(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086890
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】接合体の製造方法及び接合体
(51)【国際特許分類】
B29C 65/52 20060101AFI20240621BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240621BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
B29C65/52
C09J7/38
C09J201/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024064704
(22)【出願日】2024-04-12
(62)【分割の表示】P 2019179324の分割
【原出願日】2019-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2018190115
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼嶋 淳
(72)【発明者】
【氏名】水原 銀次
(72)【発明者】
【氏名】森下 裕充
(57)【要約】
【課題】複数の部材が貼り合わされた接合体の製造方法において、貼合領域の形状の多様化に対応でき、環境負荷が少ない方法を提供する。
【解決手段】複数の部材を糸状粘着体により貼り合わせる、接合体の製造方法であって、前記複数の部材が貼り合わされる部分である貼合領域は、少なくとも一部において屈曲した形状を有し、前記糸状粘着体を前記貼合領域の形状にあわせて屈曲させて前記複数の部材を貼り合わせる、接合体の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部材を糸状粘着体により貼り合わせる、接合体の製造方法であって、
前記複数の部材が貼り合わされる部分である貼合領域は、少なくとも一部において屈曲した形状を有し、
前記糸状粘着体を前記貼合領域の形状にあわせて屈曲させて前記複数の部材を貼り合わせる、接合体の製造方法。
【請求項2】
前記糸状粘着体は、下記試験により測定される粘着力が5N/22cm以上である、請求項1に記載の接合体の製造方法。
(粘着力の測定方法)
まず、短辺50mm、長辺60mm、厚さ3mmの長方形のアクリル板である第1の部材と、中央部に長方形のスリット(短辺30mm、長辺40mm)を設けた短辺80mm、長辺110mm、厚さ10mmの長方形のポリカーボネート樹脂板である第2の部材を用意する。次に、前記糸状粘着体を、前記第1の部材の一方の面の周縁に沿って貼付し、前記第1の部材と前記第2の部材とを、前記第1の部材の中心と前記第2の部材の前記スリットの中心とが一致するようにして貼り合わせ、2kgで10秒間圧着して、接合体を得る。そして、前記第2の部材を固定し、前記スリット越しに前記第1の部材の中心に、前記第1の部材と前記第2の部材が離れる方向に荷重をかけ、前記第1の部材と前記第2の部材が分離するまでの間に観測された最大の荷重を測定し、この測定された最大の荷重を、粘着力とする。
【請求項3】
前記複数の部材は電子機器を構成する部材である、請求項1または2に記載の接合体の製造方法。
【請求項4】
複数の部材が糸状粘着体により貼り合わされた接合体であって、
前記複数の部材が貼り合わされる部分である貼合領域は、少なくとも一部において屈曲した形状を有し、
前記糸状粘着体は前記貼合領域の形状にあわせて屈曲して前記複数の部材を貼り合わせている、接合体。
【請求項5】
前記糸状粘着体は、下記試験により測定される粘着力が5N/22cm以上である、請求項4に記載の接合体。
(粘着力の測定方法)
まず、短辺50mm、長辺60mm、厚さ3mmの長方形のアクリル板である第1の部材と、中央部に長方形のスリット(短辺30mm、長辺40mm)を設けた短辺80mm、長辺110mm、厚さ10mmの長方形のポリカーボネート樹脂板である第2の部材を用意する。次に、前記糸状粘着体を、前記第1の部材の一方の面の周縁に沿って貼付し、前記第1の部材と前記第2の部材とを、前記第1の部材の中心と前記第2の部材の前記スリットの中心とが一致するようにして貼り合わせ、2kgで10秒間圧着して、接合体を得る。そして、前記第2の部材を固定し、前記スリット越しに前記第1の部材の中心に、前記第1の部材と前記第2の部材が離れる方向に荷重をかけ、前記第1の部材と前記第2の部材が分離するまでの間に観測された最大の荷重を測定し、この測定された最大の荷重を、粘着力とする。
【請求項6】
