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特開2024-8674複層塗膜形成方法、およびこれにより形成された複層塗膜
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  • 特開-複層塗膜形成方法、およびこれにより形成された複層塗膜 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008674
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】複層塗膜形成方法、およびこれにより形成された複層塗膜
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/36 20060101AFI20240112BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240112BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240112BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20240112BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240112BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240112BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240112BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240112BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20240112BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20240112BHJP
【FI】
B05D1/36 B
B05D7/24 303A
B05D7/24 303E
B05D7/24 303H
B05D7/24 302P
B05D7/24 302T
B05D1/36 Z
B05D3/00 D
B05D3/00 F
B05D5/06 Z
B05D5/06 101Z
B32B27/20 A
B32B27/30 A
B32B27/40
C09D201/00
C09D133/14
C09D7/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110728
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】酒井 直也
(72)【発明者】
【氏名】水野 重行
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AE04
4D075AE06
4D075BB25Z
4D075BB26Z
4D075BB75X
4D075BB89X
4D075BB91Y
4D075BB92Y
4D075BB93Z
4D075CA17
4D075CA32
4D075CA38
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB01
4D075CB15
4D075DA06
4D075DB02
4D075EA06
4D075EB13
4D075EB22
4D075EB32
4D075EB35
4D075EB38
4D075EC01
4D075EC02
4D075EC07
4D075EC11
4D075EC24
4D075EC30
4D075EC33
4D075EC47
4D075EC53
4D075EC54
4F100AB03A
4F100AK01C
4F100AK25C
4F100AK51C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA13B
4F100CA13C
4F100CC00B
4F100DE01C
4F100EH46
4F100EJ08
4F100EJ42
4F100GB32
4F100GB48
4F100HB00B
4F100HB00C
4F100JD10
4F100JL10B
4F100JL10C
4F100JN06C
4F100YY00C
4J038CG041
4J038DG262
4J038KA08
(57)【要約】
【課題】 光干渉性顔料等の光輝性顔料を含まないトップコート組成物を用い、低温で硬化し、最上層にクリヤー塗膜層を形成しなくても耐候性、耐湿性に優れたパール調の複層塗膜形成方法を提供する。さらにこの方法により形成された複層塗膜を提供する。
【解決手段】 被塗物上に着色顔料を含む着色塗膜層を形成し、その上に、水酸基含有アクリル樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、及び樹脂ビーズ(C)を含み、光輝性顔料を含まないトップコート組成物を塗装してトップコート層を形成し、硬化させる複層塗膜形成方法において、樹脂ビーズ(C)を特定の平均粒径D50を有するものとし、かつ、トップコート層の乾燥膜厚を樹脂ビーズ(C)の平均粒径D50以下とし、さらに、得られる複層塗膜の明度差L*15-L*25を特定の範囲とする複層塗膜形成方法、およびこの方法により形成された複層塗膜を用いる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程(1): 被塗物上に、着色顔料を含む着色塗料組成物を塗装して着色塗膜層を形成する工程
工程(2): 着色塗膜層上に、水酸基含有アクリル樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、及び樹脂ビーズ(C)を含み、光輝性顔料を含まないトップコート組成物を塗装してトップコート層を形成する工程
工程(3): 前記工程(1)で形成された着色塗膜層、前記工程(2)で形成されたトップコート層を別々に又は同時に加熱することにより硬化させる工程を含む複層塗膜形成方法であって、
前記樹脂ビーズ(C)の平均粒径D50が20~70μmであり、
トップコート層の乾燥膜厚が樹脂ビーズ(C)の平均粒径D50以下であり、
得られる複層塗膜面の垂線に対して45度の角度で照射した入射光を、その正反射角に対して入射光方向に15度の角度をなして受光した反射光の分光反射率に基づくCIE LAB表色系における明度を示すL*15値と、複層塗膜面の垂線に対して45度の角度で照射した入射光を正反射角に対して入射光方向に25度の角度をなして受光した反射光の分光反射率に基づくCIE LAB表色系における明度を示すL*25値との差L*15-L*25が1.0~20.0である複層塗膜形成方法。
【請求項2】
前記トップコート組成物中の樹脂ビーズ(C)の合計含有量が水酸基含有アクリル樹脂(A)とポリイソシアネート化合物(B)の不揮発成分の合計量100質量部に対して5~40質量部である請求項1記載の複層塗膜形成方法。
【請求項3】
前記トップコート組成物が着色顔料を含む請求項1又は2記載の複層塗膜形成方法。
【請求項4】
前記トップコート層の加熱硬化を70~150℃で行う請求項1又は2記載の複層塗膜形成方法。
【請求項5】
前記着色塗膜層において、前記L*45値が70~95であって、得られる複層塗膜の赤外線反射率(IRSR)が60%以上である請求項1記載の複層塗膜形成方法。
