(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087006
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】欠陥良否判定方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20240621BHJP
【FI】
G01N21/956 A
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024069810
(22)【出願日】2024-04-23
(62)【分割の表示】P 2022129601の分割
【原出願日】2017-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2016237642
(32)【優先日】2016-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501005438
【氏名又は名称】オルボテック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボリス フェルドマン
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】田畑 譲
(72)【発明者】
【氏名】山本 茂
(57)【要約】
【課題】3次元構造の高さ方向の発生位置を正確に計測し、背景のパターンとの相対的な高さを判定することにより、発生した欠陥の良否を正確に判定する。
【解決手段】多層の透明薄膜(1、2、3、4、5、6)を含む検査対象物10に対して、光学式撮像手段22により、高さ方向に所定刻み幅の複数の画像を取得し、複数の画像の各画素について、隣接画素との輝度差から部分画像の鮮鋭度を算出し、複数の画像の全画像について、同一画素位置における鮮鋭度の算出結果が最大の画像番号から部分画像の高さ情報を算出し、高さ位置の算出から前記画像全体の3次元情報を得、3次元情報に基づいて検査対象物の欠陥の良否を判定する。
【選択図】
図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層の透明薄膜を含む検査対象物に対して、光学式撮像手段により、高さ方向に所定の刻み幅の複数の画像を取得するステップと、
前記複数の画像の各画素に対して、隣接画素との輝度差から部分画像の鮮鋭度を算出するステップであり、前記部分画像は、前記複数の画像の各画素と、前記各画素の横方向に隣接する画素と、前記各画素の縦方向に隣接する画素から構成される、ステップと、
前記複数の画像の全画像の中で、同一画素位置における前記鮮鋭度の算出結果が最大の画像番号から前記部分画像の高さ情報を算出するステップと、
前記高さ情報の算出から前記全画像の3次元情報を得るステップであり、前記3次元情報が前記全画像のエッジ3次元情報と前記全画像の異物3次元情報の少なくとも1つを含む、ステップと、及び、
前記エッジ3次元情報と前記異物3次元情報に基づいて前記検査対象物の欠陥良否を判定するステップを含み、
前記検査対象物は有機ELデバイスであり、前記有機ELデバイスの電極パターンのエッジを前記3次元情報の高さの基準とするとともに、前記電極パターンのエッジが検出され難い場合に前記有機ELデバイスの発光部分のエッジを前記3次元情報の高さの基準とする、
欠陥良否判定方法。
【請求項2】
前記鮮鋭度が最大の前記画像のパターン欠陥を検出するステップと、
前記複数の画像から前記鮮鋭度の高い部分画像の密度が最大の画像を抽出するステップと、
前記画像を3次元パターン構造の高さ方向の基準位置1とするステップと、及び、
前記パターン欠陥の前記高さ情報と前記基準位置1との関係から、発生した前記パターン欠陥の前記3次元パターン構造中での高さを測定するステップとをさらに含む請求項1に記載の欠陥良否判定方法。
【請求項3】
前記鮮鋭度が最大の画像のパターン欠陥を検出するステップと、
前記複数の画像で、前記透明薄膜の端部に発生する干渉縞の干渉画像が最も鮮鋭になる画像を抽出するステップと、
前記画像を3次元パターン構造の高さ方向の基準位置2とするステップと、及び、
前記パターン欠陥の高さ情報と前記基準位置2との関係から、発生した前記パターン欠陥の前記3次元パターン構造中での高さを測定するステップとをさらに含む請求項1に記載の欠陥良否判定方法。
【請求項4】
前記パターン欠陥の前記高さ情報を用いて、前記パターン欠陥を修復するステップをさらに含む請求項2又は3に記載の欠陥良否判定方法。
【請求項5】
所定の刻み幅で上下動可能な光学式撮像手段によって、多層の透明薄膜を有する検査対象物の複数の画像データを画像番号を付して取得する撮像手段と、
前記画像データの特徴を抽出する抽出部と、
前記特徴に基づいて評価値を算出する評価値算出部であり、前記評価値は、注目画素と前記注目画素に隣接する隣接画素との輝度差を表す、評価値算出部と、
前記画像データにおいて、位置関係が一致する前回の評価値と前記評価値とを比較し、かつ比較結果を生成する評価値比較部と、
前記比較結果に基づいて、前記評価値を記憶する評価値記憶部と、
前記比較結果に基づいて、前記画像番号を記憶する画像番号記憶部と、
前記画像番号記憶部に記憶された前記画像番号に基づいて前記検査対象物のエッジ3次元情報を抽出するエッジ3次元情報抽出部と、
前記エッジ3次元情報に基づいて、前記検査対象物に存在する欠陥の高さ情報を抽出する異物3次元情報抽出部と、及び、
前記複数の欠陥が存在する場合に、前記欠陥間の前記高さ情報の差分に基づいて、前記検査対象物の良否を判定する良否判定部と、
を具備し、前記検査対象物は有機ELデバイスであり、前記有機ELデバイスの電極パターンのエッジを前記3次元情報の高さの基準とするとともに、前記電極パターンのエッジが検出され難い場合に前記有機ELデバイスの発光部分のエッジを前記3次元情報の高さの基準とする欠陥良否判定装置。
【請求項6】
前記エッジ3次元情報抽出部は、前記評価値が最も高い前記画像番号に基づいて前記エッジ3次元情報を抽出する請求項5に記載の欠陥良否判定装置。
【請求項7】
前記評価値は、注目画素と前記注目画素に隣接する隣接画素との輝度差に基づいて算出される請求項5又は6に記載の欠陥良否判定装置。
【請求項8】
前記異物3次元情報抽出部は、前記検査対象物の電極パターン、及び前記検査対象物の封止層の干渉縞が撮影された前記画像データの前記評価値に基づいて、前記高さ情報の基準を決定する請求項5乃至7のいずれか1項に記載の欠陥良否判定装置。
【請求項9】
前記欠陥がパターン欠陥、ピンホール又は異物である請求項5乃至8のいずれか1項に記載の欠陥良否判定装置。
【請求項10】
前記評価値は、前記隣接画素の輝度値に対する前記注目画素の輝度値の差に基づいて算出された鮮鋭度である請求項7乃至9のいずれか1項に記載の欠陥良否判定装置。
【請求項11】
前記検査対象物が有機EL表示デバイスである請求項5乃至10のいずれか1項に記載の欠陥良否判定装置。
【請求項12】
前記検査対象物がフレキシブル基板上に形成されたフレキシブル有機EL表示デバイスである請求項5乃至10のいずれか1項に記載の欠陥良否判定装置。
【請求項13】
前記異物3次元情報抽出部が算出した前記高さ情報に基づいて、前記欠陥を修復する機能を少なくとも1つさらに備える請求項5乃至12のいずれか1項に記載の欠陥良否判定装置。
【請求項14】
前記高さ情報に応じて前記機能を選択する機能をさらに含む請求項13に記載の欠陥良否判定装置。
【請求項15】
其の表面上にオーバーレイされた複数の薄膜層を含むサンプルの画像をキャプチャーするように構成されているカメラと、
前記サンプルの表面に対して垂直な方向に前記カメラの前側焦点面を走査し、それによって前記サンプル内のそれぞれ異なる焦点深度で薄膜層の一連の画像を取り込むように結合されているモータと、及び、
前記一連の画像内の画像を処理し、画像内で注目する特徴を識別し、前記一連の画像内の前記注目する特徴の最適焦点深度を計算し、前記注目する特徴の位置を推定するように、前記一連の画像を処理するように構成されたプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、さらに、前記注目する特徴の最適焦点深度の計算に、前記注目する特徴のエッジの鮮鋭度を計算し、前記鮮鋭度を最大にする深度を見つけることを含むように構成され、
前記サンプルは有機ELデバイスであり、前記有機ELデバイスの電極パターンのエッジを前記3次元情報の高さの基準とするとともに、前記電極パターンのエッジが検出され難い場合に前記有機ELデバイスの発光部分のエッジを前記注目する特徴の高さの基準とする、
検査装置。
【請求項16】
前記カメラが前記画像をキャプチャーしている間に、前記サンプルを単色光で照明するように構成されている照明源を備える、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記照明源は、暗視野モードで前記サンプルを照明するように構成されている、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記カメラと前記サンプルとの間の距離を測定するように構成された距離計を含み、前記プロセッサは、前記注目する特徴の位置を推定する際に前記測定された距離を用いるように構成されている、請求項15に記載の装置。
【請求項19】
前記プロセッサは、経時的な前記測定距離の周期的な変化に基づいて前記カメラに対する前記サンプルの振動を検出し、前記検出された前記振動を補償するため前記キャプチャーされた前記画像の前記焦点深度を補正するように構成されている、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
サンプル内の異なるそれぞれの焦点深度で、前記サンプルの表面上にオーバーレイされた複数の薄膜層を含む、サンプルの一連の画像をキャプチャーし、
前記画像内の注目する特徴を識別し、
前記一連の前記画像内の前記注目する特徴の最適焦点深度を計算し、そして
