(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086771
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】エステル化合物、樹脂組成物、硬化物、及び、ビルドアップフィルム
(51)【国際特許分類】
C07D 209/48 20060101AFI20240621BHJP
C08G 59/42 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C07D209/48
C08G59/42
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024060077
(22)【出願日】2024-04-03
(62)【分割の表示】P 2020504427の分割
【原出願日】2020-01-09
(31)【優先権主張番号】P 2019002678
(32)【優先日】2019-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】竹田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】新土 誠実
(72)【発明者】
【氏名】大當 悠太
(72)【発明者】
【氏名】北條 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】林 達史
(72)【発明者】
【氏名】川原 悠子
(72)【発明者】
【氏名】久保 顕紀子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼岡 恵理奈
(57)【要約】
【課題】硬化後の耐熱性及び誘電特性に優れる樹脂組成物に用いることができるエステル化合物を提供する。また、該エステル化合物を含有する樹脂組成物、該樹脂組成物の硬化物、及び、該樹脂組成物を用いてなるビルドアップフィルムを提供する。
【解決手段】下記式(1)で表されるエステル化合物。
[化1]
式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換されていてもよいアリール基であり、R
3は、置換されていてもよいアリーレン基を少なくとも1つ有する2価の基であり、Xは、置換されていてもよいアリーレン基を少なくとも1つ有する2価の基であり、nは、0以上10以下の整数である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されることを特徴とするエステル化合物。
【化1】
式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換されていてもよいアリール基であり、R
3は、置換されていてもよいアリーレン基を少なくとも1つ有する2価の基であり、Xは、置換されていてもよいアリーレン基を少なくとも1つ有する2価の基であり、nは、0以上10以下の整数である。
【請求項2】
前記式(1)中のR
1及びR
2は、下記式(2)で表される基である請求項1記載のエステル化合物。
【化2】
式(2)中、R
4は、それぞれ独立して、水素原子又は脂肪族基であり、*は、結合位置である。
【請求項3】
前記式(1)中のR
3は、下記式(3-1)、(3-2)、(3-3)、又は、(3-4)のいずれかで表される基である請求項1又は2記載のエステル化合物。
【化3】
式(3-1)中、R
5は、それぞれ独立して、水素原子又は脂肪族基であり、式(3-2)中、R
6は、それぞれ独立して、水素原子又は脂肪族基であり、式(3-3)中、R
7は、それぞれ独立して、水素原子又は脂肪族基であり、R
8は、それぞれ独立して、水素原子又は脂肪族基であり、式(3-4)中、R
9は、それぞれ独立して、水素原子又は脂肪族基であり、式(3-1)、(3-2)、(3-3)、及び、(3-4)中、*は、結合位置である。
【請求項4】
分子量が1万以下である請求項1、2又は3記載のエステル化合物。
【請求項5】
硬化性樹脂と硬化剤とを含有する樹脂組成物であって、
前記硬化剤は、請求項1、2、3又は4記載のエステル化合物を含む樹脂組成物。
【請求項6】
硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含む請求項5記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項5又は6記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項8】
請求項5又は6記載の樹脂組成物を用いてなるビルドアップフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化後の耐熱性及び誘電特性に優れる樹脂組成物に用いることができるエステル化合物に関する。また、本発明は、該エステル化合物を含有する樹脂組成物、該樹脂組成物の硬化物、及び、該樹脂組成物を用いてなるビルドアップフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
低収縮であり、接着性、絶縁性、及び、耐薬品性に優れるエポキシ樹脂等の硬化性樹脂は、多くの工業製品に使用されている。特に、プリント配線板の層間絶縁材料等に用いられる樹脂組成物には、低誘電率、低誘電正接といった誘電特性が必要となる。このような誘電特性に優れる樹脂組成物として、例えば、特許文献1、2には、硬化性樹脂と、硬化剤として特定の構造を有する化合物とを含有する樹脂組成物が開示されている。しかしながら、このような樹脂組成物は、硬化後の耐熱性と誘電特性とを両立することが困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-186551号公報
【特許文献2】国際公開2016/114286号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、硬化後の耐熱性及び誘電特性に優れる樹脂組成物に用いることができるエステル化合物を提供することを目的とする。また、本発明は、該エステル化合物を含有する樹脂組成物、該樹脂組成物の硬化物、及び、該樹脂組成物を用いてなるビルドアップフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記式(1)で表されるエステル化合物である。
