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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087097
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】オイルフィルタ装置およびエンジン
(51)【国際特許分類】
   F01M 11/10 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
F01M11/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201695
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津島 幸平
【テーマコード(参考)】
3G015
【Fターム(参考)】
3G015AA08
3G015BG14
3G015BG21
3G015FC04
(57)【要約】
【課題】オイルフィルタの交換時期の報知が意図しないタイミングで行われることを防止できる技術を提供する。
【解決手段】例示的なオイルフィルタ装置は、複数のオイルフィルタと、前記複数のオイルフィルタを着脱可能に設けられ、オイルの通路を構成する通路構成部と、前記オイルの通路の切り替えを行う切替部と、前記オイルフィルタの交換時期を検出する検出部と、前記検出部の検出動作を阻害する阻害部と、を備える。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のオイルフィルタと、
前記複数のオイルフィルタを着脱可能に設けられ、オイルの通路を構成する通路構成部と、
前記オイルの通路の切り替えを行う切替部と、
前記オイルフィルタの交換時期を検出する検出部と、
前記検出部の検出動作を阻害する阻害部と、
を備える、オイルフィルタ装置。
【請求項2】
前記オイルの通路は、前記切替部によって、前記複数のオイルフィルタのうち、全てのオイルフィルタにオイルを送る第1態様と、一部のオイルフィルタにオイルを送る第2態様とに切替可能に設けられ、
前記阻害部は、前記第2態様に切り替えられる場合に前記検出動作を阻害する、請求項1に記載のオイルフィルタ装置。
【請求項3】
前記検出部は、
前記オイルフィルタのオイルの入口側の圧力である第1圧力を受ける第1感圧部と、
前記オイルフィルタのオイルの出口側の圧力である第2圧力を受ける第2感圧部と、
前記第1感圧部と前記第2感圧部とが受ける圧力の差により作動するスイッチ部と、
を有し、
前記阻害部は、前記第1感圧部への前記第1圧力の付与を阻害する、請求項1に記載のオイルフィルタ装置。
【請求項4】
前記切替部は、ロータリバルブで構成され、
前記阻害部は、前記ロータリバルブの壁部で構成される、請求項3に記載のオイルフィルタ装置。
【請求項5】
前記通路構成部には、前記複数のオイルフィルタのそれぞれにオイルを分配する分配通路が設けられ、
前記切替部は、前記分配通路におけるオイルの分配状態を切替可能に設けられ、
前記複数のオイルフィルタは、前記分配通路を挟む第1側と第2側とに配置され、
前記検出部は、前記第1側と前記第2側とのうちの一方側に配置される、請求項3に記載のオイルフィルタ装置。
【請求項6】
前記検出部は、
前記オイルフィルタのオイルの入口側と出口側との圧力差で動く移動部と、
前記移動部との接触を検出するスイッチ部と、
を有し、
前記阻害部は、前記移動部の移動を阻害する機構である、請求項1に記載のオイルフィルタ装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のオイルフィルタ装置を備える、エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルフィルタ装置およびエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンが備えるオイルフィルタについて次のような技術が知られる。
【0003】
特許文献1には、舶用内燃機関が備える潤滑油フィルタが開示される。特許文献1に開示される潤滑油フィルタは、2個の円筒状の濾過部と、これらの濾過部への潤滑油の流路を切り替える切替コックとを備える。切替コックの操作により、潤滑油が両方の濾過部に供給される状態と、片方の濾過部のみに供給される状態とに切替可能に設けられる。濾過部を分解する際には、切替コックの操作により分解する方の濾過部へのオイル供給が停止される。
【0004】
また、特許文献2には、内燃機関に設けられたオイルフィルタの交換時期を検出する装置が開示される。特許文献2には、オイルフィルタの前後差圧に基づいて、オイルフィルタの交換時期が知らされることが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2-42110号公報
【特許文献2】実開昭62-105318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば舶用エンジンにおいては、エンジンの運転を維持しながら、オイルフィルタの交換が行われる場合がある。この場合、特許文献1に開示されるように、切替コックの操作により交換対象のオイルフィルタにオイルが流入しないようにして、オイルフィルタの交換作業を実施することができる。
【0007】
