(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008704
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】粘着剤および粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 201/00 20060101AFI20240112BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240112BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240112BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J11/06
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110774
(22)【出願日】2022-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100174159
【弁理士】
【氏名又は名称】梅原 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】野依 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】西改 美希
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
(72)【発明者】
【氏名】永田 拓也
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AA17
4J004AB01
4J004FA08
4J004FA10
4J040DF041
4J040HD19
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA17
4J040KA23
4J040KA43
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】高屈折率と低弾性率とを両立できる粘着剤を提供する。
【解決手段】ベースポリマーと、高屈折率添加剤(A)と、を含む粘着剤が提供される。上記高屈折率添加剤(A)は、非対称構造の化合物である。上記高屈折率添加剤(A)の含有量は、上記ベースポリマー100重量部に対して30重量部以上である。上記粘着剤の屈折率は1.50以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースポリマーと、高屈折率添加剤(A)と、を含む粘着剤であって、
前記高屈折率添加剤(A)は非対称構造の化合物であり、
前記高屈折率添加剤(A)の含有量は、前記ベースポリマー100重量部に対して30重量部以上であり、
前記粘着剤の屈折率は1.50以上である、粘着剤。
【請求項2】
前記高屈折率添加剤(A)は、二重結合含有環を有する化合物である、請求項1に記載の粘着剤。
【請求項3】
前記高屈折率添加剤(A)は、ヘテロ環を有する化合物である、請求項1または2に記載の粘着剤。
【請求項4】
前記高屈折率添加剤(A)は、置換基を有する縮合環を含む化合物である、請求項1または2に記載の粘着剤。
【請求項5】
前記高屈折率添加剤(A)として、置換基を有するジナフトチオフェン化合物を含む、請求項4に記載の粘着剤。
【請求項6】
前記高屈折率添加剤(A)として、屈折率1.65以上の化合物を含む、請求項1または2に記載の粘着剤。
【請求項7】
前記高屈折率添加剤(A)は、分子量が100以上1000以下の化合物である、請求項1または2に記載の粘着剤。
【請求項8】
前記ベースポリマーを構成するモノマー成分において、芳香環含有モノマーの含有量は0重量%以上75重量%未満である、請求項1または2に記載の粘着剤。
【請求項9】
請求項1または2に記載の粘着剤からなる粘着剤層を含む、粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤および粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)は、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する。このような性質を活かして、粘着剤は、家電製品から自動車、各種機械、電気機器、電子機器等の様々な産業分野において、接合や固定、保護等の目的で広く利用されている。粘着剤の用途の一例として、液晶表示装置や有機EL(OLED)表示装置等のような表示装置において、種々の光透過性部材を相互にまたは他の部材と接合する用途が挙げられる。光学部材用の粘着剤に関する技術文献として特許文献1、2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-169382号公報
【特許文献2】特開2017-128732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2は、モノマー単位として芳香環を複数有するモノマーを含有する(メタ)アクリル酸エステル重合体を主成分とする粘着剤組成物、および該粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤を開示しており、芳香環を複数有するモノマーを用いることで粘着剤の屈折率を1.50以上、特に好ましくは1.51以上とすることを提案している。例えば、光学部材など、粘着剤が貼り付けられる材料のなかには、屈折率が高い材料があり、そのような高屈折率材料の接合に一般的なアクリル系粘着剤を用いると、両者の屈折率差に起因して界面で反射が生じることが知られている。上記高屈折材料の接合等に用いる粘着剤として、屈折率の高い粘着剤を用いることにより、上記界面反射を防止または抑制することができる。なお、アクリル系粘着剤の屈折率は通常1.47程度である。
【0005】
ところで、粘着剤は、その適用箇所や使用態様に応じて、良好な柔軟性を有するものが好ましく用いられ得る。例えば、近年、スマートフォン等の電子機器に用いられる有機EL表示装置等のディスプレイとして、フォルダブルディスプレイやローラブルディスプレイが実用化されており、上記用途に用いられる粘着剤も、繰り返し折り曲げられる被着体に追従する柔軟性を有する必要がある。柔軟性に優れる粘着剤は、3次元形状等の曲面形状の表面にも追従、密着しやすく、曲面形状を有する電子機器用途にも好適である。高屈折率を有する粘着剤についても、柔軟性を高めることができれば、上述の柔軟性が求められる用途に適用することができ、有用である。しかし、粘着性ポリマーのモノマー成分として用いられる高屈折率材料は、芳香環を有するなどガラス転移温度が高い傾向があり、高屈折率材料を用いて形成された粘着剤では、弾性率が高くなる傾向がある。粘着剤の設計において、高屈折率と低弾性率とはトレードオフの関係にあり、両者を両立し得る粘着剤が実現されれば、実用上有益である。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みて創出されたものであり、高屈折率と低弾性率とを両立できる粘着剤を提供することを目的とする。本発明の他の目的は、上記粘着剤からなる粘着剤層を含む粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この明細書によると、ベースポリマーと、高屈折率添加剤(A)とを含む粘着剤が提供される。上記高屈折率添加剤(A)は、非対称構造の化合物である。上記高屈折率添加剤(A)の含有量は、上記ベースポリマー100重量部に対して30重量部以上である。上記粘着剤の屈折率は1.50以上である。上記高屈折率添加剤(A)として非対称構造の化合物を採用することは、該高屈折率添加剤(A)の添加量増加に伴う粘着剤の弾性率上昇を抑制する観点から有利である。かかる構造の高屈折率添加剤(A)を、ベースポリマーに対して比較的多量に含有させることにより、高屈折率かつ低弾性率の粘着剤を実現することができる。
【0008】
いくつかの態様において、上記高屈折率添加剤(A)としては、二重結合含有環を有する化合物が好ましく用いられる。かかる化合物を含有させることにより、粘着剤の屈折率を効率よく高め得る。
【0009】
いくつかの態様において、上記高屈折率添加剤(A)としては、ヘテロ環(複素環ともいう。)を有する化合物が好ましく用いられ得る。かかる化合物を含有させることにより、粘着剤の屈折率を効率よく高め得る。上記ヘテロ環を有する化合物としては、二重結合含有環を有する化合物に該当するものを好ましく採用し得る。
【0010】
いくつかの態様において、上記高屈折率添加剤(A)としては、置換基を有する縮合環を含む化合物(以下、「置換縮合環含有化合物」ともいう。)が好ましく用いられ得る。かかる化合物を含有させることにより、粘着剤の屈折率を効率よく高め得る。上記縮合環は、ヘテロ環および二重結合含有環の少なくとも一方に該当する環を含む構造を有することが好ましい。
【0011】
いくつかの好ましい態様において、上記置換縮合環を有する化合物は、少なくとも1つの置換基を有するジナフトチオフェン化合物(以下、「置換DNT」ともいう。)であり得る。上記高屈折率添加剤(A)として非対称構造の置換DNTを含む粘着剤によると、高屈折率と低弾性率とを好ましく両立し得る。
【0012】
いくつかの態様において、上記高屈折率添加剤(A)としては、屈折率が1.65以上の化合物が好ましく用いられる。かかる化合物を含有させることにより、粘着剤の屈折率を効率よく高め得る。
【0013】
いくつかの態様において、上記高屈折率添加剤(A)は、分子量が100以上1000以下の化合物であることが好ましい。上記範囲の分子量を有する高屈折率添加剤(A)は、粘着剤に相溶しやすく、高屈折率と低弾性率との両立に適する。
【0014】
いくつかの好ましい態様において、上記ベースポリマーを構成するモノマー成分において、芳香環含有モノマーの含有量は0重量%以上75重量%未満である。このような組成のモノマー成分により構成されたベースポリマーと上記高屈折率添加剤(A)とを組み合わせて用いる構成において、ここに開示される技術(粘着剤、該粘着剤を形成するための粘着剤組成物、上記粘着剤からなる粘着剤層、該粘着剤層を備える粘着シート等を包含し得る。以下同じ。)による効果は好ましく発揮さ得る。
【0015】
また、この明細書によると、ここに開示されるいずれかの粘着剤(ここに開示されるいずれかの粘着剤組成物から形成された粘着剤であり得る。)からなる粘着剤層を含む粘着シートが提供される。ここに開示される粘着剤は、高屈折率と低弾性率とを両立し得るので、上記粘着剤を含む粘着シートは、例えばフォルダブルディスプレイ用途など、高い屈折率を有することが望ましく、かつ繰返しの折曲げ操作に耐え得る柔軟性を有することが求められる用途における接合や固定、保護等に好ましく用いられ得る。
【0016】
なお、本明細書に記載された各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれ得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態に係る粘着シートの構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】他の一実施形態に係る粘着シートの構成を模式的に示す断面図である。
【
図3】他の一実施形態に係る粘着シートの構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際に提供される製品のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
【0019】
<粘着剤>
ここに開示される粘着剤は、該粘着剤の構成に対応する成分(粘着剤形成成分)を含む粘着剤組成物を用いて形成することができる。かかる粘着剤は、溶剤型、活性エネルギー線硬化型、水分散型、ホットメルト型等の形態の粘着剤組成物を、乾燥、架橋、重合、冷却等により硬化させてなる粘着剤、すなわち上記粘着剤組成物の硬化物であり得る。粘着剤組成物の硬化手段(例えば乾燥、架橋、重合、冷却等)は、1種のみを適用してもよく、2種以上を同時に、または多段階にわたって適用してもよい。溶剤型粘着剤組成物では、典型的には該組成物を乾燥(好ましくは、さらに架橋)させて粘着剤を形成することができる。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物では、典型的には活性エネルギー線を照射して重合反応および/または架橋反応を進行させることにより粘着剤が形成される。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物で乾燥させる必要がある場合は、乾燥後に活性エネルギー線を照射するとよい。ここに開示される粘着剤は、高屈折率添加剤(A)の配合容易性等の観点から、溶剤型粘着剤組成物を用いて好ましく形成され得る。
【0020】
ここに開示される粘着剤は、ベースポリマーおよび高屈折率添加剤(A)(以下、「添加剤(A)」と表記することがある。)を少なくとも含む。上記粘着剤の種類は特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤(天然ゴム系、合成ゴム系、これらの混合系等)、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、フッ素系粘着剤等であり得る。上記アクリル系粘着剤とは、アクリル系ポリマーをベースポリマーとする粘着剤をいう。ゴム系その他の粘着剤についても同様である。粘着特性の調節容易性や光学特性等の観点から、いくつかの態様ではアクリル系粘着剤が好ましい。
【0021】
なお、この明細書において、粘着剤の「ベースポリマー」とは、該粘着剤に含まれるゴム状ポリマーの主成分をいう。上記ゴム状ポリマーとは、室温付近の温度域においてゴム弾性を示すポリマーをいう。また、この明細書において「主成分」とは、特記しない場合、50重量%を超えて含まれる成分を指す。
【0022】
この明細書において「アクリル系ポリマー」とは、該ポリマーを構成するモノマー単位として、1分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来するモノマー単位を含む重合物をいう。以下、1分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを「アクリル系モノマー」ともいう。したがって、この明細書におけるアクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーに由来するモノマー単位を含むポリマーとして定義される。アクリル系ポリマーの典型例として、該ポリマーを構成するモノマー成分のうち50重量%超(好ましくは70重量%超、例えば90重量%超)がアクリル系モノマーであるアクリル系ポリマーが挙げられる。
【0023】
また、この明細書において「アクリル系モノマー」とは、1分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーをいう。ここで、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基を包括的に指す意味である。したがって、ここでいうアクリル系モノマーの概念には、アクリロイル基を有するモノマー(アクリル系モノマー)とメタクリロイル基を有するモノマー(メタクリル系モノマー)との両方が包含され得る。同様に、この明細書において「(メタ)アクリル酸」とはアクリル酸およびメタクリル酸を、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、それぞれ包括的に指す意味である。他の類似用語も同様である。
【0024】
また、この明細書において「ポリマーを構成するモノマー成分」とは、あらかじめ形成された重合物(オリゴマーであり得る。)の形態で粘着剤組成物に含まれるか、未重合のモノマーの形態で粘着剤組成物に含まれるかを問わず、該粘着剤組成物から形成される粘着剤中において当該ポリマーの繰返し単位(モノマー単位)を構成するモノマーを意味する。すなわち、粘着剤に含まれる所定のポリマー(例えばベースポリマー、好ましくはアクリル系ポリマー)を構成するモノマー成分は、重合物、未重合物、部分重合物のいずれの形態で上記粘着剤組成物に含まれていてもよい。粘着剤組成物の調製容易性等の観点から、いくつかの態様において、モノマー成分の実質的に全部(例えば95重量%以上、好ましくは99重量%以上)を重合物の形態で含む粘着剤組成物が好ましい。
【0025】
以下、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含む粘着剤(アクリル系粘着剤)について主に説明するが、ここに開示される技術における粘着剤をアクリル系粘着剤に限定する意図ではない。
【0026】
(モノマー(m1))
いくつかの態様において、上記アクリル系ポリマーは、該アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分として、エステル末端に鎖状アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(以下、「モノマー(m1)」ともいう。)を含むことが好ましい。モノマー(m1)における鎖状アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよい。モノマー(m1)は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
モノマー(m1)としては、例えば下記式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
CH2=C(R1)COOR2 (1)
ここで、上記式(1)中のR1は水素原子またはメチル基であり、R2は鎖状アルキル基である。上記鎖状アルキル基の炭素原子数は、例えば1~20であり、1~18であることが好ましい。上記鎖状アルキル基の炭素原子数が1~20であるアルキル(メタ)アクリレート、すなわちC1-20アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分がモノマー(m1)を含む態様において、該モノマー成分におけるアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、その使用効果が適切に発揮されるように設定することができる。モノマー成分におけるアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、例えば1重量%以上であってよく、5重量%以上でもよく、10重量%以上でもよく、20重量%以上でもよく、25重量%以上でもよく、30重量%以上でもよく、35重量%以上でもよい。添加剤(A)を比較的多く含む組成において高屈折率と低弾性率とをバランスよく両立しやすくする観点から、いくつかの態様において、モノマー成分におけるアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、40重量%以上であることが適当であり、45重量%以上であることが有利であり、50重量%以上(例えば、50重量%超)であることが好ましく、55重量%以上であってもよく、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上または90重量%以上であってもよく、95重量%以上であってもよく、100重量%であってもよい。また、適度な凝集性を有する粘着剤を得やすくする観点から、いくつかの態様において、モノマー成分におけるアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、99.9重量%以下であることが適当であり、99.8重量%以下であることが好ましく、99.6重量%以下であることがより好ましく、99.5重量%以下であってもよく、99.0重量%以下であってもよく、95重量%以下であってもよく、90重量%以下であってもよく、85重量%以下でもよく、80重量%以下でもよく、75重量%以下でもよく、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下または55重量%以下であってもよい。
【0029】
いくつかの態様において、モノマー(m1)の少なくとも一部として、ホモポリマーのTgが-20℃以下(より好ましくは-40℃以下、例えば-50℃以下)であるアルキル(メタ)アクリレートを好ましく採用し得る。このような低Tgのアルキル(メタ)アクリレートは、粘着剤の低弾性率化に役立ち得る。また、接着力等の粘着特性の改善にも役立ち得る。上記アルキル(メタ)アクリレートのTgの下限は特に制限されず、例えば-85℃以上であってよく、-75℃以上でもよく、-65℃以上でもよく、-60℃以上でもよい。上記低Tgアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、アクリル酸n-ブチル(BA)、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、アクリル酸イソノニル(iNA)等が挙げられる。
【0030】
他のいくつかの態様において、モノマー(m1)の少なくとも一部として、ホモポリマーのTgが-20℃超(例えば-10℃以上)であるアルキル(メタ)アクリレートを採用し得る。上記アルキル(メタ)アクリレートのTgの上限は、例えば10℃以下であり、5℃以下であってもよく、0℃以下でもよい。この範囲のTg(以下、「中Tg」ともいう。)を有するアルキル(メタ)アクリレートは、粘着剤の弾性率の調整に役立ち得る。特に限定するものではないが、上記Tg(中Tg)を有するアルキル(メタ)アクリレートは、上記低Tgアルキル(メタ)アクリレートと併用することが好ましい。中Tgアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、ラウリルアクリレート(LA)が挙げられる。あるいは、ここに開示される技術は、中Tgアルキル(メタ)アクリレートを実質的に使用しない態様でも実施され得る。
【0031】
モノマー(m1)を使用するいくつかの態様において、モノマー(m1)として、C4-8アルキル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。なかでも、C4-8アルキルアクリレートの使用がより好ましい。C4-8アルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。C4-8アルキル(メタ)アクリレートの使用により、粘着剤の弾性率低減を実現しやすく、また、良好な粘着特性(接着力等)が得られやすい傾向がある。モノマー(m1)としてC4-8アルキル(メタ)アクリレートを使用する態様において、該モノマー(m1)のうちアルキル(メタ)アクリレートのうちC4-8アルキル(メタ)アクリレートの割合は、30重量%以上であることが適当であり、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上であり、実質的に100重量%であってもよい。
【0032】
