(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086723
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】運動支援システム
(51)【国際特許分類】
A63B 71/06 20060101AFI20240621BHJP
A63B 22/02 20060101ALI20240621BHJP
A63B 22/06 20060101ALI20240621BHJP
A61H 1/02 20060101ALN20240621BHJP
【FI】
A63B71/06 T
A63B22/02
A63B22/06 H
A61H1/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201675
(22)【出願日】2022-12-18
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】522111622
【氏名又は名称】株式会社WisH Lab
(74)【代理人】
【識別番号】100090413
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 康稔
(72)【発明者】
【氏名】田宮 公成
(72)【発明者】
【氏名】小宮 康宏
(72)【発明者】
【氏名】近藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】山田 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】荒井 敏
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046AA33
4C046AA45
4C046AA47
4C046BB07
4C046BB10
4C046CC01
4C046CC04
4C046DD33
4C046DD35
4C046EE22
4C046EE27
4C046EE34
(57)【要約】
【課題】 下半身の運動と組み合わせるデュアルタスク・トレーニングの認知課題に、触覚情報を適用させる。
【解決手段】 振動デバイスを、運動者が運動中に握る運動補助具の一部に取り付ける。運動者に対しては、前記振動デバイスによって触覚情報を認知したときに行うべき反応を提示する。その後、信号処理部で前記振動デバイスを動かすとともに、運動者が振動を認知した反応を、ジェスチャであれば撮像部を介して、発声であれば音声入出力部を介して前記信号処理部に入力し、前記信号処理部で提示した反応と運動者の反応が一致しているか否かを判断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置、撮像部、音声入出力部、信号処理部、運動補助具、及び振動デバイスを有し、
前記信号処理部は、前記表示装置、撮像部、音声入出力部、及び振動デバイスと接続して、それら各部の制御と、各部から受けた信号の処理を行い、
前記振動デバイスは、運動者が運動中に握る運動補助具の一部に取り付けられており、
運動者が運動中に触覚情報を認知したときに行うべき反応を前記信号処理部が提示した後、前記信号処理部が前記振動デバイスを動かすとともに、運動者が前記振動デバイスの振動を認知した反応を、ジェスチャであれば前記撮像部を介して、発声であれば前記音声入出力部を介して、それぞれ前記信号処理部に入力し、前記信号処理部が、提示した反応と運動者の反応が一致しているか否かを判断する運動支援システム。
【請求項2】
表示装置、撮像部、音声入出力部、信号処理部、運動補助具、振動デバイス、及びスイッチを有し、
前記信号処理部は、表示装置、撮像部、音声入出力部、振動デバイス、及びスイッチと接続して、それら各部の制御と各部から受けた信号の処理を行い、
前記振動デバイスと前記スイッチは、運動者が運動中に握る運動補助具の一部に取り付けられており、
運動者が運動中に触覚情報を認知した時に行うべき反応を提示した後、前記信号処理部が前記振動デバイスを動かすとともに、運動者が手で振動を認知した反応を、ジェスチャであれば撮像部を介して、発声であれば音声入出力部を介して、スイッチ操作であれば振動デバイスを構成する振動制御部を介して、それぞれ前記信号処理部に入力し、前記信号処理部が、提示した反応と運動者の反応が一致しているか否かを判断する運動支援システム。
【請求項3】
表示装置、撮像部、音声入出力部、信号処理部、運動補助具、複数の振動デバイス、及び送風デバイスを有し、
少なくとも一つの振動デバイスを、運動者が運動中に握る運動補助具の一部の異なる場所に取り付け、
