(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086641
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを補正するための回路
(51)【国際特許分類】
H03G 3/20 20060101AFI20240620BHJP
H03K 5/13 20140101ALI20240620BHJP
【FI】
H03G3/20 B
H03K5/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023209588
(22)【出願日】2023-12-12
(31)【優先権主張番号】18/082,842
(32)【優先日】2022-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518364964
【氏名又は名称】ルネサス エレクトロニクス アメリカ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RENESAS ELECTRONICS AMERICA INC.
【住所又は居所原語表記】1001 Murphy Ranch Road, Milpitas, California 95035, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モルテザ・アッバシ
(72)【発明者】
【氏名】アルジュン・カマス
(72)【発明者】
【氏名】トゥメイ・カナール
【テーマコード(参考)】
5J001
5J100
【Fターム(参考)】
5J001BB15
5J001CC03
5J001DD01
5J100JA01
5J100LA09
5J100QA01
5J100QA02
5J100QA03
5J100SA01
5J100SA02
(57)【要約】
【課題】同相信号および直交信号との間の振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを補正するための補正回路を提供する。
【解決手段】
補正回路は、バランスのとれた振幅およびバランスのとれた位相を有する同相信号および直交信号を提供するように構成された複数の可変利得回路を備え、可変利得回路の各々は、信号を増幅、減衰、または通過させるための利得を適用するように構成される。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同相信号と直交信号との間の振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを補正するための補正回路であって、
バランスのとれた振幅およびバランスのとれた位相を有する同相信号および直交信号を提供するように構成された複数の可変利得回路を備え、
前記可変利得回路の各々は、信号を増幅、減衰、または通過させるための利得を適用するように構成される、
補正回路。
【請求項2】
前記補正回路は、第1の同相信号および第1の直交信号を受信し、第2の同相信号および第2の直交信号を提供するように構成され、
前記第1の同相信号と前記第1の直交信号との間には振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスがあり、
前記第2の同相信号および前記第2の直交信号の振幅および位相は、バランスがとれている、
請求項1に記載の補正回路。
【請求項3】
前記複数の可変利得回路は、
第1の利得を適用するように構成された第1の可変利得回路と、
第2の利得を適用するように構成された第2の可変利得回路と、
第3の利得を適用するように構成された第3の可変利得回路と、
第4の利得を適用するように構成された第4の可変利得回路と、
を備える、請求項2に記載の補正回路。
【請求項4】
前記第1の同相信号を受信するための第1の入力ノードと、
前記第1の直交信号を受信するための第2の入力ノードと、
前記第2の同相信号を提供するための第1の出力ノードと、
前記第2の直交信号を提供するための第2の出力ノードと、
を備える、請求項3に記載の補正回路。
【請求項5】
前記第1の可変利得回路は、
(i)前記第1の入力ノードに結合された第1の入力端子と、
(ii)前記第1の出力ノードに結合された第1の出力端子と、
を備え、
前記第2の可変利得回路は、
(i)前記第2の入力ノードに結合された第2の入力端子と、
(ii)前記第1の出力ノードに結合された第2の出力端子と、
を備え、
前記第3の可変利得回路は、
(i)前記第1の入力ノードに結合された第3の入力端子と、
(ii)前記第2の出力ノードに結合された第3の出力端子と、
を備え、
前記第4の可変利得回路は、
(i)前記第2の入力ノードに結合された第4の入力端子と、
(ii)前記第2の出力ノードに結合された第4の出力端子と、
を備える、
請求項4に記載の補正回路。
【請求項6】
前記第1の利得、前記第2の利得、前記第3の利得、および前記第4の利得の各々は、位相のアンバランスパラメータθおよび振幅のアンバランスパラメータαの一方または両方に依存し、
前記位相のアンバランスパラメータθは、前記第1の同相信号と前記第1の直交信号との間の位相差Δθから90°を引いた値であり、
前記振幅のアンバランスパラメータαは、前記第1の同相信号のピーク振幅および前記第1の直交信号のピーク振幅の一方を、前記第1の同相信号のピーク振幅および前記第1の直交信号のピーク振幅の他方で割った値である、
請求項5に記載の補正回路。
【請求項7】
前記第1の利得は、
【数1】
にほぼ等しく、且つ/または
前記第2の利得は、
【数2】
にほぼ等しく、且つ/または
前記第3の利得は、
【数3】
にほぼ等しく、且つ/または
前記第4の利得は、
【数4】
にほぼ等しい、
請求項6に記載の補正回路。
【請求項8】
前記複数の可変利得回路は、前記同相信号および前記直交信号に位相回転を適用するように構成される、請求項1に記載の補正回路。
【請求項9】
前記補正回路は、第1の同相信号および第1の直交信号を受信し、第2の同相信号および第2の直交信号を提供するように構成され、
前記第1の同相信号と前記第1の直交信号との間には振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスがあり、
前記第2の同相信号および前記第2の直交信号の振幅および位相は、バランスがとれており、位相回転を有する、
請求項8に記載の補正回路。
【請求項10】
前記複数の可変利得回路は、
第1の利得を適用するように構成された第1の可変利得回路と、