モノマー(m1)を使用するいくつかの態様において、モノマー成分におけるC4-8アルキル(メタ)アクリレートの含有量は、例えば1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上または35重量%以上であってよく、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、50重量%超、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上または95重量%以上であってもよく、100重量%であってもよい。また、いくつかの態様において、モノマー成分におけるアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、例えば99.9重量%以下、99.8重量%以下、99.6重量%以下、99.5重量%以下、99.0重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下または75重量%以下であってよく、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下または55重量%以下であってもよい。
【0033】
モノマー(m1)を使用するいくつかの態様において、モノマー(m1)として、C1-6アルキル(メタ)アクリレートが好ましく用いられ得る。C1-6アルキル(メタ)アクリレートの使用により、各温度域の貯蔵弾性率を調節することができる。例えば、高温域の貯蔵弾性率を相対的に高く設定し得る。C1-6アルキル(メタ)アクリレートは、透明性の向上(例えば、ヘイズの低減)にも役立ち得る。また、C1-6アルキル(メタ)アクリレートは、後述するモノマー(m3)との共重合性にも優れる傾向がある。C1-6アルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。C1-6アルキル(メタ)アクリレートとしては、C1-6アルキルアクリレートが好ましく、C2-6アルキルアクリレートがより好ましく、C4-6アルキルアクリレートがさらに好ましい。他のいくつかの態様では、C1-6アルキル(メタ)アクリレートは、好ましくはC1-4アルキル(メタ)アクリレートであり、より好ましくはC2-4アルキル(メタ)アクリレートであり、さらに好ましくはC2-4アルキルアクリレートである。C1-6アルキル(メタ)アクリレートの好適例としては、BAが挙げられる。
【0034】
アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分におけるC1-6アルキル(メタ)アクリレートの含有量は、例えば1重量%以上であってよく、3重量%以上でもよく、5重量%以上でもよく、8重量%以上でもよい。低弾性率化や透明性等の観点から、いくつかの態様において、上記C1-6アルキル(メタ)アクリレートの含有量は、例えば10重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上または35重量%以上であってよく、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、50重量%超、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上で、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上または95重量%以上であってもよく、100重量%であってもよい。また、いくつかの態様において、モノマー成分におけるC1-6アルキル(メタ)アクリレートの含有量は、例えば99.9重量%以下、99.8重量%以下、99.6重量%以下、99.5重量%以下、99.0重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下または75重量%以下であってよく、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下または55重量%以下であってもよく、他のモノマーの効果をよりよく発揮する観点から、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下または5重量%以下であってもよく、3重量%未満または1重量%未満であってもよい。ここに開示される技術は、C1-6アルキル(メタ)アクリレートを実質的に使用しない態様でも実施され得る。
【0035】
モノマー(m1)を使用する他のいくつかの態様において、モノマー(m1)として、C7-12アルキル(メタ)アクリレートが好ましく用いられ得る。C7-12アルキル(メタ)アクリレートの使用により、貯蔵弾性率を好ましく低減することができる。C7-12アルキル(メタ)アクリレートは、接着力(剥離強度)の向上にも役立ち得る。C7-12アルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。C7-12アルキル(メタ)アクリレートとしては、C7-10アルキルアクリレートが好ましく、C7-9アルキルアクリレートがより好ましく、C8アルキルアクリレートがさらに好ましい。C7-12アルキル(メタ)アクリレートの例としては、2EHA、iNA、LAが挙げられ、好適例としては、2EHAが挙げられる。
【0036】
アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分におけるC7-12アルキル(メタ)アクリレートの含有量は、例えば1重量%以上であってよく、3重量%以上でもよく、5重量%以上でもよく、8重量%以上でもよい。低弾性率化や透明性、接着性等の観点から、いくつかの態様において、上記C7-12アルキル(メタ)アクリレートの含有量は、例えば10重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上または35重量%以上であってよく、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、50重量%超、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上または95重量%以上であってもよく、100重量%であってもよい。また、いくつかの態様において、モノマー成分におけるC7-12アルキル(メタ)アクリレートの含有量は、例えば99.9重量%以下、99.8重量%以下、99.6重量%以下、99.5重量%以下、99.0重量%以下、95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下または75重量%以下であってよく、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下または55重量%以下であってもよく、他のモノマーの効果をよりよく発揮する観点から、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下または5重量%以下であってもよく、3重量%未満または1重量%未満であってもよい。ここに開示される技術は、C7-12アルキル(メタ)アクリレートを実質的に使用しない態様でも実施され得る。
【0037】
モノマー成分がモノマー(m1)を含むいくつかの態様において、低弾性率化の観点から、上記モノマー(m1)の少なくとも一部は、アルキルアクリレートであることが好ましい。アルキルアクリレートの使用は、接着力等の粘着特性の点でも有利である。例えば、モノマー(m1)のうち50重量%以上がアルキルアクリレートであることが好ましく、モノマー(m1)におけるアルキルアクリレートの割合は、より好ましくは75重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上であり、モノマー(m1)の実質的に100重量%がアルキルアクリレートであってもよい。モノマー(m1)として1種または2種以上のアルキルアクリレートのみを使用し、アルキルメタクリレートを使用しない態様であってもよい。
【0038】
(モノマー(m2))
いくつかの好ましい態様において、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、モノマー(m2)を含有し得る。上記モノマー(m2)は、水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)およびカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)の少なくとも一方に該当するモノマーである。上記水酸基含有モノマーは、1分子内に少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つのエチレン性不飽和基とを有する化合物である。上記カルボキシ基含有モノマーは、1分子内に少なくとも1つのカルボキシ基と少なくとも1つのエチレン性不飽和基とを含む化合物である。モノマー(m2)は、アクリル系ポリマーに架橋点を導入したり、粘着剤に適度な凝集性を付与したりするために役立ち得る。モノマー(m2)は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。モノマー(m2)は、典型的には芳香環を含有しないモノマーである。
【0039】
モノマー(m2)の有するエチレン性不飽和基の例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、(メタ)アリル基等が挙げられる。重合反応性の観点から(メタ)アクリロイル基が好ましく、低弾性率化や粘着性の観点からアクリロイル基がより好ましい。粘着剤の低弾性率化の観点から、モノマー(m2)としては、1分子中に含まれるエチレン性不飽和基の数が1である化合物(すなわち、単官能モノマー)が好ましく用いられる。
【0040】
いくつかの態様において、モノマー(m2)として、エチレン性不飽和基(例えば(メタ)アクリロイル基)と水酸基および/またはカルボキシ基との距離が比較的長いモノマーが使用され得る。これにより、上記水酸基および/またはカルボキシ基が架橋反応に用いられる態様において、柔軟性の高い架橋構造が得られやすい。例えば、上記エチレン性不飽和基と水酸基および/またはカルボキシ基とを連結する鎖(連結鎖)を構成する原子(典型的には炭素原子や酸素原子)の数が3以上(例えば4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上または19以上)である化合物をモノマー(m2)として使用することができる。上記連結鎖構成原子数の上限は、例えば45以下であり、20以下(例えば19以下、18以下、17以下、16以下、15以下、14以下、13以下、12以下、11以下、10以下、9以下または8以下)であってもよい。なお、上記エチレン性不飽和基と水酸基および/またはカルボキシ基とを連結する連結鎖構成原子数とは、エチレン性不飽和基から水酸基またはカルボキシ基に到達するのに要する最小の原子の数をいう。例えば、上記連結鎖が直鎖アルキレン基(すなわち-(CH2)n-基)からなる場合、nの数が上記連結鎖構成原子数となる。また例えば、上記連結鎖がオキシエチレン基(すなわち-(C2H4O)n-基)の場合、オキシエチレン基を構成する炭素原子数2と酸素原子数1との和である3とnとの積(3n)が上記連結鎖構成原子数となる。特に限定するものではないが、そのようなモノマー(m2)として、上記エチレン性不飽和基と、上記水酸基および/またはカルボキシ基との間に、例えば、-(CH2)n-で表わされるアルキレン単位や、-(CmH2mO)-で表わされるオキシアルキレン単位(例えば、上記式中のmが2であるオキシエチレン単位、上記式中のmが3であるオキシプロピレン単位、上記式中のmが4であるオキシブチレン単位)を少なくとも1つ有するものが用いられ得る。上記アルキレン単位やオキシアルキレン単位の数は、特に限定されず、1以上(例えば1~15または1~10または2~6または2~4)であってもよい。また、上記アルキレン単位を表す式中のnは、例えば1~10の整数であり、2以上であってもよく、3以上でもよく、4以上でもよく、また、6以下でもよく、5以下でもよい。上記オキシアルキレン単位を表す式中のmは2以上の整数であり、例えば2~4の整数である。モノマー(m2)は、上記エチレン性不飽和基、水酸基および/またはカルボキシ基、アルキレン単位および/またはオキシアルキレン単位に加えて、エステル結合やエーテル結合、チオエーテル結合、芳香環、脂肪族環、ヘテロ環(例えば、窒素原子(N)や酸素原子(O)、硫黄原子(S)を含む環)を含むものであり得る。また、上記アルキレン単位やオキシアルキレン単位は置換基を有してもよい。
【0041】
水酸基含有モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルが挙げられるが、これらに限定されない。好ましく使用し得る水酸基含有モノマーの例として、アクリル酸4-ヒドロキシブチル(Tg:-40℃)およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル(Tg:-15℃)が挙げられる。室温域における柔軟性向上の観点から、よりTgの低いアクリル酸4-ヒドロキシブチルがより好ましい。また、水酸基含有モノマーとして、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルを使用し、該水酸基を架橋反応に利用する態様においては、柔軟性の高い架橋構造を得る観点から、上記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル中のヒドロキシアルキル基の炭素数が多いモノマー、例えば上記ヒドロキシアルキル基の炭素数が3以上(例えば3~12、好ましくは4~10)である(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル(例えばアクリル酸4-ヒドロキシブチル)の使用が好ましい。好ましい一態様では、モノマー(m2)の50重量%以上(例えば50重量%超、70重量%超または85重量%超)がアクリル酸4-ヒドロキシブチルであり得る。水酸基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
モノマー(m2)として水酸基含有モノマーを使用するいくつかの態様において、上記水酸基含有モノマーは、メタクリロイル基を有しない化合物から選択される1種または2種以上であり得る。メタクリロイル基を有しない水酸基含有モノマーの好適例として、上述した各種のアクリル酸ヒドロキシアルキルが挙げられる。例えば、モノマー(m2)として使用する水酸基含有モノマーのうち50重量%超、70重量%超または85重量%超がアクリル酸ヒドロキシアルキルであることが好ましい。アクリル酸ヒドロキシアルキルの使用により、架橋点の提供や適度な凝集性の付与に役立つヒドロキシ基をアクリル系ポリマーに導入することができ、かつ対応するメタクリル酸ヒドロキシアルキルのみを使用する場合に比べて室温域における柔軟性や粘着性の良い粘着剤が得られやすい。
【0043】
カルボキシ基含有モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸カルボキシペンチル等のアクリル系モノマーのほか、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。好ましく使用し得るカルボキシ基含有モノマーの例として、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。また、いくつかの態様において、粘着剤の弾性率低減の観点から、カルボキシ基含有モノマーとして、例えば下記式(2)で表わされる化合物を好ましく用いることができる。
CH2=CR1-COO-R2-OCO-R3-COOH (2)
ここで、上記式(2)中のR1は水素またはメチル基である。R2およびR3は、2価の連結基(具体的には、炭素原子数1~20(例えば2~10、好ましくは2~5)の有機基)であり、互いに同じであってもよく異なっていてもよい。上記式(2)におけるR2およびR3は、例えば、2価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂環族炭化水素基であり得る。例えば、上記R2およびR3は、炭素原子数2~5のアルキレンであり得る。上記式(2)で表わされるカルボキシ基含有モノマーの具体例としては、例えば、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-フタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-コハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート等が挙げられる。カルボキシ基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。水酸基含有モノマーとカルボキシ基含有モノマーとを併用してもよい。
【0044】
アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分におけるモノマー(m2)の含有量は、特に制限されず、目的に応じて設定し得る。いくつかの態様において、上記モノマー(m2)の含有量は、例えば0.01重量%以上、0.1重量%以上または0.5重量%以上であり得る。より高い使用効果を得る観点から、いくつかの態様において、上記モノマー(m2)の含有量は、0.8重量%以上とすることが好ましく、1.0重量%以上としてもよく、3.0重量%以上または4.0重量%以上としてもよい。モノマー成分におけるモノマー(m2)の含有量の上限は、他のモノマーの含有量との合計が100重量%を超えないように設定される。いくつかの態様において、上記モノマー(m2)の含有量は、例えば30重量%以下または25重量%以下とすることが適当であり、他のモノマーの効果をよりよく発揮する観点から、20重量%以下とすることが好ましく、15重量%以下とすることがより好ましく、12重量%未満でもよく、10重量%未満でもよく、7重量%未満でもよい。いくつかの好ましい態様において、粘着剤を低弾性率化する観点から、上記モノマー(m2)の含有量は、5.0重量%以下(例えば5.0重量%未満)であり、より好ましくは3.0重量%未満であり、2.0重量%以下であってもよく、1.5重量%以下であってもよい。
【0045】
いくつかの態様において、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分におけるモノマー(m1)とモノマー(m2)との合計含有量は、例えば21重量%以上または31重量%以上であってよく、これらのモノマーの効果を好適に発揮しやすくする観点から、好ましくは41重量%以上であり、51重量%以上でもよく、61重量%以上でもよく、71重量%以上でもよく、76重量%以上でもよく、81重量%以上でもよく、86重量%以上でもよく、91重量%以上でもよく、96重量%以上でもよく、99重量%以上でもよく、実質的に100重量%でもよい。また、いくつかの態様において、モノマー成分におけるモノマー(m1)とモノマー(m2)との合計含有量は、これら以外のモノマーの効果を好適に発揮しやすくする観点から、例えば99重量%以下であってよく、95重量%以下であってもよく、90重量%以下でもよく、85重量%以下でもよく、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下または55重量%以下でもよい。
【0046】
(モノマー(m3))
いくつかの態様において、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、モノマー(m3)を含有し得る。モノマー(m3)としては、1分子中に少なくとも1つの芳香環と少なくとも1つのエチレン性不飽和基とを含む化合物が用いられる。モノマー(m3)は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
モノマー(m3)の有するエチレン性不飽和基の例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、(メタ)アリル基等が挙げられる。重合反応性の観点から(メタ)アクリロイル基が好ましく、低弾性率化や粘着性の観点からアクリロイル基がより好ましい。粘着剤の低弾性率化の観点から、モノマー(m3)としては、1分子中に含まれるエチレン性不飽和基の数が1である化合物(すなわち、単官能モノマー)が好ましく用いられる。
【0048】
モノマー(m3)として用いられる化合物1分子に含まれる芳香環の数は、1でもよく、2以上でもよい。上記芳香環の数の上限は特に制限されず、例えば16以下であり得る。いくつかの態様において、粘着剤組成物の調製容易性や粘着剤の透明性等の観点から、上記芳香環の数は、例えば12以下であってよく、8以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、5以下でもよく、4以下でもよく、3以下でもよく、2以下でもよい。
【0049】
モノマー(m3)として用いられる化合物の有する芳香環は、ベンゼン環(ビフェニル構造やフルオレン構造の一部を構成するベンゼン環であり得る。);ナフタレン環、インデン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環の縮合環;等の炭素環であってもよく、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、チオフェン環;等の複素環(ヘテロ環)であってもよい。上記複素環において環構成原子として含まれるヘテロ原子は、例えば窒素、硫黄および酸素からなる群から選択される1または2以上であり得る。いくつかの態様において、上記複素環を構成するヘテロ原子は、窒素および硫黄の一方または両方であり得る。モノマー(m3)は、例えばジナフトチオフェン構造のように、1または2以上の炭素環と1または2以上の複素環とが縮合した構造を有していてもよい。
【0050】
上記芳香環(好ましくは炭素環)は、環構成原子上に1または2以上の置換基を有していてもよく、置換基を有していなくてもよい。置換基を有する場合、該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルキルオキシ基、グリシジルオキシ基等が例示されるが、これらに限定されない。炭素原子を含む置換基において、該置換基に含まれる炭素原子の数は、好ましくは1~4であり、より好ましくは1~3であり、例えば1または2であり得る。いくつかの態様において、上記芳香環は、環構成原子上に置換基を有しないか、アルキル基、アルコキシ基およびハロゲン原子(例えば臭素原子)からなる群から選択される1または2以上の置換基を有する芳香環であり得る。なお、モノマー(m3)の有する芳香環がその環構成原子上に置換基を有するとは、該芳香環が、エチレン性不飽和基を有する置換基以外の置換基を有することをいう。
【0051】
芳香環とエチレン性不飽和基とは、直接結合していてもよく、リンキング基を介して結合していてもよい。上記リンキング基は、例えば、アルキレン基、オキシアルキレン基、ポリ(オキシアルキレン)基、フェニル基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基、これらの基において1または2以上の水素原子が水酸基で置換された構造の基(例えば、ヒドロキシアルキレン基)、オキシ基(-O-基)、チオオキシ基(-S-基)、等から選択される1または2以上の構造を含む基であり得る。いくつかの態様において、芳香環とエチレン性不飽和基とが、直接結合しているか、またはアルキレン基、オキシアルキレン基およびポリ(オキシアルキレン)基からなる群から選択されるリンキング基を介して結合している構造の芳香環含有モノマーを好ましく採用し得る。上記アルキレン基および上記オキシアルキレン基における炭素原子数は、好ましくは1~4であり、より好ましくは1~3であり、例えば1または2であり得る。上記ポリ(オキシアルキレン)基におけるオキシアルキレン単位の繰り返し数は、例えば2~3であり得る。
【0052】