前記複数の部材は電子機器を構成する部材である、請求項4または5に記載の接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合体の製造方法及び接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の物品の貼り合わせの際に、液だれ防止や作業性の向上等の要請から、液状の粘着剤ではなく、賦形された粘着体(例えば両面粘着テープ)が用いられる場合がある。
【0003】
また、粘着体を用いた複数の物品の貼り合わせの際に、物品どうしが粘着体を介して貼り合わせられる部分(以下「貼合領域」ともいう)の形状には、貼り合わされる物品に応じて種々の形状が求められる。
例えばスマートフォン等の電子機器では、小型化の要請やデザイン上の要請から、電子機器を構成する物品の貼り合わせにおいて、貼合領域の細幅化が求められる場合がある。例えばスマートフォンのカバーガラスの固定においては、ベゼルレス化等のために、特に貼合領域を細幅化することが求められる。
また、貼り合わせられる物品の形状に応じて、貼合領域を屈曲した形状等の複雑な形状とすることが求められる場合がある。
【0004】
貼合領域の細幅化の要請に対しては、両面粘着テープを細く切断して用いることが考えられるが、この方法では細幅化に限界がある。また、両面粘着テープを細幅化すると表裏がねじれやすくなり、取り扱い性が悪化する恐れがある。さらに、両面粘着テープは屈曲した形状の貼付に適さないという問題もある。このような問題から、両面粘着テープを細く切断して用いる方法では貼合領域の形状の多様化の要請に十分にこたえられない。
【0005】
貼合領域の形状の多様化の要請に応える方法として、両面粘着フィルムを打ち抜き加工により所望の形状にカット(切断)する方法が挙げられる。
例えば、特許文献1においてはカット性に優れた粘着フィルム、すなわち、カットされた際に粘着剤が糸をひくことが抑制された粘着フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、両面粘着フィルムに打ち抜き加工を施す方法では、得られる粘着体に対して廃棄部分が多くなり、環境負荷が大きいという問題がある。近年では持続可能な社会の実現のために環境負荷の低減が強く要請されるが、両面粘着フィルムに打ち抜き加工を施す方法ではこの要請に応えることができない。
【0008】
本発明は上記にかんがみてなされたものであり、複数の部材が貼り合わされた接合体の製造方法において、貼合領域の形状の多様化に対応でき、環境負荷が少ない方法を提供することを目的とする。
また、本発明は当該方法により製造された接合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の接合体の製造方法は、複数の部材を糸状粘着体により貼り合わせる、接合体の製造方法であって、複数の部材が貼り合わされる部分である貼合領域は、少なくとも一部において屈曲した形状を有し、糸状粘着体を前記貼合領域の形状にあわせて屈曲させて前記複数の部材を貼り合わせる、接合体の製造方法である。
本発明の接合体の製造方法の一態様において、糸状粘着体は、明細書に記載の試験により測定される粘着力が5N/22cm以上であってもよい。
本発明の接合体の製造方法の一態様において、複数の部材は電子機器を構成する部材であってもよい。
また、上記課題を解決する本発明の接合体は、複数の部材が糸状粘着体により貼り合わされた接合体であって、前記複数の部材が貼り合わされる部分である貼合領域は、少なくとも一部において屈曲した形状を有し、前記糸状粘着体は前記貼合領域の形状にあわせて屈曲して前記複数の部材を貼り合わせている、接合体である。
本発明の接合体の一態様において、糸状粘着体は、明細書中に記載の試験により測定される粘着力が5N/22cm以上であってもよい。
本発明の接合体の一態様において、複数の部材は電子機器を構成する部材であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の接合体の製造方法は、貼合領域の形状の多様化に対応でき、環境負荷が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る接合体の分解斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の粘着性物品の粘着力の評価方法を説明するための斜視図である。
【
図4】
図4は、マルチフィラメント糸からなる芯材を備える粘着性物品を用いて被着体同士が貼り合わされた状態の概略図である。
【
図5】
図5は、マルチフィラメント糸からなる芯材を備える粘着性物品を用いて被着体同士が貼り合わされた状態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る接合体の分解斜視図を
図1に示す。
本発明の実施形態に係る接合体1の製造方法は、複数の部材(部材2A、2B)を糸状粘着体3により貼り合わせる、接合体1の製造方法であって、複数の部材が貼り合わされる部分である貼合領域4は、少なくとも一部において屈曲した形状を有し、糸状粘着体3を貼合領域4の形状にあわせて屈曲させて複数の部材を貼り合わせる、接合体1の製造方法である。
