(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086895
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】不純物除去方法及びこれに用いられるバネ状フィルターシステム
(51)【国際特許分類】
B01D 29/48 20060101AFI20240621BHJP
B01D 37/02 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
B01D29/48 A
B01D37/02 F
B01D37/02 D
B01D37/02 H
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024065007
(22)【出願日】2024-04-12
(62)【分割の表示】P 2020062006の分割
【原出願日】2020-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】596002549
【氏名又は名称】株式会社モノベエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】物部 長順
(72)【発明者】
【氏名】物部 長智
(57)【要約】
【課題】
溶解物が存在してもより効率的に流体に溶解せず混在している物質を除去することのできる不純物除去方法及びこれに用いられるバネ状フィルターシステムを提供する。
【解決手段】
本発明の一観点に係るバネ状フィルターシステムSは、一次バネ状フィルター装置1と、一次バネ状フィルター装置1に接続され、一次ろ過液を収容する一次ろ過液槽2と、一次ろ過液をろ過する二次バネ状フィルター装置3と、を備える。また、本発明の他の一観点に係る不純物除去方法は、原液に対し、一次ろ過を行うステップ、一次ろ過によって得られた一次ろ過液に、一次ろ過液内に溶解した溶解不純物を吸着可能なろ過助剤を混合するステップ、ろ過助剤が混合された一次ろ過液に対し、二次ろ過を行うステップ、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次バネ状フィルター装置と、
前記一次バネ状フィルター装置に接続され、一次ろ過液を収容する一次ろ過液槽と、
前記一次ろ過液をろ過する二次バネ状フィルター装置と、を備えるバネ状フィルターシステム。
【請求項2】
前記一次ろ過液槽は、前記一次ろ過液に投入されるろ過助剤を攪拌するための攪拌装置を備える請求項1記載のバネ状フィルターシステム。
【請求項3】
前記一次バネ状フィルター装置は、原液から不溶解不純物を除去するものであって、
前記二次バネ状フィルター装置は、一次ろ過液から溶解不純物を除去するものである請求項1記載のバネ状フィルターシステム。
【請求項4】
原液に対し、一次ろ過を行うステップ、
前記一次ろ過によって得られた一次ろ過液に、前記一次ろ過液内に溶解した溶解不純物を吸着可能なろ過助剤を混合するステップ、
前記ろ過助剤が混合された一次ろ過液に対し、二次ろ過を行うステップ、を備える不純物除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不純物除去方法及びこれに用いられるバネ状フィルターシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
川や海における水中、又事業会社の排水中には、様々な物質(不純物)が混在しており、例えば、微小な砂や泥等、溶解せずに水中に浮遊する物質だけでなく、鉄等の金属やホウ素等の非金属等、溶解して存在する物質が含まれている。
【0003】
水中に溶解して存在する物質には、ホウ素、フッ素、カドミウム、鉛、六価クロム、ヒ素、水銀、セレン、各種のレアメタル等様々な金属や半金属等のイオン化物質を例示することができる。これらは除去が困難であり、そのままでは人体及び環境に悪影響を及ぼすおそれが高いものである一方、除去及び回収し、適切な処理を施すことで、資源として利用することができるものも少なくない。
【0004】
例えば上記の例のうち、ホウ素は、人間にとって必須の元素であるが、過剰量のホウ素を継続的に摂取することにより、生殖機能の低下などの健康障害が生じる可能性が指摘されている。例えば、温泉排水等は昆虫や微生物に甚大な被害を与えているといわれている。そのため、ホウ素排水に対する規制として、排水基準は水質汚濁防止法により10mg/Lに、環境基準値ではその10分の1の値である1mg/L以下に制定されている。