【0006】
【0007】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換されていてもよいアリール基であり、R3は、置換されていてもよいアリーレン基を少なくとも1つ有する2価の基であり、Xは、置換されていてもよいアリーレン基を少なくとも1つ有する2価の基であり、nは、0以上10以下の整数である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、特定の構造を有するエステル化合物を硬化剤として用いることにより、硬化後の耐熱性及び誘電特性に優れる樹脂組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明のエステル化合物は、上記式(1)で表される。
上記式(1)中、R1及びR2は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、置換されていてもよいアリール基である。上記R1及び上記R2として置換されていてもよいアリール基を有することにより、本発明のエステル化合物は、硬化剤として用いた場合に得られる樹脂組成物が低誘電正接等の誘電特性に優れるものとなる。
【0010】
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。
上記アリール基が置換されている場合の置換基としては、例えば、脂肪族基等が挙げられる。
なかでも、上記式(1)中のR1及びR2は、下記式(2)で表される基であることが好ましい。上記R1及び上記R2が下記式(2)で表される基であることにより、本発明のエステル化合物を硬化剤として用いた場合に得られる樹脂組成物の硬化物が低誘電正接等の誘電特性により優れるものとなる。
【0011】
【0012】
式(2)中、R4は、それぞれ独立して、水素原子又は脂肪族基であり、*は、結合位置である。
【0013】
上記式(1)中、R3は、置換されていてもよいアリーレン基を少なくとも1つ有する2価の基である。上記R3が置換されていてもよいアリーレン基を少なくとも1つ有する2価の基であることにより、本発明のエステル化合物を硬化剤として用いた場合に得られる樹脂組成物の硬化物が耐熱性に優れるものとなる。なお、上記式(1)中のnが1以上である場合、各R3は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0014】
上記式(1)中のR3に含まれるアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基等が挙げられる。
上記アリーレン基が置換されている場合の置換基としては、例えば、脂肪族基等が挙げられる。
なかでも、上記式(1)中のR3は、下記式(3-1)、(3-2)、(3-3)、又は、(3-4)で表される基であることが好ましく、下記式(3-1)又は(3-2)で表される基であることがより好ましい。上記R3が下記式(3-1)、(3-2)、(3-3)、又は、(3-4)で表される基であることにより、本発明のエステル化合物を硬化剤として用いた場合に硬化性樹脂との相溶性により優れるものとなり、かつ、得られる樹脂組成物の硬化物が耐熱性により優れるものとなる。
【0015】
【0016】
式(3-1)中、R5は、それぞれ独立して、水素原子又は脂肪族基であり、式(3-2)中、R6は、それぞれ独立して、水素原子又は脂肪族基であり、式(3-3)中、R7は、それぞれ独立して、水素原子又は脂肪族基であり、R8は、それぞれ独立して、水素原子又は脂肪族基であり、式(3-4)中、R9は、それぞれ独立して、水素原子又は脂肪族基であり、式(3-1)、(3-2)、(3-3)、及び、(3-4)中、*は、結合位置である。
【0017】
上記式(1)中の上記R3が上記式(3-1)で表される基である場合、該式(3-1)で表される基としては、下記式(4-1)又は(4-2)で表される基が好ましい。
また、上記式(1)で表されるエステル化合物を硬化剤として用いる場合、上記R3が下記式(4-1)で表される基である化合物と、下記式(4-2)で表される基である化合物との混合物を用いてもよい。
【0018】
【0019】
式(4-1)及び(4-2)中、*は、結合位置である。
【0020】
上記式(1)中、nは、0以上10以下の整数である。
上記式(1)中、nが0である場合、本発明のエステル化合物を硬化剤として用いた場合に得られる樹脂組成物の硬化物が耐熱性により優れるものとなる。
また、本発明のエステル化合物は、多量体化した場合、即ち、上記式(1)中のnが1以上である場合においても、硬化剤として用いた場合に得られる樹脂組成物の硬化物が耐熱性及び誘電特性に優れるものとなる。また、上記式(1)中のnが1以上である場合は、得られる樹脂組成物の硬化物が伸びにも優れるものとなる。
樹脂成分との相溶性等の観点から、上記式(1)中のnの好ましい上限は10である。
【0021】
上記式(1)中、Xは、置換されていてもよいアリーレン基を少なくとも1つ有する2価の基である。
上記式(1)中のXに含まれるアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基等が挙げられる。
上記アリーレン基が置換されている場合の置換基としては、例えば、脂肪族基等が挙げられる。なお、上記式(1)中のnが2以上である場合、各Xは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0022】
上記アリーレン基を2以上有する場合の上記Xとしては、下記式(5-1)又は(5-2)で表される基が挙げられる。
【0023】
【0024】
式(5-1)中、R10は、それぞれ独立して、水素原子又は脂肪族基であり、式(5-2)中、R11は、それぞれ独立して、水素原子又は脂肪族基であり、式(5-1)、(5-2)中、*は、結合位置である。
【0025】
