(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086614
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】可撓性調整手段を備えた時計の共振器のヒゲゼンマイ及び関連材料
(51)【国際特許分類】
G04B 18/02 20060101AFI20240620BHJP
G04B 17/06 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G04B18/02 Z
G04B17/06
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023202907
(22)【出願日】2023-11-30
(31)【優先権主張番号】22213757.2
(32)【優先日】2022-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】クーザン、 ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ディ ドメニコ、 ジャンニ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ヒゲゼンマイ、特に時計の共振器に用いるものを提供する。
【解決手段】ヒゲゼンマイ1は、それ自体がいくつかのコイルに巻かれた可撓性ストリップ2を含み、ストリップは所定の可撓性を有し、ヒゲゼンマイはその可撓性の調整手段を含み、調整手段はストリップと直接に接触する弾性要素5を含み、弾性要素は好ましくはストリップの可撓性よりも小さい可撓性を有し、調整手段は弾性要素に可変の力又はトルクを加えるプレストレス手段6を含み、弾性要素の可撓性を変化させ、弾性要素及びストリップとは分離し、組立手段によって互いに組み立てられている。また、本発明は、そのようなヒゲゼンマイを含む時計の共振器にも関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒゲゼンマイであって、特に時計の共振器に用い、前記ヒゲゼンマイ(25)は、それ自体がいくつかのコイルに巻かれた可撓性のストリップ(2)を含み、前記ストリップ(2)は所定の可撓性を有し、前記ヒゲゼンマイ(25)はその可撓性の調整手段を含み、前記調整手段は前記ストリップ(2)と直列に配置された弾性要素(5)を含み、前記弾性要素(5)は前記ストリップ(2)の一つの端部(4、9)を固定された支持体(17)に接続し、前記ストリップ(2)にさらなる可撓性を加えるようにし、前記弾性要素(5)は好ましくは前記ストリップ(2)の可撓性よりも小さい可撓性を有し、前記調整手段はプレストレス手段(6)を含み、好ましくは前記ストリップ(2)の前記端部(4、9)の位置を実質的に変更することなく前記弾性要素(5)に可変の力又はトルクを加え、前記弾性要素(5)の可撓性のみを変化させ、前記弾性要素(5)及び前記ストリップ(2)は分離し、組立手段によって互いに組立てられていることを特徴とするヒゲゼンマイ。
【請求項2】
前記弾性要素(5)は、打ち込み又はねじ込みなどの、第1の材料に生じる応力を発生させる組立工程に耐える前記第1の材料から形成されたことを特徴とする請求項1に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項3】
前記プレストレス手段(6)は、前記第1の材料から形成されたことを特徴とする請求項2に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項4】
前記第1の材料は、ニッケル銀、CuBe2、鋼若しくはニッケルベースの合金(Ni、NiP、NiW)、Niベース、Coベース若しくはCuNiSnベースの合金などのLIGA工程に用いる材料又はマレージング鋼のような金属又は合金から選択されたことを特徴とする請求項2に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項5】
前記ストリップ(2)は、好ましくは全体が、例えばシリコン又は酸化シリコンを含む前記第1の材料とは異なる第2の材料から形成されたことを特徴とする請求項2に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項6】