【0005】
しかしながら、一方でホウ素は、耐熱ガラス、ガラス繊維、ニューセラミックス、アモルファス合金、うわ薬、肥料、原子力分野、パソコンTFTディスプレイなどさまざまな用途で利用されており、産業上非常に重要なものともなっている。
【0006】
ところで、上記物質の一般的な処理としては凝集沈殿法やイオン交換樹脂による吸着法が知られている。しかしながら、これらの方法は処理速度が遅く、また処理過程で大量のスラッジが出るなどの問題点があり、新しい排水処理技術の開発が強く求められている。
【0007】
しかしながら、この処理法は上記の通り、処理に投入した凝集剤と処理物質がそのまま産業廃棄物となるといった課題がある。
【0008】
上記の問題に対し、例えば、下記特許文献1には、溶解した物質を除去すべくグラフト重合を用いた機能性高分子が開示されている。
【0009】
一方、バネ状のフィルターを用い、水等の流体に混在している物質を除去しようとする技術が、例えば下記特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012-214966号公報
【特許文献2】特開2013-184151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、機能性高分子について開示するものであるが、その処理システムには検討の余地が残る。
【0012】
また、上記特許文献2に記載の技術は、線材の間隙による不溶解物の物理的なろ過であり、流体に溶解せず混在している物質を除去しようとするものであるが、上記特許文献2に記載の技術で溶解物を除去しようとするためには検討の余地が残る。
【0013】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、溶解物が存在してもより効率的にこれを除去することのできる不純物除去方法及びこれに用いられるバネ状フィルターシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、上記課題を解決する第一の観点に係るバネ状フィルターシステムは、一次バネ状フィルター装置と、一次バネ状フィルター装置に接続され、一次ろ過液を収容する一次ろ過液槽と、前記一次ろ過液をろ過する二次バネ状フィルター装置と、を備えるものである。
【0015】
また、本発明の他の一観点に係る不純物除去方法は、原液に対し、一次ろ過を行うステップ、一次ろ過によって得られた一次ろ過液に、一次ろ過液内に溶解した処理対象物質を吸着可能なろ過助剤を混合するステップ、ろ過助剤が混合された一次ろ過液に対し、二次ろ過を行うステップ、を備えるものである。
【0016】
以上、本発明によって、溶解物をより効率的に除去することのできる不純物除去方法及びこれに用いられるバネ状フィルターシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態1に係る不溶物質と溶存物質を処理するバネ状フィルターシステムの概略を示す図である。
【
図2】実施形態1に係るバネ状フィルター装置の断面の概略を示す図である。
【
図3】実施形態1に係るバネ状フィルターの概略を示す図である。
【
図4】実施形態1に係るバネ状フィルターの部分断面図である。
【
図5】実施形態1に係るバネ状フィルターの周囲にろ過助剤が付着した場合の部分拡大図である。
【
図6】実施形態2に係る不溶物質と溶存物質を同時に処理するバネ式フィルターシステムの概略を示す図である。
【
図7】実施形態3に係るバネ状フィルターシステムの概略を示す図である。
【
図8】実施形態3に係るバネ状フィルター装置の概略を示す図である。
【
図9】実施形態3に係るバネ状フィルターシステムの処理の流れを示す図である。
【
図10】実施形態3に係るバネ状フィルターシステムの処理の流れを示す図である。
【
図11】実施形態3に係るバネ状フィルターシステムの処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施形態において言及する具体的な例にのみ限定されるわけではない。
【0019】
(実施形態1:二段式)
本実施形態に係る不純物除去方法(以下「本方法」という。)は、(1)処理対象となる原液に対し一次ろ過を行うステップ、(2)一次ろ過によって得られた一次ろ過液に、一次ろ過液内に溶解した溶解不純物を吸着可能なろ過助剤を混合するステップ、(3)ろ過助剤が混合された一次ろ過液に対し、二次ろ過を行うステップ、を備えるものである。
【0020】