【請求項6】
請求項1または5に記載の複層塗膜形成方法により形成された複層塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光干渉性顔料等の光輝性顔料を含まない塗料組成物を用いたパール調の複層塗膜形成方法、およびこれにより形成された複層塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に自動車外板、家電製品等の分野においては、観察角度によって色が変わる、光干渉性顔料を含んだパール調の塗色が、高級感の点から人気の高いものとなっている。このようなパール調の塗膜は、通常、複層塗膜の色相と明度を決定付けるカラーベース塗料組成物による塗膜上に、パール調の質感を決定付ける光干渉性顔料を含んだパールベース塗料組成物を塗装し、その上に塗膜を保護するクリヤー塗料を塗装した複層塗膜を形成することによって得ることができる。
【0003】
例えば、特許文献1では、自動車車体上に電着塗膜、着色中塗り塗膜、干渉性光輝性顔料を含有する光輝性塗膜、及びクリヤー塗膜を形成する複層塗膜形成方法において、特定の着色中塗り塗膜を用いることにより、パール調の遮熱複層塗膜が形成できることが開示されている。
【0004】
一方、塗料組成物に樹脂ビーズを添加して、意匠性を付与する試みが行われている。例えば、特許文献2では、熱硬化性粉体塗料成分と樹脂ビーズを含有する凹凸模様形成粉体塗料が開示されている。この粉体塗料は、均一かつ緻密で微細な丸みを帯びた突起状の模様で表現されるソフトで意匠性の高いサテン調の凹凸模様を有する塗膜を形成することができる。また、特許文献3では、クリヤー層を形成しうる造膜成分に特定の屈折率を有する樹脂ビーズを加える塗料の艶下げ方法が開示されている。この方法により、透明感があって、しかも、光沢の抑えられた上塗り塗膜を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-36759号公報
【特許文献2】特開平9-302272号公報
【特許文献3】特開平5-65429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の複層塗膜形成方法では、最上層にクリヤー塗膜層を形成することが必須である。最上層にクリヤー塗膜層を形成しない場合、得られる塗膜の耐候性、耐湿性が影響を受け、屋外で使用することが難しい。また、特許文献2は熱硬化性粉体塗料であるため、150~280℃の高い加熱温度が必要である。さらに、特許文献3では、樹脂ビーズ添加による艶消し効果のみが開示されており、その他の効果が十分に得られるものではない。
【0007】
そこで、本発明は、光干渉性顔料等の光輝性顔料を含まないトップコート組成物を用い、低温で硬化し、最上層にクリヤー塗膜層を形成しなくても耐候性・耐湿性に優れたパール調の複層塗膜形成方法を提供することを目的とする。
【0008】
さらに、本発明は、上記の複層塗膜形成方法により形成された複層塗膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、被塗物上に着色顔料を含む着色塗膜層を形成し、その上に、水酸基含有アクリル樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、及び樹脂ビーズ(C)を含み、光輝性顔料を含まないトップコート組成物を塗装してトップコート層を形成し、硬化させる複層塗膜形成方法において、樹脂ビーズ(C)を特定の平均粒径D50を有するものとし、かつ、トップコート層の乾燥膜厚を樹脂ビーズ(C)の平均粒径D50以下とすることとし、さらに、得られる複層塗膜の明度差L*15-L*25を特定の範囲とすることにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明の上記課題は、
工程(1): 被塗物上に、着色顔料を含む着色塗料組成物を塗装して着色塗膜層を形成する工程
工程(2): 着色塗膜層上に、水酸基含有アクリル樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、及び樹脂ビーズ(C)を含み、光輝性顔料を含まないトップコート組成物を塗装してトップコート層を形成する工程
工程(3): 前記工程(1)で形成された着色塗膜層、前記工程(2)で形成されたトップコート層を別々に又は同時に加熱することにより硬化させる工程を含む複層塗膜形成方法であって、
前記樹脂ビーズ(C)の平均粒径D50が20~70μmであり、
トップコート層の乾燥膜厚が樹脂ビーズ(C)の平均粒径D50以下であり、
得られる複層塗膜面の垂線に対して45度の角度で照射した入射光をその正反射光(鏡面反射)角に対して入射光方向に15度の角度をなして受光した反射光の分光反射率に基づくCIE LAB表色系における明度を示すL*15値と、複層塗膜面の垂線に対して45度の角度で照射した光を正反射角に対して入射光方向に25度の角度をなして受光した反射光の分光反射率に基づくCIE LAB表色系における明度を示すL*25値との差L*15-L*25が1.0~20.0である複層塗膜形成方法により解決される。
【0011】
さらに、本発明の複層塗膜形成方法は、トップコート組成物中の樹脂ビーズ(C)の合計含有量が水酸基含有アクリル樹脂(A)とポリイソシアネート化合物(B)の不揮発成分の合計量100質量部に対して5~40質量部である複層塗膜形成方法であると好ましい。
【0012】
さらに、本発明の複層塗膜形成方法は、トップコート組成物が着色顔料を含む複層塗膜形成方法であると好ましい。
【0013】
さらに、本発明の複層塗膜形成方法は、トップコート層の加熱硬化を70~150℃で行う複層塗膜形成方法であると好ましい。
【0014】
さらに、本発明の複層塗膜形成方法は、上記着色塗膜層において上記のL*45値が70~95であって、得られる複層塗膜の赤外線反射率(IRSR)が60%以上である複層塗膜形成方法であると好ましい。
【0015】
また、本発明の課題は、上記複層塗膜形成方法により得られた複層塗膜によっても解決される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の複層塗膜形成方法では、光干渉性顔料等の光輝性顔料を含まないトップコート組成物を用い、低温で硬化することができ、最上層にクリヤー塗膜層を形成しなくても耐候性、耐湿性に優れたパール調の複層塗膜を得ることができる。このような複層塗膜に、さらに、優れた遮熱効果を与えることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の複層塗膜の明度差の設定方法を説明するための模式図である。このうち、図1(a)は、塗膜に対して入射した光が正反射する様子を示す説明図、図1(b)は明度を測定するための反射光についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[工程(1)]
本発明の複層塗膜形成方法では、工程(1)として、まず、被塗物上に、着色顔料を含む着色塗料組成物が塗装され、着色塗膜層が形成される。
【0019】
[被塗物]
本発明の複層塗膜形成方法を適用することができる被塗物には特に制限はなく、例えば、鉄、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム等の金属からなる部材、これら金属の合金からなる部材、これらの金属によるメッキ又は蒸着が施された部材、ガラス、プラスチック、各種素材の発泡体等からなる部材等を挙げることができ、その中でも、自動車車体を構成する鋼材及びプラスチック材料が好ましい。これらの部材には、必要に応じて適宜、脱脂処理、表面処理等の処理を施すことができる。
