(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086936
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20240621BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C08L23/00
C08K3/04
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024066964
(22)【出願日】2024-04-17
(62)【分割の表示】P 2020569517の分割
【原出願日】2020-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2019013411
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000174862
【氏名又は名称】三井・ダウポリケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西嶋 孝一
(72)【発明者】
【氏名】五戸 久夫
(72)【発明者】
【氏名】青山 正貴
(57)【要約】
【課題】カーボンナノチューブを含有し、カーボンナノチューブの分散性に優れ、体積抵抗率が低減された樹脂組成物の提供。
【解決手段】カーボンナノチューブ(A)と、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)のアイオノマー及びエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B2)からなる群より選択される少なくとも1種である樹脂(B)と、を含有する樹脂組成物。
【選択図】無し
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ(A)と、
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)のアイオノマー及びエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B2)からなる群より選択される少なくとも1種である樹脂(B)と、
を含有する樹脂組成物。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブ(A)の含有量が、前記カーボンナノチューブ(A)及び前記樹脂(B)の総含有量に対し、0.1質量%~15質量%である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブ(A)及び前記樹脂(B)の総含有量が、樹脂組成物の全量に対し、50質量%以上である請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)における不飽和カルボン酸単位の含有量が、前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)の全量に対し、1質量%~25質量%であり、
前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B2)における不飽和カルボン酸単位の含有量が、前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B2)の全量に対し、1質量%~25質量%である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)におけるエチレン単位の含有量が、前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)の全量に対し、75質量%~99質量%であり、
前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B2)におけるエチレン単位の含有量が、前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B2)の全量に対し、75質量%~99質量%である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂(B)がエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B2)である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
JIS K7210-1:2014(ISO 1133-1:2011)に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定された前記樹脂(B)のメルトフローレートが、0.1g/10分~300g/10分である請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記カーボンナノチューブ(A)は、平均直径が5nm~20nmであり、平均長さが0.5μm~50μmである請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂組成物及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂に炭素材料を添加して樹脂組成物とすることにより、樹脂組成物の体積抵抗率を低減させる(例えば、樹脂組成物に対して導電性又は帯電防止性を付与する)ことが行われている。
炭素材料の中でも、カーボンナノチューブは、チューブ径(繊維径とも称される)が細くてアスペクト比が大きい。このため、他の炭素材料(例えば、カーボンブラック、黒鉛等。以下同じ。)と比較して、低濃度で含有させた場合においても、樹脂の体積抵抗率を低減させることができることが知られている。
