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特開2024-86717相互侵入ポリマーネットワークを有するポリマー粒子を含むトナー粒子用添加剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086717
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】相互侵入ポリマーネットワークを有するポリマー粒子を含むトナー粒子用添加剤
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20240621BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20240621BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20240621BHJP
   C08G 63/672 20060101ALI20240621BHJP
   C08F 257/02 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
G03G9/097 372
G03G9/097 365
G03G9/087 331
G03G9/08 381
C08G63/672
C08F257/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169279
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット-パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】河本 惠司
(72)【発明者】
【氏名】ホン, ジンモ
【テーマコード(参考)】
2H500
4J026
4J029
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA08
2H500AA10
2H500BA27
2H500CA02
2H500CA04
2H500CA06
2H500CA23
2H500EA41D
2H500EA42D
2H500EA44B
2H500EA52D
4J026AA17
4J026BA05
4J026BA07
4J026BA27
4J026BA30
4J026BB04
4J026DA03
4J026DA04
4J026DA07
4J026DA08
4J026DA14
4J026DA16
4J026DB03
4J026DB04
4J026DB22
4J026DB32
4J026EA05
4J026FA02
4J026GA09
4J029AA03
4J029AB07
4J029AC02
4J029AE11
4J029AE18
4J029BB13A
4J029BF14A
4J029BF23
4J029CB06A
4J029GA13
4J029GA14
4J029HA01
4J029HB01
4J029HB04A
4J029JC771
4J029JE033
4J029JF251
4J029KB02
4J029KB05
4J029KC01
4J029KD02
4J029KE08
4J029KE09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】環境安定性に優れた(低温低湿環境下、高温高湿環境下といったトナー粒子が置かれる環境の違いによって生じる帯電量の差が小さい)トナー粒子を得ること。
【解決手段】ポリスチレン及びポリ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種のポリマーにより形成された相互侵入ポリマーネットワークを有するポリマー粒子を含む、トナー粒子用添加剤による。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン及びポリ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種のポリマーにより形成された相互侵入ポリマーネットワークを有するポリマー粒子を含む、トナー粒子用添加剤。
【請求項2】
前記ポリマー粒子の平均粒子径が100nm以下である、請求項1に記載のトナー粒子用添加剤。
【請求項3】
前記相互侵入ポリマーネットワークが、ポリスチレン及びポリ(メタ)アクリレートにより形成されている、請求項1に記載のトナー粒子用添加剤。
【請求項4】
前記ポリスチレンの含有量が、前記ポリマー粒子全量を基準として60質量%以上である、請求項3に記載のトナー粒子用添加剤。
【請求項5】
