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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086941
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20240621BHJP
【FI】
A01C11/02 313C
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024067337
(22)【出願日】2024-04-18
(62)【分割の表示】P 2022183426の分割
【原出願日】2017-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】米田 達弘
(72)【発明者】
【氏名】安田 真
(72)【発明者】
【氏名】福永 究
(72)【発明者】
【氏名】中森 俊輔
(57)【要約】
【課題】農用資材の供給間隔を適切に設定できるようにする。
【解決手段】原動部の動力が伝達される無段変速装置45と、無段変速装置45が設けられたミッションケースと、用資材を圃場に間欠的に供給する作業装置とが備えられた。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動部の動力が伝達される無段変速装置と、
前記無段変速装置が設けられたミッションケースと、
農用資材を圃場に間欠的に供給する作業装置とが備えられた作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型田植機や乗用型直播機等のように、苗や種子、肥料や薬剤等の農用資材を圃場に供給する作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
水田作業機の一例である乗用型田植機では、特許文献1に開示されているような構成を備えたものがある。特許文献1では、エンジン(原動部に相当)の動力が変速装置に伝達され、変速装置の動力が並列的に分岐されて、走行用の車輪及び苗植付装置(作業装置に相当)に伝達されている。
【0003】
これにより、機体の走行方向に沿って事前に設定された株間(供給間隔に相当)で、苗植付装置により苗(農用資材に相当)が田面に植え付けられるのであり、変速装置が操作されて機体の走行速度が変化しても、苗植付装置に伝達される動力は変速装置の動力であるので、苗植付装置による株間は一定間隔に維持される。
特許文献1では、変速装置の動力が、株間変速装置を通って苗植付装置に伝達されており、株間変速装置を操作することによって、株間を所望の間隔に設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-70653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、株間変速装置が、ギヤ変速型式の複数段の変速位置を備えた変速装置である。近年では、水田や農用資材の状態等に応じて、供給間隔を適切に設定したいという要望が高まっている。
【0006】
本発明は、機体の走行方向に沿って事前に設定された供給間隔で、農用資材を圃場に間欠的に供給する作業装置を備えた水田作業機において、供給間隔を適切に設定することができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の作業機は、原動部の動力が伝達される無段変速装置と、前記無段変速装置が設けられたミッションケースと、農用資材を圃場に間欠的に供給する作業装置とが備えられた。
また、本発明の水田作業機は、原動部の動力が伝達される無段変速装置と、前記無段変速装置が設けられたミッションケースと、機体の走行方向に沿って事前に設定された供給間隔で、農用資材を田面に間欠的に供給する作業装置とが備えられ、前記ミッションケースの内部において、作業伝動系の動力が前記無段変速装置を通って前記作業装置に伝達され、前記ミッションケースの内部における前記無段変速装置の下流側に、前記無段変速装置からの動力の回転数を検出する作業回転数検出部が備えられ、前記作業回転数検出部の検出結果に基づいて、前記農用資材の供給間隔が、前記設定された供給間隔となるように、前記無段変速装置がアクチュエータにより微調節される。
また、本発明の水田作業機は、
原動部の動力が伝達される変速装置と、
機体の走行方向に沿って事前に設定された供給間隔で、農用資材を田面に間欠的に供給する作業装置とが備えられ、
前記変速装置の動力が走行伝動系及び作業伝動系に並列的に分岐されて、前記走行伝動系の動力が走行用の車輪に伝達され、前記作業伝動系の動力が無段変速装置を通って前記作業装置に伝達され、前記無段変速装置の下流側に、前記無段変速装置からの動力の回転数を検出する作業回転数検出部が備えられている。
