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特開2024-86745地図データ構造、情報処理装置及び地図データ生成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086745
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】地図データ構造、情報処理装置及び地図データ生成装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 29/00 20060101AFI20240621BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20240621BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240621BHJP
   G08G 1/13 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
G01C21/26 C
G08G1/00 J
G08G1/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024052392
(22)【出願日】2024-03-27
(62)【分割の表示】P 2022149730の分割
【原出願日】2018-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】浜田 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】下野 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】堀川 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 卓司
(57)【要約】
【課題】車道にはみ出して自転車が走行する可能性がある場所を好適に特定することが可能な地図データの地図データ構造及び当該地図データを記憶する情報処理装置を提供する。
【解決手段】サーバ装置2は、危険個所情報を含む配信地図DB5を記憶する。危険個所情報は、「危険個所ID」、「所属自転車レーンリンクID」、「危険度」、「範囲」、「絶対位置」、「相対位置」の各要素を含む。「危険度」には、対象の危険個所に対する危険度が曜日及び時間帯ごとに指定される。「相対位置」は、サブ要素「始点ノードからの距離」と、サブ要素「基準位置からの距離」とを有する。「始点ノードからの距離」は、所属する自転車専用レーンの始点ノードからのオブジェクトの自転車専用レーンに沿った距離を指定する項目であり、「基準位置からの距離」は、所定の基準位置からのオブジェクトの自転車専用レーンの幅方向における距離を指定する項目である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車専用レーンに関する自転車専用レーン情報を記憶する記憶部と、
前記自転車専用レーンにおいて、自転車の進行の障害になる要因が存在する位置を示す障害位置情報を車両に搭載された端末装置から取得する取得部と、
前記自転車専用レーン情報と前記障害位置情報とを関連付けて地図データを生成する生成手段と、
を有する地図データ生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の移動体において利用される地図データに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に設置されたセンサの出力に基づき地図データを更新する技術が知られている。例えば、特許文献1には、車両等の移動体に設置されたセンサの出力に基づいて部分地図の変化点を検出した場合に、当該変化点に関する変化点情報をサーバ装置に送信する運転支援装置が開示されている。また、非特許文献1には、車両側のセンサが検出したデータをクラウドサーバで収集するためのデータフォーマットに関する仕様が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-156973号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】here社ホームページ、Vehicle Sensor Data Cloud Ingestion Interface Specification(v2.0.2),[平成30年2月5日検索]、インターネット<URL:https://lts.cms.here.com/static-cloud-content/Company_Site/2015_06/Vehicle_Sensor_Data_Cloud_Ingestion_Interface_Specification.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自転車専用レーンにおいて水たまりや落下物などの自転車の走行の障害となる要因が存在する場合には、当該自転車専用レーンを通る自転車はその障害物を避けるために車道にはみ出して通行する場合があり、このような道路区間では、車両は車道にはみ出した自転車を避けて走行する必要がある。従って、このような要因が存在する道路を車両側で予め特定し、当該道路区間を避けて走行したり、事前に運転者に警告したりできるように、車両側で参照可能な情報として用意できると好ましい。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、車道にはみ出して自転車が走行する可能性がある場所を好適に特定することが可能な地図データの地図データ構造及び当該地図データを記憶する情報処理装置並びに当該地図データを生成する地図データ生成装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項に記載の発明は、地図データのデータ構造であって、自転車専用レーンに関する自転車専用レーン情報と、前記自転車専用レーンにおいて、自転車の進行の障害になる要因が存在する位置を示す障害位置情報と、を含み、前記自転車専用レーンから自転車がはみ出る危険性を認識するのに用いる地図データ構造である。
【0008】
また、請求項に記載の発明は、情報処理装置であって、自転車専用レーンに関する自転車専用レーン情報と、前記自転車専用レーンにおいて、自転車の進行の障害になる要因が存在する位置を示す障害位置情報と、を含む地図データを記憶する記憶部を有する。
【0009】
