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特開2024-86685アンテナのポインティングを制御する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086685
(43)【公開日】2024-06-27
(54)【発明の名称】アンテナのポインティングを制御する方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 3/42 20060101AFI20240620BHJP
   G01S 3/20 20060101ALI20240620BHJP
   H01Q 19/19 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
G01S3/42 D
G01S3/20
H01Q19/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023211859
(22)【出願日】2023-12-15
(31)【優先権主張番号】2213422
(32)【優先日】2022-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】523395915
【氏名又は名称】タレス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デランドリア-コルネ,ブリス
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ,ジョフレ
【テーマコード(参考)】
5J020
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アンテナのポインティングを制御する方法を提供する。
【解決手段】プラットフォーム上に位置するアンテナのポインティングを、基準信号を発する通信デバイスの方向に制御するための方法であって、
S1)アンテナのボアサイトの方位角及び仰角における初期ポインティング位置を取得するために、プラットフォーム及び通信デバイスのためのアルマナックデータを使用してアンテナの第1のポインティングモードを適用するステップと、
S2)基準信号の受信電力を最大にする方向にアンテナを向けるために、初期位置の付近でアンテナの少なくとも1回のスキャンを含む、アンテナの第2のポインティングモードを適用するステップと、
S3)最大電力に基づいてアンテナのポインティングを行うために少なくとも1つの三角測量操作が実施される、アンテナの第3のポインティングモードを適用するステップと、を含む方法に関する。
【選択図】図6L
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットフォーム(2)上に位置するアンテナ(1)のポインティングを、基準信号を発する通信デバイス(4)の方向に制御するための方法であって、
S1)前記アンテナのボアサイトの方位角及び仰角における初期ポインティング位置を取得するために、前記プラットフォーム(2)及び前記通信デバイス(4)のためのアルマナックデータを使用して前記アンテナ(1)の第1のポインティングモードを適用するステップと、
S2)前記基準信号の受信電力を最大にする方向に前記アンテナ(1)を向けるために、前記初期位置の付近で前記アンテナ(1)の少なくとも1回のスキャンを含む、前記アンテナ(1)の第2のポインティングモードを適用するステップと、
S3)前記最大電力に基づいて前記アンテナ(1)のポインティングを行うために少なくとも1つの三角測量操作が実施される、前記アンテナ(1)の第3のポインティングモードを適用するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記アンテナ(1)の前記第2のポインティングモードが、第1の開き角を有する前記アンテナ(1)の第1のコニカルスキャンと、第2の開き角を有する前記アンテナ(1)の第2のコニカルスキャンと、を含み、前記第1の開き角が、アンテナ放射パターンの二次ローブの角度範囲の関数として決定され、前記第2の開き角が、前記アンテナ放射パターンのメインローブの角度範囲の関数として決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アンテナ(1)の前記第2のポインティングモードが、方位角及び仰角における少なくとも1つの移動を含み、方位角及び仰角における各移動に対して、最大電力の探索が実行される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アンテナ(1)が、前記アンテナ(1)の前記少なくとも1回のスキャンと前記三角測量操作とが行われる角度空間において、単調なアンテナ放射パターンを有する、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記単調なアンテナ放射パターンが、前記アンテナ(1)のソースの位相中心と反射器(13)/副反射器(14)の組み合わせの焦点との間の位相シフトによって得られる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記基準信号が、前記アンテナの前記第2のポインティングモードにおける純粋な搬送波である、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第3のポインティングモードが、前記アンテナ(1)と前記通信デバイス(4)との間の距離を閾値と比較するステップを含み、
前記距離が前記閾値より大きければ、新たな三角測量操作が実施され、
