(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086886
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】マーキングペン
(51)【国際特許分類】
B43K 8/02 20060101AFI20240621BHJP
B43K 1/00 20060101ALI20240621BHJP
B43K 25/02 20060101ALI20240621BHJP
C09D 11/16 20140101ALI20240621BHJP
【FI】
B43K8/02 120
B43K1/00 110
B43K25/02
C09D11/16
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024064563
(22)【出願日】2024-04-12
(62)【分割の表示】P 2020019066の分割
【原出願日】2020-02-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 雄介
(72)【発明者】
【氏名】中島 徹
(72)【発明者】
【氏名】平山 暁子
(72)【発明者】
【氏名】高田 晃児
(57)【要約】
【課題】マーキングペンに軸筒先端の開口部の開閉機構のような特段の構造を設けずとも、落下衝突に際してインクの飛散及びペン芯の先端が開口部から飛び出すことを抑制する。
【解決手段】軸筒と、前記軸筒内に収容され該軸筒の先端に設けられた開口部から出没可能に形成された多孔質のペン芯と、前記軸筒内に収容されるとともに、前記ペン芯に供給される、水溶性有機溶剤を20質量%以上かつ60質量%以下含有する水性インク組成物が充填された中綿と、前記ペン芯の先端を前記開口部から出没させる操出機構と、を備えるとともに、前記水性インク組成物は、前記水溶性有機溶剤として、グリセリンを10質量%以上含有する、マーキングペン。
【選択図】
図1D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、
前記軸筒内に収容され該軸筒の先端に設けられた開口部から出没可能に形成された多孔質のペン芯と、
前記軸筒内に収容されるとともに、前記ペン芯に供給される、水溶性有機溶剤を20質量%以上かつ60質量%以下含有する水性インク組成物が充填された中綿と、
前記ペン芯の先端を前記開口部から出没させる操出機構と、
を備えるとともに、
前記水性インク組成物は、前記水溶性有機溶剤として、グリセリンを10質量%以上含有する、マーキングペン。
【請求項2】
前記水性インク組成物は尿素を1質量%以上かつ30質量%以下含有する、請求項1に記載のマーキングペン。
【請求項3】
前記ペン芯の先端は、該先端が前記軸筒内に没入している状態で前記開口部から1mm以上後方に位置している、請求項1又は2に記載のマーキングペン。
【請求項4】
前記ペン芯が、外皮で被覆された多孔体で形成されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載のマーキングペン。
【請求項5】
前記軸筒は、外方へ突出した突出構造を備えるとともに、
前記突出構造は、軸心を隔てた軸筒の反対側とは非対称の形状を呈する、請求項1から4までのいずれか1項に記載のマーキングペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出没式のマーキングペンに関する
【背景技術】
【0002】
軸筒内部に収容した中綿に水性のインクを充填させ、このインクを多孔質のペン芯に毛細管力をもって供給する筆記具、たとえば蛍光マーカー等のマーキングペンが種々提供されている。マーキングペンには、下記特許文献1及び特許文献2に開示されるような、操出機構を設けてペン芯の先端を軸筒先端の開口部から出没可能に形成したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-172343号公報
【特許文献2】特開2016-55576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
出没式のマーキングペンにはキャップがないため、ペン芯の先端が軸筒に没入した状態でも、開口部は開放した状態のままである。この状態でマーキングペンを先端を下向きに落下させると、中綿に充填されている水性のインクは粘度が低いため、落下の際の衝撃でペン芯に浸透しているインクが飛散して軸筒の内部を汚染しやすい。また、軸筒の先端が操出機構においてペン芯を軸筒の後方に付勢して没入状態を保つ作用(たとえば、押圧されたスプリングの復元力によってペン芯を軸筒の後方に付勢する作用)に抗して、ペン芯の先端が開口部方向へ飛び出し、接触した箇所をインクで汚染することがある。
