(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008699
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】表示システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20240112BHJP
H02S 50/00 20140101ALI20240112BHJP
H01L 31/048 20140101ALI20240112BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02S50/00
H01L31/04 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110768
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】516218384
【氏名又は名称】ハドラスホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108442
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義孝
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】山本 英明
(72)【発明者】
【氏名】岸 洋路
(72)【発明者】
【氏名】池田 正範
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
5L049
【Fターム(参考)】
5F151JA03
5F151KA07
5F251JA03
5F251KA07
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】発電効率を高めるコーティング処理を行った太陽光パネルの将来にわたる価値を予測することができる表示システムを提供する。
【解決手段】コーティング膜が被膜された太陽光パネル10の価値を評価可能な表示システム1であって、コーティング膜が被膜された太陽光パネル10における最新の実測値が逐次登録される登録部3と、コーティング膜が被膜される以前の当該太陽光パネルの将来にわたる稼働想定値が時間情報と共に記録される記録部2と、実測値と稼働想定値とを同時間を基準にして比較可能に出力する出力部2と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング膜が被膜された太陽光パネルの価値を評価可能な表示システムであって、
前記コーティング膜が被膜された前記太陽光パネルにおける最新の実測値が逐次登録される登録部と、
前記コーティング膜が被膜される以前の当該太陽光パネルの将来にわたる稼働想定値が時間情報と共に記録される記録部と、
前記実測値と前記稼働想定値とを同時間を基準にして比較可能に出力する出力部と、を備えていることを特徴とする表示システム。
【請求項2】
指定期間における前記実測値と前記稼働想定値の差分の累計を出力する出力部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記実測値と前記稼働想定値は、発電量であり、
指定期間における前記実測値と前記稼働想定値の差分の累計を出力する出力部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項4】
前記太陽光パネルの耐用年数に係る情報が記録される記録部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項5】
前記コーティング膜は、SiO2を主成分とし、
前記コーティング膜の仕様情報が記録される記録部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項6】
前記コーティング膜は、SiO2を主成分とし、
前記コーティング膜の成分情報が記録される記録部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項7】
前記コーティング膜は、SiO2を主成分とし、
前記コーティング膜の膜厚情報が記録される記録部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項8】
前記太陽光パネルの所在地情報および製造元情報が記録される記録部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項9】