第2の利得を適用するように構成された第2の可変利得回路と、
第3の利得を適用するように構成された第3の可変利得回路と、
第4の利得を適用するように構成された第4の可変利得回路と、
を備える、請求項9に記載の補正回路。
【請求項11】
前記第1の同相信号を受信するための第1の入力ノードと、
前記第1の直交信号を受信するための第2の入力ノードと、
前記第2の同相信号を提供するための第1の出力ノードと、
前記第2の直交信号を提供するための第2の出力ノードと、
を備える、請求項10に記載の補正回路。
【請求項12】
前記第1の可変利得回路は、
(i)前記第1の入力ノードに結合された第1の入力端子と、
(ii)前記第1の出力ノードに結合された第1の出力端子と、
を備え、
前記第2の可変利得回路は、
(i)前記第2の入力ノードに結合された第2の入力端子と、
(ii)前記第1の出力ノードに結合された第2の出力端子と、
を備え、
前記第3の可変利得回路は、
(i)前記第1の入力ノードに結合された第3の入力端子と、
(ii)前記第2の出力ノードに結合された第3の出力端子と、
を備え、
前記第4の可変利得回路は、
(i)前記第2の入力ノードに結合された第4の入力端子と、
(ii)前記第2の出力ノードに結合された第4の出力端子と、
を備える、
請求項11に記載の補正回路。
【請求項13】
前記第1の利得、前記第2の利得、前記第3の利得、および前記第4の利得の各々は、位相回転パラメータφと、位相のアンバランスパラメータθおよび振幅のアンバランスパラメータαの一方または両方とに依存し、
前記位相のアンバランスパラメータθは、前記第1の同相信号と前記第1の直交信号との間の位相差Δθから90°を引いた値であり、
前記振幅のアンバランスパラメータαは、前記第1の同相信号のピーク振幅および前記第1の直交信号のピーク振幅の一方を、前記第1の同相信号のピーク振幅および前記第1の直交信号のピーク振幅の他方で割った値である、
請求項12に記載の補正回路。
【請求項14】
前記第1の利得は、
【数5】
にほぼ等しく、且つ/または
前記第2の利得は、
【数6】
にほぼ等しく、且つ/または
前記第3の利得は、
【数7】
にほぼ等しく、且つ/または
前記第4の利得は、
【数8】
にほぼ等しい、
請求項13に記載の補正回路。
【請求項15】
振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを検出するステップと、
バランスのとれた振幅およびバランスのとれた位相を有する同相信号および直交信号を提供するのに必要な前記複数の可変利得回路のそれぞれの利得を決定するステップと、
前記可変利得回路の利得が、バランスのとれた振幅およびバランスのとれた位相を有する同相信号および直交信号を提供するのに適するように、前記決定に基づいて前記複数の可変利得回路のそれぞれの利得を調整するステップと、
を含む較正プロセスを実施するように構成された較正回路を備える、請求項1に記載の補正回路。
【請求項16】
前記補正回路は、第1の同相信号および第1の直交信号を受信し、第2の同相信号および第2の直交信号を提供するように構成され、
前記第1の同相信号と前記第1の直交信号との間には振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスがあり、
前記第2の同相信号および前記第2の直交信号の振幅および位相は、バランスがとれている、
請求項15に記載の補正回路。
【請求項17】
前記複数の可変利得回路は、
第1の利得を適用するように構成された第1の可変利得回路と、
第2の利得を適用するように構成された第2の可変利得回路と、
第3の利得を適用するように構成された第3の可変利得回路と、
第4の利得を適用するように構成された第4の可変利得回路と、
を備える、
請求項16に記載の補正回路。
【請求項18】
前記第1の同相信号を受信するための第1の入力ノードと、
前記第1の直交信号を受信するための第2の入力ノードと、
前記第2の同相信号を提供するための第1の出力ノードと、
前記第2の直交信号を提供するための第2の出力ノードと、
を備える、請求項17に記載の補正回路。
【請求項19】
第1のトランシーバシステムを備える装置であって、
前記第1のトランシーバシステムは、前記第1のトランシーバシステムにおける同相信号と直交信号との間の振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを補正するための第1の補正回路を備え、
前記第1の補正回路は、バランスのとれた振幅およびバランスのとれた位相を有する同相信号および直交信号を提供するように構成された複数の第1の可変利得回路を備え、
前記第1の可変利得回路の各々は、信号を増幅、減衰、または通過させるための利得を適用するように構成される、
装置。
【請求項20】
複数の可変利得回路を備える補正回路を使用して、同相信号と直交信号との間の振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを補正する方法であって、
前記可変利得回路の各々は、信号を増幅、減衰、または通過させるための利得を適用するように構成され、
前記複数の可変利得回路を使用して、バランスのとれた振幅およびバランスのとれた位相を有する同相信号および直交信号を提供するステップを含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、補正回路に関する。より詳細には、本開示は、同相信号と直交信号との間の振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを補正するための補正回路に関する。
【背景技術】
【0002】
「直交信号」とは、互いに対して90°の位相差を有する同じ振幅を有する2つの周期信号を意味する。これらの信号は、一般に、同相(I)信号と直交(Q)信号と呼ばれ、IQ信号と総称される場合もある。
【0003】
このような信号を使用するシステムは、単側波帯無線周波数トランシーバ、直交IQ無線周波数トランシーバ、回転型移相器、および線形電力増幅器などを含むが、これらに限定されるものではない。
【0004】
例えば、IQ信号の振幅間でアンバランス(ピーク振幅が不均等)がある場合、および/またはIQ信号の位相間でアンバランス(位相差が90°に等しくない)がある場合、IQ信号間で障害が発生する可能性がある。このような障害は、例えば、信号の経路の違い、回路の能動部品と受動部品のミスマッチ、および温度や電圧など回路の動作条件の勾配などに起因する。
【0005】
