(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086672
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】モジュール式トライアルインプラントシステム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/36 20060101AFI20240620BHJP
A61F 2/46 20060101ALN20240620BHJP
【FI】
A61F2/36
A61F2/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023211186
(22)【出願日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】10 2022 133 453.8
(32)【優先日】2022-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】521389815
【氏名又は名称】エースクラップ・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Aesculap AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】ザウアーエシッヒ,トーマス
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA05
4C097BB01
4C097BB04
4C097CC01
4C097CC13
4C097SC03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】より簡単に取り扱えるモジュール式トライアルインプラントシステムを提供する。
【解決手段】第1トライアルインプラント部品は、第2トライアルインプラント部品またはインプラント部品の接続コーンを収容するためのコーンレセプタクルを備える。第1トライアルインプラント部品は、互いに関連する第1ラッチ要素と互いに関連する第2ラッチ要素とを備え、第1ラッチ要素、第2ラッチ要素が、コーンレセプタクル内で軸方向にオフセットして配置または形成される。第1トライアルインプラント部品は、コーンレセプタクルを画定する受け入れスリーブを備える。スリーブ壁は、第1ラッチ要素の間の第1領域において、および第2ラッチ要素の間の第2領域において、ギザギザのないおよび/または穿孔のない構成である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品(10)であって、少なくとも1つの第2トライアルインプラント部品(14、16)および/または少なくとも1つのインプラント部品に取り外し可能に接続されるよう構成され、少なくとも1つの第1トライアル関節インプラント部品(18、20)を形成する少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品(10)、を備え、
前記少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品(10)は、前記少なくとも1つの第2トライアルインプラント部品(14、16)または前記少なくとも1つのンプラント部品の接続コーン(24、26)を収容するためのコーンレセプタクル(22)を備え、
前記コーンレセプタクル(22)は、インプラントの長手方向軸(28)を画定し、
前記少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品(10)は、互いに関連付けられた少なくとも2つの第1ラッチ要素(76)と、互いに関連付けられた少なくとも2つの第2ラッチ要素(78)とを備え、
一方では前記少なくとも2つの第1ラッチ要素(76)が、他方では前記少なくとも2つの第2ラッチ要素(78)が、前記第2トライアルインプラント部品(14、16)または前記インプラント部品の異なる長さの接続コーン(24、26)の後方にラッチ式に係合するために、前記インプラントの長手方向軸(28)に対して前記コーンレセプタクル(22)内に軸方向にオフセットして配置または形成され、
前記少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品(10)は、前記コーンレセプタクル(22)を画定する受け入れスリーブ(36)を備え、
前記受け入れスリーブ(36)は、前記インプラントの長手方向軸(28)を取り囲み、前記コーンレセプタクル(22)を区切るスリーブ壁(38)を備え、
前記スリーブ壁(38)は、前記少なくとも2つの第1ラッチ要素(76)の間の少なくとも第1領域においておよび前記少なくとも2つの第2ラッチ要素(78)の間の少なくとも第2領域において、ギザギザのない(indentation-free)および/または穿孔のない(perforation-fre)構成である、
モジュール式トライアルインプラントシステム。
【請求項2】
前記スリーブ壁(38)は、完全にギザギザのないおよび/または穿孔のない構成である、
請求項1に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【請求項3】
前記コーンレセプタクル(22)は、前記接続コーン(24、26)を挿入するための挿入口(40)を備え、
前記挿入口(40)は、円形リング状の連続した挿入口リム(42)によって区切られ、
特に、前記挿入口リム(42)は、リム平面(44)を画定し、
前記リム平面(44)は、前記インプラントの長手方向軸(28)に対して横方向、特に垂直に延びている、
請求項1または2に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【請求項4】
前記コーンレセプタクル(22)は、コーンベース(46)に向かって円錐状に先細りしており、
前記コーンベース(46)は、前記インプラントの長手方向軸(28)に対して横方向、特に垂直に延びており、
特に、
(a)前記少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品(10)に穿孔(48)が形成され、前記穿孔は、前記コーンベース(46)を貫通し、特に、前記穿孔(48)は、前記インプラントの長手方向軸(28)に同軸に配置または形成される、
および/または
(b)前記コーンベース(46)は、前記接続コーン(24、26)のコーン端面(52、54)に対する停止面(50)を形成し、前記停止面(50)は、前記挿入口(40)に向かう方向を向いており、前記停止面(50)は、特に、環状の構成である、
および/または
(c)前記コーンベース(46)からの前記少なくとも2つの第1ラッチ要素(76)の第1距離(88)は、前記コーンベース(46)からの前記少なくとも2つの第2ラッチ要素(78)の第2距離よりも小さい、
請求項1から3のいずれか1項に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【請求項5】
(a)前記少なくとも2つの第1ラッチ要素(76)は、前記インプラントの長手方向軸(28)に対して円周方向に延びている、
および/または
(b)前記少なくとも2つの第1ラッチ要素(76)は、前記スリーブ壁(38)の円周上に均等に分散して配置または形成される、
および/または
(c)前記少なくとも2つの第2ラッチ要素(78)は、前記インプラントの長手方向軸(28)に対して円周方向に延びている、
および/または
(d)前記少なくとも2つの第2ラッチ要素(78)は、前記スリーブ壁(38)の円周上に均等に分散して配置または形成される、
請求項1から4のいずれか1項に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【請求項6】
(a)前記少なくとも2つの第1ラッチ要素(76)は、第1ラッチ要素平面(84)を画定し、前記第1ラッチ要素平面(84)は、前記インプラントの長手方向軸(28)に対して横方向、特に垂直に延びている、
および/または
(b)前記少なくとも2つの第2ラッチ要素(78)は、第2ラッチ要素平面(86)を画定し、前記第2ラッチ要素平面(86)は、前記インプラントの長手方向軸(28)に対して横方向、特に垂直に延びている、
および/または
(c)前記少なくとも2つの第1ラッチ要素(76)は、前記インプラントの長手方向軸(28)に向かう第1ラッチ突起(80)の形態で構成される、
および/または
(d)前記少なくとも2つの第2ラッチ要素(78)は、前記インプラントの長手方向軸(28)に向かう第2ラッチ突起(82)の形態で構成される、
請求項1から5のいずれか1項に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【請求項7】
円周方向において、それぞれの前記第1ラッチ要素(76)が2つの前記第2ラッチ要素(78)の間に配置または形成され、それぞれの前記第2ラッチ要素(78)が2つの前記第1ラッチ要素(76)の間に配置または形成されよう、前記少なくとも2つの第1ラッチ要素(76)および前記少なくとも2つの第2ラッチ要素(78)は、円周方向において互いにオフセットして配置または形成される、
請求項1から6のいずれか1項に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【請求項8】
(a)2つの前記第1ラッチ要素(76)が設けられ、前記2つの第1ラッチ要素(76)は、前記インプラントの長手方向軸(28)に対して互いに正反対に配置または形成される、
および/または
(b)2つの前記第2ラッチ要素(78)が設けられ、前記2つの第2ラッチ要素(78)は、前記インプラントの長手方向軸(28)に対して互いに正反対に配置または形成される、
請求項1から7のいずれか1項に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【請求項9】
前記少なくとも2つの第1ラッチ要素(76)は、前記インプラントの長手方向軸(28)に対して第1円周角(92)にわたって延びており、
