IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三洋電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電池 図1
  • 特開-電池 図2
  • 特開-電池 図3
  • 特開-電池 図4
  • 特開-電池 図5
  • 特開-電池 図6
  • 特開-電池 図7
  • 特開-電池 図8
  • 特開-電池 図9
  • 特開-電池 図10
  • 特開-電池 図11
  • 特開-電池 図12
  • 特開-電池 図13
  • 特開-電池 図14
  • 特開-電池 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086836
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20240621BHJP
   H01M 50/536 20210101ALI20240621BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20240621BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20240621BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/536
H01M10/058
H01M10/052
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024062775
(22)【出願日】2024-04-09
(62)【分割の表示】P 2021537613の分割
【原出願日】2020-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2019145421
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】脇元 亮一
(57)【要約】
【課題】電池容量を減少させることなく電極体内部への異物の侵入を効果的に抑制することができる電池を提供する。
【解決手段】正極板と負極板とがセパレータを介して積層され、かつ正極板に第1正極タブ群40Aが設けられた電極体3と、開口を有し、電極体3を収容する外装体と、開口を封口する封口板2と、封口板2に取り付けられた正極端子7と、電極体3と封口板2との間に封口板2と略平行に配置され、かつ正極端子7に電気的に接続された略板状の正極集電体6とを備えた電池において、正極集電体6の電極体3側の面に電極体3の正極タブ群40Aを溶接し、正極集電体6の封口板2側の面における正極タブ群40Aの溶接領域の裏側に相当する領域を、第2のテープ82によって覆う。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と負極板とがセパレータを介して積層され、かつ前記正極板及び前記負極板の少なくとも一方にタブ部が設けられた電極体と、
開口を有し、前記電極体を収容する外装体と、
前記開口を封口する封口板と、
前記封口板に取り付けられた外部端子と、
前記電極体と前記封口板との間に前記封口板と略平行に配置され、かつ前記外部端子に電気的に接続された略板状の集電体とを備えた電池であって、
前記集電体の電極体側の面には、前記電極体のタブ部が溶接され、
前記集電体の封口板側の面における前記タブ部の溶接領域の裏側に相当する領域、封口板側被覆部材が貼られていることを特徴とする電池。
【請求項2】
請求項1に記載の電池において、
前記封口板には、内部側絶縁部材が固定され、当該内部側絶縁部材の電極体側の面には、平坦な平坦領域が形成され、
前記集電体は、封口板側の面に第1領域、及び当該第1領域よりも電極体側に位置する第2領域が形成された略板状の第1集電体と、前記第1集電体の第2領域に溶接された略板状の第2集電体とを備え、前記第2集電体の厚さは、前記第1集電体の第1領域及び第2領域の段差と、前記封口板側被覆部材の厚さとの合計よりも大きく設定され、
前記第1集電体の第1領域が前記封口板側被覆部材によって覆われ、
前記第2集電体の封口板側の面が前記内部側絶縁部材の平坦領域に当接している一方、前記第2集電体の電極体側の面が前記第1集電体の第2領域に当接していることを特徴とする電池。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電池において、
