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特開2024-86657試料管を密封、密封解除および/または再密封するための機器および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086657
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】試料管を密封、密封解除および/または再密封するための機器および方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20240620BHJP
   B01L 99/00 20100101ALI20240620BHJP
   B67B 6/00 20090101ALI20240620BHJP
【FI】
G01N35/02 B
B01L99/00
B67B6/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023210718
(22)【出願日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】22214127.7
(32)【優先日】2022-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディルク アベルン
(72)【発明者】
【氏名】クラウディオ チェルビーニ
(72)【発明者】
【氏名】レト フーゼル
(72)【発明者】
【氏名】ネナド ミリチェビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ミューラー
(72)【発明者】
【氏名】マルコ シミッチ
(72)【発明者】
【氏名】ミハエル ゼダー
【テーマコード(参考)】
2G058
3E080
4G057
【Fターム(参考)】
2G058CA02
3E080AA10
3E080AA20
3E080CC03
3E080CF03
3E080CF15
3E080EE10
4G057AF00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】試料容器から密封カバーを自動的に取り外すための(および/または密封カバーによって試料容器を自動的に密封または再密封するための)機器の提供。
【解決手段】試料容器9を保持するための容器ホルダ2と、密封カバー8を保持するための吸引部材31を備える吸引/誘導デバイスと3、少なくとも1つの誘導コイル321を含む誘導部材32と、を備え、吸引/誘導デバイス3および容器ホルダ2が、互いに対して軸方向に移動可能に配置され、使用時に、少なくとも1つの誘導コイル321が、吸引部材31の底部よりも上方に配置される、機器1。そのような機器1ならびに複数の分析前ステーション、分析ステーションおよび/または分析後ステーションを備える検査室自動化システム。試料容器9から密封カバー8を自動的に取り外す方法、および密封カバー8によって試料容器9を自動的に密封または再密封する方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料容器(9;9’)から密封カバー(8)を自動的に取り外すための、および/または密封カバー(8)によって試料容器(9;9’)を自動的に密封または再密封するための機器(1)であって、前記機器(1)が、
試料容器(9;9’)を保持するための容器ホルダ(2)と、
密封カバー(8)を保持するための吸引部材(31)と、少なくとも1つの誘導コイル(321)を含む誘導部材(32)とを備える吸引/誘導デバイス(3;3’)と、を備え、
前記吸引/誘導デバイス(3;3’)および前記容器ホルダ(2)が、互いに対して軸方向に移動可能に配置され、
使用時に、前記少なくとも1つの誘導コイル(321)が、前記吸引部材(31)の底部よりも上方に、または前記吸引部材(31)の前記底部と同じ高さに配置される、機器(1)。
【請求項2】
前記吸引部材(31)が、前記誘導部材(32)の中央開口部(322)内に配置され、好ましくは、前記誘導部材(32)の前記中央開口部(322)が、前記少なくとも1つの誘導コイル(321)のコアと一致し、それにより、前記誘導コイル(321)が、前記吸引部材(31)を取り囲む、請求項1に記載の機器(1)。
【請求項3】
前記誘導部材(32)が、前記誘導部材(32)の磁束を反発部材(323;323’)から離れるように導くための反発部材(323;323’)をさらに備え、好ましくは、前記反発部材(323;323’)が、前記誘導部材(32)の前記中央開口部(322)と同軸に位置合わせされた中央開口部(3231)を含み、さらに好ましくは、前記反発部材(323;323’)の前記中央開口部(3231)が、前記誘導部材(32)の前記中央開口部(322)と同様または同一の内径を有する、請求項1または2に記載の機器(1)。
【請求項4】
前記反発部材(323;323’)が、
好ましくは前記誘導部材(32)と同様または同一の外径を有する板状の形状、または
前記少なくとも1つの誘導コイル(321)をその内部空洞内に収容するカップ状の形状であって、好ましくは、前記反発部材(323)の前記内部空洞が、内壁(324)によってその中央開口部(3231)から分離されている、カップ状の形状、からなる、請求項3に記載の機器(1)。
【請求項5】
前記吸引/誘導デバイス(3)が、前記誘導部材(32)において前記反発部材(323)とは反対側に配置されたカバー部材(33;33’)をさらに備え、好ましくは、前記カバー部材(33;33’)が、非導電性および/または非磁性材料からなる、請求項3または4に記載の機器(1)。
【請求項6】
前記カバー部材(33;33’)が、前記誘導部材(32)の前記中央開口部(322)と同軸に位置合わせされた中央開口部(331;331’)を有する板状の形状からなり、好ましくは、前記カバー部材(33;33’)の前記中央開口部(331;331’)が、前記誘導部材(32)の前記中央開口部(322)と同様または同一の内径を有する、請求項5に記載の機器(1)。
【請求項7】
前記カバー部材(33’)の前記中央開口部(331’)が、前記吸引部材(31)に向かって先細になる円錐形状からなり、好ましくは、前記カバー部材(33’)の円錐状の前記中央開口部(331’)が、前記誘導部材(32)の前記中央開口部(322)と合流する前に段部(332’)を備える、請求項6に記載の機器(1)。
【請求項8】
前記吸引/誘導デバイス(3)の前記吸引部材(31)と前記誘導部材(32)とが、互いに連結可能に形成されており、
前記吸引部材(31)と前記誘導部材(32)とが同軸に配置され、好ましくは、前記吸引部材(31)と前記誘導部材(32)と前記容器ホルダ(2)とが同軸に配置され、
前記吸引/誘導デバイス(3)が、前記容器ホルダ(2)に対して傾き可能に配置され、
前記吸引部材(31)が、ベローズ吸引カップまたは平坦吸引カップを備え、および/または、
前記吸引/誘導デバイス(3)および前記容器ホルダ(2)のうちの少なくとも一方が、他方に向かって軸方向にばね付勢される、請求項1から7のいずれか一項に記載の機器(1)。
【請求項9】
前記誘導部材(32)の前記少なくとも1つの誘導コイル(321)が、磁束を提供する前記誘導部材(32)の領域のサイズ制御のために、それぞれの巻線を含む異なる複数の領域に半径方向にセグメント化され、および/または、
前記少なくとも1つの誘導コイル(321)が、内部冷却された中空ワイヤからなる、請求項1から8のいずれか一項に記載の機器(1)。
【請求項10】
前記機器(1)が、前記吸引/誘導デバイス(3)と相互接続して配置された上部クランプ機構(4)をさらに備え、前記上部クランプ機構(4)が、前記試料容器(9;9’)の上端(91;91’)および前記吸引/誘導デバイス(3)を正確に位置決めするために、前記試料容器(9;9’)の上端(91;91’)をその密封カバー(8)の下方でクランプするように構成され、好ましくは、前記上部クランプ機構(4)が、少なくとも2つの試料容器把持フィンガ(41)の形態で設けられ、および/または、
前記容器ホルダ(2)が、好ましくは少なくとも2つの試料容器把持フィンガ(21)の形態の下部クランプ機構である、請求項1から9のいずれか一項に記載の機器(1)。
【請求項11】
複数の分析前ステーション、分析ステーションおよび/または分析後ステーションと、請求項1から10のいずれか一項に記載の機器(1)と、を備える、検査室自動化システム。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項に記載の機器(1)によって試料容器(9;9’)から密封カバー(8)を自動的に取り外す方法であって、
(S01)前記試料容器(9;9’)を所定の向きに保持するために、密封された試料容器(9;9’)を前記容器ホルダ(2)内に設けるステップと、
(S02)前記誘導部材(32)が前記密封カバー(8)の上方に配置された状態で、前記吸引/誘導デバイス(3)および前記密封カバー(8)が互いに接触するか、または互いに対して所定の距離になるまで、前記吸引/誘導デバイス(3)および前記容器ホルダ(2)を互いに向かって移動させるステップと、
(S03)前記密封カバー(8)に負圧を印加する前記吸引部材(31)によって前記密封カバー(8)を吸引するステップと、
(S04)前記密封カバー(8)の底面側(81)に設けられた密封材料を溶融させるために、前記少なくとも1つの誘導コイル(321)に電流を印加するステップと、
(S05)前記密封カバー(8)に印加された負圧を維持しながら、前記吸引/誘導デバイス(3)および前記容器ホルダ(2)を互いから離れるように移動させ、それによって前記密封カバー(8)を前記試料容器(9;9’)から取り外すステップと、を含む、方法。
【請求項13】
前記吸引/誘導デバイス(3)および前記容器ホルダ(2)を互いに向かって移動させる前記ステップ(S02)が、密封された前記試料容器(9;9’)を前記誘導部材(321)に対して中央に配置することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの誘導コイル(321)に電流を印加する前記ステップ(S04)が、密封された前記試料容器(9;9’)の直径に応じて、前記少なくとも1つの誘導コイル(321)の内側領域および/または外側領域に前記電流を印加することを含み、好ましくは、電流が印加された誘導コイル領域が、密封された前記試料容器(9;9’)の上部リム領域と相関する、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
印加された前記電流の大きさ、前記電流の印加時間、および/または前記少なくとも1つの誘導コイル(321)と前記密封カバー(8)との間の距離が、密封された前記試料容器(9;9’)の材料および/または密封された前記試料容器(9;9’)の容器直径に適合される、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの誘導コイル(321)に電流を印加する前記ステップ(S04)と、前記吸引/誘導デバイス(3)および前記容器ホルダ(2)を互いから離れるように移動させる前記ステップ(S05)とが、前記試料容器(9;9’)と前記密封カバー(8)との間に設けられた前記密封材料の溶融中に前記密封カバー(8)に引張力を加えるために、互いにオーバーラップしている、請求項12から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1から10のいずれか一項に記載の機器(1)によって密封カバー(8)によって試料容器(9;9’)を自動的に密封または再密封する方法であって、
(S11)前記試料容器(9;9’)を所定の向きに保持するために、前記容器ホルダ(2)内に開放した試料容器(9;9’)を設けるステップと、
(S12)前記密封カバー(8)を設け、前記密封カバー(8)に負圧を印加する前記吸引部材(31)によって前記密封カバー(8)を吸引するステップと、
(S13)前記誘導部材(32)が前記密封カバー(8)の上方に配置された状態で、前記密封カバー(8)の底面側(81)が前記試料容器(9;9’)の前記開放上端(91;91’)と接触するまで、前記吸引/誘導デバイス(3)および前記容器ホルダ(2)を互いに向かって移動させるステップと、
(S14)前記少なくとも1つの誘導コイル(321)に電流を印加して、前記密封カバー(8)の前記底面側(81)に設けられた密封材料を溶融させ、それによって前記試料容器(9;9’)の前記開放上端(91;91’)を前記密封カバー(8)によって密封するステップと、を含む、方法。
【請求項18】
前記方法がさらに、
(S15)前記密封カバー(8)への負圧の印加を停止することと、
(S16)前記吸引/誘導デバイス(3)および前記容器ホルダ(2)を互いから離れるように移動させることと、を含み、
