(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086859
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】紙幣処理装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/26 20190101AFI20240621BHJP
G07D 11/237 20190101ALI20240621BHJP
G07D 11/16 20190101ALI20240621BHJP
【FI】
G07D11/26
G07D11/237
G07D11/16
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024063583
(22)【出願日】2024-04-10
(62)【分割の表示】P 2020208273の分割
【原出願日】2020-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000116079
【氏名又は名称】ローレルバンクマシン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500267170
【氏名又は名称】ローレル機械株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】品川 幹憲
(72)【発明者】
【氏名】吉田 慎平
(72)【発明者】
【氏名】関 裕次郎
(57)【要約】
【課題】搬送状態を容易に改善でき、処理効率の低下を抑制することが可能となる紙幣処理装置を提供する。
【解決手段】紙幣Sを一枚ずつテープに挟持しながら回転体であるドラムに巻き付けて収納すると共に一枚ずつ繰り出し可能であるドラム式一時貯留部と、紙幣Sを一枚ずつテープに挟持しながら回転体であるドラムに巻き付けて収納すると共に一枚ずつ繰り出し可能であるドラム式還流庫とを備え、入金部11は、装置外から挿入される紙幣Sの通路幅方向の片寄りを矯正する片寄り矯正手段111a,111bを有しており、紙幣Sが搬送通路において通路幅方向の片側に所定値以上に寄った片寄り状態にあるか否かを判定する片寄り判定手段と、片寄り判定手段で片寄り状態にあると判定された紙幣Sを判定の都度装置外へ取り出し可能に排出させる制御部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置外から挿入される紙幣を装置内へ取り込む入金部と、
紙幣を装置外に取り出し可能に出金する出金部と、
紙幣を搬送する搬送通路と、
前記搬送通路で搬送中の紙幣を識別する識別部と、
紙幣を一枚ずつテープに挟持しながら回転体であるドラムに巻き付けて収納すると共に一枚ずつ繰り出し可能であって、紙幣を一時的に貯留するドラム式一時貯留部と、
紙幣を一枚ずつテープに挟持しながら回転体であるドラムに巻き付けて収納すると共に一枚ずつ繰り出し可能であって、紙幣を収納するドラム式還流庫と、
紙幣を集積状態で繰り出し可能に収納する集積式収納庫と、
を備える紙幣処理装置であって、
前記集積式収納庫は、前記搬送通路から放出された紙幣の通路幅方向の片寄りを矯正する片寄り矯正手段を有しており、
紙幣が前記搬送通路において通路幅方向の片側に所定値以上に寄った片寄り状態にあるか否かを判定する片寄り判定手段と、
前記片寄り判定手段で前記片寄り状態にあると判定された紙幣を前記集積式収納庫に収納させた後、前記集積式収納庫から繰り出させる制御部と、
を備えることを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項2】
前記識別部は、
前記搬送通路で搬送中の紙幣の画像情報を取得する画像情報取得部を有し、前記画像情報取得部が取得した画像情報を基に当該紙幣の角座標位置を出力し、
前記片寄り判定手段は、
前記識別部が出力した前記角座標位置から、当該紙幣が搬送通路の通路幅方向の片側の端部から所定距離以内となる走行禁止エリアに到達しているか否かを割り出し、当該紙幣が前記走行禁止エリアに到達している場合に当該紙幣が前記片寄り状態にあると判定することを特徴とする請求項1に記載の紙幣処理装置。
【請求項3】
前記片寄り判定手段は、
通路幅方向に一列に並んで設けられた複数のセンサよりなる片寄り検出部を有すると共に、
前記片寄り検出部の検出結果に基づき、前記紙幣が片寄り状態にあるか否かを判定することを特徴とする請求項1または2に記載の紙幣処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣処理装置において、巻き取り式の収納モジュールを有するものがある。このような収納モジュールにおいて、例えば巻き取りや繰り出しを繰り返し行うと、紙幣の搬送状態が次第に悪化してしまうことがある。すると、例えば斜行や連鎖に起因して紙幣のジャムが発生したり、斜行や片寄りに起因して収納モジュールのテープのテンションが増大したりする可能性がある。このため、ワーニングレベルよりも搬送状態が悪化している紙幣が所定枚数以上存在しているときには、収納モジュールについて未完了フラグを立て、それに伴って警告部にエラーコードを表示する。こうすることで、紙幣の全出金・全入金処理の実行が促されて、紙幣の搬送状態が改善するようになる。これによって、紙幣のジャムの発生などの不具合を未然に回避することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の技術では、ワーニングレベルよりも搬送状態が悪化している紙幣が所定枚数以上存在しているときには、収納モジュールについて紙幣の全出金・全入金処理を行わなければならず、処理が煩雑であるという課題が存在する。
【0005】
したがって、本発明は、紙幣の搬送状態を容易に改善でき、処理効率の低下を抑制することが可能となる紙幣処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る第1の態様は、装置外から挿入される紙幣を装置内へ取り込む入金部と、紙幣を装置外に取り出し可能に出金する出金部と、紙幣を搬送する搬送通路と、前記搬送通路で搬送中の紙幣を識別する識別部と、紙幣を一枚ずつテープに挟持しながら回転体であるドラムに巻き付けて収納すると共に一枚ずつ繰り出し可能であって、紙幣を一時的に貯留するドラム式一時貯留部と、紙幣を一枚ずつテープに挟持しながら回転体であるドラムに巻き付けて収納すると共に一枚ずつ繰り出し可能であって、紙幣を収納するドラム式還流庫と、紙幣を集積状態で繰り出し可能に収納する集積式収納庫と、を備える紙幣処理装置であって、前記集積式収納庫は、前記搬送通路から放出された紙幣の通路幅方向の片寄りを矯正する片寄り矯正手段を有しており、紙幣が前記搬送通路において通路幅方向の片側に所定値以上に寄った片寄り状態にあるか否かを判定する片寄り判定手段と、前記片寄り判定手段で前記片寄り状態にあると判定された紙幣を前記集積式収納庫に収納させた後、前記集積式収納庫から繰り出させる制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る第2の態様は、上記第1の態様において、前記識別部は、前記搬送通路で搬送中の紙幣の画像情報を取得する画像情報取得部を有し、前記画像情報取得部が取得した画像情報を基に当該紙幣の角座標位置を出力し、前記片寄り判定手段は、前記識別部が出力した前記角座標位置から、当該紙幣が搬送通路の通路幅方向の片側の端部から所定距離以内となる走行禁止エリアに到達しているか否かを割り出し、当該紙幣が前記走行禁止エリアに到達している場合に当該紙幣が前記片寄り状態にあると判定することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る第3の態様は、上記第1または第2の態様において、前記片寄り判定手段は、通路幅方向に一列に並んで設けられた複数のセンサよりなる片寄り検出部を有すると共に、前記片寄り検出部の検出結果に基づき、前記紙幣が片寄り状態にあるか否かを判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、搬送状態を容易に改善でき、処理効率の低下を抑制することが可能となる紙幣処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の紙幣処理装置の内部構成を概略的に示す側面図である。
【
図2】実施形態の紙幣処理装置の識別部近傍の搬送通路を概略的に示す平断面図である。
【
図3】実施形態の紙幣処理装置の入金部を概略的に示す平断面図である。
【
図4】実施形態の紙幣処理装置の集積式収納庫の入出口周辺を概略的に示す平断面図である。
【
図5】実施形態の紙幣処理装置の内部構成を概略的に示す側面図であって、入金処理ルートを太線で示すものである。
【
図6】実施形態の紙幣処理装置の内部構成を概略的に示す側面図であって、分配処理ルート、カセット補充復路処理ルートおよび精査復路処理ルートを太線で示すものである。
【
図7】実施形態の紙幣処理装置の内部構成を概略的に示す側面図であって、出金処理ルートを太線で示すものである。
【
図8】実施形態の紙幣処理装置の内部構成を概略的に示す側面図であって、カセット回収往路処理ルートおよび精査往路処理ルートを太線で示すものである。
【
図9】実施形態の紙幣処理装置の内部構成を概略的に示す側面図であって、カセット回収復路処理ルートを太線で示すものである。
【
図10】実施形態の紙幣処理装置の内部構成を概略的に示す側面図であって、カセット補充往路処理ルートを太線で示すものである。
【
図11】実施形態の変形例の片寄り検出部の配置例を示すブロック図である。
【
図12】実施形態の変形例の片寄り検出部、紙幣および搬送通路の関係を示す図である。
【
図13】実施形態の変形例の片寄り検出部および斜行状態の紙幣を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態の紙幣処理装置を図面を参照して以下に説明する。
【0012】
<構成>
図1に示す実施形態の紙幣処理装置10は、装置外からセットされる紙幣Sを識別しつつ内部に一時貯留する入金処理、このように一時貯留した紙幣Sを種類別に分類して内部に収納する分配処理、分類されて収納されている紙幣Sを装置外に取り出し可能に出金する出金処理などが可能な紙幣入出金装置である。なお、以下の説明における「装置前後方向の前側」は紙幣処理装置10における操作者側を、「装置前後方向の後側」は紙幣処理装置10における操作者とは反対側を、「装置左右方向」は紙幣処理装置10における操作者から見ての左右を示す。
【0013】
紙幣処理装置10の装置前側の上部には、入金用の紙幣Sが装置外から挿入されてセットされると共にセットされた紙幣Sを装置内に取り込んで繰り出す入金部11が設けられている。入金部11には、操作者によって装置外から紙幣Sが投入される。このとき、入金部11には、紙幣Sが長辺を装置左右方向に沿わせ短辺を装置前後方向に沿ってやや後ろ下がりにして上下に集積された状態で投入される。入金部11は、このように装填された集積状態の紙幣Sを最上位置のものから一枚ずつその短辺が搬送方向に沿うように移動させて装置内部に繰り出す。紙幣Sは、紙幣処理装置10内の全体において、長辺を装置左右方向に沿わせた姿勢のまま移動する。
【0014】