図1は、本方法を実行するために用いられる不純物除去システム(以下「本システム」という。)Sの概略図であって、具体的には、一次バネ状フィルター装置1と、この一次バネ状フィルター装置1に接続され、一次ろ過液を収容する一次ろ過液槽2と、一次ろ過液槽2に収容される一次ろ過液をろ過する二次バネ状フィルター装置3と、二次バネ状フィルター装置3に接続され、二次ろ過液を収容する二次ろ過液槽4と、を備える。以下、本システム及び本方法について詳細に説明する。
【0021】
まず、本方法では、(1)処理対象となる原液に対し一次ろ過を行うステップ、を備える。
【0022】
本方法において、処理対象となる「原液」は、文字通り処理の対象となる液体であって、この液体には除去の対象となる物質(不純物)が含まれている。この液体の例としては、本方法に適用できるものである限りにおいて限定されず、一般には水を主成分とするものであることが好ましいが、適用可能である限りにおいて油や有機溶媒等であってもよい。また、この除去の対象となる物質は、液体に溶解されたもの(溶解不純物)だけでなく、液体に溶解せず微粒子等の体積を有するものとして混在・浮遊しているもの(不溶解不純物)を含む。溶解不純物としては、限定されるわけではないが、例えばホウ素、フッ素、カドミウム、鉛、クロム、ヒ素、水銀、セレン、レアメタル等の金属及び非金属、並びにその化合物のイオンを例示できるがこれに限定されない。また、不溶解不純物としては、例えば砂や微生物等を例示できるがこれに限定されない。
【0023】
また方法における「一次ろ過」は、処理対象となる原液中において、水に溶解せず微粒子として混在・浮遊している物質(不溶解不純物)を、ろ過によって除去することをいい、物理的ろ過ともいう。本方法の一次ろ過としては、上記の処理を行うことができる限りにおいて限定されるわけではないが、バネ状フィルターを用いたろ過装置によって行われることが好ましいため、本実施形態では、一次バネ状フィルター装置1によって行う例を示す。
【0024】
本実施形態における一次バネ状フィルター装置1の内部構造について
図2にその概略の断面図を示す。本図で示すように、一次バネ状フィルター装置1は、少なくともバネ状フィルター11及びこれを支持する支持部材12と、を有して構成される。後述の記載から明らかであるが、バネ状フィルター11の外側には不純物が残り、内側には不純物が除去された液体が通過する。すなわち外側の空間と内部の空間が原液側とろ液側とで分かれることになる。
【0025】
また、本実施形態の一次バネ状フィルター装置1では、上記支持部材12の他、バネ状フィルター11及び支持部材12を収納する筐体13を有している。また、支持部材12によって筐体13内の空間14は上側の空間と下側の空間の二つに区切られており、支持部材12は仕切板としての機能を有している。より具体的には、支持部材12には複数の孔が形成されており、この孔にバネ状フィルター11が挿入及び設置されることで、筐体12内の空間14を、バネ状フィルターの下部空間141(以下単に「下部空間」という。)と、バネ状フィルターの上部空間142(以下単に「上部空間」という。)に分けることが可能となる。また、一次バネ状フィルター装置1では、後述するように、一次ろ過時において、バネ状フィルター11の周囲にろ過助剤15が付されることになる。
図3に、本実施形態に係るバネ状フィルター11の概略を、
図4にその一部断面を、
図5に、一次ろ過時におけるバネ状フィルター11の周囲の一部断面拡大図を示す。一次ろ過時において、ろ過助剤15がバネ状フィルター11の周囲に配置されることで、フィルター層として機能することになる。具体的には、支持部材12によってフィルターの下部空間141と上部空間142が区分けされ、処理対象となる原液が下部空間141側からフィルター層を通って上部空間142側に移動する際、不溶解不純物がフィルター層によって通ることができずフィルター層において残留し、処理対象原液から除去されることになる。
【0026】
改めて、一次バネ状フィルター装置1のバネ状フィルター11は、文字通りバネ状のフィルターである。上記図で示すように、バネ状フィルター11は、線材111が環状に巻き回されかつ所定の間隙をもって重なり合うことによりバネ形状となっているフィルターである。また、限定されるわけではないが、一次バネ状フィルター装置1におけるバネ状フィルター11の線材111には、隣接する線材部分と上記所定の間隔を確保するための突起112が付されており、これによってバネ状フィルターの平均間隙長、より具体的には線材間の距離を安定的に確保することができる。
【0027】
