(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087067
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】雨樋システム
(51)【国際特許分類】
E04D 13/068 20060101AFI20240621BHJP
E04D 13/08 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
E04D13/068 504B
E04D13/08 301B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024072776
(22)【出願日】2024-04-26
(62)【分割の表示】P 2020015233の分割
【原出願日】2020-01-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】菅生 純
(72)【発明者】
【氏名】元 隆明
(57)【要約】
【課題】貯水部を備える大型の雨樋システムであっても、発生したサイフォン現象を安定して伝達することができる雨樋システムを提供する。
【解決手段】軒樋10と、軒樋の底面に設けられた開口部11bに接続された貯水部20と、貯水部の下流側に接続された呼び樋50と、竪樋65と、呼び樋と竪樋とを接続する接続継手55と、を備える雨樋システム1であって、軒樋の流路断面積Sは11000mm
2以上であり、竪樋の内径は65mm以上であり、開口部の面積は、呼び樋の流路断面積よりも大きく、呼び樋の軸線O3と竪樋の軸線O4とのなす角度θ5は、80°以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軒樋と、前記軒樋の底面に設けられた開口部に接続された貯水部と、前記貯水部の下流側に接続された呼び樋と、竪樋と、前記呼び樋と前記竪樋とを接続する接続継手と、を備える雨樋システムであって、
前記軒樋の流路断面積は11000mm2以上であり、
前記竪樋の内径は65mm以上であり、
前記開口部の面積は、前記呼び樋の流路断面積よりも大きく、
前記呼び樋の軸線と前記竪樋の軸線とのなす角度は、80°以下であり、
前記貯水部は、前記開口部及び前記呼び樋にそれぞれ接続され、容量が0.3リットル超である筐体を有する雨樋システム。
【請求項2】
前記接続継手の軸線を含む断面おいて、前記接続継手の内周側の内壁面の曲率半径が、64mmよりも大きくかつ125mmよりも小さい請求項1に記載の雨樋システム。
【請求項3】
前記接続継手の両端に設けられた接続部の軸線同士のなす角度は、45°以下である請求項1又は2に記載の雨樋システム。
【請求項4】
前記筐体の容量が0.8リットル以上である請求項1から3のいずれか一項に記載の雨樋システム。
【請求項5】
前記貯水部は、自身の第1端部が前記筐体の下面に接合される連結部を有し、
前記第1端部の軸線は、上下方向に沿い、
前記連結部の第2端部は、前記呼び樋に接続され、
前記第2端部の軸線は、水平面に沿う請求項1から4のいずれか一項に記載の雨樋システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨樋システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、竪樋に縮径部を設けた雨樋システムでは、サイフォン現象が発生することが知られている(例えば、特許文献1参照)。この雨樋システムでは、縮径部で雨水(水)が溜められている。そして、溜まった雨水に作用する重力により、サイフォン現象が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1の雨樋システムは、住宅等に用いられる小型の雨樋システムである。一方で、物流倉庫、工場等に用いられる大型の雨樋システムが検討されている。この種の雨樋システムでは、排出される雨水の流量に対応して、軒樋の流路断面積や竪樋の内径を大きくする必要がある。
しかし、軒樋の流路断面積や竪樋の内径が大きくなると、溜まった雨水の重さを軒樋及び竪樋が支えられなくなる。
