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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024086960
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ろ過膜の作製
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/36 20060101AFI20240621BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20240621BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20240621BHJP
   B01D 71/44 20060101ALI20240621BHJP
   B01D 69/06 20060101ALI20240621BHJP
   B01D 69/08 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
B01D71/36
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/44
B01D69/06
B01D69/08
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024067934
(22)【出願日】2024-04-19
(62)【分割の表示】P 2022113802の分割
【原出願日】2017-10-20
(31)【優先権主張番号】62/416,340
(32)【優先日】2016-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】319009901
【氏名又は名称】トラスティーズ オブ タフツ カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】プリティ ベンガニ-ルッツ
(72)【発明者】
【氏名】アレクシウ アサテキン
(57)【要約】
【課題】ろ過膜を調製する方法を提供する。
【解決手段】その方法は、助溶媒と第1の有機溶媒との混合物中に統計コポリマーを溶解させることによりコポリマー溶液を提供する工程、前記コポリマー溶液を多孔質支持層上にコーティングして支持層上にポリマー層を形成する工程、前記支持層上のポリマー層を凝固させて薄膜複合膜を形成する工程、及び前記薄膜複合膜を水浴中に浸漬してろ過膜を得る工程を含む。また、その方法により調製されたろ過膜、並びにこのように調製されたろ過膜を用いて液体をろ過するプロセスも開示する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質支持層;及び
前記多孔質支持層上にコーティングされたポリマー層
を含むろ過膜であって、
前記ポリマー層は、前記多孔質支持層上において凝固して薄膜複合膜を形成し、助溶媒と有機溶媒との混合物中に統計コポリマーを溶解させることにより形成されたコポリマー溶液を含み、
前記有機溶媒は前記助溶媒と異なり、
前記コポリマー溶液は、1~99w/v%の統計コポリマー、5~49v/v%の助溶媒、及び51~95v/v%の有機溶媒を含み、
前記統計コポリマーは、双性イオン繰り返し単位及び疎水性繰り返し単位を含み、前記双性イオン繰り返し単位は統計コポリマーの30~50質量%を構成し、前記疎水性繰り返し単位は統計コポリマーの50~70質量%を構成し、かつ前記統計コポリマーは、ポリ((トリフルオロエチルメタクリラート)-r-(スルホベタインメタクリラート))、ポリ((メチルメタクリラート)-r-(スルホベタインメタクリラート))、ポリ((トリフルオロエチルメタクリラート)-r-(3-(2-ビニルピリジニウム-1-イル)プロパン-1-スルホナート))、ポリ((トリフルオロエチルメタクリラート)-r-(ホスホリルコリンメタクリラート)、及びポリ((トリフルオロエチルメタクリラート)-r-(3-(2-ビニルピリジニウム-1-イル)ブタン-1-スルホナート))からなる群から選択され、
前記助溶媒は水及び前記有機溶媒の両方と混和性を有し、
前記ろ過膜は、0.5~5nmの有効孔径、及び10Lm-2-1bar-1以上の水透過係数を有する、ろ過膜。
【請求項2】
前記有機溶媒は、トリフルオロエタノール、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ヘキサフルオロイソプロパノール、N-メチル-2-ピロリドン、ピリジン、ジオキサン、トルエン、クロロホルム、ベンゼン、四塩化炭素、クロロベンゼン、1,1,2-トリクロロエタン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、キシレン、テトラヒドロフラン、メタノール、及びエタノールからなる群より選択される、請求項1に記載のろ過膜。
【請求項3】
前記助溶媒は、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、ジオキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、2-ブタノール、2-ブタノン、メタノール、硝酸エチルアンモニウム、及びエタノールからなる群より選択される、請求項1に記載のろ過膜。
【請求項4】
前記多孔質支持層は、ポリマー層の有効孔径よりも大きい有効孔径を有し、かつポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンスフフィドスルホン、ポリアクリルニトリル、セルロースエステル、ポリフェニレンオキシド、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアリルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリアミド、ポリイミド、又はそれらの組合せにより形成される、請求項1に記載のろ過膜。
【請求項5】
前記多孔質支持層はフラットシート膜又は中空糸膜である、請求項4に記載のろ過膜。
【請求項6】
液体をろ過するプロセスであって、
支持層及びポリマー選択層を有する請求項1に記載のろ過膜を提供する工程;
液体を、最初にポリマー選択層を通し、その後支持層を通して、前記ろ過膜を通過させる工程;及び
前記ろ過膜を透過する液体を回収する工程;
を含む、プロセス。
【請求項7】
前記コポリマー溶液は20v/v%の助溶媒を含む、請求項1に記載のろ過膜。
【請求項8】
前記膜は10w/v%のコポリマーを含む、請求項1に記載のろ過膜。
【請求項9】
前記コポリマー溶液は20v/v%の助溶媒を含み、前記膜は10w/v%のコポリマーを含む、請求項1に記載のろ過膜。
【請求項10】
前記有機溶媒はトリフルオロエタノールである、請求項1に記載のろ過膜。
【請求項11】
多孔質支持層;及び
前記多孔質支持層上にコーティングされたポリマー層
を含むろ過膜であって、
前記ポリマー層は、前記多孔質支持層上において凝固して薄膜複合膜を形成し、助溶媒と有機溶媒との混合物中に統計コポリマーを溶解させることにより形成されたコポリマー溶液を含み、
前記有機溶媒は前記助溶媒と異なり、
前記コポリマー溶液は、1~99w/v%の統計コポリマー、5~49v/v%の助溶媒、及び51~95v/v%の有機溶媒を含み、
前記統計コポリマーは、双性イオン繰り返し単位及び疎水性繰り返し単位を含み、前記双性イオン繰り返し単位は統計コポリマーの30~50質量%を構成し、前記疎水性繰り返し単位は統計コポリマーの50~70質量%を構成し、かつ前記統計コポリマーはポリ((トリフルオロエチルメタクリラート)-r-(スルホベタインメタクリラート))であり、
前記有機溶媒はエタノールである、ろ過膜。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ろ過膜は、食品、乳製品、飲料及び医薬産業における精製及び分離でのその幅広い利用のため大いに注目されている。
