IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立ビークルエナジー株式会社の特許一覧

特開2024-86926固体電解質シート、及びこれを使用した固体電解質二次電池
<>
  • 特開-固体電解質シート、及びこれを使用した固体電解質二次電池 図1
  • 特開-固体電解質シート、及びこれを使用した固体電解質二次電池 図2
  • 特開-固体電解質シート、及びこれを使用した固体電解質二次電池 図3
  • 特開-固体電解質シート、及びこれを使用した固体電解質二次電池 図4
  • 特開-固体電解質シート、及びこれを使用した固体電解質二次電池 図5
  • 特開-固体電解質シート、及びこれを使用した固体電解質二次電池 図6
  • 特開-固体電解質シート、及びこれを使用した固体電解質二次電池 図7
  • 特開-固体電解質シート、及びこれを使用した固体電解質二次電池 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086926
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】固体電解質シート、及びこれを使用した固体電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20240621BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20240621BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/0585
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024066668
(22)【出願日】2024-04-17
(62)【分割の表示】P 2023506719の分割
【原出願日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】P 2021042207
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「先進・革新蓄電池材料評価技術開発(第2期)」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】505083999
【氏名又は名称】ビークルエナジージャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】山川 幸雄
(57)【要約】
【課題】固体電解質シートの端面付近の剛性を高めることができる固体電解質シート、及
びこの固体電解質シートと使用した固体電解質二次電池を提供する。
【解決手段】固体電解質シート10が、固体電解質を含み板状に形成された基部11と、
この基部の外側に形成された板状の補強部12とから形成され、補強部12は、材質が異
なる2つの電気的絶縁部材を組み合わせて形成され、しかも基部11に対して剛性が大き
く設定されている。固体電解質シートの周縁部付近の剛性を高めることができるので、固
体電解質シートの周縁部付近が損傷する恐れを少なくすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質を含む板状に形成された基部と、
前記基部の外側で、前記基部に重ね合わされた板状の補強部から形成され、
前記補強部は、材質が異なる2つの電気的絶縁部材を組み合わせて形成され、しかも前記基部に対して剛性が大きい複合部材であると共に、
前記基部は矩形状に形成され、前記基部の四辺に対応して前記補強部が枠状に形成されており、前記補強部の周縁形状も矩形形状であり、
前記補強部には、矩形の枠状に形成された前記補強部の互いに向き合う辺を結ぶ長尺状に形成された補助補強部が形成されている、或いは
前記補強部には、矩形の枠状に形成された前記補強部の互いに向き合う辺と、これとは別の前記補強部の互いに向き合う辺とを結ぶ長尺状に形成された格子状の補助補強部が形成されている、或いは
前記補強部には、矩形の枠状に形成された前記補強部の対角線に沿った長尺状に形成された補助補強部が形成されている
ことを特徴とする固体電解質シート。
【請求項2】
請求項1に記載の固体電解質シートにおいて、
前記補強部は、固体電解質を含む
ことを特徴とする固体電解質シート。
【請求項3】
請求項1に記載の固体電解質シートにおいて、
前記複合部材は、第1電気絶縁部材と第2電気絶縁部材からなり、
前記第1電気絶縁部材は、粉末状の電気絶縁材からなり、
前記第2電気絶縁部材は、前記第1電気絶縁部材を保持する空隙を有する電気絶縁材からなる
ことを特徴とする固体電解質シート。
【請求項4】
請求項3に記載の固体電解質シートにおいて、
前記固体電解質は、硫化物系固体電解質、或いは酸化物系固体電解質である
ことを特徴とする固体電解質シート。
【請求項5】
請求項3に記載の固体電解質シートにおいて、
前記第1電気絶縁部材は、粉末状の無機材料である
ことを特徴とする固体電解質シート。
【請求項6】
請求項5に記載の固体電解質シートにおいて、
前記第1電気絶縁部材である粉末状の無機材料は、前記固体電解質、或いは酸化アルミニウムである
ことを特徴とする固体電解質シート。
【請求項7】
請求項6に記載の固体電解質シートにおいて、
前記第2電気絶縁部材は、有機材料から形成された不織布、或いは無機材料から形成された不織布である
ことを特徴とする固体電解質シート。
【請求項8】
請求項1に記載の固体電解質シートにおいて、
前記基部を形成する固体電解質基部シートと前記補強部を形成する補強シートの夫々の外形形状は、同じ寸法の矩形状であり、前記固体電解質基部シートと前記補強シートが重ね合わされた状態で、前記補強シートの内側が矩形状に切り抜かれて前記基部シートが露出されている
ことを特徴とする固体電解質シート。
【請求項9】
請求項8に記載の固体電解質シートにおいて、
前記固体電解質基部シートと前記補強部を形成する前記補強シートを重ねわせた状態で、重ね合わされた部分が押圧されて一体化されている
ことを特徴とする固体電解質シート。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の固体電解質シートと、
前記固体電解質シートの一方の面に設けられた正極層と、
前記固体電解質シートの他方の面に設けられた負極層を有する
ことを特徴とする固体電解質二次電池。
【請求項11】
請求項10に記載の固体電解質二次電池において、
前記固体電解質シートとは反対側の前記正極層の面には正極集電箔が設けられ、