前記第1要素(2)及び前記弾性要素(5)は、組立手段としての接着によって組み立てられたことを特徴とする請求項1に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項7】
前記弾性要素(5)は、前記ストリップ(2)の外側の端部(4)に配置されたことを特徴とする請求項1に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項8】
前記弾性要素(5)は、少なくとも一つの可撓性ブレード、好ましくは2つの非交差ブレード(11、12)と、前記ストリップ(2)が接続された可動剛性部(18)とを有する可撓性ガイドを含むことを特徴とする請求項1に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項9】
前記トルク又は力は、前記プレストレス手段(6)によって連続的に調整可能であることを特徴とする請求項1に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項10】
前記プレストレス手段(6)は、前記弾性要素(5)に接続された二次可撓性ブレード(19)を含むことを特徴とする請求項1に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項11】
前記プレストレス手段(6)は、可変の力又はトルクを調整するレバー(81、89、106、124)を含むことを特徴とする請求項1に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項12】
請求項1に記載のヒゲゼンマイ(25)を含むことを特徴とする、特に振動錘を含む時計のムーブメントに用いる回転共振器(1)。
【請求項13】
プレート及び請求項12に記載の共振器を含み、前記弾性要素(5)は、例えば打ち込み又はねじ止めによって、少なくとも一つのヒゲゼンマイスタッド(35)で組み立てられたことを特徴とする時計のムーブメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計の共振器のヒゲゼンマイに関し、ヒゲゼンマイの可撓性を調整する手段を備えたヒゲゼンマイに関する。また、本発明は、そのようなヒゲゼンマイを備えた時計の共振器にも関する。
【背景技術】
【0002】
最新の機械式の携帯用の小型の時計の多くは、バネ式テンプ及びスイスパレット式脱進機を備えている。バネ式テンプが時計の時間基準を形成する。それは、共振器又は調速機とも称される。
【0003】
次に、脱進機は二つの主な機能を果たしている。
・共振器の往復運動を維持する。
・これらの往復運動を数える。
【0004】
機械式共振器を形成するには、慣性要素、ガイド及び弾性復帰要素が必要である。従来、ヒゲゼンマイは、テンプによって形成された慣性要素の弾性復帰要素として機能する。このテンプは、ルビー製のすべり軸受内で回転する軸によって回転可能に案内されている。
【0005】
一般に、時計の精度を向上させるためには、バネ式テンプを調整できなければならない。この目的のために、ヒゲゼンマイの有効長を変更するための緩急針など、ヒゲゼンマイの可撓性を調整するための手段が使用される。したがって、その可撓性は、時計の動作精度を調整するために変更される。しかしながら、従来の動作を調整する緩急針の効果は限定的であり、1日数秒、数十秒といった精度の高い調整には必ずしも有効とはいえない。
【0006】
動作をより細かく調整するために、テンプの後段に配置された一つ以上のネジを備える調整手段がある。ネジに作用することにより、テンプの慣性が変更され、その結果、テンプの動作が変化する。
【0007】
しかしながら、この調整方法は実施するのが容易ではなく、依然として発振器の動作の設定を十分に細かく調整することができない。
【0008】
調整の精度を高めるために、先の出願(欧州特許第22177059.7号)では、ヒゲゼンマイの可撓性の調整手段を追加することが提案され、調整手段はコイル状の可撓性ストリップと直列に配置された弾性要素を備えている。弾性要素には、その可撓性を変更するように可変のプレストレスが印加されているため、調速機の動作を調整できるようになる。
【0009】
