(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086785
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】生物学的製剤の粒子媒介送達
(51)【国際特許分類】
A61K 35/12 20150101AFI20240621BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240621BHJP
A61K 9/50 20060101ALI20240621BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240621BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240621BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240621BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240621BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240621BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240621BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20240621BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20240621BHJP
C07K 14/78 20060101ALN20240621BHJP
【FI】
A61K35/12
A61K31/7088
A61K9/50
A61K47/36
A61K47/42
A61P9/10
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 Y
A61K38/17
C12N15/113 Z ZNA
C07K16/18
C12N5/071
C07K14/78
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024060735
(22)【出願日】2024-04-04
(62)【分割の表示】P 2022123472の分割
【原出願日】2017-11-22
(31)【優先権主張番号】62/426,090
(32)【優先日】2016-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501083115
【氏名又は名称】メイヨ・ファウンデーション・フォー・メディカル・エデュケーション・アンド・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】アッタ ベーファー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ タージック
(57)【要約】
【課題】本開示は、修飾されたRNA分子が細胞内に存在する時間の長さを増加させるRNA分子に対する修飾を記載する。
【解決手段】対象に生物学的製剤を送達するための組成物は全般に、粒子状基質と、粒子状基質によって封入されたmRNAを含む。場合によっては、mRNAは粒子状基質に間接的に結合しうる。mRNAは少なくとも1つの治療用ポリペプチドをコードする。この組成物は対象の組織に送達されてその組織に治療効果をもたらすことができる。
【選択図】
図26
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチドの発現を減少させる能力を有する抑制性RNAを封入するアルギン酸ゲルを含む二相粒子を含む、組成物であって、そのポリペプチドは、エオタキシン-3、カテプシン-S、DK-1、フォリスタチン、ST-2、GRO-α、IL-21、NOV、トランスフェリン、TIMP-2、TNFαRI、TNFαRII、アンジオスタチン、CCL25、ANGPTL4、又はMMP-3である、組成物。
【請求項2】
動脈投与のために製剤化される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アルギン酸ゲルがカルシウム塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記アルギン酸ゲルが、2:1~10:1でありうるアルギネート対カルシウム塩の比を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記粒子が、直径5μm~10μmである、請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記粒子が、直径0.3μm~10μmである、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記二相粒子が偏極粒子である、請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記二相粒子が尾部を含む、請求項1~7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物を経皮的冠動脈インターベンションの間に投与する、請求項1~8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記粒子が足場タンパク質をさらに含む、請求項1~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記足場タンパク質が、コラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、コラーゲンIV、フィブリン、及びゼラチンからなる群より選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記粒子がポリペプチドをさらに封入する、請求項1~11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリペプチドが、腫瘍壊死因子活性の効果をなくす能力を有する抗体、ミトコンドリア複合体-1活性の効果をなくす能力を有する抗体、又はレゾルビン-D1アゴニストである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記粒子がリポ多糖をさらに封入する、請求項1~13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
前記粒子が微小胞及び/又はエキソソームをさらに封入する、請求項1~14のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年11月23日に出願された米国仮特許出願第62/426,090号に基づく優先権を主張し、その内容を参照によりその全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
心臓発作は心筋梗塞とも呼ばれ、心筋の一部が十分な血流を受けない場合に起こる。血流を回復させるのに治療なしで経過する時間が長いほど、心筋に対する損傷は大きくなる。毎年、約735,000人のアメリカ人が心臓発作を起こし、これには、最初の心臓発作を既に起こしたことがある人に起こる約210,000件の心臓発作が含まれる(Mozaffarian et al., Circulation, 131(4):e29-322 (2015))。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、修飾されたRNA分子が細胞内に存在する時間の長さを増加させるRNA分子に対する修飾を記載する。
【0004】
本開示はさらに、組織(例えば心臓組織)への1つ又は複数の生物学的製剤(例えば、RNA、修飾RNA、及び/又は微小胞)の粒子媒介送達のための材料及び方法を提供する。微小胞は、製造された粒子又はエキソソームなどの天然に存在する構造体を意味しうる。例えば、この明細書は、心機能を改善するために1つ又は複数のRNAを心臓組織に送達するための粒子(例えばアルギン酸ゲル)を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で示されるように、アルギン酸ゲルを使用して、mRNAが機能性ポリペプチドに翻訳されうる心臓組織にmRNAを送達することができる。RNAの粒子媒介送達は、強力(robust)で持続可能なRNA発現を誘導しうる。場合によっては、粒子は、1つ又は複数の封入された分子(例えば生物学的製剤)の時間的及び/又は空間的送達を制御するように使用、設計することができる。
【0006】
したがって、1つの態様では、本開示は、粒子状基質と、粒子状基質に結合したmRNAとを一般に含む組成物を記載する。mRNAは、mRNAが細胞のサイトゾル内にあるときにmRNAの分解を阻害するための少なくとも1つの修飾を含む。mRNAは少なくとも1つの治療用ポリペプチドもコードする。いくつかの実施形態では、mRNA修飾は、シュードノット、RNA安定性要素、又は人工3’ステムループを含む。いくつかの実施形態では、粒子状基質はその表面の化学修飾を含むことができる。さまざまな実施形態では、粒子状基質は、ナノ粒子、複数のナノ粒子、又は微粒子を含むことができる。いくつかの実施形態では、治療用ポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖又は免疫グロブリン軽鎖を含むことができる。
【0007】
全体として、この明細書の1つの態様は、心機能を改善するための方法を特徴とする。その方法は、哺乳動物に心機能及び/又は組織を再生するのに有用なポリペプチドをコードするmRNAを封入する粒子を投与し、それによって哺乳動物の心機能を改善することを含むか、又はそれから本質的になる。ポリペプチドは、NAP-2、TGF-a、ErBb3、VEGF、IGF-1、FGF-2、PDGF、IL-2、CD19、CD20、及び/又はCD80/86でありうる。哺乳動物はヒトでありうる。ヒトは、ST上昇型心筋梗塞に対する経皮的冠動脈インターベンションを受けたことがある可能性がある。投与は動脈投与でありうる。粒子はアルギネートを含みうる。アルギネートはアルギン酸ゲルの形態でありうる。アルギン酸ゲルはカルシウム塩を含みうる。カルシウム塩を含むアルギン酸ゲルは、アルギネート対カルシウム塩の比が約2:1~約10:1でありうる。粒子は、直径約5μm~約10μmでありうる。粒子は二相粒子でありうる。二相粒子は偏極粒子でありうる。二相粒子は尾部を有することができる。その方法は、経皮的冠動脈インターベンションの間に組成物を投与することを含みうる。粒子は、足場タンパク質(例えば、コラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、コラーゲンIV、フィブリン、及び/又はゼラチン)を含みうる。粒子は、ポリペプチド(例えば、腫瘍壊死因子活性の効果をなくす能力を有する抗体、ミトコンドリア複合体-1活性の効果をなくす能力を有する抗体、又はレゾルビン-D1アゴニスト)を封入することができる。粒子はリポ多糖を封入することができる。粒子は、微小胞及び/又はエキソソームを封入することができる。
【0008】
別の態様では、この明細書は哺乳動物における心機能を改善するための方法を特徴とする。その方法は、哺乳動物に、エオタキシン-3、カテプシン-S、DK-1、フォリスタチン、ST-2、GRO-a、IL-21、NOV、トランスフェリン、TIMP-2、TNFaRI、TNFaRII、アンジオスタチン、CCL25、ANGPTL4、及びMMP-3からなる群より選択されるポリペプチドの発現を減少させる能力を有する抑制性RNAを封入する粒子を投与し、それによって哺乳動物の心機能を改善することを含むか、又はそれから本質的になる。哺乳動物はヒトでありうる。ヒトは、ST上昇型心筋梗塞に対する経皮的冠動脈インターベンションを受けたことがある可能性がある。投与は動脈投与でありうる。粒子はアルギネートを含みうる。アルギネートはアルギン酸ゲルの形態でありうる。アルギン酸ゲルはカルシウム塩を含みうる。カルシウム塩を含むアルギン酸ゲルは、アルギネート対カルシウム塩の比が約2:1~約10:1でありうる。粒子は、直径約5μm~約10μmでありうる。粒子は二相粒子でありうる。二相粒子は偏極粒子でありうる。二相粒子は尾部を含むことができる。その方法は、経皮的冠動脈インターベンションの間に組成物を投与することを含みうる。粒子は、足場タンパク質(例えば、コラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、コラーゲンIV、フィブリン、及び/又はゼラチン)を含みうる。粒子は、ポリペプチド(例えば、腫瘍壊死因子活性の効果をなくす能力を有する抗体、ミトコンドリア複合体-1活性の効果をなくす能力を有する抗体、又はレゾルビン-D1アゴニスト)を封入することができる。粒子はリポ多糖を封入することができる。粒子は、微小胞及び/又はエキソソームを封入することができる。
【0009】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。方法及び材料は、本開示での使用のために本明細書に記載されており、当該技術分野で公知の他の好適な方法及び材料もまた使用することができる。材料、方法、及び例は例示的なものにすぎず、限定的であることを意図しない。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリー、及び他の参考文献は、その全体が参考により援用される。矛盾がある場合は、定義を含む本明細書が優先することになる。
