(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086914
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】スタイラス
(51)【国際特許分類】
G06F 3/03 20060101AFI20240621BHJP
【FI】
G06F3/03 400B
G06F3/03 400F
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024066459
(22)【出願日】2024-04-17
(62)【分割の表示】P 2023120477の分割
【原出願日】2019-05-10
(31)【優先権主張番号】62/716,536
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド チャールズ フレック
(72)【発明者】
【氏名】山本 定雄
(57)【要約】
【課題】チップ側及びテイル側の両方からダウンリンク信号を送信可能な構成において、操作応答性を確保しつつ電気エネルギーの消費を抑制可能なアクティブ方式のスタイラスを提供する。
【解決手段】スタイラスの制御回路は、アップリンク信号に応じてスタイラスの把持状態を判定し、判定に応じて、第1電極からダウンリンク信号を送信し、かつ第2電極からはダウンリンク信号を送信しない第1送信モードと、第1電極からダウンリンク信号を送信せず、かつ第2電極からダウンリンク信号を送信する第2送信モードと、を切り替える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部のセンサ制御回路からアップリンク信号を受信し、前記アップリンク信号に応じてダウンリンク信号を送信するスタイラスであって、
第1の部分に設けられた第1電極と、
前記第1の部分とは異なる第2の部分に設けられた第2電極と、
前記ダウンリンク信号の送信を制御する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、前記アップリンク信号に応じて前記スタイラスの把持状態を判定し、 前記判定に応じて、
前記第1電極からダウンリンク信号を送信し、かつ前記第2電極からは前記ダウンリンク信号を送信しない第1送信モードと、
前記第1電極から前記ダウンリンク信号を送信せず、かつ前記第2電極から前記ダウンリンク信号を送信する第2送信モードと、
を切り替える、スタイラス。
【請求項2】
前記判定は、前記アップリンク信号に含まれるデータに基づく、請求項1に記載のスタイラス。
【請求項3】
前記データは、前記第1電極又は前記第2電極に対応する識別子を含み、
前記制御回路は、前記識別子に応じて前記第1送信モード又は第2送信モードを選択する、請求項2に記載のスタイラス。
【請求項4】
前記制御回路は、前記把持状態が特定されない場合には、
前記第1電極及び前記第2電極の両方から前記ダウンリンク信号を送信する第3送信モードを選択する、請求項1に記載のスタイラス。
【請求項5】
前記第1電極は前記スタイラスのチップ電極であり、
前記第2電極は前記スタイラスのテイル電極である、
請求項1~4のいずれか1項に記載のスタイラス。
【請求項6】
センサ電極に接続されたセンサ制御回路であって、
前記センサ電極を介して、スタイラスの第1電極又は前記第1電極とは異なる前記スタイラスの第2電極からダウンリンク信号を受信し、
前記ダウンリンク信号が示す前記スタイラスの把持状態に応じて、前記スタイラスの第1電極又は第2電極に対応するデータを含んだアップリンク信号を生成する、センサ制御回路。
【請求項7】
前記ダウンリンク信号が、前記スタイラスの第1電極から送信されたか、あるいは前記第2電極から送信された信号であるかを判定し、
前記判定に基づいて、前記スタイラスの第1電極又は第2電極に対応するデータを含んだアップリンク信号を生成する、請求項6に記載のセンサ制御回路。
【請求項8】
前記データは、前記第1電極又は前記第2電極のうちいずれか一方の電極のみによる前記ダウンリンク信号の送信を続行させ、他方の電極による前記ダウンリンク信号の送信を停止させる、請求項7に記載のセンサ制御回路。
【請求項9】
前記第1電極は前記スタイラスのチップ電極であり、前記第2電極は前記スタイラスのテイル電極である、請求項6~8のいずれか1項に記載のセンサ制御回路。
【請求項10】
外部のセンサ制御回路からアップリンク信号を受信し、前記アップリンク信号に応じてダウンリンク信号を送信するスタイラスであって、
第1の部分に設けられた第1電極と、
前記第1の部分とは異なる第2の部分に設けられた第2電極と、
前記ダウンリンク信号の送信を制御する制御回路と、
前記スタイラスに設けられたセンサと、
を備え、
前記制御回路は、前記センサの感知結果に応じて前記スタイラスの把持状態を判定し、 前記判定に応じて、
前記第1電極からダウンリンク信号を送信し、かつ前記第2電極からは前記ダウンリンク信号を送信しない第1送信モードと、
前記第1電極から前記ダウンリンク信号を送信せず、かつ前記第2電極から前記ダウンリンク信号を送信する第2送信モードと、
を切り替える、スタイラス。
【請求項11】
前記センサは、前記第2電極よりも第1電極に近い位置に設けられた第1の接触センサと、前記第1電極よりも第2電極に近い位置に設けられた第2の接触センサを含み、
前記制御回路は、
前記第1の接触センサが接触を検知した場合は前記第1送信モードを選択し、
前記第2の接触センサが接触を検知した場合は前記第2送信モードを選択する、請求項10に記載のスタイラス。
【請求項12】
前記第1の接触センサ及び前記第2の接触センサは、それぞれが前記スタイラスの外周に沿った3箇所以上の検出領域を有し、
前記制御回路は、
前記第1の接触センサが前記3箇所以上の検出領域で接触を検出した場合は前記第1送信モードを選択し、
前記第2の接触センサが前記3箇所以上の検出領域で接触を検知した場合は前記第2送信モードを選択する、請求項11に記載のスタイラス。
【請求項13】
前記制御回路は、前記把持状態が特定されない場合には、
前記第1電極及び前記第2電極の両方から前記ダウンリンク信号を送信する第3送信モードを選択する、請求項10に記載のスタイラス。
【請求項14】
前記第1電極は前記スタイラスのチップ電極であり、前記第2電極は前記スタイラスのテイル電極である、請求項10~13のいずれか1項に記載のスタイラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタイラスに関する。
【背景技術】
【0002】