プレストレス手段に作用することにより、弾性要素に加えられる力又はトルクが変更され、その結果、弾性要素及びストリップを含むアセンブリの可撓性が変更される。実際、ストリップと直列に配置された弾性要素は、ストリップの可撓性と組み合わされて、ストリップにさらなる可撓性を加える。したがって、プレストレス手段が弾性要素に可変の力又はトルクを加えると、プレストレス手段は、ストリップの可撓性を変えることなく、弾性要素の可撓性、ひいてはストリップを含むアセンブリの可撓性を変更し、その端部は、弾性要素に加えられる可変の力又はトルクに関係なく、実質的に同じ位置を保持する。
【0010】
このヒゲゼンマイは、特に一体で提供され、その製造を容易にするために同じ材料、例えばシリコンから作られる。
【0011】
ムーブメントにおける一体型ヒゲゼンマイの組立てに関しては、一般に、ヒゲゼンマイの特定の部分をプレート又はプレートコック、特に一つ又は複数のヒゲゼンマイスタッドに接着することが行われる。特に、弾性要素にプレストレスを生成できるように、弾性要素は固定支持体を介してプレートに接続される必要がある。
【0012】
しかしながら、長期的には、そのようなプレストレスは、固定支持体をヒゲゼンマイスタッドに接続する接着剤の歪みを誘発する傾向があり、その結果、調整手段の調整不良や、さらにヒゲゼンマイスタッドからの固定サポートの脱落を引き起こすことがある。
【0013】
他の組立方法、例えば打ち込み又はねじ込みは、より壊れやすく、したがって脆い材料であるシリコンなどの特定の材料では使用できない。実際、打ち込みやねじ込みによって材料に生じる応力により、そのような材料を使用した弾性要素が弱くなるか、直接に破損することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、効果的かつ正確な調整手段を備え、特に時計のムーブメントのプレートに長期間にわたって組み付けることができるように構成されたヒゲゼンマイを提供することによって、前述の欠点のすべて又は一部を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的を達成するために、本発明は、時計の共振器に用いるヒゲゼンマイに関し、ヒゲゼンマイは、それ自体がいくつかのコイルに巻かれた可撓性ストリップを含み、ストリップは所定の可撓性を有し、ヒゲゼンマイはその可撓性の調整手段を含み、調整手段はストリップと直列に配置された弾性要素を含み、弾性要素はストリップの一つの端部を固定支持体に接続し、ストリップに追加の可撓性を加え、弾性要素は好ましくはストリップの可撓性よりも小さい可撓性を有し、調整手段は弾性要素に可変の力又はトルクを加えるプレストレス手段を含み、好ましくはストリップの端部の位置を実質的に変更することなく、弾性要素の可撓性のみを変化させる。
【0016】
本発明は、弾性要素及びストリップが分離されて、組立手段によって互いに組立てられた点で注目に値する。
【0017】
本発明によると、ストリップ及び弾性要素を互いに独立して製造し、組立手段によってそれらを接続することが可能である。したがって、可撓性ストリップ及び弾性要素に異なる材料を選択することが可能である。例えば、弾性要素としてより強力な第1の材料を選択することができ、接着剤よりも耐久性の高い組立手段を使用できるようにする。
【0018】
したがって、打ち込み又はねじ込みなどの組立方法を使用して、弾性要素をヒゲゼンマイスタッドに組み立てることが可能であり、損傷や破損の危険を伴うことはない。さらに、耐久性の低いアセンブリを作製する接着剤の使用が避けられる。
【0019】
一方、シリコン又は酸化シリコンなどの、より耐久性の低い材料をヒゲゼンマイのストリップに使用することができ、この材料は他の有利な特性、特に非磁性特性を有する。
【0020】
この場合、ストリップと弾性要素との間の組立接合部はプレストレス手段にさらされないため、接着剤を使用して可撓性ストリップ及び弾性要素を組み立てることができる。
【0021】
本発明の特定の実施形態によれば、弾性要素は、打ち込み又はねじ止めなど、第1の材料内に誘発される応力を生成するアセンブリ手段を支持する第1の材料から形成される。
【0022】
本発明の特定の実施形態によれば、プレストレス手段は第1の材料から形成される。
【0023】
本発明の特定の実施形態によれば、第1の材料は、ニッケル銀、CuBe2、鋼若しくはニッケルベースの合金(Ni、NiP、NiW)などの金属又は金属合金、若しくはNiベースの合金、CuNiSnベースの合金、又はマレージング鋼などのLIGA工程のための材料から選択される。
【0024】