この直交障害によるシステム性能への影響として、例えば、送信機における誤差ベクトルの大きさ(E’VM)の増大、受信機における不要な画像周波数からの干渉の増大、移相器における位相誤差の増大、電力増幅器における電力効率の低下などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらはすべて、利用可能なデータ伝送速度や電力効率の点でシステムの使い勝手を悪化させる。
【0006】
図1Aは、IQ信号間の振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを示すグラフである。具体的には、同相信号(100)および直交信号(102)が示されている。Δαは信号100および102間のピーク振幅の差を表し、Δθは90°以外の信号100および102間の位相差を表す。同相信号100は、補正前がI1と示され、補正後がI2と示されている。直交信号102は、補正前がQ1と示され、補正後がQ2と示されている。
【0007】
図1Bは、振幅や位相のアンバランスのないIQ信号100および102を示すグラフである。本実施例において、Δα=0であり、Δθ=90°である。
【0008】
IQ信号における位相のアンバランスおよび振幅のアンバランスを補正するための技術が存在する。
図2Aは、IQ信号における位相のアンバランスを補正するための既知のシステム200の模式図である。システム200は、抵抗器202と、キャパシタ204と、調整可能なキャパシタ206と、を備える。
図2Bは、システム200の実用的な実装に関するシミュレーション結果を示すグラフである。ここでは、26GHzにおいて約10°の位相可変性があることが実証されている。システム200において、IQ信号は、2段多相フィルタを用いて生成され、必要に応じて後続の調整可能なキャパシタ206を用いて位相が調整される。振幅のアンバランスは、容量調整では補正することができず、位相が調整された後に追加の利得/損失補正が必要になる場合がある。
【0009】
米国特許第6054883A号には、振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを解消するための既知の例が記載されている。なお、米国特許第6054883A号は、振幅クリッピングを使用しており、これは、信号の振幅に含まれ得る情報の損失を引き起こす可能性があることに留意されたい。
【0010】
IQ信号における振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを解消するための既知の解決策は、動作温度や製造公差に起因する構成要素値の変動の影響を受けやすい可能性がある。例えば、システム200や米国特許第6054883号に記載のシステムは、そのような問題の影響を受けやすい可能性が高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
信号の損失を生じさせない、且つ/またはプロセスおよび/または温度の変動に起因する既知のシステムの問題を克服することができる、振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを補正するためのシステムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の第1の態様によれば、同相信号と直交信号との間の振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを補正するための補正回路が提供される。補正回路は、バランスのとれた振幅およびバランスのとれた位相を有する同相信号および直交信号を提供するように構成された複数の可変利得回路を備える。ここで、可変利得回路の各々は、信号を増幅、減衰、または通過させるための利得を適用するように構成される。
【0013】
任意選択で、可変利得回路の各々は、利得が1よりも大きいときに信号を増幅させ、且つ/または利得が1に等しいときに信号を通過させ、且つ/または利得が1よりも小さいときに信号を減衰させるように構成される。
【0014】
任意選択で、同相信号および直交信号は、それらの振幅が不均等であるときに振幅のアンバランスを有し、それらの振幅がほぼ等しいときにバランスのとれた振幅を有し、同相信号と直交信号との間に約90°よりも大きいまたは小さい位相差があるときに位相のアンバランスを有し、同相信号と直交信号との間に約90°の位相差があるときにバランスのとれた位相を有する。
【0015】
任意選択で、補正回路は、第1の同相信号および第1の直交信号を受信し、第2の同相信号および第2の直交信号を提供するように構成される。ここで、第1の同相信号と第1の直交信号との間には振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスがあり、第2の同相信号および第2の直交信号の振幅および位相は、バランスがとれている。
【0016】
任意選択で、複数の可変利得回路は、第1の利得を適用するように構成された第1の可変利得回路と、第2の利得を適用するように第2の可変利得回路と、第3の利得を適用するように構成された第3の可変利得回路と、第4の利得を適用するように構成された第4の可変利得回路と、を備える。
【0017】
任意選択で、補正回路は、第1の同相信号を受信するための第1の入力ノードと、第1の直交信号を受信するための第2の入力ノードと、第2の同相信号を提供するための第1の出力ノードと、第2の直交信号を提供するための第2の出力ノードと、を備える。
【0018】
任意選択で、第1の可変利得回路は、第1の入力ノードに結合された第1の入力端子と、第1の出力ノードに結合された第1の出力端子と、を備え、第2の可変利得回路は、第2の入力ノードに結合された第2の入力端子と、第1の出力ノードに結合された第2の出力端子と、を備え、第3の可変利得回路は、第1の入力ノードに結合された第3の入力端子と、第2の出力ノードに結合された第3の出力端子と、を備え、第4の可変利得回路は、第2の入力ノードに結合された第4の入力端子と、第2の出力ノードに結合された第4の出力端子と、を備える。
【0019】
任意選択で、第1、第2、第3、および第4の利得の各々は、位相のアンバランスパラメータθおよび振幅のアンバランスパラメータαの一方または両方に依存する。ここで、位相のアンバランスパラメータθは、第1の同相信号と第1の直交信号との間の位相差Δθから90°を引いた値であり、振幅のアンバランスパラメータαは、第1の同相信号のピーク振幅および第1の直交信号のピーク振幅の一方を、第1の同相信号のピーク振幅および第1の直交信号のピーク振幅の他方で割った値である。