送風デバイスを、風が運動者に当たる位置に取り付け、
運動者が運動中に触覚情報を認知したときに行うべき反応を提示した後、前記信号処理部が前記振動デバイスの振動制御部を介して一つあるいは複数の振動体を動かすか、前記信号処理部が前記送風デバイスの送風制御部を介して送風デバイスを動かし、
運動者が手で振動体の動きを認知するかもしくは風を認知したときの反応を、ジェスチャであれば前記撮像部を介して、発声であれば音声入出力部を介して、それぞれ前記信号処理部に入力し、前記信号処理部が、提示した反応と運動者の反応が一致しているか否かを判断する運動支援システム。
【請求項4】
前記振動デバイスが、振動体、取付部、振動体保持部、及び振動制御部で構成され、
前記振動体が円筒形状で、運動補助具に取り付けられ、
振動体の長手方向と、前記振動体を組み付けた振動デバイスの長手方向と、運動補助具の取付部位の長手方向とが一致するように、前記振動デバイスを前記運動補助具の一部に取り付け、
前記振動制御部は、前記信号処理部と有線もしくは無線で接続され、
前記振動制御部で生成する信号で前記振動体を駆動し、該振動体の動きが、前記振動体保持部を介して、運動者が握っている振動体と離れた場所へ伝えられる請求項1~3のいずれか一項に記載の運動支援システム。
【請求項5】
前記振動デバイスが、振動体、取付部、振動体保持部、及び振動制御部で構成され、
前記振動体がコイン形状で、運動補助具の端面に取り付けられ、
前記振動制御部は、前記信号処理部と有線もしくは無線で接続され、
前記振動制御部で生成する信号で前記振動体を駆動し、該振動体の動きが、前記振動体保持部を介して、運動者が握っている振動体と離れた場所へ伝えられる請求項1~3のいずれか一項に記載の運動支援システム。
【請求項6】
前記振動デバイスが、振動体、取付部、振動体保持部、及び振動制御部で構成され、
円筒形状の振動体、及び、コイン形状の振動体を備えており、
円筒形状の振動体は、その長手方向と、前記振動体を組み付けた振動デバイスの長手方向と、運動補助具の取付部位の長手方向とが一致するように、前記振動デバイスを前記運動補助具の一部に取り付けられ、
コイン形状の振動体は、運動補助具の端面に取り付けられ、
前記振動制御部は、前記信号処理部と有線もしくは無線で接続され、
前記振動制御部で生成する信号で前記振動体を駆動し、該振動体の動きが、前記振動体保持部を介して、運動者が握っている振動体と離れた場所へ伝えられる請求項1~3のいずれか一項に記載の運動支援システム。
【請求項7】
前記振動デバイスが、振動体、振動体保持部、内部接着剤、外部接着剤、カバー、及び振動制御部で構成され、
保管時には保存シートに貼り付けられ、
利用前に保存シートから外して、運動補助具の一部に前記外部接着剤で取り付ける請求項4記載の運動支援システム。
【請求項8】
前記振動制御部で生成する前記振動体を駆動する信号が、パルス状、もしくは時間で変化するアナログ信号である請求項4記載の運動支援システム。
【請求項9】
前記運動補助具として、ウォーキングマシン(トレッドミル)を用いる運動の場合は、該ウォーキングマシン(トレッドミル)の手すりに前記振動デバイスを取り付け、
前記運動補助具として、その場で足踏みする運動具を用いる場合は、該運動具の手すりに前記振動デバイスを取り付け、
前記運動補助具として、椅子に座って足を動かす運動具を用いる場合は、該運動具の椅子に前記振動デバイスを取り付け、
前記運動補助具として、サイクルトレーナーでペダル漕ぎ運動をする場合は、該サイクルトレーナーのハンドル部に前記振動デバイスを取り付けることで、
運動者が立った状態で行う運動と、座って行う運動のいずれかにおいても、前記振動デバイスによる触覚情報に基づく動作を行う請求項1~3のいずれか一項に記載の運動支援システム。
【請求項10】
トレーニング開始情報を運動者に示す2つの手段と、
触覚情報を運動者に伝える2つのデバイスとを有し、
運動者が触覚情報を認知したことを示す3つの反応に対応し、
それらを組み合わせた12種類の触覚情報を用いるデュアルタスク・トレーニングが選定できる請求項1~3のいずれか一項に記載の運動支援システム。
【請求項11】