前記タブ部における前記集電体との溶接部分が、電極体側被覆部材によって覆われていることを特徴とする電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV、PHEV)の駆動用電源、太陽光発電、風力発電等の出力変動を抑制するための用途や夜間に電力をためて昼間に利用するための系統電力のピークシフト用途等の定置用蓄電池システム等において、アルカリ二次電池や非水電解質二次電池などの電池が使用されている。
【0003】
上記の電池は、その組み立て中等に異物が混入する場合があり、特に混入した異物が金属異物であると、内部短絡が引き起こされる場合がある。内部短絡のメカニズムとしては以下の通りである。
【0004】
まず、金属異物が正極材料に付着すると、正極の高い電位によって電解液中に金属イオンとして溶解し、その金属イオンが負極に到達すると金属として析出する。そして、金属が正極に向かって成長するように析出し、金属がセパレータを突き破り正極に接触すると内部短絡が引き起こされる。
【0005】
電池内へ金属異物等の異物が混入することを防止するために、通常、二次電池の組み立てはクリーンルームで行われる。また、組み立て中に電極体に付着した金属異物は、エアブロー、吸引、磁力吸着、研磨テープによる拭き取り等により除去される。
【0006】
特許文献1には、袋状の多孔質体に電極体を挿入し、電極体が挿入された多孔質体を密閉容器に挿入して形成される密閉型電池が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-87812号公報
【発明の概要】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、電極体と密閉容器の蓋との間に多孔質体を配置する方法やメリットについては具体的に説明されておらず、その具体的方法が不明である。また、袋状の多孔質体を使用するので、その分だけ活物質の量が減少して電池容量が少なくなってしまう。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電池容量を減少させることなく電極体内部への異物の侵入を効果的に抑制することができる電池を提供することにある。
【0010】
本発明の電池は、正極板と負極板とがセパレータを介して積層され、かつ前記正極板及び前記負極板の少なくとも一方にタブ部が設けられた電極体と、開口を有し、前記電極体を収容する外装体と、前記開口を封口する封口板と、前記封口板に取り付けられた外部端子と、前記電極体と前記封口板との間に前記封口板と略平行に配置され、かつ前記外部端子に電気的に接続された略板状の集電体とを備えた電池であって、前記集電体の電極体側の面には、前記電極体のタブ部が溶接され、前記集電体の封口板側の面における前記タブ部の溶接領域の裏側に相当する領域、封口板側被覆部材が貼られている構成を備えている。
【0011】
前記封口板には、内部側絶縁部材が固定され、当該内部側絶縁部材の電極体側の面には、平坦な平坦領域が形成され、前記集電体は、封口板側の面に第1領域、及び当該第1領域よりも電極体側に位置する第2領域が形成された略板状の第1集電体と、前記第1集電体の第2領域に溶接された略板状の第2集電体とを備え、前記第2集電体の厚さは、前記第1集電体の第1領域及び第2領域の段差と、前記封口板側被覆部材の厚さとの合計よりも大きく設定され、前記第1集電体の第1領域が前記封口板側被覆部材によって覆われ、前記第2集電体の封口板側の面が前記内部側絶縁部材の平坦領域に当接している一方、前記第2集電体の電極体側の面が前記第1集電体の第2領域に当接していてもよい。
【0012】
前記タブ部における前記集電体との溶接部分が、電極体側被覆部材によって覆われていてもよい。
【0013】
なお、本発明の電池は、正極板と負極板とがセパレータを介して積層され、かつ前記正極板に正極タブが設けられるとともに、前記負極板に負極タブが設けられた電極体と、開口を有し、前記電極体を収容する外装体と、前記開口を封口する封口板と、前記封口板に取り付けられた正極端子及び負極端子と、前記電極体と前記封口板との間に前記封口板と略平行に配置され、かつ前記正極端子に電気的に接続された略板状の正極集電体、及び前記電極体と前記封口板との間に前記封口板と略平行に配置され、かつ前記負極端子に電気的に接続された略板状の負極集電体とを備えた電池であって、前記正極集電体の電極体側の面には、前記電極体の正極タブが溶接され、前記負極集電体の電極体側の面には、前記電極体の負極タブが溶接され、前記正極集電体の封口板側の面における前記正極タブの溶接領域の裏側に相当する領域が第1封口板側被覆部材によって覆われており、前記負極集電体の封口板側の面における前記負極タブの溶接領域の裏側に相当する領域が、第2封口板側被覆部材によって覆われている構成であってもよい。
【0014】