前記少なくとも2つの第2ラッチ要素(78)は、前記インプラントの長手方向軸(28)に対して第2円周角(94)にわたって延びており、
前記第1円周角(92)は、前記第2円周角(94)よりも大きく、
前記第1円周角(92)は、約30°から約50°の範囲、特に約35°から約45°の範囲の値を有し、
前記第2円周角(94)は、約20°から約30°の範囲、特に約22°から約28°の範囲の値を有する、
請求項1から8のいずれか1項に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【請求項10】
前記コーンレセプタクル(22)は、内壁面(64)を画定し、
前記インプラントの長手方向軸(28)に対して前記内壁面(64)に第1中空円筒部(66)が形成され、
前記少なくとも2つの第1ラッチ要素(76)は、前記第1中空円筒部(66)に形成され、
前記インプラントの長手方向軸(28)に対して前記内壁面(64)に第2中空円筒部(68)が形成され、
前記少なくとも2つの第2ラッチ要素(78)は、前記第2中空円筒部(68)に形成される、
請求項1から9のいずれか1項に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【請求項11】
前記インプラントの長手方向軸(28)に対する円周方向の溝(72)が、前記コーンレセプタクルに配置または形成され、
前記溝(72)は、一方では前記少なくとも2つの第1ラッチ要素(76)の間に、他方では前記少なくとも2つの第2ラッチ要素(78)の間に配置または形成され、
特に、
(a)前記溝(72)は、前記インプラントの長手方向軸(28)に向かって凹状に湾曲している、
および/または
(b)前記溝(72)は、溝平面(74)を画定し、前記溝平面(74)は、前記インプラントの長手方向軸(28)に対して横方向、特に垂直に延びる、
および/または
(c)前記溝(72)は、前記第1中空円筒部(66)と前記第2中空円筒部(68)との間に延びる、
および/または
(d)前記溝(72)は、前記第1中空円筒部(66)に直接隣接している、および/または前記第2中空円筒部(68)に直接隣接している、
請求項1から10のいずれか1項に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【請求項12】
前記スリーブ壁(38)は、第1スリーブ部(56)と隣接する第2スリーブ部(58)とを備え、
前記コーンレセプタクル(22)は、前記第2スリーブ部(58)から前記第1スリーブ部(56)に向かって先細りしており、
前記少なくとも2つの第1および第2ラッチ要素(76、78)は、前記第2スリーブ部(58)にのみ配置または形成され、
前記第1スリーブ部(56)の第1壁厚(60)は、前記第2スリーブ部(58)の第2壁厚(62)よりも大きく、特に、少なくとも50%大きい、
請求項1から11のいずれか1項に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品(10)は、プラスチックにより形成され、
特に、前記プラスチックは、ポリフェニレンスルホン(PPSU)である、またはポリフェニレンスルホン(PPSU)を含む、
請求項1から12のいずれか1項に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【請求項14】
前記モジュール式トライアルインプラントシステム(12)は、少なくとも1つの第2トライアルインプラント部品(14、16)または少なくとも1つのインプラント部品を備え、
前記少なくとも1つの第2トライアルインプラント部品(14、16)または前記少なくとも1つのインプラント部品は、前記コーンレセプタクル(22)に挿入可能な接続コーン(24、26)を備え、
特に、
(a)前記モジュール式トライアルインプラントシステム(12)は、異なる長さの接続コーン(24、26)を有する少なくとも2つの第2トライアルインプラント部品(14、16)または少なくとも2つのインプラント部品を備える、
および/または
(b)前記少なくとも1つの第2トライアルインプラント部品(14、16)は、骨空洞に挿入可能なトライアルステム(100、102)の形態、またはラスプ本体の形態で構成される、
請求項1から13のいずれか1項に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【請求項15】
(a)前記少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品(10)は、球状またはボール状のトライアル関節頭(30)を有し、特に、前記トライアル関節頭(30)は、前記インプラントの長手方向軸(28)に対して球面の回転対称部分を有し、さらに特に、穿孔(48)が、前記コーンレセプタクル(22)および球面(32)に流体的に接続する、
および/または
(b)前記モジュール式トライアルインプラントシステム(12)は、第1トライアル関節インプラント部品(18、20)および前記第1トライアル関節インプラント部品(108、110)と関節式に協働する第2トライアル関節インプラント部品(108、110)を有する少なくとも1つの人工トライアル関節(104、106)を備え、特に、前記人工トライアル関節(104、106)は、トライアル股関節の形態で構成され、前記第1トライアル関節インプラント部品(18,20)は、トライアル関節頭を有する人工関節ステムを形成し、前記第2トライアル関節インプラント部品(108、110)は、トライアル関節ソケット(112、114)の形態で構成される、
および/または
(c)前記少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品(10)および/または前記少なくとも1つの第2トライアルインプラント部品(14、16)または前記インプラント部品は、一体的な、特にモノリシックな構成である、
請求項1から14のいずれか1項に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの第2トライアルインプラント部品および/またはインプラント部品に取り外し可能(releasably)に結合して少なくとも1つの第1のトライアル関節インプラント部品を形成するように構成された少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品を備えるモジュール式トライアルインプラントシステムに関する。少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品は、少なくとも1つの第2トライアルインプラント部品または少なくとも1つのインプラント部品の接続コーン(connecting cone)を収容するためのコーンレセプタクル(cone receptacle)を備える。コーンレセプタクルはインプラントの長手方向軸を画定する。少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品は、互いに関連付けられた少なくとも2つの第1ラッチ要素と、互いに関連付けられた少なくとも2つの第2ラッチ要素とを備える。一方では少なくとも2つの第1ラッチ要素が、他方では少なくとも2つの第2ラッチ要素が、第2トライアルインプラント部品またはインプラント部品の異なる長さの接続コーンの後方に係合するために、インプラントの長手方向軸に対してコーンレセプタクルに軸方向にオフセットして配置または形成されている。
【背景技術】
【0002】
冒頭で記載された種類のトライアルインプラントシステムは、例えば欧州特許第2429456号明細書から知られている。この公開に記載されたモジュール式トライアルヘッドは、冒頭に記載されたモジュール式トライアルインプラントシステムの意味で第1トライアルインプラント部品を形成しており、特に、トライアルリポジショニングを実行するために、股関節内人工関節(hip joint endoprostheses)の移植中に、股関節内人工関節のステムのコーンに一時的に連結される。シャフトは、例えば、手術中に患者の体内に一時的に挿入されるだけのトライアルインプラント部品であってもよいし、患者の体内に永久的に留まることが意図され、患者の骨空洞に既に挿入されているインプラント部品であってもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
既知のトライアルヘッドの問題点は、特に、トライアルヘッド上のフィンガーと呼ばれる突起が、コーンに連結するためにそれを手術部位に挿入するとき、また、これを再び取り外すときにも、軟組織に引っかかったり、軟組織に沿って引っ張られたり、または、さもなければ軟組織を運んでしまうことがあるという点である。加えて、組織や液体がフィンガーの間の空間に蓄積した場合、このような複雑な形状の洗浄は、手作業による前洗浄(manual pre-cleaning)によってのみ確実な方法で達成することができる。
【0004】
したがって、本発明の目的は、冒頭に述べたようなモジュール式トライアルインプラントシステムを改良し、特に、より簡単に取り扱えるようにすることである。
【0005】
この目的は、本発明により、少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品が、コーンレセプタクルを画定する受け取りスリーブを備える点、受け取りスリーブが、インプラントの長手方向軸を取り囲み、コーンレセプタクルを区切るスリーブ壁を備える点、および、スリーブ壁が、少なくとも2つの第1ラッチ要素の間の少なくとも第1領域において、および少なくとも2つの第2ラッチ要素の間の少なくとも第2領域において、ギザギザのない(indentation-free)および/または穿孔のない(perforation-free)構成のものである点で、冒頭に記載された種類のモジュール式トライアルインプラントシステムにおいて達成される。
【0006】