消しゴム付き鉛筆(pencil with an eraser)をモチーフにした電子機器用のスタイラスが知られている。
【0003】
特許文献1及び2には、ペン信号を送信するチップ側とは反対のテイル側にもアンテナが設けられ、このアンテナからイレーサ信号を送信可能に構成されるスタイラスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5793360号明細書
【特許文献2】米国出願公開特許第2018/0052534号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、スタイラスの接触時点と電子機器の位置検出時点の間のタイムラグを短縮するため、スタイラスがいわゆるホバー状態であっても、ペン信号又はイレーサ信号(以下、総称して「ダウンリンク信号」ともいう)の送信することがある。これにより、スタイラスの操作応答性が向上する反面、ダウンリンク信号の送信時間の増加に伴い電気エネルギーの消費量が増加してしまう。
【0006】
この問題は、外部から付与されたエネルギーがトリガとなってダウンリンク信号を生成して送信する方式、例えば、特許文献1に記載される電磁授受方式(EMR:登録商標)では生じないが、自身が蓄える電気エネルギーからダウンリンク信号を生成して送信するアクティブ方式において生じ得る。特に、特許文献2に記載されるアクティブ方式のスタイラスの場合、チップ側及びテイル側のうちどちらの接触にも対応すべく、2種類のダウンリンク信号を同時に送信することで、電気エネルギーの消費量がさらに増加してしまう。
【0007】
本発明の目的は、チップ側及びテイル側の両方からダウンリンク信号を送信可能な構成において、操作応答性を確保しつつ電気エネルギーの消費を抑制可能なアクティブ方式のスタイラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明におけるスタイラスは、筒状の筐体と、前記筐体のチップ側に設けられ、かつチップ電極を有するチップ部と、前記筐体のテイル側に設けられ、かつテイル電極を有するテイル部と、前記筐体の内部に設けられる電源回路と、前記電源回路からの給電により、前記チップ電極を介して前記筐体の外部に向けて送信する第1ダウンリンク信号を生成する第1送信回路と、前記電源回路からの給電により、前記テイル電極を介して前記筐体の外部に向けて送信する信号であって、前記第1ダウンリンク信号とは異なる第2ダウンリンク信号を生成する第2送信回路と、複数の送信モードに従って前記第1送信回路及び前記第2送信回路の送信制御を行う制御回路と、を備え、前記複数の送信モードは、前記チップ電極から前記第1ダウンリンク信号を送信し、かつ前記テイル電極からの前記第2ダウンリンク信号の送信を停止する送信制御を行う第1送信モードと、前記チップ電極からの前記第1ダウンリンク信号の送信を停止し、かつ前記テイル電極から第2ダウンリンク信号を生成する送信制御を行う第2送信モードと、を含み、前記制御回路は、前記チップ部及び前記テイル部の両方が、タッチセンサを有する電子機器のタッチ面に接触しないホバー状態である場合、前記筐体の把持状態に関する判定に基づいて、前記第1送信モード及び前記第2送信モードを切り替えて実行する。
【0009】
第2の本発明におけるセンサ制御回路は、センサ電極に接続される回路であって、前記スタイラスは、チップ側に設けられたチップ電極を介して第1ダウンリンク信号を送信するとともに、テイル側に設けられたテイル電極を介して前記第1ダウンリンク信号とは異なる第2ダウンリンク信号を送信可能に構成され、前記センサ電極を介して前記スタイラスからのダウンリンク信号を受信し、受信した前記第1ダウンリンク信号又は前記第2ダウンリンク信号のいずれか一方に対応するデータを含むアップリンク信号を生成し、前記センサ電極を介して前記アップリンク信号を送信する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、チップ側及びテイル側の両方からダウンリンク信号を送信可能な構成において、操作応答性を確保しつつ電気エネルギーの消費を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態におけるスタイラスが組み込まれた位置検出システムの全体構成図である。
【
図2】
図1に示す電子機器の概略ブロック図である。
【
図3】
図1に示すスタイラスの外観図である。
図3(a)は、スタイラスの側面図である。
図3(b)は、筐体の部分展開図である。
【
図4】
図1に示すスタイラスの電気的なブロック図である。
【
図5】第1実施形態におけるスタイラスの動作説明に供されるフローチャートである。
【
図7】第1実施形態の第1変形例におけるスタイラスの外観図である。
図7(a)は、スタイラスの側面図である。
図7(b)は、筐体の部分展開図である。
【
図8】第1実施形態の第2変形例におけるスタイラスの外観図である。
【
図9】第2実施形態におけるスタイラスの外観図である。
【
図10】
図9に示すスタイラスの電気的なブロック図である。
【
図11】第2実施形態におけるスタイラスの動作説明に供されるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明におけるスタイラス及びセンサ制御回路について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。あるいは、技術的に矛盾が生じない範囲で各々の構成を任意に組み合わせてもよい。
【0013】
[第1実施形態]
先ず、第1実施形態におけるスタイラス16について、
図1~
図6を参照しながら説明する。
【0014】
<位置検出システム10の全体構成>
図1は、第1実施形態におけるスタイラス16が組み込まれた位置検出システム10の全体構成図である。位置検出システム10は、表示パネル12を有する電子機器14と、ペン型のポインティングデバイスであるスタイラス16と、から基本的に構成される。
【0015】
電子機器14は、例えば、タブレット型端末、スマートフォン、パーソナルコンピュータで構成される。ユーザUsは、スタイラス16を片手で把持し、表示パネル12のタッチ面18にペン先を押し当てながら移動させることで、電子機器14に絵や文字を書き込むことができる。
【0016】
スタイラス16は、電子機器14との間で一方向又は双方向に通信可能に構成されている。以下、スタイラス16が電子機器14に向けて送信する信号を「ダウンリンク信号」と称するとともに、電子機器14がスタイラス16に向けて送信する信号を「アップリンク信号」と称する場合がある。なお、このスタイラス16は、自身が蓄える電気エネルギーから能動的に信号を生成し、ダウンリンク信号として電子機器14に向けて送信する「アクティブ方式」のスタイラスである。