また、請求項に記載の発明は、地図データ生成装置であって、自転車専用レーンに関する自転車専用レーン情報を記憶する記憶部と、前記自転車専用レーンにおいて、自転車の進行の障害になる要因が存在する位置を示す障害位置情報を車両に搭載された端末装置から取得する取得部と、前記自転車専用レーン情報と前記障害位置情報とを関連付けて地図データを生成する生成手段と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】データ収集システムの概略構成である。
図2】端末装置及びサーバ装置のブロック構成を示す。
図3】端末装置が実行する処理概要を示したブロック図である。
図4】道路周辺の概略的な俯瞰図を示す。
図5】地図DB及び配信地図DBに共通するデータ構造の一例を示す。
図6】自転車専用レーンに存在するオブジェクトに対応するオブジェクト情報のデータ構造例を示す。
図7】危険個所情報のデータ構造例を示す。
図8】アップロード情報のデータ構造の概要を示す図である。
図9】ヘッダ情報に含まれる「車両メタデータ」のデータ構造を示す。
図10】イベント情報に含まれる「オブジェクト認識イベント」のデータ構造を示す。
図11】自転車専用レーン上に存在するオブジェクトの検出に関するイベント情報を生成する場合の「オフセット位置」のデータ構造の一例を示す。
図12】実施例における処理の概要を示すフローチャートの一例である。
図13】変形例に係るデータ収集システムの概略構成である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好適な実施形態によれば、地図データのデータ構造であって、自転車専用レーンに関する自転車専用レーン情報と、前記自転車専用レーンにおいて、自転車の進行の障害になる要因が存在する位置を示す障害位置情報と、を含み、前記自転車専用レーンから自転車がはみ出る危険性を認識するのに用いる地図データ構造である。このような地図データ構造を有する地図データによれば、移動体(移動体と共に移動する端末も含む)は、地図データに基づき自転車が自転車専用レーンから車道にはみ出して走行する可能性がある地点を好適に把握し、経路探索、注意喚起、及び自動運転制御などに活用することができる。
【0012】
上記地図データ構造の一態様では、前記自転車専用レーン情報は、自転車専用レーンを特定する自転車専用レーンリンクIDと、前記自転車専用レーンが所属する道路を特定する所属道路リンクIDと、を含み、前記障害位置情報と前記自転車専用レーンリンクIDとが関連付けられている。このような地図データ構造を有する地図データを参照することで、自転車の進行の障害になる要因が存在する自転車専用レーン及び当該自転車専用レーンの所属道路を好適に特定することが可能となる。
【0013】
好適な例では、前記障害位置情報は、前記要因となる位置の絶対位置を示すとよい。他の好適な例では、前記障害位置情報は、前記自転車専用レーンを区画する区画線を基準にした位置を示してもよい。さらに別の好適な例では、前記障害位置情報は、前記自転車専用レーンの始点ノードからの距離を示すものであってもよい。これらの例によれば、地図データを参照することで、自転車専用レーンに存在する障害要因となる位置を好適に特定することができる。
【0014】
上記地図データ構造の一態様では、前記要因の種別を示す種別情報をさらに含む。この態様によれば、地図データを参照することで、自転車専用レーンに存在する障害要因の種別を好適に特定することができる。
【0015】
上記地図データ構造の他の一態様では、前記自転車専用レーン上の障害物、溝又は陥没が存在する位置を示す位置情報を、前記障害位置情報として含む。この態様によれば、地図データを参照することで、自転車専用レーンに存在する障害物、溝、又は陥没の位置を好適に把握し、自転車が車道にはみ出して走行する可能性を予め把握することができる。
【0016】
上記地図データ構造の他の一態様では、前記障害位置情報が示す位置での危険度を示す危険度情報をさらに含む。この態様によれば、地図データを参照することで、自転車専用レーンに存在する障害要因の危険度を認識し、自転車が車道にはみ出して走行する可能性を予測することができる。
【0017】
上記地図データ構造の他の一態様では、前記危険度情報は、時間帯又は曜日ごとに、前記障害位置情報が示す位置での危険度を示す情報である。この態様によれば、自転車専用レーンに存在する障害要因の時間帯又は曜日ごとの的確な危険度を把握することができる。
【0018】
上記地図データ構造の他の一態様では、前記障害位置情報は、前記要因となる位置の範囲又は大きさを示す情報を含む。この態様によれば、地図データを参照することで、自転車専用レーンに存在する障害要因の範囲又は大きさを好適に把握することができる。
【0019】
本発明の他の好適な実施形態によれば、情報処理装置は、自転車専用レーンに関する自転車専用レーン情報と、前記自転車専用レーンにおいて、自転車の進行の障害になる要因が存在する位置を示す障害位置情報と、を含む地図データを記憶する記憶部を有する。情報処理装置は、例えば、このような地図データを配信用地図として用いたり、経路探索などに用いたりすることができる。
【0020】
本発明のさらに別の好適な実施形態によれば、地図データ生成装置は、自転車専用レーンに関する自転車専用レーン情報を記憶する記憶部と、前記自転車専用レーンにおいて、自転車の進行の障害になる要因が存在する位置を示す障害位置情報を車両に搭載された端末装置から取得する取得部と、前記自転車専用レーン情報と前記障害位置情報とを関連付けて地図データを生成する生成手段と、を有する。この態様によれば、地図データ生成装置は、自転車専用レーンに関する自転車専用レーン情報と、自転車専用レーンにおいて、自転車の進行の障害になる要因が存在する位置を示す障害位置情報とが関連付けられた地図データを好適に生成することができる。
【実施例0021】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0022】
[データ収集システムの概要]
図1は、本実施例に係るデータ収集システムの概略構成である。データ収集システムは、移動体である各車両に搭載され車両と共に移動する端末装置1と、各端末装置1とネットワークを介して通信を行うサーバ装置2とを備える。そして、データ収集システムは、各端末装置1から送信された情報に基づき、サーバ装置2若しくはサーバ装置と通信回線を介して接続された図示しない地図サーバ装置が保有する地図を更新する。なお、以後において、「地図」とは、従来の経路案内用の車載機が参照するデータに加えて、ADAS(Advanced Driver Assistance System)や自動運転に用いられるデータも含むものとする。
【0023】
