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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086674
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】プッシュラッチ
(51)【国際特許分類】
   E05C 19/02 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
E05C19/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023211410
(22)【出願日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2022201292
(32)【優先日】2022-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592264101
【氏名又は名称】下西技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】小林 眞一
(57)【要約】
【課題】プッシュラッチについてより小型に構成することを課題とする。
【解決手段】プッシュラッチ1において、ケース部材10に保持が解除された状態から保持された状態に移動部材30が移動する過程において、移動部材30が押込方向に移動したときに第一当接部33が接触することによって所定位置から離隔する側に第一当接部33を移動させた後、移動部材30を保持する、第一ガイド突部15と、ケース部材10に保持された状態から保持が解除された状態に移動部材30が移動する過程において、第一当接部33が第一ガイド突部15に接触している状態から移動部材30が押込方向へ移動したときに移動部材30が接触することによって第一当接部33を移動させて所定位置に復帰させる、第二ガイド突部16と、を備え、第一ガイド突部15と第二ガイド突部16とは、第一当接部33の突出方向から見て重なっている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース部材と、前記ケース部材に収容され、前記ケース部材に対して押し込まれる押込方向および前記ケース部材から押し出される押出方向に移動可能に構成され、前記押込方向に移動すると、前記押出方向への力が付与される移動部材と、を備え、前記ケース部材による前記移動部材の保持と前記保持の解除とを切り替えるプッシュラッチであって、
前記移動部材は、本体と、前記本体から突出した第一当接部とを備え、
前記第一当接部は、所定位置に復帰するように揺動可能に構成され、
前記ケース部材は、
前記保持が解除された状態から前記保持された状態に前記移動部材が移動する過程において、前記保持が解除された状態から前記移動部材が前記押込方向に移動したときに前記第一当接部が接触することによって前記所定位置から離隔する側に前記第一当接部を移動させた後、前記第一当接部の前記押出方向への移動を阻止することで前記移動部材を保持する、第一ガイド突部と、
前記保持された状態から前記保持が解除された状態に前記移動部材が移動する過程において、前記第一当接部が前記第一ガイド突部に接触している状態から前記移動部材が前記押込方向へ移動したときに前記移動部材が接触することによって前記所定位置に近接する側に前記第一当接部を移動させて前記第一当接部を前記所定位置に復帰させる、第二ガイド突部と、を備え、
前記第一ガイド突部と前記第二ガイド突部とは、前記第一当接部の突出方向から見て重なっている、
プッシュラッチ。
【請求項2】
前記移動部材は、前記本体における前記第一当接部より前記押出方向側に設けられ、前記本体から前記突出方向へ突出した第二当接部、を備え、
前記第二ガイド突部は、前記第一当接部が前記第一ガイド突部に接触している状態から前記移動部材が前記押込方向へ移動したときに前記第二当接部が接触することによって前記所定位置に近接する側に前記第一当接部を移動させて前記第一当接部を前記所定位置に復帰させる、
請求項1に記載のプッシュラッチ。
【請求項3】
前記移動部材は、前記本体から前記第一当接部と反対方向へ突出し、前記第一当接部より前記押出方向側に設けられた軸部、を有し、
前記ケース部材に収容され、前記移動部材とともに前記押出方向および前記押込方向に移動可能に前記軸部を支持するスライド部材と、
前記ケース部材に収容され、前記軸部を前記押出方向へ付勢する付勢部材と、
をさらに備え、
前記スライド部材は、前記移動部材が前記第一ガイド突部により移動が阻止された状態のときに、前記移動部材の前記軸部側が、前記第一当接部の突出方向側へ傾斜することを防止する、接触部を有する、
請求項1または請求項2に記載のプッシュラッチ。
【請求項4】