【0008】
本発明によると、作業伝動系の動力が無段変速装置を通って作業装置に伝達されるのであり、無段変速装置を操作することにより、無段変速委装置の最高速位置と最低速位置との間において、多くの供給間隔を設定することができる。
これにより、水田や農用資材の状態等に応じて、供給間隔を細かく適切に設定することができるようになって、水田作業機の作業精度を向上させることができる。
【0009】
本発明によると、無段変速装置からの動力の回転数を検出する作業回転数検出部が、無段変速装置の下流側に備えられている。
これにより、無段変速装置からの動力の回転数を適切に検出することができるので、無段変速装置を操作する際において、無段変速装置の操作位置の検出用(フィードバック用)として、作業回転数検出部を使用することができる。
【0010】
例えば、静油圧式の無段変速装置における作動油のリークや、ベルト式の無段変速装置における伝動ベルトの滑り等のように、無段変速装置では、ギヤ変速型式の変速装置に比べて、動力の伝達ロスが生じることがある。
【0011】
本発明のように、無段変速装置からの動力の回転数を検出する作業回転数検出部が、無段変速装置の下流側に備えられていると、動力の伝達ロスが含まれた無段変速装置の実際の回転数を検出することができるので、無段変速装置における動力の伝達ロスの修正用として、作業回転数検出部を使用することができる。
【0012】
本発明において、
入力される動力に対して出力される動力の角速度を変化させる不等速変速装置が備えられて、
前記無段変速装置の動力が、前記不等速変速装置を通って前記作業装置に伝達されると好適である。
【0013】
例えば水田作業機の一例である乗用型田植機において、苗植付装置(作業装置)の株間(供給間隔)を特に大きなもの設定したり、特に小さなものに設定すると、苗植付装置の作動速度(植付アームの回転速度)が低速になり過ぎたり、高速になり過ぎたりして、苗を田面に適切に植え付けられない状態になることがある。
【0014】
本発明によると、無段変速装置の動力が不等速変速装置を通って作業装置に伝達されるので、作業装置の作動速度が特に低速(高速)であっても、農用資材が田面に供給される付近での作業装置の作動速度を、不等速変速装置によって適切な値となるようにすることができる。
これにより、例えば苗植付装置において、株間を特に大きなものに設定した場合や、特に小さなものに設定した場合、苗を田面に適切に植え付けられない状態を避けることができる。
【0015】
本発明において、
前記無段変速装置の下流側で、且つ、前記不等速変速装置の上流側において、前記作業回転数検出部が、前記無段変速装置と前記不等速変速装置との間の伝動系の回転数を検出すると好適である。
【0016】
前述のように、無段変速装置の動力が不等速変速装置を通って作業装置に伝達される構成において、本発明によると、不等速変速装置の影響を受けることなく、無段変速装置からの動力の回転数を適切に検出することができる。
【0017】
本発明において、
前記走行伝動系の動力が、副変速装置を通って前記車輪に伝達され、
前記副変速装置の上流側において、前記走行伝動系及び前記作業伝動系の分岐点と前記副変速装置との間の伝動系の回転数を検出する走行回転数検出部が備えられていると好適である。
【0018】
変速装置からの動力をそのまま走行伝動系に伝達すると、車輪に伝達される動力の回転数が高くなることがあるので、走行伝動系の動力を、副変速装置により減速して車輪に伝達するように構成することがある。
【0019】
前述の構成において、走行伝動系の回転数を検出する場合、本発明によると、副変速装置の上流側において、走行伝動系及び作業伝動系の分岐点と副変速装置との間の伝動系の回転数を、走行回転数検出部により検出している。
【0020】
これにより、走行伝動系の回転数を、副変速装置により減速される前の高速状態で検出することができるのであり、走行伝動系の回転数を精度よく検出することができる。検出した走行伝動系の回転数は、機体の走行速度の表示や、作業伝動系の無段変速装置の操作に、有効に利用することができる。
【0021】
本発明において、
前記無段変速装置が、静油圧式の無段変速装置であると好適である。
【0022】
本発明によると、無段変速装置が静油圧式の無段変速装置であるので、静油圧式の無段変速装置を操作することによって、作業装置に伝達される動力を少しだけ高速側に変速したり、少しだけ低速側に変速したりというような、細かな変速を無理なく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】乗用型田植機の側面図である。
図2】乗用型田植機の平面図である。