また、紙幣処理装置10の装置前側の上部には、この入金部11の上方かつ装置前後方向の後方に、入金用の紙幣Sのうち受け入れ不可なリジェクト紙幣Sが装置内から繰り出されると共に出金用の紙幣Sが装置内から繰り出され、これらを装置外に取り出し可能に出金する出金部12が設けられている。
【0015】
紙幣処理装置10の上面における出金部12の装置前後方向の後方には、操作者の操作入力を受け付けると共に操作者に対し表示を行うタッチパネル式の操作表示部14と、紙幣処理装置10の全体を制御する制御部15とが設けられている。操作表示部14は、紙幣処理装置10の操作画面や稼働状況に関する情報画面を表示する。
【0016】
紙幣処理装置10の内部には、入金部11の装置前後方向の後方に、紙幣Sを識別する識別部17が設けられており、この識別部17の装置前後方向の後方に、識別部17によって識別された紙幣Sを一時貯留すると共に貯留した紙幣Sを一枚ずつ繰り出し可能なドラム式一時貯留部18が設けられている。
【0017】
入金部11には、載置板19が設けられており、この載置板19は、入金部11内で昇降する。入金部11は、下降状態にある載置板19上に集積状態の紙幣Sが装置外から載置されることになり、載置板19の上昇後、集積状態の紙幣Sを集積方向の上端のものから一枚ずつ紙幣処理装置10の内部に繰り出す。
【0018】
紙幣処理装置10は、上記した入金部11、出金部12、識別部17およびドラム式一時貯留部18に加えて、紙幣Sを集積状態で繰り出し可能に収納する集積式収納庫51と、紙幣Sを繰り出し可能に収納する複数のドラム式還流庫52とを内部に有している。また、紙幣処理装置10は、入金部11、出金部12、識別部17、ドラム式一時貯留部18、集積式収納庫51および複数のドラム式還流庫52の間で紙幣Sを搬送する搬送通路20を内部に有している。識別部17は、搬送通路20で搬送中の紙幣Sを識別する。搬送通路20の通路幅方向は装置左右方向であり、よって紙幣Sはその長辺が通路幅方向に沿う姿勢で搬送通路20によって搬送される。
【0019】
搬送通路20は、入金部11の装置前後方向の後端部から延びて、入金部11から繰り出された紙幣Sを識別部17に搬送し、その後、ドラム式一時貯留部18に搬送する入金搬送路21を有している。言い換えれば、入金搬送路21は入金部11とドラム式一時貯留部18とを結んでおり、その中間位置に識別部17が設けられている。
【0020】
また、搬送通路20は、入金搬送路21における入金部11と識別部17との間から下方に分岐する上下搬送路55と、入金搬送路21における識別部17とドラム式一時貯留部18との間から上方に分岐する出金搬送路35と、入金搬送路21における出金搬送路35の分岐位置とドラム式一時貯留部18との間から上方に分岐して出金搬送路35に合流する連結搬送路36と、を有している。上下搬送路55と出金搬送路35と連結搬送路36とが分岐することで、入金搬送路21は、入金部11と上下搬送路55の分岐位置との間の前側送路部21aと、上下搬送路55の分岐位置と出金搬送路35の分岐位置との間の中間送路部21bと、出金搬送路35の分岐位置と連結搬送路36の分岐位置との間の中間送路部21cと、連結搬送路36の分岐位置とドラム式一時貯留部18との間の後側送路部21dとに分けられる。
【0021】
識別部17は、中間送路部21bに設けられており、中間送路部21bで搬送中の紙幣Sの真偽、汚れ度合い、損傷度合いおよび金種と、複数枚の紙幣Sが少なくとも一部分が重なった状態で搬送される重送、規定値を超える角度となる斜行および通路幅方向に規定値を超えてずれる片寄りを含む搬送異常の有無とを識別する。
【0022】
入金部11にセットされる紙幣Sが、例えば、入金部11から入金搬送路21の前側送路部21aおよび中間送路部21bで識別部17に向けて搬送され、識別部17で識別後に中間送路部21b,21cおよび後側送路部21dでドラム式一時貯留部18に搬送される。
【0023】
ドラム式一時貯留部18は、紙幣Sを一時的に貯留するもので、入金搬送路21の少なくとも中間送路部21b,21cおよび後側送路部21dで搬送されてきた紙幣Sを一枚ずつ取り込んで収納し、収納している紙幣Sを一枚ずつ後側送路部21dに繰り出す。ドラム式一時貯留部18は、例えば、入金部11にセットされた紙幣Sの貯留および当該貯留した紙幣Sの繰り出しを行う。このドラム式一時貯留部18は、紙幣Sを一枚ずつ間隔をあけてテープ30と共に回転体であるドラム31に巻き付けて収納する巻付収納タイプであり、よって、貯留している紙幣Sをテープ30と共にドラム31から解いて一枚ずつ間隔をあけて計数しながら繰り出す。テープ30と共にドラム31に巻き付けられる紙幣Sは、テープ30のこの紙幣Sと共にドラム31に巻き付けられる部分と、テープ30の既にドラム31に巻き付けられている部分との間に、ドラム31の径方向において挟持される。言い換えれば、ドラム式一時貯留部18は、紙幣Sを一枚ずつ巻き取り可能に構成されたドラム31を有し、ドラム31は、巻き取った紙幣Sを一枚ずつ繰り出す。
【0024】
巻付収納タイプのドラム式一時貯留部18は、紙幣Sを貯留する際の順番とは逆の順番で繰り出すことになる。このため、複数金種の紙幣Sをランダムに混合して貯留する場合であっても、制御部15は、識別部17の識別結果からドラム式一時貯留部18に貯留する各紙幣Sの金種などを把握可能となっており、よって、ドラム式一時貯留部18から繰り出す各紙幣Sの金種などを把握可能となっている。
【0025】
ドラム式一時貯留部18のドラム31は、回転軸回りに回転可能に設けられており、回転軸回りの一方の方向(
図1では右回り)に回転することでテープ30を巻き取るようになっている。ドラム31は、テープ30を巻き取ることで、巻き取るテープ30の間に紙幣Sを一枚ずつ挟み込んで保持するようになっている。また、ドラム31は、回転軸回りの他方の方向(
図1では左回り)に回転することで、巻き取っていたテープ30を送り出すことになり、送り出すテープ30に保持している紙幣Sを一枚ずつ繰り出すようになっている。
【0026】
出金搬送路35は、入金搬送路21の中間送路部21b,21cの間から上方に延出した後、装置前方に延出しており、この出金搬送路35の末端が出金部12に接続されている。連結搬送路36および出金搬送路35は、中間送路部21b,21cで搬送されてきた紙幣Sを出金部12に搬送する。また、出金搬送路35は、ドラム式一時貯留部18から繰り出されて後側送路部21dおよび中間送路部21cで搬送されてきた紙幣Sを出金部12に搬送する。
【0027】
ここで、出金部12は、出金搬送路35から繰り出された紙幣Sを下側から上側に順に集積させる。出金部12に集積された紙幣Sは、出金部12から装置外に取り出される。出金搬送路35は、例えば、ドラム式一時貯留部18から後側送路部21dおよび中間送路部21cに繰り出された紙幣Sを上方に分岐搬送して出金部12に搬送する。
【0028】
入金部11、出金部12、操作表示部14、識別部17、ドラム式一時貯留部18、入金搬送路21、出金搬送路35、連結搬送路36および制御部15は、紙幣処理装置10の上部を構成する上部ユニット41に設けられている。
【0029】
上部ユニット41の下側には、紙幣処理装置10の高さ方向の中間部から下部を構成する下部ユニット42が設けられている。下部ユニット42には、装置前側の前部位置に集積式収納庫51が設けられており、集積式収納庫51の装置前後方向の後方に、上下2段、装置前後方向に4列の合計8台のドラム式還流庫52が設けられている。8台のドラム式還流庫52のうち、上段の4台は高さ方向の位置を一致させており、下段の4台も高さ方向の位置を一致させている。集積式収納庫51の高さは、ドラム式還流庫52の2台分の高さと同等であり、集積式収納庫51は、上下2段のドラム式還流庫52と高さ方向の位置を重ね合わせている。
【0030】
入金搬送路21の前側送路部21aと中間送路部21bとの間から下方に分岐する上下搬送路55は、入金搬送路21から下方に延出して集積式収納庫51に接続されている。前側送路部21aと中間送路部21bとの間は、前側送路部21aから中間送路部21bへの紙幣Sの搬送が可能であり、上下搬送路55と中間送路部21bとの間は紙幣Sの行き来が可能である。上下搬送路55は、例えば、ドラム式一時貯留部18から入金搬送路21の後側送路部21dに繰り出され、後側送路部21dおよび中間送路部21c,21bで搬送されて識別部17を通過した後の紙幣Sを中間送路部21bと前側送路部21aとの間から下方に分岐搬送して集積式収納庫51に収納する。
【0031】
集積式収納庫51は、紙幣Sを一枚ずつ取り込んで収納可能であり、収納している紙幣Sを一枚ずつ繰り出し可能となっている。集積式収納庫51は、紙幣Sを上部から受け入れて水平状態で下から上に直接重なるように集積させて収納すると共に、収納している紙幣Sを上端部のものから繰り出す集積収納タイプとなっている。集積収納タイプの集積式収納庫51は、ドラム式一時貯留部18および後述するドラム式還流庫52のような巻付収納タイプに比べて紙幣Sの収納効率が大幅に高い。その一方で、ドラム式一時貯留部18および後述するドラム式還流庫52のような巻付収納タイプは、集積収納タイプの集積式収納庫51に比べて、紙幣Sの重送を生じる可能性が低く、貯留している紙幣Sを正確に一枚ずつ分離し間隔をあけて繰り出し可能である。
【0032】
搬送通路20は、上下搬送路55の装置前後方向の中間位置から後方に分岐する収納搬送路57を有している。この収納搬送路57は、上下搬送路55から装置前後方向の後方に延出した後、紙幣処理装置10の装置前後方向の後端部付近で下方に延出して装置前後方向の最後列の上段のドラム式還流庫52に接続されており、このドラム式還流庫52を介して最後列の下段のドラム式還流庫52にも接続されている。収納搬送路57が分岐することによって、上下搬送路55は、収納搬送路57の分岐位置から上側の上側送路部55aと、収納搬送路57の分岐位置から下側の下側送路部55bとに分けられる。
【0033】
搬送通路20は、収納搬送路57の中間位置から下方に分岐する複数具体的には3カ所の分岐搬送路61,62,63を有している。分岐搬送路61は、装置前後方向の最前列の上段のドラム式還流庫52に接続されており、このドラム式還流庫52を介して、最前列の下段のドラム式還流庫52に接続されている。分岐搬送路62は、前から2列目の上段のドラム式還流庫52に接続されており、このドラム式還流庫52を介して、前から2列目の下段のドラム式還流庫52に接続されている。分岐搬送路63は、前から3列目の上段のドラム式還流庫52に接続されており、このドラム式還流庫52を介して、前から3列目の下段のドラム式還流庫52に接続されている。
【0034】
8台のドラム式還流庫52は、いずれも、紙幣Sを収納するもので、ドラム式一時貯留部18とほぼ同様の構成である。これらのドラム式還流庫52は、いずれも、紙幣Sを一枚ずつ間隔をあけてテープ70と共にドラム71に巻き付けて収納する巻付収納タイプであって、収納している紙幣Sをテープ70と共にドラム71から解いて一枚ずつ間隔をあけて計数しながら繰り出す。テープ70と共にドラム71に巻き付けられる紙幣Sは、テープ70のこの紙幣Sと共にドラム71に巻き付けられる部分と、テープ70の既にドラム71に巻き付けられている部分との間に、ドラム71の径方向において挟持される。言い換えれば、ドラム式還流庫52は、紙幣Sを一枚ずつ巻き取り可能に構成されたドラム71を有し、ドラム71は、巻き取った紙幣Sを一枚ずつ繰り出す。