また、本発明の実施形態に係る接合体1は、複数の部材(部材2A、2B)が糸状粘着体3により貼り合わされた接合体1であって、複数の部材が貼り合わされる部分である貼合領域4は、少なくとも一部において屈曲した形状を有し、糸状粘着体3は貼合領域4の形状にあわせて屈曲して複数の部材を貼り合わせている、接合体1である。
以下、本発明の接合体の製造方法、及び接合体の実施形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際の製品のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
【0013】
[糸状粘着体]
まず、本実施形態の接合体の製造方法において使用される糸状粘着体について詳細に説明する。
糸状とは、長手方向の長さが幅方向の長さに対して十分に長く、長手方向に垂直な断面の形状(以下、「断面形状」ともいう)における短軸(断面形状の重心を通る軸のうち最短のもの)の長さに対する長軸(断面形状の重心を通る軸のうち最長のもの)の長さの割合(長軸/短軸)が、例えば200以下、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは10以下、よりさらに好ましくは5以下、特に好ましくは3以下である形状であり、また、糸のように多様な方向、角度に曲げられうる状態であることを意味する。
糸状粘着体はこのように多様な方向、角度に屈曲可能であるため、貼合領域の形状にあわせて屈曲させることが可能であり、したがって貼合領域の形状の多様化に対応できる。
また、糸状粘着体を用いると、両面粘着フィルムに打ち抜き加工を施した粘着体を用いた場合のように廃棄部分が生じることがないため、環境負荷も低減することができる。
【0014】
糸状粘着体の断面形状は典型的には円形だが、これに限定されず、円形の他にも、楕円形、多角形等、種々の形状をとりうる。また、本実施形態における糸状粘着体の長さや太さも特に限定されず、用途に応じて適宜調整すればよい。
【0015】
糸状粘着体は、芯材と、芯材の周面を被覆する粘着剤からなる粘着剤層とを備えてもよく、また、芯材を備えず粘着剤のみからなってもよい。強度や取り扱い性、粘着力の観点からは、糸状粘着体は芯材を備えることが好ましい。
【0016】
粘着剤のみからなる糸状粘着体は、例えば粘着剤をセパレーター上に線状に塗布し、必要に応じて加熱乾燥させることにより得ることができる。
また、芯材を備える糸状粘着体は、例えば芯材の表面に粘着剤組成物をディッピング、浸漬、塗布等により塗工し、必要に応じて加熱乾燥させることにより得ることができる。粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の慣用のコーターを用いて行うことができる。
【0017】
使用する粘着剤の種類は特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤などを使用することができる。中でも、粘着性の点から、ゴム系粘着剤やアクリル系粘着剤が好ましく、特にアクリル系粘着剤が好ましい。なお、粘着剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
アクリル系粘着剤は、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、これらに必要によりアクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸、無水マレイン酸、ビニルピロリドン、グリシジルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミドなどの改質用単量体を加えてなる単量体の重合体を主剤としたものである。
【0019】
ゴム系粘着剤は、天然ゴム、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ブチルゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴムなどのゴム系ポリマーを主剤としたものである。
【0020】
また、これら粘着剤にはロジン系、テルペン系、スチレン系、脂肪族石油系、芳香族石油系、キシレン系、フエノール系、クマロンインデン系、それらの水素添加物などの粘着付与樹脂や、架橋剤、粘度調整剤(増粘剤等)、レベリング剤、剥離調整剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤(顔料、染料等)、界面活性剤、帯電防止剤、防腐剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の各種の添加剤を適宜配合できる。
【0021】
