(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086628
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】産業用資産の健全性監視用スマートコントローラ
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
G05B23/02 G
G05B23/02 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023207392
(22)【出願日】2023-12-08
(31)【優先権主張番号】202211072577
(32)【優先日】2022-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】18/214,809
(32)【優先日】2023-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521141590
【氏名又は名称】シュナイダー・エレクトリック・システムズ・ユーエスエイ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Schneider Electric Systems USA, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(72)【発明者】
【氏名】バッタチャリヤ,アミターバ
(72)【発明者】
【氏名】ゴットゥムッカラ,スリスハシニ
(72)【発明者】
【氏名】チャンダナプルカール,プラシャーント
(72)【発明者】
【氏名】シンハ,バスカル
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA23
3C223BA01
3C223BB17
3C223EB01
3C223FF13
3C223FF16
3C223FF17
3C223FF23
3C223FF42
3C223GG01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シャットダウンの可能性と安全動作状態の早期警告を提供し、重要な資産がシャットダウンされる可能性が低くするスマートコントローラを提供する。
【解決手段】スマートコントローラは、資産がシャットダウンする可能性があるか否かをリアルタイムに判断するためにデータを継続的に監視し、シャットダウンする可能性がある場合、資産が動作を継続するがシステムのトリップにつながらないような新しい設定値を推奨する。スマートコントローラは、実行前にシミュレーションエンジンを実行して新しい設定値をテストし、シャットダウンを回避しながら性能を最適化する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラであって、
産業プロセスの資産に結合された制御プロセッサであって、前記制御プロセッサは、前記資産を制御するための制御信号を生成するように構成され、前記制御信号に応答して、前記資産が前記産業プロセスの動作を実行する、制御プロセッサと、
前記制御プロセッサに結合された資産状態モニタであって、前記資産状態モニタは、前記資産を制御する前記制御信号と、前記動作の実行中に前記資産を監視する1つまたは複数のセンサによって生成された少なくとも1つのセンサ信号とに基づいて、前記資産の現在の状態を決定するように構成され、前記制御プロセッサが、前記資産の決定された現在の状態に基づいて修正された制御信号を生成するようにさらに構成される、資産状態モニタと、
前記制御プロセッサに結合されたシミュレーションエンジンであって、前記シミュレーションエンジンは、前記修正された制御信号に応答して前記産業プロセスの動作を実行する前記資産を、シミュレートし、前記資産の関数として前記資産の将来の状態を予測するように構成される、シミュレーションエンジンと、を備え、
前記制御プロセッサは、前記資産の予測された将来の状態が前記資産が所望の状態で動作していることを示す場合、前記修正された制御信号に応答して前記資産を制御するために前記修正された制御信号を提供するようにさらに構成される
コントローラ。
【請求項2】
前記資産状態モニタは、前記資産の現在の状態を決定するために、振動解析、電流シグネチャ解析、電圧シグネチャ解析、および周波数領域パターン解析のうちの少なくとも1つを実行するように構成されている、
請求項1に記載のコントローラ。
【請求項3】
前記制御信号は、前記資産の動作設定値を指定し、前記修正された制御信号は、前記資産の新たな動作設定値を指定する、
請求項1または2に記載のコントローラ。
【請求項4】
前記制御プロセッサは、前記新たな動作設定値を設定するための反復プロセスを実行するように構成されている、
請求項3に記載のコントローラ。
【請求項5】
