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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086650
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】時計部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 13/02 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
G04B13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023209878
(22)【出願日】2023-12-13
(31)【優先権主張番号】22214339.8
(32)【優先日】2022-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミンコーン, ローラン
(72)【発明者】
【氏名】グリーム, オリヴィエ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】2つの部分の、正確な形状と、最適な粗さと機械的性質を得ることを可能にする、時計部品の製造方法を提供する。
【解決手段】他の部品へエネルギーを伝達する、または他の部品からのエネルギーを消費するための、少なくとも1つの機能的側面を含む、少なくとも1つの第一部分と、案内面を含む少なくとも1つの第二部分とを含む、時計部品の製造方法であって、時計部品のブランク10’を形成する、第一微細射出ステップであって、ブランク10’は、少なくとも1つの第一部分と少なくとも1つの機能的側面とを含み、第二部分のブランクを含む、ステップと、その後時計部品のブランク10’の少なくとも1つのパーツの、第二機械加工ステップ、特に第二レーザ加工ステップ、具体的にフェムト秒レーザ加工であって、パーツは案内面を含む第二部分を形成する第二部分のブランクを含む、ステップと、を含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の部品へエネルギーを伝達する、または他の部品からのエネルギーを消費するための、少なくとも1つの機能的側面を含む、少なくとも1つの第一部分と、案内面を含む少なくとも1つの第二部分とを含む、時計部品(10)の製造方法であって、
前記時計部品のブランク(10’)を形成する、第一微細射出ステップ(E1)であって、前記ブランクは、前記少なくとも1つの第一部分と前記少なくとも1つの機能的側面とを含み、前記第二部分のブランクを含む、ステップと、その後
前記時計部品の前記ブランクの少なくとも1つのパーツの、第二機械加工ステップ(E2)、特に第二レーザ加工ステップ、具体的にフェムト秒レーザ加工であって、前記パーツは前記案内面を含む前記第二部分を形成する前記第二部分のブランクを含み、前記第二機械加工ステップ(E2)は、前記第二機械加工ステップ(E2)中に変更されないまま維持される前記少なくとも1つの第一部分を除いて実施される、ステップと、
を含む、
時計部品の製造方法。
【請求項2】
方法は、前記機械加工ステップ(E2)とは別個の、後続の第三トライボ仕上げステップ(E3)、具体的にはバルク研磨、及びまたは研磨剤粒子、具体的にはダイヤモンドの、及びまたはビーズの形状のキャリヤ、具体的にはセラミックの実施、のステップを含む、及びまたは前記第二機械加工ステップ(E2)は、前記機械加工に使用されたものと同じであり、再構成されたレーザを用いて研磨を実施する仕上げサブステップを含む、第二レーザ加工ステップである、
請求項1に記載の時計部品の製造方法。
【請求項3】
方法は、15nmより小さい、または12nm以下の、または10nm以下の、そして任意で5nm以上の、前記案内面の粗さRaを得るために、継続時間が15時間以下、または10時間以下の、前記第三トライボ仕上げステップ(E3)を含む、
請求項2に記載の時計部品の製造方法。
【請求項4】
前記第一微細射出ステップ(E1)は、射出成形金型(8)の射出キャビティ内へ素材を射出することを含み、前記素材は、ポリマー、複合材料、金属、または具体的には酸化ジルコニウム及びまたはアルミナで主として構成される、工業用セラミック、または具体的にはNi、Cu、Pd、Pt、Fe、Co、Ti、Nb、Zrの元素の少なくとも1つの金属で形成された金属基材を含む、具体的には非晶質金属合金である、非晶質材料である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の時計部品の製造方法。
【請求項5】
前記射出成形金型(8)は、少なくとも部分的にニッケルNiまたはニッケルリンNiPを含む素材製の射出キャビティを含む、具体的にはLIGA技術を用いた成長のステップを通じて得られた、ニッケルNiまたはニッケルリンNiPを含む素材を有し、前記第一部分の前記少なくとも1つの機能的側面を作成する及びまたは前記第二部分の前記ブランクを形成することが意図される、前記射出成形金型(8)の射出キャビティの一部を形成する切欠き(810、830、840)を含む、少なくとも1つの着脱プレートを、含む、
請求項4に記載の時計部品の製造方法。
【請求項6】
前記射出成形金型(8)の前記射出キャビティは、中間支持部(4、99’)により互いに堅固に接続された、時計部品(10)の複数のブランク(10’)を同時に製造可能にする形状を含む、及び前記方法は、前記金型からの除去後に、前記中間支持部(4、99’)から前記ブランク(10’)を分離するステップを含む、
請求項4または5に記載の時計部品の製造方法。
【請求項7】
前記第二機械加工ステップ(E2)は、前記ブランク(10’)の前記軸(A1’)に対応する回転軸(A9)周りに回転する段階、具体的には200rpm以上の、または1,000rpm以上の、または20,000rpm以上の、または50,000rpm以上の、または100,000rpm以上の速度の回転で、具体的には前記時計部品の前記ブランクの前記少なくとも1つのパーツに接線方向にレーザスキャンを、具体的には螺旋軌道を形成するスキャンを実施するために、当該回転中に前記回転軸に対してレーザビームが移動される、段階を含む、第二レーザ加工ステップである、
請求項1から6のいずれか一項に記載の時計部品の製造方法。
【請求項8】
