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特開2024-86682金属製シース継手を備えた電力ケーブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086682
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】金属製シース継手を備えた電力ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/14 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
H01B7/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023211813
(22)【出願日】2023-12-15
(31)【優先権主張番号】22214228
(32)【優先日】2022-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519099829
【氏名又は名称】エヌケーティー エイチブイ ケーブルズ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マットソン, アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヤーダーバリ, ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ウィクストレーム, ジョアキム
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン, ジョニー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエルソン, ポントゥス
【テーマコード(参考)】
5G311
【Fターム(参考)】
5G311FA01
5G311FB02
5G311FC01
5G311FC02
5G311FC03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】鉛の問題を解決または少なくとも軽減する電力ケーブルを提供する。
【解決手段】電力ケーブル1は、導体3と、導体の周囲に配置された内側半導体層7、内側半導体層の周囲に配置された絶縁層9および絶縁層の周囲に配置された外側半導体層11を含む絶縁システム5と、絶縁システムの周囲に配置されるとともに、第1の軸部分、第2の軸部分ならびに第1の軸部分および第2の軸部分のうち少なくとも一方の第1の金属材料とは異なる無鉛金属材料で作製された中間軸部分を含む金属製止水層13とを備え、スズ、真鍮、インジウム、亜鉛、ビスマスまたはテルルのうち少なくとも1つを含む無鉛金属材料が、銅、ステンレス鋼またはアルミニウムを含む第1の金属材料よりも低い降伏強度を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力ケーブル(1)であって、
導体(3)と、
前記導体(3)の周囲に配置された内側半導体層(7)、前記内側半導体層(7)の周囲に配置された絶縁層(9)、および前記絶縁層(9)の周囲に配置された外側半導体層(11)を含む絶縁システム(5)と、
前記絶縁システム(5)の周囲に配置されるとともに、第1の軸部分(13a)、第2の軸部分(13b)、ならびに前記第1の軸部分(13a)および前記第2の軸部分(13b)のうち少なくとも一方の第1の金属材料とは異なる無鉛金属材料で作製された中間軸部分(13c)を含む金属製止水層であって、前記中間軸部分(13c)が前記第1の軸部分(13a)と前記第2の軸部分(13b)との間に配置され、前記中間軸部分(13c)が、その内周または外周全体に沿って前記第1の軸部分(13a)および前記第2の軸部分(13b)のそれぞれと熱接合されて、前記中間軸部分(13c)と前記第1の軸部分(13a)および前記第2の軸部分(13b)のそれぞれとの間に水密接続が得られる、金属製止水層(13)と
を備え、
前記無鉛金属材料が前記第1の金属材料よりも低い降伏強度を有する、電力ケーブル(1)。
【請求項2】
前記無鉛金属材料が、前記第1の金属材料よりも小さなヤング率を有する、請求項1に記載の電力ケーブル(1)。
【請求項3】
前記無鉛金属材料が、前記第1の金属材料よりも低い溶融温度を有する、請求項1または2に記載の電力ケーブル(1)。
【請求項4】
