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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008697
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】電磁接触器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/02 20060101AFI20240112BHJP
   H01H 50/54 20060101ALI20240112BHJP
   H01H 49/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
H01H50/02 E
H01H50/54 B
H01H49/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110763
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 裕也
(72)【発明者】
【氏名】堤 貴志
(72)【発明者】
【氏名】小西 弘純
(72)【発明者】
【氏名】石井 智大
(72)【発明者】
【氏名】草野 祐馬
(57)【要約】
【課題】電磁接触器において、複数の部品を接合して構成される密閉容器の製造コストの増大を抑制する。
【解決手段】電磁接触器11は、接点部43が密閉され、接点部43の消弧を促す遮断用ガスが封入された金属製の密閉容器12を備えている。密閉容器12は、複数の部品を接着剤で接合して構成され、少なくとも接着した箇所がガスバリアコーティングされている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点部が密閉され、前記接点部の消弧を促す遮断用ガスが封入された金属製の密閉容器を備え、
前記密閉容器は、複数の部品を接着剤で接合して構成され、少なくとも接着した箇所がガスバリアコーティングされていることを特徴とする電磁接触器。
【請求項2】
前記密閉容器は、
金属製の筒状部材と、
前記筒状部材の一方を閉塞するセラミック製の基板と、を備え、
前記筒状部材と前記基板とが前記接着剤で接合されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【請求項3】
前記基板には、貫通孔が形成され、
前記密閉容器は、
前記基板の前記貫通孔に嵌め合わされ、前記貫通孔を閉塞する固定電極を備え、
前記基板と前記固定電極とが前記接着剤で接合されていることを特徴とする請求項2に記載の電磁接触器。
【請求項4】
前記密閉容器は、
前記筒状部材の他方を閉塞する金属製の端板を備え、
前記筒状部材と前記端板とが前記接着剤で接合されていることを特徴とする請求項2に記載の電磁接触器。
【請求項5】
前記端板には、貫通孔が形成され、
前記密閉容器は、
前記端板の前記貫通孔を閉塞する金属製のキャップを備え、
前記端板と前記キャップとが前記接着剤で接合されていることを特徴とする請求項4に記載の電磁接触器。
【請求項6】
前記密閉容器を構成する金属製の部品は、接着した箇所を含めた外周面が、粘土結晶の積層膜によってガスバリアコーティングされていることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁接触器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示される密閉型電磁接触器では、セラミックで蓋をした金属製の密閉容器内に接点部を収容し、そこに水素等の加圧された遮断用ガスを封入することで、接点の遮断性能を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6160791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属製の密閉容器は、複数の部品を接合して形成されており、遮断用ガスの漏洩を防ぐために、接合はろう付けやレーザ溶接によって行われている。しかしながら、ろう付けやレーザ溶接といった接合では、製造コストが増大してしまう。