前記固体電解質シートとは反対側の前記負極層の面には負極集電箔が設けられ、
前記正極集電箔の正極端子とは反対側の前記正極層の端面と、前記固体電解質シートの前記基部の端面の位置が一致し、
前記負極集電箔の負極端子とは反対側の前記負極層の端面は、前記固体電解質シートの前記基部の端面から突き出し、前記補強部に達している
ことを特徴とする固体電解質二次電池。
【請求項12】
請求項10に記載の固体電解質二次電池において、
前記固体電解質シートとは反対側の前記正極層の面には正極集電箔が設けられ、
前記固体電解質シートとは反対側の前記負極層の面には負極集電箔が設けられ、
前記正極集電箔の正極端子とは反対側の前記正極層の端面は、前記固体電解質シートの前記基部の端面から突き出して前記補強部に達し、
前記負極集電箔の負極端子とは反対側の前記負極層の端面は、前記固体電解質シートの前記基部の端面から突き出して前記補強部に達している
ことを特徴とする固体電解質二次電池。
【請求項13】
請求項12に記載の固体電解質二次電池において、
前記負極集電箔の前記負極端子とは反対側の前記負極層の端面は、前記正極集電箔の前記正極端子とは反対側の前記正極層の端面に対して、前記固体電解質シートの前記基部の端面から更に突き出して前記補強部に達している
ことを特徴とする固体電解質二次電池。
【請求項14】
請求項11~請求項13のいずれか1項に記載の固体電解質二次電池において、
前記固体電解質シートの表面積は、前記正極層の表面積、及び前記負極層の表面積以上に決められている
ことを特徴とする固体電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種産業機器に使用される二次電池に係り、特に電池要素である固体電解質シート、及びこれを使用した固体電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンを吸蔵/放出することができる正極及び負極を含む電解質電池は、高エネルギー密度な電池として、電気自動車、電力蓄電、及び情報機器など様々な分野に広く普及している。例えば、この電解質電池を電気自動車動力の用途で使用するには、エネルギー密度が高いこと、つまり単位重量又は単位体積当たりの放電容量が大きいことが要求される。
【0003】
一方で、単位重量又は単位体積当たりの放電容量が大きくなればなるほど、安全性が問題となり、より一層優れた安全性を有する二次電池が要求され、最近では固体電解質二次電池が開発されている。固体電解質二次電池は、これまでの有機系電解液の代わりに、固体電解質を用いる二次電池である。固体電解質二次電池は有機系電解液を使用しないため、単位重量又は単位体積当たりの放電容量が大きくなっても発火の可能性が少なく、安全性の高い二次電池である。
【0004】
このような固体電解質二次電池は、例えば特開2019-057399号公報(特許文献1)に記載されている。特許文献1に記載されている通り、固体電解質二次電池は、固体電解質の粒子を含む固体電解質シートから構成されており、この固体電解質シートの一方の面に負極層が接触し、他方の面に正極層が接触している。これらの正極層と負極層を負荷に接続することで電力を取り出すことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-057399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したような固体電解質シートを用いて固体電解質二次電池を組み立てる場合や固体電解質電池の使用中に固体電解質二次電池に機械的荷重がかかった場合に、固体電解質シートの剛性が低いと、固体電解質シートの周縁部付近に損傷が生じ、正極層と負極層が短絡を生じる恐れがある。また、固体電解質シートの剛性が低いと、自ずと固体電解質シートの大きさが制限され、大きなイオン伝導領域の確保が難しいという課題がある。
【0007】
いずれにしても、固体電解質シートの剛性が小さいと、正極層と負極層が短絡する恐れを生じる、大きなイオン伝導領域を確保することが困難であるといった課題がある。このため、固体電解質シートの剛性を高めることが要請されている。
【0008】
本発明の目的は、固体電解質シートの剛性を高めることができる固体電解質シート、及びこの固体電解質シートを使用した固体電解質二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
固体電解質シートが、固体電解質を含み板状に形成された基部と、この基部の外側に形成された板状の補強部とから形成され、
補強部は、材質が異なる2つの電気的絶縁部材を組み合わせて形成され、しかも基部に対して剛性が大きい複合材である
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特に固体電解質シートの周縁部付近の剛性を高めることができるので、固体電解質シートの周縁部付近が損傷する恐れを少なくすることができる。
【0011】
また、固体電解質シートの全体の剛性を高めることができるので、固体電解質シートを大きくでき、大きなイオン伝導領域を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態になる固体電解質シートの平面図である。
図2図1の固体電解質シートのA-A断面を示す断面図である。
図3】第1の実施形態になる固体電解質シートの製造方法を説明する説明図である。
図4】本発明の第1の実施形態の第1変形例になる固体電解質シートの平面図である。
図5】本発明の第1の実施形態の第2変形例になる固体電解質シートの平面図である。
図6】本発明の第1の実施形態の第3変形例になる固体電解質シートの平面図である。
図7】本発明の第2の実施形態になる固体電解質シートの断面図である。
図8】本発明の第2の実施形態の変形例になる固体電解質シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【実施例0014】
図1及び図2を参照して、本発明の第1の実施形態になる固体電解質シートの構成を説明する。尚、図1は、固体電解質シートの第1面(表面)の側から見た平面を示し、図2は、図1の固体電解質シートのA-A断面を示している。
【0015】
図1及び図2に示すように、固体電解質シート10は、第1面(表面)と第2面(裏面)を備える矩形状の中央領域11(請求項でいう基部に該当する)と、この中央領域11の外側の周囲形状に沿った周縁補強領域12(請求項でいう補強部に該当する)から構成されている。中央領域11、及び周縁補強領域12は、板状に形成されており、また、周縁補強領域12は、中央領域11の外側で、矩形の中央領域11を四辺から囲むように形成されている。尚、必要に応じて、対向する二辺や三辺の周縁にだけ周縁補強領域12を形成することができる。
