(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086893
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】光学素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/00 20060101AFI20240621BHJP
G02F 1/139 20060101ALI20240621BHJP
G02F 1/167 20190101ALI20240621BHJP
G02F 1/135 20060101ALI20240621BHJP
G02F 1/1347 20060101ALI20240621BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240621BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
G02B5/00 Z
G02F1/139
G02F1/167
G02F1/135
G02F1/1347
G02F1/1335
G02F1/13357
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024064756
(22)【出願日】2024-04-12
(62)【分割の表示】P 2023518117の分割
【原出願日】2021-10-11
(31)【優先権主張番号】102020006442.6
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】516243364
【氏名又は名称】ジオプティカ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】SIOPTICA GMBH
【住所又は居所原語表記】Moritz-von-Rohr-Strasse 1a, 07745 Jena, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ブレグラ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ ヘーバー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス クリップシュタイン
(57)【要約】
【課題】入射光の拡散方向に所定の影響を与えることができ、任意選択で少なくとも2つの動作状態、即ち自由観視モードと覗き見防止モードの間で切り替えることができる、面状に広がる光学素子を提供する。
【解決手段】本発明は、入光側と出光側を備えて面状に広がる光学素子(1)に関するものである。光学素子(1)は、異なる第1屈折率(N1)と第2屈折率(N2)を有する材料からなり交互に配置された透明な第1領域(B1)と第2領域(B2)を含んでおり、第1屈折率(N1)は第2屈折率(N2)より大きい。第2領域(B2)の入光面と出光面には、不透明な又は不透明に切り替え可能な第1層(OB)及び第2層(AB)が配置されている。不透明な層(OB、AB)で光学素子(1)を透過する光は、透明に切り替えられた層(OB、AB)と比較して拡散方向が制限される。
【選択図】
図1d
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入光側と出光側を備えて面状に広がる光学素子(1)であって、
少なくとも第1屈折率(N1)を有する第1の透明な材料からなる第1領域(B1)と、第2屈折率(N2)を有する第2の透明な材料からなる第2領域(B2)とを含み、これらの領域は第1光学素子(1)の表面全体で1次元又は2次元周期的な順序で交互に配置されており、ここで、前記第1屈折率(N1)は人間の目に見える全波長域で前記第2屈折率(N2)より大きく、さらに、
各第2領域(B2)の入光面における恒久的に不透明な又は透明な状態と不透明な状態の間で切り替え可能なそれぞれ1つの第1層(OB)と、
各第2領域(B2)の出光面に設けた恒久的に不透明な又は透明な状態と不透明な状態の間で切り替え可能なそれぞれ1つの第2層(AB)と、を含み、
その結果として、入光側で前記光学素子(1)に衝突する光は、前記第1層(OB)に基づき、前記第1層(OB)が不透明な状態にあれば、専ら前記第1領域(B1)の入光面を通って前記光学素子(1)に入射し、そこで入射角、偏光、及び前記第1屈折率(N1)と前記第2屈折率(N2)の比に応じて、
a)前記第1領域(B1)内で妨げられずに伝播し又は全反射し、その後でそれぞれの前記第1領域(B1)の出光面で再び出射され、又は
b)前記第1領域(B1)から隣接する前記第2領域(B2)に進入し、その中を伝播して、最終的に前記第2層(AB)が不透明な状態にあれば出光側で吸収され、前記第2層(AB)が透明な状態にあれば出射され、又は
c)光が前記第1領域(B1)から隣接する前記第2領域(B2)に進入した場合には、再び別の隣接する前記第1領域(B1)に進入し、そこで与えられた拡散方向と偏光に応じて出光面で出射されるか、前記光学素子(1)内でさらに伝播して、最後に出射されるか吸収され、
そうすることにより、出光側で前記光学素子(1)から出る光は、入光側で前記光学素子(1)に衝突する光に比べて、少なくとも前記第1層(OB)及び/又は前記第2層(AB)が不透明である場合にその拡散方向が制限されているようにした光学素子(1)。
【請求項2】
前記第2領域(B2)の入光面における各第1層(OB)は、恒久的吸収体層により及び/又は前記光学素子(1)から離れる方向に反射する少なくとも1つの層により形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の光学素子(1)。
【請求項3】
前記第2領域(B2)の出光面に設けた各第2層(AB)は、恒久的吸収体層により形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光学素子(1)。
【請求項4】
前記第1領域(B1)における材料の前記第1屈折率(N1)及び/又は前記第2領域(B2)における材料の前記第2屈折率(N2)は、少なくとも2つの状態の間で切り替え可能であり、その結果として前記第1領域(B1)と前記第2領域(B2)との境界における2つの屈折率の比(N1、N2)がそれぞれ調節可能であり、それによって拡散方向の前記制限が可変であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の光学素子(1)。
【請求項5】
前記第1領域(B1)及び/又は前記第2領域(B2)の材料の少なくとも1つは、電極における電圧の変化を介して液晶中の直線偏光に対する屈折率の変化を誘起するために、電極と接触している液晶からなることを特徴とする、請求項4に記載の光学素子(1)。
【請求項6】
前記第2層(AB)及び/又は前記第1層(OB)は、不透明な状態と透明な状態との間で切り替え可能であり、この切り替え可能性は、好適にはエレクトロウェッティング、電気泳動、エレクトロクロミズム及び/又は液晶セルの原理のうちの1つ以上に基づいていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の光学素子(1)。
【請求項7】
前記第2層(AB)及び/又は前記第1層(OB)は、前記第1領域(B1)を構成する材料に埋め込まれており、好適には前記光学素子(1)の前記第1領域(B1)の材料部分は、前記第2層(AB)及び/又は前記第1層(OB)を埋め込んでいる前記材料部分にシームレスに移行していることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の光学素子(1)。
【請求項8】
請求項1から8のいずれか一項に記載の光学素子(1)を製造する方法であって、
前記第1領域(B1)の正構造と支持体の負構造とを有する型を製造するステップと、
硬化後に前記第1屈折率(N1)を有する第1ポリマーを型に充填するステップと、
前記第1ポリマーを紫外光又は冷却によって硬化させ、その後で型からワークピースを取り出すステップと、
ワークピース内の前記第2領域(B2)の構造に、硬化後に前記第2屈折率(N2)を有する第2ポリマーを充填するステップと、
第2ポリマーを紫外光又は冷却によって硬化させるステップと、を含む方法。
【請求項9】
前記第1ポリマー又は前記第2ポリマーの硬化後、前記第1領域(B1)を保護するマスクを貫通して前記ワークピースの表面上の前記第2領域(B2)に、不透明な又は透明から不透明に切り替え可能な材料を蒸着又はスパッタリングすることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか一項に記載の光学素子を製造する方法であって、
吸収体層として作用する前記第2層(AB)、前記第2屈折率(N2)を有する材料からなる第2透明層、不透明な前記第1層(OB)、及び前記第1屈折率(N1)を有する材料からなる第1透明層を、この順序で互いに接合した層を含む複数のベースブロック(BL)を作成するステップと、
前記複数のベースブロック(BL)を上下に積層し、これらを接合して第1積層ブロック(ST)を得るステップと、
前記積層ブロック(ST)から第2層厚(D2)を有するディスク(SC)を切り取るステップと、
前記ディスク(SC)をその間に前記第1屈折率(N1)と第1層厚(D1)を有する前記第1透明層を介在させて積層し、これらを接合して第2積層ブロック(SN)を得るステップと、
前記第2積層ブロック(SN)から前記光学素子(1)を切り取るステップと、を含む方法。
【請求項11】
前記第1層(OB)は反射するように形成されていることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ベースブロック(BL)を互いに接合し及び/又は前記ディスク(SC)を前記第1透明層と加硫により接合することを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1積層ブロック(ST)から前記ディスク(SC)を切り取り及び/又は前記第2積層ブロック(SN)から前記光学素子(1)を切り取ることが、個々の層の延長平面に対して垂直に行われることを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
人間の目に見える波長域で面状に拡散する光の拡散方向を制限する方法であって、
開口面上で1次元又は2次元周期的な順序で交互に配置された少なくとも透明な第1領域(C1)と不透明な第2領域(C2)を含む面状開口部を用いて、光の面状調節を行うステップと、
全波長域において、透明な前記第1領域(C1)を伝播する光を、屈折率境界における全反射の限界角度内で反射されて、最終的に出射される光線と、全反射の限界角度外で前記屈折率境界を透過してさらに伝播し、その後で吸収体によって吸収される光線とに、屈折率に基づき角度に依存して分割するステップと、を含み、
その結果として、出射された光は最初に面状に拡散する光に比べて光拡散方向が制限されているようにした方法。
【請求項15】
入光側と出光側を備えて面状に広がる光学素子(10)であって、
少なくとも第1屈折率(N1)を有する透明な材料からなる第1領域(E1)と、第2屈折率(N2)を有する不透明な材料からなる第2領域(E2)とを含み、これらの領域は前記光学素子(10)の表面全体で1次元又は2次元周期的な順序で交互に配置されており、ここで、前記第1屈折率(N1)は人間の目に見える全波長域で前記第2屈折率(N2)より大きく、
その結果として、前記光学素子(10)の第1主要面でこれに衝突する光は、前記第2領域(E2)の不透明な材料に基づき、専ら前記第1領域(E1)の入光面を通って前記光学素子(10)に入射し、そこで幾何学的入射方向、偏光、及び前記第1屈折率(N1)と前記第2屈折率(N2)の比に応じて、
a)前記第1領域(E1)内で妨げられることなく伝播し又は全反射し、その後でそれぞれの前記第1領域(E1)の出光面で再び出射され、又は
b)前記第1領域(E1)から隣接する前記第2領域(E2)に進入し、そこで前記第2領域(E2)の不透明な材料に基づいて吸収され、
ここで、前記第1屈折率(N1)と前記第2屈折率(N2)が異なるために、前記第2領域(E2)に進入する光線は垂線から離れる方向により強く屈折し、
そうすることにより、前記光学素子(10)の第2主要面でこれから出る光は、前記第1主要面で前記光学素子(10)に衝突する光と比較して、その拡散方向が制限されているようにした方法。
【請求項16】
前記不透明な材料は、前記第2屈折率(N2)を有する透明な材料からなり、この材料は吸収性粒子と混合され、それにより全体として不透明作用が生じることを特徴とする、請求項15に記載の光学素子(10)。
【請求項17】
前記不透明な材料は、500nm未満のサイズを有するグラファイト粒子、200nm未満のサイズを有するブラックカーボンナノ粒子、吸収性粒子としての染料又は染料混合物と混合されるラッカー又はポリマーからなることを特徴とする、請求項15又は16に記載の光学素子(10)。
【請求項18】
前記吸収性粒子の質量分率は、せいぜい50%であることを特徴とする、請求項16又は17に記載の光学素子。
【請求項19】
両主要面のうちの一方、好適には前記第1主要面に、主要面全体の角度に依存する鏡面反射として、又は前記第2領域(E2)の表面における完全鏡面反射として形成された鏡面反射を有することを特徴とする、請求項15から18のいずれか一項に記載の光学素子(10)。
【請求項20】
それぞれ2つの前記第2領域(E2)の間に、第3屈折率(N3)を有する別の不透明な材料(M3)からなる第3領域が形成されており、前記第3屈折率(N3)はそれぞれ前記第1屈折率(N1)より大きく、且つ、前記第2屈折率(N2)より大きいことを特徴とする、請求項15から19までのいずれか一項に記載の光学素子(10)。
【請求項21】
前記光学素子(10)の入光側と前記第3領域との間、及び前記光学素子(10)の出光側と前記第1領域(E1)の出光面との間にも、前記第2領域(E2)が形成されていることを特徴とする、請求項20に記載の光学素子(10)。
【請求項22】
前記第1屈折率(N1)と前記第2屈折率(N2)との屈折率の差の大きさは、0.1より小さいことを特徴とする、請求項20又は21に記載の光学素子(10)。
【請求項23】
前記第1領域(B1、E1)と前記第2領域(B2、E2)は、前記光学素子(1、10)に垂直な平行投影で見て、前記光学素子(1、10)の表面全体に交互に帯状に分布するように配置されていることを特徴とする、請求項1から7又は15から22いずれか一項に記載の光学素子(1、10)。
【請求項24】
前記第1領域(B1、E1)は、前記光学素子(1、10)に垂直な平行投影で見て、前記光学素子(1、10)の表面全体に点状、円状、楕円状、矩形状又は六角形状で分布するように配置されており、前記第2領域(B2、E2)はこれと相補的に成形されていることを特徴とする、請求項1から7又は15から22いずれか一項に記載の光学素子(1、10)。
【請求項25】
前記第1領域(B1、E1)と前記第2領域(B2、E2)は、前記光学素子(1、10)の上面に垂直な断面方向で見て台形に形成されていることを特徴とする、請求項1から7又は15から24のいずれか一項に記載の光学素子(1、10)。
【請求項26】