前記ポリ(メタ)アクリレートが、モノマー単位として、メチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート、及びエーテル基を有する(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項3に記載のトナー粒子用添加剤。
【請求項6】
コア粒子と、
前記コア粒子に外添された添加剤と、を含有するトナー粒子であって、
前記添加剤が、ポリスチレン及びポリ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種のポリマーにより形成された相互侵入ポリマーネットワークを有するポリマー粒子を含む、トナー粒子。
【請求項7】
前記ポリマー粒子の平均粒子径が100nm以下である、請求項6に記載のトナー粒子。
【請求項8】
前記相互侵入ポリマーネットワークが、ポリスチレン及びポリ(メタ)アクリレートにより形成されている、請求項6に記載のトナー粒子。
【請求項9】
前記ポリスチレンの含有量が、前記ポリマー粒子全量を基準として60質量%以上である、請求項8に記載のトナー粒子。
【請求項10】
前記ポリ(メタ)アクリレートが、モノマー単位として、メチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート、及びエーテル基を有する(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項8に記載のトナー粒子。
【請求項11】
前記添加剤の含有量が、前記コア粒子100質量部に対して、0.5質量部以上5質量部以下である、請求項6に記載のトナー粒子。
【請求項12】
前記コア粒子が、結着樹脂と、着色剤と、離型剤とを含有する、請求項6に記載のトナー粒子。
【請求項13】
前記結着樹脂が、ポリエステル樹脂を含む、請求項12に記載のトナー粒子。
【請求項14】
前記結着樹脂が、2種以上のポリエステル樹脂を含む、請求項12に記載のトナー粒子。
【請求項15】
トナー粒子用添加剤の製造方法であって、
ポリマーを含む前駆体粒子にモノマーを含浸させる工程と、
前記モノマーを重合させて、ポリスチレン及びポリ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種のポリマーにより形成された相互侵入ポリマーネットワークを有するポリマー粒子を得る工程と、
を備える、トナー粒子用添加剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
電子写真法などの静電荷像を経て画像情報を可視化する方法は、様々な分野で利用されている。電子写真法においては、感光体表面を均一に帯電させた後、この感光体表面に静電荷像を形成し、トナー粒子を含む現像剤で静電潜像を現像することで、トナー像として可視化する。そして、このトナー像が記録媒体表面に転写され、定着することにより、画像が形成される。
【発明を実施するための形態】
【0002】
以下、トナー粒子用添加剤の一実施形態について説明する。一実施形態に係るトナー粒子用添加剤は、ポリスチレン及びポリ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種のポリマーにより形成された相互侵入ポリマーネットワークを有するポリマー粒子を含む。
【0003】
相互侵入ポリマーネットワーク(IPN)は、二種以上のポリマーが相互に絡み合って形成される網目構造を有している。一実施形態において、IPNは、ポリスチレン及びポリ(メタ)アクリレートを含むポリマーにより形成されていてよく、ポリスチレンを含む基体粒子、及び当該基体粒子に侵入したポリ(メタ)アクリレートにより形成されていてよい。
【0004】
ポリスチレンは、架橋性モノマーによって架橋されていてよい。架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼンなどの複数のビニル基を有するモノマー、及び、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの複数の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーが挙げられる。架橋性モノマーの含有量は、ポリスチレン100質量部に対して、0.1質量部以上であってよく、2質量部以下であってよい。
【0005】
ポリ(メタ)アクリレートは、モノマー単位として、メチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート、及びエーテル基を有する(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。
【0006】