前記距離が前記閾値より小さければ、前記アンテナ(1)の前記ポインティングが、方位角及び仰角における少なくとも1つの移動によって最大電力の探索を実行することによって実施される、請求項1~6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記三角測量操作が、
一方向への「三角測量」インクリメントの半分の方位角移動、前記受信電力の測定、前記受信電力が前記方位角移動の前に測定された電力より低い場合は、反対方向への前記インクリメントの方位角移動、又は前記受信電力が前記移動の前に測定された前記電力より高い場合は、同じ方向への前記インクリメントの半分の方位角移動、
一方向への「三角測量」インクリメントの半分の仰角における移動、前記受信電力の測定、前記受信電力が前記仰角における移動の前に測定された電力より低い場合は、反対方向への前記インクリメントの仰角における移動、又は前記受信電力が前記移動の前に測定された前記電力より高い場合は、前記同じ方向への前記インクリメントの半分の仰角における移動、
を含む、請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記三角測量インクリメントが、標的とする最適な方向の計算に求められる精度と、前記三角測量操作に関連するずれの振幅の最小化との間の妥協から生じる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2のポインティングモードに続いて、前記アンテナ(1)と前記通信デバイス(4)との間に相対的移動がある場合、
前記三角測量操作が、前記ターゲット方向に対する前記アンテナの推定されたずれが性能閾値を超えたときにトリガされ、先行するポインティングモードにおいて、又は現在のポインティングモードで行われたアンテナ位置の最新の補正中にロックオンされたアンテナ位置に対応する初期三角測量位置(P17)から開始され、前記初期三角測量位置(P17)におけるずれ(Δα1)が、前記アンテナ放射パターンから、及び前記先行するポインティングモードで観測された最大電力(P20)と前記初期三角測量位置(P17)の点で測定された電力との間で測定された電力差から推定され、前記ターゲット点(P20)が、前記初期三角測量位置(P17)を中心とし、前記ずれ(Δα1)に対応した半径を有する円上に位置し、
前記方位角移動に続いて、前記ターゲット点(P20)が、第2の円(18)上に位置し、前記第2の円(18)が、前記三角測量インクリメントによって決定された中心(P18)を有し、並びに、前記アンテナ放射パターンから、及び前記先行するポインティングモードで観測された前記最大電力と前記第2の円(18)の前記中心(P18)で測定された電力との間の測定された電力差から、前記第2の円(18)の前記中心(P18)において推定されたずれに対応する既知の半径(Δα2)を有し、
前記仰角における移動に続いて、前記ターゲット点(P20)が、第3の円(19)上に位置し、前記第3の円(19)が、前記三角測量インクリメントによって決定された中心(P19)を有し、並びに、前記アンテナ放射パターンから、及び前記先行するポインティングモードで観測された前記最大電力と前記第3の円(19)の前記中心(P19)で測定された電力との間の測定された電力差から、前記第3の円(19)の前記中心(P19)において推定されたずれに対応する第3の既知の半径(Δα3)を有し、
三角測量問題の解が、前記第1の円(17)、前記第2の円(18)、及び前記第3の円(19)の前記交点(P20)によって計算され、その後、前記ボアサイトが前記交点(P20)の方向に照準を合わせる、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のポインティングモードが、前記初期位置に向けて照準を合わせるコマンドを含み、前記コマンドが、方位角及び仰角における複数の角移動を含み、各角移動が、所定の持続時間を有する、請求項1~10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記通信デバイス(4)が天体(5)上に配置され、前記プラットフォーム(2)が前記天体(5)を周回する軌道上にある、請求項1~11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記プラットフォーム(2)と前記通信デバイス(4)との間の相対的移動にリンクしたドリフトが、前記第3のポインティングモードにおいて、前記プラットフォーム(2)及び前記通信デバイス(4)のための前記アルマナックデータを用いて補償される、請求項1~12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
プラットフォーム上に位置し、基準信号を発する通信デバイスと通信するように構成されたアンテナのポインティングを制御するためのシステムであって、
前記アンテナのボアサイトの方位角及び仰角における初期位置を取得するために、前記プラットフォーム及び前記通信デバイスのためのアルマナックデータを使用して前記アンテナの第1のポインティングモードを適用することと、
前記基準信号の受信電力を最大にする方向に前記アンテナを向けるために、前記初期位置の付近で前記アンテナの少なくとも1回のスキャンを含む、前記アンテナの第2のポインティングモードを適用することと、
前記最大電力に基づいて前記アンテナのポインティングを行うために少なくとも1つの三角測量操作が実施される、前記アンテナの第3のポインティングモードを適用することと、
