(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086624
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】線状センサ装置、繊維状センサ装置、剪断力の検出方法
(51)【国際特許分類】
G01L 1/16 20060101AFI20240620BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G01L1/16 G
G01L5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023205972
(22)【出願日】2023-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2022201144
(32)【優先日】2022-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】井上 淳
(72)【発明者】
【氏名】樋口 航生
(72)【発明者】
【氏名】平石 裕二
(72)【発明者】
【氏名】荻久保 洸太
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA18
2F051AB08
2F051BA07
(57)【要約】
【課題】3次元曲面に追従可能な柔軟性を有し、かつ加えられた応力を剪断力として検出可能な線状センサ装置、繊維状センサ装置、および剪断力の検出方法を提供する。
【解決手段】線状の内部導体、前記内部導体の外周面を被覆する圧電体、および前記圧電体の外周に配置された外部導体、を備えたセンサ部と、前記圧電体に加わる応力に応じて生じる出力信号を検出する制御部と、を有し、前記制御部は、前記出力信号から、前記センサ部に加わる剪断力を算出することを特徴とする。
。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状の内部導体、前記内部導体の外周面を被覆する圧電体、および前記圧電体の外周に配置された外部導体、を備えたセンサ部と、
前記圧電体に加わる応力に応じて生じる出力信号を検出する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記出力信号から、前記センサ部に加わる剪断力を算出することを特徴とする線状センサ装置。
【請求項2】
前記圧電体に加わる応力は、振動であることを特徴とする請求項1に記載の線状センサ装置。
【請求項3】
前記センサ部は、長手方向に垂直な断面が円形であり、直径が0.1mm以上、0.6mm以下の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の線状センサ装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記センサ部に加えた応力の値と、これにより前記センサ部に生じた剪断力の値との関係を実測値として機械学習を行ったアルゴリズムに基づいて、剪断力を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の線状センサ装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の線状センサ装置を有し、
前記センサ部を人体に接する繊維に縫い込んでセンサ繊維を形成し、前記制御部は、人体と前記センサ繊維との擦れ応力を剪断力として検出することを特徴とする繊維状センサ装置。
【請求項6】
前記センサ繊維は、靴下の形状に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の繊維状センサ装置。
【請求項7】
前記センサ繊維は、ベッドシーツの形状に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の繊維状センサ装置。
【請求項8】
請求項1または2に記載の線状センサ装置を用いた剪断力の検出方法であって、
前記センサ部に加えた応力の値と、これにより前記センサ部に生じた剪断力の値との関係の機械学習を行った機械学習データに基づいて、剪断力を算出することを特徴とする剪断力の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状センサ装置、繊維状センサ装置、および剪断力の検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、厚みが薄いシート状の圧力センサとして、柔軟性を有する導電体薄膜及び圧電体薄膜を積層したシート状の圧力センサが知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、非導電性の樹脂繊維を電極で挟んで配置した繊維状の圧力センサも知られている。更に、柔軟性を有するシート状の基材に、薄膜トランジスタアレイが形成されたトランジスタ層をシート状の電極で挟んで形成された有機圧電体から構成される感圧層を有するシート状の圧力センサなども知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来のシート状の圧力センサは、いずれも薄膜を積層した積層体であり、かつ、外面側を樹脂フィルムなどで挟んだ構成であるため、例えば、曲面に押し当てられただけで、その形状変化から圧力変化として検出されてしまうといった課題があった。