前記無鉛金属材料が、80GPa未満、60GPa未満など、120GPa未満のヤング率を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の電力ケーブル(1)。
【請求項5】
前記無鉛金属材料が、最大250MPa、最大200MPaなど、最大450MPaの降伏強度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の電力ケーブル(1)。
【請求項6】
前記第1の金属材料が、銅、ステンレス鋼、またはアルミニウムを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の電力ケーブル(1)。
【請求項7】
前記無鉛金属材料が、スズ、真鍮、インジウム、亜鉛、ビスマス、またはテルルのうち少なくとも1つを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の電力ケーブル(1)。
【請求項8】
前記中間軸部分(13c)が、はんだによって、その内周または外周全体に沿って前記第1の軸部分(13a)および前記第2の軸部分(13b)のそれぞれと熱接合される、請求項1~7のいずれか一項に記載の電力ケーブル(1)。
【請求項9】
10℃の温度の海水を含むガルバニ電池内の前記第1の金属材料および前記無鉛金属材料が、飽和カロメル電極(SCE)に対する電位を有し、前記第1の金属材料および前記無鉛金属材料の電位差の絶対値が、最大250mVなど、最大500mVである、請求項1~8のいずれか一項に記載の電力ケーブル(1)。
【請求項10】
前記第1の金属材料および前記無鉛金属材料が、前記ガルバニ電池内で飽和カロメル電極(SCE)に対する電位の重複範囲を有する、請求項9に記載の電力ケーブル(1)。
【請求項11】
前記導体(3)が導体継手を含み、前記中間軸部分(13c)が前記導体継手の周囲に配置される、請求項1~10のいずれか一項に記載の電力ケーブル(1)。
【請求項12】
前記絶縁システム(5)が加硫絶縁システム継手を含み、前記金属製止水層(13)の中間軸部分(13c)が加硫絶縁システム継手の周囲に配置される、請求項1~11のいずれか一項に記載の電力ケーブル(1)。
【請求項13】
前記電力ケーブル(1)が海底電力ケーブルである、請求項1~12のいずれか一項に記載の電力ケーブル(1)。
【請求項14】
電力ケーブル(1)を製造する方法であって、
a)導体(3)と、前記導体(3)の周囲に配置された内側半導体層(7)、前記内側半導体層(7)の周囲に配置された絶縁層(9)、および前記絶縁層(9)の周囲に配置された外側半導体層(11)を含む絶縁システム(5)と、前記絶縁システム(5)の周囲に配置されるとともに、第1の軸部分(13a)および第2の軸部分(13b)を含む金属製止水層(13)とを設けることであって、前記絶縁システム(5)が前記第1の軸部分(13a)と前記第2の軸部分(13b)との間に露出部分(25)を有する、設けること、
b)前記露出部分(25)の周囲に金属管(27)を設けること、ならびに
d)前記金属管(27)をその内周または外周全体に沿って前記第1の軸部分(13a)および前記第2の軸部分(13b)のそれぞれと熱接合して前記金属管(27)と前記第1の軸部分(13a)および前記第2の軸部分(13b)のそれぞれとの間に水密接続を得ることであって、前記金属管(27)が前記第1の軸部分(13a)と前記第2の軸部分(13b)との間に中間軸部分(13c)を形成する、得ること
を含み、
前記金属管(27)が、前記第1の軸部分(13a)および前記第2の軸部分(13b)のうち少なくとも一方の第1の金属材料とは異なる無鉛金属材料で作製され、前記無鉛金属材料が前記第1の金属材料よりも低い降伏強度を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して金属シースを備えた電力ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
海底電力ケーブルなどの電力ケーブルは、絶縁システムに対する放射状の防水を提供するように配置された金属層を有することが多い。
【0003】
この金属層はこれまで鉛で作製されてきたが、将来的には無鉛材料が使用されることが予想される。
【0004】
現代の電力ケーブルの鉛に代わる材料は、鉛よりも取扱いが困難であるため、製造プロセスに課題が生じる。
【発明の概要】
【0005】
上記に鑑みて、本開示の目的は、先行技術の問題を解決または少なくとも軽減する電力ケーブルを提供することである。