前記最適焦点深度に基づいて、前記薄膜層内の注目する特徴の位置を推定すること、
を含み、
前記最適焦点深度の計算は、前記注目する特徴のエッジの鮮鋭度を計算し、前記鮮鋭度を最大にする深度を見つけることを含み、
前記サンプルは有機ELデバイスであり、前記有機ELデバイスの電極パターンのエッジを前記3次元情報の高さの基準とするとともに、前記電極パターンのエッジが検出され難い場合に前記有機ELデバイスの発光部分のエッジを前記注目する特徴の高さの基準とする、
検査方法。
【請求項21】
前記一連の画像のキャプチャーには、前記画像がキャプチャーされている間に前記サンプルを単色光で照明することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記サンプルの照明には、暗視野モードで前記サンプルに光を向けることを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記一連の画像のキャプチャーには、前記試料の表面に対して垂直な方向にカメラの前側焦点面を走査することを含み、其れによって、前記カメラは、前記異なる焦点深度において前記薄膜層の前記一連の画像をキャプチャーする、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記最適焦点深度の計算には、前記カメラと前記サンプルとの間の距離を測定することと、前記注目する特徴の前記位置を推定する際に前記測定距離を適用することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記測定距離を適用することには、経時的な前記測定距離の周期的変化に基づいて前記カメラに対する前記サンプルの振動を検出することと、前記検出された振動を補償するように前記キャプチャー画像の前記焦点深度を補正することとを含む、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層の薄膜を使用した半導体ウェハーや薄膜トランジスタ表示デバイス等の検査対象物の製造時に発生した欠陥の高さ情報を光学式撮像手段によって測定し、欠陥発生部位の高さ情報と欠陥の発生した層を特定して欠陥の良否を判定する欠陥良否判定方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多層の薄膜を使用した半導体や薄膜トランジスタ表示及びその同類のデバイスの製造ではフォトリソグラフィを用いて微小なパターンが形成されている。それらの製造工程において、様々な要因によってパターン異常、ピンホール等の欠陥が発生し、歩留まりを落とす原因となっている。歩留まり低下の要因を取り除いて生産効率を高めるために、これらの製造工程を管理することによって発生した欠陥を検査し、要因を特定する作業が行われている。
【0003】
そのような製造工程のうち、複数の層を連続的に形成する工程において、各層形成の工程途中にてパターン異常、ピンホール及びその同類の欠陥の検査ができないケースがある。このため、唯一の手段として、最終層の形成の後に欠陥の検査を行い、欠陥の高さ位置情報から該当欠陥を発生させた工程を特定する必要がある。例えば、フレキシブル有機EL(Electro-Luminescence)の封止工程においては、窒化ケイ素などの無機薄膜とポリイミドなどの有機薄膜を多重に積層して、大気中の酸素や水分が装置内に進入することを防止する技術が用いられている。しかし、各層に発生する微小なピンホールの存在は装置の寿命にとって致命的である。特に、異なる層に発生したピンホールが近接して存在する位置を正確に測定し、製品の良否を判定する必要がある。しかしながら、これらの層の形成は、真空中あるいは窒素雰囲気中にて短時間に行う必要があり、途中で工程を止めて対象物を検査することができない。
【0004】
図1は、一般的なフレキシブル有機EL表示デバイスの断面構造を示しており、有機ELは、電気回路パターン1によって発光する。また、電気回路パターン1は、第1の基材5及び第2の基材6から成る基材の上に形成され、第1の封止層(無機膜)2と、第2の封止層(有機膜)3と、第3の封止層(無機膜)4とから成る透明膜によって封止されている。通常、第1の封止層2及び第3の封止層4は無機物質であるシリコン窒化膜であり、化学蒸着(Chemical Vapor Deposition、(CVD))プロセスによって形成される。第2の封止層3には有機物質であるポリイミドが使われ、第2の封止層3は、例えば、インクジェット印刷装置の使用によって形成される。第1の基材5は透明基板である。第1の基材5として、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリカーボネート(PC)等の樹脂基板が用いられる。
【0005】
図2は、封止層(例えば、有機材料又は無機材料の封止用透明膜)を形成する工程において、封止層4に2個のピンホール7A、7Bが形成された様子を示している。ピンホール7A、7Bは、第3の封止層4のシリコン窒化膜に存在している。空気中の酸素(O
2)や水(H
2O)がポリイミド膜に浸透したとしても、空気中の酸素(O
2)や水(H
2O)は第1の封止層2(シリコン窒化膜)によって遮断される。そして、ピンホール7A、7B直下のEL素子は直ちには破壊されず、ピンホール7A、7Bは、有機EL表示デバイスに致命的な欠陥ではない。
【0006】
一方、
図3は、同様にフレキシブル有機EL表示デバイスの封止層の形成工程において、欠陥であるピンホール8A、8Bが第1の封止層2と第3の封止層4の各シリコン窒化膜の近接(垂直方向を軸として)した部位に存在する様子を示している。この場合には、空気に接する封止層4のピンホール8Aから侵入した酸素や水が、時間経過につれてポリイミド膜(封止層3)に浸透する。そして、遂には酸素や水が封止層2のピンホール8Bまで到達し、ピンホール8Bの直下にあるEL素子が破壊される。このようにEL素子が破壊されて、有機EL表示デバイスの寿命が縮まることは、表示デバイスにとって致命的なことである。
【0007】
有機ELの例を挙げて説明したように、表示デバイスの封止層上の欠陥(例えば、ピンホール及び異物)が、
図3に示すように表示デバイスにとって致命的であるか否かが判定される必要がある。しかしながら、封止層の厚みは、数μm程度であるから、欠陥が発生した封止用透明膜を特定するためには、サブミクロンオーダーの分解能で、欠陥の高さが測定される必要がある。そのような精密な測定精度を満たすような技術として、例えば、レーザによる三角測距方式による距離測定装置、白色干渉計(特開2013-19767号公報(特許文献1))及び共焦点顕微鏡(特開2012-237647号公報(特許文献2))及びその同類のものが知られている。
【0008】
日本国公開特許公報2014-148735号(特許文献3)には、多焦点共焦点ラマン分光顕微鏡が開示され、そこではレーザ観察光学系を用いてサンプルからのラマン散乱光が観察されている。さらに、3次元プロファイルマップの作成において、光学顕微鏡などのカメラ装置手段によって、立体サンプルに対して焦点距離に応じた複数の画像を得て、これらの画像を組み合わせて、光の強さと輝度コントラストが最大となる合焦度を評価し、サンプルの3次元プロファイルマップ(高さ地図)を生成する技術が日本国公開特許公報2012-220490号(特許文献4)に開示されている。更に、日本国公開特許公報2005-172805号(特許文献5)には、走査型共焦点顕微鏡において、Zレボルバを移動ピッチΔZで移動し、Z相対位置毎に取得された共焦点画像の最大強度点に基づいて、サンプルに関する輝度・高さ情報(3次元情報)を生成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013-19767号公報
【特許文献2】特開2012-237647号公報
【特許文献3】特開2014-148735号公報
【特許文献4】特開2012-220490号公報
【特許文献5】特開2005-172805号公報
【特許文献6】特開平11-337313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
レーザによる三角測距方式による距離測定装置、白色干渉計、共焦点顕微鏡などの高さ測定技術は、10μm以上の平坦なパターン状欠陥の高さを測定することができる。しかし、数μmの大きさの欠陥(例えば、ピンホールや異物)や平坦でない異物の高さ情報を正確に測定することはできない。特に、1μm以下の欠陥を測定することができない。
【0011】
対象物によって反射される光と参照光との間の干渉による測定方法、或いは対象物によって反射された反射光を、共焦点光学系を用いて集光させることによる検出方法は、大きさが1μm以下の欠陥を検出することができるものではない。対象物の大きさが1μm以下である場合や、対象物の表面に凹凸があって観察に用いる照明光を、鏡面反射せず、散乱してしまうような物体である場合には、反射光そのものを観察できないため欠陥を検出することができない。そして、従来の高さ測定装置では、1μm以下の欠陥を検出することができない。
【0012】
特許文献3に開示されたレーザ観察光学系には、半導体ウェハーや薄膜トランジスタ、特にフレキシブル有機EL表示デバイスの封止層(封止用透明膜)等の対象物の欠陥を検査し、欠陥の高さ情報を算出するような機能がない。
【0013】
更に、焦点位置を変えながら画像を取得して、急峻な輝度変化をする部分における輝度変化量に基づいて、対象物の高さ情報を抽出するDepth From Defocus(DFD)、あるいはDepth From Focus(DFF)が知られている(日本国公開特許公報平11-337313号(特許文献6))。しかし、特許文献6に示されるような従来のDFD処理においては、画像間の位置ずれや画像の画素ノイズによる誤差によって、1μm以下の大きさを有するパターン欠陥や層上の微小欠陥(ピンホールや異物)等の撮像画素が1画素程度の対象物に対しては、画像の位置ずれや画素ノイズの誤差のため高さ情報を正確に測定することができない。DFD又はDFFを用いた高さ情報の測定における、高さ方向の絶対位置は、基板と顕微鏡とを接続する機械の精度に依存している。