【0035】
巻付収納タイプのドラム式還流庫52は、紙幣Sを収納する際の順番とは逆の順番で繰り出す。このため、1台のドラム式還流庫52に複数金種の紙幣Sをランダムに混合して収納する場合であっても、制御部15は、識別部17の識別結果から、このドラム式還流庫52に収納する各紙幣Sの金種などを把握可能となっており、よって、このドラム式還流庫52から繰り出す各紙幣Sの金種なども把握可能となっている。
【0036】
上下搬送路55の上側送路部55a、収納搬送路57および分岐搬送路61,62,63は、例えば、ドラム式一時貯留部18から入金搬送路21の後側送路部21dに繰り出され、後側送路部21dおよび中間送路部21c,21bで搬送されて識別部17を通過後の紙幣Sを中間送路部21bと前側送路部21aとの間から分岐搬送して8台のドラム式還流庫52に選択的に収納させる。8台のドラム式還流庫52は、例えば、8台全部を、それぞれが設定された単一金種の紙幣Sのみを収納する単金種収納庫に設定したり、そのうちの何台かを、それぞれが設定された単一金種の紙幣Sのみを収納する単金種収納庫に設定し、残りを、それぞれ複数金種の紙幣Sを金種混合で収納する金種混合収納庫に設定したり、そのうちの一台を、出金リジェクト紙幣を収納する出金リジェクト収納庫に設定したりすることができる。
【0037】
下部ユニット42には、集積式収納庫51と、8台のドラム式還流庫52と、上下搬送路55の上側送路部55aの下部と、下側送路部55bと、収納搬送路57と、分岐搬送路61~63とが設けられている。上下搬送路55の上側送路部55aの上部は上部ユニット41に設けられている。
【0038】
下部ユニット42は、装置前後方向の前方に開口する直方体の箱状の筐体75と、8台のドラム式還流庫52が設けられて筐体75内に配置されるユニット本体76と、筐体75の装置前後方向前部の開口を開閉する扉体77とを有している。集積式収納庫51は、ユニット本体76の前部に着脱可能に設けられている。
【0039】
搬送通路20は、
図2に一部を示すように、通路幅方向の両側に配置される一対の側板101a,101bを有している。一対の側板101a,101bは、側板101aが装置左右方向左側に、側板101bが装置左右方向右側に、それぞれ配置されている。
【0040】
一対の側板101a,101bは、互いに対向する側板101aの側面部102aと側板101bの側面部102bとが平行をなしている。側面部102a,102bは通路幅方向に対し直交して広がっている。紙幣Sは、一対の側板101a,101bの側面部102a,102b間で搬送ローラ(図示略)および搬送ベルト(図示略)などで駆動されて搬送される。側面部102a,102b間の通路幅方向の中央位置を搬送通路20の通路幅方向の中央位置とする。搬送通路20は、全長にわたってほぼ同様の構成となっている。
【0041】
入金部11は、
図3に示すように、通路幅方向の両側に配置される一対の矯正板111a,111b(片寄り矯正手段)を有している。一対の矯正板111a,111bは、矯正板111aが装置左右方向左側に、矯正板111bが装置左右方向右側に、それぞれ配置されている。
【0042】
一対の矯正板111a,111bは、互いに対向する矯正板111aの対向面112aと矯正板111bの対向面112bとが、通路幅方向に鏡面対称の形状であって対をなしている。対向面112a,112b間の通路幅方向の中央位置を入金部11の通路幅方向の中央位置とする。入金部11には、装置前後方向の前端部の入口120から装置前後方向に沿って前から後に向けて紙幣Sが挿入される。
【0043】
矯正板111aは、入金部11の紙幣Sの挿入方向である紙幣挿入方向の手前側すなわち入口120側の端部にある入口側面部121aと、紙幣挿入方向の中間位置にある中間平面部122aと、紙幣挿入方向奥側の端部にある奥側面部123bとを有している。矯正板111bは、入金部11の紙幣Sの挿入方向である紙幣挿入方向の手前側すなわち入口120側の端部にある入口側面部121bと、紙幣挿入方向の中間位置にある中間平面部122bと、紙幣挿入方向奥側の端部にある奥側面部123bとを有している。
【0044】
一対の対向面112a,112bは、互いの中間平面部122a,122bが平行をなしている。中間平面部122a,122bは通路幅方向に対し直交して広がっている。一対の対向面112a,112bは、互いの入口側面部121a,121bが、中間平面部122a,122bの対応するものの紙幣挿入方向手前側の端縁部から紙幣挿入方向手前側に、手前側に位置するほど互いに通路幅方向に離れるように広がっている。一対の対向面112a,112bは、互いの奥側面部123a,123bが、中間平面部122a,122bの対応するものの紙幣挿入方向奥側の端縁部から紙幣挿入方向奥側に、奥側に位置するほど互いに通路幅方向に離れるように広がっている。
【0045】
よって、一対の対向面112a,112bは、入口側面部121a,121bが紙幣挿入方向手前ほど互いの通路幅方向の間隔が広くなっている。入口側面部121a,121bが入金部11の入口120を構成している。入金部11の入口120側の端部位置において入口側面部121a,121bは互いの通路幅方向の間隔が最も広い。一対の矯正板111a,111bは、対向面112a,112b間の通路幅方向の中央位置が、搬送通路20の一対の側板101a,101bの側面部102a,102b間の通路幅方向の中央位置と、通路幅方向の位置を合わせている。すなわち、入金部11の通路幅方向の中央位置と、搬送通路20の通路幅方向の中央位置とは、通路幅方向の位置を一致させている。
【0046】
一対の矯正板111a,111bは、互いの中間平面部122a,122b間の通路幅方向の距離が、紙幣Sの長辺の長さよりも若干長くなっている。操作者により、一対の矯正板111a,111bの対向面112a,112b間に装置外から入口120を介して挿入されてセットされる紙幣Sは、まず、一対の矯正板111a,111bの入口側面部121a,121b間を通過し、その後に中間平面部122a,122b間に挿入されることになる。その際に、紙幣Sは、入口側面部121a,121bに短辺が当接することで、長辺方向の中央位置が入金部11の通路幅方向の中央位置に寄せられる。つまり、一対の矯正板111a,111bは、装置外から挿入される紙幣Sの通路幅方向の片寄りを矯正して、紙幣Sを入金部11の通路幅方向の中央位置に寄せる。
【0047】
集積式収納庫51は、上部の装置前後方向の後部に、
図4に示すように入出口130を有している。集積式収納庫51には、搬送通路20からの紙幣Sが入出口130を介して内部にほぼ水平に広がる状態で装置前方に向けて放出される。集積式収納庫51には、通路幅方向の両側に配置される一対の矯正板131a,131b(片寄り矯正手段)を有している。一対の矯正板131a,131bは、矯正板131aが装置左右方向左側に、矯正板131bが装置左右方向右側に、それぞれ配置されている。
【0048】
一対の矯正板131a,131bは、互いに対向する矯正板131aの対向面132aと矯正板131bの対向面132bとが、通路幅方向に鏡面対称の形状であって対をなしている。対向面132a,132b間の通路幅方向の中央位置を集積式収納庫51の通路幅方向の中央位置とする。
【0049】
矯正板131aは、集積式収納庫51への搬送通路20からの紙幣Sの放出方向である紙幣放出方向の手前側すなわち入出口130側の端部にある入出口側面部141aと、紙幣放出方向の中間位置にある中間平面部142aと、紙幣放出方向奥側の端部にある奥側面部143aとを有している。矯正板131bは、集積式収納庫51の搬送通路20からの紙幣Sの放出方向である紙幣放出方向の手前側すなわち入出口130側の端部にある入出口側面部141bと、紙幣放出方向の中間位置にある中間平面部142bと、紙幣放出方向奥側の端部にある奥側面部143bとを有している。
【0050】
一対の対向面132a,132bは、互いの中間平面部142a,142bが平行をなしている。中間平面部142a,142bは通路幅方向に対し直交して広がっている。一対の対向面132a,132bは、互いの入出口側面部141a,141bが、中間平面部142a,142bの対応するものの紙幣放出方向手前側の端縁部から紙幣放出方向手前側に、手前側に位置するほど互いに通路幅方向に離れるように広がっている。一対の対向面132a,132bは、互いの奥側面部143a,143bが、中間平面部142a,142bの紙幣放出方向奥側の端縁部から紙幣放出方向奥側に、奥側に位置するほど互いに通路幅方向に離れるように広がっている。
【0051】
よって、一対の対向面132a,132bは、入出口側面部141a,141bが紙幣放出方向手前ほど互いの通路幅方向の間隔が広くなっている。入出口130側の端部位置において入出口側面部141a,141bは互いの通路幅方向の間隔が最も広い。一対の矯正板131a,131bは、対向面132a,132b間の通路幅方向の中央位置が、搬送通路20の一対の側板101a,101bの側面部102a,102b間の通路幅方向の中央位置と、通路幅方向の位置を合わせている。すなわち、集積式収納庫51の通路幅方向の中央位置と、搬送通路20の通路幅方向の中央位置とは、通路幅方向の位置を合わせている。
【0052】
一対の矯正板131a,131bは、互いの中間平面部142a,142b間の通路幅方向の距離が、紙幣Sの長辺の長さよりも若干長くなっている。搬送通路20から入出口130を介して集積式収納庫51内に放出される紙幣Sは、まず、一対の矯正板131a,131bの入出口側面部141a,141b間を通過し、その後に中間平面部142a,142b間に挿入されることになる。その際に、紙幣Sは、入出口側面部141a,141bに短辺が当接することで、長辺方向の中央位置が集積式収納庫51の通路幅方向の中央位置に寄せられる。つまり、一対の矯正板131a,131bは、搬送通路20から放出された紙幣Sの通路幅方向の片寄りを矯正して、紙幣Sを入金部11の通路幅方向の中央位置に寄せる。
【0053】
識別部17は、
図2に示すように、搬送通路20で搬送中の紙幣Sの画像情報を取得する画像情報取得部151を有している。この画像情報取得部151は、具体的には通路幅方向に延びるラインセンサ(CISセンサ:密着型イメージセンサとも言う)である。画像情報取得部151は、搬送通路20で搬送中の紙幣Sの画像を所定の時間間隔で1ラインずつ取得して行き、これらを時系列に並べて合成して、この紙幣Sの全体の画像として画像情報を取得する。画像情報取得部151は、一度に紙幣Sの全体の画像情報を取得できるCCDカメラ等のカメラを用いても良い。
【0054】
識別部17は、画像情報取得部151が取得した紙幣Sの画像情報を基に、この紙幣Sについて、真券であるか偽券であるかの真偽判別と、汚れ度合いが高い汚損券であるか否かの汚損判別と、半券や破れ券など損傷度合いが高い損傷券であるか否かの損傷判別と、金種識別とを行い、これらの結果の識別情報を制御部15に出力する。これを受けて制御部15は、受け入れ可能な紙幣Sを金種別に計数すると共に、各紙幣Sの搬送先を決めて搬送通路20を制御する。識別部17は、画像情報取得部151による紙幣Sの取得情報からこの紙幣Sの角座標位置を割り出す角座標位置割出手段152と、角座標位置割出手段152で割り出された角座標位置から紙幣Sの片寄り状態にあるか否かを判定する片寄り判定手段153とを有している。