【0020】
任意選択で、第1の利得は、
【数1】
にほぼ等しく、且つ/または第2の利得は、
【数2】
にほぼ等しく、且つ/または第3の利得は、
【数3】
にほぼ等しく、且つ/または第4の利得は、
【数4】
にほぼ等しい。
【0021】
任意選択で、複数の可変利得回路は、同相信号および直交信号に位相回転を適用するように構成される。
【0022】
任意選択で、可変利得回路の各々は、利得が1よりも大きいときに信号を増幅させ、且つ/または利得が1に等しいときに信号を通過させ、且つ/または利得が1よりも小さいときに信号を減衰させるように構成される。
【0023】
任意選択で、同相信号および直交信号は、それらの振幅が不均等であるときに振幅のアンバランスを有し、それらの振幅がほぼ等しいときにバランスのとれた振幅を有し、同相信号と直交信号との間に約90°よりも大きいまたは小さい位相差があるときに位相のアンバランスを有し、同相信号と直交信号との間に約90°の位相差があるときにバランスのとれた位相を有する。
【0024】
任意選択で、補正回路は、第1の同相信号および第1の直交信号を受信し、第2の同相信号および第2の直交信号を提供するように構成される。ここで、第1の同相信号と第1の直交信号との間には振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスがあり、第2の同相信号および第2の直交信号の振幅および位相は、バランスがとれており、位相回転を有する。
【0025】
任意選択で、複数の可変利得回路は、第1の利得を適用するように構成された第1の可変利得回路と、第2の利得を適用するように構成された第2の可変利得回路と、第3の利得を適用するように構成された第3の可変利得回路と、第4の利得を適用するように構成された第4の可変利得回路と、を備える。
【0026】
任意選択で、補正回路は、第1の同相信号を受信するための第1の入力ノードと、第1の直交信号を受信するための第2の入力ノードと、第2の同相信号を提供するための第1の出力ノードと、第2の直交信号を提供するための第2の出力ノードと、を備える。
【0027】
任意選択で、第1の可変利得回路は、第1の入力ノードに結合された第1の入力端子と、第1の出力ノードに結合された第1の出力端子と、を備え、第2の可変利得回路は、第2の入力ノードに結合された第2の入力端子と、第1の出力ノードに結合された第2の出力端子と、を備え、第3の可変利得回路は、第1の入力ノードに結合された第3の入力端子と、第2の出力ノードに結合された第3の出力端子と、を備え、第4の可変利得回路は、第2の入力ノードに結合された第4の入力端子と、第2の出力ノードに結合された第4の出力端子と、を備える。
【0028】
任意選択で、第1、第2、第3、および第4の利得の各々は、位相回転パラメータφと、位相のアンバランスパラメータθおよび振幅のアンバランスパラメータαの一方または両方とに依存する。ここで、位相のアンバランスパラメータθは、第1の同相信号と第1の直交信号との間の位相差Δθから90°を引いた値であり、振幅のアンバランスパラメータαは、第1の同相信号のピーク振幅および第1の直交信号のピーク振幅の一方を、第1の同相信号のピーク振幅および第1の直交信号のピーク振幅の他方で割った値である。
【0029】
任意選択で、第1の利得は、
【数5】
にほぼ等しく、且つ/または第2の利得は、
【数6】
にほぼ等しく、且つ/または第3の利得は、
【数7】
にほぼ等しく、且つ/または第4の利得は、
【数8】
にほぼ等しい。
【0030】
任意選択で、補正回路は、振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを検出するステップと、バランスのとれた振幅およびバランスのとれた位相を有する同相信号および直交信号を提供するのに必要な複数の可変利得回路のそれぞれの利得を決定するステップと、可変利得回路の利得が、バランスのとれた振幅およびバランスのとれた位相を有する同相信号および直交信号を提供するのに適するように、上記決定に基づいて複数の可変利得回路のそれぞれの利得を調整するステップと、を含む較正プロセスを実施するように構成された較正回路を備える。
【0031】
任意選択で、較正回路は、補正回路の動作中に較正プロセスを実施するように構成される。
【0032】
任意選択で、較正回路は、較正プロセスを複数回実施するように構成される。
【0033】
任意選択で、可変利得回路の各々は、利得が1よりも大きいときに信号を増幅させ、且つ/または利得が1に等しいときに信号を通過させ、且つ/または利得が1よりも小さいときに信号を減衰させるように構成される。
【0034】
任意選択で、同相信号および直交信号は、それらの振幅が不均等であるときに振幅のアンバランスを有し、それらの振幅がほぼ等しいときにバランスのとれた振幅を有し、同相信号と直交信号との間に約90°よりも大きいまたは小さい位相差があるときに位相のアンバランスを有し、同相信号と直交信号との間に約90°の位相差があるときにバランスのとれた位相を有する。
【0035】
任意選択で、補正回路は、第1の同相信号および第1の直交信号を受信し、第2の同相信号および第2の直交信号を提供するように構成される。ここで、第1の同相信号と第1の直交信号との間には振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスがあり、第2の同相信号および第2の直交信号の振幅および位相は、バランスがとれている。
【0036】
任意選択で、複数の可変利得回路は、第1の利得を適用するように構成された第1の可変利得回路と、第2の利得を適用するように構成された第2の可変利得回路と、第3の利得を適用するように構成された第3の可変利得回路と、第4の利得を適用するように構成された第4の可変利得回路と、を備える。
【0037】
任意選択で、補正回路は、第1の同相信号を受信するための第1の入力ノードと、第1の直交信号を受信するための第2の入力ノードと、第2の同相信号を提供するための第1の出力ノードと、第2の直交信号を提供するための第2の出力ノードと、を備える。
【0038】
任意選択で、第1の可変利得回路は、第1の入力ノードに結合された第1の入力端子と、第1の出力ノードに結合された第1の出力端子と、を備え、第2の可変利得回路は、第2の入力ノードに結合された第2の入力端子と、第1の出力ノードに結合された第2の出力端子と、を備え、第3の可変利得回路は、第1の入力ノードに結合された第3の入力端子と、第2の出力ノードに結合された第3の出力端子と、を備え、第4の可変利得回路は、第2の入力ノードに結合された第4の入力端子と、第2の出力ノードに結合された第4の出力端子と、を備える。
