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特開2024-86942食品原料およびその製造方法ならびに食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086942
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】食品原料およびその製造方法ならびに食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20240621BHJP
   A23F 5/10 20060101ALI20240621BHJP
   A23G 1/32 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A23L5/00 J
A23L5/00 K
A23F5/10
A23G1/32
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024067383
(22)【出願日】2024-04-18
(62)【分割の表示】P 2023576173の分割
【原出願日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2022187933
(32)【優先日】2022-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592113809
【氏名又は名称】カバヤ食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】柳 智絵
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、コーヒーの抽出残渣を利用しつつも従前のコーヒーの抽出残渣の発酵物よりもカカオの風味を出しやすい食品原料を提供することにある。
【解決手段】本発明に係る食品原料(アルコール飲料およびその原料を除く)の製造方法は、第1乾燥工程および処理工程を備える。第1乾燥工程では、コーヒー豆の抽出残渣が乾燥されて乾燥残渣が得られる。処理工程では、乾燥残渣がアルコール製造に用いられる糖類と併存させることなく発酵処理または酵素処理されて処理物が得られる。なお、この処理工程では、平均粒径が0.015mm以上2.20mm以下の範囲内である乾燥残渣が発酵処理または酵素処理される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー豆の抽出残渣を乾燥して乾燥残渣を得る第1乾燥工程と、
前記乾燥残渣を、アルコール製造に用いられる糖類と併存させることなく発酵処理または酵素処理して処理物を得る処理工程と、
を備える、食品原料(アルコール飲料およびその原料を除く)の製造方法。
【請求項2】
前記処理工程では、前記乾燥残渣が、糖類と併存されることなく発酵処理または酵素処理されて処理物が得られる
請求項1に記載の食品原料(アルコール飲料およびその原料を除く)の製造方法。
【請求項3】
前記処理工程では、乾燥残渣のみが発酵処理または酵素処理されて処理物が得られる
請求項2に記載の食品原料(アルコール飲料およびその原料を除く)の製造方法。
【請求項4】
前記処理工程では、平均粒径が0.015mm以上2.20mm以下の範囲内である前記乾燥残渣が発酵処理または酵素処理される
請求項1に記載の食品原料(アルコール飲料およびその原料を除く)の製造方法。
【請求項5】
前記処理工程は、
前記乾燥残渣に微生物または酵素と水とを添加して処理源含有乾燥残渣を得る添加工程と、
前記処理源含有乾燥残渣を規定温度で規定時間処理して前記処理物を得る反応工程と
を含む
請求項1に記載の食品原料(アルコール飲料およびその原料を除く)の製造方法。
【請求項6】
前記処理物を絞らずに乾燥する第2乾燥工程をさらに備える
請求項1に記載に記載の食品原料(アルコール飲料およびその原料を除く)の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の食品原料(アルコール飲料およびその原料を除く)の製造方法により得られる食品原料(アルコール飲料およびその原料を除く)。
【請求項8】
請求項7に記載の食品原料(アルコール飲料およびその原料を除く)を加工して得られる食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品原料(アルコール飲料およびその原料を除く)およびその製造方法に関する。また、本発明は、その食品原料(アルコール飲料およびその原料を除く)を加工して得られる食品に関する。
【背景技術】
【0002】
過去に、食品廃材であるコーヒー豆の抽出残渣を原料として加工食品を得る目的で「コーヒー豆の抽出残渣をヌルクで発酵し、その発酵物をチョコレート様食品の主原料すなわちカカオ様原料として利用すること」が提案されている(例えば、以下の特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-115087号公報
【特許文献2】特開平10-113163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の発酵物を原料としてチョコレート様食品等の食品を製造した場合、その食品においてカカオの風味よりもコーヒー豆の抽出残渣の風味(コーヒー豆のよい香りが抜けた出がらしの、スモーキーで焦げ感のある好ましくない風味)が色濃く出てしまう傾向があることが分かった。このため、この発酵物は、カカオの代替原料として有用であると言い難い。
【0005】
本発明の課題は、コーヒー豆の抽出残渣を利用しつつも上述の発酵物よりもカカオの風味を出しやすい食品原料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1局面に係る食品原料(アルコール飲料およびその原料を除く)の製造方法は、第1乾燥工程および処理工程を備える。なお、ここにいう「食品」は、例えば、カカオを原料とする食品(例えば、チョコレート様食品(菓子)など)である。第1乾燥工程では、コーヒー豆の抽出残渣が乾燥されて乾燥残渣が得られる。処理工程では、乾燥残渣がアルコール製造に用いられる糖類と併存させることなく発酵処理または酵素処理されて処理物が得られる。なお、処理工程では、乾燥残渣が糖類と併存させることなく発酵処理または酵素処理されて処理物が得られることが好ましく、乾燥残渣のみが発酵処理または酵素処理されて処理物が得られることがより好ましい。
【0007】
本願発明者の鋭意検討の結果、本局面に係る食品原料製造方法を用いて得られる食品原料から得られる食品は、従前の方法で得られる食品原料から得られる食品に比べてコーヒー豆の抽出残渣の風味が弱まると共にカカオの風味が強くなることが明らかとされた。すなわち、本局面に係る食品原料製造方法を用いて得られる食品原料は、コーヒー豆の抽出残渣を利用しつつも従前のコーヒー豆の抽出残渣の発酵物よりもカカオの風味を出しやすい。
【0008】
本発明の第2局面に係る食品原料(アルコール飲料およびその原料を除く)の製造方法は、第1局面に係る食品原料製造方法であって、処理工程では、平均粒径が0.015mm以上2.20mm以下の範囲内である乾燥残渣が発酵処理または酵素処理される。
【0009】
本願発明者の鋭意検討の結果、本局面に係る食品原料製造方法を用いて得られる食品原料から得られる食品は、従前の方法で得られる食品原料から得られる食品に比べてその味が鮮明になることが明らかとなった。したがって、その食品を食する者は、従前の方法で得られる食品原料から得られる食品を食する場合に比べてその味をより楽しむことができる。
【0010】
本発明の第3局面に係る食品原料(アルコール飲料およびその原料を除く)の製造方法は、第1局面または第2局面に係る食品原料製造方法であって、処理工程は、添加工程および反応工程を含む。添加工程では、乾燥残渣に微生物または酵素と水とが添加されて処理源含有乾燥残渣が得られる。反応工程では、処理源含有乾燥残渣が規定温度で規定時間処理されて処理物が得られる。なお、ここにいう「微生物」とは、例えば、麹菌や酵母などである。
【0011】
このため、この食品原料製造方法では、乾燥残渣の発酵処理または酵素処理を効率的に行うことができる。
【0012】
本発明の第4局面に係る食品原料(アルコール飲料およびその原料を除く)の製造方法は、第1局面から第3局面のいずれか一局面に係る食品原料製造方法であって、第2乾燥工程をさらに備える。第2乾燥工程では、処理物が絞られずに乾燥される。
【0013】
本願発明者の鋭意検討の結果、このようにして得られた乾燥物から得られる食品は、処理物を絞った後に乾燥させたものから得られる食品に比べてコーヒー豆の抽出残渣の風味が弱まると共にカカオの風味が強まることが明らかとされた。
【0014】
本発明の第5局面に係る食品原料(アルコール飲料およびその原料を除く)は、第1局面から第4局面のいずれか一局面に係る食品原料(アルコール飲料およびその原料を除く)の製造方法により得られる。
【0015】
このため、本局面に係る食品原料(アルコール飲料およびその原料を除く)から得られる食品は、従前の方法で得られる食品原料から得られる食品に比べてコーヒー豆の抽出残渣の風味が弱まると共にカカオの風味が強まる。なお、本局面に係る食品原料には、従前の方法で得られる食品原料によりも多くのイソバレルアルデヒドが含有されている。
【0016】
本発明の第6局面に係る食品は、第5局面に係る食品原料(アルコール飲料およびその原料を除く)を加工して得られる。なお、ここにいう「食品」は、例えば、カカオを原料とする食品(例えば、チョコレート様食品(菓子))である。
【0017】
このため、本局面に係る食品では、従前の方法で得られる食品原料から得られる食品に比べてコーヒー豆の抽出残渣の風味が弱まると共にカカオの風味が強まる。
【0018】
また、本願発明者の鋭意検討の結果、上述の局面に係る食品原料から得られるチョコレート様食品は、未発酵処理・未酵素処理のコーヒー豆の抽出残渣から得られるチョコレート様食品に比べて多量のL-フェニルアラニンやL-アラニンを含み得ることが明らかとされた。このため、このチョコレート様食品の摂取者は、未発酵処理・未酵素処理のコーヒー豆の抽出残渣から得られるチョコレート様食品を摂取するのに比べてL-フェニルアラニンやL-アラニンを効率的に摂取することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、従前の方法で得られる食品原料から得られる食品に比べてコーヒー豆の抽出残渣の風味を弱めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態に係る食品原料は、第1乾燥工程および処理工程を経て製造される。以下、本発明の実施の形態に係る食品原料の製造方法について説明した後、その食品原料の詳細について説明する。
【0021】
<食品原料の製造方法>
本発明の実施の形態に係る食品原料は、上述の通り、第1乾燥工程および処理工程を経て製造されるが、必要に応じて、第1乾燥工程の前に第1粉砕工程が設けられてもよいし、第1乾燥工程と処理工程との間に第2粉砕工程が設けられてもよい。また、処理工程の後に第2乾燥工程が設けられることが好ましい。以下、これらの工程について詳述する。
【0022】
(1)第1粉砕工程
