(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086718
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】シランカップリング剤で表面処理されたシリカ粒子を含むトナー粒子用添加剤
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20240621BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20240621BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20240621BHJP
C01B 33/18 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
G03G9/097 375
G03G9/097 365
G03G9/087 331
G03G9/08 381
C01B33/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169333
(22)【出願日】2022-10-21
(71)【出願人】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット-パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】石川 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ホン, ジンモ
【テーマコード(参考)】
2H500
4G072
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA08
2H500AA09
2H500AA11
2H500BA27
2H500CA06
2H500CA34
2H500CB12
2H500EA04D
2H500EA42D
2H500EA44B
2H500EA52D
2H500EA62D
4G072AA25
4G072AA28
4G072AA41
4G072BB05
4G072CC13
4G072DD05
4G072DD06
4G072DD07
4G072GG02
4G072GG03
4G072HH17
4G072HH30
4G072JJ23
4G072KK03
4G072LL11
4G072MM01
4G072QQ07
4G072RR05
4G072RR12
4G072TT01
4G072UU04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】逆帯電トナーが減りかぶりの少ない鮮明な画像を長時間生成し得ること。
【解決手段】フッ素及び硫黄からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含むシランカップリング剤で表面処理されたシリカ粒子を含む、トナー粒子用添加剤による。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素及び硫黄からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含むシランカップリング剤で表面処理されたシリカ粒子を含む、トナー粒子用添加剤。
【請求項2】
前記シリカ粒子の平均粒子径が250nm以下である、請求項1に記載のトナー粒子用添加剤。
【請求項3】
前記シランカップリング剤がパーフルオロエーテル基を含む、請求項1に記載のトナー粒子用添加剤。
【請求項4】
前記シランカップリング剤がメルカプト基を含む、請求項1に記載のトナー粒子用添加剤。
【請求項5】
前記表面処理が前記シリカ粒子に負の荷電を付与する表面処理である、請求項1に記載のトナー粒子用添加剤。
【請求項6】
コア粒子と、
前記コア粒子に外添された添加剤と、を含有するトナー粒子であって、
前記添加剤は、フッ素及び硫黄からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含むシランカップリング剤で表面処理されたシリカ粒子を含む、トナー粒子。
【請求項7】
前記シリカ粒子の平均粒子径が250nm以下である、請求項6に記載のトナー粒子。
【請求項8】
前記シランカップリング剤がパーフルオロエーテル基を含む、請求項6に記載のトナー粒子。
【請求項9】
前記シランカップリング剤がメルカプト基を含む、請求項6に記載のトナー粒子。
【請求項10】
前記表面処理が前記シリカ粒子に負の荷電を付与する表面処理である、請求項6に記載のトナー粒子。
【請求項11】
前記添加剤の含有量が、前記コア粒子100質量部に対して、0.2質量部以上15質量部以下である、請求項6に記載のトナー粒子。
【請求項12】
前記トナー粒子の表面における前記添加剤の被覆率が、30%以上80%以下である、請求項6に記載のトナー粒子。
【請求項13】
前記コア粒子が、結着樹脂と、着色剤と、離型剤とを含有する、請求項6に記載のトナー粒子。
【請求項14】
前記結着樹脂が、2種以上のポリエステル樹脂を含む、請求項13に記載のトナー粒子。
【請求項15】
