(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086719
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】感熱スイッチを有する加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 3/00 20060101AFI20240621BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
H05B3/00 310E
G03G15/20 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169835
(22)【出願日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット-パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100211052
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】古谷 理
【テーマコード(参考)】
2H033
3K058
【Fターム(参考)】
2H033AA03
2H033BA11
2H033BA31
2H033BA32
2H033BB01
2H033BB12
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB22
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033CA07
2H033CA30
2H033CA45
3K058BA18
3K058CA22
3K058CA46
3K058CA54
3K058CA92
3K058CB02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】感熱スイッチを有する加熱装置を提供する。
【解決手段】一態様の加熱装置は、基板71と、基板上に設けられ、一対の電極間で長手方向に延びる発熱体72と、長手方向において一対の電極の間に位置する感熱スイッチ75と、を備え、感熱スイッチは、温度が閾値温度未満であるときに発熱体から離間し、温度が閾値温度に達したときに発熱体に接触するように変形する変形可能導体を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられ、一対の電極間で長手方向に延びる発熱体と、
前記長手方向において前記一対の電極の間に位置する感熱スイッチと、
を備え、
前記感熱スイッチは、温度が閾値温度未満であるときに前記発熱体から離間し、前記温度が前記閾値温度に達したときに前記発熱体に接触するように変形する変形可能導体を含む、加熱装置。
【請求項2】
前記感熱スイッチは、予め定められた用紙サイズに応じた位置に前記長手方向に互いに離間して配置された複数の感熱スイッチのうちの1つである、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記一対の電極は、前記発熱体の第1端部に接続された第1電極と、前記発熱体の第2端部に接続された第2電極とを含み、
前記複数の感熱スイッチは、前記発熱体の前記第1端部に対向して配置された第1感熱スイッチと、前記発熱体の前記第2端部に対向して配置された第2感熱スイッチと、を含む、請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記第1感熱スイッチは、前記第1電極に電気的に接続され、
前記第2感熱スイッチは、前記第2電極に電気的に接続されている、請求項3に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記第1電極は、前記発熱体に電力を供給する電源に電気的に接続され、
前記第2電極は、電気的に接地されている、請求項4に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記第1感熱スイッチ及び前記第2感熱スイッチは、前記発熱体の第1接点及び第2接点にそれぞれ接触可能であり、
前記第1感熱スイッチは、前記発熱体の前記第1接点と接触したときに、前記第1接点を前記第1電極と電気的に接続し、
