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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008670
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】機械学習装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240112BHJP
   G06V 10/776 20220101ALI20240112BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
G06T7/00 610B
G06V10/776
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110721
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊野 希一
(72)【発明者】
【氏名】小島 聖司
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096BA03
5L096DA04
5L096EA35
5L096EA37
5L096FA52
5L096FA59
5L096GA19
5L096HA07
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】学習済みモデルを構築するための労力を省力化できる機械学習装置を提供する。
【解決手段】演算処理装置2および記憶装置3を備えた機械学習装置1である。前記記憶装置3は、訓練画像データP1,P2およびテスト画像データP5,P6を格納する画像データ格納部20と、学習済みモデルMを格納するモデル格納部21と、不良品とラベルされた不良品訓練画像データP2に、不良要因30の位置を含む不良要因情報をアノテーションとして紐づけられた不良要因訓練画像データP3を格納する不良要因訓練画像データ格納部22と、を備え、前記演算処理装置2は、モデル生成部11と、前記テスト画像データP5,P6が良品または不良品であるかを判定する良否判定部12と、不良品における真不良部位を誤判定した場合に、前記不良要因情報に基づいて誤判定要因を分析し、前記誤判定要因に応じた解決策を教示する分析教示部13と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
演算処理装置および記憶装置を備えた機械学習装置であって、
前記記憶装置は、
学習用の訓練画像データおよび評価用のテスト画像データを格納する画像データ格納部と、
前記訓練画像データおよび前記テスト画像データを用いて機械学習を行うことにより生成された学習済みモデルを格納するモデル格納部と、
前記訓練画像データのうち不良品とラベルされた不良品訓練画像データに、不良要因の位置を含む不良要因情報をアノテーションとして紐づけられた不良要因訓練画像データを格納する不良要因訓練画像データ格納部と、
を備え、
前記演算処理装置は、
前記訓練画像データおよび前記テスト画像データを用いて前記機械学習を行うことにより前記学習済みモデルを生成するモデル生成部と、
前記学習済みモデルを用いて、良品または不良品とラベルされた前記テスト画像データが、良品または不良品であるかを判定する良否判定部と、
前記良否判定部の判定結果に基づいて、不良品における真不良部位を誤判定した場合に、前記不良要因情報に基づいて誤判定要因を分析し、前記誤判定要因に応じた解決策を教示する分析教示部と、
を備える、機械学習装置。
【請求項2】
前記不良品における真不良部位を誤判定した場合とは、
前記良否判定部が真不良部位を含む不良品を良品と誤判定した場合、
前記良否判定部が不良品を不良品と正判定したが真不良部位ではなく偽不良部位に基づいて不良品と正判定した場合、
のいずれかを含む、請求項1に記載の機械学習装置。
【請求項3】
前記分析教示部は、複数の解決策を教示するとともに、前記複数の解決策の有効度を教示する、請求項1に記載の機械学習装置。
【請求項4】
前記分析教示部は、前記訓練画像データのうちの不良品訓練画像データの数量不足が前記誤判定要因であると分析する、請求項1~3のいずれか1項に記載の機械学習装置。
【請求項5】
前記分析教示部は、前記訓練画像データのうち、誤判定された前記真不良部位を含む前記不良品訓練画像データの数量不足が前記誤判定要因であると分析する、請求項4に記載の機械学習装置。
【請求項6】
前記良否判定部は、良品または不良品であるかを判定するとともに、画素ごとの着目度数を生成し、
前記分析教示部は、
前記良否判定部により誤判定された前記テスト画像データである誤判定テスト画像データにおける最大着目度数Nmaxを取得し、
前記誤判定テスト画像データにおいて誤判定された前記真不良部位における前記着目度数Nを取得し、
前記最大着目度数Nmaxと前記真不良部位における前記着目度数Nとの差である不足着目度数ΔNに基づいて、前記不良品訓練画像データの数量不足が前記誤判定要因であると分析し、
前記不足着目度数ΔN、および、前記不足着目度数ΔNに基づき得られた前記真不良部位における最適着目度数Nbestの少なくとも1つを前記解決策のための情報として教示する、請求項4に記載の機械学習装置。
【請求項7】
前記分析教示部は、
前記誤判定テスト画像データおよび前記不良要因情報に基づいて前記誤判定テスト画像データにおける前記真不良部位を取得し、
前記誤判定テスト画像データにおいて誤判定された前記真不良部位における前記着目度数Nを取得する、請求項6に記載の機械学習装置。
【請求項8】
前記演算処理装置は、前記分析教示部の分析結果に基づいて、誤判定された前記真不良部位を含む前記不良品訓練画像データの水増し処理を行う水増し処理部をさらに備える、請求項4に記載の機械学習装置。
【請求項9】
前記分析教示部は、前記テスト画像データの全画像サイズに対する、誤判定された前記真不良部位の局所画像サイズの割合が不適であることが前記誤判定要因であると分析する、請求項1~3のいずれか1項に記載の機械学習装置。
【請求項10】
前記記憶装置は、前記真不良部位が正しく判定されたときの前記真不良部位を含む正判定トリミング画像データを格納する正判定トリミング画像データ格納部をさらに備え、
前記分析教示部は、前記正判定トリミング画像データに基づいて、前記テスト画像データにおける全画像サイズに対する局所画像サイズの割合が不適であることが前記誤判定要因であると分析する、請求項9に記載の機械学習装置。
【請求項11】
前記演算処理装置は、複数の前記不良要因訓練画像データを統合した不良要因統合画像データを生成する不良要因統合画像データ生成部をさらに備え、
