(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086668
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】合わせガラス中間膜用樹脂組成物、合わせガラス中間膜および合わせガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
C03C27/12 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023211023
(22)【出願日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2022200134
(32)【優先日】2022-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000174862
【氏名又は名称】三井・ダウポリケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴広
(72)【発明者】
【氏名】大木 和幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 貞樹
(72)【発明者】
【氏名】礒川 素朗
(72)【発明者】
【氏名】西本 泰三
【テーマコード(参考)】
4G061
【Fターム(参考)】
4G061AA26
4G061BA01
4G061CA05
4G061CB16
4G061CB19
4G061CB20
4G061CD02
4G061CD18
(57)【要約】
【課題】耐候性が向上した合わせガラス中間膜用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】合わせガラス中間膜を形成するために用いられる樹脂組成物であって、樹脂(A)と、色素(B)と、紫外線吸収剤(C)と、を含み、前記樹脂組成物により構成される合わせガラスの全光線透過率において、波長400nmにおける光線透過率が65%以下であり、波長420nm以上720nm以下の範囲において、光線透過率が極小となる波長が波長570nm以上605nm以下であり、波長570nm以上605nm以下の範囲において、光線透過率が極小となる波長における光線透過率が1%以上50%以下である透過スペクトルを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合わせガラス中間膜用樹脂組成物であって、
樹脂(A)と、
色素(B)と、
紫外線吸収剤(C)と、
を含み、
下記(方法)により測定される、前記樹脂組成物により構成される合わせガラスの全光線透過率において、
波長400nmにおける光線透過率が65%以下であり、
波長420nm以上720nm以下の範囲において、光線透過率が極小となる波長が波長570nm以上605nm以下であり、
波長570nm以上605nm以下の範囲において、光線透過率が極小となる波長における光線透過率が1%以上50%以下である透過スペクトルを有する樹脂組成物。
(方法)
前記樹脂組成物により構成された厚み1.6mmの合わせガラス中間膜を得る。次いで、得られた前記合わせガラス中間膜を厚み3.2mmのガラス板で挟み、ガラス板/合わせガラス中間膜/ガラス板の層構成として、真空ラミネーターにて140℃、10分間、真空保持したのち、0.1MPa(ゲージ圧)で10分間プレスを行い、合わせガラスを得る。次いで、得られた前記合わせガラスの全光線透過率をJIS K 7136:2000に準じてヘイズメータにより測定する。波長400nmにおける光線透過率および、波長420nm以上720nm以下の範囲において光線透過率が極小となる波長を読み取る。
【請求項2】
波長400nmにおける光線透過率が1%以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記色素(B)が波長570nm以上605nm以下の範囲に極大吸収波長を有する、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記色素(B)がテトラアザポルフィリン化合物およびアゾ化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記色素(B)がテトラアザポルフィリン化合物を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記色素(B)の含有量が前記樹脂組成物全体に対して1ppm以上500ppm以下である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記紫外線吸収剤(C)が波長300nm以上400nm以下の範囲に極大吸収波長を有する、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記紫外線吸収剤(C)が、トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤(C1)を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤(C1)の含有量は、前記樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、0.01質量%以上2.0質量%以下である、請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記紫外線吸収剤(C)の含有量は、前記樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、0.01質量%以上5.0質量%以下である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
シランカップリング剤(F)をさらに含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記樹脂(A)が、エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体、ポリビニルブチラール、熱可塑性ポリウレタン、およびシリコーン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記樹脂(A)が、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーを含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーを構成する金属イオンがナトリウムイオン、マグネシウムイオンおよび亜鉛イオンからなる群から選択される1種または2種以上を含む、請求項13に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
前記樹脂(A)と、前記色素(B)と、前記紫外線吸収剤(C)との合計含有量が、前記樹脂組成物全体を100質量%としたときに、50質量%以上100質量%以下である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
請求項1または2に記載の前記樹脂組成物により形成された層を含む、合わせガラス中間膜。
【請求項17】
請求項16に記載の合わせガラス中間膜において、
前記樹脂組成物により構成された層を少なくとも1層含む多層構成である合わせガラス中間膜。
【請求項18】
請求項16に記載の合わせガラス中間膜と、
前記合わせガラス中間膜の少なくとも一方の面上に設けられた透明板状部材と、を備える合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラス中間膜用樹脂組成物、合わせガラス中間膜および合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラスを着色して視認性を高めることにより、利用価値の向上が求められている。特に、ガラスが建築材料として使用される場合には、ガラスを着色して視認性を高めることにより、建築物全体の意匠性が高まることが期待できる。
【0003】
ガラスを着色させる方法としては、例えば、ガラスに着色フィルムを張る方法が挙げられる。例えば、特許文献1では、紫外線を抑制する第1の層と、透過率が極小となる波長が570nm以上605nm以下である透過スペクトルを有する第2の層と、を備え、前記第1の層は、前記第2の層よりも光源に近い位置に配置されている、光学構造体が記載されている。
【0004】
また、ガラスを着色させる別の方法として、ガラスが合わせガラスの場合には、合わせガラス中間膜を着色する方法が挙げられる。
合わせガラス中間膜を着色するためには、合わせガラス中間膜用樹脂組成物に着色剤や色素を含有させることが一般的である。
特許文献2には、タングステン酸化物及び/又は複合タングステン酸化物を含む熱線遮蔽層と、接着樹脂層と、を含む積層体からなる熱線遮蔽合わせガラス用中間膜であって、前記接着樹脂層及び/又は前記積層体を構成する別の層が、着色剤を含有し、且つ全光線透過率(JISK7105(1981))が40%以上であることを特徴とする熱線遮蔽合わせガラス用中間膜が開示されている。当該ガラス用中間膜によれば、意匠上等の要望に応じて合わせガラスの色調の調整をするとともに、比較的高い可視光透過性を維持し、色調に大きな影響を与えることなく、高い熱線遮蔽性を付与することができると記載されている。
【0005】
特許文献3には、遷移元素を含む有機色素と、遷移元素とは異なる金属元素と、熱可塑性樹脂と、可塑剤とを含む、合わせガラス用中間膜が記載されている。当該合わせガラス用中間膜によれば、合わせガラスの可視光線透過率、及び耐熱性を高くすることができると記載されている。
特許文献4には、顔料とポリビニルブチラール用可塑剤を含有する着色剤組成物を、可塑化されたポリビニルブチラールに添加して成形された合わせガラス用着色ポリビニルブチラール中間膜において、該着色剤組成物におけるポリビニルブチラール用可塑剤がジカルボン酸エステル類、ポリエーテルエステル類又はそれ等の混合物よりなり、顔料が平均粒径2.5μm以下で、99重量%累積最大粒径5.0μm以下の顔料粒子よりなり、かつ、該着色剤組成物の見掛けpHが4~10の範囲内にあることを特徴とする合わせガラス用着色ポリビニルブチラール中間膜が記載されている。これにより、顔料が良好に分散された合わせガラス用着色ポリビニルブチラール中間膜を提供することができる、と記載されている。
【0006】
一方、色素として、近年、テトラアザポルフィリンが注目されている。特許文献5にはテトラアザポルフィリン誘導体が記載されている。テトラアザポルフィリンとは、4つのピロ-ル環がα位置で4つのメチン基と交互に結合した大環状化合物と、その誘導体であるポルフィリンのメチン基がイミン基に置換された構造を有している。テトラアザポルフィリンは、中心に金属が配位することが可能で、大きなπ電子共役系を有するため、電子キャリアとして使用可能であることや、特定の波長領域に鋭い吸収ピ-クを有すること等から、電子材料、光学材料、医療材料、表示材料等の種々の用途への応用の試みがなされている。
【0007】
テトラアザポルフィリンを合わせガラス中間膜へ応用する検討もなされており、例えば、特許文献6には、テトラアザポルフィリン化合物を含有することを特徴とする合わせガラス用中間膜が記載されている。それによって、防眩性を有効に向上させた合わせガラスを、従来よりもさらに容易に実現するとともに、防眩性を有効に向上させた合わせガラスを、より広範な用途に適用させることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開2022/024806号公報
【特許文献2】特開2012-218972号公報
【特許文献3】国際公開2014/200108号公報
【特許文献4】特開平2-272068号公報
【特許文献5】特開2013-95675号公報
【特許文献6】特開2010-138028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ガラスに着色フィルムを張る方法では、着色フィルムが劣化した場合は容易に張り替えることが可能であるため、着色フィルムには、数年~数十年にわたる長期的な耐候安定性は求められない。一方、合わせガラス中間膜においては、合わせガラス中間膜が劣化した場合に容易に交換ができないため、合わせガラスには高い耐候性が求められる。