前記第1領域(B1、E1)の少なくとも一部、好適には全部の前記第1領域(B1、E1)において、それらの出光側にレンズ構造(L)、好適には凸レンズ構造が適用されていることを特徴とする、請求項1から7又は15から25のいずれか一項に記載の光学素子(1、10)。
【請求項27】
前記光学素子(1、10)の入光側及び/又は出光側に、偏光子、好適には反射型偏光子が配置されていることを特徴とする、請求項1から7又は15から26のいずれか一項に記載の光学素子(1、10)。
【請求項28】
前記光学素子(1、10)上に少なくとも1つの前記第1領域(B1、E1)が形成されていて、その光学素子(1、10)に垂直な平行投影で見た最短延長は、すべての前記第2領域(B2、E2)の前記光学素子(1、10)に垂直な平行投影で見た最短延長の少なくとも20倍大きく、前記少なくとも1つの前記第1領域(B1、E1)内ではその縁部と平行変位を除き、出光側で前記光学素子(1)から出る光の拡散方向は、前記光学素子(1)の入光側に衝突する光に比べて制限がないことを特徴とする、請求項1から7又は15から27のいずれか一項に記載の光学素子(1、10)。
【請求項29】
前記第1領域(B1、E1)と前記第2領域(B2、E2)に加えて、形状及び/又は屈折率の点で前記第1領域(B1、E1)及び前記第2領域(B2、E2)とは異なるパラメータを有する別の領域が形成されており、これらの別の領域を透過して前記光学素子(1、10)から出る光は、前記第1領域(B1、E1)とは異なる拡散方向の制限を受けることを特徴とする、請求項1から7又は15から28のいずれか一項に記載の光学素子(1、10)。
【請求項30】
請求項15から18のいずれか一項に記載の光学素子(10)を製造する方法であって、
前記第1屈折率(N1)を有する透明な材料からなる第1層と、前記第2屈折率(N2)を有する不透明な材料からなる第2層とを交互に積層するステップと、ここで、前記第1屈折率(N1)は前記第2屈折率(N2)より大きく、
前記第1層と前記第2層を互いに接合するステップと、
この層複合体から前記光学素子(10)を切り取るステップと、を含む方法。
【請求項31】
請求項1から7又は15から29のいずれか一項に記載の前記光学素子(1、10)の使用であって、画像表示装置(3、LCD)の視野方向を選択的に制限することを目的とした、画像表示装置(3)、又は透過型画像表示装置(LCD)用のバックライト(BLU)との使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
近年、液晶ディスプレイの視野角の拡張が大きく進展した。
【0002】
しかしながら、この画面の視野角が非常に広いことが欠点となり得る状況もしばしばある。また、ノートPCやタブレットPCなどのモバイル端末で、銀行口座などの個人情報や機密情報などの情報も入手することが増えている。そのためこれらの機密データを見ることができる人間をコントロールする必要がある。例えば休暇の写真を見るときや、宣伝目的のためにも、ディスプレイ上の情報を他人と共有するために、広い視野角を選択しなければならない。他方、画像情報を秘匿したい場合は、視野角を狭くする必要がある。
【0003】
車の製造でも類似の問題がある。運転手はエンジンがかかっている間はデジタルエンターテインメントプログラムなどの画像内容に気を取られてはならないが、同乗者は運転中もそれらを楽しみたいと思うものである。したがって対応する表示モードを切り替えることができる画面が必要になる。
【背景技術】
【0004】
既に携帯用ディスプレイではその視覚的データ保護を達成するために、マイクロルーバーを用いた追加フィルムが使用された。しかしながらこれらのフィルムは(再)切り替ええ不能であり、必ず最初に手で装着してから、再び取り外す必要があった。また、必要のないときでもディスプレイと別に持ち運ばなければならない。さらに、このようなルーバーフィルムの使用は、光の損失という重大な欠点を伴う。
【0005】
米国特許出願US6765550B2号には、そのようなマイクロルーバーによる覗き見防止が記載されている。ここでの最大の欠点は、フィルタの機械的な取り外し又は取り付けと、保護モードでの光の損失である。
【0006】
米国特許出願US5993940A号には、プライバシーモードを実現するために、表面に小さいプリズムストライプを均一に配置したフィルムの使用が記載されている。その開発及び製造には、かなりコストがかかる。
【0007】
国際特許出願WO2012/033583A1号では、自由視と制限視の切り替えは、いわゆる「クロモニック」層の間で液晶を操作することで実現している。この場合、光の損失とコストはかなり大きい。
【0008】
米国特許出願US2012/0235891A1号には、画面内の非常に複雑なバックライトが記載されている。
図1及び
図15によれば、複数のライトガイドが使用されるだけでなく、マイクロレンズ素子40や、後部照明から前部照明に向かう途中で光を変換するプリズム構造50など、他の複雑な光学素子も使用される。これらは実装するのに高価で手間がかかり、同様に光損失を伴う。米国特許出願US2012/0235891号の
図17に示す変形例によれば、両光源4R及び18は照明角度の狭い光を生成し、後方光源18からの光は手間をかけて大きい照明角度を有する光に変換される。既に上述したように、この複雑な変換は明るさを著しく低下させる。
【0009】
日本国特許出願JP2007-155783A号によれば、手間をかけて計算及び製造される特殊な光学面19が使用され、入射角に応じて光を様々な狭い領域又は広い領域に偏向させる。これらの構造は、フレネルレンズに類似している。さらに、光を望ましくない方向に偏向させる干渉エッジが存在する。そのため実際に実用的な光分布を達成できるかどうかは不明なままである。
【0010】
米国特許出願US2013/0308185A1号には、光が幅狭側のどの方向から放射されるかに応じて光を主要面上で様々な方向に放射する、段付きで形成された特殊なライトガイドが記載されている。これにより、透過型画像表示装置、例えばLCディスプレイと組み合わせることで、自由視モードと制限視モードとの間で切り替え可能な画面を作成できる。この場合の欠点は、制限視効果を左右又は上下のいずれかにしか発生できず、例えば特定の支払取引で必要であるように、上下左右に同時に発生できないことである。さらに、制限視モードにおいても遮断された覗き見角度から常になお残光が見えている。
【0011】
本出願人の国際特許出願WO2015/121398A1号には、2つの動作モードを有する画面が記載されており、この画面には動作モードを切り替えるために対応するライトガイドの体積中に散乱粒子が不可欠に存在する。しかしながら、そこで選択された重合体からなる散乱粒子は、一般に光が両主要面から出射され、それによって有効光の約半分が誤った方向、即ちバックライトに向かって放射され、そこでは構造上十分にリサイクルできないという欠点がある。さらに、ライトガイドの体積中に分布する重合体からなる散乱粒子は、場合によっては、特に高濃の場合に、保護された動作モードにおける覗き見防止効果を低下させる散乱効果につながる可能性がある。
【0012】
上記の方法及び配置に原則として共通している欠点は、基本画面の明るさを著しく低下させ、及び/又はモード切り替えのために複雑で高価な光学素子を必要とし、及び/又は限られた覗き見防止しか提供せず、及び/又は自由に観視できるモードでの解像度を低下させ、及び/又は狭い観視範囲しか許さないことであり、そのため明るさは角度スペクトルにわたって急速に低下して、観視者は明るさに関して非常に不均一な画像を見ることになる。
【発明の概要】
【0013】
したがって本発明の課題は、入射光の拡散方向に所定の影響を与えることができ、任意選択で少なくとも2つの動作状態、即ち自由観視モードと覗き見防止モードの間で切り替えることができる、面状に広がる光学素子を開発することであり、覗き見防止モードでは光は自由観視モードに比べて制限された角度範囲でのみ、即ちより小さい拡散方向で光学素子から出る。この光学素子は安価に実装でき、特に覗き見防止モードと自由観視モードとの間の切り替えを可能にするために、様々なタイプの画面で汎用可能であるものとし、そのような画面の解像度は実質的に低下しないか、又は無視できる程度にしか低下しないようにする。さらに、この光学素子は、基本的にトップハット型の光の分布を実現する可能性を提供するものとする。これは、平均放射角の周りの少なくとも7度の角度範囲において明るさが15%以上低下しないことを意味する。
【0014】
上記の課題は、入光側と出光側を備えて面状に広がる光学素子であって、少なくとも第1屈折率を有する第1の透明な材料からなる第1領域と、第2屈折率を有する第2の透明な材料からなる第2領域とを含み、これらの領域は第1光学素子の表面全体で1次元又は2次元周期的な順序で交互に配置されており、ここで、第1屈折率は人間の目に見える全波長域で第2屈折率より大きいものによって解決される。さらに、光学素子は、各第2領域の入光面における恒久的に不透明な又は透明な状態と不透明な状態の間で切り替え可能なそれぞれ1つの第1層と、各第2領域の出光面に設けた恒久的に不透明な又は透明な状態と不透明な状態の間で切り替え可能なそれぞれ1つの第2層とを含む。
【0015】
入光側で光学素子に衝突する光は、第1層に基づき、第1層が不透明な状態にあれば、専ら第1領域の入光面を通って光学素子に入射し、そこで入射角、偏光、及び第1屈折率と第2屈折率の比に応じて、a)第1領域内で妨げられずに伝播し又は全反射し、その後でそれぞれの第1領域の出光面で再び出射され、又はb)第1領域から隣接する第2領域に進入し、その中を伝播して、最終的に第2層が不透明な状態にあれば出光側で吸収され、第2層が透明な状態にあれば出射され、又はc)光が第1領域から隣接する第2領域に進入した場合には、再び別の隣接する第1領域に進入し、そこで与えられた拡散方向と偏光に応じて出光面で出射されるか、光学素子内でさらに伝播して、最後に出射されるか吸収される。ここで、a)の場合の妨げられない伝播とは、光線が領域境界に衝突せずに、全反射されることなく第1領域を直進することを意味する。
【0016】
その結果、出光側で光学素子から出る光は、入光側で光学素子に衝突する光に比べて、少なくとも両層の一方、即ち第1層及び/又は第2層、しかし好適には第2層が不透明である場合にその拡散方向が制限されている。
【0017】
第1領域への光線の入射角とは、特に第1領域の入光面(「下面」とも呼ばれる)への水平および垂直入射角を表す方向ベクトルであり、偏光状態と並んで、第1領域B1若しくは第2領域との境界面で光がさらに伝播するために非常に重要である。
【0018】
基本的には、a)又はb)のケースに該当しない光線は、すべてc)のケースに該当するはずである。
【0019】
第1領域と第2領域の「周期的な順序」とは、これらの領域が常に同じ幅及び/又は高さでなければならないという意味ではなく、単に第1領域と第2領域が必ず交互に配置されていることを意味する。但し、それらの大きさは変化することができる。
【0020】
第3のケースc)は、第1領域からの光が隣接する第2領域に進入しており、そこから再び別の隣接する第1領域に進入した場合にのみ生じる。即ち、光線は、第1領域から第2領域への屈折率境界を乗り越えた後で、当該第2領域から他の側で隣接する第1領域への次の屈折率境界を再び乗り越え、そのときに与えられた拡散方向と偏光に応じて出光面で出射されるか、又はさらに光学素子内を伝播して、最後に出射されるか吸収される。このケースは、例えば約30°~50°の中心角の光拡散方向は吸収されるが、これよりも大きいか小さい角度範囲は光に当てられる場合など、特殊な用途に対して興味がある。c)で挙げたケースは、光学素子の光学的シミュレーションに基づいて、第1屈折率と第2屈折率の相応の寸法設定、並びに第1領域と第2領域の幅及びそれらの高さの相応の選択により包含されたり除外されたりすることができる。これについては以下に詳述する。
【0021】
本発明による入射光の拡散方向の好適な制限(即ちケースa)の光線しかない)を達成するためには、第1層と第2層が実際に不透明であることが重要である。いずれか1層が不透明でなくなるとすぐに、第1領域と第2領域との間の境界面における全反射の本来の限界角度を上回る斜めの光線は、第2領域の上縁で出るか、又は場合によっては後で第2領域に入るときに、例えば上縁、即ち第1領域B1の出光面を通って出ることができる。
【0022】
有利な実施形態は、第2領域の出光面に設けた各第1層が、恒久的吸収体層により及び/又は光学素子から離れる方向に鏡面反射する少なくとも1つの層により形成されているように構成されている。本発明の範囲内で可能な1つの鏡面反射層のみが存在する場合、この層が不透明な特性も有することは言うまでもない。鏡面反射特性は、例えば本発明による光学素子が、例えばLCDパネル用の照明装置に組み込まれるならば、効率を高めるのに寄与する。
【0023】
さらに、第2領域の出光面に設けた各第2層が、恒久的吸収体層によって形成されていることが可能である。特定の静的実施形態において第1層と第2層が恒久的な不透明特性を有し、第1屈折率と第2屈折率が変化しない場合、光学素子は入射する光の拡散方向に対して恒久的に制限するように作用する。
【0024】
本発明による光学素子の特別の実施形態では、第1領域(B1)における材料の第1屈折率(N1)及び/又は第2領域(B2)における材料の第2屈折率(N2)が、少なくとも2つの状態の間で切り替え可能であり、その結果として、第1領域(B1)と第2領域(B2)との境界における2つの屈折率の比(N1、N2)がそれぞれ調節可能であり、それによって拡散方向の前記制限が可変である。
【0025】
これについて、第1領域及び/又は第2領域の材料の少なくとも1つは、電極における電圧の変化を介して液晶中の直線偏光に対する屈折率の変化を誘起するために、電極と接触している液晶からなることができる。電極は、第1領域の出光面と入光面、即ち上側と下側に配置されている場合、例えばITO(酸化インジウムスズ)層の形態で透明であることができる。しかしながら、電極が第2領域の第2屈折率を変えるために必要である場合、特に第1層と第2層が恒久的吸収体層として形成されている場合は、半透明電極、場合によっては不透明電極を使用することもできる。
【0026】
この液晶を用いた実施形態では、第1層と第2層が恒久的に不透明であることが選好され、それによりさらに原則として専らケースa)の光線は光学素子から上方に出ることができる。しかしながら、これらのケースa)の光線は、第1領域から第2領域への境界面における屈折率の差に応じて、拡散方向の角度範囲が狭くなったり広くなったりする。この角度範囲は、屈折率の差が大きいほど広くなり、屈折率の差が小さいほど狭くなる。
【0027】
一方、本発明の他の異なる切り替え可能な実施形態において、第1層及び/又は第2層が不透明な状態と透明な状態の間で切り替えられる場合、光学素子に入射する光の拡散方向を制限する特性をオン/オフすることができる。即ち、専ら両層が不透明である場合に光拡散方向は制限される(ケースa))。両層のうちの1つが不透明でなくなるとすぐに、光拡散方向の制限は存在しなくなる(ケースa)、b)、場合によってはc))。このようにして光学素子は切り替え可能である。さらには両層が透明に切り替えられた場合、光学素子は単に-光の入射方向に応じて-光線シフトと全内部反射を引き起こすだけで、全体として光を遮断しない。