【0005】
また、上述したような従来のシート状の圧力センサは柔軟性が低いため、例えば、人体など3次元曲面から構成される被測定対象に対して適用することが困難であった。即ち、人体の形状に沿って応力などを計測できない部分が多く存在することで、人体の動き等で生じる圧力変化などを計測することが困難であった。
【0006】
更に、従来のシート状の圧力センサのうち、剪断力の計測が可能なものは厚みが厚く(例えば、1cm以上)、靴の中敷きなどに入れて計測すると、明らかに歩行動作の特性が変わってしまい、足部の正確な動きによる測定が困難であるといった課題があった。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みて提案されたものであり、3次元曲面に追従可能な柔軟性を有し、かつ加えられた応力を剪断力として検出可能な線状センサ装置、繊維状センサ装置、および剪断力の検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態の線状センサ装置、繊維状センサ装置、および剪断力の検出方法は、以下の手段を提案している。
(1)本発明の態様1の線状センサ装置は、線状の内部導体、前記内部導体の外周面を被覆する圧電体、および前記圧電体の外周に配置された外部導体、を備えたセンサ部と、前記圧電体に加わる応力に応じて生じる出力信号を検出する制御部と、を有し、前記制御部は、前記出力信号から、前記センサ部に加わる剪断力を算出することを特徴とする。
【0009】
(2)本発明の態様2は、態様1の線状センサ装置において、前記圧電体に加わる応力は、振動であることを特徴とする。
【0010】
(3)本発明の態様3は、態様1または2の線状センサ装置において、前記センサ部は、長手方向に垂直な断面が円形であり、直径が0.1mm以上、0.6mm以下の範囲であることを特徴とする。
【0011】
(4)本発明の態様4は、態様1から3のいずれか1つの線状センサ装置において、前記制御部は、前記センサ部に加えた応力の値と、これにより前記センサ部に生じた剪断力の値との関係を実測値として機械学習を行ったアルゴリズムに基づいて、剪断力を算出することを特徴とする。
【0012】
(5)本発明の態様5の繊維状センサ装置は、態様1から4のいずれか1つの線状センサ装置を有し、前記センサ部を人体に接する繊維に縫い込んでセンサ繊維を形成し、前記制御部は、人体と前記センサ繊維との擦れ応力を剪断力として検出することを特徴とする。
【0013】
(6)本発明の態様6は、態様5の繊維状センサ装置において、前記センサ繊維は、靴下の形状に形成されていることを特徴とする。
【0014】
(7)本発明の態様7は、態様5の繊維状センサ装置において、前記センサ繊維は、ベッドシーツの形状に形成されていることを特徴とする。
【0015】
(8)本発明の態様8の剪断力の検出方法は、態様1から4のいずれか1つの線状センサ装置を用いた剪断力の検出方法であって、前記センサ部に加えた応力の値と、これにより前記センサ部に生じた剪断力の値との関係の機械学習を行った機械学習データに基づいて、剪断力を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、3次元曲面に追従可能な柔軟性を有し、かつ加えられた応力を剪断力として検出可能な線状センサ装置、繊維状センサ装置、および剪断力の検出方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態の線状センサ装置を示す模式図である。
【
図2】本実施形態の線状センサ装置を備えた繊維状センサ装置を示す模式図である。
【
図3】本発明の線状センサ装置を用いた剪断力の検出システムを示す概略構成図である。
【
図4】振動データと剪断力の関係性を推定するモデルを構築するための実験装置を示す模式図である。
【
図5】剪断力と最大周波数との関係を示す分布グラフである。
【
図6】剪断方向の荷重1.95(N)における振動周波数のグラフである。
【
図7】剪断方向の荷重2.46(N)における振動周波数のグラフである。
【
図8】周波数(Hz)に対するパワースペクトル密度(dB/Hz)の例を示すグラフである。
【
図9】周波数(Hz)に対するパワースペクトル密度(dB/Hz)の例を示すグラフである。
【
図10】検証例2で用いた実験機器(剪断力計測システム)を示す模式構成図である。
【
図11】ピエゾワイヤセンサの取り付け状態を示す写真である。
【