本発明者らは、色素を含む合わせガラス中間膜用樹脂組成物について、耐候性の点において改善の余地があることを見出した。特に、本発明者らは、色素を含む合わせガラス中間膜用樹脂組成物について、建築材料等の長期間にわたって使用する用途においては耐候性が十分ではないことを見出した。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、耐候性が向上した合わせガラス中間膜用樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、以下に示す合わせガラス中間膜用樹脂組成物が提供される。
【0012】
[1]
合わせガラス中間膜用樹脂組成物であって、
樹脂(A)と、
色素(B)と、
紫外線吸収剤(C)と、
を含み、
下記(方法)により測定される、前記樹脂組成物により構成される合わせガラスの全光線透過率において、
波長400nmにおける光線透過率が65%以下であり、
波長420nm以上720nm以下の範囲において、光線透過率が極小となる波長が波長570nm以上605nm以下であり、
波長570nm以上605nm以下の範囲において、光線透過率が極小となる波長における光線透過率が1%以上50%以下である透過スペクトルを有する樹脂組成物。
(方法)
前記樹脂組成物により構成された厚み1.6mmの合わせガラス中間膜を得る。次いで、得られた前記合わせガラス中間膜を厚み3.2mmのガラス板で挟み、ガラス板/合わせガラス中間膜/ガラス板の層構成として、真空ラミネーターにて140℃、10分間、真空保持したのち、0.1MPa(ゲージ圧)で10分間プレスを行い、合わせガラスを得る。次いで、得られた前記合わせガラスの全光線透過率をJIS K 7136:2000に準じてヘイズメータにより測定する。波長400nmにおける光線透過率および、波長420nm以上720nm以下の範囲において光線透過率が極小となる波長を読み取る。
[2]
波長400nmにおける光線透過率が1%以上である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]
前記色素(B)が波長570nm以上605nm以下の範囲に極大吸収波長を有する、[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4]
前記色素(B)がテトラアザポルフィリン化合物およびアゾ化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]
前記色素(B)がテトラアザポルフィリン化合物を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]
前記色素(B)の含有量が前記樹脂組成物全体に対して1ppm以上500ppm以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]
前記紫外線吸収剤(C)が波長300nm以上400nm以下の範囲に極大吸収波長を有する、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]
前記紫外線吸収剤(C)が、トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤(C1)を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]
前記トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤(C1)の含有量は、前記樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、0.01質量%以上2.0質量%以下である、[8]に記載の樹脂組成物。
[10]
前記紫外線吸収剤(C)の含有量は、前記樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、0.01質量%以上5.0質量%以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11]
シランカップリング剤(F)をさらに含む、[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[12]
前記樹脂(A)が、エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体、ポリビニルブチラール、熱可塑性ポリウレタン、およびシリコーン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む、[1]~[11]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[13]
前記樹脂(A)が、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーを含む、[1]~[12]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[14]
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーを構成する金属イオンがナトリウムイオン、マグネシウムイオンおよび亜鉛イオンからなる群から選択される1種または2種以上を含む、[13]に記載の樹脂組成物。
[15]
前記樹脂(A)と、前記色素(B)と、前記紫外線吸収剤(C)との合計含有量が、前記樹脂組成物全体を100質量%としたときに、50質量%以上100質量%以下である、[1]~[14]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[16]
[1]~[15]のいずれかに記載の前記樹脂組成物により形成された層を含む、合わせガラス中間膜。
[17]
[16]に記載の合わせガラス中間膜において、
前記樹脂組成物により構成された層を少なくとも1層含む多層構成である合わせガラス中間膜。
[18]
[16]または[17]に記載の合わせガラス中間膜と、
前記合わせガラス中間膜の少なくとも一方の面上に設けられた透明板状部材と、を備える合わせガラス。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐候性が向上した合わせガラス中間膜用樹脂組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る実施形態の合わせガラスの構造の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書では、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本明細書において段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよく、各成分に該当する物質複数種用いてもよい。樹脂組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、樹脂組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。また、各成分に該当する物質を複数種使用する場合、各成分の使用量は、特に断らない限り、使用する複数種の物質の合計の使用量を意味する。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を包含する概念であり「(メタ)アクリル酸エステル」は、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を包含する概念である。
【0016】
1.樹脂組成物
本実施形態に係る樹脂組成物は、合わせガラス中間膜用樹脂組成物であって、樹脂(A)と、色素(B)と、紫外線吸収剤(C)と、を含み、樹脂組成物により構成される合わせガラスの全光線透過率において、波長400nmにおける光線透過率が65%以下であり、波長420nm以上720nm以下の範囲において、光線透過率が極小となる波長が波長570nm以上605nm以下であり、波長570nm以上605nm以下の範囲において、光線透過率が極小となる波長における光線透過率が1%以上50%以下である透過スペクトルを有する。
合わせガラスの全光線透過率は、以下のように測定される。
樹脂組成物により構成された厚み1.6mmの合わせガラス中間膜を得る。次いで、得られた合わせガラス中間膜を厚み3.2mmのガラス板で挟み、ガラス板/合わせガラス中間膜/ガラス板の層構成として、真空ラミネーターにて140℃、10分間、真空保持したのち、0.1MPa(ゲージ圧)で10分間プレスを行い、合わせガラスを得る。次いで、得られた前記合わせガラスの全光線透過率をJIS K 7136:2000に準じてヘイズメータにより測定する。波長400nmにおける光線透過率および、波長420nm以上720nm以下の範囲において光線透過率が極小となる波長を読み取る。
【0017】
本発明者らの検討によれば、合わせガラス中間膜に色素と紫外線吸収剤とを含有させることにより、透明性を維持しつつ、視認性を向上できることがわかった。しかし、合わせガラス中間膜に色素と紫外線吸収剤を含有させた場合、耐候性が十分ではないことが明らかとなった。特に建築材料等の長期間にわたって使用する用途においては耐候性が十分ではないことを見出した。
【0018】
そこで、本発明者らがさらに検討した結果、合わせガラス中間膜に色素と紫外線吸収剤とを含有させるとともに、波長400nmにおける光線透過率を65%以下とし、波長420nm以上720nm以下の範囲において、光線透過率が極小となる波長が波長570nm以上605nm以下であり、波長570nm以上605nm以下の範囲において、光線透過率が極小となる波長における光線透過率が1%以上50%以下である透過スペクトルを有するようにすることにより、透明性および視認性の性能バランスを維持しつつ、耐候性をより向上できることがわかった。
この理由は明らかではないが、波長400nmにおける光線透過率が65%以下であること、かつ、波長570nm以上605nm以下の範囲において、光線透過率が極小となる波長における光線透過率が1%以上50%以下であることにより、紫外線による樹脂や色素の劣化を抑え、耐候性を向上させるとともに、波長420nm以上720nm以下の範囲において、光線透過率が極小となる波長が波長570nm以上605nm以下である透過スペクトルを有することで、視認性を良好とすることができると考えられる。
これにより、透明性および視認性の性能バランスに優れるとともに、耐候性が向上した合わせガラス中間膜および合わせガラスを得ることができる。
【0019】
本実施形態の樹脂組成物において、波長400nmにおける光線透過率が65%以下である。波長400nmにおける光線透過率は、好ましくは63%以下、より好ましくは60%以下、さらに好ましくは55%以下、さらに好ましくは50%以下、さらに好ましくは45%以下、さらに好ましくは40%以下、さらに好ましくは35%以下である。そして合わせガラス中間膜が黄変しすぎることを防ぎ、外観をより良好とする観点から、波長400nmにおける光線透過率は、好ましくは1%以上、より好ましくは1.5%以上、さらに好ましくは2.0%以上、さらに好ましくは2.3%以上である。
上記波長400nmにおける光線透過率は、本実施形態の樹脂組成物から構成される合わせガラス中間膜を用いた合わせガラスを紫外線照射する前後において、上記範囲に含まれていることが好ましい。これにより、合わせガラスの耐候性をより良好とし、紫外線照射後も、合わせガラスの外観を維持することができる。
本実施形態の樹脂組成物から構成される合わせガラス中間膜を用いた合わせガラスを紫外線1000時間照射後に測定される、波長400nmにおける光線透過率(T1)は、65%以下、好ましくは63%以下、より好ましくは60%以下、さらに好ましくは55%以下、さらに好ましくは50%以下、さらに好ましくは45%以下、さらに好ましくは40%以下、さらに好ましくは35%以下であり、そして、合わせガラス中間膜が黄変しすぎることを防ぎ、外観をより良好とする観点から、好ましくは1%以上、より好ましくは1.5%以上、さらに好ましくは2.0%以上、さらに好ましくは2.3%以上である。