【0002】
高流束(すなわち高透過性)及び高選択性を有する膜は、エネルギー効率のよい膜分離のために望ましい。膜透過流束を改善するための既存の方法としてグラフト及びブレンドが挙げられる。これらの方法は、非常に長い製造工程或いは後処理工程を必要とし、選択性の損失をもたらすか、或いは特定の膜タイプ(例えば、多孔質限外ろ過膜及び精密ろ過膜)のみを提供するかのいずれかであり、従って緻密選択層を有するろ過膜を作製する際にそれらの使用は制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高透過性でかつ高選択的なろ過膜を調製する新規な方法に対する要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この要求を満たすためにろ過膜を調製する方法をここに開示する。
【0005】
その方法は以下の工程:(i)助溶媒(co-solvent)と第1の有機溶媒との混合物中に統計コポリマーを溶解させることによりコポリマー溶液を提供する工程;(ii)前記コポリマー溶液を多孔質支持層上にコーティングして支持層上にポリマー層を形成する工程;(iii)前記支持層上のポリマー層を凝固させて薄膜複合膜を形成する工程;及び(iv)前記薄膜複合膜を水浴中に浸漬してろ過膜を得る工程;を含む。
【0006】
コポリマー溶液は、1~99w/v%(例えば、1~50w/v%、及び3~30w/v%)で統計コポリマー、1~99v/v%(例えば、1~80v/v%、及び5~49v/v%)で助溶媒、及び1~99v/v%(例えば、20~99v/v%、及び51~95v/v%)で第1の有機溶媒を含有する。
【0007】
統計コポリマーは、双性イオン繰り返し単位及び疎水性繰り返し単位を含み、双性イオン繰り返し単位は統計コポリマーの15~75質量%(例えば、20~70質量%、及び30~50質量%)を構成し、疎水性繰り返し単位は統計コポリマーの25~85質量%(例えば、30~80質量%、及び50~70質量%)を構成し、疎水性繰り返し単位は、0℃以上(例えば、室温以上)のガラス転移温度を有するホモポリマーを形成することができる。
【0008】
助溶媒は、イオン液体、界面活性剤分子、又は第2の有機溶媒であってよい。重要なこととして、助溶媒は、水及び第1の有機溶媒の両方と混和性を有する。
【0009】
第1の有機溶媒の例として、それらに限定はされないが、トリフルオロエタノール、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ヘキサフルオロイソプロパノール、N-メチル-2-ピロリドン、ピリジン、ジオキサン、トルエン、クロロホルム、ベンゼン、四塩化炭素、クロロベンゼン、1,1,2-トリクロロエタン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、キシレン、テトラヒドロフラン、メタノール、及びエタノールが挙げられる。第2の有機溶媒の例として、それらに限定はされないが、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、ジオキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、2-ブタノール、2-ブタノン、メタノール、及びエタノールが挙げられる。
【0010】
凝固工程、すなわち工程(iii)は、典型的には、(コポリマー溶液を多孔質支持層上に塗布した後に形成される)ポリマー層を60分又はそれより少ない時間(例えば、10分、及び20秒)空気乾燥することにより行われる。それは、コーティング工程、すなわち工程(ii)で形成された多孔質支持層と一緒になったポリマー選択層を非溶媒浴中に60分又はそれより少ない時間(例えば、20分、及び10分)浸漬することによっても行うことができる。典型的には、非溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、水、又はそれらの組合せである。
【0011】
上記の方法は、浸漬工程、すなわち工程(iv)の後に、アニーリング工程をさらに含んでいてよく、アニーリング工程では、そうして得られたろ過膜を50℃又はそれより高い温度(例えば、70℃、及び90℃)で水浴中においてアニール処理する。
【0012】
上記方法により調製されたろ過膜も本発明の範囲内である。その膜は、0.5~5nm(例えば、0.6~3nm、及び0.8~2nm)の有効孔径、10Lm-2-1bar-1又はそれより高い(例えば、20Lm-2-1bar-1又はそれより高い、及び30Lm-2-1bar-1又はそれより高い)水透過係数を有する。
【0013】
本発明は、このように調製されたろ過膜を用いて液体をろ過するプロセスをさらに包含する。
【0014】
そのプロセスは以下の工程:支持層及びポリマー選択層を有する、上記の方法により調製されたろ過膜を提供する工程;液体を、最初にポリマー選択層を通し、その後支持層を通して、ろ過膜を通過させる工程;及び最後に、ろ過膜を透過する液体を回収する工程;を含む。
【0015】
本発明の詳細を以下の説明に記載する。本発明の他の特徴、目的及び利点は、以下の図面及びいくつかの実施形態の詳細な説明、並びに添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】膜の断面SEM像の概略図である。左から右へ:コーティングしていないPVDF 400R基材膜(試料2-5)、並びに異なる量のイオン液体助溶媒を用いて調製された3つの修飾P40膜:IL2(試料2-1)、IL5(試料2-2)及びIL20(試料2-3):の断面SEM像。全ての試料が緻密コーティングを示す。2%イオン液体助溶媒を用いた試料2-1は、約1μmの緻密コーティングを示す。5%イオン液体助溶媒を用いた試料2-2は約0.7μmの緻密コーティングを示す。20%イオン液体助溶媒を用いた試料2-3は約2.5μmの緻密コーティングを示す。
図2】緻密コポリマーコーティングを示す、IL20膜(試料2-3)の断面FESEM像の概略図。
図3】異なる計算分子直径の荷電分子及び中性分子のニートP40膜及び修飾P40膜IL20による阻止の概略図。両方の膜が約0.8~1nmのサイズカットオフを有する選択性を示した。
図4】膜形成中に異なる溶媒蒸発時間を用いて調製されたIL20膜のSEM像の概略図。左から右へ:IL20_b、20秒間乾燥した膜(試料3-1);IL20_c、2分間乾燥した膜(試料3-2);IL20_d、10分間乾燥した膜(試料3-3);及びIL20_e、20分間乾燥した膜(試料3-4)。全ての試料が1~6μmの厚さの緻密コーティングを示す。
図5】ニートP40(試料2-4、上側)及びIL20膜(試料2-3、下側)の空気乾燥した試料のFTIRスペクトルの概略図。膜構造又は形態に有意な変化は見られない。スペクトルはIL20膜のコポリマー層が無損傷であることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
最初に、高い流束及び選択性を有するろ過膜を調製する方法をここに詳細に開示する。
【0018】
ブロックコポリマー(BCP)での研究は、コポリマー組成(例えば、モノマー構造及びモノマー比)を変化させ、添加剤(例えば、ホモポリマー及び金属塩)を用い、及び溶媒(例えば、メタノール及びイソプロパノール)を混合することを含む、ある方法によってコポリマーキャスト溶液を調節することにより、コポリマーの挙動を変化させ及び膜性能を改善することができることを示す。
【0019】
BCP自己組織化は、典型的には、10~100nmのドメインサイズに制限される。Park et al., Polymer, 2003, 44, 6725-6760を参照のこと。これまでに報告されている最小のドメインサイズは約3nmであり、そのサイズは5000g/mol未満の分子量カットオフ(MWCO)を有する膜に必要とされるよりもまだかなり大きい。Park et al., Science, 2009, 323, 1030-1033を参照のこと。