前記稼働想定値は、ブロックチェーン上に保管されることを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項10】
少なくとも前記実測値と、時間情報と、気象情報とが所定タイミングで記録されるブロックチェーンが前記登録部の一部を構成していることを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電に適用される表示システムに関する。
【0002】
近年、温暖化の原因となる二酸化炭素等の温室効果ガスを排出せず、環境に負荷をかけない再生可能エネルギを利用した発電システムとして、太陽光発電の普及が推進されている。
【0003】
太陽光発電装置は、ガラスや耐候性樹脂フィルム等からなる透光性を有する保護部材によって太陽光の受光面となる太陽電池セルの表面側が保護された太陽光パネルを備え、太陽電池セルに入射した太陽光の光エネルギが電気エネルギに変換されることにより発電が行われる。
【0004】
太陽光発電は、日射量に応じて発電量が決まることから、太陽光パネルの設置時においては、設置場所の緯度や経緯等の位置情報、太陽光パネルの方位角や傾斜角だけでなく、太陽光パネルが設置される地域別および天候別の日射強度、動作温度等の様々な指標を用いて発電量を高精度で予測することにより、最適な太陽光発電システムの容量を選択し、任意の設置場所において太陽光パネルにおける発電量を効率化することが行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-108486号公報(第5頁~第6頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に太陽光パネルの寿命は20~30年と言われており、設置後の太陽光パネルにおいては発電効率が徐々に低下していくことが知られている。発電効率の低下を理由に既存の太陽光パネルを新しい太陽光パネルに変更するには入替コストが大きく、使われなくなった太陽光パネルは産業廃棄物として処理する必要があることから、将来的な太陽光パネルの廃棄量の増加も問題視されている。このような状況を踏まえ、既存の太陽光パネルに対して発電効率を可能な限り高める処理を行うことにより、既存の太陽光パネルを用いた新たな太陽光発電ビジネスを展開できる。
【0007】
本発明は、発電効率を高めるコーティング処理を行った太陽光パネルの将来にわたる価値を予測することができる表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の表示システムは、
コーティング膜が被膜された太陽光パネルの価値を評価可能な表示システムであって、
前記コーティング膜が被膜された前記太陽光パネルにおける最新の実測値が逐次登録される登録部と、
前記コーティング膜が被膜される以前の当該太陽光パネルの将来にわたる稼働想定値が時間情報と共に記録される記録部と、
前記実測値と前記稼働想定値とを同時間を基準にして比較可能に出力する出力部と、を備えていることを特徴としている。
この特徴によれば、同時間を基準にして実測値と稼働想定値の差分が確認できるため、発電効率を高めるコーティング処理を行った太陽光パネルの将来にわたる価値を予測することができる。
【0009】
指定期間における前記実測値と前記稼働想定値の差分の累計を出力する出力部を備えていることを特徴としている。
この特徴によれば、指定期間における実測値と稼働想定値の差分の累計により、コーティング処理を行った太陽光パネルにおける実績を確認することができるため、コーティング処理を行った太陽光パネルの将来にわたる価値を予測しやすい。
【0010】
前記実測値と前記稼働想定値は、発電量であり、
指定期間における前記実測値と前記稼働想定値の差分の累計を出力する出力部を備えていることを特徴としている。
この特徴によれば、指定期間における実測値と稼働想定値の差分の累計により、コーティング処理を行った太陽光パネルにおける発電量の実績を確認することができるため、コーティング処理を行った太陽光パネルの将来にわたる価値を予測しやすい。
【0011】
前記太陽光パネルの耐用年数に係る情報が記録される記録部を備えていることを特徴としている。
この特徴によれば、稼働想定値を決定する際の情報として用いることができる。
【0012】
前記コーティング膜は、SiO2を主成分とし、
前記コーティング膜の仕様情報が記録される記録部を備えていることを特徴としている。
この特徴によれば、発電効率を高めるコーティング処理を行った太陽光パネルのコーティング膜の仕様情報を評価のための情報とすることができる。
【0013】
前記コーティング膜は、SiO2を主成分とし、