【0014】
現在、EL素子を用いた表示デバイスにおいては、製造上の効率を上げるため、G6サイズ、(1500×1850mm)のガラス基板が用いられる。そして、検査装置内部に設けられる基板を載荷(搭載)するステージがG6サイズに合わせてより大きくなるため、基板表面の高さ方向の絶対位置を1μm以内に調整することは現実的ではない。このため、ガラス基板上に形成されたパターンに発生する欠陥の高さ情報(高さ方向の絶対位置)を1μm単位で測定することは、非常に困難である。
【0015】
特許文献4及び特許文献5に開示された技術は、サンプルの3次元プロファイルマップ(高さ地図)を生成するものの、μm単位以下の分解能を用いて、フレキシブル有機EL表示デバイス等の封止用透明膜の欠陥の高さ情報を算出するような機能を持たない。
【0016】
本発明は上述のような事情に基づいてなされたものであり、本発明の目的は、1μm未満の大きさのパターン欠陥や膜(層)の微小なピンホール等の欠陥を対象にしても、3次元構造の高さ方向の発生位置を正確に計測し、背景のパターンとの相対的な高さを判定することにより、発生した欠陥の良否を正確に判定する欠陥良否判定方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の上記目的は、以下のステップを含むことにより達成される。すなわち、多層の透明薄膜に使用される検査対象物に対して、光学式撮像手段によって、高さ方向に所定の刻み幅の複数の画像を取得することと、前記複数の画像の各画素に対して隣接画素との輝度差から部分画像の鮮鋭度を算出することと、前記複数の画像の全画像の中で同一画素位置における前記鮮鋭度の算出結果が最大の画像番号から前記部分画像の高さ情報を算出することと、前記高さ情報の算出から前記全画像の3次元情報を得ることと、及び、前記3次元情報に基づいて前記検査対象物の欠陥良否を判定することを含むことによって本発明の目的は達成される。
【0018】
本発明の上記目的は、以下のステップをさらに含むことにより効率的に達成される。すなわち、前記鮮鋭度が最大の前記画像のパターン欠陥を検出することと、前記複数の画像から前記鮮鋭度の高い部分画像の密度が最大の画像を抽出することと、前記画像を3次元パターン構造の高さ方向の基準位置1とすることと、及び、前記パターン欠陥の前記高さ情報と前記基準位置1との関係から発生した前記パターン欠陥の前記3次元パターン構造中での高さを測定することとをさらに含むことにより、或いは以下のステップ、すなわち、前記鮮鋭度が最大の画像のパターン欠陥を検出することと、前記複数の画像で、前記透明薄膜の端部に発生する干渉縞の干渉画像が最も鮮鋭になる画像を抽出することと、前記画像を3次元パターン構造の高さ方向の基準位置2とすることと、及び、前記パターン欠陥の高さ情報と前記基準位置2との関係から発生した前記パターン欠陥の前記3次元パターン構造中での高さを測定することとをさらに含むことにより、或いは、以下のステップ、すなわち、前記パターン欠陥の前記高さ情報を用いて、前記パターン欠陥を修復することをさらに含むことにより本発明の目的は効率的に達成される。
【0019】
本発明の上記目的は、以下の構成を備えることにより達成される。すなわち、所定の刻み幅で上下動可能な光学式撮像手段によって、多層の透明薄膜を有する検査対象物の複数の画像データを画像番号を付して取得する撮像手段と、前記画像データの特徴を抽出する抽出部と、前記特徴に基づいて評価値を算出する評価値算出部と、前記画像データにおいて前記評価値との位置関係が一致する前回評価値と前記評価値とを比較し、かつ比較結果を生成する評価値比較部と、前記比較結果に基づいて前記評価値を記憶する評価値記憶部と、前記比較結果に基づいて前記画像番号を記憶する画像番号記憶部と、前記画像番号記憶部に記憶された前記画像番号に基づいて前記検査対象物の3次元情報を抽出する3次元情報抽出部と、前記3次元情報に基づいて前記検査対象物に存在する欠陥の高さ情報を抽出する3次元情報抽出部と、及び、前記欠陥が複数存在する場合に前記欠陥間の前記高さ情報の差分に基づいて前記検査対象物の良否を判定する良否判定部とを備えることにより本発明の目的は、達成される。
【0020】
本発明の上記目的は、以下の構成を備えることにより効率的に達成される。すなわち、前記3次元情報抽出部は前記評価値が最も高い前記画像番号に基づいて前記3次元情報を抽出するものであることにより、或いは前記評価値は注目画素と前記注目画素に隣接する隣接画素との輝度差に基づいて算出されるものであることにより、或いは前記3次元情報抽出部は前記検査対象物の電極パターン及び前記検査対象物の封止層の干渉縞が撮影された前記画像データの前記評価値に基づいて前記高さ情報の基準を決定するものであることにより、或いは前記欠陥はパターン欠陥、ピンホール又は異物であることにより、或いは前記評価値は前記隣接画素の輝度値に対する前記注目画素の輝度値の差に基づいて算出された鮮鋭度であることにより、或いは前記検査対象物は有機EL表示デバイスであることにより、或いは前記検査対象物がフレキシブル基板上に形成されたフレキシブル有機EL表示デバイスであることにより、或いは前記3次元情報抽出部が算出した前記高さ情報に基づいて前記欠陥を修復する機能を少なくとも1つさらに備えるものであることにより、或いは前記高さ情報に応じて前記機能を選択する機能をさらに含むことにより、本発明の目的は効率的に達成される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、微小なパターンや異物の高さは、それら自体の反射光に限らず、パターンのエッジ部分や異物の近傍を通過する観察光の減少の観察によって観測される。これによって、従来の技術では計測不可能であった直径1μm程度のピンホールや異物などの高さ情報を正確に計測することが可能となる。
【0022】
本発明においては、複数画像を取得して処理する工程で、取得された画像間に装置自体又は床の振動によって水平方向の位置誤差が引き起こされるとしても、画像間の水平方向の振幅を考慮することにより、発生する微細な欠陥がある高さ情報を誤差なく正確に測定することができる。パターンエッジや異物の画像鮮鋭度を画像間で比較する際には注目画素位置の隣接画素位置間の鮮鋭度の値を比較し、周囲に記憶された画像番号は最も高い鮮鋭度を持つ画像番号で置き換える。こうして、装置全体の耐振動特性を向上でき、上記のプロセスは検査装置の低廉化に大きく寄与する。
【0023】
また、本発明によれば、薄膜多層のデバイス製造において、従来の技術では測定不可能であった直径1μm程度のピンホールの発生した層を特定できるため、その層を形成する膜の物質に合わせて最適な修復手段を選択することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】一般的なフレキシブル有機EL表示デバイスの構造例を示す断面図である。
【
図2】フレキシブル有機EL表示デバイスの封止層において、同一層にピンホールが形成された様子を示す断面図である。
【
図3】フレキシブル有機EL表示デバイスの第1の封止層と第3の封止層にピンホールが形成された様子を示す断面図である。
【
図4A】本発明に係る欠陥良否判定装置の構成例の部分を示すブロック図である。
【
図4B】本発明に係る欠陥良否判定装置の構成例の部分を示すブロック図であり、
図4Aと連結されてブロック図全体を示す。
【
図5】本発明の動作例を示すフローチャートである。
【
図6】フレキシブル有機ELデバイスの1画素に2つの微小異物が発生している様子を示す斜視図である。
【
図7】フレキシブル有機ELデバイスの発光部分の形状を示す断面図である。
【
図8】フレキシブル有機EL基板の垂直方向からフレキシブル有機EL基板を観察した様子を示す平面図である。
【
図9】撮像の詳細な動作例を示すフローチャートである。
【
図10A】画像のパターンエッジ抽出動作例の詳細を示すフローチャートの部分を示すフローチャートである。
【
図10B】画像のパターンエッジ抽出動作例の詳細を示すフローチャートの部分を示す図であり、
図10Aと連結されて当該フローチャート全体を示す。
【
図11A】画像の微小異物画像抽出動作例の詳細を示すフローチャートの部分を示すフローチャートである。
【
図11B】画像の微小異物画像抽出動作例の詳細を示すフローチャートの部分を示す図であり、
図11Aと連結されて当該フローチャート全体を示す。
【
図12A】画像の3次元情報抽出動作例の詳細を示すフローチャートの部分を示すフローチャートである。
【
図12B】画像の3次元情報抽出動作例の詳細を示すフローチャートの部分を示すフローチャートであり、
図12Aと連結されて当該フローチャート全体を示す。
【
図13】取得された40枚中の1枚目、10枚目、30枚目及び40枚目の画像を高さ方向に配列した様子を示す分解斜視図である。
【
図14】1枚目の画像の輝度値(グレイ値)の配列データを示す図である。
【
図15】10枚目の画像の輝度値(グレイ値)の配列データを示す図である。
【
図16】30枚目の画像の輝度値(グレイ値)の配列データを示す図である。
【
図17】40枚目の画像の輝度値(グレイ値)の配列データを示す図である。
【
図18】1枚目の画像のエッジ評価値E(i,j)を示す図である。
【
図19】10枚目の画像のエッジ評価値E(i,j)を示す図である。
【
図20】30枚目の画像のエッジ評価値E(i,j)を示す図である。
【
図21】40枚目の画像のエッジ評価値E(i,j)を示す図である。
【
図22】1枚目の画像のエッジ評価値E(i,j)を用いてエッジ評価記憶値EM(i,j)が更新された様子を示す図である。
【
図23】10枚目の画像のエッジ評価値E(i,j)を用いてエッジ評価記憶値EM(i,j)が更新された様子を示す図である。
【
図24】30枚目の画像のエッジ評価値E(i,j)を用いてエッジ評価記憶値EM(i,j)が更新された様子を示す図である。
【