前記スライド部材は、案内突起を備え、
前記ケース部材は、前記スライド部材の前記案内突起が配置されて前記スライド部材の前記押出方向及び前記押込方向に移動を案内する案内溝を備え、
前記スライド部材が前記押出方向又は前記押込方向に移動する際に、前記案内突起が前記案内溝に摺動する、
請求項3に記載のプッシュラッチ。
【請求項5】
前記スライド部材は、前記軸部が挿入される貫通孔を有し、
前記移動部材は、前記第一当接部が前記所定位置に位置する状態で、前記貫通孔の前記押出方向側の内壁と接触する、平面状の第三当接部を、前記軸部に有し、
前記第三当接部は、前記第一当接部の突出方向から見て、前記突出方向に直交する方向において2つの角部を有し、
前記移動部材は、前記2つの角部それぞれを支点に、回転可能に、前記スライド部材に支持されている、
請求項3に記載のプッシュラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プッシュラッチの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば家具などの扉に設けられ、閉じたときに扉をロックすることができるプッシュラッチが種々提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1には、1回押し操作すると押し操作した位置にロックされ、再度押し操作すると元の位置に復帰する構成のプッシュラッチ装置が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示のプッシュラッチ装置は、ケーシング内にケーシングの前後方向に移動自在にスライド部材が装着されている。スライド部材には、先端に係合部が設けられたレバー部材が回転自在に取り付けられている。ケーシングには、間に係止溝が形成されるように、第1ガイド突部と第2ガイド突部とが前後方向に間隔を空けて設けられている。押し操作によりスライド部材を後方へ移動させると、レバー部材の係合部が第1ガイド突部に沿って第1ガイド突部の外側に移動するように案内される。レバー部材の係合部は、第1ガイド突部を乗り越えた後、第2ガイド突部と接触する。この状態で押し操作を辞めると、スライド部材は弾性部材の付勢力で前方に移動し、レバー部材の係合部が第1ガイド突部と第2ガイド突部との間の係止溝に係合して、スライド部材は保持される。この状態から押し操作すると、レバー部材の係合部は、第2ガイド突部に接触した後、第2ガイド突部に沿って移動し、その状態で押し操作を辞めると、弾性部材の付勢力でスライド部材が前方に移動し、レバー部材の係合部は係止溝から外れるようになる。このように、特許文献1に開示のプッシュラッチ装置は、押し操作することでスライド部材をロックでき、そのロックの位置から更に後方に押し操作することで、スライド部材のロックを解除できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7-14061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示のプッシュラッチ装置では、レバー部材の係合部を係止溝に係合させ、また、係止溝から外すために、ケーシングに第2ガイド突部を設ける必要がある。つまり、ケーシングは、第1ガイド突部と第2ガイド突部とを設けるためのスペースが必要となるため、特許文献1に開示のプッシュラッチ装置では、長さ方向に対して小型化することが難しい。
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、より小型に構成されるプッシュラッチを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
本発明は、ケース部材と、前記ケース部材に収容され、前記ケース部材に対して押し込まれる押込方向および前記ケース部材から押し出される押出方向に移動可能に構成され、前記押込方向に移動すると、前記押出方向への力が付与される移動部材と、を備え、前記ケース部材による前記移動部材の保持と前記保持の解除とを切り替えるプッシュラッチであって、前記移動部材は、本体と、前記本体から突出した第一当接部とを備え、前記第一当接部は、所定位置に復帰するように揺動可能に構成され、前記ケース部材は、前記保持が解除された状態から前記保持された状態に前記移動部材が移動する過程において、前記保持が解除された状態から前記移動部材が前記押込方向に移動したときに前記第一当接部が接触することによって前記所定位置から離隔する側に前記第一当接部を移動させた後、前記第一当接部の前記押出方向への移動を阻止することで前記移動部材を保持する、第一ガイド突部と、前記保持された状態から前記保持が解除された状態に前記移動部材が移動する過程において、前記第一当接部が前記第一ガイド突部に接触している状態から前記移動部材が前記押込方向へ移動したときに前記移動部材が接触することによって前記所定位置に近接する側に前記第一当接部を移動させて前記第一当接部を前記所定位置に復帰させる、第二ガイド突部と、を備え、前記第一ガイド突部と前記第二ガイド突部とは、前記第一当接部の前記突出方向から見て重なっているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明によれば、より小型に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るプッシュラッチと取付部材とを示す斜視図。