本発明の電池は、集電体の封口板側の面における前記タブ部の溶接領域の裏側に相当する領域が、封口板側被覆部材によって覆われているので、溶接時に発生して集電体の封口板側の面に付着した粉塵が電極体の内部に侵入するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る二次電池の斜視図である。
図2図1におけるII-II線に沿った断面図である。
図3】正極板の平面図である。
図4】負極板の平面図である。
図5】電極体の平面図である。
図6】第1正極集電体(正極集電体)の平面図である。
図7】第1負極集電体(負極集電体)の平面図である。
図8】第1正極集電体に正極タブ群を接続し、第1負極集電体に負極タブ群を接続した状態を示す図である。
図9】第2正極集電体及び第2負極集電体を取り付けた後の封口板の電極体側の面を示す図である。
図10】第2正極集電体に第1正極集電体を取り付け、第2負極集電体に第1負極集電体を取り付けた後の封口板の電極体側の面を示す図である。
図11図10の状態に第1、第3及び第4のテープを取り付けた図である。
図12図11の状態にカバー部材を取り付けた図である。
図13図1におけるXIII-XIII線に沿った断面図である。
図14図1におけるXIV-XIV線に沿った断面図である。
図15図8の状態に第2及び第5のテープを取り付けた図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
【0017】
(実施形態)
実施形態に係る二次電池としての角形二次電池20の構成を以下に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0018】
図1及び図2に示すように角形二次電池20は、開口を有する有底角筒状の角形外装体1と、角形外装体1の開口を封口する略長方形板状の封口板2からなる電池ケース100を備える。角形外装体1及び封口板2は、それぞれ金属製であることが好ましく、アルミニウム又はアルミニウム合金製であることが好ましい。封口板2の長手方向両端部近傍には、正極端子挿入孔2a及び負極端子挿入孔2bが形成されている。封口板2の封口板2の長手方向中央よりも正極端子挿入孔2a寄りには、電解液注液孔15が設けられており、電解液注液孔15は電解液の注液後に封止部材(不図示)によって封止される。封口板2の長手方向中央には、電池ケース100内の圧力が所定値以上となったときに破断して、電池ケース100内のガスを電池ケース100外に排出するガス排出弁17が設けられている。
【0019】
角形外装体1は、図3に示す正極板4と図4に示す負極板5とがセパレータを介して積層された電極体3を、電解質と共に収容している。正極板4は正極タブ40を有し、負極板5は負極タブ50を有している。
【0020】
図5に示すように、電極体3の封口板2側の端部には、封口板2側に突出する複数の正極タブ(タブ部)40からなる正極タブ群40Aと、封口板2側に突出する複数の負極タブ(タブ部)50からなる負極タブ群50Aが封口板2の長手方向に間隔を空けて設けられている。正極タブ群40Aは第1正極集電体6a及び第2正極集電体6bを介して正極端子7に電気的に接続されている。負極タブ群50Aは第1負極集電体8a及び第2負極集電体8bを介して負極端子9に電気的に接続されている。
【0021】
電極体3は、図8に示すように、セパレータを介して積層された複数の正極板4及び負極板5で構成された第1電極体要素3a及び第2電極体要素3bからなる。これら2つの電極体要素3a,3bは同じ構造を有している。第1電極体要素3aは、第1正極タブ群40A1及び第1負極タブ群50A1を備え、第2電極体要素3bは、第2正極タブ群40A2及び第2負極タブ群50A2を備える。
【0022】
第1正極集電体6aは、図6及び図13にも示すように、封口板2と略平行な板状に形成されている。詳しくは、第1正極集電体6aの封口板2長手方向一端(反負極端子9側の端)寄りには、段差部6cが形成され、当該段差部6cよりも封口板2長手方向他端側の領域が、主板部6dを構成し、当該段差部6cよりも上記封口板2長手方向一端側の領域が、主板部6dよりも電極体3側に位置する電極体側板部6eを構成している。主板部6dには、封口板2の電解液注液孔15と対向する位置に集電体貫通孔6fが形成されている。電極体側板部6eには、薄肉部6gが形成されている。
【0023】
第2正極集電体6bは、封口板2と略平行な板状に形成されている。
【0024】
第1正極集電体6aの電極体側板部6eの薄肉部6gは、第2正極集電体6bに電極体3側から一体に溶接されている。第1正極集電体6aと第2正極集電体6bとで正極集電体6が構成されている。
【0025】
