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特開2024-870軽量コンクリート硬化体、軽量コンクリート組成物及び軽量コンクリート硬化体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000870
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】軽量コンクリート硬化体、軽量コンクリート組成物及び軽量コンクリート硬化体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20231226BHJP
   C04B 14/02 20060101ALI20231226BHJP
   C04B 41/62 20060101ALI20231226BHJP
   C04B 20/00 20060101ALI20231226BHJP
   C04B 24/02 20060101ALI20231226BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20231226BHJP
   C04B 24/32 20060101ALI20231226BHJP
   B28C 7/04 20060101ALI20231226BHJP
   C04B 111/40 20060101ALN20231226BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B14/02 B
C04B41/62
C04B20/00 Z
C04B24/02
C04B24/26 B
C04B24/26 E
C04B24/26 F
C04B24/32 A
B28C7/04
C04B111:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099833
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 和政
(72)【発明者】
【氏名】井畔 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】小林 稔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】井上 孝之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】岩清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】山田 藍
【テーマコード(参考)】
4G028
4G056
4G112
【Fターム(参考)】
4G028CA02
4G056AA06
4G056CB21
4G056CD31
4G112MD01
4G112MD02
4G112MD03
4G112MD04
4G112MD05
4G112PB15
4G112PB29
4G112PB31
4G112PB36
(57)【要約】
【課題】ひび割れ抵抗性及び中性化抵抗性が改良された、耐久性に優れる軽量コンクリート硬化体、耐久性に優れる軽量コンクリート硬化体が得られる軽量コンクリート組成物、及び軽量コンクリート硬化体の製造方法を提供する。
【解決手段】下記式(I)で表される化合物を含浸させてなる軽量粗骨材と、セメントと、細骨材と、水とを含む混練物の硬化体である軽量コンクリート硬化体、軽量コンクリート組成物及び軽量コンクリート硬化体の製造方法。下記式(I)中、RIAは水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基であり、RIBは炭素数1~5のアルキレン基であり、ICは1~100の整数であり、複数存在するRIBOは、互いに同じであっても異なっていてもよい。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される化合物を含浸させてなる軽量粗骨材と、セメントと、細骨材と、水と、を含む混練物の硬化体である軽量コンクリート硬化体。
【化1】


式(I)中、RIAは水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基であり、RIBは炭素数1~5のアルキレン基であり、ICは1~100の整数であり、複数存在するRIBOは、互いに同じであっても異なっていてもよい。
【請求項2】
下記式(I)で表される化合物を含浸させてなる軽量粗骨材と、セメントと、細骨材と、水と、
下記A成分である水溶性ビニル共重合体及び下記B成分である水溶性ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1種の水溶性ビニル共重合体と、
下記C成分である多価アルコールアルキレンオキサイド付加物、下記D成分であるオキシアルキレン基を有するエーテル化合物(ただし下記式(I)で表される成分を除く。)、下記E成分である多価アルコールアルキレンオキサイド付加物及び下記F成分であるオキシアルキレン基を有するエーテル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、
を含む軽量コンクリート組成物。

A成分:下記式(A)で表される単量体1から形成された構成単位1とビニル基を有するカルボン酸単量体から形成された構成単位2とを有し、前記構成単位1及び前記構成単位2の合計に占める前記構成単位1の割合が1質量%~99質量%且つ前記構成単位2の割合が1質量%~99質量%である水溶性ビニル共重合体。
B成分:構成単位L及び構成単位Mを有し、構成単位Nを有していてもよく、前記構成単位L、前記構成単位M及び前記構成単位Nの合計に占める前記構成単位Lの割合が35モル%~85モル%、前記構成単位Mの割合が15モル%~65モル%且つ前記構成単位Nの割合が0モル%~5モル%であり、重量平均分子量が3000~80000である水溶性ビニル共重合体。
構成単位Lは、メタクリル酸から形成された構成単位及びメタクリル酸塩から形成された構成単位からなる群から選ばれる1種以上であり、構成単位Mは、5~80個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するメトキシポリエチレングリコールメタクリレートから形成された構成単位からなる群から選ばれる1種以上であり、構成単位Nは、メタリルスルホン酸塩から形成された構成単位及びアクリル酸メチルから形成された構成単位からなる群から選ばれる1種以上である。

C成分:下記式(C)で表される化合物
D成分:下記式(D)で表される化合物
E成分:下記式(E)で表される化合物
F成分:下記式(F)で表される化合物

【化2】


式(I)中、RIAは水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基であり、RIBは炭素数1~5のアルキレン基であり、ICは1~100の整数であり、複数存在するRIBOは、互いに同じであっても異なっていてもよい。

【化3】

式(A)中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、メチル基又は-(CHCOOMで表される有機基(rは0~2の整数、Mは水素原子又は金属原子)であり、R、R及びRの少なくとも1つは水素原子又はメチル基であり、Rは水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基であり、m個のROはそれぞれ独立に炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、pは0~5の整数であり、qは0又は1であり、mは1~300の整数である。
【化4】


式(C)中、Rは炭素数6~25の芳香族炭化水素基及びフェノール性の2個の水酸基を有する化合物から2個の水酸基を除いた残基であり、X及びYはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~22のアルキル基であり、a個のORはそれぞれ独立に炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、b個のROはそれぞれ独立に炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、aは1~299の整数であり、bは1~299の整数であり、a+b=60~300である。
【化5】


式(D)中、Rは炭素数3~5のアルキル基であり、c個のR10Oはそれぞれ独立に炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、cは1~6の整数である。
【化6】


式(E)中、A、A及びAはそれぞれ独立に1~10個のオキシプロピレン単位で構成された(ポリ)オキシプロピレン基を有する(ポリ)プロピレングリコールから全ての水酸基を除いた残基であり、A、A及びAのオキシプロピレン単位の合計が5~25個である。
【化7】

式(F)中、Rは炭素数3~5のアルキル基であり、Aは1~4個のオキシエチレン単位で構成された(ポリ)オキシエチレン基を有する(ポリ)エチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である。
【請求項3】
下記式(I)で表される化合物と、下記A成分である水溶性ビニル共重合体及び下記B成分である水溶性ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1種の水溶性ビニル共重合体と、下記C成分である多価アルコールアルキレンオキサイド付加物、下記D成分であるオキシアルキレン基を有するエーテル化合物(ただし下記式(I)で表される成分を除く。)、下記E成分である多価アルコールアルキレンオキサイド付加物及び下記F成分であるオキシアルキレン基を有するエーテル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、を含む混合液を含浸させてなる軽量粗骨材と、セメントと、細骨材と、水と、を含む軽量コンクリート組成物。

A成分:下記式(A)で表される単量体1から形成された構成単位1とビニル基を有するカルボン酸単量体から形成された構成単位2とを有し、前記構成単位1及び前記構成単位2の合計に占める前記構成単位1の割合が1質量%~99質量%且つ前記構成単位2の割合が1質量%~99質量%である水溶性ビニル共重合体。
B成分:構成単位L及び構成単位Mを有し、構成単位Nを有していてもよく、前記構成単位L、前記構成単位M及び前記構成単位Nの合計に占める前記構成単位Lの割合が35モル%~85モル%、前記構成単位Mの割合が15モル%~65モル%且つ前記構成単位Nの割合が0モル%~5モル%であり、重量平均分子量が3000~80000である水溶性ビニル共重合体。
構成単位Lは、メタクリル酸から形成された構成単位及びメタクリル酸塩から形成された構成単位からなる群から選ばれる1種以上であり、構成単位Mは、5~80個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するメトキシポリエチレングリコールメタクリレートから形成された構成単位からなる群から選ばれる1種以上であり、構成単位Nは、メタリルスルホン酸塩から形成された構成単位及びアクリル酸メチルから形成された構成単位からなる群から選ばれる1種以上である。

C成分:下記式(C)で表される化合物
D成分:下記式(D)で表される化合物
E成分:下記式(E)で表される化合物
F成分:下記式(F)で表される化合物

【化8】


式(I)中、RIAは水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基であり、RIBは炭素数1~5のアルキレン基であり、ICは1~100の整数であり、複数存在するRIBOは、互いに同じであっても異なっていてもよい。

【化9】

式(A)中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、メチル基又は-(CHCOOMで表される有機基(rは0~2の整数、Mは水素原子又は金属原子)であり、R、R及びRの少なくとも1つは水素原子又はメチル基であり、Rは水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基であり、m個のROはそれぞれ独立に炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、pは0~5の整数であり、qは0又は1であり、mは1~300の整数である。
【化10】