本発明の特定の実施形態によれば、ストリップは、第1の材料とは異なる第2の材料、例えばシリコン又は酸化シリコンを、好ましくは全体に含む材料から形成される。
【0025】
本発明の特定の実施形態によれば、第2の材料は、Nivarox CT(登録商標)など又はNivachron(登録商標)などのものである。
【0026】
本発明の特定の実施形態によれば、ストリップ及び弾性要素は、組立手段として接着によって組み立てられる。
【0027】
本発明の特定の実施形態によれば、弾性要素はストリップの外側の端部に配置される。
【0028】
本発明の特定の実施形態によれば、弾性要素は、少なくとも一つの可撓性ブレード、好ましくは2つの非交差ブレードと、ストリップが接続される可動剛性部とを備えた可撓性ガイドを含む。
【0029】
本発明の特定の実施形態によれば、トルク又は力はプレストレス手段によって連続的に調整可能である。
【0030】
本発明の特定の実施形態によれば、プレストレス手段は、弾性要素に接続された二次可撓性ブレードを備える。
【0031】
本発明の特定の実施形態によれば、プレストレス手段は、可変の力又はトルクを調整するレバーを備える。
【0032】
本発明の特定の実施形態によれば、弾性要素はストリップと直列に配置される。
【0033】
本発明の特定の実施形態によれば、ヒゲゼンマイは実質的に一つの平面内に延在する。
【0034】
本発明の特定の実施形態によれば、ヒゲゼンマイが時計ムーブメントのプレートに取り付けられているときに、調整手段を作動させることができる。
【0035】
また、本発明は、特に振動錘やヒゲゼンマイを含む時計のムーブメントに用いる回転共振器にも関する。
【0036】
本発明の特定の実施形態によれば、弾性要素は、例えば打ち込み又はねじ込みによって、少なくとも一つのヒゲゼンマイスタッドを用いて組み立てられる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本発明の目的、利点及び特徴は、添付の図面を参照し、非限定的な例としてのみ示されたいくつかの実施形態を読めば明らかになるであろう。
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態によるヒゲゼンマイを備える調速機の一部の斜視図を概略的に示し、調速機は時計のムーブメントに配置されている。
【
図2】
図2は、
図1の調速機のヒゲゼンマイの上面図を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、時計のムーブメント10内に配置された共振器又は調速機1の一実施形態の概略図を示す。時計ムーブメント10は、プレート21、慣性ブロック、振動させるように構成された慣性ブロックの弾性復帰要素、及び天秤コック22を含む。
【0039】
調速機1はさらに、慣性ブロックとしての環状テンプ23、テンプシャフト24、及び弾性復帰要素としてのヒゲゼンマイ25を備える。
【0040】
プレート21には、調速機1を収容するハウジング26が設けられ、テンプ23、ヒゲゼンマイ25、テンプコック22が下から上に重ねて配置されている。バランスシャフト24は、ハウジング26の中心に配置され、テンプ22、ヒゲゼンマイ25及びテンプコック22の中心を貫通している。バランスシャフト24は、バランスシャフトの両端に配置された2つの耐衝撃軸受28によって保持されている。第1の軸受28はハウジング26の底部に配置され、第2の軸受28はハウジング26の上部に配置され、ハウジング26の上部をハウジング26の中心軸を介して貫通する天秤コック22によって保持されている。バランスコック22には、第2軸受28が保持される貫通孔が設けられている。
【0041】
図1及び
図2に示されているように、ヒゲゼンマイ25は、好ましくは実質的に一つの平面内に延在する。ヒゲゼンマイ25は、それ自体がいくつかのコイルに巻かれた可撓性ストリップ2を含み、ストリップ2は所定の可撓性を有している。ストリップ2の内側の端部9は、支持体3と一体であるか、又は支持体3と組み立てられている。支持体3は、実質的に三角形の形状を有し、テンプ23のシャフトの周りにねじ込まれている。
【0042】
ヒゲゼンマイ25は、その可撓性を調整するための手段をさらに含んでいる。例えば、調整手段は、特に、調速機が時計ムーブメントのプレートに取り付けられているときに、使用者によって作動させることができる。
【0043】