【0003】
しかし、カーボンナノチューブは、他の炭素材料と比較して、樹脂中に分散させることが難しい材料である。
このため、樹脂中におけるカーボンナノチューブの分散性を向上させるための技術が検討されている。
【0004】
例えば、特開2008―290936号公報には、ナノチューブの機械的および電気的特性を実質的に損なわずにポリマー材料中にナノチューブ、特にカーボンナノチューブが均質、必要な場合には高濃度に分散した分散体を製造することができる単純で安価な方法に対するニーズに答えることができる技術が開示されている。具体的に、特開2008―290936号公報には、ナノチューブ(例えばカーボンナノチューブ)を特定の可塑剤と接触させることを特徴とする、ナノチューブをベースにしたプレコンポジットの製造方法が開示されている。
【0005】
また、特表2012-507587号公報には、要求される粘度及び充填量を満たし、それにより、要求されるポリオレフィンの導電性を設定できる、カーボンナノチューブ(CNT)を含むマスターバッチが開示されている。具体的に、特表2012-507587号公報には、成分A及び成分Bを含む組成物Zであり、成分Aが、プロピレン-オレフィン-コポリマーワックスであり、成分Bが、カーボンナノチューブであり、上記プロピレン-オレフィン-コポリマーワックスは、モノマーのプロピレンから作製され、炭素数2~18のアルキル基を含むオレフィンの少なくとも1つを0.1~50重量%(重量%はモノマーの全重量に基づく。)含む組成物Zが開示されている。
【0006】
また、特表2014-511908号公報には、プラスチック中のカーボンナノチューブマスターバッチの形成に必要な別個の高温配合ステップを回避できる技術が開示されている。具体的に、導電性熱可塑性組成物の質量に対して、約80~約98質量%のポリマーと、約2~約20質量%のカーボンナノチューブマスターバッチと、を溶融混合するステップを備え、カーボンナノチューブマスターバッチは、その質量に対して、約10~約40質量%のカーボンナノチューブと、約60~約90質量%の、融点が約45~約150℃のワックスと、を含むことを特徴とする導電性熱可塑性組成物の形成方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特開2008―290936号公報、特表2012-507587号公報及び特表2014-511908号公報に開示された技術では、まず、カーボンナノチューブを可塑剤又はワックスと混合したマスターバッチ又はプレコンポジット(以下、これらをまとめて「マスターバッチ等」ともいう)を製造し、製造されたマスターバッチ等と樹脂とを混合して樹脂組成物とすることにより、樹脂組成物中におけるカーボンナノチューブの分散性を向上させていると考えられる。
しかし、カーボンナノチューブは、アスペクト比、比表面積、及び吸油量が、他の炭素材料(例えば、カーボンブラック、黒鉛等)と比較して大きい。このため、上記マスターバッチ等を製造するためには、カーボンナノチューブの単位質量当たりに可塑剤又はワックスが多量に必要となる。マスターバッチに可塑剤又はワックスを多量に含有させた場合には、製造された樹脂組成物において、可塑剤又はワックスのブリードアウト、樹脂の性能に対する悪影響(例えば、機械物性等の劣化)、等が懸念される。
【0008】
本開示は、上記に鑑みてなされたものである。
本開示の一態様によれば、カーボンナノチューブを含有し、カーボンナノチューブの分散性に優れ、体積抵抗率が低減された樹脂組成物及び成形体が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の態様が含まれる。
<1> カーボンナノチューブ(A)と、
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)のアイオノマー及びエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B2)からなる群より選択される少なくとも1種である樹脂(B)と、
を含有する樹脂組成物。
<2> 前記カーボンナノチューブ(A)の含有量が、前記カーボンナノチューブ(A)及び前記樹脂(B)の総含有量に対し、0.1質量%~15質量%である<1>に記載の樹脂組成物。
<3> 前記カーボンナノチューブ(A)及び前記樹脂(B)の総含有量が、樹脂組成物の全量に対し、50質量%以上である<1>又は<2>に記載の樹脂組成物。
<4> 前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)における不飽和カルボン酸単位の含有量が、前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)の全量に対し、1質量%~25質量%であり、
前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B2)における不飽和カルボン酸単位の含有量が、前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B2)の全量に対し、1質量%~25質量%である<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5> 前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)におけるエチレン単位の含有量が、前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)の全量に対し、75質量%~99質量%であり、