前記第二機械加工ステップ(E2)の前記レーザは、赤外線レーザビーム、具体的には800nmと1,100nmの間の波長を、特に1,030nm±5nmの波長を有する赤外線レーザビーム、または緑色レーザビーム、具体的には500nmと540nmの間の波長を、特に515nm±2.55nmの波長を有する緑色レーザビーム、または紫外線レーザビーム、具体的には400nmより低い波長を、特に343nm±25nmの波長を有する紫外線レーザビーム、または青色レーザビーム、具体的には400nmと480nmの間の波長を有する青色レーザビームを照射するレーザである、
請求項1から7のいずれか一項に記載の時計部品の製造方法。
【請求項9】
前記第一微細射出ステップ(E1)は、50nm以下の、または40nm以下の、表面粗さRaを有する、前記少なくとも1つの機能的側面を製造する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の時計部品の製造方法。
【請求項10】
前記第二機械加工ステップ(E2)の前記レーザは、50nm以下の、または40nm以下の、粗さRaを有する案内面を製造する、
請求項1から9のいずれか一項に記載の時計部品の製造方法。
【請求項11】
前記第二機械加工ステップ(E2)、特に前記第二レーザ加工ステップは、機械加工中に時計部品(10)の前記ブランク(10’)を保持するため、時計部品(10)の前記ブランク(10’)の一端に配置された、製造される前記時計部品(10)の前記長さ(L10)よりも大きな前記長さ(L10’)のグリップパーツ(3)を用いて、時計部品(10)の前記ブランク(10’)を把持する事前ステップを含む、及び前記第二機械加工ステップ(E2)は、前記グリップパーツを除去し、製造される前記時計部品(10)の前記長さと等しいまたは実質的に等しい長さを有する時計部品(10)のブランク(10’)を確保するため、前記グリップパーツ(3)を分離する最終サブステップを含む、
請求項1から10のいずれか一項に記載の時計部品の製造方法。
【請求項12】
前記時計部品は、軸と一体のピニオン、特にがんぎ車ピニオン、または軸に搭載されたヨーク、または軸に搭載されたレバー、または軸に搭載されたカム、または切欠きが、具体的には前記天輪及びまたはひげぜんまい及びまたは天輪ローラの保持を促進する切欠きが設けられた天真である、
請求項1から11のいずれか一項に記載の時計部品の製造方法。
【請求項13】
前記第一部分の前記機能的側面は、運動またはトルクを伝達するよう構成される、具体的にはピニオン(111)、歯車または歯付セクタの歯(11)の側面を形成する、または具体的には切欠きとして作用するよう構成された、角度割出側面である、
請求項1から12のいずれか一項に記載の時計部品の製造方法。
【請求項14】
前記第二部分の前記案内面は、前記時計部品(10)のピボットの表面を含む、及びまたは前記案内面は、200μm以下の、または100μm以下の、または80μm以下の、または60μm以下の直径の、少なくとも1つのセクションを含む、
請求項1から13のいずれか一項に記載の時計部品の製造方法。
【請求項15】
他の部品へエネルギーを伝達する、または他の部品からのエネルギーを消費するための、少なくとも1つの機能的側面を含む、少なくとも1つの第一部分と、案内面を含む少なくとも1つの第二部分とを含む、時計部品(10)であって、前記時計部品(10)の前記第一及び第二部分は、一体に一体成形され、前記機能的側面は、50nm以下の、または15nm以下の、または12nm以下の、または10nm以下の、そして任意で5nm以上の、表面粗さRaを有する、
時計部品(10)。
【請求項16】
前記第一及び第二部分は、ポリマー、複合材料、金属、または具体的には酸化ジルコニウム及びまたはアルミナで主として構成される、工業用セラミック、または具体的にはNi、Cu、Pd、Pt、Fe、Co、Ti、Nb、Zrの元素の少なくとも1つの金属で形成された金属基材を含む、具体的には非晶質金属合金である、非晶質材料製である、
請求項15に記載の時計部品(10)。
【請求項17】
前記案内面は、回転面を形成するピボットを含み、200μm以下の、または100μm以下の、または80μm以下の、または60μm以下の直径の、少なくとも1つのセクションを含み、または15nmより小さい、または12nm以下の、または10nm以下の、そして任意で5nm以上の、表面粗さRaを有する、
請求項15または16に記載の時計部品(10)。
【請求項18】
軸と一体のピニオン、特にがんぎ車ピニオン、または軸に搭載されたヨーク、または軸に搭載されたレバー、または軸に搭載されたカム、または戻り止めが、具体的には前記天輪及びまたはひげぜんまい及びまたは天輪ローラの保持を促進する戻り止めが設けられた天真である、
請求項15から17のいずれか一項に記載の時計部品(10)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計ムーブメントの他の部品へエネルギーを伝達する、または時計ムーブメントの他の部品からのエネルギーを消費する、機能的部分と、時計部品の運動を、具体的にはその回転及びまたは並進を案内する案内部分とを含む、時計部品の製造方法に関する。本発明はまた、当該方法から得られる時計部品そのものと、当該時計部品を含む時計ムーブメントに関する。最後に、本発明は、当該時計部品または当該時計ムーブメントを含む、時計に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1で説明される、工業用セラミック製の時計部品の機械加工は、具体的には部品の耐衝撃性に害を及ぼす初期亀裂を形成する、セラミックに応力や新たな欠陥を、具体的には表面欠陥を生じないように、工具と素材との間の相互作用を完全に制御することが要求される、難しい作業である。
【0003】
例えば2mmより小さい直径の、小さな時計真の製造は、具体的には真の端部にある非常に小さな直径(<200ミクロン、または<100ミクロン)のピボットの存在のため、特に難しく、ピボットの機能は、真の案内、特に真の旋回の案内である。これらピボットは、完全な円形形状を有さねばならない、即ち、可能な限り完全な回転面を形成しなければならず、その寸法は高度に正確でなければならない。ピボットは、軸受と相互作用するよう設計され、真円度や非正確な直径といったあらゆる形状的欠陥は、真が組み込まれたムーブメントの計時性能を損なう結果となる。軸受と相互作用するピボットの表面が過度に粗い場合も、同様である。これは、天真の場合に、特に合致する。