前記第2感熱スイッチは、前記発熱体の前記第2接点と接触したときに、前記第2接点を前記第2電極と電気的に接続する、請求項3に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記感熱スイッチは、
前記変形可能導体を支持する支持体であり、前記基板に接触する脚部と、前記発熱体から離間したブリッジとを含む、該支持体と、
前記ブリッジから延在し、前記支持体を介して伝達される温度上昇に応じて前記発熱体に向けて湾曲するバイメタルプレートと、
を有する、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記変形可能導体は、前記バイメタルプレートに設けられ、前記バイメタルプレートの湾曲に応じて前記発熱体に接触する接点部を含み、前記接点部の表面は炭化ケイ素又は窒化チタンを含む保護層で覆われている、請求項7に記載の加熱装置。
【請求項9】
回転可能な回転体と、
前記回転体に圧接する回転可能な加圧ローラと、
前記回転体を加熱する加熱装置であり、基板と、前記基板上に設けられ、一対の電極間で長手方向に延びる発熱体と、前記長手方向において前記一対の電極の間に位置する感熱スイッチとを含む、該加熱装置と、
を備え、
前記感熱スイッチは、温度が閾値温度未満であるときに前記発熱体から離間し、前記温度が前記閾値温度に達したときに前記発熱体に接触するように変形する変形可能導体を含む、定着装置。
【請求項10】
前記加熱装置の前記感熱スイッチは、予め定められた用紙サイズに応じた位置に前記長手方向に互いに離間して配置された複数の感熱スイッチのうちの1つである、請求項9に記載の定着装置。
【請求項11】
前記加熱装置の前記一対の電極は、前記発熱体の第1端部に接続された第1電極と、前記発熱体の第2端部に接続された第2電極とを含み、
前記複数の感熱スイッチは、前記発熱体の前記第1端部に対向して配置された第1感熱スイッチと、前記発熱体の前記第2端部に対向して配置された第2感熱スイッチと、を含む、請求項10に記載の定着装置。
【請求項12】
前記第1感熱スイッチは、前記第1電極に電気的に接続され、
前記第2感熱スイッチは、前記第2電極に電気的に接続されている、請求項11に記載の定着装置。
【請求項13】
前記感熱スイッチは、
前記変形可能導体を支持する支持体であり、前記基板に接触する脚部と、前記発熱体から離間したブリッジとを含む、該支持体と、
前記ブリッジから延在し、前記支持体を介して伝達される温度上昇に応じて前記発熱体に向けて湾曲するバイメタルプレートと、
を有する、請求項9に記載の定着装置。
【請求項14】
トナー像を印刷媒体に転写する転写装置と、
前記トナー像を前記印刷媒体に定着させる定着装置と、
を備え、
前記定着装置は、
回転可能な回転体と、
前記回転体に圧接する回転可能な加圧ローラと、
前記回転体を加熱する加熱装置であり、基板と、前記基板上に設けられ、一対の電極間で長手方向に延びる発熱体と、前記長手方向において前記一対の電極の間に位置する感熱スイッチとを含む、該加熱装置と、
を備え、
前記感熱スイッチは、温度が閾値温度未満であるときに前記発熱体から離間し、前記温度が前記閾値温度に達したときに前記発熱体に接触するように変形する変形可能導体を含む、画像形成装置。
【請求項15】
前記感熱スイッチは、予め定められた用紙サイズに応じた位置に前記長手方向に互いに離間して配置された複数の感熱スイッチのうちの1つである、請求項14に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
画像形成システムは、印刷媒体を搬送する搬送装置と、静電潜像が形成される感光体と、静電潜像を現像する現像装置と、トナー像を印刷媒体に転写する転写装置と、トナー像を印刷媒体に定着させる定着させる定着装置と、印刷媒体を排出する排出装置と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0002】
【
図1】本明細書に開示された種々の例を実施するために使用することができる例示的な画像形成装置の概略図である。
【
図4】
図3のIV-IV線に沿った定着装置の断面図である。
【
図6】(a)は第1温度であるときの感熱スイッチの例示的な上面図であり、(b)はその側面図であり、(c)はその正面図である。
【
図7】(a)は第2温度であるときの感熱スイッチの例示的な側面図であり、(b)はその正面図である。
【
