(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008691
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】保護シート
(51)【国際特許分類】
B32B 7/06 20190101AFI20240112BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240112BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240112BHJP
B32B 27/00 20060101ALN20240112BHJP
【FI】
B32B7/06
H01L21/78 M
B32B27/30 102
B32B27/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110748
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慧
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】高本 尚英
【テーマコード(参考)】
4F100
5F063
【Fターム(参考)】
4F100AK21C
4F100AK21G
4F100AK42A
4F100AK42E
4F100AK52B
4F100AK52D
4F100AK68C
4F100AK68G
4F100AK69C
4F100AT00
4F100BA03
4F100CA07C
4F100CA13C
4F100CA13G
4F100GB41
4F100JL01
4F100JN08
5F063AA18
5F063AA48
5F063DE01
5F063DE34
5F063DF12
5F063DG29
(57)【要約】
【課題】本発明は、転写装置や被着体などに対する保護層の位置合わせが容易な保護シートを提供する。
【解決手段】本発明に係る保護シートは、被着体に貼着される保護層と、該保護層の表面に配されるはく離ライナーと、を備え、前記保護層が水溶性高分子を含み、前記はく離ライナーが、前記保護層に対向する内表面と、該内表面とは反対面となる外表面とを備え、前記はく離ライナーの前記外表面から前記保護層を透過するまでの光透過率は、少なくとも一つの波長において前記はく離ライナーの光透過率よりも15%以上低い。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体に貼着される保護層と、
該保護層の表面に配されるはく離ライナーと、を備え、
前記保護層が水溶性高分子を含み、
前記はく離ライナーが、前記保護層に対向する内表面と、該内表面とは反対面となる外表面とを備え、
前記はく離ライナーの前記外表面から前記保護層を透過するまでの光透過率は、少なくとも一つの波長において前記はく離ライナーの光透過率よりも15%以上低い
保護シート。
【請求項2】
被着体に貼着される保護層と、
該保護層の一表面に配される第1はく離ライナーと、
前記保護層の他表面に配される第2はく離ライナーと、を備え、
前記保護層は、水溶性高分子化合物を含み、
前記第1はく離ライナーと前記第2はく離ライナーとのそれぞれが前記保護層に対向する内表面と、該内表面とは反対面となる外表面とを備え、
前記第2はく離ライナーの前記外表面から前記第1はく離ライナーの前記外表面までの光透過率は、少なくとも一つの波長において前記第2はく離ライナーの光透過率よりも15%以上低い
保護シート。
【請求項3】
前記一つの波長が、紫外領域、可視領域、及び、近赤外領域の何れかの波長である請求項1又は2に記載の保護シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は保護シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップなどの半導体素子や液晶表示装置などの電子部品の製造において、前記電子部品に異物が付着することなどを防止するために、粘着性を有する保護シートを用いることが知られている(例えば、下記特許文献1)。
下記特許文献1には、前記保護シートとして、オキシアルキレン基含有ポリビニルアルコール系樹脂を含む樹脂組成物によって形成された保護層と、該保護層の両面に配される2枚のはく離シートとを備えるものが開示されている。
【0003】
上記の電子部品の製造のうち、半導体チップの製造は、通常、一つの半導体ウェハを分割(割断)することにより実施される(例えば、下記特許文献2)。
例えば、下記特許文献2には、以下のようにして半導体チップの製造を実施することが開示されている。
(1)シリコンウェハの一表面側に、格子状をなすように複数の分割予定ラインを形成する。
(2)前記複数の分割予定ラインによって格子状に区画された領域(以下、格子状区画領域ともいう)のそれぞれに、回路パターンを形成するとともに電極部を配する。これにより、半導体チップを得るための半導体ウェハを作製する。
(3)該半導体ウェハを前記複数の分割予定ラインに沿って分割(割断)して、換言すれば、前記半導体ウェハを前記格子状区画領域ごとに分割(割断)して、複数の半導体チップを得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-161735号公報
【特許文献2】特開2012-119670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、一つの半導体ウェハを分割(割断)して複数の半導体チップを得る場合、分割部(割断部)付近の半導体ウェハの一部が粉状化されるなどして微量の粉塵が発生することがある。
そして、このような粉塵が前記半導体チップの一表面側(回路パターンが形成された側)に付着すると、一表面側に形成された回路パターンに含まれる回路の動作信頼性が低下する虞があることから好ましくない。
そのため、半導体チップを製造する際に前記一つの半導体ウェハの一表面側(回路パターンが形成された側)に前記保護シートを貼り合わせて半導体チップを保護することが考えられる。
このような保護シートとしては、用済み後に半導体ウェハなどの被着体から除去することが容易な水溶性の保護層を備えたものが有用であると考えられる。
【0006】
ところで半導体ウェハなどの被着体に保護シートを貼着する場合、所定の形状に切断した保護シートをラミネート装置にセットして被着体に貼り付けたり、所定の形状に切断した保護シートを被着体に直接的に貼り合わせたりする方法が考えられる。
そしてラミネート装置にセットする際や被着体に直接的に貼り付ける際などにおける保護層の位置合わせや保護層からはく離ライナーを剥がすことを容易に行う上では、はく離ライナーに掴みしろを設けることが有効であると考えられる。
しかしながら、そうするとはく離ライナーを保護層の外周縁よりも外側にはみ出させることになり、はく離ライナーの外周縁と保護層の外周縁とが一致しなくなるので、はく離ライナー側から保護層の位置を正確に把握することが困難になり保護層の位置合わせを困難にさせることにもなりかねない。
そこで、本発明は、転写装置や被着体などに対する保護層の位置合わせが容易な保護シートの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る保護シートは、
被着体に貼着される保護層と、
該保護層の表面に配されるはく離ライナーと、を備え、
前記保護層が水溶性高分子を含み、
前記はく離ライナーが、前記保護層に対向する内表面と、該内表面とは反対面となる外表面とを備え、
前記はく離ライナーの前記外表面から前記保護層を透過するまでの光透過率は、少なくとも一つの波長において前記はく離ライナーの光透過率よりも15%以上低い。
【0008】
また、本発明に係る保護シートは、
被着体に貼着される保護層と、
該保護層の一表面に配される第1はく離ライナーと、
前記保護層の他表面に配される第2はく離ライナーと、を備え、
前記保護層は、水溶性高分子化合物を含み、
前記第1はく離ライナーと前記第2はく離ライナーとのそれぞれが前記保護層に対向する内表面と、該内表面とは反対面となる外表面とを備え、
前記第2はく離ライナーの前記外表面から前記第1はく離ライナーの前記外表面までの光透過率は、少なくとも一つの波長において前記第2はく離ライナーの光透過率よりも15%以上低い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、転写装置や被着体などに対する保護層の位置合わせが容易な保護シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本発明の一実施形態に係る保護シートの構成を示す模式断面図。
【
図1B】本発明の他の実施形態に係る保護シートの構成を示す模式断面図。
【
図2A】本発明の一実施形態に係る保護シートにおいて保護層をカットする一態様を示す模式断面図。
【
図2B】本発明の他の実施形態に係る保護シートを得るに際して保護層をカットする一態様を示す模式断面図。
【
図2C】保護層の露出面に第1はく離ライナーを貼り合わせて他の実施形態に係る保護シートを得る例を示す模式断面図。
【
図3A】センシング装置を用いて後プリカットにより得られた保護層の位置を検出している様子を示す模式断面図。
【
図3B】マウント装置を用いて後プリカットにより得られた保護層を半導体ウェハの保護対象面に貼り合わせる様子を示す模式断面図。
【
図3C】半導体ウェハの保護対象面に保護層が貼り合わされた様子を示す模式断面図。
【
図4A】センシング装置を用いて先プリカットにより得られた保護層の位置を検出している様子を示す模式断面図。
【
図4B】ラミネート装置を用いて先プリカットにより得られた保護層を半導体ウェハの保護対象面に貼り合わせる様子を示す模式断面図。
【
図4C】半導体ウェハの保護対象面に保護層が貼り合わされた様子を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0012】
[第一実施形態に係る保護シート]
本発明の第一実施形態に係る保護シート10は、
図1A及び
図1Bに示したように、保護層1と、保護層1の一表面に配される第1はく離ライナー2と、保護層1の他表面に配される第2はく離ライナー3と、を備えている。
第一実施形態に係る保護シート10においては、保護層1は、水溶性高分子化合物を含む。
即ち、保護層1は、水溶性を有する。
一方で第1はく離ライナー2と第2はく離ライナー3とは非水溶性である。
【0013】
本実施形態の保護層1は、被着体に貼着させることができる程度の接着性を有する。
本実施形態の保護層1は、タック性(感圧接着性)を有することが好ましい。