第1粉砕工程では、コーヒー豆の抽出残渣が粉砕される。なお、本第1粉砕工程では、コーヒー豆の抽出残渣は任意に粉砕され得るが、特にコーヒー豆の抽出残渣の平均粒径が2.20mmを超えている場合、同平均粒径が2.20mm以下となるようにそのコーヒー豆の抽出残渣が粉砕されるのが好ましい。第1粉砕工程では、コーヒー豆の抽出残渣が粉砕されて第1粉砕物が得られる。コーヒー豆の抽出残渣を粉砕することによって抽出残渣の表面積を広げ、その後の処理工程における発酵処理または酵素処理を効率的に行うことができる。なお、この第1粉砕工程において、湿潤時の粉砕物の平均粒径が0.015mm以上2.20mm以下の範囲内となるようにコーヒー豆の抽出残渣が粉砕されることが好ましい。なお、この粉砕物の平均粒径は、0.015mm以上1.80mm以下の範囲内とされるのがより好ましく、0.015mm以上1.60mm以下の範囲内とされるのがさらに好ましい。第1粉砕物の平均粒径が上述の範囲内であれば、その味が鮮明となるからである。また、このような第1粉砕工程を実現する装置として、フードプロセッサー、ミルミキサー、石臼式磨砕機などが挙げられる。また、ここにいう平均粒径とは、メディアン径、すなわち、粒度分布における積算頻度の50%に当たる粒径である。そして、この平均粒径は、上述の粉砕物に1mm以上の粒子が実質的に含まれない場合、レーザ回折/散乱式粒度測定装置で測定され、上述の粉砕物に1mm以上の粒子が実質的に含まれる場合、ふるい分け試験方法に従って測定される。なお、本願において、ふるい分け試験方法は、JISのZ8815:1994の通則に従って実施される。また、このふるい分け試験方法では、湿式手動ふるい分けが行われる。
【0023】
(2)第1乾燥工程
第1乾燥工程では、コーヒー豆の抽出残渣または第1粉砕物が乾燥されて乾燥残渣が得られる。このようにコーヒー豆の抽出残渣または第1粉砕物を十分に乾燥させることにより同抽出残渣の保存性が向上し、輸送時に冷蔵や冷凍する必要がなくなり、軽量化するため環境負荷を低下させることができる。ただし、ここでは、保存性の向上は必須ではなく、保存性の向上が見られない程度にコーヒー豆の抽出残渣または第1粉砕物を乾燥させてもかまわない。
【0024】
また、この第1乾燥工程では、コーヒー豆の抽出残渣または第1粉砕物の水分値が60質量%以下となるまで同抽出残渣を乾燥させることが好ましく、同水分値が55質量%以下となるまで同抽出残渣または第1粉砕物を乾燥させることがより好ましく、同水分値が50質量%以下となるまで同抽出残渣または第1粉砕物を乾燥させることがさらに好ましく、同水分値が15質量%以下となるまで同抽出残渣または第1粉砕物を乾燥させることが特に好ましい。
【0025】
なお、この第1乾燥工程では、コーヒー豆の抽出残渣または第1粉砕物が脱水乾燥されてもよいし、加熱乾燥されてもよいが、加熱乾燥されることが好ましい。加熱乾燥法における加熱温度は、55℃以上300℃以下の範囲内であることが好ましく、55℃以上250℃以下の範囲内であることがより好ましく、90℃以上200℃以下の範囲内であることがさらに好ましい。また、このような第1乾燥工程を実現する装置として、オーブン(特に、上下にヒータを有するオーブン)、熱風乾燥機、流動層乾燥機などが挙げられる。
【0026】
また、この第1乾燥工程において加熱乾燥して得られる食品原料から得られる食品は、加熱乾燥しないで得られる食品原料から得られる食品に比べてコーヒー豆の抽出残渣の風味のみならず苦味も低くなる。これは、コーヒー豆の抽出残渣の風味成分や苦味成分が加熱により揮発または昇華したためであると推察される。
【0027】
また、この第1乾燥工程前または第1粉砕工程前にコーヒー豆の抽出残渣または第1粉砕物を水にさらして同抽出残渣に残存するコーヒー豆の抽出残渣の風味成分を取り除いてもよい。このようにすることにより、本発明の実施の形態に係る食品原料から得られる食品においてコーヒー豆の抽出残渣の風味や、苦味、雑味をより弱めることができる。
【0028】
(3)第2粉砕工程
第2粉砕工程では、コーヒー豆の抽出残渣が粉砕される。なお、本第2粉砕工程では、コーヒー豆の抽出残渣は任意に粉砕され得るが、特にコーヒー豆の抽出残渣の平均粒径が2.20mmを超えている場合、同平均粒径が2.20mm以下となるようにそのコーヒー豆の抽出残渣が粉砕されるのが好ましい。なお、第2粉砕工程は、第1粉砕工程が行われる場合、実施されなくてもよいし、実施されてもよい。第2粉砕工程では、第1乾燥工程で得られた乾燥残渣が粉砕されて第2粉砕物が得られる。この乾燥残渣を粉砕することによって乾燥残渣の表面積を広げ、次工程である処理工程における発酵処理または酵素処理を効率的に行うことができる。なお、この第2粉砕工程において、湿潤時の第2粉砕物の平均粒径が0.015mm以上2.20mm以下の範囲内となるように乾燥残渣が粉砕されることが好ましい。なお、この第2粉砕物の平均粒径は、0.015mm以上1.80mm以下の範囲内とされるのがより好ましく、0.015mm以上1.60mm以下の範囲内とされるのがさらに好ましい。第2粉砕物の平均粒径が上述の範囲内であれば、その味が鮮明となるからである。また、このような第2粉砕工程を実現する装置として、フードプロセッサー、ミルミキサー、石臼式磨砕機などが挙げられる。また、ここにいう平均粒径は、「(1)第1粉砕工程」の項目で説明したものと同様であって、メディアン径、すなわち、粒度分布における積算頻度の50%に当たる粒径である。そして、この平均粒径は、上述と同様、粉砕物に1mm以上の粒子が実質的に含まれない場合、レーザ回折/散乱式粒度測定装置で測定され、粉砕物に1mm以上の粒子が実質的に含まれる場合、ふるい分け試験方法に従って測定される。なお、ふるい分け試験方法についても上述と同様である。
【0029】
(4)処理工程
処理工程では、第1粉砕工程および第2粉砕工程のいずれも行われなかった場合は乾燥残渣が、第1粉砕工程および第2粉砕工程の少なくとも一方が行われた場合は粉砕物が発酵処理または酵素処理されて処理物が得られる。この処理物が本願にいう食品原料に該当する。なお、上述の通り、乾燥残渣および粉砕物の湿潤時の平均粒径は0.015mm以上2.20mm以下の範囲内であることが好ましく、0.015mm以上1.80mm以下の範囲内とされるのがより好ましく、0.015mm以上1.60mm以下の範囲内とされるのがさらに好ましい。また、最終的に得られる食品原料の風味を安定させる観点から、乾燥残渣および粉砕物の粒径分布はできるだけ狭いことが好ましい。このため、乾燥残渣および粉砕物は、処理工程前に篩分け等、分級処理されていることが好ましい。
【0030】
なお、処理方法は特に限定されないが、乾燥残渣または粉砕物に微生物または酵素と水とを添加して処理源含有乾燥残渣あるいは処理源含有粉砕物を得る添加工程と、処理源含有乾燥残渣または処理源含有粉砕物を規定温度で規定時間処理して処理物を得る反応工程とを経る方法が利用されることが好ましい。
【0031】
なお、ここにいう「微生物」とは、例えば、麹菌、酵母などである。本願発明の目的を達するものであれば麹菌は特に限定されないが、そのような麹菌として、例えば、白麹菌、黄麹菌、黒麹菌などが挙げられる。また、具体的な麹としては、株式会社コーセーフーズ製のアスペルパウダー(登録商標)Pro(白米/白麹菌)や、アスペルパウダー(登録商標)ET(白米/黄麹菌)、アスペルパウダー(登録商標)G(玄米/黄麹菌)、マルコメ株式会社製の米糀粉末(一般的な米糀)等が挙げられる。なお、アスペルパウダー(登録商標)Pro、アスペルパウダー(登録商標)ET、アスペルパウダー(登録商標)Gは、麹であるが、麹菌が殺菌されているため、これらによって引き起こされる反応は酵素反応となる。一方、米糀粉末は、生きた麹菌であるため、これによって引き起こされる反応は発酵となる。また、本願発明の目的を達するものであれば酵素は特に限定されないが、そのような酵素として、例えば、三菱ケミカル株式会社製の精製パパイン(エンドペプチダーゼ)や、コクラーゼ(登録商標)(αアミラーゼ)、コクラーゼ(登録商標)P、天野エンザイム株式会社製のウマミザイムパルスMA(プロテアーゼ,グルタミナーゼ)、ニューラーゼ(登録商標)F3G(リパーゼ,プロテアーゼ)、プロテアーゼM「アマノ」SD(プロテアーゼ)などが挙げられる。
【0032】
麹の添加量は、特に限定されるものではないが、乾燥残渣または粉砕物に対して1質量%以上25質量%以下の範囲内とされることが好ましく、2.5質量%以上25質量%以下の範囲内とされることがより好ましい。また、酵素の添加量は、特に限定されるものではないが、乾燥残渣または粉砕物に対して0.05質量%以上5質量%以下の範囲内とされることが好ましく、0.1質量%以上1質量%以下の範囲内とされることがより好ましい。また、水の添加量は、物理的に撹拌が容易な量であれば特に限定されるものではないが、乾燥残渣または粉砕物の粒度に応じて適宜選択することができる。なお、好適な水の添加量としては、例えば、乾燥残渣または粉砕物に対して20質量%以上500質量%以下の範囲内である。
【0033】
また、ここにいう「規定温度」は、反応温度であって、上記微生物や酵素を利用する際に推奨されている温度範囲内の温度であればよいが、例えば、40℃以上55℃以下の範囲内であることが好ましい。
【0034】
また、ここにいう「規定時間」は、反応時間であって、2.5時間以上65時間以下の範囲内であることが好ましく、7.5時間以上65時間以下の範囲内であることがより好ましく、12.5時間以上65時間以下の範囲内であることがさらに好ましく、25時間以上65時間以下の範囲内であることがさらに好ましい。
【0035】
(5)第2乾燥工程
上述の通り、この第2乾燥工程は任意で行われる。第2乾燥工程では処理物が絞られずに乾燥させられる。発明者の鋭意検討により、このようにすることによって処理物を絞って乾燥した場合に比べてコーヒー豆の抽出残渣の風味がさらに弱まると共にカカオの風味が強まることが明らかとされている。なお、本願では、第2乾燥工程を経て得られる処理物の乾燥物を食品原料と認めてもよい。
【0036】
<食品原料および食品>
上述の通りにして得られる食品原料は、例えば、カカオを原料とする食品、例えば、チョコレート様食品(菓子)など、の代替原料として利用可能であるが、それに限られず幅広く利用可能である。なお、ここにいう「チョコレート様食品」には、例えば、チョコレート類が含まれる。チョコレート類とは、全国チョコレート業公正取引協議会、チョコレート利用食品公正取引協議会により規定されるチョコレート、準チョコレート、チョコレート利用食品のみならず、油脂類を必須成分とし、必要により糖類、粉乳類、カカオ原料(カカオマス、ココア、ココアバター)、食物繊維、果汁粉末、果実粉末、呈味材、乳化剤、香料、着色料等の副原料を任意の割合で配合したものを言う。
【0037】
なお、上述の油脂類としては、カカオ脂の他に大豆油、綿実油、コーン油、サンフラワー油、オリーブ油、パーム油、菜種油、米ぬか油、ごま油、カポック油、ヤシ油、パーム核油、ココアバター代用脂、ババス油、乳脂、ラード、魚油、鯨油等の各種の動植物油脂及びそれらの硬化油、分別油、エステル交換油等が挙げられる。これらの油脂類の中でも、ココアバター代用脂を用いることが好ましい。本発明の実施の形態に係る食品原料とココアバター代用脂を併用することによってノンカカオのチョコレート様食品を製造しやすくなるからである。
【0038】
チョコレート様食品における本発明の実施の形態に係る食品原料の含有量は、43質量%以下であることが好ましく、1質量%以上43質量%以下の範囲内であることがより好ましく、2.5質量%以上43質量%以下の範囲内であることがさらに好ましい。同食品原料の含有量をこの範囲に設定することで、風味、食感が良好なチョコレート様食品を得ることができるからである。
【0039】