そのようにしてさらに開発されたモジュール式トライアルインプラントシステムは、欧州特許第2429456号明細書から知られるトライアルインプラントシステムと比較して、著しく良好に取り扱うことができる。特に、患者の体内に一時的に留まるように挿入された第2トライアルインプラント部品または永久的な移植を意図したインプラント部品の接続コーンに、第1トライアルインプラント部品を結合するとき、および接続コーンから第1トライアルインプラント部品を取り外すときにも、第1領域および第2領域にギザギザおよび/または穿孔が設けられていないため、欧州特許第2429456号明細書から知られているトライアルヘッドの場合に生じる上述の問題は生じない。つまり、第1領域および第2領域においてギザギザまたは穿孔がなければ、軟組織を詰まらせたり(jam)、および引っ張ったり(pull)することはできない。さらに、第1トライアルインプラント部品の洗浄も簡素化され、手作業による前洗浄が必要ない。機械的洗浄とその後の高温蒸気滅菌により、特にモジュール式トライアルインプラントシステムの第1トライアルインプラント部品を複数回使用することが可能になる。概して、これにより、外科医にとって、トライアルインプラントシステムの取り扱いが改善された。第2トライアルインプラント部品は、特にラスプ工具(rasp tools)のラスプ本体(rasp bodies)によって形成されることもある。このようなラスプ本体は、例えば、この目的のために提供されるラスプ工具のハンドルに取り外し可能に接続することができる。
【0007】
好ましくは、スリーブ壁は完全にギザギザのない、および/または穿孔のない構成である。これにより、特にモジュール式トライアルインプラントシステムの取り扱いをさらに改善することができる。したがって、特に、第2トライアルインプラント部品の接続コーンに結合するために第1トライアルインプラント部品を患者の体内に挿入する、および取り外す際に、患者の組織および軟組織との望ましくない相互作用(interaction)は生じない。特に、すでに説明したように、洗浄性も大幅に改善されている。
【0008】
第1トライアルインプラント部品の患者の体内への挿入を改善するために、コーンレセプタクルが接続コーンを挿入するための挿入口を備え、挿入口が円形リング状の連続した(uninterrupted)挿入口リムによって区切られていると有利である。このような挿入口リムは、円周状であるため、組織や軟組織に引っかかるような係合点がない。したがって、外科医は第1トライアルインプラント部品を第2トライアルインプラント部品の接続コーンに確実に結合させることができ、およびそこから取り外すこともできる。また、このような円周方向に連続した挿入口リムは、洗浄が容易である。
【0009】
挿入口リムがリム平面を画定している、およびリム平面がインプラントの長手方向軸に対して横方向、特に垂直方向に延びていると好ましい。特に、そのように構成された挿入口リムは、実質的には、患者の軟組織および組織に引っかかることはない。したがって、外科医は、第1トライアルインプラント部品を第2トライアルインプラント部品またはインプラント部品の接続コーンに簡単かつ確実に結合させることができる。
【0010】
さらなる好ましい実施形態によると、コーンレセプタクルがコーンベース(cone base)に向かって円錐状に先細りしている(conically tapers)こと、および、コーンベースがインプラントの長手方向軸に対して横方向に、特に垂直に延びていることが規定されていてもよい。コーンベースは、特に、接続コーンの例えば平面状の端面に対する止め具(stop)として機能してもよい。第1トライアルインプラント部品をコーンベースとともに接続コーンの端面に対して十分な速度で動かすと、外科医に聞こえるクリック音(clicking noise)が発生する。この音は、トライアルインプラント部品が望ましい形で互いに結合していることを知らせる。特に、コーンベースは穿孔のない構成であってもよい。
【0011】
少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品に穿孔(perforation)が形成され、その穿孔がコーンベースを貫通していると有利である。このようにして、特に、接続コーンの上に置かれたときに圧縮されなければならない閉じ込められた空気をコーンレセプタクルから逃がすことができるように、特にコーンレセプタクルのガス抜き(venting)を達成することができる。さらに、穿孔のないこのような解決策では、第1トライアルインプラント部品を第2トライアルインプラント部品またはインプラント部品の接続コーンにスナップ(snapping)およびラッチ(latching)する際に、音響フィードバックが実質的に不可能になる。また、穿孔を通してコーンレセプタクルから組織や液体を逃がすことができ、特に、第1トライアルインプラント部品を第2トライアルインプラント部品の接続コーンへの容易なマージおよびスナップが可能となる。
【0012】
モジュール式トライアルインプラントシステムは、特に、穿孔をインプラントの長手方向軸と同軸に配置または形成すると、簡単な方法で形成することができる。
【0013】
コーンベースが接続コーンのコーン端面(cone end face)に対する停止面を形成し、停止面が挿入口の方向を向いていると好ましい。特に、停止面は環状の構成であってもよい。環状の停止面は、特に、コーンベースが円形のリング状の穿孔を有していると、簡単な方法で実現することができる。すでに説明したように、相互作用する第1および第2トライアルインプラント部品、または相互作用する第1トライアルインプラント部品およびインプラント部品が、規定された方法で互いに結合されたとき、停止面により外科医に音響フィードバックを提供することができる。
【0014】
好ましくは、コーンベースからの少なくとも2つの第1ラッチ要素の第1距離は、コーンベースからの少なくとも2つの第2ラッチ要素の第2距離よりも小さい。この構成により、特に、第1トライアルインプラント部品を第2トライアルインプラント部品の異なる長さの接続コーンに連結することが可能になる。連結は、特に、股関節内人工関節の大腿骨骨幹軸(femoral shafts)またはこれに使用されるモジュール式ラスプのラスプ本体に通常設けられているように、狭窄部(constrictions)が拡大する接続コーンに隣接する領域で接続コーンの後方に係合することによって達成することができる。このようにして、それぞれの第1トライアルインプラント部品を長さの異なる2つの接続コーンに連結することができるため、モジュール式トライアルインプラントシステムの必要な構成要素の数を半分にすることができる。したがって、たとえばトライアルヘッドの形式で、異なる第1トライアルインプラント部品を異なる長さの接続コーンに対して提供する必要はない。説明したように、第1トライアルインプラント部品は、規定された方法で、長さの異なる2つの接続コーンに連結することができる。
【0015】
第1トライアルインプラント部品の、第2トライアルインプラント部品または第2のインプラント部品の接続コーンへの簡単かつ確実な結合を可能にするために、少なくとも2つの第1ラッチ要素が、インプラントの長手方向軸に対して円周方向に延びていると好ましい。これにより、それらを接続コーンの後方で同時に係合させることができる。
【0016】
さらに、少なくとも2つの第1ラッチ要素がスリーブ壁の円周上に(over a circumference)均等に分散して配置または形成されていると好ましい。例えば、第1ラッチ要素が2つだけ設けられている場合、これらはインプラントの長手方向軸に対して互いに正反対になることがある。しかし、3つまたは4つの第1ラッチ要素を設け、それらをスリーブ壁の円周上に対応するオフセット角度、すなわち120°または90°のいずれかでオフセットして配置または形成してもよい。
【0017】
同様に、少なくとも2つの第2ラッチ要素が、インプラントの長手方向軸に対して円周方向に延びていると有利である。それらもまた、第2トライアルインプラント部品またはインプラント部品上において接続コーンの後方で同時に係合することができる。
【0018】
好ましくは、少なくとも2つの第2ラッチ要素は、スリーブ壁の円周上に均等に分散して配置または形成される。例えば、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の第2ラッチ要素が設けられていてもよい。これらは、接続コーンに置かれたとき、その後方に係合することで、接続コーンに同時にラッチできる。
【0019】
第1トライアルインプラント部品を第2トライアルインプラント部品またはインプラント部品の接続コーンに簡単かつ確実に連結するために、少なくとも2つの第1ラッチ要素が第1ラッチ要素平面を画定している、および第1ラッチ要素平面がインプラントの長手方向軸に対して横方向に、特に垂直に延びていると好ましい。
【0020】
同様に、少なくとも2つの第2ラッチ要素が第2ラッチ要素平面を画定し、第2ラッチ要素平面がインプラントの長手方向軸に対して横方向に、特に垂直に延びていると有利である。
【0021】
少なくとも2つの第1ラッチ要素がインプラントの長手方向軸に向かう第1ラッチ突起の形態で構成されていると、モジュール式トライアルインプラントシステムを簡単な方法で形成することができる。これらは、特に、接続コーンの移行領域のエッジの後方で、移行領域に隣接する縮小した断面を有するネック領域に係合し、そこで所定の位置にラッチできる。
【0022】
同様に、少なくとも2つの第2ラッチ要素がインプラントの長手方向軸に向かう第2ラッチ突起の形態で構成されていると有利である。
【0023】
さらなる好ましい実施形態によると、円周方向において、それぞれの第1ラッチ要素が2つの第2ラッチ要素の間に配置または形成され、それぞれの第2ラッチ要素が2つの第1ラッチ要素の間に配置または形成されるように、少なくとも2つの第1ラッチ要素および少なくとも2つの第2ラッチ要素が円周方向において互いにオフセットして配置または形成されることが規定されていてもよい。特に、第1および第2ラッチ要素は、インプラントの長手方向軸に対して互いに軸方向にオフセットして配置または形成されているため、異なるラッチ要素平面にあることに留意すべきである。特に、提案された円周方向における第1および第2ラッチ要素のオフセット配置は、第1トライアルインプラント部品を第2ラッチ要素に協働的に(in a cooperating manner)ラッチするより長い接続コーンに連結する際に、第1ラッチ要素の望ましくないが完全に回避可能ではない相互作用を最小化することを可能にする。特に、第1トライアルインプラント部品をより短い接続コーンにスナップするとき、およびより長い接続コーンにスナップするときの両方で、ラッチ音、スナップ音、またはクリック音を発生させることができ、これは、2つのトライアルインプラント部品が互いに連結すること、または第1トライアルインプラント部品とインプラント部品とが互いに連結することが、意図された方法で実際に行われたことを外科医に知らせる音響フィードバックとして機能することができる。