【0055】
識別部17の角座標位置割出手段152は、この画像情報取得部151が取得した紙幣Sの一枚分の画像情報を基に、識別した紙幣Sの通路幅方向の角座標位置を割り出して片寄り判定手段153に出力する。
【0056】
片寄り判定手段153は、搬送通路20における通路幅方向の一側の側面部102aから所定距離以内のエリアを走行禁止エリア161aとして記憶しており、通路幅方向の他側の側面部102bから所定距離以内のエリアとを走行禁止エリア161bとして記憶している。走行禁止エリア161a,161bは、通路幅方向の長さがそれぞれ例えば5mm程度に設定されている。
【0057】
走行禁止エリア161a,161bは、紙幣Sが走行禁止エリア161a,161bのいずれかの範囲に一部が位置するように通路幅方向に片寄っていると、例えば、ドラム式一時貯留部18またはドラム式還流庫52の側板と、この紙幣Sの一部分とが接触する可能性がある範囲となっている。すなわち、ドラム式一時貯留部18またはドラム式還流庫52の取込口にあって搬送の幅方向を規制している2枚の側板のうち少なくとも片方側に紙幣Sの一部分が衝突する可能性があり、搬送ジャムを誘発することが予想される範囲である。
【0058】
そして、片寄り判定手段153は、角座標位置割出手段152が出力した紙幣Sの角座標位置から、例えば、
図2に示すように、この紙幣Sの通路幅方向の両端部のうちの一方の端部Saが搬送通路20の一方の走行禁止エリア161aに位置しているか否かを割り出すと共に、他方の端部Sbが搬送通路20の他方の走行禁止エリア161bに位置しているか否かを割り出す。そして、片寄り判定手段153は、この紙幣Sの一方の端部Saが
図2に示すように搬送通路20の一方の走行禁止エリア161aに位置している場合および他方の端部Sbが搬送通路20の他方の走行禁止エリア161bに位置している場合の少なくともいずれか一方の場合には、この紙幣Sが片寄り状態にあると判定する。言い換えれば、片寄り判定手段153は、識別部17の角座標位置割出手段152が出力した紙幣Sの角座標位置から、この紙幣Sが搬送通路20の通路幅方向の片側の端部から所定距離以内となる走行禁止エリア161a,161bに到達しているか否かを割り出し、この紙幣Sが走行禁止エリア161a,161bのいずれかに到達している場合に、この紙幣Sが片寄り状態にあると判定する。
【0059】
<動作>
次に、実施形態の紙幣処理装置10の制御部15により制御される主な処理について説明する。
【0060】
[入金処理]
入金処理は、入金部11に装置外からセットされた紙幣Sを装置内部のドラム式一時貯留部18に一時貯留する処理である。
【0061】
入金部11に装置外から紙幣Sがセットされたことを図示略のセンサで検知した状態で、操作表示部14へ入金処理開始の操作が入力されると、制御部15の制御によって、入金部11および搬送通路20が、
図5に太線で示す入金処理ルートで紙幣Sを搬送する。
【0062】
つまり、入金部11が紙幣Sを一枚ずつ分離し所定の間隔をあけて繰り出し、繰り出された紙幣Sを、搬送通路20の入金搬送路21の前側送路部21aおよび中間送路部21bが搬送する。中間送路部21bでの搬送中に、識別部17が紙幣Sの識別を行う。具体的に、識別部17は、紙幣Sについて、真券であるか偽券であるかの真偽判別と、汚れ度合いが高い汚損券であるか否かの汚損判別と、損傷度合いが高い損傷券であるか否かの損傷判別と、金種識別とを行う。これらの識別に加えて、識別部17は、紙幣Sの重送、斜行および片寄りを含む搬送異常の有無を識別する。
【0063】
識別部17の識別の結果、真券であって汚損券ではなく損傷券でもなく搬送異常もない、受け入れ可能と識別された正常紙幣Sを、入金搬送路21の中間送路部21b,21cおよび後側送路部21dがドラム式一時貯留部18に搬送して、ドラム式一時貯留部18が貯留する(
図5の太実線参照)。それ以外の紙幣Sであって識別部17が受け入れ不可と識別したリジェクト紙幣Sについては、入金搬送路21の中間送路部21b,21cが連結搬送路36に搬送し、連結搬送路36および出金搬送路35が出金部12に搬送する(
図5の太実線から太破線参照)。制御部15は、ドラム式一時貯留部18に一時貯留する紙幣Sのそれぞれについて貯留順序と金種とを記憶する。
【0064】
入金処理において制御部15の制御により出金部12にリジェクトされるリジェクト紙幣Sは、偽券と、汚損率(汚損の度合い)が規定値よりも高い汚損券と、損傷率(損傷の度合い)が規定値よりも高い損傷券と、複数枚の紙幣Sが少なくとも一部分が重なった状態で搬送される重送、紙幣Sの角度が規定値を超える斜行および紙幣Sの通路幅方向の位置ずれが規定値を超える片寄りなどの搬送異常券である。よって、制御部15は、識別部17の片寄り判定手段153で片寄り状態にあると判定された片寄り紙幣Sを判定の都度、装置外へ取り出し可能に排出させるべく、出金部12に搬送させることになる。すなわち、片寄り状態の紙幣Sは、搬送ジャムやドラム式一時貯留部18およびドラム式還流庫52への取り込み不良の原因となる虞があるため、他の搬送不良状態の紙幣Sと同じく、リジェクト券として出金部12へ搬送しリジェクトする。
【0065】
入金部11にセットされた紙幣Sを全てドラム式一時貯留部18および出金部12のいずれかに搬送した状態になると、制御部15は、識別部17の識別結果からドラム式一時貯留部18が貯留している紙幣Sの金種別の枚数および総額などの金額情報を含む入金結果を操作表示部14に表示させる。出金部12に搬送された紙幣Sは、装置外に取り出し可能となる。なお、出金部12とは別に、紙幣Sを装置外に取り出し可能とするリジェクト部を設けて、このリジェクト部に受け入れ不可の紙幣Sを搬送するようにしても良い。そして、制御部15は、入金処理を確定するか、入金処理をキャンセルするか、入金部11に紙幣Sを追加投入するかの判定を促す表示を操作表示部14に表示させる。
【0066】
入金部11に紙幣Sを追加投入する旨の指示が操作表示部14に入力されると、制御部15は、入金部11への紙幣Sの追加投入を待機する。すると、操作者は、例えば、出金部12に搬送された紙幣Sを出金部12から取り出して、揃えて入金部11へ挿入する。すると、
図3に示すように、紙幣Sは、まず、一対の矯正板111a,111bの入口側面部121a,121b間を通過し、その後、中間平面部122a,122b間に挿入されることになる。その際に、紙幣Sは、入口側面部121a,121bに短辺が当接することで、長辺方向の中央位置が入金部11の通路幅方向の中央位置に寄せられて通路幅方向の片寄りが矯正される。
【0067】
言い換えれば、制御部15は、識別部17の片寄り判定手段153の判定結果に基づき、片寄り状態の紙幣Sを装置外へ排出させた後、当該紙幣Sを入金部11より再び装置内へ戻し入れる戻し処理を行うことにより、当該紙幣Sの片寄り状態を入金部11が有する一対の矯正板111a,111bによって片寄りの小さい状態に矯正させる。
【0068】
そして、入金部11に紙幣Sがセットされたことを図示略のセンサで検知した状態で、操作表示部14へ追加の入金処理開始の操作が入力されると、制御部15は、上記と同様の制御を行う。これにより、片寄りがあって出金部12に一旦リジェクトされた紙幣Sは、識別部17によって片寄りがないと判定されると、ドラム式一時貯留部18に貯留されることになる。
【0069】
以上により、識別部17の片寄り判定手段153が、搬送通路20で搬送中の紙幣Sの片寄り状態を判定した場合には、制御部15は、この片寄り判定となった片寄り紙幣Sを、現在処理中の搬送ルートから別ルートの搬送制御に切り替える。具体的には、入金処理においては、
図5に太実線で示す入金部11から識別部17を経由してドラム式一時貯留部18へ搬送させる現在処理中の搬送ルートとは異なる、
図5に太破線で示す出金部12へ搬送する搬送ルートに切り替えて搬送させる。
【0070】
よって、制御部15は、装置内へ取り込むと搬送ジャムなどの可能性がある片寄り状態の紙幣Sを装置外へ排出する。排出された紙幣Sは、入金部11にセットされた他の紙幣Sが装置内へ取り込まれた後に、操作者を介して、再度、入金部11にセットされて入金部11から装置内へ取り込まれることになる。
【0071】
以上により、一度片寄り状態と判定された紙幣Sであっても、入金部11に再セットされると片寄り状態が解消されてドラム式一時貯留部18へ搬送されることになる。
【0072】
[分配処理]
分配処理は、上記した入金処理でドラム式一時貯留部18に一時貯留した紙幣Sを装置内部のドラム式還流庫52に分類して収納する処理である。
【0073】
入金処理後の金額情報の操作表示部14への表示後、操作者が操作表示部14に入金処理を確定する操作を入力すると、制御部15の制御によって、ドラム式一時貯留部18と、搬送通路20と、8台のドラム式還流庫52のうちの適宜のものとが、例えば
図6に太線で示す分配処理ルートで紙幣Sを搬送し収納する。
【0074】
つまり、ドラム式一時貯留部18が一時貯留させていた紙幣Sを一枚ずつ間隔をあけて繰り出し、入金搬送路21の後側送路部21dおよび中間送路部21c,21bと、上下搬送路55の上側送路部55aと収納搬送路57とが搬送する。中間送路部21bでの搬送中に、識別部17が、紙幣Sの識別の順序と、重送、斜行および片寄りを含む搬送異常の有無とを再度識別することになる。なお、このとき、識別部17は、真偽判別、汚損判別、損傷判別および金種識別は行わない。
【0075】
そして、制御部15は、搬送異常がなければ、この識別部17で識別した紙幣Sの識別順序と既に記憶している入金処理時の金種情報とに基づいて、この紙幣Sの金種を取得して計数する。このように金種を得て計数した紙幣Sを、収納搬送路57および分岐搬送路61~63の適宜のものが制御部15で制御されて、8台のドラム式還流庫52のうちの、この判定した金種の紙幣Sを収納する収納先のものに収納させる。
【0076】
制御部15は、分配処理において、識別部17で識別した紙幣Sに、片寄り紙幣Sがあった場合、ドラム式一時貯留部18を停止させると共に、片寄り紙幣Sを、入金搬送路21の中間送路部21bと、上下搬送路55の上側送路部55aおよび下側送路部55bとによって集積式収納庫51内に放出させる(
図9の太実線参照)。すると、
図4に示すように、下側送路部55bから、入出口130を介して集積式収納庫51内に放出される片寄り紙幣Sは、まず、一対の矯正板131a,131bの入出口側面部141a,141b間を通過し、その後に中間平面部142a,142b間に挿入されることになる。その際に、紙幣Sは、入出口側面部141a,141bに短辺が当接することで、長辺方向の中央位置が集積式収納庫51の通路幅方向の中央位置に寄せられて通路幅方向の片寄りが矯正される。すなわち、識別部17の片寄り判定手段153で片寄り状態にあると判定された紙幣Sを、集積式収納庫51内に放出させることで、集積式収納庫51の矯正板131a,131bによって紙幣Sの通路幅方向の片寄りを矯正する。
【0077】
その後、制御部15は、片寄りと判定されて集積式収納庫51に収納させた紙幣Sを集積式収納庫51から繰り出させ、上下搬送路55の下側送路部55bおよび上側送路部55aから入金搬送路21の中間送路部21b,21cおよび後側送路部21dで搬送させて、識別部17の片寄り判定手段153で片寄りを判定しつつドラム式一時貯留部18に一時貯留させる(
