(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086817
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】弁装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20240621BHJP
【FI】
F16K31/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024062259
(22)【出願日】2024-04-08
(62)【分割の表示】P 2023523427の分割
【原出願日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2021086715
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】100100365
【弁理士】
【氏名又は名称】増子 尚道
(72)【発明者】
【氏名】神尾 猛
(72)【発明者】
【氏名】原田 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】山下 将司
(72)【発明者】
【氏名】早川 潤哉
(57)【要約】
【課題】動作が速く弁漏れが少なく横幅が小さい弁装置(特にボール弁)を得る。
【解決手段】内部に弁室13を有する弁本体12と、内部に流路空間22を有すると共に弁室内で回転駆動され流体の流量を変更する弁体21と、弁本体に形成され流路空間に連通して流体の通過を許容する第1流路孔14と、弁本体に形成され弁体の回転変位位置によって流路空間との連通状態が変更され流路空間に連通したときに流体の通過を許容する第2流路孔15と、弁体を回転させる駆動力を弁体に伝達する弁体駆動シャフト31を含む伝達機構とを備えた弁装置11で、弁体の回転軸と弁体駆動シャフトの回転軸とが互いに交差している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に弁室を有する弁本体と、
内部に流路空間を有するとともに回転軸部により前記弁室内に回転可能に支持され且つ前記弁室内で回転駆動されることにより流体の流量を変更する弁体と、
前記弁本体に形成され前記流路空間に連通して前記流体の通過を許容する第1流路孔と、
前記弁本体に形成され、前記弁体の回転変位位置によって前記流路空間との連通状態が変更され、前記流路空間に連通したときに前記流体の通過を許容する、第2流路孔と、
前記弁体を回転させる駆動力を前記弁体に伝達する弁体駆動シャフトを含む伝達機構と
を備えた弁装置であって、
前記弁体駆動シャフトの回転軸の側面方向から見て、前記弁体の回転軸と前記弁体駆動シャフトの回転軸とが互いに交差している
ことを特徴とする弁装置。
【請求項2】
前記弁本体は、
前記弁本体の側面部に前記第1流路孔を有するとともに、
前記第1流路孔の軸線周りのいずれかの周方向位置に前記第2流路孔を有し、
前記弁体は、
前記第1流路孔と前記流路空間とを連通させる第1開口部と、
開弁時に前記第2流路孔と前記流路空間とを連通させる第2開口部と、
閉弁時に前記第2流路孔を閉塞する殻壁部とを有し、
前記第2開口部を介して前記第2流路孔と前記流路空間とが連通した開弁状態と、前記殻壁部により前記第2流路孔が閉塞された閉弁状態との間で、前記第1流路孔の軸線周りに回転可能に支持され、
前記伝達機構は、
前記第1流路孔の軸線方向に延び、前記弁体駆動シャフトから伝達される駆動力を受けて前記第1流路孔の軸線周りに回転して当該回転を前記弁体に伝達する弁体従動シャフトと、
前記弁体駆動シャフトの回転を前記弁体従動シャフトに伝達する係合手段と
をさらに有し、
前記弁体駆動シャフトの回転軸は、前記第1流路孔の軸線に直交する
請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記弁体は、球状の形状を有し、
前記弁室は、円形の横断面形状を有し、
前記第2流路孔は、弁室側の端縁部に弁座口を有し、
前記弁体は、当該弁座口に接触しつつ回転摺動する
請求項2に記載の弁装置。
【請求項4】
前記第1開口部は、前記第1流路孔に対向するように形成され、前記弁体のいずれの回転位置においても前記流路空間に連通して前記流体の通過を許容する一方、
前記第2開口部は、開弁状態において前記弁座口と重なり合うことにより前記第2流路孔と前記流路空間とを連通させ、
前記弁体は、前記第2開口部と前記弁座口との重なり合いが最大となる弁の全開状態と、前記第2開口部が前記弁座口から外れて前記殻壁部によって前記弁座口が閉塞される弁の全閉状態との間で回転可能に支持されている
請求項3に記載の弁装置。
【請求項5】
前記弁体駆動シャフトは、前記弁体の垂直方向に延びる中心軸線に沿って延び、
前記弁体従動シャフトは、
前記弁体の水平方向に延びる中心軸線に沿って延び、