を行うように構成された、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラットフォーム上に位置する2つのポインティング軸を有するアンテナのポインティングを、基準信号を発する通信デバイスの方向に制御するための方法及びシステムに関する。本発明は、電気通信の分野、より具体的には、宇宙電気通信の分野において適用可能である。
【背景技術】
【0002】
シスルナ軌道上の軌道ステーションの開発プロジェクトは、宇宙電気通信の面で新たな課題を提起している。このタイプの軌道では、通信距離が非常に大きくなることがある。先進的な月面ステーションのゲートウェイと、月を周回する軌道にある、又は月上の固定若しくは移動システムを備えたシステムとの間の距離は、現在進行中のミッションによっては70,000kmに達する場合があり、これは、地球と静止軌道上の衛星との間の距離の約2倍に相当する。
【0003】
別の問題は、現在開発中の軌道ステーションでは、AOCS(姿勢軌道制御系(Attitude and Orbit Control System))のセンサ及び他の機器が、先進的な月面ステーションの通信システムから数メートル離れた場所に位置するという事実から生じ、これは、船内の振動によって、及び温度差による熱弾性変形によって増強される、データフレームのコヒーレンスの問題を提起し得る。
【0004】
しかしながら、指向性アンテナは、通信システムが送信信号に対して十分なエネルギーを収集することを可能にするために、正しく配向されなければならない。
【0005】
ターゲットシステムのアルマナックの知識のみに基づいたオープンループポインティングシステムでは、必要とされるエネルギーレベルで非常に高いレートでデータを送信するために十分な精度を得ることができない。
【0006】
このポインティングを最適化するためのクローズドループシステムは存在するが、それらは、多くの場合、いくつかのRFソースを有し、これらのソース間の利得の差によって、アンテナが向けられるべき方向を検出することが可能なシステムに基づいている。クローズドループフィードバック制御のシステムは、公称通信システムに対していくつかのRFソースを並列に使用する。いくつかのRFソースと信号検出のためのいくつかの電子システムとを含むこれらのシステムは、地球に設置された地上局によく適合する。公称通信チェーンに加えて、これらのシステムは、正確なフィードバック制御を可能にする追加の外部システムを必要とする。
【0007】
しかしながら、オンボード用途(例えば、ローバに向けた、月上に配備されたステーションに向けた、又は月周回衛星に向けた軌道ステーションにおけるオンボードアンテナのポインティング)では、質量、コスト、及び収容容積の制約が非常に厳しい。したがって、マルチソースシステムは、コストがかかり過ぎ、オンボード用途における実装は、想定が困難である。
【0008】
既知の解決策は、スキャンによって公称ポインティング経路の高速検出を可能にする位相制御アレイアンテナを使用することである。位相制御アレイに基づくアンテナは、利得が非常に低減されている。しかしながら、対象とする用途において、システムは、2つの測定時間の間に相対的な移動がある場合があり、これは、位相制御アレイアンテナが空間の広い領域をスキャンするように構成されることを必要とする。低減された利得で広いエリアをスキャンする動作は、前述の用途では満足のいくものではない。
【0009】
したがって、十分に高いレートを提供し、ポインティングを実施するために追加のアンテナシステムを必要としない、アンテナのポインティングを制御するための方法に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明の主題の1つは、プラットフォーム上に位置するアンテナのポインティングを、基準信号を発する通信デバイスの方向に制御するための方法であって、
S1)アンテナのボアサイトの方位角及び仰角における初期ポインティング位置を取得するために、プラットフォーム及び通信デバイスのためのアルマナックデータを使用してアンテナの第1のポインティングモードを適用するステップと、
S2)基準信号の受信電力を最大にする方向にアンテナを向けるために、初期位置の付近でアンテナの少なくとも1回のスキャンを含む、アンテナの第2のポインティングモードを適用するステップと、
S3)最大電力に基づいてアンテナのポインティングを行うために少なくとも1つの三角測量操作が実施される、アンテナの第3のポインティングモードを適用するステップと、
を含む方法である。
【0011】
有利には、アンテナの第2のポインティングモードは、第1の開き角を有するアンテナの第1のコニカルスキャンと、第2の開き角を有するアンテナの第2のコニカルスキャンと、を含み、第1の開き角は、アンテナ放射パターンの二次ローブの角度範囲の関数として決定され、第2の開き角は、アンテナ放射パターンのメインローブの角度範囲の関数として決定される。
【0012】
有利には、アンテナの第2のポインティングモードは、方位角及び仰角における少なくとも1つの移動を含み、方位角及び仰角における各移動に対して、最大電力の探索が実行される。
【0013】
有利には、アンテナは、アンテナの少なくとも1回のスキャンと三角測量操作とが行われる角度空間において、単調なアンテナ放射パターンを有する。
【0014】
有利には、単調なアンテナ放射パターンは、アンテナのソースの位相中心と反射器/副反射器の組み合わせの焦点との間の位相シフトによって得られる。
【0015】
有利には、基準信号は、アンテナの第2のポインティングモードにおける純粋な搬送波である。
【0016】
有利には、第3のポインティングモードは、アンテナと通信デバイスとの間の距離を閾値と比較するステップを含み、