交換対象のオイルフィルタにオイルが流入しないようにすると、その間、通常よりも少ない数のオイルフィルタにオイルが流入することになる。このために、オイルフィルタの前後差圧が高まり、特許文献2に開示されるようなオイルフィルタの交換時期を検出する装置を備えていると、当該装置が作動する可能性がある。すなわち、オイルフィルタの交換作業中に、オイルフィルタの交換時期が報知されるという好ましくない事態が生じる可能性がある。
【0008】
本発明は、オイルフィルタの交換時期の報知が意図しないタイミングで行われることを防止できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の例示的なオイルフィルタ装置は、複数のオイルフィルタと、前記複数のオイルフィルタを着脱可能に設けられ、オイルの通路を構成する通路構成部と、前記オイルの通路の切り替えを行う切替部と、前記オイルフィルタの交換時期を検出する検出部と、前記検出部の検出動作を阻害する阻害部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
例示的な本発明によれば、オイルフィルタの交換時期の報知が意図しないタイミングで行われることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】エンジンの概略の構成を示す左側面図
図2】エンジンの概略の構成を示す正面図
図3】エンジンの概略の構成を示す平面図
図4】エンジンが備えるオイル供給システムの概略の構成を示す図
図5】オイルフィルタ装置の概略の構成を示す斜視図
図6】オイルフィルタ装置の概略の構成を示す正面図
図7】通路構成部を図6のA-A位置で切断した断面斜視図
図8】通路構成部を図6のB-B位置で切断した断面斜視図
図9】切替部の概略の構成を示す斜視図
図10図6のA-A位置における断面を示す斜視図
図11】切替部の向きの一例を示す図
図12図11の状態から切替部が90°回転かれた状態を示す図
図13図6のC-C位置における断面図
図14】阻害部が検出部の検出動作を阻害している状態を示す図
図15】変形例を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図面においては、適宜、3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。以下の説明においては、X方向を前後方向、Y方向を左右方向、Z方向を上下方向とする。なお、+X側が前側、-X側が後側とする。+Y側を左側、-Y側を右側とする。+Z側を上側、-Z側を下側とする。詳細には、図1に示すクランク軸(出力軸)の中心線Jが延びる方向を前後方向とする。フライホイールハウジング3に収容されるフライホイール(不図示)に対してシリンダブロック11が配置される側を前側とする。また、シリンダブロック11に対してオイルパン2が配置される側を下側として上下方向を定義する。前後方向および上下方向に直交する方向を左右方向と定義し、前方から後方に向かって見た場合に左となる側を左側、右となる側を右側とする。なお、これらの方向は単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定する意図はない。
【0013】
<1.エンジンの概要>
図1は、本発明の実施形態に係るエンジン100の概略の構成を示す左側面図である。図2は、本発明の実施形態に係るエンジン100の概略の構成を示す正面図である。図3は、本発明の実施形態に係るエンジン100の概略の構成を示す平面図である。図1から図3を参照して、エンジン100の概要を説明する。
【0014】
エンジン100は、一例として船舶に使用する舶用エンジンである。ただし、エンジン100は、舶用エンジンに限らず、他の用途に利用されるエンジンであってもよい。エンジン100はディーゼルエンジンである。エンジン100は、大きくは、エンジン本体1とオイルパン2とを備える。エンジン本体1は、シリンダブロック11と、ヘッドブロック12と、ヘッドカバー13とを備える。
【0015】
シリンダブロック11の内部には、複数のピストン(不図示)と、各ピストンに連結され、前後方向に延びるクランク軸(不図示)とが配置される。クランク軸は、ピストンの往復運動を回転運動に変換する。クランク軸の後端には、フライホイールハウジング3に収容されるフライホイール(不図示)が取り付けられる。フライホイールは、クランク軸と一体的に回転し、エンジン100の動力を取り出すために利用される。
【0016】
シリンダブロック11は、左右のそれぞれに、前後方向に並ぶ複数のシリンダ(不図示)を有する。複数のピストンのそれぞれは、各シリンダ内に配置される。なお、エンジン100は、一例としてV型12気筒エンジンであり、左右のそれぞれにおいて前後方向に並ぶシリンダの数は6個である。
【0017】
ヘッドブロック12は、各シリンダの上方に重ねて配置される。すなわち、エンジン本体1は、左右のそれぞれに、前後方向に並ぶ6つのヘッドブロック12を有する。各ヘッドブロック12は、シリンダ、ヘッドブロック12、および、ピストンで構成される燃焼室にガスを供給するための吸気ポート(不図示)と、燃焼室からガスを排気する排気ポート(不図示)とを有する。
【0018】
ヘッドカバー13は、各ヘッドブロック12の上方に配置される。すなわち、エンジン本体1は、左右のそれぞれに、前後方向に並ぶ6つのヘッドカバー13を有する。各ヘッドカバー13は、ヘッドブロック12に配置される吸気弁および排気弁(不図示)を覆う。各ヘッドカバー13には、インジェクタ(不図示)が取り付けられる。インジェクタの、燃料を噴射する噴射口が設けられる一端部(下端部)は、燃焼室に臨む。各インジェクタは、燃料を高圧として吐出する燃料ポンプ4から供給される燃料を、適宜のタイミングで燃焼室に噴射する。燃焼室に噴射された燃料の燃焼により生じる力によって、ピストンが往復運動を行う。なお、本実施形態では、燃料ポンプ4は、エンジン100の左側面の後方に配置される。