図13】パワースペクトル密度の算出方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態の線状センサ装置、繊維状センサ装置、および剪断力の検出方法について説明する。なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0019】
本発明の一実施形態の線状センサ装置を備えた繊維状センサ装置の構成例を説明する。
図1は、本発明の一実施形態の線状センサ装置を示す模式図である。
本実施形態の線状センサ装置10は、線状のセンサ部11と、このセンサ部11に接続される制御部12とを有している。
【0020】
センサ部11は、例えば、長手方向に垂直な断面が円形を成す屈曲自在なワイヤー状(糸状)の部材であり、この断面における直径が、例えば、0.1mm以上、0.6mm程度になるように形成されている。これにより、センサ部11は、例えば、布の繊維を構成する織糸として、繊維に織り込むことができる。
【0021】
センサ部11は、中心に位置する線状の内部導体21と、この内部導体の外周面を被覆する圧電体22と、この圧電体22の外周に配置された外部導体23と、この外部導体23を覆い、外面に露出する外装体24と、を有している。
【0022】
内部導体21、および外部導体23は、導電体、例えば、銅、アルミニウム、銀、鉄などの金属の薄膜から形成されている。こうした内部導体21、および外部導体23は、センサ部11の柔軟性を損なわないような厚みに形成されている。こうした内部導体21、および外部導体23は、後述する制御部12に電気的に接続され、圧電体22の変形によって生じた電圧を出力信号として制御部12に入力させる。
【0023】
圧電体22は、屈曲自在な柔軟な圧電材料、例えば、細線状のポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ乳酸(PLA)を含む圧電繊維、圧電セラミックス粉末を分散させた細線状の圧電ゴムなどが挙げられる。
【0024】
外装体24は、柔軟性を有する絶縁材料、例えば、ゴムや繊維などの薄膜から構成されていればよい。
【0025】
こうした構成のセンサ部11は、線状の圧電体22が屈曲するなど応力が加わると、圧電効果によって、圧電体22を挟んで配された内部導体21、および外部導体23の間に電位差が生じ、この電位差(電圧)を出力信号として、制御部12に向けて出力される。これにより、センサ部11に加わった応力が検出される。
【0026】
図2は、本実施形態の線状センサ装置を備えた繊維状センサ装置を示す模式図である。
本実施形態の線状センサ装置10を備えた繊維状センサ装置30は、柔軟な糸状のセンサ部11を布の繊維を構成する織糸として、繊維に織り込むことによって構成される。
【0027】
例えば、糸状のセンサ部11を縦糸に、通常の糸を横糸にしてセンサ布(センサ繊維)31を形成する。こうしたセンサ布31は、例えば、靴下32の一部、例えば着用者の足裏に当たる底部に設ければよい。なお、靴下32の全体をセンサ布31によって形成することもできる。
【0028】
制御部12は、例えば、CPU、メモリ、インターフェースチップなどか基板に搭載されたワンボードマイコンなどから構成されていればよい。こうした制御部12を構成するメモリには、機械学習によって得られる、センサ部11からの出力信号と、剪断力との関係を示すデータが予め格納される。
【0029】
本実施形態では、制御部12に格納されるデータは、靴下32に形成されたセンサ布31に発生する振動と、センサ布31に加えられた剪断力との関係を、複数のパターンで学習させたデータである。
【0030】
具体的には、センサ布31を備えた靴下32を着用してから靴を履いた試験者(人体)は、歩行動作時に靴下32と靴との間に擦れが生じ、この擦れによって常に振動が発生している。こうした振動は人体と靴との間の圧力の大きさによって特性が変化する。
【0031】
この振動を靴下32に備えられたセンサ布31で計測し、周波数解析を行うことで得られる、最大周波数、中央周波数、平均周波数、パワースペクトル密度等の値から、剪断力や圧力を算出することができる。
【0032】
制御部12に記憶させる機械学習データは、予め試験者がセンサ布31を備えた靴下32を着用してから靴を履いて歩行し、得られた振動データを無線送信などによって解析装置、例えばパソコンなどに送る。
【0033】
パソコンは機械学習ソフトによって振動データの特徴的な波形を抽出する。そして、こうした特徴的な波形に基づいて、剪断力や圧力を算出して、1つの学習データを生成する。試験者は、歩行パターンを変えるなどして複数の振動データを送信し、パソコンはそれぞれの振動データの特徴的な波形に応じて、剪断力や圧力を算出していく。これにより、様々な振動をセンサ布31で検出した際に、それぞれの振動データの特徴的な波形に基づいて、対応する剪断力や圧力を示す機械学習データが得られる。
【0034】
このような機械学習データを備えた制御部12とセンサ布31とを備えた靴下32は、例えば、靴と靴下との擦れを最小限にする靴の選択に寄与する。これにより、例えば、糖尿病性神経障害による足の病変や、外反母趾の発生を抑制可能な靴を作成することができる。
