(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087095
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
F02B 77/00 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
F02B77/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201693
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 正悟
(57)【要約】
【課題】エンジンに配置される電線が損傷することを抑制することができる技術を提供する。
【解決手段】例示的なエンジンは、複数のシリンダが前後方向に並ぶシリンダ列を少なくとも一つ有するエンジン本体と、前記エンジン本体の一側面に配置され、前後方向に延びる給気管と、前記給気管から下方であって、前記一側面に沿って配置される第1電線と、を備える。
【選択図】
図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシリンダが前後方向に並ぶシリンダ列を少なくとも一つ有するエンジン本体と、
前記エンジン本体の一側面に配置され、前後方向に延びる給気管と、
前記給気管から下方であって、前記一側面に沿って配置される第1電線と、
を備える、エンジン。
【請求項2】
過給機と、
前記過給機からの給気を冷却するインタークーラと、
を備え、
前記給気管は、給気の流れ方向において前記インタークーラの下流に位置する、請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
前記給気管の下方に配置されるオイルフィルタ装置を備え、
前記第1電線は、前記給気管と前記オイルフィルタ装置との間に配置される、請求項1に記載のエンジン。
【請求項4】
前記一側面に対してクランク軸を挟んで反対側となる他側面に配置される冷却液管を備える、請求項1に記載のエンジン。
【請求項5】
左右方向に並ぶ2つの前記シリンダ列を有するV型エンジンであって、
前記2つのシリンダ列の一方を含む第1バンクと、他方を含む第2バンクとの間に存在するバンク間エリアに配置される排気管を備える、請求項1に記載のエンジン。
【請求項6】
前記バンク間エリアの一方側に配置されるインタークーラを備え、
前記第1電線は、前記バンク間エリアに対して前記インタークーラを挟んで反対側に配置される、請求項5に記載のエンジン。
【請求項7】
前記第1電線と異なる第2電線を備え、
前記第2電線は、前記一側面において、前記給気管から下方に離れ、且つ、前記第1電線に対して間隔をあけて配置される、請求項1に記載のエンジン。
【請求項8】
前記エンジン本体の前後方向の一方側に配置されるインタークーラを備え、
前記インタークーラは、
給気入口部と、
給気出口部と、
を有し、
前記第1電線は、前記給気出口部の外面に沿って配置される、請求項1に記載のエンジン。
【請求項9】
前記インタークーラは液冷式である、請求項2、6、8のいずれか1項に記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンには、インジェクタ、オルタネータ、スタータ、および、各種センサ等の電装部品が備えられる。そして、電装部品が備えられるエンジンには、電力を伝送するための電力線や、信号を伝送するための信号線が備えられる。
【0003】
例えば特許文献1には、複数のワイヤーハーネスを備えるエンジンが開示される。複数のワイヤーハーネスは、給気マニホールドに取り付けられるワイヤーハーネスカバーに保護された状態で支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、発電用や船舶用に用いられる大型のエンジンのメンテナス作業においては、メンテナンス作業を行う作業者が、エンジンを構成する部品に足を載せて作業を行うことがある。このために、足を載せやすい部品にハーネスが取り付けられていると、作業中に意図せず、ハーネスの損傷が発生することが起こり得る。
【0006】
また、エンジンに設けられるハーネスは、例えば、エンジンを構成する高温部品から発せられる熱気による損傷を防止する等、損傷防止のための様々な対策が求められる。
【0007】