一つの機器で、画像を用いるデュアルタスク・トレーニングと、音声を用いるデュアルタスク・トレーニングと、触覚情報を用いるデュアルタスク・トレーニングを組み合わせる請求項1~3のいずれか一項に記載の運動支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動支援システムに関し、例えば、高齢者や障害者のリハリビテーション、健康増進・維持で行われる身体運動(歩行動作、自転車漕ぎ、踏台昇降、など)を支援するための運動支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高齢者の健康維持においては、フレイル(加齢に伴い筋力が衰え、疲れやすくなり家に閉じこもりがちになるなど、年齢を重ねたことで生じやすい衰え全般を指す言葉)予防に、「バランスの良い食事」、「運動」、「口腔・嚥下性能のケア」、「社会とのつながり」が重要であると、言われている。運動について詳述すると、運動による筋肉の維持は、下記非特許文献1,2に示すように、転倒の防止だけでなく、病気のリスク低減につながっており、下半身を中心としたトレーニングが有効であると報告されている。
【0003】
また、身体運動とともに、別の認知作業を行うデュアルタスク(二重課題)は、体を動かしながら(=運動課題)何かを考える(=認知課題)など、複数の課題を同時に実行するものであり、その効果がさまざまな文献で報告されている。参考となる非特許文献3,4を以下に示す。
【0004】
近年、デュアルタスクを行う運動支援システムとして、歩行、足踏みなどの運動と、認知課題を組み合わせる技術が、下記特許文献1,2,3に開示されている。
【0005】
これらのうち、特許文献1記載の背景技術では、歩行しながら、会話するトレーニング(運動と、聴覚の認知課題の組み合わせ)が、特許文献2記載の背景技術では、足踏みしながら、画面に示された計算を行うトレーニング(運動と、視覚の認知課題の組み合わせ)が、特許文献3記載の背景技術では、動きながら、画像を認識するトレーニング(運動と、視覚の認知課題の組み合わせ)が開示されている。
【0006】
人間の五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)のうち、触覚に関しては、視覚、聴覚と同じようにデュアルタスクの認知課題に適用する可能性があるが、適用した例は知られていない。また、非特許文献5に示すように、触覚は視覚への刺激と関連することが知られており、デュアルタスクのトレーニングの認知課題とすることで、視覚の刺激と組み合わせて脳に刺激を与える可能性がある。また、沢山の種類の認知課題をトレーニングに適用すれば、飽きずに楽しくトレーニングできる可能性がある。触覚情報をデュアルタスクに適用した事例ではないが、ゲーム機器で活用する例が特許文献4で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022―080413
【特許文献2】特許第6407405号
【特許文献3】特許第7026983号
【特許文献4】国際公開2017-203750号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】NHK健康チャンネル「筋肉と健康・寿命の関係 筋肉量が落ちるリスクと病気について」(https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_186.html)
【非特許文献2】NHK健康チャンネル「高齢者に効果的な筋トレと運動時のコツ 筋力・脚力をつけるトレーニング」(https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_201.html)
【非特許文献3】理学療法学 Supplement 2006(0), E0052-E0052, 2007 公益社団法人日本理学療法士協会,「Dual-task Balance trainingには転倒予防効果があるのか?」
【非特許文献4】日本体育学会大会予稿集 69(0), 21-21, 2018, 一般社団法人 日本体育学会 認知機能の向上に効果『デュアルタスクエクササイズマシン「モトタイル(Mototiles)」』:~脳活動を測定し、可視化する技術による検証を実施~
【非特許文献5】雑誌ヘルシエスト264号(2020年11月10日発行) 特集 触覚の世界「触覚は視覚や聴覚に影響し「情動」を刺激する」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記特許文献4に示された技術で、下半身の運動と組み合わせるデュアルタスク・トレーニングの認知課題に、触覚情報を適用させるには、以下の課題がある。
a,床の振動、床の傾き、筐体内の加圧、コントローラの重さを変えるなどの触覚情報は、下半身の運動中に運動者が認知する触覚情報に適さない。
b,筐体内に風を発生させる技術は、運動者の位置が移動すると、当てるのが困難である。
c,高齢者向けのトレーニングで重要となる運動者の転倒を回避する技術が示されていない。床を振動する、あるいは床を傾けると、運動者が転倒する可能性がある。