本実施形態の保護シート10は、保護層1を被着体(本実施形態においては「半導体ウェハ」)に貼着させることで被着体に対する各種の処理を施す間、当該被着体の表面に異物が付着することを防止すべく用いられる。
【0014】
前記第1はく離ライナー2と前記第2はく離ライナー3とのそれぞれは、半導体ウェハに貼着する前の保護層1に異物が付着するのを防止すべく保護層1に貼合されている。
前記第1はく離ライナー2と前記第2はく離ライナー3とのそれぞれは、前記保護層1に対向する内表面と、該内表面とは反対面となる外表面とを備える。
本実施形態の保護シート10は、第2はく離ライナー3を剥がして保護層1の前記他表面を半導体ウェハに貼着させるようにして用いられる。
【0015】
本実施形態では、後述するように、被着体における保護対象面と保護層1とが正確に位置決めされた上で前記保護対象面に保護層1が貼着される。
位置決めは直接的なものでなく間接的なものであってもよい。
例えば、被着体が所定位置に配置されることが予定されているラミネート装置などに保護層1をセットして当該ラミネート装置で被着体に保護層1を貼合する際には、ラミネート装置における保護層1の位置決めを行うことで被着体への保護層1の位置決めを行うようにしてもよい。
【0016】
本実施形態では、位置決めを行う時点において保護層1は、第2はく離ライナー3の全面には貼合されておらず、第2はく離ライナー3の内表面を部分的に覆うように設けられる。
そして、本実施形態における位置決め時の保護シート10には、第2はく離ライナー3と保護層1とが積層されている積層領域と、第2はく離ライナー3に保護層1が積層されておらず第2はく離ライナー3のみとなっている単層領域とが設けられ、該単層領域が前記積層領域を包囲するように設けられている。
【0017】
第一実施形態に係る保護シート10においては、第2はく離ライナー3の光の透過率は、保護層1、第1はく離ライナー2、または、保護層1及び第1はく離ライナー2の積層体のいずれかの透過率よりも高くなっている。
より詳しくは、本実施形態では、前記第2はく離ライナーの前記外表面から前記保護層1を透過するまでの光の透過率が、少なくとも一つの波長において前記第2はく離ライナー3の光透過率よりも15%以上低いか、又は、前記第2はく離ライナー3の前記外表面から前記第1はく離ライナー2の前記外表面までの光透過率が、少なくとも一つの波長において前記第2はく離ライナー3の光透過率よりも15%以上低い。
【0018】
第一実施形態に係る保護シート10においては、近赤外領域に含まれる一波長において測定された第2はく離ライナー3の透過率TAと前記一波長において測定された保護層1の透過率TBとの差をΔTABとし、前記透過率TAと前記一波長において測定された第1はく離ライナー2の透過率TCとの差をΔTACとし、前記透過率TAと前記一波長において測定された保護層1及び第1はく離ライナー2との積層体の透過率TDとの差をΔTADとしたときに、前記ΔTAB、前記ΔTAC、または、前記ΔTADが、15%以上である。
【0019】
なお、本明細書において、近赤外領域とは、波長800nm以上2500nm以下の領域を意味する。
また、本発明の第一実施形態においては、前記近赤外領域に含まれる一波長として、1060nmの波長を用いることが好ましい。
【0020】
保護層1は、電子部品の保護対象面に貼り合わせて用いられる。
前記電子部品としては、例えは、半導体ウェハなどが挙げられる。
前記半導体ウェハとしては、一表面側に格子状に区画された領域(以下、格子状区画領域ともいう)が形成された半導体ウェハであって、前記格子状区画領域のそれぞれに回路パターンが形成されているとともに電極部が配されている半導体ウェハが挙げられる。
前記電子部品が上記のごとき半導体ウェハである場合、保護層1は、前記半導体ウェハの一表面に貼り合わせて用いられる。
このように、保護層1が前記半導体ウェハの一表面に貼り合わされることにより、前記半導体ウェハを分割(割断)して複数の半導体チップを得るときに分割部(割断部)付近の前記半導体ウェハの一部が粉状化されるなどして発生する微細な異物が、前記一表面に形成された各回路パターン(前記格子状区画領域ごとに形成された回路パターン)、及び、前記一表面に配される各電極部(前記格子状区画領域ごとに配される電極部)に付着することを抑制することができる。
【0021】
図1Aに示した保護シート10では、保護層1、第1はく離ライナー2、及び、第2はく離ライナー3が、平面視において略同一寸法を有している。
そして、保護層1は、通常、平面視において電子部品の保護対象面よりも大きな寸法を有している。
【0022】
本実施形態の保護シート10は、例えば、次のようにして半導体ウェハの保護に用いられる。
(a)前記保護層1の両面に一方及び他方のはく離ライナー(2,3)を積層させて前記保護シートを得た後、一方のはく離ライナー(第1はく離ライナー2)及び前記保護層1の積層体の平面寸法が前記一つの半導体ウェハの平面寸法と略同一となるように前記積層体をカットする(後プリカット法)。
すなわち、後プリカット法では、前記保護シート10は、前記保護層1が該保護層1よりも大きな平面寸法を有する他方のはく離ライナー(第2はく離ライナー3)と前記保護層1と略同一の平面寸法を有する一方のはく離ライナー(第1はく離ライナー2)とで挟持されたものとして構成される。
【0023】
本実施形態の保護シート10は、また、次のようにして半導体ウェハの保護に用いられる。
(b)前記保護層1の一表面に一方のはく離ライナー(第1はく離ライナー2)を積層させた状態とした後、平面寸法が前記半導体ウェハの平面寸法と略同一となるように前記保護層1のみをカットする(先プリカット法)。その後、カットされた前記保護層1の他表面に前記保護層1の平面寸法よりも大きな平面寸法を有する他方のはく離ライナー(例えば、前記一方のはく離ライナーと略同一の平面寸法を有するはく離ライナー(第2はく離ライナー3)を積層させる。
すなわち、先プリカット法では、前記保護シート10は、前記保護層1が該保護層1よりも大きな平面寸法を有する2枚のはく離ライナー(一方及び他方のはく離ライナー)で挟持されたものとして構成される。
【0024】
上の(a)で説明したように、本実施形態の一つの態様においては、保護層1を電子部品の保護対象面に貼り合わせるに際して、保護層1は、第1はく離ライナー2との積層体とされた状態で、電子部品の保護対象面と略同一の平面寸法を有するように第1はく離ライナー2側からカットされる(
図2A参照)。
すなわち、
図1Aに示した保護シート10では、保護層1は、後プリカット法によって電子部品の保護対象面と略同一寸法とされる。
【0025】
図1Aに示した保護シート10では、第1はく離ライナー2及び第2はく離ライナー3は、平面視において略同一寸法を有しており、この平面寸法は、電子部品の保護対象面よりも大きくなっている。
これに対し、
図1Bに示した保護シート10では、保護層1は、平面視において、電子部品の保護対象面と略同一の寸法を有している。
詳しくは、保護層1は、一方のはく離ライナー、例えば、第1はく離ライナー2との積層体とされた後にカットされて(
図2B参照)、電子部品の保護対象面と略同一の平面寸法とされている。
すなわち、
図1Bに示した保護シート10では、保護層1は、先プリカット法によって電子部品の保護対象面と略同一寸法とされている。
なお、他方のはく離ライナー、例えば、第2はく離ライナー3は、保護層1がカットされた後に保護層1の露出面に貼り合わせられる(
図2C参照)。
【0026】
前記第2はく離ライナー3は、長手方向と短手方向とを備えた長尺の帯状であってもよい。
保護シート10は、一つの帯状の第2はく離ライナー3と、保護対象面と同一形状を有する複数の保護層1とを備え、該複数の保護層1が第2はく離ライナー3の長手方向に並んで配置されたものであってもよく、該長手方向において隣り合う保護層1の間に一定の間隔が設けられたものであってもよい。
また、その場合、第1はく離ライナー2は、第2はく離ライナー3と同様に帯状であってもよく、保護層1と同様に保護対象面と同一形状であってもよい。
【0027】
前記第2はく離ライナー3は、長手方向のみならず短手方向においても保護層1より寸法が大きくてもよい。
即ち、保護シート10は、保護層1の外周縁よりも外側に第2はく離ライナー3がはみ出し、且つ、第2はく離ライナー3のはみ出しが保護層1の全周において生じているものであってもよい。
【0028】
保護シート10は、例えば、以下のようにして作製することができる。
(1)アプリケータなどを用いて、水溶性高分子化合物とともに余剰な液分を含む水溶性樹脂組成物を第1はく離ライナー2上に所定厚さ(例えば、10μm)で塗布する。
(2)塗布後の水溶性樹脂組成物を所定温度で所定時間(例えば、110℃で2分間)乾燥する。これにより、第1はく離ライナー2上に水溶性高分子化合物を含む保護層1を形成する。
(3)保護層1において、第1はく離ライナー2が配されている面の反対面(保護層1の露出面)に第2はく離ライナー3を貼り合わせる。
なお、
図1Bに示した保護シート10の作製においては、上記ステップ(2)と上記ステップ(3)との間に、電子部品の保護対象面と略同一の平面寸法を有するように保護層1をカットするステップ(ステップ(2’)。
図2B参照)を実施する。
【0029】
第一実施形態に係る保護シート10においては、保護層1は、水溶性高分子化合物とともに余剰な液分を含む水溶性樹脂組成として、水に前記水溶性高分子化合物を分散させたもの(以下、保護層形成組成物という)を用いて作製されることが好ましい。
前記保護層形成組成物では、水100質量部に対して、前記水溶性高分子化合物が5質量部以上80質量部以下含まれていることが好ましく、10質量部以上70質量部以下含まれていることがより好ましく、15質量部以上60質量部以下含まれていることがさらに好ましい。
また、前記保護層形成組成物では、水に前記水溶性高分子化合物が溶解した状態となっていることが好ましい。
なお、前記保護層形成組成物では、前記水溶性高分子化合物は、20~90℃の温度で処理されることにより水に溶解した状態とすることができる。
さらに、前記保護層形成組成物は、25℃における粘度が0.03Pa・s以上であることが好ましく、0.05Pa・s以上であることがより好ましく、0.1Pa・s以上であることがさらに好ましい。
25℃における粘度が上記した下限値以上であることにより、前記保護層形成組成物を第1はく離ライナー2上に塗布して該第1はく離ライナー2上に保護層1を形成したときに、保護層1の厚みが変動し易くなることを抑制することができる。