本発明のエステル化合物の分子量の好ましい下限は500、好ましい上限は1万である。上記分子量がこの範囲であることにより、本発明のエステル化合物は、硬化後の優れた耐熱性を維持しつつ、樹脂成分との相溶性により優れるものとなり、かつ、得られる樹脂組成物の硬化物が低誘電正接等の誘電特性により優れるものとなる。本発明のエステル化合物の分子量のより好ましい下限は580、より好ましい上限は8000であり、更に好ましい下限は600である。また、硬化後により優れた耐熱性が必要とされる場合は、上記エステル化合物の分子量は、5500以下であることが好ましい。上記分子量が5500以下であることにより、得られる硬化性樹脂組成物の硬化物が耐熱性により優れるものとなる。硬化後の耐熱性の観点からは、上記エステル化合物の分子量のより好ましい上限は5000、更に好ましい上限は4500、更により好ましい上限は4000、特に好ましい上限は3500、最も好ましい上限は3000である。加えて、硬化後により優れた伸びが必要とされる場合は、上記エステル化合物の分子量は1000以上であることが好ましい。上記分子量が1000以上であることにより、得られる硬化性樹脂組成物の硬化物が伸びにより優れるものとなる。硬化後の伸びの観点からは、上記エステル化合物の分子量のより好ましい下限は1200以上であり、更に好ましい下限は1500以上である。
なお、本明細書において上記「分子量」は、分子構造が特定される化合物(例えば、上記式(1)において、nが0の化合物のみである場合)については、構造式から求められる分子量である。また、本明細書において上記「分子量」は、重合度の分布が広い化合物(例えば、上記式(1)において、nが複数の値を有する混合物の場合)及び変性部位が不特定な化合物については、数平均分子量を用いて表す場合がある。本明細書において上記「数平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による数平均分子量を測定する際に用いるカラムとしては、例えば、JAIGEL-2H-A(日本分析工業社製)等が挙げられる。
【0026】
本発明のエステル化合物のうち、上記式(1)中のnが0である化合物を製造する方法としては、例えば、以下の方法等が挙げられる。
即ち、無水トリメリット酸と、下記式(6)で表される芳香族ジアミンとを反応させた後、下記式(7-1)で表される水酸基含有芳香族化合物及び/又は下記式(7-2)で表される水酸基含有芳香族化合物を反応させる方法により、上記式(1)中のnが0である化合物を製造することができる。また、無水トリメリット酸ハライドと、下記式(7-1)で表される水酸基含有芳香族化合物及び/又は下記式(7-2)で表される水酸基含有芳香族化合物を反応させた後、下記式(6)で表される芳香族ジアミンとを反応させる方法によっても、上記式(1)中のnが0である化合物を製造することができる。
【0027】
また、本発明のエステル化合物を多量化する場合、即ち、上記式(1)中のnが1以上である化合物を製造する方法としては、例えば、以下の方法等が挙げられる。
即ち、上記式(1)中のnが0である化合物を製造する方法において、上記式(7-1)で表される水酸基含有芳香族化合物及び/又は上記式(7-2)で表される水酸基含有芳香族化合物に加えて、下記式(8)で表される水酸基含有芳香族化合物を反応させる方法により、上記式(1)中のnが1以上である化合物を製造することができる。
【0028】
【0029】
式(6)中、R3は、上記式(1)中のR3と同じ基である。
【0030】
【0031】
式(7-1)中、R1は、上記式(1)中のR1と同じ基であり、式(7-2)中、R2は、上記式(1)中のR2と同じ基である。
【0032】
【0033】
式(8)中、Xは、上記式(1)中のXと同じ基である。
【0034】
上記式(6)で表される芳香族ジアミンとしては、例えば、2-メチル-4,6-ジエチル-1,3-フェニレンジアミン、2,4-ジエチル-6-メチル-1,3-フェニレンジアミン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,2-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)メタン、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3-ビス(2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、1,4-ビス(2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル)ベンゼン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシジフェニルメタン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル)プロパン、ビスアミノフェニルフルオレン、ビストルイジンフルオレン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノベンザミド)-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノベンザミド)-3,3’-ジヒドロキシビフェニル等が挙げられる。なかでも、溶解性、耐熱性、及び、入手性の観点から、2-メチル-4,6-ジエチル-1,3-フェニレンジアミン、2,4-ジエチル-6-メチル-1,3-フェニレンジアミン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルフォンが好ましく、2-メチル-4,6-ジエチル-1,3-フェニレンジアミン、2,4-ジエチル-6-メチル-1,3-フェニレンジアミン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼンがより好ましい。
【0035】
上記式(7-1)で表される水酸基含有芳香族化合物及び上記式(7-2)で表される水酸基含有芳香族化合物としては、例えば、フェノール、1-ナフトール、2-ナフトール、1-ヒドロキシアントラセン、2-ヒドロキシアントラセン、9-ヒドロキシアントラセン、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5-ジメチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、4-α-クミルフェノール、1-メチル-2-ナフトール、3-メチル-2-ナフトール、6-メチル-2-ナフトール、7-メチル-2-ナフトール、1-ブロモ-2-ナフトール、3-ブロモ-2-ナフトール、6-ブロモ-2-ナフトール、7-ブロモ-2-ナフトール、1-ニトロ-2-ナフトール、3-ニトロ-2-ナフトール、6-ニトロ-2-ナフトール、7-ニトロ-2-ナフトール、1-ヒドロキシピレン等が挙げられる。なかでも、誘電特性、入手性の観点から、2-ナフトールが好ましい。
