(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086853
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】細胞により発現される生物学的活性を調節する抗体
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240621BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240621BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240621BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240621BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20240621BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240621BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240621BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240621BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240621BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240621BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240621BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240621BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240621BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240621BHJP
C07K 1/14 20060101ALI20240621BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61K48/00
A61P35/00
A61P31/00
A61P33/00
A61P31/12
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C07K1/14
C12Q1/02
【審査請求】有
【請求項の数】31
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024063367
(22)【出願日】2024-04-10
(62)【分割の表示】P 2020500187の分割
【原出願日】2018-07-06
(31)【優先権主張番号】17180070.9
(32)【優先日】2017-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】510340757
【氏名又は名称】メルス ナムローゼ フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セシリア・アンナ・ヴィルヘルミナ・ゲウイェン
(72)【発明者】
【氏名】リンセ・クローステル
(72)【発明者】
【氏名】コルネリス・アドリアーン・デ・クライフ
(72)【発明者】
【氏名】パウルス・ヨハンネス・タッケン
(72)【発明者】
【氏名】マルク・スロスビー
(72)【発明者】
【氏名】トン・ルグテンベルグ
(57)【要約】
【課題】本発明は、PD-1及び/又はLAG3陽性細胞でのプログラム細胞死1タンパク質(PD-1)及びリンパ球活性化3(LAG3)媒介性阻害を妨害するための手段及び方法を提供する。
【解決手段】方法は、上記細胞を、PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及びLAG3の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体と接触させ、それにより上記細胞でのPD-1及び/又はLAG3媒介性活性を阻害する工程を含んでいてもよい。また、本発明は、PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及びLAG3の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD-1及び/又はLAG3陽性細胞でのプログラム細胞死1タンパク質(PD-1)及びリンパ球活性化3(LAG3)媒介性阻害を妨害するための方法であって、前記細胞を、
- PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン、及び
- LAG3の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン
を含む抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体と接触させ、それにより前記細胞でのPD-1及び/又はLAG3媒介性活性を阻害する工程を含む方法。
【請求項2】
前記PD-1結合可変ドメインとPD-1との結合は、PD-1とPD-L1及び/又はPD-L2との結合を阻止する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
免疫シナプスの形成、安定性、及び/又は活性を刺激するための方法であって、免疫シナプスにより互いに会合することが可能な少なくとも2つの細胞を含む系を準備する工程、及び前記系に、
- PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン、及び
- LAG3の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン
を含む抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体を提供し、
それにより前記少なくとも2つの細胞間の免疫シナプスの形成、安定性、及び/又は活性を刺激する工程
を含む方法。
【請求項4】
PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及びLAG3の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体。
【請求項5】
PD-1に結合する前記可変ドメインの結合は、PD-1とPD-L1及び/又はPD-L2との結合を阻止する、請求項4に記載の抗体又はその変異体。
【請求項6】
前記LAG-3結合可変ドメインは、LAG-3細胞外ドメイン1、2、3、又は4、好ましくはドメイン1又はドメイン2、好ましくはドメイン2に結合する、請求項4又は5に記載の抗体又はその変異体。
【請求項7】
PD-1の細胞外部分に結合する前記可変ドメインは、PD-1に結合する前記可変ドメインを2つ含む二価単一特異性抗体中に存在する場合、ジャーカット細胞のPD-1/PD-L1阻害を、ジャーカット細胞に対して抗体ニボルマブで得られる阻害と比較して20~150%の範囲で阻害する可変領域であると定義される、請求項4~6のいずれか一項に記載の抗体又はその変異体。
【請求項8】
PD-1の細胞外部分に結合することができ、
図3のMF6076、MF6226、MF6236、MF6256、MF6930、MF6932、MF6935、MF6936、MF6972、MF6974、又はMF6982、好ましくはMF6256、MF6930、MF6076、MF6974、又はMF6226、好ましくはMF6930、MF6076、又はMF6974について示されているVHの1つの可変重鎖領域のCDR3のアミノ酸配列を含むCDR3領域を有する重鎖可変領域を含む可変ドメインを含む、請求項4~7のいずれか一項に記載の抗体又はその変異体。
【請求項9】
PD-1に結合する前記可変ドメインは、
図3のMF6076、MF6226、MF6236、MF6256、MF6930、MF6932、MF6935、MF6936、MF6972、MF6974、又はMF6982、好ましくはMF6256、MF6930、MF6076、MF6974、又はMF6226、好ましくはMF6930、MF6076、又はMF6974について示されているVHの1つの可変重鎖領域のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、及びCDR3領域を有する重鎖可変領域を含む、請求項8に記載の抗体又はその変異体。
【請求項10】
PD-1の細胞外部分に結合することができ、
図3のMF6076、MF6226、MF6236、MF6256、MF6930、MF6932、MF6935、MF6936、MF6972、MF6974、又はMF6982、好ましくはMF6256、MF6930、MF6076、MF6974、又はMF6226、好ましくはMF6930、MF6076、又はMF6974について示されている可変重鎖領域のアミノ酸配列であって、MFについて示されているVHのアミノ酸配列に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有する重鎖可変領域のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む可変ドメインを含む、請求項4~7のいずれか一項に記載の抗体又はその変異体。
【請求項11】
LAG3の細胞外部分に結合することができ、
図3のMF7100、MF7111、MF7116、MF7118、MF7134、MF7136、MF7137、MF7142、MF7146、MF7165、MF7167、MF7185、MF7443、MF7444、MF7515、MF7518、MF7096、MF7097、MF7106、MF7120、MF7133、MF7139、MF7144、又はMF7524、好ましくはMF7518、MF7165、MF7116、MF7096、MF7133、MF7139、MF7524、又はMF7137、好ましくはMF7139、MF7524、MF7133、MF7518、又はMF7096について示されている可変重鎖領域のCDR3領域のアミノ酸配列を含むCDR3領域を有する重鎖可変領域を含む可変ドメインを含む、請求項4~10のいずれか一項に記載の抗体又はその変異体。
【請求項12】
LAG3の細胞外部分に結合することができ、
図3のMF7100、MF7111、MF7116、MF7118、MF7134、MF7136、MF7137、MF7142、MF7146、MF7165、MF7167、MF7185、MF7443、MF7444、MF7515、MF7518、MF7096、MF7097、MF7106、MF7120、MF7133、MF7139、MF7144、又はMF7524、好ましくはMF7518、MF7165、MF7116、MF7096、MF7133、MF7139、MF7524、又はMF7137、好ましくはMF7139、MF7524、MF7133、MF7518、又はMF7096について示されているVHの1つの可変重鎖領域のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、及びCDR3領域を有する重鎖可変領域を含む可変ドメインを含む、請求項11に記載の抗体又はその変異体。
【請求項13】
LAG3の細胞外部分に結合することができ、
図3のMF7100、MF7111、MF7116、MF7118、MF7134、MF7136、MF7137、MF7142、MF7146、MF7165、MF7167、MF7185、MF7443、MF7444、MF7515、MF7518、MF7096、MF7097、MF7106、MF7120、MF7133、MF7139、MF7144、又はMF7524、好ましくはMF7518、MF7165、MF7116、MF7096、MF7133、MF7139、MF7524、又はMF7137、好ましくはMF7139、MF7524、MF7133、MF7518、又はMF7096について示されている可変重鎖領域のアミノ酸配列であって、前記表記のMFのアミノ酸配列に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有する可変重鎖領域のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む可変ドメインを含む、請求項4~10のいずれか一項に記載の抗体又はその変異体。
【請求項14】
LAG-3の細胞外部分に結合することができ、(
図3の)MF7139、MF7524、MF7133、MF7518、又はMF7096について示されている可変重鎖領域のアミノ酸配列であって、前記表記のMFのアミノ酸配列に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有する可変重鎖領域のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む可変ドメイン、及び
PD-1の細胞外部分に結合することができ、(
図3に示されている)MF6076について示されている可変重鎖領域のアミノ酸配列であって、前記MFについて示されているVHのアミノ酸配列に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有する可変重鎖領域のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む可変ドメイン
を含む、請求項4~7のいずれか一項に記載の抗体又はその変異体。
【請求項15】
LAG-3の細胞外部分に結合することができ、(
図3の)MF7139、MF7524、MF7133、MF7518、又はMF7096について示されている可変重鎖領域のアミノ酸配列であって、前記表記のMFのアミノ酸配列に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有する可変重鎖領域のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む可変ドメイン、及び
PD-1の細胞外部分に結合することができ、(
図3に示されている)MF6974について示されている可変重鎖領域のアミノ酸配列であって、前記MFについて示されているVHのアミノ酸配列に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有する可変重鎖領域のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む可変ドメイン
を含む、請求項4~7のいずれか一項に記載の抗体又はその変異体。
【請求項16】
LAG-3の細胞外部分に結合することができ、(
図3の)MF7139、MF7524、MF7133、MF7518、又はMF7096について示されている可変重鎖領域のアミノ酸配列であって、前記表記のMFのアミノ酸配列に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有する可変重鎖領域のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む可変ドメイン、及び
PD-1の細胞外部分に結合することができ、(
図3に示されている)MF6930について示されている可変重鎖領域のアミノ酸配列であって、前記MFについて示されているVHのアミノ酸配列に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有する可変重鎖領域のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む可変ドメイン
を含む、請求項4~7のいずれか一項に記載の抗体又はその変異体。
【請求項17】
PD-1の細胞外部分に結合することができ、(
図3に示されている)MF6076、MF6974、又はMF6930について示されている可変重鎖領域のアミノ酸配列であって、前記MFについて示されているVHのアミノ酸配列に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有する可変重鎖領域のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む可変ドメインを含む抗体又はその変異体。
【請求項18】
LAG-3の細胞外部分に結合することができ、(
図3の)MF7139、MF7524、MF7133、MF7518、又はMF7096について示されている可変重鎖領域のアミノ酸配列であって、前記表記のMFのアミノ酸配列に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有する可変重鎖領域のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む可変ドメインを含む抗体又はその変異体。
【請求項19】
図1Bに示されている軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3配列、又は
図1Bに示されている軽鎖可変領域CDR1及びCDR2及びCDR3配列から、3つ以下、好ましくは2つ以下、より好ましくは1つ以下のアミノ酸が異なるCDR1、CDR2、及びCDR3配列を有する軽鎖可変領域を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の抗体又はその変異体。
【請求項20】
図1B又は
図1Aに示されているアミノ酸配列と少なくとも80%同一である配列を有する軽鎖可変領域を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の抗体又はその変異体。
【請求項21】
前記抗体又はその変異体は、請求項4~20のいずれか一項に記載の抗体又はその変異体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
薬剤として使用するための、請求項4~20のいずれか一項に記載の抗体又はその変異体。
【請求項23】
がん、又は病原体、好ましくはウイルス若しくは寄生虫による感染症を治療するための方法で使用するための、請求項4~20のいずれか一項に記載の抗体又はその変異体。
【請求項24】
請求項4~20のいずれか一項に記載の少なくとも1つの抗体又はその変異体を含む組成物又はキットオブパーツ。
【請求項25】
請求項4~20のいずれか一項に記載の少なくとも1つの抗体又はその変異体、及び薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項26】
請求項4~20のいずれか一項に記載の抗体又は変異体の少なくとも1つのCDR領域をコードする少なくとも15個ヌクレオチドの長さを有する核酸分子。
【請求項27】
請求項4~20のいずれか一項に記載の抗体又は変異体の少なくとも重鎖可変領域をコードする、請求項26に記載の核酸分子。
【請求項28】
図3に示されている重鎖可変領域をコードする、請求項26又は27に記載の核酸分子。
【請求項29】
請求項4~20のいずれか一項に記載の抗体又は変異体をコードする核酸分子。
【請求項30】
請求項26~29のいずれか一項に記載の核酸分子又はその機能的等価物を含むベクター。
【請求項31】
請求項26~29のいずれか一項に記載の核酸分子又は請求項30に記載のベクターを含む単離若しくは組換え細胞又は非ヒト動物。
【請求項32】
がん又は病原体による感染症を治療するための方法であって、それを必要とする対象に、請求項4~20のいずれか一項に記載の抗体又は変異体、又は請求項24若しくは25に記載の組成物、又は請求項26~29のいずれか一項に記載の核酸分子、又は請求項30に記載のベクターの治療有効量を投与する工程を含む方法。
【請求項33】
請求項4~20のいずれか一項に記載の抗体又はその変異体を単一細胞から産生するための方法であって、前記抗体又はその変異体は、インターフェースを形成することが可能な2つのCH3ドメインを含み、前記方法は、
- a)PD-1の細胞外部分を特異的に認識し、第1のCH3ドメインを含むIgG重鎖をコードする第1の核酸分子、及びb)LAG-3の細胞外部分を特異的に認識し、第2のCH3ドメインを含むIgG重鎖をコードする第2の核酸配列を有する細胞を準備する工程を含み、前記核酸配列は、前記第1及び第2のCH3ドメインの優先的対合のための残基をコードし、前記方法は、前記細胞を培養する工程、及び前記核酸配列の発現を可能にする工程、及び前記抗体又はその変異体を前記培養から回収する工程を更に含む方法。
【請求項34】
前記細胞は、共通軽鎖、好ましくは再編成された生殖系ヒトカッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01をコードする第3の核酸配列を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第1の核酸は、アミノ酸置換L351K及びT366K(EU付番による付番)を含む前記第1のCH3ドメインをコードし、前記第2の核酸は、は、アミノ酸置換L351D及びL368E(EU付番による付番)を含む前記第2のCH3ドメインをコードし、前記方法は、前記細胞を培養する工程、及び前記核酸配列の発現を可能にする工程、及び前記抗体又はその変異体を前記培養から回収する工程を更に含む、請求項33又は34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体の分野に関する。詳しくは、本発明は、異常細胞が関与する疾患を治療するための治療用抗体の分野に関する。より詳しくは、本発明は、2つ又はそれよりも多くの膜結合タンパク質の細胞外部分に結合し、それにより細胞により発現される生物学的活性を調節する抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、この疾患の治療に数々の進歩がなされており、がんに結び付く分子事象に関する知識が増加しているにも関わらず、依然として世界における主要な死因である。例えば、結腸直腸がん(CRC)は、世界で3番目に最も一般的ながんである。2008年には、123万人がこの疾患を有すると診断された。これは、欧州では2番目に最も一般的ながんであり、2012年には約447,000件の新しい症例が診断された(全体の13%)。結腸直腸がんは、がんによる死亡の4番目に最も一般的な原因であり、年間608,000件(EU、148,000件)の死亡の原因であると推測されている。幾つかの新しい治療がCRCにおいて進められてきたが、多くは臨床試験が成功せず、転移性CRCは、従来の治療では依然として大部分が不治性である。非常に高頻繁に生じるがんの別の例は、黒色腫である。このがんは、十分初期に検出されないと、転移してしまう可能性が高く、その段階では治療が非常に困難である。免疫介入治療が、転移した黒色腫を有する患者の少なくとも一部に有効であることが示されている。非小細胞肺がんは、外科手術ができる初期段階で発見されることが希ながんタイプである。こうしたタイプのがんでも、免疫介入治療による治療が成功している。
【0003】
伝統的に、ほとんどのがん創薬は、必須細胞機能を阻止し、分裂細胞を死滅させる作用剤に着目している。しかしながら、進行がんの場合、化学療法は、いかに積極的に適用してとしても、患者が治療から生命に関わる副作用を被る程度でさえ、完全な治癒をもたらすことはほとんどない。ほとんどの場合、患者の腫瘍は、成長を停止するか又は一時的退縮するが(寛解と呼ばれる)、時にはより迅速に再び増殖を開始し(再発と呼ばれる)、治療がますますより困難になってしまうだけである。より最近では、がん創薬の焦点は、幅広く細胞毒性である化学療法から、より毒性が少ない標的化細胞増殖抑制療法へと移っている。進行がんの治療は、白血病及び一部の他のがんにおいて臨床的に検証されている。しかしながら、癌腫の大多数では、標的化手法は、やはり、大多数の患者においてがんを完全に消滅させるほどには有効でないことが判明しつつある。
【0004】
がんの標的化は、例えば、がんが生存及び/又は成長するために依存するシグナル伝達タンパク質に対する小分子、腫瘍特異的タンパク質を有するワクチン、腫瘍細胞を活発に死滅させる免疫細胞及び細胞毒性分子を腫瘍へと標的化する抗体による細胞療法、シグナル伝達の妨害すること、及び/又は宿主の免疫系を腫瘍細胞へと(再)方向付けすることを含む、様々な異なる方法を使用して達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/157953号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2004/009618号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2013/157954号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2009/157771号パンフレット
【特許文献5】米国特許出願第20030078385号明細書
【特許文献6】米国特許出願第13/866,747号明細書(現在は米国特許第9,248,181号として特許付与)
【特許文献7】米国特許出願第14/081,848(現在は米国特許第9,358,286号として特許付与)
【特許文献8】PCT/NL2013/050294(国際公開第2013/157954号パンフレットとして公開)
【特許文献9】米国特許第9,248,181号明細書
【特許文献10】米国特許第9,358,286号明細書
【特許文献11】国際公開第2009/126920号パンフレット
【特許文献12】カナダ特許2607147号明細書
【特許文献13】国際公開第2010/019570号A2パンフレット
【非特許文献】
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【非特許文献1】Armourら、1999年、Eur J Immunol.、29巻(8号):2613~24頁
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【非特許文献4】Labrijnら、2009年、Nat Biotechnol.、27巻(8号):767~71頁
【非特許文献5】Morrison、(2007年)、Nat. Biotechnol、25巻:1233~34頁
【非特許文献6】J.C.Almagro1及びJ.Fransson(2008年)Frontiers in Bioscience、13巻、1619~1633頁
【非特許文献7】Marksら(J Mol Biol.、1991年12月5日;222(3):581~97頁)
【非特許文献8】de Haardら(J Biol Chem.、1999年6月25日;274(26):18218~30頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、免疫系成分を(再)方向付けするための新規な手段及び方法を提供する。また、本発明は、細胞により発現される生物学的活性を調節するための手段及び方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、PD-1及び/又はLAG3陽性細胞でのプログラム細胞死1タンパク質(PD-1)及びリンパ球活性化3(LAG3)媒介性阻害を妨害するための方法であって、上記細胞を、
- PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン、及び
- LAG3の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン
を含む抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体と接触させ、それにより上記細胞でのPD-1及び/又はLAG3媒介性活性を阻害する工程を含む方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、免疫シナプスの形成、安定性、及び/又は活性を刺激するための方法であって、免疫シナプスにより互いに会合することが可能な少なくとも2つの細胞を含む系を準備する工程、及び上記系に、
- PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン、及び
- LAG3の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン
を含む抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体を提供し、
それにより上記少なくとも2つの細胞間の免疫シナプスの形成、安定性、及び/又は活性を刺激する工程
を含む方法を提供する。
【0010】
更に、PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及びLAG3の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体が提供される。
【0011】
本発明の好ましい実施形態では、上記PD-1結合可変ドメインとPD-1との結合は、PD-1とPD-L1及び/又はPD-L2、好ましくはPD-L1との結合を阻止する。本発明の好ましい実施形態では、上記LAG3結合可変ドメインとLAG3との結合は、LAG3とMHCクラスIIとの結合を阻止する。
【0012】
LAG-3結合可変ドメインは、好ましくは、LAG-3細胞外ドメイン1、2、3、又は4、好ましくはドメイン1又はドメイン2に結合する可変ドメインである。
【0013】
更に、PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及びLAG3の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体であって、PD-1に結合することができる可変ドメインは、
図3のMF6076、MF6226、MF6236、MF6256、MF6930、MF6932、MF6935、MF6936、MF6972、MF6974、又はMF6982、好ましくはMF6256、MF6930、MF6076、MF6974、又はMF6226、好ましくはMF6930、MF6076、又はMF6974について示されているVHの1つの可変重鎖領域のCDR3のアミノ酸配列を含むCDR3領域を有する重鎖可変領域を含む、抗体又はその変異体が提供される。好ましい実施形態では、上記PD-1に結合することができる可変ドメインは、
図3のMF6076、MF6226、MF6236、MF6256、MF6930、MF6932、MF6935、MF6936、MF6972、MF6974、又はMF6982、好ましくはMF6256、MF6930、MF6076、MF6974、又はMF6226、好ましくはMF6930、MF6076、又はMF6974について示されているVHの1つの可変重鎖領域のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、及びCDR3領域を有する重鎖可変領域を含む。
【0014】
更に、PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及びLAG3の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体であって、PD-1に結合することができる可変ドメインは、
図3のMF6076、MF6226、MF6236、MF6256、MF6930、MF6932、MF6935、MF6936、MF6972、MF6974、又はMF6982、好ましくはMF6256、MF6930、MF6076、MF6974、又はMF6226、好ましくはMF6930、MF6076、又はMF6974について示されている可変重鎖領域のアミノ酸配列であって、MFについて示されているVHのアミノ酸配列に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有する可変重鎖領域のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、抗体又はその変異体が提供される。
【0015】
LAG3の細胞外部分に結合することができる可変ドメインは、好ましくは、
図3のMF7100、MF7111、MF7116、MF7118、MF7134、MF7136、MF7137、MF7142、MF7146、MF7165、MF7167、MF7185、MF7443、MF7444、MF7515、MF7518、MF7096、MF7097、MF7106、MF7120、MF7133、MF7139、MF7144、又はMF7524、好ましくはMF7518、MF7165、MF7116、MF7096、MF7133、MF7139、MF7524、又はMF7137、好ましくはMF7139、MF7524、MF7133、MF7518、又はMF7096について示されている可変重鎖領域のCDR3領域のアミノ酸配列を含むCDR3領域を有する重鎖可変領域を含む。好ましくは、LAG3の細胞外部分に結合することができる可変ドメインは、
図3のMF7100、MF7111、MF7116、MF7118、MF7134、MF7136、MF7137、MF7142、MF7146、MF7165、MF7167、MF7185、MF7443、MF7444、MF7515、MF7518、MF7096、MF7097、MF7106、MF7120、MF7133、MF7139、MF7144、又はMF7524、好ましくはMF7518、MF7165、MF7116、MF7096、MF7133、MF7139、MF7524、又はMF7137、好ましくはMF7139、MF7524、MF7133、MF7518、又はMF7096について示されているVHの1つの可変重鎖領域のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、及びCDR3領域を有する重鎖可変領域を含む。
【0016】
LAG3の細胞外部分に結合することができる可変ドメインは、好ましくは、
図3のMF7100、MF7111、MF7116、MF7118、MF7134、MF7136、MF7137、MF7142、MF7146、MF7165、MF7167、MF7185、MF7443、MF7444、MF7515、MF7518、MF7096、MF7097、MF7106、MF7120、MF7133、MF7139、MF7144、又はMF7524、好ましくはMF7518、MF7165、MF7116、MF7096、MF7133、MF7139、MF7524、又はMF7137、好ましくはMF7139、MF7524、MF7133、MF7518、又はMF7096について示されている可変重鎖領域のアミノ酸配列であって、表記のMFのアミノ酸配列に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有する可変重鎖領域のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0017】
本発明の抗体は、好ましくは、
図3に示されているMFのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。好ましい実施形態では、抗体は、
図1に示されている軽鎖可変領域のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を更に含む。好ましい実施形態では、軽鎖は、
図1Aに示されているアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、重鎖は、IgG1抗体、好ましくはヒトIgG1抗体の定常領域を含む。好ましい実施形態では、上記IgG1定常領域のCH2領域は、抗体のADCC及び/又はCDC活性を低減するように遺伝子操作されている。好ましい実施形態では、CH2領域は、
図2Eに示されている配列を含む。好ましい実施形態では、抗体のCH3領域は、重鎖のヘテロ二量体化を促進するように遺伝子操作されている。好ましい実施形態では、一方の重鎖は、
図2Fに示されている配列を含み、別の重鎖は、
図2Gに示されている配列を含む。
【0018】
更に、本発明の1つ又は複数の抗体又はそれらの変異体を含む医薬組成物が提供される。
【0019】
また、本発明の抗体又はその変異体の重鎖又は重鎖可変領域をコードする核酸分子又は核酸分子のコレクションが提供される。
【0020】
また、本発明の抗体をコードする核酸分子又は核酸分子のコレクションが提供される。
【0021】
また、本発明の抗体又はその変異体を単独で又は共にコードする1つ又は複数の核酸分子を含む細胞が提供される。また、本発明の抗体又はその変異体を、記載のような細胞を使用して産生するための方法であって、好ましくは、抗体又はその変異体が細胞の培養から回収される工程を伴う方法が提供される。
【0022】
更に、本発明の抗体又はその変異体を含む細胞系が提供される。
【0023】
また、がん等の異常細胞が関与する疾患を有するか又はウイルス若しくは寄生虫による慢性感染症を有する個体を治療するための方法であって、本発明の抗体又はその変異体、好ましくは本発明の二重特異性抗体又はその変異体を、それを必要とする個体に投与する工程を含む方法が提供される。
【0024】
本発明は、がん等の異常細胞が関与する疾患又はウイルス若しくは寄生虫による慢性感染症を有する個体の治療に使用するための、本発明の抗体又はその変異体、好ましくは本発明の二重特異性抗体又はその変異体を更に提供する。
【0025】
更に、薬剤として使用するための、本発明の抗体若しくは上記抗体の結合特異性を維持するその変異体又は本発明の核酸分子若しくは機能性等価物が提供される。
【0026】
本発明は、がん等の異常細胞が関与する疾患を有するか、又は感染症、好ましくは、ウイルス若しくは寄生虫による感染症を有する個体の治療に使用するための、本発明の抗体又は本発明の抗体の結合特異性を維持する上記抗体の変異体を更に提供する。
【0027】
更に、がん、及び/又は感染症、好ましくは、ウイルス若しくは寄生虫による感染症を治療又は予防するための薬剤を調製するための、本発明による抗体又は変異体の使用が提供される。
【0028】
好ましい実施形態では、寄生虫は、細胞内寄生虫である。
【0029】
更に、個体の異常細胞に対する上記個体の免疫応答を刺激するための方法であって、上記個体に、本発明の抗体又はその変異体、好ましくは二重特異性抗体又はその変異体を提供(投与)する工程を含む方法が提供される。異常細胞は、好ましくは、がん細胞、ウイルス感染細胞、寄生虫、又は寄生虫感染細胞である。好ましい実施形態では、細胞は、がん細胞又は新生細胞である。
【0030】
T細胞疲弊は、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン3(TIM-3、T cell immunoglobulin and mucin domain 3)、及びLAG3を含む幾つかの阻害性受容体により媒介される。LAG3の主要リガンドは、CD4よりも高い親和性でLAG3に結合するMHCクラスIIである。このタンパク質は、CTLA-4及びPD-1と類似の様式で、T細胞の細胞増殖、活性化、及び恒常性を負に制御し、Treg抑制機能に役割を果たすことが報告されている。また、LAG3は、CD8+T細胞の免疫寛容原性状態維持を支援することが報告されている。LAG3は、リンパ球活性化3、リンパ球活性化遺伝子3、CD223抗原、タンパク質FDC、CD223、LAG-3、又はFDC等、幾つかの異なる名称で知られている。LAG3の外部Idは、HGNC:6476;、Entrez Gene:3902、Ensembl:ENSG00000089692、OMIM:153337、及びUniProtKB:P18627である。LAG-3は、CD4と密接に関連する。LAG-3は、CD4遺伝子と隣接してヒト12番染色体(12p13.32)に位置し、その配列はCD4とおよそ20%同一である。LAG-3タンパク質は、CD4よりも大きな親和性で、主要組織適合複合体2(MHCクラスII)の非正則領域(nonholomorphic region)に結合する。LAG-3は、制御性T細胞(Treg)及びアネルギー性T細胞の両方で協調的に上方制御される種々の免疫チェックポイント受容体の1つである。LAG-3は、T細胞増殖、活性化、及び恒常性を負に制御することができる。
【0031】
プログラム細胞死1タンパク質(PD-1)は、CD28ファミリー受容体に属し、T細胞及びプロB細胞上に発現される細胞表面受容体である。PD-1は、現在、2つのリガンド、PD-L1及びPD-L2に結合することが知られている。PD-1は、免疫チェックポイントとして機能し、T細胞活性化の阻害による免疫系の下方制御に重要な役割を果たし、それにより、引いては自己免疫を低減し、自己寛容を促進する。PD-1の阻害効果は、リンパ節の抗原特異的T細胞でのアポトーシス(プログラム細胞死)を促進し、同時に制御性T細胞(サプレッサーT細胞)でのアポトーシスを低減する二重機序により達成されると考えられる。また、PD-1は、PDCD1、プログラム細胞死1;、全身性エリテマトーデス感受性2、タンパク質PD-1、HPD-1、PD1、プログラム細胞死1タンパク質、CD279抗原、CD279、HPD-L、HSLE1、SLEB2、及びPD-1等、幾つかの異なる別名でも知られている。PD-1の外部Idは、HGNC:8760、Entrez Gene:5133、Ensembl:ENSG00000188389、OMIM:600244、及びUniProtKB:Q15116である。PD-1の活性を阻止する新しいクラスの薬物であるPD-1阻害剤は、免疫系を活性化して腫瘍を攻撃するため、一部のタイプのがんの治療に使用されており、成功をおさめている。
【0032】
PD-L1は、妊娠、組織同種移植、自己免疫疾患、及び肝炎等の他の疾患状態等の特定の事象中の免疫応答抑制に役割を果たす1型の膜貫通型タンパク質である。PD-L1とPD-1又はB7.1(CD80)との結合は、PD-1発現T細胞の増殖を低減させる阻害シグナルを伝達する。PD-1は、アポトーシスにより、外来性抗原特異的T細胞の蓄積をコントロールすることができると考えられる。PD-L1は、様々ながん細胞により発現され、その発現は、少なくとも部分的には、がん細胞に対する免疫応答の減衰の原因であると考えられる。PD-L1は、B7ファミリータンパク質のメンバーであり、CD274分子、CD274抗原、B7ホモログ1、PDCD1リガンド1、PDCD1LG1、PDCD1L1、B7H1、PDL1、プログラム細胞死1リガンド1、プログラム死リガンド1、B7-H1、及びB7-H等、様々な他の名称で知られている。CD274の外部Idは、HGNC:17635、Entrez Gene:29126、Ensembl:ENSG00000120217、OMIM:605402、及びUniProtKB:Q9NZQ7である。
【0033】
PD-L2は、PD-1の第2のリガンドである。PD-L2によるPD-1のエンゲージメントは、T細胞受容体(TCR)媒介性増殖及びCD4+T細胞によるサイトカイン産生を阻害する。低抗原濃度では、PD-L2/PD-1結合は、B7-CD28シグナルを阻害する。高抗原濃度では、PD-L2/PD-1結合は、サイトカイン産生を低減する。抗原提示細胞上のPD-L発現は、インターフェロンガンマ処置により上方制御される。PD-L2は、一部の正常組織及び様々な腫瘍で発現される。PD-L1及びPD-L2は、機能が重複しており、T細胞応答を制御すると考えられる。タンパク質は、プログラム細胞死1リガンド2、B7樹状細胞分子、プログラム死リガンド2、ブチロフィリンB7-DC、PDCD1リガンド2、PD-1リガンド2、PDCD1L2、B7-DC、CD273、B7DC、PDL2、PD-1-リガンド2、CD273抗原、BA574F11.2、及びBtdc等、幾つかの他の名称で知られている。PD-L2の外部Idは、HGNC:18731、Entrez Gene:80380、Ensembl:ENSG00000197646、OMIM:605723、及びUniProtKB:Q9BQ51である。
【0034】
配列識別子への言及は、どのタンパク質が標的とされるかを特定するためになされている。本発明の抗体は、抗体の対応する可変ドメインにより認識されるエピトープが影響を受けない限り、対立遺伝子変異体、スプライス変異体、及びそれらの突然変異変異体等、その少なくとも一部の変異体も認識する。代替的名称の一部は、他のタンパク質を参照するためにも使用されている場合があり、又は使用されていない場合もある。名称は、参照の目的で与えられているに過ぎない。本発明の抗体は、細胞上に発現されるタンパク質に結合する。また、それは、抗体が結合するエピトープが利用可能である限り、タンパク質の変異体に結合することができる。したがって、スプライス変異体又は突然変異タンパク質(該当する場合)も、エピトープが利用可能な限り、結合するだろう。抗体が表記のタンパク質に結合するという事実は、それが特性としてタンパク質に結合することができることを意味し、抗体が実際に標的に結合していることを示唆しないが、結合していてもよい。また、それは、抗体が他のタンパク質に結合しないことを意味しない。本発明は、PD-1(第1の膜タンパク質)のメンバーの細胞外部分及びLAG3(第2の膜タンパク質)の細胞外部分に結合する、好ましくは二重特異性抗体又はその変異体である抗体又はその変異体を開示する。更に、そのような(二重特異性)抗体は、「本発明の抗体又は二重特異性抗体」とも呼ばれる。また、本明細書に記載のような2つ又はそれよりも多くの(二重特異性)抗体を含む組成物及びキットオブパーツが提供される。
【0035】
抗体は、典型的には、いわゆる抗原結合部位を介してそれらの標的に結合する。未修飾抗原結合部位は、典型的には、抗体の可変ドメインにより形成され、そこに存在する。可変ドメインは上記抗原結合部位を含む。抗原に結合する可変ドメインは、抗原に結合する抗原結合部位を含む可変ドメインである。
【0036】
一実施形態では、抗体可変ドメインは、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む。抗原結合部位は、VH/VL可変ドメインの組合せに存在してもよく、又はVH領域のみに若しくはVL領域のみに存在してもよい。抗原結合部位が可変ドメインの2つの領域の一方に存在する場合、対応する可変領域は、結合性可変領域のフォールディング及び/又は安定性に寄与することができるが、抗原の結合自体には著しくは寄与しない。
【0037】
本明細書で使用される場合、抗原結合は、その抗原に対する抗体の典型的な結合能を指す。抗原に対する抗体の結合は、種々の様式で評価することができる。1つの方法は、抗体を抗原(好ましくは、抗原を発現する細胞)と共にインキュベートし、未結合抗体を除去し(好ましくは洗浄ステップにより)、結合抗体に結合する標識抗体により結合抗体を検出することである。
【0038】
抗体による抗原結合は、典型的には、抗体の相補性決定領域(CDR)、並びに抗原及び可変ドメインの両方の特定の三次元構造により媒介され、これら2つの構造が、タンパク質のランダムで非特異的な付着とは対照的に、互いに精密に結合すること(鍵及び鍵穴に類似する相互作用)を可能にする。抗体は、典型的には、抗原のエピトープと呼ばれる抗原の一部を認識し、そのようなエピトープは、他の化合物にも同様に存在する場合があるため、本発明による抗体は、そのような他の化合物が同じエピトープを含む場合、他のタンパク質を認識する場合がある。したがって、用語「結合」は、同じエピトープを含む別の1つ又は複数のタンパク質に対する抗体の結合を除外しない。そのような他のタンパク質は、好ましくはヒトタンパク質ではない。
【0039】
抗体等の本発明のタンパク質は、典型的には、出生後の、好ましくは成人ヒトの細胞の膜上にある指定の標的タンパク質以外の他のタンパク質には結合しない。
【0040】
用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、好ましくは、免疫グロブリンクラスのタンパク質に属し、抗原のエピトープに結合する1つ又は複数の可変ドメインを含み、そのようなドメインは、抗体の可変ドメインと配列相同性を共有するタンパク質性分子を意味する。療法に使用するための抗体は、治療しようとする対象の天然抗体にできる限り近いことが好ましい(例えば、ヒト対象の場合はヒト抗体)。抗体結合は、特異性及び親和性の点で表すことができる。特異性は、どの抗原又はそのエピトープが、結合ドメインにより特異的に結合されるかを決定する。親和性は、特定の抗原又はエピトープとの結合強度の尺度である。好ましくは、本発明による抗体の個別のアームの親和性は、ナノモル範囲である。本発明の二重特異性抗体等の抗体は、典型的には、天然抗体の定常ドメイン(Fc部分)を含み、例えば、ADCC及び/又はCDC活性を低減するために他所に記載のように遺伝子操作されてもよい。本発明の抗体は、典型的には、好ましくはヒトIgGサブクラスの二重特異性全長抗体である。
【0041】
可変ドメインは、重鎖の可変領域及び軽鎖の可変領域で構成される。重鎖の可変領域は、典型的には、再編成されたVDJ領域により形成される。軽鎖の可変領域は、典型的には、再編成されたVJ領域により形成される。VDJ/VJ領域は、今では、例えば、機能性抗体に関して入手可能である大量の配列情報を使用して人工的に産生することもできる。
【0042】
本発明の抗体は、好ましくは全長抗体である。本発明による用語「全長」は、例えば、追加の抗原結合部位又は追加の活性化部位又は追加のリガンド又は追加のリガンド結合部位等の、20個アミノ酸残基よりも大きなサイズの1つ又は複数の人工的に付加された部分を有していない本質的に完全な抗体を含むと定義される。しかしながら、全長抗体は、無傷抗体の全ての機能を必ずしも有するとは限らない。曖昧さを回避するためだが、全長抗体は、2つの重鎖及び2つの軽鎖を含む。各鎖は、定常領域(C)及び可変(V)領域を含み、それらは、重鎖ではCH1、CH2、CH3、VH、及び軽鎖ではCL、VLと称されるドメインに分割することができる。重鎖のドメインは、好ましくは、天然抗体の順序で存在する(VH-CH1-CH2-CH3、これは、VHドメインが、CH1ドメインに隣接し、その後にCH2ドメイン、次いでその後にCH3ドメイン続くことを意味する)。また、軽鎖のドメインは、好ましくは、天然抗体の順序で存在する(VL-CL、これは、VLドメインがCLドメインに隣接することを意味する)。抗体は、Fab断片部分に含まれる可変ドメインを介して抗原に結合する。抗体は、定常ドメインを介して、ほとんどはFc部分を介して、免疫系の分子及び細胞と相互作用することができる。
【0043】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、IgG、好ましくは全長IgGである。全長IgG抗体が好ましい。それは、典型的にはそれらの半減期が有利であり、免疫原性の理由で完全に自家(ヒト)由来の分子に近いままであることが望ましいためである。一部の実施形態では、本発明の抗体は、全長IgG1、全長IgG2、全長IgG3、又は全長IgG4抗体である。
【0044】
本発明による全長抗体は、所望の特徴を提供するか又は元の鎖にあったものの単なる代替である突然変異が存在してもよい抗体を包含する。そのような突然変異は、領域のいずれかのかなりの部分の欠失であるべきでない。しかしながら、1つ又は幾つかのアミノ酸残基が、その結果生じる抗体の抗原結合特徴を本質的に変更せずに挿入され、欠失され、置換され、又はそれらの組合せを受けた酸である抗体は、用語「全長抗体」内に包含される。例えば、IgG抗体は、定常領域に1~20個のアミノ酸残基挿入、置換、欠失、又はそれらの組合せを有していてもよい。
【0045】
本発明の抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体は、好ましくは、二重特異性抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体である。好ましい実施形態では、本発明の抗体は、エフェクター機能が低減された二重特異性IgG抗体である。好ましい実施形態では、本発明の抗体は、二重特異性全長抗体である。本発明の抗体は、好ましくは、エフェクター機能を低減するために好ましくはCH2/下部ヒンジ領域が突然変異された二重特異性全長IgG抗体である。エフェクター機能を低減するためにCH2/下部ヒンジ領域が突然変異されたIgG1は、ヒトにおける循環半減期が長いため、好ましい。ヒトにおける任意の免疫原性を防止するため、本発明による二重特異性抗体は、ヒト抗体であることが好ましい。
【0046】
用語「二重特異性」(bs)は、抗体(上記に定義されるような)の1つの部分が、抗原の1つのエピトープに結合するが、第2の部分は、同じ抗原又は異なる抗原のいずれかの異なるエピトープに結合することを意味する。異なるエピトープは、典型的には、異なる抗原に存在する。しかしながら、また、異なるエピトープは、同じ抗原に存在してもよい。本発明によると、上記第1及び第2の抗原は、実際には、2つの異なるタンパク質である。好ましい二重特異性抗体は、2つの異なるモノクローナル抗体の部分を含み、したがって、好ましくは2つの異なる抗原にある2つの異なるエピトープに結合することができる抗体である。二重特異性抗体により認識される2つの抗原の発現レベル、細胞(内)局在化、及び化学量論に応じて、抗体の両Fabアームは、それらのエピトープに同時に結合してもよく又はしなくともよい。二重特異性抗体の一方のアームは、典型的には1つの抗体の可変ドメインを含み、他方のアームは別の抗体の可変ドメインを含む(つまり、二重特異性抗体の一方のアームは、1つの軽鎖と対合した1つの重鎖により形成され、他方のアームは、軽鎖と対合した異なる重鎖により形成される)。本発明の二重特異性抗体の重鎖可変領域は、典型的には互いに異なるが、本発明の二重特異性抗体の軽鎖可変領域は、好ましくは同じである。異なる重鎖可変領域が同じ又は共通の軽鎖可変領域に付随する二重特異性抗体は、共通軽鎖可変領域(cLcv)を有する二重特異性抗体とも呼ばれる。軽鎖定常領域も同じであることが好ましい。そのような二重特異性抗体は、共通軽鎖(cLc)を有すると言われる。したがって、両アームが共通軽鎖を含む本発明による二重特異性抗体が更に提供される。
【0047】
