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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087075
(43)【公開日】2024-06-28
(54)【発明の名称】継手
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/12 20060101AFI20240621BHJP
【FI】
E03C1/12 E
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024073983
(22)【出願日】2024-04-30
(62)【分割の表示】P 2020061371の分割
【原出願日】2020-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2019067425
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】川▲高▼ 俊基
(72)【発明者】
【氏名】渕上 斉太
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 総
(72)【発明者】
【氏名】木村 英治
(57)【要約】
【課題】本発明は、落下物に対する耐衝撃性に優れた継手の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の継手は、内部に立管が配置される第1受け口部と、内部に横管が装着される第2受け口部と、曲り管部とを備える樹脂製の成型体からなる継手であって、第1受け口部をその外側からその軸方向に沿って見た平面視状態において、曲り管部のうち、曲り管部の第1受け口部側の開口部が投影される部分を投影部分とし、投影部分のうち、平面視状態において第1受け口部の中心軸線に対して第2受け口部側を受圧部分とし、ウエルドラインが、受圧部分に形成されておらずに受圧部分以外の部分に形成され、第1受け口部と第2受け口部と曲り管部を第1受け口部の中心軸線と第2受け口部の中心軸線の両方に対し直交する方向から見た側面視状態において、ゲート痕が、受圧部分に形成されておらずに第1受け口部の中心軸線に対して受圧部分側と反対側に形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に立管が配置される第1受け口部と、内部に横管が装着される第2受け口部と、前記第1受け口部および前記第2受け口部を接続する曲り管部と、を備える樹脂製の成型体からなる継手であって、
前記第1受け口部をその外側からその軸方向に沿って見た平面視状態において、前記曲り管部のうち、前記曲り管部の第1受け口部側の開口部が投影される部分を投影部分とし、前記投影部分のうち、前記平面視状態において前記第1受け口部の中心軸線に対して前記第2受け口部側を受圧部分とした状態において、
ウエルドラインが、前記受圧部分に形成されておらずに前記受圧部分以外の部分に形成され、
前記第1受け口部と前記第2受け口部と前記曲り管部を前記第1受け口部の中心軸線と前記第2受け口部の中心軸線の両方に対し直交する方向から見た側面視状態において、ゲート痕が、前記受圧部分に形成されておらずに前記第1受け口部の中心軸線に対して前記受圧部分側と反対側に形成されていることを特徴とする継手。
【請求項2】
前記ゲート痕が、前記第2受け口部の中心軸線よりも上方に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の継手。
【請求項3】
内部に立管が配置される第1受け口部と、内部に横管が装着される第2受け口部と、前記第1受け口部および前記第2受け口部を接続する曲り管部と、を備える樹脂製の成型体からなる継手であって、
前記第1受け口部をその外側からその軸方向に沿って見た平面視状態において、前記曲り管部のうち、前記曲り管部の第1受け口部側の開口部が投影される部分を投影部分とし、前記投影部分のうち、前記平面視状態において前記第1受け口部の中心軸線に対して前記第2受け口部側を受圧部分とした状態において、
ウエルドラインが、前記受圧部分に形成されておらずに前記受圧部分以外の部分に形成され、
前記第1受け口部と前記第2受け口部と前記曲り管部を前記第1受け口部の中心軸線と前記第2受け口部の中心軸線の両方に対し直交する方向から見た側面視状態において、前記投影部分の前記第2受け口部側の境界に位置し、前記第1受け口部の中心軸線と平行な区画線を規定した場合、
ゲート痕が、前記受圧部分に形成されておらずに前記第1受け口部の中心軸線と前記区画線で挟まれた領域に形成されていることを特徴とする継手。
【請求項4】
前記ゲート痕が、前記受圧部分に形成されておらずに前記第1受け口部の中心軸線と前記区画線で挟まれた領域であって前記受圧部分より上方に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の継手。
【請求項5】
前記ゲート痕が、前記第2受け口部の中心軸線よりも上方に形成されたことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の継手。
【請求項6】
内部に立管が配置される第1受け口部と、内部に横管が装着される第2受け口部と、前記第1受け口部および前記第2受け口部を接続する曲り管部と、を備える樹脂製の成型体からなる継手であって、
前記第1受け口部をその外側からその軸方向に沿って見た平面視状態において、前記曲り管部のうち、前記曲り管部の第1受け口部側の開口部が投影される部分を投影部分とし、前記投影部分のうち、前記平面視状態において前記第1受け口部の中心軸線に対して前記第2受け口部側を受圧部分とした状態において、
ウエルドラインが、前記受圧部分に形成されておらずに前記受圧部分以外の部分に形成され、
前記第1受け口部と前記第2受け口部と前記曲り管部を前記第1受け口部の中心軸線と前記第2受け口部の中心軸線の両方に対し直交する方向から見た側面視状態において、前記投影部分の前記第2受け口部側の境界に位置し、前記第1受け口部の中心軸線と平行な区画線を規定した場合、
ゲート痕が、前記受圧部分に形成されておらずに前記区画線より前記第2受け口部側に形成されていることを特徴とする継手。
【請求項7】
前記ゲート痕が、前記側面視状態において、前記区画線と前記第2受け口部との間の領域であって、前記第2受け口部の中心軸線より上側の領域を上下に2等分した領域の下側の領域と、前記第2受け口部の中心軸線より下側の領域に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の継手。
【請求項8】