従って、大型の雨樋システムでは、竪樋にあまり雨水を溜められない。特に、軒樋内の雨水を早急に排出しないと、軒樋から雨水があふれる。同様に、竪樋内の雨水も早急に排出する必要がある。すなわち、竪樋内の雨水を排出して、縮径部で発生したサイフォン現象を、軒樋まで伝える必要がある。
【0005】
縮径部を備える雨樋システムのこのような問題点を解消しつつ、雨樋システムにサイフォン現象を発生させるために、縮径部を設ける以外に貯水部を設ける方が検討されている。
雨樋システムに発生したサイフォン現象を、雨樋システムにおける雨水が流れる下流側の部分に伝達できれば、竪樋内の雨水を早急に排出できる。しかしながら、この排水性能には改善の余地がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、貯水部を備える大型の雨樋システムであっても、発生したサイフォン現象を安定して伝達することができる雨樋システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の雨樋システムは、軒樋と、前記軒樋の底面に設けられた開口部に接続された貯水部と、前記貯水部の下流側に接続された呼び樋と、竪樋と、前記呼び樋と前記竪樋とを接続する接続継手と、を備える雨樋システムであって、前記軒樋の流路断面積は11000mm2以上であり、前記竪樋の内径は65mm以上であり、前記開口部の面積は、前記呼び樋の流路断面積よりも大きく、前記呼び樋の軸線と前記竪樋の軸線とのなす角度は、80°以下であり、前記貯水部は、前記開口部及び前記呼び樋にそれぞれ接続され、容量が0.3リットル超である筐体を有することを特徴としている。
ここで言う軒樋の流路断面積とは、軒樋の長手方向に沿って見たときの、軒樋内で雨水が流れ得る断面積のことを意味する。開口部の面積とは、軒樋の底面に直交する方向に見たときの、開口部の面積のことを意味する。呼び樋の軸線と竪樋の軸線とのなす角度は、両軸線のなす角度のうち鋭角の方の角度を意味する。
【0008】
この発明によれば、軒樋の流路断面積が11000mm2以上であり、竪樋の内径は65mm以上である。このため、雨樋システムを、物流倉庫等に用いられる大型の雨樋システムとして用いることができる。開口部の面積が呼び樋の流路断面積よりも大きいため、呼び樋を通して貯水部から流れ出る雨水の流量よりも、開口部を通して貯水部に流れ込む雨水の流量が多くなる。このため、雨水は貯水部内に溜まりやすい。貯水部内に雨水が溜まると、貯水部よりも、雨水が流れる下流側に配置された呼び樋、接続継手、及び竪樋は満水状態になる。すると、貯水部内の雨水が呼び樋、接続継手、及び竪樋内の雨水に引っ張られてサイフォン現象が発生し、雨樋システム内の雨水が下流側に勢い良く流れる。 この際に呼び樋の軸線と竪樋の軸線とのなす角度は80°以下であるため、例えばこのなす角度が約90°であるいわゆる直角エルボに比べて、雨水が呼び樋から竪樋に流れ込む際の雨水の流路の変化が小さくなる。その結果、発生したサイフォン現象が遮断され難くなる。従って、貯水部を備える大型の雨樋システムであっても、発生したサイフォン現象を安定して伝達することができる。
【0009】
また、前記雨樋システムにおいて、前記接続継手の軸線を含む断面おいて、前記接続継手の内周側の内壁面の曲率半径が、64mmよりも大きくかつ125mmよりも小さくてもよい。
この発明によれば、接続継手の軸線に沿う方向の一方の端部から接続継手内に流れ込んだ雨水は、接続継手の内周側の内壁面で滞らず、内壁面で雨水の流速が低下し難い。このため、接続継手内に流れ込んだ雨水を接続継手の軸線に沿う方向の他方の端部に向かって円滑に流すことができる。
【0010】
また、前記雨樋システムにおいて、前記接続継手の両端に設けられた接続部の軸線同士のなす角度は、45°以下であってもよい。
ここで言う接続部の軸線同士のなす角度は、両軸線のなす角度のうち、鋭角の方の角度を意味する。
この発明によれば、接続継手の一方の接続部から接続継手内に流れ込んだ雨水は、接続継手内で滞らず、接続継手内で雨水の流速が低下し難い。このため、接続継手内に流れ込んだ雨水を接続継手の他方の接続部に向かって円滑に流すことができる。
また、前記雨樋システムにおいて、前記筐体の容量が0.8リットル以上であってもよい。