図2図1に示すプッシュラッチの分解斜視図。
図3図1におけるA-A線断面図。
図4図1におけるB-B線における断面図。
図5】ケース部材の内部構造を示す断面図。
図6】スライド部材の斜視図。
図7】移動部材の斜視図。
図8】取付部材の斜視図。
図9】取付部材を開いた状態のプッシュラッチを示す図。
図10】プッシュラッチの動作を説明するための図。
図11】プッシュラッチの動作を説明するための図。
図12】プッシュラッチの動作を説明するための図。
図13】プッシュラッチの動作を説明するための図。
図14】プッシュラッチの動作を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では図面を参照しつつ、本発明に係るプッシュラッチの実施の一形態であるプッシュラッチ1について説明する。本実施形態のプッシュラッチは、例えば、家具の本体に設けられ、家具の扉を本体にロックする用途等に用いられるものである。家具の具体例としては、箪笥、本棚、食器棚、洗面台、机等が挙げられる。
【0012】
図1は、本実施形態にかかるプッシュラッチ1の斜視図である。図2は、図1に示すプッシュラッチ1の分解斜視図である。図3は、図1におけるA-A線における断面図である。図4は、図1のB-B線における断面図である。プッシュラッチ1は、一方向に長い略円柱状に構成されている。以下では便宜上、プッシュラッチ1の長手方向を上下方向とする。また、上下方向に対して直交し、また、互いに直交する方向を、前後方向および左右方向とする。プッシュラッチ1の使用時の姿勢はこれらの方向に限定されない。なお、上下方向における上方向は、本発明の「押出方向」に相当する。また、上下方向における下方向は、本発明の「押込方向」に相当する。
【0013】
プッシュラッチ1は、ケース部材10と、スライド部材20と、移動部材30と、付勢部材40と、連結部50と、取付部材60とを備えている。プッシュラッチ1は、取付部材60を介して家具の本体等に取り付けられる。なお、図2図4では、取付部材60の図示は省略している。
【0014】
ケース部材10は、上下方向を長手方向とする概ね円筒形状の部材である。ケース部材10は、一端部に開口部11を有し、開口部11を介してケース部材10の内部に形成された空間と外部とが連通するように構成される。ケース部材10は、他端部に底部12を有し、底部12によってケース部材10の開口が閉塞されるように構成される。ケース部材10は、その外周面の概ね全体に亘って複数個の溝が形成されて係止部13が構成される。ケース部材10を取付部材60に取り付ける際、係止部13が取付部材60のネジ溝と係合するようになっている。
【0015】
図5は、ケース部材10の内部構造を示す断面図である。ケース部材10は、その内周面に、一対の案内溝14・14と、第一ガイド突部15と、第二ガイド突部16と、を備える。
【0016】
案内溝14は、ケース部材10の内周面に形成された、上下方向に沿った長尺状の溝である。一対の案内溝14は、ケース部材10の外側まで貫通しないよう形成されている。また、一対の案内溝14は、左右方向において対向する位置に形成されている。一対の案内溝14は、後述のスライド部材20がケース部材10に収容された際に、スライド部材20の案内突起23が配置されるようになっている。そして、スライド部材20が上下方向に移動する際、案内突起23が案内溝14内を摺動することで、スライド部材20の上下方向の移動が案内されるようになっている。
【0017】
第一ガイド突部15は、ケース部材10の前側の内周面であって、前後方向から視て、一対の案内溝14の間に設けられている。第一ガイド突部15は、ケース部材10の前側の内周面から後方向に突出して形成されている。具体的な構成については後述するが、第一ガイド突部15は、前後方向から視て、一側面(後述の第六突面15f)が略上下方向に沿った直線状であり、他側面の第一突面15aが上方から下方向に向かって徐々に広がるよう形成されている。また、第一ガイド突部15は、底部に上方向に凹んだ係止溝15gが形成されている。後述するが、係止溝15gに、移動部材30の第一当接部33が嵌まることで、スライド部材20はケース部材10に保持されるようになっている。