また、前記保護層形成組成物は、25℃における粘度が15Pa・s以下であることが好ましく、10Pa・s以下であることがより好ましく、5Pa・s以下であることがさらに好ましい。
25℃における粘度が上記した上限値以上であることにより、前記保護層形成組成物を第1はく離ライナー2上に塗布するときの塗布性を向上させることができる。
なお、25℃における前記保護層形成組成物の粘度は、測定装置として、英弘精機社製のデジタル粘度計(製品名「DV-I Prime」)を用いた上で、LV-3スピンドルを用いて、回転数50rpmという条件を採用することにより測定することができる。
【0030】
前記水溶性高分子化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、水溶性ポリエステル(PES)、ポリエチレンオキシド(PEO)などが挙げられる。
前記水溶性高分子化合物は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性ポリエステル、ポリエチレンオキシドなどを単独で用いてもよいし、これらの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、水溶性ポリエステル、及び、ポリエチレンオキシドからなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、ポリビニルアルコールを用いることがより好ましい。
【0031】
前記ポリビニルアルコールは、けん化度が50以上98以下であることが好ましく、60以上90以下であることがより好ましい。
けん化度が上記数値範囲内であることにより、前記ポリビニルアルコールは、十分な水溶性を示すことができることに加えて、前記ポリビニルアルコールを前記保護層形成組成物に含ませた場合においては、第1はく離ライナー2上への前記保護層形成組成物の塗布を作業性良く実施することができる。
前記ポリビニルアルコールのけん化度は、プロトン磁気共鳴分光法(1H-NMR測定法)によって測定することができる。
なお、測定試料中に添加剤が含まれており、該添加剤由来のピークがけん化度の算出に用いるピークに重なる場合には、前記測定試料にメタノール抽出などを施して前記添加剤を分離した後に、前記ポリビニルアルコールのけん化度を測定する。
前記ポリビニルアルコールのけん化度は、以下のような条件で測定することができる。
<測定条件>
・分析装置 FT-NMR : Bruker Biospin , AVANCE III-400
・観測周波数 400MHz(1H)
・測定溶媒 重水、または、重ジメチルスルホキシド(重DMSO)
・測定温度 80℃
・化学シフト基準 外部標準TSP-d4(0.00ppm)(重水測定時)
測定溶媒(2.50ppm)(重DMSO測定時)
なお、前記ポリビニルアルコールのけん化度は、ビニルアルコールユニット(VOH)のメチレン基由来のピーク(重水;2.0~1.0ppm、重DMSO;1.9~1.0ppm)と、酢酸ビニルユニット(VAc)のアセチル基由来のピーク(重水;2.1ppm付近、重DMSO;2.0ppm付近)とを用いて、以下の式に基づいて算出する。
以下の式において、[VOH(-CH2)-]は、ビニルアルコールユニット中の-CH2-由来のピークの強度を意味し、[VAc(CH3CO-)]は、酢酸ビニルユニット中のCH3CO-由来のピーク強度を意味する。
【0032】
【0033】
前記ポリビニルアルコールは、平均重合度が100以上1000以下であることが好ましく、100以上800以下であることがより好ましい。
平均重合度が上記数値範囲内であることにより、前記ポリビニルアルコールは、十分な水溶性を示すことができることに加えて、前記ポリビニルアルコールを前記保護層形成組成物に含ませた場合においては、第1はく離ライナー2上への前記保護層形成組成物の塗布を作業性良く実施することができる。
前記ポリビニルアルコールの平均重合度は、水系GPCによって測定することができる。
前記ポリビニルアルコールの平均重合度は、以下のような条件で測定することができる。
<測定条件>
・分析装置 Agilent, 1260Infinity
・カラム TSKgel G6000PWXL(東ソー社製)及びTSKgel G3000PWXL(東ソー社製)
上記2本のカラムは直列接続する。
・カラム温度 40℃
・溶離液 0.2Mの硝酸ナトリウム水溶液
・注入量 100μL
・検出器 示差屈折計(RI)
・標準試料 PEG標準試料及びPVA標準試料
具体的な測定は、以下のようにして行う。
(1)PEG標準試料を用いたGPC測定によって、被測定試料(PVA)及びPVA標準試料の質量平均分子量Mwをそれぞれ算出する。なお、PVA標準試料は、平均重合度が既知のものである。
(2)PVA標準試料の平均重合度、及び、算出したPVA標準試料の質量平均分子量Mwを用いて検量線を作成する。
(3)作成した検量線を用いて、被測定試料(PVA)の質量平均分子量Mwから被測定試料(PVA)の平均重合度を求める。
【0034】
また、前記水溶性高分子として、前記ポリビニルアルコールを用いる場合には、けん化度が異なる複数のポリビニルアルコールを組み合わせて用いてもよいし、平均重合度が異なる複数のポリビニルアルコールを組み合わせて用いてもよい。
【0035】
前記水溶性ポリエステルは、多価カルボン酸の残基とポリオールの残基とを有する。
前記水溶性ポリエステルは、例えば、多価カルボン酸成分とポリオール成分とを含むモノマー成分の重合生成物である。
なお、前記水溶性ポリエステルが水溶性を有することは、技術常識に基づいて判断することができる。
【0036】
前記水溶性ポリエステルは、以下の(1)~(4)のうちの少なくとも1つを満たすことが好ましい。
(1)前記水溶性ポリエステルで形成された厚み20μmの薄膜の表面全体に常温(23±2℃)の水を0.005MPaの噴霧圧で20分間噴霧すると、この薄膜が全て水に溶解する。
(2)前記水溶性ポリエステルで形成された厚み20μmの薄膜の表面全体に50℃の水を0.005MPaの噴霧圧で10分間噴霧すると、この薄膜が全て水に溶解する。
(3)前記水溶性ポリエステルと常温の水とを、水溶性ポリエステル:常温の水=1:5の質量比で混合して混合液を得て、該混合液に超音波を20分間照射すると、前記水溶性ポリエステルが水に全て溶解する。
(4)前記水溶性ポリエステルと50℃の水とを、水溶性ポリエステル:50℃の水=1:5の質量比で混合して混合液を得て、該混合液に超音波を10分間照射すると、前記水溶性ポリエステルが水に全て溶解する。
【0037】
保護層1の厚さは、2μm以上70μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましく、5μm以上40μm以下であることがさらに好ましい。
保護層1の厚さは、例えば、ダイアルゲージ(PEACOCK社製、型式R-205)を用いて、ランダムに選んだ任意の5点の厚さを測定し、これらの厚さを算術平均することにより求めることができる。
【0038】
第1はく離ライナー2としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂を用いて作製された樹脂シートが挙げられる。
前記樹脂シートは、少なくとも保護層1に貼り合わされる面に離型処理が施されたものであってもよい。
前記離型処理としては、シリコーン離型処理などが挙げられる。
また、第2はく離ライナー3も、第1はく離ライナー2と同様のものを用いることができる。
【0039】
第1はく離ライナー2及び第2はく離ライナー3の厚さは、15μm以上75μm以下であることが好ましく、20μm以上60μm以下であることがより好ましい。
第1はく離ライナー2及び第2はく離ライナー3の厚さは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
第1はく離ライナー2及び第2はく離ライナー3の厚さは、保護層1の厚さと同様にして求めることができる。
【0040】
上で説明したように、第一実施形態に係る保護シート10においては、第2はく離ライナー3の透過率は、保護層1、第1はく離ライナー2、または、保護層1及び第1はく離ライナー2の積層体のいずれかの透過率よりも高くなっている。
また、第一実施形態に係る保護シート10においては、近赤外領域に含まれる一波長において測定された第2はく離ライナー3の透過率TAと前記一波長において測定された保護層1の透過率TBとの差をΔTABとし、前記透過率TAと前記一波長において測定された第1はく離ライナー2の透過率TCとの差をΔTACとし、前記透過率TAと前記一波長において測定された保護層1及び第1はく離ライナー2との積層体の透過率TDとの差をΔTADとしたときに、前記ΔTAB、前記ΔTAC、または、前記ΔTADが、15%以上である。
なお、透過率TAは、前記一波長の光が厚さ方向と平行に第2はく離ライナー3を透過するときの比率を意味し、透過率TBは、前記一波長の光が厚さ方向と平行に保護層1を透過するときの比率を意味し、透過率TCは、前記一波長の光が厚さ方向と平行に第1はく離ライナー2を透過するときの比率を意味し、透過率TDは、前記一波長の光が厚さ方向と平行に保護層1及び第1はく離ライナー2の積層体を透過する比率を意味する。
すなわち、透過率TA~TDは、平行線透過率を意味する。
【0041】
近赤外領域に含まれる光、すなわち、近赤外光は、波長が極めて長いことから、対象物に照射したときに厚さ方向と平行に該対象物を透過し易い。
そのため、前記ΔTABを15%以上とするためには、近赤外領域に含まれる一波長の光が厚さ方向と平行に保護層1を透過することを妨げる必要があり、前記ΔTACを15%以上とするためには、前記一波長の光が厚さ方向と平行に第1はく離ライナー2を透過することを妨げる必要があり、前記ΔTADを15%以上とするためには、前記一波長の光が厚さ方向と平行に保護層1及び第1はく離ライナー2の積層体を透過することを妨げる必要がある。
具体的には、保護層1や第1はく離ライナー2において、厚さ方向と平行に透過する前記一波長の光の一部を吸収させたり、保護層1や第1はく離ライナー2において、厚さ方向と平行に透過する前記一波長の光の一部を乱反射させたりする必要がある。
【0042】
前記一波長の光が厚さ方向と平行に保護層1を透過することを妨げる処理としては、保護層1を形成するための前記保護層形成組成物中に、顔料を含ませることが挙げられる。
保護層1が顔料を含むことにより、前記一波長の光のような近赤外光であっても、前記顔料によって、前記一波長の光の一部を吸収させることができる。
また、前記顔料によって、前記一波長の光の一部を乱反射させることができる。
【0043】
前記顔料としては、従来公知の顔料を用いることができる。
