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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086730
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】挿通性を向上させたスタイレット
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20240621BHJP
【FI】
A61M25/06 556
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024041388
(22)【出願日】2024-03-15
(62)【分割の表示】P 2022528143の分割
【原出願日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】63/086,583
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515257519
【氏名又は名称】テレフレックス メディカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TELEFLEX MEDICAL INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】ホースト ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】アマン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】スピンカ マーク
(57)【要約】
【課題】スタイレット、より具体的に言えば、PICCと組み立てられるべきスタイレットの挿通性についての1つ以上の特徴を改良する必要性がある。
【解決手段】低トルク性又は非トルク性スタイレットがコアワイヤを有するのが良く、コアワイヤは、約15~90°の第1の角度の第1の予備成形曲がり部および約8~15°の第2の角度の第2の予備成形曲がり部を有し、第2の予備成形曲がり部は、第1の予備成形曲がり部の遠位側に位置し、第1の予備成形曲がり部は、第2の予備成形曲がり部よりも長く、コアワイヤは、第1の予備成形曲がり部と第2の予備成形曲がり部との間に延びる中間部分および第2の予備成形曲がり部と遠位先端部との間に延びる遠位部分をさらに有し、遠位部分は、遠位先端部の撓み度を増大させる減少幅または減少直径を持つセグメントを有し、ナビゲーション装置をさらに有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタイレットであって、
コアワイヤを有し、前記コアワイヤは、
第1の角度の第1の予備成形曲がり部を含み、
第2の角度の第2の予備成形曲がり部を含み、前記第2の予備成形曲がり部は、前記第1の予備成形曲がり部の遠位側に位置し、前記第1の角度は、前記第2の角度よりも大きく、
前記第2の予備成形曲がり部の遠位側に位置しかつ遠位先端部の撓み度を増大させる減少幅または減少直径を持つ細いセグメントを含む、スタイレット。
【請求項2】
前記第1の角度は、前記スタイレットの長手方向軸線に対して約15~90゜であり、前記第1の予備成形曲がり部の弧長は、約3~7インチ(7.5~17.5cm)である、請求項1記載のスタイレット。
【請求項3】
前記第2の角度は、前記スタイレットの長手方向軸線に対して約8~15゜であり、前記第2の予備成形曲がり部の弧長は、約0.2~0.5インチ(0.5~1.3cm)である、請求項1または2記載のスタイレット。
【請求項4】
前記第1の予備成形曲がり部および前記第2の予備成形曲がり部は、全体として、前記コアワイヤの前記遠位先端部の端から10インチ(25cm)内にある、請求項1~3のうちいずれか一に記載のスタイレット。
【請求項5】
前記第1の角度は、前記スタイレットの長手方向軸線に対して約60゜であり、前記第2の角度は、前記スタイレットの前記長手方向軸線に対して約10゜である、請求項1~4のうちいずれか一に記載のスタイレット。
【請求項6】
前記第1の予備成形曲がり部は、前記第2の予備成形曲がり部よりも長い、請求項1~5のうちいずれか一に記載のスタイレット。
【請求項7】
前記第1の予備成形曲がり部は、前記第2の予備成形曲がり部よりも少なくとも4インチ(10cm)長い弧長を有する、請求項6記載のスタイレット。
【請求項8】
前記第1の予備成形曲がり部および前記第2の予備成形曲がり部は、同一平面内に位置する、請求項1~7のうちいずれか一に記載のスタイレット。
【請求項9】
前記細いセグメントは、丸くされかつ/あるいは平べったくされた断面を有する、請求項1~8のうちいずれか一に記載のスタイレット。
【請求項10】
前記コアワイヤは、前記細いセグメントと前記遠位先端部との間に位置する遠位セグメントを有し、前記遠位セグメントは、前記細いセグメントよりも大きい幅または直径を有する、請求項1~9のうちいずれか一に記載のスタイレット。
【請求項11】
前記遠位先端部は、前記遠位セグメントよりも大きい幅または直径を有する、請求項10記載のスタイレット。
【請求項12】
前記コアワイヤは、前記細いセグメントの近位側に位置する近位テーパ部および前記細いセグメントの遠位側に位置する遠位テーパ部を含む、請求項1~11のうちいずれか一に記載のスタイレット。
【請求項13】
前記近位テーパ部は、前記遠位テーパ部よりも長い、請求項12記載のスタイレット。
【請求項14】
前記近位テーパ部は、第1のテーパ付き部分および第2のテーパ付き部分を含み、前記第1のテーパ付き部分は、前記第2のテーパ付き部分よりも大きな角度でテーパしている、請求項12または13記載のスタイレット。
【請求項15】
前記コアワイヤに嵌められた管状本体をさらに有する、請求項1~14のうちいずれか一に記載のスタイレット。
【請求項16】
前記コアワイヤの前記遠位先端部は、前記管状本体の遠位側に延び、前記遠位先端部は、心電図(ECG)信号を伝える、請求項15記載のスタイレット。
【請求項17】
前記管状本体は、側壁に設けられていて前記コアワイヤとの流体接触を可能にする開口部を有する、請求項15記載のスタイレット。
【請求項18】
前記管状本体内に設けられた状態で前記コアワイヤにかぶせられたナビゲーション装置をさらに有する、請求項15~17のうちいずれか一に記載のスタイレット。
【請求項19】
前記ナビゲーション装置は、導電性コイルから成る、請求項18記載のスタイレット。
【請求項20】
前記スタイレットのトルク性は、最小限でありまたはゼロである、請求項1~19のうちいずれか一に記載のスタイレット。
【請求項21】
前記コアワイヤは、前記第1の予備成形曲がり部と前記第2の予備成形曲がり部との間に延びる約1~3インチ(2.5~7.5cm)の中間部分をさらに有する、請求項1~20のうちいずれか一に記載のスタイレット。
【請求項22】
前記コアワイヤは、前記細いセグメントを備えた遠位部分をさらに有し、前記遠位部分は、前記第2の予備成形曲がり部から前記遠位先端部の端まで約1~2インチ(2.5~5cm)にわたって延びている、請求項1~21のうちいずれか一に記載のスタイレット。
【請求項23】
前記コアワイヤの近位端部のところに位置するハウジング部材をさらに有する、請求項1~22のうちいずれか一に記載のスタイレット。
【請求項24】
前記コアワイヤは、ニッケルチタン合金から成る、請求項1~23のうちいずれか一に記載のスタイレット。
【請求項25】
前記遠位先端部は、J字形部、バスケット、またはメッシュのうちの1つで形成されている、請求項1~24のうちいずれか一に記載のスタイレット。
【請求項26】
組立体であって、
請求項1~25のうちいずれか一に記載の前記スタイレットと、
ECG信号を伝える第2のスタイレットとを含む、組立体。
【請求項27】
組立体であって、
請求項1~25のうちいずれか一に記載の前記スタイレットと、
前記スタイレットに嵌められたカテーテルとを含む、組立体。
【請求項28】
低または非トルク性スタイレットであって、
コアワイヤを含み、前記コアワイヤは、
約15~90゜の第1の角度の第1の予備成形曲がり部を含み、
約8~15゜の第2の角度の第2の予備成形曲がり部を含み、前記第2の予備成形曲がり部は、前記第1の予備成形曲がり部の遠位側に位置し、前記第1の予備成形曲がり部は、前記第2の予備成形曲がり部よりも長く、
前記第1の予備成形曲がり部と前記第2の予備成形曲がり部との間に延びる約1~3インチ(2.5~7.5cm)の中間部分を含み、
前記第2の予備成形曲がり部と遠位先端部の端との間に位置する約1~2インチ(2.5~5cm)の遠位部分を含み、前記遠位部分は、前記遠位先端部の撓み度を増大させる減少幅または減少直径を持つ細いセグメントを有し、前記第1の予備成形曲がり部および前記第2の予備成形曲がり部は、全体として、前記コアワイヤの前記遠位先端部の端から10インチ(25cm)内に位置し、
前記コアワイヤの周りに設けられたナビゲーション装置を有し、