本発明は、エンジンに配置される電線が損傷することを抑制することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の例示的なエンジンは、複数のシリンダが前後方向に並ぶシリンダ列を少なくとも一つ有するエンジン本体と、前記エンジン本体の一側面に配置され、前後方向に延びる給気管と、前記給気管から下方であって、前記一側面に沿って配置される第1電線と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
例示的な本発明によれば、エンジンに配置される電線が損傷することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】エンジンが備えるインジェクタについて説明するための模式図
【
図5】エンジンが備える電気系統の概略の構成を示す斜視図
【
図6A】エンジンの左側面におけるワイヤーハーネスの位置を模式的に示す図
【
図7】エンジンの後面における高圧電源用ワイヤーハーネスの位置を模式的に示す図
【
図8】エンジンの右側面におけるワイヤーハーネスの位置を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図面においては、適宜、3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。以下の説明においては、X方向を前後方向、Y方向を左右方向、Z方向を上下方向とする。なお、+X側が前側、-X側が後側とする。+Y側を左側、-Y側を右側とする。+Z側を上側、-Z側を下側とする。詳細には、
図1に示すクランク軸(出力軸)の中心線Jが延びる方向を前後方向とする。フライホイールハウジング3に収容されるフライホイール3a(
図7参照)に対してシリンダブロック11が配置される側を前側とする。また、シリンダブロック11に対してオイルパン2が配置される側を下側として上下方向を定義する。前後方向および上下方向に直交する方向を左右方向と定義し、前方から後方に向かって見た場合に左となる側を左側、右となる側を右側とする。なお、これらの方向は単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定する意図はない。
【0012】
<1.エンジンの概要>
図1は、本発明の実施形態に係るエンジン100の概略の構成を示す左側面図である。
図2は、本発明の実施形態に係るエンジン100の概略の構成を示す正面図である。
図3は、本発明の実施形態に係るエンジン100の概略の構成を示す平面図である。主に
図1から
図3を参照して、エンジン100の概要を説明する。
【0013】
エンジン100は、特に限定する意図はないが、例えば、発電のために使用するエンジンや、船舶推進用に使用する船舶推進用エンジンであってよい。エンジン100は、大型のエンジンである。エンジン100は、ディーゼルエンジンである。エンジン100は、大きくは、エンジン本体1とオイルパン2とを備える。エンジン本体1は、シリンダブロック11と、ヘッドブロック12と、ヘッドカバー13とを備える。
【0014】
シリンダブロック11の内部には、複数のピストン(不図示)と、各ピストンに連結され、前後方向に延びるクランク軸(不図示)とが配置される。クランク軸は、ピストンの往復運動を回転運動に変換する。クランク軸の後端には、フライホイールハウジング3に収容されるフライホイール3a(後述の
図7参照)が取り付けられる。フライホイール3aは、クランク軸と一体的に回転し、エンジン100の動力を取り出すために利用される。
【0015】
シリンダブロック11は、複数のシリンダ14が前後方向に並ぶシリンダ列15(後述の
図4参照)を有する。すなわち、エンジン本体1は、複数のシリンダ14が前後方向に並ぶシリンダ列15を少なくとも一つ有する。複数のピストンのそれぞれは、各シリンダ14内に配置される。詳細には、シリンダブロック11は、左右のそれぞれに、シリンダ列15を有する。エンジン100は、左右方向に並ぶ2つのシリンダ列15を有するV型エンジンである。なお、エンジン100は、一例としてV型12気筒エンジンであり、左右のそれぞれにおいて前後方向に並ぶシリンダ14の数は6個である。
【0016】
ヘッドブロック12は、各シリンダ14の上方に重ねて配置される。すなわち、エンジン本体1は、左右のそれぞれに、前後方向に並ぶ6つのヘッドブロック12を有する。各ヘッドブロック12は、シリンダ14、ヘッドブロック12、および、ピストンで構成される燃焼室にガスを供給するための吸気ポート(不図示)と、燃焼室からガスを排気する排気ポート(不図示)とを有する。
【0017】