端末装置1は、カメラやライダ(LIDAR:Laser Illuminated Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging または LiDAR:Light Detection and Ranging)などから構成されるセンサ部7の出力に基づき、所定のイベントの発生を検知した場合に、検知したイベントに関する情報(「イベント情報」とも呼ぶ。)をアップロード情報Iuに含めてサーバ装置2へ送信する。上記のイベントは、例えば、自車位置周辺の物体(オブジェクト)の認識に関するイベントである「オブジェクト認識イベント」などが存在する。本実施例では、端末装置1は、センサ部7の出力に基づき、自転車の通行の障害となる自転車専用レーン上のオブジェクトを少なくとも検出し、検出したオブジェクトの位置や大きさなどの情報をアップロード情報Iuとしてサーバ装置2へ送信する。また、端末装置1は、地図データを更新するためのダウンロード情報「Id」をサーバ装置2から受信する。
【0024】
なお、端末装置1は、車両に取り付けられた車載機又は車載機の一部であってもよく、車両の一部であってもよい。あるいは、センサ部7を接続することができれば、ノート型PC等の可搬性のある端末機器であってもよい。端末装置1は、情報送信装置の一例である。また、カメラやライダなどの外界センサは、検出装置の一例である。
【0025】
サーバ装置2は、各端末装置1からアップロード情報Iuを受信して記憶する。サーバ装置2は、例えば、収集したアップロード情報Iuに基づき、後述する地図データの作成基準時点からの変化部分(変化点)を検出し、検出した変化点を反映するための地図データの更新などを行う。サーバ装置2は、情報処理装置及び地図データ生成装置の一例である。
【0026】
[端末装置の構成]
図2(A)は、端末装置1の機能的構成を表すブロック図を示す。図2(A)に示すように、端末装置1は、主に、通信部11と、記憶部12と、入力部13と、制御部14と、インターフェース15と、出力部16とを有する。端末装置1内の各要素は、バスライン98を介して相互に接続されている。
【0027】
通信部11は、制御部14の制御に基づき、アップロード情報Iuをサーバ装置2へ送信したり、地図DB4を更新するための地図データをサーバ装置2から受信したりする。また、通信部11は、車両を制御するための信号を車両に送信する処理、車両の状態に関する信号を車両から受信する処理を行ってもよい。
【0028】
記憶部12は、制御部14が実行するプログラムや、制御部14が所定の処理を実行する為に必要な情報を記憶する。本実施例では、記憶部12は、地図DB4と、センサデータキャッシュ6と、車両属性情報「IV」とを記憶する。
【0029】
図DB4には、自動運転やADASなどで使用される種々のデータが記録されている。地図DB4は、例えば、道路網をノードとリンクの組合せにより表した道路データ、施設データ、及び道路周辺のオブジェクト情報などを含むデータベースである。オブジェクト情報は、道路標識等の看板や停止線等の道路標示、センターライン等の道路区画線や道路沿いの構造物等の地物の他、一時的に存在する障害物の情報を含む。障害物は、例えば、水たまり、道路の陥没部分、落下物、排水溝(網で塞がれた部分含む)などの歩行者や自転車の通行の障害となる要因となるものを指す。オブジェクト情報は、自車位置推定等に用いるためのオブジェクトの高精度な点群情報などを含んでもよい。また、地図DB4には、自転車専用レーン等において通行の妨げとなる危険個所に関する情報(「危険個所情報」とも呼ぶ。)が含まれている。その他、地図DB4には、位置推定に必要な種々のデータが記憶されてもよい。
【0030】
センサデータキャッシュ6は、センサ部7の出力データ(所謂生データ)を一時的に保持するキャッシュメモリである。車両属性情報IVは、車両の種別、車両ID、車両長さ、車幅、車高、車両の燃料タイプなどの端末装置1を搭載する車両の属性に関する情報を示す。
【0031】
入力部13は、ユーザが操作するためのボタン、タッチパネル、リモートコントローラ、音声入力装置等であり、例えば、経路探索のための目的地を指定する入力、自動運転のオン及びオフを指定する入力などを受け付け、生成した入力信号を制御部14へ供給する。出力部16は、例えば、制御部14の制御に基づき出力を行うディスプレイやスピーカ等である。
【0032】
インターフェース15は、センサ部7の出力データを制御部14やセンサデータキャッシュに供給するためのインターフェース動作を行う。センサ部7は、ライダ31やカメラ32などの車両の周辺環境を認識するための複数の外界センサと、GPS受信機33、ジャイロセンサ34、ポジションセンサ35、3軸センサ36などの内界センサを含む。ライダ31は、外界に存在する物体までの距離を離散的に測定し、当該物体の表面を3次元の点群として認識し、点群データを生成する。カメラ32は、車両から撮影した画像データを生成する。ポジションセンサ35は、各外界センサの取り付け位置を検出するために設けられ、3軸センサ36は、各外界センサの姿勢を検出するために設けられている。なお、センサ部7は、図2(A)に示した外界センサ及び内界センサ以外の任意の外界センサ及び内界センサを有してもよい。例えば、センサ部7は、外界センサとして、超音波センサ、赤外線センサ、マイクなどを含んでもよい。センサ部7に含まれる任意の外界センサは、検出装置として機能する。
【0033】
制御部14は、所定のプログラムを実行するCPUなどを含み、端末装置1の全体を制御する。制御部14は、地図DB4及びセンサ部7の出力データなどに基づき、経路案内や自動運転などの運転者を補助する制御、及び地図更新のためのオブジェクト検出などを行ったりする。制御部14は、機能的には、位置推定部17と、オブジェクト検出部18と、アップロードデータ生成部19と、地図更新部20とを含む。制御部14は、生成手段、送信手段、プログラムを実行するコンピュータ等として機能する。
【0034】
図3は、端末装置1の位置推定部17、オブジェクト検出部18、アップロードデータ生成部19及び地図更新部20の処理概要を示したブロック図である。
【0035】
位置推定部17は、センサデータキャッシュ6に保持されているセンサ部7の出力データ及び地図DB4に基づき、自車位置(車両の姿勢も含む)を推定する。位置推定部17は、種々の位置推定方法を実行可能となっている。位置推定部17は、例えば、GPS受信機33及びジャイロセンサ34等の自立測位センサの出力に基づくデッドレコニング(自律航法)による自車位置推定方法、自律航法に地図DB4の道路データなどをさらに照合する処理(マップマッチング)を行う自車位置推定方法、周囲に存在する所定のオブジェクト(ランドマーク)を基準としてライダ31やカメラ32などの外界センサの出力データと地図DB4の地物情報が示すランドマークの位置情報とに基づく自車位置推定方法などを実行する。そして、位置推定部17は、例えば、現在実行可能な位置推定方法の中から最も高い推定精度となる位置推定方法を実行し、実行した位置推定方法に基づき得られた自車位置等を示した自車位置情報を、アップロードデータ生成部19へ供給する。