このようなチョコレート様食品は、通常のチョコレートを製造する方法に準じた方法に従って製造することができる。そのような方法としては、特に限定されないが、例えば、本発明の実施の形態に係る食品原料の他、上述の油脂類、必要により糖類、粉乳類、カカオ原料(カカオマス、ココア、ココアバター)、食物繊維、果汁粉末、果実粉末、呈味材、乳化剤、香料、着色料等の副原料を任意の割合で配合した原料配合物をロール掛け、コンチング処理して製造する方法が挙げられる。
【0040】
なお、このようにして得られたチョコレート様食品には、イソバレルアルデヒドが含有されるのが好ましい。なお、上述の食品原料にイソバレルアルデヒドが含有されていてもかまわない。
【0041】
また、上述の食品原料には、タウリン、L-プロリン、グリシン、L-アラニン、L-バリン、L-チロシン、L-フェニルアラニン、L-リシンが含有されていることが好ましい。
【0042】
かかる場合、タウリンは、食品原料100g当たり0.2mg以上15mg以下の範囲内で含有されていることが好ましく、3mg以上15mg以下の範囲内で含有されていることがより好ましい。
【0043】
また、L-プロリンは、食品原料100g当たり0.2mg以上10mg以下の範囲内で含有されていることが好ましく、2mg以上10mg以下の範囲内で含有されていることがより好ましい。
【0044】
また、グリシンは、食品原料100g当たり0.3mg以上5mg以下の範囲内で含有されていることが好ましく、2mg以上5mg以下の範囲内で含有されていることがより好ましい。
【0045】
また、L-アラニンは、食品原料100g当たり1mg以上140mg以下の範囲内で含有されていることが好ましく、10mg以上140mg以下の範囲内で含有されていることがより好ましい。
【0046】
また、L-バリンは、食品原料100g当たり0.3mg以上10mg以下の範囲内で含有されていることが好ましく、4mg以上10mg以下の範囲内で含有されていることがより好ましい。
【0047】
また、L-チロシンは、食品原料100g当たり1mg以上15mg以下の範囲内で含有されていることが好ましく、4mg以上15mg以下の範囲内で含有されていることがより好ましい。
【0048】
また、L-フェニルアラニンは、食品原料100g当たり0.6mg以上12mg以下の範囲内で含有されていることが好ましく、4mg以上12mg以下の範囲内で含有されていることがより好ましい。
【0049】
また、L-リシンは、食品原料100g当たり0.3mg以上6mg以下の範囲内で含有されていることが好ましく、1mg以上6mg以下の範囲内で含有されていることがより好ましい。
【0050】
以下、実施例および比較例を示して、本発明をより詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されることはない。
【実施例0051】
(1)カカオ様原料の調製
先ず、上側ヒータ温度を100℃に、下側ヒータ温度を90℃に設定したオーブンに湿ったコーヒー豆の抽出残渣を、その水分値が5質量%以下となるまで入れて乾燥させ、乾燥残渣を得た。次に、先で得られた乾燥残渣をミルミキサーで粉砕した後、その粉砕物を目開き0.850mmの篩を用いて篩分けし、その篩を通過したもの(以下「通過粉砕物」という。)を採取した。次いで、その通過粉砕物100gに対して、15gの株式会社コーセーフーズ製のアスペルパウダー(登録商標)Proおよび250gの水を加えて55℃で40時間、その通過粉砕物を酵素処理して処理物を得た。続いて、その処理物を、上側ヒータ温度を100℃に、下側ヒータ温度を90℃に設定したオーブンに2時間入れて乾燥させ、目的のカカオ様原料を得た。
【0052】
レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製LA-960V2シリーズ(水中分散測定方式))を用いて上述の通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50(メディアン径:粒度分布における積算頻度の50%に当たる粒径)を求めた。具体的には、通過粉砕物にイオン交換水を添加して試料を調製した後、その試料をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置にセットした。次に、そのレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置において試料に対して1分間超音波を照射して試料中の通過粉砕物をイオン交換水に分散させた。次いで、即座にその試料に対して赤色レーザおよび青色レーザを照射し、赤色レーザおよび青色レーザの透過率が測定適性範囲内に収まっていない場合、同透過率がその測定適性範囲内に収まるようにその試料にイオン交換水を注入した後に粒度測定を実施した。その結果、同平均粒径は0.529mmであった。
【0053】
(2)チョコレート様食品の調製
上述のカカオ様原料が10.5質量%を占め、砂糖が33.3質量%を占め、全脂粉乳が12.9質量%を占め、乳糖が4.5質量%を占め、植物油脂としてのココアバター代用油脂が38.5質量%を占め、乳化剤としての大豆レシチンが0.2質量%を占め、香料としてのバニリンが0.1質量%を占めるように、上述のカカオ様原料、砂糖、全脂粉乳、乳糖、ココアバター代用油脂、大豆レシチンおよびバニリンを混ぜ合わせて生地を調製した後、常法に従ってその生地からチョコレート様食品を調製した。
【0054】
(3)チョコレート様食品の評価
4年以上のチョコレート食品の商品開発経験を有すると共に、検査要員適性試験に合格している熟練の専門パネル5名の各人に上述のチョコレート様食品を食してもらい、そのチョコレート様食品の「おいしさ」、「カカオ風味の強さ」、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」および「苦味」を、以下に示される評価基準に基づいて評価してもらい、合議により最終的な評価点数を決定してもらった。なお、専門パネルにはこの評価前後で口に水を含んでもらい、口の中をリセットしてもらった。
【0055】
各評価項目の評価基準は以下のとおりである。
【0056】
「おいしさ」
・非常に良好なおいしさである:5点
・良好なおいしさである:4点
・許容範囲内のおいしさである:3点
・許容し難い味である:2点
・全く許容できない味である:1点
【0057】
「カカオ風味の強さ」
・カカオの風味をはっきりと感じる:5点
・ややカカオの風味を感じる:4点
・若干カカオの風味を感じる:3点
・あまりカカオの風味を感じない:2点
・カカオの風味を全く感じない:1点
【0058】
「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」
・コーヒー豆抽出残渣の風味を全く感じない:5点
・あまりコーヒー豆抽出残渣の風味を感じない:4点
・若干、コーヒー豆抽出残渣の風味を感じる:3点
・ややコーヒー豆抽出残渣の風味を感じる:2点
・強くコーヒー豆抽出残渣の風味を感じる:1点
【0059】
「苦味」
・心地よい苦みである:5点
・やや心地よい苦みである:4点
・どちらとも言えない:3点
・やや不快な苦味である:2点
・不快な苦味である:1点
【0060】
また、上述の評価項目の1項目にでも1点がある場合、総合評価をDとし、上述の評価項目の1項目にでも2点がある場合、総合評価をCとし、全ての評価項目の点が3点以上である場合、総合評価をBとし、全ての評価項目の点が3点以上であり、且つ、4点以上の項目が3項目以上ある場合、総合評価をAとした。
【0061】
なお、本実施例で得られたチョコレート様食品の「おいしさ」は3点であり、「カカオ風味の強さ」は3点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は3点であり、「苦味」は3点であり、総合評価はBであった(表1参照)。
【実施例0062】
初期乾燥時のオーブンの上側ヒータの設定温度を200℃に代え、下側ヒータの設定温度を180℃に代えた以外は、実施例1と同様にしてカカオ様原料を得てから、実施例1と同様にしてチョコレート様食品を調製し、実施例1に示される方法でチョコレート様食品の評価を行った(二次乾燥時のオーブンの温度設定は実施例1に記載の通りである。)。なお、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.529mmであった。その結果、得られたチョコレート様食品の「おいしさ」は4点であり、「カカオ風味の強さ」は3点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は4点であり、「苦味」は4点であり、総合評価はAであった(表1参照)。
【実施例0063】
初期乾燥前にコーヒー豆の抽出残渣を冷凍処理した以外は、実施例1と同様にしてカカオ様原料を得てから、実施例1と同様にしてチョコレート様食品を調製し、実施例1に示される方法でチョコレート様食品の評価を行った(二次乾燥時のオーブンの温度設定は実施例1に記載の通りである。)。なお、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.529mmであった。その結果、得られたチョコレート様食品の「おいしさ」は3点であり、「カカオ風味の強さ」は3点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は3点であり、「苦味」は3点であり、総合評価はBであった(表1参照)。
【実施例0064】
初期乾燥前にコーヒー豆の抽出残渣を大量の水にさらした以外は、実施例1と同様にしてカカオ様原料を得てから、実施例1と同様にしてチョコレート様食品を調製し、実施例1に示される方法でチョコレート様食品の評価を行った(二次乾燥時のオーブンの温度設定は実施例1に記載の通りである。)。なお、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.529mmであった。その結果、得られたチョコレート様食品の「おいしさ」は4点であり、「カカオ風味の強さ」は3点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は4点であり、「苦味」は4点であり、総合評価はAであった(表1参照)。
【0065】
(比較例1)
(1)カカオ様原料の調製
先ず、コーヒー豆の抽出残渣(水分量63.67質量%)を乾燥させることなく、その抽出残渣をミルミキサーで粉砕した後、その粉砕物を目開き0.850mmの篩を用いて篩分けし、その篩を通過したもの(以下「通過抽出残渣」という。)を採取した。次いで、その通過抽出残渣275gに対して、15gの株式会社コーセーフーズ製のアスペルパウダー(登録商標)Proおよび75gの水を加えて55℃で40時間、その通過抽出残渣を酵素処理して処理物を得た。続いて、その処理物を、上側ヒータ温度を100℃に、下側ヒータ温度を90℃に設定したオーブンに2時間入れて乾燥させ、目的のカカオ様原料を得た。
【0066】
なお、実施例1に示される方法に従って、通過抽出残渣の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.526mmであった。
【0067】
(2)チョコレート様食品の調製
実施例1の「(2)チョコレート様食品の調製」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品を調製した。
【0068】
(3)チョコレート様食品の評価