【0019】
また、エンジン100は、給気マニホールド5および排気マニホールド6を備える。
【0020】
給気マニホールド5は、詳細は後述する過給機7から供給された空気または混合気である給気を各シリンダ(燃焼室)に分配する。詳細には、給気マニホールド5は、左右のそれぞれに配置されるシリンダ列に対応して、エンジン本体1の左右の側面に1つずつ配置される。左右に配置される給気マニホールド5は、いずれも前後方向に延びる。以下、左側のシリンダ列に対応して左側に設けられる給気マニホールド5を左給気マニホールド5Lと表現する。右側のシリンダ列に対応して右側に設けられる給気マニホールド5を右給気マニホールド5Rと表現する。
【0021】
排気マニホールド6は、各シリンダ(燃焼室)からの排気を集約する。詳細には、排気マニホールド6は、左右のそれぞれに配置されるシリンダ列に対応して2つ配置される。2つの排気マニホールド6は、いずれも前後方向に延びる。2つの排気マニホールド6は、V型エンジンを構成する左右のバンク(シリンダ列)により形成されるVバンクの内側に左右に並んで配置される。以下、左側のシリンダ列に対応してVバンク内の左側に配置される排気マニホールド6を、左排気マニホールド6Lと表現する。右側のシリンダ列に対応してVバンク内の右側に配置される排気マニホールド6を、右排気マニホールド6Rと表現する。
【0022】
過給機7は、エンジン100の後方上部に配置される。過給機7は、エンジン100の外部から供給された空気や混合気を加圧圧縮してインタークーラ8を介して給気マニホールド5に供給する。過給機7は、排気マニホールド6から供給される排ガスを駆動源とするターボチャージャである。
【0023】
なお、給気マニホールド5と接続されるインタークーラ8は、不図示のポンプの駆動により冷却水を供給され、給気を冷却する。過給機7から供給される給気は、加圧圧縮されることにより圧縮熱が発生して温度が上昇する。インタークーラ8は、冷却水と、加圧圧縮された給気との間で熱交換を行うことで給気を冷却する。すなわち、インタークーラ8が設けられることにより、給気マニホールド5に供給される給気の温度を所望の温度に調整することができる。
【0024】
過給機7は、詳細には、エンジン100の左側に設けられる左過給機7Lと、エンジン100の右側に設けられる右過給機7Rとを有する。左過給機7Lは、インタークーラ8を介して左給気マニホールド5Lに空気等(給気)を供給する。右過給機7Rは、インタークーラ8を介して右給気マニホールド5Rに空気等(給気)を供給する。左排気マニホールド6Lで集約された排ガスは、左過給機7Lを介して外部に排気される。右排気マニホールド6Rで集約された排ガスは、右過給機7Rを介して外部に排気される。
【0025】
オイルパン2は、シリンダブロック11の下方に配置され、潤滑油を貯留する。図4は、本発明の実施形態に係るエンジン100が備えるオイル供給システム20の概略の構成を示す図である。オイル供給システム20は、オイルパン2に貯留される潤滑油をエンジン100の潤滑が必要な各部に供給する。
【0026】
図4に示すように、オイルパン2に貯留されたオイルは、オイルポンプ21の駆動によってオイルクーラ22を介してオイルフィルタ装置30へ送られる。なお、本実施形態では、オイルポンプ21によって吸い上げられたオイルのうちの一部は、遠心こし器23へ送られ、遠心こし器23で浄化された後にオイルパン2へ戻される。これにより、オイルパン2内のオイルの浄化を図ることができる。
【0027】
オイルフィルタ装置30へ送られたオイルは、オイルフィルタ装置30が備えるオイルフィルタを通過することにより浄化される。オイルフィルタ装置30から流出したオイルは、調圧弁24により所定の圧力に調整されて、エンジン本体1に設けられるメインギャラリ25へ送られる。なお、調圧弁24によりリリーフされたオイルはオイルパン2へ戻される。
【0028】
メインギャラリ25は、詳細には、左右のシリンダ列のそれぞれに対して1つずつ設けられる。各メインギャラリ25へ送られたオイルは、ピストンやクランク軸等のエンジン本体1に含まれる潤滑が必要な各部に分配される。メインギャラリ25からエンジン本体1の各部へ供給されたオイルは、適宜オイルパン2へ戻される。また、2つのメインギャラリ25のうちの一方を通過したオイルは、過給機7へ供給される。詳細には、オイルは、左過給機7Lと右過給機7Rとへ供給される。2つのメインギャラリ25のうちの他方を通過したオイルは、燃料ポンプ4へ供給される。過給機7および燃料ポンプ4へ供給されたオイルは、適宜オイルパン2へ戻される。
【0029】
<2.オイルフィルタ装置>
上述のように本実施形態のエンジン100は、オイルフィルタ装置30を備える。以下、オイルフィルタ装置30の詳細について説明する。なお、本実施形態では、オイルフィルタ装置30は、図1及び図2に示すように、エンジン100の前端左側に配置される。ただし、エンジン100におけるオイルフィルタ装置30の配置は適宜変更されてよい。
【0030】
図5は、本発明の実施形態に係るオイルフィルタ装置30の概略の構成を示す斜視図である。図6は、本発明の実施形態に係るオイルフィルタ装置30の概略の構成を示す正面図である。図5および図6に示すように、オイルフィルタ装置30は、複数のオイルフィルタ31と、通路構成部32と、切替部33と、検出部34とを備える。