前記制御プロセッサは、前記資産の予測された将来の状態が、前記資産が望ましくない状態で動作していることを示す場合に、前記修正された制御信号を生成し、前記新たな動作設定値は、前記資産が最後に前記望ましい状態で動作したときの以前の設定値に戻る、
請求項3または4に記載のコントローラ。
【請求項6】
前記資産は、モータまたはポンプを備え、前記新たな動作設定値は、それぞれ前記モータまたは前記ポンプの動作に関連する、
請求項1から5のいずれか1項に記載のコントローラ。
【請求項7】
前記制御プロセッサは、前記資産の決定された現在の状態が、前記資産が望ましくない状態で動作していることを示す場合に、前記修正された制御信号を生成する、
請求項1から6のいずれか1項に記載のコントローラ。
【請求項8】
前記望ましくない状態は、過度の振動、異常なモータ電流シグネチャ、またはその両方を示す、
請求項1から7のいずれか1項に記載のコントローラ。
【請求項9】
産業プロセスの動作を実行する産業資産を制御する方法であって、
前記資産を制御するための設定値を前記資産に提供し、前記資産が前記設定値に基づいて前記産業プロセスの動作を実行する、提供すること、
前記産業プロセスの動作を実行する前記資産の1つまたは複数の動作パラメータを監視すること、
前記設定値および前記1つまたは複数の動作パラメータに基づいて、前記資産の現在の状態を決定すること、
前記資産が望ましくない状態で動作していることを示す現在の状態に応答して、前記望ましくない状態に対処するための前記資産の新たな設定値を特定すること、
前記新たな設定値に基づいて動作する前記資産の関数として前記資産の将来の状態を予測すること、及び
前記資産の予測された将来の状態が、前記資産が所望の状態で動作していることを示す場合に、前記新しい設定値を提供すること、を含む
方法。
【請求項10】
前記資産の現在の状態を決定することは、振動分析、電流シグネチャ分析、電圧シグネチャ分析、および周波数領域パターン分析のうちの少なくとも1つを実行することを含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記新たな設定値を特定することは、前記新たな動作設定値を設定するための反復プロセスを実行することを含む、
請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記新たな設定値を特定することは、前記資産が前記所望の状態で最後に動作したときの以前の設定値に戻すことを含む、
請求項9から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記資産の将来の状態を予測することは、前記新たな設定値に基づいて動作する前記資産のシミュレーションを実行することを含む、
請求項9から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
自動化システムであって、
産業プロセスの資産と、
前記資産に結合された制御プロセッサであって、前記制御プロセッサは、前記資産を制御するための制御信号を生成するように構成され、前記制御信号に応答して、前記資産が産業プロセスの動作を実行する、制御プロセッサと、
前記動作の実行中に前記資産を監視して、それを表す少なくとも1つのセンサ信号を生成するように構成された1つまたは複数のセンサと、
コンピュータ実行可能命令を記憶するメモリと、を備え、前記コンピュータ実行可能命令は実行されると、
前記資産を制御する前記制御信号と前記少なくとも1つのセンサ信号とに基づいて、前記資産の現在の状態を決定すること、
前記資産の決定された現在の状態に基づいて、修正された制御信号を生成すること、
前記修正された制御信号に応答して前記産業プロセスの動作を実行する前記資産を、シミュレートすること、
前記シミュレートすることの関数として前記資産の将来の状態を予測すること、及び、
前記資産の予測される将来の状態が前記資産が所望の状態で動作していることを示す場合、前記修正された制御信号に応答して前記資産を制御するために前記修正された制御信号を提供すること
のために、前記制御プロセッサを構成する
自動化システム。
【請求項15】
記資産の現在の状態を決定することは、振動分析、電流シグネチャ分析、電圧シグネチャ分析、および周波数領域パターン分析のうちの少なくとも1つを実行することを含む、
請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記制御信号が、前記資産の動作設定値を指定し、前記修正された制御信号が、前記資産の新たな動作設定値を指定する、
請求項14または請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記制御プロセッサは、前記新たな動作設定値を設定するための反復プロセスを実行するように構成されている、
請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記修正された制御信号を生成することは、前記資産が望ましくない状態で動作していることを示す前記資産の予測された将来の状態に応答し、前記新たな動作設定値は、前記資産が最後に望ましい状態で動作したときの以前の設定値に戻る、