【0006】
したがって、第1の態様によれば、電力ケーブルであって、導体と、導体の周囲に配置された内側半導体層、内側半導体層の周囲に配置された絶縁層、および絶縁層の周囲に配置された外側半導体層を含む絶縁システムと、絶縁システムの周囲に配置されるとともに、第1の軸部分、第2の軸部分、ならびに第1の軸部分および第2の軸部分のうち少なくとも一方の第1の金属材料とは異なる無鉛金属材料で作製された中間軸部分を含む金属製止水層であって、中間軸部分が第1の軸部分と第2の軸部分との間に配置され、中間軸部分が、その内周または外周全体に沿って第1の軸部分および第2の軸部分のそれぞれと熱接合されて、中間軸部分と第1の軸部分および第2の軸部分のそれぞれとの間に水密接続が得られる、金属製止水層とを備え、無鉛金属材料が第1の金属材料よりも低い降伏強度を有する、電力ケーブルが提供される。
【0007】
無鉛金属材料は、降伏強度が低いため、第1の金属材料よりも柔らかい材料である。これにより無鉛金属材料は、金属製止水層の第1の軸部分と第2の軸部分との間で金属製止水層を復元させる場合、さらに可鍛性とされる。
【0008】
例えば、金属製止水層が復元されている場合、第1の軸部分と第2の軸部分とを軸方向に架橋する絶縁システムの周囲を摺動する無鉛金属材料製の金属管を、第1の軸部分および第2の軸部分に接触するような正確な寸法に圧延することができる。熱接合の後、金属管は中間軸部分を形成する。
【0009】
金属製止水層の復元は、例えば、導体継手が作製されたとき、または絶縁システムが生産プロセス中に損傷を受けて修理を必要とする場合に、必要とされ得る。
【0010】
第1の金属材料は、無鉛の第1の金属材料であってもよい。
【0011】
電力ケーブルは、高電圧または中電圧の電力ケーブルであってもよい。
【0012】
電力ケーブルは、単芯または多芯の電力ケーブルであってもよい。
【0013】
電力ケーブルは、AC電力ケーブルまたはDC電力ケーブルであってもよい。
【0014】
一例によれば、第1の軸部分および第2の軸部分は、第1の金属材料で作製され得る。
【0015】
一例によれば、第1の軸部分および第2の軸部分のうち一方のみが、第1の金属材料で作製される。第1の軸部分および第2の軸部分のうち他方は、第2の金属材料で作製され得る。
【0016】
一実施形態によれば、無鉛金属材料は、第1の金属材料よりも小さなヤング率を有する。
【0017】
一実施形態によれば、無鉛金属材料は、第1の金属材料よりも低い溶融温度を有する。
【0018】
一実施形態によれば、無鉛金属材料は、80GPa未満、60GPa未満など120GPa未満のヤング率を有する。
【0019】
一実施形態によれば、無鉛金属材料は、最大250MPa、最大200MPaなど最大450MPaの降伏強度を有する。
【0020】
一実施形態によれば、第1の金属材料は、銅、ステンレス鋼、またはアルミニウムを含む。
【0021】
一実施形態によれば、第1の金属材料とは異なる第2の金属材料は、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、または鉛のうち1つを含む。
【0022】
一実施形態によれば、無鉛金属材料は、スズ、真鍮、インジウム、亜鉛、ビスマス、またはテルルのうち少なくとも1つを含む。
【0023】
一実施形態によれば、中間軸部分は、はんだによって、その内周または外周全体に沿って第1の軸部分および第2の軸部分のそれぞれと熱接合される。
【0024】
一実施形態によれば、10℃の温度の海水を含むガルバニ電池内の第1の金属材料および無鉛金属材料は、飽和カロメル電極(SCE)に対する電位を有し、第1の金属材料および無鉛金属材料の電位差の絶対値は、最大250mVなど最大500mVである。
【0025】
これにより、金属製止水層の第1の金属材料または無鉛金属材料のうちいずれかのガルバニック腐食が減少する。ガルバニ電池内で第1の金属材料および無鉛金属材料の電位が近くなるほど、ガルバニック腐食の発生は少なくなる。
【0026】
一実施形態によれば、第1の金属材料および無鉛金属材料は、ガルバニ電池内で飽和カロメル電極(SCE)に対する電位の重複範囲を有する。
【0027】
一実施形態によれば、導体は導体継手を含んでおり、中間軸部分は導体継手の周囲に配置される。
【0028】
一実施形態によれば、絶縁システムは加硫絶縁システム継手を含んでおり、金属製止水層の中間軸部分は加硫絶縁システム継手の周囲に配置される。
【0029】