【0005】
上記特許文献1及び特許文献2ではいずれも、軸筒先端の開口部近傍に開閉可能な部材を設け、ペン芯の先端が没入した状態では該部材が開口部を閉鎖するような機構が設けられているが、このような開閉機構を設けると、マーキングペンの部品点数が増えるのみならず、操り出しに際して開閉機構を開放させつつペン芯の先端を突出させるため、ペン芯の移動距離(いわゆるノックストローク)が長くなる。よって、このような特段の開閉機構を設けずに、落下衝突に際してインクの飛散及びペン芯の先端が開口部から飛び出すことを抑制することが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み、本願の第1の態様のマーキングペンは、軸筒と、前記軸筒内に収容され該軸筒の先端に設けられた開口部から出没可能に形成された多孔質のペン芯と、前記軸筒内に収容されるとともに、前記ペン芯に供給される、水溶性有機溶剤を20質量%以上かつ60質量%以下含有する水性インク組成物が充填された中綿と、前記ペン芯の先端を前記開口部から出没させる操出機構と、を備える。
【0007】
本態様においては、水溶性有機溶剤を水性の媒体に含有させることで、水性インク組成物と中綿との親和性を高めている。水性のインクと中綿との親和性が高まることで、中綿の水性インク組成物の保持力が高まり、この保持力は落下時の衝撃にも抵抗して水性インク組成物の飛散を防止する。
【0008】
本願の第2の態様のマーキングペンは、第1の態様の構成に加え、前記水性インク組成物は尿素を1質量%以上かつ30質量%以下含有する。これにより、ペン芯の先端に膜状物が形成され、落下時の衝撃によって開口部から飛び出したペン芯の先端が予期せずに衝突部位に接触することによって生じる、インクの付着による汚染を防止する。
【0009】
本願の第3の態様のマーキングペンは、第1又は第2の態様の構成に加え、前記ペン芯の先端は、該先端が前記軸筒内に没入している状態で前記開口部から1mm以上後方に位置している。これにより、落下時にもペン芯の先端が開口部から飛び出しにくくなる。
【0010】
本願の第4の態様のマーキングペンは、第1から第3までのいずれかの態様の構成に加え、前記ペン芯が、外皮で被覆された多孔体で形成されている。したがって、仮に落下時の衝撃でペン芯の先端が開口部から飛び出したとしても外皮が衝突部位に接触すれば水性インク組成物による汚染が生じにくい。
【0011】
本願の第5の態様のマーキングペンは、第1から第4までのいずれかの態様の構成に加え、前記軸筒は、外方へ突出した突出構造を備えるとともに、前記突出構造は、軸心を隔てた軸筒の反対側とは非対称の形状を呈する。ここでいう突出構造とは、たとえばクリップが挙げられる。このように、軸心を隔てた軸筒の反対側とは非対称の形状の突出構造を設けることで、落下時に軸筒の先端が衝突する確率が低減することで、ペン芯からの水性インク組成物の飛散及びペン芯の先端が開口部から飛び出す可能性が低減する。
【発明の効果】
【0012】
本願の態様は上記のように構成されているので、軸筒先端の開口部の開閉機構のような特段の構造を設けずとも、落下衝突に際してインクの飛散及びペン芯の先端が開口部から飛び出すことを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】本発明の実施形態のマーキングペンの正面図であり、ペン芯の先端が没入している状態を示す。
【
図3A】
図1Aの状態から、ペン芯の先端が突出している状態を正面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。以下の説明では、マーキングペン1の筆記先端43の位置する側を先端側とし、その反対側を後端側とする。また、先端側に向かう方向を前方とし、その反対方向を後方とする。さらに、異なる図面において同一の符号が付されている場合、図面ごとに符号が示す構成に言及していなくても、同一の符号は同一の構成を示す。
【0015】
図1A~
図1Dは、本発明の実施形態のマーキングペン1において、ペン芯40の先端である筆記先端43が没入している状態を示す。
図1Aの正面図及び
図1Bの側面図に示すように、マーキングペン1は、円筒形の軸筒10の先端側において外径が前方に向かって漸減する先端縮径部11と、軸筒10の後端に装着される尾端部14と、尾端部の側面から突出して前方へ延設されるクリップ15と、尾端部14から突出するノックボタン32とを備える。クリップ15は、軸筒10において外方へ突出した突出構造である。先端縮径部11の先端には開口部12(