【0016】
ここで、本実施形態においては、周縁補強領域12は中央領域11を外側の四辺から囲む枠状に形成され、中央領域11に対して剛性が大きくなるように構成されている。尚、この剛性を大きくする構成や方法は後述する。
【0017】
このように、周縁補強領域12を設けることによって、固体電解質シート10の周縁部の剛性を高めるだけではなく、固体電解質シート10の全体の剛性を高めることができる。
【0018】
また、固体電解質シート10の全体の剛性を高めることができるので、固体電解質シート10の面積を大きくでき、大きなイオン伝導領域を確保できるようになる。尚、固体電解質シート10の面積を大きくした構成等については第2の実施形態で説明する。
【0019】
また、固体電解質シートを取り扱うときは、固体電解質シートの周縁部を把持することが多く、この時に固体電解質シートの周縁部が損傷し、固体電解質シートが不良品となって使用できなくなる恐れがある。
【0020】
これに対して、この周縁補強領域12を設けることによって、固体電解質シート10の剛性を高めているので、固体電解質シートの周縁部が損傷せず、固体電解質シートが不良品となって使用できなくなるのを避けることができる。
【0021】
中央領域11は、固体電解質シート10の面内方向についての中央領域であり、周縁補強領域12は、固体電解質シート10の面内方向についての周縁補強領域である。固体電解質シート10の中央領域11は、固体電解質のみで構成されており、周縁補強領域12は、第1電気絶縁部材である電気絶縁性の固体電解質(粉末)、或いは無機酸化物(粉末)と、この固体電解質や無機酸化物を保持する第2電気絶縁部材である電気絶縁性の保持体からなる複合部材で構成されている。
【0022】
固体電解質シート10の厚みは15μm~100μm程度であり、電池のエネルギー密度を考えた場合、厚みは15μm~30μmが好ましい。本実施形態では、固体電解質シート10の厚みは30μmに設定されている。
【0023】
固体電解質シート10の中央領域11は、二次電池のアクティブエリアであるため、25℃におけるリチウムイオン伝導度は、例えば1×10-7S/cm以上であり、好ましくは1×10-3S/cm以上である。また、中央領域11は、酸化物系固体電解質、或いは硫化物系固体電解質の粉末を含む構成とされている。
【0024】
ここで、中央領域11は、固体電解質(粉末)のうちの1種類を単独で含んでいても良く、或いは固体電解質(粉末)の2種以上を混合して含んでいても良い。加えて、中央領域11は、補強部材としてフィラーなどの無機化合物の繊維や粉末を含んでいても良く、更には、中央領域11は、結着剤などの他の成分を含んでいても良い。以下、これらを含めて固体電解質と表記する。
【0025】
これらの粉末や繊維からなる固体電解質は、無機材料、或いは有機材料からなる空隙を備えた保持体に保持されて中央領域11とされている。本実施形態においては、保持体は有機材料から作られた不織布シートが用いられている。尚、保持体は、不織布シートに限らず、縦糸と横糸を編み込んだ形態の格子状のシートとすることもできる。そして、上述した固体電解質は混練されてスラリー状にされ、中央領域11を形成する保持体に塗布されて乾燥される。
【0026】
このように、保持体にスラリー状の固体電解質を塗布することで、上述した固体電解質シート10の中央領域11を形成することができる。尚、中央領域11以外の周縁補強領域12にも固体電解質が存在していても差し支えないものである。不織布シートを使用しているため、加圧成形することで、固体電解質を不織布シートの内部まで充填することができる。
【0027】
また、本実施形態の特徴である周縁補強領域12は、上述したように、固体電解質シート10の外側の四辺に枠状に設けられている。ただ、上述したように周縁補強領域12は、固体電解質シート10の四辺のうち、正極集電箔と負極集電箔がある辺にのみ設けられる構成であっても良い。この周縁補強領域12を設けることで、正極集電箔と負極集電箔が接触して電池が短絡することを防止することができる。これについては、後で説明する第2の実施形態で詳細に説明する。
【0028】
周縁補強領域12の面方向の幅は、二次電池のエネルギー密度の観点から2mm程度の長さに設定することが好ましい。この周縁補強領域12は、二次電池のアクティブエリアの外側であるため、リチウムイオン伝導度は低くても実質的に問題は無く、周縁補強領域12の25℃におけるリチウムイオン伝導度は、例えば好ましくは1×10-4S/cm以下の材料、或いはリチウムイオン伝導を有さない材料で構成されていても良い。もちろん、制作の容易性を考慮して、中央領域11と同じ固体電解質を使用して同じリチウムイオン伝導度としても良い。
【0029】
また、周縁補強領域12は上述したように、第1電気絶縁部材と第2電気絶縁部材を含んでいる。具体的には、粉末状の電気絶縁材料からなる第1電気絶縁部材と、この粉末状の電気絶縁材料を保持する電気絶縁性の保持体からなる第2電気絶縁部材とで構成された複合部材で構成されている。
【0030】
第1電気絶縁部材としては、電気絶縁性を備えてリチウムイオンが含まれる固体電解質や、電気絶縁性を備えてリチウムイオンが含まれない酸化アルミニウム等の電気絶縁材料を用いることができる。これらは、粉末状に加工されており、本実施形態では、第1絶縁部材として、固体電解質を用いている。この固体電解質には、硫化物系固体電解質、或いは酸化物系固体電解質を用いることができる。
【0031】
第2絶縁部材は、電気絶縁性を備えた無機材料、或いは有機材料等からなり、第1電気絶縁部材を保持する保持部材の機能を備えている。本実施形態では、第2電気絶縁部材は、有機材料から作られた不織布が用いられている。尚、不織布に限らず、縦糸と横糸を編み込んだ形態の格子状のものとすることもできる。
【0032】
無機材料として、石英ガラスから作られたガラス繊維等を使用でき、有機材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等を使用でき、これらを不織布の形状に成形して用いることができる。本実施形態では、ポリプロピレンの不織布を使用している。したがって本実施形態では、周縁補強領域12として、第1電気絶縁部材が無機材料で、第2電気絶縁部材が有機材料の組み合わせとされている。
【0033】
