(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024087098
(43)【公開日】2024-07-01
(54)【発明の名称】流体供給システム
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20240624BHJP
F02M 55/02 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
F02M37/00 321A
F02M55/02 330B
F02M55/02 350U
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201697
(22)【出願日】2022-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津島 幸平
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AA16
3G066BA56
3G066CB03
3G066CB05
3G066CB07S
3G066CB16
(57)【要約】
【課題】流体を供給するシステムの分解作業時における作業性を向上することができる技術を提供する。
【解決手段】例示的な流体供給システムは、複数の装置に流体を供給する流体供給システムであって、前記複数の装置を接続する流体供給パイプと、前記流体供給パイプにシール部を介して接続される補助パイプと、を備える。前記シール部は、前記流体供給パイプと前記補助パイプとの連通状態を調節する調節部を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の装置に流体を供給する流体供給システムであって、
前記複数の装置を接続する流体供給パイプと、
前記流体供給パイプにシール部を介して接続される補助パイプと、
を備え、
前記シール部は、前記流体供給パイプと前記補助パイプとの連通状態を調節する調節部を有する、流体供給システム。
【請求項2】
前記調節部は、非電気式である、請求項1に記載の流体供給システム。
【請求項3】
前記調節部は、ねじ部である、請求項1に記載の流体供給システム。
【請求項4】
前記補助パイプは、前記流体供給パイプの一端部に接続される、請求項1に記載の流体供給システム。
【請求項5】
前記シール部は、前記補助パイプの前記流体の入口部の内径よりも小径の貫通孔を有する、請求項1に記載の流体供給システム。
【請求項6】
前記補助パイプは、曲げ部を有し、
前記補助パイプの、前記曲げ部を基準として前記シール部が設けられる側と反対側の部分を固定する固定部を備える、請求項1に記載の流体供給システム。
【請求項7】
当該流体供給システムは、エンジンの燃料供給システムであって、
前記複数の装置は、インジェクタである、請求項1から6のいずれか1項に記載の流体供給システム。
【請求項8】
前記エンジンは、第1シリンダ列と第2シリンダ列とを有し、
前記流体供給パイプは、
前記第1シリンダ列に対応して設けられる複数の前記インジェクタを接続する第1流体供給パイプと、
前記第2シリンダ列に対応して設けられる複数の前記インジェクタを接続する第2流体供給パイプと、
を有し、
前記第1流体供給パイプと前記第2流体供給パイプとは、連通路を介して互いに連通し、
前記補助パイプは、前記第1流体供給パイプと前記第2流体供給パイプとのいずれか一方に接続される、請求項7に記載の流体供給システム。
【請求項9】
前記第1シリンダ列と前記第2シリンダ列とは、それぞれ第1方向に延びると共に、互いに第2方向に並んでシリンダブロックに配置され、
前記補助パイプは、前記シリンダブロックの前記第1方向の一端側に設けられ、