図25】40枚目の画像のエッジ評価値E(i,j)を用いてエッジ評価記憶値EM(i,j)が更新された様子を示す図である。
【
図26】30枚目の画像の異物評価値F(i,j)を用いて異物評価記憶値FM(i,j)が更新された様子を示す図である。
【
図27】40枚目の画像の異物評価値F(i,j)を用いて異物評価記憶値FM(i,j)が更新された様子を示す図である。
【
図28】1枚目の画像についての評価値更新が完了した後、エッジ画像番号記憶部における画像番号が更新された様子を示す図である。
【
図29】10枚目の画像についての評価値更新が完了した後、エッジ画像番号記憶部における画像番号が更新された様子を示す図である。
【
図30】30枚目の画像についての評価値更新が完了した後、エッジ画像番号記憶部における画像番号が更新された様子を示す図である。
【
図31】40枚目の画像についての評価値更新が完了した後、エッジ画像番号記憶部における画像番号が更新された様子を示す図である。
【
図32】30枚目の画像についての評価値更新が完了した後、異物画像番号記憶部における画像番号が更新された様子を示す図である。
【
図33】40枚目の画像についての評価値更新が完了した後、異物画像番号記憶部における画像番号が更新された様子を示す図である。
【
図34】サンプル(フレキシブル有機ELデバイス)の等高線表示による3次元情報を示す図である。
【
図36】本発明の一実施形態に係る
図35の装置で測定された振動を模式的に示すプロットである。
【
図37】本発明の一実施形態に係る
図36の装置によって行われた焦点品質の測定値を模式的に示すプロットである。
【
図38】本発明の一実施形態による、サンプル中の特徴をマッピングする方法を模式的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明では、多層の透明薄膜を使用した半導体や表示デバイス及びその同類の製造において、成膜時に発生した微小なパターン欠陥の高さ情報を光学式検査手段によって測定する。欠陥発生部位の高さ情報と欠陥の発生した膜種が特定されて、欠陥の良否が判定される。より詳細には、顕微鏡撮像装置は焦点位置を高さ方向に機械的に走査する機構を持ち、高さ方向に走査しながら連続的に複数の画像を撮像して記憶し、画像情報の隣接する画素間のコントラスト差を数値の評価値として算出する。得られた評価値について各画素毎に画像間で大小判定することによって、パターンエッジ画像の最も鮮鋭な画像の番号を選択し、画像の番号を該画像の取得された垂直方向高さ位置へ変換して該当画像部分の垂直方向の高さとして計測する。高さの基準となる位置は、コントラストの最大評価値の密度か、あるいは透明膜の端部に発生する干渉縞画像によって得られる。パターン異常、ピンホール及び異物などの微小画像点として抽出される欠陥点の画像についても同様な手法によって評価値を計算し、基準高さとの相対位置関係によって欠陥点の高さを計測する。欠陥の発生した垂直方向の高さから、欠陥点の発生した層を特定し、欠陥の良否が判定される。
【0026】
以下に、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0027】
先ず、本発明の実施形態の構成例を
図4A及び
図4Bに示して説明する。
【0028】
本実施形態では、フレキシブル有機EL表示デバイス10が、検査対象物であり、表示デバイス10は所定のステージ(図示せず)上にマウントされ、顕微鏡20の下方に設置されている。顕微鏡20の鏡筒部の検査対象側には対物レンズ21が装着され、反対側には撮像カメラ21が装着されている。シーケンス制御部30は、高さ方向駆動モータ23及び画像取得部31を制御する。高さ方向駆動モータ23は、顕微鏡20にラック・ピニオン又はその同類のものを介して連結されており、モータ23がシーケンス制御部30で駆動されることにより顕微鏡20は上下動する。カメラ22はフレキシブル有機EL表示デバイス10を連続的に撮像し、シーケンス制御部30の指示に応じて画像取得部31は、カメラ22から画像データを取得する。画像メモリ32は画像取得部31から送られた画像を記憶する。シーケンス制御部30は、高さ方向駆動モータ23を介して所定の刻み幅(上下量)で顕微鏡20の高さを制御し、対物レンズ21の合焦位置を調整して、検査対象である表示デバイス10を撮像することができる。所定の刻み幅は、高さ方向の解像度であるから、所定の刻み幅が小さいほど、測定範囲内で高さ方向毎の画像を多く取得できる。逆に、所定の刻み幅が大きいほど、測定範囲内で取得する高さ方向毎の画像を減らすことができる。所定の刻み幅を調整することによって、高さ方向の画像の分解能を調整することができる。このようにして、測定範囲の高さを顕微鏡20が移動すると、所定の刻み幅に対応する全ての画像が画像メモリ32に記憶される。顕微鏡20の光学系が無限遠補正光学系で構成された場合には、モータ23が顕微鏡20を上下駆動する代わりに、モータ23が対物レンズ21のみを上下駆動してもよい。
【0029】
画像メモリ32に格納されたデータは、以下に説明する判定処理部で処理される。判定処理部はパターンエッジを抽出するエッジ処理部40と、微小異物を抽出して処理する異
物処理部50と、エッジ処理部40からの3次元情報ED及び異物処理部50からの異物3次元情報FMに基づいて欠陥の良否を判定する良否判定部60とで構成されている。
【0030】
エッジ処理部40は、パターンのエッジを抽出するパターンエッジ抽出部41と、エッジ評価値を算出するエッジ評価値算出部42と、エッジ評価値を比較するエッジ評価値比較部43と、エッジ評価値を記憶するエッジ評価値記憶部44と、エッジ画像の番号(記号及びその同類を含む)を記憶するエッジ画像番号記憶部45と、エッジ評価値記憶部44及びエッジ画像番号記憶部45の情報に基づいて、エッジ3次元情報EDを抽出するエッジ3次元情報抽出部46とで構成されている。異物処理部50は、微小異物抽出部51と、異物評価値を算出する異物評価値算出部52と、異物評価値を比較する異物評価値比較部53と、異物評価値を記憶する異物評価値記憶部54と、異物画像の番号(記号及びその同類を含む)を記憶する異物画像番号記憶部55と、異物評価値記憶部54及び異物画像番号記憶部55の情報に基づいて異物3次元情報FMを抽出する異物3次元情報抽出部56とで構成されている。
【0031】
このような構成において、その動作例は
図5にフローチャートに示される。先ず、シーケンス制御部30の駆動により顕微鏡20を用いて、検査対象物であるフレキシブル有機EL表示デバイス10が撮像される(ステップS100)、次いで、エッジ処理部40で画像のパターンエッジの抽出を行い(ステップS200)、異物処理部50で画像の微小異物の抽出を行う(ステップS300)。エッジ抽出処理と異物抽出処理の順番は変更可能であってもよい。エッジ処理部40内のエッジ3次元情報抽出部46と、異物処理部50内の異物3次元情報抽出部56は3次元情報の抽出処理を行う(ステップS400)。エッジ3次元情報抽出部46からの3次元情報ED及び異物3次元情報抽出部56からの異物3次元情報FMは良否判定部60に入力され、欠陥の良否が判定される(ステップS500)。
【0032】
先ず、測定範囲内に取得された画像についてパターン及び欠陥等のエッジ画素を抽出する方法を説明する。
【0033】
原理的には、画像情報において、注目する注目画素と、注目画素に隣接する隣接画素との輝度値の差に基づいて、注目画素が評価された評価値を算出する。そして、評価値と所定の基準閾値とを比較して、注目画素周辺の部分画像についてのデフォーカス度を判定する。装置は、デフォーカス度の判定結果に基づいて、注目画素がパターン及び欠陥等のエッジ画素であるか否かを判定する。部分画像がデフォーカスしていない場合には、その部分画像は鮮鋭度が高い。部分画像がデフォーカスしている場合には、その部分画像は鮮鋭度が低い。後述するように、微小異物画素を抽出する場合においても、同様の方法を用いて、異物の可能性がある画素のデフォーカス度が判定される。
【0034】
画像情報として画像に存在し、抽出の対象となるパターン及び欠陥等としては、例えば、フレキシブル有機EL表示デバイス10の電極パターン、有機膜、無機膜及びその同類のパターン、ピンホール及びその同類の欠陥の類を考慮することができる。そして、注目画素を評価するために、画素を表す変数を次のように定義する。すなわち、画像を構成する各画素の位置を、画像における横位置i及び縦位置jとしたとき、画像の任意の画素のグレイ値(輝度値)はG(i,j)で表わされる。
【0035】
次に、関数を用いて、エッジ評価値E(i,j)を算出する方法について説明する。用いる関数は、XとYとを比較し、大きい方の値を出力する関数MAX(X,Y)、及びXの絶対値を出力する関数ABS(X)である。これらの関数を用いて、エッジ評価値E(i,j)を算出することができる。そして、エッジ評価値E(i,j)とエッジ閾値を比較して、パターンのエッジ画素(エッジ部分画像)を抽出することができる。算出された
エッジ評価値E(i,j)がエッジ閾値より大きければ、G(i,j)を有する画素はエッジ画素であるとみなされる。算出されたエッジ評価値E(i,j)がエッジ閾値より大きくないものは、エッジ画素ではないとみなされる。より詳細には、エッジ評価値E(i,j)は数式1のように与えられる。そして、G(i,j)を有する画素がエッジ画素であるか否かは、数式2を用いて判断される。
[数1]
エッジ評価値E(i,j)=MAX(MAX(ABS(G(i,j)-G(i+1,j)),ABS(G(i,j)-G(i,j+1))),
MAX(ABS(G(i,j)-G(i-1,j)),ABS(G(i,j)-G(i,j-1)))
[数2]
エッジ評価値E(i,j)>エッジ閾値
パターン及び欠陥等のエッジ画素を抽出するエッジ処理部40の処理は以下のように行われる。
【0036】