【0010】
本発明は、以上のような課題に着目してなされたもので、下半身の運動と組み合わせるデュアルタスク・トレーニングの認知課題に、触覚情報を適用させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、表示装置、撮像部、音声入出力部、信号処理部、運動補助具、及び振動デバイスを有し、信号処理部が表示装置、撮像部、音声入出力部、及び振動デバイスとつながり、それら各部の制御と各部から受けた信号の処理を行い、振動デバイスを運動者が運動中に握る運動補助具の一部に取り付け、運動者が運動中に、触覚情報を認知した時にとるべき反応を提示した後、信号処理部で振動デバイスを動かすとともに、運動者が手で振動を認知した反応を、ジェスチャであれば撮像部を介して、発声であれば音声入出力部を介して、それぞれ前記信号処理部に入力し、前記信号処理部で提示した反応と運動者の反応が一致しているか否かを判断する運動支援システムを提供して、デュアルタスク・トレーニングに、触覚情報を適用する。
【0012】
本発明はさらに、運動補助具に取り付ける振動デバイスが、振動体、取付部、振動体保持部、及び振動制御部で構成され、円筒形状の振動体の長手方向と、前記振動体を組み付けた振動デバイスの長手方向と、運動補助具の一部の円筒形状の長手方向とが一致するように、振動体を含む振動デバイスを運動補助具の一部に取り付け、振動制御部で生成する信号で振動体を動かし、振動体の動きが、振動体保持部を介して、運動者が握っている振動体と離れた場所へ伝えられる運動支援システムを提供して、デュアルタスク・トレーニングに、触覚情報を適用する。
【0013】
本発明はさらに、振動体を駆動する信号が、パルス状、もしくは時間で変化するアナログ信号である運動支援システムを提供して、デュアルタスク・トレーニングに、触覚情報を適用する。
【0014】
本発明はさらに、表示装置、撮像部、音声入出力部、信号処理部、運動補助具、振動デバイス、及びスイッチを有し、信号処理部が表示装置、撮像部、音声入出力部、振動デバイス、及びスイッチとつながり、振動デバイスとスイッチを運動者が運動中に握る運動補助具の一部に取り付け、運動者が運動中に、触覚情報を認知した時にとるべき反応を提示した後、信号処理部で振動デバイスを動かすとともに、運動者が手で振動を認知した反応を、ジェスチャであれば撮像部を介して、発声であれば音声入出力部を介して、スイッチ操作であれば振動デバイスを構成する振動制御部を介して、それぞれ前記信号処理部に入力し、前記信号処理部で提示した反応と運動者の反応が一致しているか否かを判断する運動支援システムを提供して、デュアルタスク・トレーニングに、触覚情報を適用する。
【0015】
本発明はさらに、表示装置、撮像部、音声入出力部、信号処理部、運動補助具、少なくとも一つの振動デバイス、及び送風デバイスを有し、振動デバイスを運動者が運動中に握る運動補助具に取り付け、送風デバイスを表示装置の周辺に取り付け、運動者が運動中に触覚情報を認知した時にとるべき反応を提示した後、信号処理部が振動デバイスの振動制御部を介して1つもしくは複数の振動デバイスを動かすか、信号処理部が送風デバイスの送風制御部を介して送風デバイスを動かし、運動者が振動を認知した、もしくは風を認知した反応を、ジェスチャであれば撮像部を介して、発声であれば音声入出力部を介して、それぞれ信号処理部に入力し、信号処理部で提示した反応と運動者の反応が一致しているか否かを判断する運動支援システムを提供して、デュアルタスク・トレーニングに、触覚情報を適用する。
【0016】
本発明はさらに、振動デバイスが振動体、取付部、振動体保持部、及び振動制御部で構成され、振動体がコイン形状で運動補助具の一部の端面に取り付けられる運動支援システムを提供して、デュアルタスク・トレーニングに、触覚情報を適用する。
【0017】
本発明はさらに、振動デバイスが振動体、取付部、振動体保持部、及び振動制御部で構成され、複数の円筒形状、もしくは円筒形状とコイン形状の振動体が各1つ振動体保持部に取り付けられている運動支援システムを提供して、デュアルタスク・トレーニングに、触覚情報を適用する。
【0018】
本発明はさらに、振動体、振動体保持部、内部接着剤、外部接着剤、カバー、及び振動制御部で構成され、運動補助具の一部に外部接着剤で取り付けられ、保管時には保存シートに貼り付けられ、利用前にシートから外して運動補助具の一部に取り付ける運動支援システムを提供し、デュアルタスク・トレーニングに、触覚情報を適用する。
【0019】