【0020】
また、本発明では前記部材に下塗り塗膜を形成したものを被塗物として用いることもできる。下塗り塗膜は、部材表面を隠蔽したり、部材に防食性、防錆性、密着性等を付与したりするために部材表面に適用されるものであり、下塗り塗料を塗装し、硬化又は乾燥させることによって形成することができる。この下塗り塗料は、特に限定されるものではなく、それ自体既知のもの、例えば、電着塗料、溶剤型プライマー、水系プライマー等を用いることができる。
【0021】
[着色塗料組成物]
本発明の複層塗膜形成方法に使用される着色塗料組成物は、樹脂成分と着色顔料を含む。
【0022】
本発明に使用される着色塗料組成物の樹脂成分としては、塗装後、加熱により架橋反応が進行することによって塗膜を形成する熱硬化性樹脂組成物であってもよいし、溶剤が揮発することによって塗膜を形成する熱可塑性樹脂組成物であってもよい。
【0023】
熱硬化性樹脂組成物としては、例えば、水酸基等の架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等の基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物(ブロックされたものも含む)等の架橋剤を含んでなる熱硬化性樹脂組成物が挙げられる。これらは有機溶剤及び/又は水等の溶媒中に溶解又は分散させて使用することができる。この樹脂組成物(基体樹脂+架橋剤)中における架橋剤の含有量は特に制限はないが、樹脂不揮発成分の合計量100質量部に対して10~100質量部であることが好ましく、20~80質量部であることがより好ましく、30~60質量部であることが特に好ましい。
【0024】
また、熱可塑性樹脂組成物としては、例えば、30,000以上の質量平均分子量を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂(塩素化及び/又は変性されたものも含む)、エポキシ樹脂等の基体樹脂を含んでなる熱可塑性樹脂組成物が挙げられる。これらは有機溶剤及び/又は水等の溶媒中に溶解又は分散させて使用することができる。
【0025】
本発明に使用される着色塗料組成物の着色顔料としては、例えば、酸化チタン顔料、酸化鉄顔料、チタンイエロー等の複合酸化物顔料等の無機顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アンスラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、インジゴ系顔料等の有機顔料、カーボンブラック顔料等が挙げられる。なお、カーボンブラック顔料の使用は控え、アゾ系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、金属酸化物黒色顔料等を使用すると、得られる複層塗膜が優れた遮熱効果を発揮するため、さらに好ましい。これらの着色顔料は、1種単独で用いてもよいし、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明に使用される着色塗料組成物に含まれる着色顔料の合計含有量は特に限定されないが、ビヒクルとして使用される樹脂不揮発成分の合計量100質量部に対して10~200質量部であることが好ましく、30~180質量部であることがより好ましく、50~160質量部であることが特に好ましい。
【0027】
また、本発明に使用される着色塗料組成物は、さらに光輝性顔料を含んでもよい。光輝性顔料としては、例えば、未着色又は着色アルミニウム顔料、蒸着金属フレーク顔料、透明又は半透明な基材を金属酸化物で被覆した光干渉性顔料等を挙げることができる。これらの光輝性顔料は、1種単独で用いてもよいし、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
本発明に使用される着色塗料組成物に含まれる光輝性顔料の合計含有量は特に限定されないが、ビヒクルとして使用される樹脂不揮発成分の合計量100質量部に対して0~2.0質量部であることが好ましく、0~1.0質量部であることがより好ましく、0~0.5質量部であることが特に好ましい。
【0029】
本発明に使用される着色塗料組成物は、さらに必要に応じて、有機溶剤及び/又は水等の溶媒、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種塗料用添加剤、体質顔料等を適宜配合することができる。有機溶剤の例としては、着色塗料組成物の製造に慣用の有機溶剤、例えばトルエン、キシレン、芳香族ナフサ等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸ペンチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル、イソプロパノール、ブタノール、2-ブトキシエタノール等のアルコール、エーテル、塩素化炭化水素などを含む脂肪族炭化水素、またはこれらの混合物を挙げることができる。このうち、架橋剤としてポリイソシアネート化合物(ブロックされたものも含む)を使用する場合は、有機溶剤のアルコール及び水の使用を控えることにより、円滑な硬化反応が行われる。
【0030】
本発明に使用される着色塗料組成物の塗装時の不揮発成分含有率は特に限定されないが、10.0~65.0質量%が好ましく、15.0~63.0質量%がより好ましく、20.0~60.0質量%が特に好ましい。
【0031】
本発明に使用される着色塗料組成物は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレー等の方法により塗装することができ、着色塗膜の硬化膜厚は、特に限定されないが、5~50μmであることが好ましく、10~45μmであることがより好ましく、15~40μmであることが特に好ましい。
【0032】
本発明に使用される着色塗料組成物から得られる着色塗膜層面の垂線に対して45度の角度で照射した入射光を正反射角に対して入射光方向に45度の角度をなして受光した反射光の分光反射率に基づくCIE LAB表色系における明度を示すL*45値は特に限定されないが、70~95であると、得られる複層塗膜が優れた遮熱効果を発揮する。L*45値は75~93であるとより好ましく、80~90であると特に好ましい。なお、CIE LAB表色系とは、1976年に国際照明委員会(CIE)で規定され、JIS Z 8781-4:2013にも採用されている表色系である。本発明における明度L*45値は、マルチアングル測色器BYKmac i(商品名、BYK-Gardner社製)を用いて測定された数値である。
【0033】
[工程(2)]
本発明の複層塗膜形成方法では、工程(2)として、着色塗膜層上に、トップコート組成物が塗装され、トップコート層が形成される。
【0034】
[トップコート組成物]
本発明の複層塗膜形成方法に使用されるトップコート組成物は、水酸基含有アクリル樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、及び樹脂ビーズ(C)を含み、光輝性顔料を含まない。
【0035】
[水酸基含有アクリル樹脂(A)]
本発明に使用される水酸基含有アクリル樹脂(A)は、水酸基含有アクリルモノマーを含んだモノマー混合物のラジカル共重合等公知の方法によって得ることができる。