前記弁体の、前記第1開口部とは反対側の側部殻壁に基端部が固定され、
前記係合手段は、前記弁体駆動シャフトの先端部と前記弁体従動シャフトの先端部とに備えられている
請求項4に記載の弁装置。
【請求項6】
前記係合手段は、
前記弁体駆動シャフトに備えられた駆動側傘歯車と、
前記弁体従動シャフトに備えられて前記駆動側傘歯車と噛み合う従動側傘歯車と
を含む
請求項5に記載の弁装置。
【請求項7】
前記従動側傘歯車の歯数が前記駆動側傘歯車の歯数より多い
請求項6に記載の弁装置。
【請求項8】
前記弁体駆動シャフトは、前記弁本体の上部から前記弁本体の内部を下方に延び前記弁体の上部殻壁を貫通して前記流路空間に達し、
前記弁体は、
前記弁体駆動シャフトが貫通する前記上部殻壁に、前記第1流路孔の軸線周りの回転を可能とする開口部を備え、
当該開口部は、
弁の全開状態において前記弁体駆動シャフトの側面に当接して前記弁体の回転を停止させる第1ストッパ部と、
弁の全閉状態において前記弁体駆動シャフトの反対側の側面に当接して前記弁体の回転を停止させる第2ストッパ部と
を有する
請求項4に記載の弁装置。
【請求項9】
前記開口部は、
前記第1流路孔の軸線に直交する面に対して平行に前記弁体の殻壁に沿って円弧状に延び、且つ前記第1流路孔の軸線周りの前記弁体の回転を許容する一方、前記弁体駆動シャフトの側面に摺動可能に当接することにより前記第1流路孔の軸線方向の前記弁体の移動を規制する
案内溝であり、
当該案内溝の一端部に前記第1ストッパ部を備えるとともに、
当該案内溝の他端部に前記第2ストッパ部を備える
請求項8に記載の弁装置。
【請求項10】
弁装置を受け入れ可能な弁装着穴と、当該弁装着穴の内周面に開口し且つ前記流体の流入路および流出路のうちのいずれか一方となる第1流路と、当該弁装着穴の底面に開口し且つ前記流体の流入路および流出路のうちの他方となる第2流路とを備えたハウジング部材の前記弁装着穴にねじ込むことにより当該ハウジング部材に装着可能な弁装置であって、
前記第2流路孔は、前記弁本体の底面部に形成され、
前記弁装着穴の内周面には、雌ねじが備えられ、
前記弁本体は、
円筒状の形状を有するとともに、
前記雌ねじに螺合する雄ねじを外周面に備え、
前記雄ねじを前記雌ねじに螺合させつつ前記第2流路孔が備えられた底面部側から前記弁装置を前記弁装着穴にねじ込んで前記ハウジング部材に装着したときに、前記第1流路孔が前記ハウジング部材の第1流路に連通し、前記第2流路孔が前記ハウジング部材の第2流路に連通する
請求項1から9のいずれか一項に記載の弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁装置に係り、特に冷媒の流量を調整するため空調機などの冷凍サイクル装置に備えられるボール弁に関する。
【背景技術】
【0002】
カーエアコンのような冷凍サイクル装置では、冷媒の流量を調整するためにニードル弁やボール弁が備えられる。
図10から
図11はこのようなボール弁の一例を示すものである。これらの図に示すように従来のボール弁は、ボックス状の弁本体1の内部(弁室2)に球状の弁体3を配置し、この弁体3を回転させることにより冷媒の流量を変更する。
【0003】
より具体的には、弁本体1は、冷媒を流入させる流入孔14を側面に有し、冷媒を流出させる流出孔15を底面に有する。弁室2内には、弁体3を支持するため、水平方向に一定の間隔を隔てて互いに対向する一対の弁体支持部材4,5が備えられ、これら一対の弁体支持部材4,5の間に弁体3が回転可能に支持される。また、流入孔側の弁体支持部材4には、流入孔14の弁室側の端部開口となる弁座口14aが備えられる。弁体3は、この弁座口14aに当接しつつ水平に、つまり弁座口14aに接触しながら垂直方向に延びる中心軸A1の周りに摺動回転し(符号R3参照)、後に述べるように弁体3の当該回転状態によって通過する冷媒の流量(冷媒の流れを符号Fで示す)が変更される。
【0004】
なお、弁体3の回転は、弁本体1の上面部に備えられる駆動装置(図示せず)により行われ、当該駆動装置の駆動力を弁体3に伝えるため、上方から弁体3の上部殻壁に駆動シャフト(図示せず)が接続される(
図10中の符号6は当該シャフトを嵌入させる穴を示している)。
【0005】
弁体3は、冷媒が流通可能な流路空間22を内部に備えた中空の球体で、流入孔14を通じて流入する冷媒を当該流路空間22に導入する流入口23を側部に有するとともに、流路空間22から冷媒を排出する流出口24を底部に有する。
【0006】
ここで、弁体底部の流出口24は、弁本体底面の流出孔15に常に対向(正対)して連通状態にあるのに対し、上記弁体3の回転により弁体側部の流入口23は、弁座口14aとの間の相対位置が変更される。すなわち弁体3の流入口23は、弁の全開状態では弁座口14aに正対し、流入孔14を開放する(弁体3の流路空間22と弁本体側面の流入孔14とが完全な連通状態となる)。
【0007】