【0035】
本実施形態のセンサ部11を備えたセンサ布(センサ繊維)31は、上述したように靴下32に用いる以外にも、例えば、ベッドシーツなどに適用することもできる。センサ布31を備えたベッドシーツは、寝ている状態の人体の寝返り等によるベッドシーツとの擦れにより生じる振動を検出する。そして、制御部12の機械学習データに基づいて、ベッドシーツのセンサ布31に加わる剪断力や圧力を検出することができる。これにより、病院などの医療用ベッドにおける褥瘡の早期発見、防止に寄与する。
【0036】
以上のように、本実施形態の線状センサ装置10やこれを備えた繊維状センサ装置30によれば、センサ部11に加わる応力に応じて生じる出力信号、例えば振動波形を制御部12で検出して、この制御部12において、予め記憶された振動波形と剪断力、圧力との対比を示す機械学習データを参照することにより、センサ部11に加わる応力、例えば擦れによる振動から、センサ部11に加わる剪断力や圧力を検出することができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態を説明したが、こうした各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。こうした各実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【実施例0038】
(検証例1)
本発明の具体的な実施例を説明する。
図3に、本発明の線状センサ装置を用いた剪断力の検出システムの概略構成図を示す。
本実施例では、まず、
図1に示す線状センサ装置10と、機械学習ソフトウエアがインストールされたパソコン(PC)とを用いて、機械学習を行う(機械学習モード)。機械学習には、サポートベクターマシン(SVM)を学習モデルとして用いた。
【0039】
最初に、線状センサ装置10のセンサ部11に、様々な振動が生じるような擦れ応力を複数回印加して、振動データを制御部12のメモリに記憶させる。そして、例えば無線送信(Bluetooth等)によって、収集した振動データをパソコンに送る。次に、パソコンの機械学習ソフトウエアを実行し、個々の振動データの特徴的な波形(特徴量)を抽出して剪断力を推定する。
【0040】
ここで、振動データから剪断力を推定する手法の例を説明する。
図4に示す実験装置を用いて、センサ部11の上に布を配置してモータでこの布を引っ張り、センサ部11に擦れ振動を生じさせる。なお、センサ部11の下には、靴と靴下との擦れを再現するために、靴内側素材(もしくはインソール)を配置している。
【0041】
剪断力と最大周波数との関係を示す分布グラフを
図5に示す。
図5によれば、剪断方向の荷重と、振動の最大周波数とは、一定の関係があることが分かる。
また、剪断方向の荷重1.95(N)における振動周波数のグラフを
図6に示す。
図6によれば、剪断力の上昇時に200Hz付近で低周波が発生している。
また、剪断方向の荷重2.46(N)における振動周波数のグラフを
図7に示す。
図7によれば、剪断力の上昇時に200Hz付近で低周波が発生している。
【0042】
このように、周波数0~1000Hzを20等分した20区間それぞれのパワースペクトル密度の合計(20種類)と、最大周波数(Hz)と、垂直に加えられている剪断荷重(N)の22種類の変数(説明変数)を機械学習させる。
SVMを用いた分類精度の結果を表1に示す。
【0043】
【0044】
以上のようにして得られた機械学習データを線状センサ装置10のセンサ部11に記憶(フィードバック)させる。そして、実際の使用時には、センサ部11に擦れ応力が加わり、特定の振動が生じると、センサ部11から制御部12に向けて、検出された振動データが出力される。
【0045】
制御部12は、予め入力されている機械学習データを参照して、振動データ波形の特徴的な部分を抽出し、剪断力を算出する。その後、制御部12は、無線送信などによって、パソコンに剪断力のデータを出力することができる。
【0046】
パソコンでは、得られた剪断力のデータに基づいて、例えば、剪断力の変化をグラフ化して表示することができる。こうした剪断力の変化のデータは、使用者の足の形状に応じた、靴擦れを生じさせない靴の設計、選択に用いることができる。
【0047】
次に、機械学習のより具体的な実施例を説明する。
[1]足と靴間の状況を再現した実験装置を用いて、実験で発生した剪断力の大きさを小、中、大の3種類に判別した。それぞれ、剪断力が小:0~3(N)、中:5~7(N)、大:9~12(N)とした。そして、各30試行、合計90試行を無作為に抽出し機械学習に使用した。この分類は用途に応じて閾値や数を変更できる。また、実験装置で発生した振動データを振動発生時から500データを切り出した。その後、大別して以下の4種類の機械学習を行った。
(1)切り出した波形の最大パワースペクトル密度周波数(Hz)、0~1000(Hz)を50(Hz)間隔で20区間に分割し、各区間のパワースペクトル密度の合計を算出した。また、10分割交差検証を行った。