本明細書に記載のような二重特異性抗体は、好ましくは、共通軽鎖可変ドメイン、好ましくは共通軽鎖を含む。本発明による用語「共通軽鎖」は、同一であってもよく、又は幾つかのアミノ酸配列差異を有してもよいが、全長抗体の結合特異性が影響を受けていない軽鎖を指す。例えば、重鎖と対合した場合、結合特異性に寄与しないか又は部分的にしか寄与しない領域に保存的アミノ酸変更、アミノ酸変更を導入し、試験することにより、例えば、本明細書で使用される場合の共通軽鎖の定義の範囲内にある、同一ではないが、依然として機能的に等価である軽鎖を調製又は見出すことが可能である。用語「共通軽鎖」、「共通LC」、「cLC」、「単一軽鎖」は全て、用語「再編成された」が追加されているか又はされていないかに関わらず、本明細書では同義的に使用される。用語「共通軽鎖可変領域」、「共通VL」、「共通LCv」、「cLCv」、「単一VL」は全て、用語「再編成された」が追加されているか又はされていないかに関わらず、本明細書では同義的に使用される。二重特異性抗体は、結合特異性が異なる少なくとも2つ、好ましくは複数の重鎖(可変領域)と組み合わせると、機能性結合ドメインを有する抗体を形成することができる共通軽鎖(可変領域)を有することが、本発明の好ましい態様である(国際公開第2009/157771号パンフレット)。共通軽鎖(可変領域)は、好ましくはヒト軽鎖(可変領域)である。共通軽鎖(可変領域)は、好ましくは生殖系配列を有する。好ましい生殖系配列は、ヒトレパートリーに高頻度で使用され、良好な熱力学的安定性、収率、及び溶解性を有する軽鎖可変領域である。好ましい生殖系軽鎖はO12である。共通軽鎖は、好ましくは、再編成された生殖系ヒトカッパ軽鎖IgV
κ1ー39
*01/IGJ
κ1
*01(
図1A)である。共通軽鎖可変領域は、好ましくは、再編成された生殖系ヒトカッパ軽鎖IgV
κ1-39
*01/IGJ
κ1
*01の可変領域である。共通軽鎖は、好ましくは、0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加、又はそれらの組合せを有する、
図1B又は
図1Dに示されるような軽鎖可変領域を含む。共通軽鎖は、好ましくは、軽鎖定常領域、好ましくはカッパ軽鎖定常領域を更に含む。共通軽鎖をコードする核酸は、共通軽鎖タンパク質を発現するために使用される細胞系用にコドン最適化されてもよい。コード核酸は、生殖系核酸配列とは異なっていてもよい。
【0048】
好ましい実施形態では、軽鎖は、0~10個、好ましくは0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加、又はそれらの組合せを有する、
図1Aに示されるようなO12/IgV
κ1-39
*01遺伝子セグメントのアミノ酸配列を含む軽鎖領域を含む。語句「O12軽鎖」は、0~10個、好ましくは0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加、又はそれらの組合せを有する、
図1Aに示されるようなO12/IgV
κ1-39
*01遺伝子セグメントのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む軽鎖の略称として、明細書の全体にわたって使用されるだろう。IgV
κ1-39は、免疫グロブリン可変カッパ1-39遺伝子の略称である。この遺伝子は、免疫グロブリンカッパ可変1-39、IGKV139、IGKV1-39、O12a、又はO12としても知られている。この遺伝子の外部Idは、HGNC:5740、Entrez Gene:28930、Ensembl:ENSG00000242371である。IgV
κ1-39の好ましいアミノ酸配列は、
図1Eに示されている。これには、V領域の配列が列挙されている。V領域は、5つのJ領域の1つと組み合わせることができる。
図1B及び
図1Dには、J領域と組み合わされているIgV
κ1-39の2つの好ましい配列が記載されている。接合された配列は、IGKV1-39/jk1及びIGKV1-39/jk5と表記されており、代替名称は、IgV
κ1-39
*01/IGJ
κ1
*01又はIgV
κ1-39
*01/IGJ
κ5
*01である(ワールドワイドウェブimgt.orgにおけるIMGTデータベースによる命名法)。
【0049】
軽鎖可変領域を含むO12/IgVκ1-39*01は生殖系配列であることが好ましい。軽鎖可変領域を含むIGJκ1*01又は/IGJκ5*01は、生殖系配列であることが更に好ましい。好ましい実施形態では、IGKV1-39/jk1又はIGKV1-39/jk5軽鎖可変領域は、生殖系配列である。
【0050】
好ましい実施形態では、軽鎖可変領域は、生殖系O12/IgVκ1-39*01を含む。好ましい実施形態では、軽鎖可変領域は、カッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01又はIgVκ1-39*01/IGJκ5*01を含む。好ましい実施形態では、IgVκ1-39*01/IGJκ1*01である。軽鎖可変領域は、好ましくは、生殖系カッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01又は生殖系カッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ5*01、好ましくは生殖系IgVκ1-39*01/IGJκ1*01を含む。
【0051】
O12軽鎖を有する抗体を産生する成熟B細胞は、生殖系配列、つまり生物の非リンパ球細胞の通常配列に対して1つ又は複数の突然変異を起こしている軽鎖を産生することが多い。こうした突然変異の原因であるプロセスは、体細胞性(高頻度)突然変異と呼ばれることが多い。その結果生じた軽鎖は、親和性成熟軽鎖と呼ばれる。そのような軽鎖は、O12生殖系配列に由来する場合、O12由来軽鎖である。本明細書では、語句「O12軽鎖」は、O12由来軽鎖を含むことになる。無論、体細胞性高頻度突然変異により導入される突然変異は、実験室で人工的に導入することもできる。また、実験室では、質的であり、必ずしも量的ではない軽鎖の特性に影響を及ぼさずに、他の突然変異を導入することができる。軽鎖は、0~10個、好ましくは0~5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加、又はそれらの組合せを有する
図1A、
図1B、
図1D、又は
図1Eに示されるような配列を含む場合、少なくともO12軽鎖である。好ましい実施形態では、O12軽鎖は、0~9個、0~8個、0~7個、0~6個、0~5個、0~4個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加、又はそれらの組合せを有する
図1A、
図1B、
図1D、又は
図1Eに示されるような配列を含む軽鎖である。好ましい実施形態では、O12軽鎖は、0~5個、好ましくは0~4個、より好ましくは0~3個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加、又はそれらの組合せを有する
図1A、
図1B、
図1D、又は
図1Eに示されるような配列を含む軽鎖である。好ましい実施形態では、O12軽鎖は、0~2個、より好ましくは0~1個、最も好ましくは0個のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加、又はそれらの組合せを有する
図1A、
図1B、
図1D、又は
図1Eに示されるような配列を含む軽鎖である。好ましい実施形態では、O12軽鎖は、上述のアミノ酸挿入、欠失、置換、付加、又はそれらの組合せを有する
図1A又は
図1Bに示されるような配列を含む軽鎖である。好ましい実施形態では、軽鎖は、
図1Aの配列を含む。好ましい実施形態では、軽鎖可変領域は、
図1Bの配列を含む。
【0052】
共通軽鎖(可変領域)はラムダ軽鎖であってもよく、したがって本発明の状況ではこれも提供される。しかしながら、カッパ軽鎖が好ましい。本発明の共通軽鎖の定常部分は、カッパ又はラムダ軽鎖の定常領域であってもよい。本発明の共通軽鎖の定常部分は、好ましくはカッパ軽鎖の定常領域であり、好ましくは、上記共通軽鎖は、生殖系軽鎖、好ましくはIgVκl-39遺伝子セグメントを含む再編成された生殖系ヒトカッパ軽鎖、最も好ましくは再編成された生殖系ヒトカッパ軽鎖IgVκl-39
*01/IGJ
κl
*01(
図1)である。再編成された生殖系ヒトカッパ軽鎖IgV
κ1-39
*01/IGJ
κ1
*01、IGKV1-39/IGκJ1、huV
κ1-39軽鎖、又は略してhuV
κ1-39、又は単に1-39という用語は、本出願の全体にわたって同義的に使用される。明らかに、当業者であれば、「共通」は、アミノ酸配列が同一ではない軽鎖の機能的等価物も指すことを認識するだろう。上記軽鎖には、機能性結合領域の形成に影響を及ぼさない突然変異(欠失、置換、付加)が存在する多数の変異体が存在する。
【0053】
IgV
κ1-39は、免疫グロブリン可変カッパ1-39遺伝子の略称である。この遺伝子は、免疫グロブリンカッパ可変1-39、IGKV139、IGKV1-39、O12a、又はO12としても知られている。この遺伝子の外部Idは、HGNC:5740、Entrez Gene:28930、Ensembl:ENSG00000242371である。IgV
κ1-39の好ましいアミノ酸配列は、
図1に示されている。これには、V領域の配列が列挙されている。V領域は、5つのJ領域の1つと組み合わせることができる。
図1には、J領域と組み合わされたIgV
κ1-39の2つの好ましい配列が記載されている。接合された配列は、IGKV1-39/jk1及びIGKV1-39/jk5と表記されており、代替名称は、IgV
κ1-39
*01/IGJ
κ1
*01又はIgV
κ1-39
*01/IGJ
κ5
*01である(ワールドワイドウェブimgt.orgにおけるIMGTデータベースによる命名法)。
【0054】
共通軽鎖可変領域は、好ましくは、カッパ軽鎖定常領域に連結されている。好ましい実施形態では、軽鎖は、カッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01又はIgVκ1-39*01/IGJκ5*01を含む。好ましい実施形態では、IgVκ1-39*01/IGJκ1*01を含む。
【0055】
共通軽鎖を産生する細胞は、例えば、再編成された生殖系ヒトカッパ軽鎖IgVκ1-39*01/IGJκ1*01、及びラムダ定常領域に融合された上述の軽鎖の可変領域を含む軽鎖を産生することができる。
【0056】
本明細書に記載のような二重特異性抗体又はその変異体は、好ましくは、PD-1の細胞外部分に結合する1つの重鎖可変領域/軽鎖可変領域(VH/VL)組合せ、及びLAG3の細胞外部分に結合する第2のVH/VL組合せを有する。好ましい実施形態では、上記第1のVH/VL組合せのVLは、上記第2のVH/VL組合せのVLと類似している。より好ましい実施形態では、第1及び第2のVH/VL組合せのVLは同一である。好ましい実施形態では、二重特異性抗体は、PD-1の細胞外部分に結合する1つの重鎖/軽鎖(H/L)組合せ、及びLAG3の細胞外部分に結合する1つのH/L鎖組合せを有する全長抗体である。好ましい実施形態では、上記第1のH/L鎖組合せの軽鎖は、上記第2のH/L鎖組合せの点で軽鎖と類似している。より好ましい実施形態では、第1及び第2のH/L鎖組合せの軽鎖は同一である。
【0057】
二重特異性抗体の産生に有利な、又はその逆に単一特異性抗体の産生に有利な幾つかの方法が発表されている。本発明では、細胞において、二重特異性抗体の産生が、対応する単一特異性抗体の産生よりも有利であることが好ましい。それは、典型的には、細胞において、ホモ二量体化よりもヘテロ二量体化(つまり、他の重鎖/軽鎖組合せの重鎖との二量体化)が有利となるように、重鎖の定常領域を修飾することにより達成される。好ましい実施形態では、本発明の二重特異性抗体は、適合性ヘテロ二量体化ドメインを有する2つの異なる免疫グロブリン重鎖を含む。種々の適合性ヘテロ二量体化ドメインは、当技術分野に記載されている。適合性ヘテロ二量体化ドメインは、好ましくは、適合性免疫グロブリン重鎖CH3ヘテロ二量体化ドメインである。野生型CH3ドメインが使用される場合、2つの異なる重鎖(A及びB)及び共通軽鎖の同時発現は、3つの異なる抗体種、AA、AB、及びBBをもたらすことになる。AA及びBBは、2つの単一特異性二価抗体を表し、ABは、二重特異性抗体を表す。所望の二重特異性産物(AB)のパーセンテージを増加させるためには、CH3遺伝子操作を使用することができ、又は言い換えれば、下記で定義されるような、適合性ヘテロ二量体化ドメインを有する重鎖を使用することができる。当技術分野には、重鎖のそのようなヘテロ二量体化を達成することができる種々の方法が記載されている。1つの方法は「ノブ-イントゥ-ホール(knob into hole)」二重特異性抗体を生成することである。米国特許出願第20030078385号明細書(Arathoonら)を参照されたい。
【0058】
用語「適合性ヘテロ二量体化ドメイン」は、本明細書で使用される場合、遺伝子操作ドメインA'が、優先的に遺伝子操作ドメインB'とのヘテロ二量体を形成することになり、その逆も同様であり、A'-A間及びB'-B間のホモ二量体化が減少するように遺伝子操作されているタンパク質ドメインを指す。
【0059】
米国特許出願第13/866,747号明細書(現在は米国特許第9,248,181号として特許付与)、米国特許出願第14/081,848号明細書(現在は米国特許第9,358,286号として特許付与)、及びPCT/NL2013/050294(国際公開第2013/157954号パンフレットとして公開)には、適合性ヘテロ二量体化ドメインを使用して二重特異性抗体を産生するための方法及び手段が開示されている。これらの文献は、参照により本明細書に組み込まれる。こうした手段及び方法も、本発明において好ましく使用することができる。具体的には、本発明の二重特異性抗体は、好ましくは、本質的に二重特異性全長IgG分子のみを産生するための突然変異を含む。好ましい突然変異は、第1のCH3ドメインのアミノ酸置換L351K及びT366K(EU付番)(「KK変異体」重鎖)並びに第2のドメインのアミノ酸置換L351D及びL368E(「DE変異体」重鎖)であるか、又はその逆である。DE変異体及びKK変異体が優先的に対合してヘテロ二量体を形成すること(いわゆる「DEKK」二重特異性分子)が、本発明者らの米国特許第9,248,181号明細書及び米国特許第9,358,286号明細書の特許並びに国際公開第2013/157954号パンフレットPCT出願において以前に示された。DE変異体重鎖のホモ二量体化(DEDEホモ二量体)は、同一重鎖間のCH3-CH3インターフェースの荷電残基間の反発のため、ほとんど生じない。
【0060】
二重特異性抗体は、軽鎖と、効率的なヘテロ二量体化及び二重特異性抗体の形成を保証するように遺伝子操作されたCH3である2つの異なる重鎖とをコードするプラスミドの(一過性)トランスフェクションにより生成することができる。単一細胞におけるこうした鎖の産生は、単一特異性抗体の形成よりも有利な二重特異性抗体の形成に結び付く。本質的に二重特異性全長IgG1分子のみを産生するための好ましい突然変異は、第1のCH3ドメインの351位及び366位におけるアミノ酸置換、例えばL351K及びT366K(EU付番による付番)(「KK変異体」重鎖)及び第2のCH3ドメインの351位及び368位におけるアミノ酸置換、例えばL351D及びL368E(「DE変異体」重鎖)であるか、又はその逆である。
【0061】
Fc領域は、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存細胞性細胞傷害(ADCC)、及び抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)等の、抗体のエフェクター機能を媒介する。療法用抗体又はFc融合タンパク質の応用に応じて、エフェクター機能の低減又は増加のいずれかが望ましい場合がある。本発明では、エフェクター機能の低減が好ましい。本発明の実施形態の一部と同様に、免疫応答を活性化、増強、又は刺激しようとする場合、エフェクター機能の低減が望ましい。エフェクター機能が低減されている抗体を使用して、中でも、免疫細胞の細胞表面分子を標的とすることができる。
【0062】
IgGとFc
γR又はC1qとの結合は、ヒンジ領域及びCH2ドメインに位置する残基を必要とすることが見出された。CH2ドメインの2つの領域(
図2D)は、Fc
γR及びC1q結合に関連する。233位~236位のIgG2残基並びに327位、330位、及び331位のIgG4残基のヒトIgG1への置換は、ADCC及びCDCを大幅に低減することが示された(Armourら、1999年、Eur J Immunol.、29巻(8号):2613~24頁;Shieldsら、2001年、J Biol Chem.、276巻(9号):6591~604頁)。更に、Idusogieらは、K322を含む、異なる位置におけるアラニン置換が、補体活性化を著しく低減することを示した(Idusogieら、2000年、J Immunol.、164巻(8号):4178~84頁。
【0063】
IgG4抗体は、それらのエフェクター機能が低減されているため、細胞を枯渇させずに受容体を阻止するためのIgGサブクラスである。IgG4分子は、Fabアーム交換と名付けられる動力学的プロセスにおいて分子の半分を交換することができる。この現象は、療法用抗体と内因性IgG4との間で生じる場合がある。S228P突然変異は、Fabアーム交換の能力低減を保証する突然変異の例である。(Labrijnら、2009年、Nat Biotechnol.、27巻(8号):767~71頁。
【0064】
エフェクター機能が低減されている抗体は、好ましくは、例えばFc受容体相互作用を低減するか又はC1q結合を低減するように修飾されたCH2/下部ヒンジ領域を含むIgG抗体である。一部の実施形態では、本発明の抗体は、突然変異体CH2及び/又は下部ヒンジドメインを有し、二重特異性IgG抗体とFcガンマ受容体との相互作用が低減されているIgG抗体である。突然変異体CH2領域を含む抗体は、好ましくは、IgG1抗体である。そのような突然変異体IgG1 CH2及び/又は下部ヒンジドメインは、好ましくは、235位及び/又は236位(EU付番による付番)におけるアミノ置換、好ましくはL235G及び/又はG236R置換を含む(
図2E)。
【0065】
本明細書に記載のような抗体又は二重特異性抗体の変異体は、抗体又は二重特異性抗体の機能性部分、誘導体、及び/又は類似体を含む。変異体は、(二重特異性)抗体の結合特異性を維持する。機能性部分、誘導体、及び/又は類似体は、(二重特異性)抗体の結合特異性を維持する。結合特異性は、本明細書に記載のようなPD-1及びLAG3の細胞外部分に結合する能力により規定される。
【0066】
本明細書に記載のような抗体の機能性部分又は好ましくは二重特異性抗体の機能性部分は、PD-1の細胞外部分に結合する可変ドメイン、及びLAG3の細胞外部分に結合する可変ドメインを含む部分である。好適な部分は、例えば、ペプシンによる二重特異性抗体の消化により生成されるようなF(ab')2断片である。上記可変ドメインを含む他の部分は、本発明に含まれる。
【0067】
本明細書に記載のような抗体の機能性誘導体又は好ましくは二重特異性抗体の機能性誘導体は、PD-1の細胞外部分に結合する可変ドメイン、及びリンカーにより連結されているLAG3の細胞外部分に結合する可変ドメインを含むタンパク質である。可変ドメインは、Fab断片等の可変ドメイン、又はリンカーを介して互いに連結されているVH及びVLを含む単鎖Fv断片等の可変ドメイン様分子であってもよい。可変ドメイン様分子の他の例は、いわゆる単一ドメイン抗体断片である。単一ドメイン抗体断片(sdAb)は、単一の単量体可変抗体領域を有する抗体断片である。これは、抗体全体の場合と同様に、特定の抗原と選択的に結合することができる。単一ドメイン抗体断片は、わずか12~15kDaの分子量しか有しておらず、2つの重鎖タンパク質及び2つの軽鎖で構成される一般的な抗体(150~160kDa)よりもはるかに小型であり、Fab断片(約50kDa、1つの軽鎖及び重鎖の半分)及び単鎖可変断片(約25kDa、2つの可変領域、1つは軽鎖由来であり、1つは重鎖由来である)よりもさえ小型である。単一ドメイン抗体自体は、通常抗体(典型的には90~100kDaである)と比べて、それほど小型ではない。単一ドメイン抗体断片は、ほとんどが、ラクダに見出される重鎖抗体から遺伝子操作されており、それらはVHH断片(ナノボディ(登録商標))と呼ばれる。また、一部の魚類は、重鎖のみの抗体(IgNAR、「免疫グロブリン新抗原受容体(immunoglobulin new antigen receptor)」)を有し、それらからVNAR断片と呼ばれる単一ドメイン抗体断片を得ることができる。代替手法は、ヒト又はマウスに由来する一般的な免疫グロブリンG(IgG)に由来する二量体可変ドメインを単量体へと分断することである。現在、単一ドメイン抗体に関するほとんどの研究は、重鎖可変ドメインに基づくが、軽鎖に由来するナノボディも、標的エピトープに特異的に結合することが示されている。可変ドメイン様分子の他の非限定的な例は、VHH、ヒトドメイン抗体(dAb)、及びユニボディ(Unibody)である。好ましい機能性部分は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む可変ドメインを含む部分である。そのような可変ドメインの非限定的な例は、F(ab)断片及び単鎖Fv断片である。可変ドメイン(様)連結のための二重特異性フォーマットは、例えば、2つの異なるscFvに結合されたヒト血清アルブミン(Albumine)(HSA)、scFv断片の二量体化をもたらす二量体化モチーフ又はヘリックスバンドル若しくはコイルドコイル等の自己会合性二次構造により互いに結合されている2つの異なるscFvを含む二重特異性ミニ抗体である(Morrison、(2007年)、Nat. Biotechnol、25巻:1233~34頁)。好適なHSAリンカー及びscFvをリンカーにカップリングするための方法の例は、国際公開第2009/126920号パンフレットに記載されている。
【0068】
本発明の抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体或いは好ましくは二重特異性抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体は、好ましくはヒトに使用される。そのため、本発明の抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体は、好ましくはヒト抗体又はヒト化抗体である。ポリペプチドに対するヒトの寛容性は、多数の異なる局面により左右される。免疫は、T細胞媒介性であれ、B細胞媒介性であれ、又はその他のものであれ、ポリペプチドに対するヒトの寛容性に包含される変数の1つである。好ましくは、本発明の二重特異性抗体の定常領域は、好ましくは
図2に示されるような配列を含むヒト重鎖定常領域、及び好ましくは
図1Cに示されるような配列を含むヒト軽鎖定常領域を含む。定常領域は、天然に存在するヒト抗体の定常領域と比べて、1個又は複数の、好ましくは10個以下の、好ましくは5個以下のアミノ酸差異を含んでいてもよい。定常部分は全体が、天然に存在するヒト抗体に由来することが好ましい。本明細書で産生される種々の抗体は、国際公開第2009/157771号パンフレットに記載のような、対応する標的で免疫された共通軽鎖マウスに由来する。本明細書で産生される種々の抗体は、ヒト抗体可変ドメインライブラリーに由来する。したがって、そうした可変ドメインはヒトである。固有CDR領域は、ヒト由来であってもよく、合成であってもよく、又は別の生物に由来してもよい。可変領域は、CDR領域を除いて、天然に存在するヒト抗体の可変領域のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有する場合、少なくともヒト可変領域である。そのような実施形態では、PD-1又はLAG3の細胞外部分に結合する抗体の可変ドメインのVH、又は本発明の抗体の軽鎖は、CDR領域のアミノ酸配列における考え得る差異は数えずに、天然に存在するヒト抗体の可変領域と比べて、1個又は複数の、好ましくは10個以下の、好ましくは5個以下のアミノ酸差異を含んでいてもよい。そのような突然変異は、自然界では、体細胞性高頻度突然変異の状況でも生じる。
【0069】
抗体は、少なくとも重鎖可変領域に関しては、種々の動物種に由来してもよい。そのような、例えばマウス重鎖可変領域をヒト化することは、よく行われていることである。これを達成することができる方法は種々のものが存在する。それらの中には、以下のものがある:マウス重鎖可変領域の3D構造と一致する3D構造を有するヒト重鎖可変領域へのCDR移植、好ましくはマウス重鎖可変領域から既知の又は推測されるT-又はB-細胞エピトープを除去することにより行われるマウス重鎖可変領域の脱免疫化。除去は、典型的には、エピトープ内のアミノ酸の1つ又は複数を、別の(典型的には保存的な)アミノ酸に置換して、エピトープの配列が、もはやT-又はB細胞エピトープではなくなるように修飾することによる。
【0070】
脱免疫化マウス重鎖可変領域は、元のマウス重鎖可変領域ほどヒト免疫原性ではない。好ましくは、本発明の可変領域又はドメインは、例えばベニアリング等で、更にヒト化されている。ベニアリング技法を使用することにより、免疫系と直ちに遭遇する外面残基がヒト残基と選択的に置き換えられ、免疫原性が弱いか又は実質的に非免疫原性のいずれかであるベニアリング表面を含むハイブリッド分子がもたらされる。動物は、本発明で使用される場合、好ましくは哺乳動物であり、より好ましくは霊長類であり、最も好ましくはヒトである。
【0071】
本発明による抗体又は二重特異性抗体又はそれらの機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体は、好ましくは、ヒト抗体の定常領域を含む。それらの重鎖定常ドメインにおける差異に従って、抗体は、5つのクラス又はアイソタイプ:IgG、IgA、IgM、IgD、及びIgEに分類される。こうしたクラス又はアイソタイプは、対応するギリシャ文字で指定される上記重鎖の少なくとも1つを含む。好ましい実施形態では、本発明は、本発明による抗体であって、上記定常領域がIgG定常領域の群から選択される、つまり、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4からなる群から選択される抗体を提供する。好ましくは、上記定常領域は、好ましくは、IgG4又はIgG1定常領域(
図2)であり、より好ましくは突然変異IgG1定常領域である。IgG1の定常領域では、その結果生じる抗体の免疫学的特性を変更せずに、ある程度の変異が自然に生じるか及び/又は許容される。典型的には、定常領域では約1~10個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せが許容される。効率的なヘテロ二量体化を可能にするために、エフェクター機能を低減するために、又は半減期及び安定性等を含む他の理由のために、定常領域を、本明細書で示されるように突然変異させてもよい。
【0072】
ヒト状況における非ヒト残基の含有量を最小限に抑えるための理論的根拠に基づく方法が発展している。種々の方法を利用して、抗体の抗原結合特性を別の抗体へと首尾良く移植することが可能である。抗体の結合特性は、主にCDR3領域の正確な配列にあり、多くの場合、可変ドメイン全体の適切な構造と組み合わされた可変ドメインのCDR1領域及びCDR2領域の配列により支援される場合がある。現在、種々の方法を利用して、CDR領域を別の抗体の好適な可変ドメインに移植することが可能である。こうした方法の一部は、J.C.Almagro1及びJ.Fransson(2008年)Frontiers in Bioscience、13巻、1619~1633頁に概説されている。この文献は、参照により本明細書に含まれる。