次に固体電解質シート10の製造方法について、図3を用いて説明する。
【0034】
本実施形態の固体電解質シート10は、周縁補強領域12を形成する周縁補強シート13と、この周縁補強シート13と同じ外形形状に形成された固体電解質基部シート14を重ね合わせて加圧成形されている。この重ね合わされた積層領域が、剛性が大きくされた周縁補強領域12となる。
【0035】
先ず、図3の(A)においては、ポリプロピレンからなる矩形の不織布(第2電気絶縁部材)を準備し、図3の(B)に示すように、周縁補強領域12を形成するために内部を切り抜き、周縁補強シート13を制作する。これによって、周縁補強領域12と固体電解質シート10の中央領域11を露出させるための領域を形成することができる。
【0036】
また、これとは別にポリエチレンテレフタレート(PET)からなる基台15に固体電解質を塗布して乾燥させて固体電解質基部シート14を準備する。
【0037】
次に、図3の(C)においては、周縁補強シート13を両面から挟み込むようにして、固体電解質基部シート14を重ね合わせ、積層形状としている。固体電解質基部シート14は、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる基台15に載置されており、基台15を支えにして、周縁補強シート13に対して固体電解質基部シート14をプレス機によって加圧成形する。
【0038】
これによって、固体電解質基部シート14の周縁部分(周縁補強領域12に相当)と、周縁補強シート13が、重ね合わされた状態で押圧されることによって、固体電解質基部シート14の固体電解質と周縁補強シート13の固体電解質が、互いに混じり合った状態で一体的に形成される。
【0039】
このように、中央領域11を形成する固体電解質基部シート14と、周縁補強領域12を形成する周縁補強シート13とを重ね合わせて一体的に形成していることから、固体電解質シート10の周縁部の剛性を十分に高めることができる。このプレス後に基台15を取り除くことで、図3の(D)に示すような固体電解質シート10が得られる。
【0040】
ここで、周縁補強シート13、及び固体電解質基部シート14にスラリー状の固体電解質を塗布して予備加圧して、周縁補強シート13、及び固体電解質基部シート14に予め固体電解質を充填しておき、乾燥させる前に両者を積層して加圧することで、両者を一体することも可能である。
【0041】
また、周縁補強シート13を基台15に敷いた上からスラリー状の固体電解質を塗布して乾燥させる。その乾燥させたシートをプレスした後、基台15を剥離除去することで固体電解質シート10を作製してもよい。
【0042】
本実施形態は、固体電解質シート10の外側の周縁に周縁補強領域12を形成することを特徴とするものであり、固体電解質の充填方法等は、種々の方法を適切に採用すれば良いものである。
【0043】
上述した本実施形態の固体電解質シート10によれば、中央領域11がリチウムイオン伝導性を有する固体電解質で構成され、その外側周縁の周縁補強領域12が複合材として剛性を大きくされている。これによって、正極層と負極層が対向しているアクティブエリアである中央領域11のリチウムイオン伝導度を十分に維持することができる。また、固体電解質シート10の周縁部付近の剛性が大きいので、この部分が損傷する恐れを少なくすることができる。更には、周縁部付近の剛性が大きいことによって、固体電解質シート10の全体の剛性も向上することができる。
【0044】
例えば、固体電解質シート10を用いて固体電解質二次電池を組み立てる場合において、電解質シートの周縁部付近が損傷を生じると、正極層と負極層が短絡する恐れが生じるが、本実施形態では、固体電解質シート10の周縁部付近の剛性が大きいので、このような課題を解決することができる。これについては第2の実施形態でも説明する。
【0045】
同様に、固体電解質シートを取り扱うときは、固体電解質シート10の周縁部を把持することが多く、この時に固体電解質シート10の周縁部が損傷する恐れが生じる。このため、固体電解質シート10が不良品となって使用できなくなる恐れが生じるが、本実施形態では、固体電解質シート10の周縁部付近の剛性が大きいので、このような課題を解決することができる。
【0046】
固体電解質シート10の周縁部付近の剛性が大きいことによって、固体電解質シート10の全体の剛性が向上するので、更に取扱性が向上する。加えて、全体の剛性が向上されるので、固体電解質シート10の大きさを大きくでき、大きなイオン伝導領域を確保することができる。
【0047】
また、周縁補強領域12の第1電気絶縁部材には、固体電解質や酸化アルミニウムを用いることができる。これによれば、中央領域11と同じ固体電解質を使用することで生産効率を高めることができ、また、リチウムイオン伝導性を有さない酸化アルミニウムなどの無機材料を用いることで、材料費の低減を図ることができる。
【0048】
また、固体電解質基部シート14と周縁補強シート13の外形形状を合わせることで、周縁補強シート13を一対の固体電解質基部シート14で挟み込む積層工程において、夫々のシートの位置決めを容易にすることができる。
【0049】
つまり、固体電解質基部シート14の外形形状と周縁補強シート13の外形形状は同じ矩形状に形成され、また寸法も同じに決められている。これによって、固体電解質基部シート14と周縁補強シート13の周縁は、形状的に一致することになる。
【0050】
また、周縁補強領域12の第2絶縁部材として有機材料を用いた不織布を使用しているので、不織布の空隙に、固体電解質や無機酸化物の粉末(第1電気絶縁部材)を加圧して押し込んで複合化でき、厚さが30μm程度の薄くて剛性の大きい固体電解質シートとすることができる。
【0051】
以上述べた通り、本実施形態によれば、周縁補強領域12を形成することによって、電解質シート10の周縁部だけではなく、最終的には電解質シートの全体の剛性を高めることができる。これによって、特に固体電解質シートの周縁部付近の剛性を高めることができるので、固体電解質シートの周縁部付近が損傷する恐れを少なくすることができる。また、固体電解質シート10の全体の剛性を高めることができるので、固体電解質シート10の面積を大きくでき、大きなイオン伝導領域を確保できるようになる。
【0052】
≪変形例1≫
次に本実施形態の第1の変形例を図4に基づき説明する。図4においては、固体電解質シートの平面を示したもので、第1の実施形態と同じ機能要素には同じ参照番号を付している。
【0053】
