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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086625
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】二軸配向ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/12 20060101AFI20240620BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240620BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240620BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20240620BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20240620BHJP
【FI】
B29C55/12
C08J5/18 CFD
B32B27/36
B29K67:00
B29L9:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023206621
(22)【出願日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2022200049
(32)【優先日】2022-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 瞳
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4F210
【Fターム(参考)】
4F071AA46
4F071AA88
4F071AB18
4F071AB26
4F071AD02
4F071AD06
4F071AG18
4F071AG28
4F071AH12
4F071BB05
4F071BB08
4F071BC01
4F071BC12
4F071BC14
4F071BC15
4F071BC16
4F100AK41
4F100AK41A
4F100AT00A
4F100BA01
4F100BA03
4F100BA07
4F100DE01
4F100DE01A
4F100EH17
4F100EJ38
4F100EJ38A
4F100EJ42
4F100EJ93
4F100EJ94
4F100GB41
4F100JA06
4F100JA06A
4F100JK15
4F100JK15A
4F210AA24
4F210AG01
4F210AG03
4F210AH36
4F210AR13
4F210AR20
4F210QA02
4F210QA03
4F210QC06
4F210QD06
4F210QD25
4F210QG01
4F210QG15
4F210QG18
4F210QL16
4F210QM15
4F210QW07
4F210QW12
4F210QW21
4F210QW36
(57)【要約】
【課題】
表面平滑性と搬送性、巻取り性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】
一方の表面(A)において、走査型白色干渉顕微鏡(Vertscan)測定での平均面からの突起高さが20nm以上である突起密度が700個/mm以下であり、同測定での平均面から高さ10nmにおける断面積の和が0.05mm/mm以下である、二軸配向ポリエステルフィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の表面(A)において、走査型白色干渉顕微鏡(Vertscan)測定での平均面からの突起高さが20nm以上である突起密度が700個/mm以下であり、同測定での平均面から高さ10nmにおける断面積の和が0.05mm/mm以下である、二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記表面(A)の走査型白色干渉顕微鏡(Vertscan)測定での算術平均粗さSaが1.0nm以上5.0nm以下である、請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記表面(A)の走査型白色干渉顕微鏡(Vertscan)測定での最大高さSzが30nm以上200nm以下である、請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記表面(A)と反対側の表面(B)において、走査型白色干渉顕微鏡(Vertscan)測定での算術平均粗さSaが0.8nm以上3.0nm以下である、請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記表面(A)を有する層と、前記表面(B)を有する層が異なる層であり、表面(A)を有する層と表面(B)を有する層との間に中間層を有する、請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項6】
ドライフィルムレジスト支持体用途として用いられる、請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項7】
ドライフィルムレジスト支持体用途に用いられる際、前記表面(A)にレジストを塗工するように用いられる、請求項6に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面平滑性と搬送性、巻取り性に優れた二軸延伸ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムはその加工性の良さから、工業用途、光学製品用途、包装用途、磁気記録テープ用途など様々な工業分野に利用されている。例えば、プリント配線基板、半導体パッケージ、フレキシブル基盤などの回路を形成するために用いられるドライフィルムレジスト(以下、DFRと呼ぶ場合がある)に好適に使用されている。DFRはポリエステルフィルムを支持体とし、その上に感光層(フォトレジスト層)を積層させた後、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルムなどからなる保護フィルム(カバーフィルム)で挟んだ構造をしている。このDFRを用いて導体回路を形成するには、一般に次のような工程で行われる。
【0003】
1)DFRから保護フィルムを剥離し、露出したレジスト層の表面と、基板上の銅箔などの導電性基材層の表面とが密着するように、基板・導電性基材層とラミネートする工程。
2)次に、導体回路パターンを焼き付けたフォトマスクを、ポリエステルフィルムからなる支持体上に設置し、その上から、感光性樹脂を主体としたレジスト層に紫外線を照射して、露光させる工程。
3)その後、ポリエステルフィルムを剥離した後、溶剤によってレジスト層中の未反応分を溶解、除去する工程。
4)次いで、酸などでエッチングを行い、導電性基材層中の露出した部分を溶解、除去する工程。
【0004】