図3】ミッションケースにおいて走行伝動系の付近を示す横断平面図である。
図4】ミッションケースにおいて作業伝動系の付近を示す横断平面図である。
図5】制御装置と各部との連係状態を示す図である。
図6】ミッションケースの側面図である。
図7】ミッションケースの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態において、水田で植付作業を行う水田作業機の一例である乗用型田植機が示されている。
本発明の実施形態における前後方向及び左右方向は、特段の説明がない限り、以下のように記載している。機体11の走行時における前進側の進行方向が「前」であり、後進側の進行方向が「後」である。前後方向での前向き姿勢を基準として右側に相当する方向が「右」であり、左側に相当する方向が「左」である。
【0025】
(乗用型田植機の全体構成)
図1及び図2に示すように、乗用型田植機は、右及び左の前輪1(走行用の車輪に相当)、右及び左の後輪2(走行用の車輪に相当)を備えた機体11の後部に、リンク機構3及びリンク機構3を昇降駆動する油圧シリンダ4が備えられ、リンク機構3の後部に苗植付装置5(作業装置に相当)が支持されている。
【0026】
苗植付装置5は、左右方向に所定間隔を置いて配置された植付伝動ケース6、植付伝動ケース6の後部の右側部及び左側部に回転自在に支持された回転ケース7、回転ケース7の両端に備えられた一対の植付アーム8、フロート9及び苗のせ台10等を備えている。
【0027】
右及び左のマーカー12が、苗植付装置5の右及び左の横側部に備えられている。マーカー12は、田面G(図5参照)に接地する作用姿勢(図1参照)、及び田面Gから上方に離れた格納姿勢に変更自在であり、マーカー12の先端部に回転体12aが回転自在に支持されている。マーカー12の作用姿勢において、マーカー12の回転体12aが田面Gに接地するのであり、機体11の走行に伴ってマーカー12の回転体12aが、回転しながら田面Gに指標を形成する。
【0028】
(運転部の付近の構成)
図1及び図2に示すように、機体11に、運転座席13、及び前輪1を操向操作する操縦ハンドル14が備えられている。
【0029】
機体11の前部の右部及び左部に右及び左の支持フレーム16が備えられており、支持フレーム16に予備苗のせ台15が支持されている。右及び左の支持フレーム16の上部に亘って、支持フレーム17が連結されている。
【0030】
支持フレーム17において、平面視で機体11の左右中央CLに位置する部分に、計測装置18が取り付けられている。計測装置18に、衛星測位システムにより位置情報を取得する受信装置(図示せず)、機体11の傾き(ピッチ角及びロール角)を検出する慣性計測装置(図示せず)が備えられており、計測装置18は機体11の位置を示す測位データを出力する。
【0031】
右及び左の後輪2を支持する後車軸ケース22において、平面視で機体11の左右中央CLに位置する部分に、慣性情報を計測する慣性計測装置19が取り付けられている。慣性計測装置19及び計測装置18の慣性計測は、IMU(Inertial Measurement Unit)により構成されている。
【0032】
前述の衛星測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)には、代表的なものとしてGPS(Global Positioning System)がある。GPSは、地球の上空を周回する複数のGPS衛星や、GPS衛星の追跡と管制を行う管制局や、測位を行う対象(機体11)が備える受信装置を使用して、計測装置18の受信装置の位置を計測するものである。
【0033】
慣性計測装置19は、機体11のヨー角度の角速度を検出可能なジャイロセンサー(図示せず)、及び、互いに直交する3軸方向の加速度を検出する加速度センサー(図示せず)を備えている。慣性計測装置19により計測される慣性情報には、ジャイロセンサーにより検出される方位変化情報と、加速度センサーにより検出される位置変化情報とが含まれている。
これにより、計測装置18及び慣性計測装置19によって、機体11の位置及び機体11の方位が検出される。
【0034】
(ミッションケースの付近の構成)
図1に示すように、機体11の前部に、ミッションケース20が支持されており、ミッションケース20の右及び左の横側部に連結された前車軸ケース21に、右及び左の前輪1が支持されている。機体11の後部に、後車軸ケース22が支持されており、後車軸ケース22に右及び左の後輪2が支持されている。
【0035】
図1及び図3に示すように、ミッションケース20の前部に、エンジン23(原動部に相当)が支持されている。ミッションケース20の左の横側部に、静油圧型式の無段変速装置24(変速装置に相当)が連結されており、エンジン23の動力が伝動ベルト25を介して無段変速装置24の入力軸24aに伝達される。