一実施形態によれば、電力ケーブルは海底電力ケーブルである。
【0030】
第2の態様によれば、電力ケーブルを製造する方法であって、a)導体と、導体の周囲に配置された内側半導体層、内側半導体層の周囲に配置された絶縁層、および絶縁層の周囲に配置された外側半導体層を含む絶縁システムと、絶縁システムの周囲に配置されるとともに、第1の軸部分および第2の軸部分を含む金属製止水層とを設けることであって、絶縁システムが第1の軸部分と第2の軸部分との間に露出部分を有する、設けること、b)露出部分の周囲に金属管を設けること、c)任意選択で金属管の縮径を実行すること、ならびにd)金属管をその内周または外周全体に沿って第1の軸部分および第2の軸部分のそれぞれと熱接合して金属管と第1の軸部分および第2の軸部分のそれぞれとの間に水密接続を得ることであって、金属管が第1の軸部分と第2の軸部分との間に中間軸部分を形成する、得ることを含み、金属管が、第1の軸部分および第2の軸部分のうち少なくとも一方の第1の金属材料とは異なる無鉛金属材料で作製されており、無鉛金属材料が第1の金属材料よりも低い降伏強度を有する、方法が提供される。
【0031】
概して、特許請求の範囲で使用されるすべての用語は、本明細書で特に明記されない限り、当該技術分野におけるそれらの通常の意味に従って解釈されたい。「要素、装置、成分、手段(a/an/the element,apparatus,component,means)」などに対するすべての言及は、特に明記されない限り、その要素、装置、成分、手段などの少なくとも1つの例を指すものとして広く解釈されたい。
【0032】
ここで、添付の図面を参照しつつ、本発明の概念の具体的な実施形態を例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】電力ケーブルの一例の断面図を概略的に示す図である。
図2】金属製遮水バリアが露出した電力ケーブルの側面図である。
図3A】電力ケーブルを製造する段階の側面図を示す図である。
図3B】電力ケーブルを製造する別の段階の側面図を示す図である。
図3C】電力ケーブルを製造する更に別の段階の側面図を示す図である。
図4】電力ケーブルを製造する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
ここで、例示的な実施形態が示される添付の図面を参照しつつ、以下に本発明の概念をより詳細に説明する。しかし、本発明の概念は多くの異なる形態で具体化され得るが、本明細書に明記される実施形態に限定されるものと解釈されるべきではなく、むしろこれらの実施形態は、本開示を徹底的かつ完全なものにして本発明の概念の範囲を当業者に詳細に伝えるように、例として提供される。本明細書全体において、同様の符号は同様の要素を指す。
【0035】
図1は、電力ケーブル1の一例の断面図を示す。例示的な電力ケーブル1は単芯電力ケーブルを表しているが、電力ケーブル1は代替的に多芯電力ケーブルとすることもできる。
【0036】
電力ケーブル1は、AC電力ケーブルまたはDC電力ケーブルであってもよい。
【0037】
電力ケーブル1は、海底電力ケーブルまたは地下ケーブルであってもよい。
【0038】
電力ケーブル1は、導体3と、導体3の周囲に配置された絶縁システム5とを備える。
【0039】
絶縁システム5は、導体3の周囲に配置された内側半導体層7と、内側半導体層7の周囲に配置された絶縁層9と、絶縁層9の周囲に配置された外側半導体層11とを備える。
【0040】
絶縁システム5は、油などの絶縁流体を含浸させた押出形成絶縁システムまたは紙系絶縁システムであってもよい。
【0041】
絶縁システム5は、押出形成絶縁システムである場合、熱硬化性ポリマー、例えば架橋ポリエチレン(XLPE)、ポリプロピレンやポリエチレンなどの熱可塑性ポリマー、もしくはエチレンプロピレンゴム(EPR)、またはエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)といった、ポリマー材料を含む。
【0042】
電力ケーブル1はまた、金属製止水層13を備える。金属製止水層13は、絶縁システム5の周囲に配置される。このため金属製止水層13は、外側半導体層11の周囲に配置される。
【0043】
金属製止水層13は、無鉛である。
【0044】
金属製止水層13は、長手方向、すなわち電力ケーブル1の長手方向に溶接され得る。
【0045】