【0036】
オブジェクト検出部18は、センサ部7が出力する点群情報、画像データ、音声データ等に基づき、所定の対象物を検出する。この場合、例えば、オブジェクト検出部18は、位置推定部17が推定した自車位置に基づき、センサ部7により検出したオブジェクトに対応する地物情報を地図DB4から抽出する。そして、オブジェクト検出部18は、センサ部7により検出したオブジェクトの位置及び形状等と、地図DB4から抽出した地物情報が示すオブジェクトの位置及び形状等とに違いがある場合、又は、地図DB4に該当するオブジェクト情報が存在しない場合などに、センサ部7により検出したオブジェクトに関する情報(「オブジェクト検出データ」とも呼ぶ。)を、アップロードデータ生成部19へ供給する。
【0037】
なお、オブジェクト検出部18は、センサ部7により検出したオブジェクトと地図DB4の地物情報が示すオブジェクトとに形状や位置等に違いがあるか否かに関わらず、特定のオブジェクトを検出した場合に、当該オブジェクトに関するオブジェクト検出データをアップロードデータ生成部19へ供給してもよい。例えば、オブジェクト検出部18は、センサ部7の出力に基づき、自転車専用レーン上に存在する障害物を検出した場合、当該障害物の位置及び大きさ等を示す情報をオブジェクト検出データとしてアップロードデータ生成部19へ供給してもよい。
【0038】
アップロードデータ生成部19は、位置推定部17から供給される自車位置情報と、オブジェクト検出部18から供給されるオブジェクト検出データと、車両属性情報IVとに基づき、アップロード情報Iuを生成する。そして、アップロードデータ生成部19は、生成したアップロード情報Iuを、通信部11によりサーバ装置2へ送信する。アップロードデータ生成部19が送信するアップロード情報Iuのデータ構造については、[データ構造]のセクションで詳しく説明する。
【0039】
地図更新部20は、通信部11によりサーバ装置2から受信したダウンロード情報Idに基づき、地図DB4を更新する。
【0040】
[サーバ装置の構成]
図2(B)は、サーバ装置2の機能的構成を示すブロック図を示す。図2(B)に示すように、サーバ装置2は、主に、通信部21と、記憶部22と、制御部23とを有する。サーバ装置2内の各要素は、バスライン99を介して相互に接続されている。
【0041】
通信部21は、制御部23の制御に基づき、各端末装置1からアップロード情報Iuを受信したり、地図DB4を更新するためのダウンロード情報Idを各端末装置1へ送信したりする。
【0042】
記憶部22は、制御部23が実行するプログラムや、制御部23が所定の処理を実行する為に必要な情報を記憶する。本実施例では、記憶部22は、配信地図DB5と、イベント情報DB9とを記憶する。
【0043】
配信地図DB5は、各端末装置1に配信するための地図データであり、地図DB4と同様に、自動運転やADASなどで使用される種々のデータが記録されている。
【0044】
イベント情報DB9は、各端末装置1から受信するアップロード情報Iuに含まれるイベント情報を記録したデータベースである。イベント情報DB9に記録されたデータは、例えば、配信地図DB5の更新に用いられ、所定の統計処理、検証処理等が行われた後に配信地図DB5に反映される。
【0045】
制御部23は、所定のプログラムを実行するCPUなどを含み、サーバ装置2の全体を制御する。本実施例では、制御部23は、通信部21によりイベント情報を含むアップロード情報Iuを端末装置1から受信した場合に、イベント情報をイベント情報DB9に登録する。また、制御部23は、所定のタイミングにおいて、イベント情報DB9を参照し、自転車専用レーンに存在する障害物等に対するオブジェクト情報及び危険個所情報を生成し、生成した情報に基づき配信地図DB5を更新する。さらに、制御部23は、生成したオブジェクト情報及び危険個所情報を含むダウンロード情報Idを、通信部21により端末装置1へ送信する。制御部23は、生成手段として機能する。
【0046】
[データ構造]
次に、地図DB4、配信地図DB5、及びアップロード情報Iuのデータ構造について説明する。
【0047】
(1)図DB及び配信地図DB
まず、地図DB4及び配信地図DB5のデータ構造について、道路周辺の概略的な俯瞰図を示す図4及び各種データ構造例を示す図5図7を参照して説明する。
【0048】
図4(A)は、車道40及び車道43の交差点付近の概略的な俯瞰図を示す。図4(A)に示す車道40の両側には、自転車専用レーン41、42がそれぞれ隣接して設けられている。図4(B)は、自転車専用レーン41の一部を拡大した図である。図4(B)に示す自転車専用レーン41は、「X」(m)の幅を有し、自転車の通行の障害となる排水溝45、落下物46、及び陥没部47がそれぞれ形成されている。
【0049】
図5(A)は、地図DB4及び配信地図DB5に共通するデータ構造の一例を示す。図5(A)に示すように、地図DB4及び配信地図DB5は、リンク情報と、自転車レーンリンク情報と、ノード情報と、オブジェクト情報と、危険個所情報とを含む。なお、地図DB4及び配信地図DB5は、これらの他、施設情報などの自動運転やADASなどで使用される種々のデータが記録されている。
【0050】
図5(B)は、リンク情報のデータ構造の一例を示す。図5(B)に示すリンク情報は、「道路リンクID」、「始点ノードID」、及び「終点ノードID」の各要素を含む。また、図5(B)は、一例として、図4(A)に示す車道40に対応するリンク情報の具体例を、「指定される情報の例」の列に示している。図5(B)によれば、車道40は、道路リンクID「L0002」が割り当てられており、車道43との交点に対応するノードID「N0001」のノードを始点ノードとし、ノードID「N0002」のノードを終点ノードとしている。
【0051】
図5(C)は、自転車レーンリンク情報のデータ構造の一例を示す。図5(C)に示す自転車レーンリンク情報は、「自転車レーンリンクID」、「所属道路リンクID」、「始点ノードID」、「終点ノードID」、「幅」の各要素を含む。ここで、「所属道路リンクID」は、対象の自転車専用レーンと隣接する道路(車道)のリンクIDを指定する項目である。
【0052】