【0004】
従来技術にかかる真が鋼から回転加工されるのは、これが理由であり、ピボットはその後、最終の粗さ、硬度、及び形状を得るために、圧延される。
【0005】
加えて、時計真周りの機能的部分、特にピニオンの歯の製造も、具体的にはピニオンが採用する形状、特にその歯の機能的側面の形状または特定の向きを理由として、同様に複雑であり、機能的側面は、非常に正確な形状と、完璧な表面仕上げが、具体的には非常に低い粗さが達成されなければならない。
【0006】
従来の機械加工技術は、案内部分のみならず機能的部分も含む、複雑な形状の部品を得るために、実施が難しいこともある。具体的には、機能的部分の形状に応じて、特に例えばピニオンの歯の機能的側面の形状または特定の向きに応じて、従来の機械加工技術は適応不可能である。加えて、これら技術は、時計部品に用いられる素材の全てに適したものではない。具体的には、セラミックパーツに適用することは、特に切削工具または砥石車を用いて回転加工するのに非常に長い時間がかかり、工具が急激に摩耗するため、非常に難しい、または不可能である。
【0007】
このため、機能的部分と案内部分の両方を含む時計部品の製造は、方法が両部分の特定の形状及び機械的要件を達成しなければならないことから、特に複雑である。2つの部分の表面粗さもまた、それぞれの機能に適さねばならない。このような方法はまた、合理的な製造時間で大規模に展開可能なように、可能な限り単純でなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3258325号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第3981571号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、少なくとも1つの機能的部分と少なくとも1つの案内部分の両方を含む、時計部品の製造方法を提供することである。
【0010】
本発明の第一の目的は、機能的部分と案内部分の両者を含む時計部品の製造方法であって、時計部品の、具体的には2つの部分の、正確な形状と、最適な粗さと機械的性質を得ることを可能にする、時計部品の製造方法を提供することである。
【0011】
本発明の第二の目的は、機能的部分と案内部分の両者を含む時計部品の、最大限単純な製造方法を提供することである。
【0012】
本発明の第三の目的は、可能な限り多くの素材と両立可能な、機能的部分と案内部分の両者を含む時計部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このため、本発明は、他の部品へエネルギーを伝達する、または他の部品からのエネルギーを消費するための、少なくとも1つの機能的側面を含む、少なくとも1つの第一部分と、案内面を含む少なくとも1つの第二部分とを含む、時計部品の製造方法であって、
前記時計部品のブランクを形成する、第一微細射出ステップであって、前記ブランクは、前記少なくとも1つの第一部分と前記少なくとも1つの機能的側面とを含み、前記第二部分のブランクを含む、ステップと、その後、
前記時計部品の前記ブランクの少なくとも1つのパーツの、第二機械加工ステップ、特に第二レーザ加工ステップ、具体的にフェムト秒レーザ加工であって、前記パーツは前記案内面を含む前記第二部分を形成する前記第二部分のブランクを含み、前記第二機械加工ステップ(E2)は、前記第二機械加工ステップ(E2)中に変更されないまま維持される前記少なくとも1つの第一部分を除いて実施される、ステップと、
を含む、時計部品の製造方法に関する。
【0014】
本発明はまた、他の部品へエネルギーを伝達する、または他の部品からのエネルギーを消費するための、少なくとも1つの機能的側面を含む、少なくとも1つの第一部分と、案内面を含む少なくとも1つの第二部分とを含む、時計部品であって、前記時計部品の前記第一及び第二部分は、一体に一体成形され、前記機能的側面は、50nm以下の、または15nm以下の、または12nm以下の、または10nm以下の、そして任意で5nm以上の、表面粗さRaを有する、時計部品に関する。
【0015】
本発明は、より詳細には、請求項により定義される。
【0016】
本発明の目的、特徴、及び利点は、添付の図面を参照して与えられる、特定の実施形態の非限定的説明において、詳細に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態にかかる時計部品のブランクの製造用金型の、第一断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態にかかる、図1の金型から得られた射出成形パーツを示す図である。
図3図3は、本発明の一実施形態にかかる製造方法の第一ステップで得られた、時計部品のブランクを示す図である。
図4図4は、本発明の実施形態にかかる製造方法の第二ステップの実施を示す図である。
図5図5は、本発明の実施形態にかかる製造方法の第二ステップの実施を示す図である。
図6図6は、本発明の実施形態にかかる製造方法の第二ステップの中間サブステップを示す図である。
図7図7は、本発明の実施形態にかかる製造方法の第二ステップの終わりでのサブステップを示す図である。
図8図8は、本発明の実施形態にかかる時計部品の製造方法の、単純化されたフローチャートを示す図である。
図9図9は、本発明にかかる製造方法により得られた時計部品の、第一実施例を示す図である。
図10図10は、本発明にかかる製造方法により得られた時計部品の、第一実施例を示す図である。
図11図11は、本発明にかかる製造方法により得られた時計部品の、第一実施例を示す図である。
図12図12は、本発明にかかる製造方法により得られた時計部品の、第一実施例を示す図である。
図13図13は、本発明の一実施形態にかかる製造方法の第一ステップにより得られた時計部品の、第二実施例のブランクを示す図である。
図14図14は、本発明にかかる方法により得られた時計部品の、第二実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のコンセプトは、時計部品を、少なくとも1つの機能的側面を含む第一部分と、少なくとも1つの案内面を含む第二部分との、最終またはほぼ最終形状をそれぞれ形成する2つの段階で製造するため、射出成形、具体的にはセラミック射出成形(CIM)または金属射出成形(MIM)技術と、機械加工という、2つの非常に異なる製造方法を組み合わせることからなる。