モノマー(m3)として好ましく採用し得る化合物の例として、芳香環含有(メタ)アクリレートおよび芳香環含有ビニル化合物が挙げられる。芳香環含有(メタ)アクリレートおよび芳香環含有ビニル化合物は、それぞれ、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。1種または2種以上の芳香環含有(メタ)アクリレートと、1種または2種以上の芳香環含有ビニル化合物とを組み合わせて用いてもよい。
【0053】
いくつかの態様において、モノマー(m3)として、高い高屈折率化効果が得られやすいことから、1分子中に2以上の芳香環(好ましくは炭素環)を有するモノマーが用いられ得る。1分子内に2以上の芳香環を有するモノマー(芳香環複数含有モノマー)の例としては、2以上の非縮合芳香環がリンキング基を介して結合した構造を有するモノマー、2以上の非縮合芳香環が直接(すなわち、他の原子を介さずに)化学結合した構造を有するモノマー、縮合芳香環構造を有するモノマー、フルオレン構造を有するモノマー、ジナフトチオフェン構造を有するモノマー、ジベンゾチオフェン構造を有するモノマー、等が挙げられる。芳香環複数含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
上記リンキング基は、例えばオキシ基(-O-)、チオオキシ基(-S-)、オキシアルキレン基(例えば-O-(CH2)n-基、ここでnは1~3、好ましくは1)、チオオキシアルキレン基(例えば-S-(CH2)n-基、ここでnは1~3、好ましくは1)、直鎖アルキレン基(すなわち-(CH2)n-基、ここでnは1~6、好ましくは1~3)、上記オキシアルキレン基、上記チオオキシアルキレン基および上記直鎖アルキレン基におけるアルキレン基が部分ハロゲン化または完全ハロゲン化された基、等であり得る。粘着剤の柔軟性等の観点から、上記リンキング基の好適例として、オキシ基、チオオキシ基、オキシアルキレン基および直鎖アルキレン基が挙げられる。2以上の非縮合芳香環がリンキング基を介して結合した構造を有するモノマーの具体例としては、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート(例えば、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート)、チオフェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ベンジルベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
上記2以上の非縮合芳香環が直接化学結合した構造を有するモノマーは、例えばビフェニル構造含有(メタ)アクリレート、トリフェニル構造含有(メタ)アクリレート、ビニル基含有ビフェニル等であり得る。具体例としては、o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、ビフェニルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
上記縮合芳香環構造を有するモノマーの例としては、ナフタレン環含有(メタ)アクリレート、アントラセン環含有(メタ)アクリレート、ビニル基含有ナフタレン、ビニル基含有アントラセン等が挙げられる。具体例としては、1-ナフチルメチル(メタ)アクリレート(別名:1-ナフタレンメチル(メタ)アクリレート)、ヒドロキシエチル化β-ナフトールアクリレート、2-ナフトエチル(メタ)アクリレート、2-ナフトキシエチルアクリレート、2-(4-メトキシ-1-ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0057】
上記フルオレン構造を有するモノマーの具体例としては、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、フルオレン構造を有するモノマーは、2つのベンゼン環が直接化学結合した構造部分を含むため、上記2以上の非縮合芳香環が直接化学結合した構造を有するモノマーの概念に包含される。
【0058】
上記ジナフトチオフェン構造を有するモノマーとしては、(メタ)アクリロイル基含有ジナフトチオフェン、ビニル基含有ジナフトチオフェン、(メタ)アリル基含有ジナフトチオフェン、等が挙げられる。具体例としては、(メタ)アクリロイルオキシメチルジナフトチオフェン(例えば、ジナフトチオフェン環の5位または6位にCH2CH(R1)C(O)OCH2-が結合した構造の化合物。ここで、R1は水素原子またはメチル基である。)、(メタ)アクリロイルオキシエチルジナフトチオフェン(例えば、ジナフトチオフェン環の5位または6位に、CH2CH(R1)C(O)OCH(CH3)-またはCH2CH(R1)C(O)OCH2CH2-が結合した構造の化合物。ここで、R1は水素原子またはメチル基である。)、ビニルジナフトチオフェン(例えば、ナフトチオフェン環の5位または6位にビニル基が結合した構造の化合物)、(メタ)アリルオキシジナフトチオフェン、等が挙げられる。なお、ジナフトチオフェン構造を有するモノマーは、ナフタレン構造を含むことにより、またチオフェン環と2つのナフタレン構造とが縮合した構造を有することによっても、上記縮合芳香環構造を有するモノマーの概念に包含される。
【0059】
上記ジベンゾチオフェン構造を有するモノマーとしては、(メタ)アクリロイル基含有ジベンゾチオフェン、ビニル基含有ジベンゾチオフェン、等が挙げられる。なお、ジベンゾチオフェン構造を有するモノマーは、チオフェン環と2つのベンゼン環とが縮合した構造を有することから、上記縮合芳香環構造を有するモノマーの概念に包含される。
なお、ジナフトチオフェン構造およびジベンゾチオフェン構造は、いずれも、2以上の非縮合芳香環が直接化学結合した構造には該当しない。
【0060】
いくつかの好ましい態様において、モノマー(m3)として、1分子中に1つの芳香環(好ましくは炭素環)を有するモノマーが用いられる。1分子中に1つの芳香環を有するモノマー(芳香環単数含有モノマー)は、例えば、粘着剤の柔軟性の向上や粘着特性の調整、透明性の向上等に役立ち得る。芳香環単数含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。いくつかの態様において、1分子中に1つの芳香環を有するモノマーは、粘着剤の屈折率向上の観点から、芳香環複数含有モノマーと組み合わせて用いてもよい。
【0061】
1分子中に1つの芳香環を有するモノマーの例としては、べンジル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、エトキシ化フェノール(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシブチル(メタ)アクリレート、クレジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート等の、炭素芳香環含有(メタ)アクリレート;2-(4,6-ジブロモ-2-s-ブチルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(4,6-ジブロモ-2-イソプロピルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、6-(4,6-ジブロモ-2-s-ブチルフェノキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(4,6-ジブロモ-2-イソプロピルフェノキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、2,6-ジブロモ-4-ノニルフェニルアクリレート、2,6-ジブロモ-4-ドデシルフェニルアクリレート等の、臭素置換芳香環含有(メタ)アクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、tert-ブチルスチレン等の、炭素芳香環含有ビニル化合物;N-ビニルピリジン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール等の、複素芳香環上にビニル置換基を有する化合物;等が挙げられる。
【0062】
モノマー(m3)としては、上述のような各種芳香環含有モノマーにおけるエチレン性不飽和基と芳香環との間にオキシエチレン鎖を介在させた構造のモノマーを使用してもよい。このようにエチレン性不飽和基と芳香環との間にオキシエチレン鎖を介在させたモノマーは、元のモノマーのエトキシ化物として把握され得る。上記オキシエチレン鎖におけるオキシエチレン単位(-CH2CH2O-)の繰返し数は、典型的には1~4、好ましくは1~3、より好ましくは1~2であり、例えば1である。エトキシ化された芳香環含有モノマーの具体例としては、エトキシ化o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシ化ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシ化クレゾール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0063】
モノマー(m3)における芳香環複数含有モノマーの含有量は、特に制限されず、例えば5重量%以上、25重量%以上、40重量%以上または50重量%以上であってよく、より高い屈折率を得やすくする観点から、70重量%以上、85重量%以上、90重量%以上または95重量%以上であってもよい。モノマー(m3)の実質的に100重量%が芳香環複数含有モノマーであってもよい。すなわち、モノマー(m3)として1種または2種以上の芳香環複数含有モノマーのみを使用してもよい。また、いくつかの態様において、例えば高屈折率と低弾性率、必要な場合はさらに接着力とのバランスを考慮して、モノマー(m3)における芳香環複数含有モノマーの含有量は、100重量%未満であってもよく、98重量%以下でもよく、90重量%以下でもよく、80重量%以下でもよく、70重量%以下でもよく、65重量%以下でもよく、50重量%以下でもよく、25重量%以下でもよく、10重量%以下でもよい。ここに開示される技術は、モノマー(m3)における芳香環複数含有モノマーの含有量が5重量%未満である態様でも実施し得る。芳香環複数含有モノマーを使用しなくてもよい。
【0064】
アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分における芳香環複数含有モノマーの含有量は、特に制限されず、所望の屈折率と弾性率とを両立する粘着剤を実現し得るように設定することができる。上記モノマー成分における芳香環複数含有モノマーの含有量は、例えば3重量%以上であってよく、10重量%以上でもよく、20重量%以上でもよい。上記モノマー成分における芳香環複数含有モノマーの含有量は、高屈折率と低弾性率、必要な場合はさらに接着力とのバランスを考慮して、凡そ60重量%以下であることが適当であり、50重量%以下(例えば、50重量%未満)でもよく、40重量%以下でもよく、25重量%以下でもよく、15重量%以下でもよく、5重量%以下でもよい。ここに開示される技術は、上記モノマー成分における芳香環複数含有モノマーの含有量が3重量%未満である態様でも実施し得る。芳香環複数含有モノマーを使用しなくてもよい。
【0065】
モノマー(m3)における芳香環単数含有モノマーの含有量は、特に制限されず、例えば5重量%以上、25重量%以上、40重量%以上または50重量%以上であってよく、より高い屈折率を得やすくする観点から、70重量%以上、85重量%以上、90重量%以上または95重量%以上であってもよい。モノマー(m3)の実質的に100重量%が芳香環単数含有モノマーであってもよい。すなわち、モノマー(m3)として1種または2種以上の芳香環単数含有モノマーのみを使用してもよい。また、いくつかの態様において、例えば高屈折率と低弾性率、必要な場合はさらに接着力とのバランスを考慮して、モノマー(m3)における芳香環単数含有モノマーの含有量は、100重量%未満であってもよく、98重量%以下でもよく、90重量%以下でもよく、80重量%以下でもよく、70重量%以下でもよく、65重量%以下でもよく、50重量%以下でもよく、25重量%以下でもよく、10重量%以下でもよい。ここに開示される技術は、モノマー(m3)における芳香環単数含有モノマーの含有量が5重量%未満である態様でも実施し得る。芳香環単数含有モノマーを使用しなくてもよい。
【0066】
アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分における芳香環単数含有モノマーの含有量は、特に制限されず、所望の屈折率と弾性率とを両立する粘着剤を実現し得るように設定することができる。上記モノマー成分における芳香環単数含有モノマーの含有量は、例えば3重量%以上であってよく、10重量%以上でもよく、20重量%以上でもよい。上記モノマー成分における芳香環単数含有モノマーの含有量は、高屈折率と低弾性率、必要な場合はさらに接着力とのバランスを考慮して、凡そ60重量%以下であることが適当であり、50重量%以下(例えば、50重量%未満)でもよく、40重量%以下でもよく、25重量%以下でもよく、15重量%以下でもよく、5重量%以下でもよい。ここに開示される技術は、上記モノマー成分における芳香環単数含有モノマーの含有量が3重量%未満である態様でも実施し得る。芳香環単数含有モノマーを使用しなくてもよい。
【0067】
ここに開示される技術のいくつかの態様において、モノマー(m3)の少なくとも一部として、高屈折率モノマーを好ましく採用し得る。ここで「高屈折率モノマー」とは、その屈折率が、例えば凡そ1.510以上、好ましくは凡そ1.530以上、より好ましくは凡そ1.550以上であるモノマーのことを指す。いくつかの態様において、高屈折率モノマーの屈折率naは、1.570以上であってもよく、1.600以上であってもよく、1.620以上であってもよく、1.650以上、1.675以上または1.700以上であってもよい。高屈折率モノマーの屈折率の上限は特に制限されないが、粘着剤組成物の調製容易性や、粘着剤として適した柔軟性との両立容易性の観点から、例えば3.000以下であり、2.500以下でもよく、2.000以下でもよく、1.900以下でもよく、1.850以下でもよく、1.800以下でもよく、1.750以下でもよく、1.700以下でもよい。高屈折率モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
なお、モノマーの屈折率は、アッベ屈折計を用いて、測定波長589nm、測定温度25℃の条件で測定される。アッベ屈折計としては、ATAGO社製の型式「DR-M4」またはその相当品を用いることができる。メーカー等から25℃における屈折率の公称値が提供されている場合は、その公称値を採用することができる。
【0069】
上記高屈折率モノマーとしては、ここに開示される芳香環含有モノマー(m3)の概念に包含される化合物(例えば、上記で例示した化合物および化合物群)のなかから、該当する屈折率を有するものを適宜採用することができる。具体例としては、m-フェノキシベンジルアクリレート(屈折率:1.566、ホモポリマーのTg:-35℃)、1-ナフチルメチルアクリレート(屈折率:1.595、ホモポリマーのTg:31℃)、エトキシ化o-フェニルフェノールアクリレート(オキシエチレン単位の繰返し数:1、屈折率:1.578)、ベンジルアクリレート(屈折率(nD20):1.519、ホモポリマーのTg:6℃)、フェノキシエチルアクリレート(屈折率(nD20):1.517、ホモポリマーのTg:2℃)、フェノキシジエチレングリコールアクリレート(屈折率:1.510、ホモポリマーのTg:-35℃)、6-アクリロイルオキシメチルジナフトチオフェン(6MDNTA、屈折率:1.737)、6-メタアクリロイルオキシメチルジナフトチオフェン(6MDNTMA、屈折率:1.726)、5-アクリロイルオキシエチルジナフトチオフェン(5EDNTA、屈折率:1.786)、6-アクリロイルオキシエチルジナフトチオフェン(6EDNTA、屈折率:1.722)、6-ビニルジナフトチオフェン(6VDNT、屈折率:1.802)、5-ビニルジナフトチオフェン(略号:5VDNT、屈折率:1.793)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
モノマー(m3)における高屈折率モノマー(すなわち、屈折率が凡そ1.510以上、好ましくは凡そ1.530以上、より好ましくは凡そ1.550以上である芳香環含有モノマー)の含有量は、特に制限されず、例えば5重量%以上であってよく、25重量%以上でもよく、35重量%以上でもよく、40重量%以上でもよい。いくつかの態様において、より高い屈折率を得やすくする観点から、モノマー(m3)における高屈折率モノマーの含有量は、例えば50重量%以上であってよく、70重量%以上であることが好ましく、85重量%以上でもよく、90重量%以上でもよく、95重量%以上でもよい。モノマー(m3)の実質的に100重量%が高屈折率モノマーであってもよい。また、いくつかの態様において、例えば高屈折率と低弾性率、必要な場合はさらに接着力とをバランスよく両立する観点から、モノマー(m3)における高屈折率モノマーの含有量は、100重量%未満であってもよく、98重量%以下でもよく、90重量%以下でもよく、80重量%以下でもよく、65重量%以下でもよい。
【0071】
アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分における高屈折率モノマーの含有量は、特に制限されず、所望の屈折率と弾性率とを両立する粘着剤を実現し得るように設定することができる。また、必要な場合、さらに粘着特性(例えば接着力等)および/または光学特性(例えば全光線透過性、ヘイズ値等)との両立も考慮して設定され得る。上記モノマー成分における高屈折率モノマーの含有量は、例えば3重量%以上であってよく、10重量%以上でもよく、20重量%以上でもよい。上記モノマー成分における高屈折率モノマーの含有量は、高屈折率と低弾性率、必要な場合はさらに接着力とをバランスよく両立する観点から、凡そ60重量%以下であることが適当であり、50重量%以下(例えば、50重量%未満)でもよく、40重量%以下でもよく、25重量%以下でもよく、15重量%以下でもよく、5重量%以下でもよく、3重量%未満でもよい。高屈折率モノマーを使用しなくてもよい。
【0072】
いくつかの好ましい態様では、モノマー(m3)の少なくとも一部として、ホモポリマーのTgが10℃以下である芳香環含有モノマー(以下、「モノマーL」と表記することがある。)を採用する。モノマー成分における芳香環含有モノマー(m3)(特に、上述した芳香環複数含有モノマー、芳香環単数含有モノマーおよび高屈折率モノマーの少なくとも一つに該当する芳香環含有モノマー(m3))の含有量を多くすると粘着剤の貯蔵弾性率G’は概して上昇する傾向にあるところ、該モノマー(m3)の一部または全部としてモノマーLを採用することにより、貯蔵弾性率G’の上昇を抑制することができる。これにより、低弾性率をよりよく維持しつつ、屈折率を向上させることができる。モノマーLのTgは、例えば5℃以下であってもよく、0℃以下でもよく、-10℃以下でもよく、-20℃以下でもよく、-25℃以下でもよい。モノマーLのTgの下限は特に制限されない。屈折率向上効果とのバランスを考慮して、いくつかの態様において、モノマーLのTgは、例えば-70℃以上であってよく、-55℃以上でもよく、-45℃以上でもよい。他のいくつかの態様において、モノマーLのTgは、例えば-30℃以上であってよく、-10℃以上でもよく、0℃以上でもよく、3℃以上でもよい。モノマーLは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
モノマーLとしては、ここに開示される芳香環含有モノマー(m3)の概念に包含される化合物(例えば、上記で例示した化合物および化合物群)のなかから、該当するTgを有するものを適宜採用することができる。モノマーLとして使用し得る芳香環含有モノマーの好適例として、m-フェノキシベンジルアクリレート(ホモポリマーのTg:-35℃)、ベンジルアクリレート(ホモポリマーのTg:6℃)、フェノキシエチルアクリレート(ホモポリマーのTg:2℃)、フェノキシジエチレングリコールアクリレート(ホモポリマーのTg:-35℃)が挙げられる。
【0074】
モノマー(m3)におけるモノマーLの含有量は、特に制限されず、例えば5重量%以上であってよく、25重量%以上でもよく、40重量%以上でもよい。いくつかの態様において、高屈折率と低弾性率とをより高レベルで両立する粘着剤を得やすくする観点から、モノマー(m3)におけるモノマーLの含有量は、例えば50重量%以上であってよく、低弾性率化の観点から60重量%以上であることが好ましく、70重量%以上でもよく、75重量%以上でもよく、85重量%以上でもよく、90重量%以上でもよく、95重量%以上でもよい。モノマー(m3)の実質的に100重量%がモノマーLであってもよい。また、いくつかの態様において、例えば高屈折率と低弾性率、必要な場合はさらに接着力とをバランスよく両立する観点から、モノマー(m3)におけるモノマーLの含有量は、100重量%未満であってもよく、98重量%以下でもよく、90重量%以下でもよく、80重量%以下でもよく、65重量%以下でもよい。
【0075】
アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分におけるモノマーLの含有量は、例えば3重量%以上であってよく、10重量%以上でもよく、20重量%以上でもよい。上記モノマー成分におけるモノマーLの含有量は、高屈折率と低弾性率、必要な場合はさらに接着力とをバランスよく両立する観点から、凡そ60重量%以下であることが適当であり、50重量%以下(例えば、50重量%未満)でもよく、40重量%以下でもよく、25重量%以下でもよく、15重量%以下でもよく、5重量%以下でもよく、3重量%未満でもよい。モノマーLを使用しなくてもよい。
【0076】
いくつかの態様において、芳香環含有モノマー(m3)は、2以上の非縮合芳香環が直接化学結合した構造(例えばビフェニル構造)を含まない化合物から好ましく選択され得る。例えば、2以上の非縮合芳香環が直接化学結合した構造を含む化合物の含有量が5重量%未満(より好ましくは3重量%未満であり、0重量%でもよい。)である組成のモノマー成分により構成されたアクリル系ポリマーが好ましい。このように2以上の非縮合芳香環が直接化学結合した構造を含む化合物の使用量を制限することは、高屈折率と低弾性率、必要な場合はさらに接着力とをよりバランスよく両立させた粘着剤を実現する観点から有利となり得る。
【0077】
アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分におけるモノマー(m3)の含有量は、特に制限されず、所望の屈折率と弾性率、さらには粘着特性(例えば接着力等)および/または光学特性(例えば全光線透過性、ヘイズ値等)とを両立する粘着剤を実現し得るように設定することができる。上記モノマー成分におけるモノマー(m3)の含有量は、例えば1重量%以上であってよく、3重量%以上であってもよく、5重量%以上でもよく、10重量%以上でもよく、15重量%以上でもよく、20重量%以上でもよい。より高い効果を得る観点から、いくつかの態様において、上記モノマー成分におけるモノマー(m3)の含有量は、25重量%以上であってもよく、30重量%以上、40重量%以上、45重量%以上または50重量%以上であってもよい。上記モノマー成分におけるモノマー(m3)の含有量は、典型的には100重量%未満であり、凡そ75重量%未満(例えば、0重量%以上75重量%未満)であることが適当であり、凡そ60重量%以下であることが好ましく、50重量%以下(例えば、50重量%未満)でもよく、40重量%以下でもよく、25重量%以下でもよく、15重量%以下でもよく、5重量%以下でもよく、3重量%未満でもよい。ここに開示される粘着剤は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分がモノマー(m3)を含まない態様でも好ましく実施することができる。