【0020】
ランダムコポリマー、すなわち統計コポリマーは、約1nmの孔径を有する膜の選択層として機能することが報告されている。Bengani et al., Journal of Membrane Science, 2015, 493, 755-765を参照のこと。約1nmの孔径を有する膜は、バイオテクノロジー、生物化学、食品、飲料及び水処理産業における小分子の分離及び精製に非常に役立つ。
【0021】
ランダムコポリマーの膜形成中における、キャスト溶液での例えばイオン液体などの助溶媒の使用や、それらが膜性能にどのように影響するかについての研究は報告されていない。
【0022】
上述したように、本発明に包含されるろ過膜を調製する方法は、以下の工程:(i)助溶媒と第1の有機溶媒との混合物中に統計コポリマーを溶解させることによりコポリマー溶液を提供する工程;(ii)前記コポリマー溶液を多孔質支持層上にコーティングして支持層上にポリマー層を形成する工程;(iii)前記支持層上のポリマー層を凝固させて薄膜複合膜を形成する工程;及び(iv)前記薄膜複合膜を水浴中に浸漬してろ過膜を得る工程;を含む。
【0023】
コポリマー溶液を調製するのに用いられる助溶媒は、水及び第1の有機溶媒の両方と混和性を有する(混和することができる)。典型的には、助溶媒は100℃以下(例えば、50℃以下、及び室温以下)の温度で液状である。助溶媒は、コポリマー溶液中の統計コポリマーの自己組織化を変更することができる。
【0024】
方法の一実施形態において、助溶媒はイオン液体である。イオン液体は、典型的には、アンモニウム、イミダゾリウム、ピペリジニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ホスホニウム、スルホニウム、グアニジニウム、ジエタノールアンモニウム、アルキルアンモニウム、アルキルイミダゾリウム、アルキルピペリジニウム、アルキルピリジニウム、アルキルピロリジニウム、アルキルホスホニウム、アルキルスルホニウム、アルキルグアニジニウム、及びアルキルジエタノールアンモニウムの1つ又は複数のカチオン;及び
ニトラート、スルホナート、メタンスルホナート、アルキルスルホナート、フルオロアルキルスルホナート、スルファート、メチルスルファート、アルキルスルファート、フルオロアルキルスルファート、ホスファート、メチルホスファート、アルキルホスファート、フルオロアルキルホスファート、ホスフィナート、メチルホスフィナート、アルキルホスフィナート、フルオロアルキルホスフィナート、ハロゲン、トリフルオロメタンスルホナート、ジヒドロゲンホスファート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、アルキルイミド、アルキルアミド、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファート、ホルマート、アセタート、トリフルオロアセタート、ジシアナミド、デカノアート、アルキルメチド、及びアルキルボラートの1つ又は複数のアニオンを含む。イオン液体の例として、それらに限定はされないが、エチルアンモニウムニトラート(又は硝酸エチルアンモニウム)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムエチルスルファート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、1-ブチルピリジニウムブロミド、及び2-ヒドロキシエチル-ジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナートが挙げられる。
【0025】
方法の別の実施形態では、助溶媒は界面活性剤分子である。界面活性剤分子は、一般的に、スルファート、スルホナート、ホスファート、カルボキシラート、ニトラート、又はスルホスクシナートのアニオン基;及び、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、四級アンモニウム、イミダゾリウム、ピペリジニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、又はホスホニウムから形成されるカチオン基を含む。界面活性剤分子の例として、それらに限定はされないが、直鎖アルキルベンゼンスルホナート、リグニンスルホナート、脂肪族アルコールエトキシレート、アルキルフェニルエトキシレート、リン脂質、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、及びスフィンゴミエリンが挙げられる。
【0026】
コポリマー溶液は、双性イオン繰り返し単位及び疎水性繰り返し単位を含む統計コポリマーから形成される。
【0027】
双性イオン繰り返し単位は各々、独立して、スルホベタイン、カルボキシベタインホスホリルコリン、又はピリジニウムアルキルスルホナートを含んでいてよく;疎水性繰り返し単位は各々、独立して、スチレン、フッ素化スチレン、メチルメタクリラート、アクリルニトリル、又はトリフルオロエチルメタクリラートから形成されていてよい。一実施形態では、双性イオン繰り返し単位は各々、独立して、スルホベタインアクリラート、スルホベタインアクリルアミド、ホスホリルコリンアクリラート、ホスホリルコリンアクリルアミド、ホスホリルコリンメタクリラート、カルボキシベタインアクリラート、カルボキシベタインメタクリラート、カルボキシベタインアクリルアミド、3-(2-ビニルピリジニウム-1-イル)プロパン-1-スルホナート、3-(2-ビニルピリジニウム-1-イル)ブタン-1-スルホナート、3-(4-ビニルピリジニウム-1-イル)プロパン-1-スルホナート、又はスルホベタインメタクリラートから形成され;疎水性繰り返し単位は各々、独立して、メチルメタクリラート、アクリルニトリル、又はトリフルオロエチルメタクリラートから形成される
【0028】
上記の双性イオン繰り返し単位及び疎水性繰り返し単位から形成される統計コポリマーの例として、それらに限定はされないが、ポリ((トリフルオロエチルメタクリラート)-r-(スルホベタインメタクリラート))、ポリ((メチルメタクリラート)-r-(スルホベタインメタクリラート))、ポリ((トリフルオロエチルメタクリラート)-r-(3-(2-ビニルピリジニウム-1-イル)プロパン-1-スルホナート))、ポリ((トリフルオロエチルメタクリラート)-r-(ホスホリルコリンメタクリラート)、及びポリ((トリフルオロエチルメタクリラート)-r-(3-(2-ビニルピリジニウム-1-イル)ブタン-1-スルホナート))が挙げられる。
【0029】
方法の一実施形態では、双性イオン繰り返し単位は、統計コポリマーの30~50質量%を構成し、疎水性繰り返し単位は統計コポリマーの50~70質量%を構成し、統計コポリマーはポリ((トリフルオロエチルメタクリラート)-r-(スルホベタインメタクリラート))であり、助溶媒は硝酸エチルアンモニウムであり、かつ第1の有機溶媒はトリフルオロエタノールである。
【0030】
このように形成されたコポリマー溶液を、当該分野で公知の方法(例えば、ドクターブレードコーティング、スプレーコーティング、及びディップコーティング)の何れかを用いて多孔質支持層上にコーティングすることができる。
【0031】
典型的には、凝固工程は、60分又はそれより少ない時間(例えば、20分、10分、2分、及び20秒)、ポリマー層を空気乾燥することにより行われる。それは、ポリマー層を非溶媒浴中に60分又はそれより短い時間(例えば、40分、30分、20分、及び10分)浸漬することによっても行うことができる。
【0032】
上記の方法は、同じポリマー材料を用いて、選択性を犠牲にせず、またいずれの新たな工程も加えることなく、膜製造工程を変更することによって膜の流束及び透過性を効果的に改善する。
【0033】
上記の方法により調製されたろ過膜もここに詳細に開示する。
【0034】