また、一次バネ状フィルター装置1におけるバネ状フィルターの平均間隙長(線材間の間隔の平均)は、適宜な設定が可能ではあり限定されるわけではないが、5μm以上200μm以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは10μm以上150μm以下の範囲である。この範囲とすることで、一次ろ過において液体中の除去対象となる不溶解不純物を効率的に除去することができる。
【0028】
また、一次バネ状フィルター装置1におけるバネ状フィルター11の素材は、形状を維持し一次バネ状フィルター装置1が所望の効果を達成することができる限りにおいて限定されず、例えば銅、鉄、チタン、ニッケル等の単体金属やステンレス等の合金などの金属材料、また、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の樹脂材料を例示することができる。
【0029】
また、一次バネ状フィルター装置1におけるバネ状フィルター11は、一本の線材111を環状の螺旋を描くよう巻き回すことで容易に実現することができるが、例えば突起が付された環状の線材や樹脂材を複数積層させた環状積層体とすることで、同様の構造を実現することも可能である。この場合においても、一次バネ状フィルター装置1ではバネ状フィルターに含まれるものとする。すなわち、一次バネ状フィルター装置1において、バネ状フィルター11には巻回体、または積層体の何れの構造も包含される。
【0030】
また、本実施形態においてバネ状フィルター11は,上記の図で示すように、線材111の中心に芯材113を備え、この芯材113の両端近傍に一対の抑えるための金具を設ける構成としてもよい。このようにすることで、線材をより安定的に保持することができる。特に、金具の一方は支持部材12に接続する一方この支持部材12との間隙を少なくするため、ねじ溝が形成された構造となっていることも好ましい。このようにすることで支持部材12にもこれに勘合するねじ溝を形成し、これらをはめ合わせることで支持部材12とバネ状フィルター11とを安定的に固定するとともに下部空間141と上部空間142の間の隙間を少なくすることが可能となる。
【0031】
また、一次バネ状フィルター装置1において、上記の記載からも明らかであるが、バネ状フィルター11は一本であってもよいが、複数本備えていることが好ましい。具体的には支持部材12に多数の孔が形成され、この複数の孔にそれぞれバネ状フィルター11が挿入及び固定されていることが好ましい。このようにすることでろ過効率を向上させることが可能となる。
【0032】
また、本実施形態において、筐体13内の空間14のうち、筐体13内のバネ状フィルター11の下部空間141及び上部空間142は、巡回する配管を介して原液槽5、一次プリコート槽6、一次廃液槽7にそれぞれ接続されている。また、配管Tにはそれぞれの経路を開閉するための弁Vが備えられている。具体的には、原液槽5から一次バネ状フィルター装置1までの配管T51の開閉を制御する弁V51、一次プリコート槽6から一次バネ状フィルター装置1までの配管T61の開閉を制御する弁V61、一次バネ状フィルター装置1から一次廃液槽7までの配管T71の開閉を制御する弁V71をそれぞれ備えている。また、原液槽5から一次バネ状フィルター装置1までの配管T51、及び、一次プリコート槽6から一次バネ状フィルター装置1までの配管T61には、それぞれに収容される液体を一次バネ状フィルター装置1の下部空間141まで送るためのポンプP51、P61をそれぞれ備えている。なお、これら配管並びに弁及びポンプについては、共用することも可能であり、その位置や数については適宜調整が可能である。
【0033】
また、本実施形態において、筐体13の空間14のうち、筐体13内であるがバネ状フィルター11の上部空間12は、配管T1を介して一次ろ過液槽2に接続されている。これにより一次ろ液を貯蔵することができるようになる。具体的に、配管T1は、一次バネ状フィルター装置1と一次ろ液槽2を接続する配管となっている。また、配管T1には、この配管により形成される経路の開閉を制御するための弁V1を備えている。
【0034】
また、本実施形態において、筐体13内の上部空間142は、配管Tを介して原液槽5又は一次プリコート槽6に接続されていてもよい。具体的には、配管T52を介して液体は原液槽5に、配管T62を介して液体は一次プリコート槽6にそれぞれ戻される。また、配管T52、T62にはそれぞれその経路の開閉を制御する弁V52、V62を備えている。このようにすることで、原液槽5と一次バネ状フィルター装置1の間、一次プリコート槽6と一次バネ状フィルター装置1との間のそれぞれにおいてループを形成することができるようになる。これは、一次ろ過が行われ処理が安定する前の準備処理、プリコート(バネ状フィルター11の周囲にろ過助剤15を配置する処理)を行う際に必要となる。