一方、当該全開状態から弁体3が水平に90°回転した弁の全閉状態では、弁体3の流入口23が弁座口14aから外れ(流入口23と弁座口14aが重なることがなくなり)、弁体3の殻壁(外壁面)によって弁座口14aが閉塞される。また、これら全開状態と全閉状態との間の状態では、流入口23と弁座口14aの重なり合いの程度によって流路面積が変わり、これにより冷媒の通過流量が決定される。
【0008】
また、流路を切り替えるバルブではあるが、当該流路の切り替えをロータシールを回転させることにより行うバルブを開示する文献として下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前記従来のボール弁には、弁の外形サイズ、ならびに製造時の加工性の点で改良の余地がある。
【0011】
具体的には、従来のボール弁では弁体3を横回転させるため、弁体3を両側面から挟むように支持し、弁座口14aを側面に形成する必要がある。このため、弁本体1の幅(弁の水平方向のサイズ)が大きくなってしまう面がある。
【0012】
また、従来のボール弁は、弁本体1の内部(弁体3が設置される弁室2)が方形の形状を有しているが、例えばステンレスや真鍮等の硬質の金属体からなる弁本体1を刳り抜くように切削し、方形の弁室空間を精度良く短時間で形成することは必ずしも容易ではない。例えば、弁室2として円筒形の空間を形成する場合と比べれば方形の空間を形成することは難しく、加工効率は格段に低下する。
【0013】
一方、円錐形の弁体を弁座口に対して直線的に進退動させることにより冷媒の流路面積を変更するニードル弁を使用すれば上記のような問題が生じることはない。ところが、ニードル弁はボール弁と比べ一般に動作速度が遅く、また、弁体が傾いて弁漏れが生じやすい難がある。
【0014】
なお、このような問題は、前記特許文献1に記載の発明によっても解決することは出来ない。
【0015】
したがって、本発明の目的は、動作速度が速く、弁漏れ量が少なく、水平方向のサイズを小さくすることが可能な新たな弁装置の構造を得る点にある。また本発明の更なる目的は、弁装置の加工性を向上させる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係る弁装置は、内部に弁室を有する弁本体と、内部に流路空間を有するとともに回転軸部により弁室内に回転可能に支持され且つ弁室内で回転駆動されることにより流体の流量を変更する弁体と、弁本体に形成され前記流路空間に連通して流体の通過を許容する第1流路孔と、弁本体に形成され弁体の回転変位位置によって前記流路空間との連通状態が変更され前記流路空間に連通したときに流体の通過を許容する第2流路孔と、弁体を回転させる駆動力を弁体に伝達する弁体駆動シャフト(以下単に「駆動シャフト」と言うことがある)を含む伝達機構とを備え、弁体駆動シャフトの回転軸の側面方向から見て、弁体の回転軸と弁体駆動シャフトの回転軸とが互いに交差している。
【0017】
本発明の弁装置では、弁体が横回転する(弁体を駆動するシャフトの回転軸周りに弁体が回転する)従来のボール弁と異なり、弁体を縦方向に(弁体駆動シャフトの回転軸に交差する軸線周りに)回転させる。このため本発明では、従来のように第1流路孔と第2流路孔を共に弁本体の側面部に形成する必要はなく、第1流路孔を弁本体の側面部に形成し、第2流路孔(弁体と協働して流量を変更する弁座口)を側面以外(例えば弁本体の底面)に配置することができ、弁装置の水平方向の寸法を小さくすることが可能となる。
【0018】
特に近年、車内空調だけでなく同時に他の機器(例えばバッテリ)を冷却するニーズがあり、複数の機器に冷媒を供給するため複数の弁本体を横方向に配列して接続したり、弁本体に複数の弁体を横に並べて組み込むことがある。したがってこのような場合に、弁装置(弁本体)の横幅寸法を小さくすることが出来れば、狭いスペースに複数の弁装置(弁本体)を設置することができ、そのようなニーズに応えやすくなる。
【0019】
本発明の弁装置は、典型的には次の各態様(1)~(9)のうちの1以上を備える。
【0020】
(1)弁本体が、当該弁本体の側面部に第1流路孔を有し、第1流路孔の軸線周りのいずれかの周方向位置に第2流路孔を有する。弁体が、第1流路孔と流路空間とを連通させる第1開口部と、開弁時に第2流路孔と流路空間とを連通させる第2開口部と、閉弁時に第2流路孔を閉塞する殻壁部とを有する。また弁体は、第2開口部を介して第2流路孔と流路空間とが連通した開弁状態と、殻壁部により第2流路孔が閉塞された閉弁状態との間で、第1流路孔の軸線周りに回転可能に支持されている。さらに伝達機構が、弁体従動シャフト(以下単に「従動シャフト」と言うことがある)と係合手段とを有する。弁体駆動シャフトは、第1流路孔の軸線方向に延び、弁体駆動シャフトから伝達される駆動力を受けて第1流路孔の軸線周りに回転して当該回転を弁体に伝達する。係合手段は、弁体駆動シャフトの回転を弁体従動シャフトに伝達する。弁体駆動シャフトの回転軸は、第1流路孔の軸線に直交する。