好ましくは、前記方法が、前記試料容器(9;9’)から外方に突出した前記密封カバー(8)の前記余剰部分を、前記試料容器(9;9’)の外周に向かって折り畳むこと(S17)をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記密封カバー(8)を設ける前記ステップ(S12)が、密封フォイルを設けることと、前記密封フォイルを、前記試料容器(9;9’)を密封するのに適した形状、好ましくは正方形の形状に切断することと、を含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記吸引/誘導デバイス(3)および前記容器ホルダ(2)を互いに向かって移動させる前記ステップ(S13)が、前記試料容器(9;9’)を前記吸引/誘導デバイス(3)に対して中央に配置することを含む、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの誘導コイル(321)に電流を印加する前記ステップ(S14)が、前記試料容器(9;9’)の直径に応じて、前記少なくとも1つの誘導コイル(321)の内側領域および/または外側領域に前記電流を印加することを含み、好ましくは、電流が印加された前記誘導コイル領域が、前記試料容器(9;9’)の上部リム領域と相関する、請求項17から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
印加された前記電流の大きさ、前記電流の印加時間、および/または前記少なくとも1つの誘導コイル(321)と前記密封カバー(8)との間の距離が、前記試料容器(9;9’)の材料および/または前記試料容器(9;9’)の容器直径に適合される、請求項17から21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般に、本発明は、生物学的試料の分析などの試料分析の技術分野、さらには生物学的試料の高処理量分析の技術分野に関する。
【0002】
特に、本発明は、試料管またはバイアルなどの試料容器または試料コンテナから密封カバーを自動的に取り外すための機器であって、試料容器から密封カバーを取り外すことがまた、密封された試料容器の「密封解除」とも呼ばれ、第1の場所において密封されていない試料容器を自動的に密封するために、または既に密封解除された、もしくは事前に密封されていない試料容器を自動的に再密封するために同じ機器が使用され得る、機器に関する。ここで、「密封された」、「密封」または「再密封」という用語は、密封カバーによる試料容器の内容物の密封を包含する。
【0003】
蒸発および汚染に対する保護、すなわち試料の完全性を保証するための手段として意味されるそのような密封カバーは、密封カバーがより費用効率が高く、液密性を提供し、廃棄物の発生が少なく、貯蔵および輸送に必要な容積が少なく、コンパクトな検査室システムにとって非常に重要であるという事実など、試料容器閉鎖部として一般的に知られている多直径キャップと比較していくつかの利点を提供する。さらに、本発明は、試料容器から密封カバーを自動的に取り外すための、すなわち、密封された試料容器を自動的に密封解除するための方法、ならびに、それぞれの機器が使用されるようになる、密封カバーを有する試料容器を自動的に密封または再密封するための方法に関する。ここで、一般に、試料容器の密封/密封解除/再密封の自動化は、特に自動化が、過度に強い接着結合の場合に密封カバーのリッピング、密封カバーの滑りまたは散発的な粘着を回避することができるため、完全に自動化された再帰的ワークフローの可能性、スループットの向上、例えばシールの取り外し中のこぼれによるユーザの感染性材料との接触のリスクの低減、人件費の削減、および再現性の高いプロセスの可能性など、それぞれの手動手順と比較して特定の利点を提供する。
【背景技術】
【0004】
多くの生物学的、生化学的、診断的または治療的用途では、特定の抗原または核酸などの生物学的試料、例えば反応混合物に含まれる生物学的試料中の特定の物質または化合物の量または濃度を正確に決定することができることが不可欠である。この目標を正確に達成することができるようにするために、例えば、リアルタイムPCR、デジタルPCR(dPCR)またはマルチプレックスPCRの形態で広く知られているポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの方法が長年にわたって開発されてきており、これは、生物学的試料中の核酸の体外合成を可能にし、DNAセグメントが特異的に複製され得る、すなわち、試料内のDNAまたはRNAの小さなセグメントをコピーまたは増幅する費用対効果の高い方法である。DNAまたはRNAセグメントを増幅するためのこれらの方法の開発は、遺伝子分析、多くの遺伝病の診断、またはウイルス量の検出に多大な利益をもたらした。通常、熱サイクリングとも呼ばれる熱サイクリングは、そのようなDNAまたはRNAセグメントを増幅するための反応容器などの試料容器内に設けられた試料中の反応物の加熱および冷却を提供するために利用され得、ここで、サーモサイクラーは、PCRに基づく診断アッセイの自動手順を達成するために一般的に使用され、PCRが行われている間、液体PCR-試料ならびにそれぞれの反応物は、異なる温度レベルに繰り返し加熱および冷却される前に試料容器に最初に移さなければならない。熱サイクリングの時間中、および例えば分析処理中に熱サイクルされた試料を取り外した後、試料容器の内容物は、流体密封方式で試料容器の内部に密封されなければならない。
【0005】
近年、そのような分析の処理、分析前の処理または分析後の処理をより迅速に実行するだけでなく、より多数の試料を同時に処理する必要があり、その結果、検査室自動化システム、例えばCobas(登録商標)p 612分析前システムなどの自動処理システムが開発された。通常、現代の医療分析システムでは、医療分析のために試料容器からキャップを取り外した後、試料容器の開口部は、可撓性フィルム密封カバーによって閉鎖される。最新技術によれば、何らかの理由で、初期試験後に試料の追加試験が実行される必要がある場合、オペレータは、手動で密封カバーを取り外し、試料容器を分析装置に戻さなければならない。したがって、キャップされた試料容器の自動開放またはキャップ解除を可能にする必要性だけでなく、キャップではなく密封要素によって密封された試料容器を自動的に密封解除する必要性も存在した。自動密封解除は、手動密封解除と比較して、完全に自動化された再帰的ワークフローの可能性、スループットの向上、例えばキャップまたはシールの取り外し中のこぼれによるユーザによる試料の接触のリスクの低減、人件費の削減、およびより再現性の高いプロセス結果などのいくつかの利点をもたらす。さらに、試料の汚染を防止するために、および/または試料を試料容器内に貯蔵するために、例えば、後の段階で追加の試料が必要とされる場合、または一定時間後に密封された試料容器内の反応混合物をさらに分析する必要がある場合、処理後または処理中に開放した試料容器を自動的に密封または再密封する必要があった。試料容器を密封または再密封するために、それぞれの密封要素を設けることができ、これは、試料容器の適切な密封を可能にするために正確な取り扱いを必要とする。そのような密封要素は、試料管の上部の開口部を覆い、密封し、しばしば張り出す薄い材料から作製されたフィルムまたはフォイルシールなどの可撓性密封カバーの形態で提供され得る。通常、試料容器を密封または再密封するための密封カバーは、機械的な引張力によって開口部から引き離され得るように試料容器の上部に結合される。多直径キャップなどのキャップに対する密封カバーの利点は、密封カバーがより費用効率が高く、液密性をより良好に確保することができ、取り外された密封カバーがキャップよりも廃棄物を少なくし、密封カバーが貯蔵および輸送のために必要とする容積がより少ないという事実に見出され得る。
【0006】
具体的な例として、試料管の形態の試料容器は、試料を最初に収容するために、PCRなどの化学的および/または生物学的反応を実行するためのサーモサイクラー用の試験管として、または試料を遠心分離する必要がある血液学または凝固検査などの任意の他の種類のインビトロ診断手順用の試験管として使用され得る。ここで、「試料」および「生物学的試料」という用語は、対象分析物を潜在的に含むことがある材料を指し、生物学的試料は、血液、唾液、眼の水晶体液、脳脊髄液、汗、尿、便、精液、乳、腹水、粘液、滑液、腹水、羊水、組織、培養細胞などを含む生理学的流体などの生物学的供給源に由来するものとすることができ、試料は特定の抗原または核酸を含むと考えられ得る。
【0007】
上述した自動化された試料処理を改善することができる機器を開発する過程で、これらの試料容器の密封解除および/または密封/再密封に関して、試料容器およびそれぞれの密封カバーの取り扱いを改善するためのいくつかの試みがなされた。例えば、欧州特許第2 059 470号明細書は、密封コンテナから可撓性フィルムシールを取り外すための装置を記載しており、この装置は、とりわけ、密封コンテナの可撓性フィルムシールを挟むためのピンチプレートを呈し、装置は、コンテナからシールを取り外すために、ヘッドアセンブリおよび密封コンテナを互いから離れるように移動させることができる。しかしながら、そのような解決策では、取り外し動作中に可撓性フィルムシールが破損し、強い結合力が選択された場合に可撓性フィルムシールが完全には取り外されないという、純粋な機械的引き裂きに伴うリスクが存在する。一方、シールがより容易に取り外され得るように弱い接着力を選択した場合、シールの接着力が弱くなり、偶発的な漏れが生じる。過去に提供されたそれぞれの解決策の別の例として、日本国特許第6646371号公報は、磁場空間を形成する高周波コイルによって試料管から密封カバーを取り外し、それによって密封カバーと試料管との間に設けられた接着材料を誘導加熱するための機器および方法を開示している。接着材料を加熱した後、密封カバーは、密封カバー取り付け手段によって下方に押し下げられ、次にその上に吸引され、それによって密封カバーを試料管から取り外すことができる。より詳細には、高周波コイルは、試料管が馬サドルコイルのより高い位置の部分の下方を通過することができるように馬サドル形状に設けられ、馬サドルコイルのより低い位置の部分は、密封カバーを側方から誘導加熱するための磁場空間を生成するために使用される。密封カバーが試料管の上部の開口部をその側面に張り出すことが多いという事実を考慮すると、密封カバーの張り出し部分(部分にも接着剤が設けられている)が加熱され、したがって試料管の側面に接着され、それによって試料管からの密封カバーの取り外しを単純化する代わりに妨げるという問題が発生する可能性がある。
【0008】
これらおよび他の問題および欠点のために、上記に提示された従来技術の提案は、今日のユーザのニーズを満たすことができず、したがって、満足のいく解決策を提供しない。したがって、本技術分野では、診断アッセイをはるかに高速にし、したがって効率を改善しながら実行するのに安価にするために、試料容器を自動的に確実に密封解除および/または密封/再密封することができる方法および機器を提供することが一般に必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、密封解除および/または密封/再密封機器およびそれぞれの方法を改善する上述した問題に対処する。本発明の第1の態様によれば、試料容器から密封カバーを自動的に取り外すための、および/または密封カバーによって試料容器を自動的に密封または再密封するための機器であって、試料容器を保持するための容器ホルダと、吸引/誘導デバイスと、を備え、吸引/誘導デバイスが、例えば真空カップなどの真空グリッパの形態の密封カバーを保持するための吸引部材と、少なくとも1つの誘導コイルを含む誘導部材と、を備える、機器が提供される。したがって、誘導部材は、1つの単一のコイル、または互いに隣接するいくつかのコイルを呈することができ、複数のコイルは、同心状に配置され得、一方は他方を囲み、その結果、内側コイル、存在する場合は中間コイル、および/または外側コイルのみを作動させる可能性をもたらし、それによって誘導部材の誘導印加領域を画定する。また、一般に、誘導部材の誘導コイルは、適切なパワーエレクトロニクスを必要とすることが指摘されている。吸引/誘導デバイスおよび容器ホルダは、互いに対して軸方向に移動可能に配置され、使用時に、少なくとも1つの誘導コイル、例えば誘導コイルの底面側は、吸引部材の底部の上方に配置されるか、または吸引部材の底部と同じ高さに配置される。これに関して、吸引部材の底部は、吸引される物品に吸引力を提供するための吸引部材の吸引側であり、「デバイス」という用語は、吸引部材および誘導部材などの含まれる構成要素が、一体化された/相互接続された部品、例えば、結合されたエンティティの一体的に接続された部品であるユニットまたはエンティティに関する。特許請求の範囲に記載の機器における吸引部材、誘導部材および容器ホルダの特定の空間的配置により、誘導コイルが、試料容器から取り外されるかまたは試料容器に適用される密封カバーの上方に常に配置されることが保証され得、その結果、これらの張り出し部分を試料容器の外周に接着することにつながり得る密封カバーの任意の張り出し部分の加熱が回避され得る。ここで、密封カバーの張り出し部分は、それぞれの検査室システムのラックに装填される試料容器の密封カバーが互いに接触しないように、また、重なる部分に起因して所望の試料容器をピックアップする間にグリッパが隣接する試料容器を持ち上げる可能性を回避するための折り畳まれた密封カバーの折り畳み部分である。したがって、誘導コイルが試料容器開口部の上方に配置され、この位置では、誘導コイルから折り畳まれた密封カバーまでの距離が、試料容器の開口部または縁部における密封カバーまでの距離よりも大きいため、重なる密封部分がその間に試料容器側壁に接着されるリスク確率が大幅に低減される。
