(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086875
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】電磁波シールド材用不織布及び電磁波シールド材
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20240621BHJP
D21H 13/24 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
H05K9/00 W
D21H13/24
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024064006
(22)【出願日】2024-04-11
(62)【分割の表示】P 2019231360の分割
【原出願日】2019-09-11
(31)【優先権主張番号】P 2018174647
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019061442
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019063014
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三枝 秀彰
(72)【発明者】
【氏名】近藤 泰慶
(72)【発明者】
【氏名】高濱 信子
(72)【発明者】
【氏名】ジョー シンユエ
(72)【発明者】
【氏名】大山 圭介
(72)【発明者】
【氏名】増田 敬生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友洋
(57)【要約】
【課題】 本発明の課題は、優れた電磁波シールド性を発現できる電磁波シールド材用不織布基材及び電磁波シールド材を提供することにある。
【解決手段】 湿式不織布である電磁波シールド材用不織布において、延伸ポリエステル系短繊維と融点が220℃以上250℃以下の未延伸ポリエステル系短繊維を含有し、該不織布の剥離強度(縦方向)が2.0N/m以上であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式不織布である電磁波シールド材用不織布において、延伸ポリエステル系短繊維と融点が220℃以上250℃以下の未延伸ポリエステル系短繊維を含有し、該不織布の剥離強度(縦方向)が2.0N/m以上であることを特徴とする電磁波シールド材用不織布。
【請求項2】
請求項1記載の電磁波シールド材用不織布に、金属皮膜処理が施されていることを特徴とする電磁波シールド材。
【請求項3】
金属皮膜処理が、無電解金属めっき処理、電気めっき処理、金属蒸着処理及びスパッタリング処理からなる群から選択される1種以上の処理であることを特徴とする請求項2記載の電磁波シールド材。
【請求項4】
金属皮膜処理が、スパッタリングによってニッケル被覆を形成させる処理、電気めっきによって銅被覆を形成させる処理及び電気めっきによってニッケル被覆を形成させる処理をこの順に含むことを特徴とする請求項2記載の電磁波シールド材。
【請求項5】
電磁波シールド材の厚さが15μm以下であり、電磁波シールド材の表面抵抗値が0.03Ω/□以下である請求項2又は3に記載の電磁波シールド材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブの搬送性に優れ、且つ優れた電磁波シールド性を発現できる電磁波シールド材用不織布及び電磁波シールド材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器は電磁波を発生している。そして、電磁波を電子機器の外部に漏らさないようにするために、また、電磁波により電子機器が誤作動を起こさないようにするために、電磁波シールド材が使用されている。電磁波シールド材としては、板金、金属を含む塗料、金属メッシュ、発泡金属等が挙げられる。また、ポリエステル系短繊維から形成される不織布に金属めっき処理を施してなる電磁波シールド材が開示されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
特許文献1には、非導電性繊維の織物、編物又は不織布の繊維の外周及び交叉部分の全周に連続した金属導電層を湿式めっき法により付着させた電磁波シールド材が開示されている。化学繊維として、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維が、基材自体の引張強伸度特性が優れており、しかも、めっき前処理工程における特性劣化を防止することができるので、好ましいことが記載されている。
【0004】
特許文献2には、湿式不織布に金属皮膜処理を施してなる電磁波シールド材であって、単繊維繊度が1.1dtex以下のポリエステル繊維を含み、かつ厚さが10~30μmの範囲内であることを特徴とする電磁波シールド材が開示されている。
【0005】
近年の電子機器の小型化、高周波数化及び高性能化に伴い、より薄く、高電磁波シールド性の電磁波シールド材が求められている。具体的には、厚さが15μm以下であること、且つ100MHz~10GHzの広い周波数範囲に優れた電磁波シールド性を示す電磁波シールド材が求められている。
【0006】
特許文献1及び2のように、不織布に金属めっき処理等の金属皮膜処理を施す場合、生産性の良いロール トゥ ロール(Roll to Roll)で加工を行うが、搬送時の不織布に皺が生じ、搬送性に優れない問題があった。
【0007】
また、特許文献2の実施例では、単繊維繊度が0.1dtexのポリエステル延伸繊維と単繊維繊度が0.2dtexである未延伸バインダー繊維を含み、湿式不織布の原紙目付が8g/m2であり、電磁波シールド材の目付が19g/m2であり、厚さが12μmである電磁波シールド材が開示されている。しかし、薄い電磁波シールド材が求められるにつれ、特許文献2の電磁波シールド材では、電磁波シールド性が十分に確保できない問題があった。また、金属皮膜が剥がれる問題が生じる場合があった。
【0008】
また、不織布に金属めっき処理を施した電磁波シールド材においては、ポリエステル系短繊維と金属めっき処理によって形成される金属皮膜とが密着していることが要求され、そのためにめっき前処理工程として、ポリエステル系短繊維にアルカリ処理を施すことが知られている。
【0009】
特許文献1には、ポリエステル繊維は、めっき前処理工程における特性劣化を防止することができると記載されている。しかし、通常、不織布のアルカリ処理は湿式処理であり、繊維が水槽内に脱落し、著しく操業性を低下させる場合があった。また、脱落した繊維が不織布に再付着することによって、金属めっき処理で欠陥が発生するという問題が発生する場合もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開昭48-40800号公報
【特許文献2】特開2014-75485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の第1の課題は、搬送性に優れ、且つ優れた電磁波シールド性を発現できる電磁波シールド材用不織布、及び該電磁波シールド材用不織布を使用した電磁波シールド材を提供することにある。
【0012】
本発明の第2の課題は、薄く、且つ優れた電磁波シールド性を発現でき、金属皮膜が剥がれ難い電磁波シールド材用不織布、及び該電磁波シールド材用不織布を使用した電磁波シールド材を提供することにある。
【0013】
本発明の第3の課題は、電磁波シールド材用のめっき前処理工程であるアルカリ処理において、繊維脱落が少なく、高強度な電磁波シールド材用不織布、及び該電磁波シールド材用不織布を使用した電磁波シールド材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、下記発明を見出した。
【0015】
<1>湿式不織布である電磁波シールド材用不織布において、湿式不織布が、繊維径3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維から選択される、繊維径が異なる2種以上の延伸ポリエステル系短繊維と、繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維とを必須成分として含有することを特徴とする電磁波シールド材用不織布。
【0016】