ヘッドカバー13は、各ヘッドブロック12の上方に配置される。すなわち、エンジン本体1は、左右のそれぞれに、前後方向に並ぶ6つのヘッドカバー13を有する。各ヘッドカバー13は、ヘッドブロック12に配置される吸気弁および排気弁(不図示)を覆う。各ヘッドカバー13には、インジェクタ16(後述の
図4参照)が取り付けられる。
【0018】
図4は、本発明の実施形態に係るエンジン100が備えるインジェクタ16について説明するための模式図である。
図4には、インジェクタ16に関する理解を容易とするために、シリンダ14を有するシリンダブロック11も示されている。以下、エンジン100が備えるシリンダ列15のうち、エンジン100の左側にあるシリンダ列を左シリンダ列15L、右側にあるシリンダ列15を右シリンダ列15Rとする。左シリンダ列15Lを構成する各シリンダ14に対して1つずつインジェクタ16が設けられる。また、右シリンダ列15Rを構成する各シリンダ14に対して1つずつインジェクタ16が設けられる。以下、左シリンダ列15Lに対応して設けられるインジェクタ16を左インジェクタ16L、右シリンダ列15Rに対応して設けられるインジェクタ16を右インジェクタ16Rとする。本実施形態では、左インジェクタ16Lおよび右インジェクタ16Rの数は、それぞれ6個である。
【0019】
各インジェクタ16の、燃料を噴射する噴射口が設けられる一端部(下端部)は、燃焼室に臨む。各インジェクタ16は、燃料を高圧として吐出する燃料ポンプ4から高圧燃料配管32を介して供給される燃料を、適宜のタイミングで燃焼室に噴射する。燃焼室に噴射された燃料の燃焼により生じる力によって、ピストンが往復運動を行う。なお、本実施形態では、燃料ポンプ4は、エンジン100の左側面の後方に配置される(
図1参照)。
【0020】
エンジン100の左側に設けられる、左シリンダ列15L、ヘッドブロック12、および、ヘッドカバー13は、左バンクLBを構成する。エンジン100の右側に設けられる、右シリンダ列15R、ヘッドブロック12、および、ヘッドカバー13は、右バンクRBを構成する。
【0021】
また、エンジン100は、給気マニホールド(給気管)5および排気マニホールド(排気管)6を備える。
【0022】
給気マニホールド5は、詳細は後述する過給機7から供給された空気または混合気である給気を各シリンダ14(燃焼室)に分配する。詳細には、給気マニホールド5は、左右のそれぞれに配置されるシリンダ列15に対応して、エンジン本体1の左右の側面に1つずつ配置される。左右に配置される給気マニホールド5は、いずれも前後方向に延びる。すなわち、エンジン100は、エンジン本体1の一側面に配置され、前後方向に延びる給気マニホールド(給気管)5を備える。なお、本実施形態では、エンジン100は、エンジン本体1の他側面に配置され、前後方向に延びる給気マニホールド(給気管)5を更に備える。他側面は、一側面に対してクランク軸を挟んで反対側の側面である。
【0023】
以下、左シリンダ列15Lに対応してエンジン100の左側に設けられる給気マニホールド5を、左給気マニホールド5Lと表現する。右シリンダ列15Rに対応してエンジン100の右側に設けられる給気マニホールド5を、右給気マニホールド5Rと表現する。左給気マニホールド5Lおよび右給気マニホールド5Rは、左バンクLBと右バンクRBとで構成されるVバンクの外側に配置される。
【0024】
排気マニホールド6は、各シリンダ(燃焼室)からの排気を集約する。排気マニホールド6は、左バンクLBと右バンクRBとの間に、前後方向に延びて配置される。すなわち、エンジン100は、2つのシリンダ列15L、15Rの一方を含む第1バンクと、他方を含む第2バンクとの間に存在するバンク間エリアVAに配置される排気マニホールド(排気管)6を備える。なお、第1バンクと第2バンクとのうち、一方は左バンクLBであり、他方は右バンクRBである。
【0025】
詳細には、排気マニホールド6は、左右のそれぞれに配置されるシリンダ列15に対応して2つ配置される。2つの排気マニホールド6は、いずれも前後方向に延びる。2つの排気マニホールド6は、左バンクLBと右バンクRBとで構成されるVバンクの内側に左右に並んで配置される。以下、左シリンダ列15Lに対応してVバンク内の左側に配置される排気マニホールド6を、左排気マニホールド6Lと表現する。右シリンダ列15Rに対応してVバンク内の右側に配置される排気マニホールド6を、右排気マニホールド6Rと表現する。
【0026】