【0017】
<電子機器14の構成>
図2は、
図1に示す電子機器14の概略ブロック図である。この電子機器14は、センサ電極200と、センサ制御回路202と、ホストプロセッサ204と、を含んで構成される。なお、本図に示すx方向,y方向は、センサ電極200がなす平面上において定義される直交座標系のX軸,Y軸に相当する。
【0018】
センサ電極200は、表示パネル12とタッチ面18(
図1)の間に配置される複数の電極である。センサ電極200は、X座標(x方向の位置)を検出するための複数のX電極200xと、Y座標(y方向の位置)を検出するための複数のY電極200yと、を含む。複数のX電極200xは、y方向に延びて設けられ、かつx方向に沿って等間隔に配置されている。複数のY電極200yは、x方向に延びて設けられ、かつy方向に沿って等間隔に配置されている。
【0019】
センサ制御回路202は、ファームウェア206を実行可能に構成された集積回路であり、センサ電極200を構成する複数の電極にそれぞれ接続されている。ファームウェア206は、ユーザUsによるタッチを検出するタッチ検出機能208と、スタイラス16の状態を検出するペン検出機能210と、を実現可能に構成される。
【0020】
タッチ検出機能208は、例えば、センサ電極200の二次元スキャン機能、センサ電極200上のヒートマップ(検出レベルの二次元位置分布)の作成機能、ヒートマップ上の領域分類機能(例えば、指、手の平の分類)を含む。ペン検出機能210は、例えば、センサ電極200の二次元スキャン機能、ダウンリンク信号の受信・解析機能、スタイラス16の状態(例えば、位置、姿勢、筆圧)の推定機能、スタイラス16に対する指令を含むアップリンク信号の生成・送信機能を含む。
【0021】
ホストプロセッサ204は、CPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)からなるプロセッサである。ホストプロセッサ204は、図示しないメモリからプログラムを読み出し実行することで、例えば、センサ制御回路202からのデータを用いてデジタルインクを生成する。
【0022】
<スタイラス16の構成>
図3は、
図1に示すスタイラス16の外観図である。より詳しくは、
図3(a)はスタイラス16の側面図であり、
図3(b)は筐体20の部分展開図である。
【0023】
図3(a)に示すように、スタイラス16は、筒状の筐体20と、筐体20の一端側(以下、チップ側という)に設けられたチップ部22と、筐体20の他端側(以下、テイル側という)に設けられたテイル部24と、を備える。
【0024】
筐体20は、例えば、ルーローの三角形の断面形状を有する。この形状により、スタイラス16を持ちやすくし、手の疲れを軽減することができる。
【0025】
概略円錐形状のチップ部22は、導電性材料からなるチップ電極22eと、チップ電極22eの一部又は全部を覆うチップカバー22cを含んで構成される。チップ電極22eは、後述するペン信号を出力する電極であり、図示しない芯体に取り付けられている。筐体20のチップ側には、チップ側センサ群26が設けられている。このチップ側センサ群26は、チップ部22への押圧を検出する端部センサ27と、人体の接触を検出する接触センサ28と、を含んで構成される。
【0026】
概略円錐形状のテイル部24は、導電性材料からなるテイル電極24eと、テイル電極24eの一部又は全部を覆うテイルカバー24cを含んで構成される。テイル電極24eは、後述するイレーサ信号を出力する電極であり、図示しない芯体に取り付けられている。筐体20のテイル側には、テイル側センサ群30が設けられている。このテイル側センサ群30は、テイル部24への押圧を検出する端部センサ31と、人体の接触を検出する接触センサ32と、を含んで構成される。
【0027】
端部センサ27(31)は、例えば、チップ部22(テイル部24)への押圧により発生する静電容量の変化を捉える、可変容量コンデンサを用いた圧力センサである。なお、端部センサ27,31は、他の方式を用いた圧力センサであってもよいし、所定の押圧(閾値)を境目としてオン・オフに切り替わる圧力スイッチであってもよい。
【0028】
接触センサ28,32は、例えば、自己容量方式又は相互容量方式の静電タッチセンサである。なお、接触センサ28,32は、人体の接触により付与されるエネルギーを検出するセンサ(具体的には、感圧センサ、感熱センサ)であってもよいし、人体の接触位置を検出する光学センサであってもよい。接触センサ28,32は、検出方式の種類に応じて、筐体20の内部に収容されてもよいし、筐体20の外周面に取り付けられてもよい。
【0029】
図3(b)に示すように、チップ側の接触センサ28は、筐体20の軸方向に延びて周方向に湾曲する矩形状の検出領域R1~R3を有する。3箇所の検出領域R1~R3は、筐体20の周に沿って、互いに隣接する頂部の中間にそれぞれ配置されている。同様に、テイル側の接触センサ32は、筐体20の軸方向に延びて周方向に湾曲する矩形状の検出領域R4~R6を有する。3箇所の検出領域R4~R6は、筐体20の周に沿って、互いに隣接する頂部の中間にそれぞれ配置されている。
【0030】
ここでは、周方向の角度が0度,120度,240度である位置に、断面形状の頂部が存在するように周方向の座標(縦軸)を定義する。本図から理解されるように、接触センサ28,32は、筐体20の外周面のうち、三角形の頂部(0度,120度,240度)と比べて、相対的に平坦な箇所(換言すれば、曲率が大きい箇所)に設けられる点に留意する。
【0031】
検出領域R1,R4は、対応する周方向の位置(中心線の位置が60度)に配置されている。検出領域R1の軸方向の長さはL1であり、検出領域R4の軸方向の長さはL2である。L2は、L1と同じ長さであってもよいし、異なる長さであってもよい。また、検出領域R1,R4は、距離Disだけ離間して配置されている。この距離Disは、ユーザUsの手のサイズを考慮して設計される距離であり、例えば50mm以上、あるいは100mm以上である。
【0032】
検出領域R2,R5は、対応する周方向の位置(中心線の位置が180度)に配置されている。検出領域R3,R6は、対応する周方向の位置(中心線の位置が300度)に配置されている。なお、検出領域R2,R5(あるいは、検出領域R3,R6)は、上記した検出領域R1,R4と同様の相対的位置関係を満たすように配置されている。