【0039】
任意選択で、較正回路は、位相のアンバランスパラメータθおよび振幅のアンバランスパラメータαに依存する第1の同相信号および第1の直交信号の1つまたは複数のパラメータを測定し、測定した1つまたは複数のパラメータを使用して位相のアンバランスパラメータθおよび振幅のアンバランスパラメータαを決定することで、振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを検出するように構成される。ここで、位相のアンバランスパラメータθは、第1の同相信号と第1の直交信号との間の位相差から90°を引いた値であり、振幅のアンバランスパラメータαは、第1の同相信号のピーク振幅および第1の直交信号のピーク振幅の一方を、第1の同相信号のピーク振幅および第1の直交信号のピーク振幅の他方で割った値である。
【0040】
任意選択で、1つまたは複数のパラメータは、側波帯阻止比である。
【0041】
任意選択で、較正回路は、位相のアンバランスパラメータθおよび振幅のアンバランスパラメータαを使用して、複数の可変利得回路のそれぞれの利得を決定するように構成される。
【0042】
任意選択で、第1の利得は、
【数9】
にほぼ等しく、且つ/または第2の利得は、
【数10】
にほぼ等しく、且つ/または第3の利得は、
【数11】
にほぼ等しく、且つ/または第4の利得は、
【数12】
にほぼ等しい。
【0043】
任意選択で、較正回路は、第1の利得を
【数13】
にほぼ等しい値と決定し、且つ/または第2の利得を
【数14】
にほぼ等しい値と決定し、且つ/または第3の利得を
【数15】
にほぼ等しい値と決定し、且つ/または第4の利得を
【数16】
にほぼ等しい値と決定するように構成される。
【0044】
本開示の第2の態様によれば、第1のトランシーバシステムを備える装置が提供される。第1のトランシーバシステムは、第1のトランシーバシステムにおける同相信号と直交信号との間の振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを補正するための第1の補正回路を備える。第1の補正回路は、バランスのとれた振幅およびバランスのとれた位相を有する同相信号および直交信号を提供するように構成された複数の第1の可変利得回路を備える。ここで、第1の可変利得回路の各々は、信号を増幅、減衰、または通過させるための利得を適用するように構成される。
【0045】
任意選択で、該装置は、第2のトランシーバシステムを備える。第2のトランシーバシステムは、第2のトランシーバシステムにおける同相信号と直交信号との間の振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを補正するための第2の補正回路を備える。第2の補正回路は、バランスのとれた振幅およびバランスのとれた位相を有する同相信号および直交信号を提供するように構成された複数の第2の可変利得回路を備える。ここで、第2の可変利得回路の各々は、信号を増幅、減衰、または通過させるための利得を適用するように構成される。
【0046】
任意選択で、複数の第1の可変利得回路は、第1のトランシーバシステムの同相信号および直交信号に第1の位相回転を適用するように構成され、複数の第2の可変利得回路は、第2のトランシーバシステムの同相信号および直交信号に第2の位相回転を適用するように構成される。
【0047】
任意選択で、第1の位相回転および第2の位相回転は、不均等である。
【0048】
任意選択で、第1のトランシーバシステムは、第1のRFトランシーバである。
【0049】
任意選択で、該装置は、フェーズドアレイアンテナ、マルチチャンネルデジタルビームフォーミングアンテナシステム、またはアナログビームフォーミングアンテナシステムである。
【0050】
なお、第2の態様の装置は、第1の態様に規定された特徴を提供および/または使用することを含んでもよく、本明細書に記載のその他の特徴を組み込むことができることに留意されたい。
【0051】
本開示の第3の態様によれば、複数の可変利得回路を備える補正回路を使用して、同相信号と直交信号との間の振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを補正する方法を提供する。可変利得回路の各々は、信号を増幅、減衰、または通過させるための利得を適用するように構成される。該方法は、複数の可変利得回路を使用して、バランスのとれた振幅およびバランスのとれた位相を有する同相信号および直交信号を提供するステップを含む。
【0052】
なお、第3の態様の方法は、第1の態様および/または第2の態様に規定された特徴を提供および/または使用することを含んでもよく、本明細書に記載のその他の特徴を組み込むことができることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
以下、本開示の実施例を、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【
図1A】IQ信号間の振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを示すグラフである。
【
図1B】振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスのないIQ信号を示すグラフである。
【
図2A】IQ信号における位相のアンバランスを補正するための既知のシステムの模式図である。
【
図2B】既知のシステムを実際に実装した場合のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図3A】本開示の第1の実施形態による補正回路の模式図である。
【
図3C】本開示の第2の実施形態による補正回路の模式図である。
【
図4】本開示の第3の実施形態による補正回路の模式図である。
【
図5B】位相回転がある場合の信号の相対位相を示すグラフである。
【
図6A】本開示の第4の実施形態による補正回路の模式図である。
【
図7A】本開示の第5の実施形態による装置の模式図である。
【
図7B】本開示の第6の実施形態による装置の模式図である。
【
図8】本開示の第7の実施形態による、補正回路を備えるRFトランシーバの模式図である。
【
図9】側波帯阻止対振幅ミスマッチを示すグラフである。
【
図10A】可変利得回路の特定の実施形態の模式図である。