【0019】
本発明の一実施形態にかかる時計部品の製造方法を、以下に説明する。説明する実施形態において、第一例示的実施形態にかかる時計部品は、がんぎ車ピニオンである。
【0020】
図1は、射出成形金型8のコアの断面図である。当該有利な実施形態によれば、当該射出成形金型8はモジュール式であり、射出キャビティの形状を定義する際に柔軟性を与えるため、複数の着脱中間プレートにより形成される射出キャビティを含む。このため、射出成形金型8は、具体的には、第二着脱プレート83と第三着脱プレート84の間に介在される第一着脱中間プレート81を含み、当該組立体は、射出成形金型の、固定可能な、第一パーツ82と関連付けられる。このように、射出キャビティは、第一パーツ82の切欠き820、第一プレート81の切欠き810、第二プレート83の切欠き830、及び第三プレート84の切欠き840という、複数の切欠きの組み合わせで定義される。射出成形金型8はまた、射出キャビティの対向する開口の両側に位置する、エジェクタピン85、86を含む。
【0021】
当該射出成形金型8への射出段階において、部品素材と称される、将来の時計部品の素材は、具体的には切欠き810、820、830により形成された、射出キャビティ内へ、切欠き830を用いて射出され、当該部品素材は、金型の中心から提供され、中央射出スプルーを形成する。
【0022】
射出される部品素材は、ポリマー、金属、複合材料、サーメット、または工業用セラミックであってもよい。有利には、工業用セラミックは、(重量でまたはモルで)大部分はまたは主として酸化ジルコニウム及びまたはアルミナで構成される。酸化ジルコニウム及びまたはアルミナは、このようにセラミックの主たる要素である。にもかかわらず、一変形実施形態によれば、酸化ジルコニウム及びまたはアルミナの重量またはモル割合は、50%より低くてもよい。
【0023】
金属の場合、射出は、射出成形金型への、溶融金属またはガラス状態の金属の(即ち、溶融温度よりも低く、ガラス転移温度より高い、射出温度での)射出を含んでもよい。冷却後、例えば金属ガラスといった非晶質材料性の時計部品ブランクを得ることが可能である。具体的には、ブランクの素材は、そのガラス形成能(GFA)が、時計部品の典型的な寸法の非晶構造を得ることを可能にする、あらゆる非晶質合金、具体的にはNi、Cu、Pd、Pt、Fe、Co、Ti、Nb及びZrの元素の少なくとも1つの金属から形成される金属基材を含む、非晶質金属合金であってもよい。
【0024】
図2は、上述の射出成形金型8からの除去後に得られた、射出成形パーツ100’を示す。当該射出成形パーツ100’は、射出層により、具体的には支持部4を介して当該射出成形パーツ100’の中央部分99’により、及び(図示しない)中央射出スプルーにより、互いに接続された、時計部品の4つの同一の時計ブランク10’を含む。それぞれが分離された後、各ブランク10’は、以下に詳細に説明する、図3に示す形状を有する。
【0025】
例えば、金属またはポリマー射出成形パーツ100’の場合には冷却により、またはセラミック射出成形パーツ100’の場合には脱バインダと焼結により、当該射出成形パーツ100’が硬化されると、ブランク10’は、支持部4を破壊することで、中央部分99’から分離されることで、パーツ100’から除去される。このため、支持部4は、当該段階中の破壊を促進するため、切欠きといった、機械的に弱い区域を含んでもよい。
【0026】
このように、第一パーツ82と、プレート81、83、84により形成された、射出成形金型8のサブアセンブリは、時計部品の製造方法の第一微細射出ステップE1を示す、射出成形段階で、少なくとも1つのブランク10’を形成することを可能にするキャビティを定義する。
【0027】
上述のように、当該第一ステップE1は、有利には、モジュール式射出成形金型8を、即ち、少なくとも1つの着脱中間プレート81が設けられた射出成形金型8を用いる。このような構造は、特許文献2により定義可能である。このような射出成形金型の構造は、各変更のために金型全体を製造する必要なくして、単に1以上の中間プレートを変更することで、射出成形金型が柔軟な態様で修正されることを可能にする。このため、例として、以下で詳細に説明するブランク10’のピニオン11の歯111の輪郭は、単に中間プレートを変更することで修正可能である。加えて、例えば、異なる歯先円直径を有する重ね合わされた歯を含む、段を有するピニオンを形成することも可能である。この場合、ピニオンは、ピニオンの異なる段の重ね合わされた歯を特徴づける射出キャビティを形成する切欠きを含む、中間プレートの重ね合わせの結果であってもよい。
【0028】
有利には、着脱プレート81は、LIGA技術を用いて製造される。当該アプローチは、既知の態様で、フォトリソグラフィによる金型の形成と、その後の金型内の金属の成長を含む。当該LIGA技術は、単一マスクを用いて複数の同一の中間プレートを再現することを可能にする一方、高い正確性のプレート81を得ることを可能にするため、有利である。有利には、LIGA技術により、プレート81の切欠き810は、従来の機械加工技術を用いて必ずしも達成可能ではなかった、時計部品10のブランク10’の複雑な形状を、例えばピニオンの歯111を、形成することを意図することができる。加えて、非常に有利には、このようなプレートは、低い粗さのピニオン11の側面111aを製造することを可能にする。例えば、ニッケルNiまたはニッケルリンNiPからLIGA技術を用いて製造された、このようなプレートは、(ブランク10’の軸A1’に平行または垂直に測定された)特に低い、具体的には50nm程度の、粗さRaを有する側面111aを有するピニオン11の歯111を得ることを可能にする。変形例として、当該粗さは、50nm以下、または40nm以下であってもよい。このような側面をレーザ加工することは、少なくとも80nm程度の、著しく大きい粗さをもたらすことを注記する。
【0029】