図8】(a)は第3温度であるときの感熱スイッチの例示的な側面図であり、(b)は、その正面図である。
【
図10】複数の感熱スイッチと発熱体との電気的な接続関係を模式的に示す図である。
【
図12】感熱スイッチの変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0003】
以下では、図面を参照して、感熱スイッチを有する加熱装置、当該加熱装置を備える定着装置、及び、当該定着装置を備える画像形成装置について説明する。なお、図面に基づいて説明するにあたり、同一の要素又は同一の機能を有する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率及び角度等は図面に記載のものに限定されない。
【0004】
本開示に係る画像形成装置は、例えばプリンタ等の画像形成装置である。この画像形成装置は、トナー像を印刷媒体に定着させる定着装置を備える。後述するように、定着装置は、印刷媒体を加熱する加熱装置を備える。定着装置は、トナー像が転写された用紙が回転体と加圧ローラとの間に形成される定着ニップ領域を通過するときに、用紙を加熱しながら加圧して用紙にトナー像を定着させる。
【0005】
画像形成装置は、異なるサイズの用紙に画像を形成することが可能な場合がある。定着ニップ領域にサイズの小さな用紙を通過させると、回転体には、用紙に接触する通紙部と、用紙に接触しない非通紙部とが形成される。非通紙部では定着ベルトの熱が用紙に奪われないため、長手方向において回転体を一様に加熱すると非通紙部の温度が過剰に高くなることがる。このような部分的な温度上昇は、定着装置の部品に不具合を生じさせる原因となる。本開示の加熱装置は、用紙のサイズに応じて回転体の加熱領域を自動的に制御する機能を有する。
【0006】
図1は、例示的な画像形成装置を概略的に示す図である。
図1に示す画像形成装置1は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色を用いてカラー画像を形成する装置である。画像形成装置1は、印刷媒体である用紙5を搬送する搬送装置10と、静電潜像を現像する複数の現像装置20C,20M,20Y,20K(以下、個々の構成要素を区別する必要がない場合には、「現像装置20」と称する。)と、各色のトナー像を用紙5に二次転写する転写装置30と、表面に静電潜像が形成される複数の感光体40C,40M,40Y,40K(以下、個々の構成要素を区別する必要がない場合には、「感光体40」と称する。)と、積層トナー像を用紙5に定着させる定着装置50と、用紙5を排出する排出装置60とを備える。搬送装置10、現像装置20、転写装置30、感光体40、定着装置50及び排出装置60は、画像形成装置1の筐体15内に収容される。
【0007】
搬送装置10は、画像が形成される印刷媒体である用紙5を搬送経路12上で搬送する。用紙5は、カセット7に積層されて収容され、給紙ローラ11によりピックアップされて搬送される。搬送装置10は、用紙5に転写されるトナー像が転写領域13に到達するタイミングで、搬送経路12を介して転写領域13に用紙5を到達させる。
【0008】
現像装置20C,20M,20Y,20Kは、色ごとに設けられている。各現像装置20は、トナーを感光体40に担持させる現像ローラ45を備えている。現像装置20では、現像剤として、トナー及びキャリアを含む二成分現像剤を用いる。つまり、現像装置20では、トナーとキャリアを所望の混合比になるように調整し、さらに混合撹拌してトナーを均一に分散させ最適な帯電量を付与した現像剤が調整される。この現像剤を現像ローラ45に担持させる。そして、現像ローラ45の回転により現像剤が感光体40と対向する現像領域まで搬送されると、現像ローラ45に担持された現像剤に含まれるトナーが感光体40の周面上に形成された静電潜像に移動し、静電潜像が現像される。
【0009】
転写装置30は、現像装置20で形成されたトナー像を用紙5に二次転写する転写領域13に搬送する。転写装置30は、感光体40からトナー像が一次転写される中間転写ベルト31と、中間転写ベルト31を張架する張架ローラ34と、アイドラローラ35,36と、中間転写ベルト31を駆動する駆動ローラ37と、感光体40C,40M,40Y,40Kと共に中間転写ベルト31をそれぞれ挟持する一次転写ローラ32C,32M,32Y,32Kと、駆動ローラ37と共に中間転写ベルト31を挟持する二次転写ローラ33とを備えている。