固体電解質シート20は、第1面(表面)と第2面(裏面)を備える矩形状の中央領域11と、この中央領域11の外側の周囲形状に沿った周縁補強領域12から構成されている。中央領域11、及び周縁補強領域12は、板状に形成されており、また、周縁補強領域12は、中央領域11の外側で、矩形の中央領域11を四辺から囲むように形成されている。
【0054】
ここで、本変形例においても、周縁補強領域12は中央領域11を四辺から囲む枠状に形成され、中央領域11に対して剛性が大きくなるように構成されている。尚、この剛性を大きくする構成や方法は、上述した通りである。
【0055】
更に、本変形例においては図4に示すように、固体電解質シート20の中央領域11には、補助補強領域21が設けられている。この補助補強領域21は、固体電解質シート20の互いに対向する短辺の中央付近を結んだ長尺形状に形成され、周縁補強領域12と一体的に作られている。例えば、図3にある周縁補強シート13を、図4にある形状に切り抜いて形成することができ、第1の実施形態の周縁補強領域12と同様に、第1電気絶縁部材と第2電気絶縁部材とからなる複合材とされている。尚、本実施形態では向かい合う短辺を補助補強領域21で接続しているが、向かい合う長辺を補助補強領域21で接続しても良い。
【0056】
このような補助補強領域21を設ける理由は次の通りである。固体電解質シート20の中央領域11の面積が大きい場合、例えば、中央領域11の面積が10cm2以上であると、固体電解質シート20の取り扱い中に誤って中央領域11に触れると、この領域は、周縁補強領域12より剛性が小さく面積が大きいので、中央領域11が破損する恐れがある。
【0057】
このため、本変形例では、周縁補強領域12と接続された補助補強領域21を設ける構成とした。これによって中央領域11の剛性が更に向上でき、固体電解質シート20の取り扱い中に、誤って中央領域11に触れても、中央領域11が破損するという事象を避けることができる。
【0058】
ここで、補助補強領域21は、アクティブエリアである中央領域11に存在するため、リチウムイオン伝導度が、中央領域11に近いことが好ましい。これによって、良好な電池性能を得ると共に、中央領域11の剛性も向上することができる。
【0059】
このように、本変形例によれば、固体電解質シート20は、上述した補助補強領域21を有しているので、固体電解質シート20を形成する工程や、固体電解質シート20の形成後に積層させる工程といった取り扱い作業の途中で、固体電解質シート20を破損させる恐れを低減することができる。
【0060】
また、補助補強領域21は、電池のアクティブエリアの範囲内に存在するため、補助補強領域21の第1電気絶縁部材は、リチウムイオン伝導を有する固体電解質で構成され、リチウムイオン伝導度は、中央領域11のリチウムイオン伝導度とできるだけ近い値を備えることが好ましい。
【0061】
このように、本変形例によれば、固体電解質シート20のアクティブエリアである中央領域11の剛性を更に向上し、しかも補助補強領域21をアクティブエリアとしても利用することができる。
【0062】
≪変形例2≫
次に本実施形態の第2の変形例を図5に基づき説明する。図5においては、固体電解質シートの平面を示したもので、第1の実施形態と同じ機能要素には同じ参照番号を付している。
【0063】
固体電解質シート30は、第1面(表面)と第2面(裏面)を備える矩形状の中央領域11と、この中央領域11の外側の周囲形状に沿った周縁補強領域12から構成されている。中央領域11、及び周縁補強領域12は、板状に形成されており、また、周縁補強領域12は、中央領域11の外側で、矩形の中央領域11を四辺から囲むように形成されている。
【0064】
ここで、本変形例においても、周縁補強領域12は中央領域11を四辺から囲む枠状に形成され、中央領域11に対して剛性が大きくなるように構成されている。尚、この剛性を大きくする構成や方法は、上述した通りである。
【0065】
更に、本変形例においては図5に示すように、固体電解質シート30の中央領域11には、格子状に形成された、横補助補強領域31と縦補助補強領域32が設けられている。
【0066】
横補助補強領域31は、固体電解質シート30の互いに対向する短辺を等分した位置(ここでは3カ所)を結んだ長尺形状に形成され、周縁補強領域12と一体的に作られている。同様に縦補助補強領域32は、固体電解質シート30の互いに対向する長辺を等分した位置(ここでは5カ所)を結んだ長尺形状に形成され、周縁補強領域12と一体的に作られている。
【0067】
横補助補強領域31、縦補助補強領域32及び周縁補強領域12は、第1変形例と同様に、図3にある周縁補強シート13を、図5にある形状に切り抜いて形成することができ、第1の実施形態の周縁補強領域12と同様に、第1電気絶縁部材と第2電気絶縁部材とからなる複合部材とされている。
【0068】
このような補助補強領域31、32を設ける理由は、変形例1と同様である。このため、本変形例では、周縁補強領域12と接続された格子状の補助補強領域31、32を設ける構成とした。これによって中央領域11の剛性が更に向上でき、固体電解質シート30の取り扱い作業の途中に、誤って中央領域11に触れても中央領域11が破損するという事象を避けることができる。
【0069】
ここで、補助補強領域31、32は、アクティブエリアである中央領域11に存在するため、リチウムイオン伝導度が、中央領域11に近いことが好ましい。これによって、良好な電池性能を得ると共に、中央領域11の剛性も向上することができる。
【0070】
このように、本変形例によれば、固体電解質シート30は、上述した格子状の補助補強領域31、32を有しているので、固体電解質シート30を形成する工程や、固体電解質シート30の形成後に積層させる工程といった取り扱い作業の途中で、固体電解質シート30を破損させる恐れを低減することができる。
【0071】
また、格子状の補助補強領域31、32は、電池のアクティブエリアの範囲内に存在するため、補助補強領域31、32の第1絶縁部材は、リチウムイオン伝導を有する固体電解質で構成され、リチウムイオン伝導度は、中央領域11のリチウムイオン伝導度とできるだけ近い値を備えることが好ましい。
【0072】
このように、本変形例によれば、固体電解質シート30のアクティブエリアである中央領域11の剛性を向上し、しかも格子状の補助補強領域31、32をアクティブエリアとしても利用することができる。
【0073】
更に、格子状の補助補強領域31、32によって、固体電解質のみで構成される中央領域11の各面のアスペクト比を任意に設定することができる。これによって、リチウムイオン伝導度を確保しながら適切な剛性を選択できる効果が得られる。