距離が閾値より大きければ、新たな三角測量操作が実施され、
距離が閾値より小さければ、アンテナのポインティングは、方位角及び仰角における少なくとも1つの移動によって最大電力の探索を実行することによって実施される。
【0017】
有利には、三角測量操作は、
一方向への「三角測量」インクリメントの半分の方位角移動、受信電力の測定、受信電力が方位角移動の前に測定された電力より低い場合は、反対方向へのインクリメントの方位角移動、又は受信電力が移動の前に測定された電力より高い場合は、同じ方向へのインクリメントの半分の方位角移動、
一方向への「三角測量」インクリメントの半分の仰角における移動、受信電力の測定、受信電力が仰角における移動の前に測定された電力より低い場合は、反対方向へのインクリメントの仰角における移動、又は受信電力が移動の前に測定された電力より高い場合は、同じ方向へのインクリメントの半分の仰角における移動、
を含む。
【0018】
有利には、三角測量インクリメントは、標的とする最適な方向の計算に求められる精度と、三角測量操作に関連するずれの振幅の最小化との間の妥協から生じる。
【0019】
有利には、第1のポインティングモードは、初期位置に向けて照準を合わせるコマンドを含み、コマンドは、方位角及び仰角における複数の角移動を含み、各角移動が、所定の持続時間を有する。
【0020】
有利には、通信デバイスは、天体上に配置され、プラットフォームは、天体を周回する軌道上にある。
【0021】
有利には、プラットフォームと通信デバイスとの間の相対的移動にリンクしたドリフトは、第3のポインティングモードにおいて、プラットフォーム及び通信デバイスのためのアルマナックデータを用いて補償される。
【0022】
本発明はまた、プラットフォーム上に位置し、基準信号を発する通信デバイスと通信するように構成されたアンテナのポインティングを制御するためのシステムであって、
アンテナのボアサイトの方位角及び仰角における初期位置を取得するために、プラットフォーム及び通信デバイスのためのアルマナックデータを使用してアンテナの第1のポインティングモードを適用することと、
基準信号の受信電力を最大にする方向にアンテナを向けるために、初期位置の付近でアンテナの少なくとも1回のスキャンを含む、アンテナの第2のポインティングモードを適用することと、
最大電力に基づいてアンテナのポインティングを行うために少なくとも1つの三角測量操作が実施される、アンテナの第3のポインティングモードを適用することと、
を行うように構成された、システムに関する。
【0023】
本発明の他の特徴、詳細、及び利点は、例として提供される添付の図面を参照して提示される記載を読めば明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】月面システムと通信する軌道ステーションを含む宇宙環境の一例を示す。
図2】アンテナのポインティングに使用される基準座標系の配向の一例を示す。
図3】第1のポインティングモードのタイミングチャートを示す。
図4】カバレージ領域内の準単調アンテナ放射パターンの一例を示す。
図5】第2のポインティングモードのタイミングチャートを示す。
図6A】第2のポインティングモードについてXY平面内のポインティングの制御に関する図を示す。
図6B】第2のポインティングモードについてXY平面内のポインティングの制御に関する図を示す。
図6C】第2のポインティングモードについてXY平面内のポインティングの制御に関する図を示す。
図6D】第2のポインティングモードについてXY平面内のポインティングの制御に関する図を示す。
図6E】第2のポインティングモードについてXY平面内のポインティングの制御に関する図を示す。
図6F】第2のポインティングモードについてXY平面内のポインティングの制御に関する図を示す。
図6G】第2のポインティングモードについてXY平面内のポインティングの制御に関する図を示す。
図6H】第2のポインティングモードについてXY平面内のポインティングの制御に関する図を示す。
図6I】第2のポインティングモードについてXY平面内のポインティングの制御に関する図を示す。
図6J】第2のポインティングモードについてXY平面内のポインティングの制御に関する図を示す。
図6K】第2のポインティングモードについてXY平面内のポインティングの制御に関する図を示す。
図6L】第2のポインティングモードについてXY平面内のポインティングの制御に関する図を示す。
図7】第3のポインティングモードのタイミングチャートを示す。
図8A】第3のポインティングモードについてXY平面内のポインティングの制御に関する図を示す。
図8B】第3のポインティングモードについてXY平面内のポインティングの制御に関する図を示す。
図8C】第3のポインティングモードについてXY平面内のポインティングの制御に関する図を示す。
図8D】第3のポインティングモードについてXY平面内のポインティングの制御に関する図を示す。
図8E】第3のポインティングモードについてXY平面内のポインティングの制御に関する図を示す。
図9】三角測量の原理を示す。
図10】本発明による方法の様々なステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1において、地上局6は、例えば、軌道ステーション2の遠隔制御及び追跡(TTC(Telemetry、Tracking and control))のためにXバンドで、並びにアップロードリンクモード及びダウンロードリンクモードにおける有用データの伝送のためにKaバンドで、軌道ステーション2と通信することができる。軌道ステーション2は、例えばSバンドで衛星7と通信することができ、例えば短距離無線ネットワークを使用して軌道ステーション2の近くに位置する通信デバイス8(例えば軌道ステーション2に対する保守作業を実施するための船外活動中に使用される)と通信することができる。軌道ステーション2は、月5上又は月5を周回する軌道上に位置する通信デバイス4と、例えばKaバンド又はSバンドで通信する。本発明は、これらの周波数帯の何れかに限定されるものではない。