実施例1の「(3)チョコレート様食品の評価」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品の評価を行ったところ、同チョコレート様食品の「おいしさ」は3点であり、「カカオ風味の強さ」は2点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は2点であり、「苦味」は3点であり、総合評価はCであった(表1参照)。
【0069】
【表1】
【実施例0070】
初期乾燥時において上側ヒータ温度を100℃に、下側ヒータ温度を90℃に設定したオーブンに湿ったコーヒー豆の抽出残渣を、その水分値が59.75質量%となるまで入れて乾燥させた以外は、実施例1と同様にして乾燥残渣を得た。また、通過粉砕物248.4gに対して、15gの株式会社コーセーフーズ製のアスペルパウダー(登録商標)Proおよび101.6gの水を加えて55℃で40時間、その通過粉砕物を酵素処理して処理物を得た以外は、実施例1と同様にしてカカオ様原料を得てから、実施例1と同様にしてチョコレート様食品を調製し、実施例1に示される方法でチョコレート様食品の評価を行った(二次乾燥時のオーブンの温度設定は実施例1に記載の通りである。)。その結果、得られたチョコレート様食品の「おいしさ」は3点であり、「カカオ風味の強さ」は3点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は3点であり、「苦味」は4点であり、総合評価はBであった(表2参照)。
【実施例0071】
初期乾燥時において上側ヒータ温度を100℃に、下側ヒータ温度を90℃に設定したオーブンに湿ったコーヒー豆の抽出残渣を、その水分値が54.40質量%となるまで入れて乾燥させた以外は、実施例1と同様にして乾燥残渣を得た。また、通過粉砕物219.3gに対して、15gの株式会社コーセーフーズ製のアスペルパウダー(登録商標)Proおよび130.7gの水を加えて55℃で40時間、その通過粉砕物を酵素処理して処理物を得た以外は、実施例1と同様にしてカカオ様原料を得てから、実施例1と同様にしてチョコレート様食品を調製し、実施例1に示される方法でチョコレート様食品の評価を行った(二次乾燥時のオーブンの温度設定は実施例1に記載の通りである。)。その結果、得られたチョコレート様食品の「おいしさ」は4点であり、「カカオ風味の強さ」は4点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は3点であり、「苦味」は3点であり、総合評価はBであった(表2参照)。
【実施例0072】
初期乾燥時において上側ヒータ温度を100℃に、下側ヒータ温度を90℃に設定したオーブンに湿ったコーヒー豆の抽出残渣を、その水分値が47.19質量%となるまで入れて乾燥させた以外は、実施例1と同様にして乾燥残渣を得た。また、通過粉砕物189.4gに対して、15gの株式会社コーセーフーズ製のアスペルパウダー(登録商標)Proおよび160.6gの水を加えて55℃で40時間、その通過粉砕物を酵素処理して処理物を得た以外は、実施例1と同様にしてカカオ様原料を得てから、実施例1と同様にしてチョコレート様食品を調製し、実施例1に示される方法でチョコレート様食品の評価を行った(二次乾燥時のオーブンの温度設定は実施例1に記載の通りである。)。その結果、得られたチョコレート様食品の「おいしさ」は4点であり、「カカオ風味の強さ」は4点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は4点であり、「苦味」は4点であり、総合評価はAであった(表2参照)。
【0073】
(比較例2)
コーヒー豆の抽出残渣(水分量63.67質量%)をコーヒー豆の抽出残渣(水分量67.22質量%)に代えた以外は、比較例1と同様にして通過抽出残渣を得た。また、通過抽出残渣275.3gに対して、15gの株式会社コーセーフーズ製のアスペルパウダー(登録商標)Proおよび74.7gの水を加えて55℃で40時間、その通過抽出残渣を酵素処理して処理物を得た以外は、比較例1と同様にしてカカオ様原料を得てから、比較例1と同様にしてチョコレート様食品を調製し、比較例1に示される方法でチョコレート様食品の評価を行った。その結果、得られたチョコレート様食品の「おいしさ」は3点であり、「カカオ風味の強さ」は2点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は2点であり、「苦味」は3点であり、総合評価はCであった(表2参照)。
【0074】
【表2】
【実施例0075】
(1)カカオ様原料の調製
ミルミキサーを石臼式摩砕機(増幸産業株式会社製スーパーマスコロイダー)に代え、アスペルパウダー(登録商標)Proの添加量を25gに代え、通過粉砕物の酵素処理時間を2.5時間に代えた以外は、実施例1と同様にして目的のカカオ様原料を得た。なお、本実施例では、乾燥残渣は石臼式摩砕機に1回だけ通されて粉砕された。この際、通過粉砕物の質量に対するアスペルパウダー(登録商標)Proの質量の割合は25質量%(=25g/100g×100)となる。また、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.483mmであった。
【0076】
(2)チョコレート様食品の調製
実施例1の「(2)チョコレート様食品の調製」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品を調製した。
【0077】
(3)チョコレート様食品の評価
実施例1に示される専門パネルとは異なる専門パネル5名の各人に上述のチョコレート様食品を食してもらい、その対照食品に対するチョコレート様食品の「おいしさ」、「カカオ風味の強さ」、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」および「苦味」を、以下に示される評価基準に基づいて評価してもらい、合議により最終的な評価点数を決定してもらった。なお、専門パネルにはこの評価前後で口に水を含んでもらい、口の中をリセットしてもらった。
【0078】
各評価項目の評価基準は以下のとおりである。
【0079】
「おいしさ」
・おいしい:5点
・ややおいしい:4点
・ふつう:3点
・ややおいしくない:2点
・おいしくない:1点
【0080】
「カカオ風味の強さ」
・カカオの風味をはっきりと感じる:5点
・ややカカオの風味を感じる:4点
・若干カカオの風味を感じる:3点
・あまりカカオの風味を感じない:2点
・カカオの風味を全く感じない:1点
【0081】
「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」
・コーヒー豆抽出残渣の風味を全く感じない:5点
・あまりコーヒー豆抽出残渣の風味を感じない:4点
・若干、コーヒー豆抽出残渣の風味を感じる:3点
・ややコーヒー豆抽出残渣の風味を感じる:2点
・強くコーヒー豆抽出残渣の風味を感じる:1点
【0082】
「苦味」
・心地よい苦みである:5点
・やや心地よい苦みである:4点
・どちらとも言えない:3点
・やや不快な苦味である:2点
・不快な苦味である:1点
【0083】
なお、上述の評価項目のいずれか1項目にでも1点がある場合、総合評価をDとし、評価項目のいずれか1項目にでも2点がある場合、総合評価をCとし、全ての評価項目の点が3点以上である場合、総合評価をBとし、全ての評価項目の点が3点以上であり、且つ、4点以上の項目が3項目以上ある場合、総合評価をAとした。
【0084】
本実施例で得られたチョコレート様食品の「おいしさ」は3点であり、「カカオ風味の強さ」は2点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は3点であり、「苦味」は3点であり、総合評価はCであった(表3参照)。
【実施例0085】
(1)カカオ様原料の調製
ミルミキサーを石臼式摩砕機(増幸産業株式会社製スーパーマスコロイダー)に代え、アスペルパウダー(登録商標)Proの添加量を25gに代え、通過粉砕物の酵素処理時間を7.5時間に代えた以外は、実施例1と同様にして目的のカカオ様原料を得た。なお、本実施例では、乾燥残渣は石臼式摩砕機に1回だけ通されて粉砕された。この際、通過粉砕物の質量に対するアスペルパウダー(登録商標)Proの質量の割合は25質量%(=25g/100g×100)となる。また、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.483mmであった。
【0086】
(2)チョコレート様食品の調製
実施例1の「(2)チョコレート様食品の調製」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品を調製した。
【0087】
(3)チョコレート様食品の評価
実施例8の「(3)チョコレート様食品の評価」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品の評価を行ったところ、同チョコレート様食品の「おいしさ」は4点であり、「カカオ風味の強さ」は2点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は3点であり、「苦味」は3点であり、総合評価はCであった(表3参照)。
【実施例0088】
(1)カカオ様原料の調製
ミルミキサーを石臼式摩砕機(増幸産業株式会社製スーパーマスコロイダー)に代え、アスペルパウダー(登録商標)Proの添加量を25gに代え、通過粉砕物の酵素処理時間を12.5時間に代えた以外は、実施例1と同様にして目的のカカオ様原料を得た。なお、本実施例では、乾燥残渣は石臼式摩砕機に1回だけ通されて粉砕された。この際、通過粉砕物の質量に対するアスペルパウダー(登録商標)Proの質量の割合は25質量%(=25g/100g×100)となる。また、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.483mmであった。
【0089】
(2)チョコレート様食品の調製
実施例1の「(2)チョコレート様食品の調製」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品を調製した。
【0090】
(3)チョコレート様食品の評価
実施例8の「(3)チョコレート様食品の評価」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品の評価を行ったところ、同チョコレート様食品の「おいしさ」は4点であり、「カカオ風味の強さ」は3点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は3点であり、「苦味」は3点であり、総合評価はBであった(表3参照)。
【実施例0091】
(1)カカオ様原料の調製
ミルミキサーを石臼式摩砕機(増幸産業株式会社製スーパーマスコロイダー)に代え、アスペルパウダー(登録商標)Proの添加量を25gに代え、通過粉砕物の酵素処理時間を20時間に代えた以外は、実施例1と同様にして目的のカカオ様原料を得た。なお、本実施例では、乾燥残渣は石臼式摩砕機に1回だけ通されて粉砕された。この際、通過粉砕物の質量に対するアスペルパウダー(登録商標)Proの質量の割合は25質量%(=25g/100g×100)となる。また、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.483mmであった。
【0092】
(2)チョコレート様食品の調製
実施例1の「(2)チョコレート様食品の調製」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品を調製した。