【0010】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の明細書に記載されている。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、明細書及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】二相粒子を作製する例示的な方法の概略図。(A)水性成分と油性成分などの2つの別々の軟質液体コアが安定化され、次に単一のヤヌス粒子に合体される安定剤技術の方法。(B)2つのポリマー流が合体して単一の粒子を形成し、冷却されてヤヌス粒子の2つの半球を形成する溶融結合及び融合方法。(C)マイクロ流体チャネル内の制御された液体流を使用して液滴を形成し、その液滴が固化されてヤヌス粒子が形成されるマイクロ流体ディクス法。
【
図2】二相粒子を用いた例示的な送達方法の概略図。(A)相異なる体積百分率又は密度を持つヤヌス粒子は、血流内で粒子を方向づけ、生物学的製剤を送達に適した方向に向けうる。(B)コーティングを有するヤヌス粒子は、放出速度を制御し、且つ/又は方向づけをする能力(orienting capability)を増強することができる。(C)尾部を有するヤヌス粒子(上部)、異なる溶解度を有するヤヌス粒子(中間)、及び/又はヤヌス粒子の両端にマイクロカプセルの特異の位置決め(differential positioning)を有するヤヌス粒子(下部)は、方向づけのある誘導(orienting guidance)を粒子にもたらすことができる。
【
図3】ヒト皮膚線維芽細胞(上2列)及びヒト心臓線維芽細胞(下2列)におけるmCherryトランスフェクションを示す蛍光(第1及び第3列)及び光位相(light phase)(第2及び第4列)顕微鏡画像。
【
図4】HEK293細胞におけるEGFPとmCherryの同時トランスフェクションを示す蛍光顕微鏡画像。
【
図5】HL-1心筋細胞におけるmCherryのトランスフェクションを示す蛍光(上列)及び光位相(light phase)(下列)顕微鏡画像。
【
図6】マウスモデルにおけるmRNAの粒子媒介送達を示すデータ。(A)対照溶液(CTL)のハイドロダイナミック尾静脈注射。(B)ルシフェラーゼmRNAを含有するリポソームのハイドロダイナミック尾静脈注射。(C)対照溶液(CTL)の皮下注射。(D)ルシフェラーゼmRNAの皮下注射。(E)(A)及び(B)においてマウスによって発現されたルシフェラーゼの量を示す棒グラフ。(F)(C)及び(D)においてマウスによって発現されたルシフェラーゼの量を示す棒グラフ。
【
図7】対照溶液(溶媒のみ、上列)又はmCherry RNAを含有するリポソーム(下列)の皮下注射を受けたマウスにおけるmCherry発現を示す顕微鏡画像。
【
図8】マウスモデルにおけるmRNAの粒子媒介送達を示すデータ。(A)エコー誘導心臓内注射により、対照溶液又はルシフェラーゼmRNAを含有するリポソームを注射したマウスの写真。(B)(A)のマウスによって発現されたルシフェラーゼの量を示す棒グラフ。
【
図9】開胸心内注射によって、対照溶液又はルシフェラーゼmRNAを含有するリポソームを注射したマウスの心臓の写真。
【
図10】アルギン酸ゲル-mCherryレポーター系を注射したブタの心臓の断面の写真。
【
図11】アルギン酸ゲル量を減らして注射したブタの心臓の蛍光画像。
【
図12】さまざまなアルギネート/カルシウム濃度を注射したブタの心臓の蛍光画像。
【
図13】mCherry mRNAを含有するアルギネート球の投与後の蛍光画像。
【
図14】マイクロスパイラル設計とサイドホールを特徴とする、組織への効率的な生物学的製剤送達のための針の設計。
【
図15】DNA組み込みなしでの生体内持続的遺伝子発現のための5’CAP及びポリ(A)尾部を修飾するいくつかのRNA設計。(A)天然mRNA。(B)ポリ(A)尾部の末端に保護ループを付加するループ工学的に修飾されたmRNA。(C)分解をさらに制限するための、ループポリ(A)尾部と5’7-メチルグアノシンキャップの修飾。
【
図16】mCherryをコードするM
2RNAを用いたHEK細胞のトランスフェクションは、6日間の観察期間にわたって持続する迅速な遺伝子誘導をもたらす。
【
図17】M
3RNAの持続的発現を示すデータ。(A)M
3RNAは初代培養心筋細胞においてmCherryを誘導する。6日間の観察期間にわたるmCherry発現の時間的可視化は、定量された発現の持続を示す。(C)フローサイトメトリー評価は、培養心筋細胞の誘導において43%の効率を明らかにする。
【
図18】初代ヒト骨格筋培養系。ドナー試料に由来。P3筋芽細胞のマスターセルバンクは、定義されたゼノフリー増殖培地内で作られる。分化環境内では、MyoD
+細胞を誘導してアクチニン陽性筋管に分化させることができる。
【
図19】単一封入系内のM
3RNA媒介二重遺伝子発現。初代培養骨格筋細胞内での4時間以内のGFP及びmCherryの両方の誘導及び24時間の観察期間にわたる持続的発現。
【
図20】Fluc M
3RNAの生体内送達は、幅広い種類の組織におけるこのプラットフォームの適合性を示す。反対側の眼が疑似対照としての役割を果たす眼を除いて、疑似対照を各例に対して用意する。
【
図21】72時間の観察期間にわたる直接心筋注射を介したM
3RNAの送達後のFluc発現の定量。
【
図22】直接心筋注射によるM
3RNAプラットフォームを用いた3つの遺伝子の同時送達の証拠。
【
図23】M
3RNA-Igプラットフォーム確立のためのベクター設計戦略。
【
図24】IRES配列の使用はCAP/PABP依存の系の必要性を排除する。
【
図25】mRNA分解の速度を減少させるための3’戦略は、3つの推定プラットフォームに重点をおく。シュードノットは、UPF1分子をノックオフするリボソームリードスルーを媒介する。RNA安定性要素は、UPF1と3’UTRとの接触を遮断してNMDの活性化を回避するためのおとりとして作用する。ポリ(A)尾部ステムループ構造は、CAP/PABP非依存性IRESプラットフォームが使用される構築物のエキソソーム媒介mRNA分解を減少させるために使用される。
【
図26】M
2RNAと、PEG及びキトサンでコーティングされた微粒子との組み合わせは、骨格筋における遺伝子送達に最適化された推定M
3RNA-Igプラットフォームをもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、組織(例えば心臓組織)への生物学的製剤(例えばRNA及び/又は微小胞)の粒子媒介送達のための材料及び方法に関する。本開示はさらに、修飾mRNA分子が細胞内に存在する時間の長さを増加させ、したがって、修飾mRNA分子が翻訳されて修飾mRNAによってコードされるポリペプチドを産生できる時間の長さを増加させる、RNAの修飾を記載する。
【0013】
本開示は、哺乳動物への1つ又は複数の生物学的製剤(例えばRNA及び/又は微小胞)の粒子媒介送達のための材料及び方法を提供する。例えば、本明細書に記載の粒子(例えばアルギン酸ゲル)を使用してRNAを封入し、時間的に及び/又は空間的に特異的な方法で封入されたRNAを組織に送達することができる。本明細書で使用される場合、「封入する」という用語及びその変形は、生物学的製剤が粒子内に収容されるか、又は直接的又は間接的に粒子の外面に結合される任意の方法を指すのに広く使用される。以下でより詳細に説明されるように、粒子は、大きさでいうと、ナノ粒子又はマイクロ粒子でありうる。したがって、「封入する」という用語は、粒子が封入される材料を完全に取り囲むことを含むが、それを必要としない。むしろ、単に粒子の寸法内で少しでも捕捉されていれば、材料は封入されており、いずれの表面修飾も包含する。粒子の表面修飾は、封入された材料の粒子への間接的な結合を容易にすることができる。くわえて、マクロカプセル化(macroencapsulation)を用いて、直接注射又は血管を通して標的組織に生物学的製剤を伝達するための保護媒体を提供することによって生物学的製剤を送達することができる。
【0014】
場合によっては、1つ又は複数の生物学的製剤(例えば、RNA及び/又は微小胞)を含有する1つ又は複数の粒子(例えばアルギン酸ゲル)を使用して、主要有害心イベント(例えば急性心筋梗塞)を経験する哺乳動物及び/又は主要有害心イベントを経験するリスクがある哺乳動物(例えば、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)に対する経皮内インターベンション(percutaneous intra intervention)(PCI)を受けた患者)を治療することができる。
【0015】
場合によっては、心機能を改善するために、1つ又は複数の生物学的製剤(例えば、RNA又は微小胞)を含有する1つ又は複数の粒子(例えば、アルギン酸ゲル)を使用することができる。
【0016】
場合によっては、本明細書に記載の粒子(例えばアルギン酸ゲル)は、その内部にmRNAを保ち、mRNAが機能性タンパク質として発現される組織(例えば心臓組織)にmRNAを放出(例えば送達)することができる。例えば、1つ又は複数のmRNAを含有する1つ又は複数の粒子を使用して、心機能及び/又は組織を再生するのに有用なポリペプチド(例えば、POUホメオドメインタンパク質(Oct-4など)、NK2ホメオボックスタンパク質(例えばNKX2タンパク質)、筋細胞増強因子(myocyte enhancing factor)(例えばMEF2)、GATA結合タンパク質(例えばGATA1、GATA2、GATA3、GATA4、GATA5、及びGATA6)、T-box転写因子(例えば、TBX1、TBX2、TBX3、TBX4、TBX5、TBX6、TBX10、TBX15、TBX18、TBX19、TBX20、TBX21、及びTBX22)、背側中胚葉タンパク質(mesoderm posterior proteins)(例えば、MESP1及びMESP2)、好中球活性化タンパク質(例えばNAP-2及びNAP-3)、トランスフォーミング増殖因子(例えばTGF-α及びTGF-β)、赤芽球性白血病ウイルスがん遺伝子-3(ErBb3)、血管内皮成長因子(VEGF)、インスリン様成長因子1(IGF-1)、線維芽細胞増殖因子(FGF-2)、血小板由来成長因子s(例えば、PDGFA、PDGFB、PDGFC、及びPDGFD)、インターロイキン-2(IL-2)、CD19、CD20、並びにCD80/86)の発現を増加させることができる。
【0017】
場合によっては、本明細書に記載の粒子(例えばアルギン酸ゲル)は、その内部に抑制性RNAを保ち、抑制性RNAがタンパク質の発現を阻害する又は減少させる組織(例えば心臓組織)に抑制性RNAを放出(例えば送達)することができる。例えば、1つ又は複数の抑制性RNAを含有する1つ又は複数の粒子を使用して、以下のポリペプチドの1つ又は複数の発現を減少させることができる。エオタキシン-3、カテプシン-S、Dickopf-1(DK-1)、フォリスタチン、suppression of tumorigenicity-2(ST-2)、GRO-α、インターロイキン‐21(IL-21)、過剰発現腎芽腫(NOV)、トランスフェリン、組織メタロプロテアーゼ阻害物質-2(TIMP-2)、腫瘍壊死因子受容体-1及び-2(TNFαRI及びII)、アンジオスタチン、ケモカインリガンド-25(CCL25)、アンジオポエチン様-4(ANGPTL4)、並びにマトリックスメタロプロテイナーゼ-3(MMP-3)。
【0018】
粒子
本明細書に記載の粒子は、哺乳動物への1つ又は複数の分子(例えば、RNA又は微小胞を含む生物学的製剤)の粒子媒介送達に使用することができる。場合によっては、1つ又は複数の生物学的製剤を封入するために使用できる粒子は、無毒性、生体適合性、非免疫原性、及び/又は生分解性である。
【0019】
本明細書に記載の1つ又は複数の生物学的製剤を封入するのに使用できる粒子は、1つ又は複数の多糖類を含むことができる。本明細書に記載のような1つ又は複数の分子(例えば生物学的製剤)を封入するのに使用できる粒子において使用できる多糖類の例としては、例えば、グルロネート、マンヌロネート、グルロネート-マンヌロネーブロック、及びそれらの組み合わせ、例えばアルギネートが挙げられる。場合によっては、本明細書に記載の1つ又は複数の生物学的製剤を封入するのに使用できる粒子はアルギネートを含むことができる。本明細書に記載のような1つ又は複数の生物学的製剤を封入するのに使用できる粒子中のアルギネートは、任意の適切な供給源(例えば、褐藻(Phaeophyceae)、紅藻(Rhodophyceae)、緑藻(Chlorophyceae)、マクロシスチス、及びラミナリアの属のものなどの海藻)、又はシュードモナス属及びアゾトバクター属のものなどの細菌)からのものであることができる。本明細書に記載されるような1つ又は複数の生物学的製剤を封入するのに使用できる粒子中のアルギネートは、アルギン酸塩(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、及び/若しくはアルギン酸カルシウム)又はアルギン酸であることができる。例えば、本明細書に記載のような1つ又は複数の生物学的製剤を封入するのに使用できる粒子中のアルギンネートは、アルギン酸ナトリウムであることができる。本明細書に記載のような1つ又は複数の生物学的製剤を封入するのに使用できる粒子中のアルギネートは、ゲル、液体、及び/又は粒子(例えばナノ粒子、ミクロ粒子、若しくはマクロ粒子)の形態であることができる。例えば、本明細書に記載のような1つ又は複数の生物学的製剤を封入するのに使用できる粒子中のアルギネートは、アルギン酸ゲルであることができる。場合によっては、本明細書に記載の粒子は、投与時に液体であることができ、投与部位及び/又は標的部位でゲルを形成することができる(例えば重合することができる)。アルギン酸ゲルは、カルシウム溶液(例えば、カルシウム塩溶液又は別の適切な正電荷を帯びたイオン溶液)を含むことができる。本明細書に記載されるような1つ又は複数の生物学的製剤を封入するのに使用できるアルギン酸ゲルを形成するためにカルシウム溶液に使用できるカルシウム塩の例としては、限定されないが、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、及び鉄をベースとする溶液が挙げられる。アルギネート対カルシウム塩の比は、本明細書に記載のように1つ又は複数の生物学的製剤を封入するのに使用できるアルギン酸ゲルの粘度を調節するために用いることができる。場合によっては、アルギネートの量は、カルシウム塩の量の約0.05パーセント~約1.0パーセントであることができる。場合によっては、アルギネート対カルシウム塩の比は、約2:1~約10:1(例えば、約2:1~約9:1、約2:1~約8:1、約2:1~約7:1、約2:1~約6:1、約2:1~約5:1、約3:1~約10:1、約4:1~約10:1、約5:1~約10:1、約6:1~約10:1、約7:1~約10:1、又は約8:1~約10:1)であることができる。適切なアルギネート/カルシウムの比の例としては、限定されないが、表1に記載のものが挙げられる。本明細書に記載の生物学的製剤(例えばmRNA)を封入するアルギン酸ゲルは、任意の適切な方法によって作製することができる。例えば、アルギン酸ゲルは、架橋剤として可溶性カルシウム塩溶液(例えば塩化カルシウム)を用いてアルギン酸塩(例えばアルギン酸ナトリウム)を加水分解することによって作製することができる。