フッ素及び硫黄からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含むシランカップリング剤でシリカ粒子を表面処理する工程を備える、トナー粒子用添加剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
電子写真法などの静電荷像を経て画像情報を可視化する方法は、様々な分野で利用されている。電子写真法においては、感光体表面を均一に帯電させた後、この感光体表面に静電荷像を形成し、トナー粒子を含む現像剤で静電潜像を現像することで、トナー像として可視化する。そして、このトナー像が記録媒体表面に転写され、定着することにより、画像が形成される。
【発明を実施するための形態】
【0002】
以下、トナー粒子用添加剤の一実施形態について説明する。一実施形態に係るトナー粒子用添加剤は、フッ素及び硫黄からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含むシランカップリング剤で表面処理されたシリカ粒子を含む。
【0003】
一実施形態において、シリカ粒子の表面処理は、シリカ粒子の表面を疎水性にする疎水化処理である。すなわち、フッ素及び硫黄からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含むシランカップリング剤は、シリカ粒子の表面を疎水化可能なシランカップリング剤である。他の一実施形態において、シリカ粒子の表面処理は、シリカ粒子の表面を疎水性にする疎水化処理であると共に、シリカ粒子に荷電を付与する(特に負の荷電を付与する)処理でもあり得る。すなわち、フッ素及び硫黄からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含むシランカップリング剤は、シリカ粒子の表面を疎水化可能であると共に、荷電付与(特に負の荷電付与)可能なシランカップリング剤である。
【0004】
上記のようなシリカ粒子の表面処理は、一実施形態において、シラザン化合物(例えばヘキサメチルジシラザン)を用いない表面処理である。これにより、例えばシラザン化合物の使用に法的な規制がかかった場合にも、当該規制を受けずに使用可能なトナー粒子用添加剤が提供され得る。
【0005】
フッ素を含むシランカップリング剤としては、パーフルオロエーテル基を含むシランカップリング剤が挙げられる。パーフルオロエーテル基を含むシランカップリング剤は、例えば下記式(1)で表されるシランカップリング剤であってよい。
【化1】
式中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立にアルキル基を表し、mは2以上の整数を表し、nは1以上の整数を表す。
【0006】
R1、R2及びR3で表されるアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。R1、R2及びR3で表されるアルキル基の炭素数は、1以上であってよく、3以下であってよい。mは、4以下の整数であってもよい。nは、5以下、4以下、3以下、又は2以下の整数であってもよい。
【0007】
硫黄を含むシランカップリング剤としては、メルカプト基を含むシランカップリング剤が挙げられる。メルカプト基を含むシランカップリング剤は、例えば下記式(2)で表されるシランカップリング剤であってよい。
【化2】
式中、R
4及びR
5は、それぞれ独立にアルキル基を表し、R
6はアルキレン基を表し、p及びqは、それぞれ独立に0~3の整数であって、p+q=3を満たす整数を表す。
【0008】
R4及びR5で表されるアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。R4及びR5で表されるアルキル基の炭素数は、1以上であってよく、3以下であってよい。R6で表されるアルキレン基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。R6で表されるアルキレン基の炭素数は、1以上であってよく、4以下であってよい。pは、2又は3であってもよい。qは、0又は1であってもよい。
【0009】
シリカ粒子の平均粒子径は、250nm以下、200nm以下、150nm以下、100nm以下、70nm以下、又は50nm以下であってよく、5nm以上、10nm以上、又は20nm以上であってよい。シリカ粒子の平均粒子径は、実施例に記載の方法により測定される。
【0010】
次に、上述したトナー粒子用添加剤の製造方法の一実施形態について説明する。一実施形態に係るトナー粒子用添加剤の製造方法は、フッ素及び硫黄からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含むシランカップリング剤でシリカ粒子を表面処理する工程を備える。
【0011】
表面処理前のシリカ粒子は、所望の平均粒子径などに応じて、市販品を購入することにより入手可能である。シリカ粒子を表面処理する工程では、一実施形態において、アルコール(例えばメタノール)と、表面処理前のシリカ粒子と、塩基性水溶液(例えばアンモニア水)とを混合し、フッ素及び硫黄からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含むシランカップリング剤を徐々に添加し、添加後も混合を継続することにより、シリカ粒子の表面処理が行われる。
【0012】