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートであってよい。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートにおけるヒドロキシアルキル基の炭素数は、例えば、1以上であってよく、4以下であってよい。ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0007】
エーテル基を有する(メタ)アクリレートは、例えば、下記式(1)で表される(メタ)アクリレートであってよい。
【化1】

式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rはアルキレン基を表し、mは1以上の整数を表し、Rはアルキル基を表す。
【0008】
で表されるアルキレン基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。Rで表されるアルキレン基の炭素数は、1以上であってよく、4以下であってよい。Rで表されるアルキレン基は、エチレン基であってよい。mは、2以上であってもよく、4以下、又は3以下であってもよく、1又は2であってもよい。
【0009】
で表されるアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。Rで表されるアルキル基の炭素数は、1以上であってよく、4以下であってよい。Rで表されるアルキル基は、メチル基であってよい。
【0010】
ポリスチレンの含有量は、好適な範囲の比誘電率と溶解性パラメータ(「溶解度パラメータ」又は「SP値」とも呼ばれる)が得られ、帯電速度及び帯電量に優れる観点から、ポリマー粒子全量を基準として、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、又は65質量%以上であってよく、99質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、又は85質量%以下であってよい。
【0011】
ポリ(メタ)アクリレートの含有量は、好適な範囲の比誘電率と溶解性パラメータが得られる観点から、ポリマー粒子全量を基準として、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であってよく、50質量%以下、40質量%以下、又は30質量%以下であってよい。
【0012】
IPNは、ポリスチレンと、ポリ(メタ)アクリレート以外のポリマーとにより形成されていてもよい。ポリ(メタ)アクリレート以外のポリマーとしては、例えば、アクリロニトリル;マレイン酸エステル、無水マレイン酸などのマレイン酸誘導体;フマル酸エステルなどのフマル酸誘導体;イタコン酸エステル、無水イタコン酸などのイタコン酸誘導体;及びクロトン酸エステルなどのクロトン酸誘導体が挙げられる。
【0013】
IPNは、ポリ(メタ)アクリレートと、ポリスチレン以外のポリマーとにより形成されていてもよい。ポリスチレン以外のポリマーとしては、例えば、アクリロニトリル;マレイン酸エステル、無水マレイン酸などのマレイン酸誘導体;フマル酸エステルなどのフマル酸誘導体;イタコン酸エステル、無水イタコン酸などのイタコン酸誘導体;及びクロトン酸エステルなどのクロトン酸誘導体が挙げられる。
【0014】
ポリマー粒子の平均粒子径は、100nm以下、70nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、又は20nm以下であってよく、5nm以上、10nm以上、又は20nm以上であってよい。ポリマー粒子の平均粒子径は、体積基準のメディアン径(Dv50、例えばマイクロトラックHRA(マイクロトラック・ベル社製)を使用)として定義される。
【0015】
次に、上述したトナー粒子用添加剤の製造方法の一実施形態について説明する。一実施形態に係るトナー粒子用添加剤の製造方法は、ポリマーを含む前駆体粒子にモノマーを含浸させる工程と、モノマーを重合させて、ポリスチレン及びポリ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種のポリマーにより形成された相互侵入ポリマーネットワークを有するポリマー粒子を得る工程と、を備える。
【0016】
一実施形態において、前駆体粒子がポリスチレンを含み、モノマーが(メタ)アクリレートを含んでよい。この場合、得られるポリマー粒子におけるIPNは、ポリスチレン及びポリ(メタ)アクリレートを含むポリマーにより形成される。
【0017】
前駆体粒子は、例えば、スチレン及び架橋性モノマーを重合させることにより得られる。架橋性モノマーの詳細は上述したとおりである。架橋性モノマーの配合量は、スチレン100質量部に対して、0.1質量部以上であってよく、2質量部以下であってよい。