<2>湿式不織布である電磁波シールド材用不織布において、繊維径3μm未満の延伸ポリエステル系短繊維及び繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維を必須成分として含有し、目付が7g/m2以下であり、密度が0.5~0.8g/cm3であることを特徴とする電磁波シールド材用不織布。
【0017】
<3>湿式不織布である電磁波シールド材用不織布において、延伸ポリエステル系短繊維と融点が220℃以上250℃以下の未延伸ポリエステル系短繊維を含有し、該不織布の剥離強度(縦方向)が2.0N/m以上であることを特徴とする電磁波シールド材用不織布。
【0018】
<4>上記<1>~<3>のいずれかに記載の電磁波シールド材用不織布に、金属皮膜処理が施されていることを特徴とする電磁波シールド材。
【0019】
<5>金属皮膜処理が、無電解金属めっき処理、電気めっき処理、金属蒸着処理及びスパッタリング処理からなる群から選択される1種以上の処理であることを特徴とする上記<4>記載の電磁波シールド材。
【0020】
<6>金属皮膜処理が、スパッタリングによってニッケル被覆を形成させる処理、電気めっきによって銅被覆を形成させる処理及び電気めっきによってニッケル被覆を形成させる処理をこの順に含むことを特徴とする上記<4>記載の電磁波シールド材。
【0021】
<7>電磁波シールド材の厚さが15μm以下であり、電磁波シールド材の表面抵抗値が0.03Ω/□以下である上記<4>~<6>のいずれかに記載の電磁波シールド材。
【発明の効果】
【0022】
本発明の第1の効果は、搬送性に優れ、且つ優れた電磁波シールド性を発現できる電磁波シールド材用不織布、及び該電磁波シールド材用不織布を使用した電磁波シールド材を提供できることである。
【0023】
本発明の第2の効果は、薄く、且つ優れた電磁波シールド性を発現でき、金属皮膜が剥がれ難い電磁波シールド材用不織布、及び該電磁波シールド材用不織布を使用した電磁波シールド材を提供できることである。
【0024】
本発明の第3の効果は、電磁波シールド材用のめっき前処理工程であるアルカリ処理において、繊維脱落が少なく、高強度な電磁波シールド材用不織布、及び該電磁波シールド材用不織布を使用した電磁波シールド材を提供できることである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】剥離強度を測定する際の電磁波シールド材用不織布の状態を示した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の電磁波シールド材用不織布及び電磁波シールド材について詳説する。
【0027】
-電磁波シールド材用不織布<1>-
本発明の電磁波シールド材用不織布<1>は、繊維径3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維から選択される、繊維径が異なる2種以上の延伸ポリエステル系短繊維と、繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維とを必須成分として含有する湿式不織布であることを特徴とする。
【0028】
一般的に、ロール トゥ ロール加工における搬送時の不織布には、MD(Machine Direction)方向にテンションがかかるため、不織布が伸びてしまい、それが原因で皺が生じてしまう。本発明の電磁波シールド材用不織布<1>は、繊維径が3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維から選択される、繊維径が異なる2種以上の延伸ポリエステル系短繊維と、繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維とを必須成分として含有するため、繊維径が3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維から選択される繊維径が同一の1種の延伸ポリエステル系短繊維と、繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維とを必須成分として含有する不織布と比べて、伸びにくく、そのため搬送時に皺になりにくい。また、延伸ポリエステル系短繊維の繊維径が12μm以上と大きい不織布を使用した場合、薄い電磁波シールド材が得られ難い。本発明の電磁波シールド材用不織布<1>は、繊維径が12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維と繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維とを含むことによって、薄く、且つ搬送性に優れるという効果を達成できる。
【0029】
一般的に電磁波シールド性は、電磁波の吸収反射損失、反射損失、多重反射損失により達成される。本発明の電磁波シールド材用不織布<1>において、繊維径が3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維から選択される、繊維径が異なる2種以上の延伸ポリエステル系短繊維を用いることにより、電磁波シールド材内に浸入した電磁波が電磁波シールド材内で反射を繰り返し易くなり、多重反射損失の向上による優れた電磁波シールド性が得られる。
【0030】
本発明の電磁波シールド材用不織布<1>において、延伸ポリエステル系短繊維と未延伸ポリエステル系短繊維の質量含有比率は、10:90~90:10であることが好ましく、20:80~80:20であることがより好ましく、30:70~70:30であることがさらに好ましい。未延伸ポリエステル系短繊維の含有率が湿式不織布を構成する繊維全体の10質量%未満であると、電磁波シールド材用不織布として必要な強度が発現しなくなることがある。一方、未延伸ポリエステル系短繊維の含有率が90質量%を超えると、均一性を損なう場合がある。
【0031】
本発明の電磁波シールド材用不織布<1>において、繊維径が3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維以外の延伸ポリエステル系短繊維を使用しても良い。また、繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維以外の未延伸ポリエステル系短繊維を使用しても良い。すなわち、繊維径が3μm未満の延伸ポリエステル系短繊維、繊維径が12μm以上の延伸ポリエステル系短繊維、繊維径が3μm未満の未延伸ポリエステル系短繊維、繊維径が5μm超の未延伸ポリエステル系短繊維を使用しても良い。これらは、単独で使用しても良いし、2種類以上の繊維径の繊維を併用しても良い。
【0032】
本発明の電磁波シールド材用不織布<1>において、繊維径が3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維については、その質量含有率は、含有する全延伸ポリエステル系短繊維中、1~100質量%であることが好ましく、3~100質量%であることがより好ましい。繊維径が3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維の含有率が全延伸ポリエステル系短繊維中1質量%未満である場合、薄く、且つ搬送性の優れた電磁波シールド材が得られない場合がある。
【0033】
また、本発明の電磁波シールド材用不織布<1>において、繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維については、その質量含有率は、含有する全未延伸ポリエステル系短繊維中、1~100質量%が好ましく、2~100質量%がより好ましい。繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維の含有率が1質量%未満である場合、併用する繊維径によっては比表面積が小さくなり、優れた電磁波シールド性が発現し難くなる場合がある。また、湿式不織布の強度が発現し難くなる場合がある。
【0034】
本発明の電磁波シールド材用不織布<1>の厚さは、電子機器で使用する目的から、7~30μmであることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。目付(坪量)は5~30g/m2であることが好ましく、15g/m2以下であることがより好ましい。目付が5g/m2未満であると、均一性を得ることが難しくなり、電磁波シールド性の効果にバラつきが発生しやすくなる。
【0035】
-電磁波シールド材用不織布<2>-