また、前記雨樋システムにおいて、前記貯水部は、自身の第1端部が前記筐体の下面に接合される連結部を有し、前記第1端部の軸線は、上下方向に沿い、前記連結部の第2端部は、前記呼び樋に接続され、前記第2端部の軸線は、水平面に沿ってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の雨樋システムによれば、貯水部を備える大型の雨樋システムであっても、発生したサイフォン現象を安定して伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態の雨樋システムの縦断面図である。
【
図6】同雨樋システムの第1接続継手の縦断面図である。
【
図7】同雨樋システムの第2接続継手の縦断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態の変形例における雨樋システムの要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る雨樋システムの一実施形態を、
図1から
図8を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の雨樋システム1は、物流倉庫等の建築物200に用いられる大型の雨樋システムである。
雨樋システム1は、軒樋10と、貯水部20と、第1接続継手40と、呼び樋50と、第2接続継手(接続継手)55と、竪樋65と、を備えている。
軒樋10は、建築物200の軒下に配置されている。すなわち、軒樋10は、建築物200の屋根201の端201aの下方に配置されている。軒樋10は、屋根201の端201aに沿う第1方向Xに沿って延びている。
図1は、軒樋10の第1方向Xに直交する断面図である。
例えば、第1方向Xは水平面に沿う方向である。軒樋10は、上方が開口するU字形に形成されている。軒樋10は、底壁11と、第1側壁12と、第2側壁13と、を備えている。
【0014】
底壁11は、上下方向Zを厚さ方向とする板状に形成されている。底壁11の上面は、軒樋10の底面11aである。底壁11の底面11aには、底壁11を上下方向Zに貫通する開口部11bが形成されている。例えば、開口部11bは平面視で円形を呈している。開口部11bの径は、L6である。なお、開口部11bは平面視で矩形等を呈していてもよい。
底壁11の幅方向は、第1方向X及び上下方向Zにそれぞれ直交する第2方向Yである。
【0015】
第1側壁12は、底壁11における第2方向Yの第1側の端部(第1端部)から上方に向かって立ち上がっている。第1側壁12は、上方に向かうに従い漸次、第2方向Yの第1側に向かうように傾斜して配置されている。第2側壁13は、底壁11における第2方向Yの第1側とは反対の第2側の端部(第2端部)から上方に向かって立ち上がっている。第2側壁13は、上方に向かうに従い漸次、第2方向Yの第2側に向かうように傾斜して配置されている。
例えば、軒樋10は、塩化ビニル鋼板等を折り曲げることで形成されている。
この例では、第1側壁12の上端は、第2側壁13の上端よりも上方に配置されている。この例の軒樋10は、いわゆる前高樋である。
第1側壁12は、上下方向Zに見たときに、屋根201の端201aよりも第2方向Yの第1側に配置されている。第2側壁13は、上下方向Zに見たときに、屋根201の端201aよりも第2方向Yの第2側に配置されている。
【0016】
軒樋10の流路断面積とは、軒樋10の長手方向(第1方向X)に沿って見たときの、軒樋10内で雨水が流れ得る断面積のことを意味する。ここで、第2側壁13の上端を通り水平面に沿う基準線L1を規定する。軒樋10内で雨水が基準線L1を上方に超えて流れると、第2側壁13から外側に溢れる。流路断面積Sは、底壁11、第1側壁12、第2側壁13、及び基準線L1により囲われる面積のことを意味する。
流路断面積Sは、11000mm2以上である。流路断面積Sは、29000mm2以上であることが好ましく、40000mm2以上であることがより好ましい。
【0017】
軒樋10は、建築物200に、図示しない固定具により固定されている。軒樋10の底壁11は、水平面に対して適宜水勾配を有するように配置されていることが好ましい。 なお、軒樋は、第1側壁の上端の上下方向Zの位置と、第2側壁の上端の上下方向Zの位置とが互いに等しい、いわゆる平行樋等であってもよい。軒樋が平行樋である場合、流路断面積Sは、底壁、第1側壁、第2側壁、及び各側壁の上端を通り水平面に沿う基準線により囲われる面積のことを意味する。