式(C)中、Rは炭素数6~25の芳香族炭化水素基及びフェノール性の2個の水酸基を有する化合物から2個の水酸基を除いた残基であり、X及びYはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~22のアルキル基であり、a個のORはそれぞれ独立に炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、b個のROはそれぞれ独立に炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、aは1~299の整数であり、bは1~299の整数であり、a+b=60~300である。
【化11】


式(D)中、Rは炭素数3~5のアルキル基であり、c個のR10Oはそれぞれ独立に炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、cは1~6の整数である。
【化12】


式(E)中、A、A及びAはそれぞれ独立に1~10個のオキシプロピレン単位で構成された(ポリ)オキシプロピレン基を有する(ポリ)プロピレングリコールから全ての水酸基を除いた残基であり、A、A及びAのオキシプロピレン単位の合計が5~25個である。
【化13】

式(F)中、Rは炭素数3~5のアルキル基であり、Aは1~4個のオキシエチレン単位で構成された(ポリ)オキシエチレン基を有する(ポリ)エチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である。
【請求項4】
前記式(I)で表される化合物は、下記式(II)で表される化合物を含む請求項1に記載のコンクリート組成物。
【化14】

式(II)中、R1Dは水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基であり、1Gは1~100の整数であり、1G個のR1FOはそれぞれ独立に炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、式(II)に含まれるR1FOの70数量%以上は、オキシプロピレン基である。
【請求項5】
軽量粗骨材に、下記式(I)で表される収縮低減剤溶液を含浸させる工程と、
セメント、水、前記収縮低減剤を含浸させた軽量粗骨材、及び、細骨材を含む軽量コンクリート組成物を調製する工程と、
前記軽量コンクリート組成物を型枠内に投入して硬化させる工程と、を含む軽量コンクリート硬化体の製造方法。
【化15】


式(I)中、RIAは水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基であり、RIBは炭素数1~5のアルキレン基であり、ICは1~100の整数であり、複数存在するRIBOは、互いに同じであっても異なっていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軽量コンクリート硬化体、軽量コンクリート組成物及び軽量コンクリート硬化体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄筋コンクリート造建築物の品質等に対する要求が厳しくなり、特にコンクリートの乾燥収縮に伴うひび割れの低減及び抑制の要求が極めて高い。また、サステナブル社会の実現に向け限られた建設材料を有効に活用していくため、建物の軽量化要求は極めて高いのが現状である。さらに、建築物の高耐久化要求も高くなっている。
特に、高層建物、超高層建物等の床部材等に広く用いられている軽量コンクリートについては、耐久性の指標の一つであるひび割れ抵抗性、詳細には、乾燥収縮の低減について有効な技術が未だ見出されていないのが現状である。
【0003】
特許文献1には、尿素を含浸させた軽量骨材と、セメントと、水とを含み、ひび割れ抵抗性と放射線遮蔽性を有するコンクリート組成物及びその製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、収縮の低減及び配合時の収縮低減剤に起因する発塵の抑制を課題とし、液体の収縮低減剤をまぶした乾燥軽量骨材と、セメントとを含有するプレミックスモルタル及びその製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-1669号公報
【特許文献2】特開2009-57220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載される尿素を含む水溶液を含浸させた骨材を用いたコンクリート組成物を用いて硬化体を製造すると、乾燥後に、骨材の表面、さらにはコンクリート硬化体の表面に尿素の結晶が析出する場合がある。よって、硬化体の外観が損なわれ、且つ、親水性の尿素結晶の析出が生じることにより、硬化体の表面が親水化し、その後の硬化体の表面仕上げ、例えば、防水剤処理、表面剤の塗装、タイル張り等が困難となり、表面処理性に劣るという問題がある。
特許文献2に記載のプレミックスモルタルに用いられる骨材は、含水率の小さい骨材を予め準備し、骨材の表面に収縮低減剤をまぶして作製される。特許文献2には、軽量骨材としてサイズが5mmの軽量細骨材が開示されてはいるが、プレミックスモルタルに軽量粗骨材を用いるという着目はない。また、骨材にまぶす収縮低減剤は、特に制限されておらず、単に水溶性であればよいと記載されているにすぎない。従って、特許文献2に記載の技術では、プレミックスモルタルの配合時の発塵は抑制されるものの、得られるコンクリート硬化体の乾燥収縮の変化率抑制には改良の余地があった。
【0006】
本開示のある実施形態は、ひび割れ抵抗性及び中性化抵抗性が改良された、耐久性に優れる軽量コンクリート硬化体、及び耐久性に優れる軽量コンクリート硬化体が得られる軽量コンクリート組成物を提供することを課題とする。
本開示の他の実施形態は、ひび割れ抵抗性及び中性化抵抗性が改良され、耐久性に優れる軽量コンクリート硬化体を製造し得る軽量コンクリート硬化体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 下記式(I)で表される化合物を含浸させてなる軽量粗骨材と、セメントと、細骨材と、水とを含む混練物の硬化体である軽量コンクリート硬化体。
【0008】
【化1】
【0009】
式(I)中、RIAは 式(II)中、R1Dは水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基であり、RIBは炭素数1~5のアルキレン基であり、ICは1~100の整数であり、複数存在するRIBOは、互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0010】
<2> 下記式(I)で表される化合物を含浸させてなる軽量粗骨材と、セメントと、細骨材と、水と、下記A成分である水溶性ビニル共重合体及び下記B成分である水溶性ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1種の水溶性ビニル共重合体と、下記C成分である多価アルコールアルキレンオキサイド付加物、下記D成分であるオキシアルキレン基を有するエーテル化合物(ただし下記式(I)で表される成分を除く。)、下記E成分である多価アルコールアルキレンオキサイド付加物及び下記F成分であるオキシアルキレン基を有するエーテル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、を含む軽量コンクリート組成物。A成分、B成分、C成分、D成分、E成分、F成分及び下記(I)で表される化合物の詳細は後述のとおりである。
【0011】
<3> 下記式(I)で表される化合物と、下記A成分である水溶性ビニル共重合体及び下記B成分である水溶性ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1種の水溶性ビニル共重合体と、下記C成分である多価アルコールアルキレンオキサイド付加物、下記D成分であるオキシアルキレン基を有するエーテル化合物(ただし下記式(I)で表される成分を除く。)、下記E成分である多価アルコールアルキレンオキサイド付加物及び下記F成分であるオキシアルキレン基を有するエーテル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、を含む混合液を含浸させてなる軽量粗骨材と、セメントと、細骨材と、水と、を含む軽量コンクリート組成物。A成分、B成分、C成分、D成分、E成分、F成分及び下記(I)で表される化合物の詳細は後述のとおりである。
【0012】
<4> 前記式(I)で表される化合物は、下記式(II)で表される化合物を含む<1>~<3>のいずれか1つに記載のコンクリート組成物。
【0013】
【化2】
【0014】
式(II)中、R1Dは水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基であり、1Gは1~100の整数であり、1G個のR1FOはそれぞれ独立に炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、式(II)に含まれるR1FOの70数量%以上は、オキシプロピレン基である。
【0015】
<5> 軽量粗骨材に、下記式(I)で表される収縮低減剤溶液を含浸させる工程と、セメント、水、前記収縮低減剤を含浸させた軽量粗骨材、及び、細骨材を含む軽量コンクリート組成物を調製する工程と、前記軽量コンクリート組成物を型枠内に投入して硬化させる工程と、を含む軽量コンクリート硬化体の製造方法。
【0016】
【化3】
【0017】
式(I)中、RIAは水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基であり、RIBは炭素数1~5のアルキレン基であり、ICは1~100の整数であり、複数存在するRIBOは、互いに同じであっても異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本開示のある実施形態によれば、ひび割れ抵抗性及び中性化抵抗性が改良された、耐久性に優れる軽量コンクリート硬化体、及び耐久性に優れる軽量コンクリート硬化体が得られる軽量コンクリート組成物を提供することができる。
本開示の他の実施形態によれば、ひび割れ抵抗性及び中性化抵抗性が改良され、耐久性に優れる軽量コンクリート硬化体を製造し得る軽量コンクリート硬化体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、発明の実施形態を説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
【0020】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0021】
本開示において、「軽量コンクリート組成物」とは、フレッシュ状態、即ち、未硬化の軽量コンクリートを指し、「軽量コンクリート硬化体」は、軽量コンクリート組成物の硬化物を指す。
以下、本開示において、下記式(I)で表される化合物を含浸させてなる軽量粗骨材を「特定軽量粗骨材」と称することがある。
また、特定軽量粗骨材を含有する軽量コンクリート組成物の硬化物を「本開示の軽量コンクリート硬化体」と称し、特定軽量骨材を含む未硬化のコンクリート組成物を「本開示の軽量コンクリート組成物」と称することがある。
本開示において「(ポリ)オキシアルキレン」はオキシアルキレン及びポリオキシアルキレンを包含する表記であり、「(ポリ)アルキレングリコール」はアルキレングリコール及びポリアルキレングリコールを包含する表記である。
本開示における人工軽量骨材の粒子サイズは、JIS A5002(2003年)に準拠して測定された値を示す。
【0022】
<軽量コンクリート硬化体>
本開示の軽量コンクリート硬化体は、下記式(I)で表される化合物を含浸させてなる軽量粗骨材と、セメントと、細骨材と、水とを含む混練物の硬化体である。
【0023】
(式(I)で表される化合物)
下記式(I)で表される化合物は、コンクリート組成物に配合することで、コンクリート組成物硬化体の収縮低減によるひび割れを抑制し得ることから、以下、式(I)で表される化合物を「特定収縮低減剤」と称することがある。
【0024】
【化4】
【0025】
式(I)中、RIAは水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基であり、RIBは炭素数1~5のアルキレン基であり、ICは1~100の整数であり、複数存在するRIBOは、互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0026】
上記式(I)において、RIAは水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基であり、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、炭素数3~5のアルキル基であることがより好ましい。
IBは炭素数1~5のアルキレン基であり、エチル基及びプロピル基であることが好ましい。即ち、RIBOは、オキシエチレン単位及びオキシプロピレン単位であることが好ましい。
ICは1~100の整数であり、1~10の整数であることが好ましい。なお、複数存在するRIBOは、互いに同じであっても異なっていてもよい。
式(I)の好ましい態様としては、(RIBO)ICは、1~5のオキシエチレン単位であるか、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とを合計2~7有する態様が挙げられる。
【0027】
式(I)で表される化合物の好ましい態様として、下記式(II)で表される化合物が挙げられる。
【0028】
【化5】