4)の工程の後にはレジスト層中の光反応部分と、この光反応部分に対応する導電性基材層部分がそのまま残り、その後、残ったレジスト層を除去する工程を経て、基板上の半導体回路が形成されるにいたる。このため、支持体であるポリエステルフィルムには、紫外線を効果的に透過できることが要求され、これにより、導体回路パターンが正確にレジスト層上に反映される。近年、電子情報機器の小型化、高集積化に伴い、プリント配線幅の微細化、高密度化が進み、配線の幅や配線の間隔は2~5μmと非常に微細な加工を行うことが要求されている。このため、微細配線の作製に用いられるポリエステルフィルム支持体には、レジスト用レーザー光のフィルム内部での光散乱を低減すること、レジスト表面の凹凸を小さくすることで配線描写の欠陥を防ぐことが重要になってきている。その一方で、フィルム製造・加工を行う際の搬送・巻取り工程においては、ハンドリング性を良好にするために適度なすべり性を有することが必要である。
【0005】
上記課題に対して、例えば特許文献1には、特定の粒度分布を有する粒子を表層に添加してフィルム表面の粗さを特定の範囲内に納めることで、平滑性と光学特性、巻取り性を両立したポリエステルフィルムが得られることが記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、フィルムの表面粗さと表面高さ分布のとがり(クルトシス)を特定の範囲とすることで、露光後のレジストの解像度低下を回避しつつ、ハンドリング性に優れるポリエステルフィルムが得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-109441号公報
【特許文献2】特開2021-54055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2では、粒子の添加により形成される微細な突起を制御し、フィルムの表面粗さを特定の条件とすることで、光学特性と巻取り性を両立させているが、添加粒子以外の製膜工程により生じる表面状態に関しては一切検討されていなかった。
【0009】
本発明の目的は、粒子による微細な突起のみならず、製膜工程により生じる、粒子による微細突起より大きな表面凹凸を特定の範囲とすることで、高いレジスト解像度を達成しつつ、搬送性・巻取り性に優れたポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、走査型白色干渉顕微鏡(VertScan)測定による表面粗さパラメータを後述する高度な製膜技術によって特定の範囲とすることにより、高いレジスト解像度を達成しつつ、搬送性・巻取り性に優れたポリエステルフィルムを提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は下記の通りの構成を有する。
[1]一方の表面(A)において、走査型白色干渉顕微鏡(Vertscan)測定での平均面からの突起高さが20nm以上である突起密度が700個/mm以下であり、同測定での平均面から高さ10nmにおける断面積の和が0.05mm/mm以下である、二軸配向ポリエステルフィルム。
[2]前記表面(A)の走査型白色干渉顕微鏡(Vertscan)測定での算術平均粗さSaが1.0nm以上5.0nm以下である、[1]に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
[3]前記表面(A)の走査型白色干渉顕微鏡(Vertscan)測定での最大高さSzが30nm以上200nm以下である、[1]又は[2]に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
[4]前記表面(A)と反対側の表面(B)において、走査型白色干渉顕微鏡(Vertscan)測定での算術平均粗さSaが0.8nm以上3.0nm以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
[5]前記表面(A)を有する層と、前記表面(B)を有する層が異なる層であり、表面(A)を有する層と表面(B)を有する層との間に中間層を有する、[1]~[4]のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
[6]ドライフィルムレジスト支持体用途として用いられる、[1]~[5]のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
[7]ドライフィルムレジスト支持体用途に用いられる際、前記表面(A)にレジストを塗工するように用いられる、[6]に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、レジスト表面凹凸を抑制し、レジストの解像性とすべり性に優れるドライフィルムレジスト支持体に好適な二軸配向ポリエステルフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、表面(A)において、走査型白色干渉顕微鏡(Vertscan)測定での平均面からの突起高さが20nm以上である突起密度が700個/mm以下である。好ましくは500個/mm以下である。表面(A)の突起密度を上記の値とすることで、露光工程での光の散乱によるレジスト解像度の低下を抑制することができる。高さ20nm以上の高い突起の密度が700個/mmより大きい場合、紫外線を照射して露光するにあたってフィルム中に含有する粒子に起因した光の散乱が発生し、現像後のレジストのパターニングにゆがみや抜け、レジストパターン壁面の状態が悪化する。さらに、フィルムのすべりが大きいため搬送が安定せず、巻きずれやDFR加工工程での積層が乱れる場合がある。突起密度は走査型白色干渉顕微鏡(Vertscan)を用いて実施例に記載する方法で測定することができる。
【0014】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、表面(A)の走査型白色干渉顕微鏡(Vertscan)測定での平均面から高さ10nmにおける断面積の和が0.05mm/mm以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.04mm/mm以下であり、さらに好ましくは0.03mm/mm以下である。ここで、断面積とは測定視野を平均面から10nmの高さで平均面に対して平行に切断したときの切断面の面積を意味する。測定視野内の断面積をすべて足し合わせ、さらに測定面積で割ることで、単位面積(1mm)当たりとして断面積の和(mm/mm)を求めた。詳細な測定方法は実施例に記載した。断面積の和を上記の値とすることで、レジスト表面の凹凸が小さくなりレジスト配線の欠陥を抑制できる。平均面から高さ10nmにおける断面積の和が0.05mm/mmより大きいと、製膜工程により生じるフィルム表面の凹凸部分が大きくなり、当該表面の凹凸がレジスト面に転写されることで露光工程での光の入射角が不均一になることによる光の反射や散乱の影響により、微細配線形成のレジスト解像度が低下する場合がある。
【0015】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、表面(A)の走査型白色干渉顕微鏡(Vertscan)測定での算術平均粗さSaが1.0nm以上5.0nm以下であり、好ましくは1.0nm以上4.5nm以下である。算術平均粗さSaは、後述の方法に従って走査型白色干渉顕微鏡(Vertscan)測定を行い、走査型白色干渉顕微鏡付属のソフトウェアにより求まるISO 25178に基づき、後述する測定方法により測定される値である。算術平均粗さSaをかかる範囲とすることで、本発明のポリエステルフィルムを巻き取る際に、A面と反対面(B面とする)が接触する面積(以下、接触面積と称することがある)が低下するため、フィルムの巻取り性が向上するとともに、搬送による傷つきが防止できる。算術平均粗さSaが5.0nmより大きい場合、フィルムの滑りが大きく搬送が安定せず、巻きずれやそれに伴うシワの発生、DFR加工工程での積層が乱れる場合がある。算術表面粗さSaが1.0nmより小さい場合、フィルムが平滑になることで他の面との接触面積が増加し巻取り性が悪化し、また、フィルムの帯電やキズなどにより品位が低下する。