【0033】
図4は、
図1に示すスタイラス16の電気的なブロック図である。スタイラス16は、チップ電極22e、テイル電極24e、チップ側センサ群26及びテイル側センサ群30(
図3)の他に、電源回路34と、DC/DCコンバータ36と、チップ側送信回路38(第1送信回路)と、テイル側送信回路40(第2送信回路)と、制御回路42と、を含んで構成される。
【0034】
電源回路34は、スタイラス16の駆動電圧を生成し、得られた直流電圧をDC/DCコンバータ36に向けて出力する。具体的には、電源回路34は、例えばリチウムイオン電池からなる電池44と、電池44の電力管理を司るパワーマネジメントIC(以下、PMIC46)から構成される。
【0035】
DC/DCコンバータ36は、電源回路34から入力された直流電圧を各々の回路に適した直流電圧に変換した後、チップ側送信回路38、テイル側送信回路40、及び制御回路42にそれぞれ出力する。
【0036】
チップ側送信回路38は、DC/DCコンバータ36からの直流電圧に基づいてペン信号(第1ダウンリンク信号)を生成する回路である。テイル側送信回路40は、DC/DCコンバータ36からの直流電圧に基づいてイレーサ信号(第2ダウンリンク信号)を生成する回路である。チップ側送信回路38及びテイル側送信回路40はそれぞれ、所定の周波数で振動する搬送波信号を生成する発振回路と、制御回路42からの制御信号に含まれるデータを用いて搬送波信号を変調する変調回路を含んで構成される。なお、搬送波の信号波形は、正弦波、矩形波、三角波等の交流波形であれば、いずれの波形であってもよい。
【0037】
制御回路42は、ダウンリンク信号の送信動作を含む制御を司るマイクロコンピュータである。制御回路42は、チップ側センサ群26及びテイル側センサ群30から検出信号を入力するとともに、チップ側送信回路38及びテイル側送信回路40に対して制御信号を出力する。これにより、制御回路42は、複数の送信モード(例えば、第1,第2,第3送信モード)に従って、チップ側送信回路38及びテイル側送信回路40の送信制御を実行可能に構成される。
【0038】
ここで、「第1送信モード」とは、チップ電極22eからペン信号を送信し、かつテイル電極24eからのイレーサ信号の送信を停止するモードを意味する。また、「第2送信モード」とは、チップ電極22eからのペン信号の送信を停止し、かつテイル電極24eからイレーサ信号を送信するモードを意味する。また、「第3送信モード」とは、チップ電極22eからペン信号を送信し、かつテイル電極24eからイレーサ信号を送信するモードを意味する。
【0039】
なお、「ペン信号」は、スタイラス16のペン機能を使用する意図(マーキングの意図)を示すダウンリンク信号の一種である。また、「イレーサ信号」は、スタイラス16のイレーサ機能を使用する意図(マーキングの消去の意図)を示すダウンリンク信号の一種である。受信側の電子機器14がダウンリンク信号の種類を識別可能にするため、イレーサ信号及びペン信号の信号波形を異ならせる。
【0040】
第1の手法として、同一の周波数を有する搬送波を異なるデータを用いて変調することで、イレーサ信号及びペン信号の信号波形を異ならせてもよい。一例として、ペンIDやスタイラス16の状態(例えば、筆圧や姿勢)に関する情報を共通化し、特定のフラグ(Invert)の値を変えることが挙げられる。具体的には、ペン信号の場合にはInvertを「0」の値に設定し、イレーサ信号の場合にはInvertを「1」の値に設定してもよい。第2の手法として、異なる周波数を有する搬送波を同一のデータを用いて変調することで、イレーサ信号及びペン信号の信号波形を異ならせてもよい。第3の手法として、無変調信号の長さを変更することで、イレーサ信号及びペン信号の信号波形を異ならせてもよい。
【0041】
<スタイラス16の動作>
第1実施形態におけるスタイラス16は、以上のように構成される。続いて、このスタイラス16の動作(特に、制御回路42による送信制御)について、
図5のフローチャートを参照しながら説明する。
【0042】
ステップS1において、制御回路42は、端部センサ27,31からの検出信号に基づいて、チップ部22又はテイル部24への接触の有無を判定する。チップ部22がタッチ面18に接触している場合、制御回路42は、チップ部22のみが接触状態であると判定し(ステップS1:チップ)、後述するステップS3に進む。一方、テイル部24がタッチ面18に接触している場合、制御回路42は、テイル部24のみが接触状態であると判定し(ステップS1:テイル)、後述するステップS5に進む。
【0043】
これに対して、チップ部22及びテイル部24の両方の接触状態が検出されなかった場合、制御回路42は、スタイラス16が「ホバー状態」であると判定し(ステップS1:ホバー)、ステップS2に進む。
【0044】
ステップS2において、制御回路42は、スタイラス16の把持状態に関する判定を行う。ここで、制御回路42は、接触センサ28,32からの検出信号が、把持状態である可能性が高いと推定される所定の条件(以下、判定条件という)を満たすか否かについて判定する。
図1から理解されるように、典型的なユーザUsは、スタイラス16の使用中に筆記操作を安定させるため、なるべく先端側に近い位置にて、複数本の指を用いて全周方向から筐体20(
図3)を掴む傾向がある。以下、この傾向に基づく判定方法の具体例について、
図6を参照しながら詳細に説明する。
【0045】
図6は、把持状態の判定方法の一例を示す図であり、
図3(b)と同様に、筐体20の展開図を模式的に示している。なお、理解を容易にするため、合計6箇所の検出領域R1~R6のうち、人体の接触が検出された領域をハッチングされた矩形で表記する一方、人体の接触が検出されていない領域を余白の矩形で表記する。
【0046】
図6(a)に示すように、チップ側にある3箇所すべての検出領域R1~R3にて、人体の接触が同時に検出されたとする。一方、テイル側にある3箇所すべての検出領域R4~R6にて、人体の接触が検出されなかったとする。この場合、制御回路42は、ユーザUsが、ペン機能を使用する意図で、スタイラス16のチップ側を把持する状態であると判定する。
【0047】
図6(b)に示すように、チップ側にある3箇所すべての検出領域R1~R3にて、人体の接触が同時に検出されなかったとする。一方、テイル側にある3箇所すべての検出領域R4~R6にて、人体の接触が同時に検出されたとする。この場合、制御回路42は、ユーザUsが、イレーサ機能を使用する意図で、スタイラス16のテイル側を把持する状態であると判定する。
【0048】