【0035】
また、一次バネ状フィルター装置1におけるバネ状フィルター11の周囲には、上記の通り、一次ろ過(不溶解不純物の除去)時において、バネ状フィルター用のろ過助剤15が配置される。より具体的に説明すると、ろ過助剤15は、ろ過時においてバネ状フィルター11が下部空間141側から上部空間142側に液体を圧送する力によってバネ状フィルター11の周囲に層状に積層される。これにより、ろ過助剤15は不溶解物除去のためのフィルター層として機能することができるのである。
【0036】
また、本方法において、ろ過助剤の形態としては、限定されるわけではないが粉末状であることが好ましい。粉末状のろ過助剤とすることで、液体に分散させやすくなるとともに、上記バネ状フィルター11の周囲に積層するいわゆるプリコート効果により安定的に配置できるようになる。なおここでろ過助剤の粉末の大きさとしては、特に限定されるわけではないが、例えば、平均粒径5μm以上500μm以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは平均粒径10μm以上100μm以下の範囲である。
【0037】
また、ろ過助剤15の構成としては、上記の機能を発揮することができる限りにおいて限定されず、例えば珪藻土、活性炭、ゼオライト等の無機物であってもよく、又は、ポリエチレン、ポリプロピレン等及びこれらの誘導体を含むポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンテトラフルオロエチレン等及びこれらの誘導体を含むハロゲン化ポリオレフィン、エチレン・ビニルアルコール等及びこれらの誘導体を含むハロゲン化オレフィン共重合体、セルロース等及びセルロース骨格を有するセルロース誘導体等で例示される有機体物であってもよい。
【0038】
以上本方法の一次ろ過によると、上記バネ状フィルター11とその周囲に配置されるろ過助剤15との組み合わせによって、所定の大きさ以上の不溶解物を除去することが可能となる。なおこの結果ろ過された一次ろ過液は、一次ろ過液槽2に貯蔵される。
【0039】
ここで、一次ろ過の方法の詳細について順を追って説明する。まず、一次ろ過では、準備として原液槽5に処理対象となる原液を収容する。
【0040】
一方、一次プリコート槽6にはろ過助剤15及び水等の液体が収納されており、配管T61を介して筐体13の下部空間141に供給され、バネ状フィルター11、配管T62を経由して再びプリコート槽6に回収される。この際、これらに付された弁V61、V62は解放するとともに、ポンプP61を駆動してこの経路部材及びプロコート槽6、筐体13によって形成されるループ内に液体の流れを形成する。これにより、バネ状フィルターの周囲にろ過助剤が徐々に付着していくことになる。
【0041】
そして、十分ろ過助剤がバネ状フィルターの周囲に付着した後、弁Vを切り替え、原液槽5中の原液を筐体13の下部空間141に供給し、バネ状フィルター11を介し、上部空間142側から一次ろ過液槽2に排出させる。これにより不溶解不純物を除去することができる。なお、この不溶解不純物は、一次ろ過が終了した後、配管T71を介して廃液槽に排出される。
【0042】
次に本方法では、(2)一次ろ過によって得られた一次ろ過液に、一次ろ過液内に溶解した処理対象物質を吸着可能な二次ろ過助剤を混合するステップを備える。本ステップは、一次ろ過を行った後、溶解した不純物を除去するための事前のステップである。
【0043】
ここで用いる二次ろ過助剤は、液体に溶解した不純物を除去することができるよう、化学的に修飾されたものとなっている。
【0044】
二次ろ過助剤に化学的な修飾を行う例としては、限定されるわけではないが、例えば、液中に溶解した不純物を付着させるための多数の孔が形成された多孔質物であってもよく、また、ろ過助剤の表面に所望の溶解物質を補足することのできる官能基を付するものであってもよい。このようなろ過助剤を用いることで、効果的に溶解した不純物(溶解不純物)を除去できる。特に、一次ろ過と二次ろ過を分離してそれぞれ処理させることで、二次ろ過の後に除去される溶解不純物を効率的に回収することができるようになる。
【0045】