【0016】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、表面(A)の走査型白色干渉顕微鏡(Vertscan)測定での最大高さSzが30nm以上200nm以下であり、好ましくは30nm以上100nm以下であり、さらに好ましくは30nm以上50nm以下である。最大高さSzは、後述の方法に従って走査型白色干渉顕微鏡(Vertscan)測定を行い、走査型白色干渉顕微鏡付属のソフトウェアにより求まるISO 25178に基づき、後述する測定方法により測定される値である。最大高さSzをかかる範囲とすることで、レジストとポリエステルフィルムの密着性を維持しつつ、高いハンドリング性を付与することができる。最大高さSzが200nmより大きい場合、ポリエステルフィルムとレジストとの密着性が悪化する場合があり、好ましくない。最大高さSzが30nmより小さい場合、ハンドリング性が低下し、フィルムの帯電やキズなどのフィルム欠点が生じる場合がある。
【0017】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、表面(A)と反対側の表面(B)において、走査型白色干渉顕微鏡(Vertscan)測定での算術平均粗さSaが0.8nm以上3.0nm以下であることが好ましい。表面(B)の算術平均粗さSaが0.8nm未満となると、レジスト塗布工程にてハンドリング性が悪化し、塗布が不安定となり、塗布斑が発生することや、塗布後の巻き取り時に、噛み込んだ空気が抜けにくくなることによる、巻きズレを起こすことがある。算術表面粗さSaが3.0nmより大きい場合、ドライフィルムレジスト支持体用二軸配向ポリエステルフィルムを巻き取った際に表面(B)の突起が表面(A) に接触することで変形を生じてしまい、表面(A)にレジストを形成した際にレジストの変形を生じる場合がある。
【0018】
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂を主成分とするフィルムである。ここで、本発明において「主成分」とは。ポリエステルフィルムに占める割合が50質量%以上であることを意味し、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、最も好ましくは99質量%以上である。
【0019】
本発明のポリエステル樹脂は、ジカルボン酸とジオール、およびそれらのエステル形成性誘導体を主たる構成成分とする単量体または低重合体からの重合により得られるポリエステルである。
【0020】
ジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸を用いることが好ましい。芳香族ジカルボン酸は、例えばテレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、好ましくはテレフタル酸である。これらの酸成分は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよく、イソフタル酸などほかの芳香族ジカルボン酸を、あるいは脂肪酸を一部共重合してもよい。
【0021】
ジオール成分は、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等の脂肪酸ジオール類、シクロヘキサンジオール、スピログリコールなどの脂環式ジオール類、上述のジオールが複数個連なったものなどが挙げられ、好ましくはエチレングリコールである。これらのジオール成分は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0022】
ポリエステル樹脂は、機械特性、透明性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、およびその共重合体、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンナフタレートおよびその共重合体、さらにはポリヘキサメチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリヘキサメチレンナフタレートおよびその共重合体などが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0023】
本発明に使用するポリエステルは、従来から知られている方法で製造することができる。例えば、酸成分をジオール成分と直接エステル化反応させた後、この反応の生成物を減圧下で加熱して余剰のジオール成分を除去しつつ重縮合させることによって製造する方法や、酸成分としてジアルキルエステルを用い、これとジオール成分とでエステル交換反応させた後、上記と同様に重縮合させることによって製造する方法などが採用できる。この際、必要に応じて、反応触媒として従来公知のアルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、コバルト、亜鉛、アンチモン、ゲルマニウム、チタン化合物などを用いることもできる。また、必要に応じ、溶融重合反応で得られたポリエステルを、ポリエステルの融点温度以下にて、固相重合反応を行ってもよい。
【0024】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、上述した原料を用い溶融押出ししシート状にした後で、二軸延伸されることによって得られる。二軸配向していることにより、フィルムの機械強度が向上し易滑性を向上させることができる。ここで言う二軸配向とは、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。二軸配向ポリエステルフィルムは、一般に未延伸状態のポリエステル樹脂シートをシート長手方向および幅方向に二軸延伸し、その後熱処理を施し結晶配向を完了させることにより、得ることができる。二軸延伸の方法としては、インフレーション法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法のいずれによっても得られるが、その中でも、製膜安定性、厚み均一性、フィルムの高剛性と寸法安定性を制御する点において逐次二軸延伸法を採用することが好ましい。
【0025】
二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルムの片側の表面表面(A)、表面(A)とは反対側の表面を表面(B)とすると、表面(A)を有する層と、表面(B)を有する層は同一の層でもよく、表面(A)を有する層と表面(B)を有する層の2層構成、または、表面(A)を有する層と表面(B)を有する層の間に中間層として実質的に粒子を含有しない層を設けた3層構成でもよい。 二軸配向ポリエステルフィルムは、本発明の効果が損なわれない範囲で、粒子および、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、停電防止剤、有機系/無機系の易滑剤、核剤、染料、分散剤、カップリング剤、波長変換材料などの添加剤が配合されていてもよい。