また、波長400nmにおいて、紫外線照射前の光線透過率(T0)に対する紫外線1000時間照射後の光線透過率(T1)の変化率の絶対値|T1-T0|は、耐候性をより良好とする観点から、好ましくは6.0%以下、より好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは4.5%以下である。波長400nmにおいて紫外線照射前の光線透過率(T0)に対する紫外線1000時間照射後の光線透過率(T1)の変化率の絶対値|T1-T0|の下限に制限はないが、例えば0%以上であり、0.1%以上であってもよい。
【0020】
本実施形態の樹脂組成物において、波長570nm以上605nm以下の範囲において、光線透過率が極小となる波長における光線透過率は、合わせガラスの外観をより良好とする観点から、50%以下、好ましくは45%以下であり、そして1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは13%以上である。
上記波長570nm以上605nm以下の範囲において、光線透過率が極小となる波長における光線透過率は、本実施形態の樹脂組成物から構成される合わせガラス中間膜を用いた合わせガラスを紫外線照射する前後において、上記範囲に含まれていることが好ましい。これにより、合わせガラスの耐候性をより良好とすることおよび色調変化を低減することができる。
本実施形態の樹脂組成物から構成される合わせガラス中間膜を用いた合わせガラスを紫外線1000時間照射後に測定される、波長570nm以上605nm以下の範囲において、光線透過率が極小となる波長における光線透過率(T1)は、合わせガラスの外観をより良好とする観点から、50%以下、好ましくは45%以下、より好ましくは42%以下であり、そして1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは13%以上、さらに好ましくは15%以上、さらに好ましくは20%以上、さらに好ましくは25%以上である。
また、波長570nm以上605nm以下の範囲において、光線透過率が極小となる波長において、紫外線照射前の光線透過率(T0)に対する紫外線1000時間照射後の光線透過率(T1)の変化率の絶対値|T1-T0|は、耐候性をより良好とする観点から、好ましくは25.0%以下、より好ましくは24.0%以下、さらに好ましくは23.5%以下である。波長570nm以上605nm以下の範囲において、光線透過率が極小となる波長において紫外線照射前の光線透過率(T0)に対する紫外線1000時間照射後の光線透過率(T1)の変化率の絶対値|T1-T0|の下限に制限はないが、例えば0%以上であり、5.0%以上であってもよく、8.0%以上であってもよい。
【0021】
本実施形態の樹脂組成物において、波長500nmにおける光線透過率は、合わせガラスが青みがかることを抑制し、外観をより良好とする観点から、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは79%以上、さらに好ましくは80%以上である。
波長500nmにおける光線透過率の上限に制限はないが、例えば100%未満であり、95%以下であってもよく、90%以下であってもよい。
上記波長500nmにおける光線透過率は、本実施形態の樹脂組成物から構成される合わせガラス中間膜を用いた合わせガラスを紫外線照射する前後において、上記範囲に含まれていることが好ましい。これにより、合わせガラスの耐候性をより良好とすることができる。
本実施形態の樹脂組成物から構成される合わせガラス中間膜を用いた合わせガラスを紫外線1000時間照射後に測定される、波長500nmにおける光線透過率(T1)は、合わせガラスが青みがかることを抑制し、外観をより良好とする観点から、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは79%以上、さらに好ましくは80%以上であり、そして、紫外線1000時間照射後に測定される波長500nmにおける光線透過率(T1)の上限に制限はないが、例えば100%未満であり、95%以下であってもよく、90%以下であってもよい。
また、波長500nmにおいて、紫外線照射前の光線透過率(T0)に対する紫外線1000時間照射後の光線透過率(T1)の変化率の絶対値|T1-T0|は、耐候性をより良好とする観点から、好ましくは6.0%以下、より好ましくは5.5%以下、さらに好ましくは5.0%以下である。波長500nmにおいて紫外線照射前の光線透過率(T0)に対する紫外線1000時間照射後の光線透過率(T1)の変化率の絶対値|T1-T0|の下限に制限はないが、例えば0%以上であり、0.1%以上であってもよい。
【0022】
本実施形態の樹脂組成物において、波長700nmにおける光線透過率は、合わせガラスが赤みがかることを抑制し、外観をより良好とする観点から、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは83%以上である。
波長700nmにおける光線透過率の上限に制限はないが、例えば100%未満であり、95%以下であってもよく、90%以下であってもよい。
上記波長700nmにおける光線透過率は、本実施形態の樹脂組成物から構成される合わせガラス中間膜を用いた合わせガラスを紫外線照射する前後において、上記範囲に含まれていることが好ましい。これにより、合わせガラスの耐候性をより良好とすることができる。
本実施形態の樹脂組成物から構成される合わせガラス中間膜を用いた合わせガラスを紫外線1000時間照射後に測定される、波長700nmにおける光線透過率(T1)は、合わせガラスが赤みがかることを抑制し、外観をより良好とする観点から、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましくは83%以上であり、そして、波長紫外線1000時間照射後に測定される波長700nmにおける光線透過率(T1)の上限に制限はないが、例えば100%未満であり、95%以下であってもよく、90%以下であってもよい。
また、波長700nmにおいて、紫外線照射前の光線透過率(T0)に対する紫外線1000時間照射後の光線透過率(T1)の変化率の絶対値|T1-T0|は、耐候性をより良好とする観点から、好ましくは6.0%以下、より好ましくは5.5%以下、さらに好ましくは5.0%以下である。波長700nmにおいて紫外線照射前の光線透過率(T0)に対する紫外線1000時間照射後の光線透過率(T1)の変化率の絶対値|T1-T0|の下限に制限はないが、例えば0%以上であり、0.1%以上であってもよく、0.3%以上であってもよい。
【0023】
なお、光線透過率は、以下のように測定される。
本実施形態の樹脂組成物により構成された厚み1.6mmの合わせガラス中間膜を得る。次いで、得られた合わせガラス中間膜を厚み3.2mmのガラス板で挟み、ガラス板/合わせガラス中間膜/ガラス板の層構成として、真空ラミネーターにて140℃、10分間、真空保持したのち、0.1MPa(ゲージ圧)で10分間プレスを行い、合わせガラスを得る。
次いで、得られた合わせガラスの全光線透過率をJIS K 7136:2000に準じてヘイズメータにより測定する。波長400nmにおける光線透過率および、波長420nm以上720nm以下の範囲において光線透過率が極小となる波長を読み取る。
また紫外線照射は、紫外線照射装置(Ci4000型光源:キセノンアークランプ)を用いて、条件:180W/m2(3Sun)、露光時間:0~1000時間、ブラックスタンダード温度:63℃にて、本実施形態の樹脂組成物から構成される合わせガラス中間膜を用いた合わせガラスに照射することにより行うことができる。紫外線照射は、上記合わせガラスを得た後、かつ得られた合わせガラスの全光線透過率を測定する前に実施する。
【0024】
本実施形態の樹脂組成物において、波長420nm以上720nm以下の範囲において、光線透過率が極小となる波長は波長570nm以上605nm以下である透過スペクトルを有する。これにより、合わせガラスの見え方について、明るさを維持しつつ、赤と緑のコントラストを明確にして視認性を向上することができる。
波長420nm以上720nm以下の範囲において、光線透過率が極小となる波長は、好ましくは575nm以上、より好ましくは580nm以上であり、そして好ましくは600nm以下、より好ましくは595nm以下、さらに好ましくは590nm以下である。
上記波長420nm以上720nm以下の範囲において光線透過率が極小となる波長は、本実施形態の樹脂組成物から構成される合わせガラス中間膜を用いた合わせガラスを紫外線照射する前後において、上記範囲に含まれていることが好ましい。これにより、合わせガラスの耐候性をより良好とすることができる。
本実施形態の樹脂組成物から構成される合わせガラス中間膜を用いた合わせガラスを紫外線1000時間照射後に測定される、波長420nm以上720nm以下の範囲において、光線透過率が極小となる波長は、好ましくは575nm以上、より好ましくは580nm以上であり、そして好ましくは600nm以下、より好ましくは595nm以下、さらに好ましくは590nm以下である。
【0025】
以下、本実施形態に係る樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0026】
<樹脂(A)>
本実施形態における樹脂(A)は、得られる合わせガラス中間膜の柔軟性や接着性、機械的強度および加工性等の性能バランスをより良好にする観点から、好ましくは、エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体、ポリビニルブチラール、熱可塑性ポリウレタン、およびシリコーン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む。より好ましくは、樹脂(A)はエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーを含む。
【0027】
(エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー)
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーについて説明する。
【0028】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体は、典型的には、エチレンと、不飽和カルボン酸の少なくとも1種とを共重合した重合体である。エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体としては、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体や、エチレンと不飽和カルボン酸と不飽和カルボン酸エステルとの共重合体等を例示することができる。
【0029】
共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよく、三元共重合体、四元以上の多元共重合体のいずれでもよい。中でも、工業的に入手可能な点で、ランダム共重合体が好ましい。
【0030】
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2-エチルアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル等が挙げられる。これらの中でも、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体の生産性および衛生性等の性能バランスの観点から、アクリル酸および/またはメタクリル酸が好ましい。
不飽和カルボン酸は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
好ましいエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体は、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体およびエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル共重合体であり、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体がより好ましい。