なお、このステップでは、ろ過助剤が添加された一次ろ過液に対して攪拌を行うことが好ましい。攪拌を行わせることで、より効率的に溶解した不純物を除去することが可能となる。具体的には、一次ろ過槽に攪拌部材とこの攪拌部材を駆動するための駆動装置Kとを備えたものであることが好ましい一例であるがこれに限定されない。
【0046】
また本方法では、(3)ろ過助剤が混合された一次ろ過液に対し、二次ろ過を行うステップ、を備える。本ステップは、上記ステップにおいて投入されたろ過助剤に、液体中に溶解していた不純物を吸着させ除去するステップであり、二次ろ過という。
【0047】
本ステップにおいて用いる二次ろ過には、上記の通り二次バネ状フィルター装置3を用いる。本バネ式フィルター装置3には上記(1)のステップにおいて用いる一次バネ状フィルター装置1と同じものを用いることができ、重複する部分についての説明は省略する。ただし、本ステップでは、一次ろ過液と二次ろ過助剤が予め混合されており、これらを分離する処理に特化したものである点が異なる。すなわち、本方法では、まず、一次ろ過により液体に混入している溶解していない不純物(不溶解物)を除去して一次ろ過液とし、次に、溶解した不純物が含まれる一次ろ過液に対し、この不純物を吸着させるための二次ろ過助剤を投入し、更に、本ステップでこの不純物が吸着した二次ろ過助剤自体を除去することで、結果として液体に溶解していない不純物も、液体に溶解した不純物も一連の処理で確実に除去することができるようになる。
【0048】
本方法についてより具体的に説明すると、上記ステップ(1)では、処理対象である原液を一次ろ過する前にバネ状フィルター11の周囲にプリコート処理によってろ過助剤15を配置し、十分にろ過助剤15がバネ状フィルターの周囲に配置されたことを確認してから処理対象の原液を一次バネ状フィルター装置1の筐体内に導入して処理させる。一方、本ステップ(3)では、上記プリコート処理自体が処理対象となる。一次ろ過液を攪拌しながら溶解した不純物をろ過助剤に吸着させる重要な処理であるとともに、溶解物質を吸着したろ過助剤と液体とを分離するための処理となっている。更に具体的には、上記ステップ(1)では、プリコートと一次ろ過とを二段に分けて行うものであるが、本ステップではプリコートとろ過とを一段で行うことができている点で異なっており、例えば、一次ろ過槽から筐体の下部空間に一次ろ過液を供給してバネ状フィルターを透過させた後再び一次ろ過槽に戻す一方、ある程度の溶解不純物が除去できたと判断できた段階で、配管の弁を切り替え、二次ろ過槽にこの溶解不純物が除去された二次ろ過液を二次ろ過液槽に排出させることで対応可能である。なお、場合によっては、このループを形成せず直接二次ろ過液槽に排出させることとしてもよい。
【0049】
ところで、二次ろ過液は不溶解不純物及び溶解不純物を除去することができているため、基準を満たせば、二次ろ過槽4にためずともそのまま排水することもできる。一方、二次ろ過装置のろ過助剤の周囲には溶解不純物が付着しており、この溶解不純物は当初の原液よりも高純度で付着しているため、溶解不純物を効率的にろ過助剤と分離させることができれば再資源化することが可能である。具体的には、イオン交換基等の化学修飾を行った二次ろ過助剤の場合、酸又は塩基によって洗浄することで上記溶解不純物を溶出させる(洗浄する)ことができ、更に、これを中和することで再びろ過助剤として使用することができるようになる。すなわち、本システム、本装置及び本方法によると、除去するだけでなく、溶解した不純物の高純度化による再資源化が可能となるといった効果がある。これは物理的な一次ろ過と化学的な二次ろ過を分けたことによる効果ともいえる。
【0050】
以上、本方法によって、溶解物をより効率的に除去することのできる不純物除去方法及びこれに用いられるバネ状フィルターシステムを提供することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、最適な不純物除去を行うことを目的としてバネ状フィルターシステムを提示しているが、本方法を利用することができる限りにおいて、バネ状フィルターシステム以外のフィルターシステムを用いることも可能ではある。
【0052】
(実施形態2)
本実施形態は、上記実施形態1とほぼ同様であるが、一次ろ過装置と二次ろ過装置を共通的に用いる点が異なる(本実施形態では単に「バネ状フィルター装置」という。)が、それ以外は上記実施形態1と同様である。以下具体的に説明する。
図6は、本実施形態に係るバネ状フィルターシステムの概略を示す図である。
【0053】