図10の太実線参照)。集積式収納庫51の紙幣Sがすべてドラム式一時貯留部18に一時貯留されると、制御部15は、これらの紙幣Sについての分配処理を行う。これにより、片寄りがあって集積式収納庫51に一旦放出された紙幣Sが、識別部17によって片寄りがないと判定されてドラム式一時貯留部18に貯留された後、ドラム式一時貯留部18から繰り出され、再度識別部17によって片寄りがないと判定されると、ドラム式還流庫52のうちの収納先のものに収納される。
【0078】
以上のように、制御部15は、識別部17の片寄り判定手段153の判定結果に基づいて、所定値以上の片寄りがあったと判定した片寄り紙幣Sを、集積式収納庫51へ搬送して収納させた後、再び集積式収納庫51から紙幣Sを繰り出させる片寄り解消処理を行う。これにより、紙幣Sの片寄り状態が集積式収納庫51が有する一対の矯正板131a,131bによって片寄りの小さい状態に矯正される。よって、紙幣Sの片寄り状態を解消することができる。これによって、片寄り紙幣Sを装置外へリジェクトさせることがないため、操作者が紙幣Sを再度入金部11から装置内へ入金させる手間を生じさせることがない。また、片寄り解消処理を採用するに当たっては、メカニカルな機構を新規に追加する必要もなく、通常の紙幣処理装置10の構成で実現が可能である。
【0079】
ここで、制御部15は、片寄り紙幣Sを集積式収納庫51に収納させた後、集積式収納庫51から紙幣Sを繰り出させることなく、ドラム式一時貯留部18の残りの紙幣Sについては分配処理を継続して行う。この際に、次の片寄り紙幣Sが検出されると、この片寄り紙幣Sも集積式収納庫51に収納させる。そして、ドラム式一時貯留部18および搬送通路20に分配処理対象の紙幣Sがなくなると、集積式収納庫51に収納させた紙幣Sを上記のようにドラム式一時貯留部18に戻しつつ、識別部17によって片寄りが解消されているか否かを判定する。これら紙幣Sの片寄りが解消されていれば、これら紙幣Sを分配処理することになり、その際に、再び識別部17で片寄りがないと判定されれば、ドラム式還流庫52のうちの収納先のものに収納させる。このような制御により、一回の分配処理中に複数枚の片寄り紙幣Sが検出された場合に、これら紙幣Sを一旦集積式収納庫51に纏めて収納することができ、その後、これら紙幣Sを、ドラム式一時貯留部18に全て戻した後、分配処理によって、それぞれドラム式還流庫52のうちの収納先のものに収納させることになる。よって、一回の分配処理中に複数枚の片寄り紙幣Sが検出される場合の処理時間を短縮することができる。
【0080】
上記片寄り解消処理を行ったにも係わらず、再度、識別部17により、片寄りを解消できなかったと判定された片寄り紙幣Sについては、制御部15は、再度、この紙幣Sを集積式収納庫51に搬送させ、上記片寄り解消処理を再度行い、識別部17の判定結果が、片寄り状態にはないという判定に変わるまで、予め設定してある上限回数分(例えば3回)まで処理を繰り返す。
【0081】
予め設定してある上限回数分、上記片寄り解消処理を行ったにもかかわらず片寄りを解消できなかった紙幣Sについて、制御部15は、リジェクト券として、中間送路部21b,21cから連結搬送路36および出金搬送路35を介して出金部12に放出させて、操作表示部14にユーザへ確認を行う促す旨を表示させる処理を行う。
【0082】
なお、制御部15は、分配処理において、片寄り状態にあると判定された片寄り紙幣Sがあると、その判定の都度、分配処理を中断して、片寄り紙幣Sを集積式収納庫51に収納させると共に集積式収納庫51からドラム式一時貯留部18に戻すようにしても良い。この場合も、片寄りが解消されるまで紙幣Sの集積式収納庫51とドラム式一時貯留部18との行き来を所定の複数回繰り返す。そして、これにより紙幣Sの片寄りが解消された場合、分配処理を再開させて、ドラム式一時貯留部18の紙幣Sをドラム式還流庫52のうちの収納先のものに収納させるようにしても良い。
【0083】
制御部15は、片寄り以外の、重送および斜行の紙幣Sを識別部17が検出した場合に、ドラム式一時貯留部18、搬送通路20およびドラム式還流庫52の駆動を緊急停止させる。すなわち、制御部15は、片寄り紙幣Sを識別部17が検出した場合にのみ、集積式収納庫51に収納させて片寄りを矯正して、集積式収納庫51からドラム式一時貯留部18に戻した後、ドラム式還流庫52のうちの収納先のものに収納させるようにする。
【0084】
ここで、制御部15は、上記処理にかえて、片寄りを含む重送、斜行などの搬送異常の紙幣を識別部17が検出した場合に、搬送駆動の緊急停止処理を行うようにしても良い。すなわち、制御部15は、片寄りを含む重送、斜行などの搬送異常の紙幣Sについては、搬送不良に繋がるエラーとして、ドラム式一時貯留部18、搬送通路20およびドラム式還流庫52の駆動を緊急停止させる。これは、搬送不良状態の紙幣Sでは、うまく振り分けができずに搬送ジャムを誘発する可能性があるため、これを回避する。その後、操作表示部14を介して操作者へ搬送通路20を確認するよう誘導する。搬送通路20上の紙幣Sは、機内管理の紙幣Sとして、再度入金部11に投入され装置内へ取り込まれる。その際に、紙幣Sは、一対の矯正板111a,111b間に挿入されることで、片寄りが矯正される。
【0085】
以上のように、識別部17が所定量以上の片寄り状態にあると判定した紙幣Sについては、片寄り解消処理を一回から複数回行うことで、片寄り状態を修正可能である。なお、片寄り状態の紙幣Sだけではなく、例えば、斜行状態の紙幣Sについても、同じように片寄り解消処理を一回から複数回行うことで、斜行状態の修正が可能となる。よって、制御部15は、片寄りおよび斜行以外の、重送の紙幣Sを識別部17が検出した場合に、ドラム式一時貯留部18、搬送通路20およびドラム式還流庫52の駆動を緊急停止させるようにし、片寄りおよび斜行の紙幣Sを識別部17が検出した場合にのみ、片寄りおよび斜行の紙幣Sを集積式収納庫51に収納させて片寄りおよび斜行を矯正して、集積式収納庫51からドラム式一時貯留部18に戻した後、ドラム式還流庫52のうちの収納先のものに収納させるようにしても良い。これは、片寄りに加えて斜行も搬送ジャムを誘発する可能性が比較的低く、また、集積式収納庫51への放出で異常が解消される可能性が高いためである。
【0086】
また、制御部15は、上記処理にかえて、片寄り紙幣Sについて、入金部11へのリジェクト処理および入金部11からの再取り込み処理を行っても良い。すなわち、入金部11が、装置内へ紙幣Sを取り込むための取引口であると共に、搬送通路20および入金部11の駆動を逆転させることにより、搬送通路20の紙幣Sを入金部11へ向かって繰り出すことが可能となっている場合、分配処理中に識別部17で片寄り紙幣Sと判定された紙幣Sを入金部11へ搬送して集積させる。そして、入金部11へ集積した紙幣Sは、機内管理の紙幣Sであることから、制御部15は、入金部11へ集積された紙幣Sを、閉状態のシャッタによって入金部11からの取り出し不可とした状態のまま、装置内へ取り込む戻し入れ処理を行う。この戻し入れ処理は、出金部12へ紙幣Sをリジェクトさせる場合と比べ操作者の手を介して行う作業の必要がなくなる。すなわち、操作者は、出金部12から入金部11へリジェクト紙幣Sをセットし直す必要がない。このため、手間が掛からないという利点がある。
【0087】
[出金処理]
出金処理は、装置内部のドラム式還流庫52に収納されている紙幣Sを装置外に取り出し可能となるように出金部12に出金する処理である。
【0088】
操作表示部14に、出金させる紙幣Sの金額情報と共に出金処理の選択操作が入力されると、制御部15は、金額情報に応じて金種別の出金枚数を決定し、出金対象金種の紙幣Sが収納されたドラム式還流庫52から、搬送通路20によって、例えば
図7に太線で示す出金処理ルートで紙幣Sを出金部12に搬送する。
【0089】
例えば、単一の金種が指定され、一つの第1のドラム式還流庫52から紙幣Sを繰り出して出金部12へ搬送する場合を例にとって出金処理を説明すると、以下のようになる。なお、複数金種の組み合わせで出金処理される場合には、適宜、複数あるドラム式還流庫52を切り替えながら、単一金種の場合と同じ処理を繰り返すことになる。
【0090】
つまり、第1のドラム式還流庫52が、収納していた紙幣Sを一枚ずつ分離し計数しつつ間隔をあけて繰り出し、繰り出された紙幣Sを、分岐搬送路61~63の適宜のもの、収納搬送路57、上下搬送路55の上側送路部55a、入金搬送路21の中間送路部21b,21c、連結搬送路36および出金搬送路35が、出金部12に向けて搬送する。中間送路部21bでの搬送中に、識別部17が紙幣Sの識別順序と搬送異常の有無とを再度識別することになる。なお、このとき、識別部17は、真偽判別、汚損判別および金種識別は行わず、損傷判別を行う。
【0091】
そして、制御部15は、識別部17で識別した紙幣Sが、半券などの損傷券および重送紙幣Sでなければ、片寄り紙幣Sおよび斜行紙幣Sを含め、そのまま出金部12に出金させる。
【0092】
他方、制御部15は、識別部17で識別した紙幣Sが、半券などの損傷券あるいは重送紙幣Sであれば、この紙幣Sを処理不可と判定して、第1のドラム式還流庫52、搬送通路20および出金部12の駆動を停止して、エラー復旧処理を促す表示を操作表示部14に表示させる。これにより、操作者が、損傷券とされた紙幣Sあるいは重送紙幣Sを含んで、搬送通路20に残留している紙幣Sを取り出すことになる。
【0093】
[カセット回収処理]
カセット回収処理は、装置内部のドラム式還流庫52に収納されている紙幣Sを集積式収納庫51に収納して集積式収納庫51ごと装置外に回収する処理である。
【0094】
「カセット回収往路処理」
操作表示部14に、カセット回収処理の選択操作が入力されると、制御部15は、ドラム式還流庫52に収納されている紙幣Sをドラム式還流庫52ごとに、搬送通路20によって、例えば
図8に太線で示すカセット回収往路処理ルートでドラム式一時貯留部18に搬送するカセット回収往路処理を行う。
【0095】
つまり、例えば、第1のドラム式還流庫52が、収納していた紙幣Sを一枚ずつ分離し計数しつつ間隔をあけて繰り出し、繰り出された紙幣Sを、分岐搬送路61~63の適宜のもの、収納搬送路57、上下搬送路55の上側送路部55a、入金搬送路21の中間送路部21b,21cおよび後側送路部21dがドラム式一時貯留部18に向けて搬送する。中間送路部21bでの搬送中に、識別部17が紙幣Sの識別の順序と搬送異常の有無とを識別すると共に損傷判別を行うことになる。なお、このとき、識別部17は、真偽判別、汚損判別、金種識別は行わず、損傷判別を行う。
【0096】
そして、制御部15は、識別部17で識別した紙幣Sが、半券などの損傷券および重送紙幣Sでなければ、この紙幣Sを入金搬送路21の中間送路部21b,21cおよび後側送路部21dでドラム式一時貯留部18に貯留させる。
【0097】
また、制御部15は、カセット回収往路処理において、識別部17で識別した紙幣Sが、半券などの損傷券あるいは重送紙幣Sであれば、この紙幣Sを処理不可と判定して、第1のドラム式還流庫52、搬送通路20およびドラム式一時貯留部18の駆動を停止して、エラー復旧処理を促す表示を操作表示部14に表示させる。これにより、操作者が、損傷券である紙幣Sあるいは重送紙幣Sを含んで、搬送通路20に残留している紙幣Sを取り出すことになる。