前記分析教示部は、
前記正判定トリミング画像データの全画像サイズに対する、前記正判定トリミング画像データにおける前記真不良部位の局所画像サイズの割合と、
前記不良要因統合画像データの全画像サイズに対する、前記不良要因統合画像データにおける前記不良要因を含む局所画像サイズの割合と、に基づいて、
前記テスト画像データにおける全画像サイズに対する局所画像サイズの割合が不適であることが前記誤判定要因であると分析する、請求項10に記載の機械学習装置。
【請求項12】
前記不良要因統合画像データにおいて、連続または近接して配置される複数の前記不良要因によるまとまりを不良要因群とし、
前記不良要因統合画像データは、複数の前記不良要因群を有しており、
前記不良要因統合画像データにおける前記不良要因を含む局所画像サイズは、前記テスト画像データにおいて誤判定された前記真不良部位に対応する位置を含む1つの前記不良要因群の画像サイズである、請求項11に記載の機械学習装置。
【請求項13】
前記分析教示部は、前記機械学習に用いる前記訓練画像データの適切全画像サイズを前記解決策のための情報として教示する、請求項9に記載の機械学習装置。
【請求項14】
前記演算処理装置は、前記分析教示部の分析結果に基づいて前記訓練画像データを分割し、分割された画像データを前記モデル生成部への入力画像データとする画像分割処理部をさらに備える、請求項9に記載の機械学習装置。
【請求項15】
前記分析教示部は、前記良否判定部により誤判定された前記テスト画像データである誤判定テスト画像データにおいて、着目すべきでない部位が含まれることが前記誤判定要因であると分析する、請求項1~3のいずれか1項に記載の機械学習装置。
【請求項16】
前記分析教示部は、前記訓練画像データに対するマスキング領域を前記解決策の情報として教示する、請求項15に記載の機械学習装置。
【請求項17】
前記演算処理装置は、複数の前記不良要因訓練画像データを統合した不良要因統合画像データを生成する不良要因統合画像データ生成部をさらに備え、
前記分析教示部は、
前記不良要因統合画像データにおいて複数の不良要因を含む不良要因領域を取得し、
前記不良要因領域を除く領域を前記マスキング領域と指定し、
前記訓練画像データに対する前記マスキング領域を前記解決策の情報として教示する、請求項16に記載の機械学習装置。
【請求項18】
前記演算処理装置は、複数の前記不良要因訓練画像データを統合した不良要因統合画像データを生成する不良要因統合画像データ生成部をさらに備え、
前記分析教示部は、
前記不良要因統合画像データにおいて複数の不良要因を含む不良要因領域を取得し、
前記良否判定部により誤判定された前記テスト画像データである誤判定テスト画像データにおける着目度数のうち所定度数以下である低着目度数領域を取得し、
前記不良要因領域および前記低着目度数領域を除く領域を前記マスキング領域と指定し、
前記訓練画像データに対する前記マスキング領域を前記解決策の情報として教示する、請求項16に記載の機械学習装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械学習装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1(特開2021-174417号公報)に記載されているように、学習用の訓練画像データを機械学習させることによって生成された学習済みモデルにより、検査対象の画像データが良品または不良品であるかを推定して評価する検査システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-174417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
学習済みモデルの精度を評価するために、評価用のテスト画像データを用い、テスト画像データが良品または不良品であるかを推定する。このとき、学習済みモデルの判定精度が十分でない場合には、不良品が良品であると誤判定される場合がある。学習済みモデルの判定精度を高めるためには、誤判定された原因を分析し、訓練画像データの追加、再収集等の適切な対策を実施することが求められる。
【0005】
しかし、従来技術によれば、テスト画像データが良品であるか、または不良品であるかが出力されるのみであった。このため、不良品が良品と誤判定された原因を分析することが困難な場合があった。さらに、原因が判明しても、具体的にどのような対策を講じれば判定精度を高めることができるかを検討する必要があるため、学習済みモデルを構築するための労力が増大するという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、学習済みモデルを構築するための労力を省力化できる機械学習装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
演算処理装置および記憶装置を備えた機械学習装置であって、
前記記憶装置は、
学習用の訓練画像データおよび評価用のテスト画像データを格納する画像データ格納部と、
前記訓練画像データおよび前記テスト画像データを用いて機械学習を行うことにより生成された学習済みモデルを格納するモデル格納部と、
前記訓練画像データのうち不良品とラベルされた不良品訓練画像データに、不良要因の位置を含む不良要因情報をアノテーションとして紐づけられた不良要因訓練画像データを格納する不良要因訓練画像データ格納部と、
を備え、
前記演算処理装置は、
前記訓練画像データおよび前記テスト画像データを用いて前記機械学習を行うことにより前記学習済みモデルを生成するモデル生成部と、
前記学習済みモデルを用いて、良品または不良品とラベルされた前記テスト画像データが、良品または不良品であるかを判定する良否判定部と、
前記良否判定部の判定結果に基づいて、不良品における真不良部位を誤判定した場合に、前記不良要因情報に基づいて誤判定要因を分析し、前記誤判定要因に応じた解決策を教示する分析教示部と、
を備える、機械学習装置にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、訓練画像データにどのような対策を施せば、誤判定されたテスト画像データが正しく判定されるようにするかについて知ることができる。これにより、誤判定されたテスト画像データについて、誤判定の原因を推定し、推定された原因から対策を考案するための労力を削減することができる。この結果、全体として、学習済みモデルを構築するための労力を削減することができる。
【0009】
以上のごとく、上記態様によれば、機械学習装置において、学習済みモデルを構築するための労力を省力化できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1の機械学習装置の構成を示す図である。