上記の通り、本実施形態に係るバネ状フィルター装置1は、上記実施形態1におけるものと同じであるが配管の接続関係が異なるため、この点について説明する。
【0054】
本実施形態では、一次ろ過に関しては上記実施形態1と同様である。すなわち、予めプリコートタンク6からろ過助剤を供給してバネ状フィルター11の周囲にプリコートを行い、原液5からバネ状フィルター装置原液を供給してバネ状フィルター装置1の下部空間141から供給し、この一次ろ液をろ液槽2に収容する。
【0055】
一方、本実施形態に係るバネ状フィルター装置1では、一次ろ液槽2内に収容した一次ろ液をろ過吸着剤を添加して攪拌し、再びバネ状フィルター11の下部空間141から供給することができる。そして、ろ過された結果のろ過液は、バネ状フィルター11の上部空間142に接続された配管Tを経由して二次ろ過液槽4に収容される。これにより一つのろ過装置によって一次ろ過及び二次ろ過を行うことができるようになる。
【0056】
配管の構造についてより具体的に説明すると、上記実施形態1における一次ろ過における配管、弁、ポンプは同様であるが、これに加え、バネ状フィルター装置1の上部空間142に接続される配管T21を備えており、バネ状フィルター装置1に対してろ液を供給することが可能となっている。なお、配管T21には弁V21が配置されておりその経路の開閉を制御することができる。また配管T21にはポンプP21が配置されており、一次ろ液を送出することができるようになっている。
【0057】
また、バネ状フィルター装置1の上部空間142と二次ろ液槽4は配管T41により接続されており、二次ろ液を二次ろ液槽4に収容させることができる。また、配管T41には弁V41が設けられておりこの経路の開閉を制御することができる。
【0058】
上記の構成の結果、本実施形態においても、上記実施形態と同様の処理が可能となる。以上、本実施形態によっても、不溶解不純物だけでなく溶解不純物をより効率的に除去することのできる不純物除去方法及びこれに用いられるバネ状フィルターシステムを提供することができる。
【0059】
(実施形態3)
本実施形態は、二次ろ過の方法が上記実施形態1と異なる。以下具体的に説明する。ただし、実施形態1と同様の構成については説明を省略する。
【0060】
図7は、本実施形態に係るバネ状フィルターシステムの概略を示す図である。ただし、一次フィルター装置1については上記実施形態1同様であるため、この記載については省略する。
【0061】
本図で示すように、本バネ状フィルターシステムSは、一次ろ過液槽2と、一次ろ過液槽2に収容される一次ろ過液をろ過する二次バネ状フィルター装置3と、を備える。また、本バネ状フィルターシステムSでは、上記二次バネ状フィルター装置3をろ過吸着剤に吸着された溶存不純物を洗浄脱離するための洗浄槽8、二次バネ状フィルター装置3における脱離されたろ過助剤を中和するための中和槽9、二次バネ状フィルター装置3を駆動するための二次バネ状フィルター装置用駆動装置(以下単に「駆動装置」という。)10を備えて構成される。
【0062】
上記の通り、本実施形態において、一次ろ過液槽2は、上記実施形態1と同様の構成を採用することができる。改めて説明すると、一次ろ過液槽2には、上記のように、一次ろ過液内に溶解した処理対象物質を吸着可能なろ過助剤を混合しておく。また、好ましくは、ろ過助剤が添加された一次ろ過液に対して攪拌を行うこととしてもよい。攪拌を行わせることで、より効率的に溶解した不純物を除去することが可能となる。具体的には、一次ろ過槽に攪拌部材とこの攪拌部材を駆動するための駆動装置とを備えたものであることが好ましい一例であるがこれに限定されない。
【0063】
また本実施形態において、二次バネ状フィルター装置3は、上記実施形態と同様にバネ状フィルター11と、支持部材12と、筐体13を備えているが、筐体13はバネ状フィルター11の内部空間に接続された側のみ収納する空間(上部空間142)のみを備えている。この具体的なイメージについて
図8に示す。本実施形態に係る二次バネ状フィルター装置3は、本図のような構成をとっており、軽量化されて駆動装置により可搬である。具体的には、二次ろ過槽4、洗浄槽8、中和槽9に浸す、又は、抜くことができる。つまり、この二次バネ状フィルター装置3により、それぞれの層においてろ過・洗浄脱離・中和処理が可能となる。詳細な動作については後述する。
【0064】