(2)切り出した波形の最大パワースペクトル密度周波数(Hz)、0~1000(Hz)を50(Hz)間隔で20区間、25(Hz)間隔で40区間に分割し、各区間のパワースペクトル密度の合計、最大、最小、平均、最大と最小の差を算出した。また、10分割交差検証を行った。
(3)切り出した波形の最大パワースペクトル密度周波数(Hz)、0~1000(Hz)を50(Hz)間隔で20区間、25(Hz)間隔で40区間に分割し、各区間のパワースペクトル密度の平均を算出した。また、9と18分割交差検証を行った。
(4)切り出した波形の最大パワースペクトル密度周波数(Hz)、0~1000(Hz)を20(Hz)間隔で50区間に分割し、各区間のパワースペクトル密度の平均を算出した。また、18分割交差検証を行った。
【0048】
今回、機械学習にはMathWorks MATLAB R2022aのSVM(サポートベクターマシーン)を使用した。90試行分の剪断力のデータ及び、極細径ピエゾワイヤセンサで計測した振動を機械学習を行った際に用いた各特徴量を以下に示す。
(1)振動発生時の垂直方向の荷重(N)、最大パワースペクトル密度周波数(Hz)に加えて、0~1000(Hz)を50(Hz)毎に分割した各区間のパワースペクトル密度の合計値を特徴量としてデータセットとした。
(2)振動発生時の垂直方向の荷重(N)、最大パワースペクトル密度周波数(Hz)に加えて、0~1000(Hz)を50(Hz)毎、25(Hz)毎にそれぞれ分割をした。各区間のパワースペクトル密度の合計値のみの場合に加えて、合計値、最大値、最小値、平均値、最大値と最小値の差を特徴量としてデータセットとした。
(3)振動発生時の垂直方向の荷重(N)、0~1000(Hz)を50(Hz)毎の平均パワースペクトル密度の平均値、0~1000(Hz)を25(Hz)毎に分割した各区間のパワースペクトル密度の平均値を特徴量としてデータセットとした。また、これに加え、最大パワースペクトル密度周波数(Hz)をデータセットに追加したものも用いた。
(4)振動発生時の垂直方向の荷重(N)、最大パワースペクトル密度周波数に加え、0~1000(Hz)を20(Hz)毎に分割した各区間のパワースペクトル密度の平均値を特徴量としてデータセットとした。
【0049】
SVMは、線形SVM、2次SVM、3次SVM、細かいガウスSVM、中程度のガウスSVM、粗いガウスのSVMを行った。このときの分類精度を確認した。
【0050】
上述した周波数(Hz)に対するパワースペクトル密度(dB/Hz)の例を
図8、9にグラフで示す。
図8、9より剪断力方向の荷重の大きさが異なる際にパワースペクトル密度のグラフに変化がある事が確認できる。
【0051】
機械学習SVMを行った結果を以下に示す。上位5個、上位10個の選定には、特徴のランク付けアルゴリズムであるMRMR、Chi2、ReliefF、ANOVA、Kruskal Wallisの5つを使用し、最も分類精度の向上に貢献したものを採用した。また、採用した特徴のランク付けアルゴリズムと上位5つの特徴量を分類精度と共に示す。
【0052】
切り出した波形の最大パワースペクトル密度周波数(Hz)、0~1000(Hz)を50(Hz)間隔で20区間に分割し、各区間のパワースペクトル密度の合計を算出した。また、10分割交差検証を行った。こうした機械学習を行った結果を表2に表す。振動発生時の垂直方向の荷重(N]、最大パワースペクトル密度周波数(Hz)に加え20区間(50Hz毎)のパワースペクトル密度の合計値をデータセットした特徴量は22個である。
【0053】
【0054】
表2から荷重以外の特徴量において上位5個のみを特徴量とした分類精度は、荷重以外の説明関数(21個)を用いた結果と比較して5.6%高くなることが確認できた。また、上位5個と荷重を特徴量とした分類精度は、全ての説明関数(22個)を用いた結果と比較して5.5%高い81.1%となることが確認できた。これより、全ての特徴量ではなく特徴のランク付けアルゴリズムによる分類の寄与度が上位である特徴量のみを選択することで分類精度の向上が確認できた。また、振動だけではなく、荷重を計測し特徴量に加えることによって分類精度の向上も確認できた。
【0055】
[2]切り出した波形の最大パワースペクトル密度周波数(Hz)、0~1000(Hz)を50(Hz)間隔で20区間、25(Hz)間隔で40区間に分割をし、各区間のパワースペクトル密度の合計、最大、最小、平均、最大と最小の差を算出した。また、10分割交差検証を行った。こうした機械学習を行った結果を表3に表す。なお、特徴量と個数は以下に示す。表3において、上位5個、上位10個の分類精度の下に荷重を加えた分類精度を示す。
【0056】
(A)20区間(50Hz毎)合計値のみ
特徴量:荷重(N)、最大パワースペクトル密度周波数(Hz)、0~1000(Hz)を50(Hz)毎に20区間分割した各区間のパワースペクトル密度の合計値
特徴量の数:22個