前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B2)におけるエチレン単位の含有量が、前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B2)の全量に対し、75質量%~99質量%である<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6> 前記樹脂(B)がエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B2)である<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7> JIS K7210-1:2014(ISO 1133-1:2011)に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定された前記樹脂(B)のメルトフローレートが、0.1g/10分~300g/10分である<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8> 前記カーボンナノチューブ(A)は、平均直径が5nm~20nmであり、平均長さが0.5μm~50μmである<1>~<7>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<9> <1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を含む成形体。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様によれば、カーボンナノチューブを含有し、カーボンナノチューブの分散性に優れ、体積抵抗率が低減された樹脂組成物及び成形体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよく、また、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリル酸エステル」は、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を包含する概念である。
【0012】
〔樹脂組成物〕
本開示の樹脂組成物は、カーボンナノチューブ(A)と、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)のアイオノマー及びエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B2)からなる群より選択される少なくとも1種である樹脂(B)と、を含有する。
【0013】
本開示の樹脂組成物は、カーボンナノチューブの分散性に優れ、体積抵抗率が低減されている。
かかる効果が奏される理由は明らかではないが、樹脂(B)が、カーボンナノチューブ(A)と馴染み易いためと考えられる。
【0014】
本開示の樹脂組成物におけるカーボンナノチューブの分散性を確認するための指標の一つとして、本開示の樹脂組成物からなるストランドの外観が挙げられる(後述する実施例)。
一般に、市販のカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブ同士が絡み合った毛玉状の形態で提供されることが多い。樹脂組成物中において、毛玉状のカーボンナノチューブが良好にほぐれ、良好に分散されている場合には、ストランドの外観において、ザラツキ感が少なく、上記外観がスムースな外観となる。
【0015】
また、本開示の樹脂組成物におけるカーボンナノチューブの分散性は、樹脂組成物の体積抵抗率にも反映される。樹脂組成物におけるカーボンナノチューブの分散性に優れるほど、樹脂組成物の体積抵抗率が低くなる。
【0016】
本開示の樹脂組成物は、体積抵抗率が低減されているので、導電性及び/又は帯電防止性を有する樹脂組成物として好適である。
樹脂組成物の体積抵抗率は、樹脂組成物の帯電防止性の観点から、好ましくは1×1010Ω・cm以下であり、より好ましくは1×109Ω・cm以下であり、更に好ましくは7×108Ω・cm以下である。
樹脂組成物の体積抵抗率は、樹脂組成物の導電性の観点から、好ましくは1×104Ω・cm以下であり、より好ましくは1×103Ω・cm以下である。
導電性及び/又は帯電防止性の観点からみると、樹脂組成物の体積抵抗率の下限には特に制限はない。樹脂組成物の製造適性の観点からみると、樹脂組成物の体積抵抗率の下限は、好ましくは1×10-1Ω・cmであり、より好ましくは1×100Ω・cmである。
【0017】
また、本開示の樹脂組成物は、目的とする体積抵抗率を得るためのカーボンナノチューブの含有量を低減できるという利点も有する。
樹脂組成物中におけるカーボンナノチューブの含有量の好ましい範囲については後述する。
【0018】
<カーボンナノチューブ(A)>
本開示の樹脂組成物は、カーボンナノチューブ(A)を含有する。
本開示の樹脂組成物に含有されるカーボンナノチューブ(A)は、1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
【0019】
カーボンナノチューブ(A)は、炭素原子からなる円筒状の中空繊維状物質である。
カーボンナノチューブ(A)は、単層のカーボンナノチューブであっても多層のカーボンナノチューブであってもよい。カーボンナノチューブ(A)は、分散のし易さの観点から、多層のカーボンナノチューブであることが好ましい。
【0020】
カーボンナノチューブ(A)の平均直径は、5nm~20nmであることが好ましい。
カーボンナノチューブの平均直径が5nm以上である場合には、混練時、カーボンナノチューブがより切れにくい。
カーボンナノチューブの平均直径が20nm以下である場合には、樹脂組成物の体積抵抗率を低減させる効果により優れる。