電力ケーブル1は、金属製止水層13の周囲に配置されたポリマー層15を含み得る。ポリマー層15は、金属製止水層13の上に押出成形され得る。ポリマー層15は、一例によれば、ホットメルト接着剤などの接着剤によって金属製止水層13の外面に結合され得る。
【0046】
電力ケーブル1は、1つまたは複数の層においてポリマー層15の周囲に螺旋状に置かれた複数の装甲要素17を備えた装甲層を備え得る。
【0047】
電力ケーブル1は、ポリマー材料で構成された外側シースであり得る外層19、または複数の螺旋状に巻き付けられたポリマー要素で構成された外側サービングを有し得る。
【0048】
図2は、金属製止水層13が露出した電力ケーブル1の側面図を示す。このため、金属製止水層13の構造を示すために、ポリマー層15、装甲層、および外層19などのすべての外層が取り除かれている。
【0049】
金属製止水層13は、第1の軸部分13a、第2の軸部分13b、および第1の軸部分13aと第2の軸部分13bとの間で軸方向に配置された中間軸部分13cを備える。
【0050】
金属製止水層13の3つの部分13a~13cは、いずれも無鉛である。このため、金属製止水層13は、第1の軸部分13aに沿って、中間軸部分13cに沿って、かつ第2の軸部分13bに沿って無鉛である。
【0051】
第1の軸部分13aおよび第2の軸部分13cは、第1の金属材料で作製される。代替的に、第1の軸部分13aおよび第2の軸部分13bのうち一方のみが、第1の金属材料で作製される。第1の軸部分13aおよび第2の軸部分13bのうち他方は、第1の金属材料とは異なる第2の材料で作製され得る。中間軸部分13bは、第1の金属材料とは異なる無鉛金属材料で作製される。
【0052】
無鉛金属材料は、第1の金属材料よりも低い降伏強度を有する。
【0053】
無鉛金属材料は、最大250MPa、最大200MPa、最大180MPa、最大100MPa未満など、最大450MPaの降伏強度を有し得る。無鉛金属材料の降伏強度は、例えば最大70MPaまたは最大60MPaであってもよい。
【0054】
無鉛金属材料は、第1の金属材料よりも小さなヤング率を有し得る。このため、無鉛金属材料の応力歪み曲線は、第1の金属材料よりも緩やかな、線状弾性領域の勾配を有する。
【0055】
無鉛金属材料は、80GPa未満、60GPa未満など、120GPa未満のヤング率を有し得る。
【0056】
無鉛金属材料は、第1の金属材料よりも低い溶融温度を有し得る。第1の金属材料は、例えば600℃超など500℃超の溶融温度を有し得、無鉛金属材料は、例えば450℃未満、300℃未満など、500℃未満の溶融温度を有し得る。
【0057】
第1の金属材料は、例えば無酸素銅などの銅、銅合金、ステンレス鋼、またはアルミニウムであってもよい。
【0058】
第2の金属材料は、第1の金属材料とは異なるものであり、例えば無酸素銅などの銅、銅合金、ステンレス鋼、アルミニウム、または鉛であってもよい。
【0059】
ステンレス鋼は、ASTM A240/A240M-22bにより定められる316L型などのオーステナイト系ステンレス鋼型、またはEN10088-1:2005によるその等価物であってもよい。
【0060】
無鉛金属材料は、スズ、真鍮、インジウム、亜鉛、ビスマス、またはテルルのうち少なくとも1つを含む。無鉛金属材料は、一例によれば、スズ、真鍮、インジウム、亜鉛、ビスマス、またはテルルのうち少なくとも1つを含んだ合金であってもよい。
【0061】
10℃の温度の海水を含むガルバニ電池内で、第1の金属材料および無鉛金属材料のそれぞれは、飽和カロメル電極(SCE:Saturated Calomel Electrode)に対する電位を有し得、第1の金属材料および無鉛金属材料の電位差の絶対値は、最大250mVなど、最大500mVである。このため、第1の金属材料と無鉛金属材料は、好ましくはガルバニ列において互いに近接する。
【0062】
第1の金属材料および無鉛金属材料は、ガルバニ電池内でSCEに対する電位の重複範囲を有し得る。
【0063】
第2の金属材料を含む例では、10℃の温度の海水を含むガルバニ電池中、第2の金属材料および無鉛金属材料のそれぞれは、飽和カロメル電極(SCE)に対する電位を有し得、第2の金属材料および無鉛金属材料の電位差の絶対値は、最大250mVなど、最大500mVである。このため、第2の金属材料と無鉛金属材料は、好ましくはガルバニ列において互いに近接する。第2の金属材料および無鉛金属材料は、ガルバニ電池内でSCEに対する電位の重複範囲を有する。
【0064】