【0093】
(3)チョコレート様食品の評価
実施例8の「(3)チョコレート様食品の評価」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品の評価を行ったところ、同チョコレート様食品の「おいしさ」は4点であり、「カカオ風味の強さ」は3点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は4点であり、「苦味」は4点であり、総合評価はAであった(表3参照)。
【実施例0094】
(1)カカオ様原料の調製
ミルミキサーを石臼式摩砕機(増幸産業株式会社製スーパーマスコロイダー)に代え、アスペルパウダー(登録商標)Proの添加量を25gに代えた以外は、実施例1と同様にして目的のカカオ様原料を得た。なお、本実施例では、乾燥残渣は石臼式摩砕機に1回だけ通されて粉砕された。この際、乾燥残渣の質量に対するアスペルパウダー(登録商標)Proの質量の割合は25質量%(=25g/100g×100)となる。また、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.483mmであった。
【0095】
(2)チョコレート様食品の調製
実施例1の「(2)チョコレート様食品の調製」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品を調製した。
【0096】
(3)チョコレート様食品の評価
実施例8の「(3)チョコレート様食品の評価」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品の評価を行ったところ、同チョコレート様食品の「おいしさ」は4点であり、「カカオ風味の強さ」は4点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は4点であり、「苦味」は5点であり、総合評価はAであった(表3、表4、表6参照)。
【実施例0097】
(1)カカオ様原料の調製
ミルミキサーを石臼式摩砕機(増幸産業株式会社製スーパーマスコロイダー)に代え、アスペルパウダー(登録商標)Proの添加量を25gに代え、通過粉砕物の酵素処理時間を65時間に代えた以外は、実施例1と同様にして目的のカカオ様原料を得た。なお、本実施例では、乾燥残渣は石臼式摩砕機に1回だけ通されて粉砕された。この際、通過粉砕物の質量に対するアスペルパウダー(登録商標)Proの質量の割合は25質量%(=25g/100g×100)となる。また、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.483mmであった。
【0098】
(2)チョコレート様食品の調製
実施例1の「(2)チョコレート様食品の調製」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品を調製した。
【0099】
(3)チョコレート様食品の評価
実施例8の「(3)チョコレート様食品の評価」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品の評価を行ったところ、同チョコレート様食品の「おいしさ」は4点であり、「カカオ風味の強さ」は4点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は4点であり、「苦味」は5点であり、総合評価はAであった(表3参照)。
【0100】
(比較例3)
(1)カカオ様原料の調製
ミルミキサーを石臼式摩砕機(増幸産業株式会社製スーパーマスコロイダー)に代え、15gのアスペルパウダー(登録商標)Proを25gのアスペルパウダー(登録商標)Proの失活品に代えた以外は、実施例1と同様にして目的のカカオ様原料を得た。なお、本比較例では、乾燥残渣は石臼式摩砕機に1回だけ通されて粉砕された。この際、通過粉砕物の質量に対するアスペルパウダー(登録商標)Proの失活品の質量の割合は25質量%(=25g/100g×100)となる。また、アスペルパウダー(登録商標)Proの失活品は、アスペルパウダー(登録商標)Proを90℃で加熱して作製した。また、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.483mmであった。
【0101】
(2)チョコレート様食品の調製
実施例1の「(2)チョコレート様食品の調製」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品を調製した。
【0102】
(3)チョコレート様食品の評価
実施例8の「(3)チョコレート様食品の評価」の欄に記載される方法に従って対照食品に対するチョコレート様食品の評価を行ったところ、同チョコレート様食品の「おいしさ」は2点であり、「カカオ風味の強さ」は1点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は1点であり、「苦味」は2点であり、総合評価はDであった(表3、表4および表6参照)。
【0103】
【表3】
【実施例0104】
(1)カカオ様原料の調製
ミルミキサーを石臼式摩砕機(増幸産業株式会社製スーパーマスコロイダー)に代え、アスペルパウダー(登録商標)Proの添加量を1gに代えた以外は、実施例1と同様にして目的のカカオ様原料を得た。なお、本実施例では、乾燥残渣は石臼式摩砕機に1回だけ通されて粉砕された。この際、通過粉砕物の質量に対するアスペルパウダー(登録商標)Proの質量の割合は1質量%(=1g/100g×100)となる。また、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.483mmであった。
【0105】
(2)チョコレート様食品の調製
実施例1の「(2)チョコレート様食品の調製」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品を調製した。
【0106】
(3)チョコレート様食品の評価
実施例8の「(3)チョコレート様食品の評価」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品の評価を行ったところ、同チョコレート様食品の「おいしさ」は4点であり、「カカオ風味の強さ」は3点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は3点であり、「苦味」は3点であり、総合評価はBであった(表4参照)。
【実施例0107】
(1)カカオ様原料の調製
ミルミキサーを石臼式摩砕機(増幸産業株式会社製スーパーマスコロイダー)に代え、アスペルパウダー(登録商標)Proの添加量を5gに代えた以外は、実施例1と同様にして目的のカカオ様原料を得た。なお、本実施例では、乾燥残渣は石臼式摩砕機に1回だけ通されて粉砕された。この際、通過粉砕物の質量に対するアスペルパウダー(登録商標)Proの質量の割合は5質量%(=5g/100g×100)となる。また、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.483mmであった。
【0108】
(2)チョコレート様食品の調製
実施例1の「(2)チョコレート様食品の調製」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品を調製した。
【0109】
(3)チョコレート様食品の評価
実施例8の「(3)チョコレート様食品の評価」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品の評価を行ったところ、同チョコレート様食品の「おいしさ」は4点であり、「カカオ風味の強さ」は3点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は3点であり、「苦味」は3点であり、総合評価はBであった(表4参照)。
【実施例0110】
(1)カカオ様原料の調製
ミルミキサーを石臼式摩砕機(増幸産業株式会社製スーパーマスコロイダー)に代え、実施例1と同様にして目的のカカオ様原料を得た。なお、本実施例では、乾燥残渣は石臼式摩砕機に1回だけ通されて粉砕された。この際、通過粉砕物の質量に対するアスペルパウダー(登録商標)Proの質量の割合は15質量%(=15g/100g×100)となる。また、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.483mmであった。
【0111】
(2)チョコレート様食品の調製
実施例1の「(2)チョコレート様食品の調製」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品を調製した。
【0112】
(3)チョコレート様食品の評価
実施例8の「(3)チョコレート様食品の評価」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品の評価を行ったところ、同チョコレート様食品の「おいしさ」は4点であり、「カカオ風味の強さ」は4点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は3点であり、「苦味」は3点であり、総合評価はBであった(表4参照)。
【0113】
【表4】
【実施例0114】
コーヒー豆をコーヒーグラインダーで粗挽きし、その粗挽豆からコーヒー成分を熱湯で抽出して粗挽豆の抽出残渣を得、上側ヒータ温度を100℃に、下側ヒータ温度を90℃に設定したオーブンに湿った粗挽豆の抽出残渣を、その水分値が8.32質量%となるまで入れて乾燥させて乾燥残渣を得、その乾燥残渣を粉砕・篩分けせずに、乾燥残渣100gに対して、15gの株式会社コーセーフーズ製のアスペルパウダー(登録商標)Proおよび250gの水を加えて55℃で40時間、その乾燥残渣を酵素処理して処理物を得た以外は、実施例1同様にして目的のカカオ様原料を得た。なお、ふるい分け試験方法(JISのZ8815:1994)の通則に従って、乾燥残渣の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は2.17mmであった。そして、実施例1と同様にしてそのカカオ様原料からチョコレート様食品を調製し、実施例1に示される方法でチョコレート様食品の評価を行った(二次乾燥時のオーブンの温度設定は実施例1に記載の通りである。)。その結果、得られたチョコレート様食品の「おいしさ」は3点であり、「カカオ風味の強さ」は3点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は3点であり、「苦味」は3点であり、総合評価はBであった(表5参照)。
【実施例0115】
ミルミキサーを石臼式摩砕機(増幸産業株式会社製スーパーマスコロイダー)に代え、乾燥残渣に対してその6倍の質量の水を加えて湿潤残渣を調製し、その湿潤残渣を石臼式摩砕機に7回繰り返し通して粉砕し、上側ヒータ温度を100℃に、下側ヒータ温度を90℃に設定したオーブンにその粉砕物を、その水分値が5質量%以下となるまで入れて再乾燥させて再乾燥残渣を得、その再乾燥残渣を目開き0.850mmの篩を用いて篩分けして通過粉砕物を採取した以外は、実施例1と同様にして目的のカカオ様原料を得た。なお、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.01799mmであった。そして、実施例1と同様にしてそのカカオ様原料からチョコレート様食品を調製し、実施例1に示される方法でチョコレート様食品の評価を行った(二次乾燥時のオーブンの温度設定は実施例1に記載の通りである。)。その結果、得られたチョコレート様食品の「おいしさ」は4点であり、「カカオ風味の強さ」は4点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は3点であり、「苦味」は3点であり、総合評価はBであった(表5参照)。