先ず、パターンエッジ抽出部41は、画像メモリ32から、画像の任意の画素のグレイ値G(i,j)、任意の画素の横方向に隣接する画素のグレイ値G(i-1,j)及びG(i+1,j)、画像の任意の縦方向に隣接する画素のグレイ値G(i,j-1)及びG(i,j+1)を取得する。そして、エッジ評価値算出部42は、数式1に示された算出方法を用いて、エッジ評価値E(i,j)を算出すると共に、エッジ評価値E(i,j)とエッジ閾値とを比較する。比較の結果、エッジ評価値E(i,j)がエッジ閾値より大きければ、G(i,j)を有する画素はエッジ画素であるとみなされる。エッジ評価値E(i,j)がエッジ閾値より大きくなければ、G(i,j)を有する画素はエッジ画素とはみなされない。
【0037】
エッジ評価値比較部43は、次に取得されたエッジ評価値E(i,j)と、その対応する位置(横位置i、縦位置j)のエッジ評価値記憶部44に記憶されているエッジ評価記憶値EM(i,j)とを比較する。エッジ評価記憶値EM(i,j)は、エッジ評価値E(i,j)を引き続いて取得されるよりも以前に取得された前回のエッジ評価値E(i,j)である。比較の結果、エッジ評価値E(i,j)が、エッジ評価記憶値EM(i,j)より大きい場合には、エッジ評価値記憶部44は、エッジ評価記憶値EM(i,j)をエッジ評価値E(i,j)に書き換える。書き換えが行われた場合には、エッジ画像番号記憶部45は、対応する位置要素であるエッジ画像番号EN(i,j)を現在処理中の画像番号に更新し、エッジ評価値E(i,j)と画像番号とを関連づける。番号は数字でなくても、他と区別できる記号であってもよい。このようにして、現在処理中の画像番号の全ての画素に対して、順次エッジ画素であるか否かの判定を行う。その判定に応じて、エッジ評記憶値EM(i,j)及びエッジ画像番号EN(i,j)は、それぞれ現在処理中のエッジ評価値E(i,j)及び画像番号Nに書き換えられる。
【0038】
現在処理中の画像番号Nの画像における全ての画素に対する上記処理を完了すると、次の画像番号の画像に対して同様の処理が行われる。そして、全ての画像番号の画像に対する処理が完了すると、エッジ3次元情報抽出部46は、エッジ画像番号記憶部45に記憶されている画像番号EN(i,j)に基づいて、パターン及び欠陥等のエッジ画素の高さ情報を生成する。
【0039】
次に、微小異物の画像を抽出し、微小異物の3次元情報を抽出する異物処理部50を説明する。微小異物の画像を抽出する処理は、パターンエッジ高さ情報を生成する処理後に行うようにしてもよいし、処理前に行っても良く、また、同時並行に行うようにしてもよい。
【0040】
パターン及び欠陥等のエッジ画素の抽出処理の場合と同様に、画像を構成する各画素の位置を画像における横位置i及び縦位置jと仮定したとき、画像の任意の画素のグレイ値(輝度値)をG(i,j)のように表す。異物評価値F(i,j)を算出する方法に用いる関数は、XとYとを比較し、小さい方の値を与える関数MIN(X,Y)である。この関数を用いて、異物評価値F(i,j)を算出することができる。
【0041】
異物評価値F(i,j)と微小異物閾値を比較して、パターンの微小異物画素 (微小異物部分画像)を抽出することができる。算出された異物評価値F(i,j)が微小異物閾値より大きければ、G(i,j)を有する画素は微小異物画素であるとみなされ、算出された異物評価値F(i,j)が微小異物閾値より大きくなければ、G(i,j)を有する画素は微小異物画素でないとみなされる。より詳細には、異物評価値F(i,j)は数式3のように与えられる。そして、G(i,j)を有する画素が微小異物画素であるか否かは、数式4を用いて決定される。
[数3]
異物評価値F(i,j)
=MIN(G(i-1,j)+G(i+1,j)-G(i,j)*2,G(i,j-1)+
G(i,j+1)-G(i,j)*2)
[数4]
異物評価値F(i,j)>微小異物閾値
数式4を用いることによって、画像上で横、縦方向ともに周囲画素より輝度の低い画素、つまり1画素程度のサイズの暗点を抽出することが出来る。
【0042】
微小異物画素を抽出する異物処理部50の処理は、以下のように行われる。
【0043】
先ず、微小異物抽出部51は、画像メモリ32から、画像の任意の画素のグレイ値G(i,j)、横方向に隣接する任意の画素のグレイ値G(i‐1,j)及びG(i+1,j)、さらに縦方向に隣接する任意の画素のグレイ値G(i,j‐1)及びG(i,j+1)を取得する。そして、異物評価値算出部52は、数式3に示した算出方法を用いて、異物評価値F(i,j)を算出すると共に、異物評価値F(i,j)と微小異物閾値とを比較する。比較の結果、微小異物評価値F(i,j)が異物閾値より大きければ、G(i,j)を有する画素は微小異物画素であるとみなされ、微小異物評価値F(i,j)が異物閾値より大きくなければ、G(i,j)を有する画素は微小異物画素とみなされない。
【0044】
異物評価値比較部53は、次に取得された異物評価値F(i,j)と、異物評価値記憶部54に記憶されている対応位置(横位置i、縦位置j)の異物評価記憶値FM(i,j)とを比較する。異物評価記憶値FM(i,j)は、異物評価値F(i,j)を次に取得する以前に取得された異物評価値F(i,j)である。比較の結果、異物評価値F(i,j)が異物評価記憶値FM(i,j)より大きい場合には、異物評価値記憶部54は異物評価記憶値FM(i,j)を次に取得された異物評価値F(i,j)に書き換える。異物評価記憶値FM(i,j)の書き換えが行われた場合には、異物画像番号記憶部55は対応位置の要素である異物画像番号FN(i,j)を現在処理中の画像番号Nに更新し、異物評価値F(i,j)と画像番号Nとを関連づける。
【0045】
現在処理中の画像番号Nの全ての画素に対して、順次、異物画素であるか否かの判定が行われる。その判定に応じて、異物評価記憶値FM(i,j)及び異物画像番号FN(i,j)は、それぞれ現在処理中のエッジ評価値E(i,j)及び画像番号Nに書き換えられる。そして、現在処理中の画像番号Nの画像における全ての画素に対する処理を完了すると、次の画像番号(N+1)の画像に対して同様の処理が行われる。
【0046】
全ての画像番号の画像に対する処理が完了すると、異物3次元情報抽出部56は、異物画像番号記憶部55に記憶された異物画像番号FN(i,j)に基づいて、微小異物の高さ情報を生成する。
【0047】
良否判定部60は、エッジ3次元情報抽出部46からのエッジ3次元情報ED(パターンのエッジ画素の高さ情報)と、異物3次元情報抽出部56からの異物3次元情報FM(微小異物の高さ情報)との相対的な高さに基づいて、サンプルであるフレキシブル有機EL表示デバイス10について良否判定を行い、判定結果を出力する。
【0048】
先ず、検査対象物(サンプル)の例として、フレキシブル有機EL表示デバイス10の1画素に2つの微小異物101と102が発生している様子を
図6に示す。後述するように、30枚目の画像が合焦している平面10-30に第1の微小異物101が位置し、40枚目の画像が合焦している平面10-40に第2の微小異物102が、それぞれ位置している。そして、高さの基準面は電極パターン103である。本実施形態では、画像は0.1μmおきに取得されているので、微小異物101はパターン上方2.0μmの位置にあり、微小異物102は3.0μmの位置にあると検出される。
【0049】
次に、3次元情報(構造)の高さの基準について説明する。フレキシブル有機ELの回路のパターンエッジが検出しにくい構造として、発光層107の形状が、
図7に示されるように、カソード電極104を覆う有機膜105で形成された矩形(窓)状である場合がある。以下の説明では、発光部分を窓と表記する。窓を形成する有機膜105と透明膜106との界面によって、照明光が反射される。同軸落射照明を用いる照明光によって、窓の周囲には環状の干渉縞が形成される。干渉縞は、画像処理を用いて観察することができる。最も内側に存在する干渉縞107Aは、有機膜105の窓107の端部(エッジ)である。結果的に、このエッジのある領域で検出されるエッジ評価値E(i,j)が、3次元情報(構造)における高さの基準に適している。つまり、フレキシブル有機EL基板の回路のパターンエッジは、その構造が原因で検出され難いが、有機膜105の窓107の端部(エッジ)は、3次元情報(構造)の高さの基準に適している。さらに、フレキシブル有機EL基板の垂直方向からフレキシブル有機EL基板を(例えば、顕微鏡を用いて)観察すると、カソード電極104が鏡面のように作用し、窓を形成する有機膜105と透明膜106の界面で逆方向に反射する照明光によって、窓の周囲に環状の強い干渉縞が観測される。その様子を
図8に示す。
図8には、カソード電極104のエッジ画像104A、有機EL発光層107のエッジ画像107A、そして窓を形成する有機膜105の端部に発生する干渉像107Bが描かれている。
【0050】
以上で説明された各動作の詳細をフローチャートを参照して説明する。
【0051】
撮像(
図5のステップS100)の詳細な動作例を
図9のフローチャートを参照して説明する。先ず、シーケンス制御部30は画像番号を初期化し(ステップS101)、高さ方向駆動モータ23の駆動によって顕微鏡20の高さを測定開始位置に調整する(ステップS102)。この状態では対物レンズ10とカメラ22が合焦位置の関係にあり、表示デバイス10の画像は画像読取部31を介して撮像され(ステップS103)、画像データは画像メモリ32に格納される(ステップS104)。次に、顕微鏡20を所定の刻み幅分だけ高さ方向に移動し(ステップS105)、顕微鏡20の高さが測定範囲内にあるか否かを判定する(ステップS106)。顕微鏡20の高さが測定範囲内である場合には、表示デバイス10の画像は繰り返し撮像され、順次画像データが格納される。顕微鏡20の高さが測定範囲外であれば、現在処理中の画像番号Nを画像番号最大値Nmaxとして画像メモリ32に格納し(ステップS107)、そして、撮像は完了する。
【0052】
次に、表示デバイス10のパターンエッジ抽出動作(
図5のステップS200)の詳細を
図10A及び