前記ウエルドラインが、前記曲り管部の背面上部側に形成されたことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の継手。
【請求項9】
前記ウエルドラインが、前記曲り管部の背面上部側に連続する前記第1受け口部の上面側と、前記曲り管部の背面上部側に連続する前記第2受け口部の上面側にかけて連続するように形成されたことを特徴とする請求項8に記載の継手。
【請求項10】
前記第1受け口部と前記曲り管部の間に第1管部が形成され、前記曲り管部と前記第2受け口部との間に第2管部が形成されるとともに、前記第2管部が前記第1管部より長く形成され、前記第2管部の内底面側に水平部が形成されたことを特徴とする請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の継手。
【請求項11】
前記曲り管部の底部下面側に下方に突出する支持脚が形成されたことを特徴とする請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の継手。
【請求項12】
前記支持脚の下端面が前記横管の下面と面一位置に形成されたことを特徴とする請求項11に記載の継手。
【請求項13】
前記支持脚の外周に補強リブが形成されたことを特徴とする請求項11または請求項12に記載の継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立管と横管を接続する継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、以下の特許文献1に記載されたような、立管と横管を接続する継手が知られている。
特許文献1に記載された継手は、上部接続口と下部接続口を有するL字型の曲り管からなり、コンクリートスラブの下方に吊り下げボルトにより吊り下げ支持されている。
この継手においては、前記曲り管の曲り部下端に支持凸部を設け、この支持凸部をコンクリートスラブに吊り下げた支持板に防振部材を介し乗せ掛けた構成が採用されている。立管と横管を接続した継手の場合、立管を介し落下する排水等の衝撃を受けるので、上述の構造により、衝撃や振動を吸収できる支持構造を提供できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-270219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の継手の中でも脚部継手は、流下する排水の最下部に位置しており、排水や落下物による衝撃に対し、鋳鉄製などの耐衝撃強度を有する材質、または、耐衝撃性能の高い樹脂などからなることが一般的である。特に脚部継手の内底面部には、排水あるいは落下物が直に衝突するため、耐衝撃特性が必要な箇所と考えられる。
衝撃強度を高めるための樹脂材料には、アクリルゴムをクラフト共重合した、あるいは混合した塩化ビニル樹脂などを用いることができる。
【0005】
ところで、この種の継手を樹脂の一体成型品から構成することがある。樹脂により継手を一体成型するには、金型を使用し、金型に形成した成型キャビティに溶融状態の樹脂を注入することで成型品を得ることができる。
この成型品を得る場合、ゲートから成型キャビティに溶融樹脂を注入するので、成型キャビティに沿って分流した溶融樹脂どうしが合流する箇所にウエルドラインと呼称される樹脂の融着部が生成する。また、金型のゲートは溶融樹脂を注入する部分であるから、成型品のゲート対応部分にはゲート痕が生じる。
【0006】
上述の立管と横管を接続する継手にあっては、立管から曲り管に至る部分に落下物による衝撃を受けるおそれがあり、この部分に仮にウエルドラインやゲート痕が存在すると、ウエルドラインやゲート痕の状態によっては継手の耐久性などに悪影響を及ぼすおそれがある。
また、射出成型品としての継手を考慮すると、樹脂の充填バランスを均一にしなければ、一部に歪みを生じ、衝撃強度及び剛性が低下するなどの課題があった。
【0007】
本発明は、前述した事情に鑑み、樹脂の成型体からなり、ウエルドラインを有する継手において、立管からの落下物に起因する衝撃を受けても耐久性に問題を生じない継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は以下の形態を提案している。
「1」本形態に係る継手は、内部に立管が配置される第1受け口部と、内部に横管が装着される第2受け口部と、前記第1受け口部および前記第2受け口部を接続する曲り管部と、を備える樹脂製の成型体からなる継手であって、前記第1受け口部をその外側からその軸方向に沿って見た平面視状態において、前記曲り管部のうち、前記曲り管部の第1受け口部側の開口部が投影される部分を投影部分とし、前記投影部分のうち、前記平面視状態において前記第1受け口部の中心軸線に対して前記第2受け口部側を受圧部分とした状態において、ウエルドラインが、前記受圧部分に形成されておらずに前記受圧部分以外の部分に形成され、前記第1受け口部と前記第2受け口部と前記曲り管部を前記第1受け口部の中心軸線と前記第2受け口部の中心軸線の両方に対し直交する方向から見た側面視状態において、ゲート痕が、前記受圧部分に形成されておらずに前記第1受け口部の中心軸線に対して前記受圧部分側と反対側に形成されていることを特徴とする。
【0009】
立管からの排水や落下物が第1受け口部から曲り管部に落下した場合、第1受け口部の開口部下方の投影部分において受圧部分に主に大きな衝撃が作用する。よって、この受圧部分にゲート痕やウエルドラインが存在すると、繰り返しの衝撃により経時的にゲート痕とウエルドラインの部分の耐久性に問題を生じるおそれがある。
本形態の継手は、受圧部分にゲート痕とウエルドラインが存在せず、受圧部分以外の部分にゲート痕とウエルドラインが形成されている。この結果、ゲート痕とウエルドラインを落下物による衝撃を受け難い位置に設けたこととなるので、落下物の衝撃を受けても耐久性に問題を生じない継手を提供できる。
【0010】
「2」本形態に係る継手において、前記ゲート痕が、前記第2受け口部の中心軸線よりも上方に形成された構成を採用できる。
【0011】
第1受け口部の中心軸線に対して前記受圧部分側と反対側であって、第2受け口部の中心軸線よりも上方にゲート痕が設けられていると、ウエルドラインが曲り管部の背面上部側、あるいは、背面上部側に近い領域に形成される。曲り管部の背面上部側は、落下物により衝撃を受ける曲り管部の底面側から離間した位置であるため、落下物に対する耐衝撃性を十分に高めた継手を提供できる。
【0012】