【0020】
【0021】
本明細書に記載のような1つ又は複数の生物学的製剤を封入するのに使用できる粒子は、リポソーム、凝集体(例えばナノ凝集体)、カプセル(例えばナノカプセル)、スフェア(sphere)(例えばナノスフェア)、ポリマーソーム、又はミセルの形態であることができる。アルギン酸ゲルである、本明細書に記載のように1つ又は複数の生物学的製剤を封入するのに使用できる粒子は、重合されたスフェアの形態であることができる。場合によっては、本明細書に記載のように1つ又は複数の生物学的製剤を封入するのに使用できる粒子はリポソームであることができる。リポソームの例としては、限定されないが、多重層小胞体(MLV)、小さな一枚膜リポソーム小胞体(SUV)、大きな一枚膜小胞体(LUV)、巨大な一枚膜小胞体(GUV)、多胞小胞体(multivesicular vesicle)(MVV)、又はらせん状小胞体(cochleate vesicle)が挙げられる。リポソームは、リン脂質、コレステロール、リポタンパク質、脂肪、脂肪酸、ワックス、ステロール、モノグリセリド、ジグリセリド、及び/又はトリグリセリドから構成されうる。場合によっては、リポソームは、ホスファチジン酸(ホスファチジン酸(phosphatidate);PA)、ホスファチジルエタノールアミン(セファリン;PE)、ホスファチジルコリン(レシチン;PC)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスホイノシチド(例えばホスファチジルイノシトール(PI))、ホスファチジルイノシトールホスフェート(PIP)、ホスファチジルイノシトールビスホスフェート(PIP2)、及びホスファチジルイノシトールトリホスフェート(PIP3)、セラミドホスホリルコリン(スフィンゴミエリン;SPH)、セラミドホスホリルエタノールアミン(スフィンゴミエリン;Cer-PE)、セラミドフォスフォリルリピッド(ceramide phosphoryllipid)、又はそれらの任意の組み合わせなどのリン脂質からなる。適切なリポソームの例としては、限定されないが、表2に記載のものが挙げられる。本明細書に記載の生物学的製剤(例えばmRNA)を封入するリポソームは、任意の適切な方法によって作製することができる。例えば、リポソームは、リン脂質などの両親媒性脂質の分散液を水中で超音波処理することによって作製することができる。
【0022】
【0023】
本明細書に記載のように1つ又は複数の生物学的製剤を封入するのに使用できる粒子は、選択された送達方法に適した任意のサイズであることができる。本明細書に記載のように1つ又は複数の生物学的製剤を封入するのに使用できる粒子は、直径が(又は最長寸法を横切る寸法として)、約0.3μm~約12μm(例えば、0.5μm~約11.5μm、1μm~約11μm、2μm~約10.5μm、又は4μm~約10μm)であることができる。例えば、本明細書に記載のように1つ又は複数の生物学的製剤を封入するのに使用できる粒子は、直径が(又は最長寸法を横切る寸法として)、約4.5μm~約7.5μmであることができる。
【0024】
本明細書に記載の1つ又は複数の生物学的製剤を封入する粒子(例えばアルギン酸ゲル)はまた、所望の特性を達成するために1つ又は複数の追加の分子を含むことができる。場合によっては、本明細書に記載の1つ又は複数の生物学的製剤を封入する粒子は、1つ又は複数の足場タンパク質を含むことができる。足場タンパク質の例としては、例えば、マトリックスタンパク質(例えばコラーゲン(例えばコラーゲンI/II/III/IV))、基底膜タンパク質、構造タンパク質、ゼラチン、及び/又はフィブリン)が挙げられ、それらは粒子に組み込まれて徐放性をもたらすことができる。例えば、本明細書に記載の1つ又は複数の生物学的製剤を封入するアルギン酸ゲルは、アルギネートとゼラチン、アルギネートとコラーゲン、アルギネートとフィブリン、又はアルギネートと1つ又は複数の天然基底膜タンパク質とのその他の適切な組み合わせを含むことができる。場合によっては、刺激感受性分子を粒子に組み込んで、特定の刺激下で薬物放出特性を粒子にもたらすことができる(例えば、pH感受性粒子及び浸透圧/オスモル濃度感受性粒子)。例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)を粒子に組み込んで、生理学的pH(約pH7.4)で安定性を維持するが酸性条件下(例えば、約pH3.5~約pH9)で不安定になり、酸性環境での封入されたRNAの放出をもたらすpH感受性粒子を形成することができる。
【0025】
本明細書に記載の1つ又は複数の生物学的製剤を封入する粒子(例えばアルギン酸ゲル)は、2つ以上の異なる物理的状態を有する非晶質粒子であることができる。例えば、非晶質粒子を液体として投与し、標的組織に到達するとゲルを形成することができる。
【0026】
本明細書に記載の1つ又は複数の生物学的製剤を封入する粒子(例えばアルギン酸ゲル)は、粒子表面の異なる部分に生じる2つ以上の異なった物理的性質(例えば表面化学)を有する二相粒子(ときにヤヌス粒子と呼ばれる)であることができる。例えば、二相粒子は、粒子組成物の親水性/疎水性、極性形成、溶解性、体積百分率、又は密度、追加の分子(例えば持続放出を可能にする化合物)の有無及び/又は尾部の有無で異なる2つ以上の部分を有することができる。場合によっては、二相粒子は、親水性部分と疎水性部分を有する球形粒子であることができる。例えば、二相粒子は、親水性コア及び親水性コーティングを有するように設計することができる。例えば、二相粒子は、親水性コア及び親水性コーティングを有するように設計することができる。場合によっては、二相粒子は、密度の差(differential density)を有する球状粒子であることができる。例えば、二相粒子は、粒子の一端で、封入された生物学的製剤の体積百分率を増加させるように設計することができる。場合によっては、二相粒子は、コーティングを有する球状粒子であることができる。例えば、二相粒子は、多孔質コーティングを有するように設計することができる。場合によっては、二相粒子は、溶解度の差(differential solubility)を有する球状粒子であることができる。例えば、二相粒子は、ある特定の生理的条件で容易に溶解する第1の面と、同じ生理的条件でゆっくり溶解する第2の面を有するように設計することができる。場合によっては、二相粒子は、粒子表面の1つの部分から延びる尾部を有する球状粒子であることができる。例えば、二相粒子は、血流中で粒子を誘導するように設計することができる。場合によっては、二相粒子は、ある特定の生理的条件で容易に溶解する第1の(例えば先頭の)面と、同じ生理的条件でゆっくり溶解する第2の面を有し、血流中で粒子を誘導する尾部を含むように設計することができる。
【0027】
本明細書に記載の1つ又は複数の生物学的製剤を封入する二相粒子は、任意の適切な方法を使用して作製することができる。場合によっては、二相粒子は、安定剤技術(例えばドライウォーター手法(dry water approaches)を含む)を使用して作製することができる。例えば、2つ以上の別々の軟質液体コア(例えば、疎水性実体と親水性実体などの異なる疎水性を有する2つの液体、又は水と油などの異なる溶解性を有する2つの液体)を安定化し、次いで合体させて二相粒子にすることができる。場合によっては、二相粒子は、溶融組合せ(melt combination)及び融合技術を用いて作製することができる。例えば、2つ以上の別々の流れ(例えば、特性の差を有する2つの溶融ワックス流又は相異なる特性を有する2つのポリマー流)を一つにして(例えば単一の流れに注入して)二相粒子を形成することができる。場合によっては、二相粒子は3Dプリンター技術を用いて作製することができる。例えば、2つ以上のコーティング(例えば相異なる特性を有する2つのワックスコーティング)を粒状の内部構造要素(例えばSTYROFOAM(商標)などのポリスチレンフォームの粒子)上に印刷して二相粒子を形成することができる。粒状の内部構造要素は(例えばアセトン除去によって)除去され、1つ又は複数の生物学的製剤と置き換えることができる。場合によっては、二相粒子は、マイクロ流体力学技術を用いて作製することができる。例えば、2つ以上の液体流(例えば異なる特性を有する2つの液体)をマイクロ流体チャネルに流して二相液滴を形成でき、これは(例えば、熱重合、空間的に二価の粒子に対する剪断応力の除去、蒸発、凝固、カチオン曝露、又はpHによって)二相粒子に固化することができる。場合によっては、二相粒子は、保護及び脱保護技術を用いて製造することができる。例えば、所望の表面化学的性質を有する保護粒子は主粒子上に吸着させることができ、脱保護によって、化学的に修飾されうる主粒子の元の表面を得ることができる。
【0028】
場合によっては、他の適切な技術を使って二相粒子を作ることができる。例えば、他の適切な方法としては、限定されないが、界面乳化、ドングリ及びダンベル形状の形成、製造中に粒子を成形及び操作するための磁場の使用、並びに直接表面コーティング蒸着(surface coating deposition)が挙げられうる。いくつかの実施形態では、密度の差(differential density)は、さまざまな密度の有機ゲルを使用して達成することができる。いくつかの実施形態では、多孔度の差(differential porosity)は、粒子の特定の表面に塩を使用して、微孔性を達成することができる。いくつかの実施形態では、塩を使用して、且つ/又は相異なる溶解度を有する2つ以上の異なるポリマー(例えばPEG)を使用して、溶解度の差(different solubilities)を達成することができる。いくつかの実施形態では、ワックス成分を使用し、化学的に(例えば長鎖反応物で)修飾し、且つ/又は粒子を磁化して、さまざまな尾部を達成することができる。本明細書に記載の1つ又は複数の生物学的製剤を封入する二相粒子を作るための例示的な方法を
図1に示す。
【0029】
本明細書に記載の1つ又は複数の生物学的製剤を封入する粒子(例えばアルギン酸ゲル)を使用して、封入された生物学的製剤を標的組織(例えば心臓組織)に送達することができる。本明細書に記載の粒子を標的とする仕組みは、接着粒子、標的部分、粒径、損傷の設定での毛細血管漏出、発がん性新生血管形成の設定での毛細血管漏出、及び/又は直接注射(例えば傾斜した側面穴を有し、端部穴がないように設計された浮腫形成針(ニチノール(ニッケルチタン)らせん針など(例えば
図14を参照))を介する)含む可能性がある。毛細血管漏出とは、生物学的製剤の送達を増大させるために毛細血管の多孔度又は漏出を増強することができる任意の物理的、化学的、又は薬理学的手段を指す。これは、毛細血管の多孔度を高める因子(例えば化学的及び/又は薬理学的因子)を投与することによって達成することができる。代替的に、毛細血管漏出は、浮腫を標的組織に模倣するように設計されている生物学的製剤送達針を配置することによって達成することができる。
【0030】
場合によっては、接着部分を本明細書に記載の粒子に結合させて、投与部位に接着粒子を保持することができる。例えば、本明細書に記載の接着粒子は、標的組織(例えば心臓梗塞床(cardiac infarct bed))に直接投与(例えば注射)することができる。接着部分の例としては、限定されないが、PEG、正電荷、及び組織内の自己組織化が挙げられる。場合によっては、標的部分は、標的組織(例えば心臓梗塞床)への粒子の送達を導くように本明細書に記載の粒子に結合することができる。標的部分の例にとしては、限定されないが、抗原、組織標的ペプチド、小分子、及び細胞表面分子が挙げられる。例えば、抗体を用いて細胞の表面タンパク質を標的とすることができる。場合によっては、粒子のサイズを利用して、標的組織(例えば心臓梗塞床)への粒子の送達を導くことができる。ヒト毛細血管は直径が約5μm~10μmである。したがって、直径が約0.3μm~約12μmの本明細書に記載の粒子は、血流を介して毛細血管に入ることができるが、毛細血管から出ることは制限され、生物学的製剤及び/又は発現ポリペプチドは組織(例えば心臓、皮膚、肺、固形腫瘍、脳、骨、靭帯、結合組織構造体、腎臓、肝臓、皮下、及び血管組織)の毛細血管床に拡散することができる。本明細書に記載の二相粒子を使用して1つ又は複数の生物学的製剤を送達するための例示的な方法を
図2に示す。
【0031】