なお、粘着剤としては、溶剤型の粘着剤と水分散型の粘着剤のいずれのタイプも使用することができる。ここで、高速塗工が可能であり、環境にやさしく、溶剤による芯材への影響(膨潤、溶解)が少ない面からは、水分散型の粘着剤が好ましい。
【0022】
芯材を備える糸状粘着体においては粘着力の観点からは芯材に多くの粘着剤が付着していることが好ましく、具体的には粘着剤の付着量(単位長さ当たりの粘着剤層の重量)は2mg/m以上が好ましく、5mg/m以上がより好ましく、8mg/m以上がさらに好ましい。一方粘着剤の付着量が過剰であると、製造工程において芯材に粘着剤を複数回塗布する必要があったり、塗布した粘着剤の乾燥に時間がかかったりするため、製造効率が低い。したがって粘着剤の付着量は200mg/m以下が好ましく、180mg/m以下がより好ましく、160mg/m以下がさらに好ましい。
【0023】
芯材を備える糸状粘着体における芯材は、糸状の部材であればその形態や材質等は特に限定されず、要求される強度、重量、硬さ等の性質に応じて適宜調整すればよい。
芯材の断面形状は典型的には円形だが、円形の他にも、楕円形、多角形等、種々の形状をとりうる。
芯材は単一のフィラメントからなるモノフィラメントであってもよく、複数本のフィラメントからなるマルチフィラメントであってもよく、また、スパンヤーン、捲縮加工や嵩高加工等を施した一般的にテクスチャードヤーン、バルキーヤーン、ストレッチヤーンと称される加工糸、中空糸、あるいはこれらを撚り合わせる等して組み合わせた糸等であってもよい。
芯材の太さは特に限定されず、隙間の幅に応じて糸状粘着体の太さが適切になるように、粘着剤層の厚みとともに適宜調整すればよい。
【0024】
芯材の材料は、要求される強度、重量、硬さ等の性質に応じて適宜選択すればよい。
芯材の材料としては例えば、レーヨン、キュプラ、アセテート、プロミックス、ナイロン、アラミド、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・プロピレン共重合体やエチレン・酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、ポリクラール、ポリ乳酸等の各種高分子材料;天然ゴムやポリウレタン等の合成ゴム等の各種ゴム;ガラス、炭素材料、金属等の無機材料;綿、ウール等の天然材料;発泡ポリウレタン、発泡ポリクロロプレンゴム等の発泡体等が使用できる。
【0025】
芯材には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤など)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料など)等の各種添加剤が配合されていてもよい。芯材の表面には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、下塗り剤の塗布等の、公知または慣用の表面処理が施されていてもよい。
【0026】
なお、芯材を備える糸状粘着体において芯材は必ずしもその周面の全体が粘着剤層により被覆されている必要はなく、本発明の効果を奏する限りにおいて、部分的に粘着剤層を備えない部分を有してもよい。また、芯材の端面は粘着剤層によって被覆されていてもいなくともよい。例えば、粘着体が製造過程や使用時に切断されるような場合には、芯材の端面は粘着剤層によって被覆されないことがありうる。
【0027】
従来粘着フィルムに打ち抜き加工を施して得られた粘着体により行われていた接合を、糸状粘着体による接合で代替するためには、糸状粘着体の粘着力が高いことが好ましい。
糸状粘着体の粘着力は、例えば以下に示す方法で評価できる。
(粘着力の評価方法)
まず、以下に示すような第1の部材及び第2の部材を用意する。
・第1の部材:短辺50mm、長辺60mm、厚さ3mmの長方形のアクリル板
・第2の部材:中央部に長方形のスリット(短辺30mm、長辺40mm)を設けた短辺80mm、長辺110mm、厚さ10mmの長方形のポリカーボネート樹脂板
次に、糸状粘着体を、第1の部材の一方の面の周縁に沿って貼付し、第1の部材と第2の部材とを、第1の部材の中心と第2の部材のスリットの中心とが一致するようにして貼り合わせ、2kgで10秒間圧着して接合体を得る。接合体の斜視図を
図2に、
図2のA-A線における断面図を
図3に示す。
そして、第2の部材を固定し、
図3に示すようにスリット越しに第1の部材の中心に、第1の部材と第2の部材が離れる方向に荷重をかけ、第1の部材と第2の部材が分離するまでの間に観測された最大の荷重を測定する。この測定された最大の荷重を、粘着力とする。
【0028】
上記方法により測定される糸状粘着体の粘着力は、5N/22cm以上が好ましく、10N/22cm以上がより好ましく、15N/22cm以上がさらに好ましく、20N/22cm以上がよりさらに好ましく、25N/22cm以上が特に好ましい。
【0029】