図10Bのフローチャートを参照し説明する。先ず、画像番号N、顕微鏡20の鏡筒部の高さ、横位置i及び縦位置j、エッジ画素数EC(N)を示す値を初期化する(ステップS201)。次に、エッジ評価値算出部42は、画像メモリ16から現在処理中の画像番号Nのグレイ値G(i,j),G(i+1,j),G(i,j+1),G(i-1,j),G(i,j-1)を取得し(ステップS202)、該グレイ値から数式1に基づいてエッジ評価値E(i,j)を算出する(ステップS203)。エッジ評価値比較部43は、エッジ評価値E(i,j)とエッジ閾値とを比較する(ステップS204)。エッジ評価値E(i,j)がエッジ閾値より大きい場合には、エッジ評価値比較部43はエッジ評価値記憶部44のエッジ評価記憶値EM(i,j)を算出されたエッジ評価値E(i,j)に書き換え(ステップS205)、エッジ画像番号記憶部45のエッジ画像番号EN(i,j)を現在処理中の画像番号Nに書き換える(ステップS206)。更に、画像番号Nの画素をエッジ画素と判定した画素数を示すエッジ画素数EC(N)をカウントアップ(「+1」)し(ステップS207)、画素の横位置iをカウントアップする(「+1」)する(ステップS208)。また、上記ステップS204において、エッジ評価値E(i,j)がエッジ閾値以下である場合には、画素の横位置iの1つの増加(「+1」)のみ行われる(ステップS208)。
【0053】
その後、画素の横位置iと最大横位置imax(横位置が画像の端の位置)とを比較し(ステップS209)、画素の横位置iが最大横位置imax以上の場合には、縦位置jをカウントアップ(「+1」)し(ステップS210)、横位置iを初期化する(ステップS210)。画素の横位置iが最大横位置imaxに満たない場合には上記ステップS202に戻り、画素のグレイ値G(i,j),G(i+1,j),G(i,j+1),G(i-1,j),G(i,j-1)が再取得され、パターンのエッジ画素を抽出する処理が行なわれる。
【0054】
次に、画素の縦位置jと最大縦位置jmaxとを比較し(ステップS211)、画素の縦位置jが最大縦位置jmax以上の場合には、画像番号Nをカウントアップ(「+1」)し、縦位置jを初期化する(ステップS212)。画素の縦位置jが最大縦位置jmaxに満たない場合には、処理は上記ステップS202に戻され、同様に、画素のグレイ値G(i,j),G(i+1,j),G(i,j+1),G(i-1,j),G(i,j-1)が同様に取得され、パターンのエッジ画素を抽出する処理が行なわれる。
【0055】
その後、画像番号Nと画像番号最大値Nmaxとを比較し(ステップS213)、画像番号Nが画像番号最大値Nmax以上の場合には、パターンのエッジ画素の抽出処理を終了する。また、画像番号Nが画像番号最大値Nmax未満の場合には、処理は上記ステップS202に戻され、パターンのエッジ画素抽出の処理が行なわれる。
【0056】
次に、表示デバイス10の微小異物画像抽出動作(
図5のステップS300)の詳細を
図11A及び
図11Bのフローチャートを参照して説明する。先ず、画像番号N、顕微鏡の高さ、横位置i及び縦位置j、異物画素数FC(N)を示す値を初期化する(ステップS301)。次に、異物評価値算出部52は、画像のグレイ値G(i-1,j),G(i,j),G(i+1,j),G(i,j-1),G(i,j+1)を取得し(ステップS302)、次に、数式3に従って、異物評価値F(i,j)を算出する(ステップS303)。そして、異物評価値比較部53は、異物評価値F(i,j)と微小異物閾値とを比較する(ステップS304)。異物評価値F(i,j)が微小異物閾値より大きい場合には、異物値比較部53は異物評価値記憶部54の異物評価記憶値FM(i,j)を微小異物評価値F(i,j)に書き換え(ステップS305)、異物画像番号記憶部55の異物画像番号FN(i,j)は現在処理中の画像番号Nに書き換えられる(ステップS306)。画像番号Nの画素を異物と判定された個数を示す異物画素数FC(N)がカウントアップ(「+1」)され(ステップS307)、かつ画素の横位置iはカウントアップ(「+1」)される(ステップS308)。異物評価値F(i,j)が微小異物閾値以下である場合には、画素の横位置iの1つの増加(「+1」)のみが行なわれる(ステップS308)。
【0057】
次に、画素の横位置iと最大横位置imax(横位置が画像の端の位置)とを比較し(ステップS309)、画素の横位置iが最大横位置imax以上の場合には、画素の縦位置jがカウントアップ(「+1」)され、横位置iは初期化される(ステップS310)。画素の横位置iが最大横位置imax未満の場合には、処理は上記ステップS302に戻され、画素のグレイ値G(i-1,j),G(i,j),G(i+1,j),G(i,j-1),G(i,j+1)が再取得され(ステップS302)、微小異物画像の抽出処理が行なわれる。画素の縦位置jと最大縦位置jmaxとを比較し(ステップS311)、画素の縦位置jが最大縦位置jmax以上の場合、画像番号Nがカウントアップ(「+1」)され、縦位置jは初期化される(ステップS312)。画素の縦位置jが最大縦位置jmaxに未満の場合には、処理は上記ステップS302に戻され、画素のグレイ値G(i-1,j),G(i,j),G(i+1,j),G(i,j-1),G(i,j+1)を同様に取得し、微小異物画像を抽出する処理が行なわれる。画像番号と画像番号最大値とを比較し(ステップS313)、画像番号Nが画像番号最大値Nmax以上の場合には、微小異物画像抽出の処理を終了する。また、画像番号Nが画像番号最大値Nmax未満の場合には、処理は上記ステップS302に戻され、微小異物画像抽出の処理が行なわれる。
【0058】
次に、エッジ3次元情報抽出部46及び異物3次元情報抽出部56における3次元情報抽出動作(
図5のステップS400)の詳細を
図12A及び
図12Bのフローチャートを参照して説明する。ここでは、最初にエッジの処理を行い、次いで異物の処理を行う例を説明するが、順序は変更可能であり、両処理は同時並行処理も可能である。
【0059】
最初に、エッジ画素数の最も多い画像番号Nを検出する。先ず、画像番号N及びエッジ画素数最大値ECmaxを初期化し(ステップS401)、エッジ画素数EC(N)を取得する(ステップS402)。次に、エッジ画素数EC(N)が、エッジ画素数最大値ECmaxより大きいか否かを判定する(ステップS403)。エッジ画素数EC(N)がエッジ画素数最大値ECmaxより大きい場合には、装置はエッジ画素数最大値画像番号ECNmaxを画像番号Nに置き換え(ステップS404)、画像番号Nはカウントアップ(「+1」)される(ステップS405)。エッジ画素数EC(N)がエッジ画素数最大値ECmax以下の場合には、画像番号Nのカウントアップ(「+1」)のみが行なわれる(ステップS405)。その後、画像番号Nが画像番号最大Nmax以上であるか否かを判定する(ステップS406)。画像番号Nが画像番号最大Nmaxに未満の場合には、処理は上記ステップS403に戻され、上記処理が繰り返される。このようにして、装置はエッジ画素数の最も多い画像番号を検出し、表示デバイス10の電極パターンが合焦している画像番号を検出する。
【0060】
次のステップでは、異物画素数の最も多い画像番号Nを検出する。先ず、画像番号N、第1異物画素数最大値FCN1max、第2異物画素数最大値FCN2maxが初期化され(ステップS407)、異物画素数FC(N)が取得される(ステップS408)。次に、装置は、異物画素数FC(N)が、第1異物画素数最大値FCN1maxより大きいか否かを判定する(ステップS409)。異物画素数FC(N)が第1異物画素数最大値FCN1maxより大きい場合には、装置は、第1異物画素数画像番号FCN1maxの値を第2異物画素数画像番号FCN2maxの値に書き換え、第1異物画素数画像番号の値を画像番号Nに書き換える(ステップS410)。画像番号Nは、カウントアップ(「+1」)される(ステップS411)。また、異物画素数FC(N)が、第1異物画素数最大値FCN1max以下と判定される場合には、画像番号Nを1つだけ増加(「+1」)させる(ステップS411)。その後、装置は、画像番号Nが画像番号最大Nmax以上であるか否かを判定する(ステップS412)。画像番号Nが画像番号最大Nmax未満の場合には、処理は上記ステップS409に戻され、上記処理は繰り返し実行される。このようにして、最大異物画素数を有する画像番号、すなわち第1異物画素数画像番号FCN1maxが検出され、かつ最大の異物書き換え画素数の画像番号又は二番目に多い画像番号、すなわち、第2異物画素数画像番号FCN2maxが検出される。異物が合焦する画像番号が検出される。
【0061】
最後に、第1異物画素数画像番号FCN1maxとエッジ画素数最大画像番号ECNmaxの第1の差分、第2異物画素数画像番号FCN2maxとエッジ画素数最大値画像番号ECNmaxの第2の差分が算出される。そして、第1の差分と第2の差分に基づいて異物の高さ情報が抽出される(ステップS413)。
【0062】
次に、実際にフレキシブル有機EL(1画素分)のサンプルを撮像した画像に基づいて、サンプルのエッジと微小異物の3次元情報(高さ情報)が抽出される処理の様子を、順を追って説明する。
【0063】
先ず、顕微鏡の高さを高さ方向に等間隔(所定の刻み幅、例えば、0.1μm)で変化させ、検査対象物であるフレキシブル有機EL(1画素サイズ)の40枚の画像が取得される。そして、取得された40枚中の1枚目、10枚目、30枚目及び40枚目の画像を、
図13に示すように、高さ方向に配列する。
図13に示すように、1枚目の画像10-1は、電極パターン103の下方1μmの高さから取得した画像である。電極パターン103の下方1μmの高さから、上方に向かって0.1μm毎に画像が取得される。電極パターン103が完全に合焦する画像10-10は、10枚目に取得される。第1の異物101が合焦する画像10-30は、30枚目に取得される。第2の異物102が合焦する画像10-40は、40枚目に取得される。合焦する画像は、注目する画素と隣接する画素との輝度値の差が大きく、画像の鮮鋭度が高いという特徴がある。例えば、合焦する画像におけるサンプルの干渉像や膜の欠陥及びその同類は、周囲に対して明度差(輝度差)が大きい細い線又は点として画像、即ち高い鮮鋭度の(デフォーカスしていない)部分画像として存在する。