【0074】
≪変形例3≫
次に本実施形態の第3の変形例を図6に基づき説明する。図6においては、固体電解質シートの平面を示したもので、第1の実施形態と同じ機能要素には同じ参照番号を付している。
【0075】
固体電解質シート40は、第1面(表面)と第2面(裏面)を備える矩形状の中央領域11と、この中央領域11の外側の周囲形状に沿った周縁補強領域12から構成されている。中央領域11、及び周縁補強領域12は、板状に形成されており、また、周縁補強領域12は、中央領域11の外側で、矩形の中央領域11を四辺から囲むように形成されている。
【0076】
ここで、本変形例においても、周縁補強領域12は中央領域11を四辺から囲む枠状に形成され、中央領域11に対して剛性が大きくなるように構成されている。尚、この剛性を大きくする構成や方法は、上述した通りである。
【0077】
更に、本変形例においては図6に示すように、固体電解質シート40の中央領域11には、対角線状に形成された第1斜め補助補強領域41と第2斜め補助補強領域42が設けられている。
【0078】
第1斜め補助補強領域41、第2斜め補助補強領域42は、固体電解質シート40の矩形の中央領域11の対角線に沿った長尺形状に形成され、周縁補強領域12と一体的に作られている。変形例1と同様に、図3にある周縁補強シート13を、図6にある形状に切り抜いて形成することができ、第1の実施形態の周縁補強領域12と同様に、第1電気絶縁部材と第2電気絶縁部材とからなる複合部材とされている。
【0079】
このような斜め補助補強領域41、42設ける理由は、変形例1と同様である。このため、本変形例では、周縁補強領域12と接続された対角線に沿った、斜め補助補強領域41、42を設ける構成とした。これによって中央領域11の剛性が向上でき、固体電解質シート40の取り扱い作業の途中に、誤って中央領域11に触れても中央領域11が破損するという事象を避けることができる。
【0080】
ここで、斜め補助補強領域41、42は、アクティブエリアである中央領域11に存在するため、リチウムイオン伝導度が、中央領域11に近いことが好ましい。これによって、良好な電池性能を得ると共に、中央領域11の剛性も向上することができる。
【0081】
このように、本変形例によれば、固体電解質シート40は、上述した対角線に沿った斜め補助補強領域41、42を有しているので、固体電解質シート40を形成する工程や、固体電解質シート40の形成後に積層させる工程といった取り扱い途中で、固体電解質シート40を破損させる恐れを低減することができる。
【0082】
また、対角線に沿った斜め補助補強領域41、42は、電池のアクティブエリアの範囲内に存在するため、斜め補助補強領域41、42の第1絶縁部材は、リチウムイオン伝導を有する固体電解質で構成され、リチウムイオン伝導度は、中央領域11のリチウムイオン伝導度とできるだけ近い値を備えることが好ましい。
【0083】
このように、本変形例によれば、固体電解質シート40のアクティブエリアである中央領域11の剛性を向上し、しかも斜め補助補強領域41、42をアクティブエリアとしても利用することができる。
【実施例0084】
次に本発明の第2の実施形態になる固体電解質二次電池について説明するが、その前に第2の実施形態に至る課題について簡単に説明する。尚、以下に説明する固体電解質二次電池に使用される固体電解質シート10は、第1の実施形態に係る固体電解質シート10である。
【0085】
固体電解質シート10の厚みが、例えば30μmで形成されているとして、周縁補強領域12を有さず、中央領域11のように固体電解質のみで構成する。この場合、図7で示す正極層53と負極層54を積層して二次電池にした際、周縁補強領域12が存在しないため、固体電解質シート10の端面の剛性が小さい。
【0086】
このため、この部分に何らかの機械的外力が作用すると、この部分が崩壊してしまい、正極層53と負極層54とが短絡するという現象を生じる。この種の製品においては、安全性の確保は最重要課題であり、事故が起きないように万全の備えを行う必要がある。
【0087】
また、一般的な固体電解質二次電池の構造は、正極層の面積よりも負極層の面積を大きく形成している。このため、固体電解質シート10の端面の崩壊を考慮して、負極層の面積よりも固体電解質シート10の面積を大きくすることができなく、正極層および負極の集電箔もしくは端子に絶縁処理が必要となり、多くの電力を導出するための阻害要因となっている。このように、固体電解質シート10の面積を大きくできないので、結果的に大きなイオン電導領域の確保が困難となっている。
【0088】
このような課題に対応するため、本実施形態では図7に示すような固体電解質二次電池を提案するものである。尚、図7に示すものは単位電池であり、実際には、複数の固体電解質電池を積層して、二次電池を構成している。
【0089】
図7は、固体電解質二次電池50を、正極集電箔51と負極集電箔52の導出方向に沿って断面したものである。正極集電箔51は正極端子51Tを備え、負極集電箔52は負極端子52Tを備えている。固体電解質二次電池50は、固体電解質シート10の一方の面には、正極活物質から構成された正極層53が形成され、固体電解質シート10の他方の面には、負極活物質から構成された負極層54が形成されている。
【0090】
正極層53の固体電解質シート10とは反対側の面には、正極集電箔51が電気的に導通するように取り付けられ、同様に負極層54の固体電解質シート10とは反対側の面には、負極集電箔52が電気的に導通するように取り付けられている。これによって、リチウムイオンは、正極層53から負極層54に向けて、或いは負極層54から正極層53に向けて流れることで、充電、或いは放電を行うことになり、充放電可能な二次電池が得られることになる。このような挙動は、既によく知られているので、これ以上の説明は省略する。
【0091】
そして、本実施形態の特徴的な構成は次の通りである。先ず端子導出方向(長手方向)で見て、正極層53の長さ(L0)は、固体電解質シート10の中央領域11の長さ(L1)と同じ長さに形成されている。したがって、正極集電箔51の正極端子51Tとは反対側の正極層53の端面と、これに対応した固体電解質シート10の中央領域11との端面とは、端子導出方向で見て一致した関係(いわゆる面一の関係)となっている。
【0092】
言い換えると本実施形態では、端子導出方向に直交する方向の正極層53の投影像は、固体電解質シート10の中央領域11に一致して重なる寸法に決められている。
【0093】