カーボンナノチューブの平均直径は、より好ましくは6nm~20nmであり、更に好ましくは7nm~20nmである。
【0021】
カーボンナノチューブ(A)の平均長さは、0.5μm~50μmであることが好ましい。
カーボンナノチューブ(A)の平均長さが、0.5μm以上である場合には、樹脂組成物の体積抵抗率を低減させる効果により優れる。
カーボンナノチューブ(A)の平均長さが、50μm以下である場合には、混練時の粘度上昇をより抑制でき、混練及び成形をより行い易い。
カーボンナノチューブ(A)の平均長さは、より好ましくは0.5μm~30μmであり、更に好ましくは0.6μm~15μmである。
【0022】
カーボンナノチューブ(A)は、平均直径が5nm~20nmであり、かつ、平均長さが0.5μm~50μmであることが更に好ましい。この態様において、平均直径及び平均長さの各々の更に好ましい範囲は前述したとおりである。
【0023】
上述したカーボンナノチューブ(A)の平均直径は、カーボンナノチューブ(A)を電子顕微鏡(走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM))で観察し、50個のカーボンナノチューブの直径をそれぞれ求め、得られた直径を算術平均することによって求められる値である。
上述したカーボンナノチューブ(A)の平均長さは、カーボンナノチューブ(A)を電子顕微鏡(走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM))で観察し、50個のカーボンナノチューブの長さをそれぞれ求め、得られた長さを算術平均することによって求められる値である。
【0024】
カーボンナノチューブ(A)は、アーク放電法、化学気相成長法(CVD法)、レーザー・アブレーション法等によって製造することができる。
【0025】
また、(A)成分であるカーボンナノチューブ(A)としては、カーボンナノチューブの市販品を用いてもよい。
カーボンナノチューブの市販品としては、例えば、C-Nano Technology社のFlo Tube9000、Arkema社のC-100、Nanocyl社のNC7000、Nanocyl社製のNC7000、等を用いることができる。
これらの市販品は、上述の平均長径および平均長さを満たし、好ましく用いることができる。また、これらの市販品は、量産されていること及び価格競争力の観点からも優れている。
【0026】
カーボンナノチューブ(A)の含有量は、カーボンナノチューブ(A)及び樹脂(B)の総含有量に対し、好ましくは0.1質量%~15質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%である。
カーボンナノチューブ(A)及び樹脂(B)の総含有量に対するカーボンナノチューブ(A)の含有量が0.1質量%以上である場合には、樹脂組成物の体積抵抗率を低減させる効果により優れる。
カーボンナノチューブ(A)及び樹脂(B)の総含有量に対するカーボンナノチューブ(A)の含有量が15質量%以下、好ましくは10質量%以下である場合には、樹脂(B)の性能をより効果的に維持できる。
カーボンナノチューブ(A)及び樹脂(B)の総含有量に対するカーボンナノチューブ(A)の含有量は、より好ましくは0.2質量%~5質量%であり、更に好ましくは0.5質量%~3質量%であり、更に好ましくは0.5質量%~2質量%である。
【0027】
また、カーボンナノチューブ(A)の含有量は、樹脂組成物の全量に対し、好ましくは0.1質量%~15質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%である。
樹脂組成物の全量に対するカーボンナノチューブ(A)の含有量が0.1質量%以上である場合には、樹脂組成物の体積抵抗率を低減させる効果により優れる。
樹脂組成物の全量に対するカーボンナノチューブ(A)の含有量が15質量%以下、好ましくは10質量%以下である場合には、樹脂(B)の性能をより効果的に維持できる。
樹脂組成物の全量に対するカーボンナノチューブ(A)の含有量は、より好ましくは0.2質量%~5質量%であり、更に好ましくは0.5質量%~3質量%であり、更に好ましくは0.5質量%~2質量%である。
【0028】
<樹脂(B)>
本開示の樹脂組成物は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)のアイオノマー及びエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B2)からなる群より選択される少なくとも1種である樹脂(B)を含有する。樹脂組成物の体積抵抗率低減の観点から、樹脂(B)はエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B2)であることが好ましい。
本開示の樹脂組成物に含有される樹脂(B)は、1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
【0029】
(エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)のアイオノマー)
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)のアイオノマーは、ベースポリマーとしてのエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)中のカルボキシ基の少なくとも一部が、金属イオンで中和されている化合物である。
【0030】
ベースポリマーとしてのエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)は、少なくとも、エチレンと、不飽和カルボン酸と、を共重合させて得られる共重合体であり、エチレン単位(即ち、エチレンに由来する構造単位)と、不飽和カルボン酸単位(即ち、不飽和カルボン酸に由来する構造単位)と、を含んでいる。
【0031】
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであってもよい。
工業的に入手可能な観点から、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)は、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0032】
不飽和カルボン酸単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸単位、フマル酸単位、及びマレイン酸単位が挙げられる。
これらの中でも、不飽和カルボン酸単位は、(メタ)アクリル酸単位であることが好ましく、メタクリル酸単位であることが更に好ましい。
【0033】
ベースポリマーとしてのエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)における不飽和カルボン酸単位の含有量は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)の全量に対し、1質量%~25質量%が好ましく、3質量%~20質量%がより好ましく、5質量%~15質量%が更に好ましい。
【0034】
ベースポリマーとしてのエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)におけるエチレン単位の含有量は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)の全量に対し、75質量%~99質量%が好ましく、80質量%~97質量%がより好ましく、85質量%~95質量%が更に好ましい。
【0035】
ベースポリマーとしてのエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)は、エチレン単位及び不飽和カルボン酸単位以外のその他の構造単位を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
ベースポリマーとしてのエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)における、エチレン単位及び不飽和カルボン酸単位の総含有量は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)の全量に対し、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上である。エチレン単位及び不飽和カルボン酸単位の総含有量の上限値は特に限定されず、例えば100質量%である。
【0036】
ベースポリマーとしてのエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)に含まれていてもよいその他の構造単位としては、不飽和カルボン酸エステル単位が挙げられる。
不飽和カルボン酸エステル単位を形成するためのモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましく、アルキルエステル部分(即ち、アルコキシ基)の炭素数が1~10である(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。
不飽和カルボン酸エステル単位を形成するためのモノマーにおける、アルキルエステル部分(即ち、アルコキシ基)の炭素数は、より好ましくは1~8であり、更に好ましくは1~6であり、更に好ましくは1~4であり、更に好ましくは1又は2である。
不飽和カルボン酸エステル単位を形成するためのモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸イソヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、及び(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシルが挙げられる。
【0037】
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)のアイオノマーにおいて、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)(ベースポリマー)におけるカルボキシ基を中和するための金属イオンの種類には特に制限はない。
金属イオンとしては、例えば;
リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン等のアルカリ金属イオン;
マグネシウムイオン、カルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;
亜鉛イオン等の遷移金属イオン;及び
アルミニウムイオン等の各種金属イオン
が挙げられる。
【0038】
金属イオンとしては、亜鉛(Zn)イオン、マグネシウム(Mg)イオン及びナトリウム(Na)イオンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、亜鉛イオン及びナトリウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、亜鉛イオンが更に好ましい。
ベースポリマーにおけるカルボキシ基を中和するための金属イオンは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0039】