【0036】
無段変速装置24は、中立位置、前進側及び後進側に無段階に変速自在に構成されており、操縦ハンドル14の左の横側に備えられた変速レバー30により、無段変速装置24を操作する。
【0037】
図6及び図7に示すように、ミッションケース20の右及び左の横壁部の外面に、上下方向に沿った複数のフィン20aが備えられている。ミッションケース20の底部の外面に、前後方向に沿った複数のフィン20bが備えられている。ミッションケース20のフィン20a,20bにより、ミッションケース20の放熱が促進されて、ミッションケース20の内部の作動油の温度上昇が抑えられる。
【0038】
ミッションケース20のフィン20aが上下方向に沿っていることにより、ミッションケース20のフィン20aに泥が付着しかけても、泥は下側に落ち易い。ミッションケース20のフィン20bが前後方向に沿っていることにより、前輪1から後側に飛ばされた泥が、ミッションケース20のフィン20bに滞留し難い。
【0039】
(前輪及び後輪への走行伝動系の構成)
図3に示すように、ミッションケース20の右の横側部に、ポンプ26が連結されており、ポンプ26は油圧シリンダ4に作動油を供給する。無段変速装置24の入力軸24aがミッションケース20に入り込んでおり、ポンプ26の入力軸26aと、無段変速装置24の入力軸24aとに亘って伝動軸27が連結されている。
【0040】
ミッションケース20の内部に、伝動軸28,29が左右方向に沿って支持されて、無段変速装置24の出力軸24bが伝動軸28の端部に連結されている。ミッションケース20の内部において、伝動軸28,29に亘って、ギヤ変速型式の副変速装置31が備えられている。
【0041】
副変速装置31は、伝動軸28に連結された低速ギヤ32及び高速ギヤ33、スプライン構造により伝動軸29に一体回転及びスライド自在に外嵌されたシフトギヤ34を備えている。運転座席13の近傍に備えられた副変速レバー(図示せず)により、シフトギヤ34をスライド操作することができる。
【0042】
副変速装置31において、シフトギヤ34を低速ギヤ32に咬合させると、伝動軸28の動力が低速状態で伝動軸29に伝達され、シフトギヤ34を高速ギヤ33に咬合させると、伝動軸28の動力が高速状態で伝動軸29に伝達される。
水田において植付作業を行う場合、副変速装置31を低速状態に操作するのであり、路上等において高速で走行する場合、副変速装置31を高速状態に操作する。
【0043】
右及び左の前輪1に動力を伝達する右及び左の前車軸35が、ミッションケース20及び前車軸ケース21に亘って支持されており、右及び左の前車軸35の間に、前輪デフ装置36が備えられている。伝動軸29に連結された伝動ギヤ37と、前輪デフ装置36のケース36aに連結された伝動ギヤ38とが咬合している。
【0044】
ミッションケース20の後部に出力軸39が前後方向に沿って支持されており、前輪デフ装置36のケース36aに連結されたベベルギヤ40と、出力軸39の前部に形成されたベベルギヤ39aとが咬合している。
【0045】
図1及び図3に示すように、出力軸39の後部に、伝動軸41が自在継手(図示せず)を介して連結されており、伝動軸41の後部が、自在継手(図示せず)を介して、後車軸ケース22の入力軸(図示せず)に連結されている。
【0046】
以上の構成により、無段変速装置24で変速された動力が、無段変速装置24の出力軸24bから、伝動軸28、副変速装置31、伝動軸29、伝動ギヤ37,38、前輪デフ装置36及び前車軸35を介して、右及び左の前輪1に伝達される。
前輪デフ装置36に伝達された動力が、ベベルギヤ40、出力軸39(ベベルギヤ39a)、伝動軸41、後車軸ケース22の内部の伝動軸(図示せず)を介して、右及び左の後輪2に伝達される。
【0047】
出力軸39に、多板型式のブレーキ42が外嵌されており、図2に示すブレーキペダル43を踏み操作することにより、ブレーキ42を制動状態に操作することができる。ブレーキ42により出力軸39に制動を掛けることによって、前輪1及び後輪2に制動を掛けることができる。
【0048】
デフロック部材44が、キー構造により左の前車軸35に一体回転及びスライド自在に外嵌されている。運転座席13の下側に備えられたデフロックペダル(図示せず)を踏み操作することにより、デフロック部材44をスライド操作して前輪デフ装置36のケース36aに咬合させることによって、前輪デフ装置36をデフロック状態に操作することができる。
【0049】
以上の構成により、無段変速装置24(変速装置)の動力が走行伝動系及び作業伝動系に並列的に分岐されて、走行伝動系の動力が前輪1及び後輪2(走行用の車輪)に伝達される状態となっている。