【0029】
式(II)中、R1Dは水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基であり、1Gは1~100の整数であり、1G個のR1FOはそれぞれ独立に炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、式(II)に含まれるR1FOの70数量%以上は、オキシプロピレン基である。
【0030】
軽量コンクリート組成物に用いられる軽量骨材は、主として膨張性頁岩からなり、一般の骨材と比較して空隙が多いことが知られている。本開示に用い得る軽量骨材については、後述する。
通常、軽量骨材をそのままコンクリート組成物に配合すると、コンクリート組成物の水分が軽量骨材の空隙に吸収され、フレッシュコンクリート組成物の流動性が低下し、ポンプ圧送等に支障をきたす可能性がある。また、軽量コンクリート組成物に収縮低減剤を配合する場合には、軽量骨材への収縮低減剤の吸着による効果の低減を抑制するため、トラックアジテーター車にて混合されている軽量コンクリート組成物に対し、現場において収縮低減剤を添加して、短時間で打ち込みを行う等、煩雑な方法をとらざるを得なかった。
【0031】
本開示の軽量コンクリート組成物では、軽量粗骨材を特定収縮低減剤の水溶液に浸漬し、空隙に特定収縮低減剤を保持させてなる特定軽量粗骨材を用いる。空隙に特定収縮低減剤を保持させる方法としては、軽量粗骨材に予め水を含浸させるプレウェッチング処理と同様の、公知の方法が挙げられる。
空隙に特定収縮低減剤を含浸し、乾燥した軽量骨材は長期保存が可能であり、軽量コンクリート組成物の調製時に、通常の骨材を投入する場合と同様のタイミングで用いることができ、ひび割れ抵抗性が良好な軽量コンクリート組成物の調製が容易になる。
【0032】
(軽量骨材)
本開示の軽量コンクリート組成物に用い得る軽量骨材には特に制限はない。軽量骨材としては、JIS A5002(2003年)において「構造用軽量コンクリート骨材」として規定される人工軽量骨材、火山れき及びその加工品である天然軽量骨材、膨張スラグ等の副産物である副産軽量骨材等が挙げられる。なかでも、得られる軽量コンクリート硬化体の強度がより向上するという観点から、構造用人工軽量骨材を用いることが好ましい。
構造用人工軽量骨材とは、膨張頁岩等を主原料とし、これを人工的に焼成・発泡して得られる軽量骨材であり、構造用軽量コンクリート組成物に好適な骨材である。人工軽量骨材は、骨材の内部に空隙を保有し、表面が緻密なガラスで覆われており、軽量で、且つ、高強度の骨材である。(ALA(日本軽量骨材)協会資料より)
軽量骨材は、サイズに応じて、軽量粗骨材及び軽量細骨材に分類され、本開示の軽量コンクリート組成物には、少なくとも軽量粗骨材を含むことが好ましく、さらに軽量細骨材を含んでもよい。
【0033】
上記JIS A5002(2003年)においては、軽量骨材の密度が規定されており、軽量粗骨材は絶乾密度2.0g/cm未満であること、軽量細骨材は絶乾密度2.3g/cm未満であることが定められている。
また、軽量骨材のJIS A1225(2020年)に準拠して測定した吸水率は、一般に、軽量粗骨材は、約25%~35%、軽量細骨材は、約12%~20%である。
【0034】
軽量骨材のなかでも、収縮低減効果がより向上するという観点から、本開示の軽量コンクリート硬化体には、少なくとも、吸水率のより大きい軽量粗骨材を含むことが好ましい。
人工軽量粗骨材は、粒子サイズの範囲が5mmを超え15mm以下であり、上記吸水率を勘案しても、人工軽量細骨材に比較して、空隙を多く有しており、軽量粗骨材内に保持し得る特定収縮低減剤の量がより多いことで、より高い収縮低減効果を得られると考えられる。
【0035】
軽量コンクリート硬化体を得るための組成物としては、軽量粗骨材のみを含む軽量1種コンクリートと、軽量粗骨材及び軽量細骨材を含む軽量2種コンクリートのいずれでもよいが、より高い収縮低減効果を得やすいという観点からは、軽量1種コンクリートであることが好ましい。
【0036】
なお、本発明者らは、公知の軽量1種コンクリート等を用いて得られる軽量コンクリート硬化体は、硬化体内に含まれる軽量骨材内の空隙に起因して、空隙を介して表面から浸透した酸性成分により、一般のコンクリート硬化体に比較して中性化が進行しやすいことを見出した。しかしながら、本開示の軽量コンクリート硬化体では、軽量粗骨材に予め特定収縮低減剤を含浸させることで、特定軽量粗骨材の空隙が特定収縮低減剤により充填され、且つ、親水的な特定収縮低減剤の物性の影響により、酸性成分の浸透が抑制され、普通コンクリート硬化体と同等以上の中性化抵抗性を有するに至ったものであり、中性化抵抗性がより向上するという効果を奏することも本開示の軽量コンクリート硬化体の特徴の一つである。
【0037】
本開示の軽量コンクリート硬化体を調製するための混練物には、既述の特定収縮低減剤を含浸してなる特定軽量粗骨材に加え、さらに、セメントと、細骨材と、水とを含む。
混練物に用いるセメント、細骨材、及び、水は、公知の成分を適宜使用することができる。
ここで、細骨材とは、既述の特定収縮低減剤を含浸してなる軽量細骨材を含まない一般の細骨材を指す。即ち、本開示の軽量コンクリート硬化体には、特定収縮低減剤を含浸してなる軽量細骨材以外の細骨材を含み、既述の式(I)で表される化合物、好ましくは式(II)で表される化合物を含浸してなる軽量細骨材をさらに含んでもよい。
【0038】
軽量コンクリート硬化体を製造するための混練物には、さらに、必要に応じて、コンクリート組成物に用いられる他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、式(I)で表される成分以外の混和剤、減水剤、AE減水剤、収縮低減剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、増粘剤、粉塵低減剤、防凍剤、耐寒剤、防腐剤、防水剤、防錆剤等が挙げられる。
【0039】
本開示の軽量コンクリート硬化体の調製に用いられる混練物におけるセメント、細骨材、水、及びその他の成分については、本開示の軽量コンクリート組成物の項にて詳述する。
【0040】
本開示のコンクリート硬化体は、ある大きさ以上(例えば、直径400Å以上=直径40nm以上、直径500Å以上=直径50nm以上)の細孔容積が比較的少なく、物質透過性及び浸透抵抗性の改善効果により耐久性に優れると考えられる。
【0041】
<軽量コンクリート組成物(第1実施形態)>
本開示の軽量コンクリート組成物の第1実施形態は、下記式(I)で表される化合物を含浸させてなる軽量粗骨材と、セメントと、細骨材と、水と、下記A成分である水溶性ビニル共重合体及び下記B成分である水溶性ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1種の水溶性ビニル共重合体と、下記C成分である多価アルコールアルキレンオキサイド付加物、下記D成分であるオキシアルキレン基を有するエーテル化合物(ただし下記式(I)で表される成分を除く。)、下記E成分である多価アルコールアルキレンオキサイド付加物及び下記F成分であるオキシアルキレン基を有するエーテル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、を含む。
【0042】
本開示の軽量コンクリート組成物の第1実施形態は、収縮低減能を有する式(I)で表される特定収縮低減剤を含浸させてなる軽量粗骨材と、セメントと、水と、細骨材とに加え、さらに、セメント粒子に吸着して分散性を向上させるA成分及びB成分のうち少なくとも1種の水溶性ビニル共重合体と、収縮低減能を有するC成分、D成分、E成分及びF成分からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、を含むことにより、軽量コンクリート組成物のフレッシュの物性がより良好となり、軽量コンクリート組成物の硬化物である本開示の軽量コンクリート硬化体は、収縮低減性及び中性化抵抗性がより良好となる。
【0043】
以下、本開示の第1実施形態の軽量コンクリート組成物及び既述の本開示の軽量コンクリート硬化体が含み得る材料を詳細に説明する。
まず、水溶性ビニル共重合体であるA成分及びB成分について説明する。
【0044】
[A成分]
A成分は、下記式(A)で表される単量体1から形成された構成単位1とビニル基を有するカルボン酸単量体から形成された構成単位2とを分子中に有し、構成単位1及び構成単位2の合計に占める構成単位1の割合が1質量%~99質量%且つ構成単位2の割合が1質量%~99質量%である水溶性ビニル共重合体である。
【0045】
-構成単位1-
構成単位1は、下記式(A)で表される単量体1から形成された構成単位である。
【0046】
【化6】