フッ素及び硫黄からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含むシランカップリング剤の詳細は上述したとおりである。当該シランカップリング剤の添加量は、表面処理前のシリカ粒子100質量部に対して、1質量部以上又は2質量部以上であってよく、5質量部以下又は4質量部以下であってよい。
【0013】
このようなトナー粒子用添加剤の製造方法によれば、シリカ粒子の表面処理の際に、従来使用されていたシラザン化合物(例えばヘキサメチルジシラザン)を用いなくても、シリカ粒子の表面を上記シランカップリング剤で疎水化することができる。すなわち、このシリカ粒子の表面処理は、シラザン化合物(例えばヘキサメチルジシラザン)を用いない表面処理(疎水化処理)である。これにより、例えばシラザン化合物の使用に法的な規制がかかった場合にも、当該規制を受けずに使用可能なトナー粒子用添加剤が提供され得る。
【0014】
次に、トナー粒子の一実施形態について説明する。一実施形態に係るトナー粒子は、コア粒子と、コア粒子に外添された添加剤と、を含有する。当該添加剤は、上述したトナー粒子用添加剤である。
【0015】
コア粒子は、結着樹脂を含む。結着樹脂は、ポリエステル樹脂を含んでよい。結着樹脂は、120℃以上の軟化点を有する第1のポリエステル樹脂(高軟化点のポリエステル樹脂)と、120℃未満の軟化点を有する第2のポリエステル樹脂(低軟化点のポリエステル樹脂)とを含んでよい。
【0016】
本明細書における軟化点は、フローテスター(例えば、定試験力押出形 細管式レオメータ「フローテスターCFT-500型」、島津製作所社製)を用いて測定される樹脂の流動曲線に基づくT1/2として定義される。軟化点(T1/2)は、実施例に記載の方法で測定される。
【0017】
第1のポリエステル樹脂の軟化点は、123℃以上、125℃以上、又は130℃以上であってもよく、160℃以下、155℃以下、150℃以下、又は145℃以下であってもよく、低温定着性、耐オフセット性及び耐熱保管性の点で更に優れる観点から、好ましくは、140℃以下又は135℃以下であってもよい。
【0018】
第2のポリエステル樹脂の軟化点は、118℃以下、115℃以下、又は110℃以下であってもよく、80℃以上であってもよく、低温定着性及び耐熱保管性の点で更に優れる観点から、好ましくは、85℃以上又は90℃以上であってもよい。
【0019】
第1のポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートとカルボン酸とジオールとの重縮合体であってよい。この場合、第1のポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートとカルボン酸とジオールと(以下、これらをまとめて「第1の重縮合成分」ともいう)をエステル化反応させることにより得られる。より具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレートにモノマー単位として含まれるエチレングリコールとアルコールとの間でエステル交換反応を生じさせると共に、カルボン酸の重縮合も生じさせることにより、第1のポリエステル樹脂を得ることができる。
【0020】
ポリエチレンテレフタレートの物性は特に制限されないが、一例として、ポリエチレンテレフタレートの数平均分子量(Mn)は、5,000以上、10,000以上、又は15,000以上であってよく、60,000以下、55,000以下、50,000以下、又は45,000以下であってよい。ポリエチレンテレフタレートは、リサイクルされたポリエチレンテレフタレートであってもよい。この場合、環境に配慮されたトナー粒子が提供され得る。
【0021】
ポリエチレンテレフタレートの量(仕込量)は、第1の重縮合成分の全量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、又は20質量%以上であってよく、85質量%以下、80質量%以下、又は70質量%以下であってよい。
【0022】
カルボン酸は、多価カルボン酸又はその無水物であってよい。多価カルボン酸は、2価カルボン酸又はその無水物を含んでよい。2価カルボン酸としては、ペンダント基を有する2価カルボン酸、及びペンダント基を有さない2価カルボン酸が挙げられる。
【0023】
ペンダント基を有する2価カルボン酸は、二つのカルボキシル基を有する鎖を主鎖としたときに、当該主鎖から分岐している鎖(ペンダント基)を有している。ペンダント基は、鎖状の炭化水素基であってよく、アルキル基又はアルケニル基であってよい。ペンダント基の炭素数は、3以上、4以上、6以上、8以上、10以上、又は12以上であってもよく、30以下、28以下、26以下、24以下、22以下、20以下、18以下、16以下、14以下、又は12以下であってもよい。
【0024】
ペンダント基を有する2価カルボン酸としては、炭素数3以上のアルキル基を有するコハク酸、炭素数3以上のアルケニル基を有するコハク酸、炭素数3以上のアルキル基を有するアルキルビスコハク酸、及び炭素数3以上のアルケニル基を有するアルケニルビスコハク酸が挙げられる。当該2価カルボン酸としては、具体的には、例えば、オクチルコハク酸、デシルコハク酸、ドデシルコハク酸、テトラデシルコハク酸、ヘキサデシルコハク酸、オクタデシルコハク酸、イソオクタデシルコハク酸、ヘキセニルコハク酸、オクテニルコハク酸、デセニルコハク酸、ドデセニルコハク酸、テトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸、イソオクタデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸、及びノネニルコハク酸が挙げられる。