【0018】
貯水部20は、容器本体21と、蓋部22と、取付け具23と、を備えている。容器本体21は、筐体25と、筒体26と、を備えている。
図1から
図3に示すように、筐体25は、上方が開口する箱状に形成されている。なお、
図3では、筐体25の内部形状の一部を破線で示すとともに、蓋部22の形状を二点鎖線で示している。
図3に示すように、筐体25における開口周縁部には、段部25aが形成されている。
【0019】
筐体25の容量は、サイフォン現象を発生させるために0.3L(リットル)超とされ、0.4L以上が好ましい。筐体25の容量は、0.6L以上がより好ましく、0.8L以上がさらに好ましく、1.0L以上が最も好ましい。また、筐体25の容量が10Lを超えると筐体25の支持が困難となり、風圧により破損しやすくなる。このため、筐体25の容量は10L未満であることが好ましい。筐体25の収まりや施工性を考慮して、筐体25の容量は8.0L以下であることがより好ましく、6.0L以下がさらに好ましい。
【0020】
図1から
図3に示すように、筒体26は、円筒状に形成され、筒体26の中心軸が上下方向Zに沿うように配置されている。筒体26の上端部は、筐体25の下面に接合されている。筒体26の内部空間は、筐体25の内部空間に接続されている。
図1に示すように、筒体26の内径は、L7である。
筒体26の中心軸は、軒樋10の底壁11に設けた開口部11bの中心軸、すなわち蓋部22の筒体30の中心軸と同じでも(同一軸線上に配置されても)よいが、ずれていてもよい。
筒体26の中心軸を開口部11bの中心軸からずらす場合、筒体26の中心軸は筐体25の背面(軒樋10の第2側壁13と同じ方向の面)25c側(第2方向Yの第2側)に寄っていることが好ましく、筒体26と筐体25の背面25cとは連続していることが好ましい。この場合、筒体26の中心軸と竪樋65の中心軸が近くなるため、呼び樋50を短くすることができる。
【0021】
図1、
図3、及び
図4に示すように、蓋部22は、平板29と、筒体30と、を備えている。
図4に示すように、平板29には、平板29を貫通する開口部29aが形成されている。開口部29aは、平面視で円形を呈している。開口部29aの径は、略L6である。
図1、
図3、及び
図4に示すように、筒体30は、円筒状に形成されている。筒体30は、平板29における開口部29aの周縁部から下方に向かって突出している。筒体30の内周面には、雌ネジ30aが形成されている(
図4参照)。
蓋部22の平板29は、容器本体21の段部25aと嵌め合った状態で容器本体21に固定されている。
【0022】
図1及び
図5に示すように、取付け具23は、固定部33と、鍔部34と、水抜け筒35と、落ち葉止め部36と、を備えている。
固定部33は、円筒状に形成されている。固定部33の外周面には、筒体30の雌ネジ30aに嵌め合う雄ネジ33aが形成されている(
図5参照)。
鍔部34は、リング状に形成されている。鍔部34は、固定部33の軸方向の端部から固定部33の径方向外側に向かって突出している。鍔部34の外径は、固定部33の外径よりも大きい。
水抜け筒35は、固定部33の軸線上であって、固定部33よりも上方に配置されている。水抜け筒35の上部は受口とされ、軒樋10よりも上部にある排水設備の排水管を接続可能とされている。
落ち葉止め部36は、取付け具23に複数備えられている。複数の落ち葉止め部36は、固定部33の軸線周りに互いに間隔を空けて配置されている。複数の落ち葉止め部36は、固定部33及び水抜け筒35にそれぞれ接続されている。落ち葉止め部36は、取付け具23の把持部として機能する。
【0023】
蓋部22及び取付け具23が、軒樋10における開口部11bの周縁部を上下方向Zに挟むことで、軒樋10における開口部11bの周縁部に貯水部20が接続されている。 ここで、
図1に示すように、筐体25において、蓋部22の筒体30の下端に上下方向Zで対応する部分を、筐体大径部25bと言う。貯水部20では、筐体大径部25bにおいて流路面積が最も大きくなる。筐体大径部25bにおける第2方向Yの幅は、幅L8である。筐体大径部25bから下方に向かうに従い、流路面積が小さくなる。