このように、筐体20の全周方向から人体の接触があるか否かを判定条件の1つに含めることで、スタイラス16の把持の有無について精度よく判定することができる。また、接触センサ28,32間の距離DisをDis≧100mmとすることで、両方の接触センサ28,32による同時検出が抑制され、スタイラス16の把持の向きを判定しやすくなる。それにもかかわらず、両方の接触センサ28,32により人体の接触が同時に検出された場合、以下の規則に従って判定してもよい。
【0049】
図6(c)に示すように、チップ側にある3箇所すべての検出領域R1~R3にて、人体の接触が同時に検出されたとする。一方、テイル側にある1箇所の検出領域R5にて、人体の接触が検出されたとする。この接触状態は、例えば、複数本の指でチップ側を掴むと同時に、親指の付け根部分にテイル側が接触するように、ユーザUsがスタイラス16を把持している場合において検出され得る。
【0050】
ここで、制御回路42は、チップ側及びテイル側のうち検出箇所が同数である場合、検出箇所の数が多い方が、ユーザUsに把持されていると判定してもよい。
図6(c)の例では、制御回路42は、ユーザUsが、ペン機能を使用する意図で、スタイラス16のチップ側を把持する状態であると判定する。
【0051】
図5のステップS2に戻って、制御回路42は、チップ側の判定条件を満たす場合(ステップS2:チップ)、ステップS3に進む。また、制御回路42は、テイル側の判定条件を満たす場合(ステップS2:テイル)、ステップS5に進む。一方、いずれの判定条件を満たさない場合(ステップS2:不明)、ステップS7に進む。
【0052】
ステップS3において、ステップS1,S2のいずれか一方で「チップ」と判定した場合、制御回路42は、ペン信号のみを外部に送信する第1送信モードに切り替えて実行する。具体的には、制御回路42は、ペン信号を生成するための制御信号をチップ側送信回路38に向けて供給する一方、イレーサ信号の生成を停止するための制御信号をテイル側送信回路40に向けて供給する。これにより、ペン信号は、チップ側送信回路38により生成され、チップ電極22eを介して外部に送信される(ステップS4)。
【0053】
ステップS5において、制御回路42は、ステップS1,S2のいずれか一方で「テイル」と判定した場合、イレーサ信号のみを外部に送信する第2送信モードに切り替えて実行する。具体的には、制御回路42は、ペン信号の生成を停止するための制御信号をチップ側送信回路38に向けて供給する一方、イレーサ信号を生成するための制御信号をテイル側送信回路40に向けて供給する。これにより、イレーサ信号は、テイル側送信回路40により生成され、テイル電極24eを介して外部に送信される(ステップS6)。
【0054】
ステップS7において、制御回路42は、ステップS1で「ホバー」かつステップS2で「不明」と判定した場合、ペン信号及びイレーサ信号の両方を外部に送信する第3送信モードに切り替えて実行する。具体的には、制御回路42は、ペン信号を生成するための制御信号をチップ側送信回路38に向けて供給するとともに、イレーサ信号を生成するための制御信号をテイル側送信回路40に向けて供給する。これにより、ペン信号はチップ電極22eを介して外部に送信されると同時に、イレーサ信号はテイル電極24eを介して外部に送信される(ステップS8)。なお、第3送信モードは、ペン信号及びイレーサ信号の両方を同時に送信する制御であってもよいし、時分割により交互に送信する制御であってもよい。
【0055】
このようにして、
図5に示すフローチャートの動作が終了する。制御回路42は、所定の実行周期ごとにこのフローチャートを繰り返すことで、スタイラス16は、電子機器14に対してダウンリンク信号を逐次送信することができる。
【0056】
<第1実施形態による効果>
以上のように、スタイラス16は、筒状の筐体20と、筐体20のチップ側に設けられ、かつチップ電極22eを有するチップ部22と、筐体20のテイル側に設けられ、かつテイル電極24eを有するテイル部24と、筐体20の内部に設けられる電源回路34と、電源回路34からの給電により、チップ電極22eを介して筐体20の外部に向けて送信するペン信号(第1ダウンリンク信号)を生成するチップ側送信回路38(第1送信回路)と、電源回路34からの給電により、テイル電極24eを介して筐体20の外部に向けて送信する信号であって、ペン信号とは異なるイレーサ信号(第2ダウンリンク信号)を生成するテイル側送信回路40(第2送信回路)と、複数の送信モードに従ってチップ側送信回路38及びテイル側送信回路40の送信制御を行う制御回路42と、を備える。
【0057】
そして、複数の送信モードは、チップ電極22eからペン信号を送信し、かつテイル電極24eからのイレーサ信号の送信を停止する送信制御を行う第1送信モードと、チップ電極22eからのペン信号の送信を停止し、かつテイル電極24eからイレーサ信号を生成する送信制御を行う第2送信モードと、を含み、制御回路42は、チップ部22及びテイル部24の両方が、タッチセンサを有する電子機器14のタッチ面18に接触しないホバー状態である場合、筐体20の把持状態に関する判定に基づいて、第1送信モード及び第2送信モードを切り替えて実行する。
【0058】
このように、筐体20の把持状態に関する判定に基づいて第1送信モード及び第2送信モードを切り替えて実行するので、ホバー状態の際に、筐体20の把持状態に適したダウンリンク信号のみを前もってかつ択一的に送信可能となる。これにより、チップ側及びテイル側の両方からダウンリンク信号を送信可能な構成において、操作応答性を確保しつつ電気エネルギーの消費を抑制することができる。
【0059】
また、スタイラス16は、チップ部22の付近にてユーザUsが筐体20に接触したか否かを検出する接触センサ28(第1接触センサ)をさらに備え、制御回路42は、接触センサ28により接触が検出された場合、第1送信モードに従って送信制御を行ってもよい。ユーザUsがスタイラス16のチップ側を使用する際に、チップ部22の付近での接触が検出される可能性が高くなる、という人間工学に基づく知見を利用することで、把持状態の判定精度がさらに高まる。
【0060】
また、接触センサ28は、筐体20の周に沿って少なくとも3箇所に設けられ、制御回路42は、接触センサ28により3箇所以上の接触が検出された場合、第1送信モードに従って送信制御を行ってもよい。ユーザUsがスタイラス16のチップ側を使用する際に、複数本の指による全周方向からの接触が同時に検出される可能性が高くなる、という人間工学に基づく知見を利用することで、把持状態の判定精度がさらに高まる。
【0061】