請求項16または請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記資産は、モータまたはポンプを備え、前記新たな動作設定値は、それぞれ前記モータまたは前記ポンプの動作に関連する、
請求項14から18のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項20】
前記修正された制御信号を生成することは、前記資産が望ましくない状態で動作していることを示す前記資産の決定された現在の状態に応答する、
請求項14から19のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項21】
前記望ましくない状態は、過度の振動、異常なモータ電流シグネチャ、またはその両方を示す、
請求項14から20のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願への相互参照】
【0001】
本出願は、2022年12月15日に出願されたインド特許出願第202211072577号および2023年6月27日に出願された米国特許出願第18/214,809号の優先権を主張し、その全内容はあらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
現在、ポンプやモータなどの重要な産業資産には、状態監視システム(振動解析、モータ電流シグネチャ解析など)が設置されている。監視システムは、振動データまたは電流シグネチャデータを測定し、「閾値ベースの」安全システムとして機能する。つまり、閾値ベースの安全システムは、オペレータに警告を発するためのアラームを発生させるための上限値と下限値を提供し、上限値または下限値を超えた場合は、資産を完全にシャットダウンする。残念なことに、資産を突然シャットダウンすると、重要な動作において望ましくないプロセスの中断につながることが多い。さらに、シャットダウン後の再稼働に時間がかかると、生産ロスにつながることもある。資産は通常、摩擦、機械的負荷の変動、環境条件などによって経年劣化するため、閾値ベースの安全システムによってシャットダウンされる可能性が高くなる。
【発明の概要】
【0003】
本開示の態様は、安全システムによって資産がシャットダウンされる可能性があるかどうかをリアルタイムで判定し、シャットダウンされる可能性がある場合には、安全システムをトリップさせることなく資産が動作し続ける新たな設定値を推奨するための、状態監視システムからのデータの継続的な監視を提供する。このようにして、本開示に従ったスマートコントローラは、シャットダウンの可能性と安全動作状態の早期警告を提供し、重要な資産がシャットダウンされる可能性が低くなるようにする。
【0004】
ある態様において、コントローラは、産業プロセスの資産に結合された制御プロセッサと、制御プロセッサに結合された資産状態モニタ及びシミュレーションエンジンとを備える。制御プロセッサは、資産を制御するための制御信号を生成するように構成され、資産は、制御信号に応答して産業プロセスの動作を実行する。資産状態モニタは、資産を制御する制御信号と、動作の実行中に資産を監視するセンサによって生成されたセンサ信号とに基づいて、資産の現在の状態を決定するように構成される。制御プロセッサは、さらに、決定された資産の現在の状態に基づいて修正された制御信号を生成するように構成される。シミュレーションエンジンは、修正された制御信号に応答して産業プロセスの動作を実行する資産をシミュレートし、その関数として資産の将来の状態を予測するように構成される。制御プロセッサは、さらに、予測された資産の将来の状態が、資産が所望の状態で動作することを示す場合に、それに応答して資産を制御するために修正された制御信号を提供するように構成される。
【0005】
別の態様において、産業プロセスの動作を実行する工業資産を制御する方法は、資産を制御するために資産に設定値を提供することを含み、資産は設定値に基づいて産業プロセスの動作を実行する。本方法はまた、産業プロセスの動作を実行する資産の動作パラメータを監視することと、設定値及び動作パラメータに基づいて資産の現在の状態を判定することと、資産が望ましくない状態で動作していることを示す現在の状態に応答して、望ましくない状態に対処するために資産の新しい設定値を特定することとを含む。本方法はさらに、新しい設定値に基づいて、動作する資産の関数として資産の将来の状態を予測することと、予測された資産の将来の状態が、資産が所望の状態で動作していることを示す場合に、新しい設定値を資産に提供することとを含む。
【0006】