【0026】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの表面(A)を有する層と表面(B)を有する層は、上述の突起密度や算術表面粗さSa、最大高さSzなどを制御する目的から粒子を含有してもよい。添加する粒子種に関しては特に限定されず、無機粒子、有機粒子のどちらを用いてもよく、2種類以上の粒子を併用してもよい。無機粒子としては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、リン酸カルシウム、アルミナ(αアルミナ、βアルミナ、γアルミナ、δアルミナ)、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカなどが挙げられる。有機粒子としては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などを構成成分とする有機粒子、コアシェル型有機粒子などが例示できる。
【0027】
前記粒子の体積平均粒子径は、フォトレジスト工程におけるノイズとなり露光阻害を起こさないことが重要であり、500nm以下であることが好ましい。ドライフィルムレジストを用いた代表的な配線の作成手法としては、投影露光方式、平行露光方式( 等倍投影露光方式) などが挙げられ、投影露光方式としては等倍投影露光方式、縮小投影露光方式が挙げられ、また平行露光方式としては、プロキシミティ露光方式、コンタクト露光方式が挙げられる。平行露光方式である、プロキシミティ露光方式、コンタクト露光方式は、i線(波長:365nm)レーザー光を光源とし、配線マスクパターンに平行光を当てることで大面積を短時間で配線パターン描写を行うことができる。平行露光方式で露光を行う場合、配線パターンを通過したフォトレジスト照射光がポリエステルフィルムを通過してレジスト部材に照射される。
【0028】
一方、投影露光方式(等倍投影露光方式、縮小投影露光方式)で露光を行う場合、i線(波長:365nm)を光源とした光が、配線パターンを有するレクチルを通したのち投影レンズによりレジスト部材に焦点を合わせられ、配線パターン描写が数回に分けて行われる。縮小投影露光法においては、光の焦点をレジスト部材に合わせることから、ドライフィルムレジストの支持体として用いるポリエステルフィルムにおいて、レジスト部材に近い表層に含有する粒子による光の散乱の影響を受けやすい(一方、平行露光方式では、レジスト部材に近い位置に粒子を有していても、レジスト部材に遠い位置(露光される側の表層)に粒子を有していても、影響は大きく変わらない)。したがって、表面(A)と表面(B)とを有する本発明のポリエステルフィルムをドライフィルムレジスト支持体として用いる場合において、縮小投影露光法で露光を行う場合においては、前記表面(B)側から露光を行うと、露光を行う側の反対側の表面(A)を有する層の粒子含有量を少なくできることから、粒子による露光阻害の影響を少なくできるため好ましい。
【0029】
表面(B)を有する層に含有する粒子は、体積平均粒子径がi線波長である365nmよりも小さいと、平行露光方式ある、プロキシミティ露光方式、コンタクト露光方式において、露光阻害をさらに抑制することができるため好ましい。平均粒子径は10nm以上300nm以下であることがより好ましく、50nm以上220nm未満であることがさらに好ましい。
【0030】
二軸配向ポリエステルフィルムの表面(A)を有する層と表面(B)を有する層の粒子含有量は特に限定されないが、透明性を損なわないためには表面(B)を有する層の重量全体に対して2.0重量%以下とすることが好ましい。2.0重量%を超えると平均粒子径が好ましい範囲にある粒子を用いてもフィルムが部分的に白濁し、後述する光学特性が低下し、配線欠陥が増大する場合がある。より好ましくは1.0重量%以下、更に好ましくは0.8重量%以下である。
【0031】
本発明のポリエステルフィルムは、フィルム表面の突起を制御する目的から、二軸延伸を行う前の未延伸シートに大気圧グロー放電によるプラズマ表面処理を施してもよい。ここでいう大気圧とは700Torr~780Torrの範囲である。大気圧グロー放電処理は、相対する電極とアースロール間に処理対象のフィルムを導き、装置中にプラズマ励起性気体を導入し、電極間に高周波電圧を印加することにより、該気体をプラズマ励起させ電極間においてグロー放電を行うものである。これによりフィルム表面が微細に分解・除去され、地肌部を細かく荒らすことができると共に、粒子含有により形成する一定程度の大きさを有する凹凸形状を顕在化することで、極微細な表面凹凸形状と一定程度の大きさを有する表面凹凸形状の異なる形状・大きさを有する表面凹凸形状を形成させることができる。
【0032】
プラズマ励起性気体とは前記のような条件においてプラズマ励起されうる気体をいう。プラズマ励起性気体としては、例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガス、窒素、二酸化炭素、酸素、またはテトラフルオロメタンのようなフロン類およびそれらの混合物などが挙げられる。また、プラズマ励起性気体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の混合比で組み合わせてもよい。プラズマによって励起された場合に活性が高くなる観点から、アルゴン、酸素、二酸化炭素のうちの少なくとも1種に加え、酸素を含むことが好ましい。
【0033】
プラズマ処理における高周波電圧の周波数は1kHz~100kHzの範囲が好ましい。また、以下方法で求められる放電処理強度(E値)は、10~2000W・min/m2の範囲で処理することが突起形成の観点から好ましく、より好ましくは50~1000W・min/m2である。放電処理強度(E値)が10W・min/m2以上であることにより、突起を十分に形成でき、放電処理強度(E値)が2000W・min/m2以下であることにより、ポリエステルフィルムに過度なダメージを与え、製膜性が悪化することを抑制できる。
<放電処理強度(E値)の求め方>
E=Vp×Ip/(S×Wt)
E:E値(W・min/m
Vp:印加電圧(V)
Ip:印加電流(A)
S:処理速度(m/min)
Wt:処理幅(m)。
【0034】
表面処理を施す際のフィルムの表面温度は150℃以下にすることが好ましい。更に好ましくは100℃以下である。表面温度が150℃よりも大きいとフィルムの結晶化が進行し、表面に粗大突起が形成したり、フィルム中の分子鎖の運動性が高くなり表面処理によってフィルムにダメージを与えたりする場合がある。表面処理を施す際のフィルムの表面温度は、フィルム中の分子鎖の運動性が低くなりなりすぎず処理効果を高める観点から、25℃以上であることが好ましい。表面処理を施す際のフィルムの表面温度は、処理面と反対側の面を冷却ロール等で冷却することで調整することができる。
【0035】
[1]二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法
次に本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法を説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法は、以下の2つの工程からなる。
(a)ポリエステル樹脂を溶融キャスト法によりシート状に成型する。
(b)得られたシートをロール方式またはテンター方式により延伸を行う。
以下、各工程について説明する。
【0036】
(a)ポリエステル樹脂の溶融キャスト法によるシート形成
1種もしくは2種以上のポリエステル樹脂を必要に応じて所定の割合で混合し、乾燥したのち、押出機に供給され、加熱溶融される。本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの製造における押出機は、1軸、2軸の押出機を用いることができる。また、ペレットの乾燥工程を省くために、押出機に真空引きラインを設けた、ベント式押出機を用いることもできる。また、中間層を設ける場合には、最も押出量が多くなるため、ペレットを溶融する機能と、溶融したペレットを一定温度に保つ機能をそれぞれの押出機で分担する、いわゆるタンデム押出機を用いることができる。