また、スタイラス16は、テイル部24の付近にてユーザUsが筐体20に接触したか否かを検出する接触センサ32(第2接触センサ)をさらに備え、制御回路42は、(a)接触センサ28により接触が検出され、かつ、接触センサ32により接触が検出されなかった場合、第1送信モードに従って送信制御を行い、(b)接触センサ28により接触が検出されず、かつ、接触センサ32により接触が検出された場合、第2送信モードに従って送信制御を行ってもよい。これにより、スタイラス16のチップ側又はテイル側のいずれを使用する場合であっても、操作応答性の確保及び消費エネルギーの抑制を両立することができる。
【0062】
また、複数の送信モードは、チップ電極22eからペン信号を送信し、かつテイル電極24eから前記第2ダウンリンク信号を送信する送信制御を行う第3送信モードをさらに含み、制御回路42は、筐体20の把持状態が特定されない場合に第3送信モードを実行してもよい。把持状態が特定されないままチップ部22又はテイル部24のいずれか一方がタッチ面18に接触した場合であっても、ペン信号及びイレーサ信号を送信することで、スタイラス16の操作応答性を確保することができる。
【0063】
また、接触センサ28と接触センサ32とは、筐体20の軸方向に100mm以上離間して配置されていてもよい。これにより、両方の接触センサ28,32による同時検出が抑制され、スタイラス16の把持の向きを判定しやすくなる。
【0064】
また、接触センサ28,32はそれぞれ、筐体20の周又は軸に沿って同数の箇所に設けられ、制御回路42は、(a)接触センサ28による接触の検出箇所が接触センサ32による接触の検出箇所よりも多い場合、第1送信モードに従って送信制御を行い、(b)接触センサ28による接触の検出箇所が接触センサ32による接触の検出箇所よりも少ない場合、第2送信モードに従って送信制御を行ってもよい。これにより、両方の接触センサ28,32により人体の接触が同時に検出された場合であっても、スタイラス16の把持の向きを精度よく判定することができる。
【0065】
また、接触センサ28,32は、筐体20の外周面のうち、他の箇所と比べて相対的に平坦な箇所に設けられてもよい。接触の検出箇所が平坦であるほど人体の指との密着性が高まるので、接触センサ28,32による検出精度がさらに向上する。
【0066】
<第1実施形態の変形例>
(第1例)
接触センサ28,32の検出領域R1~R6は、
図3(b)に示す例に限られず、形状、位置又は個数を適宜変更することができる。
【0067】
図7は、第1実施形態の第1変形例におけるスタイラス60の外観図である。より詳しくは、
図7(a)はスタイラス60の側面図であり、
図7(b)は筐体20の部分展開図である。
図7(a)に示すように、スタイラス60は、筐体20、チップ部22、及びテイル部24の他に、第1実施形態(接触センサ28,32)とは形状が異なる接触センサ62,64と、を備える。
【0068】
図7(b)に示すように、チップ側の接触センサ62は、チップ側から中央側に向かって順に、環状の検出領域R1,R2,R3を有する。3箇所の検出領域R1~R3は、筐体20の軸方向に沿って等間隔に配置されている。同様に、テイル側の接触センサ64は、テイル側から中央側にわたって順に、環状の検出領域R4,R5,R6を有する。3箇所の検出領域R4~R6は、筐体20の軸方向に沿って等間隔に配置されている。なお、2箇所の検出領域R3,R6は、距離Disだけ離間して配置されている。この距離Disは、例えば50mm以上、あるいは100mm以上である。
【0069】
以上のように接触センサ62,64の形状を変更した場合であっても、第1実施形態と同様に、筐体20の把持状態を判定することができる。特に、検出領域R1~R6を環状にすることで、スタイラス60の回転姿勢(角度)にかかわらず一様の検出感度が得られる、という利点がある。
【0070】
(第2例)
筐体20の形状は、
図3(a)に示す例に限られず、適宜変更することができる。例えば、筐体20の断面は、円や多角形であってもよいし、ユーザUsが把持しやすいように部分的に加工処理を施してもよい。
【0071】
図8は、第1実施形態の第2変形例におけるスタイラス70の外観図である。より詳しくは、
図8(a)はスタイラス70をチップ側から視た正面図であり、
図8(b)はスタイラス70をテイル側から視た背面図である。スタイラス70は、チップ部22及びテイル部24の他に、第1実施形態とは形状が異なる筐体72を備える。
【0072】
図8(a)に示すように、筐体72は、第1実施形態(筐体20)と同様に、ルーローの三角形の断面形状を有する。筐体72の外周面74上であってチップ部22の付近の位置に、平坦な受け面76を有する凹部78が形成されている。そして、人体の接触を検出する接触センサ80(第1接触センサ)が、少なくとも受け面76に設けられている。
【0073】
図8(b)に示すように、筐体72の外周面74上であってテイル部24の付近の位置に、平坦な受け面82を有する凹部84が形成されている。また、人体の接触を検出する接触センサ86(第2接触センサ)が、少なくとも受け面82に設けられている。
【0074】
以上のように筐体72の形状を変更した場合であっても、第1実施形態と同様に、筐体72の把持状態を判定することができる。特に、スタイラス70の把持の際、ユーザUsの親指を凹部78の受け面76(あるいは、凹部84の受け面82)に接触させるよう仕向けることで、接触センサ80,86による検出精度がさらに向上する。
【0075】
(第3例)
第1実施形態では、接触センサ28,32を用いて把持状態を判定しているが、これに代わって他のセンサ(特に、他の目的で設けられたセンサ)を用いてもよい。例えば、制御回路42は、(a)タッチ面18との直近の接触が端部センサ27により検出されていた場合、第1送信モードに従って送信制御を行い、(b)タッチ面18との直近の接触が端部センサ31により検出されていた場合、第2送信モードに従って送信制御を行ってもよい。チップ部22及びテイル部24のうちタッチ面18に直近に接触した方が、継続して使用される可能性が高いことを考慮することで、把持状態の判定精度がさらに高まる。
【0076】
(第4例)
第1実施形態では、チップ部22及びテイル部24の両方の接触を検出した場合を想定していないが、この場合分けを想定した処理を行ってもよい。例えば、両方の接触を検出した場合、スタイラス16がカバン等に入れ込まれた状態であることが想定される。すなわち、制御回路42は、チップ電極22eからのペン信号の送信を停止し、テイル電極24eからのイレーサ信号の送信を停止する送信制御を行ってもよい。これにより、予期しない状態で電気エネルギーが消費されるのを防止できる。