【0028】
好適な切り替え可能な実施形態において、上側の第2層のみが不透明と透明に切り替え可能に形成され、下側の第1層は恒久的に不透明に(場合によっては反射もするように)形成されている。これは、所望の効果を達成するのに十分である。
【0029】
両層の切り替え可能性は、好適には、レクトロウェッティング、電気泳動、エレクトロクロミズム及び/又は液晶セルの原理のいずれか1つ又は同時に複数の原理に基づくことができる。もちろんその他の実施形態も可能である。
【0030】
エレクトロウェッティングの場合、両層のうちの少なくとも1つについて、エレクトロウェッティングの対象となる液体又は液体混合物の少なくとも2つの状態が定義される。第1の動作状態では、当該層は、第2領域の対応する表面を可能な限り完全に覆い、したがって不透明であろう(この場合は拡散方向の制限がある、ケースa))。第2の動作状態では、当該層は、第2領域の対応する表面を可能な限り小さい面積で覆い、したがってほぼ透明であろう(この場合は拡散方向の制限はないか若しくは無視できる程度である、ケースa)、b)、場合によってはc))。
【0031】
電気泳動の場合は、両層のうちの少なくとも1つに対して、液体又はゲルマトリックス中で電気泳動できる不透明な粒子が提供されよう。これらの粒子は、透明電極を介して印加できる電界の作用により、第1の動作状態において当該層として第2領域の対応する表面を可能な限り完全に覆い、その結果として当該層は不透明になろう(この場合は拡散方向の制限がある)。電界分布が異なる第2の動作状態では、粒子は当該層として第2領域の対応する表面を可能な限り小さい面積で覆うか、又はリザーバに移送されるか、又は体積中に分散され、したがって当該層は透明であろう(この場合は拡散方向の制限はない)。
【0032】
基本的には、この実施形態は電気泳動を利用して、両層のうちの少なくとも1つ、特に第2層について、粒子は第2領域の直上に位置するか、又はそこから(最大100μmで十分)離れて位置することにより、第2領域の表面における全反射構造は(粒子による光の相応の吸収によって)乱されるか、又は(粒子が相応に離れていることによって)乱されずに、全反射が起こり、対応する光線は光学素子内でさらに伝播した後で、少なくとも部分的に第1領域の出光面から出射されるように構成することもできる。一般に、この関連においては、いわゆる「フラストレート全内部反射」のような又は類似の変形例に基づくすべての光学的切り替え技術を適用できる。
【0033】
さらに粒子として、電界作用に基づき定位置で回転できて、表面はそれぞれ約半分が不透明であり、他の半分が散乱し、白色であり及び/又は反射するヤヌス粒子も対象となる。これらのヤヌス粒子は両層のいずれの層であってもよく、これらの層を不透明な状態と反射する状態との間で切り替えることができ、後者の状態では反射に基づいて対応する光線は、光学素子内でさらに伝播した後に、第1領域の出光面から少なくとも部分的に出射される。
【0034】
エレクトロクロミズムの場合、両層はエレクトロクロミック材料、例えば若干の金属酸化物(TiO2、NiO、Nb2O、MoO3、Ta2O5、WO3、IrO2、Zr2O5)と、エレクトロクロミック材料を埋め込んだ相応の透明電極、例えばITO(インジウムスズ酸化物)、FTO(フッ素スズ酸化物)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)で形成できよう。電極に印加される電圧に応じて、両層に対して少なくとも2つの状態が定義される。第1の動作状態では、当該層は不透明であり(この場合は拡散方向の制限がある)、第2の動作状態では、当該層は透明である(この場合は拡散方向の制限がない)。
【0035】
両層は液晶セル、例えば相応の偏光子対を持つTNセルとして形成することができる。この場合、両層は電極に相応の電界若しくは電圧を印加することにより、適切に不透明(この場合は拡散方向の制限がある)又は透明(この場合は拡散方向の制限がない)に切り替えることができる。上記の偏光子対の偏光子は、本発明による光学素子がそのようなLCDパネルと組み合わせて使用される場合は、LCDパネルの偏光子に物理的に相当することもできる。
【0036】
一般に該当するのは、第1屈折率と第2屈折率との間の屈折率の差が小さいほど、光学素子から出る光の光分布は狭くなるということである。ここで、明確な物理的理解のために、「屈折率」は選択された波長、例えば580nmに対する第1屈折率若しくは第2屈折率、又は人間の目に見える全波長域にわたるそれぞれの分散曲線を意味していることを確認しておく。分散曲線の場合、屈折率の差は、選択された可視波長λで両屈折率の差に対応するそれぞれの値を意味する。
【0037】
この関連において言及されるべきは、特別な実施形態では光学素子は非常に精密な波長選択性カラーフィルタとして設計できることである。即ち、両屈折率の分散曲線が波長に依存して交差するとき、不透明な層の場合、第2屈折率が第1屈折率よりも大きい波長では、対応する波長域は効率的に消去され、したがって光学素子から出射されないであろうが、第1屈折率が第2屈折率よりも大きい波長域では、光学素子から出射されるであろう。ここで、分散曲線の設計に応じて、波長選択作用を有するこのような光学素子は、斜めに向けられた光で作動されることになろう。なぜなら、いかなる場合もスペクトルを分離するために、第1領域と第2領域との境界面における全反射の限界角度を利用しなければならないからである。例示的な発展例では、このような波長選択性カラーフィルタによって、2つのスペクトル、例えば狭い紫外光範囲のスペクトルと白色の広スペクトル範囲のスペクトルが分離されよう。両層のうちの少なくとも1つの不透明性をオフにすることにより分離作用がなくなれば、両方のスペクトルがカラーフィルタを透過できるであろう。その後で、紫外光は可視の白色光に変換されて、白色光に対して全体として様々な角度スペクトルの間で切り替えることが可能になる。
【0038】
光学素子の有利な実施形態では、第1領域と第2領域は、光学素子に垂直な平行投影で見て、光学素子の表面全体に交互に帯状に分布するように配置されている。これにより、光拡散方向の制限は、帯状領域に対して垂直な方向には有効であるが、帯状領域に対して平行な方向には有効ではないであろう。
【0039】
これに対し、別の実施形態では、第1領域が光学素子に垂直な平行投影で見て、光学素子の表面全体に点状、円状、楕円状、矩形状、六角形状又はその他の2次元形状で分布するように配置され、第2領域はそれぞれそれこれと相補的に成形されている。これにより、光拡散方向の制限は、それぞれ光学素子の表面に垂直な少なくとも2つの平面で有効であろう。実用的にはこのような光学素子の作用は原則として、透過光の光拡散方向が光学素子の中心垂線に近いか又はこれと平行な任意の角度で集束されるようになっている。この場合、「近い」とは、中心垂線又はそれに平行な状態からの偏差が、実施形態に応じて25°又は30°未満であることを意味する。
【0040】
第1領域と第2領域のその他の形状も同様に可能である。本発明の機能形態を維持するために常に重要なのは、第1領域と第2領域が光学的に直接互いに隣接していて、可能な限り隙間なく光学的な屈折率ジャンプが与えられていることである。
【0041】
別の実施形態は、第1領域と第2領域が、光学素子の上面に垂直な断面方向で見て台形に形成されている。第1領域と第2領域のこのような構成形態により、光学素子から出る光の拡散方向に的確に影響を与えことができる。即ち、実施形態に応じて光を表面上に強く又は弱く集束させることができる。さらに、例えば第1領域と第2領域の断面形状を平行四辺形にすると、それに伴って第1領域と第2領域の境界面が傾くことによって頂点の移動が達成される。台形は、それによって角度分布が一層よく集束され、したがって覗き見防止モードがさらに改善されるという利点がある。
【0042】
さらに、少なくとも一時的に不透明な第1層及び/又は第2層が、第1領域を構成する材料に埋め込まれており、好適には光学素子の第1領域の材料部分が対応する層を埋め込んでいる上記部分にシームレスに移行していると有利であり得る。
【0043】
さらに、第1領域の少なくとも一部、好適には全部の第1領域において、それらの出光側、即ち観視者にとって上側に、レンズ構造、好適には凸レンズ構造が適用されていることが可能である。これは、光学素子から出る光の拡散方向に所定の影響を与えることをサポートする。代替的又は追加的に、第1領域の入光側、即ち観視者にとって下側に凹レンズ構造又は凸レンズ構造を備えて、第1領域への入光方向に影響を与え、それによってまた光線が最終的に上記のケースa)、b)又はc)のいずれに該当するかに影響することができる。
【0044】
基本的に、本発明の範囲において上側の第2層と下側の第1層は交換することができる。即ち、第1光学素子は、特に両層が恒久的に不透明であれば、光学素子の主要面のどちらが上であるか下であるかに関係なく機能する。
【0045】
さらに、効果を最適化するために、光学素子の下方及び/又は上方に偏光子、任意選択で反射型偏光子が配置されていると有用であり得る。偏光子により偏光を制御することは、屈折率移行の利用効率を高める。さらに、フレネル反射を最小化するために、即ち光拡散方向の制限を最適化するために、入射光又は出射光のp偏光を用いることができる。
【0046】
特別な用途のために、光学素子上に少なくとも1つの第1領域が形成されていて、その光学素子に垂直な平行投影で見た最短延長は、すべての第2領域の光学素子に垂直な平行投影で見た最短延長の少なくとも20倍大きくすることが可能であり、上記の少なくとも1つの第1領域内ではその縁部と平行変位を除き、出光側で光学素子から出る光の拡散方向は、光学素子に衝突する光に比べて制限がない。これが意味するのは、拡散方向の制限が光学素子の全面に作用しないことにほかならない。このような制限のない第1領域は、互いに接触することなく、光学素子上で何度も繰り返すことができる。
【0047】
さらに、第1領域と第2領域に加えて、形状及び/又は屈折率の点で第1領域及び第2領域とは異なるパラメータを有する別の領域が形成されており、これらの別の領域を透過して光学素子から出る光は、第1領域とは異なる拡散方向の制限を受けることが有意味であり得る。このようにして、光学素子上に光拡散方向の制限が異なる、言い換えれば集束の異なる領域を分布させることが実現可能である。
【0048】
さらに、光拡散方向を制限する効果を一層強化若しくは調節するために、光学素子に追加の反射層及び/又は追加の吸収体層を設けることが考えられる。さらに、入光側及び/又は出光側、即ち光学素子の上側及び/又は下側に保護コーティング若しくは基体を適用することも可能である。しかしながら、特に第1領域から光が出射される際の光線変位及び光方向への影響を、技術的光学的な寸法設定において考慮すべきである。
【0049】
本発明は、上述した光学素子を画像表示装置(例えばLCDパネル、OLED又はマイクロLED又はその他すべてのディスプレイ技術)と、又は透過型画像表示装置(例えばLCDパネル)のための照明装置と共に使用することに特別の重要性がある。後者の場合、光学素子は、特に切り替え可能な構成において、LCDパネルなどの透過型画像表示装置のための照明装置に直接組み込まれることになろう。この照明装置は、(第1層と第2層が恒久的に不透明である場合)指向性バックライトとして恒久的に作用し、例えば本出願人の国際特許出願WO2015/121398号又は国際特許出願WO2019/002496号による実施形態に使用することができる。代替的に、少なくとも1つの面発光体と本発明による光学素子を含むこのような照明装置は、両層のうちの少なくとも1つが透明モードと不透明モードの間で切り替え可能である場合には、LCDパネル用の切り替え可能な照明装置として直接機能することもできる。
【0050】
上記の使用方法において、画像表示装置のための切り替え可能な覗き見防止が達成される。即ち、光学素子から出射する光線に対して上記のケースa)だけが残る第1の動作状態では、トップハット分布を有する設計に応じて覗き見防止効果が与えられている。光学素子から出る光線に対して、一般的にケースa)とケースb)が該当し、例外的な場合のみケースc)も該当する第2の動作状態では、画像表示装置をあらゆる方向から自由に観視できる自由視モードが与えられている。
【0051】
本発明による光学素子を観視方向で画像表示装置の前に配置して、その光拡散方向を選択的又は恒久的に制限しようとする場合、任意選択で画像表示装置上に、画像表示装置のそれぞれのピクセルによって放射される光を、実質的に第1領域とは反対側に位置する面に集束させる光学系も存在することができる。これは例えば、ほぼピクセル幅(又は場合によってはピクセル高さ)の周期を有するマイクロレンズグリッド又はレンチキュラーによって可能である。第1領域の周期は、最良の場合にピクセル幅若しくはピクセル高さの周期と一致すべきである。
【0052】
上述した少なくとも1つの光学素子(第1光学素子とも呼ばれる)と、画像表示装置とを有するこのような画面は、例えば乗用車はモバイル機器に使用することができる。さらに場合によっては、第1光学素子を、切り替え可能か否かにかかわらず、画像表示装置の前に配置することにより、画像表示装置に後付けすることも可能である。
【0053】
本発明はまた、このような第1光学素子の製造方法を含み、これは以下に記述するステップを含んでいる。最初に、所望の第1領域の正構造と支持体の負構造とを有する型を製造する(即ち、第2領域は型材料によって充填されているが、第1領域は型材料で充填されていない。支持体用のキャビティが型内に存在してもよく、これは後続のステップで特に第1領域用のポリマーで充填される)。次に、型に、最初は液状で、硬化後に第1屈折率を有する第1ポリマーを充填する。第1ポリマーを紫外光又は冷却によって硬化させ、その後で型からワークピースを取り出す。続いてワークピース内の第2領域の構造に、硬化後に第2屈折率を有する第2ポリマーを充填する。第2ポリマーも紫外光又は冷却によって硬化させる。
【0054】
任意選択で、第1ポリマー又は第2ポリマーの硬化後、表面、即ち観視者の方向から見たワークピースの上面と下面の第2領域に第1領域を保護するマスクを貫通して不透明な又は透明から不透明に切り替え可能な材料を蒸着又はスパッタリングして第1層若しくは第2層を得るか、又は不透明な材料で印刷する。
【0055】
さらに、本発明は、以下に記述するステップを含む(第1)光学素子の別の製造方法を含んでいる。最初に、ここに記載する順序で互いに接合した層、即ち吸収体層として作用する第2層、第2屈折率を有する材料からなる第2透明層、不透明な第1層、及び第1屈折率を有する材料からなる第1透明層を含む複数のベースブロックを作成する。次に、複数のベースブロックを上下に積層及び接合して第1積層ブロックを得る。この積層ブロックから、第2層厚を有するディスクを切り取る。これらのディスクを、それぞれ第1屈折率と第1層厚を有する第1透明層を間に挟んで積層及び接合して第2積層ブロックを得る。続いてこの第2積層ブロックから光学素子を切り取る。ここで、第1層は、好適には反射するように形成することができる。ベースブロックは、例えば互いに及び/又はディスクを第1透明層と加硫により接合することができる。第1積層ブロックからディスクを切り取り及び/又は第2積層ブロックから光学素子を切り取ることは、好適には個々の層の延長平面に対して垂直に行われる。