【0021】
(2)弁体が球状の形状を有し、弁室が円形の横断面形状を有し、第2流路孔の弁室側の端縁部に弁座口を備え、弁体は当該弁座口に接触しつつ回転摺動する。
【0022】
このような態様(2)によれば、ニードル弁と異なり弁体が傾き難くなる(傾いても弁座口との間に隙間が出来難くなる)から、閉弁時の弁漏れを防止ないし抑制することが出来る。なお、「球状」とは、完全な球体である必要はなく、例えば一部に平坦な面や孔、凸部、凹部などを備えていても良い。
【0023】
また、弁室が円形の横断面形状、つまり円筒の内部空間のような形状を有することから、弁室の加工(弁本体を例えば切削加工により刳り抜いて弁室を形成する加工)も容易となる。なお、弁室の横断面積は一定である必要はなく、弁室の内周面には段差や突起等があっても良い。
【0024】
(3)上記態様(2)において、第1開口部が、第1流路孔に対向するように形成され、弁体のいずれの回転位置においても流路空間に連通して流体の通過を許容する。一方、第2開口部は、開弁状態において弁座口と重なり合うことにより第2流路孔と流路空間とを連通させる。弁体は、第2開口部と弁座口との重なり合いが最大となる弁の全開状態と、第2開口部が弁座口から外れて殻壁部によって弁座口が閉塞される弁の全閉状態との間で回転可能に支持されている。
【0025】
上記態様(2)~(3)では、弁体は弁座口に接触しつつ回転摺動されるが、この回転により、弁体の第2開口部と弁座口とが重なり合った部分、すなわち弁座口の開口面積(流路面積)が変更され、第1流路孔、弁体内部の流路空間および第2流路孔を通って流れる流体の流量が変更される。
【0026】
より詳しく述べれば、第2開口部が弁座口に正対した(真正面に向き合った)状態では、弁座口の開口面積は最大となり、弁は全開状態となる。この全開状態から弁体が回転すると、弁座口の開口面積は次第に小さくなり、第2開口部が弁座口と重なることが無くなると弁座口の開口面積は零となり、弁は閉弁状態となる。この閉弁状態では、弁体の殻壁部(外壁面)によって弁座口が閉塞され、弁体内部の流路空間と第2流路孔との連通状態は解消され、弁体の流路空間(第1流路孔)と第2流路孔との間の流体の流通は遮断される。
【0027】
なお、本発明に係る弁装置(後述の実施形態のボール弁も同様)では、第1流路孔から流体を流入させて当該流体を第2流路孔から流出させても良いし、逆に、第2流路孔から流体を流入させて当該流体を第1流路孔から流出させるようにしても構わない。
【0028】
また、本発明ないし上記態様に係る弁装置では、弁座口を弁本体の側面ではなく底面に備えることが出来るから、弁の横幅方向のサイズを小さくすることが出来る。さらに、ニードル弁では一般に弁体を弁座口に対して進退動させるために弁体を多数回(複数回)回転させる必要があるのに対し、本発明に係る弁装置では弁体の回転は、弁体の第2開口部が弁座口に正対した開弁(全開)状態と、当該第2開口部が弁座口から外れた(重なることが無くなった)閉弁(全閉)状態との間で行うだけで済む(1回転未満、例えば90°程度すなわち4分の1回転程度回転させるだけで済む)から、迅速な開閉動作が可能である。
【0029】
(4)弁体駆動シャフトが、弁体の垂直方向に延びる中心軸線に沿って延びている。弁体従動シャフトは、弁体の水平方向に延びる中心軸線に沿って延び、弁体の、第1開口部とは反対側の側部殻壁に基端部が固定されている。前記係合手段は、弁体駆動シャフトの先端部と弁体従動シャフトの先端部とに備えられている。
【0030】
(5)前記係合手段が、弁体駆動シャフトに備えられた駆動側傘歯車と、弁体従動シャフトに備えられて駆動側傘歯車と噛み合う従動側傘歯車とを含む。
【0031】
(6)従動側傘歯車の歯数を駆動側傘歯車の歯数より多くする。回転出力の比較的小さな駆動装置でも弁体を確実に駆動することを可能とするためである。
【0032】
(7)弁体駆動シャフトが、弁本体の上部から弁本体の内部を下方に延び弁体の上部殻壁を貫通して流路空間に達し、弁体が、弁体駆動シャフトが貫通する上部殻壁に、第1流路孔の軸線周りの回転を可能とする開口部を備え、当該開口部が、弁の全開状態において弁体駆動シャフトの側面に当接して弁体の回転を停止させる第1ストッパ部と、弁の全閉状態において弁体駆動シャフトの反対側の側面に当接して弁体の回転を停止させる第2ストッパ部を有する。
【0033】
このような態様(7)によれば、全開と全閉の各位置で弁体の回転をより確実に停止させることが出来る。
【0034】
(8)上記開口部が、第1流路孔の軸線に直交する面に対して平行に弁体の殻壁に沿って円弧状に延び、且つ第1流路孔の軸線周りの弁体の回転を許容する一方、弁体駆動シャフトの側面に摺動可能に当接することにより第1流路孔の軸線方向の弁体の移動を規制する案内溝であり、当該案内溝の一端部に上記第1ストッパ部を備え、当該案内溝の他端部に上記第2ストッパ部を備える。