上記の方法により調製された膜は、予想外に、30Lm-2-1bar-1又はそれより高い透過係数を示し、それは、助溶媒を用いずに調製された膜の透過係数よりも1桁高い値である。さらに、このように調製された膜は、負に荷電した色素及び中性色素をろ過することにより実証されるように、1~2nmの有効孔径又は1000~5000DaのMWCOを有する選択性を維持しながら、狭い孔径分布も示す。さらには、これら膜は、0~20%の範囲内の、例えば硫酸マグネシウム(MgSO)の保持など、低い塩類の保持を示す。これら膜の性能は、コポリマー組成、助溶媒(例えばイオン液体)のタイプ及び量、並びに膜作製条件(例えば、非溶媒及び乾燥時間)によって異なる。
【0035】
このように調製されたろ過膜を用いて液体をろ過するプロセスも本発明の範囲内である。
【0036】
上述したように、プロセスは3つの工程:(i)支持層及びポリマー選択層を有する、上記の方法により調製されたろ過膜を提供する工程;(ii)液体を、最初にポリマー選択層を通し、その後支持層を通して、ろ過膜を通過させる工程;及び(iii)ろ過膜を透過する液体を回収する工程;を含む
【0037】
本発明のプロセスの適用の例として、それらに限定はされないが、同様の電荷を有するが異なるサイズの2種類の色素又は溶質の混合物の分離、異なるサイズを有する2種類の水溶性有機分子の分離、水中に溶解したモノマー及びオリゴマーの混合物の分離、水中に溶解したペプチド、栄養補助食品、酸化防止剤及び他の小分子の混合物の分離、排水処理、天然水源の処理(例えば、地上水及び地下水)、並びに水からのイオンの除去が挙げられる。
【0038】
更なる詳述なしに、当業者は、上記の説明に基づき、本発明を最大限に利用することができると考えられる。従って、以下の具体例は単なる例示であり、決して本開示の残りの限定ではないと解釈されるべきである。本明細書で挙げられている刊行物は参照によりその全体が組み込まれる。
【実施例0039】
実施例1:統計コポリマー ポリ(トリフルオロエチルメタクリラート-ランダム-スルホベタインメタクリラート)(PTFEMA-r-SBMA又はP40)の調製
この実施例では、Bengani et al., Journal of Membrane Science, 2015, 493, 755-765に報告されているプロトコルに従い統計コポリマーを合成した。
【0040】
より具体的には、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリラート(TFEMA、Sigma Aldrich)を塩基性活性アルミナ(VWR)のカラムに通して阻害剤を除去した。スルホベタインメタクリラート(SBMA;5g、17.9mmol)を、350rpmで撹拌しながら、丸底フラスコ中のジメチルスルホキシド(DMSO、100ml)に溶解させた。TFEMA(5g、29.7mmol)及び熱開始剤アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、0.01g、Sigma Aldrich)をフラスコに添加した。フラスコをゴムセプタムで密閉し、窒素をフラスコ内容物に通して20分間バブリングして溶解酸素をパージした。次いで、フラスコを350rpmで撹拌しながら70℃の油浴中に置いた。少なくとも16時間後、0.5gの4-メトキシフェノール(MEHQ)を添加して反応を終わらせた。エタノールとヘキサンとの50:50混合物中において反応混合物を沈殿させた。生成物を真空ろ過し、2つの新鮮なメタノール中においてポリマーを数時間撹拌することにより残留溶媒及びモノマーを抽出し、次いで50℃で一晩真空オーブンにおいて乾燥してコポリマーPTFEMA-r-SBMAを得た。SBMAのプロトン(2~3.5ppm)に対する総骨格プロトン(0.5~2ppm)の比を用いて、この白いコポリマーの組成をH-NMRスペクトルから計算した。このように得たコポリマーは36質量%のSBMAを含有することが特定された。
【0041】
実施例2:異なる量のイオン液体を用いて調製された修飾P40コポリマー膜の調製
この実施例では、下記の通り、イオン液体の存在下又は不在下で実施例1に記載のコポリマーを用いていくつかの膜を調製した。
【0042】
より具体的には、イオン液体である硝酸エチルアンモニウム(EAN、Iolitec)をトリフルオロエタノール中に溶解させた。コポリマー(1g)を9mLの全溶媒含量(イオン液体及びトリフルオロエタノール)中に溶解させ、従ってコポリマー濃度を10%(w/v)で一定に維持してコポリマー溶液を形成した。0mL、0.2mL、0.5mL、及び2mLのイオン液体を、それぞれ9mL、8.8mL、8.5mL、及び7mLのトリフルオロエタノール中に混合し、さらに各々に1gのコポリマーを溶解させることにより、P40、IL2、IL5及びIL20溶液を調製した。コポリマー溶液をおよそ50℃で少なくとも2時間撹拌して10%(w/v)コポリマーキャスト溶液を調製した。各コポリマーキャスト溶液を0.45μmのシリンジフィルター(Whatman)に通し、さらに少なくとも2時間真空オーブン中で脱気した。25μmのドクターブレードギャップを用いて、市販の限外ろ過(UF)膜上にコポリマーキャスト溶液の薄層をコーティングすることにより膜を調製した。Nanostone Water(Eden Prairie、MN)から購入したフッ化ポリビニリデン(PVDF)400R限外ろ過膜を基材膜(base membrane)として用いた。コーティングの後、膜をイソプロパノール、すなわち極性非溶媒浴中に20分間浸漬させ、次いで水浴中に少なくとも一晩浸漬させた。水溶性であるため、イオン液体は水浴中に効率的に除去され、保存のため膜を別の水浴に移した。
【0043】
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて凍結割断した断面を検査することにより被膜の厚さ及び形態を決定した。図1を参照のこと。
【0044】
この図は、左から右へ、非コーティングPVDF400R基材膜、並びにイオン液体を用いて調製された3つの修飾P40膜:IL2、IL5、及びIL20:のSEM像を示し、それらは全て同じ倍率である。PVDF400R基材膜のSEM像と比較して、IL2、IL5及びIL20のSEM像は、25μmのドクターブレードギャップを用いて形成された約0.5~3μmの厚さを有する緻密コーティング層(すなわち、粗大孔もマクロボイドもない)を示す。コーティングの厚さは、所定のドクターブレードギャップサイズに関して、コポリマーキャスト溶液中のイオン液体の量に依って0.5~3μmの間で変動する。
【0045】
電界放射走査型電子顕微鏡(FESEM)を用いて膜の凍結割断した断面を検査することによりIL20膜(試料2-3)の被膜の形態をさらに特徴づけした。図2を参照のこと。IL20のFESEMは、緻密コーティング層が形成されたことを示す。
【0046】
実施例3:異なる量のイオン液体を用いて調製された修飾P40コポリマー膜の水透過性
この実施例では、下記の通り、実施例2に記載されている膜を通る純水流束を測定した。
【0047】
この試験は、10mLのセル容量及び4.1cmの有効膜ろ過面積を有するAmicon 8010撹拌式全量ろ過セル(Millipore)を用いて実施した。セルを連続的に撹拌し、10psi(0.7バール)で試験を実施した。少なくとも1時間の安定化期間の後、透過水試料を一定間隔にわたり回収した。TWedge 2.4ソフトウェア(TEC-IT、オーストリア)を用いて30秒ごとに自動的に測定を実施するDellラップトップに接続したScout Pro SP401天秤はかりにより透過水質量を測定した。透過水体積をろ過面積及び実験時間で割ることにより流束を計算する。圧力により流束値を正規化することにより純水の透過係数を得る(下記表1を参照のこと)。
【0048】