前記コーティング膜の成分情報が記録される記録部を備えていることを特徴としている。
この特徴によれば、発電効率を高めるコーティング処理を行った太陽光パネルのコーティング膜の成分情報を評価のための情報とすることができる。
【0014】
前記コーティング膜は、SiO2を主成分とし、
前記コーティング膜の膜厚情報が記録される記録部を備えていることを特徴としている。
この特徴によれば、発電効率を高めるコーティング処理を行った太陽光パネルのコーティング膜の膜厚情報を評価のための情報とすることができる。
【0015】
前記太陽光パネルの所在地情報および製造元情報が記録される記録部を備えていることを特徴としている。
この特徴によれば、発電効率を高めるコーティング処理を行った太陽光パネルの所在地情報および製造元情報を評価のための情報とすることができる。
【0016】
前記稼働想定値は、ブロックチェーン上に保管されることを特徴としている。
この特徴によれば、稼働想定値の改ざんを防止することができるため、信頼性が高い。
【0017】
少なくとも前記実測値と、時間情報と、気象情報とが所定タイミングで記録されるブロックチェーンが前記登録部の一部を構成していることを特徴としている。
この特徴によれば、実測値と時間情報と気象情報とが所定タイミングでブロックチェーンに記録されることにより、実測値の改ざんを防止することができるとともに、実測値の信ぴょう性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例における表示システムを示すイメージ図である。
【
図2】実施例における表示システムにより端末装置に表示される稼働想定値の承認画面を示す図である。
【
図3】実施例における表示システムにより端末装置に表示される太陽光パネルのパネル情報に関するリストを示す図である。
【
図4】実施例における表示システムにより端末装置に表示される太陽光パネルのパネル情報に関する詳細情報画面の一例を示す図である。
【
図5】実施例における表示システムにより端末装置に表示される太陽光パネルのパネル情報に関する詳細情報画面の一例を示す図である。
【
図6】実施例における表示システムにより端末装置に表示される太陽光パネルのパネル情報に関する詳細情報画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る表示システムを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0020】
実施例に係る表示システムにつき、
図1から
図6を参照して説明する。
【0021】
本発明の表示システムは、コーティング膜が被膜された太陽光パネルの価値を評価可能とするシステムであり、例えば、既存の太陽光パネルの表面にSiO2を主成分とするコーティング膜を被膜する処理(以下、単に「コーティング処理」とも言う。)を行うことにより、発電効率が高められた既存の太陽光パネルを用いた新たな太陽光発電ビジネスを展開することを可能としたシステムである。
【0022】
なお、「既存の太陽光パネル」とは、例えば所定の場所に設置され太陽光発電を開始してから数カ月あるいは数年が経過した太陽光パネルのことである。
【0023】
表示システムは、コーティング膜が被膜された太陽光パネルにおける最新の実測値が逐次登録される登録部と、コーティング膜が被膜される以前の当該太陽光パネルの将来にわたる稼働想定値が時間情報と共に記録される記録部と、実測値と稼働想定値とを同時間を基準にして比較可能に出力する出力部と、を備えている。
【0024】
登録部には、コーティング膜が被膜された太陽光パネルにおける発電量あるいは売電額の最新の実測値が逐次登録される。最新の実測値は、例えばコーティング膜が被膜された太陽光パネルを有する太陽光発電システムから送信されるものであり、当該実測値の実測時間に関する時間情報が付与された時系列データであることが好ましい。
【0025】
また、最新の実測値は、上述した時間情報以外にも、例えば気象情報のように太陽光パネルにおける発電量に影響を与える各種情報が付与されたデータであってもよい。
【0026】
また、最新の実測値は、例えば1日間隔、1週間隔、1か月間隔等の所定のタイミングで登録部に登録されることが好ましい。
【0027】
なお、登録部における最新の実測値の登録については、コーティング膜が被膜された太陽光パネルを有する太陽光発電システムから所定のタイミングで送信される実測値を最新の実測値として登録部に逐次登録する態様に限らず、例えば太陽光発電システムから逐次送信され、太陽光発電システムの稼働状況を監視する外部の監視サーバ等に一旦集約された実測値を所定のタイミングで最新の実測値として取得し、登録部に逐次登録する態様であってもよい。