第1正極集電体6a、第2正極集電体6b、及び正極端子7は金属製であることが好ましく、アルミニウム又はアルミニウム合金製であることがより好ましい。
【0026】
正極端子7と封口板2の間には樹脂製の外部側絶縁部材10が配置されている。また、封口板2の正極端子挿入孔2a周りの電池内部側(電極体3側)には、第1内部側絶縁部材18が配設されている。第1内部側絶縁部材18は、封口板2に電池内部側から当接している。外部側絶縁部材10及び第1内部側絶縁部材18における封口板2の正極端子挿入孔2aに対応する部分は、正極端子7挿入用の貫通孔が形成されている。第1内部側絶縁部材18の電池内部側(電極体3側)には、カップ状の導電部材65がその開口部を電池内部側に向けて配設されている。また、導電部材65には、端子接続孔が貫通形成されている。また、導電部材65の電池内部側には、円盤状の変形板66が導電部材65の開口部を塞ぐように配置されている。変形板66の周縁が導電部材65に溶接接続されることにより、導電部材65の開口部が密封されている。なお、導電部材65及び変形板66はそれぞれ金属製であることが好ましく、アルミニウム又はアルミニウム合金製であることがより好ましい。
【0027】
第1正極集電体6a及び第2正極集電体6bと封口板2の間には樹脂製の第2内部側絶縁部材11が配置されている。第2内部側絶縁部材11は、封口板2の電解液注液孔15周り及び変形板66に電池内部側から当接している。第2内部側絶縁部材11における封口板2の電解液注液孔15と対向する部分には、注液開口11aが設けられている。また、注液開口11aの縁部には筒状部11bが電池内部側に向けて突設されている。さらに、筒状部11bの縁の2箇所から電池内部側に突き出して当該2箇所をブリッジ状に連結する開口覆い部11cが設けられている。また、第2内部側絶縁部材11には、変形板66の一部と重なる貫通孔が形成されている。
【0028】
図8に示すように、第1正極集電体6aの主板部6dの電極体3側の面における集電体貫通孔6fを封口板2短手方向両側から挟む2領域には、第1正極タブ群40A1の先端部及び第2正極タブ群40A2の先端部がそれぞれ溶接されている。つまり、第1正極タブ群40A1の先端部の溶接領域と第2正極タブ群40A2の先端部の溶接領域とは、集電体貫通孔6fを挟んで封口板2短手方向に互いに間隔を空けている。図8中、第1正極タブ群40A1の先端部、すなわち溶接部分を、符号60aで示し、第2正極タブ群40A2の先端部、すなわち溶接部分を、符号60bで示す。そして、図11に示すように、第1正極タブ群40A1及び第2正極タブ群40A2の溶接部分60a,60bと、第1正極集電体6aの電極体3側の面におけるこれら溶接部分60a,60bに封口板2短手方向両側から挟まれた領域とが、電極体側被覆部材としての第1のテープ81によって電極体3側から覆われている。第1のテープ81の封口板2短手方向両端部は、第1正極タブ群40A1及び第2正極タブ群40A2の溶接部分60a,60bに貼り付けられている。一方、第1のテープ81の封口板2短手方向中途部は、第1正極集電体6aの集電体貫通孔6f、第2内部側絶縁部材11の注液開口11a、開口覆い部11c、及び封口板2の電解液注液孔15との間に隙間を有している。
【0029】
また、図15にも示すように、第1正極集電体6aの主板部6dの封口板2側の面における前記第1正極タブ群40A1及び第2正極タブ群40A2の溶接領域の裏側に相当する領域は、それぞれ長方形状の封口板側被覆部材としての第2のテープ82によって覆われている。第2のテープ82は、その全体に亘って第1正極集電体6aに貼り付けられている。
【0030】
また、第1正極集電体6aの電極体側板部6eには、第3のテープ83が電極体3側から貼り付けられて第1正極集電体6aにおける第2正極集電体6bとの溶接部分を覆っている。
【0031】
第1負極集電体8aは、図7及び図14にも示すように、封口板2と略平行な板状に形成されている。詳しくは、第1負極集電体8aの封口板2長手方向一端(反正極端子7側の端)寄りには、段部8cが形成され、当該段部8cよりも封口板2長手方向他端側の領域が、第1板状部8dを構成し、当該段部8cよりも上記封口板長手方向一端側の領域が、第1板状部8dよりも電極体3側に位置する第2板状部8eを構成している。第1板状部8dの封口板2側の面が第1領域RE1を構成し、第2板状部8eの封口板2側の面が第1領域RE1よりも電極体3側に位置する第2領域RE2を構成している。図14中、第1領域RE1及び第2領域RE2の段差を符号Dで示す。第2板状部8eの電極体3側の面には、封口板2側に凹む凹部8fが形成されている。当該凹部8fには、薄肉部8gが形成されている。
【0032】