【0018】
(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート、及びエーテル基を有する(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート及びエーテル基を有する(メタ)アクリレートの詳細は上述したとおりである。
【0019】
ポリスチレン(スチレン)の含有量は、前駆体粒子及びモノマーの合計量を基準として、好適な範囲の比誘電率と溶解性パラメータが得られ、帯電速度及び帯電量に優れる観点から、好ましくは、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、又は65質量%以上であってよく、99質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、又は85質量%以下であってもよい。
【0020】
(メタ)アクリレートの含有量は、好適な範囲の比誘電率と溶解性パラメータが得られる観点から、前駆体粒子及びモノマーの合計量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であってよく、50質量%以下、40質量%以下、又は30質量%以下であってよい。
【0021】
前駆体粒子に含浸されたモノマーを重合させる方法は、例えば、ラジカル重合、カチオン重合、又はアニオン重合であってよい。また、ラジカル、カチオン、又はアニオンなどの活性種は、熱、可視光もしくは紫外光、又は電子線などにより発生させてもよい。モノマーを重合させることで、当該モノマーから生成したポリマーと、前駆体粒子に含まれているポリマーとにより、IPNが形成される。可視光および/または紫外光により活性種を発生させる場合、材料の吸収波長による強度の減衰も考慮に入れて可視光および/または紫外光を照射する。
【0022】
次に、トナー粒子の一実施形態について説明する。一実施形態に係るトナー粒子は、コア粒子と、コア粒子に外添された添加剤と、を含有する。当該添加剤は、上述したトナー粒子用添加剤である。
【0023】
コア粒子は、例えば結着樹脂を含む。結着樹脂は、1種以上のポリエステル樹脂を含んでよい。結着樹脂は、1種以上の非結晶性ポリエステル樹脂を含んでよく、1種以上の結晶性ポリエステル樹脂を含んでよく、1種以上の非結晶性ポリエステル樹脂と1種以上の結晶性ポリエステル樹脂とを含んでよい。
【0024】
非結晶性ポリエステル樹脂は、示差走査熱量測定法(DSC)において、明確な吸熱ピークを有さないポリエステル樹脂であってよい。非結晶性ポリエステルは、例えば、示差走査熱量測定法において、温度上昇速度を10℃/分で測定したときに、階段状の吸熱変化を示すポリエステル樹脂や、吸熱ピークの半値幅が15℃を超えるポリエステルであると定義されてもよい。
【0025】
結晶性ポリエステル樹脂は、示差走査熱量測定法(DSC)において、明確な吸熱ピークを有するポリエステル樹脂であってよい。結着樹脂が結晶性ポリエステル樹脂を含むことにより、トナーの画像光沢度の向上、及び低温定着性向上が図られる。
【0026】
トナー粒子における結着樹脂の含有量は、トナー粒子の全量を基準として、40質量%以上、45質量%以上、又は50質量%以上であってよく、90質量%以下、85質量%以下、又は75質量%以下であってよい。
【0027】
コア粒子は、着色剤を更に含んでもよい。着色剤は、例えば、ブラック着色剤、シアン着色剤、マゼンタ着色剤及びイエロー着色剤から選ばれる少なくとも1種の着色剤を含むことができる。着色剤は、色相、彩度、明度、耐候性、トナー内の分散性などを考慮して、1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0028】
着色剤の含有量は、トナー粒子の全量を基準として、着色効果を十分に発現させる観点から、好ましくは、0.5質量%以上、1質量%以上、又は2質量%以上であってよく、トナー粒子の製造コストの上昇に大きな影響を及ぼさずに、十分な摩擦帯電量を得ることができる観点から、好ましくは、15質量%以下、12質量%以下、又は10質量%以下であってよい。
【0029】
コア粒子は、離型剤を更に含んでもよい。離型剤は、トナー粒子の低温定着性、最終画像耐久性及び耐摩耗特性を向上させるので、離型剤の種類及び含有量は、トナーの特性を考慮して決定することができる。
【0030】
離型剤の含有量は、トナー粒子の全量を基準として、低温定着性が良好であり、定着温度範囲が十分に確保される観点から、好ましくは、1質量%以上、2質量%以上、又は3質量%以上であってよく、保存性及び経済性に優れる観点から、好ましくは、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下であってよい。