図2】実施形態1の機械学習装置の全体的な動作を示すフローチャートである。
図3図2におけるS1~S3の動作を説明するための図である。
図4図2におけるS4~S5の動作を説明するための図である。
図5】真不良部位が誤判定された場合の説明をするための図である。
図6】解決策1について、教示される内容を説明するための図である。
図7】解決策1が選択されたときに実行される水増し処理について説明するための図である。
図8】解決策2について、教示される内容を説明するための図である。
図9】解決策2が選択されたときに実行される画面分割処理について説明するための図である。
図10図9におけるモデルαを例にして、画面分割処理について説明するための図である。
図11】解決策3について、教示される内容を説明するための図である。
図12】解決策3が選択されたときに実行されるマスキング処理について説明するための図である。
図13】実施形態2の機械学習装置において、解決策4について、教示される内容について説明するための図である。
図14】実施形態3の機械学習装置の全体的な動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
1.機械学習装置の概略
本発明に係る機械学習装置は、工作物の良否を検査する検査装置に適用される。検査装置としては、例えば、自動車に用いられるダイキャスト部品等を検査するための検査装置に適用できる。検査装置は、検査対象を撮像した検査画像データの良否判定を行う。例えば、外観検査を行う検査対象において、外観異常の判定を行うことができる。また、例えば、工作物の表面に生成したキズの有無を判定したり、工作物の形状誤差の程度を判定したりすることができる。
【0012】
本発明の実施形態1に係る機械学習装置1の概略について図1図3および図4を参照して説明する。図1に示すように本形態に係る機械学習装置1は、演算処理装置2と、記憶装置3と、を備える。機械学習装置1は、入力装置4と、表示装置5と、に接続されている。
【0013】
入力装置4は、後述する種々の画像データを、後述する画像データ取得部10に伝達するための入力インターフェースである。入力インターフェースとしては、例えば、カメラ、スキャナ等を採用することができる。また、入力インターフェースとしては、CD、DVD等の外部記憶装置に記憶された画像を読み取るための読み取り装置も例示される。
【0014】
表示装置5は、後述する分析教示部13がユーザに教示する内容を表示する。表示装置5としては、例えば、モニタ、印刷装置等を採用することができる。
【0015】
演算処理装置2は、画像データ取得部10と、モデル生成部11と、良否判定部12と、分析教示部13と、不良要因統合画像データ生成部14と、再学習用訓練画像データ生成部15と、を備える。
【0016】
画像データ取得部10は、入力装置4と接続されており、入力装置4から、学習用の訓練画像データP1,P2、評価用のテスト画像データP5,P6、および不良要因訓練画像データP3を受け取る(図3および図4参照)。
【0017】
図3に示すように、訓練画像データP1,P2は、良品とラベルされた良品訓練画像データP1、および不良品とラベルされた不良品訓練画像データP2を含む。図4に示すように、テスト画像データP5,P6は、良品とラベルされた良品テスト画像データP5、および不良品とラベルされた不良品テスト画像データP6を含む。
【0018】
図3に示すように、不良要因訓練画像データP3は、不良品訓練画像データP2および不良品テスト画像データP6に、不良要因30の位置を含む不良要因情報がアノテーションとして紐づけられたものである。不良要因訓練画像データP3は、不良品と判断された原因である真不良部位を有する。不良要因30としては、傷、凹凸、寸法不良、歪みが例示される。不良要因訓練画像データP3には、不良要因30の位置、大きさ、形等が画素レベルで紐づけられている。
【0019】
図1に示すように、画像データ取得部10は、訓練画像データP1,P2、テスト画像データP5,P6、および不良要因訓練画像データP3を、記憶装置3に送信する。また、画像データ取得部10は、訓練画像データP1,P2およびテスト画像データP5,P6を、モデル生成部11、分析教示部13、および再学習用訓練画像データ生成部15に送信する。また、画像データ取得部10は、不良要因訓練画像データP3を、不良要因統合画像データ生成部14に送信する。
【0020】
モデル生成部11は、訓練画像データP1,P2およびテスト画像データP5,P6を用いて機械学習を行うことにより、公知の方法により学習済みモデルMを生成する(図3参照)。図1に示すように、モデル生成部11は、生成した学習済みモデルMを記憶装置3、および良否判定部12に送信する。
【0021】
良否判定部12は、学習済みモデルMを用いて、良品テスト画像データP5および不良品テスト画像データP6が、良品または不良品であるかを判定する。良否判定部12は、良品テスト画像データP5および不良品テスト画像データP6についての判定結果を、分析教示部13に送信する。
【0022】
分析教示部13は、良否判定部12の判定結果に基づいて、不良品における真不良部位を誤判定した場合に、不良要因情報に基づいて誤判定要因を分析し、誤判定要因に応じた解決策を教示する。分析教示部13は、少なくとも1つの解決策を教示する。分析教示部13は、解決策を表示装置5に表示させることにより、ユーザに解決策を教示する。分析教示部13は、解決策を再学習用訓練画像データ生成部15に送信する。
【0023】
不良要因統合画像データ生成部14は、複数の不良要因訓練画像データP3を統合した不良要因統合画像データP4を生成する(図3参照)。不良要因統合画像データP4は、複数の不良要因訓練画像データP3が集積された1枚の画像データである。不良要因統合画像データP4には、1枚の画像データに含まれる画素ごとに、不良要因訓練画像データP3の個数に対する、不良要因訓練画像データP3の不良要因30の発生確率が記録されている。不良要因30の発生確率とは、不良要因30の位置に対応する画素の個数を、全ての画素数で割った値である。
【0024】
また、不良要因統合画像データP4は、不良要因30の発生確率を、画素レベルでカウントできる。すなわち、不良要因統合画像データP4は、1枚の画像データとして、画素ごとに、不良要因30の位置が存在した不良要因訓練画像データP3の個数が記録されている。端的には、不良要因統合画像データP4には、画像を形成する画素ごとに、不良要因訓練画像データP3において不良要因30が存在したか否かの情報が記録されている。
【0025】