【0056】
光学素子の特別な実施形態では、第2屈折率を有する第2透明層は、吸収するように選択することもできる。その場合は、吸収体層として作用する第2層は省略することができる。
【0057】
別の代替的に考えられる製造方法は、例えば3D印刷プロセスにおいてそれぞれ屈折率が異なる第1領域B1と第2領域B2を形成するために2種類のポリマーを使用する方法、ガラスをエッチングして、エッチングされた領域(第1領域か第2領域のいずれか)に好ましくは後続過程でポリマーを充填する方法、ポリマーの異なる架橋、並びに光配向分子の利用であろう。すべてのケースで、さらに上述したような第1層と第2層が設けられる。光学素子のためにその他の製造方法工程も可能であることは言うまでもない。
【0058】
本発明の課題は、人間の目に見える波長域で面状に拡散する光の拡散方向を制限するための、以下に記述するステップを含む方法によっても解決される。第1のステップにおいて、光は、開口面上で1次元又は2次元周期的な順序で交互に配置された、少なくとも透明な第1領域と不透明な第2領域を含む面状開口部によって面状に調節される。全波長域において、透明な第1領域を伝播する光を、屈折率境界における全反射の限界角度内で、即ち全反射の限界角度よりも小さい角度で反射されて、最終的に、即ち1回若しくは複数回の全反射又は妨げられない伝播の後で出射される光線と、全反射の限界角度外で、即ちこの材料の組み合わせの全反射の限界角度よりも大きい角度で反射されて、その後で吸収体によって吸収される光線とに、屈折率に基づき角度に依存して分割する。その結果として、出射された光は、最初に面状に拡散する光に比べて光拡散方向が制限されている。
【0059】
ここで、様々な実施形態における本発明による(第1)光学素子の記述の説明を準用するものとし、上記説明は、ここで準用され、それにより、第1領域と第2領域は転用された意味において互いに対応し得る。冗長性の理由で、ここでは詳細な説明を行わない。
【0060】
本発明はさらに、それぞれ異なる屈折率を有する2つの透明な相補的型の1次元又は2次元周期的な順序からなる光学素子を含み、これらの型は任意選択で扁平基体上に形成されており、それにより2方向でそれぞれ1平面を形成する。この場合、一方の屈折率は有利には1に等しくすることができる。即ち、一方の型内の材料は、例えば空気である。それにより選好方向でこのような光学素子に衝突する光は妨げられることなく透過する一方、上記の選好方向に対して15°を超える角度を有する光は全反射及び/又はフレネル反射に基づき光学素子によって偏向される。ここでも出射光の拡散方向は影響を受ける。既述の実施形態を準用できるので、ここでは繰り返さないものとする。
【0061】
最後に、本発明は、さらに入光側と出光側の面状に広がる光学素子を含む。この光学素子は、少なくとも第1屈折率を有する透明な材料からなる第1領域と、第2屈折率を有する不透明な材料からなる第2領域とを含み、これらの領域は光学素子の表面全体で1次元又は2次元周期的な順序で交互に配置されており、第1屈折率は人間の目に見える全波長域で第2屈折率より大きい。光学素子の第1主要面で光学素子に衝突する光は、第2領域の不透明な材料に基づき、専ら第1領域の入光面を通って光学素子に入射する。幾何学的な入射方向、偏光、及び第1屈折率と第2屈折率の比に応じて、a)光は第1領域内で妨げられることなく伝播するか全反射し、その後でそれぞれの第1領域の出光面で再び出射されるか、b)第1領域から隣接する第2領域に進入し、そこで第2領域の不透明な材料に基づいて吸収される。この場合、第1屈折率と第2屈折率が異なるために、第2領域に進入する光線は垂線から離れる方向により強く屈折し、それによりそのような光の吸収は同じ屈折率の材料と比較して改善される。つまり、そのような光線は、屈折率に差がない場合よりも良く又はより強く消光される。そうすることにより、全体として光学素子の第2主要面で光学素子から出る光は、第1主要面で光学素子に衝突する光と比較してその拡散方向が制限されている。
【0062】
この実施形態は先行技術を改善して、特に、第1に、ルーバーフィルタに類似した光学素子でもトップハット分布が達成される。なぜなら、全反射に基づき、先行技術におけるように全反射がない場合よりも多くの有効光が所望の制限された角度範囲に透過するからである。第2に、第3光学素子を透過する光の角度範囲の制限が著しく強まる。なぜなら、なぜなら、不透明なルーバーが光の方向に影響を及ぼすだけでなく、2つの領域間の屈折率の差も、第2領域に進入する光線が垂線から離れる方向により強く屈折し、それにより吸収性材料を通るより長い光路を通過しなければならず、したがってそのような屈折率の差がない場合よりも強く消光されるからである。
【0063】
第2屈折率を有する不透明な材料は、その効果が不透明であることからそのように呼ばれる。具体的には、本来それは第2屈折率を有する透明な材料であるが、これ自体が吸収性材料、特に吸収性粒子と混合されることにより、全体として不透明な作用が生じるのである。言い換えれば、不透明な材料は透明部分と不透明部分を有する材料である。不透明な材料は、例えば透明部分としてラッカー又はポリマーからなり、不透明部分については、例えば最大延長方向で500nm未満のサイズを有するグラファイト粒子、又は200nm未満のサイズを有するブラックカーボンのナノ粒子、例えば煤粒子と混合することができる。代替的に又は組み合わせて、不透明な材料の不透明部分は、染料又は染料混合物を含むことができる。適当な染料は、例えば可視域のすべての光を吸収するスーダンブラックである。不透明な材料中の吸収性粒子の質量分率は、原則として50%を超えるべきではないが、例外もあり得る。
【0064】
好適な実施形態では、それぞれ2つの第2領域の間に、第3屈折率を有する別の不透明な材料からなる第3領域が形成されており、第3屈折率はそれぞれ第1屈折率より大きく、且つ、第2屈折率より大きい。この特別の場合において、第1屈折率と第2屈折率との間の屈折率の差は、好適には0.1を超えるべきではなく、これに対して第1屈折率と第3屈折率との間の差は大きいことが効果のために望ましい。さらに、第2領域は、一方では光学素子の入光面と第3領域との間に、他方では光学素子の出光面と第1領域の出光面との間に形成することもできる。このようにすると、光が放射される角度範囲の集束がさらに強くなり、それによって覗き見防止モードが改善される。
【0065】
この場合、第3屈折率を有する別の不透明な材料は、第2屈折率を有する不透明な材料と同様に構成されている。即ち、透明部分と、吸収性粒子の質量分率がせいぜい50%の不透明部分とを含む。この3種類の材料を用いた実施形態では、第2屈折率を有する不透明な材料における吸収性粒子の質量分率は、第3屈折率を有する別の不透明な材料において十分に高い場合は、50%より大幅に低くすることもできる。
【0066】
今説明したこの光学素子は、有利には主要面の1つに、好適には下側の主要面に鏡面反射を含むことができる。これは、主要面全体の角度に依存する鏡面反射であるか、又は第2領域の表面における完全鏡面反射である。冒頭で記述した光学素子の特別な実施形態に関する説明は、この光学素子にも適用できるので、繰り返さないものとする。
【0067】
これに関して、本発明はさらに最後に記述した光学素子の製造方法を含んでおり、この方法は以下に記述するステップを含む。第1屈折率を有する透明な材料からなる第1層と、第2屈折率を有する不透明な材料からなる第2層とを交互に積層し、第1屈折率は第2屈折率より大きい。そして、これらの第1層と第2層は、例えば加硫又は接着によって互いに接合される。最後に、層複合体から光学素子を切り取る。
【0068】
一般に、すべての光学素子において、屈折率の異なる領域間の境界面における粗さRaは、好適には20nm以下であるべきである。
【0069】
上述した本発明の様々な実施形態は、自己発光型画像表示装置上に直接実装することもできる。ここで、以下に詳しく述べるOLEDパネルが特に適している。しかしながら、他の自己発光型ディスプレイのタイプも考えられる。
【0070】
実装は、例えば次のように行うことができる。第1屈折率を有する材料からなる第1領域を、OLEDピクセルの発光領域上に直接形成する。OLEDパネルの非発光領域には、第1領域と相補的な構造を有する第2領域を形成する。第2領域は少なくとも一時的に、即ち恒久的又は切り替え可能に不透明な第1層及び/又は第2層で覆われている。第1領域は、OLEDピクセルからの光収率を高めるために散乱構造で覆われていないが、好適には少なくとも一時的に不透明な第1層と第2層の上側は覆われている。
【0071】
基本的には、上述したパラメータを特定の限界内で変化させれば、本発明の性能は維持される。
【0072】
上述した特徴及び以下に説明する特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、記載された組み合わせだけでなく、他の組み合わせや単独でも使用できることは自明である。
【0073】
以下に、本発明を、同様に本発明に不可欠な特徴を開示している添付の図面を参照しながら実施形態例によって詳細に説明する。これらの実施形態例は、単に具体的に説明するためのものであり、発明を制限するものと解釈されてはならない。例えば多数の要素又は部材を有する実施形態例の説明は、これらすべての要素又は部材が実装に必要であると解釈されるべきではない。むしろ、他の実施形態例は代替的な要素や部材、より少ない要素や部材、又は追加の要素や部材を含み得る。異なる実施形態例の要素又は部材は、特に断りのない限り、互いに組み合わせることができる。ある実施形態例について説明された修正及び変形は、他の実施形態例にも適用可能である。重複を避けるために、異なる図中の同一の又は対応する要素には同一の参照符号を付し、繰り返し説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1a】
図1aは、第1実施形態でケースa)の光線のみが光学素子から出射される第1の状態における第1光学素子の原理図(断面図)である。
【0075】
【
図1b】
図1bは、第1実施形態でケースa)及びb)の光線のみが光学素子から出射される第2の状態における第1光学素子の原理図(断面図)である。
【0076】
【
図1c】
図1cは、第1実施形態で光線が吸収されず、単に変位及び/又は全反射される第3の状態における第1光学素子の原理図(断面図)である。
【0077】
【
図1d】
図1dは、第2実施形態でケースa)及びc)の光線のみが光学素子から出射される第1の状態における第1光学素子の原理図(断面図)である。
【0078】
【
図2】
図2は、光学素子の第1領域と第2領域を光学素子に垂直な平行投影面で見た原理図であり、これらの領域は光学素子の表面全体に帯状に交互に分布するように配置されている。
【0079】
【
図3a】
図3aは、光学素子の第1領域と第2領域を光学素子に垂直な平行投影面で見た原理図であり、第1領域は光学素子の表面全体に矩形状に分布するように配置され、第2領域によって完全に囲まれている。
【0080】
【
図3b】
図3bは、光学素子の第1領域から第4領域を光学素子に垂直な平行投影面で見た原理図であり、第1領域と第3領域と第4領域は光学素子の表面全体に分布するように配置され、第2領域によって完全に囲まれている。
【0081】
【
図4】
図4は、第3実施形態における第1光学素子の原理図(断面図)である。
【0082】
【
図5】
図5は、第4実施形態における第1光学素子の原理図(断面図)である。
【0083】
【
図6a】
図6aは、第5実施形態における第1光学素子の原理図(断面図)である。
【0084】
【
図6b】
図6bは、第6実施形態における第1光学素子の原理図(断面図)である。
【0085】
【
図6c】
図6cは、第7実施形態における第1光学素子の原理図(断面図)である。
【0086】
【
図7】
図7は、第8実施形態における第1光学素子の原理図(断面図)である。
【0087】
【
図8】
図8は、第1実施形態の第1光学素子から出る光について、3つのパラメータセットに対する正規化輝度のシミュレーションを発光角度に対してプロットした図である。
【0088】
【
図9】
図9は、第1実施形態における第1光学素子から出る光について、別の3つのパラメータセットに対する正規化輝度のシミュレーションをルーバーフィルタと比較して発光角度に対してプロットした図である。
【0089】
【
図10】
図10は、第2実施形態の第1光学素子から出る光について、3つのパラメータの正規化輝度のシミュレーションを発光角度に対してプロットした図である。
【0090】
【
図11】
図11は、第1実施形態の第1光学素子から出る光について、-25°~+25°の範囲外の輝度の割合のシミュレーションを示す図である。
【0091】
【
図12】
図12は、第9実施形態でケースa)の光線のみが狭い角度範囲で光学素子から出射される第1の状態における第1光学素子の原理図(断面図)である。
【0092】
【
図13】
図13は、第9実施形態でケースa)の光線のみが
図12の状況に比べて拡大された角度範囲で光学素子から出る第2の状態におけるに第1光学素子の原理図(断面図)である。
【0093】
【
図14】
図14は、方法の領域C1及びC2を帯状に交互に分布するように配置した原理図である。
【0094】
【
図15】
図15は、第1実施形態における第2光学素子の原理図(断面図)である。
【0095】
【
図16】
図16は、第1実施形態における第2光学素子の原理図(断面図)であり、例示的な光線が記入されている。
【0096】
【
図17】
図17は、第10実施形態における第1光学素子を示す原理図である。
【0097】
【
図18】
図18は、第1実施形態及び第8実施形態の第1光学素子から出る光の正規化輝度のシミュレーションの比較を発光角度に対してプロットした図である。
【0098】
【
図19】
図19は、第9実施形態の第1光学素子から出る光について、2つの状態における正規化輝度のシミュレーションの比較を発光角度に対してプロットした図である。
【0099】
【
図20】
図20は、第1実施形態における第1光学素子を透過型画像表示装置及びバックライトと併用した場合の第1状態における原理図(断面図)である。
【0100】
【
図21】
図21は、第1実施形態で自光式画像表示装置と一緒に使用した場合の第1の状態における第1光学素子の原理図(断面図)である。
【0101】
【
図22】
図22は、第1実施形態の第1光学素子を切り替え可能な第11実施形態に発展させた図である(部分図)。
【0102】
【
図23】
図23は、第1実施形態の第1光学素子を切り替え可能な第12実施形態に発展させた第1の状態における図である(部分図)。
【0103】
【
図24】
図24は、第1実施形態の第1光学素子を切り替え可能な第12実施形態に発展させた第2の状態における図である(部分図)。
【0104】
【
図25a】
図25aは、第1光学素子の製造方法を説明する原理図である。
【
図25d】
図25dは、第1光学素子の製造方法を説明する原理図である。
【
図25e】
図25eは、第1光学素子の製造方法を説明する原理図である。
【
図25f】
図25fは、第1光学素子の製造方法を説明する原理図である。
【0105】
【0106】
【
図27a】