水酸基含有アクリルモノマーとしては、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸の2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル又は4-ヒドロキシブチル等のエステル、アクリル酸又はメタクリル酸2-ヒドロキシエチルのε-カプロラクトン、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド開環付加物等が挙げられる。これらの水酸基含有アクリルモノマーは、1種単独で用いてもよいし、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
また、前記水酸基含有アクリルモノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、アクリル酸又はメタクリル酸、及びそのメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、2-エチルヘキシル、ラウリル、ステアリル等のエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、α-メチルスチレン、マレイン酸、酢酸ビニル等が挙げられる。これらの共重合可能なモノマーは、前記水酸基含有アクリルモノマーに対して、1種単独で用いてもよいし、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
水酸基含有アクリル樹脂(A)の水酸基価は、共重合するモノマー中の水酸基含有アクリルモノマーの含有量で決定される。本発明に用いる水酸基含有アクリル樹脂(A)の水酸基価は特に限定されないが、80~200mgKOH/gであることが好ましく、90~190mgKOH/gであることがより好ましく、100~180mgKOH/gであることが特に好ましい。
【0038】
また、水酸基含有アクリル樹脂(A)のガラス転移温度は、共重合するモノマーの配合割合で決定される。本発明に用いる水酸基含有アクリル樹脂(A)のガラス転移温度は特に限定されないが、-50~70℃であることが好ましく、-45~65℃であることがより好ましく、-40~60℃あることが特に好ましい。なお、本発明におけるガラス転移温度は、下記に示した式から計算された数値である。
【0039】
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
Tg:共重合体のガラス転移温度(絶対温度)
Wi:モノマーi成分の質量分率
Tgi:モノマーi成分のホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)
【0040】
さらに、水酸基含有アクリル樹脂(A)の質量平均分子量は、共重合時の反応条件で決定される。本発明に用いる水酸基含有アクリル樹脂(A)の質量平均分子量は特に限定されないが、2,000~20,000であることが好ましく、3,000~18,000であることがより好ましく、4,000~16,000であることが特に好ましい。なお、質量平均分子量は、例えば、溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)により、温度40℃、流速1ml/分で測定したデータを、ポリスチレンの質量平均分子量を基準にして換算したときの値として求めることができる。ここで、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)のカラムは、例えば、TSKgel G2000HXL、G3000HXL、G4000HXL、G5000HXL(商品名、東ソー株式会社製)を組み合わせて用いることができる。
【0041】
[ポリイソシアネート化合物(B)]
本発明に使用されるポリイソシアネート化合物(B)は、塗料用途に用いられているものであれば、特に限定されることなく、芳香族、脂肪族、脂環式等の各種ポリイソシアネート化合物を使用することができる。このようなポリイソシアネート化合物としては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)や、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、2-イソシアネートエチル-2,6-ジイソシアネートカプロエート(LTI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、水素化キシレンジイソシアネート(H6XDI)等が好適に挙げられる。また、これらのビュレット体、アダクト体、イソシアヌレート体等であってもよい。さらに、これらのイソシアネート基の一部をアミノ基含有のシランカップリング剤等で変性したものであってもよい。これらのポリイソシアネート化合物は、1種単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
本発明に使用されるトップコート組成物中では、水酸基含有アクリル樹脂(A)の水酸基1モルに対して、ポリイソシアネート化合物(B)のイソシアネート基が0.4~1.6モルの割合となるように混合されるのが好ましく、0.6~1.4モルがより好ましく、0.8~1.2モルが特に好ましい。
【0043】
[樹脂ビーズ(C)]
本発明に使用される樹脂ビーズ(C)は、平均粒径D50が20~70μmであるものが好ましく、30~65μmであるものがより好ましく、40~60μmであるものが特に好ましい。平均粒径D50が20μm以上とすることにより、パール調の外観を向上させることができ、平均粒径D50が70μm以下とすることにより塗装時のスプレーガンの詰まりを回避することができる。
【0044】
なお、本発明における平均粒径D50は、レーザ回折・散乱法(静的光散乱法)によって測定された体積基準粒径分布において、小粒径側からある粒径までの間で積算した粒子の合計体積を、粒子全体の体積に対する百分率で表したときに、その値が50%となる粒径である。レーザ回折・散乱法(静的光散乱法)粒径分布測定装置としては、例えば、Partica LA-960V2シリーズ(商品名、株式会社堀場製作所製)、SALD-2300(商品名、株式会社島津製作所製)、MT3000IIシリーズ(商品名、マイクロトラック・ベル株式会社製)等が挙げられる。
【0045】
樹脂ビーズ(C)の形状としては、表面が平滑な真球状が好ましいが、表面に凹凸等を有する疑似球状であってもよい。ただし、柱状や針状は、目的とするパール調の外観を得ることが難しくなる場合には、使用が推奨されない。また、樹脂ビーズ(C)は、加熱硬化時に形状が安定であれば、未架橋であってもいいし、架橋構造を有するものであってもよい。さらに、樹脂ビーズ(C)は、有機顔料、無機顔料等の着色材や、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の安定剤等を含んでいてもよい。
【0046】