また、図5(C)は、一例として、図4(A)に示す自転車専用レーン41に対応する自転車レーンリンク情報の具体例を、「指定される情報の例」の列に示している。図5(C)によれば、自転車専用レーン41は、自転車レーンリンクID「BL0001」が割り当てられており、隣接する車道40のリンクID「L0002」が所属道路リンクIDとして関連付けられている。また、自転車専用レーン41は、車道43との交点に対応するノードID「BN0001」のノードを始点ノードとし、ノードID「BN0002」のノードを終点ノードとし、X[m]の幅を有している。自転車レーンリンク情報は、自転車専用レーン情報の一例である。
【0053】
図6(A)は、自転車専用レーンに存在するオブジェクトに対応するオブジェクト情報のデータ構造例を示す。図6(A)に示すオブジェクト情報は、「オブジェクトID」、「所属自転車レーンリンクID」、「種別ID」、「大きさ」、「絶対位置」、「相対位置」の各要素を含む。ここで、「オブジェクトID」は、各オブジェクトに対して割り当てられた固有の識別番号であるオブジェクトIDを指定する項目である。「所属自転車レーンリンクID」は、対象のオブジェクトが存在する自転車専用レーンのリンクIDを指定する項目であり、「種別ID」は、対象のオブジェクトの種別を示す識別番号等を指定する項目である。「絶対位置」は、対象のオブジェクトの位置を緯度及び経度により指定する項目である。「相対位置」は、対象のオブジェクトの相対位置を指定する項目であり、サブ要素「始点ノードからの距離」と、サブ要素「基準位置からの距離」とを有する。「始点ノードからの距離」は、所属する自転車専用レーンの始点ノードからのオブジェクトの自転車専用レーンに沿った距離を指定する項目であり、「基準位置からの距離」は、所定の基準位置からのオブジェクトの自転車専用レーンの幅方向における距離を指定する項目である。ここで、上述の基準位置は、例えば、自転車専用レーンと車道との境界線(区画線)の位置である。なお、オブジェクト情報内において基準位置を特定するための情報が指定されていてもよい。また、「絶対位置」と「相対位置」の両方が指定されている必要はなく、一方のみが指定されていてもよい。
【0054】
また、図6(A)は、一例として、図4(B)に示す自転車専用レーン41上に存在する排水溝45に対応するオブジェクト情報の具体例を、「指定される情報の例」の列に示している。ここで、「オブジェクトID」には、排水溝45に割り当てられたオブジェクトID「OB0001」が指定され、「所属自転車レーンリンクID」には、自転車専用レーン41のリンクID「BL0001」が指定されている。また、「種別ID」には、排水溝であることを示す識別番号「1」が指定されており、「大きさ」には、排水溝45の大きさ(例えば自転車専用レーン41に沿った方向及び自転車専用レーン41の幅方向における長さ)が指定されている。また、「絶対位置」には、排水溝45の中心位置の緯度経度が指定されており、「相対位置」の「始点ノードからの距離」には、車道43と自転車専用レーン41との交点に相当するノードID「BN0001」のノードから排水溝45までの道路沿った距離が指定され、「基準位置からの距離」には、車道40と自転車専用レーン41との境界線(区画線)49から排水溝45までの道路幅方向の距離「Xa」が指定されている。「絶対位置」及び「相対位置」に指定される情報は、障害位置情報の一例である。
【0055】
図6(B)は、オブジェクト情報の「種別ID」で指定される識別番号とオブジェクトの種別との対応表の一例である。図6(B)に示すように、端末装置1により検出される可能性があるオブジェクトの種別ごとに、種別IDが割り当てられている。このような対応表の情報は、地図DB4及び配信地図DB5に含まれていてもよい。
【0056】
なお、自転車専用レーン上に存在するオブジェクトに限らず、歩道、路側帯などに存在する、歩行者の通行の障害となるオブジェクトに対するオブジェクト情報も図6(A)に示すデータ構造と同様のデータ構造を有した状態で地図DB4及び配信地図DB5に記録されてもよい。この場合、例えば、「所属自転車レーンリンクID」に代えて、オブジェクトが存在する歩道又は路側帯を特定する識別情報を指定する項目が設けられるとよい。
【0057】
図7は、危険個所情報のデータ構造例を示す。図7に示す危険個所情報は、「危険個所ID」、「所属自転車レーンリンクID」、「危険度」、「範囲」、「絶対位置」、「相対位置」の各要素を含む。
【0058】
「危険個所ID」には、自転車専用レーン上に存在する危険個所に対して割り当てられる固有の識別情報である危険個所IDが指定される。「所属自転車レーンリンクID」には、対象の危険個所が存在する自転車専用レーンのリンクIDが指定される。「危険度」には、対象の危険個所に対する危険度(ここでは1から5までの5段階)が曜日及び時間帯ごとに指定される。危険度は、対象の危険個所の大きさ、危険個所を形成するオブジェクトの種別、時間帯又は/及び曜日に起因した交通量の多さ、隣接する車道の幅、対象となる自転車専用レーンの幅などを総合的に勘案して決定される。ここで、危険度が高い(即ち自転車の通行の妨げとなる可能性が高い)危険個所ほど、自転車が自転車専用レーンから車道にはみ出して走行する可能性が高まり、結果として車両の通行の妨げとなる可能性が高くなる。「範囲」、「絶対位置」、「相対位置」には、それぞれ、図6(A)に示すオブジェクト情報の「大きさ」、「絶対位置」、「相対位置」と同様の情報が指定される。
【0059】
さらに、図7は、一例として、図4(B)に示す自転車専用レーン41上に存在する排水溝45の位置を危険個所とみなした場合の危険個所情報の具体例を、「指定される情報の例」の列に示している。ここで、排水溝45には、危険個所ID「DZ0001」が割り当てられており、「所属自転車レーンリンクID」には自転車専用レーン41のリンクID「BL0001」が指定されている。また、「危険度」には、各曜日について1時間区切りの時間帯における排水溝45の危険度が指定されており、「範囲」には、排水溝45の水平面上における長さが指定されている。なお、走行する自転車は排水溝45をその少し手前から回避する行動をとることから、「範囲」として排水溝45より少し広い範囲をカバーする長さを指定してもよい。また、「絶対位置」には、排水溝45の中心位置の緯度経度が指定されており、「相対位置」の「始点ノードからの距離」には、車道43と自転車専用レーン41との交点に相当するノードID「BN0001」のノードから排水溝45までの道路沿いの距離が指定され、「基準位置からの距離」には、車道40と自転車専用レーン41との境界線(区画線)49から排水溝45までの道路幅方向の距離「Xa」が指定されている。なお、排水溝45と近い位置(例えば1メートル以内)に他の排水溝や自転車の走行の障害となる物体が存在する場合には、走行する自転車は個々の物体に対して細かく回避行動を取らずに、これらの物体のすべてを含む大きな領域に対して回避行動を取ることになる。そこで、これら複数の物体が存在する領域を1の危険個所とみなして、危険情報の各要素を設定してもよい。