【0047】
式(A)中、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、メチル基又は-(CHCOOMで表される有機基(rは0~2の整数、Mは水素原子又は金属原子)であり、R、R及びRの少なくとも1つは水素原子又はメチル基であり、Rは水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基であり、m個のROはそれぞれ独立に炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、pは0~5の整数であり、qは0又は1であり、mは1~300の整数である。
【0048】
が炭素数1~20の炭化水素基の場合、好ましくは炭素数1~10の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1~8の炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数1~4の炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基が好ましい。
【0049】
m個のROはそれぞれ独立に、炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、具体的には、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種のオキシアルキレン基がm個繰り返す。オキシアルキレン基のm個の繰り返しは、ランダム、ブロック、交互、周期のいずれでもよい。
【0050】
mは1~300の整数であり、好ましくは3~200の整数であり、より好ましくは6~100の整数であり、さらに好ましくは10~60の整数である。
【0051】
単量体1としては、例えば、α-ビニル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-ビニル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシブチレン(ポリ)オキシエチレン、α-アリル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-アリル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-アリル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-アリル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタリル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-メタリル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-メタリル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ブトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-アクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-アクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-アクリロイル-ω-ブトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-アクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-メタクリロイル-ω-ブトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸と(ポリ)オキシエチレンとのモノエステル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸と(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレンとのモノエステル;が挙げられる。
【0052】
-構成単位2-
構成単位2は、ビニル基を有するカルボン酸単量体から形成された構成単位である。ビニル基を有するカルボン酸単量体としては、エステル基及びアミド基を有しない単量体が好ましい。
【0053】
ビニル基を有するカルボン酸単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、フマル酸及びこれらの塩が挙げられる。塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアミン塩;が挙げられる。中でもナトリウム塩とカルシウム塩が好ましい。
【0054】
-構成単位3-
A成分は、構成単位1及び構成単位2とは別の構成単位3を分子中にさらに有していてもよい。構成単位3は、例えば、単量体1及びビニル基を有するカルボン酸単量体と共重合可能な単量体3から形成される。
【0055】
単量体3としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキル;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和シアン類;マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸と炭素数1~22のアルキル基又はアルケニル基を有するアルコールとのモノエステル;マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸と(ポリ)アルキレングリコール又は炭素数1~22のアルキル基若しくはアルケニル基を有するアルコールとのジエステルである不飽和ジカルボン酸ジエステル類;不飽和カルボン酸又は不飽和ジカルボン酸と炭素数1~22のアミンとのモノアミド又はジアミドであるアミド単量体類;アルキルジカルボン酸とポリエチレンポリアミンとを縮合させてなる分子の活性水素を持つ窒素原子にエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加させてなる分子と、(メタ)アクリル酸との反応物;アルキルジカルボン酸とポリエチレンポリアミンとを縮合させてなる分子の活性水素を持つ窒素原子にエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加させてなる分子と、(メタ)アクリル酸グリシジルとの反応物;(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸及びそれらの塩等のスルホン酸系単量体類;リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル、リン酸-ビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]及びそれらの塩等のリン酸系単量体類;が挙げられる。
【0056】
A成分において、構成単位1及び構成単位2の合計に占める構成単位1の割合は、1質量%~99質量%であり、70質量%~99質量%が好ましく、75質量%~99質量%がより好ましく、80質量%~99質量%がさらに好ましい。
A成分において、構成単位1及び構成単位2の合計に占める構成単位2の割合は、1質量%~99質量%であり、1質量%~30質量%が好ましく、1質量%~25質量%がより好ましく、1質量%~20質量%がさらに好ましい。
A成分において、構成単位1、構成単位2及び構成単位3の合計に占める構成単位3の割合は、0質量%~30質量%が好ましく、0質量%~20質量%がより好ましく、0質量%~10質量%がさらに好ましく、0質量%~5質量%がさらにより好ましい。
A成分において、全構成単位に占める構成単位1及び構成単位2の合計は、80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上がさらにより好ましい。
【0057】
A成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定することができ、ポリエチレングリコール/ポリエチレンオキサイド換算で、好ましくは1000~1000000であり、より好ましくは5000~200000であり、さらに好ましくは8000~100000である。
【0058】
A成分の合成方法は制限されない。A成分は、例えば、公知のラジカル重合反応により得ることができる。合成したA成分は、水や有機溶媒を含んだまま使用してもよく、乾燥させて粉末として使用してもよい。
【0059】
[B成分]
B成分は、分子中に、構成単位L及び構成単位Mを有し、構成単位Nを有していてもよく、構成単位L、構成単位M及び構成単位Nの合計に占める構成単位Lの割合が35モル%~85モル%、構成単位Mの割合が15モル%~65モル%且つ構成単位Nの割合が0モル%~5モル%であり、重量平均分子量が3000~80000である水溶性ビニル共重合体である。
【0060】
B成分は、すなわち、構成単位Lと構成単位Mとで構成された重量平均分子量3000~80000の水溶性ビニル共重合体、又は、構成単位Lと構成単位Mと構成単位Nとで構成された重量平均分子量3000~80000の水溶性ビニル共重合体である。
【0061】
-構成単位L-
構成単位Lは、メタクリル酸から形成された構成単位及びメタクリル酸塩から形成された構成単位からなる群から選ばれる1種以上の構成単位である。メタクリル酸塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩;が挙げられ、メタクリル酸アルカリ金属塩が好ましく、メタクリル酸ナトリウムがより好ましい。
【0062】
-構成単位M-
構成単位Mは、5~80個のオキシエチレン単位で構成されたポリオキシエチレン基を有するメトキシポリエチレングリコールメタクリレートから形成された構成単位からなる群から選ばれる1種以上の構成単位である。
【0063】
ポリオキシエチレン基は、5~80個のオキシエチレン単位で構成され、好ましくは5~70個のオキシエチレン単位で構成され、より好ましくは5~60個のオキシエチレン単位で構成され、さらに好ましくは10~60個のオキシエチレン単位で構成される。
【0064】
-構成単位N-
構成単位Nは、メタリルスルホン酸塩から形成された構成単位及びアクリル酸メチルから形成された構成単位からなる群から選ばれる1種以上の構成単位である。メタリルスルホン酸塩としては、メタリルスルホン酸のリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が挙げられ、メタリルスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0065】
B成分において、構成単位L、構成単位M及び構成単位Nの合計に占める構成単位Lの割合は、35モル%~85モル%であり、45モル%~85モル%が好ましい。
B成分において、構成単位L、構成単位M及び構成単位Nの合計に占める構成単位Mの割合は、15モル%~65モル%であり、15モル%~55モル%が好ましい。
B成分において、構成単位L、構成単位M及び構成単位Nの合計に占める構成単位Nの割合は、0モル%~5モル%である。
【0066】
B成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定することができ、ポリスチレン換算で、3000~80000であり、好ましくは5000~60000である。
【0067】
B成分の合成方法は制限されない。B成分は公知の方法で合成できる。合成したB成分は、水や有機溶媒を含んだまま使用してもよく、乾燥させて粉末として使用してもよい。
【0068】
上記A成分及びB成分は、いずれも水溶性ビニル共重合体であり、軽量コンクリート組成物におけるセメント粒子、骨材等の分散性を向上させる機能を有する。従って、軽量コンクリート組成物がA成分及びB成分から選ばれる少なくとも1種の水溶性ビニル共重合体を含むことで、軽量コンクリート組成物は、流動性に優れ、且つ、各成分の分散性が良好となるため、得られる軽量コンクリート硬化体の物性がより向上すると考えられる。
【0069】
本開示の第1実施形態の軽量コンクリート組成物は、さらに、下記C成分、D成分、E成分及びF成分からなる少なくとも1種の化合物を含む。上記化合物は、いずれも、コンクリート硬化体の乾燥収縮低減機能を有する化合物である。
以下、各成分について、順次説明する。
【0070】
[C成分]
C成分は、下記式(C)で表される化合物である。
【0071】
【化7】