「3」本形態に係る継手は、内部に立管が配置される第1受け口部と、内部に横管が装着される第2受け口部と、前記第1受け口部および前記第2受け口部を接続する曲り管部と、を備える樹脂製の成型体からなる継手であって、前記第1受け口部をその外側からその軸方向に沿って見た平面視状態において、前記曲り管部のうち、前記曲り管部の第1受け口部側の開口部が投影される部分を投影部分とし、前記投影部分のうち、前記平面視状態において前記第1受け口部の中心軸線に対して前記第2受け口部側を受圧部分とした状態において、ウエルドラインが、前記受圧部分に形成されておらずに前記受圧部分以外の部分に形成され、前記第1受け口部と前記第2受け口部と前記曲り管部を前記第1受け口部の中心軸線と前記第2受け口部の中心軸線の両方に対し直交する方向から見た側面視状態において、前記投影部分の前記第2受け口部側の境界に位置し、前記第1受け口部の中心軸線と平行な区画線を規定した場合、ゲート痕が、前記受圧部分に形成されておらずに前記第1受け口部の中心軸線と前記区画線で挟まれた領域に形成されていることを特徴とする。
【0013】
本形態の継手は、受圧部分にゲート痕とウエルドラインが存在せず、第1受け口部の中心軸線と区画線で挟まれた領域、即ち、受圧部分以外の部分であって曲り管部の側面側にゲート痕とウエルドラインが形成されている。この結果、ゲート痕とウエルドラインを落下物による衝撃を受け難い位置に設けたこととなるので、落下物の衝撃を受けても耐久性に問題を生じない継手を提供できる。
【0014】
「4」本形態に係る継手において、前記ゲート痕が、前記受圧部分に形成されておらずに前記第1受け口部の中心軸線と前記区画線で挟まれた領域であって前記受圧部分より上方に形成されている構成を採用できる。
【0015】
ゲート痕が第1受け口部の中心軸線と区画線で挟まれた領域であって受圧部分より上方に、即ち、曲り管部の側面側に形成されている場合、ウエルドラインが曲り管部の反対側の側面に形成されるが、この位置は受圧部分を除いた部分に相当する。このため、落下物により衝撃を受ける曲り管部の底面側から離間した領域にウエルドラインを設けたこととなるため、落下物が曲り管部内底面に衝突してもウエルドラインの部分に対する影響は少ない。このため、耐衝撃性を十分に高めた継手を提供できる。
【0016】
「5」本形態に係る継手において、前記ゲート痕が、前記第2受け口部の中心軸線よりも上方に形成された構成を採用できる。
【0017】
本形態の継手は、曲り管部の側面にゲート痕を設けたこととなり、成型時に曲り管部に生じるウエルドラインを曲り管部の他方の側面に形成できる。この結果、落下物による衝撃を受け難い位置にウエルドラインを設けることができ、ゲート痕も衝撃を直に受けない位置にあるため、落下物の衝撃を受けても耐久性に問題を生じない継手を提供できる。
【0018】
「6」本形態に係る継手は、内部に立管が配置される第1受け口部と、内部に横管が装着される第2受け口部と、前記第1受け口部および前記第2受け口部を接続する曲り管部と、を備える樹脂製の成型体からなる継手であって、前記第1受け口部をその外側からその軸方向に沿って見た平面視状態において、前記曲り管部のうち、前記曲り管部の第1受け口部側の開口部が投影される部分を投影部分とし、前記投影部分のうち、前記平面視状態において前記第1受け口部の中心軸線に対して前記第2受け口部側を受圧部分とした状態において、ウエルドラインが、前記受圧部分に形成されておらずに前記受圧部分以外の部分に形成され、前記第1受け口部と前記第2受け口部と前記曲り管部を前記第1受け口部の中心軸線と前記第2受け口部の中心軸線の両方に対し直交する方向から見た側面視状態において、前記投影部分の前記第2受け口部側の境界を区画線で表示した場合、ゲート痕が、前記受圧部分に形成されておらずに前記区画線より前記第2受け口部側に形成されていることを特徴とする。
【0019】
受圧部分を除き、区画線より第2受け口部側にゲート痕が形成されると、落下物による衝撃を受け難い位置にウエルドラインを設けることができ、落下物の衝撃を受けても耐久性に問題を生じない継手を提供できる。
【0020】
「7」本形態に係る継手において、前記ゲート痕が、前記側面視状態において、前記区画線と前記第2受け口部との間の領域であって、前記第2受け口部の中心軸線より上側の領域を上下に2等分した領域の下側の領域と、前記第2受け口部の中心軸線より下側の領域に形成されている構成を採用できる。
【0021】
区画線と第2受け口部との間の領域であって、第2受け口部の中心軸線より上側の2等分領域の下側の領域と、中心軸線より下側の領域にゲート痕が形成されると、ウエルドラインが曲り管部の背面上部側に形成されるので、落下物による衝撃を受け難い位置にウエルドラインを設けることができ、落下物の衝撃を受けても耐久性に問題を生じない継手を提供できる。
【0022】
「8」本形態に係る継手は、前記ウエルドラインが、前記曲り管部の背面上部側に形成された構成を採用できる。
【0023】
ウエルドラインが曲り管部の背面上部側に形成されるので、落下物による衝撃を受け難い位置にウエルドラインを設けることができ、落下物の衝撃を受けても耐久性に問題を生じない継手を提供できる。
【0024】
「9」本形態に係る継手において、「8」に記載のウエルドラインが、前記曲り管部の背面上部に連続する前記第1受け口部の上面側と、前記曲り管部の背面上部に連続する前記第2受け口部の上面側に連続するように形成された構成を採用できる。
【0025】
ウエルドラインは曲り管部の背面上部側に加え、第1受け口部の上面側と第2受け口部の上面側にも形成されるが、落下物による衝撃を受け難い位置にウエルドラインを設けるので、落下物の衝撃を受けても耐久性に問題を生じない継手を提供できる。
【0026】
「10」本形態に係る継手において、前記第1受け口部と前記曲り管部の間に第1管部が形成され、前記曲り管部と前記第2受け口部との間に第2管部が形成されるとともに、前記第2管部が前記第1管部より長く形成され、前記第2管部の内底面側に水平部が形成された構成を採用できる。
【0027】
第1管部が第2管部より短く形成されるので、継手と第2管部を上下方向の狭い空間に収まりよく配置できようになる。また、第1管部が短く、第2管部が長いことで、曲り管部の内部においてしぶきの発生が抑制される結果、排水をスムーズに流すことができる。曲り管部の内部においてしぶきが発生すると、排水が跳ねてジャンプする現象が起こり、排水の流れが円滑ではなくなる。
【0028】
「11」本形態に係る継手において、前記曲り管部の底部下面側に下方に突出する支持脚が形成された構成を採用できる。
【0029】
支持脚を有することで継手を設置現場や床面に設置する場合に継手を安定的に設置できるようになる。
【0030】
「12」本形態に係る継手において、前記支持脚の下端面が前記横管の下面と面一位置に形成された構成を採用できる。
【0031】
支持脚の下端面と横管の下端面を面一位置に形成することで、継手を現場や床面に設置する場合、支持脚下端と横管下端部を現場水平面や床面に水平に安定に設置できるようになる。