高い粘着力を達成するためには、糸状粘着体はマルチフィラメント糸を芯材として備えることが特に好ましい。
糸状粘着体により複数の物品を貼り合せた際の粘着力(物品どうしのはがれにくさ)は、糸状粘着体と物品との接触面積に大きく左右される。
図4に、マルチフィラメント糸からなる芯材を備える糸状粘着体13を用いて物品12A及び物品12Bが貼り合わされた接合体11の概略図を示す。マルチフィラメント糸を芯材として備える糸状粘着体13を用いて物品を貼り合せると、芯材を構成する各フィラメントがばらけるように広がり、芯材がつぶれるように変形して広い面積で物品12A及び物品12Bと糸状粘着体とが接触することができるため、高い粘着力が得られる。
上記のような理由から、マルチフィラメント糸を芯材として備える糸状粘着体13は、芯材の太さ(繊度)が同程度であり、モノフィラメントからなる芯材を備える粘着性物品と比較して、高い粘着力を発揮する。
【0030】
マルチフィラメント糸を芯材として用いる場合の、マルチフィラメントを構成するフィラメントの本数は、粘着力の観点から、4本以上が好ましく、10本以上がより好ましく、15本以上がさらに好ましく、20本以上が特に好ましい。
一方、芯材の太さ(繊度)を同程度に保った場合、芯材を構成するフィラメントの本数が多くなると、各フィラメントは細くなる(繊度が小さくなる)。各フィラメントが細くなりすぎると、芯材の強度の低下やハンドリング性の低下を招く恐れがある為、芯材を構成するフィラメントの本数は、300本以下であることが好ましい。
【0031】
また、マルチフィラメント糸は、撚りがかけられている撚糸であってもよく、かけられていない無撚糸であってもよい。すなわち、マルチフィラメント糸は、撚り数が0回/m超であっても、0回/mであってもよい。また、マルチフィラメント糸は、撚糸または無撚糸であるマルチフィラメントを複数本あわせて撚りをかけまたは撚りをかけずにまとめたものであってもよい。
【0032】
マルチフィラメント糸を芯材として備える糸状粘着体を用いて貼り合わされた物品同士が引きはがされる方向に力が加えられた場合、
図5に示すように各フィラメントが広がって芯材が太さ方向(長手方向と垂直な方向)において、加えられた力と平行な方向に伸びるように変形する。しかし、この際に芯材の形状がいびつになりすぎると、いびつになった部分において応力が集中し、当該部分が剥離の起点となりやすくなる。したがって、より一層優れた粘着力を奏するためには、芯材を構成する各フィラメントはある程度のまとまりをもっていることが好ましい。上記のとおり、芯材は、無撚糸であっても撚糸であってもよいが、芯材を構成する各フィラメントにある程度のまとまりをもたせるためには、芯材には撚りがかけられていることが好ましい。具体的には芯材の撚り数は30回/m以上であることが好ましく、60回/m以上であることがより好ましく、90回/m以上であることがさらに好ましい。
一方、複数の物品を貼り合せた際に芯材が十分に変形するため、また、単位長さあたりの粘着剤の付着量を多くするためには、芯材の撚りは強すぎないことが好ましい。したがって、芯材の撚り数は3000回/m以下であることが好ましく、1500回/m以下であることがより好ましく、800回/m以下であることがさらに好ましく、250回/m以下であることが特に好ましい。
【0033】
また、芯材に撚りがかけられている場合は、上記と同様の観点より以下の式(A)で表される撚り係数も制御することが好ましい。撚り係数は芯材の太さによらず撚りによる影響(芯材のまとまりや、変形しやすさ、粘着剤の付着量などへの影響)を議論するための指標である。すなわち、撚り数が芯材に与える影響は芯材の太さによって異なるが、撚り係数が同じであれば、芯材の太さによらず撚りによる芯材への影響が同程度であることを示す。
芯材の撚り係数は、0以上が好ましく、0超がより好ましく、また、200以下が好ましく、100以下がより好ましく、50未満がさらに好ましい。
【0034】
【0035】
なお、式(A)においてKは撚り係数、Tは撚り数(単位は[回/m])、Dは繊度(単位は[dtex])である。
【0036】
粘着力の観点からは、芯材を形成するフィラメントは、化学繊維であることが好ましく、特にポリエステルまたはナイロンが好ましい。化学繊維は毛羽立ちが生じにくく、いびつな形状になりにくい。したがって、芯材を形成するフィラメントが化学繊維であると、剥離の起点が生じにくく、優れた粘着力を発揮する。
【0037】
また、芯材を形成するフィラメントは、中空糸であってもよい。一般的に中空糸は太さ方向の柔軟性に富み、変形しやすいため、中空糸を用いて得られる芯材も、太さ方向の柔軟性に富み、変形しやすい。
したがって、芯材を形成するフィラメントに中空糸を用いた場合、先述の芯材のつぶれるような変形がより一層生じやすくなる。また、芯材の柔軟性が高いと、粘着性物品を用いて貼り合わされた被着体同士が引きはがされる方向に力が加わった際に芯材の変形による応力の分散が生じやすくなるため、粘着性物品と被着体の界面(粘着面)に応力がかかりにくく、剥離が生じにくい。上記のような点から、芯材を形成するフィラメントに中空糸を用いると、粘着力に特に優れる粘着性物品を得ることができる。