本発明はさらに、立って行う運動と座って行う運動に対応し、振動デバイスをウォーキングマシン(トレッドミル)の一部の手すり、その場で足踏みする運動場合は歩行補助具、椅子に座って足を動かす運動の場合は、椅子に、サイクルトレーナーでペダル漕ぎ運動をする場合は、サイクルトレーナーのハンドル部に、それぞれ取り付ける運動支援システムを提供して、デュアルタスク・トレーニングに、触覚情報を適用する。
【0020】
本発明はさらに、トレーニング開始情報を運動者に提示する2つの手段と、触覚情報を運動者に伝える2つのデバイスとを有し、運動者が触覚情報を認知したことを示す3つの反応に対応し、それぞれを組み合わせた12種類のデュアルタスク・トレーニングを選定できる運動支援システムを提供する。
【0021】
本発明はさらに、一つの機器で、画像を用いるデュアルタスク・トレーニング、音声を用いるデュアルタスク・トレーニングと触覚情報を用いるデュアルタスク・トレーニングを組み合わせる運動支援システムを提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、安全性に配慮しつつ、下半身の運動と組み合わせるデュアルタスク・トレーニングの認知課題に触覚情報を適用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施例1の全体構成を示す図である。
【
図2】前記
図1の振動デバイスと、運動補助具と、運動者の手による握り位置との関係を示す図である。
【
図3】前記
図2の振動デバイスを詳細に示す図である。
【
図4】前記
図1~
図3に示す実施例の動作を説明する図である。
【
図5】本発明の実施例2を示し、前記
図2の振動デバイスに印加される信号の例を示す図である。
【
図6】本発明の実施例3を示し、前記
図2に対して、スイッチを加えた構成を示す図である。
【
図7】本発明の実施例4を示し、前記
図1に対して、送風デバイスを加えた構成を示す図である。
【
図9】本発明の実施例5を示し、前記
図2の振動デバイスの別の構成を示す図である。
【
図10】本発明の実施例6を示し、前記
図2の振動デバイスのさらに他の構成を示す図である。
【
図11】本発明の実施例7を示し、前記
図2の振動デバイスのさらに他の構成を示す図である。
【
図12】前記
図11の振動デバイスの保管状態~取り付け状態を示す図である。
【
図13】本発明の実施例8を示し、前記
図2の振動デバイスを運動補助具に取り付ける方法を示す図である。
【
図14】前記
図2の振動デバイスを運動補助具に取り付ける他の方法を示す図である。
【
図15】本発明の実施例9を示し、デュアルタスク・トレーニングの設定を示す図である。
【
図19】本発明の実施例10を示し、画像を用いるデュアルタスク・トレーニングの例を示す図である。
【
図20】実施例10において、音声を用いるデュアルタスク・トレーニングの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の望ましい実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明するが、既に周知の技術的部分については説明を省略ないし簡略化する。
【実施例0025】
最初に、本発明の実施例1を、
図1~
図4を用いて説明する。
図1はシステムの全体構成を示し、
図2はシステムを構成する振動デバイスの構成、および振動デバイスと運動補助具の一部と、運動者の手との関係を示す。
図3は振動デバイスをさらに詳細に説明する図、
図4は
図1~
図3に示すシステムの動作を説明する図である。
【0026】
図1(A)に示すように、デュアルタスク・トレーニングシステム100は、表示装置102、撮像部104、音声入出力部106、信号処理部108、運動補助具200で構成され、運動者EXは、表示装置102の画面が見える位置に設置されている運動補助具200によって運動する。信号処理部108は、表示装置102、撮像部104、音声入出力部106、振動デバイス210と接続されており、各部の制御と各部から受けた信号の処理を行う。
【0027】
運動補助具200は、例えばウォーキングマシン(トレッドミル)が該当し、運動台202の前方にマスト204が立設されており、マスト204の上部に振動デバイス210が取り付けられている。運動補助具200には、図示しないハンドルが水平方向に設置されているものもあり、振動デバイス210はこちらに取り付けてもよい。
図1(B)には、振動デバイス210を、運動者EXが手で握っている状態を示す。
【0028】