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)のアイオノマーの中和度は、90%以下であることが好ましく、5%~80%であることがより好ましく、10%~70%であることが更に好ましい。
中和度が90%以下であると、イオン凝集を適度に抑制でき、かつ、流動性の低下をより抑制でき、成形加工性をより好適に維持できる。
中和度が5%以上であると、アイオノマーとしての性能をより効果的に発揮することが可能である。
ここで、「中和度(%)」とは、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)(ベースポリマー)に含まれる全カルボキシ基のうち、金属イオンによって中和されているカルボキシ基の割合(モル%)を指す。
【0040】
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)は、JIS K7210-1:2014(ISO 1133-1:2011)に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定されたメルトフローレート(以下、単に「MFR(190℃、2160g荷重)」ともいう)が、0.1g/10分~300g/10分であることが好ましく、1g/10分~100g/10分であることがより好ましく、5g/10分~60g/10分であることが更に好ましい。
【0041】
(エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B2))
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B2)としては、前述のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)(ベースポリマー)と同様のものが挙げられ、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B2)の好ましい態様も、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)の好ましい態様と同様である。
【0042】
樹脂(B)は、JIS K7210-1:2014(ISO 1133-1:2011)に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定されたメルトフローレート(以下、単に「MFR(190℃、2160g荷重)」ともいう)が、0.1g/10分~300g/10分であることが好ましく、1g/10分~100g/10分であることがより好ましく、5g/10分~60g/10分であることが更に好ましい。
【0043】
樹脂(B)の含有量は、カーボンナノチューブ(A)及び樹脂(B)の総含有量に対し、好ましくは85質量%~99.9質量%、より好ましくは90質量%~99.9質量%である。
カーボンナノチューブ(A)及び樹脂(B)の総含有量に対する樹脂(B)の含有量が99.9質量%以下である場合には、樹脂組成物の体積抵抗率がより低減される。
カーボンナノチューブ(A)及び樹脂(B)の総含有量に対する樹脂(B)の含有量が85質量%以上、好ましくは90質量%以上である場合には、樹脂組成物において、樹脂(B)の性能がより効果的に維持される。
カーボンナノチューブ(A)及び樹脂(B)の総含有量に対する樹脂(B)の含有量は、より好ましくは95質量%~99.8質量%であり、更に好ましくは97質量%~99.5質量%であり、更に好ましくは98質量%~99.5質量%である。
【0044】
また、樹脂(B)の含有量は、樹脂組成物の全量に対し、好ましくは85質量%~99.9質量%、より好ましくは90質量%~99.9質量%である。
樹脂組成物の全量に対する樹脂(B)の含有量が99.9質量%以下である場合には、樹脂組成物の体積抵抗率がより低減される。
樹脂組成物の全量に対する樹脂(B)の含有量が85質量%以上、好ましくは90質量%以上である場合には、樹脂組成物において、樹脂(B)の性能がより効果的に維持される。
樹脂組成物の全量に対する樹脂(B)の含有量は、より好ましくは95質量%~99.8質量%であり、更に好ましくは97質量%~99.5質量%であり、更に好ましくは98質量%~99.5質量%である。
【0045】
<その他の成分>
本開示の樹脂組成物は、必要に応じ、カーボンナノチューブ(A)及び樹脂(B)以外のその他の成分を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。
但し、本開示の樹脂組成物の効果をより効果的に奏する観点から、カーボンナノチューブ(A)及び樹脂(B)の総含有量は、樹脂組成物の全量に対し、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは85質量%以上である。樹脂組成物の全量に対するカーボンナノチューブ(A)及び樹脂(B)の総含有量の上限値は特に限定されず、例えば100質量%である。
【0046】
本開示の樹脂組成物に含有され得るその他の成分としては、
樹脂(B)以外のその他の樹脂;及び
酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤、粘着剤、無機充填剤、有機充填剤、顔料、染料、難燃剤、難燃助剤、発泡剤、発泡助剤等の樹脂用添加剤
が挙げられる。
【0047】
また、本開示の樹脂組成物に含有され得るその他の成分としては、前述の特開2008―290936号公報、特表2012-507587号公報及び特表2014-511908号公報に記載されているような、可塑剤及びワックスも挙げられる。