【0032】
「13」本形態に係る継手において、前記支持脚の外周に補強リブが形成された構成を採用できる。
【0033】
補強リブの存在により、支持脚の強度が向上し、継手を支持した構造の安定性が向上する。
【発明の効果】
【0034】
本形態の継手によれば、受圧部分にゲート痕とウエルドラインが存在せず、受圧部分以外の部分にゲート痕とウエルドラインが形成されている。この結果、ゲート痕とウエルドラインを落下物による衝撃を受け難い位置に設けたこととなるので、落下物の衝撃を受けても耐久性に問題を生じない継手を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明に係る第1実施形態の継手を備えた排水システムの上下方向に沿う断面図であって、立管及び横管を側面視した図である。
図2図1に示す継手の側面図である。
図3図1に示す継手を図2の反対側から見た側面図である。
図4図1に示す継手の縦断面図である。
図5図1に示す継手と曲り管部を曲り管部の外周側から見た前面図である。
図6図1に示す継手の平面図である。
図7図1に示す継手の背面図である。
図8図1に示す継手における吊り下げ状態の一例を示す側面図である。
図9図1に示す継手を成型する場合、第1の位置に設けたゲートから樹脂を注入した初期状態の一例を示す説明図である。
図10図1に示す継手を成型する場合、第1の位置に設けたゲートから樹脂を途中まで注入した状態の一例を示す説明図である。
図11図9図10に示す樹脂注入手順により製造した継手の残留応力を示す説明図である。
図12図1に示す継手を成型する場合、第2の位置に設けたゲートから樹脂を注入した初期状態の他の例を示す説明図である。
図13図1に示す継手を成型する場合、第2の位置に設けたゲートから樹脂を途中まで注入した状態の他の例を示す説明図である。
図14図12図13に示す樹脂注入手順により製造した継手の残留応力を示す説明図である。
図15図1に示す継手の曲り管部に掃除窓が設けられている他の一例を示す側面図である。
図16図15に示す継手の背面図である。
図17図15に示す継手の変形例における吊り下げ状態の一例を示す側面図である。
図18図17に示す継手の背面図である。
図19図1に示す継手に複数のウエルドラインを設けた場合の第一の例を示す側面図である。
図20図19に示す継手の背面図である。
図21図1に示す継手に複数のウエルドラインを設けた場合の第二の例を示す側面図である。
図22図21に示す継手の背面図である。
図23図1に示す継手に複数のウエルドラインを設けた場合の第三の例を示す側面図である。
図24図23に示す継手の背面図である。
図25図1に示す継手に複数のウエルドラインを設けた場合の第四の例を示す側面図である。
図26図25に示す継手の背面図である。
図27】ゲート位置が本発明範囲外である継手に複数のウエルドラインを設けた場合の一例を示す側面図である。
図28図27に示す継手の背面図である。
図29】ウエルドラインが本発明範囲外である継手に複数のウエルドラインを設けた場合の例を示す側面図である。
図30図29に示す継手の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図1図6を参照し、本発明の一実施形態に係る継手を排水システムに適用した場合の一例について説明する。
図1に示すように、本実施形態の排水システム10は、高層マンションや商業ビル等の多層階建物(建物)に適用された一例である。この種の建物においては、各階の便器、化粧台、流し台等の衛生機器(排水設備)から排出される排水が、排水路の立主管20に図示略の横枝管を介し流入される。
立主管20は、各階層(床スラブS)を通過するように設けられている。排水は、立主管20に沿って多層階建物の最下階まで流下し、立主管20の下端に接続された継手(脚部継手)50を介して横管30に流れ込み、最終的に下水本管や浄化槽等に送られる。排水システム10は、各階の排水設備からの排水を建物の外部に排出する。
【0037】
排水システム10は、立主管20と横管(横主管)30と継手構造40を備えている。 立主管20は、各階に設けられた排水設備からの排水を集合させて下方に導く。立主管20は、各階に対応して複数設けられた集合継手21と、上下方向の隣り合う階に配置された集合継手21を接続する図示略の第1配管を備えている。
複数の集合継手21のうち、図1に示すように、建物の最下階に設けられた最下階用の集合継手21に、枝管接続部22とスラブ貫通用の立管23が設けられている。
【0038】
枝管接続部22は、床スラブSよりも上方に配置されている。枝管接続部22には、図示しない横枝管が接続される。横枝管は、排水設備から排出された排水を枝管接続部22に導く。なお枝管接続部22の一部または全部は、透明であってもよい。この場合、横枝管から枝管接続部22に流入した排水を外部から視認することができる。
【0039】
スラブ貫通用の立管23は、枝管接続部22から下方に延在されている。立管23は、上下方向に延びる筒状に形成されている。立管23は、床スラブSを上下方向に貫通している。立管23の下端部は、床スラブSから下方に向けて突出されている。立管23の呼び径は、例えば、75~125程度である。
【0040】
床スラブSには上下方向に貫通孔8が形成され、この貫通孔8を挿通するように立管23が設けられ、貫通孔Sと立管23の間隙にグラスウール(GW)やロックウール(RW)からなる充填材9が充填されている。充填材9はモルタルなどの他の充填材であっても良い。
【0041】
なお、本実施形態において立管23は、熱膨張性を具備していてもよい。この場合、複数階のうち、1つの階で仮に火災が発生しても、立管23が膨張することで、立主管20の内部が閉塞される。これにより、火災が発生した階の上下の階に、立主管20の内部を通して炎が到達するのを抑制することができる。立管23は、例えば、鋳鉄などの金属や塩化ビニルなどの樹脂により管状に構成されているが、樹脂の場合には多層管により形成されていてもよく、この場合、塩化ビニル樹脂により形成された内層および外層と、塩化ビニル樹脂および熱膨張黒鉛を含む中間層と、を備える構成を採用することができる。
【0042】
横管30は、立主管20を流れた排水を水平方向に導いて敷地外に排出する。
図1に示す形態において、横主管30は、第2配管31と、掃除用継手32を備えている。第2配管31は、継手構造40に接続されている。第2配管31(横主管30)の呼び径は、例えば、100~150程度であってもよい。横管30の呼び径が、立主管20の呼び径よりも大きくてもよい。