【0116】
【表5】
【実施例0117】
(1)カカオ様原料の調製
ミルミキサーを石臼式摩砕機(増幸産業株式会社製スーパーマスコロイダー)に代え、15gのアスペルパウダー(登録商標)Proを25gの株式会社コーセーフーズ製のアスペルパウダー(登録商標)ETに代えた以外は、実施例1と同様にして目的のカカオ様原料を得た。なお、本実施例では、乾燥残渣は石臼式摩砕機に1回だけ通されて粉砕された。この際、通過粉砕物の質量に対するアスペルパウダー(登録商標)ETの質量の割合は25質量%(=25g/100g×100)となる。また、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.483mmであった。
【0118】
(2)チョコレート様食品の調製
実施例1の「(2)チョコレート様食品の調製」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品を調製した。
【0119】
(3)チョコレート様食品の評価
実施例8の「(3)チョコレート様食品の評価」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品の評価を行ったところ、同チョコレート様食品の「おいしさ」は3点であり、「カカオ風味の強さ」は3点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は3点であり、「苦味」は3点であり、総合評価はBであった(表6参照)。
【実施例0120】
(1)カカオ様原料の調製
ミルミキサーを石臼式摩砕機(増幸産業株式会社製スーパーマスコロイダー)に代え、15gのアスペルパウダー(登録商標)Proを25gの株式会社コーセーフーズ製のアスペルパウダー(登録商標)Gに代えた以外は、実施例1と同様にして目的のカカオ様原料を得た。なお、本実施例では、乾燥残渣は石臼式摩砕機に1回だけ通されて粉砕された。この際、通過粉砕物の質量に対するアスペルパウダー(登録商標)Gの質量の割合は25質量%(=25g/100g×100)となる。また、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.483mmであった。
【0121】
(2)チョコレート様食品の調製
実施例1の「(2)チョコレート様食品の調製」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品を調製した。
【0122】
(3)チョコレート様食品の評価
実施例8の「(3)チョコレート様食品の評価」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品の評価を行ったところ、同チョコレート様食品の「おいしさ」は4点であり、「カカオ風味の強さ」は3点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は3点であり、「苦味」は3点であり、総合評価はBであった(表6参照)。
【実施例0123】
(1)カカオ様原料の調製
ミルミキサーを石臼式摩砕機(増幸産業株式会社製スーパーマスコロイダー)に代え、15gのアスペルパウダー(登録商標)Proを0.5gの三菱ケミカル株式会社製の精製パパインに代えたと共に、通過粉砕物の酵素処理時間を20時間に代え、さらに酵素処理温度を40℃に代えた以外は、実施例1と同様にして目的のカカオ様原料を得た。なお、本実施例では、乾燥残渣は石臼式摩砕機に1回だけ通されて粉砕された。この際、乾燥残渣の質量に対する精製パパインの質量の割合は0.5質量%(=0.5g/100g×100)となる。また、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.483mmであった。
【0124】
(2)チョコレート様食品の調製
実施例1の「(2)チョコレート様食品の調製」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品を調製した。
【0125】
(3)チョコレート様食品の評価
実施例8の「(3)チョコレート様食品の評価」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品の評価を行ったところ、同チョコレート様食品の「おいしさ」は4点であり、「カカオ風味の強さ」は3点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は3点であり、「苦味」は3点であり、総合評価はBであった(表6参照)。
【実施例0126】
(1)カカオ様原料の調製
ミルミキサーを石臼式摩砕機(増幸産業株式会社製スーパーマスコロイダー)に代え、15gのアスペルパウダー(登録商標)Proを0.5gの三菱ケミカル株式会社製のコクラーゼ(登録商標)に代えたと共に、通過粉砕物の酵素処理時間を20時間に代え、さらに酵素処理温度を40℃に代えた以外は、実施例1と同様にして目的のカカオ様原料を得た。なお、本実施例では、乾燥残渣は石臼式摩砕機に1回だけ通されて粉砕された。この際、通過粉砕物の質量に対するコクラーゼ(登録商標)の質量の割合は0.5質量%(=0.5g/100g×100)となる。また、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.483mmであった。
【0127】
(2)チョコレート様食品の調製
実施例1の「(2)チョコレート様食品の調製」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品を調製した。
【0128】
(3)チョコレート様食品の評価
実施例8の「(3)チョコレート様食品の評価」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品の評価を行ったところ、同チョコレート様食品の「おいしさ」は4点であり、「カカオ風味の強さ」は3点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は3点であり、「苦味」は3点であり、総合評価はBであった(表6参照)。
【実施例0129】
(1)カカオ様原料の調製
ミルミキサーを石臼式摩砕機(増幸産業株式会社製スーパーマスコロイダー)に代え、15gのアスペルパウダー(登録商標)Proを0.5gの天野エンザイム株式会社製のニューラーゼ(登録商標)F3Gに代えたと共に、通過粉砕物の酵素処理時間を20時間に代え、さらに酵素処理温度を40℃に代えた以外は、実施例1と同様にして目的のカカオ様原料を得た。なお、本実施例では、乾燥残渣は石臼式摩砕機に1回だけ通されて粉砕された。この際、通過粉砕物の質量に対するニューラーゼ(登録商標)F3Gの質量の割合は0.5質量%(=0.5g/100g×100)となる。また、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.483mmであった。
【0130】
(2)チョコレート様食品の調製
実施例1の「(2)チョコレート様食品の調製」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品を調製した。
【0131】
(3)チョコレート様食品の評価
実施例8の「(3)チョコレート様食品の評価」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品の評価を行ったところ、同チョコレート様食品の「おいしさ」は4点であり、「カカオ風味の強さ」は3点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は3点であり、「苦味」は3点であり、総合評価はBであった(表6参照)。
【実施例0132】
(1)カカオ様原料の調製
ミルミキサーを石臼式摩砕機(増幸産業株式会社製スーパーマスコロイダー)に代え、15gのアスペルパウダー(登録商標)Proを0.5gの天野エンザイム株式会社製のプロテアーゼM「アマノ」SDに代えたと共に、通過粉砕物の酵素処理時間を20時間に代え、さらに酵素処理温度を40℃に代えた以外は、実施例1と同様にして目的のカカオ様原料を得た。なお、本実施例では、乾燥残渣は石臼式摩砕機に1回だけ通されて粉砕された。この際、通過粉砕物の質量に対するプロテアーゼM「アマノ」SDの質量の割合は0.5質量%(=0.5g/100g×100)となる。また、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.483mmであった。
【0133】
(2)チョコレート様食品の調製
実施例1の「(2)チョコレート様食品の調製」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品を調製した。
【0134】
(3)チョコレート様食品の評価
実施例8の「(3)チョコレート様食品の評価」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品の評価を行ったところ、同チョコレート様食品の「おいしさ」は4点であり、「カカオ風味の強さ」は4点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は4点であり、「苦味」は4点であり、総合評価はAであった(表6参照)。
【0135】
【表6】
【実施例0136】
(1)カカオ様原料の調製
実施例1に記載方法と同一の方法を用いて乾燥残渣を得た。なお、その水分値は9.17質量%であった。また、ふるい分け試験方法(JISのZ8815:1994)の通則に従って、乾燥残渣の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は1.64mmであった。次に、その乾燥残渣を粉砕・篩分けせずに、乾燥残渣800gに対して30℃程度の温水600gを2回に分けて加えた後、それを50分間、蒸煮して蒸煮物を得た。次いで、この蒸煮物80gをビニール袋に入れ、そのビニール袋中の蒸煮物に麹菌Aspergillus oryzae(味噌用)を、蒸煮物1g当たり麹菌の胞子数が1×10cfgとなるように接種した(すなわち、麹菌は蒸煮物80gに対して80×10cfu接種された。)。そして、そのままその麹菌を蒸煮物中において35℃で培養し、麹菌接種から24時間経過後、それを37.5℃で48時間培養して製麹物を得た。なお、麹菌培養中の相対湿度は全期間90%とした。続いて、その製麹物30gに対して、30gの通過粉砕物(実施例1に示される方法と同一の方法で得られた通過粉砕物)および150gの水を加えて55℃で40時間、その混合物を発酵処理して処理物を得た。続いて、その処理物を、上側ヒータ温度を100℃に、下側ヒータ温度を90℃に設定したオーブンに2時間入れて乾燥させ、目的のカカオ様原料を得た。
【0137】
(2)チョコレート様食品の調製
実施例1の「(2)チョコレート様食品の調製」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品を調製した。
【0138】
(3)チョコレート様食品の評価