【0028】
記録部には、コーティング膜が被膜される以前の当該太陽光パネルの将来にわたる発電量あるいは売電額の稼働想定値が時間情報と共に記録される。稼働想定値は、既存の太陽光パネルの稼働実績と、太陽光パネルにおける発電量あるいは売電額に影響を与える各種情報等に基づいて設定される。また、稼働想定値は、コーティング処理が行われてから将来の発電量あるいは売電額がゼロ又は収益不可の状態になるまでの期間にわたる時間情報が付与された時系列データである。
【0029】
詳しくは、稼働想定値は、例えば既存の太陽光パネルに対するコーティング処理前後の時点で、表示システムによって既存の太陽光パネルにおける過去の稼働実績(発電量)、当該過去の稼働実績に基づき予測される経年劣化による将来の発電量の低下率、太陽光パネルの製造元から公表されている情報に基づく経年劣化による将来の発電量の低下率、季節や気象変化による発電量の変化に基づいて時系列データとして作成され、例えば週間、月間、年間単位でチャートや数値表としてまとめられたものが表示可能に出力される。当該稼働想定値は、太陽光パネルの所有者からの承認を得ることにより正式な稼働想定値として表示システムにおいて設定される。
【0030】
出力部は、登録部に逐次登録される最新の実測値と、記録部に記録された稼働想定値とを同時間を基準にして比較可能に出力する。
【0031】
なお、「同時間を基準」とは、例えば最新の実測値の実測時間に関する年月日が特定された時間情報(例えば所定の1週間)を基準として、同じ年月日が特定された時間情報(最新の実測値と同じ所定の1週間)が付与された稼働想定値の時系列データを用いることである。
【0032】
また、「比較可能に出力する」とは、最新の実測値と稼働想定値を比較可能な情報として出力することであり、例えば最新の実測値と稼働想定値を並べて表示可能に出力する出力方式、最新の実測値と稼働想定値を比較可能なチャートを表示可能に出力する出力方式、稼働想定値に対する最新の実測値の比率(差分)、すなわち発電効率の変化率を表示可能に出力する出力方式等の他にも様々な出力方式を採用することができる。
【0033】
表示システムは、上述した出力部の他に、指定期間(例えば週間、月間、年間等)における実測値と稼働想定値の差分の累計を出力する出力部を備えている。なお、実測値と稼働想定値の差分の累計は、発電量あるいは売電額として表示可能に出力される。
【0034】
また、表示システムは、上述した記録部以外に、コーティング処理が行われた太陽光パネルそのものに係る情報が記録される各種記録部を備えている。例えば、表示システムは、太陽光パネルの耐用年数に係る情報が記録される記録部、太陽光パネルの所在地情報が記録される記録部、太陽光パネルの製造元情報が記録される記録部を備えている。
【0035】
なお、これらの各種記録部に記録される太陽光パネルそのものに係る情報は、上述した稼働想定値を設定する際の指標情報として用いることができる。
【0036】
さらに、表示システムは、太陽光パネルに被膜されたコーティング膜そのものに係る情報が記録される各種記録部を備えている。例えば、表示システムは、コーティング膜の仕様情報が記録される記録部、コーティング膜の成分情報が記録される記録部、コーティング膜の膜厚情報が記録される記録部を備えている。
【0037】
なお、「コーティング膜の仕様情報」とは、コーティング膜を形成するコーティング材の製造元、品番、施工方法(例えば単層塗り、複層塗り)等に関する情報である。また、「コーティング膜の成分情報」とは、コーティング膜を形成するコーティング材を構成するベース剤(例えば無機ポリシラザン、有機ポリシラザン)、添加剤(例えばカーボンナノチューブ)の種類、添加量等に関する情報である。
【0038】
なお、表示システムは、最新の実測値と稼働想定値とを同時間を基準にして比較可能な情報として表示可能に出力する際に、指定期間における実測値と稼働想定値の差分の累計、各種記録部に記録される太陽光パネルに係る情報やコーティング膜に係る情報、実測値に付与される気象情報等の各種情報を共に表示可能に出力することができる。
【0039】
本実施例における表示システムの一例について
図1を用いて説明する。
【0040】
図1に示されるように、表示システム1は、コーティング膜が被膜された太陽光パネル10のパネル情報を管理する記録部および出力部としての管理サーバ2と、太陽光パネル10のパネル情報と紐付けられる最新の実測値および稼働想定値が記憶される登録部としての記憶サーバ3と、インターネットを介して複数台接続される端末装置5,5,…と、を備えている。なお、