前記顔料としては、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、ジルコニア、酸化鉄系、水酸化鉄系、酸化クロム系、スピネル型焼成系、クロム酸系、クロムバーミリオン系、紺青系、アルミニウム粉末系、ブロンズ粉末系、リン酸カルシウム等の無機顔料や、フタロシアニン系、アゾ系、縮合アゾ系、アゾレーキ系、アンスラキノン系、ペリレン・ペリノン系、インジゴ・チオインジゴ系、イソインドリノン系、アゾメタン系、カーボンブラック系などの有機顔料が挙げられる。
【0044】
保護層1は水溶性高分子化合物の100質量部に対して、前記顔料を0.1質量部以上含んでいることが好ましく、0.5質量部以上含んでいることがより好ましく、1.0質量部以上含んでいることがさらに好ましい。
また、保護層1は水溶性高分子化合物の100質量部に対して、前記顔料を30質量部以下含んでいることが好ましく、20質量部以下含んでいることがより好ましく、10質量部以下含んでいることがさらに好ましい。
なお、顔料とは、水やアルコールなどの有機溶剤に溶解しない性質を有する着色剤を意味する。
【0045】
また、前記一波長の光が厚さ方向と平行に保護層1を透過することを妨げる処理としては、保護層1を形成するための前記保護層形成組成物に発泡処理を施すことも挙げられる。
このような発泡処理が施された前記保護層形成組成物で形成された保護層1には、複数の気泡が含まれるようになる。
これにより、保護層1に含まれる複数の気泡において乱反射を生じさせることができるので、前記一波長の光のような近赤外光であっても、厚さ方向と平行に保護層1を透過する比率を低下させることができる。
【0046】
上で説明したように、第1はく離ライナー2がポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂を用いて作製された樹脂シートである場合、前記一波長の光が厚さ方向と平行に第1はく離ライナー2を透過することを妨げる処理としては、前記樹脂シートを作製するための樹脂組成物に発泡処理を施すことが挙げられる。
前記樹脂組成物に発泡処理を施すことにより得られる樹脂シート(樹脂発泡シート)は複数の気泡を含むようになるので、複数の気泡において乱反射を生じさせることができる。
これにより、前記一波長の光のような近赤外光であっても、厚さ方向と平行に第1はく離ライナー2を透過する比率を低下させることができる。
また、第1はく離ライナー2がポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂を用いて作製された樹脂シートである場合、前記樹脂シートとされた状態で発泡処理が施されてもよい。
例えば、前記樹脂シートを延伸させ、その延伸時にボイドを発生させるような発泡処理が施されてもよい。
【0047】
また、前記一波長の光が厚さ方向と平行に第1はく離ライナー2を透過することを妨げる処理としては、第1はく離ライナー2の少なくとも一方面に酸化チタンなどの顔料を含むインクを塗工することが挙げられる。
第1はく離ライナー2の少なくとも一方面(内表面、外表面、又は、両面)に顔料を含む塗工層が形成されていることにより、前記一波長の光のような近赤外光であっても、前記塗工層に含まれる顔料によって、前記一波長の光の一部を吸収させることができる。
また、前記顔料によって、前記一波長の光の一部を乱反射させることができる。
【0048】
さらに、顔料を含む樹脂を用いた第1はく離ライナー2を構成して、前記顔料に前記一波長の光の一部を吸収させたり、前記顔料によって前記一波長の光の一部を乱反射させたりすることにより、前記一波長の光が厚さ方向と平行に第1はく離ライナー2を透過する比率を低下させてもよい。
【0049】
また、前記一波長の光が厚さ方向と平行に第1はく離ライナー2を透過することを妨げる処理としては、第1はく離ライナー2の少なくとも一方面にマット加工やエンボス加工を施すことも挙げられる。
第1はく離ライナー2の少なくとも一方面にマット加工やエンボス加工を施すことにより、第1はく離ライナー2表面の凹凸部分において乱反射を生じさせることができる。
これにより、前記一波長の光のような近赤外光であっても、厚さ方向と平行に第1はく離ライナー2を透過する比率を低下させることができる。
【0050】
前記第1はく離ライナー2は、光を遮るための層を有する積層フィルムであってもよい。前記第1はく離ライナー2は、樹脂層と金属蒸着層とを有する積層フィルムであってもよく、アルミラミネートフィルムのようなものであってもよい。
【0051】
前記一波長の光が厚さ方向と平行に保護層1及び第1はく離ライナー2の積層体を透過することを妨げて、第2はく離ライナー3の透過率TAと保護層1及び第1はく離ライナー2の積層体の透過率TDとの差であるΔTADを15%以上とするためには、第2はく離ライナー3の透過率TAと保護層1の透過率TBとの差であるΔTAB、及び、第2はく離ライナー3の透過率TAと第1はく離ライナー2の透過率TCとの差であるΔTACの合算値が15%以上となっていればよい。
例えば、ΔTABを5%以上とした上で、ΔTACを10%以上としたり、ΔTABを10%以上とした上で、ΔTACを5%以上としたりすればよい。
保護層1の透過率TB及び第1はく離ライナーの透過率TCは、上で説明したのと同様にして調整することができる。
なお、当然のことながら、上で説明したように、ΔTAB及びΔTACの少なくとも一方を15%以上とすることによっても、前記ΔTADを15%以上とすることができる。
【0052】
第2はく離ライナー3を通じて保護層1や第1はく離ライナー2の存在を把握するための透過率の差は、20%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましい。透過率の差は、30%以上であってもよく、40%以上であってもよく、50%以上であってもよい。
尚、このような透過率の差を有することが好ましいのは、後述する他の実施形態においても同じである。
【0053】
前記一波長において測定された保護層1の透過率TB、前記一波長において測定された第1はく離ライナー2の透過率TC、及び、前記一波長において測定された保護層1及び第1はく離ライナー2の積層体の透過率TDとの差を可能な限り大きくする観点から、前記一波長において測定された第2はく離ライナー3の透過率TAは、前記一波長の光の透過性が高い方が好ましい。
前記一波長において測定された第2はく離ライナー3の透過率TAは、65%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。
前記一波長において測定された第2はく離ライナー3の透過率TAは、100%以下であってもよいし、95%以下であってもよい。
【0054】
前記一波長における第2はく離ライナー3の透過率TA、前記一波長における保護層1の透過率TB、前記一波長における第1はく離ライナー2の透過率TC、及び、前記一波長における保護層1及び第1はく離ライナー2の積層体の透過率TDは、分光光度計(日本分光社製、商品名「V-670」)を用いて、前記一波長における平行線透過率を測定することにより求めることができる。
分光光度計を用いた平行線透過率の測定では、測定波長を190nm~3000nmの範囲とすることができる。
また、第2はく離ライナー3については厚さ50μm程度のものを測定試料とすることができ、保護層1については厚さ10μm程度のものを測定試料とすることができ、第1はく離ライナー2については厚さ40μm程度のものを測定試料とすることができる。
なお、分光光度計を用いた平行線透過率の測定は、積分球を使用せずに実施する。
【0055】
[第二実施形態に係る保護シート]
本発明の第二実施形態に係る保護シート10は、紫外領域に含まれる一波長において測定された第2はく離ライナー3の透過率TA’と前記一波長において測定された保護層1の透過率TB’との差をΔTA’B’とし、前記透過率TA’と前記一波長において測定された第1はく離ライナー2の透過率TC’との差をΔTA’C’とし、前記透過率TA’と前記一波長において測定された保護層1及び第1はく離ライナー2の積層体の透過率TD’との差をΔTA’D’としたときに、前記ΔTA’B’、前記ΔTA’C’、または、前記ΔTA’D’が、15%以上であること以外は、先に説明した第一実施形態に係る保護シート10と同様に構成されている。
【0056】
本明細書において、紫外領域とは、波長200nm以上380nm未満の領域を意味する。
また、本発明の第二実施形態においては、前記紫外領域に含まれる一波長として、330nmの波長を用いることが好ましい。
【0057】
前記透過率TA’~TD’は、前記透過率TA~TDと同様に、平行線透過率を意味する。
また、紫外領域に含まれる一波長における第2はく離ライナー3の透過率TA’、前記一波長における保護層1の透過率TB’、前記一波長における第1はく離ライナー2の透過率TC’、及び、前記一波長における保護層1及び第1はく離ライナー2の積層体の透過率TD’も、上で説明したのと同様にして測定することができる。
【0058】
紫外領域に含まれる光、すなわち、紫外光(紫外線)は、波長が極めて短いことから、対象物に照射したときに、上で説明したような波長が極めて長い光、すなわち、近赤外光よりも該対象物を透過し難くなっている。
そのため、保護層1に上の第一実施形態の項で説明したのと同様の処理を施すことにより、前記ΔTA’B’を15%以上とすることができ、第1はく離ライナー2に上の第一実施形態の項で説明したのと同様の処理を施すことにより、前記ΔTA’C’を15%以上とすることができ、保護層1及び第1はく離ライナー2の積層体に上の第一実施形態の項で説明したのと同様の処理を施すことにより、前記ΔTA’D’を15%以上とすることができる。
【0059】
また、上記以外の処理を施すことによっても、前記ΔTA’B’、ΔTA’C’、及び、ΔTA’D’を15%以上とすることができる。
例えば、紫外線吸収剤を含ませた前記保護層形成組成物で保護層1を構成したり、紫外線吸収剤を含む樹脂を用いて第1はく離ライナー2を構成したりすることにより、前記ΔTA’B’、前記ΔTA’C’、及び、ΔTA’D’を15%以上とすることができる。
【0060】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤などが挙げられる。
これら各種の紫外線吸収剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0061】
保護層1に前記紫外線吸収剤を含ませる場合、保護層1は、水溶性高分子化合物の100質量部に対して、前記紫外線吸収剤を0.1質量部以上含んでいることが好ましく、0.5質量部以上含んでいることがより好ましく、1.0質量部以上含んでいることがさらに好ましい。