なお、中空糸は一般的には脆いため、芯材を形成するフィラメントに中空糸を用いる場合は撚りをかけずに用いることが好ましい。
【0038】
環境負荷を低減するためには、糸状粘着体はバイオマス由来成分を含むことが好ましい。
本明細書において、バイオマス由来成分とは、再生可能な有機資源由来の成分をいう。典型的には、太陽光と水と二酸化炭素とが存在すれば持続的な再生産が可能な生物資源に由来する成分のことをいう。したがって、採掘後の使用によって枯渇する化石資源に由来する成分(化石資源系材料)は除かれる。例えば、植物由来の成分はバイオマス由来成分である。
また、非バイオマス由来成分とはバイオマス由来成分以外の成分を言う。
【0039】
糸状粘着体のバイオマス由来成分の含有率の指標として、バイオマス度が挙げられる。
糸状粘着体のバイオマス度とは、糸状粘着体の総重量に対する、糸状粘着体に含まれるバイオマス由来成分の重量の割合であり、以下の式で算出される。また、芯材、及び粘着剤のバイオマス度についても同様であり、それぞれ以下の式で算出される。
糸状粘着体のバイオマス度[%]=100×(糸状粘着体に含まれるバイオマス由来成分の重量[g])/(糸状粘着体の総重量[g])
芯材のバイオマス度[%]=100×(芯材に含まれるバイオマス由来成分の重量[g])/(芯材の総重量[g])
粘着剤のバイオマス度[%]=100×(粘着剤に含まれるバイオマス由来成分の重量[g])/(粘着剤の総重量[g])
バイオマス度は、ASTM D6866-18に準拠して測定することができる。
【0040】
糸状粘着体のバイオマス度は、環境負荷の低減の観点からは好ましくは10%以上、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは35%以上、さらに好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは100%である。糸状粘着体のバイオマス度は、芯材及び/又は粘着剤層のバイオマス度を調整することにより調整できる。
一方、糸状粘着体のバイオマス度を向上させるために芯材や粘着剤層のバイオマス度を向上させすぎると、強度や柔軟性の低下、粘着力の低下、製造コストの上昇等といった問題を招く恐れがある。したがって、糸状粘着体のバイオマス度は、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、さらに好ましくは80%以下である。
【0041】
糸状粘着体のバイオマス度を向上させる方法としては、芯材のバイオマス度を向上させる方法と粘着剤層のバイオマス度を向上させる方法が考えられる。しかしながら、粘着剤層のバイオマス度を向上させると、粘着力の低下や製造コストの上昇を招く場合がある。したがって、糸状粘着体のバイオマス度の向上においては特に芯材のバイオマス度を向上させることが好ましい。
【0042】
バイオマス由来成分を含む芯材の材料として、例えば、天然繊維が挙げられる。天然繊維としては、例えば麻などの植物繊維や、シルクやウールなどの動物繊維が挙げられる。
また、バイオマス由来成分を含む芯材の材料として、例えば、バイオマスプラスチックが挙げられる。バイオマスプラスチックは、バイオマス由来成分からなるものと、バイオマス由来成分及び化石資源由来成分からなるものに大別される。
バイオマス由来成分からなるバイオマスプラスチックとしては、例えばポリ乳酸、ポリエチレン(バイオPE)、ナイロン11(バイオPA11)、ナイロン1010(バイオPA1010)、ポリエステル(バイオPEs)等が挙げられる。
バイオマス由来成分及び化石資源由来成分からなるバイオマスプラスチックとしては、例えばバイオマス由来成分を含むポリエチレンテレフタラート(バイオPET)、ポリブチレンサクシネート(バイオPBS)、ポリブチレンテレフタレートサクシネート、ポリアミド610、410、510、1012、10T、11T、MXD10(バイオPA610、410、510、1012、10T、11T、MXD10)、ポリカーボネート(バイオPC)、ポリウレタン(バイオPU)、芳香族ポリエステル、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリ乳酸ブレンド・PBAT、スターチブレンド・ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0043】
環境負荷の低減の観点からは、芯材のバイオマス度は、好ましくは25%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、最も好ましくは100%である。