【0098】
また、制御部15は、カセット回収往路処理において、識別部17で識別した紙幣Sが、片寄り紙幣Sであった場合、第1のドラム式還流庫52を停止させると共に、片寄り紙幣Sをドラム式一時貯留部18に一旦貯留させる。その後、ドラム式一時貯留部18に貯留した片寄り紙幣Sを、入金搬送路21の後側送路部21dおよび中間送路部21c,21bと、上下搬送路55の上側送路部55aおよび下側送路部55bとによって集積式収納庫51内に放出させる(
図9の太実線参照)。すると、下側送路部55bから入出口130を介して集積式収納庫51内に放出される片寄り紙幣Sは、上記と同様にして、通路幅方向の片寄りが矯正される。制御部15は、片寄り紙幣Sが発生する都度、上記を行い、片寄り紙幣Sを集積式収納庫51に収納させる。
【0099】
その後、制御部15は、第1のドラム式還流庫52からドラム式一時貯留部18への紙幣Sの搬送を再開させる。そして、第1のドラム式還流庫52が、全てドラム式一時貯留部18および集積式収納庫51のいずれかに搬送されると、制御部15は、片寄り紙幣Sと判定されて集積式収納庫51に纏めて収納された紙幣Sを集積式収納庫51から繰り出させ、識別部17で片寄りが解消されていることを確認しつつ、上下搬送路55の下側送路部55bおよび上側送路部55aから入金搬送路21の中間送路部21b,21cおよび後側送路部21dで搬送させて、ドラム式一時貯留部18に一時貯留させる(
図10の太実線参照)。これにより、片寄りがあって集積式収納庫51に一旦放出された紙幣Sが、識別部17によって片寄りがないと判定されると、ドラム式一時貯留部18に貯留される。
【0100】
ここで、紙幣Sを、集積式収納庫51へ放出後、集積式収納庫51から繰り出してドラム式一時貯留部18に一時貯留させる際に、識別部17で片寄りが解消されていないと判定すると、この紙幣Sをドラム式一時貯留部18に一時貯留させた後、集積式収納庫51に再び搬送して収納させ、集積式収納庫51から繰り出してドラム式一時貯留部18に一時貯留させるという動作を再度行う。このような処理を所定の複数回繰り返しても、識別部17で紙幣Sの片寄りが解消されていないと判定すると、制御部15は、集積式収納庫51、搬送通路20およびドラム式一時貯留部18の駆動を停止して、エラー復旧処理を促す表示を操作表示部14に表示させる。これにより、操作者が、片寄り紙幣Sを搬送通路20から取り出すことになる。
【0101】
なお、制御部15は、カセット回収往路処理において、識別部17で識別した紙幣Sが片寄り紙幣Sであった場合、その判定の都度、カセット回収往路処理を中断して、片寄り紙幣Sを集積式収納庫51に収納させると共に集積式収納庫51から紙幣Sを識別部17で搬送異常が解消されていることを確認しつつドラム式一時貯留部18に戻すように上記と同様の処理を行った後、カセット回収往路処理を再開させるようにしても良い。
【0102】
また、制御部15は、カセット回収往路処理において、識別部17で識別した紙幣Sが片寄り紙幣Sであった場合、片寄り紙幣Sを中間送路部21b,21cから連結搬送路36および出金搬送路35を介して出金部12に纏めて出金し、その後、操作者により入金部11に挿入させて通路幅方向の片寄りを矯正し、入金処理と同様に入金部11から繰り出させ識別部17で識別させて、片寄りの解消を確認しつつドラム式一時貯留部18に一時貯留させるようにしても良い。
【0103】
「カセット回収復路処理」
制御部15は、カセット回収往路処理において第1のドラム式還流庫52の紙幣Sをドラム式一時貯留部18に移動させることで、第1のドラム式還流庫52に紙幣Sがなくなると、ドラム式一時貯留部18から、搬送通路20によって、
図9に太線で示すカセット回収復路処理ルートで紙幣Sを集積式収納庫51に搬送するカセット回収復路処理を行う。
【0104】
つまり、一時貯留させていた紙幣Sをドラム式一時貯留部18が一枚ずつ間隔をあけて繰り出し、入金搬送路21の後側送路部21dおよび中間送路部21c,21b、上下搬送路55の上側送路部55aおよび下側送路部55bが搬送する。中間送路部21bでの搬送中に、識別部17が紙幣Sの識別の順序と搬送異常の有無とを識別すると共に損傷判別を行うことになる。なお、このとき、識別部17は、真偽判別、汚損判別、金種識別は行わず、損傷判別を行う。
【0105】
そして、制御部15は、識別部17で識別した紙幣Sが、半券などの損傷券でなければ、この紙幣Sを、入金搬送路21の中間送路部21b、上下搬送路55の上側送路部55aおよび下側送路部55bが搬送して集積式収納庫51に収納する。
【0106】
また、制御部15は、カセット回収復路処理において、識別部17で識別した紙幣Sが、半券などの損傷券であれば、この紙幣Sを処理不可と判定して、ドラム式一時貯留部18、搬送通路20および集積式収納庫51の駆動を停止して、エラー復旧処理を促す表示を操作表示部14に表示させる。これにより、操作者が、損傷券である紙幣Sを含んで、搬送通路20に残留している紙幣Sを取り出すことになる。
【0107】
また、制御部15は、カセット回収復路処理において、識別部17で識別した紙幣Sが半券などの損傷券でなければ、片寄り紙幣Sを含め、そのまま集積式収納庫51に収納させる。
【0108】
[カセット補充処理]
カセット補充処理は、装置外部で集積式収納庫51に装填された紙幣Sを集積式収納庫51ごと紙幣処理装置10にセットしてドラム式還流庫52に補充する処理である。
【0109】
「カセット補充往路処理」
集積式収納庫51がセットされて、操作表示部14に、カセット補充処理の選択操作が入力されると、制御部15は、集積式収納庫51から、搬送通路20によって、
図10に太線で示すカセット補充往路処理ルートで紙幣Sをドラム式一時貯留部18に搬送するカセット補充往路処理を行う。カセット補充往路処理では、集積式収納庫51から紙幣Sをドラム式一時貯留部18に搬送する。
【0110】
つまり、集積式収納庫51が、収納していた紙幣Sを一枚ずつ分離し計数しつつ間隔をあけて繰り出し、繰り出された紙幣Sを、上下搬送路55の下側送路部55bおよび上側送路部55a、入金搬送路21の中間送路部21b,21cおよび後側送路部21dがドラム式一時貯留部18に向けて搬送する。中間送路部21bでの搬送中に、識別部17が紙幣Sの識別を行う。具体的に、識別部17は、入金処理時と同様、紙幣Sについて、真偽判別、汚損判別、損傷判別および金種識別を行う。加えて、識別部17は、紙幣Sの重送、斜行および片寄りを含む搬送異常の有無を識別することになる。
【0111】
識別部17の識別の結果、真券であって汚損券ではなく損傷券でもなく搬送異常もない、受け入れ可能と識別された正常紙幣Sを、入金搬送路21の中間送路部21b,21cおよび後側送路部21dがドラム式一時貯留部18に搬送して、ドラム式一時貯留部18が貯留する(
図10の太実線参照)。それ以外の紙幣Sであって識別部17が受け入れ不可と識別したリジェクト紙幣Sについては、入金搬送路21の中間送路部21b,21cおよび連結搬送路36が出金搬送路35に搬送し、出金搬送路35が出金部12に搬送する(
図10の太実線から太破線参照)。
【0112】
リジェクト紙幣Sは、偽券、汚損券および損傷券と、重送、斜行および片寄りなどの搬送異常券である。よって、制御部15は、識別部17の片寄り判定手段153で片寄り状態にあると判定された片寄り紙幣Sを判定の都度、装置外へ取り出し可能に排出させるべく、出金部12に搬送させる。
【0113】
集積式収納庫51の紙幣Sを全てドラム式一時貯留部18および出金部12のいずれかに搬送した状態になると、識別部17の識別結果からドラム式一時貯留部18が貯留している紙幣Sの金種別の枚数および総額などの金額情報を含む入金結果を操作表示部14が表示する。出金部12に搬送された紙幣Sは、装置外に取り出し可能となる。なお、出金部12とは別に、紙幣Sを装置外に取り出し可能とするリジェクト部を設けて、このリジェクト部に受け入れ不可の紙幣Sを搬送するようにしても良い。そして、制御部15は、補充処理を確定するか、補充処理をキャンセルするか、出金部12に搬送された紙幣Sを入金部11に投入するかの判定を促す表示を操作表示部14に表示させる。
【0114】
入金部11に紙幣Sを投入する旨の指示が操作表示部14に入力されると、制御部15は、入金部11への紙幣Sの投入を待機する。すると、操作者は、例えば、出金部12に搬送された紙幣Sを出金部12から取り出して、入金部11へ挿入する。すると、紙幣Sは、一対の矯正板111a,111b間に挿入されることになり、その際に、通路幅方向の片寄りが矯正される。
【0115】
言い換えれば、制御部15は、識別部17の片寄り判定手段153の判定結果に基づき、片寄り状態の紙幣Sを装置外へ排出させた後、当該紙幣Sを入金部11より再び装置内へ戻し入れる戻し処理を行うことにより、当該紙幣Sの片寄り状態を入金部11が有する一対の矯正板111a,111bによって片寄りの小さい状態に矯正させる。
【0116】
そして、入金部11に紙幣Sがセットされたことを図示略のセンサで検知した状態で、操作表示部14へ追加の入金処理開始の操作が入力されると、制御部15は、入金処理と同様の制御を行う。これにより、片寄りがあって出金部12に一旦リジェクトされた紙幣Sは、識別部17によって片寄りがないと判定されると、ドラム式一時貯留部18に追加で貯留されることになる。
【0117】
以上により、一度片寄り状態と判定された紙幣Sであっても、入金部11に再セットされると片寄り状態が解消されてドラム式一時貯留部18へ搬送されることになる。
【0118】
「カセット補充復路処理」
カセット補充往路処理後の金額情報の操作表示部14の表示後、操作者が操作表示部14に承認操作を入力すると、紙幣処理装置10は、カセット補充往路処理でドラム式一時貯留部18に一時貯留した紙幣Sを、搬送通路20によって、
図6に太線で示すカセット補充復路処理ルートで装置内部のドラム式還流庫52に収納するカセット補充復路処理を行う。このカセット補充復路処理は、上記した分配処理と同様である。
【0119】
よって、制御部15は、カセット補充復路処理において、識別部17で識別した紙幣Sが片寄りがある片寄り紙幣Sであった場合、集積式収納庫51が空の状態にあれば、ドラム式一時貯留部18を停止させると共に、片寄り紙幣Sを、入金搬送路21の中間送路部21bと、上下搬送路55の上側送路部55aおよび下側送路部55bとによって集積式収納庫51内に放出させる。すると、下側送路部55bから入出口130を介して集積式収納庫51内に放出される紙幣Sは、一対の矯正板131a,131b間に挿入されることで通路幅方向の片寄りが矯正される。
【0120】
その後、制御部15は、片寄りと判定されて集積式収納庫51に収納された紙幣Sを集積式収納庫51から繰り出させ、上下搬送路55の下側送路部55bおよび上側送路部55aから入金搬送路21の中間送路部21b,21cおよび後側送路部21dで搬送させて、ドラム式一時貯留部18に一時貯留させる。集積式収納庫51の紙幣Sがすべてドラム式一時貯留部18に一時貯留されると、制御部15は、ドラム式一時貯留部18からの分配処理を再開させる。これにより、片寄りがあって集積式収納庫51に一旦放出された紙幣Sが、識別部17によって片寄りがないと判定されると、ドラム式一時貯留部18に貯留され、その後、ドラム式一時貯留部18から繰り出され、再び識別部17によって片寄りがないと判定されると、ドラム式還流庫52のうちの収納先のものに収納される。