また、保護層1に前記紫外線吸収剤を含ませる場合、保護層1は、水溶性高分子化合物の100質量部に対して、前記紫外線吸収剤を20質量部以下含んでいることが好ましく、15質量部以下含んでいることがより好ましく、10質量部以下含んでいることがさらに好ましい。
【0062】
また、紫外線吸収剤に代えて、後述するアゾ系染料を含ませた前記保護層形成組成物で保護層1を構成したり、前記アゾ系染料を含む樹脂を用いて第1はく離ライナー2を構成したりすることによっても、前記ΔTA’B’、前記ΔTA’C’、及び、ΔTA’D’を15%以上とすることができる。
なお、前記アゾ系染料としては、例えば、黄色を呈する黄色染料などが挙げられる。
【0063】
保護層1に前記アゾ系染料を含ませる場合、その含有量は、上で説明した前記紫外線吸収剤の含有量と同様とすることができる。
【0064】
また、前記紫外線吸収剤に加えて前記アゾ系染料を含ませた前記保護層形成組成物で保護層1を構成したり、前記紫外線吸収剤に加えて前記アゾ系染料を含む樹脂を用いて第1はく離ライナー2を構成したりすることによっても、前記ΔTA’B’、前記ΔTA’C’、及び、ΔTA’D’を15%以上とすることができる。
【0065】
[第三実施形態に係る保護シート]
本発明の第三実施形態に係る保護シート10は、可視領域に含まれる一波長において測定された第2はく離ライナー3の透過率TA’’と前記一波長において測定された保護層1の透過率TB’’との差をΔTA’’B’’とし、前記透過率TA’’と前記一波長において測定された第1はく離ライナー2の透過率TC’’との差をΔTA’’C’’とし、前記透過率TA’’と前記一波長において測定された保護層1及び第1はく離ライナー2の積層体の透過率TD’’との差をΔTA’’D’’としたときに、前記ΔTA’’B’’、前記ΔTA’’C’’、または、前記ΔTA’’D’’が、15%以上であること以外は、先に説明した第一実施形態に係る保護シート10と同様に構成されている。
【0066】
本明細書において、可視領域とは、波長380nm以上800nm未満の領域を意味する。
また、本発明の第三実施形態においては、前記可視領域に含まれる一波長として、550nm以上650nmの範囲内の一波長を用いることが好ましい。
【0067】
透過率TA’’~TD’’は、透過率TA~TDと同様に、平行線透過率を意味する。
また、可視領域に含まれる一波長における第2はく離ライナー3の透過率TA’’、前記一波長における保護層1の透過率TB’’、前記一波長における第1はく離ライナー2の透過率TC’’、及び、前記一波長における保護層1及び第1はく離ライナー2の積層体の透過率TD’’も、上で説明したのと同様にして測定することができる。
【0068】
可視領域に含まれる光、すなわち、可視光(可視光線)は、近赤外光よりも波長が短いことから、対象物に照射したときに、近赤外光よりも該対象物を透過し難くなっている。
そのため、保護層1に上の第一実施形態の項で説明したのと同様の処理を施すことにより、前記ΔTA’’B’’を15%以上とすることができ、第1はく離ライナー2に上の第一実施形態の項で説明したのと同様の処理を施すことにより、前記ΔTA’’C’’を15%以上とすることができ、保護層1及び第1はく離ライナー2の積層体に上の第一実施形態の項で説明したのと同様の処理を施すことにより、前記ΔTA’’D’’を15%以上とすることができる。
【0069】
また、可視光を吸収する成分を含む前記保護層形成組成物で保護層1を構成したり、可視光を吸収する成分を含む樹脂を用いて第1はく離ライナー2を構成したりすることによっても、前記ΔTA’’B’’、前記ΔTA’’C’’、及び、ΔTA’’D’’を15%以上とすることができる。
可視光を吸収する成分としては、例えば、染料が挙げられる。
なお、染料とは、水や有機溶剤などに溶解する性質を有する着色剤を意味する。
【0070】
前記染料としては、例えば、アゾ系染料、アントラキノン、キノンフタロン、スチリル、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、オキサジン、トリアジン、キサンタン、メタン、アゾメチン、アクリジン、ジアジンが挙げられる。
【0071】
保護層1に前記染料を含ませる場合、保護層1は、水溶性高分子化合物の100質量部に対して、前記染料を0.1質量部以上含んでいることが好ましく、0.5質量部以上含んでいることがより好ましく、1.0質量部以上含んでいることがさらに好ましい。
保護層1に前記染料を含ませる場合、保護層1は、水溶性高分子化合物の100質量部に対して、前記染料を30質量部以下含んでいることが好ましく、20質量部以下含んでいることがより好ましく、10質量部以下含んでいることがさらに好ましい。
【0072】
上の第一~第三実施形態に係る保護シート10においては、透過率差によって、第2はく離ライナー3と保護層1とを識別したり、第2はく離ライナー3と第1はく離ライナー2とを識別したり、第2はく離ライナー3と保護層1及び第1はく離ライナー2の積層体とを識別したりする例について説明した。
一方で、第2はく離ライナー3と保護層1との識別、第2はく離ライナー3と第1はく離ライナー2との識別、及び、第2はく離ライナー3と保護層1及び第1はく離ライナー2の積層体との識別は、透過率差に加えて、ヘーズ(曇り度)の差や明度(L値)の差によって実施されてもよい。
【0073】
第1はく離ライナー2と第2はく離ライナー3とをヘーズ(曇り度)の差から識別する上において、第1はく離ライナー2のヘーズは可能な限り高い値となることが好ましく、第2はく離ライナー3のヘーズは、可能な限り低い値となることが好ましい。
第1はく離ライナー2のヘーズの下限値は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、93%以上であることがよりさらに好ましく、98%以上であることが特に好ましい。
さらに、第2はく離ライナー3のヘーズの上限値は、10%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましく、3%以下であることが特に好ましい。
なお、第1はく離ライナー2のヘーズ及び第2はく離ライナー3のヘーズは、厚さ方向のヘーズを意味し、該厚さ方向のヘーズは、JIS K 7136に準拠して測定される値である。
また、厚さ方向のヘーズは、濁度計(日本電色社製、商品名「NDH2000」)を用いて測定することができる。
【0074】
また、保護層1と第2はく離ライナー3とをヘーズ(曇り度)の差から識別する上において、保護層1のヘーズは可能な限り高い値となることが好ましく、第2はく離ライナー3のヘーズは、可能な限り低い値となることが好ましい。
保護層1のヘーズの下限値は、15%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましく、35%以上であることがさらに好ましい。
また、第2はく離ライナー3のヘーズの上限値は、上で説明したように設定されていることが好ましい。
なお、保護層1のヘーズも、厚さ方向のヘーズを意味しており、該厚さ方向のヘーズは、第1はく離ライナー2及び第2はく離ライナー3と同様にして測定することができる。
【0075】
第1はく離ライナー2と第2はく離ライナー3とを明度(L値)の差から識別する上において、第1はく離ライナー2の明度(L値)は、可能な限り低い値であることが好ましく、第2はく離ライナー3の明度(L値)は、可能な限り高い値であることが好ましい。
第1はく離ライナー2の明度(L値)の上限値は、10以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましい。
また、第2はく離ライナー3の明度(L値)の下限値は、70以上であることが好ましく、80以上であることがより好ましく、90以上であることがさらに好ましい。
第1はく離ライナー2の明度(L値)、及び、第2はく離ライナー3の明度(L値)は、カラーメータ(スガ試験機社製、商品名「SM-T」)を用いて測定することができる。
なお、前記カラーメータを用いた測定においては、第1はく離ライナー2の色度(a値及びb値)及び第2はく離ライナー3の色度(a値及びb値)も同時に測定することができる。
【0076】
また、保護層1と第2はく離ライナー3とを明度(L値)の差から識別する上において、保護層1の明度(L値)は、可能な限り低い値であることが好ましく、第2はく離ライナー3の明度(L値)は、可能な限り高い値であることが好ましい。
保護層1の明度(L値)の上限値は、70以下であることが好ましく、65以下であることがより好ましい。
また、第2はく離ライナー3の明度(L値)の下限値は、80以上であることが好ましく、90以上であることがより好ましい。
保護層1の明度(L値)も、第1はく離ライナー2の明度(L値)及び第2はく離ライナー3の明度(L値)と同様にして、前記カラーメータを用いて測定することができる。
なお、前記カラーメータを用いた測定においては、保護層1の色度(a値及びb値)も同時に測定することができる。
【0077】
また、保護層1と、第1はく離ライナー2及び第2はく離ライナー3とは、光沢の差(以下、光沢差ともいう)によっても識別することができる。
例えば、光沢差は、保護層1の一方面に第1はく離ライナー2が積層され、保護層1の他方面に第2はく離ライナー3が積層された積層体において、60°の角度で光を入射したときの光沢(入射角60°での光沢)を測定することにより求めることができる。
60°の角度で入射させる光としては、白色光を用いることができる。
また、入射角60°での光沢は、コニカミノルタ社製の分光側色計CM-26dGを用いて測定することができる。
前記積層体の光沢差は、20GU以上であることが好ましく、30GU以上であることがより好ましく、50GU以上であることがより好ましく、90GU以上であることがより好ましい。
前記積層体の光沢差が上のような範囲にあることにより、保護層1と、第1はく離ライナー2及び第2はく離ライナー3とを十分に識別することができる。
【0078】
次に、電子部品として半導体ウェハを例に挙げて、後プリカット法で得られた保護層1(
図2A参照)を半導体ウェハの保護対象面に貼り合わせる例について説明するとともに、先プリカット法で得られた保護層1(2B参照)を半導体ウェハの保護対象面に貼り合わせる例について説明する。
以下では、まず、後プリカット法で得られた保護層1を備える保護シート10を用いて、保護層1を半導体ウェハの保護対象面に貼り合わせる例について説明する。
【0079】