走行伝動系の動力が、副変速装置31を通って前輪1及び後輪2(走行用の車輪)に伝達される状態となっている。
【0050】
(苗植付装置への作業伝動系の構成)
図4に示すように、ミッションケース20の右の横側部に、静油圧型式の無段変速装置45が連結されており、無段変速装置45の入力軸45aと伝動軸28とが連結されている。無段変速装置45の入力軸45aがミッションケース20の反対側に突出しており、無段変速装置45に冷却風を送るファン46が、無段変速装置45の入力軸45aの突出部に連結されている。
【0051】
無段変速装置45の出力軸45bに伝動軸47が連結されている。ミッションケース20の内部に、伝動軸48,49が左右方向に沿って支持されており、伝動軸49の端部が伝動軸47と同芯状に相対回転自在に支持されている。
【0052】
2組のギヤを備えた伝動ギヤ50が、伝動軸48の外側に回転自在に外嵌されている。
伝動軸47に形成された伝動ギヤ47aと、伝動ギヤ50の大径ギヤ部分とが咬合し、伝動軸49に連結された伝動ギヤ51と、伝動ギヤ50の小径ギヤ部分とが咬合している。
【0053】
ミッションケース20の内部において、伝動軸48,49に亘って、ギヤ変速型式の不等速変速装置52が備えられており、伝動軸48にベベルギヤ53が連結されている。ミッションケース20の後部に出力軸54が前後方向に沿って支持され、ベベルギヤ55が出力軸54の前部に植付クラッチ56を介して外嵌されており、ベベルギヤ53,55が咬合している。
【0054】
図1及び図4に示すように、出力軸54の後部に、伝動軸57が自在継手(図示せず)を介して連結されており、伝動軸57の後部が、自在継手(図示せず)を介して、苗植付装置5の入力軸(図示せず)に連結されている。
【0055】
以上の構成により、無段変速装置24で変速された動力が、無段変速装置24の出力軸24bから、伝動軸28及び無段変速装置45の入力軸45aを介して、無段変速装置45に伝達される。
【0056】
無段変速装置45で変速された動力が、無段変速装置45の出力軸45bから、伝動軸47(伝動ギヤ47a)、伝動ギヤ50,51、伝動軸49、不等速変速装置52、伝動軸48、ベベルギヤ53,55、植付クラッチ56、出力軸54、伝動軸57を介して、苗植付装置5に伝達される。
【0057】
植付クラッチ56を伝動状態に操作すると、苗植付装置5に動力が伝達されて、苗植付装置5が作動する。
苗植付装置5が作動すると、図2に示すように、苗のせ台10が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、回転ケース7が図5の反時計方向に回転駆動され、2組の植付アーム8が、苗のせ台10の下部から交互に苗A(農用資材に相当)を取り出して田面Gに植え付ける。これにより、図5に示すように、機体11の走行方向F1に沿って、事前に設定された設定株間L1(供給間隔に相当)で、苗Aが田面Gに間欠的に植え付けられる。
植付クラッチ56を遮断状態に操作すると、苗植付装置5への動力が遮断されて、苗植付装置5が停止し、苗のせ台10及び回転ケース7が停止する。
【0058】
以上の構成により、無段変速装置24(変速装置)の動力が走行伝動系及び作業伝動系に並列的に分岐されて、作業伝動系の動力が無段変速装置45及び不等速変速装置52を通って、苗植付装置5(作業装置)に伝達される状態となっている。
【0059】
(不等速変速装置の構成)
図4に示すように、不等速変速装置52は、伝動軸49に連結された等速ギヤ58及び不等速ギヤ59、伝動軸48に相対回転自在に外嵌された等速ギヤ60及び不等速ギヤ61を備えており、等速ギヤ58,60が咬合し、不等速ギヤ59,61が咬合している。
【0060】
変速部材62が伝動軸48の内部にスライド自在に支持されており、変速部材62をスライド操作して、ボールを等速ギヤ60及び不等速ギヤ61に係合させることにより、ボールを係合させた等速ギヤ60及び不等速ギヤ61を、伝動軸48に連結状態とすることができる。
【0061】
等速ギヤ58,60は、円形ギヤで同径である。これにより、変速部材62によりボールを等速ギヤ60に係合させると、伝動軸49の1回転の動力が、角速度の等速状態で1回転の動力として伝動軸48に伝達される。
【0062】
不等速ギヤ59,61は、楕円ギヤ、偏芯ギヤ又は非円形ギヤである。これにより、変速部材62によりボールを不等速ギヤ61のうちの一つに係合させると、伝動軸49の1回転の動力が1回転の動力として伝動軸48に伝達されるのであるが、1回転のうち角速度が高低に変化する。
【0063】
不等速ギヤ59,61が偏芯ギヤである場合、一つの偏芯ギヤにおいてギヤ歯の転位が複数設定されており、ギヤ歯によって転位が異なるものに設定されている。これにより、不等速ギヤ59,61のバックラッシのバラ付きを少なくすることができて、不等速ギヤ59,61による動力の伝達を滑らかなものにすることができる。