【0036】
上記式(8)で表される水酸基含有芳香族化合物としては、例えば、1,2-ジヒドロキシベンゼン、1,3-ジヒドロキシベンゼン、1,4-ジヒドロキシベンゼン、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、1,8-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシアントラセン、9,10-ジヒドロキシアントラセン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル―4,4’-ジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1’-メチレンジ-2-ナフトール、1,1’-ビ-2-ナフトール等が挙げられる。
【0037】
硬化性樹脂と硬化剤とを含有する樹脂組成物であって、上記硬化剤は、本発明のエステル化合物を含む樹脂組成物もまた、本発明の1つである。
本発明のエステル化合物を含有することにより、本発明の樹脂組成物は、硬化物が耐熱性及び誘電特性に優れるものとなる。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、未硬化状態での加工性を向上させる等のために、本発明の目的を阻害しない範囲において、本発明のエステル化合物に加えて他の硬化剤を含有してもよい。
上記他の硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、チオール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、シアネート系硬化剤、本発明のエステル化合物以外の他の活性エステル系硬化剤等が挙げられる。なかでも、本発明のエステル化合物以外の他の活性エステル系硬化剤、シアネート系硬化剤が好ましい。
【0039】
上記硬化剤として、本発明のエステル化合物のみを用いる場合の本発明のエステル化合物の含有量は、硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が50重量部、好ましい上限が300重量部である。上記硬化剤として本発明のエステル化合物のみを用いる場合、本発明のエステル化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる樹脂組成物が、耐熱性及び誘電特性により優れるものとなる。上記硬化剤として本発明のエステル化合物のみを用いる場合の本発明のエステル化合物の含有量のより好ましい下限は70重量部、より好ましい上限は200重量部である。
また、上記硬化剤として、本発明のエステル化合物とその他の硬化剤を併用する場合の本発明のエステル化合物の含有量は、硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が5重量部、好ましい上限が200重量部である。上記硬化剤として本発明のエステル化合物とその他の硬化剤を併用する場合、本発明のエステル化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる樹脂組成物が、耐熱性及び誘電特性により優れるものとなる。上記硬化剤として本発明のエステル化合物とその他の硬化剤を併用する場合の本発明のエステル化合物の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は150重量部である。上記硬化剤として本発明のエステル化合物とその他の硬化剤を併用する場合の本発明のエステル化合物とその他の硬化剤との合計の含有量は、硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が20重量部、好ましい上限が200重量部である。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、マレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。なかでも、上記硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、マレイミド樹脂、及び、ベンゾオキサジン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。上記硬化性樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0041】
上記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アルキルポリオール型エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
【0042】
本発明の樹脂組成物は、硬化促進剤を含有することが好ましい。上記硬化促進剤を含有することにより、硬化時間を短縮させて生産性を向上させることができる。
【0043】
上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、3級アミン系硬化促進剤、ホスフィン系硬化促進剤、光塩基発生剤、スルホニウム塩系硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、貯蔵安定性及び硬化性の観点から、イミダゾール系硬化促進剤、ホスフィン系硬化促進剤が好ましい。
上記硬化促進剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0044】
上記硬化促進剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が5重量部である。上記硬化促進剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる樹脂組成物の接着性を悪化させることなく硬化時間を短縮させる効果により優れるものとなる。上記硬化促進剤の含有量のより好ましい下限は0.05重量部、より好ましい上限は3重量部である。