第2負極集電体8bは、封口板2と略平行な板状に形成されている。第2負極集電体8bには、端子接続孔が形成されている。図14中、第2負極集電体8bの厚さを符号T1で示す。
【0033】
第2負極集電体8bは、第1負極集電体8aの第2板状部8eの薄肉部8g(第2領域RE)に一体に溶接され、第2負極集電体8bの電極体3側の面は、第1負極集電体8aの第2領域RE2に当接している。第1負極集電体8aと第2負極集電体8bとで負極集電体8が構成されている。
【0034】
第2負極集電体8b、第1負極集電体8a及び負極端子9は金属製であることが好ましく、銅又は銅合金製であることがより好ましい。また、負極端子9は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる部分と、銅又は銅合金からなる部分を有するようにすることが好ましい。この場合、銅又は銅合金からなる部分を第2負極集電体8bに接続し、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる部分を封口板2よりも外部側に突出するようにすることが好ましい。
【0035】
負極端子9と封口板2の間には樹脂製の外部側絶縁部材12が配置されている。第2負極集電体8b及び第1負極集電体8aと封口板2の間には樹脂製の内部側絶縁部材13が配置されている。内部側絶縁部材13は、封口板2に電池内部側から当接した状態で固定されている。外部側絶縁部材12及び内部側絶縁部材13における封口板2の負極端子挿入孔2bに対応する位置には、貫通孔が形成されている。
【0036】
内部側絶縁部材13の電極体3側の面には、平坦な平坦領域FREが形成されている。当該平坦領域FREには、第2負極集電体8bの封口板2側の面が当接している。
【0037】
第1負極集電体8aの第1板状部8dの電極体3側の面には、第1負極タブ群50A1の先端部及び第2負極タブ群50A2の先端部がそれぞれ溶接されている。つまり、第1負極タブ群50A1の先端部の溶接領域と第2負極タブ群50A2の先端部の溶接領域とは、封口板2短手方向に互いに間隔を空けている。図8中、第1負極タブ群50A1の先端部、すなわち溶接部分を、符号61aで示し、第2負極タブ群50A2の先端部、すなわち溶接部分を、符号61bで示す。そして、第1負極タブ群50A1の先端部及び第2負極タブ群50A2の先端部、すなわち第1負極タブ群50A1及び第2負極タブ群50A2の溶接部分61a,61bと、第1板状部8dの電極体3側の面におけるこれら溶接部分61a,61bに封口板2短手方向両側から挟まれた領域と、第2板状部8eにおける第2負極集電体8bとの溶接部分が、電極体側被覆部材としての1枚の第4のテープ84によって電極体3側から覆われている。第4のテープ84は、第1負極タブ群50A1及び第2負極タブ群50A2の溶接部分61a,61bと、第2板状部8eの凹部8f非形成領域とに貼り付けられている。
【0038】
また、第1負極集電体8aの第1板状部8dの封口板2側の面、すなわち第1領域RE1には、その外周端部を除く全体に亘って封口板側被覆部材としての1枚の第5のテープ85が貼り付けられている。この第5のテープ85は、第1負極集電体8aの第1板状部8dの封口板2側の面(第1領域RE1)における第1負極タブ群50A1及び第2負極タブ群50A2の溶接領域の裏側に相当する2領域を覆っている。
【0039】
第1~第5のテープ81~85は、ポリプロピレンフィルムからなる基材と、当該ポリプロピレンフィルムの一方の面に塗布されたゴム系の粘着剤からなる粘着層とで構成されている。第1~第5のテープ81~85の厚さは、互いに等しく設定されている。図14中、第5のテープ85の厚さを符号T2で示す。第2負極集電体8bの厚さT1は、第1負極集電体8aの第1領域RE1及び第2領域RE2の段差Dと、第5のテープ85の厚さT2との合計よりも大きく設定されている。
【0040】
電極体3と角形外装体1の間には樹脂製の樹脂シートからなる電極体ホルダー14が配置されている。電極体ホルダー14は、樹脂製の絶縁シートを袋状又は箱状に折り曲げ成形されたものであることが好ましい。この電極体ホルダー14により、電極体3と角形外装体1との間が確実に電気的に絶縁状態として保持されている。
【0041】
次に角形二次電池20の製造方法及び各構成の詳細を説明する。
【0042】
[正極板]
まず、正極板4の製造方法を説明する。
【0043】
[正極活物質合剤層スラリーの作製]
例えば正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混練して作成する。正極活物質としては、例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等のリチウム複合酸化物等が挙げられる。結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂等が挙げられる。導電剤としては、カーボンブラック等の炭素材料等が挙げられる。