本発明の電磁波シールド材用不織布<2>は、繊維径3μm未満の延伸ポリエステル系短繊維及び繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維を必須成分として含有し、目付が7g/m2以下であり、密度が0.5~0.8g/cm3である湿式不織布であることを特徴とする。
【0036】
一般的に、湿式不織布への金属皮膜処理では、湿式不織布を形成する繊維の比表面積(単位体積当たり表面積)が小さいと、単位体積当たりの金属の付着量が小さくなり、優れた電磁波シールド性を発現できない場合がある。本発明の電磁波シールド材用不織布<2>は、繊維径が3μm未満の延伸ポリエステル系短繊維と繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維とを必須成分として含有する湿式不織布であるため、比表面積を増やすことができ、優れた電磁波シールド性が発現できる。湿式不織布が、繊維径が3μm以上の延伸ポリエステル系短繊維と繊維径が5μm超の未延伸ポリエステル系短繊維のみからなる場合では、優れた電磁波シールド性が発現できない。なお、繊維径が3μm未満の未延伸ポリエステル系短繊維は入手困難である。また、繊維径が3μm未満の延伸ポリエステル系短繊維の繊維径は、0.1μm以上であることが好ましい。繊維径が0.1μm未満である場合、強度が発現しない場合がある。
【0037】
本発明の電磁波シールド材用不織布<2>において、延伸ポリエステル系短繊維と未延伸ポリエステル系短繊維の質量含有比率は、20:80~80:20であることが好ましく、30:70~70:30であることがより好ましく、40:60~60:40であることがさらに好ましい。未延伸ポリエステル系短繊維の含有率が湿式不織布を構成する繊維全体の20質量%未満であると、電磁波シールド材用不織布として必要な強度が発現しなくなることがある。一方、未延伸ポリエステル系短繊維の含有率が80質量%を超えると、均一性を損なう場合がある。
【0038】
本発明の電磁波シールド材用不織布<2>において、繊維径が3μm未満の延伸ポリエステル系短繊維と繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維以外の繊維を使用しても良い。すなわち、繊維径が3μm以上の延伸ポリエステル系短繊維、繊維径が3μm未満の未延伸ポリエステル系短繊維、繊維径5μm超の未延伸ポリエステル系短繊維を使用しても良い。これらは、単独で使用しても良いし、2種類以上の繊維径の繊維を併用してもよい。
【0039】
本発明の電磁波シールド材用不織布<2>において、繊維径が3μm未満の延伸ポリエステル系短繊維については、その含有率は、全延伸ポリエステル系短繊維中、1~100質量%であることが好ましく、3~100質量%であることがより好ましい。繊維径が3μm未満の延伸ポリエステル系短繊維の含有率が1質量%未満である場合、併用する繊維径によっては比表面積が小さくなり、優れた電磁波シールド性が発現し難くなる場合がある。
【0040】
また、本発明の電磁波シールド材用不織布<2>において、繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維については、その含有率は、全未延伸ポリエステル系短繊維中、1~100質量%が好ましく、2~100質量%がより好ましい。繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維の含有率が1質量%未満である場合、併用する繊維径によっては比表面積が小さくなり、優れた電磁波シールド性が発現し難くなる、又は、優れた湿式不織布の強度が発現し難くなる場合がある。
【0041】
本発明の電磁波シールド材用不織布<2>において、湿式不織布の目付は、7g/m2以下であり、5g/m2以下であることがより好ましく、4g/m2以下であることがさらに好ましい。目付7g/m2を超えると、金属皮膜処理後、さらに厚くなり、電磁波シールド材の厚さが15μm超えになる可能性があり、電子機器、通信機器、電化製品などに使えない場合がある。また、湿式不織布の目付は、3g/m2以上であることが好ましい。なお、目付は、JIS P8124:2011に記載されている方法で測定した。
【0042】
本発明の電磁波シールド材用不織布<2>において、湿式不織布の密度は0.5~0.8g/cm3であり、0.55~0.65g/cm3であることがより好ましい。密度が0.8g/cm3以下であることによって、比表面積が上がるため、金属皮膜処理による金属皮膜が多くなり、電磁波シールド性が向上する。また、金属皮膜が剥がれ難くなる。また、密度が0.5g/cm3以上であると、湿式不織布の強度が高くなり、金属皮膜処理で不具合が発生し難くなり、また、金属皮膜が剥がれ難くなる。なお、密度は、JIS P8118:2014に記載されている方法で測定した。
【0043】
-電磁波シールド材用不織布<3>-
本発明の電磁波シールド材用不織布<3>は、延伸ポリエステル系短繊維と融点が220℃以上250℃以下の未延伸ポリエステル系短繊維とを含有する湿式不織布である。そして、本発明の電磁波シールド材用不織布<3>の剥離強度(縦方向)は2.0N/m以上である。
【0044】
本発明の電磁波シールド材用不織布<3>において、電磁波シールド材用不織布の剥離強度(縦方向)は2.0N/m以上であり、より好ましくは2.5N/m以上であり、さらに好ましくは3.0N/m以上である。剥離強度(縦方向)が2.0N/m未満の場合には、繊維同士の接着が弱すぎるために、アルカリ処理時に電磁波シールド材用不織布からの繊維脱落が多くなり、搬送ロールへの繊維の蓄積などが発生するため、定期的な洗浄が必要となって操業性が低下する問題や、脱落繊維が電磁波シールド材用不織布に再付着することによって、金属めっき処理での欠陥が生じる問題が起こる。本発明の電磁波シールド材用不織布<3>において、電磁波シールド材用不織布の剥離強度(縦方向)は、10.0N/m以下であることが好ましい。10.0N/mを超えると、電磁波シールド材用不織布の融着が進みすぎて、電磁波シールド材用不織布表面がフィルム化し、形態を保てなくなる場合がある。
【0045】
本発明の電磁波シールド材用不織布<3>において、延伸ポリエステル系短繊維の繊維径は、1~10μmであることが好ましく、2~8μmであることがより好ましい。延伸ポリエステル系短繊維として、繊維径の異なる2種以上の延伸ポリエステル系短繊維を含むこともできる。延伸ポリエステル系短繊維の繊維径が10μm以下である場合、薄い電磁波シールド材を提供することが容易となる。また、好ましくは、延伸ポリエステル系短繊維として、繊維径が3μm以下のポリエステル系短繊維を必須成分として含むことが好ましい。繊維径が3μm以下のポリエステル系短繊維を含むことによって、電磁波シールド性がより向上する。
【0046】
本発明の電磁波シールド材用不織布<3>において、未延伸ポリエステル系短繊維の繊維径は、1~8μmであることが好ましく、3~5μmであることがより好ましい。繊維径がこの範囲である場合、湿式不織布の強度を高めながら、薄い電磁波シールド材を提供することが容易となる。未延伸ポリエステル系短繊維として、繊維径の異なる2種以上の未延伸ポリエステル系短繊維を含むこともできる。
【0047】
本発明の電磁波シールド材用不織布<3>において、延伸ポリエステル系短繊維と未延伸ポリエステル系短繊維の質量含有比率は、20:80~80:20であることが好ましい。未延伸ポリエステル系短繊維の含有率が湿式不織布を構成する繊維全体の20質量%未満であると、電磁波シールド材用不織布として必要な強度が発現しなくなることがある。一方、未延伸ポリエステル系短繊維の含有率が80質量%を超えると、均一性を損なう場合がある。さらに、電磁波シールド性を向上させるために、繊維径が3μm以下の延伸ポリエステル系短繊維の含有率が、湿式不織布を構成する繊維全体の5~80質量%であることがより好ましい。本発明の電磁波シールド材用不織布<3>において、最も好ましい繊維配合は、未延伸ポリエステル系短繊維が20~80質量%、繊維径が3μmを超えて10μm以下の延伸ポリエステル系短繊維が0~75質量%、繊維径が3μm以下の延伸ポリエステル系短繊維が5~80質量%である。
【0048】
本発明の電磁波シールド材用不織布<3>の厚さは、電子機器で使用する目的から、5~30μmであることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。目付(坪量)は、3~30g/m2であることが好ましく、15g/m2以下であることがより好ましい。目付が3g/m2未満であると、均一性を得ることが難しくなり、電磁波シールド性の効果にバラつきが発生しやすくなり、電磁波シールド材用不織布自体の強度維持が困難になり、作業性に難がある。