樹脂ビーズ(C)は、その樹脂組成や合成経路等に特に制限はなく、ポリアミド(ナイロン)樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂等のビーズを使用することができる。市販されている樹脂ビーズの代表的なものとして、例えば、ベストシント1164、ベストシント2157(商品名、ダイセル・エボニック株式会社製)、オルガソル1002 D NAT1、オルガソル1002 ES5 NAT1、オルガソル2002 D NAT1、オルガソル2002 ES3 NAT3、オルガソル2002 ES4 NAT3、オルガソル2002 ES5 NAT3、オルガソル2002 ES6 NAT3、オルガソル3502 D NAT1(商品名、アルケマ株式会社製)、ミペロンXM-220、ミペロンXM-330(商品名、三井化学株式会社製)、ケミスノーMX-2000、ケミスノーMX-3000、ケミスノーMZ-20HN、ケミスノーMZ-30H、ケミスノーSGP-70C、ケミスノーSGP-150C(商品名、綜研化学株式会社製)、テクポリマーMBX-20、テクポリマーMBX-30、テクポリマーMBX-40、テクポリマーMBX-50、テクポリマーMBX-60、テクポリマーMB30X-20、テクポリマーMB20X-30、テクポリマーMBX-25H、テクポリマーSSX-120、テクポリマーSSX-127、テクポリマーMBP-20、テクポリマーSBX-30、テクポリマーBM30X-30、テクポリマーBM30X-55、テクポリマーABX-20、テクポリマーARX-30、テクポリマーAFX-30、テクポリマーMB-20(商品名、積水化成品工業株式会社製)、タフチックAR650M、タフチックAR650MX、タフチックAR650MZ、タフチックFH-S020(商品名、日本エクスラン工業株式会社製)、ラブコロール030(X)クリヤー(商品名、大日精化工業株式会社製)等が挙げられる。これらの樹脂ビーズは、1種単独で使用してもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
本発明に使用されるトップコート組成物中では、樹脂ビーズ(C)の合計含有量が水酸基含有アクリル樹脂(A)とポリイソシアネート化合物(B)の不揮発成分の合計量100質量部に対して5~40質量部であることが好ましく、15~35質量部であることがより好ましく、10~30質量部であることが特に好ましい。樹脂ビーズ(C)の含有量が5質量部以上であることにより意匠効果を得ることができ、樹脂ビーズ(C)の含有量が40質量部以下であることにより耐候性、耐湿性が確保できる。
【0048】
また、本発明に使用されるトップコート組成物は、着色顔料を含んでいてもよい。着色顔料としては、例えば、酸化チタン顔料、酸化鉄顔料、チタンイエロー等の複合酸化物顔料等の無機顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アンスラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、インジゴ系顔料等の有機顔料、カーボンブラック顔料等が挙げられる。なお、カーボンブラック顔料の使用は控え、アゾ系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、金属酸化物黒色顔料等を使用すると、得られる複層塗膜が優れた遮熱効果を発揮するため、さらに好ましい。これらの着色顔料は、1種単独で用いてもよいし、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
本発明に使用されるトップコート組成物に含まれる着色顔料の合計含有量は特に限定されないが、水酸基含有アクリル樹脂(A)とポリイソシアネート化合物(B)の不揮発成分の合計量100質量部に対して0~50質量部であることが好ましく、2~40質量部であることがより好ましく、5~35質量部であることが特に好ましい。ただし、本発明のトップコート組成物は、耐候性、耐湿性が低下することが想定されるため、光輝性顔料は含まない。
【0050】
本発明に使用されるトップコート組成物は、さらに必要に応じて、有機溶剤等の溶媒、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種塗料用添加剤、体質顔料等を適宜配合することができる。有機溶剤の例としては、トップコート組成物の製造に慣用の有機溶剤、例えばトルエン、キシレン、芳香族ナフサ等の芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸2-ブトキシエチル、酢酸ペンチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル、エーテル、塩素化炭化水素などを含む脂肪族炭化水素、またはこれらの混合物を挙げることができる。ただし、アルコールは硬化反応の妨げになることが想定される場合は、使用が推奨されない。
【0051】
本発明に使用されるトップコート組成物の塗装時の不揮発成分含有率は特に限定されないが、56.0~72.0質量%が好ましく、58.0~70.0質量%がより好ましく、60.0~68.0質量%が特に好ましい。
【0052】
本発明に使用されるトップコート組成物は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレー等の方法により塗装することができる。
【0053】
本発明に使用されるトップコート層の硬化膜厚は樹脂ビーズの平均粒径D50以下であることが好ましい。トップコート層の硬化膜厚(平均膜厚)が樹脂ビーズの平均粒径D50以下とすることによりパール調の外観を向上させることができる。特に、トップコート層の硬化膜厚は、樹脂ビーズの平均粒径D50に対して、60~95%、特に65%~80%であると好ましい。なお、本発明において、硬化膜厚は、10cm×20cmの大きさの試験板を作成し、電磁膜厚計DELTASCOPE FMP10(商品名、ヘルムート・フィッシャー社製)用いて、ほぼ均等に離れた任意の10点を測定した際の平均値とした。
【0054】
[工程(3)]
本発明の複層塗膜形成方法では、工程(3)として、前記工程(1)で形成された着色塗膜層、前記工程(2)で形成されたトップコート層が別々に又は同時に加熱され、硬化複層塗膜が得られる。
【0055】
本発明において、着色塗膜層とトップコート層が別々に加熱される場合、工程(1)と工程(2)の間に1回目の加熱が行われ、工程(2)の後に2回目の加熱が行われる。この別々の加熱の場合、1回目の加熱条件と2回目の加熱条件は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0056】
また、本発明において、着色塗膜層とトップコート層が同時に加熱される場合、工程(2)の後にのみ加熱が行われる。この同時の加熱の場合、工程(1)と工程(2)の間に、塗膜が実質的に硬化しない条件でプレヒート、エアブロー等を行うことができる。
【0057】
本発明では、この中でも、複層塗膜の外観等の観点から、着色塗膜層形成後、室温放置あるいはプレヒートが行われ、その上にトップコート層塗膜が形成され、その後、着色塗膜層とトップコート層塗膜が同時に加熱されることが好ましい。
【0058】
本発明では、加熱は公知の手段により行うことができ、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を使用できる。加熱温度は特に制限されないが、70~150℃であることが好ましく、70~125℃であることがより好ましく、70~100℃であることが特に好ましい。加熱温度を70℃以上とすることにより硬化反応を十分に進めることができ、150℃以下とすることによりエネルギーの消費を抑制することができる。また、加熱時間も特に制限されないが、10~50分間であることが好ましく、15~40分間であることがより好ましく、20~30分間であることが特に好ましい。
【0059】
本発明の複層塗膜形成方法から得られる複層塗膜は、観察角度によって色が変わるパール調の外観を呈する。