【0077】
[第2実施形態]
続いて、第2実施形態におけるスタイラス102について、
図9~
図11を参照しながら説明する。なお、第1実施形態と同様の構成又は機能については、同一の参照符号を付するとともに、その説明を省略する場合がある。
【0078】
<位置検出システム100の全体構成>
図1に示すように、位置検出システム100は、電子機器14と、スタイラス102とから基本的に構成される。なお、電子機器14は、
図2に示す構成と同一の又は異なる構成をとることができる。
【0079】
<スタイラス102の構成>
図9は、第2実施形態におけるスタイラス102の外観図であり、チップ部104がタッチ面18を向くように把持された状態を示している。スタイラス102は、筒状の筐体20と、筐体20のチップ側に設けられたチップ部104と、筐体20のテイル側に設けられたテイル部106と、を備える。
【0080】
概略円錐形状のチップ部104は、チップ電極22e及びチップカバー22cの他に、導電性材料からなるリング電極108を含んで構成される。リング電極108は、アップリンク信号を入力する電極であり、チップカバー22cの内側又は外側に設けられている。筐体20のチップ側には、第1実施形態の構成とは異なり、端部センサ27のみが設けられている。
【0081】
概略円錐形状のテイル部106は、テイル電極24e及びテイルカバー24cの他に、導電性材料からなるリング電極108を含んで構成される。リング電極108は、アップリンク信号を入力する電極であり、テイルカバー24cの内側又は外側に設けられている。筐体20のテイル側には、第1実施形態の構成とは異なり、端部センサ31のみが設けられている。
【0082】
ところで、電子機器14側のセンサ制御回路202は、自身に接続されたセンサ電極200を介してスタイラス102からのダウンリンク信号を受信する。そして、センサ制御回路202は、受信したダウンリンク信号の種類に対応するデータを含むアップリンク信号を生成し、センサ電極200を介してアップリンク信号を送信する。
【0083】
本図の例では、チップ電極22eは、テイル電極24eと比べて、タッチ面18(センサ電極200)から近い位置にある。この位置関係下では、電子機器14はセンサ電極200を介してチップ電極22eからのペン信号を受信できるとともに、スタイラス102はリング電極108を介してセンサ電極200からのアップリンク信号を受信できる。一方、電子機器14はセンサ電極200を介してテイル電極24eからのイレーサ信号を受信できないとともに、スタイラス102はリング電極110を介してセンサ電極200からのアップリンク信号を受信できない。
【0084】
図10は、
図9に示すスタイラス102の電気的なブロック図である。スタイラス102は、チップ電極22eと、テイル電極24eと、端部センサ27,31と、電源回路34と、DC/DCコンバータ36と、チップ側送信回路38と、テイル側送信回路40と、リング電極108,110と、制御回路112と、を含んで構成される。
【0085】
制御回路112は、ダウンリンク信号の送信動作を含む制御を司るマイクロコンピュータである。制御回路112は、端部センサ27,31からの検出信号及びリング電極108,110からのアップリンク信号を入力するとともに、チップ側送信回路38及びテイル側送信回路40に対して制御信号を出力する。これにより、制御回路112は、少なくとも、第1,第2,第3送信モードに従って、チップ側送信回路38及びテイル側送信回路40の送信制御を実行可能に構成される。
【0086】
<スタイラス102の動作>
第2実施形態におけるスタイラス102は、以上のように構成される。続いて、このスタイラス102の動作(特に、制御回路112による送信制御)について、
図11のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0087】
ステップS11において、制御回路112は、端部センサ27,31からの検出信号に基づいて、チップ部104又はテイル部106への接触の有無を判定する。チップ部104がタッチ面18に接触している場合、制御回路112は、チップ部104のみが接触状態であると判定し(ステップS11:チップ)、後述するステップS14に進む。一方、テイル部106がタッチ面18に接触している場合、制御回路112は、テイル部106のみが接触状態であると判定し(ステップS11:テイル)、後述するステップS16に進む。
【0088】
これに対して、制御回路112は、チップ部104及びテイル部106の両方の接触状態が検出されなかった場合、スタイラス102が「ホバー状態」であると判定し(ステップS11:ホバー)、ステップS12に進む。
【0089】
ステップS12において、制御回路112は、リング電極108,110を介してアップリンク信号を受信したか否かを判定する。アップリンク信号を受信しなかった場合(ステップS12:NO)、後述するステップS20に進む。一方、アップリンク信号を受信した場合(ステップS12:YES)、次のステップS13に進む。
【0090】
ステップS13において、制御回路112は、スタイラス102の把持状態に関する判定を行う。ここで、制御回路112は、受信したアップリンク信号に含まれるデータを用いて把持状態を判定する。
図9から理解されるように、スタイラス102は、その使用中に、電子機器14のタッチ面18に近い位置で把持される。そして、ダウンリンク信号の送信位置がタッチ面18に近いほど、電子機器14がその信号を受信する可能性が高くなる傾向がある。以下、この傾向に基づく判定方法の具体例について説明する。
【0091】
先ず、電子機器14側のセンサ制御回路202は、ダウンリンク信号の受信状況に応じて、送信しようとするデータの一部(以下、識別子という)を変更する。この識別子は、電子機器14が直近に受信した方のダウンリンク信号の種類を示しており、ペン信号の場合は「0」、イレーサ信号の場合は「1」の2値(1ビット)である。
【0092】
例えば、センサ制御回路202は、所定の時間又は回数を超えてペン信号を連続して受信した場合には識別子を「0」、所定の時間又は回数を超えてイレーサ信号を連続して受信した場合には識別子を「1」、それ以外の場合には識別子を「NULL」にそれぞれ設定する。そして、センサ制御回路202は、この識別子を含むアップリンク信号を生成した後、センサ電極200を介してアップリンク信号を送信する。
【0093】