【0049】
―ポリエステル系短繊維―
本発明において、延伸ポリエステル系短繊維は、熱カレンダー処理によっても、溶融又は軟化しにくく、湿式不織布の骨格を形成する主体繊維である。
【0050】
本発明において、未延伸ポリエステル系短繊維は、熱カレンダー処理によって、溶融又は軟化し、湿式不織布の強度を高めるバインダー繊維として機能する。未延伸ポリエステル系短繊維の融点は、220℃~250℃が好ましい。本発明の電磁波シールド材用不織布<3>において、未延伸ポリエステル系短繊維の融点は、220℃以上250℃以下である。未延伸ポリエステル系短繊維の融点が220℃未満の場合、熱カレンダー処理時の熱ロールに湿式不織布が貼り付いてしまい、シートにならない場合がある。250℃を超える場合、繊維が接着せずに湿式不織布の強度が発現しない場合がある。未延伸ポリエステル系短繊維の融点は、より好ましくは225℃以上250℃以下である。
【0051】
未延伸ポリエステル系短繊維の融点は、示差走査熱量測定装置にて窒素雰囲気で昇温速度10℃/min、25℃から300℃まで昇温した時のピーク温度である。
【0052】
なお、本発明の実施例において、ポリエステル系短繊維の繊維径は、不織布製造前の繊維径を記載している。ポリエステル系短繊維の繊維径は、顕微鏡で3000倍の湿式不織布又は電磁波シールド材断面の拡大写真を撮り、ポリエステル系短繊維の断面積を測定し、繊維の断面形状が真円として算出した直径として測定することができ、その場合、断面積が略同一である10本以上の繊維の算術平均値を求めることが好ましい。
【0053】
ポリエステル系短繊維の繊維長は、好ましくは1~20mmであり、より好ましくは1~10mmであり、さらに好ましくは2~8mmである。ポリエステル系短繊維の繊維長が1mm未満である場合、湿式不織布として必要な強度が発現し難くなる場合がある。ポリエステル系短繊維の繊維長が20mm超の場合、均一性を損なう場合がある。
【0054】
本発明において、ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。ポリエステル系短繊維は、電磁波シールドの厚さを薄くするために繊維径を小さくできること、抄紙のしやすさ、めっき処理における湿式でのアルカリ処理時の寸法安定性から好ましい。ポリエステル系短繊維は、単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0055】
―湿式不織布―
繊維をシート状に形成せしめる方法としては、スパンボンド法、メルトブロー法、静電紡糸法、湿式法等の各種製造方法が挙げられるが、本発明の電磁波シールド材用不織布は湿式法(抄紙法)によってシート状に形成された湿式不織布であり、強度に優れ、均一性の高い不織布である。また、繊維間を接合する方法としては、ケミカルボンド法、熱融着法等の各種方法が挙げられる。これらの中でも、耐久性や強度に優れ、不織布表面が平滑であることから、熱融着法が好ましい。
【0056】
湿式法における熱融着法としては、抄紙法で得られたシートを、多筒式ドライヤー、ヤンキードライヤー、エアースルードライヤー等の抄紙後に使用される乾燥機で熱乾燥する際に熱融着する方法を用いることができる。また、金属製熱ロール/金属製熱ロール、金属製熱ロール/弾性ロール、金属製熱ロール/コットンロールなどのロール組み合わせを有する熱カレンダー装置による熱カレンダー処理によって熱融着する方法も用いることができる。熱乾燥又は熱カレンダー処理により、バインダー成分が熱溶融し、熱融着が生じる。
【0057】
また、熱カレンダーの条件は以下に例示することができるが、これらに限定されるものではない。熱カレンダー処理における熱ロールの温度は、200℃以上215℃以下が好ましい。熱ロールの温度が200℃未満の場合、繊維同士が接着せずに強度が発現しないという問題が発生する場合がある。また、逆に、熱ロールの温度が215℃超である場合、熱ロールに湿式不織布が貼り付いてしまい、シートにならないという問題が発生する場合がある。熱ロールの温度は、より好ましくは203℃以上210℃以下であり、さらに好ましくは205℃以上である。なお、本発明の電磁波シールド材用不織布<3>において、電磁波シールド材用不織布の剥離強度を高めるためには、延伸ポリエステル系短繊維と融点が220℃以上250℃以下の未延伸ポリエステル系短繊維を含有する湿式不織布を、温度が200℃以上215℃以下である熱ロールを用いて熱カレンダー処理することが好ましい。より好ましい熱ロールの温度は、203℃以上210℃以下である。
【0058】
強度を発現するために、熱カレンダー処理における圧力(線圧)は、好ましくは50~250kN/mであり、さらに好ましくは80~150kN/mである。圧力が50kN/m未満である場合、表面の平滑性を損なう可能性があり、また、速度を低下させないと、厚さが薄くならない可能性がある。圧力が250kN/m超の場合、シートが圧力に耐えられずに破断する可能性がある。熱カレンダーの処理速度は1~300m/minが好ましい。処理速度が1m/min以上であることで、作業効率が良好となる。処理速度が300m/min以下とすることで、湿式不織布に熱を伝導させ、熱融着の実効を得やすくなる。熱カレンダーのニップ回数は湿式不織布に熱を伝導することができれば特に限定するものではないが、金属製熱ロール/弾性ロールの組み合わせでは、湿式不織布の表裏から熱を伝導させるために2回以上ニップしても良い。
【0059】
―電磁波シールド材―
本発明の電磁波シールド材は、本発明の電磁波シールド材用不織布に金属皮膜処理が施されていることを特徴とする。すなわち、本発明の電磁波シールド材は、本発明の電磁波シールド材用不織布及び金属皮膜を含むことを特徴とする。
【0060】
本発明において、金属皮膜処理としては、無電解金属めっき処理、電気めっき処理、金属蒸着処理、スパッタリング処理などが挙げられる。これらの処理の中から選択される1以上の処理を施すことができる。中でも、薄くでき、表面抵抗値が低くなりやすく、金属皮膜が剥がれ難くなることから、スパッタリング処理してから電気めっき処理を行うことが好ましい。前記金属皮膜は1層でもよいし、2層以上の多層であってもよい。
【0061】
金属皮膜処理に用いられる金属の種類としては、金、銀、銅、亜鉛、アルミニウム、ニッケル、スズ、又はこれらの合金などが挙げられる。中でも、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル及びスズからなる群より選択される1種以上の金属が好ましく、導電性と製造コストとを考慮して、銅、ニッケルがより好ましい。
【0062】
本発明では、金属皮膜処理が、スパッタリングによってニッケル被覆を形成させる処理、電気めっきによって銅被覆を形成させる処理及び電気めっきによってニッケル被覆を形成させる処理をこの順に含むことがより好ましい。まず、湿式不織布にスパッタリング処理で金属皮膜を形成する。スパッタリング処理における金属は、ニッケルが好ましい。スパッタリング処理後、電気めっきで金属皮膜を積層させる。電気めっきの金属は、銅が好ましい。さらに、防錆のため、ニッケル等の防錆性の良好な金属をその外層に積層してもよい。その積層方法は電気めっきによる方法が好ましい。
【0063】
本発明の電磁波シールド材の厚さは、15μm以下であることが好ましく、13μm以下であることがより好ましく、12μm以下であることがさらに好ましい。電磁波シールド材の厚さが15μmよりも大きいと、電子機器、通信機器、電化製品などに使えない場合がある。また、電磁波シールド材の厚さは、7μm以上であることが好ましい。なお、厚さは、JIS P8118:2014に記載されている方法で測定した。
【0064】
また、本発明の電磁波シールド材の表面抵抗値が0.03Ω/□以下であることが好ましく、0.01Ω/□以下であることがより好ましい。また、40MHz~18GHzでの電磁波シールド性が50dB以上であることが好ましい。さらに、40MHz~10GHzでの電磁波シールド性が60dB以上であることが好ましい。さらに、40MHz~1GHzでの電磁波シールド性が70dB以上であることが好ましい。
【実施例0065】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例1~10は参考例であり、実施例において、%及び部は、断りの無い限り、全て質量基準である。