【0073】
図3に示されるような可変重鎖配列を含む可変ドメインの軽鎖可変領域は、好ましくはO12の又はO12に基づく生殖系軽鎖、好ましくは再編成された生殖系ヒトカッパ軽鎖IgV
κ1-39
*01/IGJ
κ1
*01又はそれらの断片若しくは機能性誘導体である(ワールドワイドウェブimgt.orgにおけるIMGTデータベースによる命名法)。再編成された生殖系ヒトカッパ軽鎖IgV
κ1-39
*01/IGJ
κ1
*01、IGKV1-39/IGKJ1、huVκ1-39軽鎖、又は略してhuV
κ1-39という用語が使用される。軽鎖は、1、2、3、4、又は5つのアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有してもよい。上述の1、2、3、4、又は5つのアミノ酸置換は、好ましくは保存的アミノ酸置換であり、挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せは、好ましくは、VL鎖のCDR3領域には存在せず、好ましくは、VL鎖のCDR1、CDR2、若しくはCDR3領域、又はFR4領域には存在しない。共通軽鎖の好ましい配列は、
図1に示されている。
【0074】
種々の方法を利用して、二重特異性抗体を産生することが可能である。1つの方法は、2つの異なる重鎖及び2つの異なる軽鎖を細胞内で発現させる工程、及び細胞により産生された抗体を収集する工程を含む。このようにして産生された抗体は、典型的には、異なる組合せの重鎖及び軽鎖を有し、それらの一部が所望の二重特異性抗体である抗体のコレクションを含むことになる。その後、コレクションから二重特異性抗体を精製することができる。細胞により産生される二重特異性抗体の他の抗体に対する比を、種々の様式で増加させることができる。本発明の好ましい実施形態では、2つの異なる軽鎖ではなく、2つの本質的に同一の軽鎖を細胞で発現させることより、この比を増加させる。2つの本質的に同一の軽鎖は、本質的に同じ軽鎖可変領域及び異なる軽鎖定常領域又は好ましくは2つの本質的に同一の軽鎖定常領域を有する軽鎖であってもよい。この概念は、当技術分野では「共通軽鎖」法とも呼ばれる。本質的に同一の軽鎖が、2つの異なる重鎖と共に働いて、異なる抗原結合部位及びそれに伴って異なる結合特性を有する可変ドメインの形成を可能する場合、細胞により産生される二重特異性抗体の他の抗体に対する比は、2つの本質的に異なる軽鎖の発現よりも著しく向上する。細胞により産生される二重特異性抗体の比は、2つの同一の重鎖の対合よりも、2つの異なる重鎖の互いの対合を刺激することにより更に向上させることができる。当技術分野には、重鎖のそのようなヘテロ二量体化を達成することができる種々の様式が記載されている。好ましい方法は、米国特許仮出願第61/635,935号明細書に記載されており、その後、米国通常出願第13/866,747号明細書及びPCT出願PCT/NL2013/050294号パンフレット(国際公開第2013/157954号A1パンフレット)がそれに続いている。これらの文献は、参照により本明細書に組み込まれる。二重特異性抗体を産生する(単一細胞から)ための方法及び手段であって、単一特異性抗体の形成よりも二重特異性抗体の形成を有利にする手段が提供される方法及び手段が開示されている。こうした方法も、本発明にて好ましく使用することができる。したがって、本発明は、本発明による二重特異性抗体を産生する(単一細胞から)ための方法であって、上記二重特異性抗体は、インターフェースを形成することが可能な2つのCH3ドメインを含み、上記方法は、上記細胞に、a)重鎖を含む第1のCH3ドメインをコードする第1の核酸分子、及びb)重鎖を含む第2のCH3ドメインをコードする第2の核酸分子を提供する工程を含み、上記核酸分子には、重鎖を含む上記第1及び第2のCH3ドメインの優先的対合のための手段が提供されており、上記方法は、上記宿主細胞を培養する工程、及び上記2つの核酸分子の発現を可能にする工程、及び上記二重特異性抗体を上記培養から回収する工程を更に含む方法を提供する。上記第1及び第2の核酸分子は、同じ核酸分子、ベクター、又は遺伝子送達媒体の一部であってもよく、宿主細胞ゲノムの同じ部位に組み込まれてもよい。或いは、上記第1及び第2の核酸分子は、上記細胞に別々に提供される。宿主細胞は、少なくとも1つの軽鎖、好ましくは共通軽鎖を含む。
【0075】
好ましい実施形態は、本発明による二重特異性抗体を単一細胞から産生するための方法であって、上記二重特異性抗体は、インターフェースを形成することが可能な2つのCH3ドメインを含み、上記方法は、
- a)PD-1の細胞外部分に結合することができる抗原結合部位を含み、第1のCH3ドメインを含む重鎖をコードする第1の核酸分子、及びb)LAG3の細胞外部分に結合することができる抗原結合部位を含み、第2のCH3ドメインを含む重鎖をコードする第2の核酸分子を有する細胞を準備する工程を含み、上記核酸分子には、上記第1及び第2のCH3ドメインの優先的対合のための手段が提供されており、
上記方法は、上記細胞を培養する工程、及び上記2つの核酸分子によりコードされるタンパク質の発現を可能にする工程、及び上記二重特異性IgG抗体を上記培養から回収する工程を更に含む方法を提供する。特に好ましい実施形態では、上記細胞は、共通軽鎖をコードする第3の核酸分子を更に有する。上記第1、第2、及び第3の核酸分子は、同じ核酸分子、ベクター、又は遺伝子送達媒体の一部であってもよく、宿主細胞ゲノムの同じ部位に組み込まれてもよい。或いは、上記第1、第2、及び第3の核酸分子は、上記細胞に別々に提供される。好ましい共通軽鎖は、O12に基づき、好ましくは、上記に記載のような、再編成された生殖系ヒトカッパ軽鎖IgV
κ1 39
*01/IGJ
κ1
*01である。上記第1及び上記第2のCH3ドメイン優先的対合のための手段は、好ましくは、重鎖コード領域のCH3ドメインにおける対応する突然変異である。本質的に二重特異性抗体のみを産生するための好ましい突然変異は、第1のCH3ドメインにおけるアミノ酸置換L351K及びT366K(EU付番による付番)及び第2のCH3ドメインにおけるアミノ酸置換L351D及びL368Eであるか、又はその逆である(
図2)。したがって、二重特異性抗体を産生するための本発明による方法であって、上記第1のCH3ドメインは、アミノ酸置換L351K及びL366K(EU付番による付番)を含み、上記第2のCH3ドメインは、アミノ酸置換L351D及びL368Eを含み、上記方法は、上記細胞を培養する工程、及び上記核酸分子によりコードされるタンパク質の発現を可能にする工程、及び上記二重特異性抗体を上記培養から回収する工程を更に含む方法が更に提供される。また、二重特異性抗体を産生するための本発明による方法であって、上記第1のCH3ドメインは、アミノ酸置換L351D及びL368E(EU付番による付番)を含み、上記第2のCH3ドメインは、アミノ酸置換L351K及びT366Kを含み、上記方法は、上記細胞を培養する工程、及び上記核酸分子の発現を可能にする工程、及び上記二重特異性抗体を上記培養から回収する工程を更に含む方法が提供される。こうした方法により産生することができる抗体も、本発明の一部である。CH3ヘテロ二量体化ドメインは、好ましくは、IgG1ヘテロ二量体化ドメインである。CH3ヘテロ二量体化ドメインを含む重鎖定常領域は、好ましくは、IgG1定常領域である。
【0076】
PD-1とPD-L1及び/又はPD-L2との結合を「阻止」する可変ドメインは、PD-1とPD-L1及び/又はPD-L2との結合を妨害する。そのような可変ドメインは、PD-1に結合することができる。そのような阻止性可変ドメインは、PD-1のエピトープに結合することができ、エピトープとの結合をPD-L1及び/又はPD-L2と競合する。また、そのような阻止性可変ドメイン並びにPD-L1及び/又はPD-L2は、PD-1の異なるエピトープに結合する場合がある。そのような場合、阻止活性は、例えば、PD-L1及び/又はPD-L2の結合消失によるもの、それが既にPD-1に結合している場合はPD-L1及び/又はPD-L2の置換によるものであってもよく、又は立体障害によりPD-1との結合を防止することができる。全てのこうした機序及び他の機序は、少なくとも部分的には、上記結合パートナーが上記第1の膜タンパク質に結合することを防止することができる。
【0077】
LAG3とMHCクラスIIとの結合を「阻止」する可変ドメインは、LAG3とMHCクラスIIとの結合を妨害する。そのような可変ドメインは、LAG3に結合する。そのような阻止性可変ドメインは、LAG3のエピトープに結合することができ、エピトープとの結合をMHCクラスIIと競合する。また、そのような阻止性可変ドメイン及びMHCクラスIIは、LAG3の異なるエピトープに結合する場合がある。そのような場合、阻止活性は、例えば、PD-L1及び/又はPD-L2の結合消失によるもの、それが既にLAG3に結合している場合はMHCクラスIIの置換によるものであってもよく、又は立体障害によりLAG3との結合を防止することができる。全てのこうした機序及び他の機序は、少なくとも部分的には、上記結合パートナーが上記第1の膜タンパク質と結合することを防止することができる。
【0078】
LAG3細胞外ドメインは、4つのIg様ドメイン(D1~D4)で構成されている。LAG-3の最初の2つのN末端ドメイン(D1及びD2)は、MHCクラスIIと結合可能である。本発明では、本明細書で指定されるようなPD-1の細胞外部分に結合する可変ドメイン及びLAG-3の細胞外部分に結合する可変ドメインを含む抗体が、免疫応答の刺激並びに/又は免疫シナプスの形成、安定性、及び/若しくは活性の刺激に有効であることを見出した。これは、LAG-3に結合する可変ドメインが、LAG-3の細胞外ドメイン1、細胞外ドメイン2、細胞外ドメイン3、又は細胞外ドメイン4に結合する場合、そうである。LAG-3に結合する可変ドメインは、細胞外ドメイン1又は細胞外ドメイン2に結合することが好ましい。そのような可変ドメインは、本明細書に記載のような抗体の状況においてより有効である。一実施形態では、LAG-3に結合する可変ドメインは、LAG-3の細胞外ドメイン2に結合する。
【0079】
本明細書に記載のような、特異的結合対(即ち、PD-1/PD-L1、PD-1/PD-L2又はLAG3/MHCクラスII)の結合を阻止する可変ドメインは、典型的には、可変ドメインの非存在下での結合と比較して、対の結合を低減する。これは、典型的には、可変ドメインを含む抗体を用いて測定される。これは、好ましくはin vitroアッセイで測定される。典型的には、これは、可変ドメインを、それが結合し得る膜タンパク質と共にインキュベートし、続いて混合物を対の他方のメンバーと共にインキュベートすることにより行われる。その後、対の結合を、上記可変ドメインの非存在下での対の結合と比較する。可変ドメインは、第1の膜タンパク質とその結合パートナーとの結合を完全に防止することができる。また、可変ドメインは、結合対の結合を部分的に防止することができる。膜タンパク質の特異的結合対の結合を阻止する可変ドメインは、可変ドメインの非存在下での結合と比較して、好ましくは、対の結合を、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、及びより好ましくは少なくとも90%低減する。可変ドメインによる結合の阻止は、本明細書では、上記可変ドメインと同じものを2つ含む二価モノクローナル抗体を使用して得られる阻止であると定義される。可変ドメインは、無論、上記可変ドメイン及び第2の膜タンパク質に結合する可変ドメインを含む抗体に存在する場合も結合を阻止する。
【0080】
PD-1の細胞外ドメインに結合することができ、PD1とPD-L1及び/又はPD-L2との結合を少なくとも部分的に阻止することができる具体的な可変ドメインは、
図3のMF6076、MF6226、MF6236、MF6256、MF6930、MF6932、MF6935、MF6936、MF6972、MF6974、又はMF6982、好ましくはMF6256、MF6930、MF6076、MF6974、又はMF6226、好ましくはMF6930、MF6076、又はMF6974のVHのアミノ酸配列を含む可変ドメインである。LAG3の細胞外ドメインに結合することができ、LAG3とMHCクラスIIとの結合を阻止することができる具体的な可変ドメインは、
図3のMF7100、MF7111、MF7116、MF7118、MF7134、MF7136、MF7137、MF7142、MF7146、MF7165、MF7167、MF7185、MF7443、MF7444、MF7515、MF7518、MF7096、MF7097、MF7106、MF7120、MF7133、MF7139、MF7144、又はMF7524、好ましくはMF7518、MF7165、MF7116、MF7096、MF7133、MF7139、MF7524、又はMF7137、好ましくはMF7139、MF7524、MF7133、MF7518、又はMF7096のVHのアミノ酸配列を含む可変ドメインである。
【0081】
また、本発明は、T細胞をエンゲージメント及び/又は活性化するための方法であって、T細胞と上記T細胞をエンゲージメント又は活性化することになる細胞(第2の細胞)とを含む系を準備する工程、並びにPD-1に結合することができる可変ドメイン及びLAG3に結合することができる可変ドメインを含む少なくとも1つの抗体、好ましくは少なくとも1つの二重特異性抗体を上記系に提供する工程、並びにT細胞がエンゲージメント及び/又は活性化されることを可能にする条件下で上記系をインキュベートする工程を含む方法を提供する。一部の実施形態では、上記方法は、in vitro法である。上記T細胞にエンゲージメント又は活性化する細胞は、好ましくは、免疫細胞、例えば抗原提示細胞、マクロファージ、新生細胞、ウイルス感染細胞、又は細胞内寄生虫感染細胞である。T細胞のエンゲージメント及び/又は活性化は、T細胞を特定の標的へと方向付ける。T細胞の活性化は、上記T細胞のT細胞受容体の活性化である。T細胞のエンゲージメントは、典型的にはT細胞の活性化である。また、エンゲージメントは、既に活性化されたT細胞を、抗体により特定された標的へと方向付ける。上記T細胞が活性化及び/又はエンゲージメントされることを可能にする条件は、典型的には培養条件であるが、非ヒト動物中でのインキュベーションであってもよい。条件は、抗体の非存在下でT細胞がエンゲージメントされないような条件である。T細胞のコレクションが測定される場合、コレクションがエンゲージメント又は活性化されていない十分なT細胞を含んでいる限り、それらの一部は、既にエンゲージメント又は活性化されていてもよい。
【0082】
本発明の抗体は、2つの細胞を互いに、近くに接近させ、それにより、本発明の抗体が結合するPD-1及びLAG3以外のタンパク質により媒介される細胞間の相互作用を可能にすることができる。1つのそのような相互作用は、一方の細胞のT細胞受容体と他方の細胞のMHCとの相互作用である。
【0083】
一態様では、本発明は、PD-1及び/又はLAG3陽性細胞でのPD-1及び/又はLAG3媒介性阻害を妨害するための方法であって、上記細胞を、
- PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン、及び
- LAG3の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン
を含む抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体と接触させ、それにより上記細胞でのPD-1及び/又はLAG3媒介性活性を阻害する工程を含む方法を提供する。
【0084】
LAG3又はPD-1陽性細胞は、細胞膜上に、典型的には膜タンパク質に特異的なモノクローナル抗体による免疫蛍光により検出することができる量の膜タンパク質を発現する。PD-1陽性細胞は、T細胞である。LAG3細胞は、好ましくはT細胞、より好ましくはいわゆる疲弊T細胞である。T細胞疲弊は、多数の慢性感染症及びがん中に生じるT細胞機能障害の状態である。それは、不良なエフェクター機能、阻害性受容体の持続的発現、及び機能性エフェクター又は記憶T細胞の転写状態とは異なる転写状態により規定される。疲弊は、感染症及び腫瘍の最適なコントロールを防止する。本発明の抗体は、PD-1及びLAG3媒介性阻害を、それぞれの膜タンパク質に結合し、タンパク質のそれぞれの結合パートナーによるタンパク質の刺激を防止することにより妨害する。PD-1の既知の結合パートナーは、PD-L1及びPD-L2である。LAG3の既知の結合パートナーは、MHCクラスIIである。抗体は、PD-1とPD-L1及び/又はPD-L2との、並びに/又はLAG3及びMHCクラスIIの相互作用を阻止し、それにより、少なくとも部分的には、PD-1陽性細胞でのPD-1の阻害活性及び/又はLAG3陽性細胞でのLAG3の阻害活性を防止する。本発明の好ましい実施形態では、上記PD-1結合可変ドメインとPD-1との結合は、PD-1とPD-L1及び/又はPD-L2、好ましくはPD-L1との結合を阻止する。本発明の好ましい実施形態では、上記LAG3結合可変ドメインとLAG3との結合は、LAG3とMHCクラスIIとの結合を阻止する。上記細胞でのPD-1及び/又はLAG3媒介性活性の阻害は、種々の様式で測定することができる。典型的には、しかしながら必ずという訳ではないが、活性は、CD4+又はCD8+T細胞の活性化を測定することにより測定される。これは、健康なCD4+又はCD8+T細胞を使用することにより行うことができるが、疲弊に対する効果は、典型的には、疲弊T細胞で最も良好に測定される。そのようなT細胞は、例えばLAG3陽性である。活性は、好ましくは進行性疾患を有する対象から収集されるHIV特異的T細胞で好ましくは測定される。増殖は、好適なパラメーターである。抗体の存在下及び非存在下で、増殖速度を決定することができる。増殖速度の差は、こうした細胞におけるLAG3及び/又はPD-1の活性の阻害レベルの尺度である。好適なT細胞の他の例は、非小細胞肺癌(NSCLC)を有する対象から収集されるTILである。インターフェロン-ガンマ産生は、好適なパラメーターである。抗体の存在下及び非存在下で、インターフェロン-ガンマ産生を決定することができる。インターフェロン-ガンマ産生の差は、こうした細胞におけるLAG3及び/又はPD-1の活性の阻害レベルの尺度である。増殖及び/又はインターフェロン-ガンマ産生の増加は、こうした細胞におけるLAG3及び/又はPD-1の活性の阻害を示す。好ましい実施形態では、増加は、抗体の非存在下で検出されるレベル又は速度よりも、少なくとも10%の、好ましくは少なくとも20%の、より好ましくは少なくとも40%の、より好ましくは少なくとも80%の増加である。
【0085】
本発明は、免疫シナプスの形成、安定性、及び/又は活性を刺激するための方法であって、免疫シナプスにより互いに会合することが可能な少なくとも2つの細胞を含む系を準備する工程、及び上記系に、
- PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン、及び
- LAG3の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン
を含む抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体を提供し、
それにより上記少なくとも2つの細胞間の免疫シナプスの形成、安定性、及び/又は活性を刺激する工程を含む方法を更に提供する。抗体は、細胞膜上にPD-1又はLAG3を含む細胞上のPD-1及び/又はLAG3に結合することにより、免疫シナプスの形成、安定性、及び/又は活性を促進する。結合は、PD-1及び/又はLAG3の活性を阻害する。これは、免疫シナプスの形成、安定性、及び/又は活性が刺激されるという効果を有する。PD-1に結合することができる可変ドメインは、好ましくは、PD-1とPD-L1及び/又はPD-L2、好ましくはPD-L1との結合を阻止する。LAG3に結合することができる可変ドメインは、好ましくは、LAG3とMHCクラスIIとの結合を阻止する。上記2つの細胞は、免疫シナプスを形成することが可能な細胞である。細胞の少なくとも1つは、T細胞受容体陽性細胞である。他の細胞は、典型的には、しかしながら必ずという訳ではないが、抗原提示細胞である。免疫シナプスは、T細胞と抗原提示細胞(APC)とが密接に並置される結果として形成され、T細胞受容体(TCR)が、その抗原リガンド、APC膜に存在するペプチド-MHC複合体により誘発される部位である。T細胞膜の免疫シナプスは、典型的には、膜受容体及びそれらの下層細胞骨格及びシグナル伝達タンパク質の3つの同心円を有する。内側の円、即ち中央超分子活性化クラスター(cSMAC、central supramolecular activation cluster)は、TCR及びCD28のほとんどが集中しており、インテグリンにより形成される辺縁部のSMACにより取り囲まれている。最後に、最も外側の円、即ち遠位SMAC(dSMAC)は、CD43及びCD45等の、大型細胞外ドメインを有するタンパク質が、cSMACから遠方に位置する場所である。
【0086】
本発明は、PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及びLAG3の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含む抗体又はその変異体を更に提供する。
【0087】
本発明の方法、抗体(又はその変異体)、又は使用の好ましい実施形態では、PD-1に結合する可変ドメインは、PD-1とPD-L1及び/又はPD-L2との結合を阻止する。LAG3に結合する可変ドメインは、好ましくは、LAG3とMHCクラスIIとの結合を阻止する。好ましくは、両可変ドメインは、それぞれの結合パートナーの結合を阻止する。
【0088】
PD-1の細胞外部分に結合する可変ドメインは、好ましくは、上記PD-1に結合する可変ドメインを2つ含む二価単一特異性抗体フォーマット中に存在する場合、ジャーカット細胞のT細胞受容体媒介性活性化のPD-1/PD-L1媒介性阻害を、ジャーカット細胞に対して抗体ニボルマブで得られる阻害と比較して20~150%の範囲で阻害する可変ドメインであると定義される。
【0089】
ジャーカット細胞のTCR媒介性活性化のPD-1阻害の阻害は、好ましくは、上記ジャーカット細胞に対して抗体ニボルマブで得られる阻害と比較して、50~150%、好ましくは80~150%、より好ましくは100~150%の範囲である。好ましい実施形態では、阻害は、上記ジャーカット細胞に対して抗体ニボルマブで得られる阻害と比較して、少なくとも100%である。ジャーカット細胞のTCR媒介性活性化のPD-1阻害は、好ましくは、抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体が存在した場合にT細胞受容体を介して活性化されることになる条件下でインキュベートされるジャーカット細胞におけるPD-1/PD-L1結合の免疫減衰効果を測定することにより測定される。
【0090】
本発明は、PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及びLAG3の細胞外部分へ結合することができる可変ドメインを含む2つ又はそれよりも多くの抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体を含む組成物又はキットオブパーツであって、
上記抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体の第1及び第2は、
- PD-1の異なるエピトープ、
- LAG3の異なるエピトープ、又は
- PD-1及びLAG3の異なるエピトープ
に結合する、組成物又はキットオブパーツを更に提供する。本段落で指定されるようなPD-1及びLAG3に結合する可変ドメインを有する2つ又はそれよりも多くの抗体又はそれらの機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体を含む方法、使用、組成物、又はキットオブパーツを含む実施形態は、「Oligoclonics」実施形態とも呼ばれる。そのようなOligoclonics実施形態の例は、上記第1及び第2の抗体による実施形態である。「Oligoclonics」は登録商標である。そのようなOligoclonics(登録商標)産物を製作するための基本方法は、国際公開第2013/157953号パンフレット及び国際公開第2004/009618号パンフレットに開示されており、これら文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0091】
Oligoclonics実施形態では、第1及び第2の抗体は、PD-1及びLAG3に結合する可変ドメインを含む。同じPD-1又はLAG3に結合する可変ドメインを有する抗体は、同じ個々のタンパク質に結合することができるが、これは必ずしもそうとは限らない。PD-1又はLAG3に結合する本発明の抗体は、上記タンパク質のエピトープに結合する。エピトープは、抗原、この場合は抗体により認識される膜タンパク質の一部である。膜タンパク質の異なるエピトープに結合する第1及び第2の抗体は、膜上の同じ個々のタンパク質に結合することができる。そのため、異なるエピトープは、好ましくは非重複エピトープである。言い換えれば、異なるエピトープは、2つの抗体が同じ個々のタンパク質に同時に結合することができるように、膜タンパク質上において十分に隔てられている。驚くべきことに、Oligoclonics(第1及び第2又はそれよりも多くの抗体の組合せ)は、同量の各々の抗体のみよりも効果的であり得ることが見出された。
【0092】
好ましくは、2つ又はそれよりも多くの抗体又はそれらの機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体の少なくとも1つは、PD-1とPD-L1及び/又はPD-L2、好ましくはPD-L1との結合を阻止するPD-1結合可変ドメインを含む。好ましい実施形態では、2つ又はそれよりも多くの抗体又はそれらの機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体の少なくとも2つは、PD-1とPD-L1及び/又はPD-L2、好ましくはPD-L1との結合を阻止するPD-1結合可変ドメインを含む。
【0093】
好ましくは、2つ又はそれよりも多くの抗体又はそれらの機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体の少なくとも1つは、LAG3とMHCクラスIIとの結合を阻止するLAG3結合可変ドメインを含む。好ましい実施形態では、2つ又はそれよりも多くの抗体又はそれらの機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体の少なくとも2つは、LAG3とMHCクラスIIとの結合を阻止するLAG3結合可変ドメインを含む。
【0094】