図27aは、発展例における第3光学素子の実施形態を示す図である。
【
図27b】
図27bは、発展例における第3光学素子の実施形態を示す図である。
【
図27c】
図27cは、発展例における第3光学素子の実施形態を示す図である。
【0107】
【
図28】
図28は、第3光学素子の別の実施形態を示す図である。
【0108】
【
図29】
図29は、様々な入射条件に対する光線推移を示す図である。
【0109】
【
図30】
図30は、入射光と比較した透過光の角度範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0110】
図面は縮尺通りではなく、原理図にすぎない。また、実際には多くの光線が存在するが、見やすくするため原則として数本の光線のみを表示している。
【0111】
面状に広がる例示的な第1光学素子1は、少なくとも第1屈折率N1を有する第1の透明な材料からなる第1領域B1と、第2屈折率N2を有する第2の透明な材料からなる第2領域B2とからなり、これらの領域は第1光学素子1の表面全体で1次元又は2次元周期的な順序で交互に配置されており、人間の目に見える全波長域において第1屈折率N1は第2屈折率N2よりも大きい。第1光学素子1はさらに、第2領域B2の各々の下側に設けたそれぞれ少なくとも一時的に不透明な第1層OBと、第2領域B2の各々の上側に設けたそれぞれの少なくとも一時的に不透明な第2層ABを含んでいる。ここで、「少なくとも一時的に」とは、層が恒久的に不透明であるか、又は不透明な状態と透明な状態との間で切り替え可能であるかのいずれかを意味する。層が恒久的に不透明である限り、切り替え可能である必要はない。上側とは、通常光学素子1の出光面を意味し、ここでは具体的に第1領域若しくは第2領域の出光面を意味する。同様に、下側とは、光学素子1の入光側、ここでは具体的に第1領域若しくは第2領域の入光面に相当する。光学素子の観視者又は使用者は、この素子の光が出る上側を見る。
【0112】
入光側で光学素子1に衝突する光は、第1層OBに基づき、この第1層OBが不透明な状態にあれば、専ら第1領域B1の入光面を通って光学素子1に入射し、そこで入射角、偏光、及び第1屈折率N1と第2屈折率N2の比に応じて、a)第1領域B1内で全反射し、又は妨げられずに伝播し、その後でそれぞれの第1領域B1の出光面で再び出射され、又はb)第1領域B1から隣接する第2領域B2に進入し、その中を伝播して、最終的に、第2層ABが不透明な状態であれば出光側で吸収され、第2層ABが透明な状態であれば出射され、又はc)光が第1領域(B1)から隣接する第2領域(B2)に進入した場合には、再び別の隣接する第1領域(B1)に進入し、そこで与えられた拡散方向と偏光に応じて出光面で出射されるか、又は光学素子(1)内でさらに伝播して、最後に出射又は吸収される。最終的に、出光側で光学素子(1)から出る光は、入光側で光学素子(1)に衝突する光と比較してその拡散方向が制限される。基本的にケースa)又はb)に該当しない光線は、すべてケースc)に該当するはずである。実際には、第1光学素子1上には、多数の第1領域B1と第2領域B2が存在する。
【0113】
これについて、
図1aは、第1実施形態におけるこのような第1光学素子1の原理図を、ケースa)の光線のみが光学素子1から出射される第1の状態(即ち第1層OBと第2層ABが不透明)において示している。これらの光線は、下から光学素子1に入射する光線と比較して拡散方向が制限されている。上述したケースb)の光線は、第2層ABで吸収される。下から第1層OBに入射する光も同様に吸収される。寸法設定のために、D1は第1領域B1の幅を示し、D2は第2領域B2の幅を示し、Hはそれぞれ両領域B1及びB2の等しい高さを示す。特別の用途では、第1領域B1と第2領域B2は、それぞれ一定の限界内で高さが異なることも可能である。
【0114】
さらに、
図1bは、第1実施形態における第1光学素子1の原理図を、ケースa)及びb)の光線のみが光学素子1から出射される第2の状態において示している。これについて、上側の第2層ABは透明な状態にある(破線で示す)。したがって上側で光学素子1から出る光の角度スペクトルは、ケースa)の光線のみが出る
図1aの状況よりも著しく広い。
【0115】
さらに、
図1cは、第1実施形態における第1光学素子1の原理図を、光線が吸収されず、変位及び/又は全反射のみが行われる第3の状態において示している。これについて両層AB及びOBは、透明な状態に置かれる(破線で示す)。
【0116】
最後に、
図1dは、第2実施形態における第1光学素子1の原理図を、ケースa)及びc)の光線のみが光学素子1から出射される第1の状態(即ち両層AB及びOBが不透明)で示している。この光線についての第3のケースc)、即ち光線は、B1からB2への屈折率境界を乗り越えた後、B2次に隣接するB1への次の屈折率境界を再び乗り越え、そこで与えられた拡散方向と偏光に応じて出射されるか、さらに光学素子内を伝播して、最後に出射されるか吸収されることは、特定の用途にとって、例えば約30°~50°の中心角範囲の光拡散方向は吸収されるが、これよりも大きいか小さい角度には光を当てる場合に興味がある。c)で挙げたケースは、光学素子の光学的シミュレーションに基づいて、第1屈折率N1と第2屈折率N2の相応の寸法設定、並びに第1領域B1と第2領域B2の幅及びそれらの高さの相応の選択により包含したり除外したりすることができる。
【0117】
入射光の拡散方向の好適な制限(即ち
図1aに示すような光線のケースa)だけがなおも存在する)を達成するためには、少なくとも一時的に不透明な両第1層OB及び第2層ABが実際に不透明であることが重要である。これらの層の1つ、例えば第2層ABが不透明でなくなるとすぐに、B1-B2境界面における全内部反射の実際の限界角度を超えて第2領域B2に進入する斜めの光線は、不透明でない第2層ABを通って意図せず境界面上縁から出ることができる。
【0118】
さらに、
図2は、第1光学素子1の第1領域B1と第2領域B2を光学素子1に垂直な平行投影で見た原理図(即ち平面図)を示しており、これらの領域は光学素子1の表面全体に交互に分布するように帯状に配置されている。これにより、光拡散方向の制限は、帯状の第1領域B1と第2領域B2に垂直な方向には有効であろうが、これらに平行な方向には有効ではないであろう。
【0119】
これと代替的に、
図3aは、第1光学素子1の第1領域B1と第2領域B2を光学素子1に垂直な平行投影で見た原理図(同様に平面図)を示しており、ここでは第1領域B1は光学素子1の表面全体に矩形状に分布するように配置されており、単一の第2領域B2(図では黒)によって完全に囲まれている。即ち、第2領域B2は第1領域B1に対してそれぞれ相補的に成形されている。これにより光拡散方向の制限は、光学素子1の表面に垂直な少なくとも2つの平面においてそれぞれ有効であろう。実用的にこのような光学素子1の作用は、原則として光拡散方向が光学素子の中心垂線に近いか若しくはこれと平行な任意の角度で集束されている。この場合に「近い」とは、中心垂線若しくは平行線からの偏差が(実施形態に応じて)25°又は30°未満であることを意味する。
【0120】
さらに、
図3bは、光学素子1の複数の領域B1~B4を光学素子に垂直な平行投影で見た原理図を示しており、領域B1、B3及びB4は、光学素子の表面全体に矩形状に分布するように配置され、領域B2によって完全に囲まれている。この光学素子1は、第1領域B1と第2領域B2に加えて、別の領域B3、B4も有している。この場合、領域B1、B3及びB4は、形状及び/又は屈折率に関してそれぞれ異なるパラメータを有する。このため、これらの領域B3及びB4を透過して光学素子1から出る光は、領域B1とは異なる拡散方向の制限を受ける。このようにして、光学素子1全体に光拡散方向の制限が異なる領域、いわば集束の異なる領域が分布することが実現可能である。
図2、
図3a及び
図3bによるすべての変形例は、
図1a~
図1dによる状況と適当に組み合わせることができる。第1領域B1と第2領域B2の他の形状も可能である。この場合、本発明の機能形態を維持するために常に重要なのは、第1領域B1と第2領域B2が光学的に直接隣接していて、可能な限り隙間なく光学的な屈折率ジャンプが与えられていることである。
【0121】
有利な実施形態は、少なくとも一時的に不透明な各第1層OBの下側、即ち第2領域B2の入光面が、恒久的吸収体層及び/又は少なくとも1つの下方鏡面反射層によって形成されているように構成されている。1つの鏡面反射層のみが存在する場合、この層が不透明な特性も有することは言うまでもない。鏡面反射特性は、例えば本発明による光学素子が、照明装置に例えばLCDパネル用に組み込まれる場合に、効率を高めるのに寄与する。さらに、少なくとも一時的に不透明な各第2層ABの上側、即ち第2領域B2の出光面が、恒久的吸収体層によって形成されていることも可能である。この場合、特定の静的実施形態において両層が恒久的な不透明特性を有し、第1屈折率と第2屈折率が変化しない場合、光学素子は、これに入射する光の拡散方向に対して恒久的に制限するように作用する。ある静的実施形態において、両層が恒久的な不透明特性を有し、第1屈折率N1と第2屈折率N2が変化しない場合、光学素子1は入射する光の拡散方向に対して恒久的に制限するように作用する。
【0122】
これに対して、本発明の他の切り替え可能な実施形態において、第1光学素子1の両層AB及び/又はOBの少なくとも一方が不透明な状態と透明な状態との間で切り替え可能であり、したがって光学素子1に入射する光の拡散方向を制限する特性はこのようにオン/オフすることができる。即ち、両層AB及びOBが不透明である場合にのみ制限される(ケースa)、
図1参照)。両層AB又はOBのうちの1つが不透明でなくなるとすぐに、光拡散方向の制限はなくなる(ケースa)及びb)、場合によってはc)、とりわけ
図1bに示されている)。このように、光学素子1は切り替え可能である。さらに、
図1cに示すように、両層AB及びOBが透明に切り替えられる場合、光学素子1は、光の入射方向に応じて、単に第1領域B1と第2領域B2との境界における全内部反射による光線変位及び方向変更を引き起こすが、全体として光を遮断しない。
【0123】
好適な切り替え可能な実施形態では、上側の第2層ABのみが不透明-透明に切り替え可能に設計されているが、下側の第1層OBは恒久的に不透明に(場合によっては反射するように)構成されている。これは、所望の効果を達成するのに十分である。
【0124】
第1層OB若しくは第2層ABの切り替え可能性は、好適にはレクトロウェッティング、電気泳動、エレクトロクロミズム及び/又は液晶セルの原理のいずれか1つ又は同時に複数の原理に基づくことができる。エレクトロウェッティングの場合は、当該第1層OB及び/又は第2層ABについてエレクトロウェッティングの対象となる不透明な液体量の少なくとも2つの状態が定義されよう。これについて、
図23は第1実施形態の第1光学素子1の切り替え可能な第12実施形態への発展形態を、ここでは
図1aに対応する第1の状態において部分図として示している。これに対して、
図24は第1実施形態の第1光学素子1の切り替え可能な第12実施形態への発展形態を、ここでは
図1bに対応する第1の状態において部分図として示している。
図23及び
図24の両図面による実施形態では、少なくとも以下の構成要素が存在する。即ち、少なくとも1つの扁平な酸化インジウムスズ(ITO)電極4、扁平な絶縁体層8、表面から突出してそれぞれ液滴10内に突入する細い電極9a、扁平なITO電極4及び扁平な電極9と接触している制御可能な電圧源(図示せず)、並びに絶縁体層8と電極9の間に配置され、場合によってはゲルマトリックス又は透明な液体に埋め込まれ、エレクトロウェッティングの効果を受ける不透明な液滴10。
【0125】
図23による第1の動作状態では、第2層ABの液滴10が第2領域B2の対応する表面を可能な限り完全に覆い、したがって不透明であろう(この場合は拡散方向の制限がある)。
図24による第2の動作状態では、第2層ABの液滴10は、第2領域B2の対応する表面を可能な限り小さい面積で覆い、したがってほぼ透明であろう(この場合は拡散方向の制限がない)。これについて、電圧源でそれぞれ上記の状態に必要な電圧が調整されるであろう。
【0126】
電気泳動の場合は、第1層OB及び/又は第2層ABに対して、液体又はゲルマトリックス中で電気泳動できる不透明な粒子が提供されよう。これらの粒子は、透明電極を介して印加できる電界の作用により、第1の動作状態において当該第1層OB若しくは第2層ABとして第2領域B2の対応する表面を可能な限り完全に覆い、その結果として当該層OB若しくはABは不透明に作用する(この場合は拡散方向の制限がある)。電界分布が異なる第2の動作状態では、粒子は第1層OB又は第2層ABとして第2領域B2の対応する表面を可能な限り小さい面積で覆うか、又はリザーバに移送されるか、又は体積中に分散され、したがって層は透明であろう(この場合は拡散方向の制限がない)。
【0127】
この変形例において、不透明で電気泳動可能な粒子が両層OB及び/又はABに置き換わることも可能である。このような粒子は、第2領域B2の表面上に、つまり両層OB及び/又はABの位置に当接し、全反射を妨げて不透明な状態を作り出すか、又は電気泳動後に最大100μm離れて位置し、上記位置での全反射を可能にし、それによって光を光学素子内でさらに伝播させ、最後に第1領域B1において出射されよう。
【0128】
さらに、
図22は、第1光学素子1の切り替え可能な第11実施形態への発展形態を、第1実施形態の部分図として再現している。この場合、第2層ABを形成するために、少なくとも以下のものが存在する。即ち、透明電極4及び6、透明電極4及び6と接触している制御可能な電圧源(図示せず)、少なくとも1つのエレクトロクロミック層5、並びに任意選択で保護層7、例えばガラス又はポリマー。エレクトロクロミズムの場合、層5は、エレクトロクロミック材料、例えば金属酸化物(TiO
2、NiO、Nb
2O、MoO
3、Ta
2O
5、WO
3、IrO
2又はZr
2O
5)、並びにエレクトロクロミック材料を埋め込んだ相応の透明電極4、6、例えばITO(インジウムドープ酸化スズ)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)によって形成されよう。エレクトロクロミック層5、ひいては第2層ABについて、電極4、6に印加される電圧に応じて少なくとも2つの状態が定義される。第1の動作状態では第2層ABは不透明であり(この場合は拡散方向の制限がある)、第2の動作状態では第2層ABは透明である(この場合は拡散方向の制限がない)。これは第1層OBについても準用される。
【0129】
第1層OB及び/又は第2層ABは液晶セルとして、例えば相応の偏光子対を有するTNセル(ツイストネマティック液晶セル)として形成することもできる。この場合、電極に相応の電界又は電圧を印加することにより、液晶セルを不透明(この場合は拡散方向の制限がある)又は透明(この場合は拡散方向の制限がない)に切り替えることができる。
【0130】
さらに、第1層OB及び/又は第2層ABが、第1領域B1を構成している材料に埋め込まれていると有利であり得る。この場合、好適には光学素子1の第1領域B1の材料部分が、当該層を埋め込んでいる上記部分にシームレスに移行している。これについて、