【0064】
(無段変速装置を操作する制御系の構成)
図5に示すように、機体11に制御装置63が備えられている。設定株間L1を設定する設定部64が、運転座席13又は操縦ハンドル14の近傍に備えられて、設定部64の操作信号が制御装置63に入力されている。
【0065】
設定部64は作業者が人為的に操作する操作レバーの型式であり、最大間隔L11と最小間隔L12との間において、作業者が、設定株間L1を無段階に任意に設定(選択)することができる。
【0066】
図4及び図5に示すように、ギヤ歯状の回転体49aが、伝動軸49と一体で回転するように伝動軸49に連結されている。伝動軸49の回転体49aに対して、ピックアップセンサー型式の作業回転数検出部65が備えられており、作業回転数検出部65の検出値が制御装置63に入力されている。
【0067】
これにより、無段変速装置45の下流側で、且つ、不等速変速装置52の上流側において、無段変速装置45と不等速変速装置52との間の伝動系(伝動軸49)の回転数が、無段変速装置45からの動力の回転数として作業回転数検出部65によって検出されて、制御装置63に入力される。
【0068】
ギヤ歯状の回転体28aが、伝動軸28と一体で回転するように伝動軸28に連結されている。伝動軸28の回転体28aに対して、ピックアップセンサー型式の走行回転数検出部66が備えられており、走行回転数検出部66の検出値が制御装置63に入力されている。
【0069】
これにより、副変速装置31の上流側において、走行伝動系及び作業伝動系の分岐点(伝動軸28)と副変速装置31との間の伝動系の回転数を検出する走行回転数検出部66が備えられた状態となっている。
【0070】
無段変速装置45の斜板(図示せず)の角度を変更して無段変速装置45を操作する電動モータ型式のアクチュエータ67が備えられており、制御装置63からアクチュエータ67に操作信号が出力される。
【0071】
制御装置63に、スリップ率検出部68、制御部69、タイマー70、第1走行距離検出部71、第2走行距離検出部72、供給間隔検出部73が、ソフトウェアとして備えられている。
【0072】
(スリップ率の検出)
水田において植付作業を行う場合、前輪1及び後輪2にスリップが発生するので、スリップ率検出部68において、以下説明のようにスリップ率が検出される。
【0073】
この場合、前輪1及び後輪2のスリップが発生した状態とは、前輪1及び後輪2が空転するような状態となり、前輪1及び後輪2が回転している割に、機体11が前進していない状態である。
【0074】
植付作業において、ある第1時点と、第1時点から設定時間が経過した次の第2時点とが、タイマー70により検出される。
第1時点から第2時点において、計測装置18及び慣性計測装置19による機体11の位置及び機体11の方位の検出に基づいて、第1走行距離検出部71により、機体11の実際の走行距離が検出される。この場合、第1走行距離検出部71の検出値には、前輪1及び後輪2のスリップが含まれている。
【0075】
第1時点から第2時点において、前輪1及び後輪2の外径と、走行回転数検出部66の検出値(前輪1及び後輪2の回転数)とによって、第2走行距離検出部72により、機体11の走行距離が検出(演算)される。この場合に、第2走行距離検出部72の検出値には、前輪1及び後輪2のスリップは含まれていない。
【0076】
スリップ率検出部68により、第1走行距離検出部71の検出値と、第2走行距離検出部72の検出値とが比較される。
前輪1及び後輪2のスリップが発生していると、第1走行距離検出部71の検出値が、第2走行距離検出部72の検出値よりも小さくなるのであり、第1走行距離検出部71及び第2走行距離検出部72の検出値の差が大きくなるほど、前輪1及び後輪2のスリップが多く発生していると判断できる。
【0077】
これにより、第1走行距離検出部71の検出値と、第2走行距離検出部72の検出値とに基づいて、スリップ率検出部68によりスリップ率が検出される。
第1時点から第2時点までのスリップ率が検出されると、第2時点から設定時間が経過した次の第3時点までのスリップ率が検出されるのであり、スリップ率の検出が連続的に繰り返して行われる。
【0078】
(植付作業の開始時における株間の設定)
水田において植付作業を行う場合、以下のような操作が行われる。
植付作業の開始時において、前述の(無段変速装置を操作する制御系の構成)に記載のように、作業者は、設定部64により設定株間L1を設定(選択)する。
【0079】
設定部64により設定株間L1が設定された状態において、植付作業を開始すると、設定株間L1に対応して、制御部69からアクチュエータ67に操作信号が出力され、アクチュエータ67により無段変速装置45が操作される。