好ましくは、2つ又はそれよりも多くの抗体又はそれらの機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体の少なくとも1つは、PD-1とPD-L1及び/又はPD-L2、好ましくはPD-L1との結合を阻止するPD-1結合可変ドメイン、及びLAG3とMHCクラスIIとの結合を阻止するLAG3結合可変ドメインを含む。好ましくは、2つ又はそれよりも多くの抗体又はそれらの機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体の少なくとも2つは、PD-1とPD-L1及び/又はPD-L2、好ましくはPD-L1との結合を阻止するPD-1結合可変ドメイン、及びLAG3とMHCクラスIIとの結合を阻止するLAG3結合可変ドメインを含む。
【0095】
一態様では、本発明は、本明細書に記載のような方法及び使用であって、2つ又はそれよりも多くの抗体又はそれらの機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体が使用され、2つ又はそれよりも多くの抗体又はそれらの機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体は、PD-1の細胞外部分に結合することができる可変ドメイン及びLAG3の細胞外部分に結合することができる可変ドメインを含み、
上記抗体又はそれらの機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体の第1及び第2は、
- PD-1の異なるエピトープ、
- LAG3の異なるエピトープ、又は
- PD-1及びLAG3の異なるエピトープ
に結合する、方法及び使用を提供する。PD-1に結合する可変ドメインによるPD-L1及び/又はPD-L1の結合阻止、及びLAG3に結合する可変ドメインによるLAG3とMHCクラスIIとの結合阻止の優先度は、Oligoclonics実施形態に記載のように、同じである。
【0096】
抗体又はその部分、誘導体、若しくは類似体は、好ましくは、記載のような2つの可変ドメインを含む。そのような抗体は、好ましくは、二重特異性抗体又はその機能性部分、誘導体、又は類似体である。2つ又はそれよりも多くの抗体又はそれらの機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体は、互いに連結されていてもよい。種々の方法が当技術分野で公知である。好適な方法はコンジュゲーションである。加えて、通常の単一特異性抗体と同じ全体的構造を有するが、抗体の2つのアームが各々異なる標的に結合する二重特異性抗体をも含む多重特異性抗体を製作するための技術が進歩している。二重特異性抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/又は類似体は、好ましくは、適合性ヘテロ二量体化ドメインを有する2つの重鎖を有する。軽鎖は、好ましくは共通軽鎖である。抗体は、好ましくは、適合性ヘテロ二量体化ドメインを有する2つの重鎖からなる全長二重特異性抗体である。軽鎖は、好ましくは共通軽鎖である。
【0097】
本明細書で使用される場合、用語「コンジュゲート」は、共有結合で、任意選択で連結領域により接合されている2つ又はそれよりも多くの分子を指す。例えば、一部の実施形態では、コンジュゲートは、連結領域により第2のタンパク質又は非タンパク質部分に接合された第1のタンパク質又は非タンパク質部分である。例えば、本発明の結合分子の一部の実施形態では、コンジュゲートは、共有結合で接合されている2つ又はそれよりも多くの抗体を含むか又はからなる。コンジュゲートは、第1及び第2の部分に限定されず、一部の実施形態では、更なる連結領域により接合された第3、第4、又はそれよりも多くの部分を更に有してもよい。本出願の他所に記載されているように、タンパク質部分の例としては、これらに限定されないが、ポリペプチド、ペプチド模倣体、又は抗体(又は本出願の他所に記載のような抗体部分、誘導体、又は類似体)が挙げられる。非タンパク質部分の例としては、これに限定されないが、アプタマーが挙げられる。多数のタイプのリンカーを使用することができ、リンカーは、コンジュゲート中にある分子タイプ及びリンカーの所望の特性(長さ、可撓性、プロテアーゼ活性に対する耐性、及び他の類似の特徴)に応じて適切に選択されることになる。そのようなリンカーは、ヌクレオチド、ポリペプチド、又は好適な合成物質を含んでいてもよい。例えば、リンカーは可撓性ペプチドリンカーであってもよい。ある特定の実施形態では、リンカーは、コンジュゲートの部分を互いに分離することが可能である切断可能なリンカーであってもよい。他の実施形態では、ペプチドリンカーは、ヘリカルリンカー(helical linker)であってもよい。タンパク質及び他の分子を連結するための種々の例及びキットが、当技術分野で周知である。本明細書で使用される場合、用語「融合タンパク質」は、組換えによりDNAレベルで接合されており、単一ポリペプチドとして共に発現される2つ又はそれよりも多くのポリペプチド又はタンパク質を含むタンパク質を指す。また、融合タンパク質は、これもDNAによりコードされ、融合タンパク質と共に発現されるペプチド連結領域を含んでいてもよい。融合タンパク質の一部であるペプチドリンカーは、可撓性、親水性、プロテアーゼ耐性、切断性等の特定の特徴を有するように設計されてもよい。こうした特性は全て、DNA配列内に設計することができ、リンカーの設計方法は、当技術分野で周知である。例えば、抗体を、当技術分野で周知の及び本明細書に記載の方法により共に連結して、二重特異性又は多重標的指向性抗体を形成することができる。更に、二重特異性抗体は、当技術分野で公知の種々の方法により、例えば、Biclonics(登録商標)(例えば、国際公開第2013/157954号パンフレットを参照)等の技術を使用することにより構築することができる。二重特異性モノクローナル抗体(BsMAb、BsAb)は、典型的には、2つの異なるモノクローナル抗体の結合ドメインを含み、したがって、2つの異なるエピトープに結合する。Biclonics(登録商標)分子は、しかしながら他の全長IgG二重特異性抗体も、scFvのFabの全長IgG分子の2つの異なる可変領域によりコードされる2つの異なる抗原結合特異性を有する。Biclonics(登録商標)は、本明細書の他所で詳述されているような2つの異なる共通軽鎖(cLC)抗体をコードする遺伝子構築体による個々の細胞の同時トランスフェクションにより産生することができる。CH3遺伝子操作により、効率的なヘテロ二量体化及び本質的に純粋な二重特異性抗体の形成が保証される。
【0098】
本発明の抗体は、好ましくは二重特異性抗体である。抗体は、典型的には、いわゆる抗原結合部位を介してそれらの標的に結合する。未修飾抗原結合部位は、典型的には、抗体の可変ドメインにより形成され、そこに存在する。可変ドメインは、抗原結合部位を含む。抗原に結合することができる可変ドメインは、抗原に結合することができる抗原結合部位を含む可変ドメインである。
【0099】
抗体可変ドメインは、典型的には、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む。抗原結合部位は、VH/VL可変ドメインの組合せに存在してもよく、又はVH領域のみ若しくはVL領域のみに存在してもよい。抗原結合部位が可変ドメインの2つの領域の一方に存在する場合、もう一方の可変領域は、結合性可変領域のフォールディング及び/又は安定性に寄与することができるが、抗原の結合自体には著しくは寄与しない。
【0100】
本明細書で使用される場合、抗原結合は、その抗原に対する抗体の典型的な結合能を指す。抗原に対する抗体の結合は、種々の様式で評価することができる。1つの方法は、抗体を抗原(好ましくは、抗原を発現する細胞)と共にインキュベートし、未結合抗体を除去し(好ましくは洗浄ステップにより)、結合抗体に結合する標識抗体により結合抗体を検出することである。
【0101】
抗体による抗原結合は、典型的には、抗体の相補性決定領域(CDR)、並びに抗原及び可変ドメインの両方の特定の三次元構造により媒介され、これら2つの構造が、タンパク質のランダムで非特異的な付着とは対照的に、互いに精密に結合すること(鍵及び鍵穴に類似する相互作用)が可能になる。抗体は、典型的には、抗原のエピトープと呼ばれる抗原の一部を認識し、そのようなエピトープは、他の化合物にも同様に存在する場合があるため、本発明による抗体は、そのような他の化合物が同じエピトープを含む場合、他のタンパク質も同様に認識する場合がある。したがって、用語「結合」は、同じエピトープを含む別の1つ又は複数のタンパク質に対する抗体の結合を除外しない。そのような他のタンパク質は、好ましくはヒトタンパク質ではない。
【0102】
抗体は、典型的には、出生後の、好ましくは成人ヒトの細胞の膜上にある指定の標的タンパク質以外の他のタンパク質には結合しない。
【0103】
PD-1の細胞外部分に結合することができる本発明の抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/又は類似体の可変ドメインは、PD-1に結合し、同じ種のCD28ファミリーの別のメンバーの細胞外部分に対しては、それ以外は同一の条件下で少なくとも100倍弱く結合する。PD-1に結合する抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/又は類似体の可変ドメインは、PD-1に結合し、同じ種のCD28、CTLA4、ICOS、BTLA、NKp30、及びTMIGD2に対しては、それ以外は同一の条件下で少なくとも100倍弱く結合する。PD-1は細胞表面タンパク質であることを考慮すると、結合は、典型的には、細胞表面上にメンバーを発現する細胞上で評価される。
【0104】
LAG3の細胞外部分に結合することができる本発明の抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/又は類似体の可変ドメインは、LAG3に結合し、同じ種のCD4の細胞外部分に対しては、それ以外は同一の条件下で少なくとも100倍弱く結合する。LAG3は細胞表面タンパク質であることを考慮すると、結合は、典型的には、細胞表面上にメンバーを発現する細胞上で評価される。
【0105】
また、本発明は、がんを有する個体を治療するための方法であって、それを必要とする個体に、本発明の抗体又は機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体又は本発明の二重特異性抗体を投与する工程を含む方法を提供する。個体は、好ましくは、がんを有する個体である。一部の実施形態では、がんは、膜タンパク質を発現するがん細胞を含むがんである。好ましい実施形態では、がんは、PD-L1及び/又はPD-L2を発現するがん細胞を含むがんである。がんは、好ましくは腺癌である。好ましいがんは、結腸直腸がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、肝臓がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、頭頸部がん、黒色腫、精巣がん、尿路上皮がん、腎臓がん、胃がん、又はカルチノイドがんである。好ましい実施形態では、がんは、結腸直腸がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、肝臓がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、頭頸部がん、又は黒色腫である。特に好ましい実施形態では、がんは、結腸直腸がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、又は肝臓がんである。特に好ましい実施形態では、がんは消化管がんである。好ましい実施形態では、がんは結腸直腸がんである。この実施形態では、抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/又は類似体は、好ましくは、PD-1に結合することができる可変ドメイン及びLAG3に結合することができる可変ドメインを有する抗体である。PD-1結合可変ドメインは、好ましくは、PD-1とPD-L1及び/又はPD-L2、好ましくはPD-L1との結合を阻止する。LAG3結合可変ドメインは、好ましくは、LAG3とMHCクラスIIとの結合を阻止する。好ましくは、本方法は、Oligoclonics実施形態について記載のように、上記抗体又はそれらの機能性部分の2つ又はそれよりも多くを含む。
【0106】
更に、個体の異常細胞に対する上記個体の免疫応答を刺激するための方法であって、上記個体に、本発明の抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/又は類似体を提供する工程を含む方法が提供される。異常細胞は、好ましくは、がん細胞、ウイルス感染細胞、寄生虫、又は寄生虫感染細胞である。好ましい実施形態では、細胞は、がん細胞又は新生細胞である。この実施形態では、抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/又は類似体は、好ましくは、PD-1に結合することができる可変ドメイン及びLAG3に結合することができる可変ドメインを有する抗体である。この実施形態では、PD-1結合可変ドメインは、好ましくは、PD-1とPD-L1及び/又はPD-L2、好ましくはPD-L1との結合を阻止する。LAG3結合可変ドメインは、好ましくは、LAG3とMHCクラスIIとの結合を阻止する。好ましくは、本方法は、Oligoclonics実施形態について記載のように、上記抗体又はそれらの機能性部分の2つ又はそれよりも多くを含む。
【0107】
新生物は、組織の異常成長であり、固塊を形成する場合、一般的に腫瘍とも呼ばれる。本発明の新生物は、典型的には固塊を形成する。新生細胞は、固塊を形成した新生物に由来する細胞である。世界保健機構(WHO)は、新生物を4つの主要なグループ:良性新生物、in situ新生物、悪性新生物、及び挙動が不明確又は未知の新生物に分類している。悪性新生物は、単にがんとしても知られている。
【0108】
免疫応答の刺激は、免疫応答を誘導すること及び既に存在する免疫応答を増強することを包含する。個体の免疫応答は、該当する場合、個体の腫瘍負荷、個体のウイルス負荷、個体の寄生虫負荷を測定することにより測定することができる。
【0109】
上記ウイルス感染細胞は、好ましくは、免疫不全ウイルス、ヘルペスウイルス、好ましくは単純ヘルペスウイルス、水痘-帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、又はエプスタインバーウイルス、パピローマウイルス、ヘパティス(hepatis)ウイルス、好ましくはA型、B型、若しくはC型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、又はアデノウイルスに感染した細胞である。ウイルスは、好ましくは、個体中で持続することができることが知られているウイルスである。持続感染は、ウイルスが除去されないが、感染個体の特定細胞に残存するものであると特徴付けられる。持続感染は、静止感染及び増殖性感染の両方の段階を含むことができ、宿主細胞を迅速に死滅させず、又は宿主細胞の過度の損傷をさえもたらさない。持続的ウイルス-宿主相互作用は、潜伏感染、慢性感染、及び/又は遅延感染であってもよい。
【0110】
寄生虫感染細胞は、細胞内寄生虫に感染した細胞である。そのような寄生虫は、宿主の細胞内部で成長及び繁殖することが可能な寄生微生物である。一部の細胞内寄生虫は、細胞の外部でも生存することができる。そのような寄生虫は、いわゆる通性細胞内寄生虫である。非限定的な例は、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、レジオネラ(Legionella)、ミコバクテリウム(mycobacterium)のある特定の種、及びクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)である。好ましい細胞内寄生虫は、宿主細胞の外部で成長することができない寄生虫であり、好ましい例は、クラミジア(Chlamydia)及び近縁種、マイコバクテリウム・レプレ(Mycobacterium leprae)等のミコバクテリウムのある特定の種、アピコンプレクサ類(Apicomplexan)(プラスモジウム(Plasmodium spp.)種、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、及びクリプトスポリジウム・パルバム(Cryptosporidium parvum)、及びトリパノソマチド(trypanosomatid)を含むある特定の原生動物である。
【0111】
また、本発明は、本発明による抗体重鎖可変領域をコードする核酸分子を提供する。核酸分子(典型的には、in vitroの単離又は組換え核酸分子)は、好ましくは、
図3に示されるような重鎖可変領域又は1、2、3、4、若しくは5つのアミノ酸挿入、欠失、置換、若しくはそれらの組合せを有する
図3に示されるような重鎖可変領域のいずれか1つをコードする。好ましい実施形態では、核酸分子は、
図3に示されるような配列を含む。核酸分子には、好ましくは、使用される抗体産生細胞での発現に最適化されているコドンが使用される。好ましくは、
図3に示されるような重鎖可変領域、又は1、2、3、4、若しくは5つのアミノ酸挿入、欠失、置換、若しくはそれらの組合せを有する
図3に示されるような重鎖可変領域をコードする核酸は、ヒト細胞、好ましくはPer.C6(商標)又はチャイニーズハムスター、好ましくはCHOでの発現にコドン最適化されている。本発明は、
図2の重鎖定常領域と共に上述の重鎖可変領域をコードする核酸分子を更に提供する。
【0112】
核酸分子は、本発明で使用される場合、典型的には、しかながら排他的にではないが、リボ核酸(RNA)又はデオキシリボ核酸(DNA)である。当業者であれば、代替核酸が利用可能である。本発明による核酸分子は、例えば細胞に含まれる。上記核酸分子が上記細胞で発現されると、上記細胞は、本発明による抗体を産生することができる。したがって、本発明は、一実施形態では、本発明による抗体及び/又は本発明による核酸分子を含む細胞を提供する。上記細胞が重鎖及び軽鎖を産生すると、抗体が産生される。本発明の抗体を産生することができる細胞が提供される。細胞は、好ましくは、共通軽鎖と組み合わせると上記第1の膜タンパク質に結合することができる抗体重鎖可変領域を含む抗体重鎖をコードする核酸分子を含む。上記細胞は、好ましくは、共通軽鎖と組み合わせると上記第2の膜タンパク質に結合することができる抗体重鎖可変領域を含む抗体重鎖をコードする核酸分子を更に含む。上記細胞は、好ましくは、共通軽鎖をコードする核酸分子を更に含む。上記細胞は、好ましくは動物細胞、より好ましくは哺乳動物細胞、より好ましくは霊長類細胞、最も好ましくはヒト細胞である。本発明の目的では、好適な細胞は、好ましくは、本発明による抗体及び/又は本発明による核酸を含むことが可能であり、好ましくは産生することが可能である任意の細胞である。
【0113】
本発明は、本発明による抗体を含む細胞を更に提供する。また、本発明の抗体を単独で又は共にコードする1つ又は複数の核酸分子を含む細胞が提供される。1つ又は複数の核酸分子は、発現可能な核酸分子であり、これは、タンパク質コードドメインのRNA転写及び翻訳に必要なシスシグナルを含むことを意味する。好ましくは、上記細胞(典型的にはin vitroの単離又は組換え細胞)は、上記抗体を産生する。好ましい実施形態では、上記細胞は、ハイブリドーマ細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0細胞、又はPER-C6(商標)細胞である。特に好ましい実施形態では、上記細胞はCHO細胞である。更に、本発明による細胞を含む細胞培養が提供される。種々の機関及び会社により、例えば臨床に使用するための抗体を大規模生産するための細胞株が開発されている。そのような細胞株の非限定的な例は、CHO細胞、NS0細胞、又はPER.C6(商標)細胞である。こうした細胞は、タンパク質の産生等の他の目的にも使用される。タンパク質及び抗体の工業規模生産のために開発された細胞株は、本明細書では、工業細胞株とも呼ばれる。したがって、好ましい実施形態では、本発明は、本発明の抗体を産生するための、抗体の大規模生産のために開発された細胞株の使用を提供する。本発明は、
図3、
図1及び
図2に示されるようなVH、VL、及び/又は重鎖をコードする核酸分子を含む抗体を産生するための細胞を更に提供する。好ましくは、上記核酸分子は、
図1及び
図2に示されるような配列を含む。
【0114】
本発明は、抗体を産生するための方法であって、本発明の細胞を培養する工程、及び上記抗体を上記培養から回収する工程を含む方法を更に提供する。好ましくは、上記細胞は、無血清培地で培養される。好ましくは、上記細胞は、懸濁成長に適合している。更に、本発明による抗体を産生するための方法により取得可能な抗体が提供される。抗体は、好ましくは、培養の培地から精製される。好ましくは、上記抗体は、親和性精製される。
【0115】
本発明の細胞は、臨床目的の抗体産生、特にヒト投与に使用される抗体の産生に好適である、例えば、ハイブリドーマ細胞株、CHO細胞、293F細胞、NS0細胞、又は当技術分野で公知の任意の他の細胞タイプである。特に好ましい実施形態では、上記細胞は、ヒト細胞、好ましくはアデノウイルスE1領域により形質転換される細胞、又はその機能性等価物である。そのような細胞株の好ましい例は、PER.C6(商標)細胞株又はその等価物である。特に好ましい実施形態では、上記細胞は、CHO細胞又はその変異体、好ましくは、抗体の発現にグルタミンシンテターゼ(GS)ベクター系を使用する変異体である。
【0116】
本発明は、本発明による1つ又は複数の抗体又はその変異体を含む医薬組成物を更に提供する。医薬組成物は、好ましくは、好ましくは、薬学的に許容される賦形剤、又は担体を含む。本発明の抗体又はその変異体は、標識、好ましくはin vivo撮像用の標識を更に含んでいてもよい。そのような標識は、典型的には、療法応用に必ずしも必要ではない。例えば、標識は、診断設定において有用であり得る。例えば、体内の標的細胞の視覚化に。種々の標識が好適であり、多数が当技術分野で周知である。好ましい実施形態では、標識は、検出用の放射性標識である。別の好ましい実施形態では、標識は、赤外線標識である。好ましくは、赤外線標識は、in vivo撮像に好適である。当業者であれば種々の赤外線標識が利用可能である。好ましい赤外線標識は、例えば、IRDye 800、IRDye 680RD、IRDye 680LT、IRDye 750、IRDye 700DX、IRDye 800RS IRDye 650、IRDye 700ホスホラミダイト、IRDye 800ホスホラミダイト(LI-COR USA社、スーペリア通り4647、リンカーン市、ネブラスカ州)。
【0117】
患者に投与される本発明による抗体の量は、典型的には治療濃度域にあり、これは、療法効果を得るために十分な量が使用されるが、その量は、許容できない程の副作用に結び付く閾値を超えないことを意味する。治療濃度域は、典型的には、所望の療法効果を得るのに必要な抗体の量が低いほど大きくなるだろう。したがって、低投薬量で十分な療法効果を発揮する本発明による抗体が好ましい。投薬量は、ニボルマブの投薬レジメンの範囲にあってもよい。また、投薬量は、より低量であり得る。
【0118】
本発明による抗体又はその変異体並びに特に二重特異性抗体又はその変異体は、可変ドメインを有する二価単一特異性抗体の組合せよりも少ない副作用を有し得る。阻害性及び/又は共刺激性分子を阻止する抗体の組合せは、既存の免疫療法に応答しない患者の利益になる。しかしながら、免疫調節受容体(iMOD)の二重阻止は、免疫関連毒性を増加させることが示されている。本発明による抗体又はその変異体並びに特に二重特異性抗体又はその変異体は、モノクローナル抗体の組合せでは再現することができない機能的活性を発揮することができ、特定の細胞集団をより選択的に標的とすることができるため、iMODの二重阻止に対処し、それにより患者における安全性障害を低減するのに適している。
【0119】
上記に照らして、本発明による二重特異性抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/若しくは類似体は、療法応用に好ましい。
【0120】
抗体は、重鎖のヘテロ二量体化を駆動する突然変異をCH3領域に含む補完的発現ベクターにそれらをクローニングすることにより、二重特異性抗体として産生した。多数の二重特異性抗体を小規模で産生し、がん細胞株での結合及び機能アッセイで試験した。本発明の抗体、特に本発明の二重特異性抗体は、低毒性プロファイルを高い有効性と組み合わせることができる。本発明の抗体は、種々のタイプ及び系統の免疫標的療法に有用である。本発明の抗体は、両アームで同じ抗原に結合する抗体と比較して、増加した治療濃度域を有することができる。
【0121】
更に、異常細胞、腫瘍、及び/又は転移の形成を治療又は予防するための薬剤を調製するための、本発明による二重特異性抗体又はその機能性部分、誘導体、及び/又は類似体の使用が提供される。上記転移が由来する腫瘍は、好ましくは、PD-L1及び/又はPD-L2が陽性である腫瘍である。
【0122】
本発明の抗体は、懸濁293F細胞の一過性形質移入後に、>50mg/Lのレベルで産生させることができる。二重特異性抗体は、収率が>70%で、98%を超える純度に精製することができる。分析的特徴付け研究は、二価単一特異性lgG1と同様である二重特異性lgGl抗体プロファイルを示す。
【0123】
明瞭性及び簡潔な説明のため、本明細書では、特徴が、同じ又は個別の実施形態の一部として記載されているが、本発明の範囲は、記載されている特徴の全て又は一部の組合せを有する実施形態を含み得ることが理解されるだろう。
【0124】
また、がんを有する個体を治療するための方法であって、本発明のタンパク質又は本発明の二重特異性抗体の治療有効量を、それを必要とする個体に投与する工程を含む方法が提供される。
【0125】
本発明は、がんを有する個体の治療に使用するための、本発明のタンパク質又は本発明の二重特異性抗体を更に提供する。
【0126】
本発明の抗体又はその変異体は、好ましくは、PD-1の細胞外部分に結合することができ、
図3のMF6076、MF6226、MF6236、MF6256、MF6930、MF6932、MF6935、MF6936、MF6972、MF6974、又はMF6982、好ましくはMF6256、MF6930、MF6076、MF6974、又はMF6226、好ましくはMF6930、MF6076、又はMF6974について示されるVHの1つの可変重鎖領域のCDR3のアミノ酸配列を含むCDR3領域を有する重鎖可変領域を含む可変ドメインを含む。上記PD-1に結合する可変ドメインは、好ましくは、
図3のMF6076、MF6226、MF6236、MF6256、MF6930、MF6932、MF6935、MF6936、MF6972、MF6974、又はMF6982、好ましくはMF6256、MF6930、MF6076、MF6974、又はMF6226、好ましくはMF6930、MF6076、又はMF6974について示されるVHの1つの可変重鎖領域のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、及びCDR3領域を有する重鎖可変領域を含む。