前記コアワイヤおよび前記ナビゲーション装置の周りに設けられた管状本体を有する、低または非トルク性スタイレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容、すなわち本発明は、一般に、血管カテーテルを配置するための補剛ワイヤまたはスタイレット、特に、挿通性を向上させた低トルク性または非トルク性の補剛ワイヤまたはスタイレットに関する。
【0002】
〔関連出願の参照〕
本願は、2020年10月1日に出願された米国特許仮出願第63/086,583号の優先権主張出願であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
PICC(Peripherally Inserted Central Venous Catheter:末梢穿刺中心静脈カテーテル)は、上腕の静脈中に挿入されて、上大静脈(SVC)に通されるべきカテーテルである。PICCは、一般に薬物または液体栄養剤を投与するために心臓の近くで太い中心静脈へのアクセスを可能にする。PICCは、頻繁な針穿刺の疼痛を回避し、そして腕の中の細い静脈への刺激の恐れを軽減するのに役立ち得る。
【0004】
本発明者の認識によれば、スタイレット、より具体的に言えば、PICCと組み立てられるべきスタイレットの挿通性についての1つ以上の特徴を改良する必要性がある。PICCは、多くの場合、解剖学的構造の可視化のための高度な機器を用いないでベッドサイドのところで挿入される。PICCの位置をモニタ上で表示する幾つかの新規な機器が利用できるが、この機器は、外部装置に対する先端部の配置場所の近似的な基準となるに過ぎない。スタイレットの遠位先端部は、依然として多くの場合、急カーブ部(曲線部)、折れ曲がり部の前に血管系の壁に当たるので前方に進むことがなく、例えば、SVCまでの意図した挿入経路中にはない静脈の他の枝部に沿って上るとともに/あるいは静脈壁に接触するとともにそれ自体くるりとループ状になって戻る。このため、数回試みて初めてPICCがSVC中に正しく通されることになる場合があり、あるいは、ユーザがPICCを正しく配置することが全くできない場合さえある。次に患者は、病院の別の場所に運ばれる必要が生じる場合があり、その目的は、PICCを最終の場所に挿入するためのより高度の機器により解剖学的構造を可視化することにある。開示する本発明は、先行技術のこれらの欠点および/または他の欠点のうちの1つ以上に取り組む。
【発明の概要】
【0005】
かくして、本発明の第1の観点は、スタイレットであって、コアワイヤを有し、コアワイヤが第1の角度の第1の予備成形曲がり部と、第2の角度の第2の予備成形曲がり部とを含み、第2の予備成形曲がり部は、第1の予備成形曲がり部の遠位側に位置し、第1の角度は、第2の角度よりも大きく、コアワイヤが第2の予備成形曲がり部の遠位側に位置しかつ遠位先端部の撓み度を増大させる減少幅または減少直径を持つ細いセグメントを含むことを特徴とするスタイレットに関する。
【0006】
幾つかの実施形態では、第1の角度は、スタイレットの長手方向軸線に対して約15~90゜であり、第1の予備成形曲がり部の弧長は、約3~7インチ(7.5~17.5cm)である。幾つかの実施形態では、第2の角度は、スタイレットの長手方向軸線に対して約8~15゜であり、第2の予備成形曲がり部の弧長は、約0.2~0.5インチ(0.5~1.3cm)である。幾つかの実施形態では、第1の予備成形曲がり部および第2の予備成形曲がり部は、全体として、コアワイヤの遠位先端部の端から10インチ(25cm)内にある。幾つかの実施形態では、第1の角度は、スタイレットの長手方向軸線に対して約60゜であり、第2の角度は、スタイレットの長手方向軸線に対して約10゜である。幾つかの実施形態では、第1の予備成形曲がり部は、第2の予備成形曲がり部よりも長い。幾つかの実施形態では、第1の予備成形曲がり部は、第2の予備成形曲がり部よりも少なくとも4インチ(10cm)長い弧長を有する。幾つかの実施形態では、第1の予備成形曲がり部および第2の予備成形曲がり部は、同一平面内に位置する。幾つかの実施形態では、細いセグメントは、丸くされかつ/あるいは平べったくされた断面を有する。幾つかの実施形態では、コアワイヤは、細いセグメントと遠位先端部との間に位置する遠位セグメントを有し、遠位セグメントは、細いセグメントよりも大きい幅または直径を有する。幾つかの実施形態では、遠位先端部は、遠位セグメントよりも大きい幅または直径を有する。幾つかの実施形態では、コアワイヤは、細いセグメントの近位側に位置する近位テーパ部および細いセグメントの遠位側に位置する遠位テーパ部を含む。幾つかの実施形態では、近位テーパ部は、遠位テーパ部よりも長い。幾つかの実施形態では、近位テーパ部は、第1のテーパ付き部分および第2のテーパ付き部分を含み、第1のテーパ付き部分は、第2のテーパ付き部分よりも大きな角度でテーパしている。幾つかの実施形態では、スタイレットは、コアワイヤに嵌められた管状本体をさらに有する。幾つかの実施形態では、コアワイヤの遠位先端部は、管状本体の遠位側に延び、遠位先端部は、心電図(ECG)信号を伝える。幾つかの実施形態では、管状本体は、側壁に設けられていてコアワイヤとの流体接触を可能にする開口部を有する。幾つかの実施形態では、スタイレットは、管状本体内に設けられた状態でコアワイヤにかぶせられたナビゲーション装置をさらに有する。幾つかの実施形態では、ナビゲーション装置は、導電性コイルから成る。幾つかの実施形態では、スタイレットのトルク性は、最小限でありまたはゼロである。幾つかの実施形態では、コアワイヤは、第1の予備成形曲がり部と第2の予備成形曲がり部との間に延びる約1~3インチ(2.5~7.5cm)の中間部分をさらに有する。幾つかの実施形態では、コアワイヤは、細いセグメントを備えた遠位部分をさらに有し、遠位部分は、第2の予備成形曲がり部から遠位先端部の端まで約1~2インチ(2.5~5cm)にわたって延びている。幾つかの実施形態では、スタイレットは、コアワイヤの近位端部のところに位置するハウジング部材をさらに有する。幾つかの実施形態では、コアワイヤは、ニッケルチタン合金から成る。幾つかの実施形態では、遠位先端部は、J字形部、バスケット、またはメッシュのうちの1つで形成されている。幾つかの実施形態では、スタイレットは、ECG信号を伝える第2のスタイレットを含む組立体の一コンポーネントである。幾つかの実施形態では、スタイレットは、カテーテルを含む組立体の一コンポーネントである。
【0007】
本発明の第2の観点は、低または非トルク性のスタイレットであって、コアワイヤを含み、コアワイヤが約15~90゜の第1の角度の第1の予備成形曲がり部と、約8~15゜の第2の角度の第2の予備成形曲がり部とを含み、第2の予備成形曲がり部は、第1の予備成形曲がり部の遠位側に位置し、第1の予備成形曲がり部は、第2の予備成形曲がり部よりも長く、コアワイヤが第1の予備成形曲がり部と第2の予備成形曲がり部との間に延びる約1~3インチ(2.5~7.5cm)の中間部分と、第2の予備成形曲がり部と遠位先端部の端との間に位置する約1~2インチ(2.5~5cm)の遠位部分とをさらに含み、遠位部分が遠位先端部の撓み度を増大させる減少幅または減少直径を持つ細いセグメントを有し、第1の予備成形曲がり部および第2の予備成形曲がり部が全体としてコアワイヤの遠位先端部の端から10インチ(25cm)内に位置し、スタイレットは、コアワイヤの周りに設けられたナビゲーション装置と、コアワイヤおよびナビゲーション装置の周りに設けられた管状本体とをさらに有することを特徴とする低または非トルク性スタイレットに関する。
【0008】
本発明の第3の観点は、細いセグメント、細いセグメントの近位側に位置する近位テーパ部、および細いセグメントの遠位側に位置する遠位テーパ部を含む遠位部分を有するスタイレットに関し、近位テーパ部の長さは、遠位テーパ部の長さよりも長い。幾つかの実施形態では、近位テーパ部の長さは、遠位テーパ部の長さの少なくとも2倍である。幾つかの実施形態では、近位テーパ部の長さは、遠位テーパ部の長さの約6倍未満である。幾つかの実施形態では、近位テーパ部は、第1のテーパ付き部分および第2のテーパ付き部分を含み、第1のテーパ付き部分は、第2のテーパ付き部分よりも大きい角度をなしてテーパしている。幾つかの実施形態では、第1のテーパ付き部分は、第2のテーパ付き部分の近位側に位置する。幾つかの実施形態では、スタイレットは、細いセグメントの遠位側に位置する第2の遠位テーパ部および遠位テーパ部と第2の遠位テーパ部との間に延びる遠位セグメントを有する。幾つかの実施形態では、スタイレットは、遠位セグメントに嵌められたナビゲーション装置をさらに有する。幾つかの実施形態では、細いセグメントの近位端部からスタイレットの遠位端部までの長さは、約1.6インチ以下(約4センチメートル未満)である。幾つかの実施形態では、細いセグメントの長さは、遠位テーパ部の長さよりも長い。幾つかの実施形態では、細いセグメントの長さは、近位テーパ部の長さよりも長い。幾つかの実施形態では、細いセグメントは、一定の幅または直径を有する。幾つかの実施形態では、スタイレットの遠位先端部の幅または直径は、スタイレットの近位部分の幅または直径と実質的に同一である。幾つかの実施形態では、遠位先端部は、丸くされおよび/またはテーパがつけられたエッジを有する。幾つかの実施形態では、スタイレットは、予備成形された真っ直ぐな形態を有する。幾つかの実施形態では、スタイレットは、予備成形された湾曲形態を有する。