【0072】
式(C)中、Rは炭素数6~25の芳香族炭化水素基及びフェノール性の2個の水酸基を有する化合物から2個の水酸基を除いた残基であり、X及びYはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~22のアルキル基であり、a個のORはそれぞれ独立に炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、b個のROはそれぞれ独立に炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、aは1~299の整数であり、bは1~299の整数であり、a+b=60~300である。
【0073】
としては、例えば、下記式(C-1)で表される基が挙げられる。
【0074】
【化8】

【0075】
式(C-1)中、Zは炭素数1~13の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基又はスルホニル基である。
【0076】
としては、例えば、ヒドロキノン、カテコール、ビナフトール、4,4’-ビフェノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、5,5’-(1-メチルエチリデン)-ビス[1,1’-(ビスフェニル)-2-オール]プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン又は1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンから、2個の水酸基を除いた残基が挙げられる。Rとしては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン又はビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンから、2個の水酸基を除いた残基が好ましい。これらの残基であると、C成分の収縮低減効果が良好に発揮されることに加え、軽量コンクリート組成物の材料分離抵抗性をより向上させる。
【0077】
X及びYはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~22のアルキル基である。炭素数1~22のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、2-メチル-ペンチル基、2-エチル-ヘキシル基、2-プロピル-ヘプチル基、2-ブチル-オクチル基、2-ペンチル-ノニル基、2-ヘキシル-デシル基、2-ヘプチル-ウンデシル基、2-オクチル-ドデシル基、2-ノニル-トリデシル基等が挙げられる。Xとしては、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。Yとしては、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。X及びYが水素原子であると、式(C)で表される化合物の合成の容易さ及び合成原料の入手の容易さの観点から好ましい。
【0078】
a個のORはそれぞれ独立に、炭素数2~4のオキシアルキレン基である。ORとしては、具体的には、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基が好ましく、a個のORの50個数%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、a個のORの90個数%以上がオキシエチレン基であることがさらに好ましい。オキシアルキレン基のa個の繰り返しは、ランダム、ブロック、交互、周期のいずれでもよい。
【0079】
b個のROはそれぞれ独立に、炭素数2~4のオキシアルキレン基である。ROとしては、具体的には、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基が好ましく、b個のROの50個数%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、b個のROの90個数%以上がオキシエチレン基であることがさらに好ましい。オキシアルキレン基のb個の繰り返しは、ランダム、ブロック、交互、周期のいずれでもよい。
【0080】
a個のORとb個のROとを合わせたa+b個のオキシアルキレン基の90個数%以上がオキシエチレン基であることが好ましい。このことにより、C成分が有する収縮低減効果が良好に発揮されることに加え、軽量コンクリート組成物の材料分離抵抗性をより向上させる。
【0081】
aは1~299の整数であり、好ましくは1~219の整数である。
bは1~299の整数であり、好ましくは1~219の整数である。
a+b=60~300であり、好ましくは70~220である。
【0082】
C成分の合成方法は制限されない。X及び/又はYが水素原子であるC成分は、例えば、フェノール性の2個の水酸基を有する化合物にアルキレンオキサイドを付加することで得られる。合成したC成分は、水や有機溶媒を含んだまま使用してもよい。
【0083】
[D成分]
D成分は、下記式(D)で表される化合物である。
【0084】
【化9】

【0085】
式(D)中、Rは炭素数3~5のアルキル基であり、c個のR10Oはそれぞれ独立に炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、cは1~6の整数である。
【0086】
としては、例えば、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基が挙げられる。Rとしては、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基が好ましい。
【0087】
c個のR10Oはそれぞれ独立に、炭素数2~4のオキシアルキレン基である。R10Oとしては、具体的には、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基が好ましい。オキシアルキレン基のc個の繰り返しは、ランダム、ブロック、交互、周期のいずれでもよい。cは1~6の整数であり、2~4の整数が好ましい。
【0088】
D成分の合成方法は制限されない。D成分は公知の方法で合成できる。合成したD成分は、水や有機溶媒を含んだまま使用してもよい。
【0089】
[E成分]
E成分は、下記式(E)で表される化合物である。
【0090】
【化10】

【0091】
式(E)中、A、A及びAはそれぞれ独立に1~10個のオキシプロピレン単位で構成された(ポリ)オキシプロピレン基を有する(ポリ)プロピレングリコールから全ての水酸基を除いた残基であり、A、A及びAのオキシプロピレン単位の合計が5~25個である。
【0092】
、A及びAのオキシプロピレン単位の合計は、5~25個であり、6~22個が好ましく、7~20個がより好ましい。
【0093】
E成分は、つまり、グリセリンのプロピレンオキサイド付加物である。
【0094】
E成分の合成方法は制限されない。E成分は、グリセリンにプロピレンオキサイドを付加重合する公知の方法で合成できる。合成したE成分は、水や有機溶媒を含んだまま使用してもよい。
【0095】
[F成分]
F成分は、下記式(F)で表される化合物である。
【0096】
【化11】