【0045】
本発明の樹脂組成物は、無機充填剤を含有することが好ましい。
上記無機充填剤を含有することにより、本発明の樹脂組成物は、優れた接着性及び長期耐熱性を維持したまま、吸湿リフロー耐性、めっき耐性、及び、加工性により優れるものとなる。
【0046】
上記無機充填剤は、シリカ及び硫酸バリウムの少なくともいずれかであることが好ましい。上記無機充填剤としてシリカ及び硫酸バリウムの少なくともいずれかを含有することにより、本発明の樹脂組成物は、吸湿リフロー耐性、めっき耐性、及び、加工性により優れるものとなる。
【0047】
上記シリカ及び上記硫酸バリウム以外のその他の無機充填剤としては、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、ガラスパウダー、ガラスフリット、ガラス繊維、カーボンファイバー、無機イオン交換体等が挙げられる。
【0048】
上記無機充填剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0049】
上記無機充填剤の平均粒子径の好ましい下限は50nm、好ましい上限は10μmである。上記無機充填剤の平均粒子径がこの範囲であることにより、得られる樹脂組成物が塗布性や加工性により優れるものとなる。上記無機充填剤の平均粒子径のより好ましい下限は100nm、より好ましい上限は5μmである。
【0050】
上記無機充填剤の含有量は、後述する溶媒を用いる場合は該溶媒を除く樹脂組成物の合計100重量部に対して、好ましい下限が10重量部、好ましい上限が1000重量部である。上記無機充填剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる樹脂組成物が吸湿リフロー耐性、めっき耐性、及び、加工性により優れるものとなる。上記無機充填剤の含有量のより好ましい下限は20重量部である。
【0051】
本発明の樹脂組成物は、被着体への短時間での塗れ性と形状保持性とを向上させる等の目的で流動調整剤を含有してもよい。
上記流動調整剤としては、例えば、アエロジル等のヒュームドシリカや層状ケイ酸塩等が挙げられる。
上記流動調整剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が組み合わせて用いられてもよい。
また、上記流動調整剤としては、平均粒子径が100nm未満のものが好適に用いられる。
【0052】
上記流動調整剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が100重量部である。上記流動調整剤の含有量がこの範囲であることにより、被着体への短時間での塗れ性と形状保持性とを向上させる等の効果により優れるものとなる。上記流動調整剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は50重量部である。
【0053】
本発明の樹脂組成物は、応力緩和、靭性付与等を目的として有機充填剤を含有してもよい。
上記有機充填剤としては、例えば、シリコーンゴム粒子、アクリルゴム粒子、ウレタンゴム粒子、ポリアミド粒子、ポリアミドイミド粒子、ポリイミド粒子、ベンゾグアナミン粒子、及び、これらのコアシェル粒子等が挙げられる。なかでも、ポリアミド粒子、ポリアミドイミド粒子、ポリイミド粒子が好ましい。
上記有機充填剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0054】
上記有機充填剤の含有量は、後述する溶媒を用いる場合は該溶媒を除く樹脂組成物の合計100重量部に対して、好ましい上限が300重量部である。上記有機充填剤の含有量がこの範囲であることにより、優れた接着性等を維持したまま、得られる樹脂組成物の硬化物が靭性等により優れるものとなる。上記有機充填剤の含有量のより好ましい上限は200重量部である。
【0055】
本発明の樹脂組成物は、難燃剤を含有してもよい。
上記難燃剤としては、例えば、ベーマイト型水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水和物、ハロゲン系化合物、りん系化合物、窒素化合物等が挙げられる。なかでも、ベーマイト型水酸化アルミニウムが好ましい。
上記難燃剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0056】
上記難燃剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が2重量部、好ましい上限が300重量部である。上記難燃剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる樹脂組成物が優れた接着性等を維持したまま、難燃性に優れるものとなる。上記難燃剤の含有量のより好ましい下限は5重量部、より好ましい上限は250重量部である。
【0057】
本発明の樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で熱可塑性樹脂を含有してもよい。上記熱可塑性樹脂を用いることにより、本発明の樹脂組成物は、流動特性により優れ、熱圧着時の充填性及び浸出防止性を両立することがより容易となり、かつ、硬化後の耐屈曲性により優れるものとなる。
【0058】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂等が挙げられる。なかでも、耐熱性や取り扱い性の点から、ポリイミド樹脂、フェノキシ樹脂が好ましい。
上記熱可塑性樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0059】
上記熱可塑性樹脂の数平均分子量の好ましい下限は2000、好ましい上限は10万である。上記熱可塑性樹脂の上記数平均分子量がこの範囲であることにより、得られる樹脂組成物が流動特性や硬化後の耐屈曲性により優れるものとなる。上記熱可塑性樹脂の数平均分子量のより好ましい下限は5000、より好ましい上限は5万である。
【0060】