【0035】
このような態様(8)によれば、全開と全閉の各位置で弁体を確実に停止させるだけでなく、回転中に第1流路孔の軸線方向へ弁体が位置ずれすることを防ぎ、第1流路孔の軸線周りに弁体を精度良く回転動作させることが可能となる。
【0036】
(9)前記弁装置が、弁装置を受け入れ可能な弁装着穴と、弁装着穴の内周面に開口し且つ流体の流入路および流出路のうちのいずれか一方となる第1流路と、弁装着穴の底面に開口し且つ流体の流入路および流出路のうちの他方となる第2流路とを備えたハウジング部材の弁装着穴にねじ込むことにより当該ハウジング部材に装着可能な弁装置であり、第2流路孔が弁本体の底面部に形成され、弁装着穴の内周面には雌ねじが備えられ、弁本体は、円筒状の形状を有するとともに、前記雌ねじに螺合する雄ねじを外周面に備え、前記雄ねじを前記雌ねじに螺合させつつ第2流路孔が備えられた底面部側から弁装置を弁装着穴にねじ込んでハウジング部材に装着したときに、第1流路孔がハウジング部材の第1流路に連通し、第2流路孔がハウジング部材の第2流路に連通する。
【0037】
このような態様(9)によれば、例えば、弁装置の製造者が顧客である冷凍サイクル装置の製造者に対して弁装置を提供するような場合に、弁本体の外形サイズや第1流路孔および第2流路孔の位置等の仕様をバルブ製造者と顧客の双方で予め共有しておき、顧客側が上記ハウジング部材を冷凍サイクル装置の一部として作製しておけば、当該ハウジング部材にねじ込むだけの簡便な操作で弁装置を組み込んで冷凍サイクル装置を完成させることが可能となり、顧客は効率良く冷凍サイクル装置を製造することが出来るようになる。また、冷凍サイクル装置のメンテナンス時に弁装置の交換が必要となった場合にも、同様の簡便な操作で交換作業を行うことが出来る。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、動作速度が速く、弁漏れ量が少なく、横幅サイズが小さい弁装置を提供することが出来る。また本発明の典型的な態様によれば、弁装置の加工性を向上させることが出来る。
【0039】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基いて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る弁装置(閉弁状態)の全体構成を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、前記実施形態に係る弁装置(駆動装置、第2軸受部材、第1軸受部材の上部および弁体駆動シャフトの上部等を除く要部)の内部構造を示す一部切欠斜視図である。
【
図3】
図3は、前記実施形態に係る弁装置の弁体の動作(開弁状態)を透視状態で示す斜視図である。
【
図4】
図4は、前記実施形態に係る弁装置の弁体の動作(開弁状態/
図3のX1-X1断面)を示す縦断面図である。
【
図5】
図5は、前記実施形態に係る弁装置の弁体の動作(閉弁状態)を透視状態で示す斜視図である。
【
図6】
図6は、前記実施形態に係る弁装置の弁体の動作(閉弁状態/
図5のX2-X2断面)を示す縦断面図である。
【
図7】
図7は、前記実施形態に係る弁装置の要部(閉弁状態)を示す平面図である。
【
図8】
図8は、前記実施形態に係る弁装置の要部(閉弁状態)を示す底面図である。
【
図9】
図9は、前記実施形態に係る弁装置の要部(閉弁状態/
図7のX3-X3断面)を示す縦断面図である。
【
図10】
図10は、従来の弁装置(ボール弁)の内部構造を示す平面図である。
【
図11】
図11は、前記従来の弁装置(ボール弁)の内部構造(
図10のX4-X4断面)を示す縦断面図である
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1から
図9に示すように、本発明の一実施形態に係る弁装置11は、例えばヒートポンプ式冷暖房システムのような冷凍サイクル装置に備えられたハウジング部材61に装着することにより当該冷凍サイクル装置に組み込んで冷媒の流量を調整する所謂カートリッジタイプのボール弁である。
【0042】
なお、各図には前後方向、左右方向および上下方向を表す互いに直交する二次元または三次元座標を示し、以下、これらの方向に基いて説明を行う。また各図(特に
図2以降)は、本発明に特有の構成である弁体や弁座、弁本体、伝達機構の下部を中心に図示し、弁本体より上部、すなわち駆動装置や第2軸受部材、第1軸受部材の上部、弁体駆動シャフトの上部等は適宜図示を省略している。
【0043】
ハウジング部材61は、ボール弁11を装着可能な弁装着穴62と、弁装着穴62の内周面に開口して冷媒の流入路となる第1流路63と、弁装着穴62の底面に開口して冷媒の流出路となる第2流路64とを備え、弁装着穴62の内周面には当該弁装着穴62内にボール弁11を固定するための雌ねじ65を形成してある。