製造方法の特に有利な実施によれば、第一微細射出ステップE1は、有利にはニッケルNiまたはニッケルリンNiPを含み、ピニオン11の歯111を特徴づける射出キャビティを形成する切欠き810が設けられた、少なくとも1つの中間プレート81を含む、射出成形金型8を使用可能である。より一般的には、射出成形金型8は、有利にはニッケルNiまたはニッケルリンNiPを含み、少なくとも1つの第一部分の機能的側面を少なくとも特徴づけるまたは少なくとも部分的に特徴づける射出キャビティを形成する切欠き810が設けられた、少なくとも1つの中間プレート81を含む。
【0030】
更に、射出成形金型を形成する異なるパーツ81、82、83、84は、有利には、例えば位置決めピンを用いて、両者間に最小の間隙を有して位置決めされる。また有利には、射出成形金型8は、時計部品10の複数のブランク10’を同時に製造するため、複数のブランク10’を含む射出成形パーツ100’を形成することを可能にする。
【0031】
もちろん、本発明は、図示した射出成形金型に限定されるものではない。このため、変形例として、当該金型は、あらゆる着脱プレートを含まなくてもよく、射出キャビティは、あらゆる非モジュール式の従来の金型構造で得られてもよい。変形例にかかわらず、射出キャビティは、有利には、特にステップE1がセラミック射出成形(CIM)技術を実施するときに、即ち射出される部品素材が工業用セラミックの場合、素材がニッケルNiまたはニッケルリンNiPである、またはニッケルNiまたはニッケルリンNiPを含む、要素または複数の要素から形成されてもよい。更なる変形例として、射出キャビティは、時計部品の1つのブランクのみを定義してもよい。
【0032】
図示した実施例によれば、製造方法の第一微細射出ステップE1は、時計部品のブランク10’を形成することを可能にする。図3に示すように、ブランク10’は、軸A1’に沿って延長する。ブランク10’は、少なくとも1つの機能的側面111aを含む第一部分と、第二部分2a’と、第三部分2b’とが設けられ、第二及び第三部分2a’、2b’のそれぞれは、ここでは第一部分の両側に位置する回転面を含む。
【0033】
第一部分は、機能的側面111aを形成する歯111が設けられた、ピニオン11を含む。歯111の機能的側面111aは、歯車またはピニオンといった、他の時計部品へトルクを伝達する機能を有する。
【0034】
第二部分2a’は、以下に詳細に説明する最終時計部品のピボット21aとピボットシャンク22aのそれぞれの直径d21aとd22aよりも大きい直径d2a’を有する、直円柱を形成する。このように、ブランクの第二部分2a’は、時計部品の部分2aの形をあらかじめ示す。有利には、直径d2a’は、以下で説明するように、第二ステップに対して最適化される。
【0035】
第三部分2b’もまた、製造される時計部品の部分2bと、以下で詳細に説明するように、グリップパーツ3として用いられる追加パーツとの両方の形をあらかじめ示すという、特定の機能を有する、直径d2b’を有する直円柱を形成する。
【0036】
当該例示的実施形態において、射出成形金型8の第一パーツ82の切欠き820は、ブランク10’の第三部分2b’を少なくとも部分的に特徴づける射出キャビティの部分を形成するようにみえる。加えて、第三プレート84の切欠き840は、ブランク10’の第二部分2a’を特徴づける射出キャビティの部分を形成する。最後に、第二プレート83の切欠き830は、異なるブランク10’を接続する中央部分99’に形成された支持部4を特徴づける射出キャビティの部分を形成する。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、方法は、第一ステップから得られたブランク10’のレーザ加工の、具体的にはフェムト秒レーザ加工の第二ステップE2を実施する。一般に、第二レーザ加工ステップE2の目的は、製造される最終時計部品10に対応するまたは実質的に対応する形状及びまたは寸法を達成するために、第一微細射出ステップE1から得られたブランク10’の一部を機械加工することで、製造される時計部品10を、特に製造される時計部品10の形状を仕上げるまたはほぼ仕上げることである。有利には、ブランク10’の少なくとも一部、具体的には第一部分の少なくとも一部は機械加工されず、変化されないままで第二レーザ加工ステップE2から出てくる。例示的実施形態によれば、第一ステップE1により得られたピニオン11は、第二ステップ中に機械加工されない。換言すれば、その最終形状は、製造方法の第一ステップのみで定義される。
【0038】
好ましくは、第二レーザ加工ステップE2は、回転段階を、即ち、部品ブランク10’が回転軸A9周りに回転され、レーザビームが回転軸A9に対して移動可能な、機械加工ステップを含む。好ましくは、レーザは、ブランク10’に対して、接線方向に、または接線方向の迎え角で、ブランク10’をスキャンする。また好ましくは、レーザビームは、ブランク10’を、螺旋軌道に沿ってスキャンする。いずれにせよ、レーザは、ピニオン11を照射することはなく、このためピニオンは第一微細射出ステップで形成されたその形状を維持する。
【0039】
このため、第二ステップは、ブランク10’を移動させる、特にブランク10’の軸A1’と一致し、製造される将来の案内面の軸でもある、軸A9周りにブランク10’を回転させるシステムが設けられたレーザ装置9を使用する。レーザ装置9は。軸A9周りに回転するスピンドル91を含む。好ましくは、スピンドル91は、200rpmより多く、または1,000rpmより多く、または20,000rpmより多く、または50,000rpmより多く、または100,000rpmより多く、回転可能である。がんぎ車ピニオンを得るために説明された例示的実施形態において、スピンドル91は、2,000rpmで回転する。例えば、スピンドル91は、電気スピンドルである。好ましくは、スピンドル91は、具体的には空気式の、グリッパ910が設けられる。
【0040】
ブランク10’の第三部分2b’は、ピニオン11と第二部分2a’を有する端部と反対の端部に、グリップパーツ3を形成するという、特定の特徴を有する。スピンドル91は、特にグリッパ910は、図4に示すように、単一回転段階中に保持するため、ブランク10’の第三部分2b’のグリップパーツ3と相互作用するように設計される。
【0041】
図5に図示するように、第二レーザ加工ステップE2は、以下に詳細に説明するように、時計部品10の第二部分2aに変換する目的で、少なくともブランク10’の第二部分2a’を機械加工することを可能にする。加えて、図6に示すように、当該機械加工は、以下に詳細に説明するように、異なるパーツ12、13、14を形成するため、第三部分2b’の一部に関連する。製造される時計部品10の異なる(部分2aと2bとの間に位置する)部分1、2a、及び2b間のあらゆる共軸性の欠陥は、このため、最大限最小化される。