【0066】
≪本発明の電磁波シールド材用不織布<1>に関する実施例≫
【0067】
[実施例1]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維30質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維40質量部とをパルパーにより水中に分散し、濃度1質量%の均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを、通気度275cm3/cm2/sec、組織[上網:平織、下網:畝織]の抄造ワイヤーを設置した傾斜型抄紙機にて、湿式法で抄き上げ、135℃のシリンダードライヤーによって、未延伸PET系短繊維を熱融着させて強度を発現させ、目付10g/m2の湿式不織布とした。さらに、この湿式不織布を、誘電発熱ジャケットロール(金属製熱ロール)及び弾性ロールからなる1ニップ式熱カレンダー装置を使用して、熱ロール温度200℃、線圧100kN/m、処理速度30m/分の条件で熱カレンダー処理し、厚さ15μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0068】
[実施例2]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維10質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維50質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ17μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0069】
[実施例3]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維50質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維10質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ16μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0070】
[実施例4]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維45質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維45質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維10質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ16μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0071】
[実施例5]
繊度0.1dtex(繊維径3.0μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ14μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0072】
[実施例6]
繊度0.1dtex(繊維径3.0μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維10質量部と、繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維30質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ14μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0073】
[実施例7]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度1.7dtex(繊維径12.0μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維10質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維30質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ16μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0074】
[実施例8]
繊度0.06dtex(繊維径2.4μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維10質量部と、繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維30質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ14μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0075】
[実施例9]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維30質量部と、繊度1.2dtex(繊維径10.5μm)、繊維長5mmの未延伸PET系短繊維10質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ16μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0076】
[実施例10]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維15質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維15質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維70質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ14μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0077】
[比較例1]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度1.2dtex(繊維径10.5μm)、繊維長5mmの未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ17μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0078】
[比較例2]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維60質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ15μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0079】
[比較例3]
繊度1.7dtex(繊維径12.0μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度3.3dtex(繊維径17.5μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ21μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0080】
[比較例4]
繊度1.7dtex(繊維径12.0μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維60質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ18μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0081】
[比較例5]
繊度0.1dtex(繊維径3.0μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維60質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ15μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0082】