【0009】
本発明を容易に理解することができるようにするために、本発明の諸観点が添付の図面において例示的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】人体の血管系を示す図である。
図2】本発明に係るスタイレットの第1の実施形態の斜視図である。
図3図2のスタイレットの遠位部分の側面図である。
図4図2および図3のスタイレットのコアワイヤおよび管状本体の遠位部分の斜視図である。
図5図2図4のスタイレットのコアワイヤおよび管状本体の遠位部分の側面図である。
図6図1の人体の血管系中に通されているカテーテル内の図2図5のスタイレットの遠位部分を示す図である。
図7図1図6のスタイレットのハウジング部材の等角図である。
図8A】本発明に係るスタイレットの第2の実施形態の図である。
図8B】本発明に係るスタイレットの第2の実施形態の図である。
図9】本発明に係るスタイレットの第3の実施形態の側面図である。
図10A】本発明に係るスタイレットの第4の実施形態の図である。
図10B】本発明に係るスタイレットの第4の実施形態の図である。
図11A】本発明に係るスタイレットの第5の実施形態の図である。
図11B】本発明に係るスタイレットの第5の実施形態の図である。
図12図11Aおよび図11Bのスタイレットの側面図である。
図13A】本発明に係るカテーテル内に位置するスタイレットの第6の実施形態の等角図である。
図13B図13Aのスタイレットおよびカテーテルの遠位端部を示す図である。
図14A図13Aおよび図13Bのスタイレットの第1の変形例を示す図である。
図14B図13Aおよび図13Bのスタイレットの第1の変形例を示す図である。
図14C図13Aおよび図13Bのスタイレットの第1の変形例を示す図である。
図15図13Aおよび図13Bのスタイレットの第2の変形例を示す図である。
図16】本発明に係るカテーテル内に位置するスタイレットの第7の実施形態の等角図である。
図17】本発明に係る一対のスタイレットの第8の実施形態の等角図である。
図18】カテーテル内に位置する図17の一対のスタイレットを含む第1の組立体を示す図である。
図19】カテーテル内に位置する図17の一対のスタイレットを含む第2の組立体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
同一の参照符号が同一または類似の部分を示すために図面および以下の詳細な説明中に用いられている。
【0012】
本発明は、一般に、カテーテルを血管系の解剖学的曲線部に通して血管系の所望の場所中に首尾一貫して通すことができる曲がり部および/またはスチフネスプロフィールの特定の組み合わせを提供するスタイレットに関する。本発明のスタイレットは、低または非トルク性であるのが良く、それによりユーザは、遠位先端部の向き(すなわち、先端部が向いている向き、「上」または「下」)を知りまたはスタイレットの近位端部を回すことによって遠位先端部の向きを制御する必要なく、スタイレットを通すことができる。より具体的には、スタイレットは、血管系(例えば、内頸静脈、腕頭静脈、および/または鎖骨下静脈の合流部のところで)を通って所望の場所へ首尾一貫して望ましい接近角度を提供することができる。この接近角度は、ユーザがカテーテルを血管系中にどのように挿入するとともに/あるいは挿通中にカテーテルの近位端部をどのように回すかとは関係なく望ましいといえる。スタイレットは、スタイレットの他の部分よりも軟性でありまたは柔軟性である細いセグメントをさらに有するのが良い。細いセグメントが柔軟性であることにより、静脈壁に接触したときの遠位先端部の撓みが促進されて静脈への外傷を軽減することができる。さらに、細いセグメントは、遠位先端部が静脈壁に接触したときに上方に弓反りになることによって遠位先端部の接触角度を良くすることができ、その結果、遠位先端部は、望ましい方向に下方に向くようになる。商業上の利点としては、挿入の試みが少なくなり、挿入時間が短くなり、しかも挿入中におけるユーザの欲求不満が少なくなる。
【0013】
図1は、潜在的な経路の血管系を含む基準の解剖学的図であり、かかる血管系を通って、カテーテル(例えば、末梢穿刺中心静脈カテーテル、PICC)と組み合わされたスタイレットを本発明に従って上大静脈(SVC)に通すことができる。スタイレット/PICCは、多数の互いに異なる静脈、例えば、尺側皮静脈、上腕静脈、橈側皮静脈)の位置で血管系に入ることができる。針の穿刺により最適な静脈の位置のところで血管系に接近することができ、接近ワイヤを針に通して血管系中に挿入することができ、シースを針が抜去された後に接近ワイヤ上でこれに沿って案内することができる。接近ワイヤをシースから抜去した後、スタイレット/PICCを重要な静脈の位置で血管系に入ったシースに通して鎖骨下静脈(SUB)中に、かつこれを通して腕頭静脈(BCV、例えば、右腕頭静脈、RBCV)中に、そしてこれを通して最終的にはSVC中に通すことができる。挿入困難な最も一般的な領域は、図6にさらに示されているように、SUBが終端して内頸静脈(IJ)とBCVを接合する合流部(C)の領域である。合流部(C)は、典型的には、90゜曲線部または落下を定めることができる解剖学的経路中の最も急なカーブを含む。この急なカーブに起因して、カテーテルは、間違った方向に逸れる(例えば、IJ沿いに上る)場合があり、または捕捉状態になって全く前進ができないようになる場合がある。図1および対応の説明は、SUBからRBCV中へのスタイレットの挿入に関するが、本発明のスタイレットは、左腕頭静脈(LBCV)経由を含む他の経路を経由して挿入できる。
【0014】
図2は、本発明に係るスタイレット100の等角図であり、図3は、スタイレット100の遠位端部の側面図である。図示のように、スタイレット100は、血管系中に挿入されるよう構成された細長い本体104の近位端部のところに位置するハウジング部材102を有するのが良い。細長い本体104は、図4図6に示されているように、コアワイヤ120およびコアワイヤ120周りに設けられた管状本体140を有するのが良い。
【0015】
コアワイヤ120は、図2および図3に示されているような公称のまたは予備成形された形状を有するのが良く、かかる形状としては、予備成形された第1の曲線部または曲がり部α(「本体曲がり部」)が挙げられる。挿入中、第1の曲がり部αは、予備成形コアワイヤよりも真っ直ぐである解剖学的挿入経路に起因して弾性的に真っ直ぐになるように強いられる場合がある。コアワイヤ120は、真っ直ぐにされたときにポテンシャルエネルギーが高い状態になり、そしてポテンシャルエネルギーの低い状態まで縮んで戻ろうとし、これは、引き伸ばされた状態のばねがその元の応力を受けていない状態に戻ろうとするのと同様である。遠位先端部116が合流部(C)に達すると、第1の曲がり部αの最も低いポテンシャルエネルギー状態により、遠位先端部116をSVCに向かって下に向けさせる。細長い本体104の公称の形状および剛性は、コアワイヤ120の予備成形された形状および剛性によって達成されるのが良い。図示のように、コアワイヤ120(および細長い本体104)は、公称の状態では実質的に真っ直ぐであってハウジング部材102から遠位側に延びる第1の部分106を有するのが良い。コアワイヤ120(および細長い本体104)は、予備成形された第1の曲線部または曲がり部αを有するとともに第1の部分106から遠位側に延びる第2の部分108を有するのが良い。コアワイヤ120(および細長い本体104)は、公称の状態では実質的に真っ直ぐでありかつ第2の部分108から遠位側に延びる第3の部分(または中間部分)110を有するのが良い。コアワイヤ120(および細長い本体104)は、予備成形された第2の曲線部または曲がり部βを有するとともに第3の部分110から遠位側に延びる第4の部分112を有するのが良い。コアワイヤ120(および細長い本体104)は、公称の状態では実質的に真っ直ぐでありかつ第4の部分112から遠位先端部116まで遠位側に延びる第5の部分(または遠位部分)114を有するのが良い。かくして、第1の曲がり部αは、第2の曲がり部βの近位側に位置するのが良く、しかも第3の部分110だけ隔てられるのが良い。図3にさらに示されているように、第1の曲がり部αは、第1の部分106と第3の部分110の各々の長手方向軸線相互間に約15~90゜(例えば、55~70゜)の第1の角度を定めるのが良く、かくして、第1の曲がり部αは、約90~165゜の補弧(図3に示されている)を定めることができる(しかしながら、別段の指定がなければ、第1の曲がり部αの角度は、本明細書では、第1および第3の部分106,110の各々の長手方向軸線相互間で定められる)。