【0078】
(その他のモノマー)
アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、必要に応じて、上記モノマー(m1)、(m2)、(m3)以外のモノマー(以下、「その他モノマー」という。)を含んでいてもよい。上記その他モノマーは、例えば、アクリル系ポリマーのTg調整、粘着性能の調整、粘着剤層内における相溶性の改善等の目的で使用することができる。上記その他モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
上記その他モノマーの例として、水酸基およびカルボキシ基以外の官能基を有するモノマー(官能基含有モノマー)が挙げられる。例えば、粘着剤の凝集力や耐熱性を向上させ得るその他モノマーとして、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー等が挙げられる。また、アクリル系ポリマーに架橋基点となり得る官能基を導入することができ、あるいは被着体との密着力の向上や粘着剤内における相溶性の改善に寄与し得るモノマーとして、アミド基含有モノマー(例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド等)、アミノ基含有モノマー(例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等)、窒素原子含有環を有するモノマー(例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルモルホリン等)、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、ケト基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー等が挙げられる。なお、窒素原子含有環を有するモノマーのなかには、例えばN-ビニル-2-ピロリドンのように、アミド基含有モノマーにも該当するものがある。上記窒素原子含有環を有するモノマーとアミノ基含有モノマーとの関係についても同様である。
【0080】
上記官能基含有モノマー以外で使用し得るその他モノマーとしては、酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の非芳香族性環含有(メタ)アクリレート;エチレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;塩化ビニル等の塩素含有モノマー;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有モノマー;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;等が挙げられる。
【0081】
いくつかの態様において、粘着剤の低弾性率化(特に、低温域における低弾性率化)や伸び変形性の向上(例えば、破断時伸びの向上)等の目的で、上記その他モノマーとしてアルコキシ基含有モノマーを好ましく使用し得る。アルコキシ基含有モノマーは、ヘイズの低減や、接着性の向上にも役立ち得る。アルコキシ基含有モノマーの好適例として、メトキシエチルアクリレート(MEA)(ホモポリマーのTg:-50℃)、エトキシエトキシエチルアクリレート(別名:エチルカルビトールアクリレート、ホモポリマーのTg:-67℃)等の、アルコキシ基含有アクリレートが挙げられる。アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分におけるアルコキシ基含有モノマーの含有量は、例えば1重量%以上であってよく、3重量%以上であってもよく、より高い効果を得る観点から、5重量%以上であってもよく、10重量%以上であってもよく、15重量%以上であってもよい。また、モノマー成分におけるアルコキシ基含有モノマーの含有量は、例えば40重量%以下(例えば0~40重量%)であってよく、高屈折率化と粘着剤としての特性のバランスとを両立しやすくする観点から、35重量%以下であることが有利であり、30重量%以下であることが好ましく、25重量%以下でもよく、22重量%以下でもよい。
【0082】
上記その他モノマーを使用する場合、その使用量は特に制限されず、モノマー成分の合計量が100重量%を超えない範囲で適宜設定し得る。いくつかの態様において、高屈折率化と粘着剤としての特性のバランスとを両立しやすくする観点から、モノマー成分における上記その他モノマーの含有量は、例えば凡そ45重量%以下(例えば0~45重量%)とすることができ、凡そ40重量%以下とすることが適当であり、凡そ35重量%以下でもよく、凡そ30重量%以下でもよく、凡そ25重量%以下でもよく、凡そ20重量%以下でもよく、凡そ10重量%以下でもよく、凡そ5重量%以下でもよく、凡そ1重量%以下でもよい。ここに開示される技術は、モノマー成分が上記その他のモノマーを実質的に含まない態様でも好ましく実施され得る。
【0083】
いくつかの態様において、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、メタクリロイル基含有モノマーの使用量が所定以下に抑えられた組成であり得る。モノマー成分におけるメタクリロイル基含有モノマーの使用量は、例えば5重量%未満であってよく、3重量%未満でもよく、1重量%未満でもよく、0.5重量%未満でもよい。このようにメタクリロイル基含有モノマーの使用量を制限することは、柔軟性や粘着性と高屈折率とをバランスよく両立させた粘着剤を実現する観点から有利となり得る。アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、メタクリロイル基含有モノマーを含まない組成(例えば、アクリロイル基含有モノマーのみからなる組成)であってもよい。
【0084】
いくつかの態様において、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、粘着剤の着色または変色(例えば黄変)を抑制する観点から、カルボキシ基含有モノマーの使用量が制限されている。モノマー成分におけるカルボキシ基含有モノマーの使用量は、例えば1重量%未満であってよく、0.5重量%未満でもよく、0.3重量%未満でもよく、0.1重量%未満でもよく、0.05重量%未満でもよい。このようにカルボキシ基含有モノマーの使用量が制限されていることは、ここに開示される粘着剤に接触または近接して配置され得る金属材料(例えば、被着体上に存在し得る金属配線や金属膜等)の腐食を抑制する観点からも有利である。ここに開示される技術は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分がカルボキシ基含有モノマーを含有しない態様で実施され得る。
同様の理由から、いくつかの態様において、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、酸性官能基(カルボキシ基の他、スルホン酸基、リン酸基等を包含する。)を有するモノマーの使用量が制限されていることが好ましい。かかる態様のモノマー成分における酸性官能基含有モノマーの使用量としては、上述したカルボキシ基含有モノマーの好ましい使用量を適用することができる。ここに開示される技術は、上記モノマー成分が酸性基含有モノマーを含有しない態様(すなわち、アクリル系ポリマーが酸フリーである態様)で好ましく実施され得る。
【0085】
(アクリル系ポリマーの調製方法)
ここに開示される技術において、このようなモノマー成分により構成されたアクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、エマルション重合法、バルク重合法、懸濁重合法、光重合法等の、アクリル系ポリマーの合成手法として知られている各種の重合方法を適宜採用することができる。例えば、溶液重合法を好ましく採用し得る。溶液重合を行う際の重合温度は、使用するモノマーおよび溶媒の種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば20℃~170℃程度(典型的には40℃~140℃程度)とすることができる。
【0086】
溶液重合に用いる溶媒(重合溶媒)は、従来公知の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類);酢酸エチル等の酢酸エステル類;ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類;1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化アルカン類;イソプロピルアルコール等の低級アルコール類(例えば、炭素原子数1~4の一価アルコール類);tert-ブチルメチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン等のケトン類;等から選択されるいずれか1種の溶媒、または2種以上の混合溶媒を用いることができる。
【0087】
重合に用いる開始剤は、重合方法の種類に応じて、従来公知の重合開始剤から適宜選択することができる。例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ系重合開始剤の1種または2種以上を好ましく使用し得る。重合開始剤の他の例としては、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;芳香族カルボニル化合物;等が挙げられる。重合開始剤のさらに他の例として、過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤が挙げられる。重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、モノマー成分100重量部に対して凡そ0.005~1重量部程度(典型的には凡そ0.01~1重量部程度)の範囲から選択することができる。
【0088】
上記重合には、必要に応じて、従来公知の各種の連鎖移動剤を使用することができる。例えば、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸、α-チオグリセロール等のメルカプタン類を用いることができる。あるいは、硫黄原子を含まない連鎖移動剤(非硫黄系連鎖移動剤)を用いてもよい。非硫黄系連鎖移動剤の例としては、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン等のアニリン類;α-ピネン、ターピノーレン等のテルペノイド類;α-メチルスチレン、α-メチルスチレンダイマー等のスチレン類;等が挙げられる。連鎖移動剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。連鎖移動剤を使用する場合における使用量は、モノマー成分100重量部に対して、例えば凡そ0.01~1重量部程度とすることができる。
【0089】
(ベースポリマーのガラス転移温度TgP)
ここに開示される技術において、粘着剤のベースポリマー(例えば、アクリル系ポリマー)を構成するモノマー成分は、該モノマー成分の組成に基づくガラス転移温度TgPが凡そ10℃以下となる組成を有することが好ましい。いくつかの態様において、上記ガラス転移温度TgPは、0℃以下(例えば0℃未満)であることが好ましく、-10℃以下であることがより好ましく、-20℃以下であることがさらに好ましく、-25℃以下でもよく、-30℃以下でもよく、-35℃以下でもよく、-40℃以下でもよく、-45℃以下でもよく、-50℃以下でもよく、-55℃以下でもよく、-57℃以下でもよい。ガラス転移温度TgPが低いことは、粘着剤の低弾性率化の観点から有利となり得る。ガラス転移温度TgPの下限は特に制限されない。いくつかの態様において、ガラス転移温度TgPは、例えば-70℃以上であってよく、適度な凝集性を有する粘着剤を実現しやすくする観点から-65℃以上であることが有利であり、-60℃以上であってもよく、-55℃以上であってもよい。上記範囲のガラス転移温度TgPを有する組成のベースポリマーと高屈折化添加剤(A)との組合せにより、高屈折率と低弾性率とを両立した粘着剤は好ましく実現され得る。
【0090】
ここで、ガラス転移温度TgPとは、特記しない場合、上記モノマー成分の組成に基づいて、Foxの式により求められるガラス転移温度をいう。Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
上記Foxの式において、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Wiは該共重合体におけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。
Tgの算出に使用するホモポリマーのガラス転移温度としては、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989年)等の公知資料に記載の値を用いるものとする。上記Polymer Handbookに複数種類の値が記載されているモノマーについては、最も高い値を採用する。公知資料にホモポリマーのTgが記載されていない場合は、特開2007-51271号公報に記載の測定方法により得られる値を用いるものとする。
【0091】
(ベースポリマーの重量平均分子量)
ベースポリマー(例えば、アクリル系ポリマー)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、例えば凡そ30×104以上であってよく、凡そ40×104以上であってもく、凡そ50×104以上であってもよい。ベースポリマー100重量部に対して添加剤(A)を30重量部以上含む構成において、Mwが所定値以上であるベースポリマーを用いることにより、所望の粘着特性や伸び変形性を発揮し得る適度な凝集力が得られやすい。いくつかの態様において、ベースポリマーのMwは、55×104以上であることが適当であり、60×104以上であることが有利であり、70×104以上であることが好ましく、80×104以上であることがより好ましく、90×104以上でもよく、100×104以上でもよく、120×104以上でもよい。ベースポリマーのMwが低すぎないことは、ベースポリマー100重量部に対して添加剤(A)を30重量部以上含む構成において、粘着剤内に添加剤(A)を安定的に保持しやすくしたり、粘着剤の透明性を向上させたりする観点からも有利となり得る。ベースポリマーのMwの上限は、例えば凡そ500×104以下であり、粘着性能の観点から、凡そ400×104以下(より好ましくは凡そ300×104以下、例えば凡そ200×104以下)の範囲にあることが好ましく、凡そ170×104以下、凡そ150×104以下または凡そ130×104以下であってもよい。
【0092】
ベースポリマー(例えば、アクリル系ポリマー)のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算して求めることができる。具体的には、GPC測定装置として商品名「HLC-8220GPC」(東ソー社製)を用いて、下記の条件で測定して求めることができる。
[GPCの測定条件]
サンプル濃度:0.2重量%(テトラヒドロフラン溶液)
サンプル注入量:10μL
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流量(流速):0.6mL/分
カラム温度(測定温度):40℃
カラム:
サンプルカラム:商品名「TSKguardcolumn SuperHZ-H」1本+商品名「TSKgel SuperHZM-H」2本」(東ソー社製)
リファレンスカラム:商品名「TSKgel SuperH-RC」1本(東ソー社製)
検出器:示差屈折計(RI)
標準試料:ポリスチレン
【0093】
(高屈折率添加剤(A))
ここに開示される技術における高屈折率添加剤(A)は、非対称構造の化合物であり、典型的には非対称構造の有機化合物である。ここで、非対称構造の化合物とは、線対称および回転対象のいずれにも該当しない分子構造を有する化合物とをいう。添加剤(A)とベースポリマー(例えば、アクリル系ポリマー)とを組み合わせて用いることにより、高屈折率と低弾性率とを好適に両立する粘着剤を実現することができる。添加剤(A)として用いられる化合物が非対称構造を有することは、ベースポリマー(例えば、アクリル系ポリマー)100重量部に対する使用量を比較的多くしても、粘着剤の弾性率上昇の程度を緩やかにする観点から有利である。添加剤(A)は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0094】
添加剤(A)としては、二重結合含有環を有する化合物およびヘテロ環(二重結合含有環であり得る。)を有する化合物の少なくとも一方に該当する化合物、すなわちヘテロ環および二重結合含有環の少なくとも一方に該当する環を含む化合物を好ましく採用し得る。このような化合物を含有させることにより、粘着剤の屈折率を効率よく高め得る。上記化合物は、粘着剤組成物の調製容易性(例えば、溶剤型粘着剤組成物に用いられる溶媒への溶解性)や、粘着剤内における相溶性の観点からも有利であり得る。
【0095】
添加剤(A)が有する二重結合含有環は、共役二重結合含有環(典型的には芳香環)であってもよく、非共役二重結合含有環であってもよい。高屈折率化の観点から、添加剤(A)は、二重結合含有環として、芳香環および複素環(ヘテロ環)から選択される少なくとも1種の環を有するものであることが有利である。上記複素環は、芳香環に包含される構造を有するものであってもよく、芳香環とは異なる二重結合含有複素環構造を有するものであってもよい。添加剤(A)が有し得る二重結合含有環(典型的には芳香環)としては、ベンゼン環(ビフェニル構造やフルオレン構造の一部を構成するベンゼン環であり得る。);ナフタレン環、インデン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環の縮合環;等の炭素環であってもよく、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、チオフェン環;等の複素環であってもよい。上記複素環において環構成原子として含まれるヘテロ原子は、例えば窒素、硫黄および酸素からなる群から選択される1または2以上であり得る。いくつかの態様において、上記複素環を構成するヘテロ原子は、窒素および硫黄の一方または両方であり得る。添加剤(A)は、例えばジナフトチオフェン構造のように、1または2以上の炭素環と1または2以上の複素環とが縮合した構造を有していてもよい。
【0096】
いくつかの態様において、添加剤(A)としては、高い高屈折率化効果が得られやすいことから、1分子中に2以上の芳香環を有する有機化合物(以下、「芳香環複数含有化合物」ともいう。)を好ましく採用し得る。芳香環複数含有化合物は、エチレン性不飽和基等の重合性官能基を有していてもよく、有していなくてもよい。また、芳香環複数含有化合物は、重合体であってもよく、非重合体であってもよい。また、上記重合体は、芳香環複数含有モノマーをモノマー単位として含むオリゴマー(好ましくは分子量が凡そ5000以下、より好ましくは凡そ1000以下のオリゴマー。例えば2~5量体程度の低重合物)であり得る。上記オリゴマーは、例えば:芳香環複数含有モノマーの単独重合体;2種以上の芳香環複数含有モノマーの共重合体;1種または2種以上の芳香環複数含有モノマーと他のモノマーとの共重合体;等であり得る。上記他のモノマーは、芳香環複数含有モノマーに該当しない芳香環含有モノマーでもよく、芳香環を有しないモノマーでもよく、これらの組合せであってもよい。
【0097】
芳香環複数含有化合物の非限定的な例としては、2以上の非縮合芳香環がリンキング基を介して結合した構造を有する化合物、2以上の非縮合芳香環が直接(すなわち、他の原子を介さずに)化学結合した構造を有する化合物、縮合芳香環構造を有する化合物、フルオレン構造を有する化合物、ジナフトチオフェン構造を有する化合物、ジベンゾチオフェン構造を有する化合物、等が挙げられる。芳香環複数含有化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。
【0098】
添加剤(A)として用いられ得る化合物の例としては、モノマー(m3)として用いられ得る化合物;モノマー(m3)として用いられ得る化合物をモノマー単位として含むオリゴマー;モノマー(m3)として用いられ得る化合物から、エチレン性不飽和基を有する基(環構成原子に結合した置換基であり得る。)または該基のうちエチレン性不飽和基を構成する部分を除き、エチレン性不飽和基を有しない基(例えば、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アリールオキシ基、エステル基(アセトキシアルキル基等)、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルキルオキシ基、グリシジルオキシ基等)または水素原子に置き換えた構造の化合物;等であって、非対称構造を有するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
上記二重結合含有環(典型的には芳香環、好ましくは炭素環)は、環構成原子上に1または2以上の置換基を有していてもよく、置換基を有していなくてもよい。いくつかの態様において、例えば、二重結合含有環を有する化合物であって、上記置換基によって非対称構造となっている化合物を、添加剤(A)として好ましく用いることができる。
【0100】
いくつかの態様において、添加剤(A)としては、置換基を有する縮合環を含む化合物(置換縮合環含有化合物)が好ましく用いられ得る。かかる化合物を含有させることにより、粘着剤の屈折率を効率よく高め得る。上記化合物は、粘着剤組成物の調製容易性(例えば、溶剤型粘着剤組成物に用いられる溶媒への溶解性)や、粘着剤内における相溶性の観点からも有利であり得る。ここで、置換基を有する縮合環とは、該縮合環に含まれる少なくとも1つの環の環構成原子上に1または2以上の置換基を有する縮合環をいう。上記縮合環は、ヘテロ環および二重結合含有環の少なくとも一方に該当する環を含むことが好ましい。例えば、上記置換基によって非対称構造となっている置換縮合環含有化合物を、添加剤(A)として好ましく用いることができる。
【0101】
環構成原子上に置換基を有する添加剤(A)において、該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アリールオキシ基、エステル基(アセトキシアルキル基等)、アリールオキシ基、水酸基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、エチレン性不飽和基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルキルオキシ基、グリシジルオキシ基等が例示されるが、これらに限定されない。炭素原子を含む置換基において、該置換基に含まれる炭素原子の数は、好ましくは1~4であり、より好ましくは1~3であり、例えば1または2であり得る。いくつかの態様において、上記二重結合含有環は、環構成原子上に置換基を有しないか、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、エステル基、エチレン性不飽和基(例えば(メタ)アクリロキシ基)、ヒドロキシ基およびヒドロキシアルキル基からなる群から選択される1または2以上の置換基を有する芳香環であり得る。なかでも好ましい置換基として、アルキル基、アルコキシ基およびアルコキシアルキル基が挙げられ、これらの置換基に含まれる炭素原子の数は、好ましくは1~4であり、より好ましくは1~3であり、例えば1または2であり得る。