調整手段は、ストリップ2と直列に配置された弾性要素5を含み、弾性要素5は、前記ストリップ2の一つの端部4、9を固定支持体17に接続し、ストリップ2の端部4、9の一つに固定されている。弾性要素5は、ストリップ2の外側の端部4に固定されている。ストリップ2の内側の端部9は、共振器の振動質量の支持体3と組み立てられている。弾性要素5は、ストリップ2とは異なる要素である。固定支持体17は、プレート21に対して固定されている。
【0044】
弾性要素5は、ストリップ2の可撓性にさらなる可撓性を加える。好ましくは、弾性要素5は、ストリップ2の可撓性よりも低い可撓性を有する。弾性要素5は、ここでは、ストリップ2と直列に配置される。
【0045】
ヒゲゼンマイ25の弾性要素5は、少なくとも一つの可撓性ブレードを備える可撓性ブレードガイドを含んでいる。ここでは、ガイドは、交差していない2つの可撓性ブレード11、12及び剛性部18を含んでいる。可撓性ブレード11、12は、一方では横方向に固定支持体17に結合され、他方ではそれらを移動させる剛性部18に結合され、互いに接近して動く。したがって、好ましくは、可撓性ブレード11、12は、剛性部18から固定支持体17に向かって動く。ストリップ2の外側の端部4は、剛性部18に結合されている。固定支持体17は、ムーブメント10に対して静止している。固定支持体17はL字形であり、L字の第1アーム46は可撓性ブレード11、12とのリンクとして機能し、L字の第2アーム47は交差していないストリップガイドの反対側に向けられ、時計ムーブメントと組み合わせることができる。
【0046】
ヒゲゼンマイ25の調整手段は、弾性要素5に可変の力又はトルクを加えるプレストレス手段6をさらに含んでいる。このようにして、ヒゲゼンマイの可撓性を調整することができる。トルク又は力は、プレストレス手段6によって連続的に調整可能である。言い換えれば、トルク又は力は、孤立した値に制限されない。これにより、弾性要素5の可撓性を高精度に調整することができる。
【0047】
プレストレス手段6は、交差していないストリップガイドに沿って剛性部分18の反対側に配置された二次可撓性ストリップ19を含む。二次可撓性ストリップ19は、外側の端部4においてストリップ2の接線方向に配置される。
【0048】
二次可撓性ストリップ19の他端は、ストリップ2を部分的に迂回する湾曲レバー14に接続されている。レバー14は、二次可撓性ブレード19に加えて、ストリップ2に接続された半剛体構造27にも接続されている。半剛体構造27は、レバー14が力又はトルクによって作動されると部分的に歪む。
【0049】
力又はトルクは、レバー14の自由端32に加えられる。したがって、プレストレス手段6のレバー14は、可変の力又はトルクを、二次可撓性ストリップ19及び半剛性構造27を介して弾性要素5に伝達し、ヒゲゼンマイ25の可撓性を変更する。
【0050】
本発明によれば、弾性要素5とストリップ2は分離され、組立手段によって互いに組立てられている。組立手段は、例えば接着剤である。
【0051】
好ましくは、弾性要素5は、打ち込み又はねじ込みなど、第1の材料内に誘発される応力を生成する組立プロセスに耐える第1の材料から形成される。
【0052】
打ち込みは、第1の部品が第2の部品のハウジングに少なくとも部分的に圧入され、ハウジング内の摩擦によって保持されるプロセスである。言い換えれば、ハウジングは最初のピースの一部をクランプする。
【0053】
ねじ止めは、ねじのおかげで2つの部品が組み立てられた状態に保たれる工程であり、ねじは第1及び第2の部品を部分的に貫通してそれらを一緒に保持する。
【0054】
第1の材料は、好ましくは、ニッケル銀、CuBe2、鋼、ニッケル若しくはニッケルベースの合金、例えばニッケルリンNiP又はニッケルタングステンNiWなどの金属又は金属合金、若しくはNiベース、Coベース、CuNiSnベースの合金などLIGA工程に用いる材料、又はマレージング鋼から選択される。コバルトベースのバネ合金の例としては、phynox(登録商標)、マレージング鋼の例としてDurnico(登録商標)、CuNiSn合金の例としてToughMet(登録商標)がある。
【0055】
そのような材料は、打ち込みやねじ込みなどの組み立てプロセスによって引き起こされる応力に耐えることができる。
【0056】
好ましくは、可撓性ストリップ2は、第1の材料とは異なる第2の材料から形成される。
【0057】