(B)20区間(50Hz毎) 合計値、最大値、最小値、平均値、最大値と最小値の差
特徴量:荷重(N)、最大パワースペクトル密度周波数(Hz)、0~1000(Hz)を50(Hz)毎に20区間分割した各区間のパワースペクトル密度の合計値、最大値、最小値、平均値、最大値と最小値の差
特徴量の数:102個
(C)40区間(25Hz毎)合計値のみ
特徴量:荷重(N)、最大パワースペクトル密度周波数(Hz)、0~1000(Hz)を25(Hz)毎に40区間分割した各区間のパワースペクトル密度の合計値
特徴量の数:42個
(D)20区間(50Hz毎)合計値、最大値、最小値、平均値、最大値と最小値の差
特徴量:荷重(N)、最大パワースペクトル密度周波数(Hz)、0~1000(Hz)を25(Hz)毎に40区間分割した各区間のパワースペクトル密度の合計値、最大値、最小値、平均値、最大値と最小値の差
特徴量の数:202個
【0057】
【0058】
表3から荷重以外の特徴量を使用した中で(C)の条件で上位5個の特徴量を用いた分類精度が最も高い71.1%であった。それに対して、荷重の特徴量を加えた場合、(D)の条件で上位5個の特徴量を用いた分類精度が81.1%と最も高くなった。また、0~1000(Hz)の分割する区間数を20から40に増加することによって、分類精度が向上する傾向が見られた。
【0059】
[3]切り出した波形の最大パワースペクトル密度周波数(Hz)、0~1000(Hz)を50(Hz)間隔で20区間、25(Hz)間隔で40区間に分割し、各区間のパワースペクトル密度の平均を算出した。また、9と18分割交差検証を行った。こうした9分割交差検証で行った機械学習の結果を表4に表す。なお、特徴量と個数は以下に示す。
【0060】
(A)20区間平均のみ
特徴量:荷重(N)、0~1000(Hz)を50(Hz)毎に20区間分割した各区間のパワースペクトル密度の平均値
特徴量の数:21個
(B)40区間平均のみ
特徴量:荷重(N)、0~1000(Hz)を25(Hz)毎に40区間分割した各区間のパワースペクトル密度の平均値
特徴量の数:41個
(C)20区間平均、最大周波数
特徴量:荷重(N)、最大パワースペクトル密度周波数(Hz)、0~1000(Hz)を50(Hz)毎に20区間分割した各区間のパワースペクトル密度の平均値
特徴量の数:22個
(D)40区間平均、最大周波数
特徴量:荷重(N)、最大パワースペクトル密度周波数(Hz)、0~1000(Hz)を25(Hz)毎に40区間分割した各区間のパワースペクトル密度の平均値
特徴量の数:42個
【0061】
【0062】
表4より荷重以外の特徴量を使用した中で40区間平均、最大周波数の分類精度が最も高い74.4%であった。この分類精度は今回行った4度の機械学習において、荷重以外の特徴量を使用した中で最も高かった。この時の特徴量に荷重を加えると75.6%であった。
【0063】
[4]次に、[3]の内、18分割交差検証で行った機械学習の結果を表5に表す。なお、特徴量と個数は以下に示す。
(E)20区間平均、最大周波数
特徴量:荷重(N)、最大パワースペクトル密度周波数(Hz)、0~1000(Hz)を50(Hz)毎に20区間分割した各区間のパワースペクトル密度の平均値
特徴量の数:22個
(F)40区間平均、最大周波数
特徴量:荷重(N)、最大パワースペクトル密度周波数(Hz)、0~1000(Hz)を25(Hz)毎に40区間分割した各区間のパワースペクトル密度の平均値
特徴量の数:42個
【0064】
【0065】
表4と表5とを比較すると、交差分割数の変更によって分類精度は特に向上しないことが分かった。
【0066】
[5]切り出した波形の最大パワースペクトル密度周波数(Hz)、0~1000(Hz)を20(Hz)間隔で50区間に分割し、各区間のパワースペクトル密度の平均を算出した。また、18分割交差検証を行った。こうした18分割交差検証で行った機械学習の結果を表6に表す。振動発生時の垂直方向の荷重(N)、最大パワースペクトル密度周波数(Hz)に加え、50区間(20Hz毎)のパワースペクトル密度の平均値をデータセットとした特徴量は52個である。
【0067】
【0068】
表6に示す結果より、荷重以外の上位10個を特徴量とした際に、73.3%と表4で示した74.4%に近づいた分類精度になることを確認した。また、荷重以外の上位10個を特徴量に加え、荷重(N)の特徴量を追加した結果、85.6%と今回実施した全機械学習中で最も高い分類精度であった。
【0069】
今回の機械学習の実験結果から、荷重以外の特徴量を使用した場合、最も高い分類精度は74.4%であった。また、荷重を含めた特徴量を使用した場合、最も高い分類精度は85.6%であった。
【0070】
以上の結果から、靴下と靴の素材の間で剪断力が発生する際に、直径0.5mm極細径ワイヤ型剪断力センサを用いて振動データを検出する。その振動データを周波数解析し、周波数帯域を特定の分割をしたものを機械学習を用いて、剪断力との関係モデルを構築する。使用時は、その関係モデルをマイコンにあらかじめ入力しておくことで、その場で学習を行うことなく簡便に剪断力が計測できる。