さらに別の態様では、自動化システムは、産業プロセスの資産と、資産に結合された制御プロセッサと、産業プロセスの動作の実行中に資産を監視するように構成されたセンサと、コンピュータ実行可能命令を記憶するメモリとを備える。制御プロセッサは、資産を制御するための制御信号を生成するように構成され、資産は、制御信号に応答して動作を実行する。実行されると、コンピュータ実行可能命令は、制御プロセッサを、資産を制御する制御信号及びセンサ信号に基づいて資産の現在の状態を決定すること、資産の決定された現在の状態に基づいて修正された制御信号を生成すること、修正された制御信号に応答して産業プロセスの動作を実行する資産をシミュレートすること、及びシミュレートすることの関数として資産の将来の状態を予測することのために構成する。修正された制御信号は、予測された資産の将来の状態が、資産が所望の状態で動作していることを示す場合に、資産を制御するために提供される。
【0007】
本開示の他の目的および特徴は、本明細書において部分的に明らかにされ、部分的に指摘される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態によるプロセス制御システムを示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態による
図1の制御システムのさらなる態様を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態による
図2の制御システムのさらなる態様を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態による資産状態監視システムによって生成されるオペレータ支援メッセージの例である。
【
図5】
図5は、別の実施形態によるプロセス制御システムを示すブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態によるシミュレーションエンジンのさらなる態様を示すブロック図である。
【0009】
対応する参照番号は、図面全体を通して対応する部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、例示的なプロセス制御システム100の基本構造を示している。実施形態において、プロセス102は、コントローラ104およびセンサ106に通信可能に接続されている。プロセス102は、プロセスが出力112を生成するために必要な入力を含む入力108および110を有する。一実施形態では、入力108は、プロセス102に電力を供給するためのエネルギーを含み、入力110は、プロセス102で使用するための物理的または化学的原材料を含む。出力112は、プロセスからの物理的もしくは化学的生成物、または電気などの形で生成されたエネルギーを含む。
【0011】
コントローラ104は、コントローラ104の目標に従ってプロセス102の動作を指示するために、プロセス102にデータを送信する。送信されるデータは、ポンプ、モータ、バルブ、アクチュエータなど、プロセスの様々なタイプのプロセス要素、すなわち資産114を操作するコマンドで構成される。資産114は、エネルギーおよび材料を付加価値製品または生産物に変換するために使用される、機械的、化学的、電気的、生物学的、または複合的な機構または機構のセットであってもよい。センサ106は、様々なポイントでプロセス102を監視し、それらのポイントからデータを収集する。そして、センサ106は、収集したデータをコントローラ104に送信する。収集されたデータに基づいて、コントローラ104は、プロセス102に追加のコマンドを送ることができる。このようにして、システム100は、制御フィードバックループを形成し、コントローラ104は、センサ106によって観察されるプロセス102の変化に反応する。コントローラ104のコマンドに従ってプロセス102によって実行される異なるアクションは、センサ106によって収集されるデータを変更する可能性があり、したがって、それらの変化に応答してコントローラ104によるさらなる調整を引き起こす。この制御フィードバックループを実装することにより、プロセス102は、効率的な方法でコントローラ104によって制御される。
【0012】
安全動作を確実にするために、コントローラ104は、重要な資産114の振動分析、モータ電流シグネチャ分析などを実行するための、センサ106に応答する1つまたは複数の資産状態または健全性監視システム116を含む。図示された実施形態では、システム100は、プロセス、アラーム、およびイベント履歴データを含む産業用データをキャプチャして保存するように構成されたヒストリアン118も含む。
【0013】
ここで
図2を参照すると、本開示の態様を具現化する追加のソフトウェアコンポーネントが、コントローラ104と統合され、資産状態とプロセスパラメータの両方に基づいて資産を制御することを可能にする。