好ましくは、ストリップ2は一体型であり、場合によっては同じ材料から形成される。例えば、第2の材料は、大部分がシリコン又はシリコン酸化物を含み、好ましくは全体がシリコンを含む。したがって、可撓性ストリップ2はシリコンの非磁性特性を有する。あるいは、第2の材料は、時計製造の当業者には周知のNivarox CT(登録商標)又はNivachron(登録商標)である。
【0058】
特定の例では、プレストレス手段6も第1の材料から形成される。したがって、プレストレス手段6及び弾性要素5はより耐久性があり、打ち込み又はねじ込みなどのプロセスで組み立てることができる。
【0059】
これらの組立手段は、プレストレス手段6によって生成される力又はトルクにさらによく耐える。
【0060】
同じことが、第1のヒゲゼンマイスタッド34と協働するレバー14の自由端15にも当てはまる。第1のヒゲゼンマイスタッドは、自由端をその中に押し込むことを可能にするハウジングを含んでいる。
【0061】
ストリップ2及び弾性要素5は、接合部13において接着によって互いに組み立てられている。ストリップ2の外側の端部4は、接合部13において弾性要素5の可撓性ストリップガイドの剛性部18に接着されている。剛性部18は、例えばハウジングを含み、接着により保持されているストリップ2の外側の端部4が挿入されている。
【0062】
第2の材料、例えばシリコン又は酸化シリコンは、第1の材料よりも脆いため、外側の端部4をハウジング内に押し込むことができない。
【0063】
この状況では、接着で十分である。それは、プレストレス手段6によって生成される力又はトルクは、弾性要素5にのみ加えられ、及ぼされることはないたまである。
【0064】
弾性要素5及びストリップ2は、2つの材料にしたがい異なる工程で製造される。
【0065】
弾性要素5及び/又はプレストレス手段6は、例えばワイヤ侵食工程、レーザ加工工程若しくはレーザ-ウォータージェット結合、又はLIGAタイプのリソグラフィ工程によって製造される。
【0066】
第2の材料で形成されたストリップ2は、例えば、特にシリコンヒゲゼンマイを得るために、DRIEタイプの深反応性イオンエッチング工程によって製造される。
【0067】
同一の材料、例えばシリコンから作られたヒゲゼンマイの変形例では、工程は、DRIEタイプの深層反応性イオンエッチング工程であることが好ましい。
【0068】
ヒゲゼンマイ25、特に弾性要素5にかかる可変の力又はトルクを変更できるようにするように、第1のヒゲゼンマイスタッド34及び第2のヒゲゼンマイスタッド35が示され、それらは例えばバランスシャフト24に対して実質的に対称に配置されている。
【0069】
第1のヒゲゼンマイスタッド34はレバー14の自由端15と協働し、第2のヒゲゼンマイスタッド35は固定支持体17の第2アーム47と協働する。
【0070】
第2のヒゲゼンマイスタッド35は、第2アーム47が挿入され、摩擦又は押圧によって保持されるハウジングを含んでいる。
【0071】
あるいは、第2のアーム47は、図示されていないネジによって第2のヒゲゼンマイスタッド35に保持されている。
【0072】
2つのヒゲゼンマイスタッド34、35は、プレストレス手段6及び弾性要素5のいずれかの側に配置されている。さらに、2つのヒゲゼンマイスタッド34、35は、レバー14及び固定部材にしっかりと接続されている。換言すれば、第1のヒゲゼンマイスタッド34と第2のヒゲゼンマイスタッド35は、それぞれレバー14及び固定支持体17に固定されている。ヒゲゼンマイスタッドとヒゲゼンマイ25の組み立ては、例えば、接着、ろう付け、はんだ付け、金属ガラスの歪み、又は機械的固定によって実施される。
【0073】
第2のヒゲゼンマイスタッド35に対する第1のヒゲゼンマイスタッド34の動きは、弾性要素5の可撓性を修正するが、それは、その動きがプレストレス手段6のレバー14に多かれ少なかれ実質的な力又はトルクを及ぼし、可撓性要素5の可撓性が変化し、したがってヒゲゼンマイ25全体の可撓性が変化するからである。
【0074】
図示されていないが、本発明の一部ではない調整装置により、第1のヒゲゼンマイスタッド34を第2のヒゲゼンマイスタッド35に対して移動させて、弾性要素5へ加えられるトルク又は力を変更することが可能になる。
【0075】