但し、本開示の樹脂組成物は、樹脂(B)自体の作用によってカーボンナノチューブ(A)の良好な分散性が得られるので、可塑剤もワックスも含有しない態様とすることができる。また、本開示の樹脂組成物では、可塑剤及び/又はワックスを含有する場合においても、これら可塑剤及び/又はワックスの含有量を低減することができる。従って、本開示の樹脂組成物が可塑剤及び/又はワックスを含有する場合においても、可塑剤又はワックスのブリードアウト、樹脂の性能(例えば、機械物性)の劣化、等が抑制される。
【0048】
本開示の樹脂組成物を得る方法としては、カーボンナノチューブ(A)と、樹脂(B)と、必要に応じその他の成分と、を単軸押出機、二軸押出機、ミキサー、ニーダー等を用いて溶融混練する方法が挙げられる。
本開示の樹脂組成物は、後述する成形体の原料として好適である。
【0049】
〔成形体〕
本開示の成形体は、本開示の樹脂組成物を含む。
本開示の成形体は、本開示の樹脂組成物のみからなるものであってもよいし、本開示の樹脂組成物と他の成分とからなるものであってもよい。
また、本開示の成形体は、部材の一部であってもよいし全部であってもよい。
【0050】
本開示の成形体は、例えば、原料である本開示の樹脂組成物を、必要に応じ、他の成分と混合した後、公知の成形方法(例えば、プレス成形、押出成形、射出成形、フィルム成形、カレンダー成形、紡糸等)によって成形することにより製造される。
また、本開示の樹脂組成物をマスターバッチとして用い、このマスターバッチと樹脂(例えば、樹脂(B)、樹脂(B)以外の熱可塑性樹脂等)とを混合した組成物を用いて成形体を作製してもよい。
【0051】
〔樹脂組成物及び成形体の用途〕
上述した本開示の樹脂組成物及び成形体は、帯電防止性及び/又は導電性が要求されるあらゆる用途に適用可能である。
本開示の樹脂組成物及び成形体は、例えば、包装材料;トレイ等の容器;建築又は土木材料(例えば、天井材、壁材、床材等);自動車部品;自動車以外の車両用の部品;OA機器;電気・電子部品、家電製品部品、またはそれらの保管・収納ケース;電磁波遮蔽層;半導体製品又は半導体半製品を搬送するトレイ;半導体製品又は半導体半製品を梱包するための梱包材;文具;各種フィルム;スポーツ用品(例えばゴルフボール);及びその他の日用品に適用可能である。
【実施例0052】
以下、本開示の実施例を説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。以下、カーボンナノチューブ(A)を「(A)成分」と称することがあり、樹脂(B)を、「(B)成分」と称することがある。
【0053】
実施例および比較例で使用した各成分の詳細は、以下のとおりである。
以下において、MFR(190℃、2160g荷重)は、JIS K7210-1:2014(ISO 1133-1:2011)に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定されたメルトフローレートを意味し、MFR(230℃、2160g荷重)は、JIS K7210-1:2014(ISO 1133-1:2011)に準拠し、230℃、2160g荷重の条件で測定されたメルトフローレートを意味する。
【0054】
〔(A)成分:カーボンナノチューブ(A)〕
・CNT1:Nanocyl社製、「NC7000」(平均直径9.5nm、平均長さ1.5μm)
【0055】
〔(B)成分:エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)のアイオノマー及びエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B2)からなる群より選択される少なくとも1種である樹脂(B)〕
・EMAA1:エチレン・メタクリル酸共重合体(エチレン含量=92質量%、メタクリル酸含量(表1中では「酸含量」。以下同じ。)=8質量%、MFR(190℃、2160g荷重)=23g/10分)
・EMAA2:エチレン・メタクリル酸共重合体(エチレン含量=90質量%、メタクリル酸含量=10質量%、MFR(190℃、2160g荷重)=35g/10分)
・EMAA3:エチレン・メタクリル酸共重合体(エチレン含量=85質量%、メタクリル酸含量=15質量%、MFR(190℃、2160g荷重)=25g/10分)
・アイオノマー1:エチレン・メタクリル酸共重合体(エチレン含量=85質量%、メタクリル酸含量=15質量%)の亜鉛アイオノマー(中和度=21%、MFR(190℃、2160g荷重)=16g/10分)
【0056】
〔比較用樹脂〕
・PE1:株式会社プライムポリマー製「ハイゼックス1300J」(ポリエチレン、密度=960kg/m3、MFR(190℃、2160g荷重)=13g/10分)
・PP1:株式会社プライムポリマー製「F317DV」(ポリプロピレン、密度=900kg/m3、MFR(230℃、2160g荷重)=3g/10分)
【0057】
〔実施例1~16、比較例1~8〕
<樹脂組成物の製造(実施例4、実施例8、実施例12、及び実施例16)>
日本コークス工業株式会社製のFMミキサー(FM10C/I、容量:9dm3)に、表1及び表2に示す(A)成分及び(B)成分を、表1及び表2に示す配合割合にて投入し、攪拌温度140℃、攪拌時間60分、回転数1000rpmの条件で攪拌混合し、混合物を得た。
次に、出口に直径3mmのストランド取出し用穴付きのダイスを取り付けた二軸押出機(東芝機械株式会社製、TEM-35B〔スクリュー径:35mm、L/D:32、ベント式〕)を用い、上記混合物を、撹拌回転数100rpm、220℃の条件にて溶融混練することにより溶融混練物(即ち、5質量%の(A)成分及び95質量%の(B)成分からなる樹脂組成物)を得た。
得られた溶融混練物を、上記ダイスを通じて水中に押し出し、水中で冷却することにより、ストランドを得た。得られたストランドを、ストランドカッターで切断することにより、ペレットを得た。