前記第1流体供給パイプと前記第2流体供給パイプとのうち前記補助パイプと接続されるパイプは、前記一端からの前記第1方向の距離が遠い方のシリンダを有するシリンダ列に対応して設けられるパイプである、請求項8に記載の流体供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧送ポンプで圧縮された燃料が複数のインジェクタのそれぞれに供給される燃料供給システムを備えるエンジンが知られる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1においては、隣り合うインジェクタは、それぞれ、燃料高圧管で繋がれる。すなわち、複数のインジェクタは、燃料高圧管で直列に接続される。複数のインジェクタのうち最も上流側にあるインジェクタは、圧送燃料高圧管を介して圧送ポンプに接続される。また、複数のインジェクタのうち最も下流側にあるインジェクタにおいては、燃料排出口に閉塞部材が螺挿される。当該閉塞部材の螺挿により、高圧燃料が漏れ出すことが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えばインジェクタのメンテナンス作業等を目的として、燃料を供給するシステムの分解作業が行われることがある。特許文献1に開示されるような構成では、分解時に残圧を抜く目的で閉塞部材を緩める作業が行われる。閉塞部材を緩める際には、燃料高圧管内の残圧によって燃料が飛散する可能性がある。このために、従来においては、燃料の飛散を防止するために、ウエス等で押さえながら残圧を抜く作業が行われており、必ずしも作業性が良くなかった。
【0006】
本発明は、流体を供給するシステムの分解作業時における作業性を向上することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的な流体供給システムは、複数の装置に流体を供給する流体供給システムであって、前記複数の装置を接続する流体供給パイプと、前記流体供給パイプにシール部を介して接続される補助パイプと、を備える。前記シール部は、前記流体供給パイプと前記補助パイプとの連通状態を調節する調節部を有する。
【発明の効果】
【0008】
例示的な本発明によれば、流体を供給するシステムの分解作業時における作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】エンジンの燃料供給システムの概略の構成を示す斜視図
【
図5】燃料供給システムとシリンダブロックとの関係を示す簡略図
【
図6】
図4の破線で囲まれた部分の概略の構成を示す断面図
【
図7】
図6に示すシール部と中継部とを分解して示す分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図面においては、適宜、3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。以下の説明においては、X方向を前後方向、Y方向を左右方向、Z方向を上下方向とする。なお、+X側が前側、-X側が後側とする。+Y側を左側、-Y側を右側とする。+Z側を上側、-Z側を下側とする。詳細には、
図1に示すクランク軸(出力軸)の中心線Jが延びる方向を前後方向とする。フライホイールハウジング3に収容されるフライホイール(不図示)に対してシリンダブロック11が配置される側を前側とする。また、シリンダブロック11に対してオイルパン2が配置される側を下側として上下方向を定義する。前後方向および上下方向に直交する方向を左右方向と定義し、前方から後方に向かって見た場合に左となる側を左側、右となる側を右側とする。なお、これらの方向は単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定する意図はない。
【0011】
また、本発明の例示的な実施形態においては、流体供給システムは、エンジンの燃料供給システムである。ただし、本発明は、複数の装置に流体を供給する流体供給システムに広く適用されてよく、本発明の流体供給システムは、エンジンの燃料供給システム以外であってもよい。
【0012】
<1.エンジンの概要>
まず、本発明が適用されるエンジンの概要について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るエンジン100の概略の構成を示す左側面図である。
図2は、本発明の実施形態に係るエンジン100の概略の構成を示す正面図である。
図3は、本発明の実施形態に係るエンジン100の概略の構成を示す平面図である。
図1から
図3を参照して、エンジン100の概要を説明する。
【0013】
エンジン100は、一例として船舶に使用する舶用エンジンである。ただし、エンジン100は、舶用エンジンに限らず、他の用途に利用されるエンジンであってもよい。エンジン100は、例えば陸用エンジンであってもよい。なお、エンジン100はディーゼルエンジンである。エンジン100は、大きくは、エンジン本体1とオイルパン2とを備える。エンジン本体1は、シリンダブロック11と、ヘッドブロック12と、ヘッドカバー13とを備える。