図1D参照)が形成されている。突出構造としてのクリップ15が形成されていることで、マーキングペン1は、
図1Cの平面図に示すように、軸心2を隔てた軸筒10の反対側とは非対称の形状を呈する。
【0016】
図1AのI-I断面図である
図1Dに示すように、マーキングペン1の軸筒10の内部には、先端側にペン芯40が装着されている管状のインク収容管20が収納されている。インク収容管20の内部にはポリエステル繊維製の中綿21が収容されている。中綿21には、水性インク組成物が充填されている。インク収容管20の先端側は外径を減じたペン芯固定部22となっている。ペン芯固定部22には、棒状のペン芯40が貫通した円柱状のペン芯保持体25が挿入固定されている。ペン芯の後端は中綿21の先端を穿刺している。
【0017】
水性インク組成物は、水溶性有機溶剤を20質量%以上かつ60質量%以下、好ましくは25質量%以上45質量%以下含有する。この水溶性有機溶剤としては、分子構造中に疎水性基と親水性基とを有する有機溶剤であれば特に限定はされないが、分子中にヒドロキシ基(-OH)を2個以上、好ましくは2個又は3個有する有機化合物が望ましい。そのような有機化合物としては、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール及びエチレングリコールが例示される。このような水溶性有機溶剤を含有することで水性インク組成物の中綿21に対する親和性が向上する。なお、水溶性インク組成物における水溶性有機溶剤の含有量が20質量%未満では、水溶性インク組成物の中綿21に対する親和性の向上効果が十分には得られない。一方、水溶性インク組成物における水溶性有機溶剤の含有量が60質量%を上回っても、水溶性インク組成物の中綿21に対する親和性の向上効果には変化はないが、水性インク組成物の粘度が高くなることでインクの流出性が損なわれる場合がある。
【0018】
また、ペン芯の先端に膜状物を形成し、インクの付着による汚染を防止するため、さらに尿素を1質量%以上かつ30質量%以下含有させることが望ましい。また、水性インク組成物は、剪断速度1~383s-1(25℃)の初期粘度が、2~15mPa・secの範囲内で、表面張力(25℃)は30mN/m以上であることが望ましい。なお、水溶性インク組成物における尿素の含有量が1質量%未満では、ペン芯の先端に膜状物を形成し、インクの付着による汚染を防止するという効果が十分には得られない。一方、水溶性インク組成物における尿素が30質量%を上回っても、ペン芯の先端に膜状物を形成し、インクの付着による汚染を防止するという効果には変化はないが、水性インク組成物への尿素の溶解性が不十分となる場合がある。
【0019】
インク収容管20の後端側には略円筒形状の尾栓26が圧入固定され、中綿21の後端側はこの尾栓26により圧縮されている。この尾栓26の後端は、いわゆるカーンノック機構を構成する回転子31の先端に当接している。そして、回転子31の後端は外径が縮小されており、この部分にはノックボタン32が外挿され、前記したように尾端部14から後方へ突出している。回転子31とノックボタン32とによって操出機構30が形成されている。この操出機構30は後述するように、筆記先端43を開口部12から出没させる。一方、インク収容管20のペン芯固定部22の後端縁に位置する段差である後端支持段差13と、軸筒10の先端縮径部11の内周面に形成されている段差である先端支持段差23との間には、ペン芯固定部22に対し外挿されるスプリング24が介装されている。このスプリング24は、軸筒10の内部においてインク収容管20を常に後方へ付勢している。スプリング24のバネ荷重は1N以上とすることが望ましい。このスプリング24による後方への付勢によって、ペン芯40の筆記先端43は開口部12から
図1Dに示す距離d、具体的には1mm以上後方に位置している。
【0020】
ペン芯40は、
図2Aの正面図及び
図2Bの底面図に示すように、断面円形の棒状を呈している。ペン芯40の先端側は略半球状に形成された筆記先端43となっている。ペン芯40の後端側はテーパー状の穿刺後端44となっている。この穿刺後端44が、
図1Dに示すように中綿21を穿刺する部分である。ペン芯40は、
図2Cに示すように、ポリエステル繊維を固めて形成された多孔質の多孔体41を、ポリエチレン樹脂製の薄膜である外皮42で被覆した構造を有する。ペン芯40の筆記先端43及び穿刺後端44においてはそれぞれの形状に切削加工されることで、外皮42が剥離されて多孔体41が露出している。ペン芯40は中綿21に穿刺されていることで、中綿21に充填されている水性インク組成物が、多孔体41の毛細管力により、穿刺後端44から筆記先端43まで供給され、筆記が可能となる。