上記熱可塑性樹脂の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限は0.5重量部、好ましい上限は120重量部である。上記熱可塑性樹脂の含有量が0.5重量部以上であることにより、得られる樹脂組成物が流動特性や硬化後の耐屈曲性により優れるものとなる。上記熱可塑性樹脂の含有量が120重量部以下であることにより、得られる樹脂組成物が接着性や耐熱性により優れるものとなる。上記熱可塑性樹脂の含有量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は80重量部である。
【0061】
本発明の樹脂組成物は、塗工性等の観点から溶媒を含有してもよい。
上記溶媒としては、塗工性や貯蔵安定性等の観点から、沸点が160℃以下の非極性溶媒又は沸点が160℃以下の非プロトン性極性溶媒が好ましい。
上記沸点が160℃以下の非極性溶媒又は沸点が160℃以下の非プロトン性極性溶媒としては、例えば、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、エーテル系溶媒、含窒素系溶媒等が挙げられる。
上記ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
上記エステル系溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル等が挙げられる。
上記炭化水素系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノルマルヘプタン等が挙げられる。
上記ハロゲン系溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン等が挙げられる。
上記エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン等が挙げられる。
上記含窒素系溶媒としては、例えば、アセトニトリル等が挙げられる。
なかでも、取り扱い性や上記硬化剤の溶解性等の観点から、沸点が60℃以上のケトン系溶媒、沸点が60℃以上のエステル系溶媒、及び、沸点が60℃以上のエーテル系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。このような溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸イソブチル、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
なお、上記「沸点」は、101kPaの条件で測定される値、又は、沸点換算図表等で101kPaに換算された値を意味する。
【0062】
本発明の樹脂組成物100重量部中における上記溶媒の含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は80重量部である。上記溶媒の含有量がこの範囲であることにより、本発明の樹脂組成物は、塗工性等により優れるものとなる。上記溶媒の含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は70重量部である。
【0063】
本発明の樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で反応性希釈剤を含有してもよい。
上記反応性希釈剤としては、接着信頼性の観点から、1分子中に2つ以上の反応性官能基を有する反応性希釈剤が好ましい。
【0064】
本発明の樹脂組成物は、更に、カップリング剤、分散剤、貯蔵安定化剤、ブリード防止剤、フラックス剤、レベリング剤等の添加剤を含有してもよい。
【0065】
本発明の樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、混合機を用いて、硬化性樹脂と、本発明のエステル化合物と、必要に応じて添加する溶媒等とを混合する方法等が挙げられる。
上記混合機としては、例えば、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等が挙げられる。
【0066】
本発明の樹脂組成物を基材フィルム上に塗工し、乾燥させることにより、本発明の樹脂組成物からなる樹脂組成物フィルムを得ることができ、該樹脂組成物フィルムを硬化させて硬化物を得ることができる。本発明の樹脂組成物の硬化物もまた、本発明の1つである。
【0067】
本発明の樹脂組成物は、硬化物のガラス転移温度の好ましい下限が100℃、好ましい上限が250℃である。上記硬化物のガラス転移温度がこの範囲であることにより、本発明の樹脂組成物は、硬化物が機械的強度及び長期耐熱性により優れるものとなる。上記硬化物のガラス転移温度のより好ましい下限は130℃、より好ましい上限は220℃である。
なお、本明細書において上記「硬化物のガラス転移温度」は、動的粘弾性測定装置を用い、昇温速度10℃/分、周波数10Hz、チャック間距離24mmで-0℃から300℃までの昇温条件で測定した際に得られるtanδカーブのピーク温度として求めることができる。上記動的粘弾性測定装置としては、例えば、レオバイブロン動的粘弾性自動測定器DDV-GPシリーズ(エー・アンド・デイ社製)等が挙げられる。上記ガラス転移温度を測定する硬化物は、厚さを約400μmとした上記樹脂組成物フィルムを190℃で30分加熱することにより得ることができる。
【0068】
上記硬化性樹脂としてビフェニル型エポキシ樹脂を含有する場合、本発明の樹脂組成物は、硬化物の40℃から120℃までの温度範囲における線膨張係数の好ましい下限が5ppm/℃、好ましい上限が100ppm/℃である。本発明の樹脂組成物は、硬化物が耐熱性により優れるものとなる。上記線膨張係数のより好ましい下限は10ppm/℃、より好ましい上限は80ppm/℃である。
なお、本明細書において上記「線膨張係数」は、TMA法により昇温速度10℃/分、力50Nの条件で測定される値を示す。また、上記線膨張係数の測定に用いる硬化物は、例えば、厚さを約40μmとした上記樹脂組成物フィルムを190℃で30分加熱することにより得ることができる。
【0069】