図1に示すように、不良要因統合画像データ生成部14は、生成した不良要因統合画像データP4を、記憶装置3、分析教示部13、および再学習用訓練画像データ生成部15に送信する。
【0026】
再学習用訓練画像データ生成部15は、水増し処理部16と、画像分割処理部17と、マスキング処理部18と、を備える。
【0027】
水増し処理部16は、分析教示部13の分析結果に基づいて、誤判定された真不良部位を含む不良品訓練画像データP2の水増し処理を行い、水増し処理された画像データをモデル生成部11への入力画像データとする。真不良部位とは、不良品テスト画像データP6に含まれる不良要因30を意味する。誤判定された真不良部位とは、良否判定部12が真不良部位を含む不良品を良品と判断した場合における、真不良部位を意味する。
【0028】
画像分割処理部17は、分析教示部13の分析結果に基づいて訓練画像データP1,P2を分割し、分割された画像データをモデル生成部11への入力画像データとする。
【0029】
マスキング処理部18は、訓練画像データP1,P2に対して所定の領域をマスキング処理し、マスキング処理された画像データをモデル生成部11への入力画像データとする。
【0030】
記憶装置3は、画像データ格納部20と、モデル格納部21と、不良要因訓練画像データ格納部22と、正判定トリミング画像データ格納部23と、不良要因統合画像データ格納部24と、を備える。
【0031】
画像データ格納部20は、画像データ取得部10から受信した、訓練画像データP1,P2およびテスト画像データP5,P6を格納する。画像データ格納部20は、訓練画像データP1,P2をモデル生成部11に送信する。また、画像データ格納部20は、テスト画像データP5,P6を、良否判定部12および分析教示部13に送信する。また、画像データ格納部20は、訓練画像データP1,P2およびテスト画像データP5,P6を、再学習用訓練画像データ生成部15に送信する。
【0032】
モデル格納部21は、モデル生成部11から送信された学習済みモデルMを格納する。モデル格納部21は、学習済みモデルMを良否判定部12に送信する。
【0033】
不良要因訓練画像データ格納部22は、画像データ取得部10から、不良品訓練画像データP2を受信し、格納する。不良要因訓練画像データ格納部22は、不良品訓練画像データP2を、不良要因統合画像データ生成部14に送信する。
【0034】
正判定トリミング画像データ格納部23は、真不良部位が正しく判定されたときの真不良部位を含む正判定トリミング画像データ(図示せず)を格納する。正判定トリミング画像データは、過去に検査装置において画像データに対して良品または不良品の判定が行われた際に、真不良部位が正しく判定されたときの画像データである。
【0035】
正判定トリミング画像データには、過去の検査における真不良部位の位置、大きさ、および形が紐づけられて記録されている。また、正判定トリミング画像データ格納部23に格納された正判定トリミング画像データは、真不良部位が正しく判定されたものであるので、当該正判定トリミング画像データの画像サイズは、当該真不良部位を正しく判定することのできる適切な画像サイズであるといえる。
【0036】
不良要因統合画像データ格納部24は、不良要因統合画像データ生成部14から送信された不良要因統合画像データP4を格納する。不良要因統合画像データ格納部24は、不良要因統合画像データP4を、分析教示部13、および再学習用訓練画像データ生成部15に送信する。
【0037】
2.機械学習装置1の全体的な動作
続いて、本形態に係る機械学習装置1の全体的な動作について図2を参照して説明する。本形態の機械学習装置1の処理が開始されると、S1にて、入力装置4は訓練画像データP1,P2、テスト画像データP5,P6、および不良要因訓練画像データP3を取得する。入力装置4は、訓練画像データP1,P2、テスト画像データP5,P6、および不良要因訓練画像データP3を画像データ取得部10に送信する。画像データ取得部10は、訓練画像データP1,P2およびテスト画像データP5,P6を画像データ格納部20に送信する。画像データ格納部20は訓練画像データP1,P2およびテスト画像データP5,P6を格納する。画像データ取得部10は、訓練画像データP1,P2をモデル生成部11に送信する。また、画像データ取得部10は、不良要因訓練画像データP3を不良要因訓練画像データ格納部22に送信する。不良要因訓練画像データ格納部22は、不良要因訓練画像データP3を格納する。
【0038】
S2にて、モデル生成部11は、訓練画像データP1,P2を用いて機械学習を行うことにより学習済みモデルMを生成する。モデル生成部11は、学習済みモデルMをモデル格納部21に送信する。モデル格納部21は学習済みモデルMを格納する。
【0039】
S3にて、不良要因統合画像データ生成部14は、不良要因訓練画像データ格納部22から不良要因訓練画像データP3を取得し、不良要因訓練画像データP3から不良要因統合画像データP4を生成する。不良要因統合画像データ生成部14は、不良要因統合画像データP4を不良要因統合画像データ格納部24に送信する。不良要因統合画像データ格納部24は、不良要因統合画像データP4を格納する。
【0040】
S3にて、良否判定部12は、モデル格納部21から学習済みモデルMを取得する。
【0041】
S4にて、良否判定部12は、画像データ格納部20からテスト画像データP5,P6を取得する。
【0042】
S5にて、良否判定部12は、学習済みモデルMを用いて、良品または不良品とラベルされたテスト画像データP5,P6が、良品または不良品であるかを判定する。良否判定部12は、判定結果を分析教示部13に送信する。
【0043】
S6にて、分析教示部13は、良否判定部12から判定結果を取得する。分析教示部13は、不良要因訓練画像データP3から不良要因訓練画像データP3を取得する。また、分析教示部13は、正判定トリミング画像データ格納部23から、正判定トリミング画像データを取得する。また、分析教示部13は、不良要因統合画像データ格納部24から不良要因統合画像データP4を取得する。
【0044】
分析教示部13は、良否判定部12の判定結果に基づいて、不良品における真不良部位を誤判定した場合に、不良要因情報に基づいて誤判定要因を分析し、誤判定要因に応じた解決策を導出する。
【0045】
分析教示部13は、導出された解決策を、表示装置5に表示させる。
【0046】
表示装置5に表示された解決策がユーザによって見られた後、ユーザによって、解決策が採用されるか否かが判断される。これにより、いずれかの解決策が、ユーザによって選択される。
【0047】