【0044】
[正極保護層スラリーの作製]
アルミナ粉末、導電剤としての黒鉛、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)と分散媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)などを混練し、保護層スラリーを作製する。
【0045】
[正極活物質合剤層及び正極保護層の形成]
正極芯体としての厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に、上述の方法で作製した正極活物質合剤層スラリー及び正極保護層スラリーをダイコータにより塗布する。また、正極活物質合剤層スラリーが塗布される領域の幅方向の少なくともどちらか一方の端部に正極保護層スラリーが塗布されるようにする。
【0046】
正極活物質合剤層スラリー及び正極保護層スラリーが塗布された正極芯体を乾燥させて、スラリー中のNMPを除去する。これにより正極活物質合剤層及び保護層が形成される。その後、一対のプレスローラの間を通過させることにより、正極活物質合剤層を圧縮して正極原板とする。この正極原板を所定のサイズにカットして図3に示す正極板4を作成する。正極板4は矩形であって、上辺から正極タブ40が突き出している。正極板4の上辺部分に沿って幅狭の正極保護層4cが形成されており、正極保護層4cの下から正極板4の下辺まで正極活物質合剤層4bが形成されている。なお、上述のように正極タブ40は正極芯体から形成されてもよいし、別の部材を正極板4に接続して正極タブ40としてもよい。
【0047】
[負極板]
次に、負極板5の製造方法を説明する。
【0048】
[負極活物質合剤層スラリーの作製]
負極活物質と、導電剤と、結着剤と、増粘剤を混練して作成。負極活物質としては、例えば、黒鉛等の炭素材料等が挙げられる。結着剤としては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。
【0049】
[負極活物質合剤層の形成]
負極芯体としての厚さ8μmの銅箔の両面に、上述の方法で作製した負極活物質合剤層スラリーをダイコータにより塗布する。
【0050】
負極活物質合剤層スラリーが塗布された負極芯体を乾燥させ、スラリー中の水を除去する。これにより負極活物質合剤層が形成される。その後、一対のプレスローラの間を通過させることにより、負極活物質合剤層を圧縮して負極原板とする。この負極原板を所定のサイズにカットして図4に示す負極板5を作成する。負極板5は矩形であって、上辺から負極タブ50が突き出している。負極タブ50を除いた負極芯体の全面に負極活物質合剤層5bが形成されている。なお、上述のように負極タブ50は負極芯体から形成されてもよいし、別の部材を負極板5に接続して負極タブ50としてもよい。
【0051】
[電極体の作製]
上述の方法で作製した複数の正極板4及び負極板5を、セパレータを介して積層し、積層型の電極体3を製造する。電極体3に含まれる正極板4及び負極板5のそれぞれの数は特に限定されないが、数十枚以上が好ましい。詳しくは、第1電極体要素3aと第2電極体要素3bとを電極体3として作製する。
【0052】
[集電体とタブの接続]
そして、図8に示すように、第1電極体要素3aの第1正極タブ群40A1及び第2電極体要素3bの第2正極タブ群40A2を、図6に示す第1正極集電体6a(正極集電体6)の主板部6dの一方の面に溶接するとともに、第1電極体要素3aの第1負極タブ群50A1及び第2電極体要素3bの第2負極タブ群50A2を、図7に示す第1負極集電体8a(負極集電体8)の第1板状部8dの一方の面に溶接する。
【0053】
正極タブ群40Aと第1正極集電体6aとの溶接接続及び負極タブ群50Aと第1負極集電体8aとの溶接接続は、超音波溶接、抵抗溶接、レーザー溶接等により行うことができる。本実施形態では超音波溶接によって溶接接続がなされている。
【0054】
その後、図15に示すように、第1正極集電体6aの主板部6dの他方の面に、2枚の第2のテープ82を貼り付けるとともに、第1負極集電体8aの第1板状部8dの他方の面に第5のテープ85を貼り付ける。これにより、第2のテープ82が、第1正極集電体6aにおける正極タブ群40Aの接続面の反対側の面に付着した異物、特に正極タブ群40Aの溶接工程において発生した金属粉を捕捉して、異物が電極体3の内部に侵入するのを抑制できる。同様に、第5のテープ85が、第1負極集電体8aにおける負極タブ群50Aの接続面の反対側の面に付着した異物、特に負極タブ群50Aの溶接工程において発生した金属粉を捕捉して、異物が電極体3の内部に侵入するのを抑制できる。したがって、異物による内部短絡の発生を大きく抑制できる。