本明細書に記載の1つ又は複数の生物学的製剤を封入する粒子(例えばアルギン酸ゲル)を使用して、封入された生物学的製剤を、時間的及び/又は空間的に特異的な方法で標的組織(例えば心臓梗塞床)に送達することができる。例えば、本明細書に記載のように1つ又は複数の生物学的製剤を封入する二相粒子は、血管内に粒子の特定の方向づけを与えるように、二相粒子を毛細管に向けるように、且つ/又は封入された生物学的製剤の特定の放出条件を付与するように設計することができる。二相粒子が粒子表面に親水性部分及び疎水性部分を有する場合、1つ又は複数の封入された生物学的製剤の送達は、送達部位及び/又は標的部位に存在する溶媒によって調節することができる。二相粒子が密度の差(differential density)を有する場合、その密度の差(differential density)は、粒子を血流中で方向づけして、粒子を1つ又は複数の封入された生物学的製剤の送達に適した方向づけを導くことができる。例えば、二相粒子の密度の高い側は、血管内で血流の方向に粒子を導くことができる。二相粒子が多孔質コーティングを有する場合、1つ又は複数の封入された生物学的製剤の送達は、多孔度の差(differential porosity)によって調節することができる。例えば、相異なる量の多孔度は、血管内に粒子を送達するのを助け、送達パターンを変えることができる。二相粒子が溶解度の差(differential solubility)を有する場合、その溶解度の差(differential solubility)は粒子を血流中で方向づけして、粒子を1つ又は複数の封入された生物学的製剤の送達に適した方向づけを導くことができる。二相粒子が粒子表面の1つの部分から延びる尾部を有する場合、尾部は粒子を血管内で方向づけして、粒子を毛細血管に向けることができる。例えば、二相粒子は、粒子を血管内に配向させ、封入された生物学的製剤を送達できる血管(例えば毛細血管)に粒子を向けるための尾部を有するように設計することができる。
【0032】
生物学的製剤
組織への送達のために、任意の適切な生物学的製剤を本明細書に記載の粒子内に封入することができる。本明細書に記載の粒子内に封入できる生物学的製剤の例としては、限定されないが、ヌクレオチド、ポリペプチド、小分子、微小胞、エキソソーム、細胞外小胞、組み換え(engineered)細胞、又はそれらの組み合わせが挙げられる。場合によっては、生物学的製剤は精製された生物学的製剤(例えば精製微小胞又はエキソソーム)であることができる。
【0033】
本明細書に記載の粒子(例えばアルギン酸ゲル)を使用して、1つ又は複数のポリペプチドを封入することができる。場合によっては、本明細書に記載の粒子を使用して、主要有害心イベント(例えば急性心筋梗塞)を経験している哺乳動物及び/又は主要有害心イベントを経験するリスクがある哺乳動物(例えばSTEMIに対するPCIを受けた患者)の治療に有用な1つ又は複数のポリペプチドを封入することができる。例えば、本明細書に記載の生物学的製剤を封入する粒子は、心機能及び/若しくは組織を再生するのに有用な1つ又は複数のポリペプチド又はそのようなポリペプチドをコードするヌクレオチドを封入することができる。心機能及び/又は組織を再生するのに有用なポリペプチドの例としては、限定されないが、腫瘍壊死因子(TNF、例えばTNF-α)活性の効果をなくす能力を有する抗体、ミトコンドリア複合体-1活性の効果をなくす能力を有する抗体、及びレゾルビン-D1アゴニストが挙げられる。
【0034】
本明細書に記載の粒子(例えばアルギン酸ゲル)を使用して、1つ又は複数のヌクレオチドを封入することができる。粒子内に封入できるヌクレオチドの例としては、限定されないが、mRNA、抑制性RNA(例えばアンチセンスRNA、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、短ヘアピンRNA(shRNA)、及びagomiR)、antagomiR、修飾mRNA、ループ組み換え(loop-engineered)修飾mRNA(例えば
図15を参照)、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0035】
場合によっては、本明細書に記載の粒子(例えばアルギン酸ゲル)を使用して、主要有害心イベント(例えば急性心筋梗塞)を経験している哺乳動物及び/又は主要有害心イベントを経験するリスクがある哺乳動物(例えばSTEMIに対するPCIを受けた患者)を治療するのに有用な1つ又は複数のmRNAを封入することができる。例えば、本明細書に記載の生物学的製剤を封入する粒子は、本明細書に記載の粒子内に封入できる心機能及び/又は組織を再生するのに有用なポリペプチドをコードする1つ又は複数のmRNAを封入することができる。心機能及び/又は組織を再生するのに有用でありうるポリペプチドの例としては、限定されないが、TNF-α、ミトコンドリア複合体-1、レゾルビン-D1、NAP-2、TGF-α、ErBb3、VEGF、IGF-1、FGF-2、PDGF、IL-2、CD19、CD20、CD80/86、国際公開第2015/034897号に記載のポリペプチド、又は前述のポリペプチドのいずれかに対する抗体が挙げられる。例えば、ヒトNap-2ポリペプチドは、例えば、国立生物工学情報センター(NCBI)アクセッション番号NP_002695.1(GI番号5473)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号NM_002704(GI番号5473)に記載の核酸配列でコードされうる。場合によっては、ヒトTGF-αポリペプチドは、NCBIアクセッション番号NP_003227.1(GI番号7039)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号NM_003236(GI番号7039)に記載の核酸配列でコードされうる。場合によっては、ヒトErBb3ポリペプチドは、NCBIアクセッション番号NP_001005915.1又はNP_001973.2(GI番号2065)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号NM_001005915.1又はNM_001982.3(GI番号2065)に記載の核酸配列でコードされうる。例えば、ヒトVEGFは、NCBI受託番号AAA35789.1(GI:181971)、CAA44447.1(GI:37659)、AAA36804.1(GI:340215)、又はAAK95847.1(GI:15422109)に記載のアミノ酸をもち、NCBIアクセッション番号AH001553.1(GI:340214)に記載の核酸配列でコードされうる。例えば、ヒトIGF-1は、NCBIアクセッション番号CAA01954.1(GI:1247519)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号A29117.1(GI:1247518)に記載の核酸配列でコードされうる。例えば、ヒトFGF-2は、NCBIアクセッション番号NP_001997.5(GI:153285461)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号NM_002006.4(GI:153285460)に記載の核酸配列でコードされうる。例えば、ヒトPDGFは、NCBIアクセッション番号AAA60552.1(GI:338209)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号AH002986.1(GI:338208)に記載の核酸配列でコードされうる。例えば、ヒトIL-2は、NCBIアクセッション番号AAB46883.1(GI:1836111)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号S77834.1(GI:999000)に記載の核酸配列でコードされうる。例えば、ヒトCD19は、NCBIアクセッション番号AAA69966.1(GI:901823)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号M84371.1(GI:901822)に記載の核酸配列でコードされうる。例えば、ヒトCD20は、NCBIアクセッション番号CBG76695.1(GI:285310157)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号AH003353.1(GI:1199857)に記載の核酸配列でコードされうる。例えば、ヒトCD80は、NCBIアクセッション番号NP_005182.1(GI:4885123)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号NM_005191.3(GI:113722122)に記載の核酸配列でコードされうる。ヒトCD86は、NCBIアクセッション番号AAB03814.1(GI:439839)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号CR541844.1(GI:49456642)に記載の核酸配列でコードされうる。例えば、心機能及び/又は組織を再生するのに有用でありうるポリペプチドは、TNF-α、ミトコンドリア複合体-1、又はレゾルビン-D1に対する抗体でありうる。場合によっては、本明細書に記載の生物学的製剤を封入する粒子は、NAP-2及び/又はTGF-αをコードする1つ又は複数のmRNAを封入することができる。
【0036】
場合によっては、本明細書に記載の粒子(例えばアルギン酸ゲル)を使用して、主要有害心イベント(例えば急性心筋梗塞)を経験している哺乳動物及び/又は主要有害心イベントを経験するリスクがある哺乳動物(例えばSTEMIに対するPCIを受けた患者)を治療するのに有用な1つ又は複数の抑制性RNAを封入することができる。例えば、本明細書に記載の粒子は、以下のポリペプチドの1つ又は複数の発現を阻害する且つ/又は減少させる1つ又は複数の抑制性RNAを封入することができる。エオタキシン-3、カテプシン-S、DK-1、フォリスタチン、ST-2、GRO-α、IL-21、NOV、トランスフェリン、TIMP-2、TNFαRI、TNFαRII、アンジオスタチン、CCL25、ANGPTL4、MMP-3、及び国際公開第2015/034897号に記載のポリペプチド。例えば、ヒトエオタキシン-3ポリペプチドは、例えばNCBIアクセッション番号NP_006063.1(GI番号10344)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号NM_006072(GI番号10344)に記載の核酸配列でコードされうる。場合によっては、ヒトカテプシン-Sは、NCBIアクセッション番号NP_004070.3(GI番号1520)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号NM_004079.4(GI番号1520)に記載の核酸配列でコードされうる。場合によっては、ヒトDK-1は、NCBIアクセッション番号NP_036374.1(GI番号22943)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号NM_012242(GI番号22943)に記載の核酸配列でコードされうる。場合によっては、ヒトフォリスタチンは、NCBIアクセッション番号NP_037541.1(GI番号10468)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号NM_013409.2(GI番号10468)に記載の核酸配列でコードされうる。場合によっては、ヒトST-2は、NCBIアクセッション番号BAA02233(GI番号6761)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBI受託番号D12763.1(GI番号6761)に記載の核酸配列でコードされうる。場合によっては、ヒトGRO-αポリペプチドは、NCBIアクセッション番号NP_001502.1(GI番号2919)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号NM_001511(GI番号2919)に記載の核酸配列でコードされうる。場合によっては、ヒトIL-21は、NCBIアクセッション番号NP_068575.1(GI番号59067)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号NM_021803(GI番号59067)に記載の核酸配列でコードされうる。場合によっては、ヒトNOVポリペプチドは、NCBIアクセッション番号NP_002505.1(GI番号4856)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号NM_002514(GI番号4856)に記載の核酸配列でコードされうる。場合によっては、ヒトトランスフェリンポリペプチドは、NCBIアクセッション番号NP_001054.1(GI番号7018)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号NM_001063.3(GI番号7018)に記載の核酸配列でコードされうる。場合によっては、ヒトTIMP-2ポリペプチドは、NCBIアクセッション番号NP_003246.1(GI番号7077)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号NM_003255.4(GI番号7077)に記載の核酸配列でコードされうる。場合によっては、ヒトTNFαRIポリペプチドは、NCBIアクセッション番号NP_001056.1(GI番号7132)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号NM_001065(GI番号7132)に記載の核酸配列でコードされうる。場合によっては、ヒトTNFαRIIポリペプチドは、NCBIアクセッション番号NP_001057.1(GI番号7133)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号NM_001066(GI番号7133)に記載の核酸配列でコードされうる。場合によっては、ヒトアンジオスタチンポリペプチドは、NCBIアクセッション番号NP_000292(GI番号5340)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号NM_000301(GI番号5340)に記載の核酸配列でコードされうる。場合によっては、ヒトCCL25ポリペプチドは、NCBIアクセッション番号NP_005615.2(GI番号6370)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号NM_005624(GI番号6370)に記載の核酸配列でコードされうる。場合によっては、ヒトANGPTL4ポリペプチドは、NCBIアクセッション番号NP_001034756.1又はNP_647475.1(GI番号51129)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号NM_001039667.1又はNM_139314.1(GI番号51129)に記載の核酸配列でコードされうる。場合によっては、ヒトMMP-3ポリペプチドは、NCBIアクセッション番号NP_002413.1(GI番号4314)に記載のアミノ酸配列をもち、NCBIアクセッション番号NM_002422(GI番号4314)に記載の核酸配列でコードされうる。