【0031】
オイルフィルタ31は、内部に濾過部(不図示)を有する。オイルフィルタ31の入口部分から内部に入ったオイル(潤滑油)は、濾過部を通過してオイルフィルタ31の出口部分から外部に排出される。オイルフィルタ31内に入ったオイルは、濾過部を通過することによって不純物を除去されて浄化される。オイルフィルタ31は、濾過部が不純物によって汚れると交換の必要がある。オイルフィルタ31の交換は、オイルフィルタ全体の交換であっても、濾過部を含む一部の交換であってもよい。
【0032】
本実施形態では、オイルフィルタ31は上下に延びる有底筒状であり、内部に配置される濾過部は上下に延びる円筒状である。オイルフィルタ31の数は4つであり、4つのオイルフィルタ31は、通路構成部32の下面に着脱可能に取り付けられる。換言すると、通路構成部32は、複数のオイルフィルタ31を着脱可能に設けられる。オイルフィルタ31の交換時には、オイルフィルタ31は、通路構成部32から取り外される。通路構成部32に取り付けられた状態において、4つのオイルフィルタ31の配置は、左右方向に2つのオイルフィルタ31が並ぶオイルフィルタ列が前後方向に2つ並ぶ構成となっている。
【0033】
通路構成部32は、オイルの通路Pを構成する。オイルの通路Pは、通路構成部32の内部に設けられる。オイルの通路Pは、通路構成部32に設けられる入口部321(後述の図7等参照)および出口部322と繋がる。入口部321は、オイルパン2から供給されたオイルが装置30内に入る部分である。出口部322は、オイルフィルタ31で浄化されたオイルを装置30外に出す部分である。本実施形態では、入口部321は、通路構成部32の右側面に設けられる。出口部322は、通路構成部32の上面に設けられる。
【0034】
図7は、通路構成部32を図6のA-A位置で切断した断面斜視図である。図8は、通路構成部32を図6のB-B位置で切断した断面斜視図である。図7および図8に示すように、通路構成部32は、オイルの通路Pを形成するための複数の内部空間S1~S5を有する。
【0035】
詳細には、通路構成部32は、左右方向に延びる中央内部空間S1を有する。中央内部空間S1は円柱状の空間である。中央内部空間S1の右端は、入口部321に繋がる。中央内部空間S1の左端は、通路構成部32の左側面に設けられる取付孔323に繋がる。取付孔323は、切替部33を取り付けるための貫通孔である。切替部33は、取付孔323を介して中央内部空間S1内に入れられる。後述のように、中央内部空間S1に配置される切替部33は、通路構成部32と共にオイルの通路Pを構成する。
【0036】
中央内部空間S1を構成する内壁(内周面)には、複数の通路開口POが設けられる。詳細には、4つの通路開口PO1~PO4が設けられる。第1通路開口PO1は、中央内部空間S1の前方右側に配置され、中央内部空間S1よりも前方に配置される前方第1内部空間S2に繋がる。第2通路開口PO2は、中央内部空間S1の前方左側に配置され、中央内部空間S1よりも前方に配置される前方第2内部空間S3に繋がる。第3通路開口PO3は、中央内部空間S1の後方右側に配置され、中央内部空間S1よりも後方に配置される後方第1内部空間S4に繋がる。第4通路開口PO4は、中央内部空間S1の後方左側に配置され、中央内部空間S1よりも後方に配置される後方第2内部空間S5に繋がる。
【0037】
前方第1内部空間S2と前方第2内部空間S3とは、概ね上下に並ぶ。前方第1内部空間S2は、主として、前方第2内部空間S3よりも下方に配置される。前方第1内部空間S2と前方第2内部空間S3とは、前列に配置される2つのオイルフィルタ31用のオイルの通路Pを構成する。
【0038】
前方第1内部空間S2の底面には、左右方向に間隔をあけて配置される2つの円形状の底面開口BOが設けられる。各底面開口BOは、オイルフィルタ31が取り付けられる位置に設けられる。また、前方第2内部空間S3の底面から下方に向かって延びる筒状部CPが、左右方向に間隔をあけて配置される。前方第2内部空間S3と、円筒状の筒状部CPの内部空間とは繋がる。各筒状部CPは、前方第1内部空間S2内を貫通し、オイルフィルタ31が取り付けられる位置に設けられる。詳細には、オイルフィルタ31が取り付けられる位置に設けられる各筒状部CPと各底面開口BOとは、平面視において中心位置を同じとする。当該中心位置を基準として、筒状部CPは、底面開口BOよりも径方向内方に配置される。
【0039】
後方第1内部空間S4と後方第2内部空間S5とは、概ね上下に並ぶ。後方第1内部空間S4は、主として、後方第2内部空間S5よりも下方に配置される。後方第1内部空間S4と後方第2内部空間S5とは、後列に配置される2つのオイルフィルタ31用のオイルの通路Pを構成する。
【0040】
後方第1内部空間S4の底面には、左右方向に間隔をあけて配置される2つの円形状の底面開口BOが設けられる。各底面開口BOは、オイルフィルタ31が取り付けられる位置に設けられる。また、後方第2内部空間S5の底面から下方に向かって延びる筒状部CPが、左右方向に間隔をあけて配置される。後方第2内部空間S5と、円筒状の筒状部CPの内部空間とは繋がる。各筒状部CPは、後方第1内部空間S4内を貫通し、オイルフィルタ31が取り付けられる位置に設けられる。詳細には、オイルフィルタ31が取り付けられる位置に設けられる各筒状部CPと各底面開口BOとは、平面視において中心位置を同じとする。当該中心位置を基準として、筒状部CPは、底面開口BOよりも径方向内方に配置される。
【0041】