第2の曲がり部βは、第3の部分110と第5の部分114の長手方向軸線相互間に約8~15゜の第2の角度を定めるのが良く、かくして、第2の曲がり部βは、約165~172゜の補弧(図3に示されている)を定めることができる(しかしながら、別段の指定がなければ、第2の曲がり部βの角度は、本明細書では、第3および第5の部分110,114の各々の長手方向軸線相互間で定められる)。第1の曲がり部αおよび第2の曲がり部βの角度は、スタイレット100周りに設けられたカテーテル(例えば、PICC)150のスチフネスに応じて様々であって良い。換言すると、カテーテル150は、名目上真っ直ぐであるのが良くかつ幾分かのスチフネスを有するのが良く、かくして、このカテーテルは、第1の曲がり部αおよび第2の曲がり部βのところでスタイレット100を真っ直ぐにすることができる。カテーテル150のスチフネスは、銘柄、材料、ルーメン、およびサイズで決まるといえる。硬性カテーテル150の場合、スタイレット100は、血管系について適正な角度をもたらすよう湾曲しているのが良い。かくして、スタイレット100と、5~80゜の角度を持つ第1の曲がり部αのところの第1の部分および3~10゜の角度を持つ第2の曲がり部βのところの第2の部分を備えたカテーテル150との組立体をもたらすよう設計されるのが良く、これらの角度は各々、組立体の長手方向軸線に対する角度である。かくして、スタイレット100とカテーテル150の組立体は、解剖学的基準曲率よりも大きな角度のものである。
【0016】
第2の部分108は、約3~7インチ(約7.5~17.5cm)、例えば約5.3インチ(約13.5cm)の弧長を有するのが良く、第3の部分110は、約0~3インチ(約0~7.5cm)の長さを有するのが良く、第4の部分112は、約0.2~0.5インチ(約0.5~1.25cm)の弧長を有するのが良く、第5の部分114は、約1~2インチ(約2.5~5cm)の長さを有するのが良い。かくして、PICCを挿入する望ましい実施形態では、第1の曲がり部αは、遠位先端部116の端から約3インチ(約7.5cm)のところで始まって、遠位先端部116の端から約8.3インチ(約21cm)のところまで近位側に延びる約60゜の第1の角度をなす漸次曲がり部であるのが良い。第2の曲がり部βは、スタイレット100を遠位先端部116の端から約1.25インチ(約3cm)のところに位置する約0.25インチ(約0.5cm)直径のピン回りに曲げて約0.22インチ(約0.5cm)の弧長を形成することによって約10゜の第2の角度をなすのが良い。
【0017】
したがって、第1の曲がり部α(第1の部分106と第3の部分110との間に位置する)の第1の角度は、第2の曲がり部β(第3の部分110と第5の部分114との間に位置する)の第2の角度よりも実質的に大きいのが良い。例えば、第1の曲がり部αの第1の角度と第2の曲がり部βの第2の角度との差は、少なくとも40゜であるのが良い。さらに、第2の部分108(および第1の曲がり部α)の弧長は、第4の部分112(および第2の曲がり部β)の弧長よりも実質的に長いのが良い。例えば、第2の部分108(および第1の曲がり部α)の弧長と第4の部分112(および第2の曲がり部β)の弧長との差は、少なくとも4インチ(約10cm)であるのが良く、第1の曲がり部αおよび第2の曲がり部βは、全体として、遠位先端部116から10インチ(25cm)内にあるのが良い。かくして、第2の曲がり部βは、遠位先端部116が合流部(C)のところに位置する場合に第2の曲がり部βが何らかの曲率を有する基準解剖学的構造の領域(挿入部位の上流側/挿入部位に向かって)位置するような近接性を遠位先端部116に対して有するのが良い。
【0018】
第1の曲がり部αは、本体曲線部(曲線)に対応するのが良く、第2の曲がり部βは、先端部曲線に対応するのが良く、第1および第2の曲がり部α,βは、同一平面内にかつ同一方向にあるのが良い(曲がり部α,βの反作用を阻止するために)。第1の曲がり部αは、スタイレット100を解剖学的構造中に自己方向づけさせるよう構成されているのが良く、第2の曲がり部βは、第1の曲がり部αが自己方向づけされたときに遠位先端部116が望ましい角度で解剖学的構造の難儀な曲線部の場所に接近することができるよう構成されているのが良い。かくして、第1および第2の曲がり部α,βは、静脈を可視化することなくまたはスタイレット100をかじ取りすることなく、スタイレット100を所望の位置に通すユーザの能力を高めることができる。例えば、図6に示されているように、第1および第2の曲がり部α,βは、遠位先端部116を血管系の後壁(BW)の下側部分の方へ差し向けられる接近角度に自動的に保つよう構成されているのが良く、それにより、遠位先端部116がSVCの方へ下方に向く可能性が高まる。加うるに、遠位先端部116の角度は、遠位先端部116が後壁に直角に当たる恐れを減少させ、それにより、遠位先端部116が予測可能な方向に弓反りになってそれ自体ループ状に戻りまたは「テント状」にならないようにする。さらに、遠位先端部116が望ましい角度で当たると、遠位先端部116が、静脈の後壁(BW)に斜めに当たってRBVC沿いに下方に真っ直ぐに進むことができ、この場合、ユーザが大きすぎるほどの抵抗を受けることなく、したがって、後壁(BW)への外傷を減少させる。
【0019】
スタイレット100は、近位ハウジング部材102の手動回転では一貫した回転を生じさせるのに足るほどのトルクが遠位先端部116に実質的に伝達されないという点で自己方向づけ型であるのが良い。かくして、コアワイヤ120は、低または非トルク性であるのが良い。例えば、ユーザは、近位ハウジング部材102を多数回にわたって回転させるのが良く、その後において相当大きな回転運動が遠位先端部116に伝えられ、次に遠位先端部116は、完全かつ迅速に軸方向にぐるりと回転することができ、そして望ましい場所に戻ることができる。
【0020】
かくして、第1の曲がり部αは、スタイレット100を挿入中、血管系の曲率に自動的に整列させるよう構成されるのが良く、その目的は、遠位先端部116がRBVC中に「下に」向くようにすることにあり、というのは、第1および第2の曲がり部α,βが同一名面内にかつ同一方向にあるからである。遠位先端部116は、例えば、PICCがきつい曲率を通ってナビゲートするのが最も困難である血管の合流部(C)に入る際に常時下に向くことができる。スタイレット100は、非トルク性でありかつ非かじ取り性であるのが良く、それによりユーザからの遠位先端部116の向きの制御が除かれ、かつスタイレット100は、スタイレット100が当初挿入される向きがどのような向きであってもかつ/あるいはスタイレット100が挿入中にどのように回されても血管系中の正しい向きを自動的に見出すことができる。さらに、幾つかの実施形態では、スタイレット100は、コアワイヤ120の近位端部に設けられていて、ユーザがトルクを伝達する能力をさらに低下させるトルク制限部材(例えば、トルク制限研削区分)を有するのが良い。
【0021】
図4図6にさらに示されているように、第5の部分114(遠位先端部116を含む)は、スタイレットの近位部分106~112のうちの少なくとも1つまたは全てよりも軟性でありかつ柔軟性である細いセグメント130を有するのが良い。遠位先端部116の柔軟性により、遠位先端部116は、血管外傷を生じさせることなく静脈壁に接触した際に撓むことができる。さらに、細いセグメント130は、遠位先端部116が静脈壁に接触した際に上方に弓反りになることによって遠位先端部116の接触角度を良くすることができ、その結果、遠位先端部116は、RBCVに向かって下方に向くようになる。細いセグメント130は、真っ直ぐであるのが良く、かつ一貫した幅または直径を有するのが良い。第5の部分114は、望ましい撓み機構学的特徴を提供するために長さが短いのが良い。コアワイヤ120の近位部分106~112は、コアワイヤ120の形状が組立後にスタイレット100に影響を及ぼし、スタイレット100が挿入中にそれほどたやすくは腰折れすることがないように十分なスチフネス(細いセグメント130よりは大きい)を有する必要がある。かくして、スタイレット100は、第5の部分114の細いセグメント130が腰折れするのにコアワイヤ120の長さに沿う最初の場所であるのが良いようにスチフネスプロフィールを有し、それにより、遠位先端部116の挿入角度を良くすることができ、しかも組立体のプッシャビリティが保たれる。コアワイヤ120の近位部分106~112が第5の部分114の細いセグメント130に先立って腰折れする場合、ユーザによって加えられた長手方向押力は、遠位先端部116にもはや伝達されず、それによりスタイレット100が前進するのが阻止される。
【0022】