【0031】
コア粒子の含有量は、トナー粒子の全量を基準として、80質量%以上、85質量%以上、又は90質量%以上であってよく、99質量%以下、98質量%以下、又は97質量%以下であってよい。
【0032】
コア粒子の平均粒子径は、3μm以上、4μm以上、又は5μm以上であってよく、12μm以下、11μm以下、10μm以下、又は9μm以下であってよい。
【0033】
添加剤(トナー粒子用添加剤)の含有量(添加量)は、コア粒子100質量部に対して、0.5質量部以上、0.8質量部以上、又は1質量部以上であってよく、5質量部以下、3質量部以下、又は1.5質量部以下であってよい。
【0034】
トナー粒子は、上述したトナー粒子用添加剤に加えて、コア粒子に外添された無機粒子を更に含有していてもよい。無機粒子としては、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、及びチタニア粒子が挙げられる。
【0035】
トナー粒子は、荷電制御剤を更に含有してもよい。荷電制御剤は、コア粒子中に内添されてもよいし、コア粒子に外添されてもよい。荷電制御剤は、ネガ系荷電制御剤であってもポジ系荷電制御剤であってもよい。
【0036】
トナー粒子の平均粒子径は、3μm以上、4μm以上、又は5μm以上であってよく、12μm以下、11μm以下、10μm以下、又は9μm以下であってよい。
【0037】
以上説明したトナー粒子は、IPNを有するポリマー粒子を添加剤として含有することにより、従来のトナー粒子(IPNを有さないポリマー粒子が外添されたトナー粒子)に比べて、特に環境安定性に優れた(低温低湿環境下、高温高湿環境下いったトナー粒子が置かれる環境の違いによって生じる帯電量の差が小さい)トナー粒子であり得る。また、一実施形態において、上述のトナー粒子は、IPNを有するポリマー粒子を添加剤として含有することにより、従来のトナー粒子(IPNを有さないポリマー粒子が外添されたトナー粒子)に比べて、高温高湿環境下および低温低湿環境下での帯電速度および帯電量の制御、帯電安定性、流動性、ならびに保管性に優れたトナー粒子であり得る。また、一実施形態において、上述したトナー粒子では、IPNを有するポリマー粒子が外添されていることにより、従来のトナー粒子(例えば、シリカ粒子が外添されたトナー粒子)に比べて、誘電率及び溶解性パラメータを調整しやすく(IPNを構成するポリマーの種類・含有量を変更することにより調整可能であり)、必要に応じて低誘電率のトナー粒子を得ることができる。
【0038】
次に、上述したトナー粒子の製造方法の一実施形態について説明する。一実施形態に係るトナー粒子の製造方法は、ポリマー粒子を得る工程と、ポリマー粒子をコア粒子に外添する工程と、を備える。
【0039】
ポリマー粒子を得る工程は、ポリマーを含む前駆体粒子にモノマーを含浸させる工程と、モノマーを重合させて、ポリスチレン及びポリ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一種のポリマーにより形成された相互侵入ポリマーネットワークを有するポリマー粒子を得る工程と、を含んでいる。これらの工程の詳細は上述したとおりである。
【0040】
ポリマー粒子をコア粒子に外添する方法は、公知の方法であってよい。例えば、粉体ミキサによってコア粒子及びポリマー粒子を混合することにより、ポリマー粒子がコア粒子に外添される。
【0041】
トナー粒子は、一成分系現像剤として使用できる。トナー粒子は、ドット再現性をより向上させ、長期にわたり安定した画像を供給するために、磁性キャリアと混合されて、二成分系現像剤として使用することもできる。
【0042】
トナー粒子は、例えばトナーカットリッジに収容されてよい。より具体的には、トナー粒子は、トナーカートリッジ中の容器内に収容されてよい。すなわち、他の一実施形態は、上述したトナー粒子を収容する容器を備えるトナーカートリッジである。
【実施例0043】
以下、実施例によってトナー粒子用添加剤及びトナー粒子を更に詳細に説明するが、トナー粒子用添加剤及びトナー粒子は実施例に限定されない。なお、実施例において、「部」は、特に記載しない限り、「質量部」を意味する。
【0044】
(添加剤1の調製)
(第1段階)