【0058】
ここで、溶融混練物、ストランド、及びペレットは、それぞれ、樹脂組成物の一形態である。
【0059】
<樹脂組成物の製造(実施例1~3、実施例5~7、実施例9~11、及び実施例13~15)>
実施例4、実施例8、実施例12、又は実施例16で得られたペレットと成分(B)とを、(A)成分及び(B)成分の配合割合が表1及び表2に示す配合割合となるように、上記二軸押出機に投入し、これらを撹拌回転数100rpm、220℃の条件にて溶融混練することにより、各ペレットを構成する樹脂組成物を成分(B)によって希釈した。これにより、表1及び表2に示す(A)成分及び(B)成分の配合割合を有する溶融混練物(樹脂組成物)を得た。
得られた溶融混練物を用い、実施例4と同様にしてストランドを製造し、得られたストランドをストランドカッターで切断することにより、ペレットを得た。
【0060】
<樹脂組成物の製造(比較例4及び比較例8)>
(B)成分を表2に示す比較用樹脂に変更したこと以外は実施例4と同様にして、溶融混練物(即ち、5質量%の(A)成分及び95質量%の比較用樹脂からなる樹脂組成物)を得た。
得られた溶融混練物を用い、実施例4と同様にしてストランドを製造し、得られたストランドをストランドカッターで切断することにより、ペレットを得た。
【0061】
<樹脂組成物の製造(比較例1~3及び比較例5~7)>
比較例4又は比較例8で得られたペレットと比較用樹脂とを、(A)成分及び比較用樹脂の配合割合が表2に示す配合割合となるように、上記二軸押出機に投入し、これらを撹拌回転数100rpm、220℃の条件にて溶融混練することにより、各ペレットを構成する樹脂組成物を比較用樹脂によって希釈した。これにより、表2に示す(A)成分及び比較用樹脂の配合割合を有する溶融混練物(樹脂組成物)を得た。
得られた溶融混練物を用い、実施例4と同様にしてストランドを製造し、得られたストランドを、ストランドカッターで切断することにより、ペレットを得た。
【0062】
<評価>
各実施例及び各比較例で得られたストランド及びペレットを用い、以下の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0063】
(ストランドの外観((A)成分の分散性))
(A)成分の分散性を評価するための指標の一つとして、上記ストランドの外観を目視及び触感によって確認し、下記評価基準に基づき評価した。
下記評価基準において、(A)成分の分散性に最も優れる評点はAである。即ち、ストランド中において、(A)成分(カーボンナノチューブ)が良好にほぐれて分散されている場合には、評点Aとなる。
【0064】
-ストランド外観の評価基準-
A:スムースな外観であり、かつ、ザラザラ感がなかった。
B:ザラザラ感がわずかにあった。
C:明らかなザラザラ感があった。
【0065】
(体積抵抗率)
プレス成形機により、上記ペレットを220℃の条件でプレス成形することにより、厚さ1mmのシート状の成形体を作製した。
得られたシート状の成形体の体積抵抗率を、抵抗率計(株式会社三菱化学アナリテック製、ロレスタGPMCP-T610型)によって測定した。
体積抵抗率にも、(A)成分の分散性が関係している。即ち、シート状の成形体中において、(A)成分(カーボンナノチューブ)が良好にほぐれて分散されている場合には、体積抵抗率が低くなる。
【0066】
(MFR)
上記ペレットを用い、ペレットを構成する樹脂組成物のMFR(メルトフローレート)を測定した。
MFRは、メルトインデクサ(株式会社東洋精機製作所製)を用い、JIS K7210-1:2014(ISO 1133-1:2011)に準拠し、190℃、2160g荷重の条件で測定した。
【0067】
【0068】
【0069】
表1及び表2中、各成分の欄に示した数値は、樹脂組成物中における各成分の含有量(質量%)を意味する。
表1及び表2中の空欄は、該当する成分を含有しないことを意味する。
表1及び表2中、「3.00E+07」等の表記は、3.00×107等を表す。
【0070】
表1及び表2中、(A)成分(即ち、カーボンナノチューブ(A))と、(B)成分(即ち、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B1)のアイオノマー及びエチレン・不飽和カルボン酸共重合体(B2)からなる群より選択される少なくとも1種である樹脂(B))と、を含有する樹脂組成物を用いた実施例1~16では、ストランドの外観(即ち、(A)成分の分散性)に優れ、かつ、体積抵抗率が低減されていた。
これに対し、(B)成分に代えて比較用樹脂を用いた比較例1~8では、ストランドの外観(即ち、(A)成分の分散性)が劣化し、かつ、体積抵抗率が上昇する傾向が見られた。
具体的には、比較例1~8の結果から、(B)成分に代えて比較用樹脂を用いた場合には、(A)成分の含有量が増加するにつれ、ストランドの外観(即ち、(A)成分の分散性)が劣化することがわかる。
また、(A)成分の含有量が等しい実施例群及び比較例群を対比すると、比較例群では、実施例群と比較して、体積抵抗率が高い傾向がある。例えば、(A)成分の含有量が1質量%である実施例2、実施例6、実施例10、及び実施例14のいずれにおいても、1×103Ω・cm以下の体積抵抗率が達成されているのに対し、(A)成分の含有量が1質量%である比較例2及び6では、1×103Ω・cm以下の体積抵抗率が達成されていない。
【0071】
なお、2019年1月29日に出願された日本国特許出願2019-013411号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。また、本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。