筐体25の前面25dは、水平面に対して傾斜している。前面25dの傾斜角度は、軒樋10の底壁11に対する第1側壁12の傾斜角度と同じ又は第1側壁12の傾斜角度より大きいことが好ましい。
なお、筐体25の前面25dは、水平面に対して傾斜していなくてもよい。
【0024】
なお、本実施形態では、筐体大径部25bの幅L8は、開口部11bの径L6よりも大きい。筒体26の内径L7は、開口部11bの径L6よりも小さい。筒体26の内径L7は、竪樋65の内径よりも大きい。例えば、竪樋65として内径が77mmの管を使用した場合、筒体26の内径L7は77mm超とされる。この場合、筒体26の内径L7は85mm以上が好ましく、95mm以上がより好ましく、110mm以上が最も好ましい。軒樋10の開口部11bの径L6は、竪樋65の内径よりも大きく、かつ、筒体26の内径よりも大きくされる。開口部11bの径L6は90mm以上が好ましく、100mm以上がより好ましく、115mm以上が最も好ましい。
本実施形態で言う貯水部20とは、軒樋10の開口部11bの面積が呼び樋50の流路断面積よりも大きいときの、開口部11bと呼び樋50とにそれぞれ接続された、雨水を収容する容器のことを意味する。
【0025】
図1及び
図6に示すように、第1接続継手40は、曲管部41と、第1接続部42と、第2接続部43と、を備えている。なお、
図6は、第1接続継手40の軸線を含む断面図である。
図6に示すように、本実施形態では、曲管部41の中心角度θ1は、約45°である。 第1接続部42は、受け口である。第1接続部42の内径は、曲管部41の内径よりも大きい。曲管部41と第1接続部42との接続部分には、第1接続部42から径方向内側に突出して曲管部41に達する第1段部44が形成されている。
第2接続部43は、差し口である。第2接続部43の内径は、曲管部41の内径よりも小さい。曲管部41と第2接続部43との接続部分には、曲管部41から径方向内側に突出して第2接続部43に達する第2段部45が形成されている。
なお、第2接続部43は第1接続部42と同形状の受け口であってもよい。
さらに、第2接続部43が差し口の場合、第2接続部43の管軸方向の長さは、第2接続継手55の曲管部56まで挿入可能な長さであってもよい。
【0026】
第1接続継手40の軸線を含む断面おいて、曲管部41の内周側の内壁面41aの曲率半径は、64mmよりも大きくかつ125mmよりも小さい。この断面おいて、曲管部41の内周側の外壁面41bの曲率半径は、64mmよりも大きくかつ125mmよりも小さいことが好ましい。
図1に示すように、第1接続継手40の第1接続部42は、貯水部20の筒体26に外挿されている。すなわち、第1接続継手40の第1接続部42内に貯水部20の筒体26が挿入されている。第1接続部42と筒体26とは、図示しない封止部材等により水密に保持されている。
なお、第1接続継手において、第1接続部は差し口であってもよい。このように、第1接続継手において、第1接続部又は第2接続部は差し口であってもよい。
【0027】
図1に示すように、呼び樋50は直管状に形成されている。呼び樋50は貯水部20における雨水が流れる下流側に接続されている。前記軒樋10の開口部11bの面積は、呼び樋50の流路断面積よりも大きい。呼び樋50の内径をD、円周率をπとしたとき、呼び樋50の流路断面積は(πD
2/4)の値をとる。呼び樋50の長さは、2000mm以下であることが好ましく、1000mm以下がより好ましく、500mm以下がさらに好ましい。ここで言う呼び樋50の長さは、呼び樋50における第1接続継手40及び第2接続継手55から突出している部分の長さのことを意味する。さらに、雨樋システム1が呼び樋50を備えず、第1接続継手40と第2接続継手55とが直接接続されていてもよい。
呼び樋50の第1端部は、第1接続継手40の第2接続部43に外挿されている。すなわち、呼び樋50の第1端部内に第1接続継手40の第2接続部43が挿入されている。第2接続部43と呼び樋50とは、水密に保持されている。
第1接続継手40は、貯水部20と呼び樋50とを接続している。
【0028】
図1及び