第5の部分114の細いセグメント130は、減少した幅または直径を有するのが良く、この細いセグメントは、近位端部のところに位置していてスタイレット100の幅または直径を第4の部分112から減少させる近位テーパ部132および/または遠位端部のところに位置していてスタイレット100の幅または直径を遠位セグメント136まで増大させる遠位テーパ部134によって形成されるのが良い。細いセグメント130は、丸くされかつ/あるいは平べったくされた断面を有するのが良い。かくして、遠位テーパ部134は、細いセグメント130を遠位セグメント136に連結するのが良く、この遠位セグメントは、遠位先端部116に結合している。幾つかの実施形態では、遠位セグメント136および遠位先端部116は、細いセグメント130の幅または直径よりも大きくかつ部分106~112(例えば、コアワイヤ120の残りの部分)のうちの少なくとも1つの幅または直径よりも小さい幅または直径を有するのが良い。例えば、部分106~112は、約0.011インチ(約0.3mm)の幅または直径を有するのが良く、遠位セグメント136および遠位先端部116は、約0.007インチ(約0.2mm)の幅または直径を有するのが良く、細いセグメント130は、約0.004インチ(約0.1mm)の幅または直径を有するのが良い。近位テーパ部132は、遠位テーパ部134よりも長い長さおよびよりなだらかな勾配を有するのが良く、それにより、近位テーパ部132は、挿入中大きな力に耐えることができ、かつスタイレット100の強度/性能を損なう応力集中部/脆弱箇所の発生を阻止することができる。例えば、近位テーパ部132は、遠位テーパ部134の長さの少なくとも約2倍でありかつ遠位テーパ部134の長さの約6倍未満(例えば、遠位テーパ部134の長さの少なくとも3倍、4倍、または5倍)であるのが良い。さらに、細いセグメント130′の近位端とスタイレット100′の遠位先端との間の長さは、望ましい撓み機構学的特徴を提供するよう約1.6インチ以下、例えば約0.6~1.4インチ(約4cm以下、例えば約1.5~3.5cm)であるのが良い。
【0023】
導電性コイル160がナビゲーションのための受動型センサコイル機能を提供するようコアワイヤ120の遠位セグメント136周りに位置した状態でこれに嵌められるのが良い。図4に示されているように(分かりやすくするために図2および図3では省かれている)、第1のリード線162が導電性コイル160の遠位端部に一体的に結合し、コアワイヤ120に巻き付けられ(例えば、5回)、そしてハウジング部材102内の回路板(図示せず)に電気的に結合しているのが良い。同様に、第2のリード線164が導電性コイル160の近位端部に一体的に結合し、コアワイヤ120に巻き付けられ(例えば、5回)、そしてハウジング部材102内の回路板に電気的に結合しているのが良い。導電性コイル160およびリード線162,164は各々、導電性の銅線であるのが良い。使用にあたり、導電性コイル160は、体の外部に位置する1つ以上の駆動コイル(図示せず)によって生じて伝えられる電磁信号をピックアップすることができる。導電性コイル160の合成信号がリード線162,164のうちの少なくとも1本を経由してハウジング部材102内の回路板に伝えられるのが良い。回路板は、この信号をコンピュータ(図示せず)に伝送して第5の部分114の場所を表示するのが良い。導電性コイル160および先端部ナビゲーションシステムの構造および機能についてのそれ以上の説明が米国特許第10,098,567号明細書に見いだされ、この米国特許を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。
【0024】
管状本体140は、導電性コイル160およびリード線162,164を包囲した状態でコアワイヤ120に嵌められるのが良い。管状本体140は、リード線162,164を固定するとともにリード線162,164が挿入中に弛んだりするとともに/あるいは流体に接触したりするのを阻止することができる。管状本体140は、スタイレット100の曲がり部プロフィールに大きな作用または衝撃を与えない軟質かつ可撓性のポリマー(例えば、ポリイミドまたはナイロン)で作られるのが良い。管状本体140は、スタイレット100の抜去を容易にするようカテーテル150との間に働く摩擦力を減少させるために減摩性の被膜または外側層を有するのが良い。例えば、管状本体140は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)外側層または親水性被膜を有するのが良い。管状本体140は、管状本体140の遠位部分が管状本体140の近位部分よりも減摩性であるように、その長さに沿って摩擦特性の変化を有するのが良い。幾つかの実施形態では、摩擦特性の変化は、表面テキスチャ度の増大によって提供されるのが良く、管状本体の遠位部分は、管状本体の近位部分よりも滑らかでありかつ/あるいは近位部分のテキスチャ度が高く、粗く、または波状であるのが良い。管状本体140の遠位端部は、導電性コイル160の遠位側でコアワイヤ120に結合されるのが良い。例えば、管状本体140の遠位端部は、流体が管状本体140に入るのを阻止するためにコアワイヤ120に結合されるとともに/あるいはシアノアクリレート系接着剤でこのコアワイヤに封着されるのが良い。幾つかの実施形態では、管状本体140は、スタイレット100がカテーテル150に対して摺動している(意図的に摺動したり、偶発的に摺動したり)ときに可視化することができるようにするためのマーキングを有するのが良い。
【0025】
コアワイヤ120によって形成された遠位先端部116は、管状本体140の遠位端部から遠位側に延びるのが良く、この遠位先端部116は、血管組織への外傷を軽減するよう無傷性であるのが良い(例えば、丸くされるとともに/あるいはテーパが付けられたエッジを有するのが良い)。遠位先端部116は、SVC内の適正な位置決めを確認するのを助ける心電図(ECG)信号の適当な導通を保証するよう露出しているのが良い。ECG信号をコアワイヤ120の長さに沿ってハウジング部材102内の回路板(図示せず)までさらに導くのが良い。ECG導通性および位置確認は、米国特許第10,321,890号にさらに記載されており、この米国特許を参照により引用し、その開示内容全体を本明細書の一部とする。
【0026】
図7は、ハウジング部材102の等角図である。図示のように、ハウジング部材102は、第1および第2のハウジング部分180ならびにノーズ部材182を有するのが良い。第1および第2のハウジング部分180は、リード線162,164により導電性コイル160に接続された電子部品(例えば、回路板)を収容するよう組み立てられるのが良い。例えば、第1および第2のハウジング部分180は、ハウジング部材102を形成するよう互いに押し付けられるよう構成されている対応のピンおよび穴を有するのが良い。第1および第2のハウジング部分180の各々は、側面に設けられていてユーザの握り具合を高めるよう互いに繋がる溝188を有するのが良い。第1および第2のハウジング部分180の各々は、組立時にノーズ部材182をハウジング部材102に固定するようノーズ部材182のネックまたは溝に受け入れられるべき突出壁をさらに有するのが良い。ノーズ部材182は、細長い本体104をハウジング部材102中に受け入れさせるルーメンが貫通して設けられたスリーブを備えるのが良い。ノーズ部材182は、第1および第2のハウジング部分180から遠位側に延びるテーパ付き遠位部分184および第1のハウジング部分180と第2のハウジング部分180との間に受け入れられる近位部分を有するのが良い。ノーズ部材182は、ハウジング102への細長い本体104の取り付けのためのひずみ取りをもたらすエラストマー材料(例えば、シリコーンゴム)で作られるのが良い。
【0027】
図8Aおよび図8Bは、本発明の第2の実施形態に係るスタイレット100′を示している。スタイレット100′は、スタイレット100を参照して上述したのとほぼ同じ特徴(別段の指定がなければ、本明細書に組み込まれ、スチフネスプロフィールを含むとともに対応の参照符号で指示される)を有するのが良く、かかる特徴としては、部分110~116,130,136(対応の部分110′~116′,130′,136′が図示されている)、および管状本体140′が挙げられる。かくして、本明細書においてさらに説明するように、スタイレット100′は、予備成形された第1および/または第2の曲がり部α,βを有するのが良いが、幾つかの実施形態では、スタイレット100′は、予備成形された実質的に真っ直ぐな形態(第1および第2の曲がり部α,βを省いている)を有しても良い。幾つかの実施形態では、スタイレット100′は、第1のテーパ付き部分132a′および第2のテーパ付き部分132b′を含む近位テーパ部132′を有するのが良く、これらテーパ付き部分132a′,132b′は、互いに連結されているが互いに異なるテーパ角度を有する。第1のテーパ付き部分132a′は、第2のテーパ付き部分132b′の近位側に位置するのが良くかつ第4の部分112′からの移行部であるのが良い。第1のテーパ付き部分132a′は、長手方向軸線に対して第2のテーパ付き部分132b′よりも大きな角度をなしてテーパが付けられているのが良い。第2のテーパ付き部分132b′が細いセグメント130′の近位端部のところでよりなだらかな角度を有している場合、細いセグメント130′で生じる撓み具合の何割かは、第1のテーパ付き部分132a′の角度を大きくするのに寄与する。これにより移行部の急峻度が減少する。第1のテーパ付き部分132a′の角度が大きいことによって、急峻度がわずかな移行部が得られ、それにより近位テーパ部132′の全長を短くすることができる。第5の部分114′は、第1の遠位テーパ部134′の遠位側に位置決めされた導電性コイル160′を受け入れる遠位セグメント136′および遠位セグメント136′と遠位先端部116′との間に位置する第2の遠位テーパ部138′を有するのが良い。かくして、遠位先端部116′は、近位部分106~112(図2の実施形態において図示されている)のうちの少なくとも1つと実質的に同一の幅または直径を有するのが良い。細いセグメント130′は、一定の幅または直径を有するのが良い。遠位セグメント136′は、細いセグメント130′よりも大きくかつ遠位先端部116′よりも小さな一定の幅または直径を有するのが良い。例えば、遠位セグメント136′は、約0.009インチ(約0.22mm)の幅または直径を有するのが良く、遠位先端部116′は、これよりも大きくかつ非研削状態であるのが良く、この遠位先端部は、ECG導通性について表面積を大きくする約0.011インチ(約0.3mm)の幅または直径を有するのが良い。