【0024】
モジュール式トライアルインプラントシステムの製造を単純化するために、2つの第1ラッチ要素が設けられ、2つの第1ラッチ要素がインプラントの長手方向軸に対して互いに正反対に配置または形成されていると有利である。これは、第1ラッチ要素が2つだけ設けられていると理解されるべきである。第2トライアルインプラント部品またはインプラント部品の接続コーンとの最適なラッチ/スナップ接続を形成するには、基本的に2つの第1ラッチ要素で十分である。
【0025】
さらに、2つの第2ラッチ要素が設けられている、および2つの第2ラッチ要素がインプラントの長手方向軸に対して互いに正反対に配置または形成されていると好ましい。この構成はまた、第1トライアルインプラント部品を第2トライアルインプラント部品またはインプラント部品の接続コーンに明確(defined)かつ確実にラッチすることを可能にする。
【0026】
さらなる好ましい実施形態によると、少なくとも2つの第1ラッチ要素がインプラントの長手方向軸に対して第1円周角上に延びること、少なくとも2つの第2ラッチ要素がインプラントの長手方向軸に対して第2円周角上に延びること、および、第1円周角が第2円周角よりも大きいことが規定されていてもよい。円周方向における第2ラッチ要素の範囲がより小さいため、その領域におけるスリーブ壁の変形性が改善される。これには、特に、より長い接続コーンを挿入するときに、第1ラッチ要素は完全にそれを制動できないので、第2ラッチ要素がより長い接続コーンと相互作用するときに、スナップ効果(snapping effect)と可聴衝撃(audible strike)とが依然として発生するという利点がある。このようなスナップ効果または結果として生じるクリック音は、接続コーンのコーン端面とコーンベースとの急速でぎこちない接触によって引き起こされる。ラッチ要素が接続コーンのリムを超えて押し込まれるとすぐに、第1トライアルインプラント部品は加速され、速度を上げながらコーンベースをコーン端面に衝突させ、その結果、クリック音を発生させることができる。
【0027】
第1円周角が約30°から約50°の範囲、特に約35°から約45°の範囲の値を有する、および第2円周角が約20°から約30°の範囲、特に約22°から約28°の範囲の値を有すると好ましい。好ましくは、第1円周角はラッチ要素あたり約40°、第2円周角はラッチ要素あたり約25°である。特に、第1ラッチ要素と第2ラッチ要素とがそれぞれ2つだけ設けられる場合に、これらの値が提供されてもよい。指定された範囲の円周角により、特にモジュール式トライアルインプラントシステムの所望の機能が保証される。
【0028】
コーンレセプタクルが内壁面を画定している、第1中空円筒部がインプラントの長手方向軸に対して内壁面に形成されている、および、少なくとも2つの第1ラッチ要素が第1中空円筒部に形成されていると好ましい。特に、このさらなる発展により、第1ラッチ要素は、関連するより短い接続コーンと最適な方法で相互作用することが可能になる。特に、第1ラッチ要素の領域における接続コーンとコーンレセプタクルとの接触は、正確にこれらに限定することができる。この設計により、中空円筒部分との接触を避けることができる。
【0029】
第2中空円筒部がインプラントの長手方向軸に対して内壁面上に形成されている、および少なくとも2つの第2ラッチ要素が第2中空円筒部に形成されていると有利である。第2ラッチ要素の場合も、第1中空円筒部に関連する第1ラッチ要素の場合と同様に、ここでは、第2ラッチ要素による接続コーンとの相互作用のみが可能であり、第2中空円筒部の領域におけるコーンレセプタクルの内面との相互作用は不可能であるという利点がある。
【0030】
さらなる好ましい実施形態によると、インプラントの長手方向軸に対する円周方向の溝(groove)がコーンレセプタクルに配置または形成されること、および、溝が、一方では少なくとも2つの第1ラッチ要素の間に、他方では少なくとも2つの第2ラッチ要素の間に配置または形成されることが規定されてもよい。溝はスリーブ壁の弱点(weakening)を形成し、溝の領域でスリーブ壁をより柔軟または弾性的にする。これは第2ラッチ要素の機能にとって有利である。特に、外科医の所望するクリック音を発生させるために、第2ラッチ要素をより長い接続コーンにラッチすることは、接続コーンにスナップする際の第1トライアルインプラント部品の加速された動きにつながることを確実にすることができる。
【0031】
モジュール式トライアルインプラントシステムは、溝がインプラントの長手方向軸に向かって凹状に湾曲していれば、簡単な方法で形成することができる。例えば、約1mmから約2mmの範囲の値を有する小さな半径で形成することができる。
【0032】
溝が溝平面を画定している、および溝平面がインプラントの長手方向軸に対して横方向に、特に垂直に延びていると有利である。例えば、溝平面は、第1および第2ラッチ要素平面に平行に、特にその間に延びていてもよい。
【0033】
好ましくは、溝は第1中空円筒部と第2中空円筒部との間に延びる。溝が2つの中空円筒部に直接隣接することは必ずしも必要ではない。
【0034】
溝は、好ましくは、第1中空円筒部に直接隣接し、および/または第2中空円筒部に直接隣接する。したがって、特に、第2中空円筒部に直接隣接する場合に、説明した方法で少なくとも2つの第2ラッチ要素の最適な効果を可能にすることができる。
【0035】
さらなる好ましい実施形態によると、スリーブ壁は第1スリーブ部と隣接する第2スリーブ部とを備えること、コーンレセプタクルは第2スリーブ部から第1スリーブ部に向かって先細りしている(tapers)こと、少なくとも2つの第1および第2ラッチ要素は第2スリーブ部上に排他的に配置または形成されていること、および、第1スリーブ部の第1壁厚は第2スリーブ部の第2壁厚よりも大きいことが規定されていてもよい。特に、第1壁厚は第2壁厚よりも少なくとも約50%大きい。例えば、第1壁厚は、第2壁厚の約2倍であってもよい。壁厚を薄くした第2スリーブ部を形成することは、特に、第1トライアルインプラント部品を第2トライアルインプラント部品またはインプラント部品の接続コーンに押し付ける際に、スリーブ壁を第2スリーブ部の領域で必要な方法で容易に変形させることができるという利点を有する。一方、第1スリーブ部は、第1壁厚により、より安定し、より弾力性は低い。このように、第1トライアルインプラント部品の第2トライアルインプラント部品またはインプラント部品の接続コーンにラッチして結合するための機能を、規定された方法で予め決定することができ、それによって改善することができる。
【0036】
有利には、少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品は、プラスチック製である。特に、第2スリーブ部の領域または第1および第2ラッチ要素の領域において、所望の弾性を有するプラスチックを使用することができる。有利には、プラスチックは、高温の蒸気で滅菌可能なプラスチックである。
【0037】
プラスチックがポリフェニレンスルホン(PPSU)であるか、またはそれを含んでいると好ましい。ポリフェニレンスルホンは、ガラス転移温度が高く、吸湿性の低い非晶質材料である。そのため、高品質の技術部品および応力の大きい大量生産品に適している。言い換えると、このようなプラスチックは、トライアルインプラント部品を形成するのに理想的に適している。
【0038】
モジュール式トライアルインプラントシステムのX線制御を可能にするために、少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品にX線造影剤が含まれていると有利である。
【0039】
X線造影剤が硫酸バリウムであるか、または硫酸バリウムを含有していれば、X線制御下でインプラントシステムを良好に視認することができる。
【0040】
さらなる好ましい実施形態によると、モジュール式トライアルインプラントシステムが少なくとも1つの第2トライアルインプラント部品または少なくとも1つのインプラント部品を備えること、および、少なくとも1つの第2トライアルインプラント部品または少なくとも1つのインプラント部品がコーンレセプタクルに挿入可能な接続コーンを備えることが規定されていてもよい。したがって、連結された第1および第2トライアルインプラント部品は、例えば、人工トライアル関節の第1のトライアル関節インプラント部品を形成することができる。
【0041】
好ましくは、モジュール式トライアルインプラントシステムは、長さの異なる接続コーンを有する少なくとも2つの第2トライアルインプラント部品または少なくとも2つのインプラント部品を備える。説明したように、これらは、第1または第2ラッチ要素を有する第1トライアルインプラント部品に係合させ、連結させることができる。
【0042】
少なくとも1つの第2トライアルインプラント部品が、骨空洞に挿入可能なトライアルステム(trial stem)の形態、またはラスプ本体の形態で構成されていると有利である。例えば、骨空洞をラスプ本体で準備してもよい。ラスプ本体が骨空洞に挿入されると、最終的に移植されるインプラント部品のサイズを決定するために、トライアルヘッドの形態で構成された第1トライアルインプラント部品に、またはそのようなトライアルヘッドを備える第1トライアルインプラント部品に、上述の方法でラッチ式(latchingly)に連結することができる。
【0043】