【0014】
シリンダブロック11の内部には、複数のピストン(不図示)と、各ピストンに連結され、前後方向に延びるクランク軸(不図示)とが配置される。クランク軸は、ピストンの往復運動を回転運動に変換する。クランク軸の後端には、フライホイールハウジング3に収容されるフライホイール(不図示)が取り付けられる。フライホイールは、クランク軸と一体的に回転し、エンジン100の動力を取り出すために利用される。
【0015】
シリンダブロック11は、左右のそれぞれに、前後方向に並ぶ複数のシリンダ14(後述の
図5参照)を有する。複数のピストンのそれぞれは、各シリンダ14内に配置される。なお、エンジン100は、一例としてV型12気筒エンジンであり、左右のそれぞれにおいて前後方向に並ぶシリンダ14の数は6個である。
【0016】
ヘッドブロック12は、各シリンダ14の上方に重ねて配置される。すなわち、エンジン本体1は、左右のそれぞれに、前後方向に並ぶ6つのヘッドブロック12を有する。各ヘッドブロック12は、シリンダ14、ヘッドブロック12、および、ピストンで構成される燃焼室にガスを供給するための吸気ポート(不図示)と、燃焼室からガスを排気する排気ポート(不図示)とを有する。
【0017】
ヘッドカバー13は、各ヘッドブロック12の上方に配置される。すなわち、エンジン本体1は、左右のそれぞれに、前後方向に並ぶ6つのヘッドカバー13を有する。各ヘッドカバー13は、ヘッドブロック12に配置される吸気弁および排気弁(不図示)を覆う。各ヘッドカバー13には、インジェクタ16(後述の
図4、
図5参照)が取り付けられる。なお、
図1や
図3では、インジェクタ16の記載は省略されている。インジェクタ16の、燃料を噴射する噴射口が設けられる一端部(下端部)は、燃焼室に臨む。各インジェクタ16は、燃料を高圧として吐出する燃料ポンプ4から供給される燃料を、適宜のタイミングで燃焼室に噴射する。燃焼室に噴射された燃料の燃焼により生じる力によって、ピストンが往復運動を行う。なお、本実施形態では、燃料ポンプ4は、エンジン100の左側面の後方に配置される。
【0018】
また、エンジン100は、給気マニホールド5および排気マニホールド6を備える。
【0019】
給気マニホールド5は、詳細は後述する過給機7から供給された空気または混合気である給気を各シリンダ14(燃焼室)に分配する。詳細には、給気マニホールド5は、左右のそれぞれに配置されるシリンダの列(シリンダ列15;後述の
図5参照)に対応して、エンジン本体1の左右の側面に1つずつ配置される。左右に配置される給気マニホールド5は、いずれも前後方向に延びる。以下、左側のシリンダ列15L(左シリンダ列15L;後述の
図5参照)に対応して左側に設けられる給気マニホールド5を左給気マニホールド5Lと表現する。右側のシリンダ列15R(右シリンダ列15R;後述の
図5参照)に対応して右側に設けられる給気マニホールド5を右給気マニホールド5Rと表現する。
【0020】
排気マニホールド6は、各シリンダ14(燃焼室)からの排気を集約する。詳細には、排気マニホールド6は、左右のそれぞれに配置されるシリンダ列15に対応して2つ配置される。2つの排気マニホールド6は、いずれも前後方向に延びる。2つの排気マニホールド6は、V型エンジンを構成する左右のバンク(シリンダ列15)により形成されるVバンクの内側に左右に並んで配置される。以下、左シリンダ列15Lに対応してVバンク内の左側に配置される排気マニホールド6を、左排気マニホールド6Lと表現する。右シリンダ列15Rに対応してVバンク内の右側に配置される排気マニホールド6を、右排気マニホールド6Rと表現する。
【0021】
過給機7は、エンジン100の後方上部に配置される。過給機7は、エンジン100の外部から供給された空気や混合気を加圧圧縮してインタークーラ8を介して給気マニホールド5に供給する。過給機7は、排気マニホールド6から供給される排ガスを駆動源とするターボチャージャである。
【0022】
なお、給気マニホールド5と接続されるインタークーラ8は、不図示のポンプの駆動により冷却水を供給され、給気を冷却する。過給機7から供給される給気は、加圧圧縮されることにより圧縮熱が発生して温度が上昇する。インタークーラ8は、冷却水と、加圧圧縮された給気との間で熱交換を行うことで給気を冷却する。すなわち、インタークーラ8が設けられることにより、給気マニホールド5に供給される給気の温度を所望の温度に調整することができる。