実施例1の「(3)チョコレート様食品の評価」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品の評価を行ったところ、同チョコレート様食品の「おいしさ」は4点であり、「カカオ風味の強さ」は4点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は3点であり、「苦味」は5点であり、総合評価はAであった(表7参照)。
【実施例0139】
麹菌Aspergillus oryzae(味噌用)を麹菌Aspergillus luchuensis(焼酎用)に代えた以外は、実施例25に記載される方法と同一の方法を用いて目的のカカオ様原料を得た。次いで、実施例1と同様にしてチョコレート様食品を調製し、実施例1に示される方法でチョコレート様食品の評価を行った。その結果、得られたチョコレート様食品の「おいしさ」は4点であり、「カカオ風味の強さ」は3点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は4点であり、「苦味」は4点であり、総合評価はAであった(表7参照)。
【実施例0140】
麹菌Aspergillus oryzae(味噌用)を麹菌Aspergillus oryzae(醤油用)に代えた以外は、実施例25に記載される方法と同一の方法を用いて目的のカカオ様原料を得た。次いで、実施例1と同様にしてチョコレート様食品を調製し、実施例1に示される方法でチョコレート様食品の評価を行った。その結果、得られたチョコレート様食品の「おいしさ」は4点であり、「カカオ風味の強さ」は4点であり、「コーヒー豆抽出残渣風味の弱さ」は4点であり、「苦味」は4点であり、総合評価はAであった(表7参照)。
【0141】
【表7】
【実施例0142】
(1)カカオ様原料の調製
先ず、上側ヒータ温度を100℃に、下側ヒータ温度を90℃に設定したオーブンに湿ったコーヒー豆の抽出残渣を、その水分値が5質量%以下となるまで入れて乾燥させ、乾燥残渣を得た。次に、先で得られた乾燥残渣をミルミキサーで粉砕した後、その粉砕物を目開き0.850mmの篩を用いて篩分けし、その篩を通過したもの(以下「通過粉砕物」という。)を採取した。次いで、その通過粉砕物100gに対して、11.4gの株式会社コーセーフーズ製のアスペルパウダー(登録商標)Proおよび22.2gの水を加えて40℃で46時間、その通過粉砕物を酵素処理して処理物を得た。続いて、その処理物を、上側ヒータ温度を100℃に、下側ヒータ温度を90℃に設定したオーブンに2時間入れて乾燥させ、目的のカカオ様原料を得た。
【0143】
(2)チョコレート様食品の調製
上述のカカオ様原料が10.7質量%を占め、砂糖が33.8質量%を占め、全脂粉乳が13.2質量%を占め、乳糖が4.6質量%を占め、植物油脂としてのココアバター代用油脂が37.3質量%を占め、乳化剤としての大豆レシチンが0.3質量%を占め、香料としてのバニリンが0.1質量%を占めるように、上述のカカオ様原料、砂糖、全脂粉乳、乳糖、ココアバター代用油脂、大豆レシチンおよびバニリンを混ぜ合わせて生地を調製した後、常法に従ってその生地からチョコレート様食品を調製した。
【0144】
(3)チョコレート様食品の香気分析
上述のチョコレート様食品0.5gを細粉し、その粉を10mLのガラスバイアル瓶に加え、そのガラスバイアル瓶をセプタム付キャップで密封した。次に、MVM-DHS(Multi Volatile Method-Dynamic HeadSpace)法を用いてガラスバイアル瓶中の香気成分を25℃(吸着容量750mL)でCarbon B&X管に捕集すると共に、80℃でTENAX管に捕集した。なお、MVM-DHS法とは、試料をガラスバイアル瓶で加温パージして香気成分をヘッドスペースに移行させて吸着材に濃縮させる手法である。この手法では、ヘッドスペースへ香気成分を効率的に回収することができる。次いで、水分除去のために各管をドライパージした後、各管を加熱して各管中の香気成分を熱脱着させてGC/MSに導入してGC/MS分析を行った。なお、DHS条件、加熱脱着装置の条件、GC/MS条件は以下に示す通りであった。
【0145】
(DHS条件)
・Incubation:25℃ 750mL,80℃ 3000mL
・Trap:30℃
・ドライパージ:30℃,750mL
・装置:GERSTEL DHS
【0146】
(加熱脱着装置の条件)
・脱着温度:40℃(0.2分)~250℃(3分保持)
・装置:GERSTEL TDU
【0147】
(GC/MS条件)
・カラム:InertCapPure-WAX(60m×0.25mm I.D., Film 0.25μm)
・カラム温度:50℃(5分)~240℃(3℃/分)
・インジェクション温度:10℃~250℃(12℃/秒,5分保持)
・インジェクション容量:15mL(Multi Hot injection and Trap)
・流速:2.2mL/分
・Splitless:1.0分
・装置:Agilent GC7890, MSD5975C, PFPD
【0148】
以上の香気分析の結果、このチョコレート様食品から、特徴的な香気成分としてイソバレルアルデヒド(isovaleraldehyde)、ヘキサン酸(hexanoic acid)、フェノール類、フラン・ピラン系化合物類、ピリジン(pyridine)、1-フルフラール-2-ホルミルピロール(1-furfuryl-2-formylpyrrole)、ピリジノール(pyridinol)、フルフラールメチルジスルフィド(furfuryl methyl disulfide)、2-チオフェンメタノール(2-thiophenemethanol)、チオエーテル類、n-ブタン酸(n-butyric acid)、シクロテン(cyclotene)、マルトール(maltol)、2,3-ジヒドロ-3,5-ジヒドロキシ-6-メチル-4H-ピラン-4-オン(2,3-dihydro-3,5-dihydroxy-6-methyl-4H-pyran-4-one)が検出された。
【0149】
なお、イソバレルアルデヒドはカカオのトップ香であり、ヘキサン酸およびn-ブタン酸は酸臭源であり、フェノール類はクルミの薄皮様の香源であり、フラン・ピラン系化合物類はカラメル様の香源であり、ピリジンは薬品様刺激臭源であり、フルフラールメチルジスルフィドは焦げ様・ローストの香源であり、チオエーテル類は漬物様の香源であり、マルトールは砂糖様の香源であり、シクロテンはメープル様の香源である。また、このチョコレート様食品中のイソバレルアルデヒドの含有量は、以下に示される比較例4に係るチョコレート食品中のそれの約3倍であり、比較例5に係るチョコレート食品中のそれの約3倍であり、比較例6に係るチョコレート様食品中のそれの約7倍であった。
【0150】
(比較例4)
(1)チョコレート食品の調製
ココアパウダーが10.7質量%を占め、砂糖が33.8質量%を占め、全脂粉乳が13.2質量%を占め、乳糖が4.6質量%を占め、植物油脂としてのココアバター代用油脂が37.3質量%を占め、乳化剤としての大豆レシチンが0.3質量%を占め、香料としてのバニリンが0.1質量%を占めるように、ココアパウダー、砂糖、全脂粉乳、乳糖、ココアバター代用油脂、大豆レシチンおよびバニリンを混ぜ合わせて生地を調製した後、常法に従ってその生地からチョコレート食品を調製した。
【0151】
(2)チョコレート食品の香気分析
実施例28の「(3)チョコレート様食品の香気分析」の欄に記載される方法に従ってチョコレート食品の香気分析を行ったところ、このチョコレート食品から、特徴的な香気成分として脂肪酸類、テトラメチルピラジン(tetramethylpyrazine)、二酸化硫黄(sulfer dioxide)、スルフロール(sulfrol)が検出された。
【0152】
なお、脂肪酸類は酸臭源であり、テトラメチルピラジンは重めのナッツ様の香源であり、スルフロールは卵様の香源である。また、このチョコレート食品にもイソバレルアルデヒドが検出されたが、その含有量は、実施例28に係るチョコレート様食品の約1/3であった。
【0153】
(比較例5)
(1)チョコレート食品の調製
カカオマスが22.3質量%を占め、砂糖が33.8質量%を占め、全脂粉乳が13.2質量%を占め、乳糖が4.6質量%を占め、植物油脂としてのココアバター代用油脂が25.7質量%を占め、乳化剤としての大豆レシチンが0.3質量%を占め、香料としてのバニリンが0.1質量%を占めるように、カカオマス、砂糖、全脂粉乳、乳糖、ココアバター代用油脂、大豆レシチンおよびバニリンを混ぜ合わせて生地を調製した後、常法に従ってその生地からチョコレート食品を調製した。なお、この配合は、カカオマスにココアバターが52質量%含まれていると仮定し、本比較例のチョコレート食品中の油脂量が、比較例4のチョコレート食品に占める油脂量と同量となるように決定した。
【0154】
(2)チョコレート食品の香気分析
実施例28の「(3)チョコレート様食品の香気分析」の欄に記載される方法に従ってチョコレート食品の香気分析を行ったところ、このチョコレート食品から、特徴的な香気成分としてアセトイン(acetoin)、安息香酸2-ペンチル(2-penthyl benzoate)、グアヤコール(guaiacol)、フェネチル系化合物類、テトラメチルピラジン( tetramethylpyrazine)、二酸化硫黄( sulfer dioxide)、スルフロール(sulfrol)、フラネオール(furaneol)が検出された。
【0155】
なお、アセトインはバター様の香源であり、グアヤコールはクルミの薄皮様の香源であり、フェネチル系化合物類はハチミツ様の香源であり、テトラメチルピラジンは重めのナッツ様の香源であり、スルフロールは卵様の香源であり、脂肪酸類は酸臭源であり、フラネオールはシロップ様の甘い香りの源である。また、このチョコレート食品にもイソバレルアルデヒドが検出されたが、その含有量は、実施例28に係るチョコレート様食品の約1/3であった。
【0156】
(比較例6)
(1)カカオ様原料の調製
アスペルパウダー(登録商標)Proをアスペルパウダー(登録商標)Proの失活品に代えた以外は、実施例28と同様にして目的のカカオ様原料を得た。なお、アスペルパウダー(登録商標)Proの失活品は、アスペルパウダー(登録商標)Proを90℃で加熱して作製した。
【0157】
(2)チョコレート様食品の調製
カカオ様原料を上述のカカオ様原料に代えた以外は、実施例28の「(2)チョコレート様食品の調製」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品を調製した。
【0158】
(3)チョコレート食品の香気分析
実施例28の「(3)チョコレート様食品の香気分析」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品の香気分析を行ったところ、このチョコレート様食品から、特徴的な香気成分としてモノテルペン類、脂肪酸類、フェノール類、フラン系化合物類、ピリジン(pyridine)、ジメチルピラジン(dimethylpyrazine)、ピリジノール(pyridinol)、ピロール類、フルフラールメチルジスルフィド(furfuryl methyl disulfide)、2-チオフェンメタノール(2-thiophenemethanol)、ヘキサン酸(hexanoic acid)、n-ブタン酸(n-butyric acid)、シクロテン(cyclotene)、マルトール(maltol)が検出された。
【0159】