【0037】
このとき、ポリエステル樹脂は不活性粒子などの添加物を含有していてもよい。溶融製膜におけるポリエステルに不活性粒子を含有せしめる方法としては、例えばジオール成分であるエチレングリコールに不活性粒子を所定割合にてスラリーの形で分散せしめ、例えば3μm以上の粗大粒子を95%以上捕集できる高精度濾過を行った後、このエチレングリコールスラリーをポリエステル重合完結前の任意段階で添加する。ここで、粒子を添加する際には、例えば、粒子を合成時に得られる水ゾルやアルコールゾルを一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性が良好であり、粗大突起の発生を抑制でき好ましい。また粒子の水スラリーを直接、所定のポリエステルペレットと混合し、ベント方式の2軸混練押出機に供給しポリエステルに練り込む方法も本発明の効果に有効である。
【0038】
押出機で溶融して押出したポリマーは、フィルターにより濾過する。ごく小さな異物もフィルム中に入ると粗大突起欠陥となるため、フィルターにはたとえば5μm以上の異物を95%以上補修する高精度のものを用いることが有効である。その後溶融ポリマーはスリット状ダイに導かれ、ダイから冷却したキャストドラムに押出してシート状に成型される(溶融キャスト法)。2層以上の積層ポリエステルフィルムを溶融キャスト法により製造する場合、積層ポリエステルフィルムを構成する層毎に押出機を用い、各層の原料を溶融せしめ、これらを押出装置とダイの間に設けられた合流装置にて溶融状態で積層したのちダイに導き、ダイからキャストドラム上に押し出してシート状に加工する方法(共押出法)が好適に用いられる。該積層シートは、表面温度20℃以上60℃以下に冷却されたドラム上で静電気により密着冷却固化し、未延伸シートを作製する。キャストドラムの温度は、より好ましくは25℃以上60℃以下、さらに好ましくは30℃以上55℃以下である。20℃以下では後述するプラズマ処理を施した際に、二軸延伸した後のフィルム表面の突起形成が十分でない場合がある。60℃を超えると、キャストドラムにフィルムが貼り付き、未延伸シートを得ることが困難になる場合がある。
【0039】
ここで、得られた未延伸シートに大気圧グロー放電によるプラズマ処理などの表面処理を施してもよい。これらの表面処理は未延伸シートを得た直後でも、微延伸を施した後でも、長手および/又は横方向に延伸した後でも良いが、本発明では未延伸シートに表面処理することが好ましい。また、表面処理を施す面はキャストドラムに接していた面(ドラム面)でもキャストドラムに接していない面(非ドラム面)のいずれでも良い。
【0040】
(b)延伸工程
得られた積層シートを含むシートを二軸延伸する。用いられる延伸方法としては、ロール延伸機とテンター、或いはテンターとテンターとの組み合わせによる逐次二軸延伸、同時二軸テンターによる同時二軸延伸などが挙げられる。最初にロール延伸機による長手方向の延伸、次にテンターによる幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法が、延伸破れなく本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを得るのに有効である。
【0041】
逐次延伸の場合、最初の長手方向の延伸はロールの周速差によって行われ、延伸温度は好ましくは90℃以上130℃未満、さらに好ましくは100℃以上125℃未満である。延伸温度が90℃未満になるとフィルムが破断しやすく、延伸温度が130℃以上になるとフィルム表面が熱ダメージを受けやすくなるため好ましくない。また、延伸ムラ、およびキズを防止する観点から延伸は2段階以上に分けて行うことが好ましく、トータル倍率は好ましくは3倍以上5倍以下、さらに好ましくは3.5倍以上4.5倍以下である。長手方向の延伸倍率が3倍以上であることにより、配向結晶化が進みフィルム強度を向上できる。一方で、延伸倍率が5倍以下であることにより、延伸に伴うポリエステル樹脂の配向結晶化が過剰に進行し脆くなったり、製膜時の破れが発生したりすることを抑制できる。目標とするフィルムの破断強度を達成するため、適時倍率を選択できる。かかる温度、倍率範囲をはずれると延伸ムラあるいはフィルム破断などの問題を引き起こし、本発明の特徴とするフィルムが得られにくいため好ましくない。延伸後のロールは20~50℃の温度のロール群で冷却することが好ましい。
【0042】
延伸される直前のフィルムは20m/min以上の速度で搬送されていることが好ましく、さらに好ましくは30m/min以上である。延伸直前のフィルムの搬送速度が20m/min以下であると、フィルムがロールに粘着し、粘着したフィルムがロールから引き離される際に延伸状態にムラが生じ、その結果フィルム表面に凹凸が生じて高さ10nmにおける断面積の和が大きくなる。
【0043】
さらに、延伸時のフィルム温度は延伸される直前のフィルムの搬送速度により異なるが、低いほうが好ましく、115℃以下であることが好ましい。延伸直前のフィルムの搬送速度が遅い場合はさらに低いほうが好ましく、例えばフィルム搬送速度が20m/minの場合、フィルム温度は80℃以下であることが好ましい。フィルム温度が高い場合、フィルムがロールに粘着し、フィルム表面に凹凸が生じ、高さ10nmにおける断面積の和が大きくなる。
【0044】
延伸ロールの表面粗さRaは好ましくは0.005μm以上1.0μm未満、更に好ましくは0.1μm以上0.6μm未満である。Raが1.0μm以上だと延伸時ロール表面の凸凹がフィルム表面に転写しSaおよびSzが大きくなる傾向がある。一方0.005μm未満だとロールとフィルム地肌が粘着し、フィルムの表面凹凸や熱ダメージが大きくなるため好ましくない。延伸ロールの表面粗さを制御するためには、延伸ロールを研磨する研磨剤の粒度や、延伸ロールを研磨する回数などを適宜調整することが有効である。とくに延伸ロールについては、フィルム表面の凹み欠点の原因と懸念されるポリエステルの分解物、オリゴマーの付着、蓄積を回避するため、延伸ロールの研磨の回数を高くすることが好ましい。
【0045】
続いて、長手方向に直角な方向(幅方向)の延伸に関しては、フィルムの両端(エッジ部)をクリップで把持しながらテンターに導き、70~160℃の温度に加熱された雰囲気中にて、長手方向に直角な方向(幅方向)へ3倍~5倍延伸する。この時、幅方向に延伸したフィルムを一段目80℃以上100℃以下、二段目20℃以上55℃以下のフィルム温度に段階的に冷却する冷却処理を行ってもよい。ポリエステルフィルムの冷却方法は、熱処理を行うテンターによる空冷方法、熱処理領域の上下にアルミ板などの遮蔽板で熱風を遮断する空冷方法、ロールによる冷却方法等が挙げられる。冷却処理を施すことは、続く熱処理工程において過度に結晶が肥大化することを防ぎ、均一な突起形成を促すことができ好ましい。
【0046】