【0026】
通信デバイス4は、例えば、地上に配備された月面ステーション9、月5上の移動ローバ10、月上で中継器として使用される通信ステーション11、又は月を周回する軌道上のシステム12におけるオンボードデバイスであってもよい。本発明の枠組みでは、通信デバイス4が基準信号を発することが可能であることが不可欠である。基準信号は、有利には純粋な搬送波、特に正弦波信号である。
【0027】
図2は、軌道ステーション2のアンテナ1のシステムの詳細図を示す。各アンテナ1は、主反射器13と、主反射器13の焦点に位置する副反射器14とを含む、カセグレン式パラボラアンテナタイプのものであってもよい。アンテナシステムは、アンテナと衛星のプラットフォームとの間のインターフェースとして機能する支持構造15も含む。
【0028】
ハウジング16により、例えば、アンテナと相互作用する様々な要素を保護することが可能となる:
-アンテナに結合され、受信したRF信号の電力レベルを測定可能な送受信機、
-送受信機に接続され、送受信機によって受信された情報を解釈することと、局所的に定義された誘導戦略に従って制御ソリューションを定義することとが可能なコンピュータ、
-コンピュータからのコマンドを受信することと、指向性アンテナに移動コマンドを送信することとが可能な、アンテナの軸のモータを制御するためのシステム。
【0029】
ハウジング16は、通信が確立されなければならないシステムに関する最小限の情報、とりわけ、基本的なRFパラメータ(周波数、変調、符号化、データレート、暗号鍵、プロトコル識別子など)、又はさらに、探索空間を限定するためのターゲットシステムのおおよその位置をコンピュータに供給する外部システムを収納することもできる。
【0030】
説明のために使用される基準座標系は、アンテナの反射器にリンクされた基準座標系であり、したがって、アンテナのポインティングの関数として移動可能である。参照符号A1、A2、及びA3は、それぞれの展開(A1)モータ及びポインティング(A2及びA3)モータを識別することを可能にする。参考実施形態は2つのアンテナを含むため、それぞれ1つのアンテナに適用可能な参照符号A1、A2、及びA3は、第2のアンテナの参照符号A4、A5、及びA6に対応する。
【0031】
基準座標系XYZは、その原点がパラボラ反射器の中心に対応し、以下の軸によって定義される:
Z:アンテナのボアサイト
Y:Zに対して垂直であり、アンテナ1用のモータA3(図2の第2のアンテナ1用のモータA6)の回転軸と同じ方向及び配向で、基準座標系の原点を通る。
X:正規直交の基準座標系を完成させる。
【0032】
図2は、反射器を有する2つのアンテナを備えたアンテナシステムを示すが、この表現は非限定的なものである。本発明は、使用されるアンテナのタイプに何ら限定されることなく、異なる数のアンテナを用いて実施することも可能である。しかしながら、各アンテナが2つの軸に沿ってポインティングを達成可能であることが不可欠である。
【0033】
本発明による制御方法は、相次いで実行される3つのモードを含み、これらのモードにより、広い探索空間から開始して、最適性能に向けて探索及び収束するためのいくつかのステップの後に、クローズドループモードでポインティングを得ることが可能となる。ポインティングがクローズドループモードであると言われるのは、それがターゲットデバイスによる基準信号の発信に依存しているためである。
【0034】
アンテナ1のポインティングの第1のモードは、プラットフォーム2及び通信デバイス4のためのアルマナックデータを使用して実施される。アルマナックデータは、コンピュータに送信されるプラットフォーム2と通信デバイス4との間の相対位置及び相対速度コマンドに変換される。これらのコマンドは、例えば1Hzの典型的な周波数でリアルタイムに生成され得るか、又は時間セグメントにわたって補間された多項式プロファイルの形式で生成され得る。次に、コンピュータは、これらのターゲット方向及びアンテナのボアサイト方向の推定を用いて、アンテナのポインティング機構のモータによって付与される角度インクリメントを計算する。したがって、第1のモードにより、コンピュータに供給されるアルマナックデータの精度に対応した基本的な精度で、ターゲット方向をロックオンして追跡することが可能となる。この方向にロックオンすることは、正確なポインティングモード(クローズドループモードと呼ばれる)に移行するための前提条件であり、したがって、そのための初期条件を構成する。
【0035】
アンテナのボアサイトは、指向性アンテナの最大利得(最大放射電力)の軸に対応する。ほとんどのアンテナでは、ボアサイトは、アンテナの対称軸である。例えば、軸方向に供給されるパラボラアンテナの場合、アンテナのボアサイトは、パラボラアンテナの対称軸であり、アンテナの放射パターン(メインローブ)は、ボアサイトを中心に対称である。
【0036】
図3は、第1のポインティングモードのコマンドパターンCMD_SEAMのタイミングチャートの一例を示す。このパターンは、アンテナのボアサイトがアルマナックデータによって決定されたターゲット方向を指すまで繰り返される。パターンCMD_SEAMは、所定の期間、アンテナ基準座標系のX軸に沿ってボアサイトを移動させるためのコマンドと、それに続く、所定の期間、アンテナ基準座標系のY軸に沿ってボアサイトを移動させるためのコマンドとに分解することができる。所定の期間は、例えば0.5秒に等しくてもよく、ボアサイトの照準移動は、1.4度/秒の最大速度で実施されてもよい。これらの数値は、アンテナの特性に依存する。