ニートP40膜、並びに膜形成中に異なる量のイオン液体を用いて調製された修飾P40コポリマー膜の水の透過係数(permeance)及び透過性(permeability)を下記表1に示す。ニートP40膜(試料2-4)、並びに3つの修飾P40膜、すなわちIL2(試料2-1)、IL5(試料2-2)、及びIL20(試料2-3)の両方の膜で試験を実施した。
【0049】
ニートP40膜の透過係数は6.1±1L/mh.barであることが分かったが、修飾P40膜IL20の透過係数は、予想外に、50±2L/mh.barより高く、すなわちニートP40膜と比較して1桁高いことが分かった。ニートP40膜の透過性は6.4±1L.μm./mh.barであることが分かったが、IL20膜の透過性は、そのより厚いコーティングにもかかわらず、125±5L.μm./mh.barより高く、すなわちニートP40膜と比較して2桁高いことが分かった。IL20膜の透過性は、その厚いコーティングにもかかわらず、市販のナノろ過膜(NF)膜よりもはるかに高かった。試験したIL20膜は、常に>2.5μmの厚さであるコーティングを有していた。比較して、市販のNF膜は、<0.1μm程度の薄さの選択層を有する。PVDF400R基材膜の透過係数は200+20L/mh.barである。
【0050】
IL2及びIL5膜の透過係数はそれぞれ、0.7±0.2L/mh.bar及び1.7±0.7L/mh.barであり、すなわち、コーティングの厚さは同様であるか又はIL5膜に関してはわずかに薄いにもかかわらず、いずれの助溶媒も用いないで調製されたニートP40膜の透過係数よりも若干低いことが分かった。このことは、実施例2に記載されている特定の膜に関して、少なすぎるイオン液体含量(≦5%)が、コポリマー層を通る水透過性を全く増加させないか或いは減少させたことを示す。キャスト溶液中の50%イオン液体含量を用いて調製されたコーティングは、水中のコーティングの乏しい完全性をもたらした。このことは、膜透過性の増加が、所定のコポリマー組成(すなわち、コポリマー中の双性イオン及び疎水性繰り返し単位の比)について、特定範囲のイオン液体濃度(すなわち、キャスト溶液中のイオン液体の体積)に関して生じたことを示す。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例4:P40膜及び修飾P40コポリマー膜IL20の色素阻止
この実施例では、負に荷電した溶質及び中性溶質(色素及びビタミン)を用いて、実施例2に記載のように調製された膜の有効孔径又はサイズカットオフ値を特定した。
【0053】
これら溶質は、固くかつその濃度を紫外可視分光法により容易かつ正確に測定できるため用いられた。10mLのセル容量及び4.1cmの有効膜ろ過面積を有するAmicon 8010撹拌式全量ろ過セル(Millipore)上で溶質阻止実験を実施した。P40膜及び修飾P40膜IL20の膜透過係数の違いを説明するために、フィード圧を調節することにより6.1L.m-2.hr-1(P40膜の初期流束に等しい)の一定の初期水透過流束で試験を実施した。たとえ溶質を導入した際に膜透過流束が低下しても、実験を通してこの圧力を一定に維持した。セルを連続的に撹拌して、濃度分極の影響を最小にした。少なくとも1時間膜に純水を通した後、セルを空にして、プローブ溶質の100mg/L水溶液で満たした。最初の1mlを捨てた後、次の1mlの試料を紫外可視分光法による分析のために回収した。セルを脱イオン水で数回洗浄した。新たなプローブ溶質に交換する前に、透過物が透明になるまで脱イオン水を膜に通してろ過した。図3は、実施例2及び3で述べたニートP40膜(試料2-4)及びIL20膜(試料2-3)による、様々な負に荷電した溶質及び中性溶質の保持を示す。
【0054】
有効膜サイズカットオフを試験するのに用いられた溶質の分子サイズ及び電荷、並びにニートP40膜及びIL20膜によるそれらの阻止を下記表2に示す。
【表2】
【0055】
上記の表2に示される溶質の直径は、ChemSWによるMolecular Modeling Proソフトウェアにより得られた分子体積値に基づき、計算された分子体積を用い、さらに対応体積の範囲をこの値にフィッティングさせて計算した。これら陰イオン性及び中性溶質のろ過に基づき、イオン液体助溶媒を用いて調製された膜のサイズカットオフは0.8nmと1nmとの間であることが分かり、表2に示すように、これら溶質の阻止はその電荷よりも溶質の分子サイズに直接関連した。
【0056】
本質的に、ニートP40膜と修飾P40膜IL20との間で孔径に測定可能な変化は見られなかった。IL20膜は、予想外に、狭い孔径分布を示すことが見られ、そのような狭い孔径分布はこの孔径範囲の膜で達成するのはとりわけ難しい。より重要なこととして、コポリマーキャスト溶液において助触媒としてイオン液体を用いることにより、その選択性を維持しながら流束が予想外に10倍改善された。孔径を犠牲にすることなく膜透過流束を改善することが知られている方法はほとんどないため、膜製造のこの方法は、非常に有益である。
【0057】
異なる量のイオン液体助溶媒を用いて調製された膜の中で、IL20膜が最も高い選択層透過性を有し、その選択性を維持しながら、ニートP40膜と比較して透過係数の10倍の上昇をもたらした。スクリーニングのこの段階で、IL20膜を更なる試験のための第一候補として選択した。
【0058】
実施例5:異なる量のイオン液体助溶媒を用いて調製された修飾P40コポリマー膜による塩阻止
この実施例では、下記の通り、実施例2に記載のように調製された膜を保持試験で用いてそれらの塩保持特性を決定した。
【0059】
10mLのセル容量及び4.1cmの有効膜ろ過面積を有するAmicon 8010撹拌式全量ろ過セル(Millipore;特定のキャパシティを有するろ過装置)上で保持試験を実施した。P40膜及び修飾P40膜IL20の膜透過係数の違いのため、一定の初期流束条件下で試験を実施した。セルを連続的に撹拌して、濃度分極の影響を最小にした。少なくとも1時間膜に純水を通した後、セルを空にして、200mg/Lの硫酸マグネシウム(MgSO、Aldrich)溶液で満たした。最初の平衡期間の後、標準導電率プローブにより分析するためにろ液を回収した。セルを水で数回洗浄し、別の供給溶液に交換する前に純水を膜に通した。
【0060】
MgSO塩の保持率は、ニートP40膜を用いることにより17.4%であり、予想外に、修飾P40膜(IL2、IL5、及びIL20)を用いることにより10%未満であった。
【0061】
実施例6:膜形成中に異なる溶媒蒸発時間を用いた修飾P40コポリマー(IL20)膜の形成
この実施例では、下記の通り、IL20キャスト溶液を用いていくつかの膜を調製した。
【0062】
7mLのトリフルオロエタノール中に2mlのイオン液体(硝酸エチルアンモニウム)を混合し、さらにその中に1gのP40コポリマーを溶解させることによりIL20溶液を調製した。コポリマー溶液をおよそ50℃で少なくとも2時間撹拌して10%(w/v)コポリマーキャスト溶液を調製した。コポリマーキャスト溶液を0.45μmのシリンジフィルター(Whatman)に通し、さらに少なくとも2時間真空オーブンにおいて脱気した。25μmのドクターブレードギャップを用いて、市販の限外ろ過(UF)膜上にコポリマーキャスト溶液の薄層をコーティングすることにより膜を調製した。Nanostone Water(Eden Prairie、MN)から購入したPVDF400R限外ろ過膜を基材膜として用いた。コーティングの後、異なる時間のあいだ空気乾燥し、その後に少なくとも一晩水浴中に浸漬させた。選択した乾燥時間は、数秒~20分の範囲であった。それぞれ20秒、2分、10分及び20分の溶媒蒸発時間により、IL20_b、IL20_c、IL20_d、IL20_e薄膜複合膜を調製した。水溶性であるため、イオン液体添加剤は水浴中に効率的に除去され、保存のため膜を別の水浴に移した。
【0063】
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて膜の凍結割断した断面を検査することにより被膜の厚さ及び形態を決定した。図4を参照のこと。
【0064】