また、二次バネ状フィルター装置3には、上記実施形態1と同様に、バネ状フィルター11と、このばね状フィルター11の上部空間142に接続される弁V41を備えた配管T41と、このバネ状フィルター11の上部空間142を吸引するためのポンプPを備えている。ポンプPは配管T41の途中に設けられ、液体を吸引し、二次ろ過槽4に収容させることができる。なお、上記配管T41には分岐の配管T411が形成されており、この先端は一次ろ液槽2につながっている。これにより、一次ろ液槽2と二次バネ状フィルター装置3の間でループを形成することができ、二次バネ状フィルター装置3のバネ状フィルター11周囲にろ過助剤が十分付着していない場合、ろ過助剤が十分付着されるまでろ過助剤を配置する処理を行うことができる。
【0065】
二次バネ状フィルター装置3は、駆動装置Mによって移動させることが可能である。すなわち、一次ろ過液槽2に二次バネ状フィルター装置3のバネ状フィルターを浸漬させ、ポンプを駆動させて吸引する(
図9参照)。吸引によってろ過された二次ろ過液は、上記の通り二次ろ過液槽4又はシステム外部に排出される。なおこの場合において、一次ろ過液には二次ろ過助剤が混入されているため、一次ろ過液中に溶存する溶解不純物をより効率的に吸着させることができる。すなわち、二次ろ過液槽4には溶解不純物が取り除かれた二次ろ過液が、ろ過助剤には、一次ろ過液中に存在していた溶解不純物が吸着していることになる。これにより、不溶解不純物はもちろん、溶解不純物も除去された二次ろ過液を得ることができる。本実施例では、一次ろ過液槽で既に溶解不純物をろ過助剤によって除去することができているが、バネ状フィルターを用いることでさらに溶解不純物による除去を効率的に行うことができる。特に後述するように、溶解不純物を多く吸着したろ過助剤は容易に回収及び再利用が可能である。
【0066】
また、本システムSにおいて、二次バネ状フィルター装置3は、二次ろ過を行った後、駆動装置Mによって持ち上げられ、洗浄槽8に運ばれ、バネ状フィルター11が洗浄槽8に収容された洗浄液に浸漬される(
図10参照)。なおこの場合において、バネ状フィルター11内は吸引され続けていることが好ましい。このようにすることでバネ状フィルター外にろ過助剤を安定的に付着したままろ過助剤を洗浄することができる。またこの場合、ポンプPによって空気を吸引し続けることになるが、ろ過助剤が付着されているため内部は低圧に保ちやすくなっている。
【0067】
洗浄槽8では、二次バネ状フィルター装置3もポンプによって洗浄液を吸引する。ここで洗浄液は、ろ過助剤に吸着された溶解不純物を脱離することができるものであって、例えば酸性液やアルカリ性液等を用いることで、溶解不純物を化学的に分離させることができる。
【0068】
上記の記載からも明らかであるが、本システムSでは、更に、不純物回収槽11を備えており、二次ろ過フィルター装置3のバネ状フィルターを通って洗浄脱離された液体は不純物回収槽11に回収される。具体的に説明すると、洗浄槽によって洗浄された結果溶出する不純物を不純物回収槽に収容することで、溶解不純物を含む洗浄液を高効率で回収することができる。なお、この不純物回収槽は、上記二次バネ状フィルター装置3と不純物回収槽を接続する配管T111により接続されており、更にこの配管T111上には経路を開閉するための弁V111が設けられている。
【0069】
次に、本システムSにおいて、二次バネ状フィルター装置3は、洗浄を行った後、更に、中和槽9に運ばれ、中和液に浸漬され、中和処理を行う(
図11参照)。なおこのバネ状フィルターを運ぶ場合において、バネ状フィルター内は吸引され続けていることが好ましい。このようにすることでバネ状フィルター外にろ過助剤を安定的に付着させたまま移動させることができる。またこの場合、ポンプによって空気を吸引し続けることになるが、ろ過助剤が付着されているため内部は低圧に保ちやすくなっている。なおこの場合において、吸引した液体はそのまま廃水として処理可能である。
【0070】
また、中和槽9では、二次式バネ状フィルター装置3のバネ状フィルターを中和液に浸漬し、ポンプを用いて上記中和液を吸引する。すると、バネ状フィルター周囲に配置されたろ過助剤が中和され、再びろ過助剤が溶解不純物を除去することができて再生され、二次ろ過槽に投入再利用される。なお中和液としては、上記洗浄液がアルカリ性液であることが好ましい。
【0071】
以上、本方法によっても、溶解物をより効率的に除去することのできる不純物除去方法及びこれに用いられるバネ状フィルターシステムを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、不純物除去方法及びこれに用いられるバネ状フィルターシステムとして産業上の利用可能性がある。