【0097】
式(F)中、Rは炭素数3~5のアルキル基であり、Aは1~4個のオキシエチレン単位で構成された(ポリ)オキシエチレン基を有する(ポリ)エチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である。
【0098】
Rは、炭素数3~5のアルキル基であり、具体的には、プロピル基、ブチル基、ペンチル基であり、ブチル基が好ましい。ブチル基としては、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基が挙げられ、n-ブチル基が好ましい。
【0099】
F成分は、つまり、1~4個のオキシエチレン単位を有する(ポリ)エチレングリコールモノアルキルエーテルである。F成分としては、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルが好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテルがより好ましい。
【0100】
F成分の合成方法は制限されない。F成分は、炭素数3~5の脂肪族アルコールにエチレンオキサイドを付加重合する公知の方法で合成できる。合成したF成分は、水や有機溶媒を含んだまま使用してもよい。
【0101】
[一液型混和剤]
本開示の軽量コンクリート組成物においては、A成分及びB成分から選ばれる少なくとも1種と、C成分、D成分、E成分及びF成分から選ばれる少なくとも1種の化合物とが、予め混合された一液型混和剤であることが好ましく、当該一液型混和剤は、A成分及びB成分から選ばれる少なくとも1種の水溶性ビニル共重合体と、C成分、D成分、E成分及びF成分から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有する水溶液又は水性懸濁液であることが好ましい。
一液型混和剤は、A成分及びB成分から選ばれる少なくとも1種の水溶性ビニル共重合体を1種のみを含んでもよく、2種以上を含んでいてもよい。
また、一液型混和剤は、C成分、D成分、E成分及びF成分から選ばれる少なくとも1種の化合物は、1種のみを含んでもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0102】
一液型混和剤が水溶液又は水性懸濁液である場合、前記一液型混和剤は、A成分及びB成分から選ばれる少なくとも1種を総量で1質量%~30質量%、C成分、D成分、E成分及びF成分から選ばれる少なくとも1種の化合物を総量で20質量%~80質量%、水を14質量%~79質量%、含有することが好ましく、A成分を1質量%~20質量%、B成分、C成分、D成分、E成分及びF成分から選ばれる少なくとも1種の化合物を総量で30質量%~70質量%、水を14質量%~69質量%含有することがより好ましい。
【0103】
本開示のコンクリート組成物は、A成分及びB成分から選ばれる少なくとも1種と、C成分、D成分、E成分及びF成分から選ばれる少なくとも1種の化合物との合計が、結合材100質量部に対して、0.1質量部~5.0質量部であることが好ましく、0.2質量部~4.0質量部であることがより好ましく、0.2質量部~3.5質量部であることがさらに好ましく、0.3質量部~3.0質量部であることがさらにより好ましい。
【0104】
一液型混和剤の好ましい態様としては、A成分及びB成分から選ばれる少なくとも1種を総量で1質量%~30質量%、C成分を5質量%~50質量%、D成分を15質量%~80質量%、水を14質量%~79質量%含有する水溶液又は水性懸濁液、A成分及びB成分から選ばれる少なくとも1種を総量で1質量%~50質量%、好ましくは1質量%~30質量%、E成分を1質量%~50質量%、D成分及びF成分から選ばれる少なくとも1種を総量で20質量%~69質量%含む水溶液又は水性懸濁液、等が挙げられる。
【0105】
[式(I)で表される化合物:特定収縮低減剤]
本開示のコンクリート組成物の第1実施形態では、特定収縮低減剤を含浸させてなる軽量細骨材を含有する。軽量粗骨材の空隙に保持された特定収縮低減剤は、軽量粗骨材の空隙を透過する水分及び酸性成分の透過を抑制し、且つ、特定収縮低減剤を浸漬させてなる軽量粗骨材を含有する軽量コンクリート組成物の混練時に、軽量粗骨材に保持された特定収縮低減剤が、セメントマトリックス中に移動し、セメントマトリックス中の細孔量を低減すると考えられる。軽量コンクリート組成物におけるセメントマトリックス中に特定収縮低減剤が浸出により移動することで、形成される軽量コンクリート硬化体においてある大きさ以上(例えば、直径400Å以上=直径40nm以上、直径500Å以上=直径50nm以上)の細孔容積を低減する作用を奏すると推測され、これらの機能が相俟って、本開示の第1実施形態の軽量コンクリート組成物によれば、収縮低減性が良好な軽量コンクリート硬化体を得ることができると考えられる。
【0106】
特定収縮低減剤は、下記式(I)で表される化合物である。
【0107】
【化12】
【0108】
式(I)中、RIAは水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基であり、RIBは炭素数1~5のアルキレン基であり、ICは1~100の整数であり、複数存在するRIBOは、互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0109】
式(I)で表される化合物は、下記式(II)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0110】
【化13】
【0111】
式(II)中、R1Dは水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基であり、1Gは1~100の整数であり、1G個のR1FOはそれぞれ独立に炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、式(II)に含まれるR1FOの70数量%以上は、オキシプロピレン基である。
【0112】
式(II)中、R1Dは水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基であり、1G個のR1FOはそれぞれ独立に炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、dは10~100の整数であり、d個のR12Oの70個数%以上はオキシプロピレン基である。
【0113】
1Dが炭素数1~30の炭化水素基の場合、炭化水素基としては脂肪族炭化水素基が好ましい。R1Dが炭素数1~30の炭化水素基の場合、好ましくは炭素数6~24の炭化水素基(好ましくは脂肪族炭化水素基)であり、より好ましくは炭素数10~22の炭化水素基(好ましくは脂肪族炭化水素基)であり、さらに好ましくは炭素数12~20の炭化水素基(好ましくは脂肪族炭化水素基)であり、さらにより好ましくは炭素数14~18の炭化水素基(好ましくは脂肪族炭化水素基)である。炭素数1~30の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、2-メチル-ペンチル基、2-エチル-ヘキシル基、2-プロピル-ヘプチル基、2-ブチル-オクチル基、2-ペンチル-ノニル基、2-ヘキシル-デシル基、2-ヘプチル-ウンデシル基、2-オクチル-ドデシル基、2-ノニル-トリデシル基等が挙げられる。
【0114】
1G個のR1FOはそれぞれ独立に、炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、具体的には、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種のオキシアルキレン基が1G個繰り返す。オキシアルキレン基の1G個の繰り返しは、ランダム、ブロック、交互、周期のいずれでもよい。
【0115】
1G個のR1FOの70個数%以上はオキシプロピレン基である。1G個のR1FOにおいて、オキシプロピレン基以外のオキシアルキレン基としてはオキシエチレン基が好ましい。1G個のR1FOは、75個数%以上がオキシプロピレン基であることが好ましく、85個数%以上がオキシプロピレン基であることがより好ましい。
【0116】
1Gは10~100の整数であり、好ましくは10~80の整数であり、より好ましくは20~70の整数であり、さらに好ましくは35~60の整数である。
なお、特定収縮低減剤に関しては、特許第4500325号公報、及び特許第3938849号公報に詳細が記載され、当該文献に記載の収縮低減剤は本開示に適用することができる。
【0117】
式(II)で表される化合物の合成方法は制限されない。式(II)で表される化合物は公知の方法で合成できる。合成した式(II)で表される化合物は、水や有機溶媒を含んだまま、軽量粗骨材を含浸させてもよく、さらに水を添加して、適切な濃度に希釈した水溶液として軽量粗骨材に含浸させてもよい。式(II)で表される化合物を浸漬させる形態の一例は、式(II)で表される化合物を含む水溶液又は水性懸濁液である。
【0118】
本開示の第1実施形態のコンクリート組成物における式(I)好ましくは、式(II)で表される化合物(特定収縮低減剤)を浸漬させてなる軽量粗骨材の製造方法については、軽量コンクリート硬化体の製造方法の項で詳述する。
【0119】
特定収縮低減剤の含有量は、軽量粗骨材の質量に対して、0.12質量%~2.4質量%が好ましく、0.24質量%~1.7質量%がより好ましい。
言い換えれば、コンクリート組成物の製造時において、軽量粗骨材中に含浸される特定収縮低減剤の単位量は、0.5kg/m~10kg/mが好ましく、1kg/m~7kg/mがより好ましい。
軽量粗骨材における特定収縮低減剤の含有量(質量%)は以下の式で算出される。
〔特定収縮低減剤を浸漬させてなる軽量粗骨材の乾燥後の質量-未処理の軽量粗骨材の質量〕/〔未処理の粗骨材の質量〕×100
【0120】
特定収縮低減剤は、軽量粗骨材に含浸させるのみならず、さらに、収縮低減性の化合物として、直接、前記一液型混和剤に添加して用いてもよい。
【0121】
軽量粗骨材に含浸された特定収縮低減剤が含まれることは、以下の手段により確認することができる。確認の方法としては、例えば、軽量コンクリート硬化体を破砕して軽量粗骨材を分取し、分取した軽量粗骨材をイオン交換水に浸漬させて特定収縮低減剤を抽出し、抽出物を含むイオン交換水を分析する方法等が挙げられる。
【0122】
[セメント]
セメントは、公知の各種セメントの中から目的に応じて選択すればよい。セメントは、セメント単独でもよく、微粉末混和材料を混合した混合セメントでもよい。微粉末混和材料としては、高炉スラグ微粉末、シリカフューム、フライアッシュ、石灰石微粉末、石粉、膨張材等が挙げられる。
【0123】
セメントとしては、具体的には、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等のポルトランドセメント;高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等の混合セメント;が挙げられる。
【0124】
[細骨材]
細骨材としては、例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、珪砂、砕砂、石灰砕砂、高炉スラグ細骨材、再生細骨材が挙げられる。また、所望により、軽量細骨材を用いてもよい。
細骨材の種類と、その含有量は、軽量コンクリート硬化体の目標とする機械的強度に応じて選択すればよい。
細骨材は、軽量細骨材と他の細骨材との混合物であってもよく、上記軽量細骨材として、予め特定収縮低減剤を浸漬させてなる軽量細骨材を他の細骨材と併用してもよい。ここで、「他の骨材」とは、軽量細骨材を包含しない一般的な細骨材を指す。
【0125】
[膨張材]
本開示の軽量コンクリート組成物は、コンクリート硬化体の収縮を低減する観点からは、膨張材を含有することが好ましい。
【0126】
膨張材としては、例えば、石灰系膨張材、エトリンガイト系膨張材、エトリンガイト石灰複合系膨張材が挙げられる。本開示のコンクリート組成物が膨張材を含む場合、膨張材の単位量は10kg/m~50kg/mが好ましく、13kg/m~40kg/mがより好ましく、16kg/m~35kg/mがさらに好ましい。
【0127】
[その他の材料]
本開示のコンクリート組成物は、目的に応じて、式(I)好ましくは式(II)で表される化合物、及び、上記A成分~F成分とは別の化学混和剤を含有していてもよい。化学混和剤としては、例えば、減水剤、AE減水剤、収縮低減剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、増粘剤、粉塵低減剤、防凍剤、耐寒剤、防腐剤、防水剤、防錆剤等が挙げられる。
【0128】
[水結合材比]
本開示のコンクリート組成物は、水結合材比(水と結合材との質量比、水/結合材)が30%~70%であることが好ましく、35%~65%であることがより好ましく、40%~60%であることがさらに好ましい。
【0129】