本発明の目的は、電磁接触器において、複数の部品を接合して構成される密閉容器の製造コストの増大を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る電磁接触器は、接点部が密閉され、接点部の消弧を促す遮断用ガスが封入された金属製の密閉容器を備える。密閉容器は、複数の部品を接着剤で接合して構成され、少なくとも接着した箇所がガスバリアコーティングされている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、複数の部品を接着剤で接合して密閉容器を構成しているので、ろう付けやレーザ溶接よりもコストの増大を抑制することができる。また、接着した箇所がガスバリアコーティングされているので、遮断用ガスの漏洩を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】電磁接触器を示す図である。
図2】密閉容器を分解した図である。
図3】接合した密閉容器を示す図である。
図4】電磁接触器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
《実施形態》
《構成》
以下の説明では、互いに直交する三方向を、便宜的に、縦方向、幅方向、及び奥行方向とする。
図1は、電磁接触器11を示す図である。
ここでは、外装となる樹脂製のフレームから取り出した電磁接触器11を、縦方向の一方、幅方向の一方、及び奥行方向の手前から見た状態を示す。電磁接触器11は、主回路の電路を開閉するものであり、密閉容器12と、電磁石部13と、を備えている。
【0010】
図2は、密閉容器12を分解した図である。
ここでは、内部構造については省略し、密閉容器12の外壁をなす構成部品を、縦方向の一方、幅方向の一方、及び奥行方向の手前から見た状態を示す。密閉容器12は、筒状部材21と、基板22と、固定電極23と、端板24と、キャップ25と、を接合して形成されている。ここでは一例として、筒状部材21を非磁性のステンレス鋼で形成し、基板22を絶縁体のセラミックで形成し、固定電極23を導電体の銅で形成し、端板24を磁性体の鉄で形成し、キャップ25を非磁性のステンレス鋼で形成している。すなわち、密閉容器12は、基板22以外は金属製である。
【0011】
筒状部材21は、縦方向の両側、及び幅方向の両側を閉塞した略角型の筒状に形成されており、奥行方向における奥側の端部にはフランジが形成されている。
基板22は、方形の板状に形成されており、筒状部材21における奥行方向の手前側を閉塞する。基板22には、縦方向に並んだ二箇所に、奥行方向に貫通した円形の貫通孔26が形成されている。
固定電極23は、基板22の貫通孔26よりも小径となる円柱状に形成されており、基板22の貫通孔26を奥行方向の手前側から閉塞する。固定電極23は、奥行方向の手前側が基板22の貫通孔26よりも大径にされている。
【0012】
端板24は、方形の平板状に形成されており、筒状部材21における奥行方向の奥側を閉塞する。端板24には、奥行方向に貫通した円形の貫通孔27が形成されている。端板24には、密閉容器12の内側に連通した状態で奥行方向の奥側に突出する金属製のパイプ28が固定されている。パイプ28は、遮断用ガスを封入するための配管であり、遮断用ガスを封入してから超音波溶接によって閉塞される。
キャップ25は、奥行方向の奥側が閉塞された略円筒状に形成され、奥行方向における手前側の端部にはフランジが形成されており、端板24の貫通孔27を奥行方向の奥側から閉塞する。
【0013】
密閉容器12を構成する各部品は、夫々、接着剤を用いて接合されている。すなわち、筒状部材21における奥行方向手前側の先端部全周と基板22の内周面とを接合し、固定電極23のうち大径の先端部全周と基板22の外周面とを接合している。また、筒状部材21における奥行方向奥側のフランジ全周と端板24の内周面とを接合し、キャップ25のうち奥行方向手前側のフランジ全周と端板24の外周面とを接合している。何れの接合箇所においても、接合強度や耐熱性を考慮して例えばエポキシ樹脂系の接着剤を用いている。接合箇所は、一方を凸状にし、他方を凹状にして互いを嵌め合わせてもよい。これにより、凹状に形成した部分が接着剤溜りとなるため、接合の作業性が向上する。また、接合箇所の表面には、化学エッチングによってミクロンサイズの微細な凹凸形状を形成しておいてもよい。これにより、接着剤が凹凸形状の内部に入り込んで硬化し、接合強度が向上する。
【0014】
図3は、接合した密閉容器12を示す図である。