【0037】
アンテナ1の第2のポインティングモードは、基準信号の受信電力を最大にする方向にアンテナ1を向けるために、第1のポインティングモードに続いてアンテナが指す初期位置の付近でアンテナ1の少なくとも1回のスキャンを実施することにある。
【0038】
曖昧さをなくして、受信エネルギーレベルをアンテナのずれの角度と関連付けるために、アンテナは、図4のアンテナ放射パターンに示されるように、ボアサイトに対応する中央位置で最大利得を有するカバレージ領域内で単調なパターンを配置しなければならない。
【0039】
「単調なパターン」という用語は、アンテナのボアサイトを中心に厳密に増加又は減少する放射パターンを意味すると理解されるものである。したがって、負の角度の範囲では、利得は厳密に増加しており、正の角度の範囲では、利得は厳密に減少している。
【0040】
図4では、谷は、-1.8°及び1.8°付近に現れている。したがって、このアンテナの場合、谷間に位置する値の範囲内で測定が実施される。
【0041】
完全に単調なアンテナパターンにより、受信レベルの測定ノイズ、遠隔通信システムの不安定性、アンテナシステム、その支持体、及びモータの熱弾性変形、制御コマンドによって励起されるアンテナのフレキシブルモード、遠隔通信システムのダイナミクス、並びに測定、計算、及びコマンドチェーンにおける時間遅延などの一連の干渉要素を考慮して、設定点角度と受信エネルギーレベルとを正確に関連付けることによって、ポインティングの制御を最適化することが可能となる。
【0042】
単調なパターンは、アンテナパターンの第1のローブと第2のローブとの間の利得のギャップをなくすことによって得られ、これは、例えば、ソースの位相中心と反射器13/副反射器14の組み合わせの焦点との間の位相シフトにより、又は例えば、既知の技術に従って単一反射器アンテナの反射器の形状を最適化することによって実施され得る。
【0043】
図5は、第2のポインティングモードのタイミングチャートの一例を示す。第1のコニカルスキャンに加えて、それは、方位角及び仰角における移動と共に第2のコニカルスキャンを含む。第2のコニカルスキャン並びに方位角及び仰角における移動は、任意選択のものであり、最大利得の位置に照準を合わせる動作を改善することを可能にする。
【0044】
図6A図6B、及び図6Cによって示されるアンテナ1の第1のコニカルスキャンは、アンテナ放射パターンの二次ローブの角度範囲の関数として決定される第1の開き角で実施される。
【0045】
図6Aにおいて、ボアサイトは、第1のポインティングモードからのアルマナックデータによって供給された初期位置P0を基準にして、アンテナのモータ軸の一方に沿って、即ち、仰角又は方位角において、位置P1に向かって移動される。図6Bでは、位置P1から円錐移動が行われ、一定の時間間隔で利得が測定される。図6A~6Cのコニカルスキャンの角度範囲([-1°,1°])は、図4のメインローブに到達するために実施される再ポインティングの振幅に実質的に対応することに留意することができる。
【0046】
例えば、第1のコニカルスキャンにおけるボアサイトの移動のモデルは、方位角(X軸)における0.5秒の移動と、それに続く仰角(Y軸)における0.5秒の移動と、0.375秒の利得の測定遅延とを含み得る。これらの値は、例として与えられたものであり、非限定的なものである。各測定点において、利得の値が測定され、メモリに保存される。
【0047】
図6Cにおいて、アンテナのボアサイトは、利得の最大値に対応する位置P2に照準を合わせる。図6Dにおいて、ボアサイトは、第1のコニカルスキャンの最大利得に対応する位置P2を基準にして、アンテナのモータ軸の一方に沿って、即ち、仰角又は方位角において、位置P3に向かって移動される。図6Eでは、位置P3から開始して円錐移動が行われ、第1のコニカルスキャンの場合と同様に、一定の時間間隔で利得が測定される。第2のコニカルスキャンの角度範囲は、第1のコニカルスキャンの角度範囲よりも小さい(典型的には、0.5°~1°の間)。
【0048】
図6Fにおいて、ボアサイトは、利得を最大にする第2のスキャンの一連の測定値からの位置に対応する位置P4を標的にするようにずらされる。
【0049】
測定を改善するために、図6G~6Lに示されるように、方位角及び仰角における移動(交差移動)によって第2のポインティングモードを完了することができる。図6Gでは、ボアサイトがアンテナのモータ軸の一方(例えば、図6Gでは仰角)に沿って、位置P5まで移動される。この移動は、測定された利得が減少するまで行われる。利得測定は、一定の時間間隔で行われる。
【0050】
図6Hにおいて、ボアサイトは、位置P4を基準にして反対方向に位置P6まで移動される。この移動は、先行する移動が利得の増加を検出しなかったときに、測定された利得が再び減少するまでトリガされる。利得は、各測定点で測定され、位置P7は、これ以降、仰角の利得の測定値を最大にする位置として保持される(図6I)。
【0051】
図6J図6K、及び図6Lに示されるように、同じ手順が方位角(X軸)においても実施される。方位角におけるスキャンは、仰角における最大測定点P7から開始される。最終的に、点P10が方位角における利得の測定値を最大にすると決定される。
【0052】
2つのコニカルスキャン及び交差探索モードの使用により、アンテナの起動のため、移動を和らげるため、及び制御プロファイルを更新するための受信電力の新しい値の観測のための位相の入れ換えが可能となる。