【0010】
本発明の機器の特定の実施形態によれば、吸引部材は、誘導部材の中央開口部内に配置され、誘導部材の中央開口部は、少なくとも1つの誘導コイルのコアと一致させることができ、誘導コイルは、それにより、吸引部材を取り囲む。そのような構造により、誘導コイルが試料容器の縁部の上面、すなわち密封カバーと試料容器とが密封接着剤によって互いに取り付けられている領域を覆うことが保証され得、一方、密封カバーの中央領域は、誘導コイルによって覆われておらず、したがって吸引力によって吸引部材が密封カバーに自由に取り付けられる。材料特性に関して、密封カバーの裏打ち材料は、アルミニウムなどの導電性および/または磁性材料の層から作製され得、またはポリエチレンテレフタレート(PET)および/またはアルミニウムなどの導電性および非導電性材料の層から作製され得、フォイル、特に可撓性フォイルまたはフィルムとして提供され得る。密封カバーの底面側に設けられる密封材料は、メタクリレートオレフィンコポリマーなどのヒートシールラッカーから作製され得る。
【0011】
本発明の機器のさらなる特定の実施形態によれば、誘導部材は、誘導部材によって生成された磁場を所望の方向に導き、磁束密度を増加させ、他の望ましくない方向の磁場を遮蔽する、すなわち磁場を反発部材自体から遠ざけるための、束コンセントレータまたは磁束コンセントレータとも呼ばれる反発部材をさらに備える。したがって、束コンセントレータは、誘導部材によって、すなわち少なくとも1つの誘導コイルによって生成された磁場を、標的、すなわち試料容器の縁部に取り付けられている密封カバーの領域に向かって所望の方向、すなわち少なくとも1つの誘導コイルに向けて集中させるための一種の配向手段として作用する。したがって、束コンセントレータは、標的領域において磁場を強め、側面および上部に対する遮蔽効果を有し、それによって電力または熱伝達の効率を高める。また、提案された束コンセントレータは、試料容器リムにおいて密封カバーに力線をさらに集束させるのを助けることができ、それにより、密封カバーの重なる部分における電磁界強度を、好ましくは重なる部分の端部においてゼロにさらに低下させる。したがって、取り外しプロセス中に重なる部分を意図せずに試料容器の壁に密封するリスクが、束コンセントレータによってさらに低減され得る。反発部材は、誘導部材の中央開口部と同軸に位置合わせされた中央開口部を含むことができる。これにより、再び、力線は、試料容器リムに沿って密封カバーの標的領域に向かって集中し、密封カバーの非接着領域には集中しなくすることができる。ここで、中央開口部は、誘導部材を通る吸引部材の妨げられない通過を保証するために、誘導部材の中央開口部と同様または同一の直径を有することができる。さらに、反発部材の具体的な実施形態に関して、これは板状の形状を含むことができ、板状反発部材は、誘導部材と同様または同一の外径を呈することができる。これにより、少なくとも1つの誘導コイルによって発生した磁束が吸引部材の下端部から離れる反対方向、すなわち密封カバーから離れる反対方向に排出されることが回避され得、発生した磁束を集中させることができる。あるいは、反発部材は、その内部空洞、すなわちカップの内部空洞内に少なくとも1つの誘導コイルを収容するカップ状の形状を呈することができる。したがって、誘導コイルは、カップの板状の基部において片側に並べられるだけでなく、カップの外壁によっても囲まれる。そのような反発部材の収容構造によれば、少なくとも1つの誘導コイルによって発生した磁束が密封カバーから離れる任意の方向に放出されることが回避され得、発生した磁束が密封カバーの接着部分にさらに集中することができる。さらに、反発部材の内部空洞は、内壁によってその中央開口部から分離され得、その結果、少なくとも1つの誘導コイルは、カップの板状の基部の片側に整列されるだけでなく、カップの外壁によって囲まれるとともに、カップの内壁によって穿孔される。このような反発部材の収容構造によれば、少なくとも1つの誘導コイルによって発生した磁束が密封カバーから遠ざかることがさらに回避され得、発生した磁束が密封カバーの接着部分にさらに集中することができる。
【0012】
本発明の機器のさらなる特定の実施形態によれば、前述の反発部材に加えて、吸引/誘導デバイスは、反発部材とは反対側、すなわち反発部材によって覆われていない少なくとも1つの誘導コイルの軸方向側の誘導部材に配置されたカバー部材をさらに備えることができる。カバー部材は、理想的には熱伝導ならびに電磁力線との相互作用を回避するために、ポリプロピレン(PP)または発泡ポリプロピレン(EPP)などのポリマーから作製され得る。吸引/誘導デバイスのそのような構造により、少なくとも1つの誘導コイルと密封カバーとの間に一定の距離が確保され得、カバー部材の厚さは、誘導コイルと密封カバーとの間の距離を正確に画定する。これにより、誘導コイルと密封カバーとの間の距離が誘導渦電流、したがって誘導加熱プロセスによって発生する熱に影響を及ぼすため、ベローズ吸引カップの場合、それが収縮することができ、密封カバーへの磁束の印加が制御され得ることが保証され得る。後者に関して、カバー部材は、密封カバー、すなわち、生成される磁場を変化させない材料上に印加される磁束のいかなる乱れも回避するために、非導電性および/または非磁性材料および/または熱伝導率および/または電磁伝導率が全くないか、または非常に低い材料からなることができる。所望の低いまたは存在しない熱伝導率に関して、ポリプロピレンまたは発泡ポリプロピレンがカバー部材の材料として使用され得、既に上述したように、ポリプロピレンは、約0.2W/mKの非常に低い熱伝導率を示すが、発泡ポリプロピレンは、断熱材料であると考えられ、したがって、約0.04W/mKで基本的に熱伝導率を示さない。カバー部材の特定の構造に関して、カバー部材は、反発部材と同様に誘導部材の中央開口部と同軸に位置合わせされているが、少なくとも1つの誘導コイルの反対側に配置された中央開口部を有する板状の形状を含むことができ、カバー部材の中央開口部は、カバー部材を通る吸引部材の妨げられない通過を保証するために、誘導部材の中央開口部と同様または同一の内径を呈することができる。さらに、カバー部材の中央開口部は、吸引部材に向かって先細になる円錐形状を含むことができる。これにより、カバー部材は、試料容器の密封された上端を吸引部材および誘導部材に向かって中央に配置するためのセンタリング機能を提供する。また、カバー部材の円錐形の中央開口部は、誘導部材の中央開口部と合流する/通過する前の段部を備えることができ、この段部は、試料容器の任意の中心に置かれた上端のための当接面を提供することができる。そのような場合、段部の厚さは、誘導コイルと密封カバーとの間の距離を正確に画定する。これにより、ベローズ吸引カップの場合、誘導コイルと密封カバーとの間の距離がエネルギー入力に影響を及ぼすため、それが収縮することができ、密封カバーへの磁束の印加が制御され得ることが保証され得る。
【0013】
本発明の機器のさらなる特定の実施形態によれば、吸引部材および誘導部材は、同軸に配置され、すなわち、吸引部材の中心軸および誘導部材の中心軸は、同じ軸上で互いに位置合わせされている。代替的または追加的に、吸引部材、誘導部材および容器ホルダは、同軸に配置され、すなわち、吸引部材の中心軸、誘導部材の中心軸および容器ホルダの中心軸は、同じ軸上で互いに位置合わせされている。これにより、磁束を密封カバーの標的領域に向ける能力を向上させるために、また、吸引部材と密封カバーとの間の十分且つ中心的な接触を保証するために、誘導部材に対する吸引部材の中心移動、または容器ホルダに対する吸引/誘導デバイスの中心移動が達成され得る。代替的または追加的に、吸引/誘導デバイスは、容器ホルダに対して傾き可能に配置され得る。したがって、特に、ガラスまたは透明および/または半透明および/または不透明なプラスチック、特にポリプロピレン(PP)および/またはポリスチレン(PS)および/またはポリエチレンテレフタレート(PET)、または任意の他の固体材料から作製され得る試料容器の材料を考慮して、熱の発生に起因して密封プロセスの結果としてリムの平面度が変更され得るため、試料容器の上端、すなわち試料容器の上端のリムの不均一性が補償され得る。代替的または追加的に、吸引部材は、一般に真空パッドとも呼ばれるベローズ吸引カップまたは平坦吸引カップを備えることができる。これにより、負圧によって密封カバーを保持することが可能になり、吸引部材のカップの下端部が吸引/誘導デバイスから突出するように配置され得、カップが軸方向に移動可能に配置され得る。したがって、密封カバーの確実な把持が保証され得る。
【0014】
さらに代替的または追加的に、吸引/誘導デバイスおよび容器ホルダのうちの少なくとも一方は、他方に向かって軸方向にばね付勢される。さらに詳細には、吸引/誘導デバイスおよび容器ホルダのうちの一方または両方は、他方の構成要素に関して、すなわち互いに関して接触圧力を可能な限り低く保つために、例えば弱いばねなどによって、軸方向にばね付勢され得る。したがって、密封カバーに対する誘導コイルの位置は、可能な限り低い力で軸方向に接触して移動され得、あるいは光電センサなどのセンサを介して検出された試料容器の位置に基づいて移動され得る。したがって、吸引/誘導デバイスと容器ホルダとの間に印加される接触力は、十分な程度に制限され得る。
【0015】
本発明の機器のさらなる特定の実施形態によれば、誘導部材の少なくとも1つの誘導コイルは、磁束を提供する誘導部材の領域のサイズ制御のために、それぞれの巻線を含む様々な領域に半径方向にセグメント化される。これにより、誘導コイルごとに異なる独立して作動可能な巻線が達成され得る。したがって、少なくとも1つの誘導のセグメンテーションの可能性によって、内側または外側の巻線のみを作動させることが実現可能になり、多数の巻線を駆動することは、多数のドライバなどを必要とする可能性がある。また、複数の誘導コイルを設ける場合には、複数の誘導コイルのそれぞれが再度セグメント化され得、これにより、さらにより小さな誘導部材の誘導印加領域を達成することができる。また、一般に、2つ以上の誘導コイルを設けることによって、例えば3つの同心誘導コイルを使用することによって、2つのレベル、またはさらには3つ以上のレベルなどの2つ以上の誘導「レベル」または誘導印加領域を有することが可能になる。後者に関して、高すぎる電流を回避するために、誘導コイルごとに一定の数の巻線が必要であることを考慮すべきである。また、複数の誘導コイルを設けることを考慮する場合、例えば空間的配置に関して、誘導部材の上部におけるワイヤの案内が考慮されなければならない。これに関して、内部冷却された中空ワイヤなどの冷却された誘導コイルの場合、誘導コイル当たりのより薄い巻線が実装され得る。さらにまた、各誘導コイルの巻数、すなわち、交流高周波電流が導電材料の表面に向かって集中する傾向について、非常に高い周波数での表皮効果が考慮されなければならない。この現象は、電流を全断面積のごく一部に制限するため、導体の抵抗を増加させる効果を有する。
【0016】
本発明の機器のさらなる特定の実施形態によれば、機器は、吸引/誘導デバイスと相互接続して配置された上部クランプ機構をさらに備え、上部クランプ機構は、試料容器の上端をその密封カバーの下方にクランプして、試料容器の上端および吸引/誘導デバイスを正確に位置決めするように適合される。さらに詳細には、コイルクランプまたはコイルヘッドクランプとも呼ばれる上部クランプ機構は、試料容器開口部と誘導コイルとを互いに対してx方向およびy方向に正確に位置決めするために試料容器の上部をクランプすることができるように、吸引/誘導デバイスに接続され得、これは、上部クランプ機構および誘導部材が1つの単一または一体化されたユニットとして実装されているために保証され得、上部クランプ機構は、試料容器をその上端の近くであるが、重なる密封カバー部分の下方で、また管ホルダの上方で把持することができる。上部クランプ機構の例として、これは、前述のように試料容器の上部を把持するために、少なくとも2つの試料容器把持フィンガの形態で提供され得る。クランプ機構を説明する場合、容器ホルダを下部クランプ機構として実装することも可能であり、下部クランプ機構は、上部クランプ機構と同様の方法で、すなわち少なくとも2つの試料容器把持フィンガの形態で設けられ得る。したがって、上部クランプ機構および下部クランプ機構の提供を考慮して、試料容器の一般的なクランププロセスは、以下のように説明され得る。最初に、試料容器は、密封カバーが吸引部材によって、例えば真空グリッパの形態で取り外されたときに試料容器の持ち上げを回避するために、下部クランプ機構によってクランプされる。その後、下部クランプ機構は、試料容器を所望の軸方向またはz位置に移動させる、すなわち、試料容器の長さに応じて試料容器を上方に移動させるか、または誘導/吸引デバイスは、やはり試料容器の長さに応じて、所望の軸方向またはz位置に移動され、その移動方法は、本発明の機器の全体概念およびその検査室自動化システムの周囲の構成要素に依存する。その後、上部クランプ機構は、試料容器の上端、すなわち試料容器の密封開口部、および誘導コイルを有する誘導部材をx方向およびy方向に正確に位置決めするために、試料容器の上部をクランプする。そして、誘導吸引デバイスは、可能な限り低い接触力で密封カバーにz方向に接触するように移動する。したがって、密封カバー上への吸引部材の穏やかな「ドッキング」および密封カバーに対する誘導コイルの正確な位置決めが達成され得る。