500mLの容器に脱イオン水1400gと1-ヘキサデカノール65.44gを添加し、混合物のゲル構造を破壊するためにBRANSON MODEL 102Cを使って、最大出力で均一になるまで超音波を照射した。さらに、この混合物に、スチレン91.42g、55%ジビニルベンゼン0.37g、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)154.0g、過硫酸カリウム(KPS)2.44gを加えて、氷水で十分に冷却したY型チャンバーを装着したマイクロフルイダイザーLM-20-30を使って、圧力200MPaで5回処理して、分散体-1を得た。得られた分散体-1を温度計、ジムロート還流管、撹拌機を備えた反応容器に移し、窒素気流下で内温を80℃まで昇温して、同条件を1.5時間保った後、60℃に下げた。
【0045】
(第2段階)
60℃に温度を下げた容器内へ、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)8.17g、55%ジビニルベンゼン0.04gの混合物を、シリンジポンプを使って30分で添加し、再度内温を80℃まで昇温して、8時間その温度を保ち、スチレン-2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を含む微粒子分散体を得た。
【0046】
(洗浄)
反応終了後、反応物を室温まで冷却し、内容物を約2.0mlLずつ遠沈管に入れ、アングルローターS140ATを設置したCS150FNX(himac製)を使って、14万回転で10分間超遠心分離を行い、分離後に上澄みを除去した。次いで、脱イオン水を1.5mL添加し、14万回転で10分間超遠心分離を行い、上澄みを除去する操作を3回繰り返した。
【0047】
(凍結乾燥)
洗浄後の湿潤粒子をガラス製のシャーレに入れ、数滴の脱イオン水を添加して、スパチュラでよくほぐした。シャーレにろ紙で蓋をして、付帯装置FDU-2110を接続した凍結乾燥機DRC-1000(EYELA製)内に入れて、真空下で凍結乾燥を行った。凍結乾燥の条件は、(1)予備凍結(-40℃、1時間、大気圧下)、(2)減圧(-40℃、20分間、1.3~13Pa)、(3)1次乾燥(-10℃、12時間、1.3~13Pa)、(4)2次乾燥(20℃、12時間、1.3~13Pa)とした。
【0048】
(乾燥及び解砕)
装置から取り出したシャーレを循環式乾燥機WFO-420W(EYELA製)に入れ、40℃に昇温して、10時間乾燥させたものを手でよくほぐして、添加剤1(IPNを有するポリマー粒子)を得た。
【0049】
(添加剤2~10の調製)
使用するモノマーの種類及び配合量(g)を表1のように変更した以外は添加剤1と同様にして、添加剤2~10(IPNを有するポリマー粒子)を得た。
【0050】
(添加剤11の調製)
添加剤11は、マイクロフルイダイザーLM-20-30での処理回数を15回に変更した以外は、添加剤1と同様の操作を行うことによって得た。
【0051】
(添加剤12の調製)
添加剤12は、マイクロフルイダイザーLM-20-30での処理回数を2回に変更した以外は、添加剤1と同様の操作を行うことによって得た。
【0052】
(添加剤(ポリマー粒子)の物性測定)
得られた各添加剤(ポリマー粒子)の物性を以下のとおり測定した。結果を表1に示す。
【0053】
(平均粒子径)
得られた各添加剤50mgをコンタミノンNを0.1%含む脱イオン水20mL中に入れ、超音波分散機で30分間超音波を照射した。その後、DLS-8000(大塚電子製)に、脱イオン水にて所定の濃度に合わせた分散液をセットして、平均粒子径を測定した。
【0054】
(ガラス転移温度)
添加剤(ポリマー粒子)のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られるヒートフローから求めた。測定には、気温23℃、相対湿度50%に調温調湿された部屋に設置され、安定化電源に接続された示差走査熱量測定装置TA InstrumentsのDSC Q2000を使用した。所定のアルミニウム製パンに、15mg±1mgのサンプルを入れ、30℃から150℃まで毎分10℃で昇温し、その後、同じく毎分10℃にて0℃まで降温し、更にその後、再度150℃まで毎分1℃の速度にて昇温した。その結果、添加剤1~12では、表1に示すとおりの二点のガラス転移温度が存在することから、IPNが形成されたことを確認した。
【0055】
(比較添加剤C1の調製及び物性測定)
スチレン及びジビニルベンゼンの量をそれぞれ99.60g及び0.40gに変更し、80℃での撹拌時間を5時間に延長した以外は、添加剤1と同様にして第1段階の操作を行った。その後、第2段階の操作を行わずに、洗浄以降の操作を添加剤1と同様に行うことによって、比較添加剤C1を得た。
また、得られた比較添加剤C1の平均粒子径及びガラス転移温度を上述したとおりに測定したところ、平均粒子径が19nm、ガラス転移温度が100.2℃であった。ガラス転移温度が一点のみであったことから、IPNが形成されていないことを確認した。
【0056】
(比較添加剤C2の調製及び物性測定)