【0060】
優れたパール状の外観を得るために、本発明の複層塗膜の明度差L*15-L*25を、下記のように所定範囲に設定する。明度L*は上述のとおり、JIS Z 8781-4:2013に定義されているが、さらに、それの本発明への適用を、図1を用いて説明する。
【0061】
図1(a)には、本発明の複層塗膜10の塗膜表面Fの垂線PLに対して45度の角度で光照射した様子が、複層塗膜10の断面図を用いて示されている。入射光Iが塗膜表面Fの垂線PLに対して入射角R45°で入射し、塗膜表面Fにて正反射した場合、正反射光SRの反射角、すなわち正反射角Rsrは、入射角Rに対して直角(90°)となる。
【0062】
本発明では、トップコート層の乾燥膜厚が樹脂ビーズ(C)の平均粒径D50以下であることから、複層塗膜10の上表面に所定の凹凸が形成される。そして、複層塗膜10にパール状の外観を与えるために、複層塗膜10の乾燥膜厚、樹脂ビーズ(C)の形状、その平均粒径D50、およびトップコート組成物中の樹脂ビーズ(C)の合計含有量を選定する等により、得られる塗膜表面Fの反射を所定範囲に制御することで、複合塗膜が優れたパール状の輝きを持つようになる。
【0063】
図1(b)に示すとおり、本発明では、入射光Iのうち、正反射角RSRに対して入射光方向に15度の角度をなして反射した光(反射角RL15による反射光L15(破線で示す))を測定器(図示せず)により受光して分光反射率に基づくCIE LAB表色系における明度を示すL*15値として測定する。
【0064】
さらに上記の入射光Iのうち、正反射角RSRに対して入射光方向に25度の角度をなして反射した光(反射角RL25による反射光L25(破線で示す))を上記測定器により受光して分光反射率に基づくCIE LAB表色系における明度を示すL*25値として測定する。このように測定した2つの反射角における2つの明度値の差L*15-L*25によって、本発明の複合塗膜の表面の状態、すなわちパール状の外観が規定される。
【0065】
なお、本発明における明度L*15値およびL*25値は、マルチアングル測色器BYKmac i(商品名、BYK-Gardner社製)を用いて測定された数値である。本発明の複層塗膜は、明度差L*15-L*25が1.0~20.0であることがましく、1.5~15.0であることがより好ましく、2.0~10.0であることが特に好ましい。明度差L*15-L*25が1.0以上20.0以下となることにより複層塗膜は優れたパール調の外観を呈する。
【0066】
また、本発明から得られる複層塗膜は、赤外線反射率(IRSR)が60%以上であることが好ましく、63%以上であることがより好ましく、65%以上であることが特に好ましい。赤外線反射率(IRSR)が60%以上となることにより、得られる複層塗膜は優れた遮熱効果を発揮する。なお、本発明における赤外線反射率(IRSR)は、紫外・可視・近赤外分光光度計UV-3600(商品名、株式会社島津製作所製)を用いて測定された数値である。
【0067】
さらに、本発明から得られる複層塗膜は、全日射反射率(TSR)が60%以上であることが好ましく、63%以上であることがより好ましく、65%以上であることが特に好ましい。全日射反射率(TSR)が60%以上となることにより、得られる複層塗膜は優れた遮熱効果を発揮する。なお、本発明における全日射反射率(TSR)は、紫外・可視・近赤外分光光度計UV-3600(商品名、株式会社島津製作所製)を用いて測定された数値である。
【0068】
本発明の複層塗膜形成方法およびこれから得られる複層塗膜は、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体、部材および部品について適用可能であり、金属を被塗物とする場合には特に自動車車体に対し、プラスチックを被塗物とする場合には、特に自動車の内外装部品の使用に有効である。
【実施例0069】
以下、本発明について実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例中、「部」は特に断りのない限り「質量部」を意味し、配合量、含有量に関する「%」は、「質量%」を意味する。
【0070】
<製造例1:水系着色塗料組成物用ポリウレタン樹脂分散液PU-1の製造>
(1) ポリエステルポリオール溶液PP-1の製造
反応水の分離管が付属した還流冷却器、温度計、攪拌装置及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、炭素数18の不飽和脂肪酸の二量化によって生成された炭素数36のジカルボン酸が主成分であるダイマー酸PRIPOL1017(商品名、クローダジャパン株式会社製)35.0部、イソフタル酸30.0部、アジピン酸0.6部、1,6-ヘキサンジオール33.6部、トリメチロールプロパン0.8部を仕込み、120℃まで昇温して原料を溶解した後、攪拌しながら160℃まで昇温した。160℃で1時間保持した後、230℃まで5時間かけて昇温した。230℃に保持しながら定期的に酸価を測定し、樹脂酸価が4mgKOH/gになったら、80℃以下まで降温した。最後にメチルエチルケトン60.8部を加え、ポリエステルポリオール溶液PP-1を得た。ポリエステルポリオール溶液PP-1の特性値は、質量平均分子量7,200、酸価4mgKOH/g、水酸基価62mgKOH/g、樹脂固形分60%であった。
【0071】
(2) ポリウレタン樹脂分散液PU-1の製造
温度計、攪拌装置及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、製造例1-(1)で得られたポリエステルポリオール溶液PP-1を110.0部、ジメチロールプロピオン酸4.5部、ネオペンチルグリコール2.0部、メチルエチルケトン20.3部を仕込み、攪拌しながら80℃まで昇温した。80℃になった時点で、イソホロンジイソシアネート24.0部加え、80℃を継続し、イソシアネート量が0.40ミリモル/gとなったところで、トリメチロールプロパン3.2部を加え、80℃を保持した。イソシアネート量が0.03ミリモル/gとなったところで、ブチルセロソルブ5.2部を加え、50℃まで降温してからジメチルエタノールアミン3.3部加えて酸基を中和し、脱イオン水150.0部を加えた。その後100℃まで昇温し、減圧条件下でメチルエチルケトンを除去し、ポリウレタン樹脂分散液PU-1を得た。ポリウレタン樹脂分散液PU-1の特性値は、質量平均分子量71,000、酸価21mgKOH/g、水酸基価21mgKOH/g、樹脂固形分38%であった。
【0072】
<製造例2:水系着色塗料組成物用ポリエステル樹脂溶液PE-1の製造>
反応水の分離管が付属した還流冷却器、温度計、攪拌装置及び窒素ガス導入管を備えたフラスコに、上記ダイマー酸PRIPOL1017(商品名、クローダジャパン株式会社製)15.0部、無水フタル酸30.0部、アジピン酸3.1部、1,6-ヘキサンジオール31.5部、トリメチロールプロパン10.3部を仕込み、120℃まで昇温して原料を溶解した後、攪拌しながら160℃まで昇温した。160℃で1時間保持した後、230℃まで5時間かけて昇温した。230℃で2時間保持した後、180℃まで降温した。次に、無水トリメリット酸10部を加え、180℃に保持しながら定期的に酸価を測定し、酸価が25mgKOH/gになったら、80℃以下まで降温した。ブチルセロソルブ25部を加えた後、ジメチルエタノールアミン3.2部を加えて酸基を中和し、脱イオン水34.1部を加え、ポリエステル樹脂溶液PE-1を得た。ポリエステル樹脂溶液PE-1の特性値は、質量平均分子量15,000、酸価25mgKOH/g、水酸基価90mgKOH/g、樹脂固形分60%であった。