膜形成中に異なる乾燥時間を用いてIL20コポリマー溶液から形成された4つの膜IL20_b、IL20_c、IL20_d、IL20_eについて、全て同じ倍率で、SEM像を得た。図4の左から右へ、IL20_b、20秒間乾燥した膜(試料3-1);IL20_c、2分間乾燥した膜(試料3-2);IL20_d、10分間乾燥した膜(試料3-3);及びIL20_e、20分間乾燥した膜(試料3-4)を示す。4つ全ての膜のSEM像が緻密コーティング層(すなわち、粗大孔もマクロボイドもない)を示す。コーティングの厚さは、所定のドクターブレードギャップサイズに関して、膜形成中の乾燥時間に依って1μm~6μmの間で変動する。
【0065】
実施例7:膜形成中に異なる溶媒蒸発時間を用いて調製された修飾P40コポリマー膜IL20の水透過性
この実施例では、下記の通り、実施例2及び6に記載の膜を通る純水流束を、10mLのセル容量及び4.1cmの有効膜ろ過面積を有するAmicon 8010撹拌式全量ろ過セル(Millipore)を用いて測定した。
【0066】
セルを連続的に撹拌し、10psi(0.7バール)で試験を実施した。少なくとも1時間の安定化期間の後、透過水試料を一定間隔にわたり回収した。TWedge 2.4ソフトウェア(TEC-IT、オーストリア)を用いて30秒ごとに自動的に測定を実施するDellラップトップに接続したScout Pro SP401天秤はかりにより透過水質量を測定した。透過水体積をろ過面積及び実験時間で割ることにより流束を計算する。圧力により流束値を正規化することにより純水透過係数を得る(下記表3を参照のこと)。
【0067】
異なる膜製造方法によりIL20コポリマーキャスト溶液を用いて調製された膜の水の透過係数及び透過性を下記表3に示す。膜形成中に異なる乾燥時間を用いて調製されたIL20膜(試料3-1、3-2、3-3及び3-4)、並びに乾燥しないで非溶媒浴中に直接浸漬させることにより調製されたIL20膜(試料2-3)において試験を実施した。
【0068】
膜形成中に少なくとも2分間の様々な乾燥時間を用いて調製されたIL20_c、IL20_d、IL20_e膜(試料3-2、3-3、及び3-4;表3)は、IL20の透過係数よりもかなり低いことが分かった。膜形成中に20秒の短い乾燥時間を用いて調製されたIL20_b膜(試料3-1、表3)の透過係数は、予想外に、ニートP40膜よりも一桁高く、非溶媒浸漬により調製されたIL20膜(試料2-3、表3)に類似する透過係数を示した。このことは、膜形成中の速い乾燥時間(20秒)又はイソプロパノール浸漬が、予想外に、より厚いコーティングにもかかわらず、市販のナノろ過(NF)膜よりもかなり高い、高透過係数を有する膜をもたらしたことを示す。試験したIL20膜は常に>1μmの厚さのコーティングを有していた。比較して、市販のNF膜は<0.1μm程度の薄さの選択層を有する。実際に、上記のコーティング方法を用いることにより、これら膜を用いてより高い流束を得ることができる。
【0069】
【表3】
【0070】
実施例8:ニートP40及び修飾P40膜(IL20)のフーリエ変換赤外分光分析
この実施例では、下記の通り、実施例2に記載のように調製された膜試料2-3上のコポリマーコーティングの存在を、減衰全反射フーリエ変換赤外(ATR-FTIR)分光法を用いて分析した。
【0071】
ニートP40膜及び修飾P40膜IL20の空気乾燥した試料のFTIRスペクトルを比較した。図5を参照のこと。IL20膜のスペクトルは付加的ピークを示さず、任意の膜試験の前に脱イオン水中に膜を浸漬させたときにイオン液体が完全に除去されたことを示す。
【0072】
実施例9:ニートP40及び修飾P40コポリマー膜(IL20)のバブルポイント測定
この実施例では、下記の通り、実施例2に記載のように調製された膜試料2-3上のコポリマーコーティングの無損傷及び完全性を、バブルポイント試験を用いて分析した。
【0073】
膜表面上に存在する最大孔径の指標として、簡単なラボスケールのバブルポイント測定を、PVDF400R基材膜(試料2-5)、ニートP40(試料2-4)、及び修飾P40膜(IL20、試料2-3)試料で実施した。膜試料を水で湿潤させてシステムに含め、出口で最初の連続した気泡が観察されるまで圧力をゆっくり上昇させる。孔から水を出させるのに必要な最小圧力が、膜における最大孔径の指標である。PVDF400Rのバブルポイントは6psi(約0.41バール)であったが、ニートP40及び修飾P40膜(IL20)のバブルポイントは少なくとも60psi(約4.1バール)(すなわち装置の検出上限)まで全く連続した気泡形成を示さなかったことが観察された。このことは、コポリマーコーティングが無損傷であり、かつPVDF400R基材膜の粗大孔又は露出領域はなく、修飾P40膜(IL20)において見られる10倍高い流束の上昇に寄与しないことを示す。
【0074】
実施例10:ニートP40及び修飾P40コポリマー膜(IL20)の接触角
この実施例では、ゴニオメータを用いて、実施例2に記載のように調製された膜試料2-3の表面特性を決定した。
【0075】
材料の親水性の指標として、捕捉気泡接触角測定を、水中に完全に浸漬させながら、ニートP40膜(試料2-4)、並びに3つの修飾P40膜IL2(試料2-1)、IL5(試料2-2)、及びIL20(試料2-3)で実施した。ニートP40膜の接触角は約29.3±3°であることが観察されたが、修飾P40膜IL2、IL5、及びIL20の接触角はそれぞれ、予想外に、26.7±3°、26.3±2°、及び25.9±4°であることが分かった。IL20を含めて、修飾P40試料の接触角に明らかな変化はなく、コポリマーコーティングの親水性が膜形成中のイオン液体の使用により有意には影響されなかったことを示す。
【0076】
他の実施形態
本明細書中に開示される特徴の全てを任意の組合せで組み合せてよい。本明細書に開示される各特徴を、同じ、同等の、又は同様の目的を果たす代わりの特徴と置き換えてもよい。従って、そうではないことが明示的に記載されていない限り、記載されている各特徴は、包括的な一連の同等又は同様の特徴の単なる例示に過ぎない。
【0077】
さらに、上記の説明から、当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に解明することができ、また本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、本発明の様々な変更及び修飾を行ってそれを様々な用途及び条件に適合させることができる。従って、他の実施形態も特許請求の範囲内である。
最後に、本発明の好ましい実施態様を項分け記載する。
【0078】
[実施態様1]
ろ過膜を調製する方法であって、
助溶媒と第1の有機溶媒との混合物中に統計コポリマーを溶解させることによりコポリマー溶液を提供する工程、
前記コポリマー溶液を多孔質支持層上にコーティングして支持層上にポリマー層を形成する工程、
前記支持層上のポリマー層を凝固させて薄膜複合膜を形成する工程、及び
前記薄膜複合膜を水浴中に浸漬してろ過膜を得る工程、
を含み、
前記コポリマー溶液は、1~99w/v%で助溶媒、及び1~99v/v%で第1の有機溶媒を含み、
前記統計コポリマーは、双性イオン繰り返し単位及び疎水性繰り返し単位を含み、前記双性イオン繰り返し単位は統計コポリマーの15~75質量%を構成し、前記疎水性繰り返し単位は統計コポリマーの25~85質量%を構成し、かつ疎水性繰り返し単位は0℃以上のガラス転移温度を有するホモポリマーを形成することができ、さらに
前記助溶媒は水及び前記第1の有機溶媒の両方と混和性を有する、方法。
【0079】
[実施態様2]
前記助溶媒は、イオン液体、界面活性剤分子、又は第2の有機溶媒である、実施態様1に記載の方法。
【0080】
[実施態様3]
前記助溶媒は100℃又はそれより低い温度で液状である、実施態様2に記載の方法。
【0081】
[実施態様4]
前記助溶媒は室温又はそれより低い温度で液状である、実施態様3に記載の方法。
【0082】
[実施態様5]
前記助溶媒はイオン液体である、実施態様2に記載の方法。