その後、延伸されたフィルムを熱処理し内部の配向構造の安定化を行うことが好ましく、テンター内の最高温度を200℃以上250℃以下とし、熱処理時間0.5秒以上20秒未満で熱処理を行うことが好ましい。熱処理温度が200℃以上であることにより、前記、大気圧グロー放電処理により形成された突起を十分に成長でき、好ましい範囲の突起を形成することができる。一方250℃以下で熱処理を施すことにより、フィルム強度が低下し破れが多発することを抑制でき、生産性を向上できる。同様の観点からより好ましい範囲としては220℃以上245℃以下である。また、テンター内の局所的な温度変化が生じると突起形成にばらつきが生じやすくなるが、熱処理時間を長くとすることで突起の十分な成長を促し、局所的な温度変化の影響を緩和できるため、熱処理時間は0.5秒以上が好ましく、より好ましくは2秒以上である。熱処理時間を20秒以下とすることで、フィルム強度が低下し破れが多発することを抑制でき、生産性を向上できるため好ましく、より好ましくは12秒以下である。更に熱処理した後に寸法安定性を付与することを目的として、0%以上6%以下の範囲でリラックス処理を行ってもよい。
【0047】
延伸倍率は、長手方向と幅方向それぞれ3~5倍とするが、その面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は9~22倍であることが好ましく、9~20倍であることがより好ましい。面積倍率が9倍以上であることにより、得られる二軸延伸シートの耐久性を向上でき、面積倍率が22倍以下であることにより延伸時における破れの発生を低減できる。
【0048】
得られた二軸延伸後のフィルムは、搬送工程にて冷却させた後、エッジ部を切断後巻取る。また、必要に応じてスリット工程により適切な幅・長さにスリットして巻き取り、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムロールが得られる。
【0049】
[2]二軸配向ポリエステルフィルムの構造及び物性
二軸配向ポリエステルフィルムの他の物性の好ましい範囲を以下に挙げる。
【0050】
(1)二軸配向ポリエステルフィルムの厚さ
二軸配向ポリエステルフィルムの厚さは10μm以上100μm以下であることが好ましい。特に好ましくは12μm以上40μm以下である。フィルムの厚みを10μm以上とすることで、加工工程での取り扱いが容易となる程度の強度を有することができ、100μm以下とすることで、後述するフィルムヘイズ値が良好となる。
【0051】
(2)フィルムヘイズ
二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルムヘイズは1.0%以下であることが好ましい。より好ましくは0.5%以下である。フィルムヘイズが1.0%より大きいと、ポリエステルフィルムにレジスト層を積層した後、紫外線を照射して露光するにあたってのレジスト層の支持体であるポリエステルフィルムによる紫外光線の散乱が大きくなるため、現像後のレジストのパターニングに歪みや、抜け、レジスタパターン壁面の状態が悪化する場合や、ポリエステルフィルムの透過率が阻害される場合がある。
【0052】
[3]用途
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、平滑性、ハンドリング性を有し、さらに露光阻害の影響を低減できるため、ドライフィルムレジストといった電子情報機器を製造する工程に好適に用いることができる。
【実施例0053】
実施例で用いた樹脂及び実施例で得られた二軸配向ポリエステルフィルムの各物性の測定方法を以下に説明する。
【0054】
(1)突起密度、突起の断面積
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムより6cm×6cmのサンプリングを行い、それぞれのサンプルについて、走査型白色干渉顕微鏡(装置:日立ハイテクサイエンス社製“VertScan”(登録商標)VS1800)を用い、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムにおける前記表面(A)を、10倍対物レンズを使用し、測定モードをWAVEモードに設定し、測定面積556μm×556μmで測定を行った。サンプルセットは、測定Y軸がサンプルフィルムの長手方向(長手方向とは、フィルムの製造工程においてフィルムが走行する方向)となるようにサンプルをステージにセットして測定した。また測定するサンプルフィルムは、ゴムパッキンの入った2枚の金属フレームに挟み込むことで、フレーム内のフィルムが張った状態(サンプルのたるみやカールを除した状態)にしてサンプル表面の測定を行う。
【0055】
得られた顕微鏡像について、該顕微鏡に内蔵された表面解析ソフトウェアVS-Viewer Version 10.0.3.0にて、下記条件にて粒子解析を行い、平均面から20nmの高さ閾値(高さ閾値設定値:0.02μm)にて検出した「粒子解析」画面に表示される粒子の個数(個)を測定面積(556μm×556μm)で割ることで突起密度(個/mm2)とした。断面積とは、表面(A)の測定視野を平均面から10nmの高さ(高さ閾値設定値:0.01μm)で平均面に対して平行に切断したときの切断面の面積を意味する。測定視野内の断面積をすべて足し合わせ、さらに測定面積(556μm×556μm)で割ることで、単位面積(1mm)当たりとして断面積の和(mm/mm)を求めた。
(粒子解析条件)
・補間処理 : 完全補間
・フィルタ処理 : メジアン(3×3ピクセル)
・面補正 : 4次
(粒子解析条件)
・解析種類 : 突解析
・画像補正 : なし
・処理
高さ閾値 : 0.003μm
粒子整形 : なし
基準高さ : ゼロ面(平均面)
・判定対象
高さ/深さ : -10000μm ≦ h ≦ 10000μm
最長径 : -10000μm ≦ d ≦ 10000μm
体積 : V ≧ 0.0000μm
アスペクト比 : r ≧ 0.0000
・ヒストグラム : 分割数 50。
【0056】
(基準高さ:ゼロ面(平均面))
前記、基準高さ設定における「ゼロ面(平均面)」としては、前述の方法により顕微鏡像観察を行い、前述の画像処理を施した得られる測定画像(556μm×556μm)において、以下の式より自動的に求まる「高さの平均値(Ave)」の平面を用いる。
【0057】
【数1】
【0058】
・lx : 前述の画像処理を行った各測定画像におけるX方向の範囲長さ
・ly : 前述の画像処理を行った各測定画像におけるY方向の範囲長さ
・h(x,y):前述の画像処理を行った測定画像内の各画像点(x,y)における高さ。
【0059】
(2)算術平均粗さSa、最大高さSz
上記(1)と同様にして走査型白色干渉顕微鏡測定と画像処理を行った後、各像に対して、表面解析ソフトウェア内の「ISOパラメータ」解析において以下の解析条件とともに「Height Parameters」を選択して得られた数値群をパラメータシート欄に出力することで算術平均表面粗さSa(nm)、最大高さSz(nm)を得た。
【0060】
(ISOパラメータ解析条件)
下記の条件にてISOパラメータ解析処理を行う。
・S-Filter : 自動
・正規確率紙
分割数 : 300
計算範囲の上限 : 3.000
計算範囲の下限 : -3.000
・パラメータ : 「Height Parameters」のみを選択
・出力 : 「パラメータリスト」を選択。
【0061】
(パラメータシート出力)
上記ISOパラメータ解析によって表示される「ISOパラメータ」ウインドウ中の「Height Parameters」を選択し「パラメータシートに追加」を行うことで「パラメータシート」ウインドウの「ISOパラメータ」タブで表示される「Sa[nm]」「Sz[nm]」を用いる。
【0062】
(3)粒子の体積平均粒子径