過給機7は、エンジン100の後方上部に配置される。すなわち、エンジン100は過給機7を備える。過給機7は、エンジン100の外部から供給された空気や混合気を加圧圧縮してインタークーラ8を介して給気マニホールド5に供給する。過給機7は、排気マニホールド6から供給される排ガスを駆動源とするターボチャージャである。
【0027】
なお、給気マニホールド5と接続されるインタークーラ8は、冷却液ポンプ10の駆動により冷却液を供給され、給気を冷却する。すなわち、エンジン100は、過給機7からの給気を冷却するインタークーラ8を備える。インタークーラ8は、エンジン本体1の前後方向の一方側に配置される。インタークーラ8は、バンク間エリアVAの前後方向の一方側に配置される。詳細には、インタークーラ8は、エンジン本体1およびバンク間エリアVAの一端部に配置される。本実施形態においては、冷却液は冷却水である。冷却液は、例えば不凍液等の水以外の液体であってもよい。不凍液は、例えば、純水とエチレングリコールとを所定割合で混合した液体である。
【0028】
過給機7から供給される給気は、加圧圧縮されることにより圧縮熱が発生して温度が上昇する。インタークーラ8は、冷却液と、加圧圧縮された給気との間で熱交換を行うことで給気を冷却する。すなわち、インタークーラ8が設けられることにより、給気マニホールド5に供給される給気の温度を所望の温度に調整することができる。
【0029】
過給機7は、詳細には、エンジン100の左側に設けられる左過給機7Lと、エンジン100の右側に設けられる右過給機7Rとを有する。左過給機7Lは、インタークーラ8を介して左給気マニホールド5Lに空気等(給気)を供給する。右過給機7Rは、インタークーラ8を介して右給気マニホールド5Rに空気等(給気)を供給する。左排気マニホールド6Lで集約された排ガスは、左過給機7Lを介して外部に排気される。右排気マニホールド6Rで集約された排ガスは、右過給機7Rを介して外部に排気される。
【0030】
オイルパン2は、シリンダブロック11の下方に配置され、潤滑油を貯留する。オイルパン2に貯留される潤滑油は、エンジン100の潤滑が必要な各部に供給される。
【0031】
<2.電気系統>
次に、エンジン100が備える電気系統200について説明する。
【0032】
[2-1.電気系統の概要]
図5は、本発明の実施形態に係るエンジン100が備える電気系統200の概略の構成を示す斜視図である。
図5は、エンジン100が備える電気系統200を抽出して示す図である。
図5に示すように、電気系統200には、ECU(Engine Control Unit)17と、ジャンクションボックス18と、オルタネータ19と、スタータ20とが含まれる。
【0033】
ECU17は、エンジン100の制御を行う。ECU17は、例えば燃料の噴射の制御や、エンジン100の始動や停止の制御等を行う。ECU17は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、および、ROM(Read Only Memory)等を含んで構成される。
【0034】
ジャンクションボックス18は、ECU17と各電装部品とを中継する端子や電線等を収容するボックスである。電装部品には、例えば、インジェクタ16や、エンジン100に配置される各種のセンサ(不図示)等が含まれる。本実施形態では、ジャンクションボックス18は、エンジン100前方の左側上部に配置される(
図1参照)。ジャンクションボックス18の右隣には、ECU17が配置される。
【0035】
オルタネータ19は、クランク軸の回転により生じる回転動力により、交流の電気を生成する発電機である。オルタネータ19は、不図示のベルト等を介してクランク軸に連結される。オルタネータ19は、エンジン100の各部に電力を供給する。また、オルタネータ19で発電された電力は、不図示のバッテリに充電される。本実施形態では、オルタネータ19は、エンジン100の左側面の前方寄りに配置される(
図1参照)。
【0036】
スタータ20は、不図示のバッテリから電力を供給され、エンジン100の始動時にクランク軸を回転させる。スタータ20は、モータ等の電動アクチュエータにより構成される。スタータ20は、不図示のギア等を介して、クランク軸に接続されるフライホイール3a(後述の
図3参照)に連結される。本実施形態では、スタータ20は、エンジン100の右側面の後方に配置される(後述の
図8参照)。
【0037】
図5に示すように、電気系統200は、複数種類のワイヤーハーネス21~23を備える。ワイヤーハーネス21~23は、複数の電線を配線の態様に合わせて束ねた集合部品である。複数種類のワイヤーハーネス21~23には、高圧電源用ワイヤーハーネス21と、低圧電源用ワイヤーハーネス22と、信号用ワイヤーハーネス23が含まれる。