【0018】
第二ガイド突部16は、前後方向に第一ガイド突部15と重なるように、第一ガイド突部15に設けられている。第一ガイド突部15は、後方向に突出した側の面が平面状となっており、第二ガイド突部16は、その平面部分からさらに後方向に突出するよう形成されている。第二ガイド突部16は、第一ガイド突部15と一体的に形成されていてもよいし、別部材であってもよい。
【0019】
図6は、スライド部材20の斜視図である。スライド部材20は、上下方向を長手方向とする部材であり、ケース部材10の上端部に形成された開口部11からケース部材10の内部空間に収容される。スライド部材20は、ケース部材10内を上下方向に沿って移動可能に支持される。
【0020】
スライド部材20は、略円柱状の円柱部21Aと、略平板状の平板部21Bと、一対の案内突起23と、を有している。
【0021】
円柱部21Aは、スライド部材20の上下方向における上方部分を構成している。ケース部材10内を上下方向に沿ってスライド部材20が移動する際、円柱部21Aの外周面がケース部材10の内周面を摺動するようになっている。円柱部21Aの下端部には、上方に凹むように設けられた凹部21Cが形成されている。凹部21Cは、その上面が平面状となっている。
【0022】
平板部21Bは、円柱部21Aの下部に設けられている。平板部21Bの上端部であって、凹部21Cが設けられた位置には、支持孔22が設けられている。支持孔22は、前後方向に平板部21Bを貫通するよう形成される。支持孔22には、後述の移動部材30の軸部32が挿入される。
【0023】
平板部21Bの前面下端部には、接触部24が設けられている。接触部24は、平板部21Bの前面から突出し、左右方向を長手方向とする矩形状に構成される。接触部24は、その上端において、後述の移動部材30の下端が接触し、移動部材30を下方から支持可能に構成される。
【0024】
平板部21Bの前面であって、支持孔22と接触部24との間には、後述の移動部材30が配置される配置部21が形成されている。スライド部材20に支持される移動部材30は、支持孔22に挿入された軸部32を支点に配置部21内で回転可能となっている。配置部21は、移動部材30の動作を阻害しないよう、移動部材30との接触面が平面となっている。
【0025】
一対の案内突起23は、平板部21Bの左右下端部から下方へ突出し、下部が外側に突出するように構成される。スライド部材20がケース部材10に収容された状態において、案内突起23の外側に突出する部分が、ケース部材10の案内溝14(案内溝14の上面)に当接して、スライド部材20がケース部材10から脱落することが防止されている。また、スライド部材20がケース部材10に対して回転することが防止されている。
【0026】
図7は、移動部材30の斜視図である。移動部材30は、スライド部材20により支持され、ケース部材10内において、スライド部材20とともに上下方向に移動可能となっている。移動部材30は、本体31と、軸部32と、第一当接部33と、第二当接部34と、第三当接部35と、凹部36と、を備える。
【0027】
本体31は、上下方向を長手方向とされる平板状に構成される。本体31は、移動部材30の移動方向に沿って移動する。
【0028】
軸部32は、本体31の移動に伴って本体31と共に移動する。軸部32は、前後方向に沿って延び、本体31の上端部に設けられる。軸部32は、略円柱状の上部が切り欠かれたような形状に構成される。移動部材30は、軸部32が支持孔22に嵌挿されることによってスライド部材20に支持される。移動部材30は、軸部32を中心にしてスライド部材20に対して回動可能に構成される。
【0029】
軸部32は、その上部に、左右方向に沿った平面と、下方向へ傾斜した平面とが形成されている。第三当接部35は、左右方向に沿った平面に相当する。下方向へ傾斜した平面が形成されることで、第三当接部35は、左右方向における長さが、軸部32よりも短くなっている。移動部材30は、スライド部材20で支持される場合、第三当接部35を凹部21Cの上面に接触させた状態で支持される(図4参照)。
【0030】
第一当接部33は、本体31の移動に伴って本体31と共に移動する。第一当接部33は、本体31の下部に配置される。第一当接部33は、本体31から前方へ突出するように設けられる。第一当接部33は、略円柱状に構成され、その外周面が曲面状に構成される。第一当接部33は、その外周面がケース部材10の第一ガイド突部15の外周面に当接可能に構成される。
【0031】
第二当接部34は、本体31の移動に伴って本体31と共に移動する。第二当接部34は、本体31の上下中途部に配置される。第二当接部34は、第一当接部33よりも上方に配置される。第二当接部34は、本体31から前方に突出するように設けられる。第二当接部34は、その突出する方向の長さが第一当接部33の突出する方向の長さに比べて短く構成される。