S7にて、再学習用訓練画像データ生成部15は、画像データ格納部20から訓練画像データP1,P2を取得する。次に、再学習用訓練画像データ生成部15は、選択された解決策に応じて、不良要因訓練画像データ格納部22から不良要因訓練画像データP3を取得したり、正判定トリミング画像データ格納部23から正判定トリミング画像データを取得したり、または、不良要因統合画像データ格納部24から不良要因統合画像データP4を取得したりする。
【0048】
再学習用訓練画像データ生成部15は、選択された解決策に基づいて、再学習用の訓練画像データP1,P2を生成する。
【0049】
以上により、機械学習装置1の全体的な動作が終了する。
【0050】
3.機械学習装置1の具体的な動作
続いて、本形態に係る機械学習装置1の具体的な動作について説明する。まず、上記のS1~S3における動作について、図3を参照して説明する。図3に示すように、良品とラベルされた複数の良品訓練画像データP1と、不良品とラベルされた複数の不良品訓練画像データP2から、1つの学習済みモデルMが生成される。また、複数の不良要因訓練画像データP3から1つの不良要因統合画像データP4が生成される。
【0051】
次に上記のS4~S5における動作について図4図6を参照して説明する。図4に示すように、良否判定部12は、良品とラベルされた良品テスト画像データP5と、不良品とラベルされた不良品テスト画像データP6とを取得する。良否判定部12は、生成された学習済みモデルMに基づいて、良品テスト画像データP5および不良品テスト画像データP6について、良品であるかまたは不良品であるかを判定する。
【0052】
良否判定部12が、良品テスト画像データP5および不良品テスト画像データP6に対してなす判定は下記のとおりである。
・判定A(真陰性):良品テスト画像データP5が良品であると判定される。この判定は正しいので正判定である。良品が、良品と正しく判定されているので問題はない。
・判定B(偽陽性):良品テスト画像データP5が、偽不良部位に基づいて不良品であると判定される。この判定は誤っているので誤判定である。しかし、製造の観点から見ると、単に歩留まりが低下するだけであり、真正の不良品が市場に流通する事態を招くわけではない。したがって、本形態においては問題視しない。
・判定C(第1真陽性):不良品テスト画像データP6について、真不良部位が正しく認識されて不良品であると判定される。この判定は正しいので正判定である。不良品が、不良品と正しく判定されているので問題はない。
・判定D(第2真陽性):図5に示すように、不良品テスト画像データP6について、真不良部位ではなく偽不良部位に基づいて、不良品であると判定される。不良品を不良品であると判定しており、判定自体は正しいので正判定である。しかし、このような判定を行った学習済みモデルMを使用していると、真不良部位が看過された不良品が市場に流通する可能性が生じる。したがって、本形態では、当該判定を、真不良部位を誤判定した場合として、対策が必要な場合として取り上げる。
・判定E(偽陽性):図5に示すように、不良品テスト画像データP6について、真不良部位を認識せず、良品であると判定される。この判定は誤っているので誤判定である。また、上記の判定Dと同様に、真不良部位が看過された不良品が市場に流通する可能性が生じる。したがって、本形態では、当該判定を、真不良部位を誤判定した場合として、対策が必要な場合として取り上げる。
【0053】
ただし、図5に示した不良品テスト画像データP6の例は、判定Dおよび判定Eの説明の便宜のために用いたものであり、以降の説明内容を限定するものではない。
【0054】
上記のように、製造現場において最も懸念されるのは、工作物Wに生じた真不良部位が認識されないことである。このため、図4に示すように、本形態では、上記の判定DおよびEがなされた不良品テスト画像データP6が、真不良部位が誤判定された場合として抽出される。ただし、判定Bのように、良品テスト画像データP5が、偽不良部位に基づいて不良品であると判定された場合が抽出される構成としてもよい。
【0055】
良否判定部12は、抽出された不良品テスト画像データP6について、判定の根拠となる部位が着目された頻度を示すクラスアクティベーションマップP8(或いは、ヒートマップ、ローカリゼーションマップ)を作成する(図6参照)。クラスアクティベーションマップP8においては、画素ごとに、良否判定部12が着目した着目度数が記憶されている。クラスアクティベーションマップP8においては、着目度数がトーンの濃淡として表現されている。作成されたクラスアクティベーションマップP8に対して、真不良部位がラベリングされる。
【0056】
分析教示部13は、不良品における真不良部位を誤判定した場合に、不良要因情報に基づいて、真不良部位を誤判定した誤判定要因を分析し、誤判定要因に応じた解決策を教示する。解決策は一つでもよいし、2つ以上の複数でもよい。本形態では、3つの解決策1~3が教示される例について説明する。
【0057】
4.解決策1
解決策1について図6図7を参照して説明する。分析教示部13は、良否判定部12から、クラスアクティベーションマップP8を取得する。また、分析教示部13は、良否判定部12により誤判定されたテスト画像データP5,P6である誤判定テスト画像データP7における最大着目度数Nmaxと、誤判定テスト画像データP7において誤判定された真不良部位における着目度数Nと、を取得する(図6参照)。
【0058】
着目度数Nについて詳細に説明する。分析教示部13は、誤判定テスト画像データP7と、不良要因訓練画像データP4に紐づけられた不良要因情報と、に基づいて、誤判定テスト画像データP7における真不良部位を取得する。次に、分析教示部13は、誤判定テスト画像データP7において誤判定された真不良部位における着目度数Nを取得する。
【0059】
図6(a)には、真不良部位が誤判定された不良品テスト画像データP6から作成されたクラスアクティベーションマップP8が示されている。
【0060】
クラスアクティベーションマップP8には、真不良部位(N=5)とラベルされた四角形(以下、N5領域という)と、真不良部位(N=10)とラベルされた四角形(以下、N10領域という)と、偽不良部位(Nmax=50)とラベルされた多角形(以下、N50領域)が記載されている。
【0061】
上記したN=5、およびN=10は、上記した着目度数Nが、それぞれ5、および10であることを示す。また、Nmax=50は、上記した最大着目度数Nmaxが50であることを示す。ただし、N、およびNmaxの数字については、上記の数字に限定されない。
【0062】
N5領域内には、不良要因30として傷が存在している。この傷は真不良部位である。しかし、本形態においては、N5領域内の傷について、良否判定部12は認識していなかった。すなわち、N5領域内の傷については、真不良部位が誤判定されている。
【0063】