【0083】
[実施態様6]
前記イオン液体は、アンモニウム、イミダゾリウム、ピペリジニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ホスホニウム、スルホニウム、グアニジニウム、ジエタノールアンモニウム、アルキルアンモニウム、アルキルイミダゾリウム、アルキルピペリジニウム、アルキルピリジニウム、アルキルピロリジニウム、アルキルホスホニウム、アルキルスルホニウム、アルキルグアニジニウム、及びアルキルジエタノールアンモニウムからなる群より選択される1つ又は複数のカチオンを含み;かつニトラート、スルホナート、トリフルオロメタンスルホナート、アルキルスルホナート、フルオロアルキルスルホナート、スルファート、メチルスルファート、アルキルスルファート、フルオロアルキルスルファート、ホスファート、メチルホスファート、アルキルホスファート、フルオロアルキルホスファート、ホスフィナート、メチルホスフィナート、アルキルホスフィナート、フルオロアルキルホスフィナート、ハロゲン、トリフルオロメタンスルホナート、ジヒドロゲンホスファート、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、アルキルイミド、アルキルアミド、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファート、ホルマート、アセタート、トリフルオロアセタート、ジシアナミド、デカノアート、アルキルメチド、及びアルキルボラートからなる群より選択される1つ又は複数のアニオンを含む、実施態様5に記載の方法。
【0084】
[実施態様7]
前記イオン液体は、硝酸エチルアンモニウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムエチルスルファート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、1-ブチルピリジニウムブロミド、及び2-ヒドロキシエチル-ジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホナートからなる群より選択される、実施態様6に記載の方法。
【0085】
[実施態様8]
前記助溶媒は、前記コポリマー溶液中の統計コポリマーの自己組織化を変更する、実施態様2に記載の方法。
【0086】
[実施態様9]
前記助溶媒は界面活性剤分子である、実施態様2に記載の方法。
【0087】
[実施態様10]
前記界面活性剤分子は、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウム、イミダゾリウム、ピペリジニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、又はホスホニウムから形成されるカチオン基;並びに、スルファート、スルホナート、ホスファート、カルボキシラート、ニトラート、及びスルホスクシナートからなる群より選択されるアニオン基を含む、実施態様9に記載の方法。
【0088】
[実施態様11]
前記界面活性剤分子は、直鎖アルキルベンゼンスルホナート、リグニンスルホナート、脂肪族アルコールエトキシレート、アルキルフェニルエトキシレート、リン脂質、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、及びスフィンゴミエリンからなる群より選択される、実施態様10に記載の方法。
【0089】
[実施態様12]
前記コポリマー溶液は、1~50w/v%で統計コポリマー、1~80v/v%で助溶媒、及び20~99v/v%で第1の有機溶媒を含む、実施態様1に記載の方法。
【0090】
[実施態様13]
前記コポリマー溶液は、3~30w/v%で統計コポリマー、5~49v/v%で助溶媒、及び51~95v/v%で第1の有機溶媒を含む、実施態様12に記載の方法。
【0091】
[実施態様14]
前記双性イオン繰り返し単位は統計コポリマーの20~70質量%を構成し、前記疎水性繰り返し単位は統計コポリマーの30~80質量%を構成し、かつ疎水性繰り返し単位は室温以上のガラス転移温度を有するホモポリマーを形成することができる、実施態様1に記載の方法。
【0092】
[実施態様15]
前記双性イオン繰り返し単位は統計コポリマーの30~50質量%を構成し、前記疎水性繰り返し単位は統計コポリマーの50~70質量%を構成する、実施態様14に記載の方法。
【0093】
[実施態様16]
前記双性イオン繰り返し単位は各々、独立して、スルホベタイン、カルボキシベタインホスホリルコリン、又はピリジニウムアルキルスルホナートを含み;かつ前記疎水性繰り返し単位は各々、独立して、スチレン、フッ素化スチレン、メチルメタクリラート、アクリルニトリル、又はトリフルオロエチルメタクリラートから形成される、実施態様1に記載の方法。
【0094】
[実施態様17]
前記双性イオン繰り返し単位は各々、独立して、スルホベタインアクリラート、スルホベタインアクリルアミド、ホスホリルコリンアクリラート、ホスホリルコリンアクリルアミド、ホスホリルコリンメタクリラート、カルボキシベタインアクリラート、カルボキシベタインメタクリラート、カルボキシベタインアクリルアミド、3-(2-ビニルピリジニウム-1-イル)プロパン-1-スルホナート、3-(2-ビニルピリジニウム-1-イル)ブタン-1-スルホナート、3-(4-ビニルピリジニウム-1-イル)プロパン-1-スルホナート、又はスルホベタインメタクリラートから形成され;かつ前記疎水性繰り返し単位は各々、独立して、メチルメタクリラート、アクリルニトリル、又はトリフルオロエチルメタクリラートから形成される、実施態様16に記載の方法。
【0095】
[実施態様18]
前記統計コポリマーは、ポリ((トリフルオロエチルメタクリラート)-r-(スルホベタインメタクリラート))、ポリ((メチルメタクリラート)-r-(スルホベタインメタクリラート))、ポリ((トリフルオロエチルメタクリラート)-r-(3-(2-ビニルピリジニウム-1-イル)プロパン-1-スルホナート))、ポリ((トリフルオロエチルメタクリラート)-r-(ホスホリルコリンメタクリラート)、又はポリ((トリフルオロエチルメタクリラート)-r-(3-(2-ビニルピリジニウム-1-イル)ブタン-1-スルホナート))である、実施態様17に記載の方法。
【0096】
[実施態様19]
前記第1の有機溶媒は、トリフルオロエタノール、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ヘキサフルオロイソプロパノール、N-メチル-2-ピロリドン、ピリジン、ジオキサン、トルエン、クロロホルム、ベンゼン、四塩化炭素、クロロベンゼン、1,1,2-トリクロロエタン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、キシレン、テトラヒドロフラン、メタノール、及びエタノールからなる群より選択される、実施態様1に記載の方法。
【0097】
[実施態様20]
前記助溶媒は、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、ジオキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、2-ブタノール、2-ブタノン、メタノール、及びエタノールからなる群より選択される第2の有機溶媒である、実施態様2に記載の方法。
【0098】
[実施態様21]
前記双性イオン繰り返し単位は統計コポリマーの30~50質量%を構成し、前記疎水性繰り返し単位は統計コポリマーの50~70質量%を構成し、前記統計コポリマーはポリ((トリフルオロエチルメタクリラート)-r-(スルホベタインメタクリラート))であり、前記助溶媒は硝酸エチルアンモニウムであり、かつ前記第1の有機溶媒はトリフルオロエタノールである、実施態様1に記載の方法。
【0099】
[実施態様22]