少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品は、好ましくは、球状またはボール状のトライアル関節頭(trial joint head)を備える。このようなトライアル関節頭は、例えば、永久的に移植されるインプラントコンポーネントの最適なサイズを決定するために、人工トライアル股関節のトライアル関節ソケットと相互作用することができる。
【0044】
トライアル関節頭がインプラントの長手方向軸に対して球面の回転対称部分(rotationally symmetrical poriton)を有していると、第1トライアルインプラント部品を簡単な方法で形成することができる。
【0045】
穿孔がコーンレセプタクルと球面とを流体的に接続していると好ましい。説明したように、これにより、コーンレセプタクルは最適に通気される。さらに、穿孔を通して組織や液体をコーンレセプタクルから確実に逃がすこともできる。
【0046】
モジュール式トライアルインプラントシステムが、第1トライアル関節インプラント部品と、当該第1トライアル関節インプラント部品と関節式に(in a jointed manner)協働する第2トライアル関節インプラント部品とを有する少なくとも1つの人工トライアル関節を備えると有利である。このようなトライアル関節を使用すると、最終的に患者に永久的に移植されるインプラントコンポーネントのサイズおよび形状を、確実に決定することができる。
【0047】
人工トライアル関節がトライアル股関節の形態で構成され、第1トライアル関節インプラント部品がトライアル関節頭を有する人工関節ステム(prosthesis shaft)を形成し、および、第2トライアル関節インプラント部品がトライアル関節ソケットの形態で構成されていると有利である。このように、モジュール式トライアルインプラントシステムを使用することで、永久的に移植される股関節内人工関節に適したインプラントコンポーネントを、その形状およびサイズの両方に関して、外科医が確実に決定することができる。
【0048】
少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品および/または少なくとも1つの第2トライアルインプラント部品またはインプラント部品が一体的な、特にモノリシックな構成であると好ましい。これにより、トライアルインプラント部品の高い安定性を実現することができる。さらに、小さな部品がそれぞれのトライアルインプラント部品から脱落し、例えば手術部位において望ましくない方法で紛失する危険性を最小限に抑えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0049】
したがって、前述の説明には、特に、番号付きの文章の形式で以下に定義されるモジュール式トライアルインプラントシステムの実施形態が含まれる。
【0050】
1.モジュール式トライアルインプラントシステム(12)は、少なくとも1つの第2トライアルインプラント部品(14、16)および/またはインプラント部品に取り外し可能に接続するよう構成され、少なくとも1つの第1トライアル関節インプラント部品(18、20)を形成する少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品(10)を備え、少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品(10)は、少なくとも1つの第2トライアルインプラント部品または少なくとも1つのインプラント部品の接続コーン(24、26)を受け入れるためのコーンレセプタクル(22)を備え、コーンレセプタクル(22)は、インプラントの長手方向軸(28)を画定し、少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品(10)は、互いに関連付けられた少なくとも2つの第1ラッチ要素(76)と互いに関連付けられた少なくとも2つの第2ラッチ要素(78)とを備え、一方では少なくとも2つの第1ラッチ要素が、他方では少なくとも2つの第2ラッチ要素が、第2トライアルインプラント部品またはインプラント部品の異なる長さの接続コーンの後方にラッチ式に係合するために、インプラントの長手方向軸に対してコーンレセプタクル内に軸方向にオフセットして配置または形成され、少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品(10)がコーンレセプタクル(22)を画定する受け入れスリーブ(36)を備えること、受け入れスリーブ(36)がインプラントの長手方向軸(28)を取り囲み、コーンレセプタクルを区切るスリーブ壁を備えること、および、スリーブ壁が少なくとも2つの第1ラッチ要素の間の少なくとも第1領域において、および少なくとも2つの第2ラッチ要素の間の少なくとも第2領域において、ギザギザのない(indentation-free)および/または穿孔のない(perforation-free)構成のものであること、を特徴とする。
【0051】
2.スリーブ壁(38)が完全にギザギザのないおよび/または穿孔のない構成であることを特徴とする、文章1に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0052】
3.コーンレセプタクル(22)が接続コーン(24、26)を挿入するための挿入口(40)を備えること、および、挿入口(40)が円形リング状の連続した挿入口リム(42)によって区切られていることを特徴とする、文章1または2に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0053】
4.挿入口リム(42)がリム平面(44)を画定すること、および、リム平面(44)がインプラントの長手方向軸(28)に対して横方向、特に垂直に延びていることを特徴とする、文章3に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0054】
5.コーンレセプタクル(22)がコーンベース(46)に向かって円錐状に先細りしていること、および、コーンベース(46)がインプラントの長手方向軸(28)に対して横方向に、特に垂直に延びていることを特徴とする、文章1から4のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0055】
6.少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品(10)に穿孔(48)が形成されること、および、穿孔(48)がコーンベース(46)を貫通していることを特徴とする、文章5に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0056】
7.穿孔(48)がインプラントの長手方向軸(28)と同軸に配置または形成されていることを特徴とする、文章6に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0057】
8.コーンベース(46)が接続コーン(24、26)のコーン端面(52、54)に対する停止面(50)を形成し、停止面が挿入口(40)に向かう方向を向いていることを特徴とし、停止面(50)は、特に、環状の構成である、文章5から7のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0058】
9.コーンベース(46)からの少なくとも2つの第1ラッチ要素(76)の第1距離(88)がコーンベース(46)からの少なくとも2つの第2ラッチ要素(78)の第2距離よりも小さいことを特徴とする、文章5から8のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0059】
10.少なくとも2つの第1ラッチ要素(76)がインプラントの長手方向軸(28)に対して円周方向に延びていることを特徴とする、文章1から9のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0060】
11.少なくとも2つの第1ラッチ要素(76)がスリーブ壁(38)の円周上に均等に分散して配置または形成されていることを特徴とする、文章1から10のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0061】
12.少なくとも2つの第2ラッチ要素(78)がインプラントの長手方向軸(28)に対して円周方向に延びていることを特徴とする、文章1から11のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0062】
13.少なくとも2つの第2ラッチ要素(78)がスリーブ壁(38)の円周上に均等に分散して配置または形成されていることを特徴とする、文章1から12のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0063】
14.少なくとも2つの第1ラッチ要素が第1ラッチ要素平面(84)を画定すること、および、第1ラッチ要素平面(84)がインプラントの長手方向軸(28)に対して横方向に、特に垂直に延びていることを特徴とする、文章1から13のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0064】
15.少なくとも2つの第2ラッチ要素(78)が第2ラッチ要素平面(86)を画定すること、および、第2ラッチ要素平面(86)がインプラントの長手方向軸(28)に対して横方向に、特に垂直に延びていることを特徴とする、文章1から14のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0065】
16.少なくとも2つの第1ラッチ要素(76)がインプラントの長手方向軸(28)に向かう第1ラッチ突起(80)の形態で構成されていることを特徴とする、文章1から15のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0066】
17.少なくとも2つの第2ラッチ要素(78)がインプラントの長手方向軸(28)に向かう第2ラッチ突起(82)の形態で構成されていることを特徴とする、文章1から16のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0067】