また、正極集電箔51の正極端子51Tの側、及び正極端子51Tとは反対側の固体電解質シート10の周縁補強領域12の端面は、長さ(L2)を有して正極層53の端面から突き出している。したがって、正極層53とアクティブエリアである固体電解質シート10の中央領域11とが全面的に接触しているので、効率的にリチウムイオンが移動することができ、二次電池の入出力特性等を向上することができる。
【0094】
一方、端子導出方向(長手方向)で見て、負極層54の長さ(L3)は、固体電解質シート10の中央領域11の長さ(L1)に対して長く形成されている。したがって、負極集電箔52の負極端子52Tの側、及び負極端子52Tとは反対側の負極層54の端面は、長さ(L4)を有して固体電解質シート10の中央領域11の端面から突き出している。このため、負極層54とアクティブエリアである固体電解質シート10の中央領域11とが全面的に接触しているので、効率的にリチウムイオンが移動することができる。
【0095】
また、固体電解質シート10の周縁補強領域12の端面は、負極層54の端面から長さ(L5)だけ突き出している。したがって、周縁補強領域12は、負極層54の端面を支持する構成となる。したがって、何らかの機械的外力が負極層54の端面に作用しても、周縁補強領域12が負極層54からの外力を受け止めることができるので、固体電解質シート10の損傷を抑制することができる。この結果、正極層53と負極層54の短絡を防ぐことが可能となる。
【0096】
このように、固体電解質シート10が周縁補強領域12によって固体電解質シート10の全体の剛性が補強されていることから、厚みが30μm程度と薄くても負極層54より面積を大きくすることができ、その結果、正極集電箔51と負極集電箔52とが接して電池が短絡することを防止できる。
【0097】
また、固体電解質シート10の全体の剛性が補強されていることから、固体電解質シート10の厚みが30μm程度と薄くても、負極層54の面積よりも固体電解質シート10の面積を大きくして、大きなイオン伝導領域を確保することができ、多くの電力を導出するための阻害要因をなくすことができる。
【0098】
このような構成の固体電解質二次電池50によれば、第1の実施形態で説明した固体電解質シート10を用いることによって、電池性能を向上させることができる。
【0099】
また、正極層53の端面は、固体電解質シート10の中央領域11の端面と面一であり、負極層54の端面は、固体電解質シート10の周縁補強領域12と互いに重なっている。このような構成によれば、電池の主反応はリチウムイオン伝導度が比較的高い中央領域11で行われるため、高い電池性能が得られる。
【0100】
一方で、正極層53、負極層54、及び固体電解質シート10を積層した状態で、プレス工程を実施すると、固体電解質シート10における中央領域11と周縁補強領域12との境で損傷(割れ)が生じて電池が短絡する可能性がある。
【0101】
これに対して、負極層54の端面は、固体電解質シート10の周縁補強領域12に接しているので、正極層53、負極層54、及び固体電解質シート10を積層した状態でプレス工程を実施しても、固体電解質シート10の損傷が生じず、電池の短絡を防ぐことができる。
【0102】
また、第1の実施形態でも説明したが、周縁補強領域12の第1電気絶縁部材に固体電解質を用いることで、アクティブエリアとしても利用することができる。更に、この周縁補強領域12のイオン伝導度を低く設定すると、周縁補強領域12への電流集中を抑制でき、リチウム電析の抑制やサイクル特性の向上といった効果が期待できる。
【0103】
また、全体の剛性が向上しているので、周縁補強領域12を含む固体電解質シート10の表面積は、正極層53の表面積、及び負極層54の表面積より大きく形成することができる。このため、正極層53の正極集電箔51と負極層54の負極集電箔52との間での集電箔同士が接触して短絡することを防止することができる。
【0104】
≪変形例≫
次に第2の実施形態の変形例を図8に基づき説明する。図8においては、第2の実施形態(図7参照)と同じ機能要素には同じ参照番号を付しており、第2の実施形態と同様に、固体電解質二次電池50を、正極集電箔51と負極集電箔52の導出方向に沿って断面したものである。
【0105】
図8に示す変形例は、第2の実施形態と基本的は同じ形状で同じ寸法関係に決められており、長さ(L1)~(L5)は同じ長さである。ただ、相違するのは正極層53の長さが、第2の実施形態に比べて長く決められており、本変形例では正極層53は、長さ(L7)に決められている。以下この点について説明する。
【0106】
図8において、正極層53の長さ(L6)は、固体電解質シート10の中央領域11の長さ(L1)に比べて長く決められており、正極端子51Tの側、及び正極端子51Tの反対の側の正極層53の端面は、中央領域11を超えて、長さ(L7)だけ周縁補強領域12まで伸びている。
【0107】
したがって、周縁補強領域12は、正極層53の端面を支持する構成となる。このため、何らかの機械的外力が正極層53の端面に作用しても、周縁補強領域12が正極層53からの荷重を受け止めることができるので、固体電解質シート10の損傷を抑制することができる。この結果、正極層53と負極層54の短絡を防ぐことが可能となる。また、この変形例においても、上述した第2の実施形態と同様の作用、効果を奏することはもちろんである。
【0108】
以上述べた通り、本発明は、固体電解質シートが、固体電解質を含み板状に形成された基部と、この基部の外側に形成された板状の補強部とから形成され、補強部は、材質が異なる2つの電気的絶縁部材を組み合わせて形成され、しかも基部に対して剛性が大きい複合部材である、ことを特徴としている。
【0109】
これによれば、特に固体電解質シートの周縁部付近の剛性を高めることができるので、固体電解質シートの周縁部付近が損傷する恐れを少なくすることができる。
【0110】
また、固体電解質シートの全体の剛性を高めることができるので、固体電解質シートを大きくでき、大きなイオン伝導領域を確保することができる。
【0111】
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0112】
10…固体電解質シート、11…中央領域、12…周縁補強領域、13…周縁補強シート、14…固体電解質基部シート、15…基台、20…固体電解質シート、21…補助補強領域、30…固体電解質シート、31…横補助補強領域、32…縦補助補強領域、40…固体電解質シート、41…第1斜め補助補強領域、42…第2斜め補助補強領域、50…固体電解質二次電池、51…正極集電箔、51T…正極端子、52…負極集電箔、52T…負極端子、53…正極層、54…負極層。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-04-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質を含む板状に形成された基部と、