【0127】
抗体又はその変異体は、好ましくは、PD-1の細胞外部分に結合することができ、
図3のMF6076、MF6226、MF6236、MF6256、MF6930、MF6932、MF6935、MF6936、MF6972、MF6974、又はMF6982、好ましくはMF6256、MF6930、MF6076、MF6974、又はMF6226、好ましくはMF6930、MF6076、又はMF6974について示される可変重鎖領域のアミノ酸配列であって、MFについて示されるVHのアミノ酸配列に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有する可変重鎖領域のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む可変ドメインを含む。
【0128】
抗体又はその変異体は、好ましくは、LAG3の細胞外部分に結合することができ、
図3のMF7100、MF7111、MF7116、MF7118、MF7134、MF7136、MF7137、MF7142、MF7146、MF7165、MF7167、MF7185、MF7443、MF7444、MF7515、MF7518、MF7096、MF7097、MF7106、MF7120、MF7133、MF7139、MF7144、又はMF7524、好ましくはMF7518、MF7165、MF7116、MF7096、MF7133、MF7139、MF7524、又はMF7137、好ましくはMF7139、MF7524、MF7133、MF7518、又はMF7096について示される可変重鎖領域のCDR3領域のアミノ酸配列を含むCDR3を有する重鎖可変領域を含む可変ドメインを含む。上記LAG3の結合する可変ドメインは、好ましくは、
図3のMF7100、MF7111、MF7116、MF7118、MF7134、MF7136、MF7137、MF7142、MF7146、MF7165、MF7167、MF7185、MF7443、MF7444、MF7515、MF7518、MF7096、MF7097、MF7106、MF7120、MF7133、MF7139、MF7144、又はMF7524、好ましくはMF7518、MF7165、MF7116、MF7096、MF7133、MF7139、MF7524、又はMF7137、好ましくはMF7139、MF7524、MF7133、MF7518、又はMF7096について示されるVHの1つの可変重鎖領域のCDR1、CDR2、及びCDR3のアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、及びCDR3領域を有する重鎖可変領域を含む。
【0129】
抗体又はその変異体は、好ましくは、LAG3の細胞外部分に結合することができ、
図3のMF7100、MF7111、MF7116、MF7118、MF7134、MF7136、MF7137、MF7142、MF7146、MF7165、MF7167、MF7185、MF7443、MF7444、MF7515、MF7518、MF7096、MF7097、MF7106、MF7120、MF7133、MF7139、MF7144、又はMF7524、好ましくはMF7518、MF7165、MF7116、MF7096、MF7133、MF7139、MF7524、又はMF7137、好ましくはMF7139、MF7524、MF7133、MF7518、又はMF7096について示される可変重鎖領域のアミノ酸配列であって、表記のMFのアミノ酸配列に対して、最大で15個、好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、及び好ましくは0、1、2、3、4、又は5個のアミノ酸挿入、欠失、置換、又はそれらの組合せを有する可変重鎖領域のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む可変ドメインを含む。
【0130】
本発明は、以下の例において更に説明される。こうした例は、本発明の範囲を限定せず、本発明を明白するための役目を果たすに過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【
図1】単一及び二重特異性IgGにおいて使用される共通軽鎖の図である。A. 共通軽鎖アミノ酸配列。B. 共通軽鎖可変ドメインDNA配列及び翻訳(IGKV1-39/jk1)。C. 共通軽鎖定常領域DNA配列及び翻訳。D. IGKV1-39/jk5共通軽鎖可変ドメイン翻訳。E. V領域IGKV1-39A。
【
図2】二重特異性分子の生成のためのIgG重鎖の図である。A. VH遺伝子。B. CH1領域。C. ヒンジ領域。D. CH2領域。E. L235G及びG236Rサイレンシング置換を含有するCH2領域。F. 置換L351K及びT366K(KK)を含有するCH3ドメイン。G. 置換L351D及びL368E(DE)を含有するCH3ドメイン。A. VH:MF(標的)依存性:
図3 B. CH1: C. ヒンジ: D. CH2: E. L235G及びG236Rサイレンシング置換を含むCH2: F. CH3:DEKKのKK G. CH3:DEKKのDE
【
図3】重鎖可変領域のアミノ酸配列: A. PD-1特異的クローンの重鎖可変領域 B. LAG-3特異的クローンの重鎖可変領域 重鎖可変領域のアミノ酸配列の図である。記号MFは、描写される重鎖可変領域及び共通軽鎖を含有するfabを指す。軽鎖のアミノ酸配列は、
図1Aにおいて示される。下線を引いた配列は、アミノ酸配列毎に、それぞれ、CDR1、CDR2及びCDR3領域を示す。
【
図4】pIRES-Neo3(MV1363)のベクターマップ及び特性の図である。
【
図5】pVAX1のベクターマップ及び特性の図である。
【
図6】「免疫」ファージディスプレイライブラリーを作製するため使用したファージミドベクターMV1473のベクターマップ及び特性の図である。
【
図7】二重特異性IgG生成のためのKK-変異体重鎖におけるPD-1及びPD-L1特異的Fabアームの発現のため使用したIgG発現ベクターMV1452のベクターマップ及び特性の図である。
【
図8】MF1337としての共通軽鎖と組み合わされたときテタヌス毒素特異的であり、PD-L1xTT及びPD-1xTT二重特異性IgG分子を作製するために使用したDE-変異体重鎖に存在するVH遺伝子のアミノ酸配列の図である。下線を引いた配列は、アミノ酸配列毎に、それぞれ、CDR1、CDR2及びCDR3領域を示す。
【
図9】二重特異性IgG生成のためのDE-変異体重鎖におけるTT特異的FabアームMF1337の発現のため使用した、IgG発現ベクターMV1377のベクターマップ及び特性の図である。
【
図10】PD-1/PD-L1ブロッキングアッセイのグラフである。濃度10μg/ml二重特異性IgGにおいてPD-L1のコーティングされたPD-1への相互作用をブロックする抗PD-1抗体パネルの能力の評価。データを、濃度10μ/mlにおいて二価ベンチマークPD-L1抗体MPDL3280Aを用いて得たデータ(100%ブロッキング)に対して正規化した。PD-1パネルである、代表例を示す。最大結合(0%ブロッキングに対して正規化)を、非PD-1/PD-L1特異的ヒトアイソタイプ抗体とのインキュベーションにより確立した。
図3において描写し、ここでは表していないMF配列を含む全てのPD-1可変ドメインは、PD-1/PD-L1相互作用を>70%ブロックする。
【
図11】LAG-3阻止レポーターアッセイでの用量滴定における、抗体のパネルのLAG-3機能的活性。ドメインマッピングとLAG-3阻止活性との関係性が、LAG-3に示され、右パネルに概略的に描かれている。
【
図12】それらの親二価LAG-3抗体と比較した、LAG-3×PD-1抗体のIL-2産生の刺激指数。各IL-2値を陰性対照抗体(非表示)と比較して、SIを決定する。
【
図13】健康ドナー血液細胞でのIL-2産生のSEB刺激は、親PD-1二価抗体及び25F7 LAG-3参照抗体と比較して、抗-LAG-3×PD-1二重特異性抗体により増強される。
【
図14】コンパレーター抗-LAG-3抗体。PG1337P300は、細胞との結合が予想されず、破傷風トキソイドに結合する対照抗体である。左側パネルは、表記の抗体と、LAG-3を細胞膜に発現する293FF-LAG-3細胞との結合を示す。右側パネルは、活性化ヒトT細胞を示す。細胞に対する抗体の結合は、PE標識抗IgG F(ab')2.25F7
*により検出し、親和性は、約0.2nMであると決定された。
【
図15】FACSに基づくLAG-3パネルの特徴付け。19個のLAG-3特異的抗体を、一価(PB LAG-3×TT)フォーマット及び二価(PG)フォーマットで発現させた。抗体結合を、活性化T細胞及び293FF-LAG-3安定細胞株で試験した。2つのパネルは、293FF-LAG-3細胞に対する、MF7116及びMF7431(25F7
*)一価及び二価結合の例を示す。一価結合は、一方のアームが、表記のLAG-3抗体のVH(文字MFにより示される)を有する二重特異性抗体(PB)を用いて決定した。抗体の他方のアームは、破傷風トキソイド(MF1337)に特異的なVHを有する。LAG-3パネルの一部の二価/一価フォーマット間では結合に差異が観察されたが、25F7
*では観察されなかった。
【
図16】LAG-3×PD-1レポーターアッセイ検証:二重特異性抗体は、LAG-3×PD-1レポーターアッセイにて活性を示す。
【
図17A】PD-1+LAG-3レポーターアッセイスクリーニング。パネルA、機能性LAG-3及びPD-1アームを有するLAG-3×PD-1。
【
図17B】パネルB、MF5374を有する非機能性PD-1アームを有するLAG-3×PD-1。
【
図17C】パネルC、MF7118及びMF7167を有する非機能性LAG-3アームを有するLAG-3×PD-1。
*は、サロゲートアームを示す。
【
図18】結果の要約
図18に示されるレポーターアッセイスクリーニング。文字MG直後の4桁の数字は、二重特異性抗体の可変ドメインの重鎖可変領域のMF番号を示す。例えば、表の上部左側角の結果52,22を示す二重特異性抗体は、MF6930を有する1つのアーム及びMF7518を有する1つのアームを有する。値は、対照の%としての曲線下面積(AUC)である。
【
図19A】SEBアッセイスクリーニング:例示的IL-2産生。パネルA、機能性PD-1及びLAG-3アームを有するLAG-3×PD-1。
【
図19B】パネルB、VH MF5374を有する非機能性PD-1アームを有するLAG-3×PD-1。
【
図19C】パネルC、VH MF7118及びMF7167を有する非機能性LAG-3アームを有するLAG-3×PD-1。
*は、サロゲート抗体を示す。
【
図20】スクリーニング結果 レポーターアッセイ及びSEBアッセイ。レポーターアッセイにおいて二価抗体としての機能性で順位付けした(高から低)アーム。各列の上部はLAG-3アーム、各行の左はPD-1アーム。
図19に示されているように、文字MG直後の4桁の数字は、二重特異性抗体の可変ドメインの重鎖可変領域のMF番号を示す。値は、対照の%としてのAUCである。白色=上位15%、灰色=中間43%、黒色=下位43%。
【
図21】LAG-3×PD-1順位付け;PD-1アーム。マトリックスファイルを使用し、以下の陽性対照と比較したAUCに基づく二重特異性抗体の上位15%を画定した:1)レポーターアッセイ;2)SEBスクリーニングドナー1(IL-2データ);3)SEBスクリーニングドナー2(IL-2データ)。次に、特定のPD-1 Fabアームを有する二重特異性抗体が、この上位15%の中に幾つ存在したかをスコア化した。MF6974のVH又はMF6076のVHを有する可変ドメインを有するPD-1アームを有するクローンは、レポーターアッセイ及びSEBアッセイにおいて、LAG-3アームのほとんどとの組合せで最も良い成績を示した。色/灰色コーディングは、より暗色が、より高い順位を示す。
【
図22】LAG-3×PD-1順位付け;LAG-3アーム。マトリックスファイルを使用し、以下の陽性対照と比較したAUCに基づく二重特異性の上位15%(左側)及び上位25%(右側)を画定した:1)レポーターアッセイ;2)IL-2データに基づくSEBスクリーニングドナー1;3)IL-2データに基づくSEBスクリーニングドナー2。次に、特定のLAG-3 Fabアームを有する二重特異性抗体が、この上位15%の中に幾つ存在したかをスコア化した。上位15%において同じスコアを有するFabアームを、上位25%スコアを使用して更に順位付けた。色/灰色コーディングは、より暗色が、より高い順位を示す。
【
図23】PD1アームの順位付け。順位付け、配列多様性、及び結合親和性に基づくPD-1アーム(左側の列)。
【
図24】LAG-3アームの順位付け。順位付け、配列多様性、及び結合親和性に基づくLAG-3アーム(左側の列)。
【
図25】同種異系mMLRでのIFN-γ産生に対する試験抗体の効果。Mo-DCを、7日間培養したCD14+単球から調製した。7日目に未成熟DCを使用し、成熟培地で更に3日間培養することにより成熟DCを生成し、その後、ネガティブ選択により単離したT細胞及び試験抗体と共に4日間培養した(mMLR)。培養上清中のIFN-yを、ELISAにより測定した。データは、媒体対照に対して正規化されている。4つの個別のMLRを実施した。
【発明を実施するための形態】
【実施例0132】
本明細書において使用される、「MFXXXX」(Xは、独立した数0~9である)は、可変ドメインを含むFabを指し、VHが、4桁により同定されるアミノ酸配列を有する。別段示されない限り、可変ドメインの軽鎖可変領域は、典型的には、
図1A、典型的には、
図1Bの配列を有する。「MFXXXX VH」は、4桁により同定されるVHのアミノ酸配列を指す。MFは、更に、軽鎖の定常領域及び軽鎖の定常領域と通常相互作用する重鎖の定常領域を含む。PGは、同一の重鎖及び軽鎖を含む単一特異性抗体を指す。PBは、2つの異なる重鎖を有する二重特異性抗体を指す。重鎖の可変領域は、異なり、典型的にはまた、CH3領域であり、重鎖の一方が、そのCH3ドメインのKK変異を有し、他方が、そのCH3ドメインの相補的なDE変異を有する(PCT/NL2013/050294(国際公開第2013/157954号パンフレットとして公開)を参照)。
【0133】
(実施例1)
選択及びスクリーニングのための物質の生成
細胞株の培養
フリースタイルの293F細胞(カタログ番号p/n51-0029)を、Invitrogen社から得て、293フリースタイル培地において慣習的に維持した。HEK293T(カタログ番号ATCC-CRL-11268)細胞を、ATCCから購入し、L-グルタミン(Gibco)及びFBS(Lonza社)を補充したDMEM/F12(Gibco社)において慣習的に維持し、CHO-S(カタログ番号11619-012)細胞株を、Gibcoから購入し、L-グルタミンを補充したフリースタイルのCHO発現培地(Invitrogen社)において慣習的に維持した。
【0134】
免疫化のための並びに安定細胞株の生成及び一過性形質移入のためのPD-1及びLAG-3発現ベクターの生成
クローニングのための固有の制限酵素部位及び効率的な翻訳のためのコザック共通配列を含むそれぞれの標的の全長cDNAを、合成するか、又はクローニングのための固有の制限酵素部位及び効率的な翻訳のためのコザック共通配列を導入した特異的プライマーを用いて、標的cDNAを含有する、市販の発現コンストラクト上でのPCR増幅を介して得た。それぞれの標的のcDNAを、NheI/EcoRIを介してpIRES-Neo3(Clontech社;
図4)又はpVAX1(Thermo Fisher Scientific社;
図5)のような真核生物の発現コンストラクトにクローニングし、それぞれ、pIRES-Neo3_[TARGET_NAME]及びpVAX1_[TARGET_NAME]を得た。挿入配列を、NCBI参照アミノ酸配列との比較により検証した。pIRES-Neo3コンストラクトを、安定な細胞株の生成及び一過性形質移入のため使用した。pVAX1コンストラクトを、免疫目的のため使用した。得られたコンストラクトの名称の概要については、TABLE 1(表3)を参照のこと。
【0135】
細胞表面上での発現のためのアミノ酸配列全長huPD-1挿入物(pIRES-Neo3中とpVAX1中の両方)(GenBank: NP_005009.2と同一):
MQIPQAPWPVVWAVLQLGWRPGWFLDSPDRPWNPPTFSPALLVVTEGDNATFTCSFSNTSESFVLNWYRMSPSNQTDKLAAFPEDRSQPGQDCRFRVTQLPNGRDFHMSVVRARRNDSGTYLCGAISLAPKAQIKESLRAELRVTERRAEVPTAHPSPSPRPAGQFQTLVVGVVGGLLGSLVLLVWVLAVICSRAARGTIGARRTGQPLKEDPSAVPVFSVDYGELDFQWREKTPEPPVPCVPEQTEYATIVFPSGMGTSSPARRGSADGPRSAQPLRPEDGHCSWPL
その内:
MQIPQAPWPVVWAVLQLGWR:シグナルペプチド。
PGWFLDSPDRPWNPPTFSPALLVVTEGDNATFTCSFSNTSESFVLNWYRMSPSNQTDKLAAFPEDRSQPGQDCRFRVTQLPNGRDFHMSVVRARRNDSGTYLCGAISLAPKAQIKESLRAELRVTERRAEVPTAHPSPSPRPAGQFQTLV:huPD-1のECD。
VGVVGGLLGSLVLLVWVLAVI:予想TM領域。
CSRAARGTIGARRTGQPLKEDPSAVPVFSVDYGELDFQWREKTPEPPVPCVPEQTEYATIVFPSGMGTSSPARRGSADGPRSAQPLRPEDGHCSWPL:細胞内尾部。
【0136】
細胞表面での発現のためのアミノ酸配列全長マカク(カニクイザル(macaca fascicularis))PD-1挿入物(pIRES-Neo3中とpVAX1中の両方)(GenBank:ABR15751.1と同一):
MQIPQAPWPVVWAVLQLGWRPGWFLESPDRPWNAPTFSPALLLVTEGDNATFTCSFSNASESFVLNWYRMSPSNQTDKLAAFPEDRSQPGQDCRFRVTRLPNGRDFHMSVVRARRNDSGTYLCGAISLAPKAQIKESLRAELRVTERRAEVPTAHPSPSPRPAGQFQALVVGVVGGLLGSLVLLVWVLAVICSRAAQGTIEARRTGQPLKEDPSAVPVFSVDYGELDFQWREKTPEPPAPCVPEQTEYATIVFPSGLGTSSPARRGSADGPRSPRPLRPEDGHCSWPL
その内:
MQIPQAPWPVVWAVLQLGWR:シグナルペプチド。
PGWFLESPDRPWNAPTFSPALLLVTEGDNATFTCSFSNASESFVLNWYRMSPSNQTDKLAAFPEDRSQPGQDCRFRVTRLPNGRDFHMSVVRARRNDSGTYLCGAISLAPKAQIKESLRAELRVTERRAEVPTAHPSPSPRPAGQFQALV:maPD-1のECD。
VGVVGGLLGSLVLLVWVLAVI:予想TM領域。
CSRAAQGTIEARRTGQPLKEDPSAVPVFSVDYGELDFQWREKTPEPPAPCVPEQTEYATIVFPSGLGTSSPARRGSADGPRSPRPLRPEDGHCSWPL:細胞内尾部。
【0137】
細胞表面上に発現させるためのアミノ酸配列全長ヒトLAG-3インサート(pIRES-Neo3及びpVAX1の両方における)(GenBank:NP_002277.4と同一):
MWEAQFLGLLFLQPLWVAPVKPLQPGAEVPVVWAQEGAPAQLPCSPTIPLQDLSLLRRAGVTWQHQPDSGPPAAAPGHPLAPGPHPAAPSSWGPRPRRYTVLSVGPGGLRSGRLPLQPRVQLDERGRQRGDFSLWLRPARRADAGEYRAAVHLRDRALSCRLRLRLGQASMTASPPGSLRASDWVILNCSFSRPDRPASVHWFRNRGQGRVPVRESPHHHLAESFLFLPQVSPMDSGPWGCILTYRDGFNVSIMYNLTVLGLEPPTPLTVYAGAGSRVGLPCRLPAGVGTRSFLTAKWTPPGGGPDLLVTGDNGDFTLRLEDVSQAQAGTYTCHIHLQEQQLNATVTLAIITVTPKSFGSPGSLGKLLCEVTPVSGQERFVWSSLDTPSQRSFSGPWLEAQEAQLLSQPWQCQLYQGERLLGAAVYFTELSSPGAQRSGRAPGALPAGHLLLFLILGVLSLLLLVTGAFGFHLWRRQWRPRRFSALEQGIHPPQAQSKIEELEQEPEPEPEPEPEPEPEPEPEQL
【0138】
その内:
MWEAQFLGLLFLQPLWVAPVKP:シグナルペプチド。
LQPGAEVPVVWAQEGAPAQLPCSPTIPLQDLSLLRRAGVTWQHQPDSGPPAAAPGHPLAPGPHPAAPSSWGPRPRRYTVLSVGPGGLRSGRLPLQPRVQLDERGRQRGDFSLWLRPARRADAGEYRAAVHLRDRALSCRLRLRLGQASMTASPPGSLRASDWVILNCSFSRPDRPASVHWFRNRGQGRVPVRESPHHHLAESFLFLPQVSPMDSGPWGCILTYRDGFNVSIMYNLTVLGLEPPTPLTVYAGAGSRVGLPCRLPAGVGTRSFLTAKWTPPGGGPDLLVTGDNGDFTLRLEDVSQAQAGTYTCHIHLQEQQLNATVTLAIITVTPKSFGSPGSLGKLLCEVTPVSGQERFVWSSLDTPSQRSFSGPWLEAQEAQLLSQPWQCQLYQGERLLGAAVYFTELSSPGAQRSGRAPGALPAGHL: ECD.
LLFLILGVLSLLLLVTGAFGF:予測TM領域
HLWRRQWRPRRFSALEQGIHPPQAQSKIEELEQEPEPEPEPEPEPEPEPEPEQL:細胞内末端
【0139】
細胞表面上に発現させるためのアミノ酸配列全長ラット(ラトゥス・ノルベギクス(Rattus norvegicus))LAG-3インサート(pIRES-Neo3及びpVAX1の両方における)(GenBank:NP_997678.2と同一):
MRQDLFLDLLLLQLLWEAPVVSSGPGKELSVVWAQEGAPVHLPCSLEFPHLDPNFLRRGWVTWQHRPDSDQPASIPALDLLQGMPSTRRHPPHRYTVLSVAPGGLRSGRQPLLSHVQLEKRGPQRGDFSLWLRPATRKDAGEYHAFVRLPDRDFSCSLRLRVGQASMIASPPGTLKPSDWVILNCSFSRPDRPVSVHWFQGQSRVPVHNSPRHYLAESFLLLPQVSPLDSGTWGCVLTYRDGFNVSITYNLKVQGLEPVAPLTVYAAEGSRVELPCHLPPVVGTPSLLIAKWTPPGGGPELPVTGKSGNFTLQLENVGRAQAGTYTCSIHLQGRQLSAAVTLAVITVTPKSFGLPGSPQKLLCEVVPASGEGRFVWRPLSDLSRSSLGPVLELQEAKLLAEQWQCQLYEGQKLLGATVYTAESSSGAWSAKRISGDLKGGHLFLSLILGALALFLLVTGAFGFHLWRRQLLRRRFSALEHGIRPPPVQSKIEELEREPETEMEPETEPDPEPQPEPELEPESRQL
【0140】
その内:
MRQDLFLDLLLLQLLWEAPVVSS:シグナルペプチド。
GPGKELSVVWAQEGAPVHLPCSLEFPHLDPNFLRRGWVTWQHRPDSDQPASIPALDLLQGMPSTRRHPPHRYTVLSVAPGGLRSGRQPLLSHVQLEKRGPQRGDFSLWLRPATRKDAGEYHAFVRLPDRDFSCSLRLRVGQASMIASPPGTLKPSDWVILNCSFSRPDRPVSVHWFQGQSRVPVHNSPRHYLAESFLLLPQVSPLDSGTWGCVLTYRDGFNVSITYNLKVQGLEPVAPLTVYAAEGSRVELPCHLPPVVGTPSLLIAKWTPPGGGPELPVTGKSGNFTLQLENVGRAQAGTYTCSIHLQGRQLSAAVTLAVITVTPKSFGLPGSPQKLLCEVVPASGEGRFVWRPLSDLSRSSLGPVLELQEAKLLAEQWQCQLYEGQKLLGATVYTAESSSGAWSAKRISGDLKGGHL: ECD.
FLSLILGALALFLLVTGAFGF:予測TM領域
HLWRRQLLRRRFSALEHGIRPPPVQSKIEELEREPETEMEPETEPDPEPQPEPELEPESRQL:細胞内末端
【0141】
細胞表面上に発現させるためのアミノ酸配列全長マカク(マカク・ムラッタ(Macaca mulatta))LAG-3インサート(pIRES-Neo3及びpVAX1の両方における)(GenBank: Macaca mulattaと同一):
MWEAQFLGLLFLQPLWVAPVKPPQPGAEISVVWAQEGAPAQLPCSPTIPLQDLSLLRRAGVTWQHQPDSGPPAPAPGHPPAPGHRPAAPYSWGPRPRRYTVLSVGPGGLRSGRLPLQPRVQLDERGRQRGDFSLWLRPARRADAGEYRATVHLRDRALSCRLRLRVGQASMTASPPGSLRTSDWVILNCSFSRPDRPASVHWFRSRGQGRVPVQGSPHHHLAESFLFLPHVGPMDSGLWGCILTYRDGFNVSIMYNLTVLGLEPATPLTVYAGAGSRVELPCRLPPAVGTQSFLTAKWAPPGGGPDLLVAGDNGDFTLRLEDVSQAQAGTYICHIRLQGQQLNATVTLAIITVTPKSFGSPGSLGKLLCEVTPASGQEHFVWSPLNTPSQRSFSGPWLEAQEAQLLSQPWQCQLHQGETLLGAAVYFTELSSPGAQRSGRAPGALRAGHLPLFLILGVLFLLLLVTGAFGFHLWRRQWRPRRFSALEQGIHPPQAQSKIEELEQEPELEPEPELERELGPEPEPGPEPEPEQL
【0142】
その内:
MWEAQFLGLLFLQPLWVAPVKP:シグナルペプチド。
PQPGAEISVVWAQEGAPAQLPCSPTIPLQDLSLLRRAGVTWQHQPDSGPPAPAPGHPPAPGHRPAAPYSWGPRPRRYTVLSVGPGGLRSGRLPLQPRVQLDERGRQRGDFSLWLRPARRADAGEYRATVHLRDRALSCRLRLRVGQASMTASPPGSLRTSDWVILNCSFSRPDRPASVHWFRSRGQGRVPVQGSPHHHLAESFLFLPHVGPMDSGLWGCILTYRDGFNVSIMYNLTVLGLEPATPLTVYAGAGSRVELPCRLPPAVGTQSFLTAKWAPPGGGPDLLVAGDNGDFTLRLEDVSQAQAGTYICHIRLQGQQLNATVTLAIITVTPKSFGSPGSLGKLLCEVTPASGQEHFVWSPLNTPSQRSFSGPWLEAQEAQLLSQPWQCQLHQGETLLGAAVYFTELSSPGAQRSGRAPGALRAGHL: ECD.