なお、脂肪酸類は酸臭源であり、フェノール類はクルミの薄皮様の香源であり、フラン系化合物類はカラメル様の香源であり、ピリジンは薬品様刺激臭源であり、ジメチルピラジンはナッツ様の香源であり、フルフラールメチルジスルフィドは焦げ様・ローストの香源であり、マルトールは砂糖様の香源であり、シクロテンはメープル様の香源である。また、このチョコレート食品にもイソバレルアルデヒドが検出されたが、その含有量は、実施例28に係るチョコレート様食品の約1/7であった。
【実施例0160】
(1)カカオ様原料の調製
先ず、上側ヒータ温度を100℃に、下側ヒータ温度を90℃に設定したオーブンに湿ったコーヒー豆の抽出残渣を、その水分値が5質量%以下となるまで入れて乾燥させ、乾燥残渣を得た。次に、先で得られた乾燥残渣をミルミキサーで粉砕した後、その粉砕物を目開き0.850mmの篩を用いて篩分けし、その篩を通過したもの(以下「通過粉砕物」という。)を採取した。次いで、その通過粉砕物100gに対して、10.1gの株式会社コーセーフーズ製のアスペルパウダー(登録商標)Proおよび24.4gの水を加えて55℃で47時間、その通過粉砕物を酵素処理して処理物を得た。続いて、その処理物を、上側ヒータ温度を100℃に、下側ヒータ温度を90℃に設定したオーブンに2時間入れて乾燥させ、目的のカカオ様原料を得た。
【0161】
(2)チョコレート様食品の調製
上述のカカオ様原料が10.5質量%を占め、砂糖が33.3質量%を占め、全脂粉乳が12.9質量%を占め、乳糖が4.5質量%を占め、植物油脂としてのココアバター代用油脂が38.5質量%を占め、乳化剤としての大豆レシチンが0.2質量%を占め、香料としてのバニリンが0.1質量%を占めるように、上述のカカオ様原料、砂糖、全脂粉乳、乳糖、ココアバター代用油脂、大豆レシチンおよびバニリンを混ぜ合わせて生地を調製した後、常法に従ってその生地からチョコレート様食品を調製した。
【0162】
(3)チョコレート様食品の遊離アミノ酸成分分析
ここでは、高速液体クロマトグラフ法を用いてチョコレート様食品中の遊離アミノ酸の定量分析を行った。なお、この際、検出器として蛍光光度検出器を用いた。以下、各成分の分析方法および分析結果について詳述する。
【0163】
できるだけ細砕したチョコレート様食品2.0g~3.0gを遠心管に量りとり、その遠心管に0.5mol/Lトリクロロ酢酸20mLを加えた後、その遠心管の内容物を撹拌機で20分間攪拌した後、その遠心管を遠心分離機にセットしてそれを4℃の温度環境下、10000rpmで15分間遠心分離処理した。次に、その遠心管中の上澄み液を別の遠心管に移し替えて、その別の遠心管にn-ヘキサン20mLを加えてその内容物を撹拌機で20分間攪拌した後、その別の遠心管を遠心分離機にセットしてそれを4℃の温度環境下、10000rpmで15分間遠心分離処理した。次いで、その別の遠心管中の水相を分取し、その水相に0.3mol/L水酸化リチウム溶液を加えてその水相を中和した後、その水相をクエン酸リチウム緩衝液で定容し、それを0.45μmメンブランフィルターでろ過し、そのろ液を試料溶液とした。
【0164】
上述の通りして得られた試料溶液を、以下の通りに設定された高速液体クロマトグラフィー装置に注入した。
・装置:SHIMADZU HPLC Prominence アミノ酸分析システム
・カラム:Shim-pack Amino-Li(100mmL.×6.0mmI.D)
・アンモニアトラップカラム:Shim-pack ISC-30/S0504Li(50mmL.×4.0mmI.D)
・移動相:島津アミノ酸移動相キットLi型(A液、B液、C液)
・流速:0.6mL/分
・カラム温度:39℃
・検出波長:270nm
・注入量:10μL
【0165】
なお、検出条件は以下の通りとした。
・反応試薬:島津アミノ酸分析キットOPA試薬
・反応試薬流量:0.2mL/分
・反応温度:39℃
・反応管:アミノ酸分析用配管キット
・検出器:蛍光検出(励起波長:350nm、蛍光波長:450nm)
【0166】
各遊離アミノ酸の量は次式により算出した。
各遊離アミノ酸の量(mg/100g)=(A×V×D)/(W×1000)×100
A:検量線から求めた試料溶液中の各遊離アミノ酸濃度(μg/mL)
V:試料溶液量(mL)
D:希釈倍率
W:試料採取量(g)
【0167】
その結果、本実施例に係るチョコレート様食品中の遊離アミノ酸含有量は以下の表8に示される通りであった。
【0168】
(比較例7)
(1)カカオ様原料の調製
アスペルパウダー(登録商標)Proをアスペルパウダー(登録商標)Proの失活品に代えた以外は、実施例29と同様にして目的のカカオ様原料を得た。なお、アスペルパウダー(登録商標)Proの失活品は、アスペルパウダー(登録商標)Proを90℃で加熱して作製した。
【0169】
(2)チョコレート様食品の調製
カカオ様原料を上述のカカオ様原料に代えた以外は、実施例29の「(2)チョコレート様食品の調製」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品を調製した。
【0170】
(3)チョコレート様食品の遊離アミノ酸成分分析
実施例29の「(3-2)遊離アミノ酸の定量分析」の欄に記載される方法に従ってチョコレート様食品中の遊離アミノ酸の定量分析を行ったところ、以下の表8に示される結果が得られた。
【0171】
【表8】
【0172】
以上の表8から明らかな通り、実施例29に係るチョコレート様食品は、比較例7に係るチョコレート様食品に比べて、約1.2倍のタウリン、約5倍のL-プロリン、約1.8倍のグリシン、約11.8倍のL-アラニン、約6.1倍のL-バリン、約6.7倍のL-イソロイシン、約5.4倍のL-ロイシン、約1.7倍のL-チロシン、約7倍のL-リシン、約14.2倍のL-アルギニンを含むことが明らかとなった。
【実施例0173】
(1)カカオ様原料の調製
先ず、上側ヒータ温度を100℃に、下側ヒータ温度を90℃に設定したオーブンに湿ったコーヒー豆の抽出残渣を、その水分値が5質量%以下となるまで入れて乾燥させ、乾燥残渣を得た。次に、先で得られた乾燥残渣を石臼式摩砕機(増幸産業株式会社製スーパーマスコロイダー)に1回通して粉砕した後、その粉砕物を目開き0.850mmの篩を用いて篩分けし、その篩を通過したもの(以下「通過粉砕物」という。)を採取した。なお、ここで、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.481mmであった。次いで、その通過粉砕物100gに対して、1gの株式会社コーセーフーズ製のアスペルパウダー(登録商標)Proおよび250gの水を加えて55℃で5時間、その通過粉砕物を酵素処理して処理物を得た。続いて、その処理物を、上側ヒータ温度を100℃に、下側ヒータ温度を90℃に設定したオーブンに2時間入れて乾燥させ、目的のカカオ様原料を得た。なお、この際、通過粉砕物の質量に対するアスペルパウダー(登録商標)Proの質量の割合は1質量%(=1g/100g×100)となる。
【0174】
(2)カカオ様原料の遊離アミノ酸成分分析
実施例29の「(3)チョコレート様食品の遊離アミノ酸成分分析」の欄に示される方法に従って、本実施例に係るカカオ様原料中の遊離アミノ酸含有量を定量分析してところ以下の表9に示される結果が得られた。
【実施例0175】
(1)カカオ様原料の調製
アスペルパウダー(登録商標)Proの添加量を15gに代え、乾燥残渣の酵素処理時間を2.5時間に代えた以外は、実施例30と同様にして目的のカカオ様原料を得た。なお、この際、通過粉砕物の質量に対するアスペルパウダー(登録商標)Proの質量の割合は15質量%(=15g/100g×100)となる。また、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.481mmであった。
【0176】
(2)カカオ様原料の遊離アミノ酸成分分析
実施例29の「(3)チョコレート様食品の遊離アミノ酸成分分析」の欄に示される方法に従って、本実施例に係るカカオ様原料中の遊離アミノ酸含有量を定量分析してところ以下の表9に示される結果が得られた。
【実施例0177】
(1)カカオ様原料の調製
アスペルパウダー(登録商標)Proの添加量を15gに代え、乾燥残渣の酵素処理時間を40時間に代えた以外は、実施例30と同様にして目的のカカオ様原料を得た。なお、この際、通過粉砕物の質量に対するアスペルパウダー(登録商標)Proの質量の割合は15質量%(=15g/100g×100)となる。また、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.481mmであった。
【0178】
(2)カカオ様原料の遊離アミノ酸成分分析
実施例29の「(3)チョコレート様食品の遊離アミノ酸成分分析」の欄に示される方法に従って、本実施例に係るカカオ様原料中の遊離アミノ酸含有量を定量分析してところ以下の表9に示される結果が得られた。
【実施例0179】
(1)カカオ様原料の調製
アスペルパウダー(登録商標)Proの添加量を25gに代え、乾燥残渣の酵素処理時間を65時間に代えた以外は、実施例30と同様にして目的のカカオ様原料を得た。なお、この際、通過粉砕物の質量に対するアスペルパウダー(登録商標)Proの質量の割合は25質量%(=25g/100g×100)となる。また、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.481mmであった。
【0180】
(2)カカオ様原料の遊離アミノ酸成分分析
実施例29の「(3)チョコレート様食品の遊離アミノ酸成分分析」の欄に示される方法に従って、本実施例に係るカカオ様原料中の遊離アミノ酸含有量を定量分析してところ以下の表9に示される結果が得られた。
【実施例0181】
(1)カカオ様原料の調製
1gのアスペルパウダー(登録商標)Proを0.3gの天野エンザイム株式会社製のプロテアーゼM「アマノ」SDに代えたと共に、通過粉砕物の酵素処理時間を20時間に代え、さらに酵素処理温度を40℃に代えた以外は、実施例30と同様にして目的のカカオ様原料を得た。なお、この際、通過粉砕物の質量に対するプロテアーゼM「アマノ」SDの質量の割合は0.3質量%(=0.3g/100g×100)となる。また、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.481mmであった。
【0182】
(2)カカオ様原料の遊離アミノ酸成分分析
実施例29の「(3)チョコレート様食品の遊離アミノ酸成分分析」の欄に示される方法に従って、本実施例に係るカカオ様原料中の遊離アミノ酸含有量を定量分析してところ以下の表9に示される結果が得られた。
【0183】
(比較例8)
(1)通過粉砕物の調製
先ず、上側ヒータ温度を100℃に、下側ヒータ温度を90℃に設定したオーブンに湿ったコーヒー豆の抽出残渣を、その水分値が5質量%以下となるまで入れて乾燥させ、乾燥残渣を得た。次に、先で得られた乾燥残渣を石臼式摩砕機(増幸産業株式会社製スーパーマスコロイダー)に1回通して粉砕した後、その粉砕物を目開き0.850mmの篩を用いて篩分けし、その篩を通過したもの(以下「通過粉砕物」という。)を採取した。なお、ここで、実施例1に示される方法に従って、通過粉砕物の湿潤時の平均粒径D50を求めたところ同平均粒径は0.481mmであった。
【0184】
(2)通過粉砕物の遊離アミノ酸成分分析
実施例29の「(3)チョコレート様食品の遊離アミノ酸成分分析」の欄に示される方法に従って、本比較例に係る通過粉砕物中の遊離アミノ酸含有量を定量分析してところ以下の表9に示される結果が得られた。なお、通過粉砕物の遊離アミノ酸成分分析においてのみ、遠心管への通過粉砕物の採取量を1.0g~3.0gとした。
【0185】
【表9】