切替部33は、通路構成部32に配置される。上述のように、切替部33は、詳細には、通路構成部32の中央内部空間S1に配置される。切替部33は、オイルの通路Pの切り替えを行う。図9は、切替部33の概略の構成を示す斜視図である。本実施形態において、切替部33はロータリバルブで構成される。
【0042】
切替部33は、左右方向に延びる円筒状の筒部331と、筒部331の一方端(詳細には左端)に配置されるつまみ部332とを有する。図5および図6に示されるように、つまみ部332は、切替部33が中央内部空間S1に配置された状態で、少なくとも一部が通路構成部32よりも外方に突出する。詳細には、切替部33の中央内部空間S1に配置される部分は、通路構成部32の左側面に取り付けられるカバー部材35によって覆われる。つまみ部332の一部は、カバー部材35を貫通してカバー部材よりも外方に突出する。すなわち、オイルフィルタ31の交換作業を行う作業員は、オイルフィルタ装置30の外部からつまみ部332を掴んで切替部33を回転させることができる。なお、つまみ部332には、作業員が操作し易いように、レバー部材等の取っ手が取り付けられてよい。
【0043】
筒部331の内部には、左右方向に隣り合う第1バルブ内空間VS1と第2バルブ内空間VS2とが設けられる。第1バルブ内空間VS1と第2バルブ内空間VS2とは、筒部331の内部に配置される隔壁333により隔てられる。第1バルブ内空間VS1は、第2バルブ内空間VS2よりも右方に位置する。
【0044】
筒部331の外周には、第1バルブ内空間VS1と繋がる複数の第1バルブ開口VO1が設けられる。本実施形態では、第1バルブ開口VO1の数は3つである。3つの第1バルブ開口VO1は、円筒状の筒部331の中心を基準とする周方向に沿って90°間隔で配置される。また、筒部331の外周には、第2バルブ内空間VS2と繋がる第2バルブ開口VO2が、第1バルブ開口VO1と同数設けられる。本実施形態では、第2バルブ開口VO2の数は3つである。3つの第2バルブ開口VO2は、円筒状の筒部331の中心を基準とする周方向に沿って90°間隔で配置される。第1バルブ開口VO1と第2バルブ開口VO2とが設けられる周方向位置は同じである。図9に示す例では、第1バルブ開口VO1および第2バルブ開口VO2は、筒部331の前面、上面、および、後面に設けられる。筒部331の下面には、第1バルブ開口VO1および第2バルブ開口VO2は設けられない。
【0045】
図10は、図6のA-A位置における断面を示す斜視図である。図10を参照して、オイルフィルタ装置30におけるオイルの流れについて説明する。なお、図10においては、切替部33は、筒部331の第1バルブ開口VO1および第2バルブ開口VO2が前面、上面、および、後面に位置する向きとなっている。
【0046】
入口部321を通過したオイルは、第1バルブ内空間VS1に入る。第1バルブ内空間VS1に入ったオイルは、第1バルブ開口VO1の位置に応じて、各オイルフィルタ31に分配される。すなわち、通路構成部32には、複数のオイルフィルタ31のそれぞれにオイルを分配する分配通路P1が設けられる。
【0047】
なお、切替部33は、中央内部空間S1に回転可能に配置される。切替部33の回転により、第1バルブ開口VO1の位置を変更することができる。切替部33の回転により、分配通路P1から、どのオイルフィルタ31にオイルを供給するかを変更することができる。すなわち、切替部33は、分配通路P1におけるオイルの分配状態を切替可能に設けられる。
【0048】
図10に示す例では、通路構成部32に設けられる第1通路開口PO1(図7参照)と、3つの第1バルブ開口VO1のうちの1つとが、前後方向に対向する。また、通路構成部32に設けられる第3通路開口PO3(図7参照)と、3つの第1バルブ開口VO1のうちの他の1つとが、前後方向に対向する。このために、第1バルブ内空間VS1に入ったオイルは、第1バルブ開口VO1および第1通路開口PO1を介して前方第1内部空間S2に送られる。また、第1バルブ内空間VS1に入ったオイルは、第1バルブ開口VO1および第3通路開口PO3を介して後方第1内部空間S4に送られる。
【0049】
前方第1内部空間S2に入ったオイルは、2つの底面開口BOのそれぞれを介して、前列の2つのオイルフィルタ31の内部に入る。詳細には、オイルフィルタ31の内部に配置される円筒状の濾過部の外方にオイルが入る。濾過部の外方に入ったオイルは、濾過部を通過して円筒状の濾過部の内方に入る。この際、濾過部によってオイルは浄化される。濾過部に内方に入ったオイルは、筒状部CPを介して前方第2内部空間S3に入る。前方第2内部空間S3には、前列の2つのオイルフィルタ31のそれぞれで浄化されたオイルが入る。
【0050】
後方第1内部空間S4に入ったオイルは、2つの底面開口BOのそれぞれを介して、後列の2つのオイルフィルタ31の内部に入る。詳細には、オイルフィルタ31の内部に配置される円筒状の濾過部の外方にオイルが入る。濾過部の外方に入ったオイルは、濾過部を通過して円筒状の濾過部の内方に入る。この際、濾過部によってオイルは浄化される。濾過部に内方に入ったオイルは、筒状部CPを介して後方第2内部空間S5入る。後方第2内部空間S5には、後列の2つのオイルフィルタ31のそれぞれで浄化されたオイルが入る。
【0051】