上記硬化性樹脂としてビフェニル型エポキシ樹脂を含有する場合、本発明の樹脂組成物は、硬化物の23℃における誘電正接の好ましい上限が15である。上記硬化物の23℃における誘電正接が15以下であることにより、本発明の樹脂組成物は、多層プリント配線板等の層間絶縁材料に好適に用いることができる。上記硬化物の23℃における誘電正接のより好ましい上限は10である。
なお、上記「誘電正接」は、誘電率測定装置及びネットワークアナライザーを用いて5GHzの条件で測定される値である。なお、上記「誘電正接」を測定する硬化物は、厚さを約40μmから約200μmとした上記樹脂組成物フィルムを190℃で90分間加熱することにより得ることができる。
【0070】
本発明の樹脂組成物は、広い用途に用いることができるが、特に高い耐熱性が求められている電子材料用途に好適に用いることができる。例えば、航空、車載用電気制御ユニット(ECU)用途や、SiC、GaNを用いたパワーデバイス用途におけるダイアタッチ剤等に用いることができる。また、例えば、パワーオーバーレイパッケージ用接着剤、プリント配線基板用接着剤、フレキシブルプリント回路基板のカバーレイ用接着剤、銅張積層板、半導体接合用接着剤、層間絶縁材料、プリプレグ、LED用封止剤、構造材料用接着剤等にも用いることができる。
なかでも、本発明の樹脂組成物は、硬化物が低誘電率、低誘電正接であり、誘電特性に優れるため、ビルドアップフィルムに好適に用いることができる。本発明の樹脂組成物を用いてなるビルドアップフィルムもまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0071】
本発明によれば、硬化後の耐熱性及び誘電特性に優れる樹脂組成物に用いることができるエステル化合物を提供することができる。また、本発明によれば、該エステル化合物を含有する樹脂組成物、該樹脂組成物の硬化物、及び、該樹脂組成物を用いてなるビルドアップフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0073】
(合成例1(エステル化合物Aの作製))
攪拌器、還流冷却器、ディーンスタークの水分離器を備えた容器を用いて、無水トリメリット酸クロリド21.1重量部をN-メチル-2-ピロリドン200重量部に溶解させた。得られた溶液に2-ナフトール14.4重量部を添加し、更にトリエチルアミン10.1重量部を添加し、25℃で4時間撹拌して反応させた。
得られた反応液に、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン14.6重量部を添加し、25℃で4時間撹拌して反応させた。得られた溶液に、トルエン200重量部を添加した後、150℃で水が発生しなくなるまで、4時間還流を行った。反応終了後、得られた溶液から、エバポレーターを用いてトルエンを除去した溶液を純水800重量部に適下し、析出物を濾別した後、真空乾燥を行いエステル化合物Aを得た。
なお、1H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、エステル化合物Aは、上記式(1)で表されることを確認した(R1、R2は上記式(2)で表される基(R4は全て水素原子)、R3は上記式(3-2)で表される基(R6は全て水素原子)、nは0)。
【0074】
(合成例2(エステル化合物Bの作製))
2-ナフトール14.4重量部をフェノール9.4重量部に変更したこと以外は合成例1と同様にして、エステル化合物Bを得た。
なお、1H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、エステル化合物Bは、上記式(1)で表されることを確認した(R1、R2はフェニル基、R3は上記式(3-2)で表される基(R6は全て水素原子)、nは0)。
【0075】
(合成例3(エステル化合物Cの作製))
1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン14.6重量部を2-メチル-4,6-ジエチル-1,3-フェニレンジアミンと2,4-ジエチル-6-メチル-1,3-フェニレンジアミンとの混合物(三井化学ファイン社製、「エタキュア100」)8.9重量部に変更したこと以外は合成例1と同様にして、エステル化合物Cを得た。
なお、1H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、エステル化合物Cは、上記式(1)で表されることを確認した(R1、R2は上記式(2)で表される基(R4は全て水素原子)、R3は上記式(4-1)、(4-2)で表される基、nは0)。
【0076】
(合成例4(エステル化合物Dの作製))
1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン14.6重量部を4,4’-ジアミノジフェニルメタン9.9重量部に変更したこと以外は合成例1と同様にして、エステル化合物Dを得た。
なお、1H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、エステル化合物Dは、上記式(1)で表されることを確認した(R1、R2は上記式(2)で表される基(R4は全て水素原子)、R3は上記式(3-3)で表される基(R7は全て水素原子、R8は全て水素原子)、nは0)。
【0077】
(合成例5(エステル化合物Eの作製))
1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン14.6重量部をビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン21.6重量部に変更したこと以外は合成例1と同様にして、エステル化合物Eを得た。
なお、1H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、エステル化合物Eは、上記式(1)で表されることを確認した(R1、R2は上記式(2)で表される基(R4は全て水素原子)、R3は上記式(3-4)で表される基(R9は全て水素原子)、nは0)。
【0078】
(合成例6(エステル化合物Fの作製))
攪拌器、還流冷却器、ディーンスタークの水分離器を備えた容器を用いて、無水トリメリット酸クロリド21.1重量部、2-ナフトール7.2重量部、及び、1,3-ジヒドロキシベンゼン2.8重量部をN-メチル-2-ピロリドン130重量部に溶解させた。得られた溶液にトリエチルアミン11.1重量部を添加し、25℃で2時間撹拌して反応させた。