【0037】
場合によっては、本明細書に記載の粒子(例えばアルギン酸ゲル)を使用して、心筋再生能に関与するマイクロRNAを調節する(例えば、模倣又は阻害する)1つ又は複数のヌクレオチドを封入することができる。例えば、本明細書に記載の粒子を使用して、心筋再生能を増強する1つ又は複数のmiRNAを模倣する1つ又は複数のagomiRを封入することができる。例えば、本明細書に記載の粒子を使用して、心筋再生能を増強する1つ又は複数のmiRNAを阻害する1つ又は複数のantagomiRを封入することができる。心筋再生能に関与するmiRNAsの例としては、限定されないが、miR-127、miR-708、miR-22-3p、miR-411、miR-27a、miR-29a、miR-148a、miR-199a、miR-143、miR-21、miR-23a-5p、miR-23a、miR-146b-5p、miR-146b、miR-146b-3p、miR-2682-3p、miR-2682、miR-4443、miR-4443、miR-4521、miR-4521、miR-2682-5p,miR-2682、miR-137.miR-137、miR-549.miR-549、miR-335-3p、miR-335、miR-181c-5p、miR-181c、miR-224-5p、miR-224、miR-3928、miR-3928、miR-324-5p、miR-324、miR-548h-5p、miR-548h-1、miR-548h-5p、miR-548h-2、miR-548h-5p、miR-548h-3、miR-548h-5p、miR-548h-4、miR-548h-5p、miR-548h-5、miR-4725-3p、miR-4725、miR-92a-3p、miR-92a-1、miR-92a-3p、miR-92a-2、miR-134、miR-134、miR-432-5p、miR-432、miR-651、miR-651、miR-181a-5p、miR-181a-1、miR-181a-5p、miR-181a-2、miR-27a-5p、miR-27a、miR-3940-3p、miR-3940、miR-3129-3p、miR-3129、miR-146b-3p、miR-146b、miR-940、miR-940、miR-484、miR-484、miR-193b-3p、miR-193b、miR-651、miR-651、miR-15b-3p、miR-15b、miR-576-5p、miR-576、miR-377-5p、miR-377、miR-1306-5p、miR-1306、miR-138-5p、miR-138-1、miR-337-5p、miR-337、miR-135b-5p、miR-135b、miR-16-2-3p、miR-16-2、miR-376c.miR-376c、miR-136-5p、miR-136、let-7b-5p、let-7b、miR-377-3p、miR-377、miR-1273g-3p、miR-1273g、miR-34c-3p、miR-34c、miR-485-5p、miR-485、miR-370.miR-370、let-7f-1-3p、let-7f-1、miR-3679-5p、miR-3679、miR-20a-5p、miR-20a、miR-585.miR-585、miR-3934、miR-3934、miR-127-3p、miR-127、miR-424-3p、miR-424、miR-24-2-5p、miR-24-2、miR-130b-5p、miR-130b、miR-138-5p、miR-138-2、miR-769-3p、miR-769、miR-1306-3p、miR-1306、miR-625-3p、miR-625、miR-193a-3p、miR-193a、miR-664-5p、miR-664、miR-5096.miR-5096、let-7a-3p、let-7a-1、let-7a-3p、let-7a-3、miR-15b-5p、miR-15b、miR-18a-5p、miR-18a、let-7e-3p、let-7e、miR-1287.miR-1287、miR-181c-3p、miR-181c、miR-3653、miR-3653、miR-15b-5p、miR-15b、miR-1、miR-1-1、miR-106a-5p、miR-106a、miR-3909.miR-3909、miR-1294.miR-1294、miR-1278、miR-1278、miR-629-3p、miR-629、miR-340-3p、miR-340、miR-200c-3p、miR-200c、miR-22-3p、miR-22、miR-128、miR-128-2、miR-382-5p、miR-382、miR-671-5p、miR-671、miR-27b-5p、miR-27b、miR-335-5p、miR-335、miR-26a-2-3p、miR-26a-2、miR-376b.miR-376b、miR-378a-5p、miR-378a、miR-1255a、miR-1255a、miR-491-5p、miR-491、miR-590-3p、miR-590、miR-32-3p、miR-32、miR-766-3p、miR-766、miR-30c-2-3p、miR-30c-2、miR-128.miR-128-1、miR-365b-5p、miR-365b、miR-132-5p、miR-132、miR-151b.miR-151b、miR-654-5p、miR-654、miR-374b-5p、miR-374b、miR-376a-3p、miR-376a-1、miR-376a-3p、miR-376a-2、miR-149-5p、miR-149、miR-4792.miR-4792、miR-1.miR-1-2、miR-195-3p、miR-195、miR-23b-3p、miR-23b、miR-127-5p、miR-127、miR-574-5p、miR-574、miR-454-3p、miR-454、miR-146a-5p、miR-146a、miR-7-1-3p、miR-7-1、miR-326.miR-326、miR-301a-5p、miR-301a、miR-3173-5p、miR-3173、miR-450a-5p、miR-450a-1、miR-7-5p、miR-7-1、miR-7-5p、miR-7-3、miR-450a-5p、miR-450a-2、miR-1291、miR-1291、miR-7-5p、miR-7-2、及びmiR-17-5p、miR-17が挙げられる。
【0038】
本明細書に記載の粒子内に封入されるヌクレオチド(例えばRNA)は修飾ヌクレオチドであることができる。場合によっては、安定性を増すためにヌクレオチドを修飾することができる。例えば、本明細書に記載のRNAの1つ又は複数のウラシル残基を修飾ウラシル残基と置き換えることができる。修飾ウラシル残基の例としては、限定されないが、シュードウリジン(Ψ)、ジヒドロウリジン(D)、及びジデオキシウラシルが挙げられる。mRNAは、生体機能性マイクロカプセル化修飾mRNA(M3RNA)を形成するように修飾でき、以下により詳細に記載される。
【0039】
本明細書に記載の粒子(例えばアルギン酸ゲル)を使用して、生物学的製剤にくわえて又はその代わりに他の分子を封入することができる。場合によっては、本明細書に記載の粒子(例えばアルギン酸ゲル)を使用して、1つ又は複数の小分子を封入することができる。例えば、本明細書に記載の粒子を使用して、主要有害心イベント(例えば急性心筋梗塞)を経験している哺乳動物及び/又は主要有害心イベントを経験するリスクがある哺乳動物(例えばSTEMIに対するPCIを受けた患者)を治療するのに有用な1つ又は複数の低分子を封入することができる。例えば、本明細書に記載の粒子は、心機能及び/又は組織を再生するのに有用な1つ又は複数の低分子を封入することができる。心機能及び/又は組織を再生するのに有用な低分子の例として、限定されないが、リポ多糖、腫瘍壊死因子(例えばTNF-α)アンタゴニスト、ミトコンドリア複合体-1アンタゴニスト、及びレゾルビン-D1アゴニストが挙げられる。場合によっては、本明細書に記載の粒子(例えばアルギン酸ゲル)を使用して、1つ又は複数の微小胞及び/又はエキソソームを封入することができる。場合によっては、本明細書に記載の粒子を使用して、主要有害心イベント(例えば急性心筋梗塞)を経験している哺乳動物及び/又は主要有害心イベントを経験するリスクがある哺乳動物(例えばSTEMIに対するPCIを受けた患者)を治療するのに有用な1つ又は複数の微小胞及び/又はエキソソームを封入することができる。例えば、本明細書に記載の粒子は、心機能及び/又は組織を再生するのに有用な1つ又は複数の微小胞及び/又はエキソソームを封入することができる。心機能及び/又は組織を再生するのに有用な微小胞及びエキソソームの例として、限定されないが、血漿、血液由来生成物、及び培養幹細胞から単離された微小胞及びエキソソームが挙げられる。
【0040】
本明細書に記載の粒子(例えばアルギン酸ゲル)はまた、1つ又は複数の検出可能な標識を含むことができる。検出可能な標識は粒子に組み込むか、粒子内に封入することができる。検出可能な分子の例として、限定されないが、生物発光標識(例えば、ルシフェラーゼ)、蛍光分子(例えばGFPやmCherry)、及び放射性核種分子が挙げられる。場合によっては、検出可能な標識を発現するmRNAは、封入されたRNAの時間的及び/又は空間的送達が哺乳動物においてモニターできるように粒子内に封入される。
【0041】
本明細書に記載の粒子(例えばアルギン酸ゲル)はまた、1つ又は複数の追加の治療用分子を含むことができる。治療用分子は、粒子に結合されているか、粒子内に埋め込まれているか、粒子内に封入されているか、又はそれらの任意の組み合わせであることができる。治療薬の例としては、限定されないが、幹細胞(例えば間葉系幹細胞、心筋幹細胞、及び骨髄)、医薬(例えばスタチン、鎮痛薬、化学療法剤、ベータ遮断薬、抗生物質)、並びに栄養素(例えば炭水化物、脂肪、ビタミン、及びミネラル)が挙げられる。
【0042】
場合によっては、本明細書に記載の1つ又は複数の生物学的製剤を封入する粒子(例えばアルギン酸ゲル)を使用して、他の疾患及び/又は状態を治療するのに有用な1つ又は複数のヌクレオチドを封入することができる。
【0043】
マイクロカプセル化修飾mRNA(M3RNA)
M3RNAは、コードされた遺伝子を幅広い組織に迅速に発現させるためのユニークなプラットフォームである。M3RNAプラットフォームの文脈において、M3RNAは修飾マイクロカプセル化mRNAを指し、(封入されていない)むき出し(naked)の修飾RNAはM2RNAと呼ばれる。M3RNAは新しい感染の脅威に対する抗体を生成するのによく適している。この技術的プラットフォームに固有なのは、短期間で迅速に増え、同時に複数の遺伝子構築物を送達する能力である。このプラットフォーム内の原動力となる生物学的製剤としてmRNAを使用するので、治療による統合的(integrative)なリスク又は突然変異のリスクがない。さらに、AAVや他のウイルス遺伝子送達技術とは異なり、M3RNAプラットフォームによって、送達系に対する免疫反応のリスクが回避され、さまざまなコンストラクトを用いて繰り返し使用することが可能になる。M3RNAは、M3RNA-Ig送達系に容易に進化させることができ、送達後の推定病原体に対する抗体の効率的で迅速且つ持続的な発現を可能にする。
【0044】
M3RNAは、インビトロ及び生体内モデルの両方において、いくつかのレポーター及び治療用遺伝子コンストラクトを送達するように試験されてきた。さらに、M3RNAは多遺伝子治療能力(multi-gene therapeutic capability)に適応することができる。M3RNAは、急性心筋梗塞の設定において、例えばいくつかの心筋再生遺伝子を同時に送達することができる。M3RNAのM3RNA-Igプラットフォームへの変換に特有なのは、GFP/mCherry mRNA(720bp)及びホタルルシフェラーゼ(FLuc)mRNA(1653bp)の形でIgGの重鎖及び軽鎖のサイズを模倣するレポーター遺伝子の同時送達を示すことである。その系は生体内で3つの遺伝子送達プラットフォームに拡大されており、試験したすべてのレポーター遺伝子について同様の浸透度(penetrance)を示している。マイクロカプセル化修飾メッセンジャーRNAは、複数の細胞株及び初代細胞(ヒト皮膚線維芽細胞、ヒト心筋線維芽細胞、HEK293細胞、HL-1心筋細胞、HUVAC細胞、新生児ラット心筋細胞、及び新生児ラット骨格筋細胞)内で迅速且つ強力なタンパク質発現を達成する。さらに、例えばPEG化荷電ナノ粒子を使用するマイクロカプセル化M3RNAは、マウス及びブタモデルにおいて、複数の臓器系(骨格筋と心筋をともに含む)への直接注射後に迅速な(2時間以内)生体内発現を誘発する。
【0045】
HEK293(ヒト胎児腎臓)細胞にトランスフェクトしたM