【0121】
ここで、制御部15は、片寄り紙幣Sを集積式収納庫51に収納させた後、集積式収納庫51から紙幣Sを繰り出させることなく、ドラム式一時貯留部18の残りの紙幣Sについてカセット補充復路処理を行い、ドラム式一時貯留部18および搬送通路20にカセット補充復路処理対象の紙幣Sがなくなると、集積式収納庫51に収納させた紙幣Sを上記のようにドラム式一時貯留部18に戻した後、カセット補充復路処理によって、ドラム式還流庫52のうちの収納先のものに収納させる。
【0122】
[精査処理]
精査処理は、一のドラム式還流庫52の紙幣Sを一旦全てドラム式一時貯留部18に移動させた後、この一のドラム式還流庫52に戻す処理である。
【0123】
「精査往路処理」
操作表示部14に、複数のドラム式還流庫52のうちの精査対象の一のドラム式還流庫52の精査処理の選択操作が入力されると、制御部15は、このドラム式還流庫52に収納されている紙幣Sを、搬送通路20によって、カセット回収往路と同様にして、例えば
図8に太線で示す精査往路処理ルートでドラム式一時貯留部18に搬送する精査往路処理を行う。
【0124】
つまり、例えば、精査対象である第1のドラム式還流庫52が、収納していた紙幣Sを一枚ずつ分離し計数しつつ間隔をあけて繰り出し、繰り出された紙幣Sを、分岐搬送路61~63の適宜のもの、収納搬送路57、上下搬送路55の上側送路部55a、入金搬送路21の中間送路部21b,21cおよび後側送路部21dがドラム式一時貯留部18に向けて搬送する。中間送路部21bでの搬送中に、識別部17が、真偽判別、汚損判別、損傷判別および金種識別と、搬送異常の有無とを識別することになる。
【0125】
そして、制御部15は、識別部17で識別した紙幣Sが、半券などの損傷券でなく搬送異常券でなければ、この紙幣Sを入金搬送路21の中間送路部21b,21cおよび後側送路部21dでドラム式一時貯留部18に貯留させる。
【0126】
また、制御部15は、精査往路処理において、識別部17で識別した紙幣Sが、半券などの損傷券であれば、この紙幣Sを処理不可と判定して、第1のドラム式還流庫52、搬送通路20およびドラム式一時貯留部18の駆動を停止して、エラー復旧処理を促す表示を操作表示部14に表示させる。これにより、操作者が、損傷券である紙幣Sを含んで、搬送通路20に残留している紙幣Sを取り出すことになる。
【0127】
また、制御部15は、精査往路処理において、識別部17で識別した紙幣Sが、片寄り紙幣Sであった場合、第1のドラム式還流庫52を停止させると共に、片寄り紙幣Sをドラム式一時貯留部18に一旦貯留させる。その後、ドラム式一時貯留部18に貯留した片寄り紙幣Sを、入金搬送路21の後側送路部21dおよび中間送路部21c,21bと、上下搬送路55の上側送路部55aおよび下側送路部55bとによって集積式収納庫51内に放出させる。すると、下側送路部55bから入出口130を介して集積式収納庫51内に放出される紙幣Sは、通路幅方向の片寄りなどが矯正される。
【0128】
その後、制御部15は、第1のドラム式還流庫52からドラム式一時貯留部18への紙幣Sの搬送を再開させる。制御部15は、片寄り紙幣Sが発生する都度、上記を行い、片寄り紙幣Sを集積式収納庫51に収納させる。その後、第1のドラム式還流庫52の紙幣Sが全て、ドラム式一時貯留部18および集積式収納庫51のいずれかに搬送されると、制御部15は、片寄りと判定されて集積式収納庫51に纏めて収納されている紙幣Sを集積式収納庫51から繰り出させ、識別部17で片寄りが解消されていることを確認しつつ、上下搬送路55の下側送路部55bおよび上側送路部55aから入金搬送路21の中間送路部21b,21cおよび後側送路部21dで搬送させて、ドラム式一時貯留部18に一時貯留させる。これにより、片寄りがあって集積式収納庫51に一旦放出された紙幣Sが、識別部17によって片寄りがないと判定されると、ドラム式一時貯留部18に貯留される。
【0129】
ここで、制御部15は、片寄り紙幣Sを、集積式収納庫51へ放出後、集積式収納庫51から繰り出してドラム式一時貯留部18に一時貯留させる際に、識別部17で片寄りが解消されていないと判定すると、この紙幣Sを判定の都度、ドラム式一時貯留部18に一時貯留させ、続けて集積式収納庫51に再び搬送して収納させ、集積式収納庫51から繰り出してドラム式一時貯留部18に一時貯留させるという動作を再度行う。このような処理を所定の複数回繰り返しても、識別部17で紙幣Sの片寄りが解消されていないと判定すると、制御部15は、集積式収納庫51、搬送通路20およびドラム式一時貯留部18の駆動を停止して、エラー復旧処理を促す表示を操作表示部14に表示させる。これにより、操作者が、片寄り紙幣Sを搬送通路20から取り出すことになる。
【0130】
なお、制御部15は、精査往路処理において、識別部17で識別した紙幣Sが、片寄り紙幣Sであった場合、その判定の都度、精査往路処理を中断して、片寄り紙幣Sを集積式収納庫51に収納させると共に集積式収納庫51から紙幣Sを識別部17で搬送異常が解消されていることを確認しつつドラム式一時貯留部18に戻すように上記と同様の処理を行った後、精査往路処理を再開させるようにしても良い。
【0131】
また、制御部15は、精査往路処理において、識別部17で識別した紙幣Sが、片寄り異常Sであった場合、片寄り紙幣Sを出金部12に纏めて出金し、その後、操作者により入金部11に挿入させて通路幅方向の片寄りを矯正し、入金処理と同様のルートで、入金部11から繰り出させ識別部17で識別させて、片寄りの解消を確認しつつドラム式一時貯留部18に一時貯留させるようにしても良い。
【0132】
「精査復路処理」
精査往路処理の後、制御部15の制御によって、ドラム式一時貯留部18と、搬送通路20と、第1のドラム式還流庫52とが、例えば
図6に太線で示す精査復路処理ルートで紙幣Sを搬送し収納する。精査復路処理は分配処理と同様である。
【0133】
つまり、ドラム式一時貯留部18が一時貯留させていた紙幣Sを一枚ずつ間隔をあけて繰り出し、入金搬送路21の後側送路部21dおよび中間送路部21c,21bと、上下搬送路55の上側送路部55aと収納搬送路57とが搬送する。中間送路部21bでの搬送中に、識別部17が、紙幣Sの識別の順序と、重送、斜行および片寄りを含む搬送異常の有無とを再度識別することになる。なお、このとき、識別部17は、真偽判別、汚損判別、損傷判別および金種識別は行わない。
【0134】
そして、制御部15は、搬送異常がなければ、この識別部17で識別した紙幣Sの識別順序と既に記憶している入金処理時の金種情報とに基づいて、この紙幣Sの金種を取得して計数する。このように金種を得て計数した紙幣Sを、収納搬送路57および分岐搬送路61~63の適宜のものが制御部15で制御されて、第1のドラム式還流庫52に収納させる。
【0135】
制御部15は、分配処理において、識別部17で識別した紙幣Sが、片寄り紙幣Sであった場合、ドラム式一時貯留部18を停止させると共に、片寄り紙幣Sを、入金搬送路21の中間送路部21bと、上下搬送路55の上側送路部55aおよび下側送路部55bとによって集積式収納庫51内に放出させる。すると、下側送路部55bから入出口130を介して集積式収納庫51内に放出される紙幣Sは、通路幅方向の片寄りが矯正される。
【0136】
その後、制御部15は、片寄り紙幣Sと判定された紙幣Sを集積式収納庫51から繰り出させ、上下搬送路55の下側送路部55bおよび上側送路部55aから入金搬送路21の中間送路部21b,21cおよび後側送路部21dで搬送させて、ドラム式一時貯留部18に一時貯留させる。
【0137】
ここで、制御部15は、片寄り紙幣Sを集積式収納庫51に収納させた後、集積式収納庫51から紙幣Sを繰り出させることなく、ドラム式一時貯留部18の残りの紙幣Sについて精査復路処理を行い、ドラム式一時貯留部18および搬送通路20に精査復路処理対象の紙幣Sがなくなると、集積式収納庫51に収納させた紙幣Sを全て、上記のようにドラム式一時貯留部18に戻した後、精査復路処理によって、第1のドラム式還流庫52に収納させる。このような制御により、一回の分配処理中に複数枚の片寄り紙幣Sが検出された場合に、これら紙幣Sを一旦集積式収納庫51に纏めて収納することができ、その後、これら紙幣Sを、ドラム式一時貯留部18に全て戻した後、精査復路処理によって、第1のドラム式還流庫52に収納させることになる。よって、一回の精査復路処理中に複数枚の片寄り紙幣Sが検出される場合の処理時間を短縮することができる。
【0138】
上記処理を行ったにも係わらず、再度、識別部17の片寄り判定手段153により、所定量以上の片寄り状態を解消できなかったと判定された紙幣Sについては、制御部15は、再度、ドラム式一時貯留部18から集積式収納庫51へ向け、この紙幣Sを搬送させ、上記処理を再度行い、識別部17の片寄り判定手段153の判定結果が、所定量以上の片寄り状態にはないという判定に変わるまで、予め設定してある上限回数分(例えば3回)まで処理を繰り返す。
【0139】
予め設定してある上限回数分、上記処理を行ったにもかかわらず片寄りが解消できなかった紙幣Sについて、制御部15は、リジェクト券として出金部12から装置外へ放出させて、操作表示部14にユーザへ確認を行う促す旨を表示させる処理を行う。
【0140】
なお、制御部15は、精査復路処理において、片寄り状態にあると判定された片寄り紙幣Sがあると、その判定の都度、分配処理を中断して片寄り紙幣Sを集積式収納庫51に収納させると共に集積式収納庫51からドラム式一時貯留部18に戻した後、分配処理を再開させて、ドラム式還流庫52のうちの収納先のものに収納させるようにしても良い。
【0141】
以上に述べた紙幣処理装置10によれば、例えば入金処理おいて、識別部17の片寄り判定手段153は、紙幣Sが搬送通路20において通路幅方向の片側に所定値以上に寄った片寄り状態にあるか否かを判定することになり、制御部15は、片寄り判定手段153で片寄り状態にあると判定された紙幣Sを判定の都度、出金部12に排出させる。入金部11が、装置外から挿入される紙幣Sの通路幅方向の片寄りを矯正する矯正板111a,111bを有していることから、片寄り状態にあると判定され判定の都度、出金部12に排出された紙幣Sが、操作者により入金部11に投入されると、矯正板111a,111bが片寄りを矯正する。よって、紙幣Sの搬送状態を容易に改善でき、処理効率の低下を抑制することが可能となる。
【0142】
すなわち、ワーニングレベルよりも片寄り状態が悪化している紙幣Sを片寄り判定手段153で検出したら、この紙幣Sを装置外へ排出し、この紙幣Sを、入金部11から装置内へ戻し処理を行うことによって、入金部11に設けられた矯正板111a,111bによって中央寄りに矯正して装置内の所定の部位へ搬送することが可能となる。また、上記構成は、新規にメカニカルな機構を用意する必要はなく既存の構成で良く、制御のみ追加することで実現可能であるため、コストを抑制する効果を奏する。
【0143】
また、例えば分配処理おいて、識別部17の片寄り判定手段153は、紙幣Sが搬送通路20において通路幅方向の片側に所定値以上に寄った片寄り状態にあるか否かを判定することになり、制御部15は、識別部17の片寄り判定手段153で片寄り状態にあると判定された紙幣Sを集積式収納庫51に収納させる。すると、集積式収納庫51の矯正板131a,131bが、搬送通路20から放出された紙幣Sの通路幅方向の片寄りを矯正する。よって、その後、集積式収納庫51から紙幣Sを繰り出すことで、紙幣Sの搬送状態を容易に改善でき、処理効率の低下を抑制することが可能となる。