掃除用継手32は、第2配管31を間に挟んで継手構造40の反対側に配置されている。掃除用継手32は、掃除口33が形成されている。掃除口33には、蓋体34が着脱自在に装着されている。なお、掃除用継手32の一部または全部は、透明であってもよい。この場合、第2配管31から掃除用継手32に流入した排水を外部から容易に視認することができる。
【0043】
図1に示すように継手(脚部継手)50は、立管23と横管30を接続している。
継手50は、内部に立管23が配置される円環状の第1受け口部51と、横管30が装着される円環状の第2受け口部52と、これら第1受け口部51と第2受け口部52とを接続する側面視L字型の曲り管部53と、を備えている。
第1受け口部51は、立管23が挿入される受け口である。第1受け口部51には、立管23の下端部が装着されている。第2受け口部52は、横管30が装着される受け口である。第2受け口部52内には、第2配管31の端部が嵌合されている。
例えば、第2受け口部52の内周面には、第2配管31の外周面が接着されている。
【0044】
図1に示すように、第2受け口部52は、第1受け口部51に対して水平方向のうちの一方向Dにずらされている。以下では、一方向Dに沿って第1受け口部51に対して第2受け口部52が位置する方向を第1方向側D1と表記することがあり、第1方向側D1の反対側を第2方向側D2と表記することがある。第1受け口部51の中心軸線(以下、第1中心軸線O1という)を上下方向に平行に配置したとき、第2受け口部52の中心軸線(以下、第2中心軸線O2という)には、第1方向側D1に向かうに従い下方に向かう排水勾配がつく。第1中心軸線O1と第2中心軸線O2とは互いに交差する。第1受け口部51の上端縁から両中心軸線O1、O2の交点Xまでの距離L1は、200mm以下であってもよい。
【0045】
曲り管部53は、第1受け口部51から、第1受け口部51の中心軸線方向(下方)に延びる第1管部54と、第2受け口部52から、第2受け口部52の中心軸線方向に延びる第2管部55と、第1管部54及び第2管部55を接続するL字型の接続部56と、を備えている。
第1管部54は、第1受け口部51よりも小径である。第1受け口部51と第1管部54とは、第1段部57を介し接続されている。図1の形態では第1管部54より第2管部55が長く形成されている。
【0046】
曲り管部56は、第1管部54と第2管部55を、前述のように両者が直結されている部分を除いて全周にわたって接続している。曲り管部56の底部下面側には、下方に向けて突出する筒状の支持脚59が形成されている。
図2以降に示すように支持脚59の周囲には周回りに90°間隔で4つの補強リブ59aが形成されている。これらの補強リブ59aは支持脚59の下端より若干上方位置から上方に向くように延在され、上方に向かうにつれて徐々に厚さが大きくなるような三角板からなり、それぞれ支持脚59に一体化されている。支持脚59の下端から曲り管部53の底面までの距離は、支持脚59の周方向位置によって異なるので、支持脚59の周回りに形成されている4つの補強リブ59aはそれぞれの形成位置に見合う長さに形成されている。
【0047】
支持脚59は、例えば、図1に図示しない支持金具等により支持される。
この実施形態では第1受け口部51の中心軸線O1が曲り管部56の外周底部を通過する位置に支持脚59が下方に向いて突出されている。支持脚59の下端には図1に示す継手50の取付状態において水平面となる下端面59bが形成されている。この下端面59bは図1に示すように第2の受け口部52の下端と同一高さに形成されているので、継手50を例えば単独で床面等の設置面に水平に設置することができる。
【0048】
継手50は、例えば、塩化ビニルなどの樹脂の成型体からなり、特に、耐衝撃性に優れた樹脂からなることが好ましい。
耐衝撃性に優れた樹脂は、例えば、塩化ビニル樹脂として、(1)ポリ塩化ビニル重合体に衝撃性改良樹脂を混合した樹脂、(2)ポリ塩化ビニル重合体と衝撃性改良樹脂をグラフト共重合した樹脂、(3)塩化ビニルモノマーと、この塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体、(4)塩化ビニル以外の(共)重合体に塩化ビニルをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられる。これら(1)~(4)は単独で使用されても良く、2種以上が併用されても良い。また、必要に応じて上記ポリ塩化ビニル系樹脂を塩素化しても良い。
【0049】
上記の(1)においてポリ塩化ビニル重合体に混合する衝撃性改良樹脂や、上記の(2)においてポリ塩化ビニル重合体とグラフト共重合する衝撃性改良樹脂としては、ゴム特性を有する樹脂が挙げられる。具体的には、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、メチルメタクリルレート-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリルゴム、塩素化ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体などが挙げられる。これらは単独で使用されても良く、2種以上が併用されても良い。
【0050】
上記のゴム特性を有する樹脂を混合又はグラフト共重合したポリ塩化ビニル系樹脂を用いることで、ポリ塩化ビニル系樹脂の耐衝撃性を向上させることができる。
継手50には立管20から落下する排水やその他の落下物が直接当たるため、継手50は破損の危険性を有している。耐衝撃性に優れた樹脂から継手50を形成することで、排水による衝撃を起因とする継手50の破損を防止することが好ましい。
【0051】
なお、継手50の一部または全部は、透明であってもよい。この場合、立管20から継手50に流入した排水を外部から視認することができる。
また、第1受け口部51の呼び径(内径、外径)が、横管30(第2配管31)の呼び径(内径、外径)よりも大きいことが好ましい。この場合、第1受け口部51内に装着される最大の呼び径の立主管20(立管23)を採用しても、横管30の排水能力を立主管20の排水能力と同等以上に確保することができる。その結果、排水システム10の全体での排水能力を維持することができる。
【0052】
上述したように継手50は、樹脂の成型体からなるが、継手50の耐衝撃性を更に向上させるため、継手50を成型するための金型のゲート位置とこのゲート位置に応じて成型品である継手50に形成されるゲート痕の位置とウエルドラインの位置を吟味する必要がある。
ゲート痕とウエルドラインの位置を規定する場合の基本として、まず、立管23を介して落下する落下物や排水が継手50に対し衝突して大きな衝撃を与える領域に、ゲート痕とウエルドラインを設けない必要がある。
【0053】