【0032】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体を構成する構成単位の全体を100質量%としたとき、エチレンから導かれる構成単位の含有量は、合わせガラス中間膜の耐熱性、機械的強度、耐水性および加工性等の性能バランスをより良好にする観点から、好ましくは65質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上であり、そして、合わせガラス中間膜の透明性、柔軟性および接着性等の性能バランスをより良好にする観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
【0033】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体を構成する構成単位の全体を100質量%としたとき、不飽和カルボン酸から導かれる構成単位の含有量は、合わせガラス中間膜の透明性、柔軟性および接着性等の性能バランスをより良好にする観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、また、合わせガラス中間膜の耐熱性、機械的強度、耐水性および加工性等の性能バランスをより良好にする観点から、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。
【0034】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体において、エチレンおよび不飽和カルボン酸以外のその他の共重合性モノマーが含まれていてもよい。その他の共重合性モノマーから導かれる構成単位の含有量は、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体を構成する構成単位の全体を100質量%としたとき、好ましくは0質量%以上であり、そして好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。その他の共重合性モノマーとしては不飽和エステル、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の不飽和カルボン酸エステル等が挙げられる。その他の共重合体モノマーから導かれる構成単位が上記範囲内で含まれていると、合わせガラス中間膜の柔軟性が向上する点で好ましい。
【0035】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーは、上述したエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体に対し、カルボキシ基の少なくとも一部を金属イオンで中和した樹脂である。以下では、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーを、単に「アイオノマー」とも表記することがある。
また、1または2以上のエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーに、さらにアクリル酸やメタクリル酸等の不飽和カルボン酸を構成単位として含有するエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体を加えて、アイオノマーとすることもできる。
【0036】
アイオノマーを構成する金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、銀イオン、銅イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、バリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、ベリリウムイオン、ストロンチウムイオン、マンガンイオン、錫イオン、鉛イオン、鉄イオン、コバルトイオンおよびニッケルイオンからなる群から選択される1種または2種以上を挙げることができる。
アイオノマーを構成する金属イオンは、得られる合わせガラス中間膜の光学特性、接着性および耐水性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくはナトリウムイオン、マグネシウムイオンおよび亜鉛イオンからなる群から選択される1種または2種以上を含み、より好ましくはマグネシウムイオンを含む。
金属イオンは一種を単独で用いてもよく、又は、二種以上を併用してもよい。
【0037】
アイオノマーにおけるエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体の中和度(以下、「アイオノマーの中和度」)は、合わせガラス中間膜の機械的強度および分断性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上であり、そして好ましくは100%以下、より好ましくは95%以下、さらに好ましくは90%以下、さらに好ましくは80%以下、さらに好ましくは70%以下、さらに好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下である。
アイオノマーの中和度とは、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体に含まれる全カルボキシル基のモル数に対する、金属イオンによって中和されているカルボキシル基の割合(モル%)である。
【0038】
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体およびエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーの、JIS K7210-1:2014、190℃、2160g荷重の条件で測定されるメルトマスフローレート(MFR)は、合わせガラス中間膜の成形性および加工安定性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは0.01g/10分以上、より好ましくは0.1g/10分以上、さらに好ましくは0.5g/10分以上、さらに好ましくは1.0g/10分以上、さらに好ましくは2.0g/10分以上であり、また合わせガラス中間膜の耐熱性および機械的強度等の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは20.0g/10分以下、好ましくは10.0g/10分以下、好ましくは5.0g/10分以下である。
【0039】
(エチレン・ビニルエステル共重合体)
エチレン・ビニルエステル共重合体は、エチレンに由来する構成単位と、ビニルエステルに由来する構成単位とを含む共重合体であれば限定されない。
エチレン・ビニルエステル共重合体は、1種単独で使用してもよく、又は、2種以上を併用してもよい。
エチレン・ビニルエステル共重合体としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン・酪酸ビニル共重合体、エチレン・ステアリン酸ビニル共重合体等が挙げられる。中でも、エチレン・酢酸ビニル共重合体が好ましい。
エチレン・ビニルエステル共重合体は、エチレンに由来する構成単位及びビニルエステルに由来する構成単位のみからなる共重合体であってもよく、エチレン及びビニルエステル以外のモノマーに由来する構成単位を含む共重合体であってもよい(ただし、上述したエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体に含まれるものを除く)。
エチレン及びビニルエステル以外のモノマーとしては、例えば、プロピレン、ブテン、1,3-ブタジエン、ペンテン、1,3-ペンタジエン、1-ヘキセン等の不飽和炭化水素、ビニル硫酸、ビニル硝酸等の酸化物、塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化合物、ビニル基含有の1級及び2級アミン化合物、一酸化炭素、二酸化硫黄等が挙げられる。
【0040】
(エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体)
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、エチレンと、不飽和カルボン酸エステルの少なくとも1種とを共重合した重合体である。(ただし、上述したエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体に含まれるものを除く)。
具体的には、エチレンと、不飽和カルボン酸アルキルエステルと、からなる共重合体を例示することができる。
【0041】
不飽和カルボン酸エステルにおける不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2-エチルアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フマル酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル等が挙げられる。
これらの中でも、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体の生産性および衛生性等の性能バランスを向上させる観点から、上記不飽和カルボン酸は、アクリル酸およびメタクリル酸から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。これらの不飽和カルボン酸は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
不飽和カルボン酸アルキルエステルにおけるアルキル部位としては、好ましくは炭素数1~12であり、より好ましくは炭素数1~8である。
より具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、セカンダリーブチル、2-エチルヘキシル、イソオクチル等のアルキル基を例示することができる。
【0043】
不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、および(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステルから選択される一種または二種以上を含むことが好ましい。これらの不飽和カルボン酸エステルは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、および(メタ)アクリル酸n-ブチルからなる群から選択される一種または二種以上を含むことがより好ましい。
【0044】
エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、好ましくはエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体である。その中でもエチレンと、1種類の(メタ)アクリル酸エステルとからなる共重合体が好ましい。このような共重合体としては、エチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n-プロピル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸n-ブチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸イソオクチル共重合体、およびエチレン・(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル共重合体からなる群から選択される一種または二種以上が挙げられる。エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体は、好ましくはエチレン・(メタ)アクリル酸メチル共重合体である。
【0045】
(エチレン-α-オレフィン共重合体)