図1において、管理サーバ2と記憶サーバ3を囲んでいる枠線部分は、表示システム1の管理者側がサービスを提供するために構築されるネットワークを示すものである。すなわち、表示システム1は、少なくとも管理サーバ2と記憶サーバ3を備えるものであればよく、端末装置5,5,…や太陽光パネル10(太陽光発電システム100)を備えるものでなくてもよい。
【0041】
管理サーバ2は、コーティング膜が被膜された太陽光パネル毎に割り振られて太陽光パネル10を特定する固有のパネルIDが記憶されたIDデータベース20と、記憶サーバ3に発行された非代替性トークン(Non-Fungible Token;NFT)のトークンIDとIDデータベース20に記憶されたパネルIDとを対応付ける対応テーブル21とを備えている。
【0042】
IDデータベース20に記憶されたパネルIDには、当該パネルIDを有する太陽光パネル10の稼働想定値と、当該太陽光パネル10およびコーティング膜に関する各種情報が紐付けられている。なお、管理サーバ2は、稼働想定値や各種情報が記録される記録部としての図示しないデータベースを備えている。
【0043】
ここで、稼働想定値の設定処理について説明する。太陽光パネルの所有者は、管理サーバ2が作成、出力することにより、ディスプレイに表示された太陽光パネルの稼働想定値の承認画面(
図2参照)にて、稼働想定値の時系列データを確認する。太陽光パネルの所有者が稼働想定値を承認する場合には、稼働想定値の承認画面の下方に表示された承認するボタンをクリックし、承認情報と共にパネルIDを管理サーバ2に送信する。管理サーバ2は、端末装置5から承認情報を受信し、承認情報と共に受信されたパネルIDをIDデータベース20にて照会し、該当するパネルIDに対応する稼働想定値を正式な稼働想定値としてパネルIDに紐付けた状態でデータベースに保管する。一方、太陽光パネルの所有者が稼働想定値を承認しない場合には、稼働想定値の承認画面の下方に表示された承認しないボタンをクリックし、非承認情報と共にパネルIDを管理サーバ2に送信する。管理サーバ2は、端末装置5から非承認情報を受信し、非承認情報と共に受信されたパネルIDをIDデータベース20にて照会し、該当するパネルIDに対応する稼働想定値の修正版を作成、出力することにより、ディスプレイに修正された稼働想定値の承認画面を再度表示させる。稼働想定値の修正版は、例えば修正前の稼働想定値から所定の増加率で稼働想定値を増加させたものであることが好ましい。
【0044】
なお、
図2において、稼働想定値の時系列データは、耐用年数の範囲で想定発電量の年間平均値がチャート表示される例を挙げて説明しているが、稼働想定値の承認画面において、チャート表示だけでなく数値表も一緒に表示可能となっていてもよく、想定発電量の年間平均値から月間平均値、週間平均値への切り替えが可能となっていてもよい。また、稼働想定値の承認画面において、稼働想定値が所定の数値範囲内で修正可能となっていてもよい。
【0045】
記憶サーバ3は、ブロックチェーンプラットフォームの動作環境である複数のコンピュータ群で構成されており、コンピュータ群はNFT化されたパネル情報(ブロックチェーン)のブロックを生成する複数のノードでもある。管理サーバ2は、記憶サーバ3にブロックチェーンを発行するタイミングで太陽光パネル10の稼働想定値をブロックチェーン上に保管させる。また、管理サーバ2は、所定のタイミング(本実施例においては1日間隔)で太陽光パネル10を有する太陽光発電システム100から送信されてくる最新の実測値、時間情報、気象情報を記憶サーバ3に発行されたブロックチェーン上に保管させる。なお、稼働想定値や最新の実測値等が保管されるブロックチェーンは、該当する太陽光パネル10のパネルIDに対応付けられたトークンIDを有するブロックチェーンであることは言うまでもない。
【0046】
また、管理サーバ2は、記憶サーバ3に発行されたブロックチェーンから返された最新の実測値、時間情報、気象情報等のデータに対応するトランザクションハッシュを対応テーブル21上で太陽光パネルのパネルIDと対応付けて記憶している。詳しくは、記憶サーバ3は、ブロックチェーン上に保管されたデータのトランザクションハッシュを管理サーバ2に返すようになっており、管理サーバ2はこのトランザクションハッシュを基に保管されたデータを検索し参照可能になっている。ブロックチェーンではハッシュ値を格納する各ブロックは、1つ前のブロックのハッシュ値を持っているため、途中のブロックを改ざんしようとすると、それ以降のすべてのブロックのハッシュ値との整合性をとらなければならず、この特性から稼働想定値や最新の実測値等の改ざんを防止させ、信頼性を高めることができる。