PLFLILGVLFLLLLVTGAFGF:予測TM領域
HLWRRQWRPRRFSALEQGIHPPQAQSKIEELEQEPELEPEPELERELGPEPEPGPEPEPEQL:細胞内末端
【0143】
PD-1又はLAG-3を発現する安定な細胞株の生成
pIRES-Neo3_[TARGET_NAME]発現コンストラクト(TABLE 1(表3))を使用して、それぞれのタンパク質を安定的に発現するCHO-S又はフリースタイル293Fクローンを作製した。コンストラクトを、リポフェクタミントランスフェクションを使用して、CHO-S及びフリースタイル293F細胞において一過性に遺伝子導入し、それぞれのタンパク質との抗体反応を使用したFACSによりスクリーニングした。発現の確認後、一過性に遺伝子導入した細胞を、限界希釈において播種し、使用した発現コンストラクトに関連する選択圧下で培養して、安定な細胞クローンを得た。選択の2~3週間後、クローンを、FACSによりスクリーニングした。選択したクローンを、連続継代により拡大し、FACSにおいて再試験し、-150℃まで凍結させた。異種性タンパク質を安定的に発現するクローンの名称は、CHO-S_[標的_名称]細胞又はフリースタイル293F_[標的_名称]細胞である。安定な細胞株を作製するために使用したコンストラクト及びそれらの得られた名称の概要については、TABLE 1(表3)を参照のこと。
【0144】
(実施例2)
免疫化、選択及びスクリーニング
免疫化に使用したマウス
huPD-1及びhuLAG-3へのヒト抗体結合の生成のため、ヒトVK1-39軽鎖(共通軽鎖マウス、国際公開第2009/157771号パンフレットを参照)及びヒト重鎖(HC)小型遺伝子座(ヒトV遺伝子セグメント、全てのヒトD及び全てのヒトJの選択を含む)についての遺伝子導入マウスを、免疫した。これらのマウスを、「MeMo(登録商標)」マウスと呼ぶ。下記に手短に記載されているように、組換えタンパク質抗原又はタンパク質抗原をコードするDNAのいずれかで、マウスを免疫した。
【0145】
タンパク質免疫化
「MeMo(登録商標)」マウスを、組換えタンパク質及びGerbuアジュバントMM(Gerbu Biotechnik社;カタログ番号3001)を用いた皮下注射により免疫した。組換えhuPD-1-Fc(R&D社;カタログ番号1086-PD)及びhuLAG-3-His(Abcam社;カタログ番号Ab184729)を、免疫のため使用した。マウスを、総体積100μlにおいてアジュバント40μlと混合したPBS中の組換えタンパク質40μgを用いて免疫した。続いて、マウスを、14及び28日目に、総体積50μlにおいてアジュバント20μlと一緒にPBS中の組換えタンパク質20μgを用いてブーストした。マウス血清を、35日目に回収して、血清タイターを決定した。ヒト及び/又はマカク標的に対して低血清反応性を示したマウスは、組換えヒト又はマカクタンパク質抗原による追加免疫及び血清分析の追加サイクルを受けた。それぞれの解析は、PBS 50μl中の組換えタンパク質20μgを使用した2回の週1回の免疫、続いて、1週間後、タイター解析のための血清収集からなっていた。ヒト及びマカク標的に対して高い血清タイターを示すマウスは、連続する3日間、PBS 50μl中の組換えタンパク質20μgを用いた毎日の注射からなる最終ブースト免疫を受けた。最後の注射の1日後、マウスリンパ組織を回収した。
【0146】
DNA免疫化
MeMo(登録商標)マウスを、マイクロ色素沈着装置を使用したDNA刺青により、免疫した。DNA刺青免疫を、標的抗原(pVAX1_[標的_名称]、Table 1(表3))をコードするプラスミドDNA 20μgを用いて行った。マウスを、ヒト標的のみ(PD-1及びLAG-3)をコードするDNAにより、又はヒト及びラット(LAG-3)標的をコードするDNAによる交互免疫化により免疫して、種間交差反応性抗体を得た。マウスを、0、3、6、14、17、28、及び31日目に免疫した。マウス血清を35日目に収集して、血清力価を決定した。ヒト及び/又はマカク標的に対して低血清反応性を示したマウスは、ヒトDNA抗原による追加免疫及び血清分析の追加サイクルを受けた。それぞれのサイクルは、2回の週1回のDNA免疫、続いて、1週間後、タイター解析のための血清収集からなっていた。ヒト及びマカク標的を発現する細胞に対する強力な血清反応性を示すマウスは、最後のブースト免疫化、続いて、3日間後、リンパ組織の収集を受けた。
【0147】
血清タイターの決定
血清タイターを、ヒト及びマカク標的抗原を発現する細胞株を使用したFACS解析により決定した。
【0148】
合成ファージFabライブラリーの生成
天然レパートリー及び標準的配列多様性での高頻度使用に基づいて選択された生殖系ヒトVH遺伝子のレパートリーに基づき、合成ライブラリーを構築した。PCRを使用して、合成HCDR3領域をこうしたVH遺伝子に付加した。これは、VH遺伝子のフレームワーク1にアニーリングし、クローニング用のSfI制限部位を含むフォワードプライマーを使用して実施した。リバースプライマーは、VH遺伝子のフレームワーク3にアニーリングする配列、その後にHCDR3多様性をコードするランダム化配列、及びクローニング用のBstEII及びXhoI制限部位を更に含む配列をコードするフレームワーク4を含んでいた。合成CDR3領域は、完全にランダムであったか、又はHCDR3内のある位置におけるアミノ酸残基の使用頻度に基づきより限定された多様性をコードしていたかのいずれかであった。VH遺伝子をコードするPCR産物を、前述の制限酵素を使用してファージM13遺伝子3タンパク質が融合されており、共通軽鎖をコードする遺伝子を更に含むファージディスプレイベクターにクローニングした。E'coli TG1の大規模ライゲーション及び形質転換は、ファージに提示された合成Fab断片の大型ライブラリーをもたらした。それらを、抗原又は細胞のパニングに使用して、抗原特異的Fab断片を特定した。
【0149】
免疫したマウスの組織由来のRT-PCRによる「免疫」ファージFabライブラリーの生成
脾臓及び流入リンパ節を、有意な液性応答をそれぞれの標的タンパク質に対して観察したマウスから取り除いた。単一の細胞懸濁液を、脾臓と鼠蹊部リンパ節の両方から作製し、続いて、これらの組織をトリゾールLS試薬(Thermo Scientific社 c#10296028)において溶解し、使用まで-80℃において保存した。
【0150】
首尾よく免疫したマウスから、鼠蹊部リンパ節を、「免疫」ファージ抗体レパートリーの構築のため使用した。RNAをリンパ節組織の単一細胞懸濁液から抽出した。総RNAの1μgを、IgG-CH1特異的プライマーを使用したRT反応において使用した。次に、得られたcDNAを使用して、Marksら(J Mol Biol.、1991年12月5日;222(3):581~97頁)において本質的に記載される社内適応VH特異的プライマーを使用したVHをコードするcDNAのポリクローナルプールを増幅した。次に、得られたPCR産物を、軽鎖(
図1A及び
図1B)が全ての抗体について同じであり、ベクターによりコードされることを除き、de Haardら(J Biol Chem.、1999年6月25日;274(26):18218~30頁)において記載された通り、ファージ上のFabフラグメントのディスプレイのためファージミドベクター(
図6)にクローニングした。ライゲーション後、ファージミドを使用して、大腸菌(E.coli)TG1細菌を形質転換し、形質転換された細菌を、アンピシリン及びグルコースを含有するLB寒天プレートに播種した。全てのファージライブラリーは、>4×10
5形質転換体を含有し、挿入頻度>90%を有していた。一晩成長後、細菌を回収し、それを使用して、確立したプロトコール(de Haardら、J Biol Chem.、1999年6月25日;274(26):18218~30頁)に従い、ファージを調製した。
【0151】
組換えタンパク質を使用した合成及び「免疫」ファージFabライブラリーからヒト標的タンパク質に特異的に結合するFabフラグメントを有するファージの選択
作製したファージFabライブラリーを使用して、直接コーティングした組換えタンパク質上のファージディスプレイを使用して標的特異的Fabを選択した。PD-1について、huPD-1-Fc(R&D者;カタログ番号1086-PD)及びhuPD-1ビオチン(BPS bioscience社;カタログ番号71109)を使用した。LAG-3には、huLAG-3-Fc(R&D社;カタログ番号2319-L3)、huLAG-3-Fc(Enzo社;カタログ番号ALX-522-078)、huLAG-3-His(Abcam社;カタログ番号Ab184729)、及びratLAG-3 His(SinoBiological社;カタログ番号80367-R08H)を使用した。
【0152】
非ビオチン化組換えタンパク質を用いた選択(「パニング選択」)のため、タンパク質を、MAXISORP(商標)ELISAプレートのウェル上にコーティングした。MAXISORP(商標)ELISAプレートを、PBS中の4%の乾燥スキムミルク(Marvel)を用いてブロッキングした。ファージFabライブラリーをまた、4%Marvelを用いてブロッキングし、Fcタグ標識組換えタンパク質を使用した場合にはまた、過剰のヒトIgGを用いて、コーティングした抗原へのファージライブラリーの添加に先立ち、Fc領域結合剤を枯渇させた。
【0153】
コーティングしたタンパク質とのファージライブラリーのインキュベーションを、1.5時間室温において振盪条件下で行った。次に、プレート又はチューブをPBS中の0.05%Tween-20を用いて15回洗浄し、続いて、PBSを用いて5回洗浄した。結合したファージを、トリプシンを使用して20分間溶出し、その後、トリプシンを、AEBSFトリプシン阻害剤(Sigma社)を用いて中和した。
【0154】
ビオチン化タンパク質(「溶液中選択」)を用いた選択のため、ニュートラアビジンを、MAXISORP(商標)ELISプレートのウェル上にコーティングした。MAXISORP(商標)ELISAプレートを、PBS中の1%カゼインを用いてブロッキングした。並行して、ビオチン化タンパク質及びファージFabライブラリーを、別個のエッペンドルフチューブ中に過剰のヒトIgGを含有する、PBS中の0.5%カゼインにおいて30分間ブロッキングした。その後、ブロッキングしたファージ及びビオチン化タンパク質を混合し、2時間室温でインキュベートした。その後、混合物を、ニュートラアビジンコーティングしたウェルに加えて20分間おき、ビオチン化タンパク質に結合したファージFab粒子を捕捉した。次に、プレートを、PBS中の0.05% Tween-20を用いて15回洗浄し、続いて、PBSを用いて5回洗浄した。結合したファージを、トリプシンを使用して20分間溶出し、その後、トリプシンを、AEBSFトリプシン阻害剤(Sigma社)を用いて中和した。
【0155】
両方の選択ストラテジー(「パンニング及び溶液中」)の溶出液を、大腸菌TG-1に加え、ファージ感染のため37℃でインキュベートした。続いて、感染した細菌を、アンピシリン及びグルコースを含有する寒天プレートに播種し、37℃で一晩インキュベートした。選択出力由来の単一のクローンを、標的に依存してELISA又はFACSにおける標的結合のためスクリーニングした。
【0156】
合成ファージFabライブラリーによる選択は、第1ラウンドの選択の出力を、第1ラウンドの選択について上記で概説したものと同じプロトコールを使用してレスキューした後、第2ラウンドの選択を実施した。第1ラウンドで使用したものと同じ選択抗原を、huLAG-3-Hisによる第2ラウンドの選択をその後に行った第1ラウンドのraLAG-3-His選択を除いて、第2ラウンドでも使用した。
【0157】
標的タンパク質を安定的に発現する細胞を使用した「免疫」ファージFabライブラリー由来の、ヒト標的に特異的に結合するFabフラグメントを有するファージの選択
標的免疫化マウスから作製したファージFabライブラリーを、それぞれの標的を発現する細胞上のファージディスプレイを使用して選択した。PD-1又はLAG-3を発現する安定な細胞株(Table 1(表1))を、1回目のラウンドの選択のため使用した。細胞を、PBS中の10% FBSを用いてブロッキングした。ブロッキング後、救出したファージを、ブロッキングした細胞とインキュベートした。細胞プラスファージを、1時間4℃においてインキュベートした。細胞の洗浄(5回)を、PBS中の10%FBS 1mlを使用して行った。結合したファージを、トリプシンを使用して20分間溶出させ、その後、トリプシンを、AEBSFトリプシン阻害剤(Sigma社)を用いて中和した。溶出液を、大腸菌TG-1に加え、ファージ感染のため37℃においてインキュベートした。続いて、ファージ感染した細菌を、アンピシリン及びグルコースを含有する寒天プレート上に播種し、37℃にて一晩インキュベートした。
【0158】
ELISAにおける標的特異的Fabクローンについてのスクリーニング
単一クローンのうち、溶解性Fab又はファージを、調製した(J Mol Biol.、1991年12月5日;222(3):581~97頁;J Biol Chem.、1999年6月25日;274(26):18218~30頁)。得られた可溶性Fab又はファージ試料を、PBS中4%乾燥スキムミルク(Marvel)(阻止緩衝液)で希釈し(それぞれ1:5又は1:10)、ratLAG-3 His(SinoBiological社;カタログ番号80367-R08H)で実施した選択出力全てについて、選択に使用したものと同じ抗原又はhuLAG-3-His(Abcam社;カタログ番号Ab184729)でコーティングされたウェルとの結合をELISAで試験した。
【0159】
結合したFabを、ブロックバッファー中1:1000希釈した抗myc抗体(Roche社;カタログ番号11667203001)を用いた染色により、検出し、続いて、ブロックバッファー中1:5000希釈したHRPコンジュゲート抗マウスIgG抗体(Jackson Immunoresearch社;カタログ番号715-035-150)により検出した。結合したファージを、阻止緩衝液で1:5000に希釈したHRPコンジュゲートモノクローナル抗M13抗体(GE healthcare社;カタログ番号27-9421-01)で染色することにより検出した。
【0160】
それぞれの抗体染色後、ウェルを、PBS-T(PBS-0.05%v/v Tween20)を用いて洗浄した。結合した2次抗体を、TMB/H2O2染色により可視化し、染色を、OD450nmの測定値により定量した。OD450nmが、陰性対照Fabを用いて得たバックグラウンドのシグナルの少なくとも3倍を上回る場合、クローンは、標的に結合するとみなした。
【0161】
全ての標的特異的クローンのVHをコードするcDNAを配列決定した。次に、配列同一性及びクラスター解析に基づく固有のクローンの選択を、細胞選択出力から得たクローンについて以下に記載する通り、細胞上で発現したPD-L1への結合についてFACSにおいて解析した。
【0162】
FACSにおける標的特異的Fabクローンについてのスクリーニング
それぞれの標的を発現する細胞上の選択した単一クローンのうち、溶解性Fab又はファージを、記載(J Mol Biol.、1991年12月5日;222(3):581~97頁;J Biol Chem.、1999年6月25日;274(26):18218~30頁)される通り調製した。Fab試料を、FACSにおいて、FACSバッファー(PBS中の0.5% HI-FBS)中1:1000希釈した抗myc抗体(Gentaur社;カタログ番号04-CMYC-9E10)との1:5希釈したFab試料の混合液とのインキュベーションにより、ヒト及びマカク標的を発現する細胞(Table 1(表3))への結合について試験した。結合したFab/抗myc複合体を、FACSバッファー中1:500希釈したAPCコンジュゲートヤギ抗マウスIgG抗体(BD Bioscience社;カタログ番号550826)とのインキュベーションにより検出した。
【0163】
ファージ試料を阻止緩衝液で1:3に希釈し、標的発現細胞と共に1時間インキュベーションすることにより、ファージ試料の結合をFACSで試験した。結合したファージを、ビオチン化抗M13抗体(Fitzgerald社、カタログ番号61R-M101ABTB62-FEZ、FACS緩衝液で1:125、氷上で30分間)及びPE標識ストレプトアビジン(Invitrogen社、カタログ番号SA1004-4;FACS緩衝液で1:400、氷上で15分間)で染色することにより検出した。それぞれの抗体インキュベーション後、ウェルを、FACSバッファーを用いて3回洗浄した。染色した細胞を、FACS Accuri C6装置(Becton and Dickinson社)を使用して解析した。平均蛍光強度が、陰性対照Fabを用いて得たバックグラウンドシグナルの少なくとも3倍を上回る場合、クローンは、陽性であるとみなした。
【0164】
(実施例3)
IgGフォーマットのhuLAG-3及びhuPD-1特異的Fabクローンの特徴決定
ヒトLAG-3及びPD-1特異的FabのIgGフォーマットへの再クローニング
細胞上で発現したヒト及びマカク標的タンパク質に結合した、CDR3配列及びVH生殖系列の相異に基づく選択された固有のクローンは次に、標準化した分子生物学的技術に従い、Sfi1-BstEII消化、及び消化したcDNAのプールのライゲーションを使用して、共通軽鎖(
図1)を含有する、MV1452(
図7)のようなIgG発現プラスミドに再クローニングした。
【0165】
ヒトLAG-3又はヒトPD-1特異的Fab及びテタヌス毒素特異的Fabを含有する二重特異性IgGの発現
二重特異性抗体の効率的なヘテロ-二量体化及び形成を確実にするための専用のCH3遺伝子操作テクノロジーを使用して、異なるVHドメインを有するIgGをコードする2つのプラスミドの一過性の同時遺伝子導入により、二重特異性抗体を作製した。重鎖を含有する両方のプラスミドに存在する共通の軽鎖をまた、同じ細胞に同時遺伝子導入する。本発明者らの同時係属出願(例えば、国際公開第2013/157954号パンフレット及び国際公開第2013/157953号パンフレット;参照により本明細書に組み込まれる)において、本発明者らは、単一の細胞から二重特異性抗体を産生する方法及び手段を開示し、これにより、単一特異性抗体の形成より二重特異性抗体の形成を好ましくする手段が提供される。これらの方法はまた、本発明において好ましく用いられ得る。具体的には、本質的には二重特異性全長IgG分子のみを産生する好ましい変異は、第1のCH3ドメイン(「KK変異体」重鎖)における351位及び366位におけるアミノ酸置換、例えば、L351K及びT366K(EUナンバリングに従ったナンバリング)及び第2のCH3ドメイン(「DE変異体」重鎖)における351位及び368位におけるアミノ酸置換、例えば、L351D及びL368Eであり、又は逆も同様である(
図2)。本発明者らの同時係属出願において、負に荷電したDE変異体重鎖及び正に荷電したKK変異体重鎖が優先的には対形成して、ヘテロダイマー(いわゆる、「DEKK」二重特異性分子)を形成することを既に実証した。DE変異体重鎖(DE-DEホモダイマー)又はKK変異体重鎖(KK-KKホモダイマー)のホモダイマー形成は、同一の重鎖間でのCH3-CH3干渉における荷電した残基間の強力な反発に起因して、ほとんど生じない。
【0166】
上で記載したヒトLAG-3及びPD-1に結合する抗体をコードするVH遺伝子を、正に荷電したCH3ドメインをコードするMV1452 IgG発現ベクターにクローニングした。テタヌス毒素(TT)標的指向性抗体(
図8)を、負に荷電したCH3ドメインをコードするMV1377 IgG発現ベクター(
図9)にクローニングした。IgGフォーマットのLAG-3及びPD-1抗体パネルを発現させるために、パネル全体を、二価LAG-3又はPD-1 IgGを産生することができる負荷電CH3ドメインベクターにもクローニングした。懸濁成長に適合した293Fフリースタイルの細胞を、振動器上のT125フラスコにおいて、密度3.0×10
6個の細胞/mlのプラトーまで培養した。細胞を、24深底ウェルのプレートのそれぞれのウェルにおいて密度0.3~0.5×10
6個の生細胞/mlにて播種した。細胞を、専用のベクターシステムにクローニングした異なる抗体をコードする2つのプラスミドの混合物を用いて一過性に遺伝子導入した。遺伝子導入の7日後、細胞上清を回収し、0.22μMのフィルター(Sartorius社)を通して濾過した。無菌の上清を、抗体の精製まで4℃にて保存した。
【0167】
二重特異性IgGの精製
IgGの精製を、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用して、小スケール(<500μg)にて行った。小スケールの精製を、無菌条件下、24ウェルプレートにおいて濾過を使用して行った。まず、培地のpHを、pH8.0に調節し、続いて、IgGを含有する上清を、プロテインAセファロースCL-4Bビーズ(50%v/v)(Pierce社)と共に、2時間、25℃にて、振盪プラットフォーム上、600rpmにおいてインキュベートした。次に、ビーズを、濾過により回収した。ビーズを、PBS pH7.4を用いて2回洗浄した。次に、結合したIgGを、pH3.0において0.1Mクエン酸バッファーを用いて溶出し、溶出液を、トリスpH8.0を使用して直ちに中和した。バッファー交換を、マルチスクリーンUltracel 10マルチプレート(Millipore社)を使用して遠心分離により行った。最後に、試料を、PBS中pH7.4に回収した。IgG濃度を、オクテットを使用して測定した。タンパク質試料を、4℃にて保存した。
【0168】
オクテットを使用したIgG定量化
精製したIgGの量を決定するために、抗体の濃度を、トータルのヒトIgG(Sigma Aldrich社、カタログ番号I4506)を標準として使用したプロテインAバイオセンサー(Forte-Bio社、供給者の推奨に従い)を使用してオクテット解析により決定した。
【0169】
特異性解析huLAG-3及びhuPD-1 IgG
抗体(二価LAG-3抗体及び二重特異性PD-1×TT抗体)を、関連ヒト及びマカクオルソログを発現する安定細胞株(Table 1(表1))及びwt細胞に対する結合について、FACSで試験した。それ故、細胞を回収して、FACSバッファー(PBS/0.5% BSA/0.5mM EDTA)において106個の細胞/mlに希釈した。1~2×105個の細胞を、U底96ウェルプレートにおけるそれぞれのウェルに加えた。細胞を、2分間、300gにおいて4℃にて遠心分離した。プレートを逆さにすることにより、上清を捨てた。濃度10μg/mlのそれぞれのIgG試料50μlを加え、1時間氷上でインキュベートした。細胞を1回遠心分離し、上清を取り除き、細胞をFACSバッファー150μlを用いて2回洗浄した。1:400希釈したヤギ抗ヒトIgG PE(Invitrogen社)50μlを加え、30分間、氷上で暗所にてインキュベートした。FACSバッファーを加えた後、細胞を1回遠心分離し、上清を取り除き、細胞をFACSバッファーを用いて2回洗浄した。細胞を、FACSCantoフローサイトメーター(Becton and Dickinson社)上HTS設定において解析した。抗体の細胞への結合を、染色した細胞集団の平均蛍光強度(MFI)を測定することにより、評価した。MFIが、(陰性対照)非結合抗体(テタヌス毒素に対する)を用いて染色した同じ細胞集団のものの少なくとも5倍であるとき、抗体は、それらの標的に結合するとみなした。
【0170】
リガンドブロッキング能に対するPD-1×TT二重特異性IgGに存在するhuPD-1特異的Fabアームのビニング(Binning)
huPD-1結合クローンを、PD-L1のPD-1との相互作用をブロックするそれらの能力について試験した。それ故、PD1-Fc(R&D systems社;カタログ番号1086-PD)を、1μg/mlでマキシソーププレートにコーティングした。コーティングしたウェルを、PBS中の4%BSAを用いてブロックした。その後、0.55μg/mlビオチン化PD-L1(BPS bioscience社;カタログ番号71105)を、0.15~20μg/mlの範囲のIgGの存在又は非存在下で加えた。結合したビオチン化PD-L1を、ブロックバッファーにおいて1:2000希釈したHRPコンジュゲートストレプトアビジン(BD bioscience社:カタログ番号554066)を用いて検出した。それぞれのインキュベーション工程後、ELISAプレートを、PBS-T(PBS-0.05%v/v Tween20)を用いて3回洗浄した。結合したストレプトアビジンを、TMB/H
2O
2染色により視覚化し、染色を、OD
450nm測定により定量化した。ELISAシグナルが、TT特異的競合抗体を加えた対照と比較して、IgG(PD-1×TT)濃度10μg/mlにおいて70%より低減したとき、クローンは、PD-1のPD-L1との相互作用をブロックするとみなした。PD-1×TT二重特異性分子として試験したPD-1抗体パネルの代表的選択を用いて得た結果について、
図10を参照。
【0171】
LAG-3×TT及びPD-1×TT二重特異性IgGに存在するhuLAG-3及びhuPD-1特異的Fabアームの親和性ランキング
FACSにおいてそれぞれのヒト及びマカクオルソログに結合することを示した二重特異的抗体を、FACSにおける両方のオルソログについての明らかな親和性についてランキングした。それ故、それぞれのオルソログを発現する安定な細胞株(Table 1(表3))を回収し、FACSバッファー(PBS/0.5% BSA/0.5mM EDTA)中106個の細胞/mlに希釈した。細胞を、2分間、300gにおいて4℃にて遠心分離した。プレートを逆さにすることにより、上清を捨てた。10~0.01μg/mlの範囲にある11段階の2倍連続希釈におけるそれぞれのIgG試料50μlを加え、1時間、氷上でインキュベートした。細胞を1回遠心分離し、上清を取り除き、細胞を、FACSバッファー150μlを用いて2回洗浄した。1:400希釈したヤギ抗ヒトIgG PE(Invitrogen社)50μlを加え、30分間、氷上、暗所でインキュベートした。FACSバッファーを加えた後、細胞を1回遠心分離し、上清を取り除き、細胞を、FACSバッファーを用いて2回洗浄した。細胞を、FACSCantoフローサイトメーター(Becton and Dickinson社)上、HTS設定において解析した。抗体の細胞への結合を、染色した細胞集団の平均蛍光強度(MFI)を測定することにより、評価した。MFIが、(陰性対照)非結合抗体(テタヌス毒素に対する)を用いて染色した同じ細胞集団のものの少なくとも5倍であるとき、抗体は、それらの標的に結合するとみなした。