フィルムからポリマーをプラズマ低温灰化処理法で除去し、粒子を露出させた。処理条件は、ポリマーは灰化されるが粒子は極力ダメージを受けない条件を選択した。処理後の試料を走査型電子顕微鏡(SEM;株式会社日立製作所製 S-4000型)で観察し、粒子画像をイメージアナライザ(株式会社ニレコ製 LUZEX_AP)に取り込み、等価円相当径を測定し、粒子の体積平均粒子径を求めた。SEMの倍率は粒子径により、5000~20000倍から適宜選択した。任意に観察箇所を変えて、少なくとも粒子数400個の粒子の等価円相当径を測定し、体積平均粒子径を求めた。なお、粒子の体積平均粒子径を測定する際に、SEMおよびTEMで観察した際に5000倍で10視野確認しても、粒子が認められなかった場合には、粒子を実質的に含有しないと判断した。
【0063】
(4)フィルムヘイズ
JIS K7105-1981に準じ、フィルム幅方向の中央部から、長手4.0cm×幅3.5cmの寸法に切り出したものをサンプルとし、ヘイズを、ヘイズメータ(スガ試験機製HGM-2DP(C光源用))を用いて測定する。
【0064】
(5)フィルム表面温度
フィルム表面温度はフィルム幅方向中央部の温度をキーエンス社製放射温度計(IT 2-100)にて、フィルム面に垂直な方向より、フィルム面から50cmの距離から測定した。
【0065】
(6)ロール表面粗さ
JIS B 0601に準拠し、Kosaka Lab製表面粗さ計(サーフコーダSE - 400)を用いて送り速さ0.1mm/s、測定長5.0mm、カットオフ値0.8mmでRmaxを測定した。
【0066】
(7)フィルム厚み
フィルム厚みは、ダイヤルゲージを用い、JIS K7130(1992年)A-2法に準じて、フィルムを10枚重ねた状態で任意の5ヶ所について厚さを測定した。その平均値を10で除した値をサンプルのフィルム厚みとした。
【0067】
(8)固有粘度
オルトクロロフェノール100mlに、ポリエステルフィルムを溶解させ(溶液濃度C(測定試料質量/溶液体積)=1.2g/100ml)、その溶液の25℃での粘度を、オストワルド粘度計を用いて測定した。また、同様に溶媒の粘度を測定した。得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、下記式(2)により、[η]を算出し、得られた値をもって固有粘度とした。
式(A) ηsp/C=[η]+K[η]・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)-1 Kはハギンス定数(0.343とする)である。
なお、測定試料を溶解させた溶液に無機粒子などの不溶物がある場合は、以下の方法を用いて測定を行った。
(1-1)オルトクロロフェノール100mLに測定試料を溶解させ、溶液濃度が1.2g/100mLよりも濃い溶液を作成する。ここで、オルトクロロフェノールに供した測定試料の質量を測定試料質量とする。
(1-2)次に、不溶物を含む溶液を濾過し、不溶物の質量測定と、濾過後の濾液の体積測定を行う。
(1-3)濾過後の濾液にオルトクロロフェノールを追加して、(測定試料質量(g)-不溶物の質量(g))/(濾過後の濾液の体積(mL)+追加したオルトクロロフェノールの体積(mL))が、1.2g/100mLとなるように調整する。( 例えば、測定試料質量2.0g/溶液体積100mLの濃厚溶液を作成したときに、該溶液を濾過したときの不溶物の質量が0.2g、濾過後の濾液の体積が99mLであった場合は、オルトクロロフェノールを51mL追加する調整を実施する。((2.0g-0.2g)/(99mL+51mL)=1.2g/100mL))
(1-4)(1-3)で得られた溶液を用いて、25℃での粘度をオストワルド粘度計を用いて測定し、得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、上記式(3)により、[η]を算出し、得られた値をもって固有粘度とする。
【0068】
(9)フォトレジスト評価
(i)レジスト配線パターン作成
以下a.からc.の方法により分割縮小露光法を用いたレジスト評価を行う。
【0069】
a.片面鏡面研磨した6インチSiウエハー上に、東京応化(株)製のネガレジスト“PMERN-HC600”を塗布し、大型スピナーで回転させることによって厚み7μmのレジスト層を作製する。次いで、窒素循環の通風オーブンを用いて70℃の温度条件で約20分間の前熱処理を行う。
【0070】
b.本発明のポリエステルフィルムの表面(B)をレジスト部材と接触するように重ね、ゴム製のローラーを用いて、レジスト層上にポリエステルフィルムをラミネートし、ラミネート状態を後述の(ii)に記載の通り確認し、その上に、クロム金属でパターニングされたレチクルを配置し、そのレクチル上から投影レンズを具備したi線(波長365nmにピークをもつ紫外線)ステッパーを用いた分割縮小露光を行う。
【0071】
c.レジスト層からポリエステルフィルムを剥離した後、現像液N-A5が入った容器にレジスト層を入れ約1分間の現像を行う。その後、現像液から取り出し、水で約1分間の洗浄を行う。現像後に作成されたレジスト配線パターンのL/S(μm)(Line and Space)=5/5μmの30本の状態を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて約800~3000倍率で観察する。
【0072】
(ii)レジスト欠陥抑制評価
前項(i)にて観察した30本のレジストパターンに関して、配線が1.5μm以上のサイズで失われた(配線欠点)本数を確認し、フィルムのレジスト欠陥抑制を下記の通り評価する。〇または△を合格とした。
〇:欠けのある本数が3本以下。
△:欠けのある本数が4本以上10本未満。
×:欠けのある本数が10本以上。
【0073】
(iii)レジスト部材密着性評価
前記(i)に記載の方法にて作成したラミネートサンプル30枚用意し、各サンプルの5ヶ所を光学顕微鏡にて50倍観察を行い、貼り合わせ時に生じる気泡数をカウントし、レジスト部材との密着性を以下の通り評価した。◎、〇、△を合格とした。
◎:気泡の確認できるサンプルが2枚以下。
〇:気泡の確認できるサンプルが3枚以上5枚未満。
△:気泡の確認できるサンプルが5枚以上8枚未満。
×:気泡の確認できるサンプルが8枚以上。
【0074】
(iv)レジスト解像度
L/S(μm)(Line and Space)=5/5μmおよび2/2μmでレジスト配線パターンを作成し、走査型電子顕微鏡S E M を用いて1 0 0 0 倍率で観察し、レジスト解像度を以下の通り評価した。〇または△を合格とした。
○:L/S=2/2μmが明確に確認できる。
△:L/S=2/2μmは明確に確認できないが、L/S=5/5μmは明確に確認できる。
×:L/S=5/5μmが明確に確認できない。(生産適用不可)。
【0075】
(10)レジストフィルムのハンドリング性
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムを支持体として、表面(B)側にネガ型感光性樹脂からなるレジスト層をコーティングにより形成し、レジストフィルムを作製した。レジストフィルム製造時のハンドリング性としてすべり性の評価は、以下の基準に従った。〇または△を合格とした。
○:適正なすべり性を有し、ハンドリング性が良好。
△:すべり性が悪く、ハンドリング性に劣る。
×:適正なすべり性がないため、ハンドリング困難(生産適用不可)。
【0076】
(11)搬送性
連続製膜したポリエステルフィルムを、長さ4000mのロールとして搬送速度100m/minで巻き取る。その際、ロール表面を、欠点検出器を用いて発生するキズに由来する欠点数をカウントしフィルム搬送性を下記の通り評価した。◎、〇、△を合格とした。