【0032】
凹部36は、第一当接部33と第二当接部34との間に配置される。凹部36は、第二当接部34よりも後方へ凹むよう構成される。凹部36は、ケース部材10の第二ガイド突部16が配置可能に構成される。
【0033】
移動部材30は、第一当接部33、第二当接部34および凹部36が、ケース部材10の第一ガイド突部15および第二ガイド突部16と係合することで、軸部32を中心に回転するようになっている。そして、移動部材30の各部が第一ガイド突部15および第二ガイド突部16と係合することで、スライド部材20がケース部材10に保持され、また、保持の解除とが切り替えられるようになっている。この移動部材30の回転動作については後に詳述する。
【0034】
図1図4に戻る。付勢部材40は、バネ鋼からなる圧縮コイルバネであり、ケース部材10内に収容される。付勢部材40は、下端部がケース部材10の底部12に当接し、上端部が移動部材30の軸部32の下端面に当接するよう設けられる。スライド部材20がユーザにより下方向へ押圧されると、付勢部材40は収縮し、弾性力により移動部材30を上方向へ押圧する。スライド部材20は、移動部材30を介して上方向へ押圧される。つまり、スライド部材20は、下方向に移動すると、付勢部材40により、上方向への力が付与される。
【0035】
連結部50は、磁石部材51およびヨーク部材52・52を備えている。連結部50は、スライド部材20の円柱部21Aの上端部に蓋部17とともに設けられる。プッシュラッチ1が、例えば家具に用いられた場合、連結部50が、家具の扉に設けられた磁石と吸着することで、扉が閉じた状態でロックされるようになる。
【0036】
図8は、取付部材60の斜視図である。図9は、取付部材60を開いた状態のプッシュラッチ1を示す図である。取付部材60は、樹脂材料で構成される部材であり、本体部と、本体部の下部からそれぞれ左右側方に張り出した一対の板状のウイング部を備える。取付部材60の本体部には前後方向に貫通する貫通孔61が形成され、貫通孔61の内周面には概ね全体に亘って複数個の溝が形成されて係止部60Aが形成される。ケース部材10を取付部材60に取り付ける場合、この係止部60Aと、ケース部材10の係止部13とが噛み合うようになっている。
【0037】
取付部材60のウイング部にはそれぞれ上下に貫通する複数個の貫通孔62・63・・・が形成される。貫通孔62にネジ(不図示)を貫装し、これらのネジを家具の本体(不図示)に形成されたネジ穴にねじ込むことにより、取付部材60を介してプッシュラッチ1を家具の本体等に固定する。
【0038】
取付部材60は、左右中央で貫通孔61が分割されるように構成され、且つ、左部と右部とが後部で連結されて後部を中心にして左部と右部とが回動可能に構成される。取付部材60は、左部と右部とを開いた状態の内部にプッシュラッチ1を配置して、このような状態で左部と右部とを閉じることによって、プッシュラッチ1を支持する。取付部材60によってプッシュラッチ1が支持された状態では、取付部材60の係止部とケース部材10の係止部13とが係合することから、取付部材60からプッシュラッチ1が脱落することが防止される。
【0039】
また、取付部材60は、ケース部材10が挿入される孔の内側に突出する、爪部63を有している。ケース部材10の外周面には、上下方向に沿って形成されるスリット10Aが、周方向に間隔を設けて形成されている。ケース部材10を回転させて取付部材60に係合させるとき、ケース部材10の回転途中で、取付部材60の爪部63と、ケース部材10のスリット10Aとが係合するようになる。この係合により、ケース部材10は取付部材60に対して回転しづらくなる。つまり、取付部材60に対するケース部材10の位置決めを行うことができる。これにより、プッシュラッチ1を例えば家具に設けた場合に、ケース部材10が上下方向に移動して、設置位置からずれることを防止することができる。
【0040】
以上のように、取付部材60は、左部と右部とを開いた状態の内部にプッシュラッチ1を配置した状態で左部と右部とを閉じることによってプッシュラッチ1を支持するものであり、取付部材60の係止部とプッシュラッチ1のケース部材10の係止部13とが係合することによって取付部材60によってプッシュラッチ1が支持されることから、従来のもののように取付部材の開口部の内周面に形成されるネジ溝とプッシュラッチのケース部材の外周面に形成されるネジ溝とを螺合させることによって取付部材によってプッシュラッチが支持される構成に比べて、容易に取付部材60によってプッシュラッチ1を支持することができる。
【0041】
以下に、以上のように構成されたプッシュラッチ1の動作について説明する。図10図14は、プッシュラッチ1の動作を説明するための図である。なお、各図の白抜き矢印は、スライド部材20に作用するユーザの押圧力、または、付勢部材40の弾性力の方向を示す。また、図10図14は、前方向から視た図である。