一方、芯材のバイオマス度を向上させすぎると、強度や柔軟性の低下、粘着力の低下、製造コストの上昇等といった問題を招く恐れがある。したがって、芯材のバイオマス度は、好ましくは95%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは70%以下である。
【0044】
また、環境負荷を低減するためには、糸状粘着体における芯材はリサイクル樹脂を含むことも好ましい。本明細書において、リサイクル樹脂とは、樹脂製品をリサイクルして得られた樹脂であり、マテリアルリサイクル及びケミカルリサイクルにより得られた樹脂を含む。
マテリアルリサイクルは、廃プラスチック等の樹脂製品を、破砕溶解などの処理を行った後に樹脂製品の原料として再生利用することを示す。
ケミカルリサイクル(化学的リサイクル)は、廃プラスチック等の樹脂製品を、原料・モノマー化、高炉還元剤、コークス炉化学原料化、ガス化、油化等により化学的に分解することで石油原料等を得て、樹脂製品の原料として再利用することを示す。
【0045】
リサイクル樹脂の種類に特に限定はなく、要求される強度、質量、硬さ等の性質に応じて適宜選択すればよい。例えば、種々の熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、ゴムなどの高分子材料を含む材料が挙げられ、レーヨン、キュプラ、アセテート、プロミックス、ナイロン、アラミド、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・プロピレン共重合体やエチレン・酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、ポリクラール、ポリ乳酸等の各種高分子材料;天然ゴムやポリウレタン等の合成ゴム等の各種ゴム;発泡ポリウレタン、発泡ポリクロロプレンゴム等の発泡体等が使用できる。好ましくはポリエステル樹脂であり、より好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0046】
リサイクル樹脂は、リサイクルされていない樹脂、すなわち市販のポリマー又は新規に合成されたポリマーを含んでいても良い。リサイクルされていない樹脂の種類に特に限定はなく、種々の熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、ゴムなどの高分子材料を含む材料が挙げられ、熱可塑性ポリマーが好ましく、上記したリサイクル樹脂と同種の樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)がより好ましい。
【0047】
芯材におけるリサイクル樹脂の含有量は、環境負荷低減の観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0048】
また、芯材がマルチフィラメント糸である場合、マルチフィラメント糸を構成するすべてのフィラメントがバイオマス由来成分及び/又はリサイクル樹脂(以下、「バイオマス由来成分等」ともいう)を含んでいてもよいが、一部のフィラメントのみがバイオマス由来成分等を含んでおり、他のフィラメントはバイオマス由来成分等を含まなくてもよい。マルチフィラメント糸を構成する全フィラメントの本数に対する、バイオマス由来成分等を含むフィラメントの本数の割合を調整することにより、バイオマス由来成分等の含有割合、強度等の諸特性を容易に調整できる。
【0049】
[部材、接合体、接合体の製造方法]
貼合領域の形状は、少なくとも一部において屈曲した形状であれば特に限定されない。貼合領域の形状の一例として、一の物品の貼合面(接合体において他の物品に対向する面)の外形に沿った枠状の形状が挙げられる。例えばディスプレイのカバーガラスや、スマートフォン等のカメラのカバーガラスを枠部材に貼り合わせる場合に、このような貼合領域の形状が求められる。
【0050】
貼り合わされる部材の種類も特に限定されないが、電子機器の部品の接合において特に貼合領域の形状の細幅化や複雑化が求められていることから、部材は電子機器を構成する部材であることが好ましい。
電子機器を構成する部材としては、上記のカバーガラス及び枠部材のほかに、例えば電線や光ファイバー等のケーブル、LEDファイバーライト、FBG(Fiber Bra
gg Gratings、ファイバブラッググレーティング)等の光ファイバセンサ等の各種線材(線状部材)が挙げられる。これらの部材を他の部材に屈曲させた状態で貼付して固定する際には、線状部材の形状に応じて貼合領域の形状も細幅の屈曲した形状になる。
【0051】
本実施形態の接合体の製造方法においては、まず一の部材に糸状粘着体を貼付し、その後他の部材を貼り合わせることが好ましい。部材に糸状粘着体を貼付する方法は特に限定されず、貼り付け用の機械(貼付装置)を用いてもよく、手で貼付してもよく、一度仮支持体に糸状粘着体を貼付し、それを部材に転写してもよい。