【0064】
ここでは、フレキシブル有機EL(1画素サイズ)が、縦方向に20画素配列され、横方向に20画素配列された領域に撮像されており、輝度値の配列データに変換された様子を、
図14から
図17に示す。
図14から
図17には、それぞれ1枚目の画像36の輝度値(グレイ値)の配列データ、10枚目の画像37の輝度値(グレイ値)の配列データ、30枚目の画像38の輝度値(グレイ値)を配列データ、40枚目の画像39の輝度値(グレイ値)の配列データを示す。
図14から
図17で、横方向の位置は横方向の位置iに対応し、縦方向の位置は縦方向位置jに対応する。画像の位置と配列データとの位置関係は、後述する輝度値の配列データについても適用可能である。
【0065】
次に、数式1を用いて各画像のエッジ評価値E(i,j)を算出する。そして、検査対象物のフレキシブル有機EL(1画素サイズ)は縦方向に画素が20個配列され、横方向に画素が20個配列された領域における、エッジ評価値E(i,j)の分布を
図18から
図21に示す。
図18から
図21には、それぞれ1枚目の画像36のエッジ評価値E(i,j)、10枚目の画像37のエッジ評価値E(i,j)、30枚目の画像38のエッジ評価値E(i,j)、40枚目の画像39のエッジ評価値E(i,j)が示されている。同様に、数式3を用いて各画像の異物評価値F(i,j)を算出可能である。
【0066】
1枚目から40枚目の全ての画像番号(N=1から40)に対応するエッジ評価値E(i,j)が算出された後、評価値記憶部44において、エッジ評価記憶値EM(i,j)が更新される様子を
図22から25に示す。
図22から
図25には、それぞれ1枚目の画像36のエッジ評価値E(i,j)を用いてエッジ評価記憶値EM(i,j)が更新される様子、10枚目の画像37のエッジ評価値E(i,j)を用いてエッジ評価記憶値EM(i,j)が更新される様子、30枚目の画像38のエッジ評価値E(i,j)及び異物評価値F(i,j)を用いて、エッジ評価記憶値EM(i,j)が更新される様子、最後に40枚目の画像39のエッジ評価値E(i,j)及び異物評価値F(i,j)を用いて、エッジ評価記憶値EM(i,j)が更新された様子を示す。
【0067】
このようにして、エッジ評価値E(i,j)を用いたエッジ評価記憶値EM(i,j)の更新(以後、「評価値更新」と呼称する)が終了した後、エッジ画像番号記憶部45において、画像番号Nが更新される様子を
図28から
図31に示す。
【0068】
異物を検出する処理において、30枚目の画像の異物評価値F(i,j)を用いて異物評価記憶値FM(i,j)が更新される様子を
図26に示す。40枚目の画像の異物評価値F(i,j)を用いて異物評価記憶値FM(i,j)が更新される様子を
図27に示す。1枚目及び10枚目の画像の異物評価値F(i,j)は異物閾値以下のため、0(零)に設定される。
【0069】
次に、エッジを検出する処理において、1枚目の画像についての評価値更新が完了した後、画像番号記憶部45における画像番号Nが更新された様子、同様に、10枚目の画像についての評価値更新が完了した後、画像番号記憶部45において画像番号Nが更新される様子、30枚目の画像についての評価値更新が完了した後、画像番号記憶部45における画像番号Nが更新される様子、40枚目の画像についての評価値更新が完了した後、画像番号記憶部45における画像番号Nが更新される様子を
図28から
図31に示す。
【0070】
次に、異物を検出する処理において、30枚目の画像についての評価値更新が完了した後、異物画像番号記憶部55における画像番号が更新される様子を
図32に示す。40枚目の画像についての評価値更新が完了した後、異物画像番号記憶部55における画像番号が更新される様子を
図33に示す。異物3次元情報抽出部56は、異物が表示されている画素が、
図33に示すように画像番号30(30枚目の画像)における位置(5,14)及び画像番号40(40枚目の画像)における位置(15,4)に存在すると判定する。なお、1枚目及び10枚目の画像の異物評価値F(i,j)は、異物閾値以下で、0に設定されているため、1枚目及び10枚目の画像においては、評価値更新は行われず、異物を表示する画素は検出されない。
【0071】
このようにして、エッジ及び異物を検出した画像番号を更新する処理が完了すると、最後に、
図31に示される画像番号の配列データに基づいて、装置は、検査対象物に関する等高線グラフを作成する。そして、
図34に示されるように、等高線グラフからサンプルの3次元情報(高さ情報)を解析することができる。
図34に基づいて、検査対象物についての3次元情報が詳細に判断される。
【0072】
図19に示される10枚目の画像のエッジ評価値E(i,j)の配列が、最も密度が高いといえるから、10枚目の画像は、対象物の3次元情報(構造)の基準である対象物の最下部に存在する薄膜トランジスタ(TFT)回路部分に合焦した画像であると判定できる。したがって、10枚目の画像の高さを基準高さ(0μm)とする。3次元情報の基準の高さに対応する画像番号は10である。即ち、10枚目の画像の高さを基準として設定可能である。
【0073】
第1の微小異物101が合焦する画像の画像番号は30であるから、装置は、第1の微小異物101が基準から上方2.0μmの高さに存在すると判定することができる。第2の微小異物102が合焦する画像の画像番号40であるから、装置は、第2の微小異物102が基準から上方3.0μmの高さに存在すると判定することができる。そして、装置は、電極パターン103の2μm上方に第1の微小異物101が存在していると判定できる。さらに、装置は、第1の異物の3μm上方に、つまり電極パターン103の5μm上方に第2の微小異物102が存在していると判定できる。また、
図34に示される等高線グラフのピークの高さは、検査対象物における微小異物の3次元情報を示している。
【0074】
微小異物又はピンホール等の欠陥が検出された場合には、良否判定部60は、欠陥の3次元情報を解析する。解析結果から、装置は、欠陥が同一の封止層上に存在するか否かを判定する。欠陥が同一の封止層上に存在する場合には、対象物である有機EL表示デバイスは良品として判定される。それから、装置は、複数の欠陥が異なる高さ(厚み方向)に存在するか否かを判定する。複数の欠陥が異なる高さ(厚み方向)に存在する場合には、対象物は不良品として判定される。上述のように、時間経過につれて、有機膜の上に存在する欠陥から侵入した酸素や水が有機膜に浸透する。さらに酸素や水が有機膜の下の欠陥まで到達すると、欠陥の直下にある測定対象物(例えば、EL表示デバイス)は破壊される。その結果、測定対象物の寿命は短縮される。
【0075】
さらに、本発明の欠陥良否判定装置に欠陥を修復する手段を付加してもよい。例えば、有機EL表示デバイスのような薄膜多層のデバイス製造において、直径1μm以下の欠陥(例えば、ピンホール又は異物)を有する層を、本発明の欠陥良否判定装置は特定することができるが、従来の技術では判定できない。このため、本発明の欠陥良否判定装置を用いることによって、欠陥の存在する層を形成する封止膜の材質に応じた最適な修復手段を選択することができる。欠陥が有機膜の異物である場合には、レーザを用いることによって異物を除去して、それから膜は修復可能である。さらに、レーザ光の波長[nm]及びエネルギー密度[J/cm2]を選択することによって、最適な修復を実施可能である。レーザ光を用いることができない場合には、異物を下方に押し込むという、修復方法が選択可能である。欠陥がピンホールである場合には、以下の方法を採用することができる。その方法は、微細な先端処理チューブ(マイクロディススぺンサー)を装填したカートリッジを用いて、欠陥であるピンホールに微小量の膜材料を塗布後、焼成又は紫外線照射によって硬化させるという方法である。
【0076】
本実施形態では、パターンのエッジ画素数最大の画像番号を1つ検出すること、また異物画素数最大の画像番号及び2番目に大きな異物画素数の画像番号(異物画素数最大と同数の場合を含む)を検出することを示したが、しかしながら、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、サンプルを構成する有機膜、無機膜、電極パターンに応じて、或いは、異物や欠陥のサイズ、密度、発生位置及びその同類に応じて、適宜変更を加えることができる。
【0077】
エッジ評価値E(i,j)と異物評価値F(i,j)とはエッジ評価値記憶値EM(i,j)に格納可能である。エッジ評価値E(i,j)と異物評価値F(i,j)との何れを優先するかは、例えば、エッジ評価値E(i,j)と異物評価値F(i,j)値のサイズや部分画像の鮮鋭度に基づいて、決定されてよい。
【0078】
本発明に係る欠陥良否判定方法及び装置では、撮像工程において、装置自体又は床の振動によって取得された画像間に水平方向の位置誤差が生じる。最も鮮鋭度の高い画像番号を検出することによって、水平方向の位置誤差の影響を受けることなく、微小な欠陥の発生している高さ情報を誤差なく正確に計測することができる。そして、欠陥良否判定装置の耐振動特性を向上することができ、上記の処理は装置の低廉化に大きく寄与する。
【0079】
上述の実施形態では、パターンのエッジ画素の高さ測定と微小異物の高さ測定を独立に実行している例を示したが、パターンのエッジ評価値と微小異物評価値を同程度のオーダーの大きさに値変換される場合には、エッジ評価値比較部43からエッジ3次元情報抽出部46までの処理と、異物評価値比較部53から異物3次元情報抽出部56までの処理とを共通の処理として扱うことが可能である。このような処理部の共通化によって、本発明の欠陥良否判定装置を単純化することができる。そのような例として、パターンエッジ抽出部41と微小異物抽出部51とを統合した特徴抽出部、エッジ評価値算出部42と異物評価値算出部52とを統合した評価値算出部、エッジ評価値比較部43と異物評価値比較部53とを統合した評価値比較部、エッジ評価値記憶部44と異物評価値記憶部54とを統合した評価値記憶部、エッジ画像番号記憶部45と異物画像番号記憶部55とを統合した画像番号記憶部、エッジ3次元情報抽出部46と異物3次元情報抽出部56とを統合した3次元情報抽出部のように構成することによって、本発明の欠陥良否判定装置の構成を単純化することができる。エッジ処理部40、異物処理部50、及び良否判定部60は、記憶部を除いて、ソフトウェアによる処理で実行可能である。