18.円周方向において、それぞれの第1ラッチ要素(76)が2つの第2ラッチ要素(78)の間に配置または形成され、それぞれの第2ラッチ要素(78)が2つの第1ラッチ要素(76)の間に配置または形成されるよう、少なくとも2つの第1ラッチ要素(76)および少なくとも2つの第2ラッチ要素(78)が円周方向において互いにオフセットして配置または形成されることを特徴とする、文章1から17のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0068】
19.2つの第1ラッチ要素(76)が設けられていること、および、2つの第1ラッチ要素(76)がインプラントの長手方向軸(28)に対して互いに正反対に配置または形成されていることを特徴とする、文章1から18のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0069】
20.2つの第2ラッチ要素(78)が設けられていること、および、2つの第2ラッチ要素がインプラントの長手方向軸(28)に対して互いに正反対に配置または形成されていることを特徴とする、文章1から19のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0070】
21.少なくとも2つの第1ラッチ要素(76)がインプラントの長手方向軸(28)に対して第1円周角(92)にわたって延びること、少なくとも2つの第2ラッチ要素(78)がインプラントの長手方向軸(28)に対して第2円周角(94)にわたって延びること、および、第1円周角(92)が第2円周角(94)よりも大きいことを特徴とする、文章1から20のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0071】
22.第1円周角(92)が約30°から約50°の範囲、特に、約35°から約45°の範囲の値を有すること、および、第2円周角(94)が約20°から約30°の範囲、特に約22°から約28°の範囲の値を有することを特徴とする、文章21に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0072】
23.コーンレセプタクル(22)が内壁面(64)を画定すること、インプラントの長手方向軸(28)に対して内壁面(64)に第1中空円筒部(66)が形成されること、および、少なくとも2つの第1ラッチ要素(76)が第1中空円筒部(66)に形成されていることを特徴とする、文章1から22のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0073】
24.インプラントの長手方向軸(28)に対して内壁面(64)に第2中空円筒部(68)が形成されること、および、少なくとも2つの第2ラッチ要素(78)が第2中空円筒部(68)に形成されることを特徴とする、文章23に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0074】
25.インプラントの長手方向軸(28)に対する円周方向の溝(72)がコーンレセプタクル(22)に配置または形成されていること、および、溝(72)が一方では少なくとも2つの第1ラッチ要素(76)の間に、他方では少なくとも2つの第2ラッチ要素(78)の間に配置または形成されていることを特徴とする、文章1から24のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0075】
26.溝(72)がインプラントの長手方向軸(28)に向かって凹状に湾曲していることを特徴とする、文章25に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0076】
27.溝(72)が溝平面(74)を画定すること、および、溝平面(74)がインプラントの長手方向軸(28)に対して横方向に、特に垂直に延びていることを特徴とする、文章25または26に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0077】
28.溝(72)が第1中空円筒部(66)と第2中空円筒部(68)との間に延びることを特徴とする、文章25から27のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0078】
29.溝(72)が第1中空円筒部(66)に直接隣接している、および/または第2中空円筒部(68)に直接隣接していることを特徴とする、文章25から28のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0079】
30.スリーブ壁(38)が第1スリーブ部(56)と隣接する第2スリーブ部(58)とを備えること、コーンレセプタクル(22)が第2スリーブ(58)から第1スリーブ部(56)に向かって先細りしていること、少なくとも2つの第1および第2ラッチ要素(76、78)が第2スリーブ部(58)にのみ配置または形成されていること、および、第1スリーブ部(56)の第1壁厚(60)が第2スリーブ部(58)の第2壁厚(62)よりも大きい、特に、少なくとも約50%大きいことを特徴とする、文章1から29のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0080】
31.少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品(10)がプラスチックにより形成されることを特徴とする、文章1から30のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0081】
32.プラスチックが、ポリフェニレンスルホン(PPSU)であるか、またはポリフェニレンスルホン(PPSU)を含むことを特徴とする、文章31に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0082】
33.少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品(10)がX線造影剤を含むことを特徴とする、文章1から32のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0083】
34.X線造影剤が、硫酸バリウムであるか、または硫酸バリウムを含むことを特徴とする、文章33に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0084】
35.モジュール式トライアルインプラントシステム(12)が少なくとも1つの第2トライアルインプラント部品(14、16)または少なくとも1つのインプラント部品を備えること、および、少なくとも1つの第2トライアルインプラント部品(14、16)または少なくとも1つのインプラント部品がコーンレセプタクル(22)に挿入可能な接続コーン(24、26)を備えることを特徴とする、文章1から34のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0085】
36.モジュール式トライアルインプラントシステム(12)が異なる長さの接続コーン(24、26)を有する少なくとも2つの第2トライアルインプラント部品(14、16)または少なくとも2つのインプラント部品を備えることを特徴とする、文章35に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0086】
37.少なくとも1つの第2トライアルインプラント部品(14、16)が骨空洞に挿入可能なトライアルステム(100、102)の形態、またはラスプ本体の形態で構成されることを特徴とする、文章35または36に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0087】
38.少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品(10)が球状またはボール状のトライアル関節頭(30)を有することを特徴とする、文章1から37のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0088】
39.トライアル関節頭(30)がインプラントの長手方向軸(28)に対して球面の回転対称部分を有することを特徴とする、文章37に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0089】
40.穿孔(48)がコーンレセプタクル(22)および球面(32)に流体的に接続することを特徴とする、文章38に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0090】
41.モジュール式トライアルインプラントシステム(12)が第1トライアル関節インプラント部品(18、20)および第1トライアル関節インプラント部品と関節式に(in a jointed manner)協働する第2トライアル関節インプラント部品(108、110)を有する少なくとも1つの人工トライアル関節(104、106)を備えることを特徴とする、文章1から40のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0091】
42.人工トライアル関節(104、106)がトライアル股関節の形態で構成されること、第1トライアル関節インプラント部品(18、20)は、トライアル関節頭を有する人工関節ステムを形成すること、および、第2トライアル関節インプラント部品(108、110)がトライアル関節ソケット(112、114)の形態で構成されることを特徴とする、文章41に記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0092】
43.少なくとも1つの第1トライアルインプラント部品(10)および/または少なくとも1つの第2トライアルインプラント部品(14、16)またはインプラント部品が、一体的な、特にモノリシックな構成であることを特徴とする、文章1から42のいずれか1つに記載のモジュール式トライアルインプラントシステム。