図4に第3実施形態における第1光学素子の原理図を示し、
図5に第4実施形態における第1光学素子の原理図を示す。ここで、第1屈折率N1を有する第1領域B1の材料は、
図4に示すように、上述したように形成された基体の材料と同じ材料であることができる。代替的に、
図5に再現するように、第2領域B2が第1屈折率N1を有する第1領域B1の材料によって完全に包囲されていることが考えられる。
【0131】
別の実施形態では、第1領域B1と第2領域B2は、光学素子1の上側に垂直な断面方向で見て台形状に形成されている。これについて、
図6A~
図6Cは、第5、第6及び第7実施形態における第1光学素子1の原理図を示す。このような第1領域B1と第2領域B2の実施形態によって、光学素子1から出る光の拡散方向に的確に影響を与えることができる。即ち、実施形態に応じて表面上で光のより強い集束(
図6a)又はより弱い(
図6b)集束が行われる。さらに、例えば第1領域B1と第2領域B2の平行四辺形状の断面形状(
図6c)によって、それに伴い第1領域と第2領域の境界面が傾くことによって頂点の移動を達成することが可能である。
【0132】
さらに、光学素子1の第1領域B1の少なくとも一部、好適には全部の第1領域B1において、それらの上側、即ち出光面にレンズ構造L、好適には凸レンズ構造を設けることが可能である。これは、光学素子1から出る光の拡散方向に所定の影響を与えることをサポートする。これについて、
図7は、第8実施形態における第1光学素子1の原理図を示す。代替的又は追加的に、下側、即ち第1領域の入光面は、凹レンズ構造又は凸レンズ構造(図示せず)を備えて、第1領域への入光方向に影響を与え、それによってまた光線が最終的に上記のケースa)、b)又はc)のいずれに該当するかに影響することができる。「上側」及び「下側」の用語は観視者を基準にして見られる。光学素子は観視者のために画像表示装置内に取り付けられていて、観視者は第1光学素子1の自分に向けられた側、それゆえ上側をなす出光側のみを知覚する。
【0133】
図8は、第1実施形態の第1光学素子1から出る光について、3つのパラメータセットに対する正規化輝度のシミュレーションを、発光角度に対してプロットした図である。これについては、
図1a及び
図2の図面による状況を基礎とした。第1層OB及び第2層ABの100パーセントの不透明性が仮定された。N1=1.6とN2=1.59の間の0.01の小さい屈折率の差でトップハット分布が達成されることが非常に明確に分かる。さらに、より大きい角度で任意の大きさの係数で消光を実現できることが明らかである。この計算例では、第1領域B1と第2領域B2の高さHはどちらも同じであるが、32μm、50μm及び65μmと変化させた。高さHが大きいほど、出射光の角度範囲は狭くなる。全出射光がケースa)に分類される。
【0134】
作用機構は、言い換えれば次の通りである。即ち、光線がそれぞれ第1領域B1と第2領域B2との境界面(即ち第1屈折率N1から第2屈折率N2までの境界面)に当たると、光線は入射角に応じて全反射するか、又は第2領域B2(屈折率N2)へ屈折して進入する。後者の光線が第2領域B2(第2屈折率N2)に屈折して進入すると、それにもかかわらず(小さい)部分は第1領域B1に反射して戻る(フレネル反射)。屈折率の差N1-N2が小さいほど、この反射される部分は小さくなる。(製造上制約された)高さHが高いほど、この反射効果はよりマスクされる。理想的には、ほぼ完全な矩形分布が得られる。
【0135】
図8~
図10の図面には、上記の反射が既に含まれている。これらの図面で対数座標に注目されたい。上記
図8~
図10の図面は、いずれも重要なパラメータ、即ち第1領域の幅D1、第2領域の幅D2、k各領域の同一の高さH、第1屈折率N1及び第2屈折率N2について技術光学的な寸法設定のための例示的なパラメータを与える。
【0136】
捕捉的に、
図9は、第1実施形態の第1光学素子1から出る光について、別の3つのパラメータセットについて同じ前提に基づく正規化輝度のシミュレーションを示す。今回は、高さH=65μmは一定で、第2屈折率N2、したがってまた第1屈折率N1=1.6と第2屈折率N2との屈折率の差も変化させた(N2=1.56/1.575/1.59)。ここで明らかになるのは、屈折率の差が大きいほど、多くの光を横方向角度に許容することである。出射された光はすべてケースa)に分類される。それにもかかわらず、ここでもトップハット分布が与えられている。
図9には、光の方向を制限するための従来のルーバーフィルタとの比較も記入されている。本発明による第1光学素子1は、先行技術、即ちルーバーフィルタと比較して著しく改善された特性を有することが明確に認識される。即ち一方では、覗き見防止効果は、設計に応じて25°ないし約30°の角度から数段に良くなっている。他方では、本発明は望ましいトップハット分布を持つ。これに対し、原則としてトップハット分布を持たないルーバーフィルタでは、中心垂線から数度ずれただけでも、設計や見る位置によって知覚可能な輝度は変動する。中心垂線から10°以上の角度から測定すると、知覚可能な輝度は半分に激減することがある。
【0137】
これに対して、
図10は、第2実施形態の第1光学素子1から出る光について、パラメータセットの正規化輝度のシミュレーションを発光角度に対してプロットした図である。ここでは、両側にエッジを持つ光拡散角の破裂型分布が明確に確認できる。ケースa)に分類される光が約-28°~+28°の間の角度にあるのに対し、ケースc)の追加の光線は約-50°~-77°及び+50°~+77°の間に存在する。
【0138】
さらに、
図11は、第1実施形態の第1光学素子1から出る光について、-25~+25度の範囲(即ちケースa)の光)外の輝度の割合のシミュレーションを示している。このシミュレーションの基礎となる第1屈折率及び第2屈折率はN1=1.6及びN2=1.59である。上部の(明るい)パラメータウィンドウで、上記の角度範囲で出射される光の割合が最大であることが分かる。当業者はここから、第1領域B1と第2領域B2の幅D1及びD2並びに高さHの寸法設定のための値を導いて、ケースa)の光学素子1を最適化することができる。
【0139】
ところで、
図18は、第1実施形態(
図1aに対応)と第8実施形態(
図7に対応)の第1光学素子1から出る光について、正規化輝度のシミュレーションを発光角度に対してプロットして比較したものである。トップハット分布を崩さずにレンズLを使用することで、角度制限効果を大幅に向上させることができることが分かる。
【0140】
本発明による光学素子1の特別の実施形態では、第1領域B1における材料の第1屈折率N1及び/又は第2領域B2における材料の第2屈折率N2は、少なくとも2つの状態の間で切り替えることができ、その結果として領域及び屈折率の境界B1~B2における屈折率の差をそれぞれ調節することが可能であり、それによって上記の拡散方向の制限を変化させることができる。これについて、
図12は、第9実施形態における第1光学素子1の理図を、ケースa)の光線のみが狭い角度範囲で光学素子1から出射される第1の状態において示している。ここでは、液晶の相応の配向において第2屈折率N2=1.49、及び第1屈折率N1=1.5とする。
【0141】
図13は、第9実施形態における第1光学素子1の原理図を、同様にケースa)の光線のみが光学素子1から出射されるが、
図12の状況に比べて角度範囲が拡張されている第2の状態において示している。ここでは、液晶の相応の配向において第2屈折率N2=1.49、及び第1屈折率N1=1.6である。これについて、
図19は、第9実施形態の第1光学素子1から出る光について、
図12と
図13に対応する2つの状態で正規化輝度の光学シミュレーションを発光角度に対してプロットして比較している。上述した光学素子1の切り替え可能な第9実施形態によって、角度制限を変化させることができることは明らかである。
【0142】
上記の第9実施形態では、第1領域B1及び/又は第2領域B2の材料の少なくとも1つは、電極に接触している液晶で構成され、電極における電圧を変化させて液晶中の直線偏光に対する屈折率変化を誘起することができる。電極は、例えば第1領域B1の上側と下側、即ち出光面と入光面に配置されている場合、例えばITO層の形態で透明であることができる。この実施形態について付言すると、第1層OB及び第2層ABは、好適には恒久的に不透明であり、さらに原則としてケースa)の光線のみが光学素子1から上方に出ることができる。しかしながら、ケースa)のこれらの光線は、
図12、
図13及び
図19の図面に示すように、第1領域B1から第2領域B2への境界面における屈折率の差に応じて、拡散方向の角度範囲が狭くなったり広くなったりする。この角度範囲は、屈折率の差が大きいほど広く、屈折率の差が小さいほど狭くなる。基本的にこの第9実施形態では、用途によって必要であれば、さらに他の屈折率値に対応する第3、第4及びそれ以上の状態を設定することができる。
【0143】
特別な応用例で、光学素子1上に少なくとも1つの第1領域B1が形成されていて、その光学素子1に垂直な平行投影で見た最短延長は、すべての第2領域B2の光学素子1に垂直な平行投影で見た最短延長の少なくとも20倍大きく、上記の少なくとも1つの第1領域B1内ではその縁部と平行変位を除き、光学素子1から出る光の拡散方向は、光学素子1に衝突する光に比べて制限がない。これについて、
図17は、このような第10実施形態における第1光学素子1を図解するための原理図を示している。斜線を付けていない左側半分は、単一の完全な第1領域B1に対応するのに対し、斜線を付けた右側半分は、例えば光学素子1の第1~第9実施形態に対応して第1領域B1と第2領域B2を交互に有する。これはとりもなおさず、光学素子1を透過する光の拡散方向の制限は光学素子1の全面に作用せず、この例では右側の半分のみに作用することを意味する。
【0144】
本発明は、上述した第1光学素子1を画像表示装置(例えばLCDパネル、OLED又はマイクロLED又はその他のディスプレイ技術)と共に、又は透過型画像表示装置のための照明装置と共に使用すると、特別の意義を得る。これについて、
図20は、第1実施形態における第1光学素子1の原理図(部分断面図)を第1の状態において、しかも透過型画像表示装置「LCD」及びバックライト「BLU」と共に使用する状況で再現している。光学素子1は、特に切り替え可能な実施形態において、例えばLCDモジュールのような透過型画像表示装置のためのバックライトBLUに直接組み込まれている。ここで有利には恒久的に不透明な層OBが下側で反射するので、そこに衝突する光は、図面に略示されているように反射してバックライトBLUに戻され、そこでリサイクルされる。このように、バックライトBLUからの光は、専ら第1領域B1に進入でき、第2層ABが不透明である場合に、光学素子1の第1の状態において本発明による光方向の制限を経験する。画像表示装置LCDは、本発明に従って方向付けられた光によってのみ透過され、例えばLCDパネル自体による散乱損失を除いて、相応に制限された角度範囲からのみ見ることができる。図面には示されていないが、光学素子1の第2の状態が設定されて、第2層ABが透明に切り替えられると、光の広い角度スペクトルが画像表示装置LCDを透過して、広い角度範囲から見ることができるようになろう。
【0145】
上記の使用方法で画像表示装置LCDの切り替え可能な覗き見防止が達成される。即ち、光学素子1から出る光線のうち上記のケースa)だけが残る第1の動作状態において、トップハット分布を有する設計に応じて、覗き見防止効果が提供される。トップハット分布は、ルーバーフィルタに基づく典型的な光の分布よりも観視者にとって快適である。なぜなら、ルーバーフィルタでは動きの自由度が著しく制限され、頭を数センチ横に動かすだけでも、目に見えて強い輝度低下が生じるからである(比較のため
図9も参照)。画面サイズが十分大きければ、頭を動かさない状態でも目に見える明るさの低下が部分的に発生する。これはトップハット分布により効果的に対処される。光学素子1から出る光線に原則としてケースa)及びb)、場合によってはケースc)も該当する第2の動作状態では、画像表示装置LCDをあらゆる方向から自由に観視できる自由視モードが与えられる。
【0146】
さらに、
図21は、第1実施形態における第1光学素子1の原理図(部分断面図)を、第1の状態において、しかも自己発光型画像表示装置3と共に使用する状況で示している。この場合、光学素子1は観視方向でそのような画像表示装置3、例えばOLEDパネル(但しバックライト付きLCDパネルや他の任意の画面技術も同様に適用可能であろう)の前に配置されていて、それらの光拡散方向を選択的又は恒久的に制限することができる。この場合、画像表示装置3上に、画像表示装置3のそれぞれのピクセルによって放射される光を、実質的に第1領域B1とは反対側に位置する面に集束させる光学系も存在することができる。これは例えば、ほぼピクセル幅(又は場合によってはピクセル高さ)の周期を有するマイクロレンズグリッド又はレンチキュラーによって可能である。第1領域B1の周期(即ち幅D2+D1の合計)は、最良の場合にピクセル幅若しくはピクセル高さの周期と一致して、互いに整列している。
図21では、画像表示装置3のピクセル幅の周期を、2本の破線で略示している。この場合、ピクセルは第1領域B1に対してほぼ中央に位置している。
図21には見やすくするために、マイクロレンズグリッド又はレンチキュラーを備えた上記の光学系は記入れていないが、存在することができる。
【0147】
さらに、本発明は第1光学素子1の製造方法も含んでおり、簡略化した原理図を示す
図25a~
図25fの図面を参照しながら説明する。この製造方法は、以下のステップを含む。最初に、ここに記載する順序で互いに接合した層、即ち吸収体層として作用する第2層AB、第2屈折率N2を有する材料からなる第2透明層、不透明な、任意選択により同時に反射する第1層OB、及び第1屈折率N1を有する材料からなる第1透明層を含む複数のベースブロックBLを作成する(
図25a参照)。次に、複数のベースブロックBLを上下に積層及び接合して第1積層ブロックSTを得る(
図25b参照)。この積層ブロックSTから、第2層厚D2を有するディスクを、好適には個々の第2層ABの延長平面に対して垂直に切り取る(
図25c参照)。この場合、垂直切断に代えて約60°~120°の切断角度も考慮することができる。続いて、ディスクSCを、それぞれ第1屈折率N1と第1層厚D1を有する第1透明層を間に挟んで積層し、例えば加硫又は接合によって接合して第2積層ブロックSNを得る、(
図25dを参照)。最後に、第2積層ブロックSNから、好適には個々のディスクSCの延長平面に対して垂直に光学素子1を切り取る(
図25e参照)。その結果、
図25fに示すような(第1)光学素子1が得られる。光学素子1の他の製造方法も可能であることは言うまでもない。
【0148】
図15は、それぞれ第1屈折率N1と第2屈折率N2を持つ第1領域B1と第2領域B2を有する2つの透明な相補的型の1次元又は2次元周期的な順序からなる第2光学素子2を示している。これらの型は任意選択で扁平基体S上に形成されており、それにより2方向でそれぞれ1平面を形成する。この場合、第2屈折率B2は有利には1に等しくすることができる。即ち、第2領域B2の型内の材料は、例えば空気である。これは
図15に、第1実施形態における第2光学素子2の原理図として示されている。