【0021】
ここで、軸筒10の後端側の内周面には図示しないカム溝が形成されている。そして、操出機構30としてのノックボタン32を
図3A~
図3Cに示すように前方へ押圧することで、回転子31の外周面に形成された図示しないカム突起が軸筒のカム溝に沿って摺動し、スプリング24を圧縮してインク収容管20が前方へ移動する。これによってペン芯40の筆記先端43が軸筒10の開口部12から突出する。このとき、回転子31はカム溝と係合してこの突出状態が維持される。この突出状態で、マーキングペン1による筆記が可能となる。
【0022】
図3A~
図3Cに示す筆記先端43の突出状態から、再びノックボタン32を押圧すると、回転子31とカム溝との係合が解除され、スプリング24の復元力によってインク収容管20は後方へ移動し、再び
図1A~
図1Dに示す筆記先端43の没入状態に復帰する。このように、操出機構30によって筆記先端43は開口部から出没可能となっている。
【0023】
本実施形態のマーキングペン1においては、尾端部14(クリップ15を含む)及び操出機構30を含めた軸筒10の質量は15g以下で、ペン芯40を含めたインク収容管20の質量は10g以下であることが望ましい。
【0024】
本実施形態のマーキングペン1は上記のように構成されているので、
図1A~
図1Dに示す筆記先端43の没入状態にあるマーキングペン1を先端を下向きにして落下させた場合、先端が机の上や床面のような水平面に衝突したとしても、筆記先端43がスプリング24のばね荷重に抗して衝突部位に接触したり、また、ペン芯40に浸透している水性インク組成物が衝突部位に飛散したりすることが防止される。また、突出構造としてのクリップ15が軸筒10に備わっていることによって軸筒が非対称の形状となることで、落下させたときに先端から水平面に落下する確率が低減される。
【実施例0025】
(1)水性インク組成物
各実施例及び比較例の水性インク組成物は以下の組成とした。なお、以下に記載する黒色顔料はMA100(三菱化学)、青色顔料はCHROMOFINE BLUE A-220JC(大日精化工業)、顔料分散剤はJoncryl 63J(BASF)、防腐剤はバイオデンS(大和化学工業)及びフッ素系界面活性剤はCapstone FS-10(デュポン)をそれぞれ使用した。
【0026】
(1-1)実施例1
黒色顔料:5.5質量%
顔料分散剤:4.0質量%
グリセリン(水溶性有機溶剤):10.0質量%
エチレングリコール(水溶性有機溶剤):10.0質量%
ジエチレングリコール(水溶性有機溶剤):10.0質量%
(水溶性有機溶剤合計:30.0質量%)
防腐剤:0.4質量%
尿素:10.0質量%
トリメチルグリシン:5.0質量%
トレハロース:2.0質量%
トリメチロールプロパン:1.0質量%
トリメチロールエタン:0.5質量%
イオン交換水:41.6質量%
上記組成により、実施例1の水性インク組成物の初期粘度は、6.4mPa・sec、表面張力は、56.0mN/mであった。
【0027】
(1-2)実施例2
青色顔料:4.5質量%
顔料分散剤:3.6質量%
グリセリン(水溶性有機溶剤):15.0質量%
ジエチレングリコール(水溶性有機溶剤):10.0質量%
(水溶性有機溶剤合計:25.0質量%)
防腐剤:0.4質量%
尿素:20.0質量%
トリメチルグリシン:3.0質量%
ペンタエリスリトール:2.0質量%
トリメチロールプロパン:2.0質量%
イオン交換水:39.5質量%
上記組成により、実施例2の水性インク組成物の初期粘度は5.8mPa・sec、表面張力は55.0mN/mであった。
【0028】
(1-3)実施例3
黒色顔料:5.5質量%
顔料分散剤:4.0質量%
グリセリン(水溶性有機溶剤):10.0質量%
エチレングリコール(水溶性有機溶剤):10.0質量%
ジエチレングリコール(水溶性有機溶剤):10.0質量%
(水溶性有機溶剤合計:30.0質量%)
防腐剤:0.4質量%
尿素:1.0質量%
トリメチルグリシン:5.0質量%
トレハロース:2.0質量%
トリメチロールプロパン:1.0質量%
トリメチロールエタン:0.5質量%
イオン交換水:50.6質量%
上記組成により、実施例3の水性インク組成物の初期粘度は5.9mPa・sec、表面張力は56.0mN/mであった。
【0029】
(1-4)実施例4
黒色顔料:5.5質量%
顔料分散剤:4.0質量%
グリセリン(水溶性有機溶剤):10.0質量%