ここでは、接合した密閉容器12を、縦方向の一方、幅方向の一方、及び奥行方向の手前から見た状態を示す。接合した密閉容器12は、接着した箇所を含めた外周面の全てが粘土結晶の積層膜によってガスバリアコーティングされている。具体的には、精製したスメクタイトの層間イオンを置換し、PVA(ポリビニルアルコール)や水溶性ナイロン等の有機バインダーでつなぎ合わせることで、迷路効果を発現し、水素や窒素等のガス分子の透過を防いでいる。積層膜は厚み方向に積層されており、厚さは例えば2μmである。ガスバリアコーティングは、例えば塗液をミスト化して密閉容器12に塗布するスプレー方式とし、例えば150℃以上の、層間イオンが粘土結晶内に取り込まれる温度で焼成されることで完成される。
【0015】
次に、電磁接触器11の基本的な構成について説明する。
図4は、電磁接触器11の断面図である。
ここでは、幅方向の中心を通り縦方向及び奥行方向に沿った電磁接触器11の断面を、幅方向の一方から見た状態を示す。密閉容器12には、一対の固定接触子31と、可動接触子32と、連結シャフト33と、可動プランジャ34と、復帰ばね35と、永久磁石36と、補助ヨーク37と、が収容されており、さらに水素や窒素等の加圧された遮断用ガスが封入されている。
【0016】
一対の固定接触子31は、帯状の導電体であり、縦方向に間隔をあけて並んでいる。固定接触子31は、幅方向から見て縦方向の内側に向かって開いた略コ字状に形成されており、一端側は奥行方向の手前側が固定電極23に固定され、他端側には奥行方向の手前側に固定接点41が形成されている。
可動接触子32は、縦方向に延びる帯状の導電体であり、両端に可動接点42が形成されている。可動接触子32は、両端側の夫々が固定接触子31におけるコ字状の内側に配置されており、連結シャフト33に挿通された状態で弾性的に支持されている。可動接点42は、固定接点41に対向しており、これら固定接点41及び可動接点42が接点部43を構成している。
【0017】
連結シャフト33は、奥行方向に延び、その奥側に雄ねじ部が形成されている。
可動プランジャ34は、キャップ25に嵌まり合う略円柱状であり、奥行方向の手前にフランジが形成されている。可動プランジャ34には、軸方向に貫通した内周面に雌ねじ部が形成されており、連結シャフト33の雌ねじ部が嵌め合わされている。
復帰ばね35は、圧縮コイルばねであり、キャップ25と可動プランジャ34との間に介在して可動プランジャ34を奥行方向の手前側に付勢している。
永久磁石36には、軸方向に貫通した丸穴が形成されており、可動プランジャ34のフランジを囲むように端板24に固定されている。
補助ヨーク37は、連結シャフト33に挿通された状態で永久磁石36に固定されている。
【0018】
電磁石部13は、密閉容器12における奥行方向の奥側に配置されており、接点部43の開閉を切り替える。電磁石部13は、スプール51と、固定プランジャ52と、ヨーク53と、を備えている。
スプール51は、電気絶縁性を有する樹脂製であり、奥行方向に延びる円筒状の巻き軸にコイル54が巻かれている。
固定プランジャ52は、奥行方向に延び、スプール51の巻き軸の内側に嵌まり合う円筒状に形成されている。固定プランジャ52の内側には、奥行方向の手前側にキャップ25が嵌まり合っている。
ヨーク53は、幅方向から見て奥行方向の手前側に向かって開いたコ字状に形成されており、奥行方向の手前側が端板24に嵌まり合っている。
【0019】
上記より、コイル44に通電がない非励磁の状態では、復帰ばね35の反発力、及び永久磁石36による補助ヨーク37への吸引力によって、可動プランジャ34が奥行方向の手前側へと後退している。このとき、連結シャフト33を介して可動接触子32も奥行方向の手前側へと後退しているため、固定接点41から可動接点42が離間し、接点部43が開いた状態となる。
一方、コイル44に通電され励磁されている状態では、端板24、ヨーク53、固定プランジャ52、及び可動プランジャ34を通過する磁路により、可動プランジャ34のフランジが端板24に吸引される。したがって、復帰ばね35の反発力、及び永久磁石36による補助ヨーク37への吸引力に逆らって、可動プランジャ34が奥行方向の奥側へと前進している。このとき、連結シャフト33を介して可動接触子32も奥行方向の奥側へと前進しているため、固定接点41に可動接点42が接触し、接点部43が閉じた状態となる。
【0020】
《作用効果》
次に、実施形態の主要な作用効果について説明する。