N10領域内には不良要因30である傷が存在している。この傷は真不良部位である。本形態においてはN10領域内の傷について、良否判定部12は認識していた。すなわち、N10領域の傷については、真不良部位が真不良部位であると正しく判定されている。
【0064】
N50領域内には傷が存在しない。本形態においては、良否判定部12は、N50領域に傷があると認識し、不良品であると判定していた。すなわち、N50領域の傷については、偽不良部位に基づいて不良品と判定されているので、真不良部位が誤判定されている。
【0065】
図6(b)に示すように、分析教示部13は、最大着目度数Nmax=50と、真不良部位における着目度数N=5,10との差である不足着目度数ΔNを算出する。N5領域については、ΔNは45であり、N10領域については、ΔNは40である。なお念のため、N50領域については、Nmax=50との差になるので、ΔNは0となる。
【0066】
分析教示部13は、算出されたΔNに基づいて、訓練画像データP1,P2のうちの不良品訓練画像データP2の数量不足が、真不良部位を誤判定した誤判定要因であると分析する。詳細には、分析教示部13は、算出されたΔNに基づいて、訓練画像データP1,P2のうち、誤判定された真不良部位を含む不良品訓練画像データP2の数量不足が、真不良部位を誤判定した誤判定要因であると分析する。
【0067】
図6(c)に示すように、分析教示部13は、不足着目度数ΔNに基づき得られた真不良部位における最適着目度数Nbestを算出する。本形態においては、N5領域のNbestは50であり、N10領域のNbestは50である。なお念のため、N50領域におけるNbestは50である。
【0068】
分析教示部13は、不足着目度数ΔN、および、Nbestの少なくとも一つを解決策のための情報として、表示装置5に表示させ、ユーザに教示する。
【0069】
解決策1がユーザによって選択された場合、水増し処理部16は、誤判定された真不良部位を含む訓練画像データP1,P2を水増し処理する。訓練画像データP1,P2を水増しする個数は、不足着目度数ΔNに基づいてユーザが決定した任意の個数でもよいし、Nbestとして教示された個数でもよい。
【0070】
図7(a)に示すように、水増し処理部16は、不良品訓練画像データP2、および良品訓練画像データP1を画像データ格納部20から取得する。
【0071】
図7(b)に示すように、水増し処理部16は、分析教示部13の分析結果に基づいて、不良品訓練画像データP2から、真不良部位に対応する位置に形成されている真不良部位を含む領域を切り出す。切り出される範囲は、真不良部位を含んで、真不良部位よりも広い領域である。
【0072】
図7(b)に示すように、水増し処理部16は、切り出された領域を、良品訓練画像データP1に貼り付ける。良品訓練画像データP1のうち、切り出された領域が貼り付けられる位置は特に限定されない。例えば、切り出された領域は、不良品訓練画像データP2または不良品テスト画像データP6に真不良部位が生じていた位置またはその位置の近傍に貼り付けてもよいし、不良要因統合画像データP4において不良要因30の発生確率が比較的に高い位置に貼り付けてもよいし、クラスアクティベーションマップP8において着目度数Nが比較的に小さな位置に貼り付けてもよい。
【0073】
図7(c)に示すように、水増し処理部16は、切り出された領域が貼り付けられた良品訓練画像データP1を水増し処理する。具体的には、切り出された領域の真不良部位を、任意の角度で回転させたり、任意の位置にシフトさせたり、任意の倍率で拡大または縮小させたりする。これにより、複数の、新たな不良品訓練画像データP2が作成される。ただし、水増し処理において、真不良部位を変形させたりしてもよい。
【0074】
5.解決策2
解決策2について図8図10を参照して説明する。図8に示すように、分析教示部13は、画像データ格納部20から、真不良部位を誤判定された誤判定テスト画像データP7を取得する。また、分析教示部13は、不良要因統合画像データ格納部24から、不良要因統合画像データP4を取得する。
【0075】
分析教示部13は、誤判定テスト画像データP7のうち、誤判定された真不良部位の位置を取得する。分析教示部13は、不良要因統合画像データP4のうち、誤判定テスト画像データP7において誤判定された真不良部位に対応する位置を特定する。
【0076】
分析教示部13は、不良要因統合画像データP4のうち、誤判定テスト画像データP7において誤判定された真不良部位に対応する位置に生成された、不良要因群31を含む領域を切り出す。本形態では、分析教示部13は、3種類の、大きさの異なる領域を切り出している。ただし、切り出される領域の個数は、1つ、または2つでもよく、4つ以上でもよい。
【0077】
上記の不良要因群31とは、不良要因統合画像データP4において、連続または近接して配置される複数の不良要因30による、まとまりをいう。換言すると、不良要因群31は、不良品訓練画像データP2の生成に供された複数の不良要因訓練画像データP3に含まれる不良要因30が累積されたものである。
【0078】
分析教示部13は、不良要因統合画像データP4の全画像サイズに対する、不良要因統合画像データP4における不良要因30を含む局所画像サイズの割合を算出する。なお、上記の局所画像サイズは、不良品テスト画像データP6において誤判定された真不良部位に対応する位置を含む1つの不良要因群31の画像サイズである。
【0079】
分析教示部13は、正判定トリミング画像データ格納部23から、誤判定テスト画像データP7において誤判定された真不良部位に対応する位置に不良要因30が記録された正判定トリミング画像データを取得する。分析教示部13は、当該正判定トリミング画像データから、正判定トリミング画像データの全画像サイズに対する、正判定トリミング画像データにおける真不良部位の局所画像サイズの割合を算出する。
【0080】
分析教示部13は、正判定トリミング画像データの全画像サイズに対する、正判定トリミング画像データにおける真不良部位の局所画像サイズの割合と、不良要因統合画像データP4の全画像サイズに対する、不良要因統合画像データP4における不良要因30を含む局所画像サイズの割合と、に基づいて、不良品テスト画像データP6の全画像サイズに対する、誤判定された真不良部位の局所画像サイズの割合が不適であることが、真不良部位が誤判定された誤判定要因であると分析する。
【0081】
換言すると、分析教示部13は、正判定トリミング画像データに基づいて、不良品テスト画像データP6における全画像サイズに対する局所画像サイズの割合が不適であることが、真不良部位が誤判定された誤判定要因であると分析する。
【0082】