【0028】
図8Bにさらに示されているように、第1のテーパ付き部分132a′は、第1の長さ(L1)を有するのが良く、第2のテーパ付き部分132b′は、第2の長さ(L2)を有するのが良く、細いセグメント130′は、第3の長さ(L3)を有するのが良く、第1の遠位テーパ部134プライムは、第4の長さ(L4)を有するのが良く、遠位セグメント136′は、第5の長さ(L5)を有するのが良く、第2の遠位テーパ部138′は、第6の長さ(L6)を有するのが良く、遠位先端部116′は、第7の長さ(L7)を有するのが良い。近位テーパ部132′(第1および第2のテーパ対部分132a′,132b′を含む)は、よりなだらかであって第1および/または第2の遠位テーパ部134′,138′の長さ(L4,L6)および/またはこれらの長さの合計よりも長い長さ(L1+L2)を有するのが良く、それにより、近位テーパ部132′は、挿入中の大きな力に耐えることができ、しかもスタイレット100の強度/性能を損なう応力集中部/脆弱箇所の発生を阻止することができる。第1および第2の遠位テーパ部134′,138′の長さは、スタイレット100′の幅が短い距離にわたって遠位側に増大することができるよう短くされているのが良い。例えば、近位テーパ部132′は、第1および第2の遠位テーパ部134′,138′のうちの少なくとも一方(例えば、両方)の長さの少なくとも約2倍でありかつ第1および第2の遠位テーパ部134′,138′のうちの少なくとも一方(例えば、第1の遠位テーパ部134′だけ)の長さの約6倍未満であるのが良い。例示の一実施例では、第1の長さ(L1)は、約0.1~0.3インチ、例えば約0.2インチ(約2.5~7.5mm、例えば約5mm)であるのが良く、第2の長さ(L2)は、約0.1~0.3インチ、例えば約0.2インチ(約2.5~7.5mm、例えば約5mm)であるのが良く、第3の長さ(L3)は、約0.1~0.3インチ、例えば約0.2インチ(約2.5~7.5mm、例えば約5mm)であるのが良い。第4の長さ(L4)は、約0.1~0.2インチ、例えば約0.15インチ(約2.5~5mm、例えば約3.5mm)であるのが良く、第5の長さ(L5)は、約0.5~0.75インチ、例えば約0.635インチ(約12.5~20mm、例えば約16mm)であるのが良く、第6の長さ(L6)は、約0.005~0.015インチ、例えば約0.010インチ(約0.125~0.4mm、例えば約0.25mm)であるのが良く、第7の長さ(L7)は、約0.05~0.15インチ、例えば約0.1インチ(約1.25~4mm、例えば約2.5mm)であるのが良い。かくして、細いセグメント130′の近位端とスタイレット100′の遠位端との間の距離は、望ましい撓み機構学的特徴を提供するよう約1.6インチ以下、例えば約0.6~1.4インチ(約4cm以下、例えば約1.5~3.5cm)であるのが良い。スタイレット100′は、ニッケルチタン合金(ニチノール(商標))またはステンレス鋼で作られるのが良く、このスタイレットは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)または疎水性被膜を有するのが良い。スタイレット100′は、ナビゲーション装置(導電性コイル160、リード線162,164、および管状本体140を省いている)なしであるのが良く、このスタイレットは、別個のナビゲーションスタイレット(例えば、図17図19に示されている)と併設されまたはそれ自体で(例えば、別のスタイレットのないPICCと組み立てられた状態で)補剛ワイヤとして用いられても良い。
【0029】
図9は、本発明の第3の実施形態に係るスタイレット200を示している。スタイレット200は、スタイレット100,100′のうちの少なくとも一方を参照して上述したのとほぼ同じ特徴(別段の指定がなければ、本明細書に組み込まれる)を有するのが良く、かかる特徴としては、スタイレット100に関していて対応の参照符号で指示されるスチフネスプロフィールが挙げられるとともに部分110~114,130,136(対応の部分210~214,230,236が図示されている)ならびに近位および遠位テーパ部132,134(対応のテーパ部232,234が図示されている)が挙げられる。本明細書においてさらに説明するように、スタイレット200は、予備成形された第1および/または第2の曲がり部α,βを有するのが良いが、幾つかの実施形態では、スタイレット200は、予備成形された実質的に真っ直ぐな形態(第1および第2の曲がり部α,βを省いている)を有しても良い。スタイレット200は、無傷性の形状、例えば球状溶接部217または丸形エッジ(例えば図10Aおよび図10Bに示されている)を備えた大きな直径を有する遠位先端部216を有するのが良い。スタイレット200は、ナビゲーション装置(導電性コイル160、リード線162,164、および管状本体140を省いている)なしであるのが良く、このスタイレットは、別個のナビゲーションスタイレット(例えば、図17図19に示されている)と併設されまたはそれ自体で(例えば、別のスタイレットのないPICCと組み立てられた状態で)補剛ワイヤとして用いられても良い。
【0030】
図10Aおよび図10Bは、本発明の第4の実施形態に係るスタイレット200′を示している。スタイレット200は、スタイレット100,100′,200のうちの少なくとも1つを参照して上述したのとほぼ同じ特徴(別段の指定がなければ、本明細書に組み込まれる)を有するのが良い。図示のように、スタイレット200′は、近位端(図示せず)から延びる近位部分201′、近位テーパ部232′、細いセグメント230′、遠位テーパ部234′、および遠位端まで延びる遠位先端部216′をその長手方向順序で有するのが良い。さらに示されているように、スタイレット200′は、予備成形された実質的に真っ直ぐな形態(第1および第2の曲がり部α,βを省いている)を有するのが良いが、幾つかの実施形態では、スタイレット200′は、本明細書でさらに説明するように予備成形された第1および/または第2の曲がり部α,βを有しても良い。近位部分201′は、第1の幅(または直径)を有するのが良く、近位テーパ部232′は、スタイレット200′の幅を細いセグメント230′のところの第1の幅よりも小さい第2の幅(または直径)まで減少させるのが良い。遠位テーパ部234′は、細いセグメント230′から延びるとともにスタイレット200′の幅を遠位先端部216′のところの第3の幅(または直径)まで増大させるのが良く、この遠位先端部のところでは、第1の幅と第3の幅は、実質的に同一であるのが良い。細いセグメント230′の第2の幅は、例えばRBCVに沿って下方へのスタイレット200′の遠位部分の撓み(本明細書でさらに説明する)を可能にするよう柔軟性部分を提供するよう第1および第2の幅よりも小さいのが良い。さらに、遠位先端部216′の第3の幅は、遠位先端部216′が無傷性であるようにするのに足る程大きいのが良くかつ/あるいは遠位先端部216′は、丸みがつけられかつ/あるいはテーパが付けられた周縁部を備えた実質的に円筒形の部分を有するのが良い。
【0031】