電磁接触器11は、接点部43が密閉され、接点部43の消弧を促す遮断用ガスが封入された金属製の密閉容器12を備えている。密閉容器12は、複数の部品を接着剤で接合して構成され、少なくとも接着した箇所がガスバリアコーティングされている。このように、複数の部品を接着剤で接合して密閉容器を構成しているので、ろう付けやレーザ溶接よりもコストの増大を抑制することができる。また、接着した箇所がガスバリアコーティングされているので、遮断用ガスの漏洩を抑制することができる。また、ろう付けやレーザ溶接では、密閉容器12を800~1,000℃といった高い温度に晒すことになる。一方、複数の部品を接着剤で接合する場合、接着剤を硬化させるために150℃程度の熱を加えるだけである。したがって、固定電極23、固定接触子31、可動接触子32といった他の部品の耐久性に影響を与えることを抑制できる。また、ろう付けでは、6時間ほど時間をかけて徐々に冷却することになるが、接着剤で接合する場合は30分ほどの時間で接着剤を硬化させることができる。したがって、サイクルタイムの短縮を図ることができる。さらに、接着した箇所がガスバリアコーティングされているので、遮断用ガスの漏洩を抑制することができる。
【0021】
密閉容器12は、金属製の筒状部材21と、筒状部材21の一方を閉塞するセラミック製の基板22と、を備えている。筒状部材21と基板22とが接着剤で接合されている。これにより、ろう付けやレーザ溶接よりもコストの増大を抑制することができる。
基板22には、貫通孔26が形成されている。密閉容器12は、基板22の貫通孔26に嵌め合わされ、貫通孔26を閉塞する固定電極23を備えている。基板22と固定電極23とが接着剤で接合されている。これにより、ろう付けやレーザ溶接よりもコストの増大を抑制することができる。
【0022】
密閉容器12は、筒状部材21の他方を閉塞する金属製の端板24を備えている。筒状部材21と端板24とが接着剤で接合されている。これにより、ろう付けやレーザ溶接よりもコストの増大を抑制することができる。
端板24には、貫通孔27が形成されている。密閉容器12は、端板24の貫通孔27を閉塞する金属製のキャップ25を備えている。端板24とキャップ25とが接着剤で接合されている。これにより、ろう付けやレーザ溶接よりもコストの増大を抑制することができる。
密閉容器12を構成する金属製の部品は、接着した箇所を含めた外周面が、粘土結晶の積層膜によってガスバリアコーティングされている。これにより、金属製の部品を遮断用ガスが透過して漏洩することを抑制できる。
【0023】
次に、比較例について説明する。
これまで、金属製の密閉容器は、複数の部品をろう付けやレーザ溶接によって接合して形成されていた。しかしながら、ろう付けやレーザ溶接といった接合では、製造コストが増大してしまう。また、ろう付けの場合は800℃程度まで温度を上昇させ、レーザ溶接の場合は1,000℃程度の熱を加えることになり、導電体である銅の耐久性に影響を与える可能性があった。また、ろう付けは急冷するとろう付け部分の母材やろう自体に割れが生じるため、6時間ほど時間をかけて徐々に冷却する必要があり、サイクルタイムの短縮を図ることが難しかった。
【0024】
《変形例》
実施形態では、密閉容器12における外周面の全てを、粘土結晶の積層膜によってガスバリアコーティングしているが、これに限定されるものではない。すなわち、セラミックは、元々、遮断用ガスの透過を阻止できるため、基板22の外周面へのガスバリアコーティングを省略してもよい。また、ステンレス、銅、鉄といった金属で形成された部品も、セラミックほどではないが遮断用ガスの透過を抑制できるため、筒状部材21、固定電極23、端板24、キャップ25の外周面へのガスバリアコーティングを省略してもよい。したがって、少なくとも接着した箇所がガスバリアコーティングされていればよい。
【0025】
以上、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく実施形態の改変は、当業者にとって自明のことである。
【符号の説明】
【0026】
11…電磁接触器、12…密閉容器、13…電磁石部、21…筒状部材、22…基板、23…固定電極、24…端板、25…キャップ、26…貫通孔、27…貫通孔、28…パイプ、31…固定接触子、32…可動接触子、33…連結シャフト、34…可動プランジャ、35…復帰ばね、36…永久磁石、37…補助ヨーク、41…固定接点、42…可動接点、43…接点部、43…ヨーク、44…コイル、51…スプール、52…固定プランジャ、53…ヨーク、54…コイル
図1
図2
図3
図4