【0010】
感光体40C,40M,40Y,40Kは、静電潜像担持体、感光体ドラム等とも呼ばれる。感光体40C,40M,40Y,40Kは、色ごとに設けられている。各感光体40は、中間転写ベルト31の移動方向に沿って設けられている。感光体40の周上には、現像装置20と、帯電装置41と、露光ユニット42と、クリーニング装置43とが設けられている。
【0011】
帯電装置41は、例えば感光体40に対して当接する帯電ローラであり、感光体40の表面を所定の電位に均一に帯電させる。露光ユニット42は、帯電装置41によって帯電した感光体40の表面を、用紙5に形成する画像に応じて露光する。これにより、感光体40の表面のうち露光ユニット42により露光された部分の電位が変化し、静電潜像が形成される。現像装置20C,20M,20Y,20Kは、それぞれの現像装置20に対向して設けられたトナータンク18C,18M,18Y,18Kから供給されたトナーによって感光体40に形成された静電潜像を現像し、トナー像を生成する。各トナータンク18C,18M,18Y,18K内には、それぞれ、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックのトナーが充填されている。クリーニング装置43は、感光体40上に形成されたトナー像が中間転写ベルト31に一次転写された後に感光体40上に残存するトナーを回収する。
【0012】
定着装置50は、定着ニップ領域14に用紙5を通過させることで、中間転写ベルト31から用紙5に二次転写されたトナー像を用紙5に定着させる。定着装置50は、回転可能な回転体である定着ベルト51と、定着ベルト51の外周面に圧接された加圧ローラ52とを備えている。定着ベルト51及び加圧ローラ52は、ケーシング53内に収容されている。定着ベルト51と加圧ローラ52との間には定着ニップ領域14が形成される。定着ベルト51は、用紙5を加熱する加熱装置70を備えている。加熱装置70は、当該定着ニップ領域14を通過する用紙5を加熱する。用紙5を定着ニップ領域14で加熱しながら加圧することで、トナー像が用紙5に溶融定着される。
【0013】
排出装置60は、定着装置50によりトナー像が定着された用紙5を装置外部へ排出するための排出ローラ62,64を備えている。
【0014】
画像形成装置1は、制御装置80を更に備える。制御装置80は、プロセッサ、記憶部、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、画像形成装置1の全体の動作を制御する機能を有している。制御装置80の記憶部には、画像形成装置1で実行される各種処理をプロセッサにより制御するための制御プログラムが格納されている。
【0015】
図2は例示的な定着装置50の斜視図であり、
図3は定着装置50の断面図である。上記のように、定着装置50は、回転体である定着ベルト51と、定着ベルト51に圧接する加圧ローラ52と、定着ベルト51を加熱する加熱装置70とを備える。定着ベルト51は、樹脂等の弾性材料によって構成された略円筒形状のベルトである。定着ベルト51は、軸線16に沿って延在し、軸線16周りに回転可能にようにケーシング53に支持されている(
図1参照)。
【0016】
加圧ローラ52は、略円筒形状又は略円柱形状を有し、定着ベルト51に隣接して軸線16に平行に延在している。加圧ローラ52は、例えば芯金65、弾性層66及び離型層67を有している。芯金65は、軸線16に平行に延在し、その両端部はケーシング53に回転可能に支持されている。弾性層66は、弾性材料によって構成され、芯金65の外周面を覆っている。離型層67は、樹脂組成物によって構成され、弾性層66の外周面を覆っている。加圧ローラ52は、定着ベルト51に圧接して、定着ベルト51と加圧ローラ52との間に定着ニップ領域14を形成する。
【0017】
加圧ローラ52は、駆動モータに接続されている。駆動モータの駆動力は、加圧ローラ52に伝達され、当該加圧ローラ52を回転させる。定着ベルト51に圧接された状態で加圧ローラ52が回転することにより、定着ベルト51は従動回転する。加圧ローラ52の回転速度は、制御装置80が駆動モータの動作を制御することにより、制御される。
【0018】
図4は、
図3のIV-IV線に沿った定着装置50の断面図である。
図3及び