【0017】
上部クランプ機構の基本的な考え方は、追加のセンサを必要とせずに、すなわち機械的構造自体によって、試料容器が誘導コイルとできるだけ正確に同心に位置合わせされ得ることを保証することであり、その結果、試料容器開口部における試料容器の縁部に沿った磁場は、任意の位置で可能な限り等しくなり、これは、密封解除作業を確実に行うために重要である。誘導コイルとともに2つまたは3つの把持フィンガからなる上部クランプ機構がアセンブリまたはユニットを形成するため、全ての把持フィンガが機械的に結合され、試料容器の中心軸から測定された同じ距離にわたって横方向に移動され、把持フィンガが誘導コイルに対して同心円状に配置されるように最初に互いに位置合わせされることを条件として、試料容器は、常に同心円状に位置合わせされ得る。そのような場合、容器ホルダは、試料容器のねじれまたは容器ホルダ把持フィンガの横方向の解放が起こらないように、横方向にばね付勢されることが好ましい。さらに、吸引/誘導デバイスは回動可能であることが好ましく、これは、試料容器が均一に密封されなかった場合、例えば、密封カバーが試料容器のリムの他方よりも一方の側でより押し下げられた場合に、誘導コイルを試料容器の縁部とより良好に接触させるのを助けることができる。しかしながら、吸引/誘導デバイスのこのような回動性は、それぞれの機構をより複雑にする。そのような場合、誘導コイルが回動された後、誘導コイルが試料容器と依然として同心であることが確実にされなければならない。
【0018】
本発明のさらなる態様によれば、検査室自動化システムであって、複数の分析前ステーション、分析ステーションおよび/または分析後ステーションと、上述した機器と、を備える、システムが提供される。さらに詳細には、そのようなステーションは、血液検査ステーション、凝固検査ステーションなどのうちの1つまたはいくつかとすることができ、機器は、これらの検査室自動化ステーションのいずれか1つにおいて使用するための試料容器の密封解除、密封および/または再密封に適合され得る。
【0019】
上述した機器およびシステムは、以下に記載される方法を実行するように特に構成される。
【0020】
本発明のさらなる態様によれば、上述したような機器を用いて試料容器から密封カバーを自動的に取り外す方法が提供され、この方法は、密封解除方法とも呼ばれる。ここで、密封解除方法は、好ましくは所与の順序で、以下のステップを含む。
試料容器を所定の向きに保持するために、密封された試料容器を容器ホルダ内に設けるステップ、
誘導部材が密封カバーの上方に配置された状態で、吸引/誘導デバイスおよび密封カバーが互いに接触するか、または互いに対して所定の距離になるまで、吸引/誘導デバイスおよび容器ホルダを互いに向かって移動させるステップ、
密封カバーに負圧を印加する吸引部材によって密封カバーを吸引するステップ、
少なくとも1つの誘導コイルに電流を印加して、密封カバーの底面側に設けられた、すなわち組み立てられた状態で試料容器と密封カバーとの間に配置された密封材料を溶融させるステップ、および
密封カバーに印加された負圧を維持しながら、吸引/誘導デバイスおよび容器ホルダを互いから離れるように移動させ、それによって密封カバーを試料容器から取り外すステップ。
【0021】
電流を少なくとも1つの誘導コイルに印加する上記のステップでは、電流を印加して、例えば電子発振器によって交流磁場を生成することができる。
【0022】
誘導コイルが常に密封カバーの上方に配置され、すなわち誘導コイルが密封カバーまたは試料容器の側面を通過することがない上記の密封解除方法ステップを実行することによって、試料容器の開放上端の縁部に取り付けられた密封カバーのみが加熱されることが保証され得、これらの張り出し部分の試料容器の外周への望ましくない付着をもたらし得る密封カバーの任意の張り出し部分の加熱が回避され得る。また、上記の密封解除方法によれば、密封カバーを加熱する加熱時間、リフトオフ時間などが、試料容器周縁の密封カバー上部から密封カバーのいずれかの重なる部分の縁部に熱が伝わるのに要する時間よりも短くすることが可能となる。さらに、上述した方法は、誘導加熱中に試料容器に力が印加されないため、特に、押圧力ではなく引張力が密封カバーに印加されるという事実に起因して、試料容器のリムの変形をより少なくする。
【0023】
本発明の密封解除方法の特定の実施形態によれば、吸引/誘導デバイスおよび容器ホルダを互いに向かって移動させるステップは、密封された試料容器を誘導部材に対して中央に配置することを含む。したがって、試料容器の開放端部に設けられた密封カバーは、吸引部材および誘導部材に対して中心的に配置され、誘導部材によって密封カバーを均一に加熱することを可能にし、吸引部材によって密封カバーを中央から吸引することを可能にする。
【0024】
本発明の密封解除方法のさらなる特定の実施形態によれば、少なくとも1つの誘導コイルに電流を印加するステップは、密封された試料容器の直径に応じて、少なくとも1つの誘導コイルの内側領域および/または外側領域に電流を印加することを含む。したがって、誘導コイルの内側領域、すなわち内側誘導領域によって、または誘導コイルの外側領域、すなわち外側誘導領域によって、または誘導コイルの内側領域および外側領域、すなわち全誘導領域によって密封カバーを加熱することが可能である。ここで、誘導領域の選択は、密封された試料容器の直径のサイズ、すなわち接着剤によって試料容器の縁部に取り付けられている密封カバーの密封領域のサイズに依存する。したがって、誘導コイル領域には、密封された試料容器の上部リム領域と相関する電流が印加される。これにより、印加された電流は、密封領域、すなわち、密封カバーと試料容器の上部リムとの間の接着剤接触領域のみに集中させることができ、エネルギー浪費を回避するとともに、接着剤接触領域以外の密封カバーの他の部分を加熱することを回避し、したがって、密封カバーの任意の張り出し部分の加熱をさらに回避する。
【0025】
本発明の密封解除方法のさらなる特定の実施形態によれば、本発明の機器またはその使用の異なるパラメータは、使用される試料容器の材料および/または容器直径に方法およびその結果を適合させるために変更され得る。例えば、印加電流の大きさ、電流の印加時間、および/または少なくとも1つの誘導コイルと密封カバーとの間の距離は、密封された試料容器の材料および/または密封された試料容器の容器直径に適合され得る。具体例として、大きな容器直径は、通常、密封カバーと試料容器の上部リムとの間に大きな接着剤接触領域をもたらし、それにより、所望の加熱効果を達成するために、それぞれ大きな印加電流の大きさおよび/または密封カバーに印加される電流のそれぞれ長い印加時間が選択され得る。追加的または代替的に、誘導コイルと密封カバーとの間の距離は、密封カバーの十分な誘導加熱が達成されるように選択され得、短い距離は、密封カバーのより速い加熱をもたらし、より短い距離は、密封カバーの加熱時間を延長することができる。したがって、機器または方法の特定のパラメータを変更することは、実際には加熱結果に実質的な影響を及ぼすことができる。それに基づいて、試料容器の変化するパラメータは、例えば、試料容器の開口部と誘導コイルの底面側との間のギャップを変化させることによって許容可能であり、このギャップの変化は、誘導される最大温度または所望の最大温度までシールを加熱するのに必要な時間に影響を及ぼし、距離は、材料またはサイズに関して異なるタイプの試料容器を考慮するように調整され得る。
【0026】
上記を考慮して、アイデアは、使用されるヒートシールラッカー配合物に応じて、すなわち、使用されるヒートシールラッカーの融点に応じて、230℃+/-30℃、170℃+/-30℃または110℃+/-30℃の範囲内のシール温度に達するように、試料容器の材料、すなわち、管ポリマーの種類にしたがって、および管直径などの試料容器の寸法にしたがって、密封処理パラメータを調整することであることが指摘される。ここで、試料容器の材料の溶融温度よりも低い溶融温度を有するヒートシールラッカーを使用することが好ましく、その結果、適用された溶融温度は、ヒートシールラッカーのみを溶融させ、試料容器の材料は溶融させない。しかしながら、多くの場合、ヒートシールラッカーの溶融温度は、試料容器材料の溶融温度よりも高く、これは、熱密封解除中に試料容器材料の溶融を回避することを困難にする。さらに、試料容器の特性に応じた密封解除プロセスパラメータの調整に関して、検査室情報システムによってこれが提供され得る。目標温度は、印加される加熱エネルギーを調整することによって、すなわち、印加される電流もしくは電圧および/または印加時間を調整することによって、達成され得る。具体的な例として、ポリプロピレン製の試料容器について、印加時間の10から40msの増加、より詳細には20から26msの増加は有用とすることができ、10から40msの増加、より詳細には約23msの印加時間の増加は、一般には1ms当たり1℃を生成するという規則で、小径を有する試料容器に有用とすることができる。代替的または追加的に、密封解除プロセスパラメータはまた、誘導コイルと試料容器の縁部との間の距離を調整することによって調整され得、それによって加熱エネルギーに対する間接的な影響を達成することができ、ポリプロピレン製の試料容器については軸方向、すなわちz方向の距離の縮小が0.1から0.6mm、またはより詳細には0.3から0.35mmの範囲で有用とすることができ、0.1から0.6mm、またはより詳細には約0.3mmが、0.1mmの距離縮小当たり7℃を生成するという一般的な規則で、小径を有する試料容器について有用とすることができる。しかしながら、これに関して、ヒートシールラッカーだけでなく、ある時点で試料容器の材料も溶融し、試料容器の縁部または一般にポリマー繊維の変形をもたらすことを回避することに関して一般的な問題が存在する。したがって、解決策として、短い熱パルスのみが印加され得、すなわち短い脱封プロセス時間が印加され、それにより、試料容器への熱伝導を介した管材料への熱伝達および密封カバーの重なる部分への熱伝達が制御され、放射が非常に短い加熱段階および密封カバーの即時リフトオフによって制限され、試料容器材料の溶融のリスクを低減する。代替的または追加的に、誘導パルスは、ヒートシールラッカーを溶融させるのに必要なだけの熱エネルギーの熱流のみが使用されるように、短時間だけ保持されるべきであり、それにより、試料容器材料は、しばしばヒートシールラッカーよりも低い溶融温度を示すため、試料容器の材料への熱流量が制限され、それによって試料容器材料の溶融のリスクを再び低減する。一般に、発熱後、誘導コイルは、直ちに密封カバーから離れなければならない。さらにまた、追加の対策として、シールおよび管への圧力を回避するために、試料容器の縁部への過度の圧力印加を回避する必要があり、代わりにヒートシールラッカーが完全に溶融する前に密封カバーに引張力を発生させることが好ましい場合がある。これは、例えば、負圧が印加されたときのベローズ吸引カップの収縮によって達成され得る。また、密封カバーのリフトオフ中の高いリフトオフ速度および高いリフトオフ加速度は、ヒートシールラッカーおよび/または管材料の潜在的な繊維伸長を低く保ち、例えば短い熱パルスのみを印加することおよび/または熱パルスを非常に短い時間のみ保持することによって、試料容器内への潜在的な熱伝導の時間を短く保つために好ましい。それにより、生成されたヒートシールラッカー繊維および/または試料容器繊維は、迅速に引き離され、それにより、試料容器内への熱伝導の時間を短く保つとともに、繊維長を低く保つ。
【0027】
本発明の密封解除方法のさらなる特定の実施形態によれば、少なくとも1つの誘導コイルに電流を印加するステップと、吸引/誘導デバイスおよび容器ホルダを互いから離れるように移動させるステップとは、ある程度互いにオーバーラップしていてもよい。ここで、吸引ステップおよび後続の移動ステップの結果としての密封カバーへの引張力の印加と、試料容器と密封カバーとの間に設けられた密封材料の溶融とは、オーバーラップすることができ、その結果、溶融密封材料を含む、好ましくは依然として溶融状態にある吸引密封カバーは、試料容器からの密封カバーの円滑で問題のない取り外しを達成するために、試料容器から引き離される。
【0028】