エチレン・α-オレフィン共重合体は、エチレンと、α-オレフィンとの共重合体である。エチレン・α-オレフィン共重合体には、α-オレフィンが1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれてもよい。α-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンおよび1-ドデセンからなる群から選択される1種または2種以上が含まれる。入手が容易である点から、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、および1-オクテンからなる群から選択される1種または2種以上が好ましい。尚、エチレン・α-オレフィン共重合体はランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体が好ましい。
【0046】
(ポリビニルブチラール)
ポリビニルブチラールとは、分子内にビニルブチラール基を有する構成単位を備えた重合体である。
ポリビニルブチラールは、ポリビニルアルコールにブチルアルデヒドを反応させてアセタール化することにより得られるものである。ポリビニルアルコール(PVA)をアセタール化する場合、PVAを完全にアセタール化することは困難であり、部分的に水酸基が不可逆的に残存する。そのため、ポリビニルブチラールには、水酸基が含まれる。
また、ポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより製造されるが、ポリビニルアルコールの製造工程のケン化の際に少量のアセチル基が残存することが多いため、ポリビニルブチラール樹脂には、部分的にアセチル基や水酸基が不可逆的に残存することが一般的である。従って、ポリビニルブチラール樹脂には、通常アセチル基が含まれ、ビニルブチラール基を有する構成単位、アセチル基を有する構成単位、水酸基を有する構成単位を備えた重合体が好ましく用いられる。
【0047】
ポリビニルブチラールの水酸基含有量は、ポリビニルブチラール全体を100モル%としたとき、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、さらに好ましくは10モル%以上、さらに好ましくは15モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上であり、そして好ましくは50モル%以下、より好ましくは45モル%以下、さらに好ましくは40モル%以下、さらに好ましくは35モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは25モル%以下である。
ポリビニルブチラールの水酸基含有量は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0048】
ポリビニルブチラールのアセタール化度は、ポリビニルブチラール全体を100質量%としたとき、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは75質量%以上であり、そして好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
ポリビニルブチラールのアセタール化度は、主鎖の全エチレン基量から、水酸基が結合しているエチレン基量と、アセチル基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。アセタール化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出できる。
【0049】
ポリビニルブチラールのDSCによるガラス転移温度は、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、さらに好ましくは30℃以上、さらに好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上であり、そして好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下、さらに好ましくは100℃以下、さらに好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下、さらに好ましくは70℃以下である。
【0050】
(熱可塑性ポリウレタン)
熱可塑性ポリウレタン樹脂としては特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、ハードセグメントとしてポリウレタンを有し、ソフトセグメントとして、ポリエーテル;アジペート系ポリエステル、カプロラクトン系ポリエステル等のポリエステル;ポリカーボネート等を有するブロック共重合体が挙げられる。
より具体的には、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、二官能性ポリオールと、ジイソシアネートと、鎖伸長剤とから形成され、分子構造中にウレタン基を含有する樹脂のうち熱可塑性を有するもの等が挙げられる。
【0051】
熱可塑性ポリウレタン樹脂は、原料である二官能性ポリオール等の種類によって分類され、例えば、ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性ポリウレタン樹脂は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0052】
(シリコーン樹脂)
シリコーン樹脂としては、特に限定されないが、例えば、公知または市販の各種シロキサン系ポリマーなど、2以上のシロキサン結合(-Si-O-)を含む化合物を用いることができる。
【0053】
本実施形態に係る樹脂組成物中の樹脂(A)の含有量としては、樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、合わせガラスの透明性、耐候性、光学特性、層間接着性および耐水性の性能バランスをより一層良好にする観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上であり、そして好ましくは100質量%未満、より好ましくは99.9質量%以下、さらに好ましくは99.7質量%以下である。
【0054】
本実施形態に係る樹脂組成物において樹脂(A)としてエチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーを用いる場合、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーの含有量としては、樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、合わせガラスの透明性、耐候性、光学特性、層間接着性、および耐水性の性能バランスをより一層良好にする観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、そして好ましくは100質量%未満である。
【0055】
<色素(B)>
色素(B)としては、無機系、有機系の染料および顔料のいずれでもよく、限定されない。
色素(B)の極大吸収波長の範囲は、好ましくは570nm以上、より好ましくは575nm以上、さらに好ましくは580nm以上であり、そして好ましくは605nm以下、より好ましくは600nm以下、さらに好ましくは595nm以下、さらに好ましくは590nm以下である。色素(B)が上記範囲に極大吸収波長を有することで、合わせガラスの外観をより良好としつつ、透明性および視認性の性能バランスをより向上させることができる。
【0056】
色素(B)は、好ましくはテトラアザポルフィリン化合物またはアゾ化合物の少なくとも1種を含み、より好ましくはテトラアザポルフィリン化合物を含む。
上記アゾ化合物は、アゾ骨格を有する。
上記テトラアザポルフィリン化合物は、テトラアザポルフィリン骨格に種々の置換基を有していてもよく、好ましくは、例えば、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0057】
【0058】
式(1)中、R1~R8はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、直鎖、分岐または環状のアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、置換または未置換のアリール基、置換または未置換のアリールオキシ基、置換または未置換のアラルキル基、置換または未置換のアラルキルオキシ基、直鎖、分岐または環状のハロゲノアルキル基、直鎖、分岐または環状のハロゲノアルコキシ基、置換または未置換のアミノ基、直鎖、分岐または環状のアルコキシアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルコキシアルコキシアルキル基、置換または未置換のアリールオキシアルキル基、置換または未置換のアラルキルオキシアルキル基、あるいは直鎖、分岐または環状のハロゲノアルコキシアルキル基を表し、さらに、R1~R8から選ばれる互いに隣接する基は互いに結合して、置換している炭素原子と共に、置換または未置換の炭素環式脂肪族環を形成していてもよく、Mは2個の水素原子、2個の1価の金属原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子、または酸化金属原子を表す。
【0059】
なお、本明細書において、アリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基などの炭素環式芳香族基、例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基などの複素環式芳香族基を表し、好ましくは、炭素環式芳香族基を表す。
一般式(1)で表される化合物において、好ましくは、R1~R8はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~24の直鎖、分岐または環状のアルキル基、炭素数1~24の直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、炭素数4~30の置換または未置換のアリール基、炭素数4~30の置換または未置換のアリールオキシ基、炭素数5~30の置換または未置換のアラルキル基、炭素数5~30の置換または未置換のアラルキルオキシ基、炭素数1~24の直鎖、分岐または環状のハロゲノアルキル基、炭素数1~24の直鎖、分岐または環状のハロゲノアルコキシ基、アミノ基、炭素数1~30の置換アミノ基、炭素数2~24の直鎖、分岐または環状のアルコキシアルキル基、炭素数3~24の直鎖、分岐または環状のアルコキシアルコキシアルキル基、炭素数5~30の置換または未置換のアリールオキシアルキル基、炭素数6~30の置換または未置換のアラルキルオキシアルキル基、あるいは炭素数2~24の直鎖、分岐または環状のハロゲノアルコキシアルキル基からなる群から選択される1種または2種以上を表す。R1~R8は、より好ましくは、水素原子、または、炭素数4~8の直鎖または分岐のアルキル基である。
【0060】
色素(B)の含有量は、樹脂組成物全体に対して、合わせガラスの透明性と視認性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは1ppm以上、より好ましくは5ppm以上、さらに好ましくは10ppm以上、さらに好ましくは15ppm以上であり、そして好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは80ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下である。
【0061】
<紫外線吸収剤(C)>
紫外線吸収剤(C)としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチル酸エステル系など各種タイプのものを挙げることができる。
本実施形態における紫外線吸収剤(C)は、好ましくはトリアジン骨格を有する紫外線吸収剤(C1)を含む。これにより、合わせガラスの耐候性を向上させることができる。また、樹脂組成物中に含まれる樹脂(A)を黄変させることなく、透明性および視認性の性能バランスをより向上させることができる。
トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤(C1)としては、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-(オクチルオキシ)フェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)フェノール、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノールなどを挙げることができる。
ベンゾトリアゾール骨格を有する紫外線吸収剤としては、フェノール,2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1,1-ジメチルエチル)-4-メチル、2フェノール,2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)等が挙げられる。
また紫外線吸収剤は、2種以上を用いてもよい。
【0062】
本実施形態のトリアジン骨格を有する紫外線吸収剤(C1)の含有量は、合わせガラスの耐候性をより向上する観点から、前記樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.08質量%以上、さらに好ましくは0.10質量%以上、さらに好ましくは0.13質量%以上、さらに好ましくは0.15質量%以上、さらに好ましくは0.18質量%以上であり、そして好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.8質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1.3質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.8質量%以下である。
【0063】
紫外線吸収剤(C)の最大吸収波長は、合わせガラスの耐候性をより向上する観点から、好ましくは250nm以上、より好ましくは270nm以上、さらに好ましくは300nm以上、さらに好ましくは325nm以上であり、そして好ましくは400nm以下、より好ましくは380nm以下、さらに好ましくは360nm以下である。
【0064】
紫外線吸収剤(C)の融点は、樹脂組成物中での分散性をより良好とする観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、そして好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは160℃以下である。
【0065】
紫外線吸収剤(C)の含有量は、樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、合わせガラスの耐候性をより向上させる観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.10質量%以上、さらに好ましくは0.15質量%以上、さらに好ましくは0.18質量%以上であり、そして5.0質量%以下であり、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、好ましくは0.80質量%以下である。
【0066】
<光安定剤(D)>
本実施形態における樹脂組成物は、光安定剤(D)をさらに含んでもよい。これにより、樹脂組成物に用いられる樹脂中の光劣化開始の活性種を捕捉し、樹脂組成物の光酸化を防止することができ、ひいては、合わせガラスの耐候性をより向上させることができる。
【0067】
光安定剤(D)は、好ましくはヒンダードアミン系化合物、より好ましくはヒンダードピペリジン系化合物を使用することができる。
ヒンダードアミン系の光安定剤としては、例えば、4-アセトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ステアロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シクロヘキサノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(o-クロロベンゾイルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(フェノキシアセトキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1,3,8-トリアザ-7,7,9,9-テトラメチル-2,4-ジオキソ-3-nオクチル-スピロ[4,5]デカン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)テレフタレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ベンゼン-1,3,5-トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-2-アセトキシプロパン-1,2,3-トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)トリアジン-2,4,6-トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン)ホスファイト、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3-トリカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)プロパン-1,1,2,3-テトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレートなどを挙げることができる。
【0068】
光安定剤(D)の含有量は、樹脂組成物全体を100質量%としたとき、合わせガラスの耐候性をより向上させる観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.08質量%以上であり、そして好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
【0069】
<酸化防止剤(E)>
本実施形態における樹脂組成物は、酸化防止剤(E)をさらに含んでもよい。これにより、樹脂組成物に用いられる樹脂中の酸化劣化を防止することができ、ひいては、合わせガラスの耐候性をより向上させることができる。
【0070】
酸化防止剤(E)としては、各種ヒンダードフェノール系やホスファイト系のものが用いられる。ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2-t-ブチル-4-メトキシフェノール、3-t-ブチル-4-メトキシフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス[6-(1-メチルシクロヘキシル)-p-クレゾール]、ビス[3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’-ブチリデンビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、2,2’-エチリデンビス(4-sec-ブチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’-チオビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、トコフェロール、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルチオ)-1,3,5-トリアジンなどを挙げることができる。
また、前記ホスファイト系酸化防止剤の具体例としては、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルフォスファネートジメチルエステル、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファネートなどを挙げることができる。
【0071】
酸化防止剤(E)の含有量は、樹脂組成物全体を100質量%としたとき、合わせガラスの耐候性をより向上させる観点から、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上であり、そして好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下である。
【0072】
<シランカップリング剤(F)>
本実施形態における樹脂組成物は、シランカップリング剤(F)をさらに含んでもよい。シランカップリング剤(F)を含むことにより、合わせガラス中間膜の成膜性をより向上させることができる。
シランカップリング剤としては、アミノ基、グリシジル基またはエポキシ基を有するアルコキシシランなどのシランカップリング剤が挙げられる。より具体的には、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプピルトリメトキシシランおよびN-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、得られる合わせガラスの光学特性、耐水性およびガラスに対する接着性の性能バランスをより一層良好にし、シート加工時の成膜性を安定させる観点から、アミノ基、グリシジル基またはエポキシ基を有するシランカップリング剤が好ましく、アミノ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
【0073】
シランカップリング剤の含有量は、合わせガラス中間膜の成膜性をより向上させる観点から、樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0074】
(その他の成分)
本実施形態に係る樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲内において、樹脂(A)、色素(B)および紫外線吸収剤(C)以外の成分を含有させることができる。その他の成分としては限定されないが、例えば、可塑剤、波長変換剤、帯電防止剤、界面活性剤、発泡剤、潤滑剤、結晶核剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、触媒失活剤、熱線吸収剤、熱線反射剤、放熱剤、樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、無機充填剤、有機充填剤、耐衝撃性改良剤、スリップ剤、架橋剤、架橋助剤、粘着付与剤、加工助剤、離型剤、加水分解防止剤、耐熱安定剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、難燃剤、難燃助剤、光拡散剤、抗菌剤、防黴剤、分散剤やその他の樹脂等を挙げることができる。その他の成分は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
本実施形態に係る樹脂組成物において、耐候性、透明性、視認性、機械的強度および加工性の性能バランスをより向上させる観点から、樹脂(A)と、色素(B)と、紫外線吸収剤(C)との合計含有量は、樹脂組成物全体を100質量%としたときに、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上であり、そして好ましくは100質量%以下である。
【0076】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物は、樹脂(A)と、色素(B)と、紫外線吸収剤(C)と、を混合することによって得ることができる。混合に際しては、スクリュー押出機、ロールミキサー、バンバリミキサー等の通常使用される混合装置を用いることができる。
混合は、(A)~(C)の成分を同時に配合して行なってもよいし、別々に行ってもよい。ただし、まず、樹脂(A)と紫外線吸収剤(C)とを混合したマスターバッチ1および樹脂(A)と色素(B)とを混合したマスターバッチ2を作製し、次にマスターバッチ1およびマスターバッチ2を、樹脂(A)と混合する方法が好ましい。これにより、色素(B)と紫外線吸収剤(C)の樹脂組成物中の分散性がより良好となる。また、光安定剤(D)、酸化防止剤(E)を加える場合は、上記マスターバッチ1に加えることが好ましい。