スチレン及びジビニルベンゼンの量をそれぞれ76.55g及び0.41gに変更すると共に、2-ヒドロキシエチルアクリレートを23.04gを更に追加し、80℃での撹拌時間を5時間に延長した以外は、添加剤1と同様にして第1段階の操作を行った。その後、第2段階の操作を行わずに、洗浄以降の操作を添加剤1と同様に行うことによって、比較添加剤C2を得た。
また、得られた比較添加剤C2の平均粒子径及びガラス転移温度を上述したとおりに測定したところ、平均粒子径が10nm、ガラス転移温度が62.8℃であった。ガラス転移温度が一点のみであったことから、IPNが形成されていないことを確認した。
【0057】
【表1】
【0058】
(トナー粒子の調製)
<結着樹脂1の合成>
・テレフタル酸:30モル部
・フマル酸:70モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物:5モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:95モル部
撹拌装置、窒素導入管、温度センサ、及び精留塔を備えたフラスコに、上記の材料を仕込み、1時間を要して温度を220℃まで上げ、上記材料100部に対してチタンテトラエトキシド1部を投入した。生成する水を留去しながら0.5時間を要して230℃まで温度を上げ、該温度で70分脱水縮合反応を継続した後、反応物を冷却した。これにより、重量平均分子量18,000、酸価15mgKOH/g、ガラス転移温度60℃の結着樹脂1(ポリエステル樹脂)を合成した。なお、樹脂の酸価は、JIS K0070-1992に従って、中和滴定法で測定した。
【0059】
<結着樹脂2の合成>
・テレフタル酸:30モル部
・フマル酸:70モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物:5モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:95モル部
撹拌装置、窒素導入管、温度センサ、及び精留塔を備えたフラスコに、上記の材料を仕込み、1時間を要して温度を220℃まで上げ、上記材料100部に対してチタンテトラエトキシド0.05部を投入した。生成する水を留去しながら220℃で65分脱水縮合反応を継続した後、反応物を冷却した。これにより、重量平均分子量800の結着樹脂2(ポリエステル樹脂)を合成した。
【0060】
<樹脂粒子分散液の調製>
温度調節手段及び窒素置換手段を備えた容器に、酢酸エチル40部及び2-ブタノール25部を投入し、混合溶剤とした後、結着樹脂1 90部および結着樹脂2 10部を徐々に投入し溶解させ、ここに、10質量%アンモニア水溶液(樹脂の酸価に対してモル比で3倍量相当量)を入れて30分間撹拌した。
次いで、容器内を乾燥窒素で置換し、温度を40℃に保持して、混合液を攪拌しながらイオン交換水400部を2部/分の速度で滴下し、乳化を行った。滴下終了後、乳化液を室温(20℃乃至25℃)に戻し、撹拌しつつ乾燥窒素により48時間バブリングを行うことにより、酢酸エチル及び2-ブタノールを1,000ppm以下まで低減させ、樹脂粒子が分散した樹脂粒子分散液を得た。前記樹脂粒子分散液にイオン交換水を加え、固形分量を20質量%に調整して、樹脂粒子分散液とした。
【0061】
<離型剤分散液の調製>
・パラフィンワックス(日本精蝋(株)製HNP-9):100部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製ネオゲンRK):1部
・イオン交換水:350部
上記材料を混合して100℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザー(ゴーリン社製)で分散処理し、体積平均粒径200nmの離型剤粒子が分散された離型剤分散液(固形分量20質量%)を得た。
【0062】
<シアン着色剤粒子分散液の調製>
・シアン着色剤(ピグメントブルー15:3クラリアント社製):70部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製ネオゲンRK):1部
・イオン交換水:200部
上記の材料を混合し、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて10分間分散した。分散液中の固形分量が20質量%となるようイオン交換水を加え、体積平均粒径190nmのシアン着色剤粒子が分散されたシアン着色剤分散液を得た。
【0063】
<コア粒子の作製>
・樹脂粒子分散液:425部
・シアン着色剤粒子分散液:25部
・離型剤分散液:50部
・アニオン性界面活性剤(TaycaPower、テイカ(株)製):2部