【0060】
なお、「危険度」は、曜日又は時間帯のいずれか一方のみに基づいて分けられてもよく、曜日又は時間帯によらずに1つの値に定められてもよい。また、曜日と時間帯による危険度の分け方は図7の例に限られない。例えば、危険度は、平日とその他で分けられてもよく、午前と午後の各時間帯により分けられてもよい。
【0061】
ここで、危険個所情報の用途について補足説明する。
【0062】
端末装置1は、例えば、目的地への経路探索において、地図DB4に含まれる危険個所情報を参照して推奨経路を決定する。例えば、端末装置1は、通過予定日時において危険度が高い危険個所を含む道路区間を渋滞区間等と同様にコストが高い(即ち推奨経路として選択されにくい)区間とみなし、危険度が小さい区間を含む経路ほど推奨経路として選定されやすくする。このようにすることで、端末装置1は、危険個所の存在により自転車が車道にはみ出て走行する区間を走行経路に含みにくくし、安全性が高い走行経路を好適に設定することができる。その他、端末装置1は、危険度が所定値より高い危険個所を通過する際に注意喚起の警告を出力してもよく、危険度個所情報を自動運転制御に利用してもよい。同様に、端末装置1は、図6(A)に示すデータ構造を有するオブジェクト情報に基づき、経路探索、注意喚起、自動運転制御などの各処理を実行してもよい。例えば、端末装置1は、図6(A)に示すデータ構造を有するオブジェクト情報を参照することで、車道に隣接する自転車専用レーンや歩道上に存在するオブジェクトを特定し、特定したオブジェクトが存在する位置の自転車専用レーンや歩道に隣接した道路や車線を走行する際には、当該自転車専用レーンや歩道に近づかないように注意喚起の警告を出力してもよく、若しくは当該自転車専用レーンや歩道に隣接した道路や車線を走行しないように経路の探索を行ってもよい。
【0063】
(2)アップロード情報
次に、アップロード情報Iuのデータ構造の具体例について説明する。以後では、一例として、アップロード情報Iuのデータ構造について例示する。
【0064】
図8は、端末装置1が送信するアップロード情報Iuのデータ構造の概要を示す図である。図8に示すように、アップロード情報Iuは、ヘッダ情報と、走行経路情報と、イベント情報と、メディア情報とを含む。
【0065】
ヘッダ情報(Envelope)は、「バージョン(Version)」、「送信元(Submitter)」、「車両メタデータ(vehicleMetaData)」の各項目を含む。端末装置1は、「バージョン」に、使用されるアップロード情報Iuのデータ構造のバージョンの情報を指定し、「送信元」には、アップロード情報Iuを送信する会社名(車両のOEM名又はシステムベンダー名)の情報を指定する。また、端末装置1は、「車両メタデータ」に、後述するように、車両属性情報IVの各情報や参照テーブルRTの情報を指定する。
【0066】
走行経路情報(Path)は、「位置推定(Position Estimate)」の項目を含む。端末装置1は、この「位置推定」には、位置推定時刻を示すタイムスタンプ情報の他、推定した車両の位置を示す緯度、経度、標高の情報、及びこれらの推定精度に関する情報などを指定する。
【0067】
イベント情報(Path Events)は、「オブジェクト認識イベント(Object Detection)」、「標識認識イベント(Sign Recognition)」、「車線境界認識イベント(Lane Boundary Recognition)」の各項目を含む。端末装置1は、オブジェクト認識イベントを検知した場合に、その検知結果となる情報を「オブジェクト認識イベント」に指定する。「オブジェクト認識イベント」には、図10を参照して後述するように、標識及び車線境界線以外の特定のオブジェクトを検出した際の当該オブジェクトの認識結果に関する情報が指定される。また、端末装置1は、標識認識イベントを検知した場合に、その検知結果となる情報を「標識認識イベント」に指定する。「標識認識イベント」には、例えば標識を検出した際の当該標識の認識結果に関する情報が指定される。また、端末装置1は、車線境界認識イベントを検知した場合に、その検知結果となる情報を「車線境界認識イベント」に指定する。「車線境界認識イベント」には、例えば、車線の境界を検出した際の当該境界の認識結果に関する情報が指定される。なお、これらの「オブジェクト認識イベント」、「標識認識イベント」、「車線境界認識イベント」の各項目は任意項目となっている。従って、端末装置1は、検知したイベントに対応する項目にのみ、その検知結果となる情報を指定すればよい。
【0068】
メディア情報(Path Media)は、センサ部7の出力データ(検出情報)である生データを送信する際に使用されるデータタイプである。
【0069】
図9は、ヘッダ情報に含まれる「車両メタデータ」のデータ構造を示す。図9は、「車両メタデータ」に含まれる要素(サブ項目)ごとに、各要素が必須であるか任意であるかの情報を示している。
【0070】
図9に示すように、「車両メタデータ」は、「車両種別(vehicleTypeGenericEnum)」、「車両ID」、「車両長(vehicleLength_m)」、「車幅(vehicleWidth_m)」、「車高(vehicleHeight_m)」、及び「第1燃料タイプ(primaryFuelType)」の各要素を少なくとも含んでいる。
【0071】
ここで、端末装置1のアップロードデータ生成部19は、「車両種別」、「車両長」、「車幅」、「車高」、「第1燃料タイプ」等の各要素に、記憶部12に記憶された車両属性情報IVに基づく情報を指定する。なお、「車両長」、「車幅」、「車高」、「第1燃料タイプ」等の各要素は任意項目であり、車両属性情報IVに対応する情報が存在しない場合などには、情報を指定しない。また、アップロードデータ生成部19は、「車両ID」には、記憶部12に記憶された車両属性情報IVに含まれる車両の識別番号等を指定する。なお、車両IDは、車両に割り当てられた固有のIDの他、端末装置1に割り当てられたIDであってもよく、車両の所有者を特定するIDであってもよい。
【0072】
図10は、イベント情報に含まれる「オブジェクト認識イベント」のデータ構造を示す。図10は、「オブジェクト認識イベント」に含まれる要素(サブ項目)ごとに、各要素に対応する情報の指定が必須であるか任意であるかの情報を示している。
【0073】