図10Bにさらに示されているように、近位テーパ部232′は、第1の長さ(L1)を有するのが良く、細いセグメント230′は、第2の長さ(L2)を有するのが良く、遠位テーパ部234′は、第3の長さ(L3)を有するのが良く、遠位先端部216′は、第4の長さ(L4)を有するのが良い。近位テーパ部232′は、よりなだらかであるのが良く、第1の長さ(L1)は、第3の長さ(L3)よりも長いのが良く、それにより、近位テーパ部232′は、挿入中に大きな力に耐えることができ、しかもスタイレット200′の強度/性能を損なう応力集中部/脆弱箇所の発生を阻止することができる。遠位テーパ部234′の第3の長さ(L3)は、スタイレット200′の幅が短いセグメント230′から遠位先端部216′まで短い距離で増大することができるよう短くされているのが良い。例えば、近位テーパ部232′は、遠位テーパ部234′の長さの少なくとも約2倍でありかつ遠位テーパ部234′の長さの約6倍未満であるのが良い。例示の一実施例では、第1の長さ(L1)は、約0.2~0.6インチ、例えば約0.4インチ(約5~15mm、例えば約10mm)であるのが良く、第2の長さ(L2)は、約0.6~1.0インチ、例えば約0.8インチ(約15~25mm、例えば約20mm)であるのが良く、第3の長さ(L3)は、約0.04~0.2インチ、例えば約0.08インチ(約1~5mm、例えば約2mm)であるのが良く、第4の長さ(L4)は、約0.02~0.06インチ、例えば約0.04インチ(約0.5~1.5mm、例えば約1mm)であるのが良い。かくして、細いセグメント230′の近位端とスタイレット200′の遠位先端との間の第5の長さ(L2+L3+L4)は、望ましい撓み機構学的特徴を提供するよう約1.6インチ以下、例えば約0.6~1.4インチ(約40mm以下、例えば約15~35mm)であるのが良い。スタイレット200′は、ニッケルチタン合金またはステンレス鋼で作られるのが良く、このスタイレットは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)または疎水性被膜を有するのが良い。スタイレット200′は、ナビゲーション装置(導電性コイル160、リード線162,164、および管状本体140を省いている)なしであるのが良く、このスタイレットは、別個のナビゲーションスタイレット(例えば、図17図19に示されている)と併設されまたはそれ自体で(例えば、別のスタイレットのないPICCと組み立てられた状態で)補剛ワイヤとして用いられても良い。
【0032】
図11A図12は、本発明の第5の実施形態に係るスタイレット300を示している。スタイレット300は、コアワイヤ320、管状本体340、導電性コイル360、および磁気ハイポチューブ380を有するのが良い。図示のように、コアワイヤ320は、磁気ハイポチューブ380の内側に受け入れられるのが良く、コアワイヤ320および磁気ハイポチューブ380は、管状本体340内に受け入れられるのが良い。スタイレット300は、スタイレット100,100′,200のうちの少なくとも1つに関して上述したのとほぼ同じ特徴(別段の指定がなければ、本明細書に組み込まれる)を有するのが良く、かかる特徴としては、スタイレット100、部分110~116,130、および第1および第2の曲がり部α,βに関する本体および先端部曲線プロフィール、サイズ、およびスチフネスプロフィールが挙げられる。コアワイヤ320は、耐キンク性合金であって追加の利点を提供するニッケルチタン合金で作られるのが良いが、本来的に、非磁性である。したがって、本願の所望の特性(例えば、曲線プロフィールおよび適切な研削プロフィールを含むナビゲーション/電子スタイレット)を提供するため、磁気ハイポチューブ380は、コアワイヤ320の遠位部分にかぶせられた状態で提供されるのが良い。磁気ハイポチューブ380は、短いのが良くかつ透磁性物質、例えばステンレス鋼または類似の材料で作られるのが良い。コアワイヤ320は、磁気ハイポチューブ380の近位側に設けられたテーパ部322を有するのが良く、ハイポチューブ380は、コアワイヤ320の遠位先端部326の近位側に設けられるのが良い。導電性コイル360は、本明細書において説明するようにナビゲーションのための受動型センサコイル機能を提供するようハイポチューブ380を覆って巻かれるのが良い。
【0033】
コアワイヤ320および磁気ハイポチューブ380は、管状本体340から遠位側に延びるのが良くかつ管状本体340の遠位側に位置したスタイレット300の一部分のところで導電性エポキシ382で少なくとも部分的に覆われるのが良い。幾つかの実施形態では、導電性エポキシ382は、コアワイヤ320、管状本体340、および磁気ハイポチューブ380を互いに固定することができ、この導電性エポキシは、ECG信号を先端部分316に導くよう構成されているのが良い。しかしながら、幾つかの実施形態では、第2のエポキシ(図示せず)がコアワイヤ320と磁気ハイポチューブ380を接合しても良く、他方、導電性エポキシ382は、ECG信号を導くよう先端部分316を覆う。追加的にまたは大太刀的に、コアワイヤ320およびハイポチューブ380は、先端部分316のところに位置していてECG信号を導くのに十分な露出金属と一緒に溶接されるのが良い。追加的にまたは代替的に、導電性ハイポチューブ(図示せず)がECG信号を導くために設けられても良い。
【0034】
図13Aおよび図13Bは、本発明の第6の実施形態に係るスタイレット400およびカテーテル450を示している。スタイレット400は、スタイレット100,100′,200,300のうちの少なくとも1つに関して上述したのとほぼ同じ特徴(別段の指定がなければ、本明細書に組み込まれる)を有するのが良く、かかる特徴としては、コアワイヤ、管状本体440、および第1および第2の曲がり部α,βが挙げられる。スタイレット400は、無傷性遠位セグメント436をさらに有するのが良く、この無傷性セグメント436は、合流部(C)のところでの後壁(BW)への外傷を軽減するとともにPICCだけ(例えば、無傷性遠位セグメントなしで)の外方に設けられた先導先端部を含むスタイレット/PICC組立体と比較して、RBVCに向かって後壁(BW)にそって下方へ/後壁から離れる遠位セグメント436の撓みを容易にする。遠位セグメント436は、軟質でありかつ/あるいはスタイレットの長手方向軸線に沿って実質的に圧縮性であるのが良く、この遠位セグメントは、静脈に最初に接触するようカテーテル450の遠位端部の遠位側に延びるのが良い。例えば、図13Aおよび図13Bに示されているように、遠位セグメント436は、後壁(BW)に接触したときに弾性的に撓んでより尖った遠位部分と比較して「テント状」になるのを軽減するよう構成されたJ字形の形状を有するのが良い。コアワイヤは、コアワイヤの遠位端部416が管状本体440から近位側の方向へ延びるよう遠位セグメント436を貫通するのが良い。遠位端部416は、本明細書にさらに説明するようにECG信号の導通を可能にするよう露出しているのが良い。別の実施形態では、図14A図14Cに示されているように、カテーテル450′内に受け入れられたスタイレット400′は、バスケットを形成する湾曲状のまたはループ状の形態を有する複数の可撓性部材436a′(例えば、ワイヤ)を含む遠位セグメント436′を有するのが良い。可撓性部材436a′は、管状部分436b′から遠位側に延びるのが良くかつスタイレット400′が遠位先端部のところで互いに接合されるとともに/あるいはループ状になって管状部分436b′に近位側に戻るのが良い。可撓性部材436a′は、弾性的に拡張可能であるのが良く(図14Aに示されているように)、そして、カテーテル450′中に引き戻されると(図14Bに示されているように)潰されるのが良い。可撓性部材436a′は、本明細書で説明するようにナビゲーション目的のためにECG信号を導くことができる。図13Aおよび図13Bの実施形態と同様、遠位セグメント436′は、合流部(C)のところで後壁(BW)に接触したときに弾性的に撓むのが良く(図14Cに示されているように)、そして「テント状」になるのを減少させるのが良い。さらに別の実施形態では、カテーテル450″内に受け入れられたスタイレット400″は、複数の部材の軟質メッシュの遠位セグメント436″を有するのが良い。遠位セグメント436″は、合流部(C)のところで後壁(BW)に接触したときに弾性的に撓むのが良く、そして「テント状」になるのを減少させるのが良い。遠位セグメント436″は、さらに、本明細書で説明するようにECG信号を導くことができる。遠位セグメント436,436′,436″の機能は、第1の曲がり部αおよび/または第2の曲がり部βの機能を補完しまたはこれに取って代わることができ、かくして、幾つかの実施形態では、第1の曲がり部αおよび/または第2の曲がり部βは、省かれても良く、その結果、スタイレット400は、予備成形された真っ直ぐな形態を有することができるようになる。
【0035】
図16は、本発明の第7の実施形態に係るスタイレット500を示している。スタイレット500は、スタイレット100,100′,200,300,400のうちの少なくとも1つに関して上述したのとほぼ同じ特徴(別段の指定がなければ、本明細書に組み込まれる)を有するのが良く、かかる特徴としては、コアワイヤ520、管状本体540、ハウジング部材502、および第1および第2の曲がり部α,βが挙げられる。図示のように、コアワイヤ520の遠位端部は、管状本体540によって包囲されるのが良く、それにより、外傷が軽減されるとともに合流部(C)のところでの後壁(BW)との減摩性接触が可能になる。ECG信号導通を可能にするため、管状本体540は、管状本体540の近位端部と遠位端部との間に位置する管状本体540の側壁を貫通して設けられた開口部543を有するのが良い。開口部542により、本体からのECG信号がコアワイヤ520に伝わることができる。例えば、開口部542は、スタイレット500の遠位先端部の存在場所を検出するために第1および/または第2の曲がり部α,βの遠位側に(例えば、図示のように、第2の曲がり部βのところに)位置するのが良い。かくして、コアワイヤ520は、コアワイヤ520の露出状態の遠位先端部がたとえ鋭利であっても、これによって生じ得る外傷を回避した状態で、ナビゲーション可能にECG信号を導くよう構成されているのが良い。