【
図10B】さらなる可変利得回路の特定の実施形態の模式図である。
【
図11A】IQ信号間の振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図3Aは、本開示の第1の実施形態による、同相信号と直交信号との間の振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを補正するための補正回路300の模式図である。補正回路300は、バランスのとれた振幅およびバランスのとれた位相を有する同相信号および直交信号を提供するように構成された複数の可変利得回路302を備える。可変利得回路302の各々は、信号を増幅、減衰、または通過させるための利得を適用するように構成される。可変利得回路302の各々は、他の可変利得回路302の各々と同じ回路部品を使用して実装されてもよく、それらを「同一」と呼ぶ場合がある。
【0055】
可変利得回路302の各々は、その入力において信号を受信し、その信号に利得を適用し、結果として得られた信号をその出力で提供する。可変利得回路302の各々は、以下のうちの1つまたは複数を実施するように構成されてもよい。
・ 利得が1よりも大きいときに信号を増幅させる。
・ 入力信号と結果として得られた信号が同じである場合、利得が1に等しいときに信号を通過させる。
・ 利得が1よりも小さいときに信号を減衰させる。
【0056】
「利得」という用語は、通常、信号が増幅される場合に使用されることがあるが、信号には1以下の利得が適用されてもよいことに留意されたい。ここで、1未満の利得は信号の減衰をもたらす。本開示において、「利得」という用語は、利得の値に応じて、信号を増幅、通過、または減衰させるための利得の適用を指すために一般的に使用される。これは、利得が1よりも大きい増幅のみに限定されるものではない。
【0057】
上述したように、同相信号および直交信号は、それらの振幅が不均等であるときに振幅のアンバランスを有し、それらの振幅がほぼ等しいときにバランスのとれた振幅を有する。さらに、同相信号および直交信号は、同相信号と直交信号との間に約90°よりも大きいまたは小さい位相差があるときに位相のアンバランスを有し、同相信号と直交信号との間に約90°の位相差があるときにバランスのとれた位相を有する。
【0058】
補正回路300は、同相信号I1および直交信号Q1を受信し、同相信号I2および直交信号Q2を提供するように構成される。補正回路300が受信した信号I1およびQ1は、振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを示し、信号I2およびQ2は、バランスのとれた振幅およびバランスのとれた位相を有する補正信号となる。
【0059】
図3Bは、可変利得回路302を省略した補正回路300の代替的な模式図である。
【0060】
図3Cは、本開示の第2の実施形態による補正回路304の模式図である。補正回路304は、利得G1を適用するように構成された可変利得回路306と、利得G2を適用するように構成された可変利得回路308と、利得G3を適用するように構成された可変利得回路310と、利得G4を適用するように構成された可変利得回路312と、を備える。補正回路304は、信号I1およびQ1をそれぞれ受信するための入力ノードN1およびN2と、信号I2およびQ2をそれぞれ提供するための出力ノードN3およびN4と、を備える。
【0061】
図4は、本開示の第3の実施形態による補正回路400の模式図である。可変利得回路306は、入力ノードN1に結合された入力端子402と、出力ノードN3に結合された出力端子404と、を備える。可変利得回路308は、入力ノードN2に結合された入力端子406と、出力ノードN3に結合された出力端子408と、を備える。可変利得回路310は、入力ノードN1に結合された入力端子410と、出力ノードN4に結合された出力端子412と、を備える。可変利得回路312は、入力ノードN2に結合された入力端子414と、出力ノードN4に結合された出力端子416と、を備える。
【0062】
利得G1、G2、G3、およびG4の各々は、位相のアンバランスパラメータθおよび/または振幅のアンバランスパラメータαに依存する。位相のアンバランスパラメータθは、同相信号I1と直交信号Q1との間の位相差Δθから90°を引いた値である(θ=Δθ-90°)。
【0063】
振幅のアンバランスパラメータαは、同相信号I1のピーク振幅(AI1)および直交信号Q1のピーク振幅(AQ1)の一方を、同相信号I1のピーク振幅および直交信号Q1のピーク振幅の他方で割った値である。例えば、α=AQ1/AI1である。
【0064】
図1Aには、位相のアンバランスパラメータθおよび振幅のアンバランスパラメータαが示されている。
【0065】
利得G1は、次式を満たすものであってもよい。
【数17】
【0066】
利得G2は、次式を満たすものであってもよい。
【数18】
【0067】
利得G3は、次式を満たすものであってもよい。
【数19】
【0068】
利得G4は、次式を満たすものであってもよい。
【数20】
【0069】
信号I1、Q1、I2、およびQ2の関係は、次式のように表されてもよい。
【数21】
【0070】
これは、次式のように書き換えられてもよい。
【数22】
【0071】
【0072】
設計が同一である可変利得回路は、温度、電圧、またはプロセスの変動やその他の不完全性によって同じように影響を受ける。式(1)~(4)に基づいて、G1~G4のスケーリングを共通化しても動作原理には影響を与えない。要約すると、利得または位相の応答におけるあらゆるオフセットは、すべての可変利得回路で共通であり、補正回路の動作に影響を与えない。
【0073】
さらなる実施形態において、複数の可変利得回路は、同相信号および直交信号に位相回転を適用するように構成されてもよい。位相回転とは、同相信号および直交信号の両方に等しく適用される位相のオフセットを意味する。これにより、同相信号および直交信号は、補正後に、互いに対して90°の位相差と、基準点に対してさらなる位相シフトとを示すようになる。
【0074】
本実施形態は、任意の振幅およびゼロでない位相オフセットを有する2つの信号I1およびQ1に対して処理を行い、等しい振幅および任意の回転角を有する2つの直交信号I2およびQ2を生成することができる。
【0075】
例えば、補正後の位相回転が10°の場合、同相信号I2は、基準点に対して10°の位相差を示し、直交信号Q2は、基準点に対して100°の位相差を示す。
【0076】