図7に示すように、第2接続継手55は、曲管部56と、第1接続部(接続部)57と、第2接続部(接続部)58と、を備えている。なお、
図7は、第2接続継手55の軸線を含む断面図である。
図7に示すように、本実施形態では、曲管部56の中心角度θ3は、約45°である。 第1接続部57は、受け口である。第1接続部57の内径は、曲管部56の内径よりも大きい。曲管部56と第1接続部57との接続部分には、第1接続部57から径方向内側に突出して曲管部56に達する第1段部59が形成されている。
【0029】
第2接続部58は、受け口である。第2接続部58の内径は、曲管部56の内径よりも大きい。曲管部56と第2接続部58との接続部分には、第2接続部58から径方向内側に突出して曲管部56に達する第2段部60が形成されている。
すなわち、第1接続部57及び第2接続部58は、第2接続継手55の両端に設けられている。第1接続部57の軸線O1と第2接続部58の軸線O2のなす角度θ4は、約45°(45°)である。ここで言う軸線O1と軸線O2とのなす角度θ4は、両軸線O1,O2のなす角度のうち、鋭角の方の角度を意味する。
この角度θ4は、45°以下であることが好ましい。なお、この角度θ4の下限は、例えば1°である。
【0030】
第2接続継手55の軸線を含む断面おいて、曲管部56の内周側の内壁面56aの曲率半径は、64mmよりも大きくかつ125mmよりも小さい。この断面おいて、曲管部56の内周側の外壁面56bの曲率半径は、64mmよりも大きくかつ125mmよりも小さいことが好ましい。
なお、第2接続継手において、第1接続部又は第2接続部は差し口であってもよい。
【0031】
図1に示すように、竪樋65は直管状に形成されている。竪樋65は、上下方向Zに沿って延びている。竪樋65の内径は、65mm以上(竪樋65の呼び径は65mm以上)である。竪樋65の内径は、75mm以上であることが好ましい。
竪樋65の上端部は、第2接続継手55の第2接続部58内に挿入されている。第2接続部58と竪樋65とは、水密に保持されている。第2接続継手55は、呼び樋50と竪樋65とを接続している。
呼び樋50の軸線O3と竪樋65の軸線O4とのなす角度θ5は、80°以下である。ここで言う両軸線O3,O4のなす角度θ5とは、両軸線O3,O4のなす角度のうち鋭角の方の角度を意味する。
この角度θ5は、60°以下であることが好ましい。この角度θ5は、45°以下であることがより好ましく、30°以下であることが最も好ましい。なお、この角度θ5の下限は、例えば1°である。
【0032】
例えば、貯水部20、第1接続継手40、呼び樋50、第2接続継手55、及び竪樋65は、塩化ビニル等の樹脂を押出し成形、射出成形することで形成されている。
【0033】
竪樋65の下端部は、地面Gに接続されている。竪樋65の下端部は、地中に埋設された公知の集水マス(排水機構)205に接続されている。集水マス205は、連結管206を介して下水管等の排水構造207に接続されている。
【0034】
本実施形態の雨樋システム1によれば、建築物200の屋根201に降った雨水は、軒樋10に流れ込む。軒樋10の流路断面積Sが11000mm2以上であり、竪樋65の内径は65mm以上である。このため、雨樋システム1を、物流倉庫等に用いられる大型の雨樋システムとして用いることができる。開口部11bの面積が呼び樋50の流路断面積よりも大きいため、呼び樋50を通して貯水部20から流れ出る雨水の流量よりも、開口部11bを通して貯水部20に流れ込む雨水の流量が多くなる。このため、雨水は貯水部20内に溜まりやすい。貯水部20内に雨水が溜まると、貯水部20よりも下流側に配置された呼び樋50、第2接続継手55、及び竪樋65は満水状態になる。すると、貯水部20内の雨水が呼び樋50、第2接続継手55、及び竪樋65内の雨水に引っ張られてサイフォン現象が発生し、雨樋システム1内の雨水が下流側に勢い良く流れる。
この際に呼び樋50の軸線O3と竪樋65の軸線O4とのなす角度θ5は80°以下であるため、例えばこのなす角度が約90°であるいわゆる直角エルボに比べて、雨水が呼び樋50から竪樋65に流れ込む際の雨水の流路の変化が小さくなる。その結果、発生したサイフォン現象が遮断され難くなる。従って、貯水部20を備える大型の雨樋システム1であっても、発生したサイフォン現象を安定して伝達することができる。