前方第2内部空間S3に入ったオイルは、通路構成部32に設けられる第2通路開口PO2(図7参照)と、第2バルブ開口VO2とを介して第2バルブ内空間VS2に入る。また、後方第2内部空間S5に入ったオイルは、通路構成部32に設けられる第4通路開口PO4(図7参照)と、第2バルブ開口VO2とを介して第2バルブ内空間VS2に入る。すなわち、通路構成部32には、4つのオイルフィルタ31のそれぞれから排出されたオイルを集約する集約通路P2が設けられる。第2バルブ内空間VS2(集約通路P2)に入ったオイルは、上方に配置される第2バルブ開口VO2を介して出口部322に送られる。出口部322に送られたオイルは、装置30の外部に排出される。出口部322からは、オイルフィルタ31により浄化されたオイルが排出される。
【0052】
図11は、切替部33の向きの一例を示す図である。図12は、図11の状態から切替部33が90°回転かれた状態を示す図である。詳細には、回転方向は、左側方からの平面視において、反時計回り方向である。なお、図11の示す切替部33の向きは、図10に示す例における切替部33の向きと同じである。切替部33が、図12に示す向きとされた場合、前方側に第1バルブ開口VO1および第2バルブ開口VO2が配置されない。一方、後方側には、第1バルブ開口VO1および第2バルブ開口VO2が配置される。このために、第1バルブ内空間VS1から前方第1内部空間S2へオイルが送られない。一方、第1バルブ内空間VS1から後方第1内部空間S4へオイルが送られる。すなわち、分配通路P1から、前列の2つのオイルフィルタ31にはオイルは分配されず、後列の2つのオイルフィルタにのみオイルが分配される。
【0053】
以上からわかるように、通路構成部32に設けられるオイルの通路Pは、切替部33によって、複数のオイルフィルタ31のうち、全てのオイルフィルタにオイルを送る第1態様と、一部のオイルフィルタにオイルを送る第2態様とに切替可能に設けられる。このような構成では、エンジン100の運転を維持した状態で、オイルフィルタ31の交換を行うことができる。
【0054】
本実施形態では、前列の2つのオイルフィルタ31の交換を行いたい場合には、切替部33の向きを調整して、前列の2つのオイルフィルタ31へのオイルの供給を止めつつ、後列の2つのオイルフィルタ31へのオイルの供給を維持すればよい。詳細には、切替部33の向きを図12に示す向きとすればよい。また、後列の2つのオイルフィルタ31の交換を行いたい場合には、切替部33の向きを調整して、前列の2つのオイルフィルタ31へのオイルの供給を維持しつつ、後列の2つのオイルフィルタ31へのオイルの供給を止めればよい。詳細には、切替部33の向きを、図11に示す状態から、図12に示す状態とする場合とは反対向きに90°回転させればよい。
【0055】
なお、本実施形態では、2つのオイルフィルタ31を一組として、オイルフィルタ31の交換作業を行う構成としているが、これは例示にすぎない。例えば、オイルフィルタ31の交換作業は、1つずつ行われるようにしてもよい。
【0056】
図13は、図6のC-C位置における断面図である。なお、図13においては、オイルフィルタ31については、大部分の記載を省略している。主に図13を参照して、オイルフィルタ装置30が備える検出部34について説明する。検出部34は、通路構成部32に配置される。検出部34は、オイルフィルタ31の交換時期を検出する。検出部34は、オイルフィルタ31の交換時期を報知する報知部に含まれる構成であってよい。
【0057】
オイルフィルタ31は、使用により内部に配置される濾過部が汚れて(例えば目詰まりが生じて)、オイルを通し難くなる。このために、使用期間が長くなるにつれて、オイルフィルタ31の入口側の方が出口側よりも圧力が高くなっていく。すなわち、使用によってオイルフィルタ31の前後の差圧に変化が生じる。検出部34は、この差圧の変化を利用してオイルフィルタ31の交換時期を検出する。検出部34は、差圧が所定の大きさ以上となると、オイルフィルタ31の交換時期を検出する。
【0058】
なお、オイルフィルタ31の交換時期を検出する検出部は、オイルフィルタ31ごとに設けられてよい。ただし、本実施形態では、複数のオイルフィルタ31は、分配通路P1(図10参照)を挟む第1側と第2側とに同一数ずつ対称に配置される。詳細には、4つのオイルフィルタ31は、分配通路P1を挟む前側と後側とに2つずつ対称に配置される。そして、同じ側(前側又は後側)に配置されるオイルフィルタ31は、一組となってオイルの供給が行われる。オイルの通路Pの構造は、前列のオイルフィルタ31の組の構成と、後列のオイルフィルタ31の組の構成とで同様である。以上のような構成では、2つのオイルフィルタ組の一方側(前側又は後側)のオイルフィルタ31の状態から他方側の組のオイルフィルタ31の状態を推測することができる。このような点を考慮して、本実施形態では、検出部34は、第1側と第2側とのうちの一方側に配置される構成となっている。詳細には、検出部34は、分配通路P1の前側にのみ配置される。検出部の数を少なくして、オイルフィルタ装置30を簡単な構成とすることができる。
【0059】
詳細には、図7に示すように、通路構成部32の中央内部空間S1を構成する内壁には、第1センサ開口SO1が設けられる。第1センサ開口SO1は、中央内部空間S1の前側の左右方向中央部に設けられる。第1センサ開口SO1は、前後方向に延びるセンサ空間SSに繋がる、センサ空間SSは、通路構成部32の内部に設けられる空間であり、検出部34を配置するための空間である。センサ空間SSは、通路構成部32の前端まで延びる。センサ空間SSは、前方からの平面視において円形状である。センサ空間SSは、詳細には、前方側が大径の空間であり、後方側が小径の空間であるために、前後方向の途中部分に環状の壁面部324を有する。
【0060】