換言すれば、試料容器を密封解除する一般的なプロセスは、以下のように説明され得る。最初に、容器ホルダは、管ラックなどの試料容器ホルダに向かって下方に移動し、試料容器をクランプする。次に、試料容器が誘導コイルおよび/または吸引/誘導デバイスに隣接して2から3mmの小さな距離に配置されるまで、試料容器がホルダからz方向に持ち上げられる。次に、上部クランプ機構の2つまたは3つの把持フィンガは、試料容器がクランプされるまで、誘導コイルの中心軸に向かって、横方向に一緒に/互いに向かって同じ方向に移動する。ここで、容器ホルダは、力に屈し、上部クランプ機構によって試料容器が傾斜位置に押し込まれるのを回避することができるようにばね負荷方式で横方向に取り付けられるか、あるいは容器ホルダの把持フィンガが解放される、すなわち試料容器から僅かに離れるように移動されることが好ましい場合がある。その後、吸引/誘導デバイスは、上部クランプ機構ではなく、試料容器と接触するように垂直に下降する。ここで、吸引/誘導デバイスは、所定の力、好ましくはリムが溶融するのを回避するために可能な限り小さい力で接触するように、軸方向にばね付勢され得、あるいは移動は、光バリアによって制御される。
【0029】
次に、磁気交流磁場をオンに切り替えることによって密封解除プロセスが開始され、吸引/誘導デバイスは、所定の時間後に突然上昇するが、上部クランプ機構は、所定の位置に留まり、それによって密封カバーを取り外す。容器ホルダの把持フィンガが事前に解放されている場合、容器ホルダは、再び締め付けられる。上部クランプ機構の把持フィンガが解放され、容器ホルダが下方に移動し、試料容器をホルダ内に戻す。その後、取り外された密封カバーは、密封カバーを廃棄物コンテナに送るために、例えば吸引/誘導デバイスの下方に配置され、廃棄物コンテナに通じる管などによって、例えば吸引部材に正圧を加えることによって廃棄物コンテナに廃棄される。
【0030】
一般に、密封解除中の潜在的な問題の1つは、誘導加熱による密封解除プロセスが最適なレベルで機能する最適なパラメータ領域が僅かしかないことである。異なる入力係数の変動は、出力変動に対する大きな影響を有する可能性がある。したがって、それぞれのプロセス制御は、機器の幾何学的および物理的制約のために動作中の密封場所の温度を測定することが特に困難であるため、好ましい。この問題に対する解決策として、力センサおよび/または圧力センサを使用して、密封解除中の密封カバーの加熱プロセスおよびリフトオフプロセスを制御および検証および/または監視することができる。したがって、力センサは、リニアモータ軸、すなわち、例えばJenny Science(登録商標)、スイスによって提供されるような統合された力変位測定技術を有するリニアモータ軸などのリニアアクチュエータに直接統合され得、したがって、吸引/誘導デバイスを垂直方向に、すなわち試料容器に、および試料容器から離れるように移動させる軸である機器の一部とすることができる。あるいは、力センサは、吸引/誘導デバイスとリニアアクチュエータとの間に配置され得る。両方の場合において、力センサは、吸引/誘導デバイスが試料容器に、および試料容器から離れるように移動するときに継続して移動する。力センサは、加熱プロセスおよびリフトオフプロセス中の垂直方向の時間および距離に関する情報に加えて、密封カバーに接触する間ならびに加熱プロセスおよびリフトオフプロセス中の引張力および圧縮力に関する情報を提供することができる。次に、経時的な力および/または温度を表す曲線が生成され、リフトオフプロセスの成功または失敗に関する情報を提供するために使用され得る。
【0031】
上述した力センサに関して、吸引/誘導デバイスが密封カバーと接触しているとき、すなわち吸引/誘導デバイスの任意の部分が密封カバーを押圧するとき、正圧力値の増加が記録され得る。そして、吸引/誘導デバイスの吸引部材と密封カバーとが接触した後、吸引部材によって、まだ取り付けられて加熱されていない密封カバーを引っ張ろうとすると張力が発生される。次に、ヒートシールラッカー、すなわち接着剤が溶融し、したがって、力センサに作用する張力が小さくなるため、加熱が開始されると同時に張力は僅かに減少し始めるはずである。これにより、加熱プロセスが開始したことが検証され得、それに基づいて接着剤が溶融し始めたかどうかが評価され得る。その後、吸引/誘導デバイスが吸引された密封カバーとともに持ち上げられると、密封カバーが少なくとも部分的に試料容器に取り付けられたままの状態で、張力は急激に増加し始める。続いて、急激に増加した張力は、密封カバーが試料容器から取り外された瞬間に急激に減少し始めるはずであり、すなわち、測定された張力の急激なピークは、増加する張力が試料デバイスからの密封カバーの分離時に減少する張力に急激に変化しているときに現れる。これにより、密封解除プロセスの成功またはその欠如が以下のように検証され得る。密封解除プロセスが成功すると、リフトオフ開始直後に力ピークが現れる。すなわち、密封解除は、リフトオフプロセスの開始後の所定の時間範囲内に力ピークが現れる場合に成功したと検証され得る。これとは対照的に、力ピークが所定の時間範囲の後まで遅延し、および/または予想される力ピークに完全には発展しない場合、すなわち、ある種の力プラトーが代わりに監視され得る場合、不成功または失敗した密封解除プロセスが検証され得る。
【0032】
力センサからの測定情報と組み合わせて、吸引/誘導デバイスの吸引部材に関連する圧力センサからの追加の測定情報が収集され得、それによって吸引部材の任意の圧力変化に関する情報を提供する。例えば、密封カバーに印加された吸引部材の負圧は、通常、リフトオフプロセス中に僅かに低下するが、これは、例えば密封カバー上の刻印などに起因して、吸引部材と密封カバーとの間に完全な気密接触が通常存在しないためである。したがって、力ピークなしと組み合わせて負圧の差を監視することができない場合、密封解除が成功しなかったと導き出され得る。あるいは、力ピークの後に負圧が著しく低下した場合、これは吸引部材と密封カバーとの間の接触が失われたことを意味するため、密封解除が成功しなかったことも導き出され得る。したがって、力センサからのデータおよび/または圧力センサからのデータを介したプロセス制御を使用して、密封解除プロセスの成功を評価することができ、密封解除プロセスは、非常に迅速に行われるため、プロセス監視は困難である可能性がある。力センサは、ヒートシールラッカーがいつ融解し始めるかを間接的に検出することができるため、監視された力信号は、正しいリフトオフタイミングのトリガとしても使用され得る。
【0033】
本発明のさらなる態様によれば、上述したような機器によって密封カバーを用いて試料容器を自動的に密封または再密封する方法が提供され、この方法は、密封/再密封方法とも呼ばれる。ここで、密封/再密封方法は、好ましくは所定の順序で、以下のステップを含む。
試料容器を所定の向きに保持するために、容器ホルダ内に開放した試料容器を設けるステップ、
密封カバーを提供し、密封カバーに負圧を印加する吸引部材によって密封カバーを吸引するステップ、
誘導部材が密封カバーの上方に配置された状態で、密封カバーの底面側が試料容器の開放上端と接触するまで、吸引/誘導デバイスおよび容器ホルダを互いに向かって移動させるステップ、および
少なくとも1つの誘導コイルに電流を印加して、密封カバーの底面側に設けられた密封材料を溶融させ、それによって試料容器の開放端部を密封カバーによって密封するステップ。
【0034】
電流を少なくとも1つの誘導コイルに印加する上記のステップでは、電流を印加して、例えば電子発振器によって交流磁場を生成することができる。
【0035】
誘導コイルが常に密封カバーの上方に配置され、すなわち誘導コイルが密封カバーまたは試料容器の側面を通過することがない上記の密封/再密封方法ステップを実行することによって、試料容器の開放上端と接触して配置された密封カバーの部分、特に試料容器の開放上端の縁部のみが誘導加熱によって加熱されることが保証され得、これらの張り出し部分が試料容器の外周に望ましくない接着をもたらす可能性がある密封カバーの任意の張り出し部分の加熱が回避され得る。
【0036】
本発明の密封/再密封方法の特定の実施形態によれば、本方法は、密封カバーへの負圧の印加を停止するステップ、さらには正圧の印加を停止するステップ、および吸引/誘導デバイスと容器ホルダとを互いから離れるように移動させるステップの後続ステップをさらに含む。そうすることで、試料容器の開放端部に接着された密封カバーが残され、密封材料がまだ完全に硬化していない場合に密封カバーを試料容器から誤って再び取り外すことなく、密封または再密封された試料容器が得られる。さらに、本発明の密封/再密封方法は、余剰部分が試料容器から外方に突出した、密封カバーの余剰部分を試料容器の外周に向かって折り畳むステップをさらに含むことができる。そうすることで、これらの後続の方法ステップを実行するときに誘導熱の印加がもはや実行されないため、試料容器の縁部に接着されておらず、試料容器から外側に突出した密封カバーの任意の部分が、これらの重なる部分を試料容器の外側に接着することなく、試料容器の上部の周りに巻き付けられるかまたは折り畳まれ得る。
【0037】
本発明の密封/再密封方法のさらなる特定の実施形態によれば、密封カバーを提供するステップは、例えばフォイルのロールから密封フォイルを提供することと、密封フォイルを試料容器を密封するのに適した形状、例えば正方形に切断することと、を含む。例えば、密封カバーを提供するステップは、方法全体を自動的に実行させるために、自動的に実行されることもできる。一般に、密封カバーは、吸引部材によって試料容器の開放上端の上部に設けられ、その上に押圧され、誘導加熱を適用することによってそれに密封され得る。
【0038】
本発明の密封/再密封方法のさらなる特定の実施形態によれば、吸引/誘導デバイスおよび容器ホルダを互いに向かって移動させるステップは、さらに上述した密封解除方法と同様に、試料容器を吸引/誘導デバイスに対して中央に配置することを含む。ここでも、試料容器の開放上端に設けられた密封カバーは、したがって、吸引部材および誘導部材に対して中心的に配置され、誘導部材によって密封カバーを均一に加熱することを可能にし、吸引部材による密封カバーの中央吸引を可能にする。さらに上述したような密封/再密封方法と同様に、密封/再密封方法は、少なくとも1つの誘導コイルに電流を印加するステップが、試料容器の直径に応じて、少なくとも1つの誘導コイルの内側領域および/または外側領域に電流を印加することを含み、誘導コイル領域には、試料容器の上部リム領域と相関する電流が印加され得るように実行され得る。したがって、誘導コイルの内側領域によって、すなわち内側誘導領域によって、または誘導コイルの外側領域によって、すなわち外側誘導領域によって、または誘導コイルの内側領域および外側領域によって、すなわち全誘導領域によって密封されるように、試料容器の上部リムに配置された密封カバーを加熱することが可能である。ここで、誘導領域の選択は、密封される試料容器の直径のサイズ、すなわち接着剤によって試料容器の縁部に取り付けられる密封カバーの密封領域のサイズに依存する。したがって、誘導コイル領域には、密封された試料容器の上部リム領域と相関する電流が印加される。これにより、印加された電流は、密封領域、すなわち、密封カバーと試料容器の上部リムとの間の接着剤接触領域のみに集中させることができ、エネルギー浪費を回避するとともに、接着剤接触領域以外の密封カバーの他の部分を加熱することを回避し、したがって、密封カバーの任意の張り出し部分の加熱をさらに回避する。
【0039】
本発明の密封/再密封方法のさらなる特定の実施形態によれば、印加電流の大きさ、電流の印加時間、および/または少なくとも1つの誘導コイルと密封カバーとの間の距離は、上記でさらに説明した密封方法と同様に、試料容器の材料および/または試料容器の容器直径に適合される。例えば、印加電流の大きさ、電流の印加時間、および/または少なくとも1つの誘導コイルと位置決めされた密封カバーとの間の距離は、密封される試料容器の材料および/または密封される試料容器の容器直径に適合され得る。具体例として、大きな容器直径は、通常、密封カバーと試料容器の上部リムとの間に大きな接着剤接触領域をもたらし、それにより、所望の加熱効果を達成するために、それぞれ大きな印加電流の大きさおよび/または密封カバーに印加される電流のそれぞれ長い印加時間が選択され得る。追加的または代替的に、誘導コイルと密封カバーとの間の距離は、密封カバーの十分な誘導加熱が達成されるように選択され得、短い距離は、密封カバーのより速い加熱をもたらし、より少ない距離は、密封カバーの加熱時間を延長することができる。したがって、機器または方法の特定のパラメータを変更することは、実際には加熱結果に実質的な影響を及ぼすことができる。
【0040】
換言すれば、以下のとおりである。提案される密封/再密封および密封解除の解決策は、誘導加熱によってアルミニウム熱密封フォイルのヒートシールラッカーなどの密封材料を加熱する/溶融させるために、管開口部の上方に配置される誘導コイルの使用に基づく。ヒートシールラッカーの加熱は、シールが低い力を有する真空グリッパによって取り外され得るように結合強度の低下をもたらす。誘導コイルは、磁束コンセントレータによって支持され得、その結果、主に、管リム/管開口部におけるシールの領域が加熱され、重なって折り畳まれるフォイルの部分は加熱されず、これは、シールが管側壁に付着するリスクを含み、回避されるべきである。