このような実施形態において、利得G1、G2、G3、およびG4の各々は、以下に示すように位相回転パラメータφに依存する。
【0077】
利得G1は、次式を満たすものであってもよい。
【数24】
【0078】
利得G2は、次式を満たすものであってもよい。
【数25】
【0079】
利得G3は、次式を満たすものであってもよい。
【数26】
【0080】
利得G4は、次式を満たすものであってもよい。
【数27】
【0081】
信号I1、Q1、I2、およびQ2の関係は、次式のように表されてもよい。
【数28】
【0082】
【0083】
である。
【0084】
図5Aは、信号I1、Q1、I2、およびQ2の相対位相を示すグラフ500である。ここで、補正後の信号I2およびQ2が、位相差Δθについて補正後の信号I1およびQ2に対応していることがわかる。
図5Bは、パラメータφで表される位相回転がある場合の信号I1、Q1、I2、およびQ2の相対位相を示すグラフ502である。
【0085】
図6Aは、本開示の第4の実施形態による補正回路600の模式図である。特定の実施形態において、補正回路600は、
図4の補正回路400の可変利得回路306、308、310、および312の配置から構成されてもよい。
【0086】
補正回路600は、較正プロセスを実施するように構成された較正回路602を備える。較正回路602は、自己較正機能を提供してもよい。較正プロセスは、振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを検出するステップと、バランスのとれた振幅およびバランスのとれた位相を有する同相信号および直交信号を提供するのに必要な利得G1、G2、G3、およびG4を決定するステップと、利得G1、G2、G3、およびG4を調整して、補正されたIQ信号を提供するステップと、を含む。較正は、補正回路600の動作中に実施されてもよい。補正回路600が必要に応じて機能し、動作条件の変化に適応できることを保証するために、較正プロセスは複数回実施されてもよい。これにより、適応回路が提供される。
図6Bは、較正回路602を省略した補正回路600の代替的な模式図である。
【0087】
較正回路602は、位相のアンバランスパラメータθおよび振幅のアンバランスパラメータαに依存する同相信号I1および/または直交信号Q1の1つまたは複数のパラメータを測定し、測定した1つまたは複数のパラメータを使用して位相のアンバランスパラメータθおよび振幅のアンバランスパラメータΔαを決定することで、振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを検出するように構成されてもよい。
【0088】
1つまたは複数のパラメータは、それらの値を推定できるように、位相差および振幅に関連していてもよい。例えば、1つまたは複数のパラメータは、振幅差および/または位相差を推定するために使用され得る側波帯阻止比であり得る。さらなる実施形態において、位相差および振幅差は、信号I1およびQ1から直接決定されてもよい。
【0089】
較正回路602は、振幅差および/または位相差を使用して利得G1、G2、G3、およびG4を決定するように構成されてもよい。利得G1、G2、G3、およびG4は、位相回転がある場合、式(1)~(4)または式(10)~(13)を使用して決定されてもよい。
【0090】
なお、本開示の実施形態の物理的な実装では、その利得が工場で、またはユーザによってプログラムされてもよいことに留意されたい。実施形態のさらなる物理的な実装、例えば較正回路を備えるものでは、外部装置を必要とせず、自動化および内蔵された較正手順を実現するために、システム内に追加のセンサを備えてもよい。例えば、位相のアンバランスおよび振幅のアンバランスは、以下の通りであってもよい。
・ 位相のアンバランスおよび振幅のアンバランスは、各部分について、工場にあるテスト装置で直接測定されてもよい。その後、可変利得回路のそれぞれの利得設定は、最終的な動作の前に計算および設定され得る。
・ 位相のアンバランスおよび振幅のアンバランスは、内部ノードに配置されたオンチップアナログおよびデジタルコンバータによって定期的に測定されてもよい。その後、可変利得回路のそれぞれの利得設定は、異なる動作間隔で適応的に計算され得る。
・ 位相のアンバランスおよび振幅のアンバランスは、それらの直接的な測定値を取得するよりも、オンチップセンサおよび外部センサを用いて監視しやすい二次的なパラメータから推定されてもよい。
【0091】
図7Aは、本開示の第5の実施形態による、IQ信号における振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを補正するための補正回路704を含むトランシーバシステム702を備える装置700の模式図である。補正回路704は、本明細書に記載のいずれかの補正回路によって、および当業者の理解に従って実現されてもよい。トランシーバシステム702は、例えば、RFトランシーバであってもよい。
【0092】
補正回路704は、例えば、位相回転器として機能してもよい。また、位相回転器は、主信号経路上の位相補間回路として知られていてもよい。このような回路は、アナログビームフォーミングアンテナシステムなど、多くのシステムで適用されている。
【0093】
補正回路704は、データ信号経路上に実装されないので、RFトランシーバ702で使用されるデータ信号の速度および線形性の要件を満たす必要がない。そのため、補正回路704は、システムの使用可能帯域幅を制限することはなく、またはシステムの予算に大きな消費電力を使用することはない。
【0094】
図7Bは、本開示の第6の実施形態による、2つ以上のトランシーバシステム702a、702b、および702cを備える装置706の模式図である。トランシーバシステム702a、702b、および702cの各々は、補正回路704a、704b、および704cを備える。補正回路704a、704b、および704cは、本明細書に記載のいずれかの補正回路によって、および当業者の理解に従って実現されてもよい。トランシーバシステム702a、702b、および702cは、例えば、RFトランシーバであってもよい。補正回路704aの信号は、I1a、Q1a、I2a、およびQ2aとして示されており、補正回路704bの信号は、I1b、Q1b、I2b、およびQ2bとして示されており、補正回路704cの信号は、I1c、Q1c、I2c、およびQ2cとして示されている。
【0095】