図13に示すように、検出部34は、第1可動部材341と、第2可動部材342と、スイッチ部343と、第1弾性部材344と、第2弾性部材345とを有する。
【0061】
第1可動部材341は、有底筒状である。第1可動部材341は、前方に開口する向きとされてセンサ空間SSの大径部分に配置される。第2可動部材342は、円板部342aと棒状部342bとで構成され、断面視T字状である。第2可動部材342は、棒状部342bが前後に延びる向きとされる。そして、円板部342aが第1可動部材341の内部に収容される。棒状部342bの一部は、第1可動部材341の前端より前方に突出する。
【0062】
スイッチ部343は、装置30の外部から挿入されて、センサ空間SSの前端に固定状態で取り付けられる。スイッチ部343は、後方に向かって延びる針部343aを有する。第1弾性部材344および第2弾性部材345は、詳細には、圧縮ばねである。第1弾性部材344は、第1可動部材341とスイッチ部343との前後方向に配置されて、第1可動部材341を壁面部324に向けて付勢する。第2弾性部材345は、第2可動部材342の円板部342aと、スイッチ部343との前後方向間に配置されて、第2可動部材342を第1可動部材341に向けて付勢する。
【0063】
なお、第1可動部材341と第2可動部材342とで構成される移動部340は、1つの部材で設けられてもよい。この場合、弾性部材の数も1つとされてよい。
【0064】
分配通路P1から4つのオイルフィルタ31にオイルを分配する通常の使用状態では、切替部33の向きは、上述のように図11の示す向きとされる。この場合、筒部331の外周に設けられる第2センサ開口SO2(図11も参照)が、通路構成部32に設けられる第1センサ開口SO1と前後方向に対向する。なお、第2センサ開口SO2は、第1バルブ内空間VS1と繋がる。
【0065】
通常の使用状態では、分配通路P1に入ったオイルの一部が、第1センサ開口SO1および第2センサ開口SO2を介してセンサ空間SS内に入る。これにより、第1可動部材341の後端面に、前方に向く圧力(第1圧力)が加わる。また、第1可動部材341および第2可動部材342の前端面には、前列の2つのオイルフィルタ31のそれぞれから排出されたオイルが通る前方第2内部空間S3のオイルによって、後方に向く圧力(第2圧力)が加わる。濾過部が汚れるにつれて、第2圧力に対して第1圧力が大きくなる。そして、交換が必要なほど濾過部が汚れると、移動部340が前方側に移動して、棒状部342bの前端が針部343aに接触する。スイッチ部343は、当該接触によりオン状態となる。スイッチ部343がオン状態となると、オイルフィルタ31の交換時期が報知される。
【0066】
なお、報知の手法としては、ブザー音や音声等の音の発生、モニタへの表示、警告灯等の光の発光等が利用されてよい。
【0067】
第1可動部材341の後端面に加わる第1圧力は、オイルフィルタ31のオイルの入口側の圧力に相当する。一方、第1可動部材341および第2可動部材342の前端面に加わる第2圧力は、オイルフィルタ31のオイルの出口側の圧力に相当する。このことから、検出部34について、次のように表現することができる。検出部34は、オイルフィルタ31のオイルの入口側の圧力である第1圧力を受ける第1感圧部と、オイルフィルタ31のオイルの出口側の圧力である第2圧力を受ける第2感圧部と、を有する。そして、検出部34は、第1感圧部と第2感圧部とが受ける圧力の差により作動するスイッチ部343を有する。なお、第1感圧部は、第1可動部材341の一部(後端面)により構成される。また、第2感圧部は、第1可動部材341の一部(前端面)および第2可動部材342の一部(前端面)により構成される。
【0068】
本実施形態では、オイルフィルタ装置30は、切替部33の切替操作に連動して検出部34の検出動作を阻害する阻害部36(後述の図14参照)を備える。このような阻害部36が設けられることで、分配通路P1におけるオイルの分配状態が変更されたことに起因してオイルフィルタの交換時期が検出部34により検出されることを防止できる。すなわち、意図しないタイミングで、オイルフィルタ31の交換時期が報知されることを防止できる。
【0069】
上述のように、切替部33は、分配通路P1から全てにオイルを送る第1態様と、一部にオイルを送る第2態様とに切替可能である。阻害部36は、第2態様に切り替えられる場合に検出部34の検出動作を阻害する。第1態様は、エンジン100の作動時における通常の使用態様である。第2態様は、エンジン100を動作させながらオイルフィルタ31の交換作業を行う際に利用される態様である。すなわち、本実施形態では、エンジン100の交換作業中に、検出部34がオイルフィルタの交換時期を検出することを防止できる。すなわち、意図しないタイミングでオイルフィルタ31の交換時期が報知されることを防止できる。
【0070】
詳細には、阻害部36は、上述の第1感圧部への第1圧力の付与を阻害する。なお、第1圧力の付与の阻害は、第1圧力の付与の遮断であってよい。第1感圧部へ第1圧力の付与が阻害されるために、オイルフィルタ31の濾過部が汚れて第1圧力が上昇した場合でも、検出部34は当該圧力上昇に応じた動作を行うことができない。より詳細には、移動部340がスイッチ部343側(前側)に向かって移動しない。すなわち、オイルフィルタ31の交換時期が検出されることがなく、意図しないタイミングでオイルフィルタ31の交換時期が報知されることを防止できる。
【0071】