中間軸部分13cは、その内周または外周全体に沿って第1の軸部分13aおよび第2の軸部分13bのそれぞれ1つと熱接合される。金属製止水層13が軸方向に連続する放射状の水密バリアを形成するように、中間軸部分13cは熱接合によって第1の軸部分13aおよび第2の軸部分13bに水密封止される。
【0065】
中間軸部分13cは、例えばはんだ21によって第1の軸部分13aおよび第2の軸部分13bに熱接合され得る。はんだ21は、好ましくは無鉛金属材料と同様の特性および構成要素を有する。
【0066】
中間軸部分13cは、典型的に、2つのケーブル長のそれぞれの導体を接合することによって形成された導体継手上に配置され、これにより連続導体3が形成される。この場合、絶縁システム5および金属製止水層13は、導体継手を横断して軸方向に延在する部分にわたって復元される。図3Aに示される絶縁システム5の復元部分23は、加硫絶縁システム継手であってもよい。中間軸部分13cは、絶縁システム5の復元部分23の周囲に配置される。
【0067】
中間軸部分13cは、代替的に絶縁システム5の復元部分23にわたって配置することができ、復元部分23の下に導体継手は配置されない。このことは、例えば絶縁システムが損傷を受け復元された場合に該当し得る。
【0068】
ポリマー層15は、中間軸部分13cにわたって第1の軸部分13aから第2の軸部分13bまで延在し得る。ポリマー層15は、例えば、中間軸部分13cが第1の軸部分13aおよび第2の軸部分13bと熱接合された後に、金属製止水層13の上に押出成形され得る。代替的に、ポリマー層15の、金属製止水層13の中間軸部分13cにわたって延在する部分は、収縮チューブまたは自己融着テープによって形成され得る。
【0069】
ここで、図3A図3Cおよび図4を参照しつつ、電力ケーブル1などの電力ケーブルを製造する方法について説明する。
【0070】
工程a)では、導体3と、導体3の周囲に配置された絶縁システム5と、絶縁システム5の周囲に配置された金属製止水層13とを設ける。工程a)で絶縁システム5は、第1の軸部分13aと第2の軸部分13bとの間に露出部分25を有する。露出部分25には、いずれの金属製止水層も含まれていない。露出部分25は、絶縁システム5の復元部分23を含む。
【0071】
工程b)では、露出部分25の周囲に金属管27を設ける。
【0072】
金属管27は、無鉛金属材料で作製される。
【0073】
金属管27は、図3Aに示されるように先ず露出部分25の側部に止められて、図3Bに示されるように絶縁システム5の復元部分23の完成後に露出部分25の上を摺動させられることによって露出部分25の周囲に設けられ得る。代替的に、金属管27は、露出部分25の周囲に巻き付けられて長手方向に溶接またははんだ付けされた金属シースから形成され得る。この場合、金属管27を軸方向に適所で摺動させる必要はない。
【0074】
工程b)の最中、金属管27は、第1の軸部分13aおよび第2の軸部分13bにおいて金属製止水層13の外径よりも大きな内径を有する。これにより、工程b)を含め工程b)まで金属管27の取扱いが容易になる。
【0075】
工程b)の後、金属管27は、露出部分25全体にわたって軸方向に延在し、第1の軸部分13aおよび第2の軸部分13bを架橋する。
【0076】
工程b)に次いで工程c)では、金属管27の縮径が行われる。工程c)は、1つもしくは複数のローラおよび/またはダイによって行われ得る。図3Cに示されるように、金属管27の直径は、金属管27の内面が第1の軸部分13aおよび第2の軸部分13bのそれぞれの外面に直接接触するように縮小され得る。露出部分25の周囲に巻き付けられた後に金属管27が長手方向に溶接またははんだ付けされた場合、必ずしも工程c)を行わなくてもよい。
【0077】
工程d)では、金属管27が、その内周または外周全体に沿って第1の軸部分13aおよび第2の軸部分13bのそれぞれと熱接合されることで、金属管27と第1の軸部分13aおよび第2の軸部分13bのそれぞれとの間に水密接続が得られる。金属管27は、第1の軸部分13aと第2の軸部分13bとの間に中間軸部分13cを形成する。
【0078】
熱接合は、例えばはんだ付けによって行われてもよい。
【0079】
本発明の概念が、主にいくつかの例を参照しつつ上述されてきた。しかし、当業者によって容易に理解されるように、上記で開示されたもの以外の他の実施形態も、添付の特許請求の範囲によって定められるように本発明の概念の範囲内で等しく可能である。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
【外国語明細書】