図2において、コントローラ104は、可変速ドライブを有するモータとして図示されている資産114に設定値を指令するための制御プロセッサ202を備える。上述したように、資産114は、プロセス102の任意の制御要素であり得る。資産状態モニタ116は、資産の健全性データを提供する。一実施形態では、コントローラ104は、制御プロセッサ202によって実行されると、資産状態モニタ116を実装するようにコントローラ104を構成するコンピュータ実行可能命令を記憶するメモリを含む。スマートコントローラ104は、資産114が機械的故障となるときを検出するために、資産データを用いて訓練される。資産健全性データを受信すると、資産114の健全性状態が良好である場合、制御プロセッサ202は、性能を最適化するための新しい設定値を設定する。一方、資産114の健全性状態が良好でない場合、制御プロセッサ202は、健全性状態が良好であったときの安全な値に設定値をロールバックまたは戻す。
【0014】
コントローラ104は、好ましくは、資産114がシャットダウンされる可能性があるかどうかをリアルタイムで判定するために、資産状態モニタ116からのデータの継続的な監視を提供し、シャットダウンされる可能性がある場合、コントローラ104は、資産114を、安全システムのトリップなしに資産114が動作を継続する新しい設定点で動作させる。このようにして、本開示によるスマートコントローラ104は、シャットダウンの可能性を早期に警告し、重要な資産がシャットダウンされる可能性が低くなるようにする。
【0015】
一実施形態では、コントローラ104は、シミュレータエンジン204内の資産障害検出の知識ベースを維持する。シミュレータエンジン204の知識ベースは、資産114の異常動作を問い合わせるように構築および構成される。シミュレータエンジン204は、新しい設定値で産業資産114の動作をシミュレートする。例えば、シミュレータエンジン204は、資産の振動データに基づいて潜在的な機械的故障のタイプを分類し、新しい設定点でコントローラプロセッサ202と対になるように資産114の健全性状態を予測し、新しい設定点で処理を進めるか、または資産114を最も近い安全な設定点に戻す決定を行う。トリップ限界につながる望ましくない状態(例えば、ハイハイを横切る(crossing high-high))が発生した場合、シミュレーションエンジン204は、トリップを防止する、最後の既知の安全な設定値などの所望の状態にリセットして戻すように、制御プロセッサ202に警告する。一実施形態では、コントローラ104は、制御プロセッサ202によって実行されると、シミュレーションエンジン204を実装するようにコントローラ104を構成する、コンピュータ実行可能命令を記憶するメモリを含む。
【0016】
このようにして、コントローラ104のシミュレータエンジン204、またはデジタルツイン部分は、最適な設定値が達成されるまで、資産状態モニタ116によって識別された異常な状態に対処または克服することを意図した設定値のテストおよび調整(必要な場合)を可能にする。そして、最適な設定値がシミュレータエンジン204で達成されると、コントローラ104は、新しい最適な設定値に応答して、またはそれを使用して、実資産114を制御する。設定値を選択し最適化する実験は、シミュレータエンジン204内で行われるため、最適設定値の選択中に資産114が損傷するのを防ぐことができる。
【0017】
本開示に従って動作するコントローラ104は、プロセスパラメータだけでなく、資産の状態(例えば、振動、モータ電流シグネチャ分析などを使用)に基づいて、資産動作パラメータを制御する。さらに、コントローラ104は、その間、資産114の稼働時間が確保され、資産114のダウンタイムを防止してプロセスが安定した状態に維持されるように、動作パラメータを制御する。また、コントローラ104は、プロセスおよび資産の状態のデジタルツインをシミュレートし、資産114の状態が変化する前に、資産114の致命的な故障が発生する前に、資産の状態を予測できる。
【0018】
図3は、
図2の制御システムの追加の態様を示す。
図3の実施形態によれば、コントローラ104は、資産114に設定値を指令するための制御プロセッサ202を備える。動作監視システム302は、資産114の健全性を決定するために、資産状態モニタ116から資産健全性データを受信する。スマートコントローラ104は、資産114に機械的故障が発生したことを検出するための資産データを用いて訓練される。資産データを受信すると、動作監視システム206は、資産状態を識別し、資産114の健全性状態が良好である場合、動作監視システム302は、制御プロセッサ202に、性能を最適化するための新しい設定値を設定させる。一方、資産114の健全性状態が良好でない場合、動作監視システム302は、制御プロセッサ202に、健全性状態が良好であったときの値に設定値をロールバックまたは戻すようにさせる。機械的な故障が検出された場合、コントローラ104は、ヒューマンマシンインターフェース(HMI)システム304を介して、オペレータにメンテナンスアラームを発する。一実施形態では、コントローラ104は、制御プロセッサ202によって実行されると、コントローラ104を構成して動作監視システム302を実装する、コンピュータ実行可能命令を記憶するメモリを含む。