◎:ロールの内、キズ由来の欠点数が3以下。
〇:ロールの内、キズ由来の欠点数が4以上7以下。
△:ロールの内、キズ由来の欠点数が8以上10以下。
×:ロールの内、キズ由来の欠点数が11以上。
【0077】
(12)巻取り性
巻き取られたロールにシワが発生しているか蛍光灯下で目視検査した。続いてフィルムを1m繰り出しフィンガーテンションをかけ、発生していたシワが消えるか蛍光灯下で目視検査し、フィンガーテンションで消えないシワを強レベルのシワ、消えるシワを弱レベルのシワとした。強レベルのシワが発生しているロールを不合格とし、10ロール検査した結果を、下記基準で判定した。◎、〇、△を合格とした。
◎:10ロールのうち不合格ロールが無く、かつ合格ロールのうち弱レベルのシワが発生したロールが2ロール以下。
〇:10ロールのうち不合格ロールが無く、かつ合格ロールのうち弱レベルのシワが発生したロールが3ロール以上4ロール以下。
△:10ロールのうち不合格ロールが2ロール以下かつ合格ロールのうち弱レベルのシワが発生したロールが5ロール以上10ロール以下。
×:10ロールのうち不合格ロールが3ロール以上。
【0078】
以下に実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0079】
(原料)
(ポリエステルAの作成)
テレフタル酸およびエチレングリコールから、三酸化アンチモンを触媒として常法により重合を行い、実質的に粒子を含有しない固有粘度は0.65dl/gのポリエチレンテレフタレートペレット(ポリエステルA)を得た。
【0080】
(ポリエステルBの作成)
固有粘度を0.54dl/gとした以外は、ポリエステルAの作成と同様して、ポリエステルBを作成した。
【0081】
(ポリエステルCの作成)
上記ポリエステルAと同様にポリエステルを製造するにあたり、ポリエチレンテレフタレートに対する添加量が1.5重量%となるように、エチレングリコールに分散させた体積平均粒子径100nmのδアルミナ粒子を添加し、δアルミナ含有ポリエチレンテレフタレートペレット(ポリエステルC)を得た。
【0082】
(ポリエステルDの作成)
上記ポリエステルAと同様にポリエステルを製造するにあたり、ポリエチレンテレフタレートに対する添加量が0.5重量%となるように、エチレングリコールに分散させた体積平均粒子径60nmのコロイダルシリカ粒子を添加し、シリカ含有ポリエチレンテレフタレートペレット(ポリエステルD)を得た。
【0083】
(ポリエステルEの作成)
コロイダルシリカ粒子の体積平均粒子径を200nm、添加量を0.2重量%とした以外は、ポリエステルDの作成と同様にしてポリエステルEを作成した。
【0084】
(ポリエステルFの作成)
モノマーを吸着させる方法によって得た体積平均粒子径300nm、体積形状係数f=0.51のジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子の水スラリーを、上記の実質的に粒子を含有しないホモポリエチレンテレフタレートペレットに、ベント式二軸混練機を用いて含有させ、体積平均粒子径300nmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子をポリエチレンテレフタレートに対し2.0重量%含有するポリエチレンテレフタレートペレット(ポリエステルF)を得た。
【0085】
(ポリエステルG、Hの作成)
体積平均粒子径300nm、450nmのジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子の水スラリーを用いて、ポリエステルFの作成と同様にして、ジビニルベンゼン/スチレン共重合架橋粒子をそれぞれ0.2重量%、1.0重量%含有するポリエチレンテレフタレートペレット(それぞれポリエステルG、H)を得た。
【0086】
(実施例1)
各層について表1に示した配合で調合した原料の混合物を、ブレンダー内で撹拌し120~140℃で1時間以上減圧乾燥したのち、それぞれ別の押出機に供給した。275℃で溶融押出し、フィルターで濾過した後、3層用合流ブロックで(表面Aを有する層)/(中間層)/(表面Bを有する層)となるように合流積層し、285℃に保ったスリットダイを介し表面温度25℃に保たれたキャスティングドラムに巻き付け冷却固化して未延伸シートを得た。このとき、キャストドラムの表面温度は25℃とした。
【0087】
この未延伸シートを相対する電極とアースロール間に導き、装置中に窒素ガスを導入し、処理強度(E値)が500W・min/mとなる条件で大気圧グロー放電処理を表面(B)に施した。
【0088】
この大気圧グロー放電処理後の未延伸シートを60~130℃の加熱ロールで予熱後、表1に示すフィルム温度で長手方向3.3倍に延伸し、続けて、20~50℃で一軸延伸後のフィルムを冷却させた。さらに、引き続いてステンタにて110℃の熱風下で幅方向に3.8倍延伸後、定張下、230℃で5秒間熱処理し、その後、幅方向に2.9%の弛緩処理を施し、厚さ16μmの二軸配向ポリエステルフィルムの中間製品を得た。この中間製品をスリッターにてスリットし、厚さ16μmの二軸配向ポリエステルフィルムのロールを得た。得られたフィルムロールの評価結果を表1に示した。
【0089】
(実施例2、4、7)
各層のポリエステル樹脂、層構成、フィルム厚み、大気圧グロー放電処理の処理強度(E値)、フィルム温度を表1の通りとしたこと以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムのロールを得た。評価結果を表1に示した。
【0090】
(実施例3、5、6、9)
各層のポリエステル樹脂、層構成、フィルム厚み、フィルム温度を表1の通りとし、大気圧グロー放電処理を施さなかったこと以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムのロールを得た。評価結果を表1に示した。
【0091】
(実施例8)
各層のポリエステル樹脂、層構成、フィルム厚み、フィルム温度を表1の通りの条件とし、実施例3と同様にして長手方向4.0倍に延伸し一軸延伸後のフィルムを得た。さらに引き続いてステンタにて110~115℃の熱風下で幅方向に4.4倍延伸後、定張下、221℃で5秒間熱処理し、その後、幅方向に2.4%の弛緩処理を施し、以降は実施例3と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムのロールを得た。評価結果を表1に示した。
【0092】
(比較例1~8)
各層のポリエステル樹脂、層構成、フィルム厚み、大気圧グロー放電処理の処理条件(処理の有無、強度(E値))、フィルム温度を表2の通りとし、長手方向の延伸倍率を3.9倍としたこと以外は実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムのロールを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示した。しかし、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、実施例1に比べ表面平滑性に劣り、レジスト解像度と搬送性、巻取り性のすべてを満足するフィルムは得られなかった。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
表1、表2から、実施例1~9の二軸配向ポリエステルフィルムは、表面平滑性と搬送性、巻取り性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムを得ることができる。