【0038】
高圧電源用ワイヤーハーネス21は、オルタネータ19とスタータ20とをバッテリに接続するための電線を含むワイヤーハーネスである。低圧電源用ワイヤーハーネス22は、各インジェクタ16にECU17から電力を供給するための電線を含むワイヤーハーネスである。信号用ワイヤーハーネス23は、エンジン100が備える各種のセンサからの信号をECU17に伝送するための電線を含むワイヤーハーネスである。
【0039】
なお、低圧電源用ワイヤーハーネス22は、詳細には、6個の左インジェクタ16L(
図4参照)に電力を供給するためのワイヤーハーネスと、6個の右インジェクタ16R(
図4参照)に電力を供給するためのワイヤーハーネスとを含む。
【0040】
[2-2.ワイヤーハーネスの配置]
次に、エンジン100におけるワイヤーハーネス21~23の配置(配索)の詳細について説明する。
図6Aは、エンジン100の左側面におけるワイヤーハーネス21~23の位置を模式的に示す図である。
図6Bは、
図6AのA-A位置で切った断面の一部を示す模式図である。
図6Bは、エンジン100におけるワイヤーハーネス21~23の位置を模式的に示す。
【0041】
図6Aおよび
図6Bに示すように、エンジン100は、少なくとも一部が給気マニホールド(給気管)5から下方に離れ、エンジン本体1の一側面(左側面)に沿って配置される高圧電源用ワイヤーハーネス21(太い実線で示す)を備える。なお、給気管5から下方に離れとは、給気管5から真下に離れる状態でも、斜め下方に離れる状態でもよい。高圧電源用ワイヤーハーネス21は、他のワイヤーハーネス22、23に比べて高い電圧の電気が流れる高圧電線を含む。高圧電線は、本発明の第1電線の一例である。すなわち、エンジン100は、給気管5から下方であって、エンジン本体1の一側面に沿って配置される第1電線を備える。
【0042】
例えば、エンジン100が大型のエンジンである場合、エンジン100のメンテナンス時に、作業者が給気管5に足を載せることがある。この点、本実施形態では、給気管5から下方に離れた位置に高圧電線が配置される。このために、作業者が給気管5に足を載せたことが原因となって高圧電線が損傷する可能性を低減することができる。
【0043】
また、本実施形態では、エンジン100は、高圧電源用ワイヤーハーネス21の他に、低圧電源用ワイヤーハーネス22および信号用ワイヤーハーネス23(
図6Aにおいて太い破線で示される)を備える。低圧電源用ワイヤーハーネス22および信号用ワイヤーハーネス23は、高圧電源用ワイヤーハーネス21に含まれる高圧電線に比べて低い電圧の電気が流れる低圧電線を含む。低圧電線は、本発明の第2電線の一例である。すなわち、エンジン100は、第1電線と異なる第2電線を備える。なお、本実施形態では、第1電線が高圧電線で、第2電線が低圧電線であるが、これは例示に過ぎない。例えば、第1電線が低圧電線で、第2電線が高圧電線であってもよい。
【0044】
低圧電源用ワイヤーハーネス22および信号用ワイヤーハーネス23の少なくとも一部は、エンジン本体1の左側面において、給気管5から下方に離れた位置に配置される。なお、給気管5から下方に離れた位置とは、給気管5から真下に離れた位置でも、斜め下方に離れた位置でもよい。また、低圧電源用ワイヤーハーネス22および信号用ワイヤーハーネス23は、高圧電源用ワイヤーハーネス21に対して間隔をあけて配置される。すなわち、第2電線は、エンジン本体1の一側面において、給気管5から下方に離れ、且つ、第1電線に対して間隔をあけて配置される。
【0045】
本実施形態によれば、給気管5から下方に離れた位置に低圧電線が配置される。このために、作業者が給気管5に足を載せたことが原因となって低圧電線が損傷する可能性を低減することができる。また、高圧電線と低圧電線とが間隔をあけて配置されるために、高圧電線と低圧電線とが、互いの電磁ノイズの影響を受けることを抑制することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、給気管5は、給気の流れ方向において、インタークーラ8の下流に位置する。すなわち、給気管5には、過給機7で高温となった後にインタークーラ8で冷却された給気が流れ込む。このために、給気管5の周囲は比較的温度を低くすることができる。この結果、給気管5の下方に配置された高圧電線や低圧電線が、給気管5からの熱による影響で損傷するといった事態が生じる可能性を低減することができる。