【0041】
技術的代替案は、フォイルの手動剥離、フォイルの自動クランプおよび剥離、フォイルの穿孔、フォイルのレーザー切断、パラフィンフォイルまたは感圧接着フォイルなどのはるかに低い接着強度を有する密封フォイルの使用、UV活性化密封解除、キャップ、ゴム、ベローズなどの密封フォイル以外の手段の使用、または熱支持クランプおよび剥離フォイルを含み、シールの機械的取り外しの前に接着強度を低下させる。
【0042】
上記機器の構成および構造に関するさらなる詳細および説明は、以下にさらにまとめられ得る。上述した方法ステップは、好ましくは、後続の方法で所与の順序で実行され、試料容器を提供するステップおよび密封カバーを提供するステップは交換可能である。
【0043】
通常、生物学的試料を自動的に処理するために最先端の検査室において一般に使用される検査室自動化システムは、上述した方法を実行するための機器を備えることができる。ここで、検査室の「検査室機器」または「機器」という用語は、1つまたは複数の生物学的試料に対して1つまたは複数の処理ステップ/ワークフローステップを実行するように動作可能な任意の装置または装置構成要素を包含し、分析機器、分析前機器、および分析後機器も包含する。これにより、「処理ステップ」という表現は、PCR遂行の特定のステップを実行するなど、物理的に実行される処理ステップを指す。上述した方法ステップは、そのような自動処理システムの制御ユニットによって制御され得て、制御ユニットは、上述したデバイスおよびその構成要素の任意の種類の作動または監視を制御することもでき、本明細書で使用される「制御ユニット」という用語は、CPUなどの任意の物理的または仮想的処理デバイスを包含し、ワークフローおよびワークフローステップが実行されるように、機器全体、または1つまたは複数の検査室機器を含むワークステーション全体を制御することもできる。制御ユニットは、例えば、異なる種類のアプリケーションソフトウェアを搭載し、自動処理システムまたはその特定の機器またはデバイスに、分析前ワークフロー/ワークフローステップ、分析後ワークフロー/ワークフローステップおよび分析ワークフロー/ワークフローステップを実行するように指示し得る。制御ユニットは、特定の試料または試料容器によってどのステップを実行する必要があるかに関する情報をデータ管理ユニットから受信し得る。さらに、制御ユニットは、データ管理ユニットと一体であることがあり、サーバコンピュータに含まれることがあり、および/または、1つの機器の一部であり得るか、または自動処理システムの複数の機器にわたって分散されることがある。制御ユニットは、例えば、操作を実行するための命令を備えたコンピュータ可読プログラムを実行するプログラム可能論理コントローラとして具体化されてもよい。ここでは、ユーザによるかかる命令を受信するために、ユーザインターフェースがさらに提供され得、本明細書で使用される「ユーザインターフェース」という用語は、オペレータからのコマンドを入力として受信し、またフィードバックを提供し、そこに情報を伝えるためのグラフィカルユーザインターフェースを含むがこれらに限定されない、オペレータと機械との間の相互作用のための任意の適切なアプリケーションソフトウェアおよび/またはハードウェアを包含する。また、システム/デバイスは、様々な種類のユーザ/オペレータにサービスを提供するためにいくつかのユーザインターフェースを公開する場合がある。
【0044】
本明細書および添付の特許請求の範囲に使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形を含む。同様に、「備える(comprise)」、「含む(contain)」、「包含する(encompass)」という語は、排他的ではなく包括的に、すなわち、「含むがこれに限定されない」という意味で解釈される。同様に、「または」という単語は、文脈が明確に別のことを示さない限り、「および」を含むことを意図している。「複数(plurality)」、「複数(multiple)」または「多数(multitude)」という用語は、整数倍の2つ以上、すなわち2または>2を指し、「単一(single)」または「唯一(sole)」という用語は1つ、すなわち=1を指す。さらにまた、「少なくとも1つ」という用語は、1つまたは複数、すなわち、1または>1としても理解されるべきであり、これも整数倍である。したがって、単数形または複数形を使用する語はまた、それぞれ複数形および単数形も含む。さらに、「本明細書で(herein)」、「上方(above)」、「事前に(previously)」、および「下方(below)」という語、ならびに同様の意味の語は、本特許出願において使用される場合、本特許出願の特定の部分ではなく、本特許出願全体を指すものとする。
【0045】
さらに、特定の用語は便宜上使用されており、本発明を限定することを意図するものではない。「右(right)」、「左(left)」、「上(up)」、「下(down)」、「下方(under)」、「上方(above)」という用語は、図における方向を指す。用語は、明示的に言及された用語と、それらの派生語および同様の意味を有する用語を含む。また、「下(beneath)」、「下方(below)」、「下方(lower)」、「基部(base)」、「上方(above)」、「上方(upper)」、「上(top)」、「近位(proximal)」、「遠位(distal)」などの空間的に相対的な用語も、図に示すように、別の要素または特徴に対する1つの要素または特徴の関係を説明するために使用され得る。これらの空間的に相対的な用語は、図に示されている位置と向きに加えて、使用時または動作時のデバイスの異なる位置と向きを包含することを意図している。例えば、図中のデバイスが上下逆さまにされる場合、他の要素または特徴の「下」または「下方」として説明されている要素は、他の要素または特徴の「上」または「上方」になる。したがって、「下方」という例示的な用語は、上と下の位置と方向の双方を包含することができる。デバイスは、他の方法で方向付けられ(90度回転または他の方向に)、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子がそれに応じて解釈され得る。同様に、様々な軸に沿う、および様々な軸の周りの動きの説明は、様々な空間デバイスの位置と方向を含む。
【発明の効果】
【0046】
一般に、例えばホットプレートによるなどの熱伝導による加熱、熱風によるなどの熱対流による加熱、または赤外線源によるなどの熱放射による加熱の代わりに誘導加熱は、いくつかの利点、例えば、(a)密封カバーの裏材のみが加熱され、環境は密封カバーの裏材からの熱伝導、熱対流および熱放射を介して間接的にのみ加熱されることによる、高度に選択的な局所加熱の可能性、(b)スループットの増加をもたらす急速加熱プロセスの可能性、(c)非常に急速な温度低下をもたらすように、加熱を直ちにオフにする可能性、(d)構造設定の容易で迅速な変更、例えば異なる管タイプの特定のパラメータの異なる設定が可能である可能性、(e)約300msの範囲内の密封カバーの取り外し中に短時間しか誘導加熱がオンにならないことによる、エネルギー節約、(f)密封/密封解除/再密封プロセス中に試料容器リムに力を作用させる必要がないため、試料容器リムの変形/損傷が少ないこと、(g)表面の不均一性による物理的接触の欠落は重要ではないため、接触加熱と比較して接触の問題がないこと、(h)空気乱流が加熱プロセスに影響を及ぼさない、すなわち不利なキャリーオーバをもたらす可能性があるエアロゾルが生成されないことを提供する。
【0047】
本発明で提示される解決策の主な利点は、少なくとも1度、好ましくは2度の閉鎖、すなわち一次試料容器からの一次蓋の取り外し後の密封、および1つまたは複数の密封解除サイクルが、試料の完全性、ならびに前処理および後処理、輸送および/または貯蔵との適合性に悪影響を及ぼすことなく可能であり、密封の主な機能が2回目の密封の第2の閉鎖開放サイクルについても保証されるように、ハイスループット検査室において自動化された方法で一次および/または二次試料容器を確実に密封/再密封および/または密封解除することができる密封/再密封/密封解除機器および方法を提供することである。
【0048】
要するに、従来技術で提示された既知の上述した解決策とは対照的に、本明細書に記載の解決策は、とりわけ、高い結合強度で管上に結合されたシールの密封解除を可能にし、これにより、高い結合強度によって液密性が保証されるため、管の輸送が可能になる可能性があり、ヒートシールラッカーの再溶融によって減少した結合強度によるフォイルのリッピングのリスクが低下し、ピンチングプレートがフォイルを把持するためにねじ山を越えて移動する必要がないため、ねじ山を含む管に関する問題のリスクが低下する。さらに、本明細書に記載の解決策は、電磁界が上方から生成されるため、特に磁束コンセントレータが含まれる場合、磁束が強化される管リム領域に磁場が集中するため、折り畳まれたフォイル領域の加熱を回避する。したがって、折り畳まれたフォイルが結果として管壁に貼り付くリスクは存在しないか、または著しく低下する。したがって、提示された解決策は、重なって折り畳まれたフォイルと互換性があり、これは、管直径に一致するようにシールを切断する必要がないため、1つのシール直径、または長方形のシール形状の場合には1つのシール幅およびシール長が全ての種類の管直径に使用され得ることを意味する。
【0049】
様々な態様および例示的な実施形態の図および説明の繰り返しを回避するために、多くの特徴が多くの態様および実施形態に共通であることを理解されたい。本開示の特定の実施形態の説明は、網羅的であること、または本開示を開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。本開示の特定の実施形態およびその例は、例示の目的で本明細書に記載されているが、関連技術分野の当業者が認識するように、本開示の範囲内で様々な同等の変更が可能である。前述の実施形態の特定の要素は、他の実施形態の要素と組み合わせたり、要素の代わりに使用したりすることができる。さらにまた、本開示の特定の実施形態に関連する利点は、これらの実施形態の文脈で説明されてきたが、他の実施形態もそのような利点を示すことがあり、全ての実施形態が添付の特許請求の範囲によって定義されるような本開示の範囲内に含まれるようにそのような利点を示す必要はない。適用可能であれば、デバイスまたはシステムクレームからの技術的特徴は、クレームに記載された方法または使用の過程で使用され得、またはその逆も可能である。説明または図からの態様の省略は、その態様がその態様を組み込んだ実施形態から欠落していることを意味するものではない。代わりに、明確にするため、および冗長な説明を回避するために、態様が省略されている場合がある。この文脈では、この説明の残りの部分に以下が適用される。図面を明確にするために、図に説明の直接関連部分で説明されていない参照符号を含む場合は、前または後の説明セクションを参照されたい。さらに、わかりやすくするために、図面のセクションにおいて部品の全ての特徴に参照符号が付されていない場合は、同じ図面の他のセクションを参照されたい。2つ以上の図における同様の番号は、同じ要素または類似の要素を表している。
【0050】
以下の例は、本発明の特定の実施形態を説明することを意図している。したがって、以下に論じられる特定の変更は、本発明の範囲に対する限定として解釈されるべきではない。本発明の範囲から逸脱することなく、様々な均等物、変形、および変更を行い得ることは当業者にとって明らかであり、したがって、そのような均等の実施形態が本明細書に含まれることが理解されるべきである。本発明のさらなる態様および利点は、図に示される特定の実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】側面図、部分的に断面図における本発明の実施形態にかかる試料容器から密封カバーを自動的に取り外すための、および/または密封カバーを有する試料容器を自動的に密封または再密封するための機器の概略構造図である。
図2a】断面の側面図における本発明の機器の実施形態の吸引/誘導デバイスの概略構造図である。
図2b】断面の側面図における本発明の機器の実施形態の吸引/誘導デバイスの概略構造図である。
図2c】断面の側面図における本発明の機器の実施形態の吸引/誘導デバイスの概略構造図である。
図2d】断面の側面図における本発明の機器の実施形態の吸引/誘導デバイスの概略構造図である。
図2e】断面の側面図における本発明の機器の実施形態の吸引/誘導デバイスの概略構造図である。
図2f】断面の側面図における本発明の機器の実施形態の吸引/誘導デバイスの概略構造図である。
図3a】側面図、それぞれの吸引/誘導デバイスの断面図における、本発明の機器の実施形態によって密封された試料容器から密封カバーを取り外す概略機能説明図である。