図10に示すように、「オブジェクト認識イベント」は、「タイムスタンプ(timeStampUTC_ms)」、「オブジェクトID(detectedObjectID)」、「オフセット位置(PositionOffset)」、「オブジェクトタイプ(objectType)」、「オブジェクトサイズ(objectSize_m)」、「オブジェクトサイズ精度(objectSizeAccuracy_m)」、「メディアID(mediaID)」の各要素を含んでいる。
【0074】
端末装置1のアップロードデータ生成部19は、オブジェクト検出部18からオブジェクトの検出結果を示すオブジェクト検出データを受信した場合に、図10に示すデータ構造を有する「オブジェクト認識イベント」を含むイベント情報を生成する。ここで、アップロードデータ生成部19は、「タイムスタンプ」にはオブジェクト検出時の時刻を指定し、「オブジェクトID」には、検出したオブジェクトのオブジェクトIDを指定する。
【0075】
また、「オフセット位置」には、アップロードデータ生成部19は、検出したオブジェクトの車両からの相対位置(例えば緯度差及び経度差等)の情報を指定する。なお、アップロードデータ生成部19は、自転車専用レーン上に存在するオブジェクトの検出に関するイベント情報を生成する場合には、「オフセット位置」には、上述した車両からの相対位置の情報の他、種々の情報を指定する。この場合の「オフセット位置」のデータ構造については、図11を参照して後述する。
【0076】
「オブジェクトタイプ」は、図6(A)に示すオブジェクト情報の「種別ID」と同様の情報を指定する項目であり、アップロードデータ生成部19は、検出したオブジェクトの種別を示す情報を「オブジェクトタイプ」に指定する。なお、検出したオブジェクトが複数個から形成された陥没穴等である場合には、複数個により形成される旨を示す情報が「オブジェクトタイプ」に付加されてもよい。また、「オブジェクトタイプ」には、自転車専用レーン上に存在するオブジェクトであることを識別可能な情報が指定されてもよい。例えば、同一種類のオブジェクトであっても、自転車専用レーン上に存在するか否かによって異なる識別番号が指定されてもよい。この場合、「オブジェクトタイプ」に指定される情報は、特定情報の一例である。
【0077】
また、アップロードデータ生成部19は、検出したオブジェクトのサイズ情報及び当該サイズの精度情報がオブジェクト検出部18から供給されるオブジェクト検出データに含まれていた場合に、これらの情報を、「オブジェクトサイズ」、「オブジェクトサイズ精度」の各要素に指定する。なお、検出したオブジェクトが複数個から形成された陥没穴等である場合には、これらにより形成される陥没地帯の長さの情報が「オブジェクトサイズ」に指定されてもよい。また、アップロードデータ生成部19は、センサ部7が出力した画像、ビデオ、点群データなどの生データを送信する必要がある場合に、当該生データに対して付与した識別情報を、「メディアID」に指定する。そして、「メディアID」の要素で指定されたメディア(生データ)の詳細情報等については、「メディア情報」の項目に別途格納される。
【0078】
図11は、自転車専用レーン上に存在するオブジェクトの検出に関するイベント情報を生成する場合の「オフセット位置」のデータ構造の一例を示す。アップロードデータ生成部19は、検出したオブジェクトの位置が地図DB4の自転車レーンリンク情報等により特定される自転車専用レーン上にあると判断した場合、図11に示すデータ構造に従って「オフセット位置」に指定する情報を決定する。図11に示す「オブジェクト位置」は、「車両との相対位置」、「位置種別」、「第1基準位置」、「第1基準位置からの距離」、「第2基準位置」、「第2基準位置からの距離」の各サブ要素を含む。
【0079】
ここで、「車両との相対位置」には、アップロードデータ生成部19は、車両を基準とした場合の検出したオブジェクトの相対位置を示す情報を指定する。図11では、アップロードデータ生成部19は、緯度差及び経度差を示す「(xxxx、yyyy)」を「車両との相対位置」として指定している。なお、「車両との相対位置」としては、自車位置の進行方向を基準とした場合のオブジェクトの方向(角度)と自車位置を基準とした場合のオブジェクトまでの距離で表してもよい。「位置種別」には、アップロードデータ生成部19は、対象のオブジェクトが存在する位置の種別(ここでは自転車専用レーン)を指定する。なお、「位置種別」には、対象のオブジェクトが自転車専用レーンに存在する場合には、当該自転車専用レーンの自転車レーンリンクIDが指定されてもよい。
【0080】
「第1基準位置」には、アップロードデータ生成部19は、検出したオブジェクトの位置を特定する際に第1の基準となる位置(ここでは、自転車専用レーンと車道との境界に設けられた区画線A)を指定する。「第1基準位置からの距離」には、アップロードデータ生成部19は、第1基準位置として指定した位置(ここでは区画線A)からオブジェクトまでの距離を指定する。「第2基準位置」には、アップロードデータ生成部19は、検出したオブジェクトの位置を特定する際に第2の基準となる位置(ここではオブジェクトB)を指定する。「第2基準位置からの距離」には、アップロードデータ生成部19は、第2基準位置として指定した位置(ここではオブジェクトB)からオブジェクトまでの距離を指定する。なお、図11の「位置種別」、「第1基準位置」、「第2基準位置」には、実際には「自転車専用レーン」、「区画線A」、「オブジェクトB」をそれぞれ識別可能なID等が指定される。「車両との相対位置」、「第1基準位置からの距離」、「第2基準位置からの距離」に指定される情報は、位置情報の一例であり、「位置種別」に指定される情報は、特定情報の一例である。
【0081】
なお、アップロードデータ生成部19は、自転車専用レーン上に存在するオブジェクトに限らず、歩道、路側帯などに存在するオブジェクトに対する「オブジェクト認識イベント」の「オフセット位置」についても、図11に示すデータ構造と同様のデータ構造を有するアップロード情報Iuを生成してもよい。この場合、「位置種別」には、検出したオブジェクトが存在する歩道又は路側帯等を特定するための識別情報が指定される。
【0082】
[処理フロー]
図12は、本実施例における処理の概要を示すフローチャートの一例である。
【0083】
まず、端末装置1は、所定のイベントを検知したか否か判定する(ステップS101)。例えば、端末装置1は、センサ部7の出力に基づき、イベント情報として送信すべきイベント(オブジェクト認識イベント等)が発生したか否か判定する。そして、端末装置1は、イベントを検知した場合(ステップS101;Yes)、イベント情報を生成し、生成したイベント情報を含むアップロード情報Iuをサーバ装置2へ送信する(ステップS102)。このとき、端末装置1は、自転車専用レーン上のオブジェクトの検知に関するオブジェクト認識イベントのイベント情報を送信する場合には、図10及び図11のデータ構造に従った「オブジェクト認識イベント」を含むイベント情報を生成することで、イベント情報を受信したサーバ装置2に自転車専用レーン上にオブジェクトの存在を好適に把握させることが可能となる。