いうまでもなく、本発明は、図面を参照して説明した実施形態に限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく変形例を考慮することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒゲゼンマイであって、特に時計の共振器に用い、前記ヒゲゼンマイ(25)は、それ自体がいくつかのコイルに巻かれた可撓性のストリップ(2)を含み、前記ストリップ(2)は所定の可撓性を有し、前記ヒゲゼンマイ(25)はその可撓性の調整手段を含み、前記調整手段は前記ストリップ(2)と直列に配置された弾性要素(5)を含み、前記弾性要素(5)は前記ストリップ(2)の一つの端部(4、9)を固定された支持体(17)に接続し、前記ストリップ(2)にさらなる可撓性を加えるようにし、前記弾性要素(5)は前記ストリップ(2)の可撓性よりも小さい可撓性を有し、前記調整手段はプレストレス手段(6)を含み、前記ストリップ(2)の前記端部(4、9)の位置を実質的に変更することなく前記弾性要素(5)に可変の力又はトルクを加え、前記弾性要素(5)の可撓性のみを変化させ、前記弾性要素(5)及び前記ストリップ(2)は分離し、組立手段によって互いに組立てられていることを特徴とするヒゲゼンマイ。
【請求項2】
前記弾性要素(5)は、打ち込み又はねじ込みなどの、第1の材料に生じる応力を発生させる組立工程に耐える前記第1の材料から形成されたことを特徴とする請求項1に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項3】
前記プレストレス手段(6)は、前記第1の材料から形成されたことを特徴とする請求項2に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項4】
前記第1の材料は、ニッケル銀、CuBe2、鋼若しくはNi、NiP及びNiWの少なくとも一つを含むニッケルベースの合金、Niベース、Coベース若しくはCuNiSnベースの合金を含むLIGA工程に用いる材料又はマレージング鋼を含む金属又は合金から選択されたことを特徴とする請求項2に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項5】
前記ストリップ(2)は、全体が、例えばシリコン又は酸化シリコンを含む前記第1の材料とは異なる第2の材料から形成されたことを特徴とする請求項2に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項6】
前記ストリップ(2)及び前記弾性要素(5)は、組立手段としての接着によって組み立てられたことを特徴とする請求項1に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項7】
前記弾性要素(5)は、前記ストリップ(2)の外側の端部(4)に配置されたことを特徴とする請求項1に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項8】
前記弾性要素(5)は、2つの非交差ブレード(11、12)を含む少なくとも一つの可撓性ブレードと、前記ストリップ(2)が接続された可動剛性部(18)とを有する可撓性ガイドを含むことを特徴とする請求項1に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項9】
前記トルク又は力は、前記プレストレス手段(6)によって連続的に調整可能であることを特徴とする請求項1に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項10】
前記プレストレス手段(6)は、前記弾性要素(5)に接続された二次可撓性ブレード(19)を含むことを特徴とする請求項1に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項11】
前記プレストレス手段(6)は、可変の力又はトルクを調整するレバー(81、89、106、124)を含むことを特徴とする請求項1に記載のヒゲゼンマイ。
【請求項12】
請求項1に記載のヒゲゼンマイ(25)を含むことを特徴とする、特に振動錘を含む時計のムーブメントに用いる回転共振器(1)。
【請求項13】
プレート及び請求項12に記載の共振器を含み、前記弾性要素(5)は、打ち込み又はねじ止めによって、少なくとも一つのヒゲゼンマイスタッド(35)で組み立てられたことを特徴とする時計のムーブメント。
【外国語明細書】