【0019】
本開示の態様を具現化する最適化サブシステム306は、プロセスデータ、資産データ、および故障状態を識別し、メンテナンスエンジニアに解決策を推奨できる人工知能ベースの技術を使用する。リソースの最大利用率および稼働時間は、アウトプットの品質および製造製品の収益性に影響を及ぼす重要な要因である。一実施形態では、サブシステム306が新しい設定値を生成する。
【0020】
一実施形態では、シミュレータエンジン204は、資産状態モニタ116および動作モニタ302と協働して、プロセスパラメータの変化によるプラントトリップまたは出力品質の変化のリスクを低減するための新しい設定値の結果について、通信を可能にし、制御プロセッサ202にアクションを提案する。
【0021】
典型的なコントローラは、プロセスパラメータのみを見ており、資産状態を見ていない。本開示の態様によれば、スマートコントローラ104(例えば、フィールドコントロールプロセッサ(FCP)280スマートコントローラ)は、最適なプラントスループットを達成するために、プロセスデータおよび資産の健全性状態を使用する。コントローラ104は、プロセス102を最小のランダム性で動作させるために取るべき1つまたは複数のアクションを提案できる。スマートコントローラ104は、致命的な状態が発生した場合、資産114を安全ポイントに戻し、プラントのトリップの可能性を低減し、したがって、資産寿命を改善する。また、設定値を最適な状態に変更するためのオペレータの労力も軽減される。
【0022】
実施形態では、コントローラ104は、資産114の異常な作業状態を識別するために、産業資産パラメータを測定および分析する。例えば、必要とされる一次データは振動データであり、二次データはモータ電流シグネチャまたは任意の他のプロセスパラメータであってもよい。時間の経過とともに、ポンプやモータなどの資産114は、摩擦や他の物理的影響により劣化する。本開示の態様を具現化するコントローラ104は、そのような劣化を識別し、資産の状態に基づいて新しい設定値を推奨できる。シミュレータエンジン204を使用して、新しい設定値または動作で産業資産114の動作をシミュレートすることは、新しい設定値を動作に投入する前にテストすることを可能にする。産業資産に最適な設定値または動作条件を特定した後に産業資産114の動作を制御することで、望ましくないシャットダウンを防ぐことができる。
【0023】
市場における現在の解決策は、電源をオフにすることによって資産114を節約することに重点を置いているが、これは望ましくないダウンタイムにつながる。本開示の制御システム100は、例えばポンプの安全性と稼働時間のバランスが維持されるように、最適な動作条件を制御することによって資産114の安全を保つ。このアプローチにより、高価なダウンタイムが回避され、生産に悪影響が及ばないことが保証される。
【0024】
図4は、動作中の資産状態モニタ116からのメッセージの例を示す。402で、資産状態モニタ116は、コントローラ104が資産114(例えば、モータ)のRPM設定値を増加できるような安定動作を示す。404において、資産状態モニタ116は、アンバランス障害に起因する不満足な動作を示すが、モータの振動は、資産の健全性がクリティカルになるのに十分な時間、ガイドラインを超えていない。406で、資産状態モニタ116からのメッセージは、ミスアライメント、ゆるみ、アンバランス障害の結果、資産の健全性がクリティカルになったことを示している。この例では、モータの振動がガイドラインを超えている。408で、コントローラ104は、設定値を前の値にロールバックする。この結果、資産状態モニタ116は、ミスアライメントおよびアンバランス障害に起因する不満足な動作を示すが、モータの振動は危機的(critical)ではない。410で、コントローラ104は設定値を再度ロールバックし、資産114を安定動作に戻す。
【0025】
図5は、制御システムが直接フィードバックに応答する別の実施形態によるプロセス制御システムを示すブロック図である。
図5において、例えば最適化サブシステム306によって具現化されるプロセスアドバイザーは、新しい流量設定値を推奨し、これは、分散制御システム(DCS)のコントローラ104によってポンプRPMに変換される。DCSは、新しい流量設定点に基づいて速度の変更を決定する。例えば、DCSが速度を300RPMから500RPMに変更したい場合、DCSは、200RPMの増加を30ステップ(1ステップにつき約7RPM上昇する)で達成することを決定できる。各増速後、DCSは振動監視システムからフィードバックを受け取る(例えば、資産状態モニタ116)。DCSは、振動監視システムからのフィードバックが、新しい速度でポンプの健全性が良好であることを示す場合にのみ、次の増速ステップに進む。一方、フィードバックが否定的であれば、DCSはポンプを安定した以前の速度に戻すために速度を下げる。