次に、本実施形態のような筒状の継手50において、金型の成型キャビティにゲートから樹脂を注入して成型する場合、成型キャビティを横断面視した場合に樹脂注入位置の横断面視反対側に樹脂が回り込み、この反対側にウエルドラインが生成される。よって、落下物や排水が継手50に対し衝突して大きな衝撃を与える領域に、前述のように生成されるウエルドラインが存在しない必要がある。
【0054】
本明細書では、図1に示すように第1受け口部51に立管23が接続され、第2受け口部52に横管30が接続されるので、継手50を側面視L字型に設置した場合に曲り管部56の外周側を継手50の前方側と表記し、曲り管部56の上面側であって、第1受け口部51と第2受け口部52が最近接する側を継手50の背面上部側と表記することができる。また、同様に、継手50を背面側から前方側に眺めた場合に曲り管部56の左右に存在する面を継手50の側面と表記できる。
図6に示すように継手50を平面視した場合、即ち、第1受け口部51をその上側(外側)からその中心軸方向に沿って見た平面視状態において、曲り管部53のうち、曲り管部53の第1受け口部側の開口部51aが投影される部分を投影部分Bとする。投影部分Bは、図6の平面視状態において開口部51aの内側に視認可能な部分であり、図4に示すように断面視した場合には符号Bで示す領域と表記できる。
【0055】
立管23を介して落下する落下物や排水は主に最初にこの投影部分Bに衝突する。しかし、平面視状態において第1受け口部51の中心軸線O1に対して第2受け口部側に位置する部分を受圧部分B1とすると、この受圧部分B1に対する衝撃が最も大きいと考えられる。また、投影部分Bであっても受圧部分B1を除く部分、例えば、図4図6の中心軸線O1よりも左側の部分は、曲り管部53の内面が水平面に対し大きな傾斜角度であるので、この部分に対し落下物や排水から受ける衝撃は受圧部分B1よりも小さいと考えられる。
以上の解釈から、本実施形態では、受圧部分B1にゲート痕もウエルドラインも設けない構成とすることが、耐衝撃性に優れた継手50を提供する上で基本と考える。
【0056】
受圧部分B1とは、図2に示す継手50の側面視状態と図4に示す継手の断面視状態では、第1中心軸線O1より右側(第2受け口部側)の領域であり、受圧部分B1の右端の位置は、第2直管55の左側端部の位置となる。なお、継手50の側面視状態とは、第1受け口部51の中心軸線O1と第2受け口部52の中心軸線O2の両方に対し直交する方向に沿って継手50を見た場合の状態と言及できる。なお、側面視状態において第2管部55の底面側は水平部とされている。
これら領域の境界を明示するために、図2図4に示すように投影部分Bの右端あるいは受圧部分B1の右端を含む位置を通過して第1中心軸線O1と平行な区画線L1を設定する。
【0057】
次に、図2に示すように曲り管部56と第1管部54と第2管部55を側面視した場合、第1中心軸O1と区画線L1と第2中心軸線O2によって、それぞれ区分される領域毎にゲート痕とウエルドラインが設けられる状態について検討する。
図2図4に示すように、継手50において、第1中心軸線O1より左側の領域であって、第1受け口部51よりも下方の領域を領域Eと設定する。継手50において、第1中心軸線O1と区画線L1とによって挟まれる領域であって、第1受け口部51よりも下方の領域を領域Fと設定する。次に、区画線L1から第2受け口部52までの領域であって、第2直管55を主体とする領域を領域Gと設定する。
【0058】
領域Eにおいては、全域にゲート痕を設けても良い。また、領域Eにおいてゲート痕を設ける場合のより好ましい領域は、支持脚59の周囲に設けた複数の補強リブ59aのうち、最上位置にある補強リブ59aの上端より上方側、更に望ましくは第2中心軸線O2より上方側の領域である。
また、領域Eにゲート痕を設ける場合のより好ましい領域の上限は、図2の側面視状態において第1中心軸線O1の近傍では第1受け口部51の直下の領域までであり、第1中心軸線O1から直交する方向に離れた側では第1直管54の下端位置までである。第1中心軸線O1の近傍とは、図2の側面視状態において、第1管部54の内径の1/5程度以上第1中心軸線O1から直交する方向に離れた側である。
領域Eにゲート痕を設ける場合のより好ましい範囲を図2に斜線を付した領域として示す。そして、この領域にゲート痕が設けられた場合の一例として、曲り管部53の外周上部側に設けられたゲート痕56bを表示しておく。
【0059】
領域Fにおいては、受圧部分B1を除く領域Fの上部側にゲート痕が形成されていても良い。この領域に形成されたゲート痕の一例として、曲り管部53の側面中央部に形成されたゲート痕56aを表示しておく。
ただし、領域Fの上部側において、区画線L1に近い位置にゲート痕が形成される場合は、ウエルドラインが受圧部分B1に形成される可能性があるので、領域Fにおいて上部側であって区画線L1に近い部分にゲート痕が形成されるのは望ましくない。
このため、領域Fにおいて、第2中心軸線O2より上部側の領域を上下に2等分した領域においては、区画線L1の近傍領域にゲート痕を設けないことが好ましい。
このような背景から、領域Fにおいてゲート痕が設けられる望ましい領域は、第2中心軸線O2より上方側であって、曲り管部53の側面中央部側である。
【0060】
領域Fの中央部で代表される曲り管部53の側面中央部側とは、上述の投影部分Bから外れた領域である。
また、図2に示す側面中央部にゲート痕56aが形成されている場合、継手50を成型する金型にはこのゲート痕に対応する位置にゲートが形成されている。
この位置のゲートから溶融樹脂を注入して継手50を成型する場合、後述する試験結果に示すように、溶融樹脂は図2に示す継手50の側面側から反対側の側面(図3に示す側面)に向かって流動し、図3に示す側面中央部において溶融樹脂どうしが合流する結果、図3に破線で示す位置にウエルドラインWL1が生成する。
【0061】
このウエルドラインWL1は、継手50における投影部分Bに存在せず、継手50においてゲート痕56aが存在する側面と反対側の側面に形成されている。また、このウエルドラインWL1は、図3に示すように、継手50を側面視した場合、第1受け口部51の側面中央部から曲り管部53の側面中央部を通過し第2受け口部52の側面中央部を通過して第2受け口部52の端部に至るように形成されている。
本実施形態の継手50にあっては、ゲート痕56aとウエルドラインWL1がいずれも受圧部分B1には存在していないため、継手50の耐衝撃性を向上できる。
【0062】
なお、図3に示すウエルドラインWL1の生成位置は、1つの例であってウエルドラインの生成位置は図3に示す位置には限らない。図3に示すウエルドラインWL1は、図2に示す曲り管部53の側面中央位置に対応するようにゲートを配置し、理想的に溶融樹脂が流動した場合の一例である。