【0102】
添加剤(A)として用いられ得る置換縮合環含有化合物の好適例として、少なくとも1つの置換基を有するジナフトチオフェン化合物(置換DNT)が挙げられる。非対称構造の置換DNTを添加剤(A)として含む粘着剤によると、高屈折率と低弾性率とを好ましく両立し得る。置換DNTの有する置換基は、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、(メタ)アクリロキシ基、ビニル基からなる群から選択される1または2以上であり得る。低弾性率化の観点から、置換基を1つ有する置換DNTが好ましい。そのような置換DNTの具体例としては、6-メトキシメチルジナフトチオフェン(6MDNTM、屈折率:1.759)、6-エチルジナフトチオフェン(6EDNT、屈折率:1.764)等の、飽和置換基を有する置換DNT;6-アクリロイルオキシメチルジナフトチオフェン(6MDNTA、屈折率:1.737)、6-メタアクリロイルオキシメチルジナフトチオフェン(6MDNTMA、屈折率:1.726)、5-アクリロイルオキシエチルジナフトチオフェン(5EDNTA、屈折率:1.786)、6-アクリロイルオキシエチルジナフトチオフェン(6EDNTA、屈折率:1.722)、6-ビニルジナフトチオフェン(6VDNT、屈折率:1.802)、5-ビニルジナフトチオフェン(略号:5VDNT、屈折率:1.793)等の、エチレン性不飽和置換基を有する置換DNT;等が挙げられる。
【0103】
いくつかの態様において、添加剤(A)としては、エチレン性不飽和基を有しない化合物を好ましく採用し得る。これにより、熱や光による粘着剤組成物の変質(例えば、ゲル化の進行や粘度上昇による塗工性の低下)や粘着剤の性能変化(例えば、エチレン性不飽和基の反応に起因する弾性率の上昇や伸び変形性の低下)を抑制し、保存安定性を高めることができる。エチレン性不飽和基を有しない添加剤(A)を採用することは、該添加剤(A)を含む粘着剤層を有する粘着シートにおいて、エチレン性不飽和基の反応に起因する寸法変化や変形(反り、波打ち等)、光学歪の発生等を抑制する観点からも好ましい。
【0104】
添加剤(A)の屈折率naは、該添加剤(A)を含む粘着剤において所望の屈折率が得られるように選択することができ、特定の範囲に限定されない。添加剤(A)の屈折率naは、例えば1.510以上であってもよく、1.530以上であってもよく、1.550以上であってもよく、1.570以上であってもよい。いくつかの態様において、添加剤(A)の屈折率naは、1.600以上であることが適当であり、1.620以上であることが有利であり、1.650以上であることが好ましく、1.675以上であることがより好ましく、1.700以上であることがさらに好ましい。より屈折率の高い添加剤(A)によると、目的の屈折率を有する粘着剤を構成することのできるベースポリマーの選択自由度が広がり、例えば、より低屈折率のベースポリマーを選択することも可能になる。このことは、高屈折率と低弾性率とをバランスよく両立する粘着剤を実現する観点から有利となり得る。添加剤(A)の屈折率naの上限は特に制限されないが、粘着剤の低温特性や透明性の観点から、例えば3.000以下であることが適当であり、2.500以下であってもよく、2.000以下であってもよく、1.900以下であってもよく、1.850以下であってもよく、1.825以下または1.800以下であってもよい。
【0105】
なお、高屈折率添加剤(A)の屈折率naは、プリズムカプラを用いて、測定温度25℃、測定波長594nmの条件で測定される。プリズムカプラとしては、市販の測定装置を用いることができ、例えばメトリコン社製のモデル「2010M」またはその相当品を用いることができる。メーカー等から25℃における屈折率の公称値が提供されている場合は、その公称値を採用することができる。
【0106】
添加剤(A)の屈折率naは、該添加剤(A)を含む粘着剤の屈折率nTよりも高いことが好ましい。すなわち、次式:ΔnA=na-nT;により定義される屈折率差ΔnAが0より大きい化合物を添加剤(A)として含む粘着剤が好ましい。いくつかの態様において、ΔnAは、例えば0.010以上であってよく、添加剤(A)による屈折率向上効果を効率よく発揮する観点から、0.050以上であることが有利であり、0.100以上であることが好ましく、0.125以上であることがより好ましく、0.150以上であることがさらに好ましく、0.160以上であってもよく、0.170以上であってもよく、0.180以上または0.190以上であってもよい。また、粘着剤内における高屈折率添加剤(A)の相溶性や、粘着剤の透明性等の観点から、いくつかの態様において、ΔnAは、例えば0.500以下であってよく、0.400以下であってもよく、0.300以下であってもよい。
【0107】
添加剤(A)の分子量は、特に限定されず、例えば100以上であってよく、130以上または150以上であってもよい。いくつかの態様において、添加剤(A)の分子量は、該添加剤(A)の高屈折率化の観点から、170以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましく、230以上でもよく、250以上でもよく、270以上でもよく、300以上でもよい。また、添加剤(A)の分子量は、凡そ10000未満または5000未満でであってよく、高屈折率化の効果と他の特性(例えば、粘着剤に適した柔軟性、ヘイズ等の光学特性)とをバランスよく両立する観点から、3000未満であることが好ましく、1000以下または1000未満であることがより好ましく、800未満でもよく、600以下(例えば600未満)でもよく、500未満でもよく、400未満でもよい。添加剤(A)の分子量が大きすぎないことは、粘着剤組成物の調製容易性や粘着剤内における相溶性向上の観点から有利となり得る。いくつかの態様において、分子量が200~600程度(例えば300以上500未満)の化合物を、添加剤(A)として好ましく用いることができる。
【0108】
添加剤(A)の分子量としては、非重合体または低重合度(例えば2~5量体程度)の重合体については、化学構造に基づいて算出される分子量、もしくはマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF-MS)を用いた測定値を用いることができる。添加剤(A)がより重合度の高い重合体である場合は、適切な条件で行われるGPCに基づく重量平均分子量(Mw)を用いることができる。メーカー等から分子量の公称値が提供されている場合は、その公称値を採用することができる。
【0109】
ここに開示される技術のいくつかの態様において、添加剤(A)は、典型的には25℃において気体状ではない化合物であり、25℃において液状(液体)または気体状ではない化合物であることが好ましい。なお、本明細書において「液状」とは、流動性を示すことを意味し、物質の状態としては液体を指す。かかる化合物には、融点が25℃超である化合物が包含される。これにより、所望の粘着特性や伸び変形性を発揮し得る適度な凝集力を有する粘着剤が得られやすい。添加剤(A)の融点は、例えば30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましく、60℃以上でもよく、70℃以上でもよく、80℃以上でもよい。添加剤(A)の融点の上限は、特に制限されない。いくつかの態様において、粘着剤組成物の調製容易性や粘着剤の透明性等の観点から、添加剤(A)の融点は、例えば350℃以下であってよく、300℃以下であってもよく、250℃以下でもよく、200℃以下でもよい。
【0110】
いくつかの態様において、添加剤(A)として用いられる化合物は、粘着剤への配合容易性等の観点から、溶媒(典型的には有機溶媒)に溶解可能であることが好ましい。ここで溶解可能とは、少なくとも1種の汎用溶媒に対して、該汎用溶媒中に当該化合物を25℃において少なくとも1.0重量%(より好ましくは2.0重量%以上、さらに好ましくは5.0重量%以上、10重量%以上、15重量%以上または20重量%以上)の濃度で含む溶液を調製可能な溶解性を示すことをいう。ここで、上記汎用溶媒の例には、酢酸エチルや酢酸ブチルなどの酢酸エステル;アセトンやメチルエチルケトン(MEK)等の低級ケトン;ベンゼンやトルエン等の芳香族炭化水素溶媒;これらの混合溶媒;等が含まれる。なかでも、酢酸エチルおよびMEKの一方または両方に対して上記の溶解性を示す化合物が好ましい。
【0111】
ここに開示される粘着剤における添加剤(A)の含有量(複数種の化合物を用いる場合は、それらの合計含有量)は、ベースポリマー100重量部に対する含有量が30重量部以上となる範囲で、所望の特性を有する粘着剤が得られるように適切に設定することができる。いくつかの態様において、ベースポリマー100重量部に対する添加剤(A)の含有量は、例えば30重量部超であってよく、低弾性率化および/または高屈折率化の効果をよりよく発揮する観点から、35重量部以上であることが好ましく、40重量部以上であることがより好ましく、45重量部以上でもよく、50重量部以上でもよく、60重量部以上でもよく、65重量部以上でもよい。また、ベースポリマー100重量部に対する添加剤(A)の含有量は、例えば150重量部以下であってよく、所望の粘着特性や伸び変形性を発揮し得る適度な凝集力を有する粘着剤を得やすくする観点から、いくつかの態様では、120重量部以下であることが適当であり、100重量部以下であることが好ましく、90重量部以下でもよく、80重量部以下でもよく、75重量部以下でもよい。粘着剤の透明性や低温特性等の観点から、いくつかの態様において、ベースポリマー100重量部に対する添加剤(A)の含有量は、70重量部以下であってもよく、65重量部以下であってもよく、60重量部以下であってもよく、55重量部以下、50重量部以下または45重量部以下であってもよい。
【0112】
ここに開示される粘着剤は、上述のような高屈折率添加剤(A)に加えて、高屈折率の有機化合物であって上記添加剤(A)に該当しないものを、任意成分として含んでいてもよい。添加剤(A)に該当しない高屈折率有機化合物としては、例えば、モノマー(m3)として用いられ得る化合物であって対称構造のもの;2以上の非縮合芳香環がリンキング基を介して結合した構造を有する化合物、2以上の非縮合芳香環が直接(すなわち、他の原子を介さずに)化学結合した構造を有する化合物、縮合芳香環構造を有する化合物、フルオレン構造を有する化合物、ジナフトチオフェン構造を有する化合物またはジベンゾチオフェン構造を有する化合物であって、対称構造を有するもの等が挙げられる。添加剤(A)の効果を適切に発揮する観点から、添加剤(A)に該当しない高屈折率有機化合物の使用量は、重量基準で、添加剤(A)の使用量の1/3未満とすることが適当であり、1/4未満とすることが好ましく、1/6未満でもよく、1/10未満でもよく、1/15未満または1/30未満でもよい。また、添加剤(A)に該当しない高屈折率有機化合物の使用量は、ベースポリマー100重量部に対して10重量部未満とすることが適当であり、5重量部未満、3重量部未満、2重量部未満または1重量部未満とすることが好ましい。ここに開示される技術は、添加剤(A)に該当しない高屈折率有機化合物を実質的に使用しない態様で好ましく実施することができる。
【0113】
(架橋剤)
ここに開示される粘着剤の形成に用いられる粘着剤組成物には、粘着剤の凝集力の調整等の目的で、必要に応じて架橋剤を含有させることができる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メラミン系樹脂、金属キレート系架橋剤等の、粘着剤の分野において公知の架橋剤を使用することができる。なかでもイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤を好ましく採用し得る。架橋剤の他の例として、1分子内に2以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー、すなわち多官能性モノマーが挙げられる。架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0114】
イソシアネート系架橋剤としては、2官能以上のイソシアネート化合物を用いることができ、例えば、トリメチレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環族イソシアネート類;2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族イソシアネート類;上記イソシアネート化合物をアロファネート結合、ビウレット結合、イソシアヌレート結合、ウレトジオン結合、ウレア結合、カルボジイミド結合、ウレトンイミン結合、オキサジアジントリオン結合等により変性したポリイソシネート変性体(例えばHDIのイソシアヌレート体、HDIのアロファネート体等);上記イソシアネート化合物の多価アルコール付加物(例えばXDIのトリメチロールプロパン付加物等);等が挙げられる。市販品の例としては、商品名タケネート300S、タケネート500、タケネート600、タケネートD110N、タケネートD120N,タケネートD140N、タケネートD160N、タケネートD165N、タケネートD178N、タケネートD178NL(以上、三井化学社製)、スミジュールT80、スミジュールL、デスモジュールN3400(以上、住化バイエルウレタン社製)、ミリオネートMR、ミリオネートMT、コロネートL、コロネートHL、コロネートHX、コロネート2770(以上、東ソー社製)、商品名デュラネートA201H、デュラネートTPA-100(以上、旭化成社製)等が挙げられる。イソシアネート化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。2官能のイソシアネート化合物と3官能以上のイソシアネート化合物を併用してもよい。
【0115】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミンおよび1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0116】
多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ブチルジオール(メタ)アクリレート、ヘキシルジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。多官能性モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0117】
いくつかの態様において、架橋剤の少なくとも一部が、1分子当たり2個の架橋反応性基(例えばイソシアネート基)を有する2官能架橋剤が用いられる。2官能架橋剤を使用することにより、柔軟な架橋構造を形成しやすい。2官能架橋剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、2官能架橋剤は、3官能以上の架橋剤と併用してもよい。
【0118】
いくつかの態様において、架橋剤として、芳香環、脂肪族環等の環構造を有しない非環式架橋剤(鎖状架橋剤ともいう。)が好ましく用いられる。例えば、上述したイソシアネート系架橋剤のなかでは、芳香環およびイソシアヌレート環等の環構造を有しないイソシアネート系化合物の使用が好ましい。架橋剤として、非環式イソシアネート系化合物を用いることにより、柔軟性の高い架橋剤を形成しやすい。上記非環式イソシアネートの具体例としては、脂肪族イソシアネート系化合物(例えばPDIやHDI)や、脂肪族イソシアネート系化合物の変性体(例えばPDIやHDIのアロファネート結合、ビウレット結合、ウレア結合、カルボジイミド結合により変性したポリイソシネート変性体)が挙げられる。非環式架橋剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。いくつかの好ましい態様において、架橋剤として、非環式の2官能架橋剤を用いられ得る。
【0119】
いくつかの態様において、架橋剤として、1分子中の一の架橋反応性基(例えばイソシアネート基)と他の一の架橋反応性基との距離が比較的長い架橋剤が使用され得る。これにより、所定以上の長さを有する柔軟な架橋構造が形成される。例えば、架橋剤1分子において、一の架橋反応性基と他の架橋反応性基とを連結する連結鎖を構成する原子の数が10以上(例えば12以上または14以上)である化合物を架橋剤として使用することができる。上記連結鎖構成原子数の上限は、目的に応じて重合等により調製可能なため特に限定されず、例えば2000以下であり、1000以下であってもよく、500以下でもよく、100以下でもよく、50以下でもよく、30以下でもよく、20以下であってもよい。なお、上記架橋反応性基を連結する連結鎖構成原子数とは、架橋剤1分子において、一の架橋反応性基から他の架橋反応性基(架橋反応性基を3以上有する場合、上記一の架橋反応性基に最も近い架橋反応性基)に到達するのに要する最小の原子の数をいう。上記連結鎖を有する架橋剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。いくつかの好ましい態様において、上記架橋剤として、非環式の2官能架橋剤が用いられ得る。上記架橋剤の市販品の例としては、商品名コロネート2770(東ソー社製)、商品名タケネートD178NL(三井化学社製)、商品名デュラネートA201H(旭化成社製)等が挙げられる。
【0120】
架橋剤(多官能性モノマーであり得る。)を用いる場合における使用量は、特に限定されず、例えば上記モノマー成分100重量部に対して0.001重量部~5.0重量部程度の範囲とすることができる。被着体に対する密着性向上の観点から、いくつかの態様において、モノマー成分100重量部に対する架橋剤の使用量は、好ましくは3.0重量部以下、より好ましくは2.0重量部以下であり、1.0重量部以下でもよく、0.5重量部以下でもよく、0.2重量部以下でもよい。また、架橋剤の使用効果を適切に発揮する観点から、いくつかの態様において、モノマー成分100重量部に対する架橋剤の使用量は、例えば0.005重量部以上であってよく、0.01重量部以上であってもよく、0.05重量部以上でもよく、0.08重量部以上でもよく、0.1重量部以上でもよく、0.2重量部以上でもよく、0.4重量部以上でもよい。
【0121】
架橋反応をより効果的に進行させるために、架橋触媒を用いてもよい。架橋触媒の例としては、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ナーセム第二鉄、ブチルスズオキシド、ジオクチルスズジラウレート等の金属系架橋触媒等が挙げられる。なかでも、ジオクチルスズジラウレート等のスズ系架橋触媒が好ましい。架橋触媒の使用量は特に制限されない。モノマー成分100重量部に対する架橋触媒の使用量は、架橋反応速度の速さと粘着剤組成物のポットライフの長さとのバランスを考慮して、例えば凡そ0.0001重量部以上1重量部以下の範囲とすることができ、0.001重量部以上0.5重量部以下の範囲とすることが好ましい。
【0122】
粘着剤組成物には、架橋遅延剤として、ケト-エノール互変異性を生じる化合物を含有させることができる。これにより、粘着剤組成物のポットライフを延長する効果が実現され得る。例えば、イソシアネート系架橋剤を含む粘着剤組成物において、ケト-エノール互変異性を生じる化合物を好ましく利用し得る。ケト-エノール互変異性を生じる化合物としては、各種のβ-ジカルボニル化合物を用いることができる。例えば、β-ジケトン類(アセチルアセトン、2,4-ヘキサンジオン等)やアセト酢酸エステル類(アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等)を好ましく採用し得る。ケト-エノール互変異性を生じる化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ケト-エノール互変異性を生じる化合物の使用量は、モノマー成分100重量部に対して、例えば0.1重量部以上20重量部以下とすることができ、0.5重量部以上10重量部以下としてもよく、1重量部以上5重量部以下としてもよい。
【0123】
(粘着付与剤)
ここに開示される粘着剤には、粘着付与剤を含有させてもよい。粘着付与剤としては、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂等の公知の粘着付与樹脂を用いることができる。これらは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。粘着付与樹脂の使用量は特に限定されず、目的や用途に応じて適切な粘着性能が発揮されるように設定することができる。いくつかの態様において、屈折率や透明性の観点から、モノマー成分100重量部に対する粘着付与剤の使用量は、30重量部以下とすることが適当であり、10重量部以下とすることが好ましく、5重量部以下とすることがより好ましい。ここに開示される技術は、粘着付与剤を使用しない態様で好ましく実施され得る。
【0124】
(高屈折率粒子)
ここに開示される粘着剤には、任意成分として、高屈折率粒子を含有させることができる。ここで高屈折率粒子とは、粘着剤に含有させることで該粘着剤の屈折率を高めることのできる粒子を意味する。以下、高屈折率粒子を「粒子PHRI」と表記することがある。HRIは、high refractive indexを意味する。
【0125】
粒子PHRIとしては、例えば1.60以上、好ましくは1.70以上(1.80以上でもよく、1.90以上でもよく、さらには2.00以上でもよい。)の屈折率を有する材料から構成された粒子の1種または2種以上が用いられ得る。粒子PHRIを構成する材料の屈折率の上限は、特に限定されず、例えば3.00以下であってよく、2.80以下でもよく、2.50以下でもよく、2.20以下でもよく、2.00以下でもよい。粒子PHRIを構成する材料の屈折率は、当該材料の単層膜(屈折率測定が可能な膜厚とする。)につき、市販の分光エリプソメーターを用いて、測定波長589nm、測定温度25℃の条件で測定される屈折率である。分光エリプソメーターとしては、例えば製品名「EC-400」(JA.Woolam社製)またはその相当品が用いられる。
【0126】
粒子PHRIの種類は、特に限定されず、金属粒子、金属化合物粒子、有機粒子、有機-無機複合体粒子のなかから、粘着剤の屈折率を向上させ得る材料の1種または2種以上を選定し、用いることができる。粒子PHRIとしては、無機酸化物(例えば金属酸化物)のなかから、粘着シートの屈折率を向上させ得るものが好ましく用いられ得る。粒子PHRIを構成する材料の好適例としては、チタニア(酸化チタン、TiO2)、ジルコニア(酸化ジルコニウム、ZrO2)、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化銅、チタン酸バリウム、酸化ニオブ(Nb2O5等)等の無機酸化物(具体的には金属酸化物)が挙げられる。これら無機酸化物(例えば金属酸化物)からなる粒子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、チタニアやジルコニアからなる粒子が好ましく、ジルコニアからなる粒子が特に好ましい。また、金属粒子としては、例えば鉄系や亜鉛系、タングステン系、白金系の材料は高い屈折率を有し得る。有機粒子としては、スチレン系樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の樹脂からなる粒子の屈折率は相対的に高い。有機-無機複合体粒子としては、上述の無機材料と有機材料との複合体や、樹脂等の有機材料で無機粒子を被覆したもの等が挙げられる。粒子PHRIとしては、粘着剤成分との相溶性の観点から、上述の有機、無機粒子を表面処理剤によって表面処理したものを用いてもよい。