図2には、振動デバイス210の構成の詳細が示されている。同図において、振動デバイス210は、振動体212、振動体保持部214、取付部216、振動制御部218で構成されている。振動デバイス210を駆動する振動制御部218は、有線もしくはWifiやBluetoothなどの無線で、
図1に示した信号処理部108と接続されている。振動体212は、振動体保持部214に取り付けられており、振動体保持部214は、取付部216で運動補助具200のマスト204に取り付けられている。運動者EXが、
図1(B)に示すように、振動デバイス210をマスト204とともに握り位置GPで握ると、振動体212の振動が、振動体保持部214を介して運動者EXの手(ないし指)に伝わるようになる。
【0029】
次に、
図3を参照して、振動デバイス210をさらに詳しく説明する。同図(A)は振動体212の構成を拡大して示し、同図(B)は取付状態の側面を示し、同図(C)は取付状態の正面を示す。これらの図において、振動体212は、モータ制御線212Aが接続されたモータ212Bの回転軸212Cに偏心重り212Dが取り付けられている。偏心重り212Dの周辺には、偏心重り212Dが振動したときにマスト204や振動体保持部214に当たらないように、空間が形成されている。
【0030】
モータ制御線212Aに振動制御部218から駆動信号が入力されると、モータ212Bの回転軸212Cが回転し、偏心重り212Dが偏芯駆動され、振動が発生するようになっている。この振動は、振動体保持部214から、運動者EXの手に伝達される。
【0031】
運動補助具200のマスト204は、例えば、~φ30mmで長さ~10cm以上の円筒形状であり、二か所に穴があって、ここに振動デバイス210を取付部216で止める。振動体212は、例えば、~φ5mmの円筒形状で長さが~20mmである。振動体保持部214は、硬質の樹脂などで実現されており、幅が~10mm、厚みが7mm程度である。また、図示していないが、振動体保持部214がマスト204と接する面は、マスト204の形状にフィットする形状になっている。
【0032】
次に、本実施例の全体の動作を、
図4も参照して説明する。運動者EXは、運動補助具200を使用して運動を開始する(ステップS10)。例えば、運動補助具200がウォーキングマシンの場合、運動者EXは、運動台202に乗り、マスト204の振動デバイス210を持ってウォーキングを開始する(ステップS12)。表示装置102には、例えば森林の風景が表示され、運動者EXは、森の中の小径を歩いているような雰囲気で運動を行う。
【0033】
この状態で、信号処理部108は、表示装置102もしくは音声入出力部106に対して、触覚情報を用いるデュアルタスク・トレーニングを始める。例えば、「振動を感じたら手を挙げて下さい」、あるいは「振動を感じたら"はい"と発声して下さい」を、表示装置102に表示するか、音声入出力部106から出力し、トレーニング指示情報を運動者EXに提示する(ステップS14)。次に、信号処理部108は、触覚情報のトリガーを振動デバイス210の振動制御部218に送り、これを受けた振動制御部218は振動体212を駆動する信号を生成して振動体212に出力する(ステップS16)。
【0034】
運動者EXは、振動デバイス210の振動を認知したら、上述した指示に従って、ジェスチャか発声で反応する。ジェスチャであれば、システムの撮像部104で撮像され、発声であれば音声入出力部106で音声が得られる。これら撮像信号ないし音声信号は信号処理部108に入力され、信号処理部108では、一定時間内に反応があったか、提示通りの反応があったかの反応比較が行われる(ステップS18)。信号処理部108は、運動者EXが触覚情報を正しく認知したか否を判別し、指示通りの反応があったと判断されたときは(ステップS18のYes)、触覚情報が認知されたと判断し(ステップS20)、指示通りの反応がなかったと判断されたときは(ステップS18のNo)、繰り返し触覚情報によるトレーニングを繰り返す。触覚情報が認知された結果は、信号処理部108が生成する信号を、表示装置102もしくは音声入出力部106で運動者EXに知らせることもできる(ステップS22)。ステップS22の動作は、運動中でも運動終了後でもよい。
【0035】
以上のように、本実施例によれば、運動補助具200を利用した運動中に、振動デバイス210による振動とともに一定の動作を提示し、運動者EXがそれにどのように応答したかを評価することとしたので、触覚情報をデュアルタスク・トレーニングの認知課題に有効に適用させることができる。また、振動デバイス210を、運動者EXが操作しやすいように、運動補助具200のマスト204に設けており、触覚情報の認知を安全に行うことができる。