【0042】
図10は、スライド部材20がケース部材10に保持されておらず、ユーザがスライド部材20を押圧していない状態を示す図である。この状態では、スライド部材20に支持された移動部材30は、第一ガイド突部15および第二ガイド突部16の上方に位置している。また、移動部材30は、第一当接部33が第一ガイド突部15の左側面の第一突面15aと上下方向において重なっている。
【0043】
移動部材30は、軸部32の上面に、平面状の第三当接部35が設けられている。そして、移動部材30は、第三当接部35が凹部21Cの上面と接触した姿勢で、スライド部材20に支持されている。この姿勢で、移動部材30は、軸部32が付勢部材40により上方向へ付勢されているため、図10に示す状態を維持するようになっている。以下では、図10に示す状態を、初期状態、と言う。この初期状態のときの第一当接部33の位置は、本発明の所定位置に相当する。
【0044】
第一ガイド突部15の第一突面15aは、左右方向外側に向かって傾斜し、下端部は、上下方向に沿った直線状となっている(以下、この部分を第二突面15bと言う)。図10の初期状態から、ユーザによりスライド部材20が押圧されると、図11(a)に示すように、移動部材30は、第一当接部33が第一ガイド突部15の第一突面15aに沿って摺動することで、左方向へ傾斜するようになる。このとき、移動部材30は、第三当接部35の左側角部35aを支点に傾斜する。そして、移動部材30は、初期状態に戻ろうとするため、第一当接部33が第一ガイド突部15の第一突面15aを乗り越えると、第一当接部33が第二突面15bに接触し、第二突面15bに沿って摺動する。
【0045】
なお、移動部材30の第三当接部35の左右方向における長さは、移動部材30の軸部32によりも短い。つまり、図10に示す初期状態において、第三当接部35と凹部21Cの上面との接触面積を小さくできる。このため、移動部材30は、図11(a)において、傾斜しやすくなる。
【0046】
図11(a)に示す状態から、さらにユーザによりスライド部材20が押圧されると、移動部材30の第一当接部33は、第一ガイド突部15を乗り越える(図11(b))。移動部材30は、初期状態に戻ろうとするため、左側角部35aを支点に回転し、第一当接部33が右方向へ移動する(図11(c))。このとき、移動部材30の第二当接部34の右側面である第二当接面34bが、第二ガイド突部16の左側面である第七突面16aと接触する。これにより、移動部材30は、初期状態に戻ることを阻止される。
【0047】
なお、第二ガイド突部16の第七突面16aは、上下方向に対して傾斜している。この傾斜角度は、移動部材30が初期状態に戻りきる前の傾斜した状態で保持されるように、設定される。
【0048】
図11(c)に示す状態から、ユーザによるスライド部材20への押圧力がなくなると、図12(a)に示すように、移動部材30は、付勢部材40の弾性力によって、第二当接面34bが第二ガイド突部16の第七突面16aに沿って摺動しつつ上方向へ移動し始める。移動部材30が上方向へ移動して、移動部材30の第二当接面34bと、第二ガイド突部16の第七突面16aとが係合しなくなると、移動部材30の第一当接部33が、第一ガイド突部15の底面である第三突面15cに当接する。第三突面15cは、第一ガイド突部15の底面が上方向に凹むように、上方向に向かって傾斜している。移動部材30の第一当接部33は、第一ガイド突部15の第三突面15cに沿って上方向へ移動する。
【0049】
第一ガイド突部15の底部には、上方に凹んだ係止溝15gが形成されている。移動部材30の第一当接部33は、第一ガイド突部15の第三突面15cに沿って上方向へ移動した後、係止溝15gに嵌まった状態となる(図12(b))。これにより、移動部材30は左右方向への傾斜、および、上方向への移動が阻止される。スライド部材20は、ケース部材10に保持された状態となる。
【0050】
この状態において、移動部材30は、本体31の下端部が、スライド部材20の接触部24と接触する。第一当接部33が係止溝15gに嵌まった状態では、移動部材30は、付勢部材40の弾性力により上方向へ移動しようとするが、第一当接部33が第一ガイド突部15に引っ掛かり移動が阻止された状態となる。つまり、移動部材30は、図4において、後ろ側が上方向へ移動するため、全体が前方向へ傾斜しようとする。しかしながら、第一当接部33が接触部24により下方から支持されることになるため、移動部材30は、前方向への傾斜が防止されるようになる。この結果、移動部材30は、傾斜による変形が防止される。
【0051】