【0127】
粒子PHRIの平均粒径は、特に限定されず、粘着剤に含有させることで所望の屈折率向上を実現し得る適当なサイズの粒子が用いられ得る。粒子PHRIの平均粒径は、例えば凡そ1nm以上とすることができ、凡そ5nm以上が適当である。屈折率向上や取扱い性等の観点から、粒子PHRIの平均粒径は、好ましくは凡そ10nm以上であり、凡そ20nm以上でもよく、凡そ30nm以上でもよい。また、粘着特性維持等の観点から、上記平均粒径の上限は、例えば凡そ300nm以下が適当であり、屈折率向上の観点から、好ましくは凡そ100nm以下、より好ましくは凡そ70nm以下、さらに好ましくは凡そ50nm以下であり、凡そ35nm以下(例えば凡そ25nm以下)であってもよい。
【0128】
なお、上記粒子PHRIの平均粒径は、体積平均粒子径を指し、具体的には、レーザ散乱・回折法に基づく粒度分布測定装置を用いて、粒子PHRI分散液について測定した粒度分布における積算値50%での粒径(50%体積平均粒子径;以下、D50と略記する場合もある。)を指す。測定装置としては、例えば、マイクロトラック・ベル社製の製品名「マイクロトラックMT3000II」またはその相当品を用いることができる。
【0129】
粘着剤における粒子PHRIの含有量は、特に限定されない。上記粒子PHRIの含有量は、目的とする屈折率に応じて異なり得る。例えば、上記粒子PHRIの含有量は、要求される粘着特性等を考慮して、所定以上の屈折率となるよう適切に設定され得る。いくつかの態様において、粘着剤における粒子PHRIの含有量は、例えば凡そ75重量%以下とすることができ、粘着特性や透明性の観点から凡そ50重量%以下としてもよく、凡そ30重量%以下としてもよい。粒子PHRIの含有量の下限は特に制限されず、例えば0重量%超であってよく、1重量%以上でもよく、5重量%以上でもよい。他のいくつかの態様において、粘着剤における粒子PHRIの含有量は、例えば10重量%未満であり、1重量%未満であってもよく、0.1重量%未満でもよい。ここに開示される技術は、粘着剤組成物が粒子PHRIを実質的に含まない態様で実施され得る。
【0130】
粘着剤における粒子PHRIの含有量は、該粘着剤に含まれるベースポリマーの量との相対的関係によっても特定され得る。粒子PHRIの含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、例えば凡そ100重量部以下とすることができ、粘着特性や透明性の観点から凡そ60重量部以下としてもよく、凡そ40重量部以下としてもよい。粒子PHRIの含有量の下限は特に制限されず、例えば、ベースポリマー100重量部に対して0重量部超であってよく、1重量部以上でもよく、5重量部以上でもよい。他のいくつかの態様において、粒子PHRIの含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、例えば30重量部未満であり、10重量部未満であってもよく、1重量部未満でもよく、0.1重量部未満でもよい。
【0131】
(その他の添加剤)
その他、ここに開示される粘着剤または該粘着剤の形成に用いられる粘着剤組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、可塑剤、軟化剤、着色剤(染料、顔料等)、充填剤、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、防腐剤等の、粘着剤に用いられ得る公知の添加剤を、必要に応じて含んでいてもよい。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
【0132】
いくつかの態様に係る粘着剤は、25℃において液状の化合物の含有量が制限されている。これにより、ベースポリマー100重量部に対して所定量以上の添加剤(A)を含有させることによる効果(例えば、所望の凝集性や伸び変形性を維持しつつ、粘着剤を高屈折率化する効果)が好適に発揮されやすい。25℃において液状の化合物の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、例えば10重量部未満とすることが適当であり、5重量部未満とすることが好ましく、3重量部未満または1重量部未満とすることがより好ましい。25℃において液状の化合物を実質的に含まない粘着剤であってもよい。
【0133】
<粘着剤の特性>
(屈折率)
ここに開示される粘着剤の屈折率は、1.50以上であれば特に限定されず、目的に応じて(例えば、被着体の屈折率を考慮して)設定することができる。ここに開示される技術によると、かかる屈折率を有する粘着剤、該粘着剤を形成することのできる粘着剤組成物、および上記粘着剤を含む粘着シートが提供され得る。いくつかの態様において、上記粘着剤の屈折率は、例えば1.510以上であってもよく、1.520以上であってもよく、1.530以上でもよく、1.540以上でもよく、1.550以上または1.560以上(例えば1.570超)でもよい。いくつかの好ましい態様において、上記粘着剤の屈折率は、1.575以上であってもよく、1.580以上でもよく、1.585以上でもよく、1.590以上でもよく、1.595以上でもよい。かかる屈折率を有する粘着剤によると、屈折率が高い材料に貼り付けられる使用態様において、被着体との界面における光線反射を好適に抑制し得る。粘着剤の屈折率の好ましい上限は、被着体の屈折率等に応じて異なり得るので特定の範囲に限定されず、例えば1.700以下であってよく、1.670以下でもよく、1.650以下でもよく、1.620以下でもよく、1.600以下でもよい。より柔軟性や低温性が重視されるいくつかの態様において、粘着剤の屈折率は、例えば1.595未満であってよく、1.590未満でもよく、1.580未満でもよく、1.570未満、1.560未満、1.550未満または1.540未満であってもよい。粘着剤の屈折率は、例えば、該粘着剤の組成(例えば、ベースポリマーの種類、モノマー成分の組成比、添加剤(A)の種類および使用量)によって調節することができる。
【0134】
なお、本明細書において粘着剤の屈折率とは、該粘着剤の表面(粘着面)の屈折率をいう。粘着剤の屈折率は、プリズムカプラを用いて、測定温度25℃、測定波長594nmの条件で測定することができる。プリズムカプラとしては、市販の測定装置を用いることができ、例えばメトリコン社製のモデル「2010M」またはその相当品が用いられる。測定サンプルとしては、評価対象の粘着剤からなる粘着剤層を用いることができる。粘着剤の屈折率は、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0135】
(貯蔵弾性率G’)
ここに開示される技術によると、添加剤(A)による高屈折率化効果を享受しつつ、粘着剤の低弾性率化を実現し得る。特定の範囲に限定されるものではないが、粘着剤の25℃における貯蔵弾性率G’(25℃)は、例えば1.0×106Pa以下であってよく、5.0×105Pa以下であってもよい。上記貯蔵弾性率G’(25℃)を有する粘着剤は、室温付近からそれ以上の温度域において、適度な柔軟性を有し、例えば被着体に良好に密着し得る。上記貯蔵弾性率G’(25℃)の下限は特に限定されず、例えば1.0×103Pa以上であってよく、5.0×103Pa以上であってもよい。上記貯蔵弾性率G’(25℃)が所定値以上であることにより、粘着剤は、例えば室温付近から高温域において適度な凝集力を有するものとなりやすい。いくつかの好ましい態様において、粘着剤の貯蔵弾性率G’(25℃)は、2.0×105Pa未満であることが有利であり、1.5×105Pa未満であることが好ましく、1.2×105Pa未満であることがより好ましく、1.0×105Pa未満であってもよく、9.0×104未満であってもよく、8.0×104未満でもよく、7.0×104未満でもよく、6.5×104未満でもよく、6.0×104未満でもよい。また、上記貯蔵弾性率G’(25℃)は、好ましくは6.0×103Pa以上であり、8.0×103Pa以上であってもよく、1.0×104Pa以上であってもよく、1.2×104Pa以上でもよく、1.5×104Pa以上でもよく、2.0×104Pa以上でもよく、2.5×104Pa以上でもよく、3.5×104Pa以上でもよく、4.0×104Pa以上でもよい。上記範囲の貯蔵弾性率G’(25℃)を有する粘着剤は、高屈折率と柔軟性とを両立し、繰返しの折曲げ操作に耐え得る柔軟性を有するものとなり得る。
【0136】
ここに開示される粘着剤の60℃における貯蔵弾性率G’(60℃)は、特に限定されず、例えば1.0×106Pa未満であることが適当であり、好ましくは5.0×105Pa未満、より好ましくは2.0×105Pa未満であり、1.5×105Pa未満であってもよく、1.0×105Pa未満であってもよく、0.8×104Pa未満であってもよい。上記のように貯蔵弾性率G’(60℃)が制限された粘着剤は、高温域において良好な柔軟性を有する。上記貯蔵弾性率G’(60℃)の下限は特に限定されず、例えば5.0×102Pa以上であり、1.0×103Pa以上であることが適当であり、好ましくは2.0×103Pa以上、より好ましくは3.0×103Pa以上であり、5.0×103Pa以上であってもよい。上記貯蔵弾性率G’(60℃)を有する粘着剤は、高温域においても適度な凝集力を有し、耐熱性に優れる傾向があり、好ましい。
【0137】
ここに開示される粘着剤の-20℃における貯蔵弾性率G’(-20℃)は、特に限定されず、例えば1.0×109Pa未満であってよく、2.0×108Pa未満であることが適当であり、1.5×108Pa以下であってもよく、1.0×108Pa以下であってもよく、5.0×107Pa以下でもよく、1.0×107Pa以下でもよく、5.0×106Pa以下でもよく、4.0×106Pa以下でもよく、3.0×106Pa以下でもよい。上記のように貯蔵弾性率G’(-20℃)が制限された粘着剤は、特に優れた柔軟性を有するものとなり得る。例えば、より低い温度域において良好な柔軟性を有し、低温域を含む広い温度域にて、繰返しの折曲げ操作に耐え得る柔軟性を有するものとなり得る。上記貯蔵弾性率G’(-20℃)の下限は特に限定されず、例えば5.0×103Pa以上であることが適当であり、好ましくは1.0×104Pa以上、より好ましくは5.0×104Pa以上であり、1.0×105Pa以上であってもよく、5.0×105Pa以上でもよく、1.0×106Pa以上でもよい。上記貯蔵弾性率G’(-20℃)を有する粘着剤は、柔軟性を有しつつ、適度な凝集力を備えるものとなり得る。また、上記貯蔵弾性率G’(-20℃)を有する粘着剤によると、低温域においても高屈折率と柔軟性とを両立しやすい傾向がある。
【0138】
(ガラス転移温度)
粘着剤のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されず、低温域での柔軟性や、高温域での凝集力(耐熱性等)を考慮して設定され得る。いくつかの態様において、粘着剤のTgは、例えば30℃以下であってよく、20℃以下であってもよく、10℃以下または5℃以下であってもよい。いくつかの好ましい態様において、粘着剤のTgは、柔軟性の観点から、0℃以下であることが適当であり、より好ましくは-5℃以下、さらに好ましくは-10℃以下であり、-15℃以下(例えば-20℃以下)であってもよい。粘着剤のTgが低いほど、被着体との密着性など粘着特性にも優れる傾向がある。また、粘着剤のTgを低く設定することにより、Tgよりも高い温度域における弾性率の変化を抑制することができる。粘着剤のTgの下限は、例えば-50℃以上であり、-40℃以上であることが適当であり、-30℃以上であってもよい。上記Tgを有する粘着剤によると、適度な凝集力が得られやすい傾向がある。また、高屈折率と低弾性率とを両立した粘着剤を形成しやすい傾向がある。
【0139】
上記各温度における粘着剤の貯蔵弾性率G’および粘着剤のガラス転移温度Tgは、後述の実施例に記載の方法で測定することができ、その結果から各貯蔵弾性率比を算出することができる。粘着剤の各貯蔵弾性率G’、各貯蔵弾性率比およびガラス転移温度Tgは、例えば、ベースポリマーを構成するモノマー成分の組成の選択、添加剤(A)の種類や使用量の選択、架橋剤の使用有無、種類および使用量の選択、等により調節し得る。
【0140】
(破断時伸びEB)
粘着剤の破断時伸びEBは、特に限定されず、例えば200%以上10000%以下の範囲であり得る。柔軟性や伸び変形性の観点から、いくつかの態様において、破断時伸びEBは、例えば300%以上であってよく、400%以上であることが有利であり、500%以上であることが好ましく、750%以上であることがより好ましく、1000%以上であることがさらに好ましい。より伸び変形性を重視するいくつかの態様において、粘着剤の破断時伸びEBは、1250%以上であることが好ましく、1500%以上であることがより好ましく、1750%以上であってもよく、2000%以上であってもよく、2250%以上、2500%以上、3000%以上、4000%以上または5000%以上であってもよい。また、他の特性との両立容易性や、粘着剤または該粘着剤を有する粘着シートの加工性や取扱い性等の観点から、いくつかの態様において、粘着剤の破断時伸びEBは、9000%以下であることが適当であり、8000%以下であることが有利であり、7000%以下であることが好ましく、6000%以下であることがより好ましく、5500%以下であってもよく、5000%以下であってもよく、4500%以下であってもよく、4000%以下であってもよく、3500%以下であってもよい。粘着剤の破断時伸びEBは、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。粘着剤の破断時伸びEBは、例えば、ベースポリマーを構成するモノマー成分の組成の選択、添加剤の種類や使用量の選択、架橋剤の使用有無、種類および使用量の選択、等により調節し得る。
【0141】
(比(G’(25℃)/EB))
ここに開示される粘着剤のいくつかの態様において、上記破断時伸びEBに対する上記貯蔵弾性率G’(25℃)の比、すなわち比(G’(25℃)/EB)は、450以下であることが適当であり、300以下であることが有利であり、200以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、50以下であることがさらに好ましい。上記比(G’(25℃)/EB)は、粘着剤の25℃における貯蔵弾性率G’(25℃)を「Pa」の単位で表したときの数値部分と、該粘着剤の破断時伸びEBを「%」の単位で表したときの数値部分と、から算出される無次元数である。貯蔵弾性率G’(25℃)がより高い(硬い)こと、および、破断時伸びEBがより小さいことは、いずれも、上記比(G’(25℃)/EB)の値をより大きくする要因である。例えば、脆い材料や弱い(凝集力が低い)材料は、伸び変形に対して千切れやすく、破断時伸びEBの値が小さくなる傾向にある。一方、貯蔵弾性率G’(25℃)をより低くすること、および、破断時伸びEBをより大きくすることは、いずれも、上記比(G’(25℃)/EB)に対して、該比の値をより小さくする方向への影響を与える。上記比(G’(25℃)/EB)が所定以下に制限された粘着剤は、適度な柔軟性および適度な伸び変形性(千切れにくさ)によって良好なしなやかさを示す。したがって、所定以上の屈折率を有しつつ、上記比(G’(25℃)/EB)が上記範囲にある粘着剤は、高屈折率としなやかさとを両立する観点から好ましい。上記しなやかさを有する粘着剤は、例えば、繰り返して折り曲げられることが想定される用途にも適したものとなり得る。より良好なしなやかさを実現する観点から、いくつかの態様において、比(G’(25℃)/EB)は、好ましくは40以下(例えば35以下)であり、より好ましくは30以下であり、25以下、20以下、15以下または10以下であってもよい。上記比(G’(25℃)/EB)の下限は特に制限されない。いくつかの態様において、他の特性(例えば、光学特性、高温特性、低温特性等)とのバランスを考慮して、上記比(G’(25℃)/EB)は、例えば0.5以上であってよく、1以上であってもよく、2以上でもよく、3以上でもよく、5以上でもよく、10以上でもよく、15以上または20以上でもよい。
【0142】
<粘着シート>
この明細書により、粘着剤層を有する粘着シートが提供される。上記粘着剤層を構成する粘着剤は、ここに開示されるいずれかの粘着剤組成物から形成された粘着剤(例えば、該粘着剤組成物の硬化物)であり得る。
上記粘着シートは、非剥離性の基材(支持基材)の片面または両面に上記粘着剤層を有する形態の基材付き粘着シートであってもよく、上記粘着剤層が剥離ライナーに保持された形態等の基材レスの粘着シート(すなわち、非剥離性の基材を有しない粘着シート。典型的には粘着剤層からなる粘着シート)であってもよい。ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。ここに開示される粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態の粘着シートであってもよい。
【0143】
両面粘着タイプの基材レス粘着シート(基材レス両面粘着シート)の構成例を
図1,2に示す。
図1に示す粘着シート1は、基材レスの粘着剤層21の両面21A,21Bが、少なくとも該粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナー31,32によってそれぞれ保護された構成を有する。
図2に示す粘着シート2は、基材レスの粘着剤層21の一方の表面(粘着面)21Aが、両面が剥離面となっている剥離ライナー31により保護された構成を有し、これを巻回すると、粘着剤層21の他方の表面(粘着面)21Bが剥離ライナー31の背面に当接することにより、他面21Bもまた剥離ライナー31で保護された構成とできるようになっている。ここに開示される技術は、繰り返し折り曲げられるような被着体に追従する柔軟性の観点から、粘着剤層からなる基材レス粘着シートの形態で好ましく実施される。上記基材レス粘着シートは、例えば粘着シートの厚さを小さくする観点や、粘着シートの透明性を高める観点からも好ましい。
【0144】
ここに開示される粘着シートは、例えば、
図3に模式的に示される断面構造を有するものであり得る。
図3に示す粘着シート3は、支持基材10と、その支持基材10の第1面10Aおよび第2面10Bにそれぞれ支持された第1粘着剤層21および第2粘着剤層22とを備える。第1面10Aおよび第2面10Bは、いずれも非剥離性の表面(非剥離面)である。粘着シート3は、第1粘着剤層21の表面(第1粘着面)21Aおよび第2粘着剤層22の表面(第2粘着面)22Aをそれぞれ被着体に貼り付けて使用される。すなわち、粘着シート3は両面粘着シート(両面接着性の粘着シート)として構成されている。使用前の粘着シート3は、第1粘着面21Aおよび第2粘着面22Aが、少なくとも該粘着剤面側が剥離性を有する表面(剥離面)となっている剥離ライナー31,32によってそれぞれ保護された構成を有している。あるいは、剥離ライナー32を省略して、剥離ライナー31として両面が剥離面となっているものを使用し、粘着シート3を巻回して第2粘着面22Aを剥離ライナー31の裏面に当接させることにより、第2粘着面22Aもまた剥離ライナー31によって保護された構成としてもよい。
【0145】
ここに開示される技術は、部材(例えば光学部材)の固定や接合のため、上述の基材レスまたは基材付き両面粘着シートの形態で好ましく実施される。あるいは、ここに開示される粘着シートは、特に図示しないが、非剥離性の基材(支持基材)の片面のみに粘着剤層を有する基材付き片面粘着シートの形態であってもよい。片面粘着シートの形態の例として、
図3に示す構成において第1粘着剤層21および第2粘着剤層22のいずれか一方を有しない形態が挙げられる。
【0146】
(粘着剤層)
ここに開示される粘着シートの粘着剤層は、粘着剤組成物を適当な表面に付与(例えば塗布)した後、該組成物を硬化させることにより形成され得る。粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の慣用のコーターを用いて実施することができる。
【0147】
粘着剤層の厚さは特に限定されず、例えば3μm以上とすることができる。いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、例えば5μm以上であることが適当であり、10μm以上であってもよく、15μm以上でもよく、20μm以上でもよく、30μm以上でもよく、50μm以上でもよく、70μm以上または85μm以上でもよい。粘着剤層の厚さの増大により、粘着力は上昇する傾向にある。また、いくつかの態様において、粘着剤層の厚さは、例えば300μm以下であってよく、250μm以下でもよく、200μm以下でもよく、150μm以下でもよく、120μm以下でもよい。いくつかの好ましい態様において、粘着剤層の厚さは100μm以下であり、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは70μm以下であり、50μm以下であってもよく、30μm以下でもよい。粘着剤層の厚さが大きすぎないことは、粘着シートの薄型化等の観点から有利となり得る。また、薄厚の粘着剤層は、被着体への追従性に優れる傾向がある。ここに開示される技術は、例えば、粘着剤層の厚さが3μm~200μm(より好ましくは5μm~100μm、さらに好ましくは5μm~75μm)の範囲となる態様で好ましく実施され得る。なお、基材の第1面および第2面に第1粘着剤層および第2粘着剤層を有する粘着シートの場合、上述した粘着剤層の厚さは、少なくとも第1粘着剤層の厚さに適用され得る。第2粘着剤層の厚さも同様の範囲から選択され得る。また、基材レスの粘着シートの場合、該粘着シートの厚さは粘着剤層の厚さと一致する。
【0148】
(ヘイズ値)
いくつかの態様において、粘着シートを構成する粘着剤層のヘイズ値(単に「ヘイズ」ということもある。)は、例えば5.0%以下であってよく、3.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましく、0.9%以下でもよく、0.8%以下でもよく、0.5%以下でもよく、0.3%以下でもよい。このように透明性の高い粘着剤層を有する粘着シートは、基材を有する構成または有しない構成において、高い光透過性が求められる用途(例えば光学用途)や、該粘着シートを通して被着体を良好に視認し得る性能が求められる用途に好ましく適用され得る。粘着剤層のヘイズ値の下限は特に制限されず、透明性向上の観点からはヘイズ値は小さいほど好ましい。一方、いくつかの態様では、屈折率や粘着特性を考慮して、ヘイズ値は、例えば0.05%以上であってよく、0.10%以上でもよい。粘着剤層に関するこれらのヘイズ値は、ここに開示される技術を基材レス粘着シート(典型的には、粘着剤層からなる粘着シート)の形態で実施する場合における該粘着シートのヘイズ値にも好ましく適用され得る。
【0149】
ここで「ヘイズ値」とは、測定対象に可視光を照射したときの、全透過光に対する拡散透過光の割合をいう。くもり価ともいう。ヘイズ値は、以下の式で表すことができる。
Th(%)=Td/Tt×100
上記式において、Thはヘイズ値(%)であり、Tdは散乱光透過率、Ttは全光透過率である。ヘイズ値の測定は、後述する実施例に記載の方法に従って行うことができる。粘着剤層のヘイズ値は、例えば、該粘着剤層の組成や厚さ等の選択によって調節することができる。
【0150】