【0080】
[本発明の代替実施形態]
図35は、本発明の一実施形態に係る、サンプル502内の特徴をマッピングする検査装置500の模式側面図である。装置500は、以下に説明される追加および変形を伴って、上記の実施形態と同様の原理に基づいて動作する。前述の実施形態、例えば、
図1及び
図3に説明されているように、サンプル502は、典型的には透明層を含む複数の薄膜層を含み、それらはサンプルの表面上にオーバーレイされている。
【0081】
装置500は、ビデオカメラ506を含み、当該ビデオカメラ506は、レンズ508、典型的には高倍率、高開口数、および浅い焦点深度を有する顕微鏡レンズを介してサンプル502の電子画像をキャプチャーする。カメラ506が画像をキャプチャーする間、照明源504はサンプル502を照明する。本実施形態では、照明源504は、単色光、すなわち40nm以下の帯域幅(半値全幅)を有する光を放射する。エンハンスされたこのような単色照明は、カメラ506によってキャプチャーされた画像における色収差の影響を排除するのに有利である。画像特徴のコントラストをエンハンスするために、照明源504が暗視野モードでサンプル506を照明することもまた有利である。しかしながら、代替として、照明源504は、白色光または他の広帯域光を放射してもよく、また、明視野照明を提供してもよい。
【0082】
モータ510は、サンプル502の表面に垂直な方向にカメラ506の前側焦点面を走査する。走査は連続的でも段階的でもよい。図示の実施形態では、モータ510はカメラ506とレンズ508を上下に平行移動する。代替的に、あるいは、追加的に、モータは焦点面を走査するため、サンプル502の垂直位置をシフト可能であり、又は、レンズ508の焦点設定を調整可能である。走査コースで、カメラ506は、サンプル502上の薄膜層の一連の画像を、サンプル内のそれぞれ異なる焦点深度でキャプチャーする。結果として、サンプル内の異なる深さに位置する特徴は、一連の異なる画像に焦点が合っており、ここで、最も鮮明な焦点は、カメラの前側焦点面が特徴の位置と一致するときに生じる。深さ次元(すなわち、サンプル502の表面に垂直の次元)の範囲にわたって広がる特徴については、特徴の上端は1つの画像で鮮明に焦点が合い、下端はもう一つの画像で鮮明に焦点が合う。
【0083】
プロセッサ512は、画像内に注目する特徴を識別するために、モータ510の走査コースにわたってカメラ506によりキャプチャーされた一連の画像を処理する。このような特徴は、例えば、上記で説明したように薄膜層内の欠陥を含み得る。プロセッサ512は、概して汎用コンピュータプロセッサを含み、カメラ506からの電子画像と装置500の他の構成要素からの信号とを受信するための好適なインターフェースを有し、ソフトウェアでプログラムされており、本明細書に記載の機能を実行する。代替的または追加的に、プロセッサ512の少なくともいくつかの機能は、プログラマブル又はハードワイヤードロジックで実装されてもよい。注目する特徴を識別すると、プロセッサ512は、一連の画像内にあるその特徴の最適光学焦点深度を計算し、次に、薄膜層内で、その特徴の位置、特に深さ(垂直)次元の位置を推定する。この目的のために、これまで詳細に説明されたように、プロセッサ512は画像内の特徴のエッジの鮮明度の尺度を計算し、鮮明度を最大にする深さを見つける。
【0084】
本実施形態では、装置500は、レーザ514および検出器516を含む距離計を備え、カメラ506とサンプル502との間の距離を測定する。図示の距離計は、カメラとサンプルとの間の距離が変化するにつれて、サンプル502から検出器516上に反射されるレーザスポットの位置のシフトを感知することによって動作する。代替的に、超音波距離計又は干渉距離計など、当該技術分野で知られている他の種類の距離計を使用することができる。プロセッサ512は、注目する特徴の位置を推定する際に距離計によって測定された距離を適用し、より詳細には、例えばサンプルの振動が原因で起こり得るサンプル502上の薄膜層内でのカメラ506の前側焦点面の位置の変動を補正する。プロセッサ512は、経時的に距離計によって測定された距離の周期的な変化に基づいてこの振動を検出可能であり、そして、次に、キャプチャーされた画像内において、この振動を補償するように深度測定値を補正可能であり、かようにしてサンプル502の特徴の位置をより高い精度で推定する。
【0085】
図36は、本発明の一実施形態に係る装置500において測定された振動を模式的に示すプロット図である。プロット内の複数のデータ点520は、サンプル502の上方のカメラ506の基準線高さに対する相対高さ(単位ミクロン)を、時間(単位秒)の関数として振動がないと推定されるものとして示す。各データ点520は、距離計検出器516によってされた読みに対応する。プロセッサ512は周期関数をデータ点520にフィットさせて曲線522を生成し、これは任意の時点における振動の推定振幅を与える。カメラ506は、曲線522上の複数のマーク524によって示される時間で画像をキャプチャーする。このような各時間において、プロセッサ512は、曲線522の値を読み取って高さ補正を提供し、補正後の焦点深度を計算するためにモータ510の走査によって与えられる名目深度にこの補正値を加算(または減算)する。したがって、プロセッサ512は、サンプル502の振動を補償可能であり、画像内に現れる特徴の位置をより正確に推定することができる。
【0086】
図37は、本発明の一実施形態に係る装置500によってされた焦点品質の測定値を示す模式プロット図である。データ点530は、所与の特徴について計算された焦点スコアに対応し、サンプル502上の薄膜層内のカメラ506の焦点深度の関数としてプロットされている。名目焦点深度は、上記で説明したようにサンプルの振動について補正されてもよい。焦点スコアは、例えば派生画像に基づいて、注目する特徴のエッジの鮮明度を測定する。データ点530のZ位置は、測定された振動に対して補正されており、したがって、プロット図内で不均等間隔である場合もあり得る。焦点スコアは、カメラ506の前側焦点面の深さの関数として逆放物線形を呈する。したがって、プロセッサ512は、好適な曲線532をデータ点530にフィットさせ、曲線532のピークを見つけ、これはサンプル502内の特徴の深さを示す。
【0087】
図38は、本発明の一実施形態係るサンプル中の特徴をマッピングする方法を模式的に示すフローチャートである。当該方法は、便宜上及び明確のために、装置500(
図35参照)の特徴を参照しながら、以下に説明される。代替的に、当該方法は、本明細書を読んだ後に当業者に明らかで、かつ必要な変更を加え、前掲の実施形態の装置を使用して、あるいは任意の他の好適な検査システムを使用して、実施されてもよい。
【0088】
距離測定ステップ540において、プロセッサ512は、レーザ514やセンサ516などの距離計を使用して、サンプル502からのカメラ506及びレンズ508の距離を測定する。概して、走査ステップ542において、装置500は、モータ510がサンプル502上の薄膜層を介してカメラの前側焦点面の深さを走査する間、この距離が(振動による微動以外)略一定に留まるように構成される。代替的に、このステップにおいて、距離計はモータ510の動作によって引き起こされるシフトを測定してもよい。モータ510がカメラの焦点を深さ次元に走査するにしたがって、プロセッサ512はカメラ506からサンプル502の画像を取得する。
【0089】
ステップ540で行われた距離計測定に基づいて、
図36に示されるように、例えば、振動再構成ステップ544において、プロセッサ512はサンプル502の振動パターンを再構成する。次に、深度補正ステップ546において、プロセッサ512は、ステップ542で取得した画像の名目焦点深度を補正して、振動によって引き起こされる誤差を補償することができる。プロセッサ512は、画像内の1つまたは複数の注目する特徴、例えば潜在的な欠陥を識別し、焦点採点ステップ548において、これらの特徴についての焦点スコアを補正後深さの関数として計算する。位置計算ステップ550において、このような各特徴について、プロセッサ512は、計算焦点スコアに曲線をフィットさせ、次に、特徴の3次元座標を見つける。
【0090】
上記の実施形態は例として引用されており、かつ本発明は上記に特定され、記載されたものに限定されないことが理解されるであろう。むしろ、本発明の範囲は、上述のとおり記載された様々な機能の組み合わせおよび部分的な組み合わせ、ならびに上述の説明を読むと当業者に見出されるであろう従来技術には開示されていないこれらの変形および修正も含む。
【符号の説明】
【0091】
1 電気回路パターン
2 第1の封止層
3 第2の封止層
4 第3の封止層
5 第1の基材
6 第2の基材
10 フレキシブル有機EL表示装置
20 顕微鏡(鏡筒部)
21 対物レンズ
22 カメラ
23 高さ方向駆動モータ
30 シーケンス制御部
31 画像取得部
32 画像メモリ
40 エッジ処理部
41 パターンエッジ抽出部
42 エッジ評価値算出部
43 エッジ評価値比較部
44 エッジ評価値記憶部
45 エッジ画像番号記憶部
46 エッジ3次元情報抽出部
50 異物処理部
51 微小異物抽出部
52 異物値算出部
53 異物値比較部
54 異物値記憶部
55 異物画像番号記憶部
56 異物3次元情報抽出部
60 良否判定部
101 第1の微小異物
102 第2の微小異物
103 電極パターン
104 カソード電極
105 有機膜
106 透明膜
107 発光層
500 検査装置
502 サンプル
504 照明光源
506 カメラ
508 顕微鏡レンズ
510 焦点調整モータ
512 プロセッサ
514 距離計レーザ
516 距離計検出器