またシランカップリング剤(F)を加える場合は、マスターバッチ1およびマスターバッチ2を樹脂(A)と混合した後に加えることが望ましい。
マスターバッチ1に用いられる樹脂(A)は、マスターバッチ1とは別に加えられる樹脂(A)の成分と同一でも異なっていてもよい。また、マスターバッチ2に用いられる樹脂(A)は、マスターバッチ2とは別に加えられる樹脂(A)の成分と同一でも異なっていてもよい。ただし、マスターバッチ1やマスターバッチ2に用いられる樹脂(A)と、マスターバッチとは別に加えられる樹脂(A)との合計量を、上述した合わせガラス中間膜用樹脂組成物全体に対する樹脂(A)の含有率の範囲とすることが好ましい。
マスターバッチ1は、紫外線吸収剤(C)および樹脂(A)の他に、分散剤を含んでもよい。マスターバッチ2は、色素(B)および樹脂(A)の他に分散剤を含んでもよい。
また、樹脂組成物全体に対するマスターバッチ1およびマスターバッチ2の合計含有率は限定されないが、5質量%以上20質量%以下とすることにより、樹脂組成物の混錬性や押出性を良好とすることができる。
分散剤としては、ポリエーテル系分散剤などが挙げられる。
【0077】
2.合わせガラス中間膜
本実施形態に係る合わせガラス中間膜11は、本実施形態に係る樹脂組成物により形成された層を含む。本実施形態に係る合わせガラス中間膜11は、単層構成であってもよいし、2層以上の多層構成であってもよい。
より具体的には、本実施形態に係る合わせガラス中間膜11は、1層の本実施形態に係る樹脂組成物により構成される層からなる単層構成の膜であってもよいし、2層以上の本実施形態に係る樹脂組成物により構成される層からなる多層構成の膜であってもよいし、少なくとも1層の本実施形態に係る樹脂組成物により構成される層と少なくとも1層の本実施形態に係る樹脂組成物により構成される層以外の他の層とを有する多層構成の膜であってもよい。
そして本実施形態の合わせガラス中間膜11により合わせガラスを製造することが可能である。
合わせガラス中間膜11を2層以上の多層構成とする場合は、各層の組合せにより合わせガラスの色調を調整することが可能である。例えば、厚みが薄い層を複数作製することにより、積層する層数により色調を調整することが可能である。また、含まれる色素が異なる層を複数作製することにより、それらの組合せにより、色調が異なる合わせガラスを容易に作製することが可能である。
【0078】
本実施形態に係る合わせガラス中間膜11が多層構成である場合、2つの外層(以下、接着層とも呼ぶ。)を積層した2層構成であって、外層の少なくとも1層が本実施形態に係る樹脂組成物により構成された2層構成であること、あるいは、中間層と該中間層を挟むようにその両面に形成された2つの外層とを含む3層構成であって、外層および中間層の少なくとも1層が本実施形態に係る樹脂組成物により構成された3層構成であることが好ましい。透明性および接着性の性能バランスをより向上させる観点から上記3層構成であることがより好ましく、外層および中間層が本実施形態に係る樹脂組成物により構成された3層構成であることがさらに好ましい。
本実施形態に係る樹脂組成物により構成される層を二層以上有する多層構成の膜においては、各層の本実施形態に係る樹脂組成物の組成や、含有される樹脂(A)の種類、色素(B)の種類、紫外線吸収剤(C)の種類は同一であっても異なるものであってもよい。
各層で異なる色素(B)を使用することで、特定の波長領域における透過率を設計することが可能であり、用途に応じて色調を調整することができる。
【0079】
本実施形態に係る合わせガラス中間膜11の厚みは、例えば、0.1mm以上、好ましくは0.2mm以上、より好ましくは0.3mm以上であり、そして好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは3mm以下である。
合わせガラス中間膜11の厚みが上記下限値以上であると、合わせガラス中間膜11の機械的強度をより良好にすることができる。また、合わせガラス中間膜11の厚みが上記上限値以下であると、得られる合わせガラスの光学特性および層間接着性の性能バランスをより良好にすることができる。
【0080】
本実施形態に係る合わせガラス中間膜11が多層構成である場合、本実施形態に係る樹脂組成物により構成される層は外層に用いられてもよく、中間層に用いられてもよい。
透明板状部材との接着性をより向上させる観点から、本実施形態に係る樹脂組成物を外層に用いる場合、樹脂組成物はシランカップリング剤(F)を含むことが好ましい。
また、本実施形態に係る樹脂組成物を中間層に用いる場合、樹脂組成物はシランカップリング剤(F)を含有していてもよいが、例えば本実施形態に係る樹脂組成物を外層および中間層に用い、層構成を「外層/中間層/外層」等とする場合など、中間層が外層以外との材料との接着性を求められない時は、中間層に用いる樹脂組成物はシランカップリング剤(F)を実質的に含まないことが好ましい。具体的には、生産安定性をより向上させる観点から、中間層中のシランカップリング剤(F)の含有率は、好ましくは中間層の固形分を100質量%としたときに0.1質量%以下である。そして、中間層中にシランカップリング剤(F)が含まれない場合(0質量%)がさらに好ましい。
【0081】
また、本実施形態に係る合わせガラス中間膜11が外層と中間層とを含む場合、外層の厚みに制限は無いが、外層の厚みaの範囲は、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上であり、そして好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下である。
外層の厚みaが上記下限値以上であることで、接着強度をより向上させることができる。また、外層の厚みaが、上記上限値以下であることで、透明性がより向上する。
また、本実施形態に係る合わせガラス中間膜11が外層と中間層とを含む場合、透明性をより向上する観点では、全層の厚みに占める中間層の割合は高くてもよい。具体的には、中間層の厚みbとしては、好ましい総厚である0.1mm~10mmの範囲から、上記外層の好ましい厚みaを差し引いた範囲内で自在に設定することができる。
また、本実施形態に係る合わせガラス中間膜11が外層と中間層とを含む場合、外層(厚みa)と中間層(厚みb)との厚みの比(a/b)は、好ましくは1/20以上、より好ましくは1/15以上、さらに好ましくは1/10以上であり、そして好ましくは5/1以下、より好ましくは3/1以下である。ここで、本実施形態に係る合わせガラス中間膜11が外層を2つ含む場合、外層の厚みaは、2つの外層の厚みの平均値である。
外層および中間層の厚みの比(a/b)が上記範囲内にあると、接着性および透明性の性能バランスがより向上する。
【0082】
本実施形態に係る合わせガラス中間膜11の製造方法は限定されず、従来公知の製造方法を用いることができる。
本実施形態に係る合わせガラス中間膜11の製造方法としては、例えば、プレス成形法、押出成形法、Tダイ成形法、射出成形法、圧縮成形法、キャスト成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法等を用いることができる。なお、樹脂組成物の製造方法は、上述のとおり、予めマスターバッチを作製してから製造する方法を用いることができる。押出機において、各マスターバッチや樹脂(A)等をそれぞれのホッパーから供給し、シート状に押出成形することにより得ることができる。
【0083】
3.合わせガラス
図1は、本発明に係る実施形態の合わせガラス10の構造の一例を模式的に示した断面図である。
本実施形態に係る合わせガラス10は、本実施形態に係る合わせガラス中間膜11と、合わせガラス中間膜11の両面に設けられた透明板状部材13と、を備える。本実施形態に係る合わせガラス10は、本実施形態に係る合わせガラス中間膜11を備えることにより、耐候性に優れる。
合わせガラス中間膜11は2層以上使用してもよく、また他の樹脂からなる層を2枚の合わせガラス中間膜11の間に挟んで3層以上としてもよい。
【0084】
透明板状部材13は特に限定されないが、例えば、一般に使用されている透明板ガラスを使用することができ、例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、グリーンガラス等の無機ガラスが挙げられる。また、ポリカーボネート板、ポリ(メタ)アクリレート板、ポリメチル(メタ)アクリレート板、ポリスチレン板、環式ポリオレフィン板、ポリエチレンテレフタレート板、ポリエチレンナフタレート板、ポリエチレンブチレート板等の有機プラスチックス板を用いることもできる。
また透明板状部材13は、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理等の表面処理を適宜施していてもよい。
【0085】
透明板状部材13の厚さは、例えば、1mm以上20mm以下である。本実施形態に係る合わせガラス10において、合わせガラス中間膜11の両面に設けられるそれぞれの透明板状部材13は、同一のものを用いてもよく、異なる板状部材を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
本実施形態に係る合わせガラス10の製造方法は特に限定されず、例えば、ニップロール法、オートクレーブ法、真空バッグ法、真空ラミネーター法等の従来公知の製造方法を用いることができる。これらの手法を1種類用いて製造をしてもよいし、2種以上の製造方法を組み合わせて製造することもできる。
本実施形態に係る合わせガラス10の製造方法としては、例えば、
図1に示すように、本実施形態に係る合わせガラス中間膜11を2枚の透明板状部材13の間に狭持した後、加熱加圧する方法等が用いられる。
これらの中でも、本実施形態に係る合わせガラス10の製造方法としてはニップロール法とオートクレーブ法を組み合わせた方法、あるいは真空バッグ法とオートクレーブ法を組み合わせた方法が好ましい。
ニップロール法とオートクレーブ法を組み合わせた方法は、例えば、本実施形態に係る合わせガラス中間膜11を2枚の透明板状部材13の間に狭持して得られた積層体をニップロールにより仮圧着し、次いで、オートクレーブを用いて上記積層体を加熱・加圧処理することによって熱圧着し、合わせガラス10を得る方法である。
真空バッグ法とオートクレーブ法を組み合わせた方法は、例えば、本実施形態に係る合わせガラス中間膜11を2枚の透明板状部材13の間に狭持して得られた積層体を真空バッグ内に入れ、次いで、真空バック内を減圧して上記積層体を仮圧着し、次いで、オートクレーブを用いて上記積層体を加熱・加圧処理することによって熱圧着し、合わせガラス10を得る方法である。
【0087】
これらの合わせガラスは、種々の用途に使用することができ、例えば、建築用合わせガラス、自動車用合わせガラス、一般建造物、農業用建造物、鉄道用窓等に使用されるが、これらの用途に限定されるものではない。
【0088】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0089】
以下、参考形態を付記する。
[1]
合わせガラス中間膜用樹脂組成物であって、
樹脂(A)と、
色素(B)と、
紫外線吸収剤(C)と、
を含み、
下記(方法)により測定される、前記樹脂組成物により構成される合わせガラスの全光線透過率において、
波長400nmにおける光線透過率が50%以下であり、
波長420nm以上720nm以下の範囲において、光線透過率が極小となる波長が波長570nm以上605nm以下である透過スペクトルを有する樹脂組成物。
(方法)
前記樹脂組成物により構成された厚み1.6mmの合わせガラス中間膜を得る。次いで、得られた前記合わせガラス中間膜を厚み3.2mmのガラス板で挟み、ガラス板/合わせガラス中間膜/ガラス板の層構成として、真空ラミネーターにて140℃、10分間、真空保持したのち、0.1MPa(ゲージ圧)で10分間プレスを行い、合わせガラスを得る。次いで、得られた前記合わせガラスの全光線透過率をJIS K 7136:2000に準じてヘイズメータにより測定する。波長400nmにおける光線透過率および、波長420nm以上720nm以下の範囲において光線透過率が極小となる波長を読み取る。
[2]