この段階では、前輪1及び後輪2のスリップは考慮されていないので、無段変速装置45の変速位置は一義的に決まるのであり、設定株間L1に対応した変速位置に、無段変速装置45が操作される。
【0080】
無段変速装置45では作動油のリークが生じることがあるので、無段変速装置45の出力軸45bの回転数が、設定株間L1に対応する変速位置での回転数よりも少し低速になり、この分だけ実際の株間L(供給間隔に相当)は、設定株間L1よりも少し大きくなることがある。
【0081】
この場合、作業回転数検出部65の検出値(無段変速装置45の出力軸45bの回転数)に基づいて、無段変速装置45の出力軸45bの回転数が、設定株間L1に対応する回転数となるように、無段変速装置45が、設定株間L1に対応する変速位置においてアクチュエータ67により微調節される。
【0082】
(植付作業においてスリップ率の検出に基づく株間の調節)
植付作業の進行に伴って、スリップ率検出部68によりスリップ率が検出されるのに伴って、実際の株間Lが設定株間L1となるように、無段変速装置45が以下の説明のように自動的に操作される。
【0083】
前項の(植付作業の開始時における株間の設定)に記載のように、無段変速装置45が設定株間L1に対応する変速位置に操作された状態において、植付作業の進行に伴って、前項の(スリップ率の検出)に記載のように、スリップ率検出部68によりスリップ率が検出される。
【0084】
作業回転数検出部65の検出値(無段変速装置45の出力軸45bの回転数)と、走行回転数検出部66の検出値(前輪1及び後輪2の回転数)とに基づいて、供給間隔検出部73により、実際の株間Lが検出される。
具体的は、スリップ率に相当する長さが演算されて、設定株間L1から、スリップ率に相当する長さが差し引かれて、実際の株間Lが検出される。
【0085】
これにより、供給間隔検出部73により検出される実際の株間Lが設定株間L1となるように、制御部69からアクチュエータ67に操作信号が出力され、アクチュエータ67により無段変速装置45が操作される。
【0086】
(設定株間に基づく不等速変速装置の操作)
設定部64により設定された設定株間L1が特に大きなものではない場合や、特に小さなものではない場合、作業者は、不等速変速装置52において、等速ギヤ58,60による動力が伝達される状態を設定しておけばよい。
【0087】
設定部64により設定された設定株間L1が特に大きなものである場合や、特に小さなものである場合、作業者は、不等速変速装置52において変速部材62をスライド操作して、不等速ギヤ59,61のうち、設定部64により設定された設定株間L1に適した不等速ギヤ59,61を選択すればよい(伝動軸48に連結状態とすればよい)。
【0088】
設定部64により設定された設定株間L1が特に大きなものである場合、回転ケース7の回転速度が低速になり過ぎる。
これにより、植付アーム8による苗のせ台10からの苗Aの取り出しから、植付アーム8による苗Aの田面Gへの植え付けまでの領域において、不等速変速装置52により、回転ケース7の回転速度を少し高速にすることができ、苗Aが田面Gに適切に植え付けられるようにすることができる。
【0089】
設定部64により設定された設定株間L1が特に小さなものである場合、回転ケース7の回転速度が高速になり過ぎる。
これにより、植付アーム8による苗のせ台10からの苗Aの取り出しから、植付アーム8による苗Aの田面Gへの植え付けまでの領域において、不等速変速装置52により、回転ケース7の回転速度を少し低速にすることができ、苗Aが田面Gに適切に植え付けられるようにすることができる。
【0090】
(発明の実施の第1別形態)
前述の(植付作業の開始時における株間の設定)において、無段変速装置45の作動油のリークに基づいて、無段変速装置45を、設定株間L1に対応する変速位置においてアクチュエータ67により微調節する操作を、行わなくてもよい。
【0091】
このように構成すると、前述の(植付作業においてスリップ率の検出に基づく株間の調節)において、供給間隔検出部73により実際の株間Lが検出されると、無段変速装置45の作動油のリーク、及び、前輪1及び後輪2のスリップの両方が考慮された状態で、供給間隔検出部73により実際の株間Lが検出される。
【0092】
この場合、無段変速装置45の作動油のリークが小さく、前輪1及び後輪2のスリップが大きい場合、設定部64により設定された設定株間L1よりも、実際の株間Lが小さくなることがある。
逆に無段変速装置45の作動油のリークが大きく、前輪1及び後輪2のスリップが小さい場合、設定部64により設定された設定株間L1よりも、実際の株間Lが大きくなることがある。
【0093】
(発明の実施の第2別形態)