図2に示す位置から外れた位置や側面中央部の範囲内で中心から外れた位置などにゲートを配置した場合は、図3に示すウエルドラインWL1の位置から上下方向あるいは左右方向に若干ずれた位置にウエルドラインWL1が形成されるが、いずれにおいてもウエルドラインWL1が受圧部分B1に近い領域に形成されていなければ、継手50の耐衝撃性向上に寄与する。
【0063】
領域Gにおいては、第2中心軸線O2より上部側の領域を上下に2等分した領域において、その下部側の領域と、領域Gにおいて第2中心軸線O2より下部側にゲート痕が形成されていることが好ましい。ただし、領域Gにおいて第2中心軸線O2より下側であっても、受圧部分B1に近い領域は除き、第2の受け口部52に近い領域は除くことがより好ましい範囲となる。
領域Gにおいて、ゲート痕が第2中心軸線O2より上側の領域を上下に2等分した領域において、その上部側の領域に形成されていると、ウエルドラインが受圧部分B1に形成されるおそれがある。領域Gにおいて第2中心軸線O2より下側であって、受圧部分B1に近い領域にゲート痕が形成されていると、落下物や排水の落下に伴う衝撃の影響が懸念される。
このため、側面視した領域Gにおいて、第2中心軸線O2より上部側の領域を上下に2等分した領域において、その下側の領域の更に下部側がより好ましいゲート痕の形成位置である。また、領域Gにおいて、第2中心軸線O2より下側の領域において、その領域を側面視左右方向に3等分した場合、3等分の中の中央の領域がより好ましいゲート痕の形成位置となる。
図2に、上述の3等分した中央の領域の底部に形成されたゲート痕56cを一例として表示しておく。
【0064】
図2図7を基に、ここまで説明した形態では、継手50の一方の側面において、望ましくは中央部にゲート痕56aが形成され、他方の側面にウエルドラインWL1が形成された構成を採用したが、本形態の継手においてゲート痕の形成位置とウエルドラインの形成位置は上述の例に限らない。
【0065】
ゲート痕が設けられる位置として、図2に示すように第1受け口部51の下方であって曲り管部53の外周上部側にゲート痕56bが形成された場合、ウエルドラインWL2は図2図6図7の破線に示すように曲り管53の背面上部側に形成される。
【0066】
ゲート痕56bが領域Eに形成され、ウエルドラインWL2が曲り管部53の背面上部側に形成されていると、立管23から落下する落下物や排水が曲り管53の底面側に衝突したとして、ゲート痕56bの部分、ウエルドラインWL2の部分に対する衝撃の影響は少ないので、耐衝撃性に優れた継手50を提供できる。
【0067】
なお、図2図6図7に示すウエルドラインWL2の生成位置は、1つの例であってウエルドラインの生成位置はこれらの図に示す位置には限らない。図2図6図7に示すウエルドラインWL2は、図2に示す曲り管部53の中央に対応するようにゲートを配置し、理想的に溶融樹脂が流動した場合の一例である。
図2に示す位置から上下あるいは左右に外れた位置などにゲートを配置した場合は、図2図6図7に示すウエルドラインWL2の位置から左右あるいは上下に若干ずれた位置にウエルドラインが形成されるが、ウエルドラインWL2が受圧部分B1に形成されていなければ、継手50の耐衝撃性向上に寄与する。
【0068】
領域Gの下部にゲート痕56cが形成されている場合、ウエルドラインWL3は図2図6図7の破線に示すように曲り管53の背面上部側に形成される。
ゲート痕56cが領域Gの下部に形成され、ウエルドラインWL3が曲り管部53の背面上部側に形成されていると、立管23から落下する落下物や排水が曲り管53の底面側に衝突したとして、ゲート痕56cの形成部分、ウエルドラインWL3の部分に対する衝撃の影響は少ないので、耐衝撃性に優れた継手50を提供できる。
【0069】
なお、ゲート痕が形成される位置として、第1の受け口部51あるいは第2の受け口部52も考えられる。しかし、第1の受け口部51あるいは第2の受け口部52に対応する位置にゲートを設けて射出成型を行うと、溶融樹脂の充填に支障が生じ、成形品の形状が不良となり易い。このため、ゲート痕が第1の受け口部51あるいは第2の受け口部52に形成されている継手は好ましくない。
【0070】
図1図7に示す継手50においては、第1管部54が第2管部55より短く形成されているので、継手50と第2管部55を床スラブSの下方において上下方向に狭い空間に収まりよく配置できようになる。
また、第1管部54が短く、第2管部55が長いことで、曲り管部53の内底面側においてしぶきの発生が抑制される結果、排水をスムーズに流すことができる。曲り管部53の内底面側においてしぶきが発生すると、排水が跳ねてジャンプする現象が起こり、排水の流れが円滑ではなくなる。
【0071】
図8は、継手50の支持脚59を金具により支持した構造の一例を示す。
図8に示す例では、床スラブSから吊り下げた左右一対の吊りボルト60によりL型鋼材あるいはL型樹脂板からなる支持板61を水平に支持している。この支持板61の中央部に形成した支持孔に脚部継手62を設け、この脚部継手62に設けたボス部より支持脚59の先端が支持されている。
【0072】
図8に示す構造によると、継手50の支持脚59を吊りボルト60を介し床スラブSで支持することができ、継手50を安定支持できる。
また、継手50に落下物による大きな衝撃を受けた場合であっても、図8に示す支持構造であれば、衝撃に耐える継手構造を提供できる。
【0073】
「解析例」
AUTODESK株式会社製、解析ソフト(MoldFlow Insight 2018)を用いて図2図7に示す形状の継手を射出成型により一体成型する場合のシュミレーション解析を行った。金型温度25℃、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)の温度200℃、射出時間40s(50cm3/s)に設定し、図9に示すように、曲り管部の外周面上部側であって、第1受け口部の約7cm下方に、口径16mmのゲートからPVC樹脂を射出成型した場合の樹脂の流れを解析した。
【0074】
図9は射出開始から5.919秒後の樹脂の流動状態、図10は24.07秒後の樹脂の流動状態を示し、図11は射出成型後に得られた継手の応力解析結果の一例を示す。
図9図10に示す解析結果が示すように、曲り管部の外周面上部側、即ち、図2に示す領域Eに対応するようにゲートを配置した場合、曲り管部の背面上部側にウエルドラインが生成することを確認できた。
【0075】
上記と同等の解析条件の元、図12に示すように、曲り管部の側面中央部側で第1受け口部の約8cm下方に、口径16mmのゲートからPVC樹脂を射出成型した場合の樹脂の流れを解析した。
【0076】