いくつかの態様において、粘着シートのヘイズ値は、例えば10.0%以下であってよく、5.0%以下であることが好ましく、3.0%以下であることがより好ましく、2.0%以下であることがさらに好ましく、1.7%以下でもよく、1.5%以下でもよく、1.2%以下でもよく、1.0%以下でもよく、0.8%以下でもよい。このように透明性の高い粘着シートは、高い光透過性が求められる用途(例えば光学用途)や、該粘着シートを通して被着体を良好に視認し得る性能が求められる用途に好ましく適用され得る。粘着シートのヘイズ値の下限は特に制限されず、透明性向上の観点からはヘイズ値は小さいほど好ましい。一方、いくつかの態様では、屈折率や粘着特性を考慮して、ヘイズ値は、例えば0.05%以上であってよく、0.1%以上であってもよく、0.2%以上でもよく、0.3%以上でもよい。粘着シートのヘイズ値は、上記粘着剤層のヘイズ値の測定と同様の方法で測定することができる。粘着シートの上記ヘイズ値は、上述した粘着剤層の組成等や、基材を有する構成においては基材種や基材厚さの選択によって得ることができる。
【0151】
(全光線透過率)
いくつかの態様において、粘着剤層の全光線透過率は、85.0%以上(例えば、88.0%以上、90.0%以上、または90.0%超)であることが好ましい。このように透明性の高い粘着剤層を有する粘着シートは、基材を有する構成または有しない構成において、高い光透過性が求められる用途(例えば光学用途)や、該粘着シートを通して被着体を良好に視認し得る性能が求められる用途に好ましく適用され得る。全光線透過率の上限は、実用上、例えば凡そ98%以下であってよく、凡そ96%以下でもよく、凡そ95%以下でもよい。いくつかの態様では、屈折率や粘着特性を考慮して、粘着剤層の全光線透過率は、凡そ94%以下でもよく、凡そ93%以下でもよく、凡そ92%以下でもよい。全光線透過率は、JIS K 7136:2000に準拠して、市販の透過率計を使用して測定される。透過率計としては、村上色彩技術研究所製の商品名「HAZEMETER HM-150」またはその相当品が用いられる。全光線透過率は、後述する実施例に記載の方法に従って測定することができる。粘着剤層の全光線透過率は、例えば、該粘着剤層の組成や厚さ等の選択によって調節することができる。
【0152】
いくつかの態様において、粘着シートの全光線透過率は、85.0%以上(例えば、88.0%以上、90.0%以上、または90.0%超)であることが好ましい。このように透明性の高い粘着シートは、高い光透過性が求められる用途(例えば光学用途)や、該粘着シートを通して被着体を良好に視認し得る性能が求められる用途に好ましく適用され得る。全光線透過率の上限は、実用上、例えば凡そ98%以下であってよく、凡そ96%以下でもよく、凡そ95%以下でもよい。いくつかの態様では、屈折率や粘着特性を考慮して、粘着シートの全光線透過率は、凡そ94%以下でもよく、凡そ93%以下でもよく、凡そ92%以下でもよい。粘着シートの全光線透過率は、上記粘着剤層の全光線透過率の測定と同様の方法で測定することができる。粘着シートの全光線透過率は、上述した粘着剤層の組成等や、基材を有する構成においては基材種や基材厚さの選択によって得ることができる。
【0153】
(剥離強度)
粘着シートのガラス板に対する剥離強度は、特に限定されない。いくつかの態様において、粘着シートは、ガラス板に対する剥離強度(対ガラス板剥離強度)が、例えば0.1N/25mm以上であり、0.5N/25mm以上であってもよい。いくつかの好ましい態様において、上記ガラス板に対する剥離強度は、1.0N/25mm以上であり、より好ましくは1.5N/25mm以上、さらに好ましくは2.0N/25mm以上であり、3.0N/25mm以上であってもよく、5.0N/25mm以上であってもよく、6.0N/25mm以上、7.0N/25mm以上、8.0N/25mm以上、9.0N/25mm以上または10N/25mm以上であってもよい。対ガラス板剥離強度が所定値以上である粘着シートは、例えばガラス製部材等の接合や固定に好適である。上記剥離強度の上限は特に制限されず、例えば30N/25mm以下、25N/25mm以下または20N/25mm以下であり得る。
【0154】
ここで、上記剥離強度は、被着体としてのアルカリガラス板に圧着して23℃、50%RHの環境で30分間放置した後、剥離角度180度、引張速度300mm/分の条件で剥離強度を測定することにより把握される。測定にあたっては、必要に応じて、測定対象の粘着シートに適切な裏打ち材(例えば、厚さ25μm程度~50μm程度のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)を貼り付けて補強することができる。剥離強度は、より具体的には、後述する実施例に記載の方法に準じて測定することができる。
【0155】
(粘着シートの厚さ)
ここに開示される粘着シート(基材レス粘着シートまたは基材付き粘着シート)の厚さは、例えば1000μm以下であってよく、350μm以下でもよく、200μm以下でもよく、120μm以下でもよく、75μm以下でもよく、50μm以下でもよい。また、粘着シートの厚さは、取扱い性等の観点から、例えば5μm以上であってもよく、10μm以上でもよく、25μm以上でもよく、30μm以上でもよく、40μm以上でもよく、80μm以上でもよく、130μm以上でもよい。
なお、粘着シートの厚さとは、被着体に貼り付けられる部分の厚さをいう。例えば
図3に示す構成の粘着シート3では、第1粘着面21Aから第2粘着面22Aまでの厚さを指し、剥離ライナー31,32の厚さは含まない。
【0156】
<支持基材>
いくつかの態様に係る粘着シートは、支持基材の片面または両面に粘着剤層を備える基材付き粘着シートの形態であり得る。支持基材の材質は特に限定されず、粘着シートの使用目的や使用態様等に応じて適宜選択することができる。使用し得る基材の非限定的な例として、ポリプロピレン(PP)やエチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィンを主成分とするポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルを主成分とするポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルを主成分とするポリ塩化ビニルフィルム等のプラスチックフィルム;ポリウレタンフォーム、ポリエチレン(PE)フォーム、ポリクロロプレンフォーム等の発泡体からなる発泡体シート;各種の繊維状物質(麻、綿等の天然繊維、ポリエステル、ビニロン等の合成繊維、アセテート等の半合成繊維、等であり得る。)の単独または混紡等による織布および不織布;和紙、上質紙、クラフト紙、クレープ紙等の紙類;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;等が挙げられる。これらを複合した構成の基材であってもよい。このような複合基材の例として、例えば、金属箔と上記プラスチックフィルムとが積層した構造の基材、ガラスクロス等の無機繊維で強化されたプラスチック基材等が挙げられる。
【0157】
いくつかの態様において、各種のフィルム基材を好ましく用いることができる。上記フィルム基材は、発泡体フィルムや不織布シート等のように多孔質の基材であってもよく、非多孔質の基材であってもよく、多孔質の層と非多孔質の層とが積層した構造の基材であってもよい。いくつかの態様において、上記フィルム基材としては、独立して形状維持可能な(自立型の、あるいは非依存性の)樹脂フィルムをベースフィルムとして含むものを好ましく用いることができる。ここで「樹脂フィルム」とは、非多孔質の構造であって、典型的には実質的に気泡を含まない(ボイドレスの)樹脂フィルムを意味する。したがって、上記樹脂フィルムは、発泡体フィルムや不織布とは区別される概念である。上記樹脂フィルムとしては、独立して形状維持可能な(自立型の、あるいは非依存性の)ものが好ましく用いられ得る。上記樹脂フィルムは、単層構造であってもよく、2層以上の多層構造(例えば、3層構造)であってもよい。
【0158】
樹脂フィルムを構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエステル;ポリオレフィン;ノルボルネン構造等の脂肪族環構造を有するモノマーに由来するポリシクロオレフィン;ナイロン6、ナイロン66、部分芳香族ポリアミド等のポリアミド(PA);透明ポリイミド(CPI)等のポリイミド(PI);ポリアミドイミド(PAI);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリエーテルスルホン(PES);ポリフェニレンサルファイド(PPS);ポリカーボネート(PC);ポリウレタン(PU);エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA);ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂;アクリル樹脂;トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系ポリマー;ポリアリレート;ポリスチレン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;等の樹脂を用いることができる。
【0159】
上記樹脂フィルムは、このような樹脂の1種を単独で含む樹脂材料を用いて形成されたものであってもよく、2種以上がブレンドされた樹脂材料を用いて形成されたものであってもよい。上記樹脂フィルムは、無延伸であってもよく、延伸(例えば一軸延伸または二軸延伸)されたものであってもよい。例えば、PETフィルム、PBTフィルム、PENフィルム、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、PP/PEブレンドフィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、CPIフィルム、TACフィルム等が好ましく用いられ得る。強度や寸法安定性の観点から好ましい樹脂フィルムの例として、PETフィルム、PENフィルム、PPSフィルムおよびPEEKフィルムが挙げられる。入手容易性等の観点からPETフィルムおよびPPSフィルムが特に好ましく、なかでもPETフィルムが好ましい。
【0160】
樹脂フィルムには、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤(染料、顔料等)、充填材、スリップ剤、アンチブロッキング剤等の公知の添加剤を、必要に応じて配合することができる。添加剤の配合量は特に限定されず、粘着シートの用途等に応じて適宜設定することができる。
【0161】
樹脂フィルムの製造方法は特に限定されない。例えば、押出成形、インフレーション成形、Tダイキャスト成形、カレンダーロール成形等の、従来公知の一般的な樹脂フィルム成形方法を適宜採用することができる。
【0162】
上記基材は、このようなベースフィルムから実質的に構成されたものであり得る。あるいは、上記基材は、上記ベースフィルムの他に、補助的な層を含むものであってもよい。上記補助的な層の例としては、光学特性調整層(例えば着色層、反射防止層)、基材に所望の外観を付与するための印刷層やラミネート層、帯電防止層、下塗り層、剥離層等の表面処理層が挙げられる。
【0163】
いくつかの態様において、支持基材としては、光透過性を有する基材(以下、光透過性基材ともいう。)を好ましく採用し得る。これにより、光透過性を有する基材付き粘着シートを構成することが可能となる。光透過性基材の全光線透過率は、例えば50%超であってよく、70%以上であってもよい。いくつかの好ましい態様では、支持基材の全光線透過率は80%以上であり、より好ましくは90%以上であり、95%以上(例えば95~100%)であってもよい。上記全光線透過率は、JIS K 7136:2000に準拠して、市販の透過率計を使用して測定される。透過率計としては、村上色彩技術研究所製の商品名「HAZEMETER HM-150」またはその相当品が用いられる。上記光透過性基材の好適例として、光透過性を有する樹脂フィルムが挙げられる。上記光透過性基材は、光学フィルムであってもよい。
【0164】
基材の厚さは、特に限定されず、粘着シートの使用目的や使用態様等に応じて選択し得る。基材の厚さは、例えば500μm以下であってよく、粘着シートの取扱い性や加工性の観点から300μm以下であることが好ましく、150μm以下でもよく、100μm以下でもよく、50μm以下でもよく、25μm以下でもよく、10μm以下でもよい。基材の厚さが小さくなると、被着体の表面形状への追従性が向上する傾向にある。また、取扱い性や加工性等の観点から、基材の厚さは、例えば2μm以上であってよく、10μm以上でもよく、25μm以上でもよい。
【0165】
基材のうち粘着剤層が積層される側の面には、必要に応じて、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤(プライマー)の塗布による下塗り層の形成等の、従来公知の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、粘着剤層の基材への投錨性を向上させるための処理であり得る。下塗り層の形成に用いるプライマーの組成は特に限定されず、公知のものから適宜選択することができる。下塗り層の厚さは特に制限されないが、通常、0.01μm~1μm程度が適当であり、0.1μm~1μm程度が好ましい。必要に応じて基材に施され得る他の処理として、帯電防止層形成処理、着色層形成処理、印刷処理等が挙げられる。これらの処理は、単独でまたは組み合わせて適用することができる。
【0166】
<剥離ライナー付き粘着シート>
ここに開示される粘着シートは、粘着剤層の表面(粘着面)を剥離ライナーの剥離面に当接させた粘着製品の形態をとり得る。したがって、この明細書により、ここに開示されるいずれかの粘着シートと、該粘着シートの粘着面に当接する剥離面を有する剥離ライナーと、を含む剥離ライナー付き粘着シート(粘着製品)が提供される。
【0167】
剥離ライナーとしては、特に限定されず、例えば、樹脂フィルムや紙(ポリエチレン等の樹脂がラミネートされた紙であり得る。)等のライナー基材の表面に剥離層を有する剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)のような低接着性材料により形成された樹脂フィルムからなる剥離ライナー等を用いることができる。表面平滑性に優れることから、ライナー基材としての樹脂フィルムの表面に剥離層を有する剥離ライナーや、低接着性材料により形成された樹脂フィルムからなる剥離ライナーを好ましく採用し得る。樹脂フィルムとしては、粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエステルフィルム(PETフィルム、PBTフィルム等)、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム等が挙げられる。上記剥離層の形成には、例えば、シリコーン系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤、オレフィン系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、脂肪酸アミド系剥離処理剤、硫化モリブデン、シリカ粉等の、公知の剥離処理剤を用いることができる。
【0168】
<用途>
ここに開示される粘着シートの用途は限定されず、各種用途に利用することができる。ここに開示される粘着シートは、高屈折率と低弾性率とを両立した粘着剤を備えるものであるので、その特徴を活かして、高屈折率および柔軟性が要求される各種用途に利用され得る。例えば、携帯電子機器等の電子機器において、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパー等の表示装置(画像表示装置)や、タッチパネル等の入力装置等の機器(光学機器)、特に、フォルダブルディスプレイやローラブルディスプレイ用の粘着シートとして好適である。例えば、フォルダブルディスプレイやローラブルディスプレイにおいて、高屈折率を有する部材の接合や固定、保護等の手段として好ましく用いられる。ここに開示される粘着シートは、高屈折率を有しつつ、繰返しの折曲げ操作に耐え得る柔軟性を有し得るので、フォルダブルディスプレイやローラブルディスプレイに貼り付けられた状態で、繰り返し折り曲げられる被着体(フォルダブルディスプレイ等)に良好に追従することができる。かかる使用形態における貼付け対象物としては、フォルダブルディスプレイやローラブルディスプレイに用いられるウィンドウガラスやカバーガラス等のガラス部材が挙げられる。また、ここに開示される粘着シートは、例えば携帯電子機器が有する3次元形状等の曲面形状の表面にも追従、密着しやすいので、かかる曲面形状を有する電子機器用途にも好適である。また、いくつかの好ましい態様において、粘着剤は、高屈折率および低弾性率を有することに加えて、耐熱性に優れるものでもあり得る。上記携帯電子機器は、高温環境下で使用されることがあり、また、その内部空間が電子部品の発熱により熱を帯びることがあるため、上記耐熱性粘着シートを用いる利点は大きい。
【0169】
上記携帯電子機器の例には、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン、ノート型パソコン、各種ウェアラブル機器(例えば、腕時計のように手首に装着するリストウェア型、クリップやストラップ等で体の一部に装着するモジュラー型、メガネ型(単眼型や両眼型。ヘッドマウント型も含む。)を包含するアイウェア型、シャツや靴下、帽子等に例えばアクセサリの形態で取り付ける衣服型、イヤホンのように耳に取り付けるイヤウェア型等)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、音響機器(携帯音楽プレーヤー、ICレコーダー等)、計算機(電卓等)、携帯ゲーム機器、電子辞書、電子手帳、電子書籍、車載用情報機器、携帯ラジオ、携帯テレビ、携帯プリンター、携帯スキャナ、携帯モデム等が含まれる。なお、この明細書において「携帯」とは、単に携帯することが可能であるだけでは十分ではなく、個人(標準的な成人)が相対的に容易に持ち運び可能なレベルの携帯性を有することを意味するものとする。
【0170】
ここに開示される粘着シートが貼り付けられる材料(被着体材料)としては、特に限定されるものではないが、例えば、銅、銀、金、鉄、錫、パラジウム、アルミニウム、ニッケル、チタン、クロム、亜鉛等、またはこれらの2種以上を含む合金等の金属材料や、例えばポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエーテルニトリル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエステル系樹脂(PET系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂等)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアミド系樹脂(いわゆるアラミド樹脂等)、ポリアリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、液晶ポリマー等の各種樹脂材料(典型的にはプラスチック材)、アルミナ、ジルコニア、アルカリガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、カーボン等の無機材料等が挙げられる。ここに開示される粘着シートは、上記材料から構成された部材(例えば光学部材)に貼り付けられて用いられ得る。
【0171】
ここに開示される粘着シートの貼り付け対象である部材や材料(両面粘着シートにおいては、少なくとも一方の被着体)は、一般的なアクリル系粘着剤よりも屈折率が高い材料からなるものであり得る。被着体材料の屈折率は、例えば1.50以上であり、なかには屈折率が1.55以上または1.58以上の被着体材料もあり、さらには屈折率が1.62以上(例えば1.66程度)のものも存在する。そのような高屈折率の被着体材料は、典型的には樹脂材料である。より具体的には、PET等のポリエステル系樹脂や、ポリイミド系樹脂、アラミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等であり得る。そのような材料に対して、ここに開示される粘着シートを用いることの効果(屈折率差を原因とする光線の反射抑制)は好ましく発揮され得る。上記被着体材料の屈折率の上限は、例えば1.80以下であり、1.70以下であり得る。ここに開示される粘着シートは、上記のような高屈折率の被着体(例えば部材)に貼り付ける態様で好ましく用いられ得る。そのような被着体の好適例として、屈折率が1.50~1.80(好ましくは1.55~1.75、例えば1.60~1.70)の樹脂フィルムが挙げられる。上記屈折率は、粘着剤の屈折率と同様の方法で測定され得る。
【0172】
粘着シートの貼り付け対象である部材や材料(両面粘着シートにおいては、少なくとも一方の被着体)は、光透過性を有するものであり得る。このような被着体では、ここに開示される技術による効果(被着体と粘着シートとの界面における光線反射の抑制)の利点が得られやすい。上記被着体の全光線透過率は、例えば50%よりも大きく、好ましくは70%以上であり得る。いくつかの好ましい態様では、上記被着体の全光線透過率は80%以上であり、より好ましくは90%以上であり、95%以上(例えば95~100%)であり得る。ここに開示される粘着シートは、全光線透過率が所定値以上の被着体(例えば光学部材)に貼り付ける態様で好ましく用いられ得る。上記全光線透過率は、JIS K 7136:2000に準拠して、市販の透過率計を使用して測定される。透過率計としては、村上色彩技術研究所製の商品名「HAZEMETER HM-150」またはその相当品が用いられる。
【0173】
いくつかの好ましい態様では、粘着シートを貼り付ける被着体(例えば部材)は、上述の屈折率を有し、かつ上述の全光線透過率を有するものであり得る。具体的には、屈折率が1.50以上(例えば1.55以上、1.58以上、1.62以上、1.66程度等)であり、かつ全光線透過率が50%よりも大きい(例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらには95%以上であり得る)被着体、例えば部材に貼り付ける態様で、ここに開示される粘着シートは好ましく用いられ得る。このような部材に貼り付けられる態様において、ここに開示される技術による効果は特に好ましく発揮される。
【0174】
好ましい用途の一例として、光学用途が挙げられる。より具体的には、例えば、光学部材を貼り合わせる用途(光学部材貼り合わせ用)や上記光学部材が用いられた製品(光学製品)の製造用途等に用いられる光学用粘着シートとして、ここに開示される粘着シートを好ましく用いることができる。上記光学製品は、いわゆる偏光板レスの構成であってもよい。例えば、光源を備える光学製品において、光源(有機ELパネル等)から視認側が偏光度80 %以下の層のみにより構成された光学製品であり得る。
【0175】
上記光学部材とは、光学的特性(例えば、偏光性、光屈折性、光散乱性、光反射性、光透過性、光吸収性、光回折性、旋光性、視認性等)を有する部材をいう。上記光学部材としては、光学的特性を有する部材であれば特に限定されないが、例えば、表示装置(画像表示装置)、入力装置等の機器(光学機器)を構成する部材またはこれらの機器に用いられる部材が挙げられ、例えば、偏光板、波長板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、ハードコート(HC)フィルム、衝撃吸収フィルム、防汚フィルム、フォトクロミックフィルム、調光フィルム、透明導電フィルム(ITOフィルム)、意匠フィルム、装飾フィルム、表面保護板、プリズム、レンズ、カラーフィルター、透明基板や、さらにはこれらが積層されている部材(これらを総称して「機能性フィルム」と称する場合がある。)等が挙げられる。なお、上記の「板」および「フィルム」は、それぞれ板状、フィルム状、シート状等の形態を含むものとし、例えば、「偏光フィルム」は、「偏光板」や「偏光シート」等を含み、「導光板」は、「導光フィルム」や「導光シート」等を含むものとする。また、上記「偏光板」は、円偏光板を含むものとする。