【0025】
ペンダント基を有さない2価カルボン酸としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-カルボキシフェニルアセト酸、p-フェニレン-2-アセト酸、m-フェニレンジグリコール酸、p-フェニレンジグリコール酸、o-フェニレンジグリコール酸、ジフェニルアセト酸、ジフェニル-p,p’-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、及びシクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
【0026】
カルボン酸は、3価カルボン酸又はその無水物を含んでもよい。3価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、及びピレントリカルボン酸が挙げられる。
【0027】
カルボン酸は、2価カルボン酸又はその無水物、及び3価カルボン酸又はその無水物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよく、上述したMDSCのピークを示さないトナー粒子がより容易に得られる観点から、好ましくは、ペンダント基を有する2価カルボン酸又はその無水物、及び3価カルボン酸又はその無水物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む。
【0028】
カルボン酸の量(仕込量)は、第1の重縮合成分の全量を基準として、5質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であってよく、65質量%以下、60質量%以下、又は55質量%以下であってよい。
【0029】
ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなどの脂環式ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物などの芳香族ジオールが挙げられる。これらの多価アルコールは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。ジオールは、好ましくは芳香族ジオールを含み、オフセット耐性及び耐熱保管性の点で更に優れる観点から、より好ましくは芳香族ジオールのみからなる(芳香族ジオール以外のジオールが含まれない)。
【0030】
ジオールの含有量は、第1の重縮合成分の全量を基準として、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上であってよく、70質量%以下、65質量%以下、又は60質量%以下であってよい。
【0031】
第2のポリエステル樹脂は、カルボン酸とジオールとの重縮合体であってよい。この場合、第2のポリエステル樹脂は、カルボン酸とジオールと(以下、これらをまとめて「第2重縮合成分」ともいう)をエステル化反応させることにより得られる。第2の重縮合成分は、ポリエチレンテレフタレートを更に含んでもよい。カルボン酸、ジオール及びポリエチレンテレフタレートの詳細は、第1のポリエステル樹脂について説明したのと同様である。
【0032】
第1のポリエステル樹脂の重量平均分子量は、第2のポリエステル樹脂の重量平均分子量より大きい。第1のポリエステル樹脂の重量平均分子量は、20,000以上、30,000以上、又は40,000以上であってよく、80,000以下、75,000以下、又は70,000以下であってよい。第2のポリエステル樹脂の重量平均分子量は、5,000以上、6,000以上、又は7,000以上であってよく、30,000以下、20,000以下、又は15,000以下であってよい。第1及び第2のポリエステル樹脂の重量平均分子量は、実施例に記載の方法で測定される。
【0033】
第1のポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂の全量を基準として、2質量%以上、10質量%以上、又は20質量%以上であってよく、50質量%以下、45質量%以下、又は40質量%以下であってよい。第2のポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂の全量を基準として、50質量%以上、55質量%以上、又は60質量%以上であってよく、98質量%以下、90質量%以下、又は80質量%以下であってよい。
【0034】
トナー粒子における結着樹脂の含有量は、トナー粒子の全量を基準として、40質量%以上、45質量%以上、又は50質量%以上であってよく、90質量%以下、85質量%以下、又は75質量%以下であってよい。
【0035】
コア粒子は、着色剤を更に含んでよい。着色剤は、例えば、ブラック着色剤、シアン着色剤、マゼンタ着色剤及びイエロー着色剤から選ばれる少なくとも1種の着色剤を含むことができる。着色剤は、色相、彩度、明度、耐候性、トナー内の分散性などを考慮して、1種を単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0036】