図16は、これについて例示的な光路を示している。これにより、(狭角の)選好方向でこのような第2光学素子2に当たる光は妨げられることなく透過する(右側の選好方向、即ち垂直に入射する光線参照)。一方、上記選好方向に対して15°以上の角度を有する光(左側の斜めの光線参照)は、第2光学素子2により全反射及び/又はフレネル反射に基づいて偏向される。ここでも、出射光の拡散方向が影響される。既述の実施形態を準用することができ、それゆえこの箇所では繰り返さないものとする。ここでは上述した実施形態の変形及び手段と作用の関連が準用され、冗長性の理由からここで繰り返すことはしない。
【0149】
最後に、本発明は、面状に広がり入光側と出光側を有する第3光学素子10も含んでおり、その原理図が
図26(部分断面図)に示されている。これは、少なくとも第1屈折率N1を有する透明な材料からなる第1領域E1と、第2屈折率N2を有する不透明な材料からなる第2領域E2とからなり、これらの領域は光学素子10の表面全体で1次元又は2次元周期的な順序で交互に配置されており、人間の目に見える全波長域において第1屈折率N1は第2屈折率N2よりも大きい。光学素子10の第1主要面でこれに衝突する光は、第2領域E2の不透明な材料に基づき、専ら第1領域E1の入光面を通って光学素子10に入射する。幾何学的な入射方向、偏光、及び第1屈折率N1と第2屈折率N2との比に応じて、a)光は第1領域E1内で妨げられずに伝播するか又は全反射される。いずれにしても光はその後、それぞれの第1領域E1の出光面で再び出射される。代替的に、b)光は第1領域E1から隣接する第2領域E2に進入し、そこで第2領域E2の不透明な材料に基づき吸収される。
【0150】
この場合、第1屈折率N1と第2屈折率N2が異なるため、第2領域E2に進入した光線は、垂線から離れる方向により強く屈折する。そうすることにより光学素子10の第2主要面から出る光は、光学素子10に第1主要面で衝突する光と比較して、その拡散方向が制限されている。第2屈折率を有する不透明な材料は、第2屈折率が割り当てられた透明部分と、吸収性粒子からなる不透明部分とを有する。これらの粒子は、好ましくは不透明な材料中に均一に分布しており、不透明な材料中の質量分率は原則として50%を超えない。
【0151】
この第3光学素子10は先行技術を、特に次の点で改善する。第1に、ルーバーフィルタと同様の第3光学素子でもトップハット分布が達成される点である。なぜなら、全反射に基づき、先行技術で通常のように全反射がない場合よりも多くの有効光が所望の制限された角度範囲に透過するからである。第2に、第3光学素子10を透過する光の角度範囲の制限が著しく強くなる。なぜなら、不透明なルーバーが光の方向を制限するように働くだけでなく、領域E1とE2の間の屈折率の差も、領域E2に進入する光線が垂線から離れる方向により強く屈折するように働き、それにより吸収性材料を通るより長い光路を通過することになり、したがって屈折率の差がない場合に比べてより長い経路でより強く吸収されるからである。
【0152】
図8~
図10に関する説明から類推できるように、0.01のわずかな屈折率の差でも顕著な角度制限を達成するのに十分である。このようにわずかな屈折率の差は、例えば第3光学素子10の領域E1又はE2の材料としてポリマー若しくは透明シリコンをドープすることによって達成される。最も単純なケースでは、第3光学素子10のすべての領域E1及びE2は、同じ材料で構成されることになろう。しかし追加的に、領域E1には屈折率を高めるために透明な粒子がドープされ、領域E2には不透明性を得るために不透明なナノ粒子又はマイクロ粒子がドープされよう。
【0153】
この第3光学素子10は、有利には主要面のうちの1つ、好適には第1主要面に鏡面反射を有することができる。これは、主要面全体の角度に依存した鏡面反射として、又は領域E2の表面における完全鏡面反射として形成されている。
【0154】
上述した第3光学素子10は、有利にはLCDパネルのような透過型画像表示装置のための照明装置に組み込むことができる。この場合、この照明装置は、指向性バックライトとして恒久的に作用することができ、例えば本出願人の国際特許出願WO2015/121398号又は国際特許出願WO2019/002496号による実施形態で使用することができる。
【0155】
図27a~c及び
図28は、このような第3光学素子の様々な発展形態を示しており、ここでは光学素子はそれぞれ基体M5と接続されているが、基体M5は光学素子の一部ではない。これまでと同様に、この実施形態における第3光学素子10も、第1屈折率N1を有する第1の透明な材料M1からなる領域E1と、第2屈折率N2を有する第2の不透明な材料M2からなる第2領域E2を有する。第2の不透明な材料M2は吸収性材料が混合されていて、たとえ元の材料が透明であっても、光がいかなる場合も第2領域で吸収されるようになっている。第2屈折率N2は、透明部分に割り当てられる。特に
図27cに示されているように、第1領域と第2領域に加えて、それぞれ2つの第2領域の間に第3屈折率N3を有する別の不透明な材料M3からなる第3領域が形成されている。ここで、第3屈折率N3は、第1屈折率N1と第2屈折率N2よりも大きい。別の不透明な材料M3も、第3屈折率N3を決定する透明部分と、不透明性を提供する吸収性粒子の部分を持っている。第2の不透明な材料M2と別の不透明な材料M3における吸収性粒子の質量分率は最大50%であることができ、個々のケースではこれより多くすることも可能である。別の不透明な材料M3を使用する場合、第2の不透明な材料M2中の吸収性粒子の質量分率は、50%より著しく少なくすることもできる。粒子は
図28で、例えば第3領域M3に記号で表されている。
【0156】
図27a及び
図27bに示すように、第2屈折率N2を有する第2の不透明な材料M2からなる第2領域E2を、一方では光学素子10の入光側と、別の不透明な材料M3の第3領域との間に、他方では光学素子10の出光側と、第1の透明な材料M1からなる第1領域E1の出光面との間に形成することもできる。これは別の不透明な材料からなる表面が連続して閉じた層なので、製造が容易である。
図28に示すように、第1の透明な材料M1からなる第1領域と、第2の不透明な材料M2からなる第2領域は、断面が台形状に形成されてもよい。第1領域E1の台形は別の不透明な材料のない変形例でも使用できるが、それによって角度分布がさらに良好に集束され、そのため第3光学素子10が相応の画像表示装置で使用されると、プライバシーモード/覗き見防止モードがさらに改善されるという利点がある。
図27aでは、追加的に光学素子10の入光面において基体と第2領域との間に鏡面反射層M4が設けられており、第2領域は基体と第3の材料M3からなる第3領域との間に配置されている。この実施形態では、第2領域は特にフィルムとして、つまり第1領域と第3領域よりもはるかに薄く、特に第1領域の出光面に延びることができる。
【0157】
屈折率N1、N2及びN3は、第1屈折率N1を有する第1の材料M1と第2屈折率N2を有する第2の材料M2との間で、特定の小さい角度に対して全反射が起こるように、即ち第2屈折率N2が第1屈折率N1よりも小さくなるように形成されている。好ましくは第1屈折率N1と第2屈折率N2との屈折率の差は0.1より小さい。第2の材料M2と同様に吸収性材料と混合された別の第3の材料M3の第3屈折率N3は、第1屈折率と第2屈折率より大きいか等しいが、小さくはない。その結果、第1の材料M1と第3の材料M3との境界面で全反射されない光線が、第3の材料と第2の材料との境界面でより大きい角度に屈折する。
【0158】
このことは
図29及び
図30で様々なケースについて示されている。ケースAでは、光線は反射層に反射して戻され、バックライトユニット(図示せず)内でリサイクルされる。入射角が小さい光線の場合、ケースBでは、光線は第1領域と第2領域との間の境界面で全反射されるか、第1領域を通って光学素子10を妨げられることなく透過する。これは、
図30で原点と横軸上の第1破線との間の領域に対応している。入射角と出射射角は同じ大きさである。
【0159】
第1領域と第2領域の境界面における全反射の角度よりも大きい角度で第1領域に入る光線については、入射角に応じて2つのケースを区別する必要がある。ケースCの場合、ケースウDの光線経路と区別するためにのみ破線で記入されているが、光線は第1領域と第2領域の境界面でより小さい角度に屈折し、第2領域の出光面で光学素子を離れる。これは、第2領域の厚さに応じて、かなり小さい角度範囲にのみ該当する。ケースDでは、光線はこれより大きい入射角で第1領域から最初に第2領域に入り、そこから第3領域に入り、第2領域と第3領域の間の境界面に衝突する際により大きい角度に屈折する。理想的には、これにより光がないか、又は第3領域がない場合よりも著しく少ない角度範囲が生じ、それによってプライバシーモードがさらに改善される。
【0160】
第1光学素子1について上述した変形例の一部は、第2光学素子2及び第3光学素子10にも適用することができる。
【0161】
上述した光学素子は、提起された問題を解決する。即ち、入射光の拡散方向に所定の影響を与え、任意選択で少なくとも2つの動作状態を切り替えることができる光学素子が説明された。各光学素子は安価に実装することができ、特に覗き見防止モードと自由観視モードとの間の切り替えを可能にするために様々なタイプの画面で汎用可能であり、しかもそのような画面の解像度は実質的に低下しないか、又は無視できる程度にしか低下しない。さらに、これらの光学素子は、トップハット型光分布を実現する可能性を提供する。
【0162】
本発明の利点は多岐にわたる。例えば上記の作用形態は、表面構造を有する必要のない単一の光学素子で生み出される。さらに、光学素子の第1領域B1と第2領域B2は保護材料、例えば第1領域B1の材料中に埋め込むことができる。また、出射光において非常に好適なトップハット分布が達成され、理論的シミュレーションで任意に高いプライバシーコントラストが達成される。本発明による光学素子をLCDパネル用のバックライトに使用する場合には、高い輝度が達成される。さらに、1つの光学素子で2つの平面、例えば左右と上下に同時に光の拡散制限が可能である。
【0163】
上述した発明は、例えばATMや決済端末でのPIN入力やデータ表示、パスワード入力、又は携帯端末での電子メール閲覧など、機密データが表示及び/又は入力される至る所で、画像表示装置と組み合わせて有利に使用することができる。本発明は乗用車にも応用でき、選択的に運転手が同乗者の特定の画像コンテンツ、例えば娯楽番組を見れないようにすることができる、さらに、本発明による光学素子は、その他の技術的及び商業的な目的、例えば顕微鏡用の暗視野照明の光整列、極めて一般的にはヘッドライトなどの照明の光成形及び測定技術に使用することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0163
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0163】
上述した発明は、例えばATMや決済端末でのPIN入力やデータ表示、パスワード入力、又は携帯端末での電子メール閲覧など、機密データが表示及び/又は入力される至る所で、画像表示装置と組み合わせて有利に使用することができる。本発明は乗用車にも応用でき、選択的に運転手が同乗者の特定の画像コンテンツ、例えば娯楽番組を見れないようにすることができる、さらに、本発明による光学素子は、その他の技術的及び商業的な目的、例えば顕微鏡用の暗視野照明の光整列、極めて一般的にはヘッドライトなどの照明の光成形及び測定技術に使用することができる。
上述の実施形態は下記のように記載され得るが、下記に限定されるものではない。
[構成1]
入光側と出光側を備えて面状に広がる光学素子(1)であって、
少なくとも第1屈折率(N1)を有する第1の透明な材料からなる第1領域(B1)と、第2屈折率(N2)を有する第2の透明な材料からなる第2領域(B2)とを含み、これらの領域は第1光学素子(1)の表面全体で1次元又は2次元周期的な順序で交互に配置されており、ここで、前記第1屈折率(N1)は人間の目に見える全波長域で前記第2屈折率(N2)より大きく、さらに、
各第2領域(B2)の入光面における恒久的に不透明な又は透明な状態と不透明な状態の間で切り替え可能なそれぞれ1つの第1層(OB)と、
各第2領域(B2)の出光面に設けた恒久的に不透明な又は透明な状態と不透明な状態の間で切り替え可能なそれぞれ1つの第2層(AB)と、を含み、
その結果として、入光側で前記光学素子(1)に衝突する光は、前記第1層(OB)に基づき、前記第1層(OB)が不透明な状態にあれば、専ら前記第1領域(B1)の入光面を通って前記光学素子(1)に入射し、そこで入射角、偏光、及び前記第1屈折率(N1)と前記第2屈折率(N2)の比に応じて、
a)前記第1領域(B1)内で妨げられずに伝播し又は全反射し、その後でそれぞれの前記第1領域(B1)の出光面で再び出射され、又は
b)前記第1領域(B1)から隣接する前記第2領域(B2)に進入し、その中を伝播して、最終的に前記第2層(AB)が不透明な状態にあれば出光側で吸収され、前記第2層(AB)が透明な状態にあれば出射され、又は
c)光が前記第1領域(B1)から隣接する前記第2領域(B2)に進入した場合には、再び別の隣接する前記第1領域(B1)に進入し、そこで与えられた拡散方向と偏光に応じて出光面で出射されるか、前記光学素子(1)内でさらに伝播して、最後に出射されるか吸収され、
そうすることにより、出光側で前記光学素子(1)から出る光は、入光側で前記光学素子(1)に衝突する光に比べて、少なくとも前記第1層(OB)及び/又は前記第2層(AB)が不透明である場合にその拡散方向が制限されているようにした光学素子(1)。
[構成2]
前記第2領域(B2)の入光面における各第1層(OB)は、恒久的吸収体層により及び/又は前記光学素子(1)から離れる方向に反射する少なくとも1つの層により形成されていることを特徴とする、構成1に記載の光学素子(1)。
[構成3]
前記第2領域(B2)の出光面に設けた各第2層(AB)は、恒久的吸収体層により形成されていることを特徴とする、構成1又は2に記載の光学素子(1)。
[構成4]
前記第1領域(B1)における材料の前記第1屈折率(N1)及び/又は前記第2領域(B2)における材料の前記第2屈折率(N2)は、少なくとも2つの状態の間で切り替え可能であり、その結果として前記第1領域(B1)と前記第2領域(B2)との境界における2つの屈折率の比(N1、N2)がそれぞれ調節可能であり、それによって拡散方向の前記制限が可変であることを特徴とする、構成1から3のいずれか一項に記載の光学素子(1)。
[構成5]
前記第1領域(B1)及び/又は前記第2領域(B2)の材料の少なくとも1つは、電極における電圧の変化を介して液晶中の直線偏光に対する屈折率の変化を誘起するために、電極と接触している液晶からなることを特徴とする、構成4に記載の光学素子(1)。
[構成6]
前記第2層(AB)及び/又は前記第1層(OB)は、不透明な状態と透明な状態との間で切り替え可能であり、この切り替え可能性は、好適にはエレクトロウェッティング、電気泳動、エレクトロクロミズム及び/又は液晶セルの原理のうちの1つ以上に基づいていることを特徴とする、構成1から5のいずれか一項に記載の光学素子(1)。
[構成7]