【0047】
詳細には、エンジン100の左側面において、高圧電源用ワイヤーハーネス21、低圧電源用ワイヤーハーネス22、および、信号用ワイヤーハーネス23のそれぞれの一部は、左給気管5Lの下方で、左給気管5Lが延びる方向(前後方向)に延びて配置される。各ワイヤーハーネス21~23の当該前後方向に延びる部分に関しては、高圧電源用ワイヤーハーネス21は、低圧電源用ワイヤーハーネス22および信号用ワイヤーハーネス23よりも下方に配置される。
【0048】
また、低圧電源用ワイヤーハーネス22と信号用ワイヤーハーネス23との、上述の前後方向に延びる部分は、同じ高さ位置に配置される。
図5に示すように、当該同じ高さ位置に配置される部分においては、信号用ワイヤーハーネス23は、低圧電源用ワイヤーハーネス22よりも左側に位置する。
図6Aにおいては、当該同じ高さ位置に配置される部分が重なって示されている。なお、エンジン本体1の左側面に配置される低圧電源用ワイヤーハーネス22は、左インジェクタ16L(
図4参照)に電力を供給するための電線を含むワイヤーハーネスである。
【0049】
本実施形態では、エンジン100の左側面に配置される各ワイヤーハーネス21~23は、左バンクLBの左方に配置される。すなわち、エンジン100の左側面に配置される各ワイヤーハーネス21~23は、バンク間エリアVAに対して左バンクLBを挟んで反対側に配置される。上述のように、エンジン100においては、高温となり易い排気マニホールド(排気管)6がバンク間エリアVAに配置される。このために、エンジン100においては、バンク間エリアVAは高温となり易い。この点、本実施形態では、エンジン100の左側面に配置される各ワイヤーハーネス21~23は、バンク間エリアVAに対して左バンクLBを挟んで反対側に配置される。このために、左バンクLBがバンク間エリアVAの熱を漏らさない壁として利用され、エンジン100の左側面に配置される高圧電線や低圧電線が熱害によって損傷することを抑制できる。
【0050】
また、本実施形態においては、
図6Aに示すように、エンジン100は、給気管5の下方に配置されるオイルフィルタ装置24を備える。オイルフィルタ装置24は、エンジン100の左側面に配置される。オイルフィルタ装置24は、詳細には、燃料を浄化するためのオイルフィルタ装置である。ただし、オイルフィルタ装置24は、潤滑油を浄化するオイルフィルタ装置等の他のオイルフィルタ装置であってもよい。
【0051】
図6Aに示すように、エンジン100の左側面において、高圧電源用ワイヤーハーネス21、低圧電源用ワイヤーハーネス22、および、信号用ワイヤーハーネス23のそれぞれは、給気管5とオイルフィルタ装置24との上下方向間に配置される。すなわち、高圧電線(第1電線)は、給気管5とオイルフィルタ装置24との上下方向間に配置される。また、低圧電線(第2電線)は、給気管5とオイルフィルタ装置24との上下方向間に配置される。
【0052】
オイルフィルタ装置24よりも上方に高圧電線や低圧電線が配置されることによって、オイルフィルタ装置24のオイルフィルタの交換作業時に、誤ってオイルフィルタを高圧電線や低圧電線にぶつける可能性を低減することができる。すなわち、高圧電線や低圧電線の損傷を低減することができる。また、オイルフィルタ装置24よりも上方に高圧電線や低圧電線が配置されると、オイルフィルタの交換時に飛散したオイルが高圧電線や低圧電線に付着する可能性を低減できる。これにより、オイルの付着が原因となってショートが発生する可能性を低減することができる。
【0053】
なお、高圧電源用ワイヤーハーネス21は、エンジン100の左側面側において、オルタネータ19に接続される。また、高圧電源用ワイヤーハーネス21は、エンジン100の左側面側から後面側へと回り込む。低圧電源用ワイヤーハーネス22および信号用ワイヤーハーネス23は、エンジン100の左側面側において、ジャンクションボックス18内の端子に接続される。低圧電源用ワイヤーハーネス22および信号用ワイヤーハーネス23は、エンジン100の左側面側から後面側へと回り込まない。
【0054】
図7は、エンジン100の後面における高圧電源用ワイヤーハーネス21の位置を模式的に示す図である。上述のように、エンジン100は、インタークーラ8を備える。
図7に示すように、高圧電源用ワイヤーハーネス21は、エンジン100の後面において、インタークーラ8の外面に沿って配置される。
【0055】
エンジン100の後面に配置される高圧電源用ワイヤーハーネス21は、バンク間エリアVA(