【0047】
端末装置5は、管理サーバ2に対してインターネットにて接続され、表示部であるディスプレイを備えているいわゆる個人所有のコンピュータや、スマートフォン等の携帯通信端末である。
【0048】
表示システム1の利用者は、管理サーバ2が作成、出力することにより、ディスプレイに表示された太陽光パネルのパネル情報に関するリスト画面(
図3参照)にて、詳細を確認したいパネル情報を選択する。端末装置5は、選択されたパネル情報のパネルIDをインターネットを介して管理サーバ2に送信する。
【0049】
図3に示されるように、本実施例におけるパネル情報に関するリスト画面には、コーティング処理が行われた太陽光パネル10のパネルID毎に、太陽光パネルに係る情報(所在地、製造元、型番、耐用年数)と、コーティング処理が行われたことによる発電効率の変化率がリスト表示されている。
【0050】
管理サーバ2は、例えば、最新の実測値である実測発電量を所定の1週間で表示する設定の場合には、所定のタイミング(1日間隔、毎日0:00)で記憶サーバ3のブロックチェーン上に保管されたデータの照会を行い、管理サーバ2において、パネルIDと紐付けられている評価情報を更新して記憶しておき、アクセスしてきた端末装置5に対しては、受信されたパネルIDに基づき評価情報を詳細情報画面(
図4参照)としてディスプレイに表示可能に出力する。なお、評価情報は、最新の実測値と稼働想定値とが同時間を基準にして比較可能な情報として演算された情報であり、特に
図4において発電効率の変化率や、実測発電量と想定発電量を比較可能なチャート等が該当する。当然ながら、
図3のリスト画面に表示される発電効率の変化率についても、管理サーバ2においてパネルIDと紐付けて記憶されている評価情報に基づいて表示可能に出力されたものである。
【0051】
図4に示されるように、本実施例におけるパネル情報に関する詳細情報画面には、コーティング処理が行われた太陽光パネルのパネルID、稼働想定値である想定発電量(週間の平均値)、最新の実測値である実測発電量(週間の平均値)、発電効率の変化率、実測発電量と想定発電量を比較可能なチャート、太陽光パネルに係る情報(所在地、製造元、型番、耐用年数)、コーティング膜に係る情報(仕様情報、成分情報、膜厚情報)等が表示されている。なお、本実施例において、想定発電量と実測発電量は、同時間(最新の1週間)を基準として週間の平均値を算出したものが比較可能に表示されているが、これに限らず、想定発電量と実測発電量は、同時間を基準とするものであれば、例えば最新の10日間や1か月間の平均値を算出したものが比較可能に表示されてもよいし、最新の1日における想定発電量と実測発電量が比較可能に表示されてもよい。
【0052】
なお、
図4のパネル情報に関する詳細情報画面は一例であり、例えば、
図5に示されるように、表示システム1の利用者が端末装置5から詳細情報を確認したい期間を指定する操作を行うことにより、指定期間における実測値と稼働想定値の差分の累計(差分累計)が表示されてもよい。また、
図6に示されるように、例えば、実測発電量(週間の平均値)の基となる1日毎の実測発電量と、これに紐付けられる気象情報(天気、最高気温、最低気温、日照時間)が表示されてもよい。
【0053】
なお、管理サーバ2は、NFT化されたパネル情報の偽造を防ぐために、管理サーバ2の管理者の認定情報(バッジ)を付与することにより、例えば管理サーバ2に対して照会を行うことでNFT化されたパネル情報が公式のものであるかどうかを証明できるようにしてもよい。
【0054】
以上説明したように、本発明の表示システム1は、コーティング膜が被膜された太陽光パネル10における最新の実測値が逐次登録される登録部としての記憶サーバ3と、コーティング膜が被膜される以前の当該太陽光パネルの将来にわたる稼働想定値が時間情報と共に記録される記録部および最新の実測値と稼働想定値とを同時間を基準にして比較可能に出力する出力部としての管理サーバ2、を備えていることにより、同時間を基準にして実測値と稼働想定値の差分が確認できるため、発電効率を高めるコーティング処理を行った太陽光パネル10の将来にわたる価値を予測することができる。
【0055】
また、表示システム1によって、発電効率を高めるコーティング処理を行った太陽光パネル10の将来にわたる価値を予測可能となることにより、太陽光パネル10にコーティング膜が被膜されたことによる利益の増加分を受け取ることができる権利に資産的価値を持たせることが可能となるため、当該権利を取引対象とする新たな太陽光発電ビジネスを展開することができる。