後プリカット法で得られた保護層1を備える保護シート10を用いた、半導体ウェハの保護対象面への保護層1の貼り合わせは、保護シート10における保護層1の位置を検出するセンシング装置100と、該センシング装置100で検出した保護層1の位置に基づいて、半導体ウェハの保護対象面に保護層1を貼り合わせるマウント装置200と、を用いて実施される。
【0080】
図3Aに示したように、センシング装置100は、保護シート10を第1はく離ライナー2側から保持する保持面1011を有する保持テーブル101と、保持テーブル101の保持面1011と対向する位置に間隔を空けて配されて、保護シート10における保護層1の位置を検出する位置検出部102と、を備えている。
位置検出部102は、第2はく離ライナー3側から保護シート10を撮像するためのカメラ1021と、該カメラ1021の撮像視野を広げるためのレンズ1022とを備えている。
すなわち、センシング装置100では、第2はく離ライナー3側からカメラ1021によって撮像された画像を用いて、保護シート10における保護層1の位置を検出している。
なお、
図3Aに破線で示したように、カメラ1021の撮像視野は、レンズ1022によって保護シート10の全体にまで広げられている。
すなわち、センシング装置100では、カメラ1021は、第2はく離ライナー3側から保護シート10の全体を撮像できるようになっている。
【0081】
ここで、上で説明したように、第一実施形態に係る保護シート10では、近赤外領域に含まれる一波長での第2はく離ライナー3の透過率TAと前記一波長での保護層1の透過率TBとの差であるΔTABが15%以上となっているか、前記透過率TAと前記一波長での第1はく離ライナー2の透過率TCとの差であるΔTACが15%以上となっているか、あるいは、前記透過率TAと前記一波長での保護層1及び第1はく離ライナー2の積層体の透過率TDとの差であるΔTADが15%以上となっている。
第一実施形態に係る保護シート10では、第2はく離ライナー3のみの単層構造の領域(単層領域)と、第1はく離ライナー2と保護層1との積層構造を備えた領域(積層領域)とが設けられている。
保護層1が設けられている側から保護シート10を透過する光の強度は、単層領域を透過する透過光と積層領域を透過する透過光とで異なる。
本実施形態では、前記第2はく離ライナーの外表面から保護層1を透過するまでの光透過率、即ち、積層領域での透過率が、第2はく離ライナー3のみの光の透過率(単層領域の透過率)よりも15%以上低い。
したがって、本実施形態では、第2はく離ライナー3の外表面の側からカメラ1021(近赤外線カメラ)で保護シート10を撮影することで単層領域を明部とし、積層領域を前記明部よりも暗い暗部として把握することができる。
本実施形態では、15%以上の透過率の差を有することで前記暗部と前記明部との間に十分なコントラストが形成され、前記積層領域の外周縁を精度よく検知することができる。
そのため、第一実施形態に係る保護シート10においては、保護層1の位置を識別することができる。
これにより、第一実施形態に係る保護シート10での保護層1の位置を検出することができるとともに、保持テーブル101の保持面1011のどの位置に保護層1が配されているかを検出することができる。
【0082】
また、上で説明したように、第二実施形態に係る保護シート10では、紫外領域に含まれる一波長での第2はく離ライナー3の透過率TA’と前記一波長での保護層1の透過率TB’との差であるΔTA’B’が15%以上となっているか、前記透過率TA’と前記一波長での第1はく離ライナー2の透過率TC’との差であるΔTA’C’が15%以上となっているか、あるいは、前記透過率TA’と前記一波長での保護層1及び第1はく離ライナー2の積層体の透過率TD’との差であるΔTA’D’が15%以上となっている。
すなわち、第二実施形態に係る保護シート10では、積層領域と単層領域とで透過する紫外線の強度が異なる。
そのため、第1実施形態と同様に第2はく離ライナー3の外表面の側からカメラ1021(紫外線カメラ)で保護シート10を撮影することで単層領域を明部とし、積層領域を前記明部よりも暗い暗部として把握することができる。
そのため、前記画像において明暗を有する部分を識別することにより、第二実施形態に係る保護シート10においても、保護層1の位置を識別することができる。
これにより、第二実施形態に係る保護シート10での保護層1の位置を検出することができるとともに、保持テーブル101の保持面1011のどの位置に保護層1が配されているかを検出することができる。
【0083】
さらに、上で説明したように、第三実施形態に係る保護シート10では、可視領域に含まれる一波長での第2はく離ライナー3の透過率TA’’と前記一波長での保護層1の透過率TB’’との差であるΔTA’’B’’が15%以上となっているか、前記透過率TA’’と前記一波長での第1はく離ライナー2の透過率TC’’との差であるΔTA’’C’’が15%以上となっているか、あるいは、前記透過率TA’’と前記一波長での保護層1及び第1はく離ライナー2の積層体の透過率TD’’との差であるΔTA’’D’’が15%以上となっている。
すなわち、第三実施形態に係る保護シート10では、積層領域と単層領域とで透過する可視光線の強度が異なる。
そのため、第1実施形態と同様に第2はく離ライナー3の外表面の側からカメラ1021(可視光線カメラ)で保護シート10を撮影することで単層領域を明部とし、積層領域を前記明部よりも暗い暗部として把握することができる。
そのため、明暗を有する部分を識別することにより、第三実施形態に係る保護シート10においても、保護層1の位置を識別することができる。
これにより、第三実施形態に係る保護シート10での保護層1の位置を検出することができるとともに、保持テーブル101の保持面1011のどの位置に保護層1が配されているかを検出することができる。
【0084】
本実施形態ではカメラ1021による検知性を高めるべくバックライトを設け、第2はく離ライナー3の内表面の側から近赤外線、紫外線、及び、可視光線の何れかを含む光を照射してもよい。
なお、保護シート10での保護層1の位置が検出されるとともに、保持テーブル101の保持面1011のどの位置に保護層1が配されているかが検出された後、第2はく離ライナー3は剥離されて、保護層1の一方面が表面露出される。
【0085】
図3Bに示したように、マウント装置200は、チャンバ201と、チャンバ201の底部に配される静電チャックテーブル202と、静電チャックテーブル202よりも上方でチャンバ201内に配されるヘッド部203と、チャンバ201の内部を減圧するためのポンプPと、を備えている。
なお、以下では、上下方向(鉛直方向)をZ軸方向とし、静電チャックテーブル202及びヘッド部203をZ軸に平行する平面で切断した際の切断面に沿った水平方向(
図3Bにおける紙面に沿った水平方向)をX軸方向とし、Z軸及びX軸の両方と直交する方向(
図3Bにおける紙面と直交する方向)をY軸方向として説明する。
【0086】
図3Bに示したように、マウント装置200においては、静電チャックテーブル202は、半導体ウェハWが取り付けられたダイシングダイボンドフィルムDを静電力により保持する。
なお、ダイシングダイボンドフィルムDは、基材上に粘着剤層が積層されたダイボンドフィルムと、該ダイボンドフィルムの粘着剤層上に配されるダイボンド層とを備えている。
そして、半導体ウェハWは、ダイシングダイボンドフィルムDの前記ダイボンド層に貼り合わされている。
また、ダイシングダイボンドフィルムDの端縁側にはダイシングリングRが取り付けられている。
さらに、
図3Bに示したように、マウント装置200においては、ヘッド部203は、保護層1及び第1はく離ライナー2の積層体を第1はく離ライナー2側から保持した保持テーブル101を吸着するなどして保持する。
また、マウント装置200においては、ヘッド部203は、X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向に沿って、チャンバ201内を移動可能となるように構成されている。
【0087】
なお、マウント装置200では、チャンバ201の内部は、ヘッド部203が保持テーブル101を保持する前においては大気圧に維持され、ヘッド部203が保持テーブル101を保持した後においてはポンプPによって減圧される。
すなわち、ヘッド部203への保持テーブル101の保持は大気圧下にて実施され、半導体ウェハWの保護対象面への保護層1に貼り合わせは減圧下にて実施される。
【0088】
上記のように構成されたマウント装置200においては、センシング装置100で検出された保護層1の位置の情報、より詳しくは、保持テーブル101の保持面1011のどの位置に保護層1が配されているかという情報(以下、単に、保持テーブルでの保護層の位置情報ともいう)に基づいて、半導体ウェハWの保護対象面への保護層1の貼り合わせが実施される。
【0089】
具体的には、保持テーブルでの保護層の位置情報を基に、X軸方向やY軸方向にヘッド部203を移動させて半導体ウェハWの外周と保護層1の外周とを略一致させた後、Z軸方向下方にヘッド部203を移動させて、保護層1の露出面を半導体ウェハWの保護対象面に貼り合わせる。
保護層1の露出面の貼り合わせは、0.3MPa程度の圧力を加えながら実施することが好ましい。
これにより、保護層1の露出面を半導体ウェハWの保護対象面に十分に貼り合わせることができる。
そして、保護層1の露出面を半導体ウェハWの保護対象面に十分に貼り合わせた後、ヘッド部203をZ軸方向上方に移動させることにより、保護層1から第1はく離ライナー2をはく離させる。
これにより、
図3Cに示したように、半導体ウェハWの保護対象面に保護層1を備えさせることができる。
なお、保護層1の露出面を半導体ウェハWの保護対象面に貼り合わせるに際しては、保持テーブル101及び静電チャックテーブル202の少なくとも一方を加温状態しておいてもよい。
【0090】
次に、先プリカット法で得られた保護層1を備える保護シートを用いて、保護層1を半導体ウェハの保護対象面に貼り合わせる例について説明する。
【0091】
図1Bに示したような先プリカット法で得られた保護層1を備える保護シート10を用いて半導体ウェハの保護対象面への貼り合わせを実施するに際しては、第1はく離ライナー2または第2はく離ライナー3のいずれか一方を剥離させ、保護層1を表面露出させた状態で、貼り合わされたはく離ライナーに対する保護層1の位置が検出される。
そのため、この態様においては、保護層1の一方面に貼り合わされているはく離ライナーと保護層1との間で透過率差が生じている必要がある。
【0092】