<軽量コンクリート組成物(第2実施形態)>
本開示の第2実施形態の軽量コンクリート組成物は、既述の上記式(I)で表される化合物と、上記A成分である水溶性ビニル共重合体及び上記のB成分である水溶性ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1種の水溶性ビニル共重合体と、上記C成分である多価アルコールアルキレンオキサイド付加物、上記D成分であるオキシアルキレン基を有するエーテル化合物(ただし上記式(I)で表される成分を除く。)、上記E成分である多価アルコールアルキレンオキサイド付加物及び上記F成分であるオキシアルキレン基を有するエーテル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、を含む混合液を含浸させてなる軽量粗骨材と、セメントと、細骨材と、水と、を含む。
【0130】
本開示の第2実施形態の軽量コンクリート組成物は、特定収縮低減剤に加え、上記A成分である水溶性ビニル共重合体及び上記のB成分である水溶性ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1種の水溶性ビニル共重合体と、上記C成分である多価アルコールアルキレンオキサイド付加物、上記D成分であるオキシアルキレン基を有するエーテル化合物(ただし上記式(I)で表される成分を除く。)、上記E成分である多価アルコールアルキレンオキサイド付加物及び上記F成分であるオキシアルキレン基を有するエーテル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、を含む特定収縮低減剤溶液を含浸させてなる軽量粗骨材を含む。特定収縮低減剤溶液は、水溶液又は水性懸濁液の形態であることが好ましい。
【0131】
第2実施形態の軽量コンクリート組成物における軽量粗骨材は、特定収縮低減剤、上記水溶性ビニル共重合体及び特定収縮低減剤とは異なる収縮低減剤を含浸してなることで、軽量粗骨材を含む軽量コンクリート組成物においては、軽量粗骨材の空隙に保持された特定収縮低減剤、水溶性ビニル共重合体及び他の収縮低減剤が、軽量コンクリート組成物の混練時に、軽量粗骨材に保持された特定収縮低減剤が、セメントマトリックス中に移動し、セメントマトリックス中の細孔量を低減すると考えられる。軽量粗骨材に保持された特定収縮低減剤溶液は、セメント粒子等の分散性を向上させ得る水溶性ビニル共重合体及び他の収縮低減剤を含むことで、軽量コンクリート組成物におけるセメントマトリックス中に特定収縮低減剤等の有効成分が浸出により移動することで、形成される軽量コンクリート硬化体においてある大きさ以上(例えば、直径400Å以上=直径40nm以上、直径500Å以上=直径50nm以上)の細孔容積を低減する作用がより向上すると推測され、これらの機能が相俟って、本開示の第2実施形態の軽量コンクリート組成物によれば、収縮低減性が良好な軽量コンクリート硬化体を得ることができると考えられる。
【0132】
なお、第2実施形態の軽量コンクリート組成物における特定収縮低減剤、A成分、B成分、C成分、D成分、E成分、及びF成分は、前記本開示の第1実施形態の軽量コンクリート組成物において述べた各化合物と同じであり、好ましい例も同様である。
具体的には、例えば、第1実施形態にて述べた、A成分及びB成分から選ばれる水溶性ビニル共重合体の少なくとも1種と、C成分、D成分、E成分及びF成分から選ばれる少なくとも1種の化合物とが、予め混合された一液型混和剤に対し、さらに特定収縮低減剤を含む混合液を、軽量粗骨材に含浸させてなる態様等が挙げられる。
また、第2実施形態の軽量コンクリート組成物に用い得るセメント、細骨材、水、及び所望により併用される各成分及び好ましい含有量は、前記本開示の第1実施形態の軽量コンクリート組成物において述べた態様と同じである。
【0133】
<軽量コンクリート硬化体の製造方法>
本開示のコンクリート組成物は、軽量粗骨材に、上記式(I)で表される収縮低減剤溶液を含浸させる工程〔工程I〕と、セメント、水、前記収縮低減剤を含浸させた軽量粗骨材、及び、細骨材を含む軽量コンクリート組成物を調製する工程〔工程II〕と、前記軽量コンクリート組成物を型枠内に投入して硬化させる工程〔工程III〕と、を含む。
【0134】
〔工程I〕
工程Iは、軽量粗骨材に、上記式(I)で表される特定収縮低減剤を含む収縮低減剤溶液を含浸させる工程である。
工程Iでは、まず、特定収縮低減剤を含む収縮低減剤溶液を調製する。収縮低減剤溶液は、収縮低減剤の水溶液又は水性懸濁液とすることができる。
特定収縮低減剤を含む収縮低減剤溶液における特定収縮低減剤の濃度は、収縮低減剤溶液の全量に対し、2質量%~20質量%が好ましく、5質量%~15質量%がより好ましい。
調製された収縮低減剤溶液に、軽量粗骨材を含浸させることで、軽量粗骨材の空隙に収縮低減剤溶液が浸透し、空隙内に特定収縮低減剤が保持させることになる。
浸漬時間を、20時間~48時間とすることで、軽量粗骨材への特定収縮低減剤の十分な浸透が期待できる。
なお、軽量骨材としては、軽量粗骨材に加え、軽量細骨材を併用してもよい。
【0135】
なお、工程Iでは、前記本開示の第2実施形態に係る軽量コンクリート組成物に記載のように、特定収縮低減剤を含む収縮低減剤溶液を調製する場合、特定収縮低減剤に加え、上記A成分及びB成分から選ばれる水溶性ビニル共重合体、及び、上記C成分である多価アルコールアルキレンオキサイド付加物、上記D成分であるオキシアルキレン基を有するエーテル化合物(ただし上記式(I)で表される成分を除く。)、上記E成分である多価アルコールアルキレンオキサイド付加物並びに上記F成分であるオキシアルキレン基を有するエーテル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物をさらに含む特定収縮低減剤溶液を調製し、これを軽量粗骨材に含浸させてもよい。
【0136】
〔工程II〕
工程IIでは、工程Iで得た特定収縮低減剤が含浸された軽量粗骨材と、セメント、水、前記収縮低減剤を含浸させた軽量粗骨材、及び、細骨材を含む軽量コンクリート組成物を調製する工程である。
ここで、前記本開示の第1実施形態に係る軽量コンクリート組成物に記載のように、さらに、上記A成分及びB成分から選ばれる水溶性ビニル共重合体、及び、上記C成分である多価アルコールアルキレンオキサイド付加物、上記D成分であるオキシアルキレン基を有するエーテル化合物(ただし上記式(I)で表される成分を除く。)、上記E成分である多価アルコールアルキレンオキサイド付加物並びに上記F成分であるオキシアルキレン基を有するエーテル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を添加してもよい。
軽量コンクリート組成物は、既述の各材料のうち、軽量粗骨材を除く成分を、まず混合し、その後、さらに、軽量粗骨材を投入し、さらに混合することで得られる。各材料の混合は、例えばミキサーを用いた練り混ぜにより行うことができる。
【0137】
コンクリート組成物を調製する際における材料の混合順は、制限されない。例えば、まずセメントと細骨材とを混ぜ、次いで水及び化学混和剤を投入して練り混ぜ、次いで粗骨材を投入して練り混ぜてコンクリート組成物を得る。
【0138】
本開示のコンクリート組成物の製造方法の一例として、A成分、及びB成分から選ばれる少なくとも1種の水溶性ビニル共重合体、D成分、E成分並びにF成分からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、を予め混合した一液型混和剤を用いた製造方法が挙げられる。例えば、水とセメントと細骨材とを含有するスラリーを調製し、このスラリーに一液型混和剤及び特定収縮低減剤を含浸させた特定軽量粗骨材を混合してコンクリート組成物を得る。
【0139】
〔工程III〕
工程IIIは、上記工程IIで得た軽量コンクリート組成物を型枠内に投入して硬化させる工程である。
工程IIIでは、軽量コンクリート組成物を型枠内に投入した後、型枠内に投入された軽量コンクリート組成物に対して、常法に従い脱泡等の処理を行ってもよい。型枠内に投入された軽量コンクリート組成物は、自己発熱を伴い硬化して硬化体を形成する。軽量コンクリート硬化体の機械的強度を高める観点からは、型枠内に投入した軽量コンクリート組成物又は得られた軽量コンクリート硬化体にさらに、常法により養生を施すことが好ましい。
【0140】
本開示の軽量コンクリート硬化体の製造方法に適用可能な養生方法に制限はない。養生方法としては、例えば、温度を20±3℃に維持した、水中、湿砂中又は飽和蒸気中で行う標準養生が挙げられる。コンクリート硬化体の機械的強度を高める観点から、標準養生に他の養生を1種類以上組み合わせて実施することも好ましい。他の養生としては、70℃~100℃の温度範囲で2時間~72時間蒸気養生する蒸気養生、100℃~400℃の温度範囲で2時間~72時間加熱する高温養生、オートクレーブ等による高温高圧養生が挙げられる。
【0141】
養生を実施する時期に制限はない。例えば、硬化後に直ちに行ってもよく、硬化してある程度経時した後に行ってもよい。
【実施例0142】
以下、本開示の軽量コンクリート硬化体及び軽量コンクリート組成物を、実施例を挙げて具体的に説明する。本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0143】
<軽量粗骨材の準備>
・比較軽量粗骨材
比較軽量粗骨材として、構造用人工軽量骨材メサライト〔商品名:日本メサライト工業株式会社〕(絶乾密度:1.31g/cm、24時間給水率:7.5%)を用意した。
下記表中には、「比較粗骨材」と略称にて記載する。
・式(II)で表される化合物の溶液を含浸してなる軽量粗骨材
特定収縮低減剤として、式(II)で表される化合物である1-ヘキサデカノール1モルにエチレンオキサイド5モルとプロピレンオキサイド35モルとをブロック付加したアルキレンオキサイド付加物を用意した。
前記特定収縮低減剤の10質量%水溶液を調製し、軽量粗骨材として、既述の比較用軽量骨材メサライトを、上記水溶液に10時間浸漬した。その後、残余の溶液を分離して、特定収縮低減剤を含浸してなる軽量粗骨材を得た。
下記表中には、「特定収縮低減剤含浸粗骨材」と略称にて記載する。
【0144】
(実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2)
<化学混和剤の用意>
[混和剤]
混和剤として下記2種類を用意した。
・混和剤(1)
ポリカルボン酸コポリマー(A成分)を含む高性能AE減水剤(チューポールHP-11:商品名、竹本油脂株式会社製)(密度:1.06g/cm~1.12g/cm
・一液型混和剤(2)
一液型混和剤(2)は下記A成分、C成分、D成分及び水を含み、質量比がA成分:C成分:D成分:水=9:11:31:49である。
・A成分・・・構成単位1を形成する単量体1がα-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=23)オキシエチレンであり、構成単位2を形成するカルボン酸単量体がメタクリル酸であり、構成単位1の割合が89質量%であり、構成単位2の割合が11質量%であり、重量平均分子量が18000である水溶性ビニル共重合体
・C成分・・・2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキサイド付加物、式(C)中のa+b=100
・D成分・・・トリエチレングリコールモノブチルエーテル
【0145】
<軽量コンクリート組成物の処方>
上記混和剤(1)と特定収縮低減剤を含浸してなる軽量粗骨材とを含む軽量コンクリート組成物及びその硬化物を実施例1とした。
実施例1において、下記混和剤(1)に換えて、下記高性能一液型混和剤(2)を含む軽量コンクリート組成物及びその硬化物を実施例2とした。
実施例1において、特定収縮低減剤を含浸してなる軽量粗骨材に代えて、比較軽量粗骨材を含む軽量コンクリート組成物及びその硬化物を比較例1とした。
実施例2において、特定収縮低減剤を含浸してなる軽量粗骨材に代えて、比較軽量粗骨材を含む軽量コンクリート組成物及びその硬化物を比較例2とした。
【0146】
<軽量コンクリート組成物の製造>
表1に示す調合にて材料をミキサーに投入し90秒間練混ぜ、実施例及び比較例の各軽量コンクリート組成物を製造した。
細骨材の単位量は概ね901kg/mとし、粗骨材の単位量は概ね412kg/mとし、s/a(sand/all gravel:細骨材率)は、概ね52.5%とした。各例のコンクリート組成物にはAE剤(AE300、竹本油脂株式会社製)を適量混合し、目標スランプ21.0cm~22.0cm及び目標スランプフロー34.5cm~42.0cm、目標空気量5.0%~5.3%となるように調製した。
【0147】
<軽量骨材及び上記混和剤以外の材料>
・セメント:太平洋セメントの普通ポルトランドセメント(密度:3.16g/cm
・細骨材:君津産 山砂(密度:2.59g/cm、吸水率:1.94%、粗粒率:2.80)
【0148】
【表1】