実施例及び比較例で作製した電磁波シールド材用不織布に対して無電解めっき法によってニッケル皮膜で覆い、次に、電気めっき法によって銅皮膜とニッケル皮膜を順に積層して、電磁波シールド材を作製した。
【0083】
<評価>
[搬送性]
電磁波シールド材用不織布を一定のテンションで搬送し、その時の皺の発生状況を下記基準で評価した。
【0084】
「○」皺が入らずに、搬送性が非常に良い。
「△」電磁波シールド材用不織布の一部に皺が入るが、搬送性に問題は無い。
「×」加工ができない程に、電磁波シールド材用不織布の全体に皺が入り、搬送性が劣る。
【0085】
[電磁波シールド性(電界)]
同軸管法による電磁波シールド性(電界)に基づき測定した。周波数40MHz~3GHzの範囲では同軸管法39Dによって測定し、周波数500MHz~18GHzの範囲では、同軸管法GPC7によって測定した。周波数500MHz~3GHzは、同軸管法39Dと同軸管法7の両方で測定するが、低い数値を採用した。
【0086】
電磁波シールド性に記載の数値が高い程、電磁波シールド性が優れていることを示す。
【0087】
【0088】
実施例1~10の電磁波シールド材用不織布は、繊維径が3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維から選択される、繊維径が異なる2種以上の延伸ポリエステル系短繊維と、繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維とを必須成分として含有する湿式不織布であることから、搬送性に優れかつ優れた電磁波シールド性がある。実施例4の電磁波シールド材用不織布は、少し強度が低下したが、搬送性に問題は無く、電磁波シールド性も優れていた。
【0089】
これに対し、繊維径が3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維から選択される、繊維径が異なる2種以上の延伸ポリエステル系短繊維と、繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維とを必須成分として含有していない比較例1、2、3及び4の電磁波シールド材用不織布は、電磁波シールド性に劣るものであった。すなわち、未延伸ポリエステル系短繊維の繊維径が5μm超である比較例1の電磁波シールド材用不織布、繊維径が12μm以上の延伸ポリエステル系短繊維から選択される、繊維径が異なる2種の延伸ポリエステル系短繊維を含有している比較例3の電磁波シールド材用不織布、延伸ポリエステル系短繊維の繊維径が12μmである比較例4の電磁波シールド材用不織布、及び、繊維径が3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維を含有しているものの繊維径が同一の1種の延伸ポリエステル系短繊維のみ(繊維径5.3μm)を含有している比較例2の電磁波シールド材用不織布は、多重反射損失が低下したと考えられる。
【0090】
また、繊維径が3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維を含有しているものの繊維径が同一の1種の延伸ポリエステル系短繊維のみ(繊維径3.0μm)を含有している比較例5の電磁波シールド材用不織布は、ウェブの搬送時に皺が入り、搬送性に劣る。小さい繊維径の延伸ポリエステル系短繊維のみを含むことによってウェブがしなやかになり、伸び易くなり、皺が入りやすくなったと考えられる。
【0091】
≪本発明の電磁波シールド材用不織布<2>に関する実施例≫
【0092】
<評価>
(1)表面抵抗値
MIL DTL 83528Cに基づいて測定した。
【0093】
(2)電磁波シールド性(電界)
同軸管法による電磁波シールド性(電界)に基づき測定した。周波数40MHz~3GHzの範囲では同軸管法39Dによって測定し、周波数500MHz~18GHzの範囲では、同軸管法GPC7によって測定した。周波数500MHz~3GHzは、同軸管法39Dと同軸管法GPC7の両方で測定するが、低い数値を採用した。
【0094】
(3)ピール評価
幅25mm×長さ150mmの電磁波シールド材試料に、粘着テープ(Nitto(登録商標)31Bテープ、日東電工株式会社製)を貼り付け、2kgのロールで300mm/分のスピードで10回ローリングする。その後、テープと試料を180度の角度にし、1000mm/分のスピードで剥がす。以下の基準によって評価した。
【0095】
<基準>
○:3回測定し、試料の破断及びテープへの金属粉の付着が無かった。
△:3回測定し、試料の破断及びテープへの金属粉の付着が1~2回発生した。
×:3回測定し、試料の破断及びテープへの金属粉の付着が3回発生した。
【0096】
[実施例11]
繊度0.06dtex(繊維径2.4μm)、繊維長3mmの延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維20質量部と、繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維40質量部と繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの単一成分型バインダー用未延伸PET系短繊維40質量部とをパルパーにより水中に分散し、濃度1質量%の均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを、通気度275cm3/cm2/sec、組織[上網:平織、下網:畝織]の抄造ワイヤーを設置した傾斜型抄紙機にて、湿式法で抄き上げ、135℃のシリンダードライヤーによって、バインダー用未延伸PET系短繊維を熱融着させて強度を発現させ、湿式不織布とした。さらに、この湿式不織布を、誘電発熱ジャケットロール(金属製熱ロール)及び弾性ロールからなる1ニップ式熱カレンダー装置を使用して、熱ロール温度200℃、線圧100kN/m、処理速度100m/分の条件で熱カレンダー処理し、目付6.5g/m2、密度0.50g/cm3の電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0097】
次いで、前記電磁波シールド材用不織布を、無電解めっき処理によりニッケル皮膜で覆い、次に、電気めっき処理によって、銅皮膜とニッケル皮膜を順に積層して、金属皮膜処理を施し、厚さ17.5μmの電磁波シールド材を得た。
【0098】
[実施例12]
繊維配合を、繊度0.06dtex(繊維径2.4μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維40質量部と、繊度0.3dtex(繊維径3.0μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維20質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの単一成分型バインダー用未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は、実施例11と同じようにして、湿式不織布を得た。この湿式不織布を、処理速度50m/分の条件とした以外は、実施例11と同じように熱カレンダー処理し、目付6.5g/m2、密度0.63g/cm3の電磁波シールド材用不織布を作製した。次いで、実施例11と同じように金属皮膜処理を施して、厚さ16.0μmの電磁波シールド材を得た。
【0099】
[実施例13]
繊維配合を、繊度0.06dtex(繊維径2.4μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維60質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの単一成分型バインダー用未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は、実施例11と同じようにして、湿式不織布を得た。この湿式不織布を、線圧125kN/m、処理速度40m/分の条件とした以外は、実施例11と同じように熱カレンダー処理し、目付6.5g/m2、密度0.80g/cm3の電磁波シールド材用不織布を作製した。次いで、実施例11と同じように金属皮膜処理を施して、厚さ15.5μmの電磁波シールド材を得た。
【0100】
[実施例14]