例えば、第1はく離ライナー2を保護層1から剥離させ、第2はく離ライナー3を保護層1に貼り合わせている場合、近赤外領域に含まれる一波長での第2はく離ライナー3の透過率TAと前記一波長での保護層1の透過率TBとの差であるΔTABが15%以上となっている必要があり、紫外領域に含まれる一波長での第2はく離ライナー3の透過率TA’と前記一波長での保護層1の透過率TB’との差であるΔTA’B’が15%以上となっている必要があり、可視領域に含まれる一波長での第2はく離ライナー3の透過率TA’’と前記一波長での保護層1の透過率TB’’との差であるΔTA’’B’’が15%以上となっている必要がある。
以下では、第1はく離ライナー2を保護層1から剥離させ、第2はく離ライナー3を保護層1に貼り合わせた状態において、第2はく離ライナー3に対する保護層1の位置を検出した上で、保護層1を半導体ウェハの保護対象面に貼り合わせる例について説明する。
【0093】
先プリカット法で得られた保護層1を備える保護シート10を用いた、半導体ウェハの保護対象面への保護層1の貼り合わせは、第2はく離ライナー3に対する保護層1の位置及び半導体ウェハの位置を検出するセンシング装置300と、該センシング装置300で検出した第2はく離ライナー3に対する保護層1の位置及び半導体ウェハの位置に基づいて、半導体ウェハの保護対象面に保護層1を貼り合わせるラミネート装置400と、を用いて実施される。
【0094】
図4Aに示したように、センシング装置300は、半導体ウェハWを保持する保持面3011を有するウェハ保持テーブル301と、ウェハ保持テーブル301の上方に配されて、保護層1及び第2はく離ライナー3の積層体を該積層体の両端縁側から把持する把持具302と、把持具302の上方に配されて、第2はく離ライナー3に対する保護層1の位置及び半導体ウェハWの位置を検出する位置検出部303と、を備えている。
なお、以下では、上下方向(鉛直方向)をZ軸方向とし、ウェハ保持テーブル301などをZ軸に平行する平面で切断した際の切断面に沿った水平方向(
図4Aにおける紙面に沿った水平方向)をX軸方向とし、Z軸及びX軸の両方と直交する方向(
図4Aにおける紙面と直交する方向)をY軸として説明する。
また、以下の
図4Bにおいても、X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向は、
図4Aにおける、X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向と同方向を意味する。
【0095】
位置検出部303は、第2はく離ライナー3側から、保護層1及び第2はく離ライナー3の積層体、並びに、半導体ウェハWを撮像するためのカメラ3031と、該カメラの撮像視野を広げるためのレンズ3032とを備えている。
すなわち、センシング装置300では、第2はく離ライナー3側からカメラ3031によって撮像された画像を用いて、第2はく離ライナー3に対する保護層1の位置と半導体ウェハWの位置とを検出している。
なお、
図4Aに破線で示したように、カメラ3031の撮像視野は、レンズ3032によって、把持具302によって把持される領域近傍まで広げられている。
すなわち、センシング装置300では、カメラ3031は、第2はく離ライナー3側から把持具302によって把持される領域近傍までの保護層1及び第1はく離ライナー2の積層体を撮像できるとともに、半導体ウェハWを撮像できるようになっている。
【0096】
把持具302は、図示しないアームに取り付けられており、該アームによってX軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向に移動可能となっている。
【0097】
ここで、半導体ウェハWは、上で説明したように、一表面側に回路パターンが形成されているとともに電極部が配されている。
また、半導体ウェハWは、通常、数10μm(例えば、50μm)程度の厚みを有している。
そのため、極めて長い波長を有する近赤外線であっても、半導体ウェハWを透過し難くなっている。
したがって、カメラ3031として、近赤外線カメラ、紫外線カメラ、または、可視光カメラのいずれを用いて、第2はく離ライナー3側から、保護層1及び第2はく離ライナー3の積層体、並びに、半導体ウェハWを撮像したとしても、撮像されたいずれの画像においても、保護層1及び半導体ウェハWは陰影を有する部分(暗部)として示される。
これにより、前記画像において陰影を有する部分(暗部)を識別することにより、第2はく離ライナー3対する保護層1の位置、及び、半導体ウェハWの位置を検出することができる。
そして、第2はく離ライナー3に対する保護層1の位置の情報、及び、半導体ウェハWの位置の情報を基に、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向などに把持具302を移動させて、半導体ウェハWの外周と保護層1の外周とを略一致させる。
次に、把持具302をZ軸方向下方に移動させて、保護層1及び第2はく離ライナー3の積層体の保護層1を半導体ウェハWの保護対象面に貼り合わせる。
【0098】
図4Bに示したように、ラミネート装置400は、保護層1及び第2はく離ライナー3の積層体の第2はく離ライナー3に当接された状態で前記積層体を回転しながら押圧するローラ401を備えている。
ラミネート装置400では、ローラ401は、
図4Bに示したように、回転しながらX軸方向に移動しつつ保護層1及び第2はく離ライナー3の積層体を押圧することにより、半導体ウェハWの保護対象面への保護層1の貼り合わせを実施する。
前記押圧は、0.3MPa程度の圧力を加えながら実施することが好ましい。
これにより、保護層1の露出面を半導体ウェハWの保護対象面に十分に貼り合わせることができる。
【0099】
そして、保護層1の露出面を半導体ウェハWの保護対象面に十分に貼り合わせた後、把持具302をZ軸方向上方に移動させることにより、保護層1から第2はく離ライナー3を剥離させる。
これにより、
図4Cに示したように、半導体ウェハWの保護対象面に保護層1を備えさせることができる。
【0100】
半導体ウェハWの保護対象面への保護層1の貼り合わせは、真空下にて保護層1を半導体ウェハWの保護対象面に貼り合わせる真空ダイアフラム式ラミネータ装置を用いて実施してもよい。
また、半導体ウェハWの保護対象面への保護層1の貼り合わせは、調圧可能なチャンバ内で差圧プレスにて実施してもよい。
【0101】
本明細書によって開示される事項は、以下のものを含む。
【0102】
(1)
被着体に貼着される保護層と、
該保護層の表面に配されるはく離ライナーと、を備え、
前記保護層が水溶性高分子を含み、
前記はく離ライナーが、前記保護層に対向する内表面と、該内表面とは反対面となる外表面とを備え、
前記はく離ライナーの前記外表面から前記保護層を透過するまでの光透過率は、少なくとも一つの波長において前記はく離ライナーの光透過率よりも15%以上低い
保護シート。
【0103】
斯かる構成によれば、前記はく離ライナー側から前記保護層の位置を正確に把握することができる。
これにより、転写装置や被着体などに対する保護層の位置合わせを容易に実施することができる。
【0104】
(2)
被着体に貼着される保護層と、
該保護層の一表面に配される第1はく離ライナーと、
前記保護層の他表面に配される第2はく離ライナーと、を備え、
前記保護層は、水溶性高分子化合物を含み、
前記第1はく離ライナーと前記第2はく離ライナーとのそれぞれが前記保護層に対向する内表面と、該内表面とは反対面となる外表面とを備え、
前記第2はく離ライナーの前記外表面から前記第1はく離ライナーの前記外表面までの光透過率は、少なくとも一つの波長において前記第2はく離ライナーの光透過率よりも15%以上低い
保護シート。
【0105】
斯かる構成によれば、前記第2はく離ライナー側から前記保護層及び前記第1はく離ライナーの位置を正確に把握することができる。
そのため、特に、前記保護層と前記第1はく離ライナーとが平面視において略同一寸法となるように後プリカットされた場合において、前記第1はく離ライナーの位置を基準として前記保護層の位置を正確に把握することができる。
これにより、転写装置や被着体などに対する保護層の位置合わせを容易に実施することができる。
【0106】
(3)
前記一つの波長が、紫外領域、可視領域、及び、近赤外領域の何れかの波長である上記(1)又は(2)に記載の保護シート。
【0107】
なお、本発明に係る保護シートは、前記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る保護シートは、前記した作用効果によって限定されるものでもない。本発明に係る保護シートは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0108】
例えば、本発明に係る保護シートは、被着体が半導体ウェハに限られるものではなく、半導体以外のもの保護対象の被着体とすることができる。
また、本実施形態においては、第1はく離ライナーと第2はく離ライナーとの2枚の剥離ライナーの間に保護層を設ける態様が例示されているが、本発明の保護シートは、1枚のはく離ライナーと保護層との2層構造であってもよい。
さらには、これら以外についても本発明の保護シートは、上記例示に何等限定されるものではない。
【実施例0109】
次に、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0110】
[実施例1]
容器内において、水にポリビニルアルコール(けん価度65、平均重合度240)を分散させた水分散溶液を作成した。
なお、以下では、ポリビニルアルコールのことをPVAとも称する。
次に、該水分散溶液を含む容器を90℃の水浴中に入れ、該水分散溶液を撹拌することによってPVAを水に溶解させて、PVA溶解組成物を得た。
次に、シリコーン離型処理が施された面を有する第2はく離ライナー(三菱ケミカル社製の製品名MRA50.厚み50μm)の離型処理面上に、アプリケータを用いて前記PVA溶解組成物を厚み10μmで塗布した。
次に、前記PVA溶解組成物を塗布した第2はく離ライナーを110℃で2分間乾燥することにより、前記第2はく離ライナー上に保護層を形成した。すなわち、第2はく離ライナー及び保護層の積層体を得た。
次に、前記保護層上に、発泡処理された第1はく離ライナー(東洋紡社製、商品名「クリスパー(登録商標)K1211」。厚み38μm)を貼り合わせて、実施例1に係る保護シートを得た。
前記第1はく離シートは、延伸時にボイドを発生させて発泡処理されたものであり、表面に離型処理は施されていなかった。
上のごとき実施例1に係る保護シートは、第1はく離ライナーの透過性を低下させるようにして作製されたものであった。