【0053】
第2のポインティングモードの様々なステップが図5によって示されている。第1のコニカルスキャンRAW SCAN 1は、初期化フェーズINIT1、スキャンフェーズCONING1、及びターゲティングフェーズRALLY1を含む。第2のコニカルスキャンRAW SCAN 2は、初期化フェーズINIT2、スキャンフェーズCONING2、及びターゲティングフェーズRALLY2を含む。交差モードのファインスキャンは、方位角におけるスキャンSCANX及び仰角におけるスキャンSCANYの様々なシーケンスを含む。
【0054】
本発明による方法は、最大電力に基づいてアンテナ1の再ポインティングを行うために少なくとも1つの三角測量操作が実施されるアンテナ1の第3のポインティングモードを含む。
【0055】
アンテナの開始位置は、基準信号の受信電力を最大にする第2のポインティングモードで決定された位置(図6Lの点P10)に対応する。
【0056】
第3のポインティングモードの第1のステップは、図7に示す操作に従って、方位角及び仰角においてボアサイトを移動させるためのコマンドを適用することにある。
【0057】
その後、ポインティング誤差が、アンテナパターンの知識、受信電力の現在の測定値、及びターゲットに対するずれを最小にするスキャン位相の最終位置P10において測定された最大電力に基づいて得られた、このターゲットによって放出される電力の推定値を使用して推定される。
【0058】
推定されたポインティング誤差が制御不感帯に対応する所定の閾値を超えると、ボアサイトが、方位角において一方向に三角測量角度インクリメントDXの半分だけ移動される(図7、ステップS1、移動DX/2)。三角測量角度インクリメントは、標的とする最適な方向の計算(三角測量問題の解)に求められる精度と、最小にする必要がある三角測量操作に関連するずれの振幅との間の妥協から生じる。利得が測定され、第2のポインティングモードの終了時に行われた先行測定に対して利得が増加している場合は、ボアサイトが再度同じ方向に三角測量インクリメントの半分だけ方位角において移動される(図7、ステップS2)。逆に、第2のポインティングモードの終了時に行われた先行測定に対して受信電力が減少した場合は、ボアサイトは、反対方向にインクリメント分だけ方位角において移動される(図7、ステップS3、移動-DX)。この論理により、三角測量操作中にポインティング誤差を最小にすることが可能となる。ステップS2又はS3に続いて、利得GAIN1がメモリに保存される。図7において、値「deltaGain」は、現在の位置で測定された電力とスキャンフェーズにおける推定最大電力との間の差に対応する。したがって、deltaGainが増加すれば、利得は減少する。
【0059】
その後、ステップS2又はS3に続いて方位角移動手順が終了した点から開始して、同じコマンドが、仰角において実施される。ボアサイトは、一方向に三角測量インクリメントの半分だけ仰角において移動される(図7、ステップS4、移動DY/2)。利得が測定され、第2のポインティングモードの終了時に行われた先行測定に対して利得が増加している場合は、ボアサイトは再度同じ方向に所定のインクリメントの半分だけ仰角において移動される(図7、ステップS5)。逆に、第3のポインティングモードにおける方位角移動に続いて実施された先行測定に対して受信電力が減少した場合は、ボアサイトは、反対方向にインクリメント分だけ仰角において移動される(図7、ステップS6、移動-DY)。ステップS5又はS6に続いて、利得GAIN2がメモリに保存される。この2段階の三角測量手順により、(受信利得を最大にする)関心方向に対するアンテナのずれを最小にすることが可能となる。
【0060】
図8A~8Eは、アンテナの第3のポインティングモードのための様々な移動ステップの一例を示す。
【0061】
図8Aにおいて、点P11は、推定ポインティング誤差が制御不感帯(ポインティングの補正のためのコマンドが生成される閾値)から出た瞬間の方位角及び仰角の参照符号に対応する。ボアサイトは、方位角において、点P12まで値DX/2分だけ移動される。点P11と点P12との間で利得が減少しているため、ボアサイトは、方位角において、点P13まで-DX分だけ移動される(図8B)。
【0062】
同様に、図8Cにおいて、ボアサイトは、仰角において、点P14まで値DY/2分だけ移動される。利得は、点P13と点P14との間で減少しているため、ボアサイトは、仰角において、点P15まで-DY分だけ移動される(図8D)。
【0063】
本発明は、第3のポインティングモードについて、最初に仰角における移動を行い、次に方位角移動を行うことによっても実施することが可能である。
【0064】
その後、標的とされる最適点の計算が、点P15から開始して、先述の三角測量操作中に実施された測定に基づいて三角測量問題の解を計算することにより、実施される。図8A図8B図8C図8Dに示される三角測量操作の例では、この計算に使用される測定値は、点P12、点P13、点P14、及び点P15である。図8Eに示された例では、三角測量問題の解は、点P16であり、一次的には図8Eの円で表された制御不感帯の補正に対応し、それより下ではポインティング補正コマンドは適用されない。
【0065】