【0044】
一方、ハウジング部材61に装着されるボール弁11は、内部に弁室13を備えるとともに上面が開口となった円筒状の弁本体12と、弁本体12の上面開口に嵌挿される円筒状の第1軸受部材37と、第1軸受部材37の上面開口に嵌挿される円筒状の第2軸受部材38と、これら第1軸受部材37および第2軸受部材38を含む弁本体12の上面部を覆って弁本体12とともに密閉空間を形成するキャン35と、弁室13内に回転可能に支持することにより冷媒の通過流量を制御する球状の弁体21と、弁体21を駆動するため弁本体12の上面部に備えた駆動装置と、駆動装置の駆動力を弁体21に伝達する伝達機構とを有する。
【0045】
なお、キャン35は、無底有蓋の(底面が開放され天面が閉塞された)円筒状の部材で、第1軸受部材37の上部に被せるように設置し、リング状のベースプレート36を介して第1軸受部材37に接合する。また、弁本体12の上部外周面にはハウジング部材61の前記雌ねじ65に螺合する雄ねじ19を形成してある。
【0046】
さらに弁本体12は、弁室13内に冷媒を流入させる流入孔(第1流路孔)14を側面部(本実施形態では右側部)に有し、冷媒を流出させる流出孔(第2流路孔)15を底面部(下面部)に有する。流出孔15の上面(上縁)には、弁体21が回転摺動可能に当接するリング状の弁座(弁座口)16を備える。弁体21は、この弁座16と、弁座16に対向するように弁座16から上方に一定の距離を隔てて弁室内壁面に形成した弁体支持部17とにより回転摺動可能に、すなわち流入孔14の軸線(および後述の流入口23の軸線)A2周りに回転可能に挟持する。
【0047】
また、ボール弁11をハウジング部材61に装着すると、弁本体12の流入孔14がハウジング部材61の第1流路63に連通し、弁本体12の流出孔15が弁体21によって開閉可能にハウジング部材61の第2流路64に連通することとなる。なお、ハウジング部材61へのボール弁11の装着は、弁本体上部のフランジ部18がハウジング部材61の上面に当接するまで弁本体12をハウジング部材61の弁装着穴62にねじ込む(弁本体周面の雄ねじ19をハウジング部材61の雌ねじ65に螺合させつつ弁本体12を弁装着穴62に嵌入させる)ことにより行う。
【0048】
弁体21は、内部が空洞(流路空間22)となった中空の球体で、当該流路空間22に冷媒を流入させる流入口23を右側部に備えるとともに、流路空間22から冷媒を流出させる流出口24を下部(底部)に備える。弁体21は冷媒流量を調節するために回転駆動されるが、弁体21の流入口23は
弁本体12の流入孔14に対向(正対)するように配置され、弁体21の回転状態(回転変位位置)に拘らず流入孔14と流入口23(弁体内部の流路空間22)とは常に連通状態にある。
【0049】
一方、弁体21の流出口24は、弁体21の回転により弁本体12の流出孔15(弁座16)との相対位置が変わり、弁座16との重なり合いが最大となる弁の全開状態では弁座16(流出孔15)に正対して弁体21の流出口24(流路空間22)と弁本体12の流出孔15が連通状態となる。他方、この全開状態から略90°回転(4分の1回転)すると、弁座16と重なり合うことがなくなり、弁座16(流出孔15)が弁体21の殻壁(弁体の外壁面)21aによって閉塞され、弁は全閉状態となる。
【0050】
またこれら全開状態と全閉状態との中間の状態では、弁体21の流出口24と弁座16との重なり合いが大きくなれば流路断面積が大きくなって冷媒の通過流量が多くなり、当該重なり合いが小さくなれば流路断面積が小さくなって冷媒の通過流量が少なくなり、このようにして冷媒の通過流量が調節される。なお、このような弁体21の動作および機能は、水平な軸線A2周りの形状が円形であれば実現可能であるから、弁体21は完全な球体でなくても「球状」であれば良く、当該「球状」には長球(回転楕円体)や円筒形などの形状も含まれる。
【0051】
弁体21に駆動力を伝達する伝達機構は、後述する駆動装置の出力軸39に上端部が連結されるとともに第2軸受部材38の中心部を通って第1軸受部材37および弁体21の上部殻壁を貫通し弁体内部の流路空間22の上部まで垂直下方に延びる弁体駆動シャフト31と、弁体21の流路空間22内において左右方向(流入孔14の軸線A2方向)に水平に延び、弁体駆動シャフト31を介して駆動装置から伝達される回転駆動力(上下方向の中心軸A1周りの回転力)R1を受けて流入孔14の軸線A2周りに回転する(符号R2参照)弁体従動シャフト33とを含む。
【0052】
また、駆動シャフト31による垂直軸A1周りの回転を水平軸A2周りの回転に変換して従動シャフト33に伝達するため、駆動シャフト31の下端に傘歯車(駆動側傘歯車)32を備えるとともに、従動シャフト33の先端(右端)に駆動側傘歯車32と噛み合う傘歯車(従動側傘歯車)34を備える。これら傘歯車32,34の歯数は、従動側傘歯車34の歯数を駆動側傘歯車32の歯数より多くする。出力の比較的小さな駆動装置でも弁体21を確実に回転駆動することを可能とするためである。なお、図面の各図では各歯車32,34の歯は表していない。