目付5.0g/m2とした以外は、実施例11と同じようにして、湿式不織布を得た。この湿式不織布を、実施例13と同じように熱カレンダー処理し、密度0.80g/cm3の電磁波シールド材用不織布を作製した。次いで、前記電磁波シールド材用不織布を、スパッタリング処理によりニッケル皮膜で覆い、電気めっき処理によって銅皮膜とニッケル皮膜を順に積層して、金属皮膜処理を施し、厚さ8.5μmの電磁波シールド材を得た。
【0101】
[実施例15]
目付5.0g/m2とした以外は、実施例12と同じようにして、湿式不織布を得た。この湿式不織布を、実施例11と同じように熱カレンダー処理し、密度0.50g/cm3の電磁波シールド材用不織布を作製した。次いで、前記電磁波シールド材用不織布を実施例14と同じように金属皮膜処理を施して、厚さ12.0μmの電磁波シールド材を得た。
【0102】
[実施例16]
目付5.0g/m2とした以外は、実施例13と同じようにして湿式不織布を得た。この湿式不織布を、実施例12と同じように熱カレンダー処理し、密度0.63g/cm3の電磁波シールド材用不織布を作製した。次いで、実施例14と同じように金属皮膜処理を施して、厚さ10.0μmの電磁波シールド材を得た。
【0103】
[比較例11]
繊維配合を、繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維60質量部と、繊度1.2dtex(繊維径10.7μm)、繊維長5mmの単一成分型バインダー用未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例11と同じようにして、目付10.0g/m2の湿式不織布を得た。この湿式不織布を、線圧135kN/m、処理速度40m/分の条件とした以外は、実施例11と同じように熱カレンダー処理し、密度0.85g/cm3の電磁波シールド材用不織布を作製した。次いで、実施例14と同じように金属皮膜処理を施して、厚さ16.0μmの電磁波シールド材を得た。
【0104】
[比較例12]
線圧100kN/m、処理速度50m/分の条件とした以外は、比較例11と同じようにして、目付10.0g/m2、密度0.63g/cm3の電磁波シールド材用不織布を作製した。次いで、比較例11と同じように金属皮膜処理を施して、厚さ20.0μmの電磁波シールド材を得た。
【0105】
[比較例13]
線圧90kN/m、処理速度100m/分の条件とした以外は、比較例11と同じようにして、目付10.0g/m2、密度0.45g/cm3の電磁波シールド材用不織布を作製した。次いで、比較例11と同じように金属皮膜処理を施して、厚さ26.0μmの電磁波シールド材を得た。
【0106】
[比較例14]
比較例11と同じようにして、目付10.0g/m2、密度0.85g/cm3の電磁波シールド材用不織布を作製した。次いで、実施例11と同じように金属皮膜処理を施して、厚さ16.0μmの電磁波シールド材を得た。
【0107】
[比較例15]
比較例12と同じようにして、目付10.0g/m2、密度0.63g/cm3の電磁波シールド材用不織布を作製した。次いで、比較例14と同じように金属皮膜処理を施して、厚さ20.0μmの電磁波シールド材を得た。
【0108】
[比較例16]
比較例13と同じようにして、目付10.0g/m2、密度0.45g/cm3の電磁波シールド材用不織布を作製した。次いで、比較例14と同じように金属皮膜処理を施して、厚さ26.0μmの電磁波シールド材を得た。
【0109】
【0110】
繊維径3μm未満の延伸ポリエステル系短繊維及び繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維を必須成分として含有し、目付が7g/m2以下であり、密度が0.5~0.8g/cm3である湿式不織布である電磁波シールド材用不織布に、金属皮膜処理を施してなる電磁波シールド材である実施例11~16は、電磁波シールド性に優れ、金属皮膜が剥がれ難いという効果が達成できた。また、金属皮膜処理が、スパッタリングによってニッケル被覆を形成させる処理、電気めっきによって銅被覆を形成させる処理及び電気めっきによってニッケル被覆を形成させる処理をこの順に含み、厚さが15μm以下であり、表面抵抗値が0.03Ω/□以下である実施例14~16の電磁波シールド材の方が、実施例11~13の電磁波シールド材と比べて、電磁波シールド性により優れ、金属皮膜がより剥がれ難いことが分かる。
【0111】
比較例11~16は、繊維径が3μm以上の延伸PET系短繊維と繊維径が5μm超の未延伸PET系短繊維とを含有し、目付が7g/m2超である湿式不織布である電磁波シールド材用不織布に金属皮膜処理を施してなる電磁波シールド材である。金属皮膜処理が、スパッタリングによってニッケル被覆を形成させる処理、電気めっきによって銅被覆を形成させる処理及び電気めっきによってニッケル被覆を形成させる処理をこの順に含んでいる比較例11及び13では、電磁波シールド性及びピール評価の結果が悪かった。比較例12の電磁波シールド材は、電磁波シールド性及びピール評価が良かったが、電磁波シールド材の厚さは20.0μmであり、薄くすることができなかった。比較例14~16では、無電解めっき処理によりニッケル皮膜で覆い、次に、電気めっき処理によって、銅皮膜とニッケル皮膜を順に積層して、金属皮膜処理を施していて、ピール評価の結果は良かったが、電磁波シールド性は悪かった。
【0112】
≪本発明の電磁波シールド材用不織布<3>に関する実施例≫
【0113】
[実施例21]
繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維30質量部と、繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mm、融点246℃の単一成分型バインダー用未延伸PET系短繊維40質量部とをパルパーにより水中に分散し、濃度1質量%の均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを、通気度275cm3/cm2/sec、組織[上網:平織、下網:畝織]の抄造ワイヤーを設置した傾斜型抄紙機にて、湿式法で抄き上げ、135℃のシリンダードライヤーによって、バインダー用未延伸PET系短繊維を熱融着させて強度を発現させ、目付10g/m2の湿式不織布とした。さらに、この湿式不織布を、誘電発熱ジャケットロール(金属製熱ロール)及び弾性ロールからなる1ニップ式熱カレンダー装置を使用して、熱ロール温度202℃、線圧100kN/m、処理速度40m/分の条件で熱カレンダー処理し、厚さ15μm、剥離強度2.1N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0114】
[実施例22]
熱ロール温度を208℃とした以外は実施例21と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度3.1N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0115】
[実施例23]
熱ロール温度を205℃とした以外は実施例21と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度4.2N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0116】
[実施例24]
延伸ポリエステル系短繊維の配合を、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.1dtex(繊維径3.0μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部とした以外は実施例23と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度3.5N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0117】
[実施例25]
延伸ポリエステル系短繊維の配合を、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.06dtex(繊維径2.4μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部とした以外は実施例23と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度3.7N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0118】