【0026】
図6は、実施形態による制御システム100のさらなる態様を示すブロック図である。図示された実施形態では、制御プロセッサ202は、シミュレーションエンジン204からのフィードバックに応答する。
図6において、プロセスアドバイザー(例えば、最適化サブシステム306)は、新しい流量設定値を推奨し、これは、DCSのコントローラ104によってポンプRPMに変換される。DCSは、新しい流量設定値に基づいて速度の変更を決定する。例えば、DCSが速度を300RPMから500RPMに変更したい場合、DCSは200RPMの増加を30ステップで達成すべきと決定できる(1ステップにつき約7回転上昇する)。DCSは新しい速度をシミュレータエンジン204に送り、システム状態フィードバックを受け取る。シミュレータフィードバックに基づいて、DCSは、ポンプ速度をステップで増加または減少させる(例:全速度変化の10)。シミュレーションエンジン204は、新しい速度を達成できない場合も示唆する。各増速後、DCSは振動監視システムからのフィードバックを受信する(例えば、資産状態モニタ116)。DCSは、振動監視システムからのフィードバックが、ポンプの健全性が新しい速度で良好なままであることを示す場合にのみ、速度を増加させる次のステップをとる。一方、フィードバックが否定的な場合、DCSはポンプを安定した以前の速度に戻すために速度を下げる。
【0027】
ある態様において、モータまたはポンプなどの産業資産114の動作を制御するための方法は、資産114の振動、モータ電流シグネチャ分析、および他の条件パラメータを測定または計算(すなわち、監視)することを含む。本方法はさらに、周波数領域でデータを分析し、それに応答して異常状態を示すパターンを識別することを含む。本方法はまた、異常状態に対処又は克服するために資産114の新しい設定値又は動作条件を特定することと、設定値又は動作条件を新しい設定値又は動作条件に更新することに応答して資産114の振動パターンを予測することとを含む。一実施形態では、新しい設定値または動作条件は、反復プロセスを使用して特定され、その結果生じる振動パターンは、シミュレータエンジン204を使用して予測される。本方法はさらに、新しい設定値または動作条件が、異常状態に対処または克服するための資産114にとって最適な設定値または動作条件であるかどうか、および新しい設定値または動作条件を安全に適用できるかどうかを判定することを含む。新しい設定値または動作条件が、異常な状態に対処または克服するための資産114にとって最適な設定値または動作条件であり、新しい設定値または動作条件を安全に適用できると判定することに応答して、本方法は、(例えば、資産の致命的な故障を回避し、資産の寿命を延ばすために)資産の健全性データ(例えば、振動データ)およびプロセスデータを使用して資産114を制御することを含む。
【0028】
本開示の実施形態は、本明細書でより詳細に説明するように、様々なコンピュータハードウェアを含む専用コンピュータを構成できる。
【0029】
説明の目的で、プログラムおよび他の実行可能なプログラムコンポーネントは、個別のブロックとして示されることがある。しかし、このようなプログラムおよびコンポーネントは、コンピューティングデバイスの異なるストレージコンポーネントに様々なタイミングで存在し、デバイスのデータプロセッサ(複数可)によって実行されることが認識される。
【0030】
例示的なコンピューティングシステム環境に関連して説明されているが、本発明の態様の実施形態は、他の特別な目的のコンピューティングシステム環境または構成で動作可能である。コンピューティングシステム環境は、本発明の任意の態様の使用範囲または機能性に関する制限を示唆することを意図していない。さらに、コンピューティングシステム環境は、例示された動作環境に例示されたコンポーネントのいずれか1つまたは組み合わせに関連する依存関係または要件を有すると解釈されるべきではない。本発明の態様と共に使用するのに適したコンピューティングシステム、環境、および/または構成の例としては、パーソナルコンピュータ、サーバーコンピュータ、ハンドヘルドまたはラップトップデバイス、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースのシステム、セットトップボックス、プログラマブル家電、携帯電話、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、上記のシステムまたはデバイスのいずれかを含む分散コンピューティング環境などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