【0055】
[封口板への各部品取り付け]
図9は、各部品を取り付けた封口板2の電池内部側の面を示す図である。図2及び図9を用いて、封口板2への各部品取り付けについて説明を行う。
【0056】
封口板2の正極端子挿入孔2aの周囲に外部側絶縁部材10を配置する。封口板2の正極端子挿入孔2aの周囲の電池内面側に第1内部側絶縁部材18及びカップ状の導電部材65を配置する。そして、正極端子7を電池外部側から、外部側絶縁部材10の貫通孔、封口板2の正極端子挿入孔2a、第1内部側絶縁部材18の貫通孔及び導電部材65の端子接続孔に挿入し、正極端子7の先端を導電部材65上にカシメる。これにより、正極端子7及び導電部材65が封口板2に固定される。なお、正極端子7においてカシメられた部分と導電部材65を溶接接続することが好ましい。
【0057】
また、導電部材65の開口部を塞ぐように円盤状の変形板66を配置し、変形板66の周縁を導電部材65に溶接接続する。これにより、導電部材65の開口部が密封される。次に、封口板2の電解液注液孔15周り及び変形板66の電極体3側に、樹脂製の第2内部側絶縁部材11を配置する。それから第2正極集電体6bを第2内部側絶縁部材11の電池内部側に配置して、変形板66と第2正極集電体6bとを第2内部側絶縁部材11の貫通孔を通じて溶接接続する。
【0058】
一方、封口板2の負極端子挿入孔2bの周囲の電池外面側に外部側絶縁部材12を配置する。また、封口板2の負極端子挿入孔2bの周囲の電池内面側に内部側絶縁部材13及び第2負極集電体8bを配置する。そして、負極端子9を電池外部側から、外部側絶縁部材12の貫通孔、封口板2の負極端子挿入孔2b、内部側絶縁部材13の貫通孔及び第2負極集電体8bの端子接続孔に挿入し、負極端子9の先端を第2負極集電体8b上にカシメる。これにより、負極端子9及び第2負極集電体8bが封口板2に固定される。なお、負極端子9においてカシメられた部分と第2負極集電体8bを溶接接続することが好ましい。
【0059】
[第1集電体と第2集電体の接続]
図10は、第2正極集電体6bに第1正極集電体6aを取り付け、第2負極集電体8bに第1負極集電体8aを取り付けた後の封口板2の電池内部側の面を示す図である。
【0060】
第1及び第2正極タブ群40A1,40A2が接続された第1正極集電体6aを、その一部(電極体側板部6e)が第2正極集電体6bと重なるようにして、第2内部側絶縁部材11上に配置する。そして、薄肉部6gにレーザー照射することにより、第1正極集電体6aと第2正極集電体6bを溶接接続する。また、第1及び第2負極タブ群50A1,50A2が接続された第1負極集電体8aを、その一部(第2板状部8e)が第2負極集電体8bと重なるようにして、内部側絶縁部材13上に配置する。そして、薄肉部8gにレーザー照射することにより、第1負極集電体8aと第2負極集電体8bを溶接接続する。このとき、図14に示すように、第2負極集電体8bの厚さT1が、第1負極集電体8aの第1領域RE1及び第2領域RE2の段差Dと、第5のテープ85の厚さT2との合計よりも大きく設定されているので、第1負極集電体8aの第2板状部8eが第2負極集電体8bから浮き上がりにくい。したがって、第1負極集電体8aと第2負極集電体8bとをより確実に溶接できる。
【0061】
なお、本実施形態では、第1正極集電体6aと第2正極集電体6bとをレーザー溶接によって接続したが、超音波溶接、抵抗溶接等により接続してもよい。
【0062】
その後、図11に示すように、第1正極タブ群40A1及び第2正極タブ群40A2の溶接部分60a,60bと、第1正極集電体6aの電極体3側の面におけるこれら溶接部分60a,60bによって封口板2短手方向両側から挟まれた領域とを覆うように上記溶接部分60a,60bに第1のテープ81を貼り付ける。これにより、第1のテープ81が溶接部分60a,60bの周りに存在している異物、特に正極タブ群40Aの溶接工程において発生した金属粉を捕捉して、異物が電極体3の内部に侵入するのを抑制できる。従って、異物による内部短絡の発生を大きく抑制できる。
【0063】
また、第1正極集電体6aにおける第2正極集電体6bとの溶接部分を覆うように、第3のテープ83を第1正極集電体6aの電極体側板部6eの電極体3側の面に貼り付ける。これにより、第3のテープ83が第1正極集電体6aにおける第2正極集電体6bとの溶接部分の周りに存在している異物、特に第1正極集電体6aと第2正極集電体6bとの溶接工程において発生した金属粉を捕捉して、異物が電極体3の内部に侵入するのを抑制できる。従って、異物による内部短絡の発生を大きく抑制できる。