[実施例26]
延伸ポリエステル系短繊維の配合を、繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.1dtex(繊維径3.0μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部とした以外は実施例23と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度3.4N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0119】
[実施例27]
延伸ポリエステル系短繊維の配合を、繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.06dtex(繊維径2.4μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部とした以外は実施例23と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度3.3N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0120】
[実施例28]
延伸ポリエステル系短繊維の配合を、繊度0.1dtex(繊維径3.0μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.06dtex(繊維径2.4μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部とした以外は実施例23と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度3.5N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0121】
[比較例21]
熱ロール温度を198℃とした以外は実施例21と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度1.8N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0122】
[比較例22]
熱ロール温度を195℃とした以外は実施例21と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度1.0N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0123】
[比較例23]
熱ロール温度を198℃とした以外は実施例24と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度1.5N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0124】
[比較例24]
熱ロール温度を198℃とした以外は実施例25と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度1.0N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0125】
[比較例25]
繊維の配合を、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.1dtex(繊維径3.0μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mm、融点246℃の単一成分型バインダー用未延伸PET系短繊維10質量部とした以外は実施例23と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度0.2N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0126】
[比較例26]
繊維の配合を、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維10質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mm、融点246℃の単一成分型バインダー用未延伸PET系短繊維90質量部とした以外は実施例23と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度1.8N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0127】
実施例及び比較例で作製した電磁波シールド材用不織布に対して、めっき前処理であるアルカリ処理を施し、無電解めっき法により、銅及びニッケルの金属めっき処理を施し、電磁波シールド材を作製した。
【0128】
<評価>
[剥離強度]
電磁波シールド材用不織布を25mm×200mmに断裁し、両面テープ(ニチバン製、商品名:NW-R25、ナイスタック(登録商標)低粘着タイプ)を台紙(三菱製紙製、商品名:Nパールカード(登録商標) FSC認証-MX(450.0g/m
2))の非光沢面に貼り付け、その上から電磁波シールド材用不織布を重ね、その上面に包装テープ(カモ井工業製、商品名:No.220W)を貼り付け、
図1のような形で剥離試験を実施し、剥離強度を測定した。剥離試験には、SHIMPO(日本電産シンポ)製、装置名:デジタルフォースゲージFGC-2Bを用い、治具間距離1.8cmとし、該距離の中央部分に電磁波シールド材用不織布があるようにし、速度100mm/minの条件で測定した。
【0129】
[耐繊維脱落性]
電磁波シールド材用不織布を採取し、25mm×200mmに断裁し、学振型摩擦堅牢度試験機を使い、500gfの錘を載せたビリケンモス(登録商標)布を使って、電磁波シールド材用不織布を5往復擦り、下記基準で評価した。
【0130】
「◎」ビリケンモス布に繊維が付着しない。
「○」ビリケンモス布に繊維がほとんど付着しない。
「△」ビリケンモス布に繊維が若干付着するが実用上問題が無い。
「×」ビリケンモス布に繊維が付着し、場合によっては基材が破断する。
【0131】
[欠点頻度]
めっき前処理であるアルカリ処理を施した電磁波シールド材用不織布に金属めっき処理を施した際における1000m当たりの欠点頻度を確認した。
【0132】
「◎」0個/1000m。
「○」1個/1000m。
「△」2個/1000m。
「×」3個以上/1000m。
【0133】
[電磁波シールド性(電界)]
同軸管法による電磁波シールド性(電界)に基づき測定した。周波数40MHz~3GHzの範囲では同軸管法39Dによって測定し、周波数500MHz~18GHzの範囲では、同軸管法GPC7によって測定した。周波数500MHz~3GHzは、同軸管法39Dと同軸管法7の両方で測定するが、低い数値を採用した。
【0134】
電磁波シールド性に記載の数値が高い程、電磁波シールド性が優れていることを示す。
【0135】
【0136】
実施例21~28の電磁波シールド材用不織布は、比較例21~26の電磁波シールド材用不織布と比べて、剥離強度が高いために、優れた耐繊維脱落性があり、欠点頻度も少ないために歩留まりも良好で優れた電磁波シールド性が発現した。
【0137】
実施例21~23を比較すると、熱ロール温度が205℃である実施例23において、剥離強度が最も高く、耐繊維脱落性が向上した。一方、比較例21~24では、熱ロール温度が200℃よりも低かったために、電磁波シールド材用不織布の剥離強度が低く、耐繊維脱落性が悪く、欠点頻度も非常に多かった。
【0138】
比較例25及び26は、未延伸ポリエステル系短繊維の含有率が電磁波シールド材用不織布を構成する繊維全体の20質量%未満又は80質量%超えであり、好ましい範囲から外れていたため、熱ロール温度が205℃と、好ましい範囲であったにもかかわらず、剥離強度が低く、耐繊維脱落性の悪い電磁波シールド材用不織布となった。
本発明の電磁波シールド材用不織布及び電磁波シールド材は、電子機器用、通信機器用、電化製品用などとして好適に使用される。これらの機器や製品には、携帯電話、スマートフォン、モバイルフォン、パーソナルコンピューター、モバイルなどの機器やこれらを収納するケース、テレビジョンや洗濯機などの電化製品が含まれる。特に、本発明の電磁波シールド材は、プラスチックハウジング、フレキシブルプリント基板、電線ケーブル、コネクターケーブル等に、接着、圧着、融着、巻きつけ等により固定することにより好適に使用される。