【0084】
サーバ装置2は、ステップS102で送信されたアップロード情報Iuを受信し、イベント情報DB9にアップロード情報Iuを蓄積する(ステップS201)。そして、サーバ装置2は、配信地図DB5の更新タイミングであるか否か判定する(ステップS202)。上述の更新タイミングは、配信地図DB5の前回更新時からの時間長に基づいて判定されてもよく、配信地図DB5の前回更新時から受信したアップロード情報Iuの累積受信数に基づいて判定されてもよい。
【0085】
そして、サーバ装置2は、配信地図DB5の更新タイミングである場合(ステップS202;Yes)、イベント情報DB9を参照してオブジェクト情報及び危険個所情報を生成し、生成したこれらの情報を用いて配信地図DB5を更新する(ステップS203)。この場合、例えば、サーバ装置2は、「オブジェクト認識イベント」を含むイベント情報の項目「オフセット位置」を参照することで、自転車専用レーン上に存在するオブジェクトの情報を示すイベント情報を抽出し、抽出したイベント情報から図6(A)に示すデータ構造を有するオブジェクト情報及び図7に示すデータ構造を有する危険個所情報を生成する。この場合、サーバ装置2は、図6(A)に示すデータ構造を有するオブジェクト情報の生成後、当該オブジェクト情報のうち所定の条件を満たすオブジェクト情報を抽出し、抽出したオブジェクト情報から危険個所情報を生成してもよい。この場合、例えば、サーバ装置2は、自転車専用レーン上に存在するオブジェクトの大きさ、当該オブジェクトの種別、又は/及び、基準位置からの距離等に基づいて、通行上の妨げとなると推定されるオブジェクトのオブジェクト情報を抽出し、当該オブジェクト情報から危険個所情報を生成してもよい。
【0086】
そして、サーバ装置2は、ステップS203において生成したオブジェクト情報及び危険個所情報を示すダウンロード情報Idを各端末装置1に対して送信する(ステップS204)。なお、サーバ装置2は、ダウンロード情報Idの送信要求があった端末装置1に対してのみダウンロード情報Idを送信してもよい。一方、サーバ装置2は、配信地図DB5の更新タイミングではない場合(ステップS202;No)、引き続きステップS201を実行する。
【0087】
一方、端末装置1は、ステップS102の実行後、又は、ステップS101において所定のイベントを検知しなかった場合、ダウンロード情報Idをサーバ装置2から受信したか否か判定する(ステップS103)。そして、端末装置1は、ダウンロード情報Idを受信した場合(ステップS103;Yes)、当該ダウンロード情報Idを用いて地図DB4を更新する(ステップS104)。これにより、地図DB4には、自転車専用レーンに存在するオブジェクト等に関する最新情報が記録され、経路探索、注意喚起、自動運転制御などに好適に用いられる。一方、端末装置1は、サーバ装置2からダウンロード情報Idを受信していない場合(ステップS103;No)、ステップS101へ処理を戻す。
【0088】
[変形例]
次に、上述の実施例に好適な変形例について説明する。
【0089】
(変形例1)
実施例で説明したサーバ装置2の処理を、複数のサーバ装置からなるサーバシステム(所謂クラウドサーバ)が実行してもよい。
【0090】
例えば、サーバシステムは、配信地図DB5を記憶するサーバと、イベント情報DB9を記憶するサーバと、オブジェクト情報及び危険個所情報の生成処理を行うサーバとから構成されていてもよい。この場合、各サーバは、予め割り当てられた処理を実行するのに必要な情報を他のサーバから適宜受信して所定の処理を実行する。
【0091】
また、自転車専用レーン上に存在するオブジェクトに関する情報(即ち図10及び図11のデータ構造を有する情報)は、端末装置1とサーバ装置2との間で授受が行われてもよく、サーバ間で授受が行われてもよい。図13は、変形例に係るデータ収集システムの概略構成である。図13に示すデータ収集システムは、複数の端末装置1と、車両クラウド2Aと、地図クラウド2Bとを有する。車両クラウド2Aは、主に車ベンダーが管理するサーバ群であり、地図クラウド2Bは、主に地図ベンダーが管理するサーバ群である。
【0092】
この場合、車両クラウド2A及び地図クラウド2Bは、実施例のサーバ装置2と同様に、アップロード情報Iuを各車両の端末装置1から受信してもよい。これにより、車両クラウド2A及び地図クラウド2Bは、それぞれオブジェクト情報及び危険個所情報の生成に必要なイベント情報を収集することが可能である。また、車両クラウド2Aは、アップロード情報Iuに基づき生成したオブジェクト情報及び危険個所情報を地図クラウド2Bへ送信してもよい。
【0093】
(変形例2)
サーバ装置2は、端末装置1からの経路探索要求に基づき配信地図DB5を参照して経路端末処理を行ってもよい。
【0094】
この例では、サーバ装置2は、目的地、現在位置、及びその他の検索条件などを含む経路探索要求を端末装置1から受信した場合、配信地図DB5に含まれる危険個所情報等が示す危険個所ごとの危険度を参照して推奨経路を決定する。この場合、例えば、サーバ装置2は、危険度が高い危険個所を含む道路区間ほど通行しにくい(即ちコストが高い)区間とみなし、危険度が低い危険個所を含む区間から構成される経路ほど推奨経路として選定されやすくする。そして、サーバ装置2は、経路探索結果を示す応答情報を、経路探索の要求元の端末装置1に送信する。同様に、サーバ装置2は、図6(A)に示すデータ構造を有するオブジェクト情報を参照して経路探索処理を行ってもよい。この態様によっても、イベント情報に基づき生成したオブジェクト情報及び危険個所情報を含む配信地図DB5を好適に活用することができる。
【0095】
(変形例3)
図DB4及び配信地図DB5は、自転車専用レーン上のオブジェクトの情報として、図6(A)に示すデータ構造を有するオブジェクト情報、又は、図7に示すデータ構造を有する危険個所情報のいずれか一方のみを有してもよい。図6(A)に示すデータ構造を有するオブジェクト情報、又は、図7に示すデータ構造を有する危険個所情報の少なくとも一方を有する地図DB4及び配信地図DB5のデータ構造は、地図データ構造の一例である。
【符号の説明】
【0096】
1 端末装置
2 サーバ装置
4 地図DB
5 配信地図DB
6 センサデータキャッシュ
7 センサ部
9 イベント情報DB
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13