【0071】
また、必ずしも周波数帯域の分割数を増やすことが精度向上に直接つながるとは言えないことがわかる。また、最大周波数を学習のデータセットに含めると精度が低下すること、荷重を学習のデータセットに含めると、精度が向上することがわかる。また、全体的な傾向として、精度が高くなる学習モデルにおいて、寄与率の高い上位には、100Hz~150Hz、200Hz~280Hz周辺の周波数帯域のパワースペクトル密度のデータが頻出しており、この周辺の周波数帯域のみをより細かく分割することで、さらなる精度向上が図ることができる可能性があることが確認できた。
【0072】
(検証例2)
本発明のより詳細な実施例を説明する。
以下の実施例では、線状のセンサ部であるピエゾワイヤセンサを実際に縫い込んだ2種類の布の接触点の振動計測を行い、剪断力の推定を行った。また、断面が円形になるように加工したピエゾワイヤセンサを用いた実験結果、モデル構築結果について述べる。
【0073】
[実験機器の構成]
歩行中に生じる剪断力を引張実験により再現するために、以下のものを用意した。
1,極細径ピエゾワイヤセンサ(断面円形、直線状)
2,剪断力センサ(RK1A-Z01 SV:NISSHA株式会社製)
3,ポリエステル100%の布
4,綿100%の布
5,釣り糸
6,ギヤードモーター(380K150(ギヤ比1:150),380K300(ギヤ比1:300):株式会社タミヤ製)
7,ボビン
8,木製ブロック
9,金属製クランプ
10,直流安定化電源(PMC35-2:菊水電子工業株式会社製)
11,デジタルフォースゲージ
12,フォースゲージ用スタンド
13,台座
14,カメラ(2台)
15,三脚
16,タイマー
【0074】
[実験機器の設定]
図10に検証例2で用いた実験機器(剪断力計測システム)の模式構成図を示す。
信号の増幅倍率を100倍に設定し、符号化を行う際の解像度は、サンプリング周波数を44100Hz、量子化ビット数を16bitとした。また、剪断力計測システムのサンプリング周波数を300Hzとした。
【0075】
そして、
図11の写真に示すように、一般的な靴下の素材である綿100%の織布にピエゾワイヤセンサを取り付けた。ピエゾワイヤセンサは断面が円形のピエゾワイヤセンサを丸めたものを貼り付けたものと、線形のピエゾワイヤセンサを10mm間隔で埋め込んだものの二種類を準備した。また、釣り糸を布に埋め込み、その上からセロハンテープによって固定した。
【0076】
次に、ボビンを取り付けたモーターを木製のブロックに固定した。そして、台座をフォースゲージ用スタンドに介して水平の高さになるよう調整した。その後、剪断力センサをフォースゲージ用スタンドに設置し、ピエゾワイヤセンサを取り付けた綿100%の織布とポリエステル100%の織布とを重ね合わせ、剪断力センサの上に設置した。これらの構成部分の模式図を
図12に示す。なお、ピエゾワイヤセンサに加わる垂直荷重を再現するためにデジタルフォースゲージを用いた。
【0077】
ギヤードモーターを動かした際に、その動作による振動がピエゾワイヤセンサに伝わらないように、直流安定化電源とギヤードモーターとはピエゾワイヤセンサやデジタルフォースゲージ等の実験装置が載置されたデスクAとは別な、近接配置されたデスクBに設置した。ギヤードモーターが取り付けられている木製ブロックは、デスクAにクランプを用いて固定した。実験時の様子を撮影するため、一方のカメラでフォースゲージと綿100%の布の全体が撮像範囲に入るような画角で撮影し、他方のカメラで実験装置全体を記録するようにした。
【0078】
剪断力センサ、およびピエゾワイヤセンサ一式を置いてあるデスクAと、ギヤードモーター、直流安定化電源を設置しているデスクBとの間隔が50cmを保つように設置した。釣り糸をギヤードモーターによって引っ張る際に、一直線上に動くように、剪断力センサ、釣り糸、およびボビンを一直線上に配置した。また、PC上で実行されるプログラムであるAdobe Audition 2023(アドビ株式会社)、およびSFS Viewer3.0.3(NISSHA株式会社)によってそれぞれ表示される計測画面を同時に確認できるようにPCを設定した。そして、AutoHotKey(autohotkey.com)を用いて剪断力計測システムと振動計測システムとの計測開始時間を同期させた。
【0079】
[実験条件]
フォースゲージを用いてピエゾワイヤセンサに加える垂直荷重として11条件、ギヤードモーターに印加する電圧として3条件を組み合わせて、合計33条件で実験を行った。各条件に対しては20試行ずつ行った。フォースゲージを用いてピエゾワイヤセンサに加えた垂直荷重は1,2,4,6,8,10,12,14,16,18,20(N)の11段階とした。
【0080】
そして、直流安定化電源を用いてギヤードモーターに印加した電圧3条件は6.9,7.2,7.5(V)の3段階とした。剪断力センサのy軸方向に綿100%の布に結合した釣り糸をギヤードモーターによって牽引し、布に引張り応力を付加した。実験ではギヤードモーターによる引張時の最大剪断力のデータと最大剪断力の発生後に生じた振動のデータとを得た。