分析教示部13は、正判定トリミング画像データの全画像サイズに対する、正判定トリミング画像データにおける真不良部位の局所画像サイズの割合に基づいて、良否判定部12が真不良部位を適切に認識できる全画像サイズを決定する。分析教示部13は、決定された全画像サイズに基づいて、機械学習に用いる訓練画像データP1,P2の適切全画像サイズを、表示装置5に表示させることにより、ユーザに教示する。
【0083】
解決策2がユーザによって選択された場合、図9に示すように、画像分割処理部17は、分析教示部13の分析結果に基づいて、1つ、または複数の訓練画像データP1,P2を分割する。図9では、不良品訓練画像データP2が画像分割処理される例を示す。なお、良品訓練画像データP1が画像分割処理されてもよい。画像分割処理部17は、分割された不良品訓練画像データP2を、適切全画像サイズに拡大または縮小させる。本形態では、分割された不良品訓練画像データP2の例として、モデルα、モデルβ、モデルγを例示した。ただし、分割される画像の領域は、上記のモデルα~γに限定されない。
【0084】
画像分割処理部17は、適切全画像サイズに拡大または縮小された画像データを、水増しする。図10に、モデルαを例にして、水増し処理について説明する。
【0085】
図10に示すように、不良品訓練画像データP2から、適切全画像サイズに拡大または縮小された画像データが切り出される。画像分割処理部17は、当該画像データの真不良部位を、任意の角度で回転させたり、任意の位置にシフトさせたり、任意の形状に変形させたり、任意の倍率で拡大または縮小させたりする。これにより、複数の、新たな不良品訓練画像データP2が作成される。
【0086】
画像分割処理部17は、モデルαに基づいて水増しされた一組の画像データを、モデル生成部11に送信する。モデル生成部11は、モデルαに基づいて機械学習を行うことにより、一つの学習済みモデルMを生成する。同様にして、モデルβに基づいて1つの学習済みモデルMが生成され、モデルγに基づいて1つの学習済みモデルMが生成される。つまり、モデル生成部11は、画像分割処理部17により分割された各モデルに対応して、学習済みモデルMを生成する。
【0087】
6.解決策3
解決策3について図11図12を参照して説明する。図11に示すように、分析教示部13は、不良要因統合画像データ格納部24から、不良要因統合画像データP4を取得する。分析教示部13は、不良要因統合画像データP4において複数の不良要因30を含む不良要因領域32を取得する。図11において、不良要因領域32は、不良要因統合画像データP4中に3つの四角形で示されている。
【0088】
不良要因領域32は、ユーザにより指定される。不良要因領域32の位置、大きさ、形状は、不良要因30の位置、形状、大きさに基づいて任意に設定される。本形態では、不良要因領域32は四角形で指定されたが、三角形、五角形等の多角形でもよいし、円形状、長円形状、トラック形状等でもよく、任意の形状を採用できる。不良要因領域32の個数は、1つ、2つ、または4つ以上でもよい。
【0089】
分析教示部13は、良否判定部12により真不良部位が誤判定された誤判定テスト画像データP7を取得する。分析教示部13は、不良要因領域32がラベルされた不良要因統合画像データP4と、誤判定テスト画像データP7と、に基づいて、誤判定テスト画像データP7において着目すべきでない部位が含まれることが、真不良部位が誤判定された誤判定要因であると分析する。
【0090】
分析教示部13は、不良要因領域32を除く領域をマスキング領域40と指定する。分析教示部13は、誤判定テスト画像データP7に対してマスキング領域40をマスキング処理した、マスキング済み画像データP9を生成する。分析教示部13は、マスキング済み画像データP9を、表示装置5に表示させることにより、ユーザに教示する。これにより、分析教示部13は、訓練画像データP1,P2に対するマスキング領域40を解決策の情報としてユーザに教示する。
【0091】
解決策3がユーザによって選択された場合、図12に示すように、マスキング処理部18は、不良要因統合画像データ格納部24から、不良要因統合画像データP4を取得する。マスキング処理部18は、不良要因統合画像データP4において複数の不良要因30を含む不良要因領域32を取得する。
【0092】
マスキング処理部18は、画像データ格納部20から、良品訓練画像データP1および不良品訓練画像データP2を取得する。マスキング処理部18は、良品訓練画像データP1および不良品訓練画像データP2に対して、不良要因領域32を除く領域をマスキング処理する。これにより、マスキング処理部18は、良品訓練画像データP1および不良品訓練画像データP2にマスキング処理が施された、マスキング済み画像データP9を生成する。良品訓練画像データP1から生成されたマスキング済み画像データP9、および不良品訓練画像データP2から生成されたマスキング済み画像データP9は、それぞれ、新たな訓練画像データP1,P2として、モデル生成部11への入力画像データとされる。
【0093】
7.本形態の作用効果
本形態によれば、分析教示部13が誤判定要因に応じた解決策を教示するので、ユーザは、誤判定テスト画像データP7が正しく判定されるようなるための解決策について知ることができる。これにより、誤判定テスト画像データP7について、誤判定の原因を推定し、推定された原因から対策を考案するための労力を削減することができる。この結果、全体として、学習済みモデルMを構築するための労力を削減することができる。
【0094】
本形態によれば、複数の解決策が教示されるので、ユーザは、教示された複数の解決策のいずれかを選択すればよい。これにより、学習済みモデルMを構築するための労力をより削減できる。
【0095】
不良要因統合画像データP4には、1枚の画像データに、不良要因30の分布状態が視覚化されている。これにより、学習済みモデルMを改善するための解決策を案出する際に不良要因30の分布状態を考慮する場合において、効率よく解決策を案出することができる。
【0096】
(実施形態2)
続いて、実施形態2の機械学習装置1について図13を参照して説明する。本形態においては、解決策3に代えて解決策4が教示される以外は実施形態1と略同様なので、同一の構成要素については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0097】
解決策4について図13を参照して説明する。図13に示すように、分析教示部13は、不良要因統合画像データ格納部24から、不良要因統合画像データP4を取得する。分析教示部13は、不良要因統合画像データP4において複数の不良要因30を含む不良要因領域32を取得する。図13において、不良要因領域32は、不良要因統合画像データP4中に3つの四角形で示されている。
【0098】