【0064】
さらに、第1負極タブ群50A1及び第2負極タブ群50A2の溶接部分61a,61bと、第1負極集電体8aの電極体3側の面におけるこれら溶接部分61a,61bによって封口板2短手方向両側から挟まれた領域と、第1負極集電体8aにおける第2負極集電体8bとの溶接部分を覆うように、第4のテープ84を第1負極タブ群50A1及び第2負極タブ群50A2の溶接部分61a,61bと、第2板状部8eの凹部8f非形成領域とに電極体3側から貼り付ける。これにより、第4のテープ84が溶接部分61a,61bの周りに存在している異物、特に負極タブ群50Aの溶接工程において発生した金属粉を捕捉して、異物が電極体3の内部に侵入するのを抑制できる。従って、異物による内部短絡の発生を大きく抑制できる。
【0065】
また、第4のテープ84が第1負極集電体8aにおける第2負極集電体8bとの溶接部分も覆うので、第4のテープ84が第1負極集電体8aにおける第2負極集電体8bとの溶接部分の周りに存在している異物、特に第1負極集電体8aと第2負極集電体8bとの溶接工程において発生した金属粉を捕捉して、異物が電極体3の内部に侵入するのを抑制できる。従って、異物による内部短絡の発生を大きく抑制できる。
【0066】
それから、図12に示すように第2正極集電体6b全体と第1正極集電体6aの電極体側板部6eと第3のテープ83とをカバー部材88によって覆う。
【0067】
本実施形態では、第1~第5のテープ81~85の基材を、ポリプロピレンフィルムで構成したが、ポリプロピレンフィルム以外のプラスチックフィルムで構成してもよい。
【0068】
また、第1~第5のテープ81~85の代わりに、熱や光等で硬化する封止樹脂等の塗布材料を被覆部材として用いてもよいし、金属箔や不織布などを用いた粘着シートを用いてもよい。
【0069】
また、第1~第5のテープ81~85の代わりに、粘着層を有さないシートやクッション材を設けてもよい。
【0070】
[二次電池の作製]
次に図12における第1電極体要素3aの上面と第2電極体要素3bの上面とが直接ないし他の部材を介して接するように二つの正極タブ群40A1,40A2及び二つの負極タブ群50A1,50A2を湾曲させる。これにより、二つの電極体要素3a,3bを纏めて1つの電極体3とする。そして、まとめた電極体3を、箱状ないし袋状に成形した絶縁シートからなる電極体ホルダー14内に配置する。
【0071】
電極体ホルダー14で包まれた電極体3を角形外装体1に挿入する。そして、封口板2と角形外装体1を溶接し、角形外装体1の開口を封口板2により封口する。それから、封口板2に設けられた電解液注液孔15を通じて角形外装体1内に電解液を注液する。その後、電解液注液孔15をブラインドリベット等の封止部材により封止する。これにより角形二次電池20が完成する。
【0072】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。
【0073】
電極体3は、正極板4、負極板5及びセパレータを積層したあとで、これを巻回させた構造であってもよい。電極体要素3a,3bも巻回構造とすることができる。
【0074】
上述の実施形態においては、角形外装体1内に二つの電極体要素3a,3bを配置する例を示したが、電極体要素は一つであっても良いし、三つ以上であってもよい。
【0075】
上述の実施形態においては、正極集電体6及び負極集電体8がそれぞれ二つの部品からなる例を示したが、正極集電体6及び負極集電体8はそれぞれ一つの部品から構成されてもよい。
【0076】
上述の実施形態においては、タブ部を正極板4及び負極板5の両方に設けたが、いずれか一方だけに設けてもよい。
【0077】
正極板4、負極板5、セパレータ、及び電解質等に関しては、公知の材料を用いることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 外装体
2 封口板
3 電極体
4 正極板
5 負極板
6 正極集電体
7 正極端子
8 負極集電体
8a 第1負極集電体
8b 第2負極集電体
9 負極端子
13 内部側絶縁部材
40 正極タブ(タブ部)
50 負極タブ(タブ部)
81 第1のテープ(電極体側被覆部材)
82 第2のテープ(封口板側被覆部材)
84 第4のテープ(電極体側被覆部材)
85 第5のテープ(封口板側被覆部材)
FRE 平坦領域
RE1 第1領域
RE2 第2領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15