【0111】
前記ポリビニルアルコールのけん価度及び平均重合度は、上記の実施形態の項で説明した方法に準じて測定した。
【0112】
[実施例2]
第1はく離ライナーとして、一方面に酸化チタンを含む塗工層を有するPETフィルム(フジコー社製、商品名「PET38-SCA1」。厚み38μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係る保護シートを得た。
なお、前記第1はく離ライナーは、他方面(塗工層を有する面と反対面)が離型処理されたものであった。
実施例2に係る保護シートは、第2はく離ライナー上に保護層を形成した後、該保護層に第1はく離ライナーの離型処理された面(塗工層を有さない面)を貼り合わせて作製した。
上のごとき実施例2に係る保護シートも、第1はく離ライナーの透過性を低下させるようにして作製されたものであった。
【0113】
[実施例3]
保護層としてシリカを含有させたものを用い、第1はく離ライナーとしてシリコーン離型処理が施された面を有するはく離ライナー(三菱ケミカル社製の製品名MRA38.厚み38μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係る保護シートを得た。
実施例3に係る保護シートにおいて、前記保護層は、前記PVA溶解組成物にシリカを含有させたシリカ含有組成物を第2はく離ライナーの離型処理面上に、アプリケータを用いて厚み10μmで塗布した後、前記シリカ含有組成物を塗布した第2はく離ライナーを110℃で2分間乾燥することにより形成した。
前記シリカとしては、日産化学社製の商品名「スノーテック(登録商標)MP-2040」を用いた。
また、前記シリカ含有組成物中での前記シリカの濃度は30質量%であった。
さらに、前記保護層への前記第1はく離ライナーの貼り合わせは、離型処理が施された面を貼り合わせることにより実施した。
上のごとき実施例3に係る保護シートは、保護層の透過率を低下させるようにして作製されたものであった。
【0114】
[参考例1]
保護層として染料を含有させたものを用いた以外は、実施例3と同様にして、参考例1に係る保護シートを得た。
参考例1に係る保護シートにおいて、前記保護層は、前記PVA溶解組成物に染料を溶解させた染料含有組成物を第2はく離ライナーの離型処理面上に、アプリケータを用いて厚み10μmで塗布した後、前記染料含有組成物を塗布した第2はく離ライナーを110℃で2分間乾燥することにより形成した。
前記染料としては、DIC社製の商品名「リナブルー(登録商標)」(青色色素)を用いた。
また、前記染料含有組成物中での前記染料の濃度は5%であった。
上のごとき参考例1に係る保護シートも、保護層の透過率を低下させるようにして作製されたものであった。
【0115】
[比較例1]
第1はく離ライナーとして、シリコーン離型処理が施された面を有するはく離ライナー(三菱ケミカル社製の製品名MRA38.厚み38μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る保護シートを得た。
比較例1において、保護層への前記第1はく離シートの貼り合わせは、実施例3と同様に、離型処理が施された面を貼り合わせることにより実施した。
上のごとき比較例1に係る保護シートは、保護層及び第1はく離ライナーのいずれも透過率を低下させずに作製されたものであった。
【0116】
<透過率>
各例に係る保護シートについて、第1はく離ライナー、保護層、及び、第2はく離ライナーの透過率を測定した。
前記透過率の測定は、波長1060nmの光(近赤外線)、波長330nmの光(紫外線)、波長550nmの光(可視光)、及び、波長650nmの光(可視光)を用いて実施した。
なお、保護層の透過率は、第2はく離ライナー及び保護層の積層体を得た後、該積層体から前記第2はく離ライナーを剥離させて得た保護層を用いて実施した。
前記透過率の測定は、上の実施形態の項で説明した方法にて実施した。
その結果を以下の表1に示した。
【0117】
なお、以下の表1では、波長1060nmの光を用いて測定した第2はく離ライナーの透過率をTAと表記し、波長1060nの光を用いて測定した保護層の透過率をTBと表記し、波長1060nmの光を用いて測定した第1はく離ライナーの透過率をTCと表記している。
また、波長330nmの光を用いて測定した第2はく離ライナーの透過率をTA’と表記し、波長330nmの光を用いて測定した保護層の透過率をTB’と表記し、波長330nmの光を用いて測定した第1はく離ライナーの透過率をTC’と表記している。
さらに、波長550nmの光を用いて測定した第2はく離ライナーの透過率をTA’’1と表記し、波長550nmの光を用いて測定した保護層の透過率をTB’’1と表記し、波長500nmの光を用いて測定した第1はく離ライナーの透過率をTC’’1表記している。
また、波長650nmの光を用いて測定した第2はく離ライナーの透過率をTA’’2と表記し、波長650nmの光を用いて測定した保護層の透過率をTB’’2と表記し、波長650nmの光を用いて測定した第1はく離ライナーの透過率をTC’’2と表記している。
さらに、透過率TAと透過率TBとの差(TA-TB)をΔTABと表記し、透過率TAと透過率TCとの差(TA-TC)をΔTACと表記し、透過率TA’と透過率TB’との差(TA’-TB’)をΔTA’B’と表記し、透過率TA’と透過率TC’との差(TA’-TC’)をΔTA’C’と表記し、透過率TA’’1と透過率TB’’1との差(TA’’1-TB’’1)をΔTA’’1B’’1と表記し、透過率TA’’1と透過率TC’’1との差(TA’’1-TC’’1)をΔTA’’1C’’1と表記し、透過率TA’’2と透過率TB’’2との差(TA’’2-TB’’2)をΔTA’’2B’’2と表記し、透過率TA’’2と透過率TC’’2との差(TA’’2-TC’’2)をΔTA’’2C’’2と表記している。
【0118】
<ヘーズ>
各例に係る保護シートについて、第1はく離ライナー、保護層、及び、第2はく離ライナーのヘーズを測定した。
前記ヘーズの測定は、上の実施形態の項で説明した方法にて実施した。
その結果を以下の表1に示した。
【0119】
<入射角60°での光沢>
各例に係る保護シートについて、第1はく離ライナー、保護層、及び、第2はく離ライナーに60°の角度で光を入射させたときの光沢(入射角60°での光沢)を測定した。
60°の角度で入射させる光としては、白色光を用いた。
入射角60°での光沢は、コニカミノルタ社製の分光側色計CM-26dGを用いて測定した。
その結果を以下の表1に示した。
なお、表1において、括弧書きで示した「GU」(Gloss Unit)は、光沢の単位のことである。
【0120】
<明度(L値)>
各例に係る保護シートについて、第1はく離ライナー、保護層、及び、第2はく離ライナーの明度(L値)を測定した。
前記明度(L値)の測定は、上の実施形態の項で説明したようにカラーメータを用いて実施した。
その結果を以下の表1に示した。
なお、カラーメータを用いた明度(L値)の測定においては、色度(a値及びb値)も同時に測定される。
そのため、以下の表1には、各例に係る保護シートについて、第1はく離ライナー、保護層、及び、第2はく離ライナーの色度(a値及びb値)の測定結果についても示した。
また、以下の表1には、各例に係る保護シートについて、第1はく離ライナー、保護層、及び、第2はく離ライナーの明度(L値)及び色度(a値及びb値)の測定値から、(L2+a2+b2)1/2の値を算出した。
この結果についても、以下の表1に示した。
【0121】
<識別性>
各例に係る保護シートについて、保護層または第1はく離ライナーの識別性を評価した。
識別性の評価においては、保護層及び第1はく離ライナーを後プリカットしたものを試験体として用いた。
また、識別性の評価は、投光部と受光部とを備える透過型光電センサ(KEYENCE社製、製品名「PR-G51N」)を用いて実施した。
具体的には、各例に係る保護シートについて、第2はく離シートよりも外側に投光部を配し、第1はく離シートよりも外側に受光部を配した状態とした後、投光部からレーザ光を照射したときに、受光部にて保護層または第1はく離ライナーが陰影部(暗部)として識別されるか否かを評価することにより実施した。
そして、保護層または第1はく離ライナーが陰影部(暗部)として識別される場合には、「優」と評価し、陰影部として識別されない場合には、「不可」と評価した。
なお、投光部から照射するレーザ光としては、波長550nmのレーザ光及び波長650nmのレーザ光を用いた。
550nmのレーザ光及び650nmのレーザ光を用いて、保護層または第1はく離ライナーの識別性を評価した結果を以下の表1に示した。
【0122】
【0123】
表1より、ΔTA’’2C’’2が15%以上となっている実施例1及び2では、波長650nmのレーザ光を照射したときの識別性の評価が「優」となっていて、ΔTA’’2B’’2が15%以上となっている実施例3及び参考例1では、波長650nmのレーザ光を照射したときの識別性の評価が「優」となっていることが分かる。
これに対し、ΔTA’’2C’’2及びΔTA’’2B’’2が、共に、15%未満となっている比較例1では、波長650nmのレーザ光を照射したときの識別性の評価が「不可」となっていることが分かる。
また、ΔTA’’1C’’1が15%以上となっている実施例1及び2では、波長550nmのレーザ光を照射したときの識別性の評価が「優」となっていて、ΔTA’’1B’’1が15%以上となっている実施例3では、波長550nmのレーザ光を照射したときの識別性の評価が「優」となっていることが分かる。
これに対し、参考例1及び比較例1では、ΔTA’’1B’’1が15%未満となっていて、波長550nmのレーザ光を照射したときの識別性の評価が「不可」となっていることが分かる。
これらの結果から、レーザ光として可視光を照射した場合において、第2はく離ライナーの透過率と保護層の透過率との差が15%以上であると、第2はく離ライナーと保護層とを十分に識別でき、第2はく離ライナーの透過率と第1はく離ライナーの透過率との差が15%以上であると、第2はく離ライナーと第1はく離ライナーとを十分に識別できることが把握される。
また、レーザ光として可視光に代えて近赤外光を用いたり、紫外光を用いたりした場合においても、第2はく離ライナーの透過率と保護層の透過率との差が15%以上であると、可視光の場合と同様に、第2はく離ライナーと保護層とを十分に識別でき、第2はく離ライナーの透過率を第1はく離ライナーの透過率との差が15%以上であると、可視光の場合と同様に、第2はく離ライナーと第1はく離ライナーとを十分に識別できると考えられる。