【0172】
二価IgGフォーマットのドメイン特異性huLAG-3結合クローン上のLAG-3×LAG-3二価IgGに存在するhuLAG-3特異的Fabアームのビニングを、5つの異なるpIRES-Neo3マウス/ヒトLAG-3ハイブリッド発現構築体、FLマウスLAG-3 pIRES-Neo3発現構築体(下記のアミノ酸インサート配列を参照)、又は安定huLAG-3発現Freestyle 293細胞の生成に使用されたpIRES-Neo3_huLAG-3発現構築体(Table 1(表1))を一過性にトランスフェクトされたHEK293T細胞に対するドメイン特異性についてFACSで試験した。抗体パネルの特異性分析には、上記に記載したものと同じFACSプロトコールを使用した。ハイブリッド構築体の生成には、マウス及びヒトLAG-3の細胞外ドメインを5つのドメイン;Uniprot参照配列P18627(huLAG-3)及びQ61790(moLAG-3)に基づく4つのIg様ドメイン、及びIg様ドメイン4の末端から膜貫通ドメインまでの1つのヒンジドメインに分割した。以下のアミノ酸インサート配列を、NheI/EcoRIによりpIRES-Neo3にクローニングした(
図4)。太字の文字はシグナルペプチドである。下線の文字は、ヒトLAG-3と同一の配列である。斜体の文字は、膜貫通及び細胞内ドメイン配列を表す。
【0173】
アミノ酸配列全長マウスLAG-3インサート。
【0174】
【0175】
アミノ酸配列mo/huLAG-3キメラインサートA(マウスシグナルペプチド及びIg様ドメイン1がヒトシグナルペプチド及びIg様ドメイン1により置換されている全長マウスLAG-3配列)。
【0176】
【0177】
アミノ酸配列mo/huLAG-3キメラインサートB(マウスIg様ドメイン2がヒトIg様ドメイン2により置換されている全長マウスLAG-3配列)。
【0178】
【0179】
アミノ酸配列mo/huLAG-3キメラインサートC(マウスIg様ドメイン3がヒトIg様ドメイン3により置換されている全長マウスLAG-3配列)。
【0180】
【0181】
アミノ酸配列mo/huLAG-3キメラインサートD(マウスIg様ドメイン4がヒトIg様ドメイン4により置換されている全長マウスLAG-3配列)。
【0182】
【0183】
アミノ酸配列mo/huLAG-3キメラインサートE(膜貫通配列までのヒンジを含むマウスIg様ドメイン4が、ヒンジを含むヒトIg様ドメイン4により置換されている全長マウスLAG-3配列)。
【0184】
【0185】
Table 3(表3)及びTable 4(表4)は、各LAG-3×LAG-3二価IgGをドメイン特異性に基づいて割り当てたビンを示す。
【0186】
参照抗体
PD-1及びLAG-3の機能を阻害する抗体は、当技術分野で公知である。抗PD-1抗体ニボルマブに関する情報を、カナダ特許2607147号明細書に開示されている情報に基づいて生成し、CHO-S細胞で発現させた。抗-LAG-3抗体25F7を、国際公開第2010/019570号A2パンフレット(Medarex. Inc社)に提供されている情報に基づいて再生成し、IgG1骨格に再クローニングし、293F Freestyle細胞で発現させた。
【0187】
LAG-3阻止レポーターアッセイ
LAG-3阻止レポーターアッセイは、MHCIIを発現したラージ細胞及びLAG-3を過剰発現するジャーカット/NFAT-REレポーター細胞株に基づく2つの細胞系を使用するPromega社が開発したLAG-3阻止レポーターアッセイを使用して実施した。ジャーカット細胞の活性化は、スーパー抗原SED、Staphylococcal(スタフィロコッカル)エンテロトキシンDによりコントロールされる。細胞増殖モデル(CPM)フォーマットのLAG-3ジャーカットエフェクター細胞は、Promega社により提供され、RPMI 1640(+L-グルタミン、10%熱不活化FBS、100μMのMEM非必須アミノ酸、1mMピルビン酸ナトリウム、200μg/mlヒグロマイシン、及び500μg/mlのG418)で増殖させた。ラージ細胞は、RPMI 1640(+L-グルタミン及び10%熱不活化FBS)で増殖させた。対数増殖期に成長した細胞を回収し、1%熱不活化FBSを含むRPMI 1640に、2×10
6細胞/mlラージ細胞及びジャーカット/NFAT-RE細胞の場合は4×10
6細胞/mlの濃度で再懸濁した。次に、25μlジャーカット/NFAT-RE細胞懸濁物を、96ウェルプレート(Corning社、Cat#3917)の内側ウェルに添加した。次に、アッセイ培地(1%FBSを含むRPMI 1640)で系列希釈した(開始濃度25μg/ml)25μl試験抗体を、各ウェルに添加した。各プレートは、参照対照としての役目を果たした陰性(PG1337)及び陽性対照抗体25F7の系列希釈を含んでいた。最後に、25μlのラージ細胞及び(100ng/ml)SED(Toxin Technologies社)1:1混合物を添加した。プレートを、37℃で6時間、5%CO中95%相対湿度にてインキュベートした。翌日、40μlのルシフェラーゼ(Bio-Gloルシフェラーゼアッセイ系、カタログ番号G794L)を添加し、ルシフェラーゼ活性の量を、aBioTek Synergyマルチモードマイクロプレートリーダーを使用して測定した。二価フォーマットのLAG-3抗体をスクリーニングして、それらのLAG-3阻止能力を決定した(
図11)。
【0188】
PD-1/PD-L1遮断レポーターアッセイ
Promega社が、使用したPD-1/PD-L1遮断レポーターアッセイを開発し、それは、2つの細胞系;PD-L1、及びT細胞活性化因子を発現するCHO細胞並びにPD-1を過剰発現するジャーカット/NFAT-REレポーター細胞株に基づく。PD-1/PD-L1遮断レポーターアッセイを、解凍物を使用して行い、Promegaのフォーマットを使用した。PD-L1発現細胞(カタログ番号C187103)を、細胞回復培地(10% FBSを含有するDMEM/F12)14.5mlにおいて解凍した。次に、細胞懸濁液50μlを、96ウェルハーフエリアプレート(Corning社、カタログ番号3688)の内部ウェルに加えた。プレートを、一晩、37℃、5% CO、95%相対湿度においてインキュベートした。翌日、培養培地を除去し、連続希釈(開始濃度10μg/ml)でのアッセイ培地(4% FBSを含有するRPMI1640)の試験抗体20μlを、それぞれのウェルに加えた。それぞれのプレートは、参照対照として働く陰性(Ctrl Ab)及び陽性対照抗体(ニボルマブ)の連続希釈液を含有していた。PD-1エフェクター細胞(カタログ番号C187105)を、アッセイ培地5.9mlにおいて解凍し、細胞懸濁液20μlを、それぞれのウェルに加えた。プレートを、6時間又は一晩、37℃、5% CO、95%相対湿度においてインキュベートした。ルシフェラーゼ(Bio-Glo社ルシフェラーゼアッセイシステム、カタログ番号G794L)40μlを、翌日加え、ルシフェラーゼ活性の量を、BioTek社シナジー2マルチモードマイクロプレートリーダーを使用して測定した。効力を、陰性対照抗体との比較におけるルシフェラーゼ活性として測定した。
【0189】
PBMC単離
ヒト全血を、バフィーコート(Sanquin社)から得て、PBSを用いて1:1希釈した。Leucosepチューブ(Greiner Bio-One社カタログ番号227 290)を、室温(RT)にて温めた17.5m Ficoll-Paque Plus(Amersham Biosciences社カタログ番号17-1440-02)を用いて充填した。Ficoll-Paque Plusを、30秒間、1000×gにおいてRTにてスピンダウンした。希釈した全血30mlを、上部に注いだ。チューブを、1000×gにおいて10分間、RTにてスピンし、単核PBMC界面を回収し、PBSにおいて2回洗浄し、PBS 250μlにおいて再懸濁した。PBMCをカウントし、組織培養培地(10% FCSを含むDMEM)中1×106個の細胞/mlに再調節し、等量の氷冷凍結培地(80%培養培地/20% DMSO)を加えることにより、凍結した。細胞を、更なる使用まで、1mlのアリコートで-150℃において保存した。
【0190】
SEBアッセイ
二重特異性抗体の機能的活性を、ブドウ球菌エンテロトキシン(Staphylococcus enterotoxin)B(SEB)により刺激したPBMCを使用することにより、決定した。SEBは、Vβ3及びVβ8 T細胞受容体鎖を発現するT細胞を特異的に活性化する。3人のドナー由来のPBMCを解凍し、洗浄し、カウントし、培養培地(RPMI1640及び10%熱不活化FBS)に濃度2 106個の細胞/mlまで再懸濁した。細胞を、平底96ウェルプレート(2×105個の細胞/ウェル)においてSEB(2000又は125ng/ml)の存在下で播種した。20μg/mlで始まる抗体の連続希釈液を加えた。それぞれのプレートは、参照対照として働く陰性(Ctrl Ab)及び陽性対照抗体(ニボルマブ及びLAG-3(25F7)の連続希釈液を含有していた。抗原のサイトカイン分泌及び/又は細胞表面発現についての試験に先立ち、細胞を、3日間、37℃、5%CO2、95%相対湿度において刺激した。
【0191】
サイトカインアッセイ
ELISA:様々な回数でのT細胞又はPBMCの刺激後、プレートを遠心分離し、培地を除去した。サイトカインレベルを、製造元の指示(Perkin Elmer社)に従い、AlphaLISAにより検出した。標準曲線に基づき、濃度を計算した。
【0192】
ルミネックスアッセイ:in vitroでサイトカイン産生を決定するために使用する別の方法は、eBioscience社が開発した複数解析を使用することであった。IFN-γ、IL-2、及びTNF-αのレベルを、製造元の指示に従い、培養上清において測定した。eBioscience社解析ソフトウエアにより、結果を解析した。
【0193】
PD-1抗体パネルのスクリーニング
PD-抗体パネルに由来するVHを、24ウェルフォーマットで産生し、片対数系列希釈した(開始濃度10μg/ml)二価抗体としてPD-1/PD-L1阻止レポーターアッセイにより試験して、抗体を、ニボルマブと比較した効力阻止で順位付けした。活性データに基づき、その後のPD1×LAG-3二重特異性スクリーニングのための抗体を、PD-1抗体パネルから選択した。レポーターアッセイで選択された候補の活性は、Table 2(表2)に示されている。PD-1 Fabパネルは、2つの抗体クラスター、つまりA及びB内の機能的活性変異体で構成されていた。
【0194】
PD1×LAG-3抗体パネルのスクリーニング
抗体重鎖の発現の際、重鎖のヘテロ二量体化を強制し、遺伝子導入後に二重特異性抗体の生成をもたらすように、PD-1及びLAG-3抗体パネル由来のVHを、荷電した遺伝子操作したFcサイレンスベクターにクローニングした。PD-1 Fabアームを、MV1625ベクターにクローニングし、一方、LAG-3 Fabアームを、MV1624ベクターに再クローニングした。異なるビンを表す15個のLAG-3 Fabアーム(Table 3(表3))を、一連のPD-1阻止活性を示す3つのPD-1 Fabアーム(MF6226、MF6930、及びMF6256)(Table 2(表2))と組み合わせた。二重特異性LAG-3×PD-1抗体(Table 4(表4))、それらの二価親LAG-3抗体、及び陰性対照抗体を、それらのT細胞活性化能力に関して、系列希釈のSEB(2000-500-125-31-8-2ng/mL)により試験した。
図12は、異なるPD-1親和性を有するLAG-3×PD-1抗体と比較した、2μg/mlのSEBで刺激したPBMC細胞に対する2つのLAG-3二価抗体の活性を示す。活性は、刺激指数として表されている。各IL-2値を陰性対照抗体と比較して、SIを決定した(SI、IL-2の2は、IL-2産生が対照抗体と比較して200%増加したことを意味する)。LAG-3×PD-1二重特異性抗体は、SEBアッセイでは、二価LAG-3抗体と比較してより多くのIL-2を誘導した。PBMCを2μg/mlのSEBで刺激したSEBアッセイにて、各ビンを表す選択された二重特異性抗体を系列希釈でスクリーニングした(
図13)。大多数の二重特異性LAG-3×PD-1抗体は、IL-2放出の誘導が、親PD-1二価抗体又は参照LAG-3抗体よりも強力だった。MHCクラスII相互作用ドメイン、つまりドメイン3及びドメイン4以外の他のドメインに結合したLAG-3×PD-1二重特異性抗体も、IL-2放出の誘導が、親PD-1二価抗体又は参照LAG-3抗体よりも強力だった。
【0195】
(実施例4)
PD1×LAG3抗体パネルのスクリーニング
抗体25F7、LAG-3抗体のFabを、上記の実施例3に記載のように、ヒトIgG1フォーマットにクローニングし、PG7431として産生した。また、25F7の可変ドメインを、一価LAG-3抗体フォーマットにクローニングして、第1のアームが25F7可変ドメインを含み、第2のアームが破傷風トキソイド結合可変ドメイン(MF1337)を含んでいたPB22283とした。これらの抗体の結合は、
図14に示されている。PG1337P300は、細胞には結合しないことが予想され、破傷風トキソイドに結合する対照抗体である。
【0196】
こうした抗体の結合を、MF7116を有する2つの可変ドメインを有する二価抗体PG7116、及び第1のアームがMF7116の可変ドメインを含み、第2のアームがMF1337を含む破傷風トキソイド可変ドメインを含んでいた一価LAG-3抗体フォーマットと比較した。
【0197】
二価形態の抗体の結合は、抗体をFreestyle 293F_huLAG-3(293FF LAG-3)に対して滴定した左側パネルにおいてPG7431の結合をPG7116と比較することにより理解することができるように類似している。25F7の一価可変ドメインの結合は、二価形態での結合と類似している(抗体を活性化T細胞に対して滴定した
図15の右側パネルのPB22283とPG7431との比較)。MF7116を有する一価の可変ドメインの結合は、二価抗体PG7116と比較して低減される(PB21775とPG7116との比較、
図15、左側パネル)。
【0198】
したがって、二価フォーマット及び一価フォーマットのLAG-3 IgGを、結合アッセイで試験し、25F7(PG7431)抗体と比較した。二価フォーマットのLAG-3抗体は、ベンチマーク抗体と同様の結合曲線を示した。一価LAG-3×TT抗体は、典型的には、二価分子と比較して結合活性の低減を示した。
【0199】
PD-1×LAG-3二重特異性抗体を更に特徴付けるために、二重特異性PD-1×LAG-3抗体のパネルをTable 5(表5)に示されているように生成し、PD-1×LAG-3レポーターアッセイで機能的に試験した。
【0200】
PD1/Lag3レポーターアッセイでは、上記に記載のようなジャーカットエフェクター細胞(PD-1及びLAG-3を過剰発現するように修飾されている)及び標的ラージ細胞(PD-L1を過剰発現するように修飾されている)、SED、並びにLAG-3抗体を混合し、インキュベートする。ジャーカット細胞株は、NFAT(活性化T細胞の核内因子)経路を介して活性化することができるルシフェラーゼレポーター遺伝子を含む。MHCIIとLAG-3との相互作用は、このシグナルを阻害することになり、生物製剤によるMHCII/LAG-3相互作用の阻止は、シグナルを放出させることができ、並びにPD-1受容体上の生物製剤によりPD-1/PD-L1シグナルを阻止することができる。
【0201】
PD-1×LAG-3二重特異性抗体を、PD-1/LAG-3レポーターアッセイで滴定し、活性を、二価LAG-3抗体25F7及び二価PD-1抗体(両方とも上記の実施例3に記載)と比較した。二重特異性抗体は、単一特異性二価対照抗体よりも著しく低い濃度にてジャーカット細胞の活性化を促進する。活性は、二重特異性抗体が、上記で実証されているように、一価LAG-3抗体とLAG-3との結合を低減することができる標的の各々に対して一価であるという事実にも関わらず、2つの対照抗体を組み合わせる場合の活性と同等である(
図16を参照)。
【0202】
レポーターアッセイスクリーニングの代表的な例は
図17に示されており、LAG-3及びPD-1可変ドメインの種々の組合せが示されている。
【0203】
パネルAは、PD-1及びLAG-3に結合し、天然リガンドと受容体との結合(それぞれPD-L1/L2及びMHCクラスII)を阻止する可変ドメインを有する二重特異性抗体を示す。パネルAに示されている特定の二重特異性抗体は、PD-1及び25F7に対する2つの単一特異性二価抗体を有する参照よりも、ジャーカットレポーター細胞の活性化を可能にする。パネルBは、同じLAG-3結合可変ドメインを有するが、ここでは、PD-1に結合するものの、PD-1/PD-L1シグナル伝達を阻止しないPD-1可変ドメインと組み合わされている二重特異性抗体を示す。パネルAの二重特異性抗体の活性は、少なくとも、PD-1に結合し、PD-1/PD-L1シグナル伝達を阻止するアームにより媒介されることは明らかである。パネルCは、逆の例を示し、パネルAのPD-1アームは、結合するが、MHC II/LAG-3シグナル伝達を阻止しないLAG-3結合可変ドメインと組み合わされている。こうした結果は、パネルAに示されている二重特異性抗体の活性が、少なくとも、MHCクラスIIとLAG-3との結合を阻止するLAG-3結合アームにより媒介されることを示す。
【0204】
図18には、レポータースクリーニングの結果が要約されており、対照と比べた曲線下面積を示す。
【0205】
SEBアッセイを実施例3に記載のように実施した。
図19は、本明細書に記載のようなPD-1/LAG二重特異性抗体のSEB滴定アッセイの代表的な例を示す。この図は、異なるPD-1親和性を有するPD-1×LAG-3抗体と比較した、2μg/mlのSEで刺激したPBMC細胞に対する2つのLAG-3二価抗体の活性を示す。
【0206】
パネルAは、PD-1及びLAG-3に結合し、天然リガンドと対応する受容体との結合を阻止する可変ドメインを有する二重特異性抗体の結果を示す。こうした抗体は、PBMC細胞でのIL-2の産生を促進する。パネルBは、PD-1に結合するが、PD-L1と受容体との結合を阻止しないPD-1可変ドメインを有する二重特異性PD-1×LAG-3抗体による結果を示す。LAG-3可変ドメインは、LAG3とMHC IIとの結合を阻止する。パネルCは、LAG-3に結合するが、LAG-3とMHC IIとの結合を阻止しない可変ドメインを有する二重特異性抗体による結果を示す。PD-1に結合する可変ドメインは、PD-1とPD-L1との結合を阻止する。
【0207】
Table 5(表5)に示されている二重特異性パネルのスクリーニングの要約を
図20に示す。PD-1可変ドメインを、レポーターアッセイ(上段パネル)及び2つのドナーに基づくSEBアッセイ(中段及び下段パネル)での二価抗体の活性に応じて上から下に順位付けした。レポーターアッセイで最も高い活性を有するPD-1可変ドメインは上にある。LAG-3可変ドメインを、レポーターアッセイ(上段パネル)及び2つのドナーに基づくSEBアッセイ(中段及び下段パネル)で高から低に順位付けする。最も高い活性を有する可変ドメインは、最初の列の二価抗体フォーマットである。
【0208】
二重特異性PD-1×LAG3抗体内のPD-1アームを、1)レポーターアッセイ、2)SEBスクリーニングドナー1(IL-2データ)、3)SEBスクリーニングドナー2(IL-2データ)において、PD-1×LAG3二重特異性内の所与のアームが、陽性対照と比較したAUCパーセントに基づき、二重特異性抗体の上位15%に何回出現したかを決定することにより順位付けした。
図21及び
図23を参照されたい。この順位付けは、
図23の2つの最も右側の列に示されている。
【0209】
MF6974のVH又はMF6076のVHを有する可変ドメインを有するPD-1アームを有するクローンが、LAG-3アームのほとんどによる上記の基準に基づきレポーターアッセイ及びSEBアッセイで最も上位に順位付けられたことを理解することができる。
【0210】
それらが上位15%に何回存在したかに基づきスコア化した(上位15%の同じスコアを有するアームは、上位25%スコアを使用して更に順位付けした)特定のLAG-3アームを有する二重特異性抗体についても同じ手法をとった。最終順位付けは、
図22に示されている。
【0211】
上記に記載のマウス/ヒトLAG-3ハイブリッドビニング実験による、LAG3ドメイン1に結合する幾つかの二価単一特異性抗体(IgGフォーマット)が、レポーターアッセイにおいて、陽性対照のAUCパーセントに基づき、最も高いスコアを示した。しかしながら、レポーターアッセイ及びSEBアッセイに基づいてIL-2誘導が最も上位に順位付けられた、PD1及びLAG3に結合する二重特異性抗体は、ドメイン2のものであった(マウス/ヒトLAG-3ハイブリッド実験により決定した)。
【0212】
これは
図24に要約されている。PD1/LAG3-レポーターアッセイ及びSEBに基づいて順位付けした上位8つの二重特異性のうち、6つは、ドメイン2に結合するLAG3アームを含んでいた(マウス/ヒトLAG-3ハイブリッド実験により決定した)。二価単一特異性フォーマットでLAG3レポーターアッセイにより決定したことろ、これら6つの二重特異性に由来するLAG3アームの活性(対照のAUCパーセントに基づく)は、典型的には、ドメイン1に結合すると決定された同じフォーマットで試験したLAG3アームの活性よりも低くかった。
【0213】
(実施例5)
二重特異的PD-1×LAG-3抗体は混合リンパ球反応においてCD14+T細胞によるIFNγ産生を増強する
混合リンパ球反応(MLR)アッセイを共通して使用して、T細胞活性化及び増殖に対する抗体の作用を理解する。かかるアッセイは、かかる化合物が、腫瘍微小環境における応答を開始するT細胞の能力に影響するかどうかの理解を目的とする。故に、本発明者らは、未成熟のDCを用いる同種MLRプロトコールを使用して、ベンチマーク参照抗体のものと比較して、CD14+T細胞によるIFNγ産生を増強する二重特異性PD-1×LAG-3抗体の能力を決定した。T細胞の応答性を、培養上清におけるIFNγのレベルを測定することにより、定量化した。
【0214】
このために、健常ドナー由来のヒト末梢血液単核細胞(PBMC)を、バフィーコートから調製した。未成熟な単球由来樹状細胞(Mo-DC)を、磁気活性化細胞分取(MACS)を使用してCD14+細胞(EasySep Stemcell、ロット番号16C69672)を単離し、これらを分化培地において7日間培養することにより、調製した。Mo-DCについて使用したものと異なるドナー由来の応答T細胞を、T細胞単離キット(EasySep Stemcell、ロット番号16D70573)を使用して、要求される日に凍結保存したPBMCから調製して、未接触のT細胞を得た。6種の別個のMLRを行い、生物学的複製物をもたらした。
【0215】
アッセイのため、1×104個の未熟Mo-DCを、1×105個のCD14+T細胞と4日間、終濃度10μg/mLにて試験抗体の存在又は非存在下で共培養した。培養を3連で行った。上清を、培養期間の終わりに集め、製造元の指示に従い、450nmでのプレートリーダーを用いて、ELISA(R&D BioTechne社、ロット番号342687)によりIFNγについて評価した。
【0216】
結果
MLR研究は、LAG3/PD1二重特異性の実験群(PB15307 = MF7137(LAG3)及びMF6930(PD1))及びLAG3アイソタイプ対照群(LAG-3に対する単一特異性抗体(二価単一特異性抗体PG7431)、破傷風、及びmIgG1)で構成されていた。単一細胞対照及び媒体対照群も含まれていた。
【0217】
培養は、技術的重複測定を提供するために三重反復で実施した。4日間の培養期間の終了時に、上清を収集し、製造業者の説明書に従ってELISAを実施して、IFN-yの産生に対する抗体の効果を評価した。プレートは450nMで測定した。
【0218】
CD14+細胞を、DOにて選別し、7日間培養し、D7で未成熟DCを使用し、成熟培地で更に3日間培養することにより成熟DCを得た。CD14陽性をDOにて評価して初期選別の純度を確認し、D7及びD1Oにて未成熟及び成熟DCのCD14陽性を評価して、Mo-DCへの分化を示すCD14の下方制御をそれぞれ確認した(データ非表示)。また、未成熟及び成熟DCの両方の生存能及び活性化マーカー(CD80、CD83、及びCD86)を評価して、分化及び成熟化を確認した。Mo-DC(未成熟又は成熟)を応答性T細胞で4日間培養してから、上清を収集し、ELISAを実施して、IFN-yの産生に対する試験抗体の効果を評価した。成熟MLR(mMLR)では、ドナー分散は、データを各ドナーの媒体対照に対して正規化したものとした(生データ及び正規化。
【0219】
図25には、試験の結果が示されている。PD-1/LG-3に特異的な二重特異性抗体は、MLRでのCD14+T細胞によるIFN-y産生が、対照及びLAG3サロゲート単一特異性抗体よりも有意に優れた成績を示した。
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
【0225】
PD-1の細胞外部分に結合する前記可変ドメインは、PD-1に結合する前記可変ドメインを2つ含む二価単一特異性抗体中に存在する場合、ジャーカット細胞のPD-1/PD-L1阻害を、ジャーカット細胞に対して抗体ニボルマブで得られる阻害と比較して20~150%の範囲で阻害する可変領域であると定義される、請求項4~6のいずれか一項に記載の抗体又はその変異体。
前記第1の核酸は、アミノ酸置換L351K及びT366K(EU付番による付番)を含む前記第1のCH3ドメインをコードし、前記第2の核酸は、は、アミノ酸置換L351D及びL368E(EU付番による付番)を含む前記第2のCH3ドメインをコードし、前記方法は、前記細胞を培養する工程、及び前記核酸配列の発現を可能にする工程、及び前記抗体又はその変異体を前記培養から回収する工程を更に含む、請求項29又は30に記載の方法。