【0035】
なお、雨水が軒樋10から貯水部20に流れ込む際に、雨水中の落ち葉等の異物は、落ち葉止め部36に係止される。雨樋システム1から排水された雨水は、集水マス205及び連結管206を介して、排水構造207に流れ込む。
【0036】
第2接続継手55において、曲管部56の内周側の内壁面56aの曲率半径は、64mmよりも大きくかつ125mmよりも小さい。第2接続継手55の第1接続部57から第2接続継手55内に流れ込んだ雨水は、第2接続継手55の内周側の内壁面56aで滞らず、内壁面56aで雨水の流速が低下し難い。このため、第2接続継手55内に流れ込んだ雨水を第2接続継手55の第2接続部58に向かって円滑に流すことができる。
第1接続部57の軸線O1と第2接続部58の軸線O2とのなす角度θ4は、45°以下である。第1接続部57から第2接続継手55内に流れ込んだ雨水は、第2接続継手55内で滞らず、第2接続継手55内で雨水の流速が低下し難い。このため、第2接続継手55内に流れ込んだ雨水を第2接続継手55の第2接続部58に向かって円滑に流すことができる。
【0037】
(実施例)
以下では、本発明の実施例及び比較例を具体的に示してより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例では、軒樋10の流路断面積Sは11000mm2以上とし、呼び樋50及び竪樋65の呼び径は75(竪樋65の内径は78mm又は84mm)としている。
表1に示す仕様のように、筐体25の容量、呼び樋50の軸線O3と竪樋65の軸線O4とのなす角度θ5、呼び樋50の長さを決めた。軒樋10に、流量5L/sec(リットル毎秒)の水を流した。そして、落し口部(開口部11b)の開口中心から軒樋10の延長方向で150mmの位置で、軒樋10内の最大水位を測定した。
【0038】
【0039】
実施例1から実施例9では、雨樋システムで発生したサイフォン現象を安定して伝達することができたため、軒樋10内の最大水位は20mm~70mmであった。
一方で、比較例1では、角度θ5が88°であったため、雨樋システムで発生したサイフォン現象を安定して伝達することができなかった。この場合、軒樋10内の最大水位は100mmであった。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。
例えば、前記実施形態では、
図8に示すように雨樋システム2を構成してもよい。雨樋システム2は、本実施形態の雨樋システム1の貯水部20に代えて、貯水部70を備えている。
【0041】
貯水部70は、本実施形態の貯水部20の容器本体21に代えて容器本体71を備えている。容器本体71が備える連結部72の第1端部72aの軸線は、略上下方向Zに沿っている。第1端部72aは、筐体25の下面に接合されている。
連結部72における第1端部72aとは反対の第2端部72bは、円筒状に形成されている。第2端部72bの軸線は、第2方向Yに沿っている。第2端部72bは、第1接続継手40の第1接続部42内に挿入されている。
すなわち、連結部72において、第1端部72aから第2端部72bに向かって流れる雨水では、流れの向きが下方から第2方向Yの第2側に変わる。
以上のように構成された変形例の雨樋システム2によっても、雨樋システム1と同様の効果を奏することができる。
【0042】
また、前記実施形態では、第2接続継手55の軸線を含む断面おいて、第2接続継手55の内壁面の曲率半径は、64mm以下でもよいし、125mm以上でもよい。第2接続継手の角度θ4は、45°を超えてもよい。
【0043】
また、筐体25は板状の前面、背面、及び側面から構成されていたが、そのいずれかが曲面で構成されていてもよい。筐体全体が曲面で構成され、円筒状であってもよい。筐体が曲面を有することで、筐体が風による圧力を受けにくくなる。従って、筐体を破損しにくくすることができる。
【符号の説明】
【0044】
1,2 雨樋システム
10 軒樋
11b 開口部
20,70 貯水部
50 呼び樋
55 第2接続継手(接続継手)
56a 内壁面
57 第1接続部(接続部)
58 第2接続部(接続部)
65 竪樋
O1,O2,O3,O4 軸線
S 流路断面積
θ4,θ5 角度