得られた反応液に、2-メチル-4,6-ジエチル-1,3-フェニレンジアミンと2,4-ジエチル-6-メチル-1,3-フェニレンジアミンとの混合物(三井化学ファイン社製、「エタキュア100」)8.9重量部を添加し、25℃で2時間撹拌して反応させた。得られた溶液に、トルエン50重量部を添加した後、170℃で水が発生しなくなるまで、一晩還流を行った。反応終了後、メタノール800重量部に適下し、析出物を濾別した後、真空乾燥を行いエステル化合物Fを得た。
なお、1H-NMR、及び、GPCにより、エステル化合物Fは、上記式(1)で表されることを確認した(R1、R2は上記式(2)で表される基(R4は全て水素原子)、R3は上記式(4-1)、(4-2)で表される基、Xは1,3-フェニレン基、nは、0以上10以下)。また、GPCの結果より求めたエステル化合物Fの数平均分子量は1784であった。
【0079】
(合成例7(エステル化合物Gの作製))
1,3-ジヒドロキシベンゼン2.8重量部を4,4’-ジヒドロキシビフェニル4.7重量部に変更したこと以外は合成例6と同様にして、エステル化合物Gを得た。
なお、1H-NMR、及び、GPCにより、エステル化合物Gは、上記式(1)で表されることを確認した(R1、R2は上記式(2)で表される基(R4は全て水素原子)、R3は上記式(4-1)、(4-2)で表される基、Xは上記式(5-1)で表される基(R10は全て水素原子)、nは、0以上10以下)。また、GPCの結果より求めたエステル化合物Gの数平均分子量は2175であった。
【0080】
(合成例8(エステル化合物Hの作製))
1,3-ジヒドロキシベンゼン2.8重量部を1,1’-メチレンジ-2-ナフトール7.5重量部に変更したこと以外は合成例6と同様にして、エステル化合物Hを得た。
なお、1H-NMR、及び、GPCにより、エステル化合物Hは、上記式(1)で表されることを確認した(R1、R2は上記式(2)で表される基(R4は全て水素原子)、R3は上記式(4-1)、(4-2)で表される基、Xは上記式(5-2)で表される基(R11は全て水素原子、nは、0以上10以下))。また、GPCの結果より求めたエステル化合物Hの数平均分子量は1687であった。
【0081】
(合成例9(エステル化合物Iの作製))
攪拌器、還流冷却器、ディーンスタークの水分離器を備えた容器を用いて、3-アミノフェノール21.8重量部をN-メチル-2-ピロリドン100重量部に溶解させた。得られた溶液に2,2-ビス(4-(2,3-ジカルボキシルフェノキシ)フェニル)プロパン52.0重量部を添加し、25℃で4時間撹拌して反応させた。得られた溶液に、トルエン100重量部を添加した後、150℃で水が発生しなくなるまで、4時間還流を行った。反応終了後、得られた溶液から、エバポレーターを用いてトルエンを除去した溶液を純水800重量部に適下し、析出物を濾別した。
更に得られた析出物70.3重量部とトリエチルアミン20.2重量部をN-メチル-2-ピロリドン200重量部に溶解させた。得られた溶液に塩化ベンゾイル28.1重量部を添加し、25℃で4時間撹拌して反応させた。反応終了後、得られた溶液を純水800重量部に適下し、析出物を濾別した後、真空乾燥を行いエステル化合物Iを得た。
なお、1H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、エステル化合物Iは、上記式(1)で表されないことを確認した。
【0082】
(実施例1~8、比較例1、2)
表1に記載された配合比の各材料に溶媒としてメチルエチルケトンを加え、撹拌機を用いて1200rpmで4時間撹拌し、樹脂組成物を得た。なお、表1の組成には、溶媒を除く固形分について記載した。
アプリケーターを用いて、得られた樹脂組成物を厚み25μmのPETフィルムの離型処理面上に塗工した。PETフィルムとしては、XG284(東レ社製)を用いた。その後、100℃のギアオーブン内で5分間乾燥し、溶媒を揮発させることにより、PETフィルムと、該PETフィルム上に厚さが40μmの樹脂組成物層とを有する未硬化積層フィルムを得た。
【0083】
<評価>
実施例及び比較例で得られた各未硬化積層フィルムについて以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0084】
(線膨張係数)
実施例及び比較例で得られた各未硬化積層フィルムを190℃で90分間加熱した後、基材PETフィルムを剥離し、硬化物を得た。得られた硬化物について、TMA装置を用い、昇温速度10℃/分、力50Nの条件で25℃から150℃までの温度範囲における線膨張係数を測定した。TMA装置としては、TMA7100(日立ハイテクサイエンス社製)を用いた。
【0085】
(誘電正接)
実施例及び比較例で得られた各未硬化積層フィルムを190℃で90分間加熱した後、基材PETフィルムを剥離し、硬化物を得た。得られた硬化物を幅2mm、長さ100mmの大きさに裁断した。裁断された硬化物について、空洞共振摂動法誘電率測定装置及びネットワークアナライザーを用いて、空洞共振法で23℃、周波数5GHzの条件にて誘電正接を測定した。空洞共振摂動法誘電率測定装置としては、CP521(関東電子応用開発社製)を用い、ネットワークアナライザーとしては、N5224A PNA(キーサイトテクノロジー社製)を用いた。
【0086】
(最大破断点伸度)
実施例及び比較例で得られた各未硬化積層フィルムを200℃で3時間加熱した後、基材PETフィルムを剥離し、硬化物を得た。得られた硬化物を幅10mm、長さ100mmの大きさに裁断した。裁断された硬化物について、引張試験機を用いて、チャック間距離60mm、引張速度5mm/分、初期張力0.35Nの条件にて最大破断点伸度を測定した。引張試験機としては、UCT-500(ORIENTEC社製)を用いた。
【0087】
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明によれば、硬化後の耐熱性及び誘電特性に優れる樹脂組成物に用いることができるエステル化合物を提供することができる。また、本発明によれば、該エステル化合物を含有する樹脂組成物、該樹脂組成物の硬化物、及び、該樹脂組成物を用いてなるビルドアップフィルムを提供することができる。