【0093】
本発明の好ましい実施形態に関する以下の説明は、さらなる説明のために図面と併せて役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【
図1】コーンレセプタクルを有するトライアルヘッドの形態の第1トライアルインプラント部品の第1実施形態を示す第1透視図
【
図2】
図1の第1トライアルインプラント部品を部分的に透過させて示すさらなる透視図
【
図7】短い接続コーンを有する第2トライアルインプラント部品の第1実施形態において
図1のトライアルヘッドを示す部分切断図
【
図9】より長い接続コーンを有する第2トライアルインプラント部品の第2実施形態と協働させた
図1のトライアルヘッドを示す部分切断図
【発明を実施するための形態】
【0095】
図1に概略的に示されているのは、第1トライアルインプラント部品10の第1実施形態である。これは、
図7および
図9に概略的に示すモジュール式トライアルインプラントシステム12の一部を構成している。
【0096】
第1トライアルインプラント部品10は、
図7および
図9に概略的に示す第2トライアルインプラント部品14および16に取り外し可能に接続するように構成されている。互いに接続された第1トライアルインプラント部品10と第2トライアルインプラント部品14とは、第1トライアル関節インプラント部品18を形成する。互いに接続された第1トライアルインプラント部品10と第2トライアルインプラント部品16とは、さらなる第1トライアル関節インプラント部品20を形成する。
【0097】
第1トライアルインプラント部品10は、第2トライアルインプラント部品14および16の接続コーン24および26をそれぞれ収容するためのコーンレセプタクル22を備える。
【0098】
コーンレセプタクル22はインプラントの長手方向軸28を画定する。
【0099】
第1トライアルインプラント部品10は、トライアル関節頭30を備える。後者は球形またはボール状であり、全体として半球を画定する。半球の側面には、2つの平行な平坦部が設けられており、第1トライアルインプラント部品を手で扱いやすくしている。
【0100】
トライアル関節頭30は、球面32の一部を画定する。この部分はインプラントの長手方向軸28に対して回転対称である。
【0101】
受け入れスリーブ36は、トライアル関節頭30の平面状の底面34から離れる方向にインプラントの長手方向軸28と同軸に延びている。受け入れスリーブ36は、コーンレセプタクル22を画定する。さらに、受け入れスリーブ36は、インプラントの長手方向軸28を取り囲み、コーンレセプタクルを区切るスリーブ壁38を備える。
【0102】
コーンレセプタクル22は、接続コーン24、26を挿入するための挿入口40を備える。挿入口40は、円形のリング状の連続した挿入口リム42によって区切られている。挿入口リム42は、インプラントの長手方向軸28に対して横方向に、すなわち図示された実施形態では垂直に延びるリム平面44を画定する。
【0103】
コーンレセプタクル22はコーンベース46に向かって円錐状に先細りしている。コーンベース46は、インプラントの長手方向軸28に対して横方向に、すなわち図示された実施形態では垂直に延びている。
【0104】
さらに、第1トライアルインプラント部品10には、コーンレセプタクル22と球面32とを流体的に接続する穿孔48が形成されている。穿孔48はコーンベース46を貫通している。穿孔48は、インプラントの長手方向軸28に対して同軸に形成されている。
【0105】
コーンベース46は、それぞれの接続コーン24、26のコーン端面52、54に対して停止面50を形成し、当該停止面50は挿入口40の方を向いている。穿孔48がインプラントの長手方向軸28に同軸にコーンベース46を貫通しているため、停止面50は、図示された実施形態において、環状、すなわち円環状の構成である。
【0106】
スリーブ壁38は第1スリーブ部56と第2スリーブ部58とを備える。第1スリーブ部56は、コーンベース46を起点として第1スリーブ部56に直接隣接する第2スリーブ部58に向かう方向に延びている。このようにして、スリーブ部分56、58は、コーンレセプタクル22が第2スリーブ部58から第1スリーブ部56に向かう方向、すなわちコーンベース46まで先細りするように、コーンレセプタクル22を区切る。
【0107】
第1スリーブ部56は第1壁厚60を規定する。第2スリーブ部58は第2壁厚62を規定する。第1壁厚60は第2壁厚62より大きく、すなわち少なくとも約50%大きい。図示された実施形態において、第1壁厚60は第2壁厚62の約2倍である。
【0108】
コーンレセプタクル22は、内壁面64を画定する。後者は、挿入口リム42から円錐状に形成され、挿入口リム42からコーンベース46まで連続的に先細になる。
【0109】
基本的に円錐形の内壁面からそれて(deviating from the basically conical inner wall surface)、内壁面上に第1中空円筒部66と第2中空円筒部68とが形成される。部分66および68はそれぞれ、インプラントの長手方向軸28に対して中空円筒形である。このことは、第1中空円筒部66および第2中空円筒部68の領域における内壁面64は、それぞれの内径を維持し、挿入口リム42から始まる内壁面64のコーンベース46に向かう方向における残りの領域での場合のように減少しないことを意味する。
【0110】
第2中空円筒部68は、挿入口リム42に直接隣接している。
【0111】
第1中空円筒部66と第2中空円筒部68との間には、溝72の形態の凹部70が第2スリーブ部58に形成されている。溝72は、中空円筒形部分66および68のそれぞれに直接隣接している。凹部70、したがって溝72も、インプラントの長手方向軸28に対してコーンレセプタクル22の円周方向に配置または形成されている。溝72もまた、インプラントの長手方向軸28に向かって凹状に湾曲している。さらに、溝72は、インプラントの長手方向軸28に対して横方向に、すなわち図示された実施形態では垂直に延びる溝平面74を画定する。
【0112】
第1トライアルインプラント部品10を接続コーン24、26の1つにラッチ式に(latchingly)接続するために、第1トライアルインプラント部品10は、互いに関連付けられた2つ以上の第1ラッチ要素76と、互いに関連付けられた2つ以上の第2ラッチ要素78とを備える。図示された第1トライアルインプラント部品10の実施形態において、2つのそれぞれの第1ラッチ要素76と2つのそれぞれの第2ラッチ要素78とが設けられている。
【0113】
第1ラッチ要素76および第2ラッチ要素78は、第2スリーブ部58にのみ配置または形成されている。
【0114】
2つの第1ラッチ要素76は第1中空円筒部66に形成されている。対照的に、2つの第2ラッチ要素78は第2中空円筒部68に形成されている。
【0115】
2つの第1ラッチ要素76は、スリーブ壁38、特に第1中空円筒部66の円周上に均等に分散して配置または形成されている。
【0116】
2つの第2ラッチ要素78もまた、スリーブ壁38の円周上に、したがって第2中空円筒部68の円周上に均等に分散して配置または形成されている。
【0117】
2つの第1ラッチ要素76は、インプラントの長手方向軸28に対して円周方向に延びている。2つの第2ラッチ要素78もまた、インプラントの長手方向軸28に対して円周方向に延びている。
【0118】
2つの第1ラッチ要素76は、インプラントの長手方向軸28に向かう第1ラッチ突起80の形態で構成されている。2つの第2ラッチ要素78もまた、インプラントの長手方向軸28に向かう第2ラッチ突起82の形態で構成されている。
【0119】
スリーブ壁38の円周上に第1ラッチ要素76および第2ラッチ要素78が均等に分布することにより、2つの第1ラッチ要素76がインプラントの長手方向軸28に対して互いに正反対に配置または形成される。2つの第2ラッチ要素78もまた、インプラントの長手方向軸28に対して互いに正反対に配置されている。
【0120】
さらに、第1ラッチ要素76は、インプラントの長手方向軸28に対して横方向に、すなわち図示された実施形態では垂直に延びる第1ラッチ要素平面84を画定する。同様にして、第2ラッチ要素78は、インプラントの長手方向軸28に対して横方向に、すなわち図示された実施形態では垂直に延びる第2ラッチ要素平面86を画定する。したがって、第1ラッチ要素平面84および第2ラッチ要素平面86は、互いに平行に、およびコーンベース46およびリム平面44に平行に延びている。
【0121】
このようにして、第1ラッチ要素76および第2ラッチ要素78は、インプラントの長手方向軸28に対して互いに軸方向にオフセットしてコーンレセプタクル22に配置または形成される。したがって、コーンベース46からの第1ラッチ要素76の第1距離88は、コーンベース46からの第2ラッチ要素78の第2距離90よりも小さい。距離88および90が異なるために、第1ラッチ要素76および第2ラッチ要素78は、一方ではより短い接続コーン24に対して、他方ではより長い接続コーン26に対して、
図7および
図9に概略的に図示されているように、連結位置において、長さの異なる接続コーン24、26の後方に係合することができる。
【0122】
第1ラッチ要素76および第2ラッチ要素78は、インプラントの長手方向軸28に対して互いに軸方向にオフセットして配置または形成されているだけでなく、円周方向においても、互いにオフセットして配置または形成されている。すなわち、円周方向において、それぞれの第1ラッチ要素76が2つの第2ラッチ要素78の間に配置または形成され、それぞれの第2ラッチ要素78が2つの第1ラッチ要素76の間に配置または形成される。このことは、
図1および
図2において特によくわかる。
【0123】