図12(b)の状態から、ユーザによりスライド部材20が押圧されると、図13(a)に示すように、移動部材30の第一当接部33は、第一ガイド突部15の係止溝15gから下方向へ移動する。これにより、ケース部材10によるスライド部材20の保持が解除される。このとき、移動部材30は初期状態へと戻る。さらにスライド部材20が押圧されると、移動部材30の第二当接部34の左側面である第一当接面34aが、第二ガイド突部16の左側面である第八突面16bと接触する。移動部材30は、第一当接面34aが第二ガイド突部16の第八突面16bを摺動しながら下方向へ移動する。第一当接面34aが第二ガイド突部16の第八突面16bを摺動することで、第一当接部33が右方向へ移動するため、図13(b)に示すように、移動部材30は、第三当接部35の右側角部35bを支点に右側に傾斜して、第一当接部33が第一ガイド突部15の底面である第五突面15eと上下方向に重なる姿勢となる。
【0052】
第五突面15eは、上方向に向かって傾斜している。図13(b)に示す状態から、ユーザによるスライド部材20への押圧力がなくなると、付勢部材40の弾性力により、第一当接部33が第一ガイド突部15の第五突面15eと接触し、第五突面15eに沿って摺動する。これにより、移動部材30は、右側角部35bを支点にさらに右方向へ傾斜する(図14(a))。
【0053】
移動部材30は、初期状態へ戻ろうとするため、第一当接部33が第一ガイド突部15の第五突面15eを乗り越えると、第一ガイド突部15の右側面である第六突面15fに接触する(図14(b))。第六突面15fは、上下方向に沿って略直線状である。移動部材30は、第一当接部33が第一ガイド突部15の第六突面15fを沿って摺動しつつ、上方向へ移動する。第一当接部33が第一ガイド突部15の第六突面15fを乗り越えると、移動部材30は、図10の初期状態へと戻る。
【0054】
以上のように、本実施形態のプッシュラッチ1は、移動部材30と、第一ガイド突部15および第二ガイド突部16とで、スライド部材20をケース部材10で保持し、また、その保持を解除することができる。第一ガイド突部15および第二ガイド突部16は、前後方向に重なるように設けられているため、ケース部材10の上下方向の長さが長くなることを防止できる。つまり、従来のプッシュラッチに比べて、上下方向を小型に構成することができる。
【0055】
以上のように、移動部材30とケース部材10の第二ガイド突部16とは、ケース部材10の第一ガイド突部15の係止溝15gよりも押出方向側で当接することから、従来のプッシュラッチ(第一ガイド突部の係止溝よりも押込方向側で移動部材とケース部材の第二ガイド突部とが当接する構成のプッシュラッチ)に比べて軸方向に小型に構成することができる。
【0056】
以上のように、移動部材30の第二当接34部は、保持姿勢からスライド部材20がケース部材10に対して押込方向に移動する過程においてケース部材10の第二ガイド突部16に当接することによって移動部材30の配置姿勢を変更させるものであり、第一当接部33よりも押出方向側に配置されてケース部材10の第一ガイド突部15の係止溝15gよりも押出方向側でケース部材10の第二ガイド突部16と当接することから、従来のプッシュラッチに比べて軸方向に小型に構成することができる。
【0057】
また、従来のプッシュラッチではケース部材の第二ガイド突部が軸方向と直交する方向に移動部材よりも大きく構成されていたが、プッシュラッチ1では、第一当接部33よりも押出方向側に配置されてケース部材10の第一ガイド突部15の係止溝15gよりも押出方向側でケース部材10の第二ガイド突部16と当接する構成とすることで、ケース部材10の軸方向と直交する方向において第二ガイド突部16を移動部材30よりも小さく(第二ガイド突部16の幅を狭く)構成することができる。
【0058】
また、従来のプッシュラッチでは、ケース部材の内部空間への各部材の組み付けの関係上、ケース部材に開口が形成されて、当該ケース部材の開口から移動部材の当接部等がから露出していたが、プッシュラッチ1では、第一当接部33よりも押出方向側に配置されてケース部材10の第一ガイド突部15の係止溝15gよりも押出方向側でケース部材10の第二ガイド突部16と当接する構成とすることで、上述のような開口を要さずにケース部材10の内部空間への各部材の組み付けを行うことができることから、移動部材30の当接部(第一当接部33または第二当接部34)がケース部材10から露出することなく構成することができる。
【0059】
移動部材30の第二当接34部は、スライド部材20の配置部21の上面よりも押込方向側に配置される。このため、移動部材30の第二当接34部は、ケース部材10の第一ガイド突部15の係止溝15gよりも押出方向側且つスライド部材20の配置部21の上面よりも押込方向側でケース部材10の第二ガイド突部16と当接することから、従来のプッシュラッチに比べて軸方向に小型に構成することができる。