図3b】側面図、それぞれの吸引/誘導デバイスの断面図における、本発明の機器の実施形態によって密封された試料容器から密封カバーを取り外す概略機能説明図である。
図4a】側面図、それぞれの吸引/誘導デバイスの断面図における、本発明の機器の別の実施形態によって密封された試料容器から密封カバーを取り外す概略機能説明図である。
図4b】側面図、それぞれの吸引/誘導デバイスの断面図における、本発明の機器の別の実施形態によって密封された試料容器から密封カバーを取り外す概略機能説明図である。
図5a】吸引/誘導デバイスの誘導コイルの異なるコイルによる密封カバーの被覆率を例示するための、異なる試料容器が異なる外径を示す、吸引/誘導デバイスの実施形態の断面における概略構造図である。
図5b】吸引/誘導デバイスの誘導コイルの異なるコイルによる密封カバーの被覆率を例示するための、異なる試料容器が異なる外径を示す、吸引/誘導デバイスの実施形態の断面における概略構造図である。
図6a】吸引/誘導デバイスの誘導コイルの異なるコイルによる密封カバーの被覆率を例示するための、異なる試料容器が異なる外径を示す、吸引/誘導デバイスの別の実施形態の断面における概略構造図である。
図6b】吸引/誘導デバイスの誘導コイルの異なるコイルによる密封カバーの被覆率を例示するための、異なる試料容器が異なる外径を示す、吸引/誘導デバイスの別の実施形態の断面における概略構造図である。
図7a】処理される試料容器の外径に応じた吸引/誘導デバイスの誘導コイルのそれぞれのコイル内の電流の流れを示し、電流が印加された誘導コイルに応じた密封カバーの被覆率を示す、図5aに示される吸引/誘導デバイスの実施形態の概略構造図である。
図7b】処理される試料容器の外径に応じた吸引/誘導デバイスの誘導コイルのそれぞれのコイル内の電流の流れを示し、電流が印加された誘導コイルに応じた密封カバーの被覆率を示す、図5bに示される吸引/誘導デバイスの実施形態の概略構造図である。
図8】本発明の実施形態にかかる機器を使用する密封解除方法のフローチャートである。
図9】本発明の実施形態にかかる機器を使用する密封/再密封方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、密封された試料容器9から密封カバー8を自動的に取り外すための、すなわち試料容器9の密封解除のための、本発明の実施形態にかかる機器1の構造的および機能的概念を示しており、機器1は、そのような試料容器を密封カバーによって自動的に密封または再密封するために利用されることもできる。図1の図からわかるように、機器1は、例えば2つの試料容器把持フィンガ21を有する把持機構の形態の容器ホルダ2を備え、フィンガ21は、試料容器9を把持するために横方向に、ここでは試料管の形態で、すなわちx方向に移動することができる。グリッパ機構の各把持フィンガ21の横方向移動性は、それぞれの二重矢印によって図1に示されている。さらに、容器ホルダ2はまた、例えば、試料容器9を把持する前に把持フィンガ21の把持高さを調整することができるように、または試料容器9を把持した後に試料容器9を機器1の残りの部分にまたはそれから離れるように移動させるために、上下方向、すなわちz方向の試料容器9の軸方向に移動することができる。
【0053】
容器ホルダ2に加えて、機器1はまた、いわゆる吸引/誘導デバイス3を備え、このデバイスは、例えば密封カバー8に負圧を印加することによって密封カバー8を吸引する機能と、密封カバー8に磁束を印加する機能とを主に発揮する。したがって、吸引/誘導デバイス3は、例えば、本明細書に記載の実施形態ではベローズ吸引カップの形態の吸引部材31を備え、ベローズ吸引カップは、試料容器9に対して密封カバー8を保持し、空間的に位置決めすることができるように、容器ホルダ2に向かっておよび容器ホルダ2から離れるように軸方向に移動可能とすることができる。さらに、機器1の本明細書に記載の実施形態の吸引/誘導デバイス3は、いくつかの巻線を示す誘導コイル321を有する誘導部材32を備え、誘導コイル321の巻線は、吸引部材31を取り囲み、すなわち、吸引部材31は、誘導コイル321の無巻コア(winding-free core)に配置され、この無巻コアは、誘導部材32の中央開口部322の一部とも呼ばれ得る。また、一般に、誘導デバイス3は、吸引デバイス3が誘導部材32を通って自由に移動することができるように、その全体を貫通する貫通孔の形態でそのような中央開口部322を有する。
【0054】
図1からわかるように、ベローズ吸引カップの底部は、密封カバー8を保持するために密封カバー8を吸引することができる。後に続く図からもわかるように、誘導部材32は、誘導コイル321を備えるだけでなく、誘導コイル321によって生成された磁束を反発部材323から離れるように、すなわち反発部材323によって遮蔽されていない方向に導くための、束コンセントレータまたは磁束コンセントレータ、磁束増強装置または磁束コントローラとも呼ばれる、いわゆる反発部材(rebound member)323も備え、妨げられない磁束を提供する。本実施形態では、反発部材323は、誘導コイル321をその内部空洞内に収容する一種のカップ形状のハウジングを提供し、磁束は、このように形成されたカップの開放端部から導かれる。また、本実施形態では、反発部材323によって形成されたカップの開放端部は、吸引/誘導デバイス3の一部としてのカバー部材33によって閉じられており、カバー部材33は、中央貫通孔331を有しており、それによって、密封された試料容器9の密封カバー8は、その外縁でカバー部材33の底側面に当接することができ、密封カバー8の中央部分は、吸引部材31によって吸引されるように保持され、吸引部材31は、カバー部材33の中央貫通孔331を通って突出する。ここで、板状カバー部材33の厚さは、誘導コイル321と密封カバー8の上部側面との間にそれぞれの距離を提供し、それにより、誘導コイル321は、密封カバー8の上方にのみ、すなわち、試料容器9の上端91から密封カバー8よりも遠くに配置され得る。
【0055】
また、図1に示す機器1は、上部クランプ機構4を備え、これは、上部クランプ機構4のクランプ構成要素が一緒に移動されて試料容器9をクランプするときに、吸引/誘導デバイス3が試料容器9の中心軸と常に同軸に位置合わせされるように、吸引/誘導デバイス3と相互接続される。吸引/誘導デバイス3は、上部クランプ機構4に対して軸方向に、ならびに回動運動の過程で移動され得る。軸方向の可動性が図1に二重矢印によって示されており、回動運動性は曲がった矢印によって示されている。したがって、試料容器9に接触した状態で吸引/誘導デバイス3を移動させるために、吸引/誘導デバイス3は、z方向に移動されるとともに回動され得、管開口部の不均一性を補償することができる。そのような可動性により、密封カバー8を正確に吸引することができ、また密封カバー8上に磁束を正確に提供するために、吸引/誘導デバイス3に対して試料容器9を位置的および配向的に正確に位置決めすることが可能になる。クランプ構成要素として、本実施形態の上部クランプ機構4は、ここでは容器ホルダ2と同様のグリッパ機構の形態で、試料容器9の上端91を把持/クランプすることができるようにするための2つの試料容器把持フィンガ41を備え、フィンガ41は、ここでは試料管の形態で、試料容器9を把持するために横方向に移動することができる。上部クランプ機構4の各把持フィンガ41の横方向移動性がそれぞれの二重矢印によって図1に示されている。各試料容器把持フィンガ41の横方向移動は、試料容器9と吸引/誘導デバイス3との位置合わせを保証するために、試料容器把持フィンガ41の全てについて常に同じである。
【0056】
図1に示す機器1を使用する例示的なプロセスに関して、図示された試料管の形態の試料容器9は、真空把持部として機能する吸引部材31によって密封カバー8が取り外されたときに管9が持ち上がるのを回避するために、容器ホルダ2の形態のいわゆる「管クランプ」によって把持/クランプされ得る。次に、「管クランプ」2は、上部クランプ機構4が、密封された試料容器9の場合には折り畳まれた密封カバー8の下方に試料容器9をクランプすることができるように、管9を所望のz位置にする、すなわち、管長に応じて管9を上下に移動させるか、またはいわゆる「コイルヘッド」として機能する吸引/誘導デバイス3が、上部クランプ機構4がやはり管長に応じて、密封された試料容器9の場合には折り畳まれた密封カバー8の下方に試料容器9をクランプすることができるように、所望のz位置に移動される。その後、いわゆる「コイルクランプ」として機能する上部クランプ機構4は、管開口部および誘導コイル321をx方向およびy方向に正確に位置決めするために管9の上端91をクランプするが、これは、「コイルクランプ」4および吸引/誘導デバイス3が1つのユニットであり、「コイルクランプ」4が両方の試料容器把持フィンガ41の横方向移動によって管9をその開口部に近付けて把持し、各試料容器把持フィンガ41は、試料容器9の中心軸が吸引/誘導デバイス3の中心軸と位置合わせされるように同じ距離だけ移動されるが、密封カバー8の重なる部分の下方且つ「管クランプ」2の上方であるため、保証され得る。吸引/誘導デバイス3に対して試料容器9を同軸状で中央に配置することは、試料容器9が常に垂直に位置決めされるように、x方向およびy方向における「管クランプ」の可動性によって促進される。次に、吸引/誘導デバイス3は、例えば弱くばね付勢されたばねなど、可能な限り低い力で、または光電センサなどを介して測定された管の位置に基づいて、密封カバー8と接触してz方向に移動する。そして、吸引された密封カバー8と試料管9とを互いに離間させて吸引/誘導デバイス3を移動させるなどして、誘導加熱および密封カバー8の取り外しが行われ得る。
【0057】
図2aから図2fには、本発明の機器1の吸引/誘導デバイス3の異なる実施形態の構造概念が、断面の側面図で概略的に示されている。例えば、図1に示す実施形態の吸引/誘導デバイス3は、図2aにおいて繰り返され、軸方向に移動可能なベローズ吸引カップ吸引部材31と、誘導コイル321を有する誘導部材32と、吸引部材31の軸方向通過のための中央開口部322と、反発部材323とを備え、反発部材323は、吸引部材31の連続した軸方向通過のための中央開口部3231を示している。後者に関して、反発部材323は、図2a、図2c、図2d、図2eおよび図2fに示されるような実施形態のそれぞれにおいて図1から知られるような一般的なカップ形状をとる。そうすることで、磁束集中のための反発部材323は、誘導コイル321の上方および側面に配置され、すなわち誘導コイル321の1の軸方向表面および外側側面を囲み、生成された誘導磁束を他方の軸方向表面に向かっておよび他方の軸方向表面から離れるように、および部分的に内側側面に向かっておよび内側側面から離れるように、すなわちカップの開放端部から外方に導く。しかしながら、図2bは、カップ形状の反発部材323ではなく、板状の反発部材323’が使用され、それによって誘導コイル321の背面で磁束を遮断することができるだけであり、側面を遮断することができない、かなり単純な構造配置を示している。同様の効果は、ポリマーまたはセラミックなどのフェライト系材料組成物から作製されていないカップ形状のハウジングを使用する場合にも達成され得、その結果、磁束は、特定の方向に集中せず、その後全方向に放射され得る。
【0058】
また、図2cおよび図2dに示される実施形態の直接的な比較からわかるように、誘導コイル321は、その縁部まで反発部材323によって提供されるカップの内部空洞全体を占めることができ、またはカップの開放端部に向けられた誘導コイル321の下端部は、使用時に誘導コイル321の下端部と密封カバー8との間の直接接触を回避するために、カップの縁部に対して一定の距離を置いて配置される。さらにまた、図2eからわかるように、誘導コイル321の内側コアは、追加の内壁324によって覆われることが可能であり、それによって反発部材323によって提供されるカップの内部空洞を中央開口部3231から分離する。ここで、軸方向において、円筒状の内壁324は、必ずしも反発部材323の縁部まで延在する必要はなく、内壁324が誘導コイル321の軸方向の延在部のみを覆うように実装され得る。図2fに関して、そこに示されている実施形態は、吸引部材31および誘導部材32について同様の構造を提供する。しかしながら、カバー部材33’の代替的な形状が実装され、これについてはさらに以下の図4aおよび図4bを参照してさらに詳細に説明する。
【0059】
図3aおよび図3bは、図1および図2aの吸引/誘導デバイス3の実施形態によって密封された試料容器9から密封カバー8を取り外す概略機能図であり、試料容器9および吸引/誘導デバイス3は、切断されていない図で、すなわち、容器ホルダ2などの残りの構成要素を省略して、密封解除プロセスに焦点を合わせることによって示されている。ここで、図3aの二重矢印によって示されるように、吸引された密封カバー8を有する吸引部材31は、試料容器9の軸方向に移動され、これは、ヒートシールラッカーなどの任意の密封材料を加熱するためにそれぞれの磁束が密封カバー8に向かって放射されている間または後にのみ起こり、密封カバー8の張り出し部分82を加熱することなく、密封カバー8の底面側81を試料容器9の上端91の上方リムまたは上方縁部に接合する。