ジエチレングリコール(水溶性有機溶剤):10.0質量%
(水溶性有機溶剤合計:20.0質量%)
防腐剤:0.4質量%
尿素:20.0質量%
トリメチルグリシン:3.0質量%
トレハロース:3.0質量%
トリメチロールプロパン:1.0質量%
トリメチロールエタン:1.0質量%
イオン交換水:42.1質量%
上記組成により、実施例4の水性インク組成物の初期粘度は5.3mPa・sec、表面張力は57.0mN/mであった。
【0030】
(1-5)比較例1
黒色顔料:5.5質量%
顔料分散剤:4.0質量%
エチレングリコール(水溶性有機溶剤):18.0質量%
(水溶性有機溶剤合計:18.0質量%)
防腐剤:0.4質量%
尿素:10.0質量%
トリメチルグリシン:5.0質量%
トレハロース:2.0質量%
トリメチロールプロパン:1.0質量%
トリメチロールエタン:0.5質量%
フッ素系界面活性剤:0.2質量%
イオン交換水:53.4質量%
上記組成により、比較例1の水性インク組成物の初期粘度は3.9mPa・sec、表面張力は29.5mN/mであった。
【0031】
(1-6)比較例2
青色顔料:4.5質量%
顔料分散剤:3.6質量%
グリセリン(水溶性有機溶剤):6.0質量%
エチレングリコール(水溶性有機溶剤):6.0質量%
ジエチレングリコール(水溶性有機溶剤):6.0質量%
(水溶性有機溶剤合計:18.0質量%)
防腐剤:0.4質量%
尿素:0.5質量%
トリメチルグリシン:1.0質量%
トレハロース:1.0質量%
トリメチロールプロパン:0.5質量%
トリメチロールエタン:0.5質量%
イオン交換水:70.0質量%
上記組成により、比較例2の水性インク組成物の初期粘度は2.5mPa・sec、表面張力は、58.2mN/mであった。
【0032】
(2)マーキングペン1
上記した各実施例及び比較例の水性インク組成物を、それぞれ前記実施形態のマーキングペン1の中綿21に1ml充填した。なお、尾端部14(クリップ15を含む)及び操出機構30を含めた軸筒10の質量は4.8gで、ペン芯40及び水性インク組成物が充填された中綿21を含めたインク収容管20の質量は3.0gで、マーキングペン1の総質量は7.8gであった。また、スプリング24のばね荷重は2.0Nであった。さらに、
図1A~
図1Dに示す筆記先端43の没入状態において、筆記先端43は開口部12から1.4mm後方に位置していた。
【0033】
(3)試験方法
(2)のマーキングペン1を、筆記先端43の没入状態で、先端を下向きにしてコンクリート水平面に30cm上方から自由落下させて、先端から衝突させた。
【0034】
(4)評価1:インク飛散
(3)でコンクリート水平面に衝突したマーキングペン1の軸筒10の内部において、飛散した水性インク組成物による汚れを観察した。評価基準は、評価が優れている順に以下のA~Cのとおりとした。
A:汚れは認められない。
B:僅かに汚れが認められる。
C:汚れが目立つ。
【0035】
(5)評価2:落下面の汚れ
(3)マーキングペン1が衝突したコンクリート水平面において、水性インク組成物による汚れを観察した。評価基準は、評価が優れている順に以下のA~Cのとおりとした。
A:汚れは認められないか、又はごく軽微な汚れが認められる。
B:若干の汚れが認められる。
C:汚れが目立つ。
【0036】
(6)試験結果
各実施例及び比較例の水性インク組成物について、(3)の試験結果は下記表1のとおりである。
【0037】
【0038】
上記表1に示すように、水性インク組成物の水溶性有機溶剤の含有量が20質量%を下回る比較例1及び比較例2では、評価1及び評価2ともに低い評価であった。特に、比較例1は表面張力が唯一30mN/mを下回る29.5mN/mであったことも低評価の一因と考えられる。一方、水性インク組成物の水溶性有機溶剤の含有量が20質量%以上かつ60質量%以下である各実施例はいずれも高い評価であった。
【0039】
以上の結果から、実施形態に記載したマーキングペン1の機構に加えて、水性インク組成物の水溶性有機溶剤の含有量を20質量%以上かつ60質量%以下とすることによって、インクの飛散及び落下面の汚れを防止することができると結論される。
【0040】
なお、水性インク組成物の水溶性有機溶剤の含有量が下限値である20質量%である実施例4のインク飛散において、やや劣る評価(B)が得られたことで、水性インク組成物の水溶性有機溶剤の含有量が20質量%以上であるという数値範囲の下限値の臨界的意義が推認される。なお、実施例3では尿素の含有量が実施例中最も少ない1.0質量%であったことが実施例1及び実施例2よりやや低評価であったことの一因と考えられる。