【0176】
上記表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置、マイクロLED(μLED)、ミニLED(miniLED)、PDP、電子ペーパー等が挙げられる。また、上記入力装置としては、タッチパネル等が挙げられる。
【0177】
上記光学部材としては、特に限定されないが、例えば、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、PET、金属薄膜等からなる部材(例えば、シート状やフィルム状、板状の部材)等が挙げられる。なお、この明細書における「光学部材」には、表示装置や入力装置の視認性を保ちながら加飾や保護の役割を担う部材(意匠フィルム、装飾フィルムや表面保護フィルム等)も含むものとする。
【0178】
ここに開示される技術は、例えば、光の透過、反射、拡散、導波、集光、回折等の1または2以上の機能を有するフィルムや蛍光フィルム等の光学フィルムを、他の光学部材(他の光学フィルムであり得る。)に接合するために好ましく用いられ得る。なかでも、光の導波、集光、回折の少なくとも1つの機能を有する光学フィルムの接合においては、接合層のバルク全体が高屈折率であることが望ましく、ここに開示される技術の好ましい適用対象となり得る。
【0179】
ここに開示される粘着剤は、例えば、導光フィルム、拡散フィルム、蛍光フィルム、調色フィルム、プリズムシート、レンチキュラーフィルム、マイクロレンズアレイフィルム等の光学フィルムの接合に好ましく用いられ得る。これらの用途では、光学部材の小型化の傾向や高性能化の観点から、薄型化や光取出し効率の向上が求められている。かかる要請に応え得る粘着剤として、ここに開示される粘着剤は好ましく利用され得る。より詳しくは、例えば導光フィルムや拡散フィルムの接合では、接合層としての粘着剤層の屈折率を調整(例えば高屈折率化)することによって薄型化に寄与し得る。蛍光フィルムの接合では、蛍光発光体と粘着剤との屈折率差を適切に調整することにより、光取出し効率(発光効率としても把握され得る。)を向上させることができる。調色フィルムの接合では、調色用顔料との屈折率差が小さくなるように粘着剤の屈折率を適切に調整することで散乱成分を低減し、光透過性の向上に貢献し得る。プリズムシート、レンチキュラーフィルム、マイクロレンズアレイフィルム等の接合においては、粘着剤の屈折率を適切に調整することにより、光の回折を制御し、輝度および/または視野角の向上に貢献し得る。
【0180】
ここに開示される粘着シートは、高屈折率の被着体(高屈折率の層や部材等であり得る。)に貼り付けられる態様で好ましく用いられて、上記被着体との界面反射を抑制することができる。かかる態様で用いられる粘着シートは、上述のように被着体との屈折率差が小さく、かつ被着体との界面における密着性が高いことが好ましい。また、外観の均質性を高める観点から、粘着剤層の厚みの均一性が高いことが好ましく、例えば粘着面の表面平滑性が高いことが好ましい。高屈折率の被着体の厚みが比較的小さい場合(例えば5μm以下、4μm以下、または2μm以下である場合)には、反射光の干渉による色付きや色むらを抑制する観点から、界面での反射を抑えることが特に有意義である。このような使用態様の一例として、偏光子と第1位相差層と第2位相差層とをこの順に備える位相差層付き偏光板において上記偏光子と上記第1位相差層との接合および/または上記第1位相差層と上記第2位相差層との接合に用いられる態様が挙げられる。
【0181】
また、ここに開示される粘着シートは、高屈折率化に適することから、光半導体等の発光層(例えば、主に無機材料により構成された高屈折の発光層)に貼り付けられる態様で好ましく用いられ得る。発光層と粘着剤層との屈折率差を小さくすることにより、それらの界面における反射を抑制し、光取出し効率を向上させ得る。かかる態様で用いられる粘着シートは、高屈折率の粘着剤層を備えることが好ましい。また、輝度向上の観点から、粘着シートは低着色であることが好ましい。このことは、粘着シートに起因する非意図的な着色を抑制する観点からも有利となり得る。
【0182】
なお、この明細書において、自発光素子とは、流れる電流値によって発光輝度を制御することが可能な発光素子を意味する。自発光素子は、単一体で構成されていてもよく、集合体で構成されていてもよい。自発光素子の具体例には、発光ダイオード(LED)および有機ELが含まれるが、これらに限定されない。また、この明細書において、発光装置とは、このような自発光素子を構成要素として含む装置を意味する。上記発光装置の例には、照明として利用される光源モジュール装置(例えば、面状発光体モジュール)や、画素を形成した表示装置が含まれるが、これらに限定されない。
【0183】
ここに開示される粘着剤は、カメラや発光装置等の構成部材として用いられるマイクロレンズその他のレンズ部材(例えば、マイクロレンズアレイフィルムを構成するマイクロレンズや、カメラ用マイクロレンズ等のレンズ部材)において、レンズ面を覆うコーティング層、上記レンズ面に対向する部材(例えば、レンズ面に対応する表面形状を有する部材)との接合層、上記レンズ面と上記部材との間に充填される充填層、等として好ましく用いられ得る。ここに開示される粘着剤は、高屈折率化に適することから、高屈折率のレンズ(例えば、高屈折率樹脂により構成されたレンズや、高屈折率樹脂製の表面層を有するレンズ)であっても該レンズとの屈折率差を低減することができる。このことは、上記レンズおよび該レンズを備えた製品の薄型化の観点から有利であり、収差の抑制やアッベ数の向上にも貢献し得る。ここに開示される粘着剤は、例えば適切な透明部材の凹部または空隙に充填された形態で、それ自体をレンズ樹脂として利用することも可能である。
【0184】
ここに開示される粘着シートを用いて光学部材を貼り合わせる態様としては、特に限定されないが、例えば、(1)ここに開示される粘着シートを介して光学部材同士を貼り合わせる態様や、(2)ここに開示される粘着シートを介して光学部材を光学部材以外の部材に貼り合わせる態様であってもよいし、(3)ここに開示される粘着シートが光学部材を含む形態であって該粘着シートを光学部材または光学部材以外の部材に貼り合わせる態様であってもよい。なお、上記(3)の態様において、光学部材を含む形態の粘着シートは、例えば、支持体が光学部材(例えば、光学フィルム)である粘着シートであり得る。このように支持体として光学部材を含む形態の粘着シートは、粘着型光学部材(例えば、粘着型光学フィルム)としても把握され得る。また、ここに開示される粘着シートが支持体を有するタイプの粘着シートであって、上記支持体として上記機能性フィルムを用いた場合には、ここに開示される粘着シートは、機能性フィルムの少なくとも片面側にここに開示される粘着剤層を有する「粘着型機能性フィルム」としても把握され得る。
【0185】
上記より、ここに開示される技術によると、ここに開示される粘着シートと、該粘着シートが貼り付けられた部材とを備える積層体が提供される。粘着シートが貼り付けられる部材は、上述した被着体材料の屈折率を有するものであり得る。また、粘着シートの屈折率と部材の屈折率との差(屈折率差)は、上述した被着体と粘着シートとの屈折率差であり得る。積層体を構成する部材については、上述の部材、材料、被着体として説明したとおりであるので、重複する説明は繰り返さない。
【0186】
以上の説明および以下の実施例から理解されるように、この明細書により開示される事項には以下のものが含まれる。
【0187】
〔1〕 ベースポリマーと、高屈折率添加剤(A)と、を含む粘着剤であって、
上記高屈折率添加剤(A)は非対称構造の化合物であり、
上記高屈折率添加剤(A)の含有量は、上記ベースポリマー100重量部に対して30重量部以上であり、
上記粘着剤の屈折率は1.50以上である、粘着剤。
〔2〕 上記高屈折率添加剤(A)は、二重結合含有環を有する化合物である、上記〔1〕に記載の粘着剤。
〔3〕 上記高屈折率添加剤(A)は、ヘテロ環を有する化合物である、上記〔1〕または〔2〕に記載の粘着剤。
〔4〕 上記高屈折率添加剤(A)は、置換基を有する縮合環を含む化合物である、上記〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の粘着剤。
〔5〕 上記高屈折率添加剤(A)として、置換基を有するジナフトチオフェン化合物を含む、上記〔4〕に記載の粘着剤。
〔6〕 上記高屈折率添加剤(A)として、屈折率1.65以上の化合物を含む、上記〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の粘着剤。
〔7〕 上記高屈折率添加剤(A)は、分子量が100以上1000以下の化合物である、上記〔1〕~〔6〕いずれか1つに記載の粘着剤。
〔8〕 上記ベースポリマーを構成するモノマー成分において、芳香環含有モノマーの含有量は0重量%以上75重量%未満である、上記〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の粘着剤。
〔9〕 上記〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の粘着剤からなる粘着剤層を含む、粘着シート。
【0188】
〔10〕 25℃における貯蔵弾性率G’(25℃)[Pa]と破断時伸びEB[%]との比(G’(25℃)/EB)が450以下(例えば、1以上50以下)である、上記〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の粘着剤。
〔11〕 破断時伸びEBが500%以上である、上記〔1〕~〔8〕,〔10〕のいずれか1つに記載の粘着剤。
〔12〕 貯蔵弾性率G’(25℃)が1.0×104~1.0×106の範囲内にある、上記〔1〕~〔8〕,〔10〕,〔11〕のいずれか1つに記載の粘着剤。
〔13〕 ガラス転移温度が0℃以下である、上記〔1〕~〔8〕,〔10〕~〔12〕のいずれか1つに記載の粘着剤。
【0189】
〔14〕 上記〔1〕~〔8〕,〔10〕~〔13〕のいずれか1つに記載の粘着剤からなる粘着剤層を含む、粘着シート。
〔15〕 上記粘着剤層の厚さは5μm以上100μm以下である、上記〔14〕に記載の粘着シート。
〔16〕 ヘイズが3%以下である、上記〔14〕または〔15〕に記載の粘着シート。
〔17〕 全光線透過率が85%以上である、上記〔14〕~〔16〕のいずれか1つに記載の粘着シート。
〔18〕 ガラス板に対する剥離強度が0.1N/25mm以上である、上記〔14〕~〔17〕のいずれか1つに記載の粘着シート。
【実施例0190】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において、使用量や含有量を表す「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0191】
<例1>
(ポリマー溶液の調製)
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管および冷却器を備えた四つ口フラスコに、モノマー成分としてn-ブチルアクリレート(BA)74部、m-フェノキシベンジルアクリレート(共栄社化学社製、商品名「ライトアクリレートPOB-A」、屈折率:1.566。以下、「POB-A」と表記する。)25部および4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)1部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2部、および重合溶媒として酢酸エチル150部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を60℃付近に保って6時間重合反応を行い、ポリマーP1の溶液(ポリマー濃度40%)を調製した。ポリマーP1のMwは150万であった。
【0192】
(粘着剤組成物の調製)
上記ポリマーP1の溶液(ポリマー濃度40%)を、酢酸エチルでポリマー濃度20%に希釈した。この溶液500部(100部のポリマーP1を含有する。)に対し、6-メトキシメチルジナフトチオフェン(6MDNTM、屈折率:1.759。25%酢酸エチル溶液を調製可能)を42部、架橋剤としてトリメチロールプロパン/キシリレンジイソシアネート付加物(三井化学社製、商品名「タケネートD-110N」、固形分濃度75%)を固形分基準で0.1部、架橋遅延剤としてアセチルアセトンを2部、架橋触媒としてナーセム第二鉄の1%酢酸エチル溶液を1部(不揮発分0.01部)加えて攪拌混合し、本例に係る粘着剤組成物を調製した。
【0193】
(粘着シートの作製)
上記で調製した粘着剤組成物を、片面にシリコーン処理が施されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムR1(厚さ50μm)のシリコーン処理面に塗布し、130℃で2分間加熱して、厚さ50μmの粘着剤層を形成した。次いで、上記粘着剤層の表面に、片面にシリコーン処理が施されたPETフィルムR2(厚さ25μm)のシリコーン処理面を貼り合わせた。このようにして、上記粘着剤層からなる基材レス両面粘着シートを得た。この粘着シートの両面は、PETフィルム(剥離ライナー)R1,R2により保護されている。
【0194】
<例2>
100部のポリマーP1に対する6MDNTMの使用量を70部に変更した他は例1と同様にして、本例に係る粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を用いた他は例1と同様にして、本例に係る粘着シート(厚さ50μmの粘着剤層からなる基材レス両面粘着シート)を作製した。
【0195】
<例3>
モノマー成分の組成を2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)74部、POB-A25部および4HBA1部に変更した他は、例1におけるポリマー溶液の調製と同様にして、ポリマーP2の溶液(ポリマー濃度40%)を調製した。ポリマーP2のMwは100万であった。
ポリマーP1の溶液に代えてポリマーP2の溶液を使用した他は例1における粘着剤組成物の調製と同様にして、本例に係る粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を用いた他は例1と同様にして、本例に係る粘着シート(厚さ50μmの粘着剤層からなる基材レス両面粘着シート)を作製した。
【0196】
<例4>
100部のポリマーP2に対する6MDNTMの使用量を70部に変更した他は例3と同様にして、本例に係る粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を用いた他は例1と同様にして、本例に係る粘着シート(厚さ50μmの粘着剤層からなる基材レス両面粘着シート)を作製した。
【0197】
<例5>
モノマー成分の組成を2EHA54部、POB-A25部、メトキシエチルアクリレート(MEA)20部および4HBA1部に変更した他は、例1におけるポリマー溶液の調製と同様にして、ポリマーP3の溶液(ポリマー濃度40%)を調製した。ポリマーP3のMwは100万であった。
ポリマーP1の溶液に代えてポリマーP3の溶液を使用した他は例1における粘着剤組成物の調製と同様にして、本例に係る粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を用いた他は例1と同様にして、本例に係る粘着シート(厚さ50μmの粘着剤層からなる基材レス両面粘着シート)を作製した。
【0198】
<例6>
モノマー成分の組成をBA99部および4HBA1部に変更した他は、例1におけるポリマー溶液の調製と同様にして、ポリマーP4の溶液(ポリマー濃度40%)を調製した。ポリマーP4のMwは150万であった。
ポリマーP1の溶液に代えてポリマーP4の溶液を使用した他は例2における粘着剤組成物の調製と同様にして、本例に係る粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を使用し、厚さ20μmの粘着剤層が形成されるように塗布量を調整した他は、例1と同様にして、本例に係る粘着シート(粘着剤層からなる基材レス両面粘着シート)を作製した。
【0199】
<例7>
100部のポリマーP4に対する6MDNTMの使用量を60部に変更した他は例6と同様にして、本例に係る粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を用いた他は例6と同様にして、本例に係る粘着シート(厚さ20μmの粘着剤層からなる基材レス両面粘着シート)を作製した。
【0200】
<例8~例10>
例6における粘着剤組成物の調製において、6MDNTMに代えて、例8では6-アクリロイルオキシメチルジナフトチオフェン(6MDNTA、屈折率:1.737)、例9では6-アクリロイルオキシエチルジナフトチオフェン(6EDNTA、屈折率:1.722)、例10では6-エチルジナフトチオフェン(6EDNT、屈折率:1.764)を、100部のポリマーP4に対して42部使用した。それ以外は例6における粘着剤組成物の調製と同様にして、各例に係る粘着剤組成物を調製した。得られた粘着剤組成物を用いた他は例1と同様にして、各例に係る粘着シート(厚さ50μmの粘着剤層からなる基材レス両面粘着シート)を作製した。
【0201】
<例11>
6MDNTAを使用しないことを除いては例8と同様にして、本例に係る粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物を用いた他は例1と同様にして、本例に係る粘着シート(厚さ50μmの粘着剤層からなる基材レス両面粘着シート)を作製した。
【0202】
<例12>
例8における粘着剤組成物の調製において、6MDNTAに代えて2,12-ジアリルオキシジナフトチオフェン(2,12-DAODNT、屈折率:1.729)を、100部のポリマーP4に対して42部使用した。それ以外は例8における粘着剤組成物の調製と同様にして、本例に係る粘着剤組成物を調製した。得られた粘着剤組成物を用いた他は例1と同様にして、本例に係る粘着シート(厚さ50μmの粘着剤層からなる基材レス両面粘着シート)を作製した。
【0203】
例1~10、12において使用した各置換DNTの構造を表1に示す。これらのうち、2,12-DAODNTは線対称構造の化合物であり、他は非対称構造の化合物である。これらの化合物の屈折率は、以下の方法により測定した。すなわち、測定対象の化合物の5%酢酸エチル溶液または5%MEK溶液を、乾燥膜厚が10μmとなるようにガラス板上に塗布し、130℃で5分間加熱して乾燥させた。このようにして上記ガラス板上に製膜した測定対象化合物につき、測定温度25℃、測定波長594nmの条件で、プリズムカプラ(メトリコン社製、モデル「2010M」)を用いて屈折率を測定した。
【0204】
【0205】
<評価方法>
(粘着剤の屈折率)
各例に係る粘着剤層(基材レス両面粘着シート)について、測定温度25℃、測定波長594nmの条件で、プリズムカプラ(メトリコン社製、モデル「2010M」)を用いて屈折率を測定した。
【0206】
(貯蔵弾性率G’およびガラス転移温度)
各例に係る粘着剤層を積層して厚み約1.5mmとし、直径7.9mmの円盤状に打ち抜いたものを測定用サンプルとした。Rheometric Scientific社製「Advanced Rheometric Expansion System (ARES)」を用いて、以下の条件により動的粘弾性測定を行った。測定結果から、各温度(-20℃、25℃および60℃)における粘着剤の貯蔵弾性率G’[Pa]を求めた。また、上記動的粘弾性測定における損失正接tanδ(損失弾性率G”/貯蔵弾性率G’)のピークトップ温度に相当する温度を粘着剤のガラス転移温度(Tg)[℃]として求めた。
[測定条件]
変形モード:ねじり
測定周波数:1Hz
温度範囲 :-50℃~150℃
昇温速度:5℃/分
形状:パラレルプレート 7.9mmφ
【0207】
(破断時伸びEB)
各例に係る粘着剤層(基材レス両面粘着シート)を、PETフィルム(剥離ライナー)R1,R2に挟まれた形態のまま、長さ30mm、幅Xmmのサイズに裁断した。上記幅Xmmは、該幅方向に沿う断面における粘着剤層の断面積が約2mm2となるように、上記粘着剤層の厚さに応じて設定した。次いで、一方の剥離ライナーを除去して粘着剤層の一方の表面を露出させ、他方の剥離ライナー上で粘着剤層をその長さ方向を軸として巻き取ることにより、長さ30mmの円柱状のサンプルを作製した。上記サンプルの上下各10mmの部分を引張試験機(SHIMAZU製、EZ-S 500N)のチャック冶具で固定し、25℃環境下にて、チャック間長さ10mm、引張速度300mm/minの条件で引っ張ることにより、上記サンプルの破断時伸びEB[%]を測定した。
【0208】
(全光線透過率およびヘイズ)
各例に係る粘着剤層を無アルカリガラス(厚さ0.8~1.0mm、全光線透過率92%、ヘイズ0.4%)に貼り合わせた試験片を用い、23℃の測定環境下において、ヘイズメータ(村上色彩技術研究所製「HM-150」)を用いて、上記試験片の全光線透過率およびヘイズを測定した。測定値から上記無アルカリガラスの全光線透過率およびヘイズを差し引いた値を粘着剤(層)の全光線透過率[%]およびヘイズ[%]とした。上記粘着剤層からなる基材レス粘着シートについては、粘着剤層の全光線透過率[%]およびヘイズ[%]は、粘着シートの全光線透過率[%]およびヘイズ[%]となる。
【0209】
(対ガラス板剥離強度)
23℃、50%RHの測定環境下において、粘着シートの一方の面から剥離ライナーを剥離し、厚み50μmのPETフィルムを貼り合わせて裏打ちした後、幅25mm、長さ100mmのサイズにカットしたものを試験片とした。試験片から他方の面の剥離ライナーを剥離し、被着体としてのアルカリガラス板(松浪硝子工業社製、厚さ1.35mm、青板縁磨品)の表面に、2kgのローラを1往復させて圧着した。これを同環境下に30分間放置した後、万能引張圧縮試験機を使用して、JIS Z 0237:2000に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、剥離強度(接着力)[N/25mm]を測定した。万能引張圧縮試験機としては、ミネベア社製の「引張圧縮試験機、TG-1kN」を使用した。なお、基材付き片面粘着シートの場合、PETフィルムの裏打ちは必須ではない。
【0210】
各例に係る粘着剤の概要および評価結果を表2に示す。
【0211】
【0212】
表2に示されるように、非対称構造の高屈折率添加剤をベースポリマー100部に対して30部以上含む例1~10の粘着剤によると、高屈折率と低弾性率とを好適に両立することができた。これらの例に係る粘着剤層(基材レス粘着シート)は透明性が高く、常温下の圧着によりガラスに対して良好な接着性を示した。一方、高屈折率添加剤を含まない例11の粘着剤は屈折率が低かった。また、高屈折率添加剤を対称構造のジナフトチオフェン化合物に変更した例12では、25℃における貯蔵弾性率G’が大幅に上昇し、かつ白濁により屈折率を測定することができなかった。なお、例1~10において添加剤として使用した各置換DNTの酢酸エチルに対する溶解性は、6EDNTA>6MDNTM>6MDNTA>6EDNTであった。2,12-DAODNTの酢酸エチルに対する溶解性は、6MDNTAと同等であった。
【0213】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。