【0042】
好ましくは、使用されるレーザは、超短パルスを生成する。レーザは、特に、適切な波長、パルス継続時間、及びパルス当たりエネルギーで、具体的にはレーザ回転中に、機械加工される素材の構造に影響を与えないよう、フェムト秒レーザである。具体的には、使用されるレーザは、600fsより低い、または350fsより低い、パルスを生成する。好ましくは、レーザビームは、800nmと1,100nmの間の、理想的には1,030nm±5nmの波長の赤外線で、または500nmと540nmの間の、理想的には515nm±2.55nmの波長の緑色で、または400nmと480nmの間の波長の青色で、または400nmより小さい、理想的には343nm±25nmの波長の紫外線で、発せられる。具体的には、緑色及びUVレーザは、様々な工業用セラミックにおいて、50nm、または40nm程度の、機械加工後の十分な粗さ値Raを得ることを可能にする。
【0043】
好ましくは、レーザビームは、テストされた素材と寸法に対して、0.001mJと2mJの間の、好ましくは0.01mJと0.5mJの間の、または0.04mJと0.05mJの間の、パルス当たり平均エネルギーを有する。また好ましくは、レーザビームは、テストされた素材と寸法に対して、5μmと100μmの間の、好ましくは10μmと60μmの間の、理想的には15μmと25μmの間の、直径を有する。
【0044】
横重複率、つまり回転方向に垂直な、即ち軸A9に垂直な重複率は、ブランク10’の回転速度とレーザの周波数により定義され、0%から99.9%の間で定義される。好ましくは、20%と99.9%の間であり、理想的には99.6%と99.8%の間である。
【0045】
縦重複率は、ビームのスキャン速度または回転速度とレーザの周波数により定義され、0%から99.9%の間で定義される。好ましくは、20%と99.9%の間であり、理想的には0%と80.8%の間である。
【0046】
このように、第二ステップE2の第一機械加工段階の終わりに、製造される時計部品の部分2aと2bの、及び部分1のパーツ12、13、14の、回転面は、50nm程度の、または40nm程度の、第一ステップから得られる機能的側面111aと同じ程度の粗さ値Raを有する。加えて、ブランク10’に形成されたグリップパーツ3の使用により、全ての機械加工は、単一ステップで、特に単一回転段階で、実施可能である。
【0047】
説明した有利な機械加工のため、ブランク10’は、有利には、図13及び14に具体的に示すように、製造される時計部品10の、軸A1に沿って測定された長さL10よりも大きい、ブランク10’の軸A1’に沿って測定された長さL10’を有することを注記する。この大きな長さは、上述のグリップパーツ3を形成することを可能にする。好ましくは、グリップパーツ3は、ブランク10’の最大直径に対応する、直径d3を有する。好ましくは、長さL10’は、1.5×L10以上、または2×L10以上である。換言すれば、グリップパーツの長さL3は、長さL10に等しいまたは実質的に等しい、または長さL10よりも大きい、具体的には1.5×L10程度である。
【0048】
上記の第一機械加工段階が終了すると、図7に示すように、ブランク10’の第三部分2b’からグリップパーツ3の機械加工部分を分離するため、分離段階が設けられる。有利には、分離段階は、第二ピボット21bの丸みを帯びた端部を形成することを可能にし、その寸法及びまたは形状は、時計部品10の最終第二ピボット21bの寸法及びまたは形状に対応するまたは実質的に対応する。このため、ブランク10’のグリップパーツ3がグリッパ910から解放されると、当該パーツを保持するため、例えば既に機械加工されたパーツの最大直径d13を有する円筒状パーツ13と相互作用するために、グリッパ920を設けることができる。もちろん、部品のあらゆる他のパーツも、グリッパ920と相互作用可能である。
【0049】
変形例として、第二機械加工ステップは、機械的機械加工ステップであってもよい。このため、具体的には部品素材が、ガラス状合金といった、非晶質材料の場合、ブランクの回転加工及びまたは研削、及びまたはブランクの圧延のステップを含んでもよい。
【0050】
このように、第二ステップ後、最終時計部品の形状及びまたは寸法に対応するまたは実質的に対応する形状及びまたは寸法の時計部品10が得られる。
【0051】
製造された時計部品10は、第一微細射出ステップによってのみ形成され、第二機械加工ステップでは変更されない、または非常に少なくしか変更されない、機能的側面を有する第一部分を含むことを注記する。しかしながら、当該第一ステップは、時計部品の少なくとも第二部分のブランクのみを形成する。第二機械加工ステップは、その後、その形状が機械加工ステップを最適化するよう選定された当該ブランクから、当該第二部分を特に形成する。
【0052】
上述の時計部品の製造は、他の部品へエネルギーを伝達する、または他の部品からのエネルギーを消費するための、少なくとも1つの機能的側面を含む、少なくとも1つの第一部分と、案内面を含む少なくとも1つの第二部分とを含む、複雑な部品を形成することを可能にする。この最適の動作のため、これら2つの部分は、非常に精密な形状を有さねばならず、非常に低い粗さの完璧な表面仕上げを有さねばならない。2つの部分の表面は、非常に異なる形状を有し、その向きも異なることがあるため、例えば単一の機械加工プロセスといった、同一の技術を用いて、これら2つの別個の部分を製造することで、十分な結果を、具体的には十分な粗さを同時に得ることは難しい、または不可能である。単一技術を用いるこのようなアプローチは、長時間且つ念入りなトライボ仕上げを必要とし、これは究極的に2つの部分のうちの1つの形状的完全性に影響を与えるリスクなくしては実施できず、このため他方の部分のみに十分な結果が得られるという結果であった。具体的には、第一部分のトライボ仕上げは、第二部分の案内面の形状的完全性、特に第二部分のピボットの形状的完全性に影響を与えかねない。
【0053】
選択したアプローチを用いて、各部分は、究極的には、短時間で且つ簡単に、満足な結果を得るために、異なる技術を用いて得られ、これにより最終トライボ仕上げの適用を任意とするものである。加えて、上述のように、本発明の当該アプローチは、セラミックを含む、多数の素材と両立可能である。本発明は、工業用セラミックを用いて、驚くべき態様で実施された。