【0149】
得られた実施例1、比較例1及び対照例の軽量コンクリート組成物のフレッシュの物性を評価した。
結果を表2に示す。
下記表2の結果より、実施例及び比較例の軽量コンクリート組成物は、いずれも、軽量コンクリート硬化体を得るために必要な流動性を有することが分かった。
【0150】
【表2】

【0151】
<軽量コンクリート硬化体の製造及び評価>
表1に示す各例のコンクリート組成物を用いて、コンクリート硬化体である供試体を製造した。供試体は、10cm×10cm×40cmの角柱とした。
各例それぞれ養生を行い、各評価に適切な材齢に達した時点で、圧縮強度、乾燥収縮率、及び、中性化深さをそれぞれ測定した。試験結果を表3~表5に示す。表中の「比率」は、各系列それぞれ、(各例の中性化速度係数/代表的な比較例の中性化速度係数)である。
【0152】
コンクリート硬化体の圧縮強度は、JIS A 1108(2018年)に従って行った。
コンクリートの乾燥収縮率の測定は、JIS A1129-2(2010年)「コンタクトゲージ法」に従って行った。
コンクリートの促進中性化試験は、JIS A1153(2012年)に準じて行った。
コンクリートの中性化深さの測定は、JIS A1152(2018年)に従って行った。
【0153】
【表3】

【0154】
【表4】

【0155】
【表5】

【0156】
表3の結果より、組成が同じで、用いた軽量粗骨材のみが異なる実施例と比較例との対比より、実施例1の軽量コンクリート硬化体は、比較例1の軽量コンクリート硬化体に対し、実施例2の軽量コンクリート硬化体は、比較例2の軽量コンクリート硬化体に対し、それぞれ、圧縮強度がより高いことが分かった。
また、表4の結果より、乾燥収縮ひずみは、実施例の軽量コンクリート硬化体は、比較例の軽量コンクリート硬化体に対し低い値となり、特に26週という長期間を経た場合により低減されていた。このことから、軽量コンクリート硬化体を実際に使用する際において、経時した後でも、乾燥収縮に起因するひび割れ抵抗性がより良好となり、ひび割れに起因する外観の低下等が抑制されることが期待される。
また、表5の結果より、実施例の軽量コンクリート硬化体は、比較例の軽量コンクリート硬化体に対し、中性化深さがより小さく、中性化速度がより低くなっており、このことから、実施例の軽量コンクリート硬化体は、比較例の軽量コンクリート硬化体に対し、中性化抵抗性が向上していることが分かった。