ブラック着色剤は、カーボンブラック又はアニリンブラックであってよい。イエロー着色剤は、縮合窒素化合物、イソインドリノン化合物、アントラキン化合物、アゾ金属錯体又はアリルイミド化合物であってよい。イエロー着色剤としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、168、180などが挙げられる。
【0037】
マゼンタ着色剤は、縮合窒素化合物、アントラキン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、チオインジゴ化合物、又はペリレン化合物であってよい。マゼンタ着色剤としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254などが挙げられる。
【0038】
シアン着色剤は、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、又はアントラキン化合物などであってよい。シアン着色剤としては、具体的には、例えば、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66などが挙げられる。
【0039】
着色剤の含有量は、トナー粒子の全量を基準として、1質量%以上、2質量%以上、又は3質量%以上であってよく、10質量%以下、8質量%以下、又は6質量%以下であってよい。
【0040】
コア粒子は、離型剤を更に含んでよい。離型剤としては、例えばワックスが挙げられる。ワックスは、天然ワックスであっても合成ワックスであってもよい。ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、シリコンワックス、パラフィンワックス、エステルワックス、カルナバワックス、蜜蝋、及びメタロセンワックスが挙げられる。ワックスは、好ましくはエステルワックスであってよい。
【0041】
エステルワックスは、例えば、炭素数15~30の脂肪酸と炭素数10~30の一価アルコールとのエステルであってよく、炭素数15~30の脂肪酸と炭素数3~30の多価アルコールとのエステルであってもよい。エステルワックスとしては、例えば、ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、ペンタエリスリトールのステアリン酸エステル、及びモンタン酸グリセリドが挙げられる。
【0042】
ワックスの融点は、60℃以上又は70℃以上であってよく、100℃以下又は90℃以下であってよい。
【0043】
ワックスの含有量は、トナー粒子の全量を基準として、1質量%以上、2質量%以上、又は3質量%以上であってよく、15質量%以下、10質量%以下、又は8質量%以下であってよい。
【0044】
添加剤(トナー粒子用添加剤)の含有量(添加量)は、コア粒子100質量部に対して、0.2質量部以上、0.5質量部以上、又は1質量部以上であってよく、15質量部以下、10質量部以下、又は7質量部以下であってよい。
【0045】
トナー粒子の表面におけるトナー粒子用添加剤(上記の表面処理されたシリカ粒子)の被覆率は、好適な帯電量が得られる観点から、30%以上、40%以上、又は50%以上であってよく、80%以下、70%以下、又は60%以下であってよい。被覆率は、実施例に記載の方法により測定される。
【0046】
トナー粒子は、上述したトナー粒子用添加剤に加えて、コア粒子に外添された無機粒子を更に含有していてもよい。無機粒子としては、上記の表面処理されたシリカ粒子以外のシリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、及びチタニア粒子が挙げられる。
【0047】
トナー粒子の平均粒子径は、3μm以上、4μm以上、又は5μm以上であってよく、12μm以下、11μm以下、10μm以下、又は9μm以下であってよい。
【0048】
以上説明したトナー粒子では、フッ素及び硫黄からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含むシランカップリング剤で表面処理されたシリカ粒子が外添されていることにより、当該シリカ粒子が負の荷電制御剤として機能し得るため、逆帯電トナーが減りかぶりの少ない鮮明な画像を長時間生成し得る。また、一実施形態において、シリカ粒子の表面処理は、シラザン化合物(例えばヘキサメチルジシラザン)を用いない表面処理であり得るため、例えばシラザン化合物の使用に法的な規制がかかった場合にも、当該規制を受けずに使用可能なトナー粒子が提供され得る。
【0049】
次に、上述したトナー粒子の製造方法の一実施形態について説明する。一実施形態に係るトナー粒子の製造方法は、フッ素及び硫黄からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含むシランカップリング剤でシリカ粒子を表面処理する工程と、表面処理されたシリカ粒子をコア粒子に外添する工程と、を備える。シリカ粒子を表面処理する工程の詳細は上述したとおりである。
【0050】
表面処理されたシリカ粒子をコア粒子に外添する方法は、公知の方法であってよい。例えば、粉体ミキサによってコア粒子及びシリカ粒子を混合することにより、シリカ粒子がコア粒子に外添される。