上記材料を丸型ステンレス製フラスコに入れ、0.1Nの硝酸を添加してpHを3.5に調整した後、ポリ塩化アルミニウム濃度が10質量%の硝酸水溶液30部を添加した。続いて、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて30℃において分散した後、加熱用オイルバス中で45℃まで加熱し30分間保持した。その後、樹脂粒子分散液100部を緩やかに追加し1時間保持し、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを8.5に調整した後、攪拌を継続しながら85℃まで加熱し、5時間保持した。その後、20℃/分の速度で20℃まで冷却し、濾過し、イオン交換水で充分に洗浄し、乾燥させることにより、体積平均粒径7.5μmのコア粒子を得た。
【0064】
<トナー粒子の作製>
得られたコア粒子100部に対し、得られた添加剤1~12及び比較添加剤C1~C2のそれぞれ1.5部を、ヘンシェルミキサーにて周速30m/sで2分間混合して、トナー粒子1~14を得た。
【0065】
得られたトナー粒子1~14のそれぞれについて、以下の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0066】
(帯電速度及び帯電量)
各トナー粒子0.5g及びキャリア粒子(100μm、日本画像学会)9.5gを、100mL広口ビンに投入した後、高温高湿条件(30℃、80%)、常温常湿条件(23℃、50%)、および低温低湿条件(10℃、15%)のそれぞれで24時間放置したサンプルを用意した。その後、ターブラーミキサー(WAB社、スイス)を利用して、96rpmで異なる時間(1分間および3分間)撹拌振盪することにより、トナー粒子に対してキャリア粒子との衝突による摩擦帯電を生じさせる負荷を与えた。このトナーの帯電量(μC/g)を帯電量測定器(TB-203、京セラ社)で帯電量及び帯電速度を測定した。
【0067】
低温低湿環境下で放置した後のサンプルについて、3分間撹拌後の帯電量に対する1分間撹拌後の帯電量(1分撹拌後/3分間撹拌後)との比を求め、下記の基準に従って帯電速度を評価した。
A:非常に良好 比が90%以上
B:良好 比が85%以上90%未満
C:比較的良好 比が80%以上85%未満
D:実用可能 比が70%以上80%未満
E:実用困難 比が70%未満
【0068】
常温常湿環境下で放置した後のサンプルについて、3分間撹拌後の帯電量を求め、下記の基準に従って帯電量を評価した。
A:非常に良好 帯電量が47以上50未満
B:良好 帯電量が44以上47未満、または50以上52未満
C:比較的良好 帯電量が41以上44未満、または52以上54未満
D:実用可能 帯電量が38以上41未満、または54以上56未満
E:実用困難 帯電量が38未満、または56以上
【0069】
(環境安定性)
低温低湿環境下で放置した後のサンプルの3分間撹拌後の帯電量に対する、高温高湿環境下で放置した後のサンプルの3分間撹拌後の帯電量の比(高温高湿環境/低温低湿環境)を求め、下記の基準に従って環境安定性を評価した。
A:非常に良好 比が90%以上
B:良好 比が85%以上90%未満
C:比較的良好 比が80%以上85%未満
D:実用可能 比が70%以上80%未満
E:実用困難 比が70%未満
【0070】
(流動性)
各トナー粒子5gを100mLのポリカップ中に入れ、常温常湿(23℃/50%RH)下で放置して、24時間シーズニングした後、3段ふるい(上から順に、270メッシュ、325メッシュ、400メッシュ)を備えたパウダーテスタ(商品名、ホソカワミクロン社製)により初期の凝集度を測定した。測定された凝集度に基づいて、下記の基準に従って流動性を評価した。
A:非常に良好 凝集度が25未満
B:良好 凝集度が25以上30未満
C:比較的良好 凝集度が30以上35未満
D:実用可能 凝集度が35以上40未満
E:実用困難 凝集度が40以上
【0071】
(保管性)
各トナー粒子100gを、温度40℃、湿度80%で180時間放置した後、上記と同様にして凝集度を測定した。測定された凝集度に基づいて、下記の基準に従って保管性を評価した。
A:非常に良好 凝集度が30未満
B:良好 凝集度が30以上35未満
C:比較的良好 凝集度が35以上40未満
D:実用可能 凝集度が40以上45未満
E:実用困難 凝集度が45以上
【0072】
【表2】
【0073】
以上、トナー粒子用添加剤、トナー粒子等の様々な例について具体的に説明したが、特許請求の範囲の精神の範囲を逸脱しない範囲において種々の変形及び変更が可能であることは当業者にとって明らかである。すなわち、特許請求の範囲に記載した精神を逸脱しない範囲内において全ての変更が含まれることが意図される。