【0081】
[実験手順]
PCからの指示によって剪断力センサの計測を開始させ、最初の数秒間だけ無負荷状態で剪断力センサをキャリブレーションした後、フォースゲージを用いてピエゾワイヤセンサに垂直荷重を印加した。剪断力センサの計測開始から10秒後、AutoHotKeyによって振動計測を開始した。そして,剪断力センサの計測開始から40秒後、ギヤードモーターに電圧を印加して引張実験を行った。その際に発生した剪断力のデータと最大剪断力の発生後に生じる振動とを記録した。計測したデータは剪断力を(.csv)ファイルに、振動を(.wav)ファイルにそれぞれ保存した。
【0082】
[機械学習]
(機械学習理論)
今回の実験では、機械学習に用いる特徴量を選択するアルゴリズムにChi2アルゴリズム用いた。Chi2アルゴリズムは、カイ二乗検定を使用して各々の予測子変数が応答変数から独立しているかどうかを調べた後、カイ二乗検定統計量のp値を使用して特徴量をランク付ける。スコアは-logpに対応する。スコアが大きければ、対応する予測子は重要であることを示している。
【0083】
(機械学習手法)
2つの方法で機械学習を行った。使用した特徴量について以下に示す。機械学習SVMを行った結果も同様に以下に示す。SVMの結果はLinear SVM(線形),Quadratic SVM(2次),Cubic SVM(3次),Fine Gaussian(細かいガウス),Medium Gaussian(中程度のガウス),Coarse Gaussian(粗いガウス)の中で一番成績が高かったものを示している。
【0084】
(1)切り出した波形500サンプルの最大パワースペクトル密度周波数、0~1000Hzを50Hz間隔で20区間に分割した各区間のパワースペクトル密度周波数平均値、および垂直荷重を特徴量としてデータセットした。機械学習に用いる特徴量としてChi2アルゴリズムを用いて上位5個、若しくは10個を用いた。
【0085】
(2)切り出した波形500サンプルの最大パワースペクトル密度周波数、0~1000Hzを10,20,25,40,50,100区間に分割した各区間のパワースペクトル密度周波数平均値、および垂直荷重を特徴量としてデータセットした。機械学習に用いる特徴量としてChi2アルゴリズムを用いて上位5個、若しくは10個を用いた。
【0086】
上述した(1)、(2)に関して、パワースペクトル密度の算出方法について、
図13に示す。また、周波数分割区間設定について、
図14に示す。
【0087】
[実験結果]
上述した機械学習手法(1)の結果を表7に示す。
【0088】
【0089】
表7に示す結果によれば、特徴量として垂直荷重を選択することによって、分類精度が向上することが確認できた。また、Chi2アルゴリズムを用いた場合、更に分類精度を向上させられることが確認できた。
【0090】
ピエゾワイヤセンサの貼り付け条件下においては、最大パワースペクトル密度周波数を20分割して、Chi2アルゴリズムを用いて上位10個、及び垂直荷重を特徴量とした場合、分類精度は91.7%と、最も高い成績が得られた。
【0091】
ピエゾワイヤセンサの埋め込み条件下においては、最大パワースペクトル密度周波数を20分割して、Chi2アルゴリズムを用いて上位5個、及び垂直荷重を特徴量とした場合、分類精度は79.2%と、最も高い成績が得られた。
【0092】
次に、上述した機械学習手法(2)の結果を表8、表9に示す。このうち、表8がピエゾセンサ貼り付けを条件とした結果であり、表9がピエゾセンサ埋め込みを条件とした結果である。
【0093】
【0094】
表8に示す結果によれば、ピエゾワイヤセンサ貼り付け条件下においては、最大パワースペクトル密度周波数を50分割し、Chi2アルゴリズムを用いて上位5つ及び垂直荷重を特徴量とした場合に、分類精度が92.5%と最も高い成績となった。
【0095】
また、表9に示す結果によれば、ピエゾワイヤセンサ埋め込み条件下においては、最大パワースペクトル密度周波数を10分割し、Chi2アルゴリズムを用いて上位5つ及び垂直荷重を特徴量とした場合に、分類精度が82.5%と最も高い成績となった。
【0096】
[検証例2のまとめ]
検証例2の実験ではピエゾワイヤセンサ埋め込みの条件における分類精度を検証した。その結果、ピエゾセンサ埋め込みの条件において、最大で82.5%の分類精度を示すことが確認できた。また、円形に加工したピエゾワイヤセンサを使用した実験を再度行い、モデル構築を行った結果、92.5%という優れた分類精度を示すことが確認できた。
本発明の検出可能な線状センサ装置、繊維状センサ装置、および剪断力の検出方法は、擦れ応力から剪断力を検出することが可能であるため、足の形状に応じた靴擦れを起こさない靴の設計、選択を行ったり、床ずれの発生を予見可能な医療用ベッドなどの実現に寄与する。従って、産業上の利用可能性を有する。