図3参照)に対してインタークーラ8を挟んで反対側に配置される。すなわち、エンジン100が備える高圧電線(第1電線)は、バンク間エリアVAに対してインタークーラ8を挟んで反対側に配置される。
【0056】
本実施形態では、上述のように、排気マニホールド(排気管)6の存在のために、バンク間エリアVAは高温となり易い。この点、本実施形態では、バンク間エリアVAに対してインタークーラ8を挟んで反対側に高圧電線が配置される構成となる。このために、インタークーラ8がバンク間エリアVAの熱を漏らさない壁として利用され、エンジン100の後面に配置される高圧電線が熱害によって損傷することを抑制できる。
【0057】
図7に示すように、詳細には、インタークーラ8は、給気入口部8aと、熱交換部8bと、給気出口部8cとを有する。給気入口部8aは、過給機7から送られてきた給気がインタークーラ8の内部に入る入口部分である。詳細には、給気入口部8aには、左過給機7Lと右過給機7Rとから給気が送られる。
【0058】
熱交換部8bは、給気の流れ方向において給気入口部8aの下流に位置する。熱交換部8bにおいては、冷却液ポンプ10(
図2参照)から供給される冷却液(本実施形態では冷却水)と、給気との間で熱交換が行われる。すなわち、本実施形態のインタークーラ8は、液冷式である。
【0059】
給気出口部8cは、給気の流れ方向において、熱交換部8bの下流に位置する。給気出口部8cは、熱交換部8bで冷却された給気がインタークーラ8から排出される出口部分である。給気出口部8cは、詳細には、左給気マニホールド5Lに給気を送る左給気出口部と、右給気マニホールド5Rに給気を送る右給気出口部とを有する。
【0060】
本実施形態では、好ましい形態として、エンジン100の後面において、高圧電源用ワイヤーハーネス21は、給気出口部8cの外面に沿って配置される。すなわち、高圧電線(第1電線)は、給気出口部8cに沿って配置される。このような構成では、冷却後の給気が通り、インタークーラ8の他の部分に比べて比較的温度が低くなり易い部分に、高圧電線が配置されることになる。このために、高圧電線が熱害によって損傷することを抑制できる。本実施形態では、インタークーラ8が液冷式であるために、空冷式に比べて給気の冷却効率が高く、高圧電線が熱害によって損傷する可能性をより低減することができる。
【0061】
図8は、エンジン100の右側面におけるワイヤーハーネス21、22の位置を模式的に示す図である。
図8に示すように、エンジン100の後面から右側面に回り込んだ高圧電源用ワイヤーハーネス21は、エンジン100の右側面後部に配置されるスタータ20に接続される。高圧電源用ワイヤーハーネス21は、実質的に、エンジン本体1の右側面には、殆ど配置されない。すなわち、高圧電線は、実質的に、エンジン本体1の右側面には、殆ど配置されない。
【0062】
エンジン100の右側面には、左側面と同様に、低圧電源用ワイヤーハーネス22が配置される。当該低圧電源用ワイヤーハーネス22は、右インジェクタ16R(
図4参照)に電力を供給するためのワイヤーハーネスである。エンジン100の右側面に配置される低圧電源用ワイヤーハーネス22も、少なくとも一部が給気管5から下方に離れた位置に配置される。
【0063】
エンジン100の右側面に配置される低圧電源用ワイヤーハーネス22は、右バンクRBの右方に配置される。すなわち、エンジン100の右側面に配置される低圧電源用ワイヤーハーネス22は、バンク間エリアVAに対して右バンクRBを挟んで反対側に配置される。上述のように、排気マニホールド(排気管)6の存在のために、バンク間エリアVAは高温となり易い。この点、本実施形態では、バンク間エリアVAに対して右バンクRBを挟んで反対側に低圧電源用ワイヤーハーネス22が配置される構成となる。このために、右バンクRBがバンク間エリアVAの熱を漏らさない壁として利用され、エンジン100の右側面に配置される低圧電線が熱害によって損傷することを抑制できる。
【0064】
また、
図8に示すように、エンジン本体1の右側面には、冷却液管25が配置される。すなわち、エンジン100は、エンジン本体1の一側面(左側面)に対してクランク軸を挟んで反対側となる他側面(右側面)に配置される冷却液管25を備える。冷却液管25は、詳細には、インタークーラ8に対して冷却液を供給するために冷却液通路を構成する冷却液管である。
【0065】