【0054】
本発明にかかる方法は、このように、他の部品へトルクを、より一般的にはエネルギーを伝達する、または他の部品からのトルクを、またはより一般的にはエネルギーを消費するための、機能的側面を含む、機能的部分と、時計部品の運動を案内する案内面を、具体的には回転面を含む案内部分の両方を含む、一体に一体的に形成された時計部品を製造するのに完全に適している。
【0055】
本発明にかかる方法はまた、例えば0.2mm以下の、または0.1mm以下の半径を有する円に内接された断面を含む、非常に小さな寸法の時計部品を製造するのに完全に適している。方法はまた、ミリメートルの十分の一のまたはミリメートルの百分の一の規模の、非常に精緻な形状を有する、案内部分を、具体的には回転面を、製造することを可能にする。
【0056】
ピニオンの歯のフォーマット及びまたは特定の構成に関連可能な、非常に具体的なシナリオにおいて、機械加工、特にレーザ加工は、素材を、特にセラミックを通過するエネルギー・フルエンスを理由として、歯の機械的性質を、そして結果としてトルク伝達能力を損なう可能性があることを注記する。
【0057】
説明を単純化するため、「時計部品」の文言は、1以上の追加ステップ、具体的にはトライボ仕上げステップを経ることができるものの、方法の2つのステップE1、E2の実施後に得られた部品を称するために用いられることを注記する。
【0058】
実際、一変形実施形態によれば、製造方法は、任意の第三トライボ仕上げステップE3を実施する。例示的実施形態によれば、当該第三ステップは、第二ステップから得られた時計部品10のバルク研磨段階を含む。
【0059】
好ましくは、特にセラミック時計部品においては、トライボ仕上げステップは、1μm程度のサイズの、研磨剤粒子の、特にダイヤモンドの使用を含む。好ましくは、トライボ仕上げステップは、とりわけ、水と添加材が追加される、125から250μmの間の寸法のビーズの形状をとってもよい、キャリヤの、特にセラミックの使用を含む。有利には、研磨剤粒子及びまたはキャリヤの寸法及びまたは形状は、ピニオン11の歯111の間に捕らえられないように構成される。
【0060】
このようなバルク研磨は、合理的な継続時間の、典型的には10時間程度の、トライボ仕上げ後に、形状的に対応し、適切な粗さを有する、特にセラミックの、案内面を含む、時計部品を得ることを可能にする。当該トライボ仕上げステップは、案内面の形状を修正しないように、具体的にはピボット(複数のピボット)の端部の過度な丸み付けを防ぐように、構成される。このため、当該ステップ前の第一及び第二部分の初期粗さが、合理的な継続時間のトライボ仕上げステップを可能にするよう、十分に低いことが必要不可欠である。最終的に得られる2つのピボット21a、21bの回転面の粗さRaは、例えば、10から15nm程度である。より一般的には、当該第二ステップは、粗さが15nm以下の、または12nm以下の、または10nm以下であり、任意で5nm以上である、少なくとも1つの案内面の製造を可能にする。
【0061】
第三ステップE3に代替してまたは加えて、第二レーザ加工ステップE2は、少なくとも1つの部分2a、2bを、好ましくは部分1、2a、2bを、特にピボット21a、21bを、研磨するよう構成された周波数及びまたは時間の、レーザビームによるスキャンを用いて、レーザ装置9を実行する仕上げ段階を含んでもよい。
【0062】
まとめると、図8に模式的に示すように、他の部品へエネルギーを伝達する、または他の部品からのエネルギーを消費するための、少なくとも1つの機能的側面を含む、少なくとも1つの第一部分と、案内面を含む少なくとも1つの第二部分とを含む、本発明にかかる時計部品の製造方法は、以下のステップを含む。
- 時計部品10のブランク10’を形成する、第一微細射出ステップE1であって、ブランク10’は、少なくとも1つの第一部分と少なくとも1つの機能的側面とを含み、第二部分のブランクを含むステップと、その後
- 時計部品のブランク10’の少なくとも1つのパーツの、第二レーザ加工ステップE2、特にレーザ加工E2、具体的にはフェムト秒レーザ加工であって、当該パーツは、第二部分と案内面とを形成する第二部分のブランクを含む、ステップと、
- 第二レーザ加工ステップE2とは別個の、任意の、後続の第三トライボ仕上げステップE3、具体的にはバルク研磨及びまたは研磨剤粒子を用いた研磨のステップ。
【0063】
上述の製造方法から見て取れるように、本発明は、図9から12に示すように、複雑な時計部品10を、具体的にはがんぎ車ピニオンを製造するのに、特に適している。
【0064】
このようながんぎ車ピニオンは、軸A1を有する。がんぎ車ピニオンは、歯先円直径がd11である歯111が設けられたピニオン11が設けられた、第一部分1を含む。軸A1に相対して半径方向に向けられた、歯の側面111aは、ここでは当該軸A1に対してトルクを伝達する機能的側面の役割を果たす。当該ピニオン11は、上述のように、製造方法の第一ステップで形成される。
【0065】
時計部品10の第一部分1はまた、他の時計部品を、特に当該パーツ12上に打ち込まれることが意図される、がんぎ車を受ける第一パーツ12を含む。ここで、パーツ12は、より具体的には、直径d12の直円柱の形状である。第一部分1はまた、他の時計部品を、特にがんぎ車を、受ける表面または座部131を形成することが意図される、直径d13の、第一パーツ12と並置された、第二円筒状パーツ13を含み、がんぎ車のプレートは、当該表面131に対して当接されることが意図される。このため、直径d13は、直径d12より厳密に大きい。変形例として、時計部品は、具体的にはがんぎ車のプレートが、第一パーツ12上の位置に打ち込まれることが意図される場合、円筒状パーツ13がなくてもよい。
【0066】
2つのパーツ12、13は、時計部品10の本体を主として形成する中間パーツ14により、軸A1に平行な方向に、ピニオン11から分離される。当該中間パーツ14は、ピニオン11に隣接して直径d14の直円柱を形成する第一セクション141と、第一パーツ12とセクション141とを接続する、張り出し第二パーツ142とを含む。変形例として、中間パーツ14は、全体として直円柱の形状を取ってもよい。
【0067】