2RNA(修飾mCherry mRNA)の動態(Kinetics)は、2時間という早さでmCherryタンパク質発現をもたらした。示された期間におけるHEK293細胞について発現により生じた蛍光画像を毎日定量したものを
図16に示し、mRNAトランスフェクション時の迅速で、強力で、且つ持続的なタンパク質発現を最大で6日間示している。これらの細胞内の蛍光強度の定量化(>10視野の細胞/期間)は、最初の24時間で増加し、最大で6日持続した蛍光強度を記録した。トランスフェクション効率の定量化のためのゴールドスタンダードとしてフローサイトメトリーを用いて、トランスフェクションの4時間後と24時間後のmCherryタンパク質発現レベルの分析を行った。x軸を蛍光強度及びy軸を側方散乱信号とする散布図は、トランスフェクション時に一貫した二峰性集団を明らかにし(
図16)、移り変わりは、4時間及び24時間で見られるトランスフェクトされた細胞の数を明らかにし、約95%のトランスフェクション効率を記録した。
【0046】
M
3RNAプラットフォームは、例えば新生児ラット心筋細胞などの「トランスフェクトしにくい」初代細胞表現型と適合性がある。新生児初代心筋細胞を単離し、プレートに播種して、そのプレートで心筋細胞の同期拍動パターンを得た。心筋細胞をmCherry M
3RNAでトランスフェクトし、トランスフェクションの4時間後から6日間蛍光画像を取得した。複数の期間の代表的な画像が
図17Aに示されており、これは初代心筋細胞内での迅速で、強力で、且つ持続的なタンパク質発現を示している。これらの初代心筋細胞内の蛍光強度を定量化すると、最大発現が24時間で起こり、最大で6日間持続したが減少したことが明らかになった(
図17B)。これらの初代心筋細胞内のトランスフェクション効率は、細胞をmCherry mRNAでトランスフェクトすることによって4時間と24時間においてフローサイトメトリーを用いてさらに評価され、散布図解析は24時間で43%のトランスフェクション効率を示した(
図17C)。初代心筋細胞のM
3RNAプラットフォームのトランスフェクションは、心筋細胞の構造的又は機能的特徴を変えなかった。
【0047】
M
3RNAプラットフォームはまた、筋肉内送達にも適合しており、初代心筋細胞培養で得られた結果と同等の高いトランスフェクション効率を実現する(
図19)。
図19に示されたデータは、外科的に処理されたヒト骨格筋組織からの衛星細胞の大量単離を含む、主要なヒト骨格筋培養系を採用している。規定のゼノフリー培養の培養条件内で、骨格筋ドナー組織を用いて骨格筋衛星前駆体集団を誘導する。細胞は、3週間の培養期間にわたってマイコプラズマ/無菌プロファイリングを受け、凍結保存される。マスターセルバンクの誘導に先立って、凍結保存された衛星細胞の各ロットは品質保証評価を受け、免疫組織化学(
図18)、遺伝子発現プロファイリング、及び筋管形成の自動顕微鏡可視化(
図18)を介して筋原性能力(myogenic potency)を試験する。能力(potency)及び無菌性を確認しながら、各ロットを3代継代(P3)して広げ、100万個の細胞のアリコートとして凍結した2億個の細胞のマスターセルバンクを作製する。実験に使用する前に、マスターセルバンクのロットを繰り返し品質保証及び無菌性評価にかける。P3細胞を誘導して、規定培地内で培養することを通して2~3日以内に初代ヒト骨格筋細胞を生み出すことができる(
図18)。
【0048】
PEG化カチオンベース微粒子系内の修飾メッセンジャーRNAのマイクロカプセル化は、生体内でM
3RNAを送達するための例示的なプラットフォームをもたらす。mCherry(720bp)、GFP(720bp)mRNA、及びホタルルシフェラーゼ(FLuc)mRNA(1653bp)を含むレポーター遺伝子が生体内設定で使用された。生きた動物でのタンパク質発現の動態(kinetics)が前向きに記録できたので、FLucは分析に追加の次元をもたらした。トランスフェクション領域を励起させるためにルシフェリンを使用することによって、送達後のM
3RNAシグナルの局在化を解読する正確な手法が実現した。皮下経路を用いた最適化に続いて、M
3RNAプラットフォームを、肝臓内、腎臓内、眼内、筋肉内、及び心筋内送達を含む幅広い組織で試験した(
図20)。すべての場合において、FLuc発現は、送達後2時間以内に注射領域内で示され、72時間を超えて持続することができた。
【0049】
心臓内では、左前心室へのFLuc M
3RNAの直接心筋注射後の迅速なFLuc発現が異なる時点で定量され、3日間の観察期間にわたって持続した遺伝子発現の迅速な誘導が明らかになった(
図21)。多重遺伝子誘導が実行可能であることを概念実証として示すために、3つの異なるモデルコンストラクト(mCherry、GFP、及びFLuc)を同時にマイクロカプセル化し、マウスにおいて単回心筋注射を用いて送達し、スクランブル模擬M
3RNA対照と対比した。FLuc発現は、IVISスペクトル生体内イメージングシステムの生物発光アッセイを用いて、心臓内で24時間で確認された(
図20、心臓)。次いで、マウスを犠死させ、心臓を摘出して組織学的切片の免疫組織化学によって発現を評価し、模擬M
3RNAマウス(上のパネル)と比較した場合の、組み合わされた遺伝子-M
3RNA注射マウス(下のパネル)内のオーバーラップしたGFP、mCherry、及びFLucタンパク質発現を確認した(
図22)。
【0050】
M3RNA技術は進化して、強力な治療薬を迅速に創出するための送達プラットフォームを達成することができる。例えば、生体機能化M3RNAは、新規の病原体(例えばZikaウイルスやH7N9などのウイルス病原体)を標的とする新しい遺伝子配列を迅速に組み込むことができるM3RNA-Ig送達系(MIDS)の基礎を形成することができる。
【0051】
IgG重鎖及び軽鎖の遺伝子長に対するM3RNAプラットフォームの適合性は、FLucと蛍光レポーター遺伝子の併用により確認されており、生体内において心筋組織内で最大で3つの遺伝子が同時に誘導されることを示している。M3RNA-Igベクターにコードされた遺伝子の迅速且つ持続可能な発現は、RNA分子の5’及び3’UTRの特別な設計を用いて増強することができる。M3RNA-Igベクターの設計は、以下のうちの1つ又は複数を考慮することを含みうる。(1)単一転写産物上の重鎖及び軽鎖遺伝子を、別個の転写産物としての合成と対比して、P2Aリボソームスキッピング配列と連結するかどうか、(2)3’ポリ(A)尾部の長さ/導入、(3)5’m7Gキャップの種類、(4)修飾ヌクレオチドの選択、(5)分解の速度を低下させるための、5’及び3’UTRの、それぞれIRES及びシュードノット修飾、並びに/又は(6)生体内骨格筋送達のための適切な化学量論を特定するためのナノ粒子媒介マイクロカプセル化。
【0052】
いくつかの実施形態では、重鎖及び軽鎖は、2つの別々の転写産物上で合成されうる。この手法は、マルチクローニングサイト内にVL/VH抗原結合ドメインを組み込むための迅速な並行作業を可能にする(
図23)。具体的には、1つではなく2つの転写産物を使用することによって、別々のDNAテンプレートを逐次的にではなく同時にクローニングすることが可能になり、それによって新しい実施形態の開発を促進する。もちろん、所望の場合、重鎖及び軽鎖が単一の転写産物から合成されるようにベクターを設計することができる。
【0053】
300個以上のヌクレオチドのポリ(A)尾部を伴って合成されたmRNAは、有意に長い半減期と優れた翻訳特性を有する。したがって、いくつかの実施形態では、ベクターは好適なプロモーター(例えばT7)、重鎖及び軽鎖コード領域を含むことができ、300個のヌクレオチドのポリ(T)トラクトがmRNA転写のための骨格テンプレートとして機能することになる。ベクターは2つの別々のバージョンとして設計されて、特定された新しい抗体のC領域の大きな違いに適応することができる。初期設計は、特定された予期される抗体において不変のC領域を仮定することができる。したがって、重鎖及び軽鎖ベクターのマルチクローニングサイトは、この領域へのV配列の迅速な並行導入及びM3RNA-Ig作製過程の開始を可能にすることができる。逆に、ある特定の場合では、異なったIg骨格は平行ベクター系のC領域への調整も示唆しうる。したがって、迅速な応答の能力を確実にするために、重鎖及び軽鎖の全体の挿入を可能にするマルチクローニングサイトで操作され追加のベクターを設計することができる。
【0054】
mRNA CAPは遺伝子産物の発現効率を媒介する。いくつかの実施形態では、M
3RNA-Igは、CAP-0を用いて媒介されうるいずれの自然免疫応答も回避するための手法として、CAP-1を用いて作ることができる。CAP-1を含む設計は、ワクシニアキャッピングシステム、続いてCAP 2’-O-メチルトランスフェラーゼを用いる転写後修飾を含みうる。しかし、CAPに依存する手法は、コンストラクトにかなりの長さを追加し、それによって3’部位での創造性(creativity)を制限してRNA分解をさらに制限しうるポリ(A)結合タンパク質(PABP)の相互作用を必要としうる(
図24、上)。したがって、いくつかの実施形態では、M
3RNA-Ig系は5’UTR内に内部リボソーム進入部位(IRES)を含むことができ、PABP相互作用の必要性を排除する(
図24、下)。
【0055】
M3RNA系は、例えば、シトシン若しくはシュードウリジン(Ψ)、ジヒドロウリジン(D)の代わりに5’-メチルシチジン又はウラシルの代わりにジデオキシウラシルなどの修飾ヌクレオチドを導入することによって、mRNAのトランスフェクションの望ましくない副作用を制限し、且つ/又はM3RNAの分解を遅らせることができる。修飾NTPは、GMP出発材料として容易に豊富に存在し、標準的なRNA合成技術を用いて迅速に導入でき、送達後に著しい分子的及び翻訳上の利点をもたらす。
【0056】
代替的に、サイトゾル中のmRNAの寿命を延ばすための別の戦略は、ナンセンス媒介分解経路を妨害することを含む。標準的な経路では、リボソーム複合体がgag停止領域にぶつかると、30s/50sサブユニットがmRNAから離れ、したがってmRNAの3’UTRはUPF-1依存分解に対して感受性が非常に高くなる(
図25、標準)。例えば、3’UTRにおけるgag停止部位の後の3’シュードノット形成又はRNA安定性要素の導入を含む、この過程を遅らせるための手法はさまざまなウイルスによって開発されてきた。3’シュードノットは、リボソーム複合体によるフレームシフトリードスルーを媒介し、それによって3’UTRからUPF-1複合体をノックオフし、結果としてmRNA安定性をもたらす(
図25、シュードノット)。一方では、RNA安定性要素はおとりとして働き、3’UTRとのUPF-1相互作用を直接遮り、それによってmRNAを分解に対して安定化する(
図25、RNA安定性要素)。ポリ(A)ステムループ構造はまた、エキソソーム媒介mRNA分解を阻害することによってmRNA安定性を増加させることができる(
図25、ステムループ)。
【0057】
封入されたmRNA又は封入されてないmRNAの送達のためのナノ粒子
高いトランスフェクション効率と低い細胞毒性を有する効率的な遺伝子送達ベクターの設計は、細胞、組織、又は臓器への修飾mRNA(例えばM2RNA、M3RNA、又はM3RNA-Igなど)の送達にとって1つの課題である。ナノ粒子は、修飾mRNAを送達するための例示的なモデルのウイルスベクターを含まない手法を表す。ナノ粒子は、組織ターゲティングを含む遺伝子送達のための著しい柔軟性を有し、ヌクレアーゼ分解に対してmRNAを保護し、負に荷電したmRNAと正に荷電したナノ粒子表面との間のイオン性相互作用によってM2RNAの安定性を向上し、且つ安全のための転換効率を高める。ナノ粒子は一般に治療用途に受け入れられている。第1に、ナノ粒子はタンパク質と同じサイズのドメインに存在する。第2に、ナノ粒子は、例えばPEG化(血液循環半減期を増加させるため)又は効率的な結合と送達のためのポロキサマー、ポロキサミン、若しくはキトサンを使用して容易に修飾することができる大きな表面積を有する。第3に、修飾ナノ粒子は、制御可能な吸収特性及び放出特性、粒径、並びに/又は表面特性を有することができる。
【0058】
多種多様な有機(脂質をベースとする)、無機、又はハイブリッド材料が、ナノ粒子の製造に使用されており、上で詳細に論じられている。いくつかの実施形態では、カチオン性ポリマーナノ粒子を使用して、修飾メッセンジャーRNAをマイクロカプセル化する。カチオン性ポリマーは、それらの骨格に正の荷電した基を有し、負に荷電したmRNA-Ig分子と相互作用して、中和されたナノメートルの大きさの複合体を形成する。
【0059】
細胞毒性を最小限に抑えるために、複数の金属ナノ粒子が推奨されてきた。さまざまな実施形態において、mRNA-Ig分子を送達するために、鉄、銀、金、又は銅からなるナノ粒子を、単独で、又は他のナノ粒子及び/若しくは他の送達技術と組み合わせて使用することができる。
【0060】
M2RNA(若しくはM2RNA-Ig)であろうとM3RNA(若しくはM3RNA-Ig)であろうと、ナノ粒子は表面修飾されて修飾RNA分子の効率を高めることができる。ナノ粒子は、例えばバイオポリマー又はPEG化のいずれかを導入するように修飾されて、血液循環半減期を増加させることができる。骨格筋へのM3RNA-Igの送達のためのいくつかの実施形態では、ナノ粒子の表面はバイオポリマーを含むように修飾することができる。好適なバイオポリマーとしては、例えば、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、キトサン、デキストランなどが挙げられる。特定の実施形態では、ナノ粒子の表面はキトサンで修飾することができる。キトサンはカチオン性高分子電解質の性質を示し、したがって負に荷電したDNA又はRNA分子との強い静電相互作用をもたらす。さらに、キトサンは、それを生分解性、生体適合性、及び無毒性のバイオポリマーにする第一級アミン基をもち、そのバイオポリマーはDNase又はRNase分解に対する保護を可能にする。