【0053】
従動シャフト33は、その基端部(左端部)33aを弁体21の殻壁(左側の壁面)に固定してある。より具体的には、弁体21の殻壁(左側の壁面)を貫通する貫通孔を穿設し、この貫通孔に弁体21の内部(流路空間22)側から基端部33aを嵌入させることにより従動シャフト33を弁体21に固着する。なお、次に述べる回転軸部33bを弁体21の外側から当該貫通孔に差し込むことが出来るように従動シャフト33の基端部33aは当該貫通孔より短くしてある。したがって、弁体21は従動シャフト33と一緒に回転する。
【0054】
また、弁体21は、回転軸部33bによって弁本体12に回転可能に支持されている。すなわち回転軸部33bは、一端側(左側端部)が弁室13(弁本体12の左側壁面)に固定され、他端側が弁体21の殻壁に穿設した上記貫通孔に弁体21の外部側(弁室13側)から差し込まれて、弁体21を回転可能に支持する。したがって、弁体21は、駆動シャフト31からの回転駆動力を受けると、回転軸部33bの周りに摺動回転する。
【0055】
なお、回転軸部33bは、本実施形態では別部材(1つの独立した部材)として構成したが、他の部材と一体に(他の部材の一部として)形成することも可能である。例えば、弁本体12の一部として弁本体12の壁面を突出させることにより回転軸部33bを形成しても良い。また例えば、上記貫通孔を貫通して弁体21の外まで延びるように従動シャフト33の基端部33aを延長し、この延長した基端部33aを弁室13の内壁に形成した凹部(例えば穴)に回転可能に嵌め込むようにしても良い。
【0056】
さらに駆動シャフト31が貫通している弁体21の回転を可能とするとともに弁体21の横ずれ(回転方向に交差する方向への位置ずれ)を防ぐため、スリット状の開口となった案内溝25を弁体21に形成する。この案内溝25は、弁体21の殻壁に沿って円弧状に前後方向に延びる。したがって弁体21は、駆動シャフト31が貫通されているにも拘らず流入孔14の軸線A2周りに回転することが可能である。
【0057】
また、案内溝25の両端部、つまり前側の端部25aと後側の端部25bは弁体21の回転を停止させるストッパ部となっている。すなわち、開弁(全開)時には案内溝25の前側の端部25aが駆動シャフト31の側面に当接し、閉弁時には案内溝25の後側の端部25bが駆動シャフト31の反対側の側面に当接してそれぞれ弁体21の回転を確実に止める。
【0058】
さらに、案内溝25はその幅が駆動シャフト31の外径と略等しく、当該案内溝25を形成する一対の対向内壁面が、弁体21の回転摺動を許容しつつ駆動シャフト31の両側面(左側面および右側面)に接触している。つまり、駆動シャフト31を左右両側から挟み込む案内溝25に沿って弁体21が回転する。したがって、回転時に弁体21が横ずれしたり傾くことを防ぐことができ、弁体21の安定した回転に基づく確実な弁の開閉動作を実現することが出来る。
【0059】
駆動装置は、本実施形態ではキャン35の外周(外側)に備えたステータとなるモールド組立体42およびキャン35の内周(内側)に回転自在に設置したロータ47からなるステッピングモータ41と、ステッピングモータ41の回転を減速する減速機構(不思議遊星歯車減速機構)56とからなる。
【0060】
ステータ(モールド組立体)42は、ヨーク43、ボビン44、コイル45、樹脂モールドカバー46を含む。また、ロータ47は、磁性材料で作製された円筒状のロータ部材47aと、樹脂材料で作製した太陽ギヤ部材48とを一体に連結して構成する。太陽ギヤ部材48の中心部にはシャフト49を挿入し、シャフト49の上部はキャン35の頂部内側に配置した支持部材50により支持する。
【0061】
太陽ギヤ部材48の太陽ギヤ48aは、出力ギヤ55の底面上に載置したキャリア54に設けたシャフト52に回転自在に支持させた複数の遊星ギヤ51に噛み合っている。遊星ギヤ51の上部は、弁本体12の上部に固定した円筒部材40の上部に取り付けた環状のリングギヤ(内歯固定ギヤ)57に噛み合い、遊星ギヤ51の下部は、環状の出力ギヤ55の内歯ギヤ53に噛み合っている。リングギヤ57の歯数と出力ギヤ55の内歯ギヤ53の歯数とは僅かに異なる歯数としてあり、これにより、太陽ギヤ48aの回転数が大きな減速比で減速されて出力ギヤ55に伝達される。なお、これらの歯車機構(太陽ギヤ48a、遊星ギヤ51、リングギヤ57および出力ギヤ55)は、前述したステッピングモータ41の回転を減速する減速機構(不思議遊星歯車減速機構)56を構成するものである。
【0062】
出力ギヤ55は、第2軸受部材38の上面に回転摺動可能に接触している。また、出力ギヤ55の底部中央には段付き円筒状の出力軸31の上部を圧入することにより連結し、出力軸39の下部は第2軸受部材38の中心部上面部に形成した嵌挿穴38aに回転可能に挿入する。また、出力軸39の上部には、シャフト49の下端部を相対回転可能に嵌め込んである。