特定の実施形態において、提案された補正回路は、例えば、マルチチャンネルデジタルビームフォーミングアンテナシステムのような複雑なシステムで実装されてもよい。ここで、複数のトランシーバは、異なる度合いの障害を示す可能性があり、すべての受信および/または送信データ信号間の一貫性を得るために、独立して且つ正確に補正する必要がある。
【0096】
特定の実施形態において、補正回路704a、704b、および704cは、本明細書に記載の方法を使用して位相回転を適用するように構成されてもよい。補正回路704a、704b、および704cの各々は、異なる位相回転を適用するように構成されてもよい。
【0097】
複数のトランシーバが採用されて互いに同相で動作することが予想される場合、位相回転を適用するための本明細書に記載の補正回路は、信号ルーティングの違いを補正するために使用され得る。さらに、複数のトランシーバが互いに対する所定の位相オフセットで動作することが予想される場合、それらの補正回路は、フェーズドアレイアンテナシステムにおけるビームステアリングに採用され得る。
【0098】
装置700および706は、例えば、フェーズドアレイアンテナ、マルチチャンネルデジタルビームフォーミングアンテナシステム、またはアナログビームフォーミングアンテナシステムであってもよい。
【0099】
要約すると、補正回路は、個々のトランシーバの直交障害を補正することに加えて、異なるトランシーバ間で任意の位相オフセットを提供してもよい。これは、複数のトランシーバが採用されて、デジタルビームフォーミングアンテナシステムなどで互いに同相で動作することが予想される場合、信号ルーティングの違いを補正するために特に有用である。
【0100】
図8は、本開示の第7の実施形態による、補正回路802aおよび802bを備えるRFトランシーバ800の模式図である。補正回路802aは、トランシーバ800の受信部内に実装され、補正回路802bは、トランシーバ800の送信部を有するように実装される。
【0101】
トランシーバ800は、増幅器804、806、808、810、および812と、ミキサ818および820と、ADC822および823と、DAC824と、デジタル処理回路826と、直交信号発生器828および830と、発振回路832と、抵抗器834と、スイッチ836および838と、ダイオード840および842と、回路部品844および846と、をさらに備える。
【0102】
図8は、側波帯阻止を測定するための内蔵された自己テスト方式を示している。
図8は、提案された解決策が受信機と送信機の両方のLO信号に実装されている、一般的な無線周波数トランシーバを示している。検出センサおよびループバック経路の追加の可能性が示されており、これは、補正回路とともに内蔵された自己テスト方式を提供する。
【0103】
本実施形態において、補正回路802aおよび802bは、単側波帯の送信機または受信機を上側波帯(USB)モードおよび下側波帯(LSB)モードのいずれかで動作させ、内蔵センサおよび内部ループバック経路を使用してトランシーバの自己較正を行うことができてもよい。
【0104】
特定の実施形態において、補正回路802aおよび802bは、システムの全体的な応答を線形化するために、例えば電力増幅器などの非線形回路の前に信号を事前に歪ませるために使用されてもよい。
【0105】
図9は、側波帯阻止対振幅ミスマッチを示すグラフである。図に示すように、阻止率は、直交局部発振器の信号の振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスの両方の影響を受ける。そのため、側波帯阻止比は、上述したように、可変利得回路の利得を調整する目的で、振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを推定するために使用されてもよい。
【0106】
図10Aは、当業者の理解に従って、本開示の実施形態で使用され得るような可変利得回路1000の特定の実施形態の模式図である。可変利得回路は、インダクタ1002および1004と、トランジスタ1006、1008、1010、1012、1014、1016、1018、および1020と、電流源1022と、を備える。
【0107】
図10Bは、当業者の理解に従って、本開示の実施形態で使用され得るような可変利得回路1024の特定の実施形態の模式図である。可変利得回路1024は、可変抵抗器1026、1028、および1030を備える。
【0108】
図11Aは、IQ信号間の振幅のアンバランスおよび位相のアンバランスを示すグラフである。具体的には、同相信号(1100)および直交信号(1102)が示されている。
図11Bは、本明細書に記載の方法を使用して補正された後の、振幅のアンバランスまたは位相のアンバランスのないIQ信号1100および1102を示すグラフである。
【0109】
本実施例において、位相回転パラメータφ=90°となるように、90°の位相回転が適用されている。
【0110】
位相のアンバランスパラメータθは、θ=Δθ-90°により決定される。補正前の位相差Δθは、Δθ=95°であるため、位相のアンバランスパラメータθは、θ=5°となる。
【0111】
直交信号1102の振幅は、AQ1=0.85であり、位相信号1100の振幅は、AI1=1である。そのため、補正前の振幅のアンバランスパラメータαは、α=0.85となる。
【0112】
式(10)~(13)を使用すると、
図11Bに示す補正後のIQ信号を提供するための利得は、G1=0.043786、G2=1.179840498、G3=-1.00286、およびG4=-0.05151となる。
【0113】
本開示の実施形態は、可変利得回路を使用して、IQ信号の位相のアンバランスおよび利得のアンバランスを補正する。可変利得回路の各々が、プロセスと温度が変動しても同じように応答するので、プロセスと温度が変動したときにそれぞれ異なる応答をする可能性のある複数の異なる構成要素を含む回路を、より簡潔に上記の影響に対する補正を行うことができる。この欠点の影響を受ける、異なる構成要素を使用するシステムの一例として、米国特許第6054883A号が挙げられる。さらに、本開示の実施形態は、米国特許第6054883A号に記載されているような、信号の損失を生じさせる可能性がある「振幅クリッピング」を使用していない。
【0114】
本明細書に記載の実施形態は、系統的なアルゴリズムを使用してもよく、回路部品の価値の変動に左右されない可能性がある。
【0115】
添付の図面に記載の共通の参照符号またはその類似符号は、共通の特徴を表している。
【0116】
また、本開示の範囲から逸脱することなく、上記に様々な改良および変更を加えることができる。
【外国語明細書】