計測装置18及び慣性計測装置19を廃止してもよい。
この構成において、第1走行距離検出部71により機体11の実際の走行距離を検出する場合、マーカー12の回転体12aに回転数センサー(図示せず)を設け、機体11の走行に伴って、マーカー12の回転体12aが田面Gに接地して回転する際の回転数を検出することにより、機体11の実際の走行距離を検出すればよい。
【0094】
マーカー12の回転体12aに代えて、田面Gに接地して回転する専用の回転体(図示せず)を、機体11や苗植付装置5に設けて、この回転体の回転数を検出するように構成してもよい。
【0095】
(発明の実施の第3別形態)
設定部64において、作業者が、複数の異なる設定株間L1から、一つの設定株間L1を設定(選択)するように構成してもよい。
【0096】
(発明の実施の第4別形態)
作業者が不等速変速装置52を手動で操作するのではなく、設定部64による設定株間L1の設定(選択)に基づいて、不等速変速装置52が適切な操作位置に自動的に操作されるように構成してもよい。
【0097】
(発明の実施の第5別形態)
ミッションケース20において、ミッションケース20の右の横側部に、無段変速装置24を設け、ミッションケース20の左の横側部に、無段変速装置45を設けてもよい。
【0098】
無段変速装置24に代えて、複数段の変速位置を備えたギヤ変速型式の変速装置(図示せず)を設けてもよい。静油圧型式の無段変速装置45に代えて、ベルト無段型式の無段変速装置45を設けてもよい。
【0099】
ミッションケース20の内部において、伝動軸28,29,47,48,49等を、左右方向ではなく前後方向に配置するように構成してもよい。
エンジン23に代えて、電動モータ(図示せず)を原動部として使用してもよい。
【0100】
(発明の実施の第6別形態)
図4に示すように、ミッションケース20の内部において、作業回転数検出部65により、伝動軸47(伝動ギヤ47a)の回転数や、伝動ギヤ50,51の回転数を検出するように構成してもよい。
【0101】
ミッションケース20の内部において、伝動軸28の動力を、伝動ギヤ(図示せず)を介して中間伝動軸(図示せず)に伝達し、中間伝動軸と伝動軸29との間に副変速装置31を備えてもよい。
この構造において、走行回転数検出部66により、中間伝動軸の回転数を検出するように構成してもよい。
【0102】
(発明の実施の第7別形態)
例えば一つの水田において、使用される苗Aの総量が決まっている場合、この総量に相当する苗Aを過不足なく田面Gに植え付けるように、実際の株間Lを微調節するという操作を行うことが可能である。
【0103】
前述の作業を行う場合、水田の面積のデータや、機体11をどのような経路で走行させて植付作業を行うかという植付行程のデータを事前に取得しておくと、これらのデータと苗Aの総量とにより、必要な株間Lが演算される。
【0104】
これにより、作業者が設定部64により設定株間L1を設定(選択)した場合、設定部64により設定された設定株間L1が、前述の必要な株間Lから大きく外れていると、必要な株間Lに近い設定株間L1を設定部64により設定するべきことが、作業者に報知される(作業者への注意喚起及び誤解防止の為)。
前述の状態で植付作業を開始すると、実際の株間Lが、前述の必要な株間Lとなるように、無段変速装置45が自動的に操作される。
【0105】
(発明の実施の第8別形態)
例えば一つの水田を小さな領域に区分し、水田の領域の各々において、前年度の稲の生育状態や収穫量が、データとして蓄積されていることがある。
前述の状態において、同じ水田での次年度の植付作業を行う場合、計測装置18及び慣性計測装置19の検出に基づいて、水田の領域の各々において適した実際の株間Lで、植付作業が行われるように、無段変速装置45が自動的に操作することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は乗用型田植機ばかりではなく、田面Gに種子(農用資材に相当)を供給する播種装置(作業装置に相当)を備えた乗用型直播機にも適用できる。本発明は、田面Gに肥料(農用資材に相当)を供給する施肥装置(作業装置に相当)や、田面Gに薬剤(農用資材に相当)を供給する薬剤供給装置(作業装置に相当)を備えた水田作業機にも適用できる。
【符号の説明】
【0107】
1 前輪(車輪)
2 後輪(車輪)
5 苗植付装置(作業装置)
11 機体
23 エンジン(原動部)
24 無段変速装置(変速装置)
31 副変速装置
45 無段変速装置
52 不等速変速装置
65 作業回転数検出部
66 走行回転数検出部
A 苗(農用資材)
G 田面
L 株間(供給間隔)
L1 設定株間(供給間隔)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7