図4に示すように、定着ベルト51の内部には定着ベルト51を加熱する加熱装置70が設けられている。加熱装置70は、基板71、発熱体72、ヒータホルダ73、支持部材74及び複数の感熱スイッチ75を備えている。
【0019】
図5は、加熱装置70の斜視図である。なお説明の便宜上、
図5ではヒータホルダ73及び支持部材74を省略して加熱装置70を図示している。基板71は、例えば、高い熱伝導性を有するアルミナ等のセラミック基板であり、発熱体72において発生した熱を定着ベルト51に伝達する。
図4及び
図5に示すように、基板71は、軸線16に平行な方向に延在する略矩形状を有している。以下の説明では、軸線16に平行な方向を「長手方向」といい、基板71の表面に沿う長手方向に垂直な方向を「幅方向」ということがある。
【0020】
発熱体72は、電力供給によって発熱する抵抗発熱体である。発熱体72は、例えば、銀及びパラジウムを含む合金、又はSiC等のセラミックによって構成されている。発熱体72は、基板71上に設けられ、長手方向に延在している。
図5に示すように、幅方向における発熱体72の幅は、幅方向における基板71の幅よりも小さい。
【0021】
図4に示すように、発熱体72は、第1端部81と、当該第1端部の反対側の第2端部82と、長手方向において第1端部81と第2端部82との間に配置された中央部83とを含む。第1端部81の長手方向の端部には、第1電極76が接続されている。第2端部82の長手方向の端部には、第2電極77が接続されている。第1電極76及び第2電極77は、例えば金属等の導体によって構成され、発熱体72の一対の電極を構成する。すなわち、発熱体72は、第1電極76と第2電極77との間で長手方向に延在する。発熱体72の上面は、後述する複数の接点200(感熱スイッチ75の接点部92に対向する領域)を除き絶縁膜で被覆されていてもよい。
【0022】
第1電極76は、第1導線路78を通じて電源68に接続されている。第2電極77は、第2導線路79を通じて電気的に接地されている。第1導線路78と第2導線路79とは、電気的に非接続である。したがって、電源68から第1電極76に電圧が印加されると、発熱体72の全長に亘って電流が流れ、第1電極76と第2電極77との間で発熱体72が発熱する。発熱体72で発生した熱は、基板71、定着ベルト51を介して定着ニップ領域14に配置された用紙5に伝達され、用紙5のトナー像が定着される。
【0023】
ヒータホルダ73は、発熱体72上に設けられている。ヒータホルダ73は、例えば高い耐熱性及び電気的絶縁性を有する樹脂によって構成され、複数の感熱スイッチ75を挟持して保持する。
【0024】
支持部材74は、定着ベルト51の内部で長手方向に延在し、ヒータホルダ73を支持している。支持部材74は、例えば断面U字状の金属部材であり、その両端はケーシング53に固定されている。基板71は、ヒータホルダ73を介して支持部材74に支持されることで、定着ベルト51の内部で固定される。したがって、トナー像を用紙5に定着させるときに、定着ベルト51は基板71に対して摺動しながら回転する。
【0025】
図4及び
図5に示すように、複数の感熱スイッチ75は、第1電極76及び第2電極77の間で長手方向に互いに離間して配列されている。複数の感熱スイッチ75は、発熱体72に電流が流れる範囲を制御する機能を有する。複数の感熱スイッチ75は、発熱体72の第1端部81に対向して配置された複数の第1感熱スイッチ84と、発熱体72の第2端部82に対向して配置された複数の第2感熱スイッチ85とを含んでいる。
【0026】
複数の第1感熱スイッチ84は、感熱スイッチ101,102,103,104,105,106を含んでいる。感熱スイッチ101~106は、発熱体72の中央部83から第1電極76側に向かってこの順に互いに間隔を空けて配列されている。複数の第2感熱スイッチ85は、感熱スイッチ111,112,113,114,115,116を含んでいる。感熱スイッチ111~116は、発熱体72の中央部83から第2電極77側に向かってこの順に互いに間隔を空けて配列されている。複数の第1感熱スイッチ84及び複数の第2感熱スイッチ85は、予め定められた用紙サイズに応じた位置に配置されている。
【0027】