【0060】
図4aおよび図4bは、図2fのカバー部材33’を有する吸引/誘導デバイス3の実施形態によって密封された試料容器9から密封カバー8を取り外す概略機能図であり、試料容器9および吸引/誘導デバイス3は、切断されていない図で、すなわち、容器ホルダ2などの残りの構成要素を省略して、密封解除プロセスに焦点を合わせることによって示されている。ここで、図4aの二重矢印によって示されるように、吸引された密封カバー8を有する吸引部材31は、試料容器9の軸方向に移動され、これは、任意のヒートシールラッカーを加熱するために、それぞれの磁束が密封カバー8に向かって放射されている間または後にのみ起こり、密封カバー8の張り出し部分82を加熱することなく、密封カバー8の底面側81を試料容器9の上端91の上方リムまたは上方縁部に接合する。図3aおよび図3bに示される実施形態とは対照的に、図4aおよび図4bに示される実施形態は、密封カバー8がカバー部材33’の円錐形の中央開口部331’に導入されることを可能にし、円錐形の中央開口部331’は、吸引部材31に向かって先細になっており、誘導部材32の中央開口部322と合流する/通過する前に段部332’を備えている。したがって、円錐形の中央開口部331’によって、密封カバー8のセンタリング機能が達成され、それによって密封カバー8を吸引部材31の底面に向かって中央に案内する。さらに、段部332’は、密封カバー8用の当接部を提供する。
【0061】
図5aおよび図5bは、吸引/誘導デバイス3の実施形態の断面の概略構造図であり、図5aは、例えば図1に示すような機器1の、小径試料容器9、例えば外径11.4mmの小径管への適用を示し、直径23mmの密封カバー8によって密封されているのに対して、図5bは、例えば図1に示すような機器1の、大径試料容器9’、例えば外径15.6mmの大径管への適用を示し、直径23mmの密封カバー8によって密封されている。したがって、これらの図を比較すると、試料容器9、9’の外径が大きくなると、誘導コイル321による被覆率に影響を及ぼす、すなわち誘導加熱の対象となる領域、すなわち試料容器9、9’の縁部に取り付けられている密封カバー8の領域を被覆するために、いくつのコイル巻線に電流を印加しなければならないかに影響を及ぼすことが明らかになる。
【0062】
図5aおよび図5bと同様に、図6aおよび図6bは、吸引/誘導デバイス3の実施形態の断面の概略構造図であり、図6aは、例えば11.4mmの外径を有し、例えば23mmの直径を有する密封カバー8によって密封される小径管などの小径試料容器9に対する例えば図2f、図4aおよび図4bに示される機器1の用途を示しているのに対して、図6bは、例えば15.6mmの外径を有する大径管などの大径を有し、例えば直径23mmの密封カバー8によって密封される試料容器9’に対する例えば図2f、図4aおよび図4bに示される機器1の用途を示している。したがって、これらの図を比較すると、試料容器9、9’の外径が大きくなると、誘導コイル321による被覆率に影響を及ぼす、すなわち誘導加熱の対象となる領域、すなわち試料容器9、9’の縁部に取り付けられている密封カバー8の領域を被覆するために、いくつのコイル巻線に電流を印加しなければならないかに影響を及ぼすことが明らかになる。ここで、さらに、より大きな外径を有する試料容器9’は円錐形の中央開口部331’に深く導入され得ないこと、すなわち、密封カバー8は段部332’に当接することができないが、先細部分の対応する領域に当接することになり、その結果、密封カバー8と誘導コイル321との間により多くの距離が存在すること、すなわち、密封カバー8を取り外すことができるようになる前に、または試料容器9’を密封カバー8によって密封/再密封することができるようになる前に、十分な誘導加熱を達成するために、より多くの電流を印加しなければならないことが導き出され得る。
【0063】
図7aおよび図7bは、様々なサイズの試料容器9、9’、すなわち様々な直径を有する試料管9、9’を使用する場合の誘導コイル321の様々な領域への電流の印加に関する例を示している。ここで、誘導コイル321は、互いにいくつかの巻線、特に内側巻線、中間巻線および外側巻線を示すことができ、これらは全て別個のドライバによって互いに別々に制御され得、すなわち、誘導コイル321としての単一のコイルは、異なる部分にセグメント化され得る。あるいは、誘導コイル321は、内側誘導コイル、中間誘導コイル、および外側誘導コイルの3つの別個の誘導コイルからなる。特に、図5aに示すような小径を有する試料管9上での機器1の例示的な使用が図7aに示されており、図5bに示すような大径を有する試料管9’上での機器1の例示的な使用が図7bに示されている。図7aからわかるように、小径を有する試料管9は、誘導コイル321の内側巻線のみと重なる領域、または複数の誘導コイルが互いに配置されている場合は、内側の誘導コイルと重なる領域にわたって延在する。さらに詳細には、密封材料が設けられた密封カバー8の領域の誘導加熱のための電流が印加された誘導巻線、すなわち吸引部材31に隣接する内側の3つの巻線は、図7aにドットマーキングによって示されている。これにより、密封カバー8の底面側81と小径試料容器9の上端91の管縁との間の接触領域のみが磁束の印加によって加熱される。これとは対照的に、図7bからわかるように、大径を有する試料管9’は、誘導コイル321の中間巻線および外側巻線、または互いに配置された複数の誘導コイルの場合は中間誘導コイルおよび外側誘導コイルと重なる領域にわたって延在する。さらに詳細には、密封材料が設けられた密封カバー8の領域の誘導加熱のための電流が印加された誘導巻線、すなわち中間の3つの巻線および誘導部材32の反発部材323の外壁に隣接する外側の3つの巻線は、図7bにドットマーキングによって示されている。これにより、密封カバー8の底面側81と大径試料容器9の上端91の管縁との間の接触領域のみが磁束の印加によって加熱される。
【0064】
上記で示された試料管の直径の例示的な寸法を考慮した具体例として、内側巻線は、11mmから12mmの直径領域をカバーすることができ、中間巻線は、12mmから14mmの直径領域をカバーすることができ、外側巻線は、14mmから16mmの直径領域をカバーすることができる。あるいは、巻径が約11から12mmの小径コイルが内側コイルとして使用され得、巻径が約12から14mmの中径コイルが中間コイルとして使用され得、巻径が約14から16mmの大径コイルが外側コイルとして使用され得る。
【0065】
図8は、本発明の機器1を使用する自動密封解除方法のフローチャートを示している。さらに詳細には、図示の方法は、上述した機器1によって試料容器9、9’から密封カバー8を自動的に取り外すことを達成し、本方法は、以下のステップを含む。
ステップS01:試料容器9、9’を所定の向きに保持するために、容器ホルダ2内に密封された試料容器9、9’を設ける。
ステップS02:誘導コイル321を含む誘導部材32が密封カバー8の上方に配置された状態で、吸引/誘導デバイス3、またはむしろ吸引部材31の下端と密封カバー8の上部側面とが接触するまで、吸引/誘導デバイス3および容器ホルダ2を互いに向かって移動させる。
ステップS03:密封カバー8に負圧を印加する吸引部材31によって密封カバー8を吸引する。
ステップS04:試料容器9、9’と密封カバー8との間に設けられた密封材料をその底面側81において溶融させるために、誘導コイル321に、または管リムと密封カバー8との間の接触領域を覆う誘導コイル321の領域に電流を印加する。
ステップS05:密封カバー8に印加された負圧を維持しながら、吸引/誘導デバイス3および容器ホルダ2を互いから離れるように移動させ、それによって密封カバー8を試料容器9、9’から取り外す。
【0066】
上記を考慮して、ステップは所与の順序で実行され得、試料容器9、9’からの密封カバー8の円滑で問題のない取り外しを達成するために、溶融した密封材料、好ましくは依然として溶融状態にある密封材料を有する吸引された密封カバー8が試料容器9、9’から引き離されるように、吸引ステップおよび後続の移動ステップの結果としての密封カバー8への引張力の印加、および試料容器9、9’と密封カバー8との間に設けられた密封材料の溶融は、引き続くだけでなくとも使用され得るので、誘導コイル321に電流を印加するステップS04および吸引/誘導デバイス3および容器ホルダ2を互いから離れるように移動させるステップS05などの特定のステップはオーバーラップしてもよいことを理解されたい。
【0067】
また、吸引/誘導デバイス3および容器ホルダ2を互いに向かって移動させるステップS05の過程で、このステップは、特に例えば図2fに示すように吸引/誘導デバイス3を使用する場合に、密封された試料容器9、9’を誘導部材32に対して中央に配置することを含むことができる。
【0068】
最後に、図9は、本発明の機器1を使用する自動密封/再密封方法のフローチャートを示している。さらに詳細には、図示された方法は、上述したように機器1によって密封カバー8を用いて試料容器9、9’の自動的な密封または再密封を達成する。さらに詳細には、密封/再密封方法は、以下のステップを含む。
ステップS11:試料容器9、9’を所定の向きに保持するために、容器ホルダ2内に開放した試料容器9、9’を設ける。
ステップS12:密封カバー8を設け、密封カバー8に負圧を印加する吸引部材31によって密封カバー8を吸引する。
ステップS13:誘導部材32が密封カバー8の上方に配置された状態で、密封カバー8の底面側81が試料容器9、9’の開放上端91、91’と接触するまで、吸引/誘導デバイス3および容器ホルダ2を互いに向かって移動させる。
ステップS14:誘導コイル321に電流を印加して、密封カバー8の底面側81に設けられた密封材料を溶融させ、それによって試料容器9、9’の開放端部91、91’を密封カバー8によって密封する。
【0069】
上記では、試料容器9、9が密封されて閉じるまで、開放した試料容器9、9’を密封または再密封するための基本的なコア方法について説明した。さらに、本方法は、以下のようなさらなるステップを含むことができる。
ステップS15:密封カバー8への負圧の印加を停止する。
ステップS16:吸引/誘導デバイス3および容器ホルダ2を互いから離れるように移動させる。
ステップS17:余剰部分が試料容器9、9’から外方に突出した、密封カバー8の余剰部分を試料容器9、9’の外周に向かって折り畳む。ここで、例として、密封カバー8の余剰部分の折り畳みは、カバー部材33’の円錐形の中央開口部331’を使用することによって実装され得、この円錐形の中央開口部331’は、試料容器9、9’の上端91、91’を誘導コイル321に向かって中央に配置するのに有用であるだけでなく、密封カバー8の余剰部分を下方に押すのに必要な角度を提供するのにも有用とすることができる。あるいは、密封カバー8の余剰部分を下方に折り畳むステップは、円錐形の開口部を有する別個の構成要素によって実行されてもよい。
【0070】
上記を考慮して、ステップは所与の順序で実行され得、折り畳みステップS17および移動ステップS13などの特定のステップはオーバーラップしてもよいことを理解されたい。
【0071】
本発明は、その特定の実施形態に関連して説明されてきたが、この説明は、例示のみを目的としていることを理解されたい。したがって、本発明は、本明細書に添付された特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図されている。
【符号の説明】
【0072】
1 自動密封解除および/または密封/再密封するための機器
2 容器ホルダ
21 容器ホルダの試料容器把持フィンガ
3;3’ 吸引/誘導デバイス
31 吸引部材
32 誘導部材
321 誘導コイル
322 誘導部材の中央開口部
323;323’ 反発部材/(誘導性)束コンセントレータ
3231 反発部材の中央開口部
324 内壁
33,33’ カバー部材
331,331’ カバー部材の中央貫通孔/開口部
332’ カバー部材の当接のための段部
4 上部クランプ機構
41 上部クランプ機構の試料容器把持フィンガ
8 密封カバー
81 密封カバーの底面側
82 密封カバーの張り出し部分
9 小径試料容器
9’ 大径試料容器
91;91’ 試料容器の開放上端または密封上端
S01 密封解除方法の第1のステップ
S02 密封解除方法の第2のステップ
S03 密封解除方法の第3のステップ
S04 密封解除方法の第4のステップ
S05 密封解除方法の第5のステップ
S11 密封/再密封方法の第1のステップ
S12 密封/再密封方法の第2のステップ
S13 密封/再密封方法の第3のステップ
S14 密封/再密封方法の第4のステップ
S15 密封/再密封方法の任意の第5のステップ
S16 密封/再密封方法の任意の第6のステップ
S17 密封/再密封方法の任意の第7のステップ
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図8
図9
【外国語明細書】