前記基部の外側に一体化されて形成された板状の補強部から形成され、
前記補強部は、前記基部とは別に形成された、材質が異なる2つの電気的絶縁部材が組み合わせて形成され、しかも前記基部に対して剛性が大きい複合部材である
ことを特徴とする固体電解質シート。
【請求項2】
請求項1に記載の固体電解質シートにおいて、
前記基部の外側と前記補強部が重ね合わされて一体化されている
ことを特徴とする固体電解質シート。
【請求項3】
請求項2に記載の固体電解質シートにおいて、
前記基部は矩形状に形成され、前記基部の四辺に対応して前記補強部が枠状に形成されており、前記補強部の周縁形状も矩形状である
ことを特徴とする固体電解質シート。
【請求項4】
請求項3に記載の固体電解質シートにおいて、
前記補強部は、固体電解質を含む
ことを特徴とする固体電解質シート。
【請求項5】
請求項3に記載の固体電解質シートにおいて、
前記補強部は、イオン伝導度が1×10 -4 S/cm以下の材料、或いはリチウムイオン伝導を有さない材料から構成されている
ことを特徴とする固体電解質シート。
【請求項6】
請求項4に記載の固体電解質シートにおいて、
前記複合部材は、第1電気絶縁部材と第2電気絶縁部材からなり、
前記第1電気絶縁部材は、粉末状の電気絶縁材からなり、
前記第2電気絶縁部材は、前記第1電気絶縁部材を保持する空隙を有する電気絶縁材からなる
ことを特徴とする固体電解質シート。
【請求項7】
請求項6に記載の固体電解質シートにおいて、
前記固体電解質は、硫化物系固体電解質、或いは酸化物系固体電解質である
ことを特徴とする固体電解質シート。
【請求項8】
請求項7に記載の固体電解質シートにおいて、
前記第1電気絶縁部材は、粉末状の無機材料である
ことを特徴とする固体電解質シート。
【請求項9】
請求項7に記載の固体電解質シートにおいて、
前記第1電気絶縁部材である粉末状の無機材料は、前記固体電解質、或いは酸化アルミニウムである
ことを特徴とする固体電解質シート。
【請求項10】
請求項9に記載の固体電解質シートにおいて、
前記第2電気絶縁部材は、有機材料から形成された不織布、或いは無機材料から形成された不織布である
ことを特徴とする固体電解質シート。
【請求項11】
請求項3に記載の固体電解質シートにおいて、
前記基部を形成する固体電解質基部シートと前記補強部を形成する補強シートの夫々の外形形状は、矩形状であり、前記固体電解質基部シートと前記補強シートが重ね合わされた状態で、前記補強シートの内側が矩形状に切り抜かれて前記基部が露出されている
ことを特徴とする固体電解質シート。
【請求項12】
請求項3~請求項11のいずれか1項に記載の固体電解質シートにおいて、
前記補強部には、矩形の枠状に形成された前記補強部の互いに向き合う辺を結ぶ長尺状に形成された補助補強部が形成されている
ことを特徴とする固体電解質シート。
【請求項13】
請求項3~請求項11のいずれか1項に記載の固体電解質シートにおいて、
前記補強部には、矩形の枠状に形成された前記補強部の互いに向き合う辺と、これとは別の前記補強部の互いに向き合う辺とを結ぶ長尺状に形成された格子状の補助補強部が形成されている
ことを特徴とする固体電解質シート。
【請求項14】
請求項3~請求項11のいずれか1項に記載の固体電解質シートにおいて、
前記補強部には、矩形の枠状に形成された前記補強部の対角線に沿った長尺状に形成された補助補強部が形成されている
ことを特徴とする固体電解質シート。
【請求項15】
請求項1~請求項14のいずれか1項に記載の固体電解質シートと、
前記固体電解質シートの一方の面に設けられた正極層と、
前記固体電解質シートの他方の面に設けられた負極層を有する
ことを特徴とする固体電解質二次電池。
【請求項16】
請求項15に記載の固体電解質二次電池において、
前記固体電解質シートとは反対側の前記正極層の面には正極集電箔が設けられ、
前記固体電解質シートとは反対側の前記負極層の面には負極集電箔が設けられ、
前記正極集電箔の正極端子とは反対側の前記正極層の端面と、前記固体電解質シートの前記基部の端面の位置が一致し、
前記負極集電箔の負極端子とは反対側の前記負極層の端面は、前記固体電解質シートの前記基部の端面から突き出し、前記補強部に達している
ことを特徴とする固体電解質二次電池。
【請求項17】
請求項16に記載の固体電解質二次電池において、
前記正極集電箔の正極端子側の前記正極層の端面と、前記固体電解質シートの前記基部の端面の位置が一致し、
前記負極集電箔の負極端子側の前記負極層の端面は、前記固体電解質シートの前記基部の端面から突き出し、前記補強部に達している
ことを特徴とする固体電解質二次電池。
【請求項18】
請求項15に記載の固体電解質二次電池において、
前記固体電解質シートとは反対側の前記正極層の面には正極集電箔が設けられ、
前記固体電解質シートとは反対側の前記負極層の面には負極集電箔が設けられ、
前記正極集電箔の正極端子とは反対側の前記正極層の端面は、前記固体電解質シートの前記基部の端面から突き出して前記補強部に達し、
前記負極集電箔の負極端子とは反対側の前記負極層の端面は、前記固体電解質シートの前記基部の端面から突き出して前記補強部に達している
ことを特徴とする固体電解質二次電池。
【請求項19】
請求項18に記載の固体電解質二次電池において、
前記正極集電箔の正極端子側の前記正極層の端面は、前記固体電解質シートの前記基部の端面から突き出して前記補強部に達し、
前記負極集電箔の負極端子側の前記負極層の端面は、前記固体電解質シートの前記基部の端面から突き出して前記補強部に達している
ことを特徴とする固体電解質二次電池。
【請求項20】
請求項19に記載の固体電解質二次電池において、
前記負極集電箔の前記負極端子とは反対側の前記負極層の端面は、前記正極集電箔の前記正極端子とは反対側の前記正極層の端面に対して、前記固体電解質シートの前記基部の端面から更に突き出して前記補強部に達している
ことを特徴とする固体電解質二次電池。
【請求項21】
請求項15~請求項20のいずれか1項に記載の固体電解質二次電池において、
前記固体電解質シートの表面積は、前記正極層の表面積、及び前記負極層の表面積以上に決められている
ことを特徴とする固体電解質二次電池。