図14は、阻害部36が検出部34の検出動作を阻害している状態を示す図である。図14は、切替部33が上述の図12に示す状態とされた場合を示す。すなわち、前列の2つのオイルフィルタ31の交換を行うために、前列の2つのオイルフィルタ31へのオイルの供給が停止され、後列の2つのオイルフィルタ31にのみオイルが供給されている状態を示す。
【0072】
4つのオイルフィルタ31にオイルを供給する状態から、2つのオイルフィルタ31にのみオイルを供給する状態とすると、オイルフィルタ31の入口側におけるオイルの圧力が高くなり易い。このために、通常状態の場合と同様に検出部34を作動させると、オイルフィルタ31の交換作業中に、不必要にオイルフィルタ31の交換時期が検出されることになる。これを防止するために、阻害部36は、分配通路P1とセンサ空間SSとの連通状態を遮断する。
【0073】
図14に示すように、阻害部36は、切替部33の筒部331の外周壁である。換言すると、阻害部36は、ロータリバルブ33の壁部で構成される。当該壁部が、通路構成部32に設けられる第1センサ開口SO1を塞ぐために、第1可動部材341の後端面への第1圧力の付与が阻害される。これにより、移動部340の前方側への移動を防止して、検出部34の機能を無効化することができる。ロータリバルブ33の壁部を阻害部36に利用することで、少ない部品点数でオイルフィルタ31の交換時期の検出が不必要に行われることを防止できる。
【0074】
なお、以上では、ロータリバルブ33の壁部が阻害部36として利用されたが、これは例示にすぎない。以上と同様に、検出部34は、オイルフィルタ31のオイルの入口側と出口側との圧力差で動く移動部340と、移動部340との接触を検出するスイッチ部343とを有する構成としてよい。この場合において、図15に示すように、阻害部36Aは、移動部340の移動を阻害する機構であってよい。移動部340の移動を阻害する機構は、移動部340の移動を禁止するロック機構であってよい。例えば、ロック機構は、切替部33の切替操作に連動して、板部材361の位置を、移動部340の移動を邪魔する位置と、邪魔しない位置とに切り替える構成であってよい。
【0075】
<3.留意事項等>
本明細書中に開示される種々の技術的特徴は、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。また、本明細書中に示される複数の実施形態および変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【0076】
以上に説明した実施形態では、オイルフィルタ装置がV型エンジンに適用される構成とした。ただし、これは例示にすぎない。本発明のオイルフィルタ装置は、例えば、ピストンが上下方向に往復動する直列型エンジンや、ピストンが水平方向に往復動する水平対向型エンジン等にも適用可能である。
【0077】
また、本発明は、舶用エンジンだけでなく、陸用エンジンにも適用可能である。
【0078】
<4.付記>
本明細書における例示的なオイルフィルタ装置は、複数のオイルフィルタと、前記複数のオイルフィルタを着脱可能に設けられ、オイルの通路を構成する通路構成部と、前記オイルの通路の切り替えを行う切替部と、前記オイルフィルタの交換時期を検出する検出部と、前記検出部の検出動作を阻害する阻害部と、を備える構成(第1の構成)であってよい。
【0079】
上記第1の構成のオイルフィルタ装置において、前記オイルの通路は、前記切替部によって、前記複数のオイルフィルタのうち、全てのオイルフィルタにオイルを送る第1態様と、一部のオイルフィルタにオイルを送る第2態様とに切替可能に設けられ、前記阻害部は、前記第2態様に切り替えられる場合に前記検出動作を阻害する構成(第2の構成)であってよい。
【0080】
上記第1又は第2の構成のオイルフィルタ装置において、前記検出部は、前記オイルフィルタのオイルの入口側の圧力である第1圧力を受ける第1感圧部と、前記オイルフィルタのオイルの出口側の圧力である第2圧力を受ける第2感圧部と、前記第1感圧部と前記第2感圧部とが受ける圧力の差により作動するスイッチ部と、を有し、前記阻害部は、前記第1感圧部への前記第1圧力の付与を阻害する構成(第3の構成)であってよい。
【0081】
上記第3の構成のオイルフィルタ装置において、前記切替部は、ロータリバルブで構成され、前記阻害部は、前記ロータリバルブの壁部で構成される構成(第4の構成)であってよい。
【0082】
上記第3又は第4の構成のオイルフィルタ装置において、前記通路構成部には、前記複数のオイルフィルタのそれぞれにオイルを分配する分配通路が設けられ、前記切替部は、前記分配通路におけるオイルの分配状態を切替可能に設けられ、前記複数のオイルフィルタは、前記分配通路を挟む第1側と第2側とに配置され、前記検出部は、前記第1側と前記第2側とのうちの一方側に配置される構成(第5の構成)であってよい。
【0083】
上記第1又は第2の構成のオイルフィルタ装置において、前記検出部は、前記オイルフィルタのオイルの入口側と出口側との圧力差で動く移動部と、前記移動部との接触を検出するスイッチ部と、を有し、前記阻害部は、前記移動部の移動を阻害する機構である構成(第6の構成)であってよい。
【符号の説明】
【0084】
30・・・オイルフィルタ装置
31・・・オイルフィルタ
32・・・通路構成部
33・・・切替部(ロータリバルブ)
34・・・検出部
36、36A・・・阻害部
100・・・エンジン
340・・・移動部
341・・・第1可動部材
342・・・第2可動部材
343・・・スイッチ部
P・・・オイルの通路
P1・・・分配通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15