前記凝固工程は、60分又はそれより少ない時間、ポリマー層を空気乾燥することにより、或いは多孔質支持層と一緒にポリマー層を非溶媒浴中に60分又はそれより少ない時間浸漬することにより行われる、実施態様1に記載の方法。
【0100】
[実施態様23]
前記凝固工程は、60分又はそれより少ない時間、ポリマー層を空気乾燥することにより行われる、実施態様22に記載の方法。
【0101】
[実施態様24]
前記凝固工程は、多孔質支持層と一緒にポリマー層を非溶媒浴中に60分又はそれより少ない時間浸漬することにより行われる、実施態様22に記載の方法。
【0102】
[実施態様25]
前記非溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、水、又はそれらの組合せである、実施態様24に記載の方法。
【0103】
[実施態様26]
前記多孔質支持層は、ポリマー層の有効孔径よりも大きい有効孔径を有し、かつポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンスフフィドスルホン、ポリアクリルニトリル、セルロースエステル、ポリフェニレンオキシド、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアリルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリアミド、ポリイミド、又はそれらの組合せにより形成される、実施態様1に記載の方法。
【0104】
[実施態様27]
前記多孔質支持層はフラットシート膜又は中空糸膜である、実施態様26に記載の方法。
【0105】
[実施態様28]
前記浸漬工程の後、得られたろ過膜を50℃以上の温度で水浴中においてアニール処理するアニーリング工程をさらに含む、実施態様1に記載の方法。
【0106】
[実施態様29]
実施態様1に記載の方法により調製されたろ過膜であって、0.5~5nmの有効孔径、及び10Lm-2-1bar-1以上の水透過係数を有する、ろ過膜
【0107】
[実施態様30]
液体をろ過するプロセスであって、
支持層及びポリマー選択層を有する実施態様29に記載のろ過膜を提供する工程;
液体を、最初にポリマー選択層を通し、その後支持層を通して、前記ろ過膜を通過させる工程;及び
前記ろ過膜を透過する液体を回収する工程;
を含む、プロセス。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-05-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質支持層;及び
前記多孔質支持層上にコーティングされたポリマー層;
を含むろ過膜であって、
前記ポリマー層は、助溶媒と有機溶媒との混合物中に統計コポリマーを溶解させたコポリマー溶液を前記多孔質支持層上にコーティングすることにより形成され、該ポリマー層は、前記多孔質支持層上で凝固して薄膜複合膜を形成し、
前記有機溶媒は前記助溶媒と異なり、
前記コポリマー溶液は、1~99w/v%の統計コポリマー、5~49v/v%の助溶媒、及び51~95v/v%の有機溶媒を含み、
前記統計コポリマーは、双性イオン繰り返し単位及び疎水性繰り返し単位を含み、前記双性イオン繰り返し単位は統計コポリマーの30~50質量%を構成し、前記疎水性繰り返し単位は統計コポリマーの50~70質量%を構成し、かつ前記統計コポリマーは、ポリ((トリフルオロエチルメタクリラート)-r-(スルホベタインメタクリラート))、ポリ((メチルメタクリラート)-r-(スルホベタインメタクリラート))、ポリ((トリフルオロエチルメタクリラート)-r-(3-(2-ビニルピリジニウム-1-イル)プロパン-1-スルホナート))、ポリ((トリフルオロエチルメタクリラート)-r-(ホスホリルコリンメタクリラート)、及びポリ((トリフルオロエチルメタクリラート)-r-(3-(2-ビニルピリジニウム-1-イル)ブタン-1-スルホナート))からなる群から選択され、
前記助溶媒は水及び前記有機溶媒の両方と混和性を有し、
前記ろ過膜は、0.5~5nmの有効孔径、及び10Lm-2-1bar-1以上の水透過係数を有する、ろ過膜。
【請求項2】
前記有機溶媒は、トリフルオロエタノール、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ヘキサフルオロイソプロパノール、N-メチル-2-ピロリドン、ピリジン、ジオキサン、トルエン、クロロホルム、ベンゼン、四塩化炭素、クロロベンゼン、1,1,2-トリクロロエタン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、キシレン、テトラヒドロフラン、メタノール、及びエタノールからなる群より選択される、請求項1に記載のろ過膜。
【請求項3】
前記助溶媒は、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、ジオキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、2-ブタノール、2-ブタノン、メタノール、硝酸エチルアンモニウム、及びエタノールからなる群より選択される、請求項1または2に記載のろ過膜。
【請求項4】
前記多孔質支持層は、ポリマー層の有効孔径よりも大きい有効孔径を有し、かつポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンスフフィドスルホン、ポリアクリルニトリル、セルロースエステル、ポリフェニレンオキシド、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアリルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリアミド、ポリイミド、又はそれらの組合せにより形成される、請求項1~3のいずれか一項に記載のろ過膜。
【請求項5】
前記多孔質支持層はフラットシート膜又は中空糸膜である、請求項4に記載のろ過膜。
【請求項6】
前記コポリマー溶液は20v/v%の助溶媒を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のろ過膜。
【請求項7】
前記コポリマー溶液は10w/v%のコポリマーを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のろ過膜。
【請求項8】
前記コポリマー溶液は20v/v%の助溶媒、および10w/v%のコポリマーを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のろ過膜。
【請求項9】
前記有機溶媒はトリフルオロエタノールである、請求項1~8のいずれか一項に記載のろ過膜。
【請求項10】
多孔質支持層;及び
前記多孔質支持層上にコーティングされたポリマー層;
を含むろ過膜であって、
前記ポリマー層は、助溶媒と有機溶媒との混合物中に統計コポリマーを溶解させたコポリマー溶液を前記多孔質支持層上にコーティングすることにより形成され、該ポリマー層は、前記多孔質支持層上において凝固して薄膜複合膜を形成し、
前記有機溶媒は前記助溶媒と異なり、
前記コポリマー溶液は、1~99w/v%の統計コポリマー、5~49v/v%の助溶媒、及び51~95v/v%の有機溶媒を含み、
前記統計コポリマーは、双性イオン繰り返し単位及び疎水性繰り返し単位を含み、前記双性イオン繰り返し単位は統計コポリマーの30~50質量%を構成し、前記疎水性繰り返し単位は統計コポリマーの50~70質量%を構成し、かつ前記統計コポリマーはポリ((トリフルオロエチルメタクリラート)-r-(スルホベタインメタクリラート))であり、
前記有機溶媒はエタノールである、ろ過膜。
【請求項11】
液体をろ過する方法であって、
支持層及びポリマー選択層を有する請求項1~10のいずれか一項に記載のろ過膜を提供する工程;
液体を、最初にポリマー選択層を通し、その後支持層を通して、前記ろ過膜を通過させる工程;及び
前記ろ過膜を透過する液体を回収する工程;
を含む、方法