なお、部材の貼り合わせ(すなわち接合体の製造)においては、複数本の糸状粘着体が用いられてもよいが、工数削減の観点からは1本の粘着体のみが用いられることが好ましい。
【実施例0052】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
【0053】
<実施例1>
(水分散型アクリル系粘着剤の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器に、イオン交換水40重量部を入れ、窒素ガスを導入しながら60℃で1時間以上攪拌して窒素置換を行った。この反応容器に、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]n水和物(重合開始剤)0.1重量部を加えた。系を60℃に保ちつつ、ここにモノマーエマルションAを4時間かけて徐々に滴下して乳化重合反応を進行させた。モノマーエマルションAとしては、2-エチルヘキシルアクリレート98重量部、アクリル酸1.25重量部、メタクリル酸0.75重量部、ラウリルメルカプタン(連鎖移動剤)0.05重量部、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名「KBM-503」)0.02重量部およびポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム(乳化剤)2重量部を、イオン交換水30重量部に加えて乳化したものを使用した。モノマーエマルションAの滴下終了後、さらに3時間60℃に保持し、系を室温まで冷却した後、10%アンモニア水の添加によりpHを7に調整して、アクリル系重合体エマルション(水分散型アクリル系重合体)を得た。
上記アクリル系重合体エマルションに含まれるアクリル系重合体100重量部当たり、固形分基準で20重量部の粘着付与樹脂エマルション(荒川化学工業株式会社製、商品名「E-865NT」)を加えた。さらに、pH調整剤としての10質量%アンモニア水および増粘剤としてのポリアクリル酸(東亞合成株式会社製、商品名「アロンB-500」)を用いて、pHを7.2、粘度を10Pa・sに調整した。このようにして、粘着剤層用の水分散型アクリル系粘着剤を得た。
【0054】
(糸状粘着体の製造)
ポリエステル糸(フィラメント)48本に150回/mの撚りをかけたマルチフィラメント糸(280dtex)を芯材とした。芯材に水分散型アクリル系粘着剤を、得られる粘着性物品における粘着剤の付着量が22mg/mとなるようにディッピングで塗工した後、80℃で5分間乾燥して粘着剤層を形成させ、実施例1の糸状粘着体を得た。
【0055】
(接合体の製造及び粘着力の評価)
以下に示すような第1の部材及び第2の部材を用意した。
・第1の部材:短辺50mm、長辺60mm、厚さ3mmの長方形のアクリル板
・第2の部材:中央部に長方形のスリット(短辺30mm、長辺40mm)を設けた短辺80mm、長辺110mm、厚さ10mmの長方形のポリカーボネート樹脂板
図2に斜視図を、
図3に
図2X-X線での断面図を示すように、得られた糸状粘着体23(
図2では図示省略)を、第1の部材22Aの一方の面の周縁に沿って貼付し、第1の部材22Aと第2の部材22Bとを第1の部材22Aの中心と第2の部材22Bのスリットの中心とが一致するようにして貼り合わせ、2kgで10秒間圧着して接合体を得た。
次いで、第2の部材22Bを固定し、
図3に示すようにスリット越しに第1の部材22Aの中心に、第1の部材22Aと第2の部材22Bが離れる方向に荷重をかけ、第1の部材22Aと第2の部材22Bが分離するまでの間に観測された最大の荷重を測定したところ、測定結果は27N/22cmであった。
【0056】
<比較例1>
(粘着フィルムの切断加工による粘着体の製造)
セパレーターで両面が保護された両面粘着フィルム(50mm、長辺60mm、厚さ0.2mm)の中央部を切除し、幅0.3mmの枠状の比較例1の粘着体を得た。
得られた枠状の粘着体の重量は0.01mgであったのに対し、廃棄部分(セパレーター、及び切除された粘着フィルム)の総重量は0.75mgであった。すなわち、全重量の約98%が廃棄部分であった。
【0057】
(接合体の製造及び粘着力の評価)
実施例1の糸状粘着体にかえて比較例1の粘着体を用いて、実施例1と同様にして接合体を得た。
次いで、実施例1と同様にして第1の部材と第2の部材が分離するまでの間に観測された最大の荷重を測定したところ、測定結果は32N/22cmであった。
【0058】
比較例1では、第1の部材と第2の部材の粘着力が高く、貼合領域の形状が屈曲している(枠状である)接合体が得られたものの、粘着体の製造過程において廃棄部分が多かった。
実施例1では第1の部材と第2の部材の粘着力は比較例1と同程度であり、貼合領域の形状が屈曲している(枠状である)接合体が得られた。また、粘着体の製造過程において廃棄部分が無かった。