図12は射出開始から5.920秒後の樹脂の流動状態、図13は24.08秒後の樹脂の流動状態を示し、図14は射出成型後に得られた継手の応力解析結果の一例を示す。 図12図13に示す解析結果が示すように、曲り管部の側面中央部、即ち、図2に示す領域Fの中央(曲り管部の側面中央部)に対応するようにゲートを配置した場合、曲り管部の側面側にウエルドラインが生成することを確認できた。
【0077】
図11に示す応力解析結果と図14に示す応力解析結果において、灰色に着色した領域は、成型品の内部において最も高い残留応力が蓄積された領域を示している。
図11に示す応力状態の解析結果と図14に示す応力状態の解析結果を比較すると、図11に示す解析結果において第2受け口部52の外周に均一に残留応力が分布しているのに対し、図14に示す解析結果において第2受け口部52の外周に不均一に残留応力が分布していることが分かった。
【0078】
残留応力の分布が不均一であるから、継手として直に問題があるわけではないが、残留応力のばらつき状態からみて図11に示す構造の継手の方が望ましいと考えられる。残留応力のばらつきが少ない場合、多い場合に比べて熱履歴によるひずみの蓄積が小さいことが考えられる。
このため、ゲートを設ける位置として最も望ましいのは、ゲート痕が図2図5に示す領域Eに形成される場合であると推定でき、この場合に最も歪の蓄積が生じ難い継手を提供できると推定できる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、追加、削除等も含まれる。
【0080】
図15及び16は、継手50の曲り管部53に掃除口70を設けた場合の他の一例を示す。
図15及び16に示すように、継手50の曲り管部53に掃除口70を設けてもよい。なお図示の例では、掃除口70は、曲り管部53を挟んだ両側に設けられているが、片側にのみ設けられていてもよい。これにより、継手50の点検及び掃除を行うことができる。図15及び16に示す掃除口は、継手50の掃除口70に装着可能とされた蓋体71が設けられていてもよい。そして、蓋体71に係合溝72が設けられていてもよい。これにより、係合溝72に、ドライバーの軸部等、棒状の工具、すなわち汎用工具を係合させることによって、蓋体71を容易に開閉操作することが可能となる。
ここで、図15および16に示す一例では、掃除口70が、支持脚59に対して、第1方向側D1にずらされている。よって、前述のように、汎用工具を用いて蓋体71を取り外す際、吊りボルト60が、汎用工具と干渉しにくい。
【0081】
これに対して、図17及び18では、図16に示す継手50に比べて、掃除口70および蓋体71が、第2方向側D2に位置している。結果として、掃除口70および蓋体71が、吊りボルト60が、一方向Dにおいて、蓋体71と重なっている。このような場合、支持脚59に設けられる金具と係合溝72に係合される前記汎用工具とが干渉し、蓋体71の着脱が困難になる恐れがある。すなわち、図17及び18に示す変形例のようではなく、図15および16に示す一例のように、掃除口70は、継手50を側面視したときに、中心軸線O1の方向において支持脚59と重ならないことが好ましい。
【0082】
例えば、上記の実施形態ではゲートが1か所のみであったが、複数個所設けても良い。
【0083】
図19から26は、継手50に複数のゲート痕を設けた場合の例を示す。すなわち、これらは、ゲートを複数箇所設けた例である。
図19及び20では、ゲート痕として、前記ゲート痕56bと、他のゲート痕56cと、が設けられている。ゲート痕56cは、第2受け口部52の上部に設けられている。この場合、ウエルドラインWL4が投影部分B以外の部分であって、曲がり部53に、側面視において上方から下方に向けて徐々に第1方向側D1に向かうように設けられている。 図21及び22では、ゲート痕として、前記ゲート痕56bと、他のゲート痕56dと、が設けられている。ゲート痕56dは、第2受け口部52の下部に設けられている。この場合、ウエルドラインWL5が投影部分B以外の部分であって、曲がり部53に、側面視において上方から下方に向けて徐々に第2方向側D2に向かうように設けられている。 図23から26に示すように、第1のゲート56bまたはゲート56cに加えて第2管部55の上部(第2管部55の管軸を中心として領域Fの180°反対側となる箇所)に第2のゲート56fを設けても良い。図23及び24に示す例では、第1のゲート56bに加えて、第2のゲート56fが設けられている。図25及び26に示す例では、第1のゲート56cに加えて、第2のゲート56fが設けられている。
この場合、ウエルドラインは継手50の側面に2か所でき、具体的には図3の第1のウエルドラインWL1の反対側に第2のウエルドラインWL6が形成される。ウエルドラインWL1、WL6はゲート痕56b、56c、56fから等距離となるような位置に設けられている。
図23から26に示すように、ウエルドラインWL1、WL6はいずれのゲートからも等距離となるような位置にできるため、複数のゲート痕56b、56c、56fから等距離となる点を結ぶ線が、受圧部分B1を通らない様にゲート痕56b、56c、56fを設定することが好ましい。これにより、金型構造の複雑化を防ぐことができる。
【0084】
図27及び28に示す比較例に係る継手50Aでは、ゲート痕56g、56hが受圧部分B1に設けてある。ゲート痕56g、56hは、受圧部分B1のうち、継手50を挟んで互いに対向する部分に設けられている。その結果、継手50に複数のウエルドラインWL11、WL12が設けられている。なおこれらのうちの一方のウエルドラインWL11は、受圧部分B1を一方向Dに横断している。
図27及び28に示す構造の場合、継手50に落下物による大きな衝撃を受けたとき、継手が破損して恐れがある。
【0085】
図29及び30に示す他の比較例に係る継手50Aでは、ゲート痕56iが、第1受け口51の第2方向側D2の端に設けられ、ゲート痕56jが、第2受け口部52の下部に設けられている。その結果、ウエルドラインWL13が受圧部分B1を、継手50Aの周方向に横断する。
図29及び30に示す構造の場合、継手50に落下物による大きな衝撃を受けたとき、継手が破損して恐れがある。
【符号の説明】
【0086】
10…排水システム、20…立主管、21…集合継手、22…枝管接続部、23…立管、30…横管、40…継手構造、50…継手、51…第1受け口部、52…第2受け口部、53…曲り管部、54…第1管部、55…第2管部、56…接続部、
56a、56b、56c…ゲート痕、59…支持脚、59a…補強リブ、59b…下端面、
B…投影部分、B1…受圧部分、
S…床スラブ、WL1、WL2…ウエルドライン、O1、O2…中心軸線、
E、F、G…領域、L1…区画線。
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