本実施形態では、上述のように、高圧電線は、エンジン本体1の右側面には殆ど配置されない。このために、メンテナンス等のために冷却液管25を分解する作業が行われた場合において、冷却液が飛散して高圧電線に付着する可能性を低くすることができる。すなわち、メンテナンス時の冷却液の飛散が原因となってショートが発生する可能性を低減することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、高圧電源用ワイヤーハーネス21が、エンジン100の左側面と右側面とのうち、主として左側面に配置される構成としたが、これは例示である。例えば、オルタネータ19とスタータ20との左右の位置が本実施形態の構成と反対である場合等において、高圧電源用ワイヤーハーネスが、エンジン100の右側面に主として配置される構成としてもよい。また、例えば、ECU17の配置に合わせて、信号用ワイヤーハーネス23がエンジン100の右側面に配置される構成としてもよい。
【0067】
<3.留意事項等>
本明細書中に開示される種々の技術的特徴は、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。また、本明細書中に示される複数の実施形態および変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【0068】
以上に説明した実施形態では、本発明がV型エンジンに適用される構成とした。ただし、これは例示にすぎない。本発明は、例えば、ピストンが上下方向に往復動する直列型エンジンや、ピストンが水平方向に往復動する水平対向型エンジン等の他の形態のエンジンにも適用可能である。
【0069】
<4.付記>
本明細書における例示的なエンジンは、複数のシリンダが前後方向に並ぶシリンダ列を少なくとも一つ有するエンジン本体と、前記エンジン本体の一側面に配置され、前後方向に延びる給気管と、前記給気管から下方であって、前記一側面に沿って配置される第1電線と、を備える構成(第1の構成)であってよい。
【0070】
上記第1の構成のエンジンは、過給機と、前記過給機からの給気を冷却するインタークーラと、を備え、前記給気管は、給気の流れ方向において前記インタークーラの下流に位置する構成(第2の構成)であってよい。
【0071】
上記第1又は第2の構成のエンジンは、前記給気管の下方に配置されるオイルフィルタ装置を備え、前記第1電線は、前記給気管と前記オイルフィルタ装置との間に配置される構成(第3の構成)であってよい。
【0072】
上記第1から第3のいずれかの構成のエンジンは、前記一側面に対してクランク軸を挟んで反対側となる他側面に配置される冷却液管を備える構成(第4の構成)であってよい。
【0073】
上記第1から第4のいずれかの構成のエンジンは、左右方向に並ぶ2つの前記シリンダ列を有するV型エンジンであって、前記2つのシリンダ列の一方を含む第1バンクと、他方を含む第2バンクとの間に存在するバンク間エリアに配置される排気管を備える構成(第5の構成)であってよい。
【0074】
上記第5の構成のエンジンは、前記バンク間エリアの一方側に配置されるインタークーラを備え、前記第1電線は、前記バンク間エリアに対して前記インタークーラを挟んで反対側に配置される構成(第6の構成)であってよい。
【0075】
上記第1から第6のいずれかの構成のエンジンは、前記第1電線と異なる第2電線を備え、前記第2電線は、前記一側面において、前記給気管から下方に離れ、且つ、前記第1電線に対して間隔をあけて配置される構成(第7の構成)であってよい。
【0076】
上記第1から第7のいずれかの構成のエンジンは、前記エンジン本体の前後方向の一方側に配置されるインタークーラを備え、前記インタークーラは、給気入口部と、給気出口部と、を有し、前記第1電線は、前記給気出口部の外面に沿って配置される構成(第8の構成)であってよい。
【0077】
上記第2、第6、第8のいずれかの構成のエンジンにおいて、前記インタークーラは液冷式である構成(第9の構成)であってよい。
【符号の説明】
【0078】
1・・・エンジン本体
5・・・給気マニホールド(給気管)
6・・・排気マニホールド(排気管)
7・・・過給機
8・・・インタークーラ
8a・・・給気入口部
8b・・・熱交換部
8c・・・給気出口部
15・・・シリンダ列
15L・・・左シリンダ列
15R・・・右シリンダ列
21・・・高圧電源用ワイヤーハーネス
22・・・低圧電源用ワイヤーハーネス
23・・・信号用ワイヤーハーネス
24・・・オイルフィルタ装置
25・・・冷却液管
100・・・エンジン
LB・・・左バンク(第1バンク又は第2バンク)
RB・・・右バンク(第1バンク又は第2バンク)
VA・・・バンク間エリア