図9は、図8Eによって示されたものに対して簡略化された三角測量操作について、本発明による方法に適用される三角測量の原理を示す。この簡略化された操作は、ターゲット方向に対するアンテナの推定されたずれが性能閾値を超えたときにトリガされ、先行するポインティングモードにおいて、又は現在のポインティングモードで行われた最後のアンテナ位置補正中にロックオンされたアンテナ位置に対応する初期三角測量位置P17から開始される。この位置は、新たな三角測量が開始された時点では、もはや最適ではない。その理由は、この点で測定された電力が、先行するポインティングモード又は現在のポインティングモードにおける先行する補正シーケンスで観測及びロックオンされた最大電力よりも低いためである。図9では、観測されたこの最大電力に対応するアンテナ位置は、追尾システム及びターゲットの相対的移動により、P20でドリフトしている。P17におけるずれ(Δα1)は、アンテナ放射パターン、及び先行するポインティングモードで観測された最大電力(P20)と点P17で測定された電力との間の測定された電力差を用いて推定される。最適点P20は、P17を中心とし、半径がΔα1である円上に位置する。
【0066】
先述の方位角移動(図8A及び図8B)に続いて、ターゲット点P20は、P18を中心とし、アンテナ放射パターンに基づいて、及び先行するポインティングモードで観測された最大電力と点P18において測定された電力との間の測定された電力差に基づいてP18において推定されたずれに対応する既知の半径Δα2を有する第2の円18上に位置する。
【0067】
同様に、先述の仰角における移動(図8C及び図8D)に続いて、ターゲット点P20は、第3の既知の半径Δα3を有し、アンテナの放射パターンの関数として決定される第3の円19上に位置する。
【0068】
三角測量問題の解は、第1の円17、第2の円18、及び第3の円19の交点P20によって計算することができる。その後、ボアサイトは、点P20の方向に照準を合わせる。
【0069】
電力測定値P17、P18、及びP19により、これらの点において、標的とされる最適点(P20)に対して、角度のずれΔα1、Δα2、Δα3を推定することが可能となる。三角測量問題の解は、半径Δα1、Δα2、Δα3を有する3つの円の交点に対応する。
【0070】
有利なことに、三角測量操作は、第2のポインティングモードが実施された後に、例えばアンテナのプラットフォーム及び/又は通信デバイス4の支持体の軌道ダイナミクスによって引き起こされる、アンテナと通信デバイス4との間の相対的移動の場合であっても、正確な測定が実施されることを可能にする。
【0071】
アンテナ1と通信デバイス4との間の距離が短過ぎると、送受信機及びコンピュータは、通常、受信機チェーンの構成要素の損傷を回避するために受信信号のレベルを下げる(「クランピング」として知られる技法)。これは、受信レベルを改ざんすることによって、三角測量の動作を妨げる可能性がある。
【0072】
これを回避するために、第3のポインティングモードは、プラットフォーム2と通信デバイス4との間の距離が調整可能な閾値未満である場合に使用され、この閾値は、下回ると通信デバイス4がその放出電力を低下させる(クランピング)距離に相当する。距離に関する知識は、プラットフォーム2によってコンピュータに送られるアルマナックデータに含まれている。したがって、距離が閾値より大きい場合は、新しい三角測量操作が実施される。距離が閾値より小さい場合は、方位角及び仰角における少なくとも1つの移動によって最大電力の探索を実行することにより、最大電力に基づくアンテナ1の再ポインティングが実施される。
【0073】
説明した2つのポインティングモードにおいて、プラットフォーム2と通信デバイス4との間の相対的移動にリンクしたドリフトは、プラットフォーム2及び通信デバイス4のためのアルマナックデータを使用することによって補償される。したがって、命令される角度インクリメントは、先述のポインティングフェーズの各々について、アンテナ基準座標系で操作を行うための角度インクリメントに対応し、この角度インクリメントに対して、この操作中のターゲットのドリフトが補償されることを可能にするインクリメントが加算される。このドリフトは、コンピュータに送られるアルマナックデータに含まれる、ターゲットとポインティングデバイスとの間の相対位置及び相対速度に基づいて推定される。
【0074】
本発明による方法により、クローズドループ単一ソースポインティングを実施することが可能となり、参考実施形態の場合、約1.6°のオープンループ精度から約0.3°のクローズドループ精度にすることが可能となる。その結果、アンテナ利得は大幅に改善され、達成可能なレートは、100kspsから50Mspsになる。
【0075】
さらに、最適なボアサイトポインティングを見つけるために使用されるシステムは、通信に使用されるものと同じである。
【0076】
最後に、参考実施形態において、通信デバイス4がオープンループモードで動作する場合、通信の安定性を保証するために、このシステムのポインティング性能が考慮されることを確実にすることによって、このデバイス上でクローズドループポインティングを実施することも可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 アンテナ
2 プラットフォーム
4 通信デバイス
S1、S2、S3 ステップ
P0 初期位置
RAW SCAN 1 第1のコニカルスキャン
RAW SCAN 2 第2のコニカルスキャン
13 主反射器
14 副反射器
DX 三角測量インクリメント
P17 初期三角測量位置
Δα1、Δα2、Δα3 ずれ
P20 ターゲット点
17 第1の円
18 第2の円
P18、P19 中心
19 第3の円
5 天体
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図6J
図6K
図6L
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9
図10
【外国語明細書】