【0144】
すなわち、ワーニングレベルよりも片寄り状態が悪化している紙幣Sを片寄り判定手段153で検出したら、この紙幣Sを、一旦集積式収納庫51へ搬送し、集積式収納庫51に集積後、集積式収納庫51から繰り出すことによって、集積式収納庫51に設けられた矯正板131a,131bによって中央寄りに矯正して装置内の所定の部位へ搬送することが可能となる。また、片寄り状態の紙幣Sを装置内で自動で正常状態の紙幣Sに修正することが可能なため、手間が掛からず、作業の効率低下を抑制する効果を奏する。
【0145】
また、識別部17は、搬送通路20で搬送中の紙幣Sの画像情報を取得する画像情報取得部151を有し、画像情報取得部151が取得した画像情報を基に、この紙幣Sの角座標位置を出力する。そして、片寄り判定手段153は、この角座標位置から、この紙幣Sが搬送通路20の通路幅方向の片側の端部から所定距離以内となる走行禁止エリア161a,161bに到達しているか否かを割り出し、この紙幣Sが走行禁止エリア161a,161bに到達している場合に、この紙幣Sが片寄り状態にあると判定する。よって、紙幣Sが片寄り状態にあるか否かを正確に判定することができる。
【0146】
以上の実施形態において、分配処理のように紙幣Sの管理が装置外から装置内へ移行する動作仕様で紙幣Sの矯正を行う場合には、片寄り紙幣Sを出金部12など、装置外に出金し、操作者の手動で入金部11に投入させて装置内に繰り出させる動作仕様を行うようにしても良い。また出金処理、カセット回収往路処理やカセット回収復路処理のように紙幣Sの管理が装置内から装置外へ移行する動作仕様で紙幣Sの矯正を行う場合には、片寄り紙幣Sを集積式収納庫51に放出し集積式収納庫51から繰り出せる動作仕様を行うようにしても良い。これらの動作仕様が、予め各取引動作に対応して設定されていても良い。
【0147】
これによって、例えば、入金処理後の分配処理動作中において、片寄りや斜行などが発生し搬送状態が悪化している紙幣Sを検出した場合に、当該紙幣Sを一旦装置外へ排出して入金部11からの戻し処理を行うことによって、操作員は入金動作と似た戻し処理を入金部11から継続して行っている旨、違和感無く操作を行うことができるようになる効果を奏する。逆に、出金処理、カセット回収往路やカセット回収復路のように紙幣Sの管理がそもそも装置内管理だった取引動作においては、片寄りや斜行などが発生し搬送状態が悪化している紙幣Sは装置外へ排出されないため、操作員は装置内で確定している紙幣Sに触ることなく、装置内で紙幣Sの矯正を行うことができるようになる効果を奏する。
【0148】
<変形例>
以上においては、ラインセンサからなる画像情報取得部151を含む片寄り判定手段153を識別部17に有する場合を例にとり説明を行った。しかしながら、識別部17以外の位置に、片寄り判定手段を有していても良い。
【0149】
例えば、
図11に示すように、片寄り判定手段201を、搬送通路20における入金部11の直後位置、ドラム式一時貯留部18の直前位置および各ドラム式還流庫52の直前位置のそれぞれに片寄り検出部202を有する構成としても良い。片寄り判定手段201は、これらの片寄り検出部202の検出結果に基づき、紙幣Sの片寄り状態を判定する。
【0150】
図12に示すように、搬送通路20の構造的な限界幅を搬送通路筐体幅W1とする。この搬送通路筐体幅W1は、一対の側板101a,101bの側面部102a,102b間の距離である。搬送通路筐体幅W1の中で、正常搬送時に紙幣Sが搬送される通行領域を搬送通路正常時通行領域W2とする。搬送通路正常時通行領域W2は、取り扱う紙幣Sの最大幅Wよりも、所定量のマージンを含んだ幅である。
【0151】
片寄り検出部202は、通路幅方向に一列に等間隔で並んで設けられた複数、例えば4つのセンサ203からなっている。センサ203は、搬送通路20を挟んで紙幣Sの厚さ方向の両側に配置される発光素子と受光素子とからなる光学式センサであり、間を通過する紙幣Sで発光素子の受光素子に向けた発光が遮光されることでセンサ203の位置に紙幣Sがあることを検知する。一つの片寄り検出部202を構成するセンサ203は、三つ以上あるのが好ましい。
【0152】
片寄り検出部202を構成するセンサ203のうち、通路幅方向両端のセンサ203は、搬送通路筐体幅W1内における搬送通路正常時通行領域W2を外れた左右の範囲に設けられている。これら通路幅方向両端のセンサ203は、片寄り判定用のセンサ203であり、片寄り検出部202は、これらのうちの一方のセンサ203が紙幣Sにより遮光されることで、この紙幣Sが片寄り状態であると判断する。
【0153】
片寄り検出部202を構成するセンサ203のうち、通路幅方向中間の一つ以上のセンサ203は、タイミングセンサであり、このセンサ203を遮光するタイミング中に、通路幅方向両端のセンサ203のいずれかが遮光となると、紙幣Sの片寄りの発生と判断する。逆に、通路幅方向中間のセンサ203が遮光状態でないタイミングで、通路幅方向両端のセンサ203のいずれかが遮光となっても、それは、紙幣Sの搬送に伴って付着したゴミなどが検出されたと見なす。
【0154】
片寄り検出部202に通路幅方向中間のセンサ203を二つ以上設けた場合には、さらに、この片寄り検出部202で、紙幣Sの斜行の向き(左端先行か、右端先行か)を判断できる。
【0155】
すなわち、通路幅方向中間の左側のセンサ203の遮光後、所定時間経過内に通路幅方向中間の右側のセンサ203が遮光されれば、紙幣Sは左端先行と判断する。また、通路幅方向中間の右側のセンサ203の遮光後、所定時間経過内に通路幅方向中間の左側のセンサ203が遮光されれば、紙幣Sは右端先行と判断する。
【0156】
あるいは、
図13に示すように、通路幅方向中間のセンサ203が一つの場合でも、寄りの発生時に限り、通路幅方向中間のセンサ203の遮光タイミングの開始からの、通路幅方向両端のいずれかのセンサ203の遮光タイミングを判断することで、同じく、斜行の向き(左端先行か、右端先行か)を判断できる。
【0157】
すなわち、通路幅方向中間のセンサ203Cの遮光時間中の最初の段階で、通路幅方向左端のセンサ203Lが遮光されれば、
図13の紙幣S(1)に示すように紙幣Sは左端先行と判断する。また、通路幅方向中間のセンサ203Cの遮光時間中の次の段階で、通路幅方向左端のセンサ203が遮光されれば、
図13の紙幣S(2)に示すように紙幣Sは右端先行と判断する。また、通路幅方向中間のセンサ203Cの遮光時間中の最初の段階で、通路幅方向右端のセンサ203Rが遮光されれば、
図13の紙幣S(3)に示すように紙幣Sは右端先行と判断する。また、通路幅方向中間のセンサ203Cの遮光時間中の次の段階で、通路幅方向右端のセンサ203Rが遮光されれば、
図13の紙幣S(4)に示すように紙幣Sは左端先行と判断する。
【0158】
ここで、上記説明にあった、通路幅方向中間のセンサ203Cの遮光時間中の「最初の段階」、または「次の段階」の見極め方法については、具体的には、しきい値となる所定時間を予め設定しておき、通路幅方向端部のセンサ203L,203Rの遮光が前記所定時間以内にあれば「最初の段階」であるものと判断し、他方、通路幅方向端部のセンサ203L,203Rの遮光が前記所定時間を超えている場合には、「次の段階」であるものと判断することができる。なお、所定時間の設定に関しては、金種(紙幣サイズ)によらず一律の値に設けても良いし、金種(紙幣サイズ)毎に別々に設けても良い。
【0159】
このように、片寄り検出部202は、3つ以上のセンサ203の組で構成できるので、構造的に大きな負荷とはならず、また、搬送通路20内における配置によっては、搬送通路20の振り分け部用のタイミングセンサを兼用することもできる。
【0160】
そして、識別部17のみに限らず、搬送通路20上に複数の片寄り検出部202を設けることで、さらに次のような判断を行うことができる。
【0161】
一例として、ドラム式一時貯留部18から紙幣Sを繰り出し、紙幣Sを、識別部17を経由して、第1のドラム式還流庫52へ搬送して収納する場合を考える。
【0162】
識別部17のみが、片寄りの発生を検出するものである場合、一の紙幣Sについて片寄りが発生したと判断するだけとなる。
【0163】
これに対して、例えば、ドラム式一時貯留部18からの繰り出し直後と、第1のドラム式還流庫52への収納直前に片寄り検出部202を設けたとする。また、その直前までの動作において、片寄りの検出がなかった正常時を想定する。ドラム式一時貯留部18からの繰り出し直後の片寄り検出部202で紙幣Sの片寄りを検出した場合、ドラム式一時貯留部18、ないしは、ドラム式一時貯留部18からドラム式一時貯留部18の直後の片寄り検出部202までの搬送通路20の区間で、紙幣Sに片寄りを発生させる何らかの原因があるものと推定できる。他方、ドラム式一時貯留部18からの繰り出し直後の片寄り検出部202では片寄りが検出されなかった紙幣Sについて、次の識別部17において片寄りを検出した場合、ドラム式一時貯留部18の直後の片寄り検出部202から識別部17までの搬送通路20の区間で、紙幣Sに片寄りを発生させる何らか原因があるものと推定できる。同様にして、識別部17までの搬送区間において片寄りが検出されなかった紙幣Sについて、第1のドラム式還流庫52の直前の片寄り検出部202において片寄りを検出した場合、識別部17以降の搬送通路20の区間で、紙幣Sに片寄りを発生させる何らか原因があるものと推定できる。
【0164】
さらには、例えば、ドラム式一時貯留部18からの繰り出し直後の片寄り検出部202で片寄りが検出された紙葉類Sが、次の識別部17においては、片寄りの検出がなされなかった場合、搬送通路20のこれらの間の区間において、片寄りを結果的に矯正する、逆方向の片寄りを引き起こす何らかの原因があるものと推定できる。同様にして、識別部17までの搬送区間において片寄りが検出された紙幣Sが、第1のドラム式還流庫52の直前の片寄り検出部202においては、片寄りの検出がなされなかった場合、搬送通路20のこれらの間の区間において、片寄りを結果的に矯正する、逆方向の片寄りを引き起こす何らかの原因があるものと推定できる。
【0165】
これらのように、識別部17だけではなく、複数の片寄り検出部202を配置することで、片寄りの発生を引き起こす何らかの原因を有する搬送区間を特定でき、その後の搬送通路20のチェック・補修作業に寄与させることができる。加えて、片寄りの発生だけではなく、斜行の発生・方向をも特定できることになることで、寄りないしは斜行を引き起こす何らかの原因の解明に寄与させることができる。
【符号の説明】
【0166】
10 紙幣処理装置
11 入金部
12 出金部
15 制御部
17 識別部
18 ドラム式一時貯留部
20 搬送通路
30 テープ
31 ドラム
51 集積式収納庫
52 ドラム式還流庫
70 テープ
71 ドラム
111a,111b 矯正板(片寄り矯正手段)
131a,131b 矯正板(片寄り矯正手段)
151 画像情報取得部
152 角座標位置割出手段
153,201 片寄り判定手段
161a,161b 走行禁止エリア
202 片寄り検出部
203 センサ
S 紙幣
Sa,Sb 端部