【0060】
また以上のように、ケース部材10の第一ガイド突部15と第二ガイド突部16とは一体的に構成され、第二ガイド突部16は第一ガイド突部15の押出方向側の面からケース部材10の中心側(ケース部材10の軸方向と直交する方向)に向かってさらに突出する。一体的に構成されることで、個別に構成された場合に比べ、組み立てが容易となる。
【0061】
移動部材30の第一当接部33の外周面は、ケース部材10の第一ガイド突部15に当接することによって、移動部材30の配置姿勢が所望のものとなるような側面視で楕円状に構成される。このように構成されることによって、移動部材30の第一当接部33の外周面が側面視で概ね正円状に構成されるものに比べて小型に構成することができる。
【0062】
以上のように、移動部材30の第三当接部35は、その右部が左上右下に傾斜する直線状に構成され、且つ、その左部が右部に連接され右上左下に傾斜する直線状に構成される略V字状に構成される。そして、プッシュラッチ1が押出姿勢及び保持姿勢のとき、第三当接部35の右部がスライド部材20の配置部21の上面に当接することから、移動部材30の配置姿勢を安定させることができる。また、プッシュラッチ1が押出姿勢から第一押込姿勢に移行する過程において、第三当接部35の左部がスライド部材20の配置部21の上面に当接することから、移動部材30の配置姿勢を安定させることができる。
【0063】
また、第三当接部35は、その右部または左部が直線状に構成されることに代えて、若干凹面状に構成することもできる。このように構成することによって、移動部材30の第一当接部33が揺動しながら第三当接部35がスライド部材20の配置部21の上面に当接する動作をより安定させることができる。
【0064】
プッシュラッチ1では、移動部材30の第一当接部33が第一ガイド突部15に当接していない状態となってからさらにスライド部材20及び移動部材30をケース部材10に対して押込方向に押し込んでだとき、移動部材30の第二当接部34(第二当接部34の第二当接面34bの下部)がケース部材10の第二ガイド突部16(第二ガイド突部16の第八突面16bの上部)に当接し、そして、移動部材30は第二当接部34に当接しながら移動して、第二当接部34の第二当接面34bの左端部がケース部材10の第二ガイド突部16の第七突面16aと第八突面16bとの境界部分が至ることから、プッシュラッチ1の図13(a)から図13(b)への移行をより安定して行おうことができる。
【0065】
プッシュラッチ1では、スライド部材20、移動部材30、付勢部材40、及び連結部50をまとめた状態で開口部11からケース部材10内に収容することができる。このため、プッシュラッチ1の組み上げ作業を比較的容易に行うことができる。
【0066】
また、移動部材30は、第三当接部35の左側角部35aと右側角部35bとの2つを支点に回転する構成となっている。このため、移動部材30を一点で回転させる場合と比べて、移動部材30の第一当接部33が第一ガイド突部15と係合させるために、移動部材30が左右に傾斜させる範囲を小さくすることができる。具体的には、移動部材30の第一当接部33を第一ガイド突部15に係合させるために、移動部材30は、左方向に傾斜させる必要がある(図11(a)参照)。このとき、回転の支点(第三当接部35の左側角部35a)が移動部材30の左寄りとなるため、移動部材30の傾斜角度を小さく抑えることができる。同様に、移動部材30の第一当接部33を、第一ガイド突部15との係合から解除するために、移動部材30は、右方向に傾斜させる必要がある(図14(b)参照)。このとき、回転の支点(第三当接部35の右側角部35b)が移動部材30の右寄りとなるため、移動部材30の傾斜角度を小さく抑えることができる。この結果、プッシュラッチ1が左右方向に大型化することを抑制できる。
【0067】
さらに、スライド部材20は、図4に示すように、後ろ側を付勢部材40で押圧されるため、前後方向にがたつきやすくなる。このため、スライド部材20の一対の案内突起23をケース部材10の一対の案内溝14内で摺動させることで、スライド部材20の前後方向におけるがたつきを抑えることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 プッシュラッチ
10 ケース部材
15 第一ガイド突部
15g 係止溝
16 第二ガイド突部
20 スライド部材
30 移動部材
33 第一当接部
34 第二当接部
35 第三当接部
40 付勢部材
50 連結部
60 取付部材
図1
図2
図3
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図10
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