【0061】
代替的な実施例では、ナノ粒子の表面はPEG化によって修飾されていてもよい。ポリエチレングリコール(PEG)を所与の分子、この場合にはナノ粒子に共有結合させる技術は、標的化薬物送達系において充分に確立されている方法である。PEG化は、CH3O-(CH2-CH2O)n-CH2-CH2-OHとして表される複数のモノメトキシPEG(mPEG)の重合を含む。PEG分子を導入することは、ナノ粒子の疎水性を増加させるのでその半減期を有意に増加させ、糸球体濾過量を減少させ、且つ/又は保護親水性シールドを形成することによる抗原部位のマスキングに起因して免疫原性を低下させる。好適な修飾は、DNA又はRNA分子の物理的結合に適した環境をもたらす3000~4000個のPEG分子を有するようにナノ粒子の表面を修飾することを含む。
【0062】
まとめると、ナノ粒子とPEG、キトサン、及びM
2RNAとの組み合わせは、M
3RNAプラットフォームを作る(
図26)。
図26に示す例示的実施形態では、RNAは、キトサン表面修飾との相互作用を通して微粒子に間接的に結合しているので、修飾mRNA(M
2RNA)はPEGとキトサンでコーティングされた微粒子によって封入されている。
【0063】
分子設計以外にも、筋組織への生物学的製剤の送達が直面する別の課題は、筋組織の緻密で且つ収縮性のある性質に少なくとも部分的に起因する、生物学的低分子薬剤(payload)の効率的な移動に対する物理的な障壁である。ダルシーの法則を用いた組織内送達の四次元モデリングでは、針の設計に固有のレベルで著しい制限が明らかにされている。端部孔(end hole)をもつ真っ直ぐな針を有することによって、生物学的製剤の送達は、膿瘍を模倣する骨格筋組織内に材料の密なポケットを作り出す。その密なポケットは、生物学的製剤の局所的な組織取り込みを劇的に減少させ、且つリンパ作用及び毛細管作用を介して優先的に生物学的製剤を排除して圧を軽減する。逆に、
図14に示される、端部穴(end hole)を欠き、送達針とともにまっすぐでない(non-sheering)溝パターンを利用する調整された針設計は、膿瘍の代わりに浮腫効果を誘発する能力を可能にし、製品の組織へのはるかに高い程度の組織適応及び長期局所曝露をもたらす。このようにして、生物学的製剤の投与量は増加しないが、治療の浸透度は平均4~5倍増加する。
【0064】
使用方法
この明細書はまた、本明細書に記載の1つ又は複数の分子(例えば生物学的製剤)を封入する粒子(例えばアルギン酸ゲル)を使用する方法も提供する。場合によっては、主要有害心イベントを経験するリスクがある哺乳動物(例えば、本明細書に記載のような主要有害心イベントを経験する可能性があると特定された哺乳動物)は、本明細書に記載の1つ又は複数の生物学的製剤を封入する粒子を投与することによって治療できる。例えば、主要有害心イベントを経験するリスクがある哺乳動物は、NAP-2、TGF-α、ErBb3、VEGF、IGF-1、FGF-2、PDGF、IL-2、CD19、CD20、及び/又はCD80/86をコードするmRNAを封入する粒子を投与して、NAP-2、TGF-α、ErBb3、VEGF、IGF-1、FGF-2、PDGF、IL-2、CD19、CD20、及び/又はCD80/86ポリペプチド発現のレベルを増加させることによって治療することができる。これらのポリペプチドのうちの1つ又は複数のレベルの増加を使って、瘢痕サイズ及び組織リモデリングを減少させ、且つ心機能を改善することができる。例えば、主要有害心イベントを経験するリスクがある哺乳動物は、エオタキシン-3、カテプシン-S、DK-1、フォリスタチン、ST-2、GRO-α、IL-21、NOV、トランスフェリン、TIMP-2、TNFαRI、TNFαRII、アンジオスタチン、CCL25、ANGPTL4、及び/又はMMP-3を標的とする抑制性RNAを封入する粒子を投与して、エオタキシン-3、カテプシン-S、DK-1、フォリスタチン、ST-2、GRO-α、IL-21、NOV、トランスフェリン、TIMP-2、TNFαRI、TNFαRII、アンジオスタチン、CCL25、ANGPTL4、及び/又はMMP-3ポリペプチド発現のレベルを減少させることによって治療することができる。これらのポリペプチドのうちの1つ又は複数のレベルの減少を使って、瘢痕サイズ及び組織リモデリングを減少させ、且つ心機能を改善することができる。
【0065】
いずれの種類の、主要有害心イベント(例えば急性心筋梗塞)を経験している哺乳動物及び/又は主要有害心イベントを経験するリスクがある哺乳動物(例えばSTEMIに対するPCIを受けた哺乳動物)も本明細書に記載の1つ又は複数の生物学的製剤の粒子媒介送達を用いて治療することができる。例えば、主要有害心イベントを経験している且つ/又は主要有害心イベントを経験するリスクがあるヒト及び他のサルなどの霊長類は本明細書に記載のような生物学的製剤で治療することができる。場合によっては、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウサギ、マウス、及びラットを本明細書に記載のような生物学的製剤で治療することができる。
【0066】
主要有害心イベント(例えば急性心筋梗塞)を経験している哺乳動物及び/又は主要有害心イベントを経験するリスクがある哺乳動物(例えばSTEMIに対するPCIを受けた患者)を特定するのにいずれの適切な方法も用いることができる。例えば、他に記載されている主要有害心イベントを経験するリスクがある哺乳動物を特定する方法(例えば国際公開第2015/034897号)を使用することができる。
【0067】
主要有害心イベント(例えば急性心筋梗塞)を経験している、且つ/又は主要有害心イベントを経験するリスクがあると特定されると、患者は本明細書において記載されているように分子(例えば生物学的製剤)を封入する1つ又は複数の粒子を投与又は自己投与するように指示されうる。
【0068】
本明細書に記載のように、主要有害心イベントを経験している哺乳動物又は主要有害心イベントを経験するリスクがある哺乳動物を治療する場合、その主要有害心イベントはいずれの主要有害心イベントでもありうる。主要有害心イベントの例としては、限定されないが、心筋梗塞(例えば急性心筋梗塞)、心不全、再発性心筋梗塞、心臓関連事象による入退院の繰り返し、及び虚血性心疾患が挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のように治療される主要有害心イベントは、急性心筋梗塞などの心筋梗塞でありうる。
【0069】
場合によっては、本明細書に記載のような哺乳動物への1つ又は複数の分子(例えば、生物学的製剤)の粒子媒介送達を用いて心機能を改善することができる。心機能の改善の例としては、限定されないが、生存率(survivorship)の向上、入院の減少、身体活動の症状のない許容度、全身体力の改善、心駆出率の改善、心拍出量の改善、一回拍出量の改善、心筋重量係数の改善、及び瘢痕サイズの減少が挙げられる。
【0070】
場合によっては、本明細書に記載の哺乳動物への1つ又は複数の生物学的製剤(例えばmRNA)の粒子媒介送達を用いて、心機能及び/又は組織を再生するのに有用な1つ又は複数(例えば1、2、3、又はそれより多く)のポリペプチドの発現を増加させることができる。心機能及び/又は組織を再生するのに有用でありうるポリペプチドの例としては、限定されないが、NAP-2、TGF-α、ErBb3、VEGF、IGF-1、FGF-2、PDGF、IL-2、CD19、CD20、CD80/86、及び国際公開第2015/034897号に記載のポリペプチドが挙げられる。これらのポリペプチドのうちの1つ又は複数のレベルの増加を用いて、瘢痕サイズ及び組織リモデリングを減少させ、且つ/又は心機能を改善することができる。細胞(例えば心筋細胞)中の心機能及び/又は組織を再生するのに有用なポリペプチドの発現を増加させるための方法は、例えば、ポリペプチドをコードするmRNAを封入する1つ又は複数の粒子と細胞を接触させることを含みうる。ポリペプチドをコードするmRNAを封入する1つ又は複数の粒子は、任意の適切な方法によって細胞と接触させることができる。ポリペプチドのレベルに関して本明細書で使用される「発現の増加」という用語は、そのポリペプチドの基準レベルより高い(例えば、少なくとも約10、15、20、又は25パーセントより大きい)任意のレベルである。ポリペプチドに関して本明細書で使用される「基準レベル」という用語は、健康なヒト又は主要有害心イベントを経験するリスクが低いヒトで典型的に観察されるそのポリペプチドの発現レベルである。例えば、健康なヒト又は主要有害心イベントを経験するリスクが低いヒトに関して、NAP-2、TGF-α、及びErBb3発現のレベルは、他に記載されている通りでありうる(例えば、国際公開第2015/034897号)。場合によっては、本明細書に記載のような哺乳動物への1つ又は複数の生物学的製剤(例えば、mRNA)の粒子媒介送達を用いて、NAP-2及び/又はTGF-αの発現を増加することができる。
【0071】
場合によっては、本明細書に記載の哺乳動物への1つ又は複数の生物学的製剤(例えば抑制性RNA)の粒子媒介送達を使用して、1つ又は複数(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれより多く)の以下のポリペプチドの発現を減少させることができる。エオタキシン-3、カテプシン-S、DK -1、フォリスタチン、ST-2、GRO-α、IL-21、NOV、トランスフェリン、TIMP-2、TNFαRI, TNFαRII、アンジオスタチン、CCL25、ANGPTL4、MMP-3、及び国際公開第2015/034897号に記載のポリペプチド。これらのポリペプチドのうちの1つ又は複数の発現レベルの減少を用いて、瘢痕サイズ及び組織リモデリングを減少させる、且つ/又は心機能を改善することができる。細胞内でエオタキシン-3、カテプシン-S、DK-1、フォリスタチン、ST-2、GRO-α、IL-21、NOV、トランスフェリン、TIMP-2, TNFαRI、TNFαRII、アンジオスタチン、CCL25、ANGPTL4、及びMMP-3のうちの1つ又は複数の発現を減少させる方法は、細胞(例えば心筋細胞)を、例えば抑制性RNAを封入する1つ又は複数の粒子と接触させることを含みうる。抑制性RNAを封入する1つ又は複数の粒子は、任意の適切な方法によって細胞と接触させることができる。例えばヒトにおいて、本明細書に記載の抑制性RNAを封入する粒子を使用して、ヒトエオタキシン-3、ヒトカテプシン-S、ヒトDK-1、ヒトフォリスタチン、ヒトST-2、ヒトGRO-α、ヒトIL-21、ヒトNOV、ヒトトランスフェリン、ヒトTIMP-2、ヒトTNFαRI、ヒトTNFαRII、ヒトアンジオスタチン、ヒトCCL25、ヒトANGPTL4、ヒトMMP-3、又はそれらの任意の組み合わせの発現を減少させることができる。ポリペプチド(例えば、エオタキシン-3、カテプシン-S、DK-1、フォリスタチン、ST-2、GRO-α、IL-21、NOV、トランスフェリン、TIMP-2、TNFαRI、TNFαRII、アンジオスタチン、CCL25、ANGPTL4、又はMMP-3)のレベルに関して本明細書で使用される「発現の減少」という用語は、そのポリペプチドについての基準レベルよりも低い(例えば、少なくとも約10パーセント、少なくとも約15パーセント、少なくとも約20パーセント、又は少なくとも約25パーセント低い)任意のレベルである。エオタキシン-3、カテプシン-S、DK-1、フォリスタチン、ST-2、GRO-α、IL-21、NOV、トランスフェリン、TIMP-2、TNFαRI、TNFαRII、アンジオスタチン、CCL25、ANGPTL4、又はMMP-3ポリペプチドに関して本明細書で使用される「基準レベル」という用語は、健康なヒト又は主要有害心イベントを経験するリスクが低いヒトで典型的に観察されるそのポリペプチドの発現レベルである。健康なヒト又は主要有害心イベントを経験するリスクが低いヒトに関して、エオタキシン-3、カテプシン-S、DK-1、フォリスタチン、ST-2、GRO-a、IL-21、NOV、トランスフェリン、TIMP-2、TNFαRI、TNFαRII、アンジオスタチン、CCL25、ANGPTL4、及びMMP-3発現のレベルは、他に記載されている通りでありうる(例えば国際公開第2015/034897号)。
【0072】
本明細書に記載の1つ又は複数の分子(例えば生物学的製剤)を封入する粒子(例えば、アルギン酸ゲル)は、主要有害心イベントを治療するのに使用される1つ又は複数の追加の薬剤/療法との併用療法として、主要有害心イベントを経験している又は主要有害心イベントを経験する可能性がある哺乳動物に投与することができる。例えば、本明細書に記載されている主要有害心イベントを経験する可能性があると特定される哺乳動物を治療するのに使用される併用療法は、本明細書に記載の1つ又は複数の生物学的製剤を封入するアルギン酸ゲルを投与すること、並びに積極的な薬物療法(例えば、ベータ-アドレナリン受容体遮断薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬、アルドステロン拮抗薬治療、及び/若しくは抗血小板薬)、血行力学的補助(例えば、大動脈内バルーンポンプ及び/若しくは心拍出量の機械的増強)、外科的介入(例えば、冠状動脈バイパス術若しくは左心室補助装置留置)、並びに/又は装置に基づく介入(例えば、再同期療法若しくは植込み型心臓除細動器)を用いて治療することを含むことができる。
【0073】
