図46を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0111】
図42は、処置具100Hの先端部の斜視図である。
処置具(内視鏡用処置具)100Hは、局注と切開と吸引と凝固止血とを実施できるマルチファンクションタイプの処置具である。処置具100Hは、シース1Hと、ロッド2と、操作ワイヤ4と、操作部5と、吸引カバー6と、を備える。
【0112】
図43は、先端チップ11H等を透過表示させた処置具100Hの先端部の斜視図である。シース1Hは、先端1aから基端1bまで延びる長尺な管状部材である。シース1Hは、内視鏡200のチャンネル206に挿入可能な外径を有し、チャンネル206を進退可能である。シース1Hは、長手方向Aに延びるチューブ10と、チューブ10の先端に設けられた先端チップ11Hと、を有する。なお、シース1Hは、チューブ10と先端チップ11Hとが一体成形されて形成されていてもよい。
【0113】
図44は、処置具100Hの先端部の断面図である。
先端チップ11Hは、略円柱状に形成されている。先端チップ11Hは、長手方向Aに貫通する貫通孔12Eを有する。先端チップ11Hは、貫通孔12Eにロッド2の少なくとも一部を収容できる。先端チップ11Hの貫通孔12Eは、チューブ10の内部空間(管路、ルーメン)19と連通している。
【0114】
先端チップ11Hは、第五実施形態の先端チップ11Eと異なり、側孔(通路、吸収孔)13Eを有していない。
【0115】
図45は、ロッド2が突出した処置具100Hの先端部の断面図である。
ロッド2は、長手方向Aに沿ってシース1Hの先端チップ11Hの貫通孔12Eを挿通して進退可能である。ロッド2の長手方向Aにおける中心軸O2は、シース1Hの長手方向Aにおける中心軸O1と略一致する。
【0116】
図46は、先端チップ11Hおよび吸引カバー6の正面図である。
吸引カバー6は、キャップ61と、3個の吸引チューブ62と、を有する。キャップ61は、円環状に形成されており、先端チップ11Hの外周面に取り付けられている。3個の吸引チューブ62は、キャップ61に連結されたチューブであり、キャップ61の先端側A1に設けられた先端開口63に連通している。先端開口63は、周方向Cに沿って均等に設けられている。先端開口63は、先端チップ11Hよりも先端側A1に配置されている。吸引チューブ62は、操作部5まで延びており、図示しない吸引ポンプに接続可能である。
【0117】
本実施形態に係る処置具100Hによれば、送水と吸引とを好適に実施できる。シース1Hが吸引機能を有しない場合であっても、吸引カバー6を取り付けることにより、送水と吸引とを好適に実施できる。
【0118】
以上、本発明の第八実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示す構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【符号の説明】
【0119】
300 内視鏡処置システム
200 内視鏡
202 挿入部
203 撮像部
204 湾曲部
205 軟性部
206 チャンネル
100,100B,100C,100D,100E,100F,100G,100H 処置具(内視鏡用処置具)
1,1B,1C,1E,1G,1H シース
10 チューブ
10a 拡径部
11,11B,11C,11E,11G,11H 先端チップ
11p 管路
11R 先端チップ
11s 内周面
11t 外周面
12,12B,12E,12G 貫通孔
13,13E,13G,13P,13Q,13R,13S 側孔(通路、吸収孔)
14,14B,14E,14G 先端部
15,15B,15G 円筒部
16,16B,16C,16G 内部空間
19 内部空間(管路、ルーメン)
2,2F ロッド(電極)
20,20F ロッド本体
21 フランジ(先端拡径部)
21b 基端面
22 第一送水管路
22a 先端開口
3,3D,3F ストッパ(係止部材)
31,31B,31D 係止部
31h 貫通孔
31s 摺動面(第一外周面)
31t 第二外周面
32 被係止部(第一被係止部)
32t 凸部
33,33F 第二被係止部
4 操作ワイヤ
42 第二送水管路
5 操作部
51 操作部本体
52 スライダ
53 給電コネクタ
54 液体供給口
55 吸引接続口
6 吸引カバー
61 キャップ
62 吸引チューブ
63 先端開口