例えば、長手方向における感熱スイッチ101と感熱スイッチ111との間の距離W1は、画像形成装置1で印刷可能な複数のサイズの用紙5のうち、最小サイズである第1サイズの用紙5の幅に対応している。長手方向における感熱スイッチ102と感熱スイッチ112との間の距離W2は、第1サイズよりも大きな第2サイズの用紙5の幅に対応している。同様に、感熱スイッチ103と感熱スイッチ113との間の距離W3、感熱スイッチ104と感熱スイッチ114との間の距離W4、感熱スイッチ105と感熱スイッチ115との間の距離W5、及び、感熱スイッチ106と感熱スイッチ116との間の距離W6は、第2サイズよりも大きな第3サイズ、第3サイズよりも大きな第4サイズ、第4サイズよりも大きな第5サイズ、及び、第5サイズよりも大きな第6サイズの用紙の幅にそれぞれ対応している。例えば、第1サイズ、第2サイズ、第3サイズ、第4サイズ、第5サイズ及び第6サイズは、A6Sサイズ、A5Sサイズ、B5Sサイズ、A4Sサイズ、B4Sサイズ及びA4Lサイズにそれぞれ対応する。
【0028】
複数の第1感熱スイッチ84は、第1導線路78を通じて発熱体72の第1電極76及び電源68に電気的に接続されている。第2感熱スイッチ85は、第2導線路79を通じて電気的に接地されている。言い換えれば、第1導線路78は、第1電極76及び複数の第1感熱スイッチ84に接続され、第2導線路79は、第2電極77及び複数の第2感熱スイッチ85に接続されている。
【0029】
各感熱スイッチ75の構成について説明する。
図6(a)は第1温度であるときの感熱スイッチ75の上面図であり、
図6(b)は感熱スイッチ75の側面図であり、
図6(c)は長手方向から見た感熱スイッチ75の正面図である。第1温度は、例えば常温(20℃)である。
図6(a)~
図6(c)に示すように、複数の感熱スイッチ75の各々は、温度に応じて可逆的に変形可能な変形可能導体86と、当該変形可能導体86を支持する支持体87とを含んでいる。
【0030】
図6(c)に示すように、支持体87は、基板71に接触する一対の脚部93と、当該一対の脚部に支持されたブリッジ94とを含む。一対の脚部93は、基板71の幅方向において発熱体72を隔てて基板71に立設されている。
図3に示すように、一対の脚部93の少なくとも一部は、基板71とヒータホルダ73との間で挟持されていてもよい。ブリッジ94は、発熱体72に接触しないように発熱体72の上方で一対の脚部93の間に架け渡されている。支持体87は、基板71の熱を変形可能導体86に伝達する。したがって、支持体87は熱伝導率の高い金属等によって構成される。
【0031】
変形可能導体86は、バイメタルプレート91及び接点部92を含んでいる。バイメタルプレート91は、支持体87のブリッジ94から長手方向に延在している。すなわち、バイメタルプレート91の一端は支持体87のブリッジ94に結合され、バイメタルプレート91の他端は自由端である。接点部92は、バイメタルプレート91の自由端に設けられている。
【0032】
図6(b)に示すように、バイメタルプレート91は、相対的に熱膨張率の高い第1プレート121と、相対的に熱膨張率の低い第2プレート122とが貼り合わされて形成されている。熱膨張率の異なる第1プレート121及び第2プレート122が貼り合わされることで、バイメタルプレート91は、温度上昇に応じて湾曲する。バイメタルプレート91の温度が第1温度である場合には、
図6(b)及び
図6(c)に示すように、変形可能導体86の接点部92は、発熱体72に対して離間して配置される。
【0033】
基板71の熱が支持体87を通してバイメタルプレート91に伝達され、バイメタルプレート91の温度が第2温度になると、
図7(a)及び
図7(b)に示すように、第1プレート121及び第2プレート122の熱膨張率の差異により、バイメタルプレート91が発熱体72に向けて湾曲する。第2温度は、第1温度よりも高く、閾値温度未満の温度である。閾値温度は、設計者によって決定される温度であり、例えば220℃である。
図7(a)及び
図7(b)に示すように、第2の温度では、変形可能導体86の接点部92は、発熱体72に対して離間して配置される。
【0034】
一方、バイメタルプレート91の温度が第3温度になると、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、バイメタルプレート91が発熱体72に向けて更に湾曲して、変形可能導体86の接点部92が発熱体72に接触する。第3温度は、閾値温度以上の温度である。変形可能導体86が発熱体72に接触することで、感熱スイッチ75と発熱体72とが電気的に接続される。