本明細書に記載の1つ又は複数の分子(例えば生物学的製剤)を封入する粒子(例えばアルギン酸ゲル)が、主要有害心イベントを治療するのに使用される追加の薬剤/療法と組み合わせて使用される実施形態では、1つ又は複数の追加の薬剤は同時に又は独立して投与することができる。例えば、本明細書に記載の1つ又は複数の生物学的製剤を封入するアルギン酸ゲルを最初に投与し、1つ又は複数の追加の薬剤を2番目に投与でき、又はその逆も可能である。本明細書に記載の1つ又は複数の生物学的製剤を封入する粒子(例えばアルギン酸ゲル)が、主要有害心イベントを治療するのに使用される1つ又は複数の追加の薬剤/療法と組み合わせて使用される実施形態では、1つ又は複数の追加の療法は、本明細書に記載の1つ又は複数の生物学的製剤を封入する1つ又は複数の粒子の投与と同時に又は独立して行うことができる。例えば、本明細書に記載の1つ又は複数の生物学的製剤を封入する1つ又は複数のアルギン酸ゲルは、1つ又は複数の追加の療法が行われる前、その間、又はその後に投与することができる。
【0074】
場合によっては、本明細書に記載の1つ又は複数の分子(例えば生物学的製剤)を封入する粒子(例えばアルギン酸ゲル)を使用して、限定されないが、血液疾患若しくは血液悪性腫瘍(例えば、リンパ腫、リンパ球性白血病、骨髄腫、骨髄性白血病(例えば急性骨髄性白血病及び慢性骨髄性白血病)、骨髄異形成症候群、及び骨髄増殖性疾患)、筋骨格系障害(例えば手根管症候群、上顆炎、腱炎、腰痛、緊張頸部症候群、及び手-腕振動症候群)、肺の異常(例えば喘息、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、肺気腫、急性気管支炎、嚢胞性線維症、肺炎、結核、肺気腫、肺水腫、急性呼吸窮迫症候群、じん肺、及び間質性肺疾患)、胃腸、結腸直腸、肛門括約筋、及び/若しくは骨盤内臓器疾患(例えば腸炎、感染性下痢、腸間膜虚血症、炎症性腸疾患、及び骨盤内炎症性疾患)、神経、脊髄及び/若しくは頭蓋内疾患(例えば神経管欠損、頭部障害、頭蓋内圧の上昇若しくは低下、髄膜炎、神経障害、運動ニューロン疾患、脱髄性神経障害、及び神経損傷)、皮膚疾患(例えば湿疹(例えば、アトピー性皮膚炎)、いぼ、尋常性ざ瘡、及び突発性発疹)、慢性炎症性疾患(例えば喘息、慢性消化性潰瘍、結核、慢性関節リウマチ、慢性歯周炎、潰瘍性大腸炎及びクローン病、慢性副鼻腔炎、慢性活動性肝炎)、並びに/又は遺伝的欠陥を含む多数の他の疾患及び/又は状態を治療することができる。
【0075】
場合によっては、本明細書に記載の1つ又は複数の分子(例えば、生物学的製剤)を封入する粒子(例えばアルギン酸ゲル)は、主要心イベントを経験している又は主要心イベントを経験するリスクがある哺乳動物に投与するための薬理学的に許容される組成物に製剤化することができる。例えば、本明細書に記載の生物学的製剤を封入するアルギン酸ゲルの治療有効量を、1つ又は複数の薬理学的に許容される担体(添加剤)及び/又は希釈剤と一緒に製剤化することができる。医薬組成物は、限定されないが、無菌溶液、懸濁液、徐放性製剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、及び顆粒を含む固体又は液体形態で投与するために製剤化することができる。
【0076】
本明細書に記載の医薬組成物に使用できる医薬上許容される担体、賦形剤、及び溶媒としては、限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解物、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、及びラノリン(wool fat)が挙げられる。
【0077】
本明細書に記載の1つ又は複数の分子(例えば生物学的製剤)を封入する粒子(例えばアルギン酸ゲル)を含有する医薬組成物は、経口投与、非経口投与(皮下、動脈内、筋肉内、静脈内、冠動脈内、皮内、若しくは局所投与を含む)、又は吸入投与用に設計することができる。経口投与される場合、本明細書に記載の1つ又は複数の分子(例えば生物学的製剤)を封入する粒子(例えばアルギン酸ゲル)を含有する医薬組成物は、丸剤、錠剤、又はカプセル剤の形態でありうる。非経口投与に適した組成物としては、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤を対象のレシピエントの血液と等張にする溶質を含有できる水性及び非水性の無菌注射溶液並びに懸濁剤及び増粘剤を含みうる水性及び非水性の無菌懸濁液が挙げられる。吸入用組成物は、例えば、吸入器、ネブライザー、及び/又は乾燥粉末吸入器を使用して送達することができる。製剤は、単位投与量又は複数投与量の容器、例えば密封アンプル及びバイアルで提供でき、使用直前に滅菌液体担体、例えば注射用水の添加のみを必要とする凍結乾燥(freeze dried)(凍結乾燥(lyophilized))状態で保存することができる。即席注射溶液及び懸濁液は、滅菌散剤、顆粒、及び錠剤から調製することができる。
【0078】
本明細書に記載の1つ又は複数の分子(例えば生物学的製剤)を封入する粒子(例えばアルギン酸ゲル)を含む薬理学的に許容される組成物は局所的又は全身的に投与することができる。場合によっては、本明細書に記載の1つ又は複数の生物学的製剤を封入する粒子を含有する組成物は、哺乳動物(例えばヒト)への静脈投与若しくは経口投与、又は哺乳動物による吸入によって全身投与することができる。場合によっては、本明細書に記載の1つ又は複数の生物学的製剤を封入する粒子を含有する組成物は、哺乳動物(例えば、ヒト)の標的組織(例えば、心臓梗塞床)への経皮投与、皮下投与、筋肉内投与、又は切開外科(open surgical)投与(例えば、注射)によって、又は哺乳動物(例えば、ヒト)の標的組織(例えば、心臓梗塞床)の血管供給への動脈投与によって局所的に投与することができる。例えば、本明細書に記載の1つ又は複数の生物学的製剤を封入するアルギン酸ゲルの心臓の血管供給への動脈投与を使って、生物学的製剤をヒトの心臓梗塞床に送達することができる。
【0079】
有効投与量は、主要心イベントの重症度、投与経路、対象の年齢及び全身の健康状態、賦形剤の使用、他の薬剤の使用などの他の治療法との併用の可能性、並びに治療にあたる医師の判断によって異なりうる。
【0080】
投与の頻度は、哺乳動物に著しい毒性を生じることなく心機能を改善する任意の頻度であることができる。例えば、投与の頻度は、週に約1回から1日に約3回、月に約2回から1日に約6回、又は週に約2回から1日に約1回でありうる。投与の頻度は、一定のままでありうるか、又は治療期間中に変動しうる。本明細書に記載の1つ又は複数の生物学的製剤を封入する粒子(例えばアルギン酸ゲル)を含有する組成物による一連の治療は、休止期間を含む可能性がある。例えば、本明細書に記載の1つ又は複数の生物学的製剤を封入するアルギン酸ゲルを含有する組成物は、2週間にわたって毎日投与し、続いて2週間の休薬期間を伴うことができ、そのような投薬計画は複数回繰り返すことができる。有効量と同様に、さまざまな要因が特定の用途に使用される実際の投与の頻度に影響を及ぼしうる。例えば、有効量、治療期間、複数の治療薬の使用、投与経路、及び主要心イベントの重症度は、投与頻度の増加又は減少を必要としうる。
【0081】
本明細書に記載の1つ又は複数の分子(例えば生物学的製剤)を封入する粒子(例えばアルギン酸ゲル)を含有する組成物を投与するための有効期間は、哺乳動物に対して著しい毒性を生じることなく心機能を改善する任意の期間であることができる。例えば、有効期間は、数日から数週間、数ヶ月、又は数年までさまざまでありうる。場合によっては、主要心イベントを治療するための有効期間は、約1か月から約10年までの期間に及びうる。複数の要因が、特定の治療に用いられる実際の有効期間に影響を及ぼしうる。例えば、有効期間は、投与の頻度、有効量、複数の治療薬の使用、投与経路、及び治療されている主要心イベントの重症度によって異なりうる。
【0082】
ある特定の症例では、主要心イベントに対して治療を受けている哺乳動物の治療経過及び心機能をモニターすることができる。心機能をモニターするのに任意の適切な方法を用いることができる。例えば、心機能は、異なる時点で、血液検査、心電図検査(ECG/EKG)、心臓負荷試験、冠動脈カテーテル法、心エコー検査、及び/又は血管内超音波を用いて評価することができる。
【0083】
上記の説明では、明確にするために特定の実施形態が別々に記載されることがある。特定の実施形態の特徴が別の実施形態の特徴と不適合であることが別段明確に指定されていない限り、ある特定の実施形態は、1つ又は複数の実施形態に関して、本明細書に記載の互換性のある特徴の組み合わせを含むことができる。
【0084】
個別のステップを含む、本明細書に開示されたいずれの方法においても、それらのステップは任意の実行可能な順序で行うことができる。そして必要に応じて、2つ以上のステップの任意の組み合わせを同時に行うことができる。
【0085】
本発明を以下の例によって説明する。特定の例、材料、量、及び手順は、本明細書に記載の本発明の範囲及び趣旨に従って広く解釈されるべきであることを理解されたい。
【実施例0086】
実施例1:線維芽細胞におけるmRNA発現
mCherry mRNAをヒト皮膚線維芽細胞とヒト心臓線維芽細胞にトランスフェクションした。トランスフェクションの4時間後と、2日後、5日後に、光位相(light phase)顕微鏡と蛍光顕微鏡を用いてmRNA発現を評価した(
図3)。
【0087】
これらの結果は、mRNAが皮膚と心臓の線維芽細胞において持続的に発現できることを示した。
【0088】
実施例2:上皮細胞におけるmRNA共発現
mCherry mRNAとEGFP mRNAをHEK293細胞にトランスフェクションした。トランスフェクションの24時間後にマルチチャンネル蛍光顕微鏡を用いてmRNA発現を評価した(
図4)。
【0089】
これらの結果は、複数のmRNAが共発現できることを示した。
【0090】
実施例3:心筋細胞におけるmRNAの発現
mCherry mRNAをHEK293細胞にトランスフェクションした。トランスフェクションの24時間後と、3日後、5日後に、光位相(light phase)顕微鏡及び蛍光顕微鏡を用いてmRNA発現を評価した(
図5)。
【0091】
これらの結果は、mRNAが心筋細胞において持続的に発現できることを示した。
【0092】
実施例4:皮下リポソーム送達mRNAの生体内発現
マウスには、ハイドロダイナミック尾静脈注射によってルシフェラーゼmRNAの溶液を投与するか(
図6(A)と(B))、皮下注射によってルシフェラーゼmRNAを含有したリポソームを投与した(
図6(C)と(D))。ルシフェラーゼ発現をXenogen(IVIS)画像システムを用いて画像化した。ハイドロダイナミック尾静脈注射によってルシフェラーゼmRNAの溶液を投与されたマウスの場合、ルシフェラーゼの発現量を実験の開始時並びに投与後2時間、4時間、6時間、及び24時間に評価した(
図6E)。皮下注射によってルシフェラーゼmRNAを含有したリポソームを投与されたマウスの場合、投与後2時間、4時間、6時間、24時間、48時間、及び72時間にルシフェラーゼの発現量を評価した(
図6F)。
【0093】
マウスにmCherry mRNAを含有したリポソームを皮下注射によって投与した。蛍光顕微鏡を用いてmCherryの発現を評価した(
図7)。
【0094】
これらの結果は、リポソーム送達mRNAが皮下投与後に生体内で持続可能に発現できることを示した。
【0095】
実施例5:心臓内リポソーム送達mRNAの生体内発現
エコーガイド心臓内注射によってルシフェラーゼmRNAを含有したリポソームをマウスに投与した(
図8A)。ルシフェラーゼ発現をXenogen(IVIS)画像システムを用いて画像化した。投与の2時間後、4時間後、6時間後、24時間後、48時間後、及び72時間後にルシフェラーゼの発現量を評価した(
図8B)。
【0096】
これらの結果は、リポソーム送達mRNAが心臓内投与後に生体内で持続可能に発現できることを示した。
【0097】
実施例6:開胸心臓内リポソーム送達mRNAの生体内発現
マウスに開胸心臓内注射によってルシフェラーゼmRNAを含有したリポソームを投与した。ルシフェラーゼ発現をXenogen(IVIS)画像システムを用いて画像化した(
図9)。
【0098】
これらの結果は、リポソーム送達mRNAが心臓内投与後に生体内で持続可能に発現できることを示した。
【0099】
実施例7:アルギネート送達mRNAの生体内発現
以前に報告された方法を用いてmCherry mRNAを含有したアルギン酸ゲルを豚に投与した。投与後にmCherry発現量を評価した(
図10)。
【0100】
mRNAのアルギネート送達を使用する以前の方法は、心筋内で発現せずに重合生成物内の生物学的製剤の隔離という結果に終わった。
【0101】
実施例8:アルギネート送達mRNAの生体内発現
ブタに、mCherry mRNAを含有したアルギン酸ゲルを少量投与した。蛍光顕微鏡を用いてmCherry発現を評価した。
【0102】
アルギン酸ゲル体積の減少によって、結果として生物学的製剤が拡散送達され、大部分のシグナルが失われた(放射輝度効率3.6、
図11)。
【0103】
実施例9:アルギネート送達mRNAのインビボ発現
mCherry mRNAを含有したさまざまなアルギネート/カルシウム濃度をもつアルギン酸ゲルをブタに投与した。蛍光顕微鏡を用いてmCherry発現を評価した。
【0104】
アルギネート/カルシウムゲルが血中で液体のままで、梗塞毛細血管床に流出し、そこでゲルは重合して高い効率で生物製剤を送達した、梗塞床への標的化送達(これまでの取り組みでの3~4に対して、局所放射輝度レベル>10、
図12)。
【0105】
これらの結果は、アルギン酸ゲル送達mRNAが梗塞毛細血管床を標的とすることができることを示した。
【0106】
実施例10:開胸心臓内アルギネート送達mRNAの生体内発現
マウスに、mCherry mRNAを含有したさまざまなアルギネート/カルシウム濃度のアルギン酸ゲルを投与した。蛍光顕微鏡を用いてmCherry発現を評価した。
【0107】
アルギン酸ゲル送達は、mCherry mRNAの持続放出をもたらした(
図13)。
【0108】
これらの結果は、アルギン酸ゲル送達mRNAが送達後に生体内で持続的に発現できることを示した。
前記足場タンパク質が、コラーゲンI、コラーゲンII、コラーゲンIII、コラーゲンIV、フィブリン、基底膜タンパク質、又はゼラチンを含む、請求項14に記載の組成物。