【0056】
また、表示システム1においては、最新の実測値や稼働想定値がブロックチェーン上に保管されることにより、最新の実測値や稼働想定値の改ざんを防止することができるため、信頼性が高い。
【0057】
また、表示システム1は、利用者の指定期間における実測値と稼働想定値の差分の累計を出力することにより、コーティング処理を行った太陽光パネル10における実績を確認することができるため、コーティング処理を行った太陽光パネル10の将来にわたる価値を予測しやすい。
【0058】
また、少なくとも最新の実測値と、時間情報と、気象情報とが所定タイミングで記録されるブロックチェーンが登録部としての記憶サーバ3の一部を構成しており、実測値と時間情報と気象情報とが所定タイミングでブロックチェーンに記録されることにより、実測値の改ざんを防止することができるとともに、実測値の信ぴょう性を高めることができる。
【0059】
また、太陽光パネル10に被膜されるコーティング膜がSiO2を主成分とすることにより、特に太陽光パネルの表面がSiO2を主成分とする場合に、発電効率を効果的に高めることができる。
【0060】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0061】
例えば、前記実施例では、表示システムにおいて最新の実測値が逐次登録される登録部としての記憶サーバがブロックチェーンプラットフォームの動作環境である複数のコンピュータ群により構成される態様について説明したが、これに限らず、登録部としての記憶サーバは、通常のサーバにより構成されてもよい。
【0062】
また、前記実施例では、ブロックチェーンにNFT化されたパネル情報と最新の実測値が一緒に保管される態様について説明したが、これに限らず、NFT化されたパネル情報と、実測値等の情報が個別のブロックチェーン上に保管され、2つのブロックチェーンが対応付けられて管理されてもよい。
【0063】
また、前記実施例では、管理サーバが太陽光パネルを有する太陽光発電システムから送信されてくる最新の実測値、時間情報、気象情報を所定のタイミングで記憶サーバに発行されたブロックチェーン上に保管させる態様として説明したが、これに限らず、管理サーバを介さずに、最新の実測値、時間情報、気象情報を所定のタイミングでブロックチェーン上に直接保管されてもよい。
【0064】
また、前記実施例では、端末装置のディスプレイに表示される承認画面、リスト画面、詳細情報画面は、管理サーバにより作成、出力される態様について説明したが、これに限らず、管理サーバとは別に設けられる外向け用のサービスサーバによりこれらの画面が表示されるようになっていてもよい。
【0065】
また、前記実施例では、管理サーバは、所定のタイミングとして1日間隔で記憶サーバのブロックチェーン上に保管されたデータの照会を行う態様について説明したが、これに限らず、所定のタイミングは1週間でもよいし、リアルタイムであってもよい。
【0066】
また、前記実施例では、管理サーバは、所定のタイミングとして1日間隔で太陽光発電システムから送信されてくる最新の実測値、時間情報、気象情報を記憶サーバに発行されたブロックチェーン上に保管させる態様として説明したが、これに限らず、所定のタイミングは1週間でもよいし、リアルタイムであってもよい。
【0067】
また、前記実施例では、表示システムは、稼働想定値や最新の実測値の他に太陽光パネルに係る情報やコーティング膜に係る情報を記録し表示可能となっている態様について説明したが、他にも太陽光パネルにおける実測値に影響する可能性がある情報、例えば太陽光パネルシステムを構成するパネル架台やパワーコンディショナ等の性能等に係る情報を記録し表示可能となっていてもよい。
【0068】
また、太陽光パネルを特定する固有のパネルIDは、コーティング膜が被膜された太陽光パネル毎に割り振られるものに限らず、コーティング膜が被膜された1枚の太陽光パネルを複数の区画に分けて割り振られるものであってもよい。また、大規模な太陽光発電システムの場合には、複数枚の太陽光パネルを1つにまとめて割り振られるものであってもよい。
【0069】
また、太陽光パネルのパネル情報に関するリスト画面に表示される項目は、太陽光パネルに係る情報に限らず、コーティング膜に係る情報や最新の実測値、差分累計等の他の情報であってもよい。
【0070】
また、前記実施例では、太陽光パネルを被膜するコーティング膜は、SiO2を主成分とするものとして説明したが、これに限らず、コーティング処理により発電効率を高めることができるものであれば、樹脂等の他の成分を主成分とするコーティング膜であってもよい。