【0036】
図17図19は、本発明の第8の実施形態に係る一対のスタイレット600,601を示している。第1のスタイレット600は、ナビゲーション可能にECG信号を導くよう構成されているのが良く、第2のスタイレット601は、スタイレット100,100′,200,300,400,500のうちの少なくとも1つに関して本明細書においてさらに説明するとともに本明細書に組み込まれるように(別段の指定がなければ)SVC中に通しやすくするためにカテーテル650を賦形するよう構成されているのが良い。第1のスタイレット600は、スタイレット100,100′,200,300,400,500のうちの少なくとも1つに関して本明細書においてさらに説明するように、ハウジング602、管状本体640、管状本体640内に設けられかつECG信号を導くために遠位先端部616を有するコアワイヤ、管状本体640内のコアワイヤ周りに設けられた導電性コイル660を有するのが良い。第2のスタイレット601は、カテーテル650を、合流部(C)を超えて通しやすくするよう、第1および第2の曲がり部α,βを備えた状態で予備成形された非導電性の細長い部材またはワイヤであるのが良い。図18の第1の組立体に示されているように、第1および第2のスタイレット600,601は、カテーテル650の別々のルーメン中に挿入されるのが良い。図19の第2の組立体にさらに示されているように、第1および第2のスタイレット600,601は、カテーテル650の同一のルーメン中に挿入されるのが良い。いずれの組立体においても、機能(例えば、ECGナビゲーションおよびカテーテルの挿通性を第1および第2のスタイレット600,601に分けることにより、例えば、最適化された機械的および/または電気的性質を備えた互いに異なる材料がそれぞれの機能を実行することができるようにすることによって製造を容易にすることができる。
【0037】
本発明の多くの特徴および多くの利点は、詳細な明細から明らかであり、かくして、本発明の真の精神および範囲に属する本発明のかかる全ての特徴および利点を含むことが添付の特許請求の範囲の記載によって意図されている。さらに、多くの改造例および変形例が当業者には容易に想到されるので、本発明を図示するとともに説明した構成および作用そのものに限定することは意図されておらず、したがって、本発明の範囲に属する適当な全ての改造例および均等例を採用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図15
図16
図17
図18
図19
【手続補正書】
【提出日】2024-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管系を可視化することなく患者の上大静脈にアクセスするための組立体であって、前記組立体は、
前記患者の前記血管系を通して挿入されるよう構成されたハウジング部材および細長い本体を含むスタイレットを備え、前記細長い本体は、前記ハウジング部材から遠位先端部まで延び、管状本体内に配置されたコアワイヤを含み、前記コアワイヤは、第1の状態で、予備成形された形状を有し、第2の状態で、真っ直ぐにされた形状を有し、前記第1の状態における前記コアワイヤのポテンシャルエネルギーは、前記第2の状態における前記コアワイヤのポテンシャルエネルギーより小さく、前記コアワイヤは、
前記ハウジング部材から遠位側に延び、前記第1の状態で実質的に真っ直ぐな形状を有する第1の部分を含み、
前記第1の部分から遠位側に延び、前記第1の状態で第1の予備成形曲がり部を有する第2の部分を含み、
前記第2の部分から遠位側に延び、前記第1の状態で実質的に真っ直ぐな形状を有する第3の部分を含み、
前記第3の部分から遠位側に延び、前記第1の状態で第2の予備成形曲がり部を有する第4の部分を含み、
前記第4の部分から前記遠位先端部まで遠位側に延びる第5の部分を含み、前記第5の部分は、前記第1の状態で実質的に真っ直ぐな形状を有し、前記第5の部分は、前記第1乃至第4の部分に対して減少した幅または直径を有する細いセグメントと、前記細いセグメントと前記遠位先端部の間の遠位セグメントとを含み、前記遠位セグメントは、前記細いセグメントよりも大きい幅または直径を有し、前記細いセグメントは、前記遠位先端部の撓み度を増大させるよう構成され、前記遠位先端部は、前記遠位セグメントよりも大きい幅または直径を有し、
遠位方向に幅または直径が増加する第1の遠位テーパ部を含み、前記第1の遠位テーパ部は、前記細いセグメントと前記遠位セグメントとの間に配置され、
遠位方向に幅または直径が増加する第2の遠位テーパ部を含み、前記第2の遠位テーパ部は、前記遠位セグメントと前記遠位先端部との間に配置され、
前記第1の予備成形曲がり部と前記第2の予備成形予備成形曲がり部は、同一平面内にかつ同一方向にあり、
前記第1の予備成形曲がり部は、前記第1の部分の長手方向軸線と前記第3の部分の長手方向軸線との間で55~70゜の範囲の第1の角度を形成し、
前記第2の予備成形曲がり部は、前記第3の部分の長手方向軸線と前記第5の部分の長手方向軸線との間で8~15゜の範囲の第2の角度を形成し、
前記第1の予備成形曲がり部の弧長は、3~7インチ(7.5~17.5cm)である組立体。
【請求項2】
前記第2の予備成形曲がり部の弧長は、0.2~0.5インチ(0.5~1.3cm)である、請求項1に記載の組立体。
【請求項3】
前記第1および第2の予備成形曲がり部は、前記血管系への前記スタイレットの挿入中に前記遠位先端部が前記上大静脈に向かって下向きになるのを補助するために、前記血管系の後壁の下部に向けて前記遠位先端部を接近角度で自動的に整列させるように構成されている、請求項1に記載の組立体。
【請求項4】
前記コアワイヤのトルク性は、最小限でありまたはゼロである、請求項1に記載の組立体。
【請求項5】
前記細いセグメントは、真っ直ぐであり、一定の幅または直径を有する、請求項1に記載の組立体。
【請求項6】
前記第5の部分の前記細いセグメントは、幅または直径が減少した近位テーパ部を有する近位端を含む、請求項5に記載の組立体。
【請求項7】
前記第5の部分の前記細いセグメントは、幅または直径が増加した前記第1の遠位テーパ部を有する遠位端を含む、請求項6に記載の組立体。
【請求項8】
前記細いセグメントは、丸くされかつ/あるいは平べったくされた断面を有する、請求項5に記載の組立体。
【請求項9】
ナビゲーションのための受動型センサコイル機能を提供するよう前記コアワイヤの前記遠位セグメント周りで前記コアワイヤに嵌められる導電性コイルをさらに備える、請求項1に記載の組立体。
【請求項10】
前記管状本体は前記導電性コイルを包囲している、請求項9に記載の組立体。
【請求項11】
前記管状本体の遠位端は、前記導電性コイルの遠位側で前記コアワイヤに結合される、請求項10に記載の組立体。
【請求項12】
前記遠位先端部は、前記遠位セグメントよりも大きい幅または直径を有する、請求項1に記載の組立体。
【請求項13】
前記コアワイヤは、心電図(ECG)信号を導き、前記コアワイヤの前記遠位先端部が前記管状本体の遠位側に延び、または、前記管状本体が前記コアワイヤとの流体接触を可能にするよう側壁に開口部を有する、請求項1に記載の組立体。
【請求項14】
ナビゲーションのための受動型センサコイル機能を提供するよう前記コアワイヤ周りで前記コアワイヤに嵌められる導電性コイルをさらに備える、請求項1に記載の組立体。
【請求項15】
前記管状本体は前記導電性コイルを包囲している、請求項14に記載の組立体。
【請求項16】
前記管状本体の遠位端は、前記導電性コイルの遠位側で前記コアワイヤに結合される、請求項15に記載の組立体。
【請求項17】
前記コアワイヤは、心電図(ECG)信号を導き、前記コアワイヤの前記遠位先端部が前記管状本体の遠位側に延び、または、前記管状本体が前記コアワイヤとの流体接触を可能にするよう側壁に開口部を有する、請求項14に記載の組立体。
【請求項18】
前記コアワイヤは、ニッケルチタン合金から成る、請求項1に記載の組立体。
【請求項19】
前記第1の予備成形曲がり部の前記第1の角度は、前記第1の部分の長手方向軸線と前記第3の部分の長手方向軸線との間で約60°である、請求項1に記載の組立体。
【請求項20】
前記第2の予備成形曲がり部の前記第2の角度は、前記第3の部分の長手方向軸線と前記第5の部分の長手方向軸線との間で約10°である、請求項1に記載の組立体。
【請求項21】
前記コアワイヤの一部分が前記管状本体の一部分に結合されている、請求項1に記載の組立体。
【外国語明細書】