分析教示部13は、真不良部位が誤判定された誤判定テスト画像データP7と、当該誤判定テスト画像データP7に基づいて生成されたクラスアクティベーションマップP8と、を取得する。分析教示部13は、誤判定テスト画像データP7に基づくクラスアクティベーションマップP8において、上記した着目度数Nが所定度数以下である低着目度数領域41を取得する。本形態では、所定度数は10とされる。図13に記載されたクラスアクティベーションマップP8において、N=10の境界が黒い曲線で示されている。N=10の境界よりもトーンが暗い部分が、着目度数Nが10以下の低着目度数領域41である。低着目度数領域41の境界を定義する所定度数は、10に限られず、20,30等、任意の値を設定できる。
【0099】
分析教示部13は、不良要因領域32および低着目度数領域41を除く領域をマスキング領域40と指定する。分析教示部13は、誤判定テスト画像データP7に対してマスキング領域40をマスキング処理した、マスキング済み画像データP9を生成する。分析教示部13は、マスキング済み画像データP9を、表示装置5に表示させることにより、ユーザに教示する。これにより、分析教示部13は、訓練画像データP1,P2に対するマスキング領域40を解決策の情報としてユーザに教示する。
【0100】
本形態によれば、着目度数が所定度数以下である低着目度数領域41を除く領域をマスキング領域40と指定する。これにより、訓練データから、着目すべきでない部位を効果的に除くことができる。この結果、学習済みモデルMの精度を向上させることができる。
【0101】
(実施形態3)
続いて、実施形態3の機械学習装置1について図14を参照して説明する。本形態に係る機械学習装置1の全体的な動作について図14を参照して説明する。S1~S5については、実施形態1と同様なので、重複する説明を省略する。
【0102】
S10にて、分析教示部13は、良否判定部12から判定結果を取得する。分析教示部13は、不良要因訓練画像データP3から不良要因訓練画像データP3を取得する。また、分析教示部13は、正判定トリミング画像データ格納部23から、正判定トリミング画像データを取得する。また、分析教示部13は、不良要因統合画像データ格納部24から不良要因統合画像データP4を取得する。
【0103】
分析教示部13は、良否判定部12の判定結果に基づいて、不良品における真不良部位を誤判定した場合に、不良要因情報に基づいて誤判定要因を分析し、誤判定要因に応じた解決策を導出する。
【0104】
分析教示部13は、導出された解決策を再学習用訓練画像データ生成部15に送信する。再学習用訓練画像データ生成部15は、画像データ格納部20から訓練画像データP1,P2を取得する。次に、再学習用訓練画像データ生成部15は、分析教示部13から送信された解決策に応じて、不良要因訓練画像データ格納部22から不良要因訓練画像データP3を取得し、正判定トリミング画像データ格納部23から正判定トリミング画像データを取得し、不良要因統合画像データ格納部24から不良要因統合画像データP4を取得する。
【0105】
再学習用訓練画像データ生成部15は、分析教示部13から送信された解決策に基づいて、再学習用の訓練画像データP1,P2を生成する。再学習用訓練画像データ生成部15は、生成された再学習用の訓練画像データP1,P2をモデル生成部11に送信する。
【0106】
S11にて、モデル生成部11は、取得した、再学習用の訓練画像データP1,P2を用いて機械学習を行うことにより、S2で生成された学習済みモデルMとは異なる、新学習済みモデルを生成する。モデル生成部11は、生成された新学習済みモデルを良否判定部12に送信する。
【0107】
S12にて、良否判定部12は、モデル生成部11から新学習済みモデルを取得する。また、良否判定部12は、画像データ格納部20からテスト画像データP5,P6を取得する。
【0108】
良否判定部12は、新学習済みモデルを用いて、S4にて取得されたテスト画像データP5,P6が、良品または不良品であるかを判定する。良否判定部12は、新学習済みモデルの判定結果を分析教示部13に送信する。
【0109】
S13にて、分析教示部13は、S10にて導出された解決策を、表示装置5に表示させることにより、ユーザに解決策を教示する。
【0110】
S14にて、分析教示部13は、S10にて導出された解決策の有効度を表示装置5に表示させることにより、ユーザに教示する。
【0111】
解決策の有効度は、特に限定されない。解決策の有効度として、例えば、S5における学習済みモデル評価において真不良部位が誤判定された誤判定テスト画像データP7の個数と、S12における学習済みモデル評価において真不良部位が誤判定された誤判定テスト画像データP7の個数と、を比較して、誤判定テスト画像データP7の個数が少ない解決策ほど有効であるとしてもよい。
【0112】
また、例えば、S5における学習済みモデル評価において真不良部位が誤判定された誤判定テスト画像データP7のうち、S12における学習済みモデル評価において真不良部位が正判定されたテスト画像データP5,P6の個数が多い解決策ほど有効であるとしてもよい。
【0113】
以上により、機械学習装置1の全体的な動作が終了する。
【0114】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0115】
本形態によれば、提案された複数の解決策について、どの解決策が有効であるかを、複数の解決策を検討する前に知ることができる。これにより、学習済みモデルMを構築するための労力を一層省力化できる。
【0116】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0117】
1…機械学習装置、2…演算処理装置、3…記憶装置、11 モデル生成部、12 良否判定部、13 分析教示部、14 不良要因統合画像データ生成部、16…水増し処理部、17 画像分割処理部、20…画像データ格納部、21…モデル格納部、22…不良要因訓練画像データ格納部、23…正判定トリミング画像データ格納部、30…不良要因、31…不良要因群、32…不良要因領域、40…マスキング領域、41…低着目度数領域、N…着目度数、Nbest…最適着目度数、Nmax…最大着目度数、M…学習済みモデル、ΔN…不足着目度数、P1…良品訓練画像データ(訓練画像データ)、P2…不良品訓練画像データ(訓練画像データ)、P3…不良要因訓練画像データ、P4…不良要因統合画像データ、P5…良品テスト画像データ(テスト画像データ)、P6…不良品テスト画像データ(テスト画像データ)、P7…誤判定テスト画像データ、P8…クラスアクティベーションマップ、P9…マスキング済み画像データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14