【0035】
上記のように、変形可能導体86は、その温度が閾値温度未満であるときに発熱体72に対して離間し、その温度が閾値温度に達したときに発熱体72に接触するように変形する。すなわち、発熱体72は、複数の感熱スイッチ75の変形可能導体86がそれぞれ接触する複数の接点200を有する。
図4に示すように、発熱体72の複数の接点200は、複数の感熱スイッチ75の位置に対応して長手方向に配列されている。より具体的には、感熱スイッチ101~106の変形可能導体86は、発熱体72の複数の接点200のうち、接点201,202,203,204,205,206にそれぞれ接触可能である。感熱スイッチ111~116の変形可能導体86は、発熱体72の複数の接点200のうち、接点211,212,213,214,215,216にそれぞれ接触可能である。
【0036】
複数の第1感熱スイッチ84の各々は、複数の接点201~206のうち対応する接点と接触したときに、当該接点を第1電極76と電気的に接続する。すなわち、複数の第1感熱スイッチ84の1つが、複数の接点201~206のうち対応する接点に接触すると、当該接点が第1導線路78に短絡される。複数の第2感熱スイッチ85の各々は、複数の接点211~216のうち対応する接点と接触したときに、当該接点を第2電極77と電気的に接続する。すなわち、複数の第2感熱スイッチ85の1つが、複数の接点211~216のうち対応する接点に接触すると、当該接点が第2導線路79に短絡される。
【0037】
図4及び
図9を参照して、定着装置50の定着ニップ領域14に用紙5が通過するときの加熱装置70の動作について説明する。定着ニップ領域14に用紙5が通過する場合には、電源68から発熱体72に電力が供給される。このとき、定着ニップ領域14を通過する用紙5のサイズが、画像形成装置1で印刷可能な複数のサイズの用紙5のうち最大サイズである場合には、
図4に示すように、複数の感熱スイッチ75の変形可能導体86は発熱体72に離間する。その結果、第1電極76と第2電極77との間で発熱体72に電流が流れ、発熱体72が長手方向の全域で発熱する。
【0038】
一方、定着ニップ領域14を通過する用紙5の幅が、発熱体72の全長よりも小さい場合には、発熱体72から基板71に伝達された熱が用紙5に奪われないため、用紙5に接触しない非通紙部において定着ベルト51の温度が上昇する。例えば、定着ニップ領域14を通過する用紙のサイズが距離W3に対応する第3サイズである場合には、発熱体72の接点203と接点213との間の領域の外側で基板71の温度が過剰に高くなる。基板71の温度が過剰に高くなると、発熱体72やヒータホルダ73等の部品に損傷が生じる恐れがある。
【0039】
これに対して、加熱装置70では、非通紙部に相当する接点203と接点213との間の領域の外側で基板71の温度が上昇し、例えば複数の第1感熱スイッチ84のうち感熱スイッチ104,105、及び、第2感熱スイッチ85のうち感熱スイッチ114,115の温度が閾値温度に達した場合には、
図9に示すように、感熱スイッチ104,105,114,115の変形可能導体86が変形して発熱体72の接点204,205,214,215にそれぞれ接触する。
【0040】
図10は、複数の感熱スイッチ75と発熱体72との電気的な接続関係を模式的に示している。
図10に示すように、感熱スイッチ104,105が発熱体72の接点204,205に接触した場合には、発熱体72の接点204,205が感熱スイッチ104,105を介して第1導線路78に電気的に接続され、電気的短絡が発生する。同様に、感熱スイッチ114,115が発熱体72の接点214,215に接触した場合には、発熱体72の接点214,215が感熱スイッチ114,115を介して第2導線路79に電気的に接続され、電気的短絡が発生する。
【0041】
電流は電気抵抗の小さな経路を選択的に流れるため、発熱体72に電気的短絡が発生すると、
図10に矢印で示すように、電源68からの電流は、第1導線路78から感熱スイッチ104を通って発熱体72の接点204に導入され、接点204と接点214との間の領域130で発熱体72を通過する。発熱体72を通過した電流は、接点214から感熱スイッチ114を通って第2導線路79に出力される。すなわち、電源68から供給された電流は、第1電極76と接点204との間の領域131、及び、接点214と第2電極77との間の領域132を迂回して、接点204と接点214との間の領域130のみを流れる。したがって、非通紙部に相当する領域131及び領域132の加熱が停止され、通紙部に相当する領域130を選択的に加熱することができる。よって、定着ベルト51の非通紙部が過剰に加熱されることが防止される。