制御回路112は、受信したアップリンク信号が示すデータを解析し、データに含まれる識別子の値に応じて把持状態を判定する。つまり、識別子が「0」である場合、制御回路112は、ユーザUsが、ペン機能を使用する意図で、スタイラス102のチップ側を把持する状態であると判定する。また、識別子が「1」である場合、制御回路112は、ユーザUsが、イレーサ機能を使用する意図で、スタイラス102のテイル側を把持する状態であると判定する。また、識別子が「NULL」である場合、制御回路112は、把持状態が不明であると判定する。
【0094】
これとは逆に、識別子は、電子機器14が直近に受信しなかった方のダウンリンク信号の種類を示してもよい。この場合、制御回路112は、識別子が「0」であるときユーザUsがスタイラス102のチップ側を把持しない状態であると判定し、識別子が「1」であるときユーザUsがスタイラス102のテイル側を把持しない状態であると判定する。
【0095】
制御回路112は、チップ側の判定条件を満たす場合(ステップS13:チップ)、ステップS14に進む。また、制御回路112は、テイル側の判定条件を満たす場合(ステップS13:テイル)、ステップS16に進む。一方、いずれの判定条件を満たさない場合(ステップS13:不明)、ステップS18に進む。
【0096】
ステップS14において、制御回路112は、ステップS11,S13のいずれか一方で「チップ」と判定した場合、ペン信号のみを外部に送信する第1送信モードに切り替えて実行する。これにより、ペン信号は、チップ側送信回路38により生成され、チップ電極22eを介して外部に送信される(ステップS15)。
【0097】
ステップS16において、制御回路112は、ステップS11,S13のいずれか一方で「テイル」と判定した場合、イレーサ信号のみを外部に送信する第2送信モードに切り替えて実行する。これにより、イレーサ信号は、テイル側送信回路40により生成され、テイル電極24eを介して外部に送信される(ステップS17)。
【0098】
ステップS18において、制御回路112は、ステップS11で「ホバー」かつステップS13で「NO」と判定した場合、ペン信号及びイレーサ信号の両方を外部に送信する第3送信モードに切り替えて実行する。これにより、ペン信号はチップ電極22eを介して外部に送信されると同時に、イレーサ信号はテイル電極24eを介して外部に送信される(ステップS19)。
【0099】
ステップS20において、制御回路112は、ステップS12で「NO」と判定した場合、電子機器14側からの指令(つまり、ダウンリンク信号の送信トリガ)を受け付けていないので、ペン信号及びイレーサ信号の両方を送信しない。
【0100】
このようにして、
図11に示すフローチャートの動作が終了する。制御回路112は、所定の実行周期ごとにこのフローチャートを繰り返すことで、スタイラス102は、電子機器14に対してダウンリンク信号を逐次送信することができる。
【0101】
<第2実施形態による効果>
以上のように、スタイラス102は、筐体20、チップ部104、テイル部106、電源回路34、チップ側送信回路38及びテイル側送信回路40の他に、ホバー状態である場合、筐体20の把持状態に関する判定に基づいて、第1送信モード及び第2送信モードを切り替えて実行する制御回路112を備える。この制御回路112は、電子機器14から受信したアップリンク信号に含まれるデータを用いて筐体20の把持状態に関する判定を行う。これにより、第1実施形態と同様に、チップ側及びテイル側の両方からダウンリンク信号を送信可能な構成において、操作応答性を確保しつつ電気エネルギーの消費を抑制することができる。
【0102】
また、データには、電子機器14が受信したダウンリンク信号の種類を示す識別子が含まれ、制御回路112は、(a)識別子がペン信号を示す場合に第1送信モードに従って送信制御を行い、(b)識別子がイレーサ信号を示す場合に第2送信モードに従って送信制御を行ってもよい。
【0103】
それとは逆に、データには、電子機器14が受信しなかったダウンリンク信号の種類を示す識別子が含まれ、制御回路112は、(a)識別子がイレーサ信号を示す場合に第1送信モードに従って送信制御を行い、(b)識別子がペン信号を示す場合に第2送信モードに従って送信制御を行ってもよい。
【0104】
また、複数の送信モードは、チップ電極22eからペン信号を送信し、かつテイル電極24eからイレーサ信号を送信する送信制御を行う第3送信モードをさらに含み、制御回路112は、筐体20の把持状態が特定されない場合に第3送信モードを実行してもよい。把持状態が特定されないままチップ電極22e又はテイル電極24eのいずれか一方がタッチ面18に接触した場合であっても、ペン信号及びイレーサ信号を送信することで、スタイラス102の操作応答性を確保することができる。
【0105】
上記した動作を実現するセンサ制御回路202は、接続されたセンサ電極200を介してスタイラス102からのダウンリンク信号を受信し、受信したペン信号又はイレーサ信号のいずれか一方に対応するデータを含むアップリンク信号を生成し、センサ電極200を介してアップリンク信号を送信する。
【0106】
ここで、このデータは、ペン信号又はイレーサ信号のうちいずれか一方の送信を続行させる、スタイラス102の送信制御に用いられてもよい。それとは逆に、このデータは、ペン信号又はイレーサ信号のうちいずれか一方の送信を停止させる、スタイラス102の送信制御に用いられてもよい。
【0107】
<第2実施形態の変形例>
第2実施形態では、リング電極108,110を用いてアップリンク信号を受信しているが、これに代わって、チップ電極22e又はテイル電極24eを用いて受信してもよい。例えば、チップ電極22eを介して送受信する場合、[1]ペン信号の送信時にはチップ電極22eと送信回路とを接続し、[2]アップリンク信号の受信時にはチップ電極22eと受信回路とを接続するように切り替え可能なスイッチ機構を設ければよい。
【符号の説明】
【0108】
10,100 位置検出システム、14 電子機器、16,60,70,102 スタイラス、20,72 筐体、22,104 チップ部、22e チップ電極、24,106 テイル部、24e テイル電極、27 端部センサ(第1端部センサ)、28,62,80 接触センサ(第1接触センサ)、31 端部センサ(第2端部センサ)、32,64,86 接触センサ(第2接触センサ)、34 電源回路、38 チップ側送信回路(第1送信回路)、40 テイル側送信回路(第2送信回路)、42,112 制御回路、76,82 受け面、78,84 凹部、108,110 リング電極、200 センサ電極、202 センサ制御回路、R1~R6 検出領域、Us ユーザ