【0051】
トナー粒子は、一成分系現像剤として使用できる。トナー粒子は、ドット再現性をより向上させ、長期にわたり安定した画像を供給するために、磁性キャリアと混合されて、二成分系現像剤として使用することもできる。
【0052】
トナー粒子は、例えばトナーカットリッジに収容されてよい。より具体的には、トナー粒子は、トナーカートリッジ中の容器内に収容されてよい。すなわち、他の一実施形態は、上述したトナー粒子を収容する容器を備えるトナーカートリッジである。
【実施例0053】
以下、実施例によってトナー粒子用添加剤を更に詳細に説明するが、トナー粒子用添加剤は実施例に限定されない。
【0054】
(シリカ粒子の表面処理)
攪拌機、滴下ロート及び温度計を備えた3リットルのガラス製反応器に、メタノール1500gと、表1に示す粒径及び比重を有するシリカ粒子500gと、28%アンモニア水66.5gとを入れて混合した。続いて、25℃において、表1に示す種類及び添加量のシランカップリング剤を0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、12時間攪拌を継続し、シリカ粒子の表面処理を行った。
【0055】
なお、表1中、シリカカップリング剤の種類は、以下のとおりである。
SC1:パーフルオロエーテル基を含むシランカップリング剤(上記式(1)中、R1、R2及びR3が-CH3基、mが3、nが1であるシランカップリング剤)
SC2:パーフルオロエーテル基を含むシランカップリング剤(上記式(1)中、R1、R2及びR3が-CH3基、mが3、nが2であるシランカップリング剤)
SC3:メルカプト基を含むシランカップリング剤(R4及びR5が-CH3基、R6が-C3H6-基を表し、pが3、qが1であるシランカップリング剤)
SC4:メチルトリメトキシシラン
SC5:フェニルトリメトキシシラン
【0056】
【0057】
(トナー粒子の製造)
ポリオキシプロピレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(プロピレンオキサイド平均付加モル数=2)59.7質量部、トリメリット酸2.6質量部、ドデセニルコハク酸無水物7.7質量部、及びポリエチレンテレフタレート(数平均分子量Mn:24,000)30質量部を原料とし、エステル化触媒を用いて公知の方法によりポリエステル樹脂1を製造した。
また、ポリオキシプロピレン-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(プロピレンオキサイド平均付加モル数=2.2)25.5質量部、イソフタル酸1.3質量部、ドデセニルコハク酸無水物22.3質量部、ポリエチレンテレフタレート(数平均分子量Mn:24,000)50.2質量部、及びトリメリット酸0.7質量部を原料とし、エステル化触媒を用いて公知の方法によりポリエステル樹脂2を製造した。
続いて、ポリエステル樹脂1 30質量部、ポリエステル樹脂2 70質量部、着色剤「MA-100」(三菱ケミカル(株)製))10質量部、及び離型剤「WEP-5」(日油株式会社製、融点:83℃)7質量部を、ヘンシェルミキサーを用いて予備混合した後、二軸混練機((株)池貝製、PCM-30)で混練した。ついで、超音速ジェット粉砕機ラボジェット(日本ニューマチック工業(株)製)を用いて微粉砕した後、気流分級機(日本ニューマチック工業(株)製、MDS-I)で分級し、体積中位粒子径(D50)が6.8μmのコア粒子の粉体を得た。得られたコア粒子100質量部に対し、上記の表面処理されたシリカ粒子を表2に示す添加量で加え、サンプルミルにて10,000rpmで30秒間混合して、トナー粒子を得た。なお、表面処理されたシリカ粒子の添加量は、後述する帯電量の評価結果を公平に比較するために、実施例10及び実施例15を除いては、表面処理されたシリカ粒子の被覆率が同等になるように調整した。
なお、表面処理されたシリカ粒子の被覆率は、下記式により求めた。
被覆率(%)=[(トナー粒子の粒子径:μm)×(トナー粒子の比重:g/ml)×(シリカ粒子に対するトナー粒子の質量比:%)]/[4×(シリカ粒子の粒子径:μm)×(シリカ粒子の比重:g/ml)]
【0058】
(帯電量の評価)
フタ付きのガラス瓶に、スチレン/メチルメタクリレート樹脂で被覆されたフェライト粒子(体積平均粒子径:35μm、粒度分布測定装置(マルチサイザー(登録商標)、ベックマン・コールター社製)を用いて測定)30質量部を秤量し、その後、フェライト粒子上に載置した状態でトナー粒子1質量部を秤量した。その後、常温常湿(25℃/50%RH)下で放置して24時間シーズニングした後、ターブラーミキサーで3分間撹拌振盪することにより、トナー粒子に対してフェライト粒子との衝突による摩擦帯電を生じさせる負荷を与えた。負荷を与えてから20秒後及び300秒後に、帯電量(μC/g)を飛翔式帯電量測定装置(電界飛翔式帯電量測定装置II-DC電界(商品名)、ディーアイティー株式会社製)で測定した。結果を表2に示す。
【0059】
【0060】
以上、トナー粒子用添加剤、トナー粒子等の様々な例について具体的に説明したが、特許請求の範囲の精神の範囲を逸脱しない範囲において種々の変形及び変更が可能であることは当業者にとって明らかである。すなわち、特許請求の範囲に記載した精神を逸脱しない範囲内において全ての変更が含まれることが意図される。