【0063】
さらに、出力ギヤ55に連結した出力軸39の下端部にはスリット状の嵌合溝39aを形成する一方、弁体駆動シャフト31の上端部には当該嵌合溝39aに嵌入可能なマイナスドライバ形状の板状部31aを形成する。そして、板状部31aを嵌合溝39aに嵌入することにより駆動シャフト31と出力軸39とを連結し、出力軸39を介して出力ギヤ55の回転運動を駆動シャフト31に伝達できるようにする。
【0064】
このように構成した本実施形態のボール弁11では、ステッピングモータ41による回転駆動力は、減速機構56ならびに伝達機構(駆動シャフト31および従動シャフト33)を介して弁体21に伝達され、既に述べたように弁体21の回転変位量(回転変位位置)を変えることにより冷媒流量を調整することが出来る。また、本実施形態のボール弁11によれば、冷凍サイクル装置の組立時、あるいはボール弁11の交換時に、ハウジング部材61の弁装着穴62にボール弁11をねじ込むだけの簡単な操作でボール弁11を冷凍サイクル装置に組み込むことが出来るから、作業性良く冷凍サイクル装置を構築しあるいはメンテナンス作業を行うことが出来る。
【0065】
さらに本実施形態のボール弁11では、弁体21を挟持する弁座16と弁体支持部17を上下に配置するから水平方向の弁の外形サイズを小さくすることが出来る。また、弁体21が球状で案内溝25によって左右方向の位置ずれが規制されるから弁体21の横ずれや傾きが生じ難く、弁漏れ量を低減することが出来る。
【0066】
また、案内溝25の両端部(前側端部25aおよび後側端部25b)に当接させることで弁体21の回転を確実に停止させて全開および全閉の状態を維持することが出来る。さらに、全開と全閉の間でも弁体21を4分の1回転させるだけで良いから、迅速な開閉や流量調整が可能である。また、駆動装置としてステッピングモータ41を使用するから、弁体21の回転角度を正確に決定することが可能で、精度の高い流量制御を行うことが出来る。
【0067】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
【0068】
例えば、弁体駆動シャフト31の回転を弁体従動シャフト33に伝達する係合手段として傘歯車32,34を用いたが、例えばウォームギヤのような他の係合手段を使用することも可能である。また、弁体21の垂直軸A1回りの回転を抑えるように、弁体支持部17、弁座16もしくは弁体21を構成すれば回転軸部33bを備えない構成であっても従動シャフト33の軸回りに弁体21を回転させることは可能である。このような構成として例えば、弁座や弁体支持部の形状を変更し、ボール弁として円筒形状の弁体(中心軸が水平軸A2と略平行な円筒弁体)を配置する構成が考えられる。
【0069】
また、本発明のボール弁は、典型的にはエアコン(空気調和機)や冷凍庫・冷蔵庫など冷媒回路を備えた冷凍サイクル装置に好ましく使用することが出来るものであるが、使用用途は必ずしもこれらに限られるものではなく、他にも様々な用途に本発明や各態様に係るボール弁を用いることが可能である。したがって、本発明および各態様に言う「流体」には熱媒体(冷媒や熱媒)のほか、各種の液体や気体(ガス)が含まれる。
【符号の説明】
【0070】
A1 上下方向の中心軸(垂直軸)
A2 流入孔(流入口)の軸線(水平軸)
A3 前後方向の軸線
F 冷媒の流れ
R1,R3 上下方向の中心軸A1周りの回転
R2 流入孔の軸線A2周りの回転
1,12 弁本体
2,13 弁室
3,21 弁体
4,5 弁体支持部材
6 駆動シャフト嵌入穴
11 弁装置(ボール弁)
14 流入孔(第1流路孔)
14a,16 弁座(弁座口)
15 流出孔(第2流路孔)
17 弁体支持部
18 フランジ部
19 雄ねじ
21a 弁体の殻壁
22 流路空間
23 流入口
24 流出口
25 案内溝
25a 案内溝の前側の端部(ストッパ部)
25b 案内溝の後側の端部(ストッパ部)
31 弁体駆動シャフト
31a 板状部
32 駆動側傘歯車
33 従動シャフト
33a 従動シャフトの基端部
33b 回転軸部
34 従動側傘歯車
35 キャン
36 ベースプレート
37 第1軸受部材
38 第2軸受部材
39 出力軸
39a 嵌合溝
40 円筒部材
41 ステッピングモータ
42 ステータ(モールド組立体)
43 ヨーク
44 ボビン
45 コイル
46 樹脂モールドカバー
47 ロータ
47a ロータ部材
48 太陽ギヤ部材
48a 太陽ギヤ
49,52 シャフト
50 支持部材
51 遊星ギヤ
53 内歯ギヤ
54 キャリア
55 出力ギヤ
56 減速機構(不思議遊星歯車減速機構)
57 リングギヤ
61 ハウジング部材
62 弁装着穴
63 第1流路(流入路)
64 第2流路(流出路)
65 雌ねじ