【0042】
第3サイズの用紙5が定着ニップ領域14を通過した後に、第3サイズよりも大きな用紙5が定着ニップ領域14を通過して、感熱スイッチ104,105,114,115の温度が閾値温度未満になった場合には、感熱スイッチ104,105,114,115の変形可能導体86は、発熱体72の発熱体72の接点204,205,214,215から離れた位置に復帰する。その結果、発熱体72の加熱範囲が広げられる。すなわち、複数の感熱スイッチ75の変形可能導体86は、温度に応じて可逆的に変形する。
【0043】
以上説明したように、加熱装置70では、定着ニップ領域14にサイズの小さな用紙を通過させたときに、基板71の各位置の温度に対応して複数の感熱スイッチ75の一部が発熱体72と電気的に結合し、発熱体72の非通紙部に相当する領域を迂回して通紙部に相当する領域に選択的に電流が流れるように電流の経路を自動的に制御する。これにより、発熱体72の発熱範囲が通紙部に相当する領域に制限されるので、定着ベルト51の非通紙部の温度が過剰に高くなることが抑制される。
【0044】
本明細書に記載の全ての側面、利点及び特徴が、必ずしも、いずれかひとつの特定の例及び実施形態により達成される又は含まれるわけではないことは理解されたい。実際、本明細書において様々な例を記載し示したが、他の例もその配置及び詳細について修正することができることは明らかであるべきだ。ここに請求される保護主題の精神及び範囲に包含される全ての修正及び変形を請求する。
【0045】
例えば、
図4では、加熱装置70が、発熱体72の第1端部81上に配置された複数の第1感熱スイッチ84と、発熱体72の第2端部82上に配置された複数の第2感熱スイッチ85とを備えているが、加熱装置70は1つの第1感熱スイッチ84と、1つの第2感熱スイッチ85を備えていればよい。
【0046】
また、加熱装置70は、第1感熱スイッチ84及び第2感熱スイッチ85の一方を備えていればよい。定着ニップ領域14に小さなサイズの用紙5を通過させる手法としては、定着ベルト51の長手方向の中心に用紙5の中心を揃える手法と、定着ベルト51の長手方向の一方の端部に用紙5の端を揃える手法とが存在する。定着ベルト51の一方の端部に用紙5の端を揃える場合には、定着ベルト51の他方の端部にのみ非通紙部が形成される。この場合には、長手方向の他方の端部側のみに感熱スイッチを設置した場合であっても、非通紙部が過剰に加熱されることを抑制することができる。
【0047】
また、加熱装置70は、1つの感熱スイッチ75を備えていればよい。例えば
図11に示すように、加熱装置70は感熱スイッチ75を1つのみ備えていてもよい。定着ベルト51の一方の端部に用紙5の端を揃える場合には、感熱スイッチ75が1つのみ設けられた場合であっても、2つの異なる用紙5のサイズに応じて発熱体72が発熱する範囲を制御することができる。
【0048】
また、
図12は感熱スイッチ75の変形例を示す側面図である。
図12に示すように、変形可能導体86の接点部92の表面は、炭化ケイ素(SiC)又は窒化チタン(TiN)を含む導電性の保護層135で覆われている。炭化ケイ素及び窒化チタンは、高い耐摩耗性を有しているので、変形可能導体86の接点部92が繰り返し発熱体72の接点200に接触した場合に接点部92の摩耗を抑制することができる。
【0049】
変形可能導体86は、その温度が閾値温度未満であるときに発熱体72から離間し、その温度が閾値温度に達したときに発熱体72に接触するように変形可能であれば、必ずしもバイメタルプレート91を有していなくてもよい。例えば、変形可能導体86は、バイメタルプレート91に代えて感熱型の形状記憶合金、又は、導電性を有する形状記憶ポリマーを有していてもよい。
【0050】
図8(a)及び
図8(b)では、変形可能導体86の接点部92が発熱体72に点接触しているが、接点部92は幅方向に延在する線状又は面状を有し、対応する位置において発熱体72の幅方向の全域と線接触又は面接触してもよい。なお、上述した種々の実施形態は、矛盾のない範囲で組み合わせることが可能である。