【0073】
<製造例3:水系着色塗料組成物PR-1の製造>
(1) 水系着色塗料組成物PR-1の製造
分散樹脂としてポリウレタン樹脂分散液PU-1を26.3部とポリエステル樹脂溶液PE-1を33.3部使用し、これに対して二酸化チタン顔料タイピュアR706(商品名、ケマーズ株式会社製)119.0部及びペリレン系黒色顔料Paliogen Black L0086(商品名、DIC株式会社製)を1.0部、さらに粘度調整のために脱イオン水30.0部を添加し、モーターミルで分散し、顔料ペーストを得た。次に、ポリウレタン樹脂分散液PU-1を52.6部計量し、ディソルバーで攪拌下、上記の顔料ペースト209.6部を加えて混合した。これに対し、さらに、メラミン樹脂溶液サイメル203(商品名、オルネクス社製、不揮発分72質量%)27.8部、メラミン樹脂溶液サイメル325(商品名、オルネクス社製、不揮発分80質量%)12.5部、及びポリエステル樹脂溶液PE-1を33.3部、脱イオン水40.0部を加えて混合した。最後に、フォードカップ#4の粘度が20℃で40秒となるように脱イオン水で希釈して、水系着色塗料組成物PR-1を得た。
【0074】
(2) 水系着色塗膜層の評価
リン酸亜鉛処理軟鋼板にカチオン電着塗料カソガードNo.500(商品名、BASFジャパン株式会社製)を用いて硬化膜厚が20μmとなるよう電着塗装を行い、175℃℃で25分間焼き付けて電着塗装板を得た。次に、電着塗装板に水系着色塗料組成物PR-1を乾燥膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装し、85℃で5分間プレヒートを行った。その後、100℃で30分間加熱して水系着色塗膜層を得た。得られた水系着色塗膜層のマルチアングル測色器BYKmac i(商品名、BYK-Gardner社製)を用いて測定された明度L*45値は87であった。
【0075】
<製造例4:溶剤型着色塗料組成物PR-2の製造>
(1) 溶剤型着色塗料組成物PR-2の製造
分散樹脂として無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン樹脂溶液スーパークロン842LM(商品名、日本製紙株式会社製、不揮発分20質量%、質量平均分子量55,000)を200.0部使用し、これに対してトルエン50.0部を添加後、さらに二酸化チタン顔料タイピュアR706(商品名、ケマーズ株式会社製)139.0部及びペリレン系黒色顔料Paliogen Black L0086(商品名、DIC株式会社製)1.0部を添加して、モーターミルで分散し、顔料ペーストを得た。次に、無水マレイン酸変性塩素化ポリプロピレン樹脂溶液スーパークロン842LMを200.0部計量し、ディソルバーで攪拌下、上記の顔料ペースト390.0部を加えて混合した。これに対し、さらに、ブロックイソシアネート樹脂溶液デスモジュールBL3175SN(商品名、住化コベストロウレタン株式会社製、不揮発分75質量%、NCO含有率11.1質量%)13.3部、及び液状エポキシ樹脂jER828(商品名、三菱ケミカル株式会社製)10.0部さらに芳香族石油ナフサソルベッソ100(商品名、エクソンモービル社製)100.0部を加えて混合した。得られた混合物に、最後に、フォードカップ#4の粘度が20℃で15秒となるようにトルエン/芳香族石油ナフサソルベッソ100(商品名、エクソンモービル社製)からなる混合溶剤(混合質量比:1/1)で希釈して、溶剤型着色塗料組成物PR-2を得た。
【0076】
(2) 溶剤型着色塗膜層の評価
リン酸亜鉛処理軟鋼板にカチオン電着塗料カソガードNo.500(商品名、BASFジャパン株式会社製)を用いて硬化膜厚が20μmとなるよう電着塗装を行い、175℃℃で25分間焼き付けて電着塗装板を得た。次に、電着塗装板に溶剤型着色塗料組成物PR-2を乾燥膜厚が20μmとなるようにスプレー塗装し、室温で5分間放置した。その後、100℃で30分間加熱して溶剤型着色塗膜層を得た。得られた溶剤型着色塗膜層のマルチアングル測色器BYKmac i(商品名、BYK-Gardner社製)を用いて測定された明度L*45値は85であった。
【0077】
<製造例5:トップコート組成物用水酸基含有アクリル樹脂溶液A-1の製造>
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコにキシレンを33.9部仕込み、窒素気流下攪拌しながら加熱し140℃を保った。次に、140℃の温度で、4-ヒドロキシブチルアクリレート23.9部、スチレン10.0部、イソブチルメタクリレート19.0部、シクロヘキシルメタクリレート6.2部、メタクリル酸0.9部のラジカル重合性モノマーと、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート5.0部とを均一に混合し、2時間かけて滴下ロートより等速滴下した。滴下終了後、140℃の温度を1時間保った後、反応温度を110℃に下げた。その後、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.1部をキシレン1.0部に溶解させて追加触媒として添加し、さらに110℃の温度を2時間保った後、冷却し、水酸基含有アクリル樹脂溶液A-1を得た。水酸基含有アクリル樹脂溶液A-1の特性値は、質量平均分子量7,000、酸価9.8mgKOH/g、水酸基価155mgKOH/g、ガラス転移温度-10℃、樹脂固形分60%であった。
【0078】
<製造例6:水酸基含有アクリル樹脂溶液A-2の製造>
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコにキシレンを27.0部、プロピレングリコールモノメトキシエーテルアセテートを9.0部仕込み、窒素気流下攪拌しながら加熱し130℃を保った。次に、130℃の温度で、4-ヒドロキシブチルアクリレート12.1部、2-ヒドロキシエチルアクリレート3.9部、スチレン25.0部、イソブチルメタクリレート4.1部、シクロヘキシルメタクリレート9.1部、メタクリル酸0.8部のラジカル重合性モノマーと、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート1.0部とを均一に混合し、3時間かけて滴下ロートより等速滴下した。滴下終了後、130℃の温度を1時間保った後、反応温度を110℃に下げた。その後、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.1部をキシレン1.0部に溶解させて追加触媒として添加し、さらに110℃の温度を2時間保った後、キシレン6.9部を加えてシンニングして冷却し、水酸基含有アクリル樹脂溶液A-2を得た。水酸基含有アクリル樹脂溶液A-2の特性値は、質量平均分子量10,000、酸価9.5mgKOH/g、水酸基価120mgKOH/g、ガラス転移温度25℃、樹脂固形分55%であった。
【0079】
<製造例7:白色顔料ペーストW-1の製造>
分散樹脂として水酸基含有アクリル樹脂溶液A-1を50.0部、二酸化チタン顔料タイペークCR-95(商品名、石原産業株式会社製)を120.0部およびキシレンを50.0部混合した後、モーターミルで分散し、白色顔料ペーストW-1を得た。
【0080】
<製造例8:白色顔料ペーストW-2の製造>