前記第2層(AB)及び/又は前記第1層(OB)は、前記第1領域(B1)を構成する材料に埋め込まれており、好適には前記光学素子(1)の前記第1領域(B1)の材料部分は、前記第2層(AB)及び/又は前記第1層(OB)を埋め込んでいる前記材料部分にシームレスに移行していることを特徴とする、構成1から6のいずれか一項に記載の光学素子(1)。
[構成8]
構成1から8のいずれか一項に記載の光学素子(1)を製造する方法であって、
前記第1領域(B1)の正構造と支持体の負構造とを有する型を製造するステップと、
硬化後に前記第1屈折率(N1)を有する第1ポリマーを型に充填するステップと、
前記第1ポリマーを紫外光又は冷却によって硬化させ、その後で型からワークピースを取り出すステップと、
ワークピース内の前記第2領域(B2)の構造に、硬化後に前記第2屈折率(N2)を有する第2ポリマーを充填するステップと、
第2ポリマーを紫外光又は冷却によって硬化させるステップと、を含む方法。
[構成9]
前記第1ポリマー又は前記第2ポリマーの硬化後、前記第1領域(B1)を保護するマスクを貫通して前記ワークピースの表面上の前記第2領域(B2)に、不透明な又は透明から不透明に切り替え可能な材料を蒸着又はスパッタリングすることを特徴とする、構成8に記載の方法。
[構成10]
構成1から7のいずれか一項に記載の光学素子を製造する方法であって、
吸収体層として作用する前記第2層(AB)、前記第2屈折率(N2)を有する材料からなる第2透明層、不透明な前記第1層(OB)、及び前記第1屈折率(N1)を有する材料からなる第1透明層を、この順序で互いに接合した層を含む複数のベースブロック(BL)を作成するステップと、
前記複数のベースブロック(BL)を上下に積層し、これらを接合して第1積層ブロック(ST)を得るステップと、
前記積層ブロック(ST)から第2層厚(D2)を有するディスク(SC)を切り取るステップと、
前記ディスク(SC)をその間に前記第1屈折率(N1)と第1層厚(D1)を有する前記第1透明層を介在させて積層し、これらを接合して第2積層ブロック(SN)を得るステップと、
前記第2積層ブロック(SN)から前記光学素子(1)を切り取るステップと、を含む方法。
[構成11]
前記第1層(OB)は反射するように形成されていることを特徴とする、構成10に記載の方法。
[構成12]
前記ベースブロック(BL)を互いに接合し及び/又は前記ディスク(SC)を前記第1透明層と加硫により接合することを特徴とする、構成10又は11に記載の方法。
[構成13]
前記第1積層ブロック(ST)から前記ディスク(SC)を切り取り及び/又は前記第2積層ブロック(SN)から前記光学素子(1)を切り取ることが、個々の層の延長平面に対して垂直に行われることを特徴とする、構成10から12のいずれか一項に記載の方法。
[構成14]
人間の目に見える波長域で面状に拡散する光の拡散方向を制限する方法であって、
開口面上で1次元又は2次元周期的な順序で交互に配置された少なくとも透明な第1領域(C1)と不透明な第2領域(C2)を含む面状開口部を用いて、光の面状調節を行うステップと、
全波長域において、透明な前記第1領域(C1)を伝播する光を、屈折率境界における全反射の限界角度内で反射されて、最終的に出射される光線と、全反射の限界角度外で前記屈折率境界を透過してさらに伝播し、その後で吸収体によって吸収される光線とに、屈折率に基づき角度に依存して分割するステップと、を含み、
その結果として、出射された光は最初に面状に拡散する光に比べて光拡散方向が制限されているようにした方法。
[構成15]
入光側と出光側を備えて面状に広がる光学素子(10)であって、
少なくとも第1屈折率(N1)を有する透明な材料からなる第1領域(E1)と、第2屈折率(N2)を有する不透明な材料からなる第2領域(E2)とを含み、これらの領域は前記光学素子(10)の表面全体で1次元又は2次元周期的な順序で交互に配置されており、ここで、前記第1屈折率(N1)は人間の目に見える全波長域で前記第2屈折率(N2)より大きく、
その結果として、前記光学素子(10)の第1主要面でこれに衝突する光は、前記第2領域(E2)の不透明な材料に基づき、専ら前記第1領域(E1)の入光面を通って前記光学素子(10)に入射し、そこで幾何学的入射方向、偏光、及び前記第1屈折率(N1)と前記第2屈折率(N2)の比に応じて、
a)前記第1領域(E1)内で妨げられることなく伝播し又は全反射し、その後でそれぞれの前記第1領域(E1)の出光面で再び出射され、又は
b)前記第1領域(E1)から隣接する前記第2領域(E2)に進入し、そこで前記第2領域(E2)の不透明な材料に基づいて吸収され、
ここで、前記第1屈折率(N1)と前記第2屈折率(N2)が異なるために、前記第2領域(E2)に進入する光線は垂線から離れる方向により強く屈折し、
そうすることにより、前記光学素子(10)の第2主要面でこれから出る光は、前記第1主要面で前記光学素子(10)に衝突する光と比較して、その拡散方向が制限されているようにした方法。
[構成16]
前記不透明な材料は、前記第2屈折率(N2)を有する透明な材料からなり、この材料は吸収性粒子と混合され、それにより全体として不透明作用が生じることを特徴とする、構成15に記載の光学素子(10)。
[構成17]
前記不透明な材料は、500nm未満のサイズを有するグラファイト粒子、200nm未満のサイズを有するブラックカーボンナノ粒子、吸収性粒子としての染料又は染料混合物と混合されるラッカー又はポリマーからなることを特徴とする、構成15又は16に記載の光学素子(10)。
[構成18]
前記吸収性粒子の質量分率は、せいぜい50%であることを特徴とする、構成16又は17に記載の光学素子。
[構成19]
両主要面のうちの一方、好適には前記第1主要面に、主要面全体の角度に依存する鏡面反射として、又は前記第2領域(E2)の表面における完全鏡面反射として形成された鏡面反射を有することを特徴とする、構成15から18のいずれか一項に記載の光学素子(10)。
[構成20]
それぞれ2つの前記第2領域(E2)の間に、第3屈折率(N3)を有する別の不透明な材料(M3)からなる第3領域が形成されており、前記第3屈折率(N3)はそれぞれ前記第1屈折率(N1)より大きく、且つ、前記第2屈折率(N2)より大きいことを特徴とする、構成15から19までのいずれか一項に記載の光学素子(10)。
[構成21]
前記光学素子(10)の入光側と前記第3領域との間、及び前記光学素子(10)の出光側と前記第1領域(E1)の出光面との間にも、前記第2領域(E2)が形成されていることを特徴とする、構成20に記載の光学素子(10)。
[構成22]
前記第1屈折率(N1)と前記第2屈折率(N2)との屈折率の差の大きさは、0.1より小さいことを特徴とする、構成20又は21に記載の光学素子(10)。
[構成23]
前記第1領域(B1、E1)と前記第2領域(B2、E2)は、前記光学素子(1、10)に垂直な平行投影で見て、前記光学素子(1、10)の表面全体に交互に帯状に分布するように配置されていることを特徴とする、構成1から7又は15から22いずれか一項に記載の光学素子(1、10)。
[構成24]
前記第1領域(B1、E1)は、前記光学素子(1、10)に垂直な平行投影で見て、前記光学素子(1、10)の表面全体に点状、円状、楕円状、矩形状又は六角形状で分布するように配置されており、前記第2領域(B2、E2)はこれと相補的に成形されていることを特徴とする、構成1から7又は15から22いずれか一項に記載の光学素子(1、10)。
[構成25]
前記第1領域(B1、E1)と前記第2領域(B2、E2)は、前記光学素子(1、10)の上面に垂直な断面方向で見て台形に形成されていることを特徴とする、構成1から7又は15から24のいずれか一項に記載の光学素子(1、10)。
[構成26]
前記第1領域(B1、E1)の少なくとも一部、好適には全部の前記第1領域(B1、E1)において、それらの出光側にレンズ構造(L)、好適には凸レンズ構造が適用されていることを特徴とする、構成1から7又は15から25のいずれか一項に記載の光学素子(1、10)。
[構成27]
前記光学素子(1、10)の入光側及び/又は出光側に、偏光子、好適には反射型偏光子が配置されていることを特徴とする、構成1から7又は15から26のいずれか一項に記載の光学素子(1、10)。
[構成28]
前記光学素子(1、10)上に少なくとも1つの前記第1領域(B1、E1)が形成されていて、その光学素子(1、10)に垂直な平行投影で見た最短延長は、すべての前記第2領域(B2、E2)の前記光学素子(1、10)に垂直な平行投影で見た最短延長の少なくとも20倍大きく、前記少なくとも1つの前記第1領域(B1、E1)内ではその縁部と平行変位を除き、出光側で前記光学素子(1)から出る光の拡散方向は、前記光学素子(1)の入光側に衝突する光に比べて制限がないことを特徴とする、構成1から7又は15から27のいずれか一項に記載の光学素子(1、10)。
[構成29]
前記第1領域(B1、E1)と前記第2領域(B2、E2)に加えて、形状及び/又は屈折率の点で前記第1領域(B1、E1)及び前記第2領域(B2、E2)とは異なるパラメータを有する別の領域が形成されており、これらの別の領域を透過して前記光学素子(1、10)から出る光は、前記第1領域(B1、E1)とは異なる拡散方向の制限を受けることを特徴とする、構成1から7又は15から28のいずれか一項に記載の光学素子(1、10)。
[構成30]
構成15から18のいずれか一項に記載の光学素子(10)を製造する方法であって、
前記第1屈折率(N1)を有する透明な材料からなる第1層と、前記第2屈折率(N2)を有する不透明な材料からなる第2層とを交互に積層するステップと、ここで、前記第1屈折率(N1)は前記第2屈折率(N2)より大きく、
前記第1層と前記第2層を互いに接合するステップと、
この層複合体から前記光学素子(10)を切り取るステップと、を含む方法。
[構成31]
構成1から7又は15から29のいずれか一項に記載の前記光学素子(1、10)の使用であって、画像表示装置(3、LCD)の視野方向を選択的に制限することを目的とした、画像表示装置(3)、又は透過型画像表示装置(LCD)用のバックライト(BLU)との使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入光側と出光側を備えて面状に広がる光学素子(10)であって、
少なくとも第1屈折率(N1)を有する透明な材料からなる第1領域(E1)と、第2屈折率(N2)を有する恒久的に不透明な材料からなる第2領域(E2)とを含み、これらの領域は前記光学素子(10)の表面全体で1次元又は2次元周期的な順序で交互に配置されており、ここで、前記第1屈折率(N1)は人間の目に見える全波長域で前記第2屈折率(N2)より大きく、
前記第1領域(B1、E1)と前記第2領域(B2、E2)は、前記光学素子(1、10)の上面に垂直な断面方向で見て台形に形成されており、少なくとも前記第1領域(E1)が、それぞれ、等脚台形の断面を有し、前記台形の長い底辺が、対応する第1領域(E1)の出光面に対応し、
その結果として、前記光学素子(10)の第1主要面でこれに衝突する光は、前記第2領域(E2)の不透明な材料に基づき、専ら前記第1領域(E1)の入光面を通って前記光学素子(10)に入射し、そこで幾何学的入射方向、偏光、及び前記第1屈折率(N1)と前記第2屈折率(N2)の比に応じて、
a)前記第1領域(E1)内で妨げられることなく伝播し又は全反射し、その後でそれぞれの前記第1領域(E1)の出光面で再び出射され、又は
b)前記第1領域(E1)から隣接する前記第2領域(E2)に進入し、そこで前記第2領域(E2)の不透明な材料に基づいて吸収され、
ここで、前記第1屈折率(N1)と前記第2屈折率(N2)が異なるために、前記第2領域(E2)に進入する光線は垂線から離れる方向により強く屈折し、
そうすることにより、前記光学素子(10)の第2主要面でこれから出る光は、前記第1主要面で前記光学素子(10)に衝突する光と比較して、その拡散方向が制限されているようにした方法。
【請求項2】
前記不透明な材料は、前記第2屈折率(N2)を有する透明な材料からなり、この材料は吸収性粒子と混合され、それにより全体として不透明作用が生じることを特徴とする、請求項1に記載の光学素子(10)。
【請求項3】
前記不透明な材料は、500nm未満のサイズを有するグラファイト粒子、200nm未満のサイズを有するブラックカーボンナノ粒子、吸収性粒子としての染料又は染料混合物と混合されるラッカー又はポリマーからなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光学素子(10)。
【請求項4】
両主要面のうちの一方、好適には前記第1主要面に、主要面全体の角度に依存する鏡面反射として、又は前記第2領域(E2)の表面における完全鏡面反射として形成された鏡面反射を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の光学素子(10)。
【請求項5】
それぞれ2つの前記第2領域(E2)の間に、第3屈折率(N3)を有する別の不透明な材料(M3)からなる第3領域が形成されており、前記第3屈折率(N3)はそれぞれ前記第1屈折率(N1)より大きく、且つ、前記第2屈折率(N2)より大きいことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の光学素子(10)。
【請求項6】
前記光学素子(10)の入光側と前記第3領域との間、及び前記光学素子(10)の出光側と前記第1領域(E1)の出光面との間にも、前記第2領域(E2)が形成されていることを特徴とする、請求項5に記載の光学素子(10)。
【請求項7】
前記第1領域(B1、E1)と前記第2領域(B2、E2)は、前記光学素子(1、10)に垂直な平行投影で見て、前記光学素子(1、10)の表面全体に交互に帯状に分布するように配置されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の光学素子(1、10)。
【請求項8】
前記第1領域(B1、E1)は、前記光学素子(1、10)に垂直な平行投影で見て、前記光学素子(1、10)の表面全体に点状、円状、楕円状、矩形状又は六角形状で分布するように配置されており、前記第2領域(B2、E2)はこれと相補的に成形されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の光学素子(1、10)。
【請求項9】
前記第1領域(B1、E1)と前記第2領域(B2、E2)に加えて、形状及び/又は屈折率の点で前記第1領域(B1、E1)及び前記第2領域(B2、E2)とは異なるパラメータを有する別の領域が形成されており、これらの別の領域を透過して前記光学素子(1、10)から出る光は、前記第1領域(B1、E1)とは異なる拡散方向の制限を受けることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の光学素子(1、10)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の前記光学素子(1、10)の使用であって、画像表示装置(3、LCD)の視野方向を選択的に制限することを目的とした、画像表示装置(3)、又は透過型画像表示装置(LCD)用のバックライト(BLU)との使用。
【外国語明細書】