がんぎ車ピニオンはまた、第一部分1の両側に位置する、第二部分2aと第三部分2bとを含む。具体的には、第二部分2aは、がんぎ車ピニオンの第一端部において、ピニオン11に隣接する一方、第三部分2bは、がんぎ車ピニオン10の第二端部において、第二パーツ13に隣接する。これら第二及び第三部分2a、2bは、それぞれ、フィレット23a、23bを用いてピボットシャンク22a、22bに接続された、ピボット21a、21bを含む。これら異なるパーツは、それぞれ、軸A1周りの回転面を形成する。具体的には、ピボット21a、21bは、それぞれ、軸A1周りの回転面を形成する。両者は、時計部品をその軸A1周りに回転案内する、案内面を形成する。このため、このようながんぎ車ピニオンは、2つの案内面を、そして2つの第二部分を含むと見做される。
【0068】
図示する例示的時計部品において、ピボット21a、21bは、それぞれ、その先端(すなわち端部区域)が丸められた、直円柱の形状を取る。具体的には、ピボットはそれぞれ、0.1mmより小さい、0.09mm程度の、同一の直径d21a、d21bを有する。
【0069】
図12に示す代替的ピボット設計において、ピボットまたは複数のピボットは、スプラインまたは連続して接続されたスプライン曲線部分の、非常に特殊な形状を取る、曲母線を含む、軸周りの回転面を形成してもよい。具体的には、この場合、ピボット21をピボット軸22に接続するフィレット23は、ピボットから連続して形成されてもよい。いくつかの使用において、具体的には天真において、ピボットの1セクションは、80μmより小さい、50μmまたは60μ程度の、直径を有してもよい。
【0070】
がんぎ車ピニオンの長さL10、即ちピボット21a、21bの先端のそれぞれの頂点の間で軸A1に沿って測定される寸法は、好ましくは2mm、または3mm、または4mmより大きい。図8から11に示す実施例において、長さL10は、3.2mm程度である。
【0071】
時計部品は、がんぎ車ピニオンの観点で説明された。もちろん、本発明はこのような時計部品に限定されず、変形例として、あらゆる軸と一体化したピニオン、軸に搭載されたヨーク、軸に搭載されたレバー、または軸に搭載されたカムであってもよい。時計部品は、天輪-ひげぜんまいといった時計発振器の天真、といった真、具体的には例えば天輪及びまたはひげぜんまいのひげ玉、及びまたは天輪ローラの保持を促進するために切欠きを有する天真であってもよい。時計部品は、あらゆる脱進機輪列の真または秒輪列の真であってもよい。
【0072】
変形実施形態として、図13及び14は、天真である時計部品10の製造を示す。好ましくは、図13に示す当該時計部品10のブランク10’は、プレフォームを構成するよう、図14に示す最終時計部品10の形状に可能な限り近い形状を有する。具体的には、天真ブランク10’の場合、ブランクは、特に最終天真の部分11の直径d11に対応するまたは実質的に対応する直径d11を有する部分11を含む。当該部分11は、角度的割り出しを可能にし、天真上の天輪の直角度を保証するよう設計された、側面111aの歯111を含むという特定の特徴を有する。このように、部分11は、2つの部品のあらゆる分離を防ぐため、(動作中または組立中に)天輪といったムーブメントの他の部品からのトルクまたはより一般的にはエネルギーを消費するよう設計された、側面111aの歯111を含む。このように側面111aは、真と天輪との間に切欠きを形成する、角度的割出側面を形成する。加えて、時計部品10の最終端部のブランク10’に形成された円筒形状の直径d2a’とd2b’は、案内面を形成する部分2a、2bのピボットシャンク22a、22bのそれぞれの直径d22a、d22bに最大限近似する。
【0073】
有利には、本発明の方法は、ピボットを含む、またはピボットの形状を取る、案内面を含む時計部品の製造に用いられる。「ピボット」とは、軸受と、特に石軸受と、具体的には接触により、相互作用するよう設計された、部品、特に真の部分を意味する。当該ピボットは、円筒状または円錐状または円錐台状形状を有する少なくとも1つの部分を有してもよい。ピボットは、好ましくは、真の一端に位置する。ピボットは、例えば、曲母線を有する表面を含む真部分から継続して形成されてもよい。
【0074】
本発明はまた、ムーブメントの要素上に、具体的にはムーブメントのフレーム上に搭載された軸受、または複数の軸受を含む時計ムーブメントに関する。このように時計部品は、軸受と、例えば具体的には接触により相互作用することが意図される。具体的には、時計部品は、ピボット上の軸受と相互作用する。より具体的には、時計部品は、ピボット上に位置する回転面上の軸受と相互作用する。回転面の断面の直径は、例えば200μm以下、または100μm以下、または80μm以下、または60μm以下である。任意で、ピボットは、ピボットの一端の受石により軸方向に区切られてもよい。
【0075】
有利には、時計部品は、軸受に対して、より具体的には軸受が搭載される時計ムーブメント要素に対して、時計部品を案内するため、2つの軸受と相互作用する2つのピボットを含む。
【0076】
有利には、時計部品または時計部品のパーツは、セラミック製である、具体的には全体がセラミック製である。このため、案内面を形成する回転面はセラミック製である、即ち、回転面は、部品のセラミックパーツ上に形成されるまたは位置される。好ましくは、セラミックは、ジルコニア、特にイットリア安定化ジルコニア、具体的には3%イットリア安定化ジルコニア(即ち、3モル%のイットリア含有量を含む)、単結晶アルミナ、またはアルミナ-ジルコニア結合体(ATZ)である。時計部品の全体、または少なくとも1つの機能的側面を有する第一部分と案内面を含む第二部分とを含むパーツは、有利には、一体に一体形成される。
【0077】
好ましくは、時計部品の全部または一部は、セラミック製であり、粗さRaが15nm以下の案内面を含む。また好ましくは、時計部品は、当該案内面を含むピボットを含む。有利には、部品のピボットのせん断破壊応力は、200N.mm-2より大きい、または250N.mm-2より大きい。
【符号の説明】
【0078】
3 グリップパーツ
4 支持部
8 射出成形金型
10 時計部品
10’ ブランク
11 ピニオン
99’ 中央部分
111 歯
810 切欠き
820 切欠き
830 切欠き
840 切欠き

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【外国語明細書】