分散樹脂として水酸基含有アクリル樹脂溶液A-2を54.5部、二酸化チタン顔料タイペークCR-95(商品名、石原産業株式会社製)を120.0部およびキシレンを45.5部混合した後、モーターミルで分散し、白色顔料ペーストW-2を得た。
【0081】
<製造例9:黄色顔料ペーストY-1の製造>
分散樹脂として水酸基含有アクリル樹脂溶液A-1を100.0部、黄色酸化鉄顔料TAROX LL-100(商品名、チタン工業株式会社製)を40.0部およびキシレンを100.0部混合した後、モーターミルで分散し、黄色顔料ペーストY-1を得た。
【0082】
<製造例10:黄色顔料ペーストY-2の製造>
分散樹脂として水酸基含有アクリル樹脂溶液A-2を109.1部、黄色酸化鉄顔料TAROX LL-100(商品名、チタン工業株式会社製)を40.0部およびキシレンを90.9部混合した後、モーターミルで分散し、黄色顔料ペーストY-2を得た。
【0083】
<製造例11:黒色顔料ペーストB-1の製造>
分散樹脂として水酸基含有アクリル樹脂溶液A-1を100.0部、ペリレン系黒色顔料Paliogen Black L0086(商品名、DIC株式会社製)を20.0部およびキシレンを100.0部混合した後、モーターミルで分散し、黒色顔料ペーストB-1を得た。
【0084】
<製造例12:トップコート組成物TC-1~TC-14の製造>
表1に記載した原料の内、水酸基含有アクリル樹脂(A)、樹脂ビーズ(C)、顔料ペースト、および添加剤溶液(紫外線吸収剤溶液、光安定剤溶液、および表面調整剤溶液)を混合して均一になるように撹拌した。次に、表1に記載したポリイソシアネート化合物(B)を前記混合物に加え再び均一になるように撹拌した。その後、得られた混合物のフォードカップ#4の粘度が20℃で25秒となるようにソルベッソ100(表1ではS-100と表記)で希釈して、トップコート組成物TC-1~TC-14を得た。
【0085】
上記のソルベッソ100(商品名、エクソンモービル社製)とは、芳香族石油ナフサであり、表1のS-100の欄には、各トップコート組成物を上記の粘度とするために用いたソルベッソ100の量(質量部)を記載した。
【0086】
【表1】
【0087】
表中の数値は質量部を単位とする。
【0088】
1) デスモジュールN3300: 商品名、住化コベストロウレタン株式会社製、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のトリマー、不揮発分100質量%、NCO含有率21.8質量%
2) テクポリマーMBX-20: 商品名、積水化成品工業株式会社製、アクリル樹脂ビーズ、D50=20μm
3) タフチックAR650MX: 商品名、日本エクスラン工業株式会社製、アクリル樹脂ビーズ、D50=40μm
4) タフチックAR650MZ: 商品名、日本エクスラン工業株式会社製、アクリル樹脂ビーズ、D50=60μm
5) オルガゾル 2002 ES6 NAT3: 商品名、アルケマ株式会社製、ポリアミド樹脂ビーズ、D50=60μm
6) テクポリマーMBX-12: 商品名、積水化成品工業株式会社製、アクリル樹脂ビーズ、D50=12μm
7) タフチックAR650ML: 商品名、日本エクスラン工業株式会社製、アクリル樹脂ビーズ、D50=80μm
8) イリオジン103WNT: 商品名、メルクパフォーマンスマテリアルズ合同会社製、光干渉性パール顔料
9) 紫外線吸収剤溶液: チヌビン900(商品名、BASFジャパン株式会社製)の20質量%キシレン溶液
10) 光安定剤溶液: チヌビン292(商品名、BASFジャパン株式会社製)の20質量%キシレン溶液
11) 表面調整剤溶液: BYK-300(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)の10質量%キシレン溶液
【0089】
<実施例1~10及び比較例1~7>
(1) 試験板の作成
リン酸亜鉛処理軟鋼板にカチオン電着塗料カソガードNo.500(商品名、BASFジャパン株式会社製)を用いて硬化膜厚が20μmとなるよう電着塗装を行い、175℃で25分間焼き付けて電着塗装板を得た。
【0090】
次に、実施例1~8および比較例1~7では、上記の電着塗装板に水系着色塗料組成物PR-1を乾燥膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装し、85℃で5分間プレヒートを行った。水系着色塗料組成物PR-1塗装板が室温まで冷却された後、 トップコート組成物TC-1~TC-12を表2に記載した乾燥膜厚となるようにスプレー塗装し、室温で10分間放置した。最後に、100℃で30分間加熱して試験板を作成した。
【0091】
また、実施例9~10では、上記の電着塗装板に溶剤型着色塗料組成物PR-2を乾燥膜厚が20μmとなるようにスプレー塗装し、室温で5分間放置した後、 トップコート組成物TC-13及びTC-14を表2に記載した乾燥膜厚となるようにスプレー塗装し、室温で10分間放置した。最後に、100℃で30分間加熱して複層塗膜試験板を作成した。
【0092】
各トップコート組成物に含まれる樹脂ビーズの詳細は表1に記載したとおりであるが、表2にも各トップコート組成物中の樹脂ビーズの平均粒径D50を記載した。
【0093】
なお、トップコート組成物TC-11は、塗装時にスプレーガンの詰まりが発生したため、試験板を作成することができなかった。
【0094】
(2) 複層塗膜の評価
実施例1~10、比較例1、2および4~7で得られた複層塗膜(試験版)について下記(2)-1~(2)-5の評価・測定を行い、その結果を表2に示した。
(2)-1 明度差L*15-L*25の評価
マルチアングル測色器BYKmac i(商品名、BYK-Gardner社製)を用いて明度L*15値およびL*25値を測定し、明度差L*15-L*25を算出した。
(2)-2 赤外線反射率(IRSR)の測定
赤外線反射率(IRSR)は、紫外・可視・近赤外分光光度計UV-3600(商品名、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。
(2)-3 全日射反射率(TSR)の測定
全日射反射率(TSR)は、紫外・可視・近赤外分光光度計UV-3600(商品名、株式会社島津製作所製)を用いて測定した。
(2)-4 耐湿性の評価
得られた試験板を、50℃、湿度95%の恒温恒湿槽内に入れ、240時間放置した。放置後、試験板を取り出し、塗膜の外観異常やふくれの程度を次の基準に従い目視評価した。
【0095】
〇 : 塗膜に異常が無い状態
× : 塗膜にふくれや著しい外観異常がある状態
(2)-5 耐候性の評価
サンシャインカーボンアーク灯式促進耐候性試験機(JISK-5400(1990)9.8.1)を用いて3000時間試験を行い、試験後の塗膜の状態を目視評価した。
【0096】
〇 : 塗膜に異常が無い状態
× : 塗膜にふくれや著しい外観異常がある状態
【0097】
【表2】
【0098】
(※) 塗装時にスプレーガンの詰まりが発生したため、試験板を作成することができなかった。
【0099】
以上、本発明者等によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0100】
10 複層塗膜
F 複層塗膜の表面
PL 複層塗膜の表面に下した垂線
I 入射光
入射角
SR 正反射光
sr 正反射角
15 反射光(正反射角RSRに対して入射光方向に15度の 角度をなして反射した光 )
25 反射光(正反射角RSRに対して入射光方向に25度の角 度をなして反射した光)
図1