本開示の態様の実施形態は、1つまたは複数の有形、非一時的な記憶媒体に記憶され、1つまたは複数のプロセッサまたは他のデバイスによって実行される、プログラムモジュールなどのデータおよび/またはプロセッサ実行可能命令の一般的な文脈で説明され得る。一般に、プログラムモジュールには、特定のタスクを実行する、または特定の抽象データ型を実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、およびデータ構造が含まれるが、これらに限定されない。本開示の態様は、通信ネットワークを介してリンクされるリモート処理デバイスによってタスクが実行される分散コンピューティング環境においても実施され得る。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュールは、メモリ記憶装置を含むローカルおよびリモートの記憶媒体の両方に配置できる。
【0032】
動作において、プロセッサ、コンピュータ、および/またはサーバは、本発明の態様を実施するために、本明細書に例示されるようなプロセッサ実行可能命令(例えば、ソフトウェア、ファームウェア、および/またはハードウェア)を実行できる。
【0033】
実施形態は、プロセッサ実行可能命令で実装できる。プロセッサ実行可能命令は、有形プロセッサ可読記憶媒体上の1つまたは複数のプロセッサ実行可能コンポーネントまたはモジュールに編成できる。また、実施形態は、そのような構成要素またはモジュールの任意の数および組織で実施できる。例えば、本開示の態様は、図に図示され、本明細書で説明される特定のプロセッサ実行可能命令または特定の構成要素もしくはモジュールに限定されない。他の実施形態は、本明細書に図示され説明されるよりも多いまたは少ない機能を有する異なるプロセッサ実行可能命令または構成要素を含み得る。
【0034】
本明細書に図示および記載された本開示の態様に従う動作の実行または実行の順序は、別段の指定がない限り、必須ではない。すなわち、動作は、別段の指定がない限り、どのような順序で実行されてもよく、実施形態は、本明細書で開示される動作よりも追加的な動作またはより少ない動作を含み得る。例えば、他の動作の前、同時、または後に特定の動作を実行または実行することは、本発明の範囲内であることが企図される。
【0035】
本発明の要素またはその実施形態を紹介する場合、冠詞「a」、「an」、「the」、および「said」は、要素が1つ以上あることを意味することを意図している。「comprising」、「including」、および「having」という用語は、包括的であることを意図しており、列挙された要素以外の追加の要素が存在する可能性があることを意味する。
【0036】
図示または説明された描写された構成要素のすべてが必要であるとは限らない。さらに、いくつかの実施態様および実施形態は、追加の構成要素を含み得る。構成要素の配置及び種類における変形は、本明細書に規定される特許請求の範囲の精神又は範囲から逸脱することなく行うことができる。追加の構成要素、異なる構成要素、または少ない構成要素を提供でき、構成要素を組み合わせることができる。代替的に、または追加的に、構成要素を複数の構成要素によって実施することもできる。
【0037】
上記の説明は、例示として実施形態を説明するものであり、限定するものではない。本明細書は、当業者が本発明の態様を作製および使用することを可能にし、本発明の態様を実施する最良の態様であると現在考えられているものを含む、本発明の態様のいくつかの実施形態、適応、変形、代替および使用について説明する。さらに、本発明の態様は、以下の説明に記載され、または図面に図示された構造の詳細および構成要素の配置への適用において限定されないことを理解されたい。本発明の態様は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施または実施されることが可能である。また、本明細書で使用される言い回しや用語は、説明のためのものであり、限定的なものとみなされるべきではないことが理解されよう。
【0038】
添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱することなく、修正および変形が可能であることは明らかであろう。本発明の範囲から逸脱することなく、上記の構造および方法において様々な変更がなされ得るので、上記の説明に含まれ、添付の図面に示される全ての事項は、例示的なものとして解釈され、限定的な意味において解釈されないことが意図される。
【0039】
以上のことから、本発明の側面のいくつかの利点が達成され、その他の有利な結果が得られることがわかるであろう。
【0040】
要旨及び要約は、読者が技術開示の本質を迅速に把握できるように提供されるものである。これらは、特許請求の範囲または意味を解釈または制限するために使用されないことを理解した上で提出される。要約は、詳細な説明にさらに記載される概念の一部を簡略化して紹介するために提供される。本要約は、特許請求される主題の重要な特徴または本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、特許請求される主題を決定する際の補助として使用することを意図したものでもない。
【外国語明細書】