第1ラッチ突起80および第2ラッチ突起82は、それぞれの中空円筒部66、68から数珠状に(in a bead-like manner)突出して形成されている。第1ラッチ要素76はそれぞれ、インプラントの長手方向軸28に対して第1円周角92にわたって延びている。第2ラッチ要素78はそれぞれ、インプラントの長手方向軸28に対して第2円周角94にわたって延びている。図示された実施形態では、第1円周角92は第2円周角94よりも大きい。
【0124】
第1円周角92は、約30°から約50°の範囲の値を有する。図示された実施形態では、第1円周角92の値は約40°である。
【0125】
対照的に、第2円周角94は約20°から約30°の範囲の値を有する。図示された実施形態では、第2円周角94の値は約25°である。
【0126】
説明したように、溝72は、一方では2つの第1ラッチ要素76の間に、他方では第2ラッチ要素78の間に延びている。溝72または凹部70は、第2スリーブ部58の弱くなった領域(weakend region)を形成し、それによって、この領域におけるスリーブ壁38の弾性を増大させる。
【0127】
したがって、第1ラッチ要素76は合わさって第1中空円筒部66の全周にわたって延びることはない。これは、第2中空円筒部68に関して第2ラッチ要素78にも同様に当てはまる。円周方向において、第1のラッチ要素76の間の第1の領域96と、第2ラッチ要素78の間の第2の領域98とが、このようにして画定される。第1領域96および第2領域98では、スリーブ壁38にギザギザ(indentation)も穿孔も形成されていない。したがって、領域96および98は、ギザギザのないおよび穿孔のない構成である。
【0128】
しかし、スリーブ壁38においてギザギザのないおよび穿孔のない構成であるのは、領域96および98だけではない。むしろ、スリーブ壁38は、完全にギザギザのないおよび/または穿孔のない構成である。従って、第1トライアルインプラント部品10において、第1ラッチ要素76および第2ラッチ要素78が配置または形成される弾性(elastic)または可撓性(flexible)のフィンガー(finger)は形成されていない。
【0129】
第1ラッチ要素76および第2ラッチ要素78は、それぞれ円周方向に面取りされている。軸方向には、エッジのない形状(edge-free progression)を有する。それぞれの中空円筒壁部分66および68を起点として、この形状は、インプラントの長手方向軸28に向かう凹部分と、凹部分に隣接する凸部分と、凸部分に隣接する更なる凹部分とを有する。この構成により、接続コーン24、26がコーンレセプタクル22に挿入されるときに、ラッチ要素76、78は、インプラントの長手方向軸28から離れる方向を向いた接続コーン24、26の円錐外面上を摺動することができる。
【0130】
第1トライアルインプラント部品10は、プラスチックにより形成される。特に、プラスチックとしてはポリフェニレンスルホン(PPSU)が使用される。
【0131】
X線制御下で第1トライアルインプラント部品10を視認できるようにするため、プラスチックにはX線造影剤が含まれる。これは、特に硫酸バリウムであってもよい。
【0132】
図示されたトライアルインプラントシステム12において、第2トライアルインプラント部品14、16は、それぞれ骨空洞に挿入可能なトライアルステム100、102の形態に構成されている。あるいは、第2トライアルインプラント部品は、図示されていないラスプ本体の形態で構成されてもよい。これらはまた、対応する接続コーンを有していてもよく、この接続コーンは、接続コーン24、26に類似して形成され、説明したように、第1トライアルインプラント部品10にラッチ式に連結可能である。
【0133】
ここで、患者の体内に一時的に留まることのみを意図した、図に一例として示された第2トライアルインプラント部品14および16の代わりに、患者の体内に永久的に留まることを意図した、同一の形状およびサイズに形成されたインプラント部品も、第1トライアルインプラント部品10と協働してモジュール式トライアルインプラントシステム12の第1トライアル関節インプラント部品を形成するために使用できることに留意すべきである。これらのインプラント部品はまた、対応する接続コーンを有していてもよく、この接続コーンは、接続コーン24、26に類似して形成され、説明したように、第1トライアルインプラント部品10にラッチ式に連結可能である。説明したように第2トライアルインプラント部品14、16と形状およびサイズが変わらないため、分かりやすくするためにこのようなインプラント部品の図示を省略した。
【0134】
モジュール式トライアルインプラントシステム12は、人工トライアル関節104および106をさらに備えていてもよい。ここで、トライアル関節104は、第1トライアル関節インプラント部品18と、第1トライアル関節インプラント部品と関節式に協働する第2トライアル関節インプラント部品108とを備える。トライアル関節106は、第1トライアル関節インプラント部品20と、第1トライアル関節インプラント部品20と関節式に協働する第2トライアル関節インプラント部品110とを備える。
【0135】
図7および
図9において、トライアル関節104および106は、トライアル股関節の形態に構成された例として図示されている。ここで、第1トライアル関節インプラント部品18、20はトライアル関節頭を有する人工関節ステムを形成し、第2トライアル関節インプラント部品108、110は、それぞれトライアル関節ソケット112、114の形態に構成されている。
【0136】
モジュール式トライアルインプラントシステム12、第1トライアルインプラント部品10および第2トライアルインプラント部品14、16の図示された実施形態では、それぞれ、一体的な、すなわちモノリシックな構成である。
【0137】
モジュール式トライアルインプラントシステム12の機能、特に第1トライアルインプラント部品10と第2トライアルインプラント部品14および16間のラッチ接続について、以下に簡単に説明する。
【0138】
図7および
図8は、第1トライアルインプラント部品10および第2トライアルインプラント部品14を互いに連結するときの第1トライアル関節インプラント部品18を示す。接続コーン24はコーンレセプタクル22に挿入される。これは、第1ラッチ要素76と協働できる長さを有する。接続コーン24をコーンレセプタクル22に挿入する際、第1ラッチ要素76が接続コーン24の外側を摺動するときに、スリーブ壁38は、特に第2スリーブ部58の領域および第1中空円筒部66の領域において変形する。第1トライアルインプラント部品10が接続コーン24にさらに押し込まれると、第1ラッチ要素76は、コーン端面から離れる方向を向いた接続コーン24のエッジの後方に係合することができ、第1トライアルインプラント部品10に及ぼされる前進する力(advancing force)は、第1トライアルインプラント部品10の急加速につながり、コーンベース46は、制動されることなく(in an unbraked manner)コーン端面52に衝突することができ、したがって、クリック音またはスナップ音を引き起こすことができる。
【0139】
第1トライアルインプラント部品10を第2トライアルインプラント部品16の接続コーン26と係合させると、第1ラッチ要素76は接続コーン26の外側を摺動する。それにより、第2スリーブ部58および第1中空円筒部66の領域におけるスリーブ壁38の変形につながる。第2ラッチ要素78がより長い接続コーン26の後方で係合できると同時に、このことは、今度は、第1トライアルインプラント部品10に作用する前進する力により、接続コーン26に向かう方向へのトライアルインプラント部品10の加速移動をもたらし、コーンベース46もコーン端面54に対して衝突することができ、対応するクリック音または衝突音を引き起こすことができる。
【0140】
凹部70は、スリーブ壁38を幾分弱め、従って、それをより弾性的にし、第2ラッチ要素78が接続コーン26の後方に係合するときに、弾性変形を改善し、したがって、第2ラッチ要素78が変形していない開始位置に戻る旋回運動(pivoting)も改善する。したがって、第1ラッチ要素76が接続コーン26の外側を摺動するにもかかわらず、クリック音を発生させるのに十分な第1トライアルインプラント部品10の加速が可能である。
【0141】
記載されたモジュール式トライアルインプラントシステム12、特に第1トライアルインプラント部品10は、説明したように、外科医が第1トライアルインプラント部品10をより短い接続コーン24およびより長い方の接続コーン26に接続するときの両方で音響フィードバックを受け取るため、外科医がこれを容易に取り扱うことを可能にし、特に、第1トライアルインプラント部品10および第2トライアルインプラント部品14、16、または代わりに第1トライアルインプラント部品10のインプラント部品との互いの確実な接続を可能にする。
【符号の説明】
【0142】
10 第1トライアルインプラント部品
12 モジュール式トライアルインプラントシステム
14 第2トライアルインプラント部品
16 第2トライアルインプラント部品
18 第1トライアル関節インプラント部品
20 第1トライアル関節インプラント部品
22 コーンレセプタクル
24 接続コーン
26 接続コーン
28 インプラントの長手方向軸
30 トライアル関節頭
32 球面
34 底面
36 受け入れスリーブ
38 スリーブ壁
40 挿入口
42 挿入口リム
44 リム平面
46 コーンベース
48 穿孔
50 停止面
52 コーン端面
54 コーン端面
56 第1スリーブ部
58 第2スリーブ部
60 第1壁厚
62 第2壁厚
64 内壁面
66 第1中空円筒部
68 第2中空円筒部
70 凹部
72 溝
74 溝平面
76 第1ラッチ要素
78 第2ラッチ要素
80 第1ラッチ突起
82 第2ラッチ突起
84 第1ラッチ要素平面
86 第2ラッチ要素平面
88 第1距離
90 第2距離
92 第1円周角
94 第2円周角
96 第1領域
98 第2領域
100 トライアルステム
102 トライアルステム
104 トライアル関節
106 トライアル関節
108 第2トライアル関節インプラント部品
110 第2トライアル関節インプラント部品
112 トライアル関節ソケット
114 トライアル関節ソケット
【外国語明細書】