波長400nmにおける光線透過率が1%以上である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]
波長570nm以上605nm以下の範囲において、光線透過率が極小となる波長における光線透過率が1%以上80%以下である、[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4]
前記色素(B)が波長570nm以上605nm以下の範囲に極大吸収波長を有する、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]
前記色素(B)がテトラアザポルフィリン化合物およびアゾ化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]
前記色素(B)がテトラアザポルフィリン化合物を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]
前記色素(B)の含有量が前記樹脂組成物全体に対して1ppm以上500ppm以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]
前記紫外線吸収剤(C)が波長300nm以上400nm以下の範囲に極大吸収波長を有する、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]
前記紫外線吸収剤(C)がトリアジン骨格を有する、[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10]
前記紫外線吸収剤(C)の含有量は、前記樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、0.01質量%以上5.0質量%以下である、[1]~[9]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11]
シランカップリング剤(F)をさらに含む、[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[12]
前記樹脂(A)が、エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体、ポリビニルブチラール、熱可塑性ポリウレタン、およびシリコーン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む、[1]~[11]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[13]
前記樹脂(A)が、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーを含む、[1]~[11]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[14]
前記エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマーを構成する金属イオンがナトリウムイオン、マグネシウムイオンおよび亜鉛イオンからなる群から選択される1種または2種以上を含む、[13]に記載の樹脂組成物。
[15]
前記樹脂(A)と、前記色素(B)と、前記紫外線吸収剤(C)との合計含有量が、前記樹脂組成物全体を100質量%としたときに、50質量%以上100質量%以下である、[1]~[14]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[16]
[1]~[15]のいずれかに記載の前記樹脂組成物により形成された層を含む、合わせガラス中間膜。
[17]
[16]に記載の合わせガラス中間膜において、
前記樹脂組成物により構成された層を少なくとも1層含む多層構成である合わせガラス中間膜。
[18]
[16]または[17]に記載の合わせガラス中間膜と、
前記合わせガラス中間膜の少なくとも一方の面上に設けられた透明板状部材と、を備える合わせガラス。
【実施例0090】
以下、本実施形態を、実施例等を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0091】
実施例および比較例では、以下の材料を用いた。なおMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、190℃、2160g荷重の条件にて測定した。
【0092】
<樹脂(A)>
・エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー1:エチレン含有量:80質量%、メタクリル酸含有量:20質量%、金属イオン:マグネシウムイオン、中和度:43%、MFR:2.3g/10分
・エチレン・メタクリル酸共重合体1:エチレン含有量:80質量%、メタクリル酸含有量:20質量%
・ポリビニルブチラール1:エスレックB BL-5Z、積水化学社製、水酸基含有量:21モル%、アセタール化度:77質量%、ガラス転移温度:67℃
・ポリビニルブチラール2:エスレックB BM-SHZ、積水化学社製、水酸基含有量:21モル%、アセタール化度:77質量%、ガラス転移温度:68℃
【0093】
<色素(B)>
・色素1:テトラアザポルフィリン化合物異性体からなるテトラアザポルフィリン色素混合物(山本化成社製、くっきり色素(登録商標)、極大吸収波長:585nm)
【0094】
<紫外線吸収剤(C)>
・紫外線吸収剤1:フェノール,2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェノルエチル)、BASF社製、商品名:Tinuvin234、紫外線極大吸収波長:304nm、350nm
・紫外線吸収剤2:トリアジン骨格を有する、BASF社製、商品名:Tinuvin1600、紫外線極大吸収波長:320nm
・紫外線吸収剤3:2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、ADEKA社製、商品名:LA-F70、紫外線極大吸収波長:358nm
・紫外線吸収剤4:2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール、ADEKA社製、商品名:LA-46、紫外線極大吸収波長:276nm、340nm
【0095】
<光安定剤(D)>
・光安定剤1:ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、BASF社製、商品名:Tinuvin770DF
【0096】
<酸化防止剤(E)>
・酸化防止剤1:ペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、BASF社製、商品名:イルガノックス1010
【0097】
<シランカップリング剤(F)>
・シランカップリング剤1:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、信越化学工業社製、商品名:KBM602
【0098】
<耐候安定剤樹脂(マスターバッチ1)>
表1に示す配合割合(表中の材料の単位は質量部を表す)で、30mmφ2軸押出機(池貝社製、PCM30)にて130℃で溶融混錬し、耐候安定剤樹脂1~11を作製した。
【0099】
【0100】
<色素樹脂(マスターバッチ2)>
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー1と色素1とを、色素樹脂全体を100質量%としたとき、色素1の含有量が0.04質量%となる配合割合で30mmφ単軸押出機(サーモプラスチック社製)にて180℃で溶融混錬し、色素樹脂を作製した。
【0101】
[実施例1~8及び比較例1~7]
<合わせガラス中間膜の作製>
エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー1、耐候安定剤樹脂および色素樹脂を、表2および表3に示す配合割合で混合し(表中の材料の単位は質量部を表す)、さらに、シランカップリング剤1を、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー1、耐候安定剤樹脂および色素樹脂の合計量100質量部に対して0.1質量部となるよう添加し、混合して、40mmφTダイ押出機(ナカタニ社製)を用いて、加工温度160℃で製膜し、厚み1.6mmの各例の合わせガラス中間膜を得た。
なお、エチレン・不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー1を単にアイオノマー1ともいう。
【0102】
<合わせガラスの作製>
上記で得られた合わせガラス中間膜を120mm×75mm×厚み1.6mmのサイズに裁断した。次いで、裁断した合わせガラス中間膜の表面、裏面ともに120mm×75mm×厚み3.2mmのガラス板(AGCファブリテック社製、製品名:高透過フロートガラス)で挟み、ガラス板/合わせガラス中間膜/ガラス板の層構成(総厚み8.0mm)として、真空ラミネーターにて140℃、10分間、真空保持したのち、0.1MPa(ゲージ圧)で10分間プレスを行い、合わせガラスを得た。なお、得られた合わせガラスは30分かけて室温に戻るように徐冷にて冷却した。
【0103】
[実施例9]
ポリビニルブチラール1を100.00質量部に対して、紫外線吸収剤2を0.2質量部、光安定剤1を0.1質量部、酸化防止剤1を0.15質量部、色素1を0.002質量部をラボプラストミル10C100(東洋精機製作所製)にて160℃でスクリュー回転数50rpmで5分間溶融混錬した後、160℃で4分間加熱、ガス抜き4回、4分間加圧プレス成型をして、500μm厚みの合わせガラス中間膜を作製した。
その後、上述した<合わせガラスの作製>に記載の方法に従い、合わせガラスを得た。
【0104】
[実施例10]
ポリビニルブチラール2を100.00質量部に対して、紫外線吸収剤2を0.2質量部、光安定剤1を0.1質量部、酸化防止剤1を0.15質量部、色素1を0.002質量部をラボプラストミル10C100(東洋精機製作所製)にて180℃でスクリュー回転数50rpmで5分間溶融混錬した後、160℃で4分間加熱、ガス抜き4回、4分間加圧プレス成型をして、500μm厚みの合わせガラス中間膜を作製した。
その後、上述した<合わせガラスの作製>に記載の方法に従い、合わせガラスを得た。
【0105】
次いで、上記で得られた合わせガラスを用いて、紫外線照射試験を実施し、光線透過率の測定および耐候性評価を行った。
【0106】
<紫外線照射試験>
紫外線照射試験は、装置:ATLAS社製、Ci4000型光源:キセノンアークランプを用いて、条件:180W/m2(3Sun)、露光時間:0~1000時間、ブラックスタンダード温度:63℃にて、上記で得られた合わせガラスに照射して実施した。
【0107】
<光線透過率>
紫外線照射前および紫外線1000時間照射後のそれぞれの全光線透過率をJIS K 7136:2000(村上色彩社製、製品名:ヘイズメータHM150)にて測定した。波長400nm、波長500nm、波長585nmおよび波長700nmにおいて、紫外線照射前の光線透過率(T0)、紫外線1000時間照射後の光線透過率(T1)および、紫外線照射前の光線透過率(T0)に対する紫外線1000時間照射後の光線透過率(T1)の変化率の絶対値|T1-T0|をそれぞれ表2、表3および表4に示す。また、波長420nm以上720nm以下の範囲において、光線透過率が極小となる波長を表2、表3および表4に示す。
【0108】
<耐候性評価>
耐候性は、紫外線照射前の585nmの光線透過率(T0)に対する紫外線1000時間照射後の585nmの光線透過率(T1)の変化率の絶対値|T1-T0|によって評価した。
以下の評価基準に基づいて、耐候性の評価結果を分類した。結果を表2、表3および表4に示す。
(耐候性の評価基準)
A(優良):変化率の絶対値が0%以上20%未満
B(良好):変化率の絶対値が20%以上30%未満
C(不良):変化率の絶対値が30%以上
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
表2、表3及び表4から明らかなように、実施例1~10は比較例1~7と比べて、耐候性が良好であった。