【0023】
過給機7は、詳細には、エンジン100の左側に設けられる左過給機7Lと、エンジン100の右側に設けられる右過給機7Rとを有する。左過給機7Lは、インタークーラ8を介して左給気マニホールド5Lに空気等(給気)を供給する。右過給機7Rは、インタークーラ8を介して右給気マニホールド5Rに空気等(給気)を供給する。左排気マニホールド6Lで集約された排ガスは、左過給機7Lを介して外部に排気される。右排気マニホールド6Rで集約された排ガスは、右過給機7Rを介して外部に排気される。
【0024】
オイルパン2は、シリンダブロック11の下方に配置され、潤滑油を貯留する。オイルパン2に貯留される潤滑油は、エンジン100の潤滑が必要な各部に供給される。
【0025】
<2.流体供給システム>
上述のように、本実施形態では、複数の装置に流体を供給する流体供給システムは、燃料供給システムである。複数の装置は、インジェクタ16である。流体は、エンジンの燃料である。
図4は、本発明の実施形態に係るエンジン100の燃料供給システム30の概略の構成を示す斜視図である。
図5は、燃料供給システム30とシリンダブロック11との関係を示す簡略図である。なお、
図5においては、
図4に示す流体戻しパイプ33(詳細は後述する)は省略されている。以下、主に
図4および
図5を参照しながら、燃料供給システム30について詳細に説明する。
【0026】
燃料供給システム30は、上述の燃料ポンプ4を備える。燃料ポンプ4は、クランク軸の回転動力を利用して駆動される。燃料ポンプ4は、燃料を高圧として吐出する高圧ポンプである。燃料ポンプ4には、燃料タンク(不図示)から燃料フィルタ31を介して燃料が供給される。燃料ポンプ4は、燃料フィルタ31により浄化された燃料を高圧として複数のインジェクタ16に向けて吐出する。
【0027】
なお、本実施形態では、燃料フィルタ31は、燃料ポンプ4と同様に、エンジン100の左側面に配置される(
図1参照)。また、複数のインジェクタ16は、左シリンダ列15Lに対応して設けられる6つの左インジェクタ16Lと、右シリンダ列15Rに対応して設けられる6つの右インジェクタ16Rとを含む。
【0028】
図4に示すように、燃料供給システム30は、流体供給パイプ32と、流体戻しパイプ33と、補助パイプ34とを備える。
【0029】
流体供給パイプ32は、燃料ポンプ4から吐出される燃料を各インジェクタ16に供給する流路を構成する。流体供給パイプ32は、複数のインジェクタ16(複数の装置の一例)を接続する。本実施形態では、
図5に示すように、エンジン100は、第1シリンダ列と第2シリンダ列とを有する。流体供給パイプ32は、第1流体供給パイプと第2流体供給パイプとを有する。第1流体供給パイプは、第1シリンダ列に対応して設けられる複数のインジェクタ16を接続する。第2流体供給パイプは、第2シリンダ列に対応して設けられる複数のインジェクタ16を接続する。複数のインジェクタ16は、流体供給パイプ32により直列に接続される。
【0030】
詳細には、流体供給パイプ32は、左流体供給パイプ32Lと右流体供給パイプ32Rとを含む。左流体供給パイプ32Lと右流体供給パイプ32Rとのうち、一方が上述の第1流体供給パイプで、他方が上述の第2流体供給パイプである。左流体供給パイプ32Lは、燃料ポンプ4と、6つの左インジェクタ16Lとを直列接続する。右流体供給パイプ32Rは、燃料ポンプ4と、6つの右インジェクタ16Rとを直列接続する。
【0031】
流体供給パイプ32は、より詳細には、連絡パイプ321とインジェクタ間パイプ322とを含む。連絡パイプ321は、左連絡パイプ321Lと右連絡パイプ321Rとを含む。インジェクタ間パイプ322は、右インジェクタ間パイプ322Rと左インジェクタ間パイプ322Lとを含む。左流体供給パイプ32Lは、左連絡パイプ321Lと、複数(本実施形態では5つ)の左インジェクタ間パイプ322Lとにより構成される。右流体供給パイプ32Rは、右連絡パイプ321Rと、複数(本実施形態では5つ)の右インジェクタ間パイプ322Rとにより構成される。
【0032】
左連絡パイプ321Lは、燃料ポンプ4と、前後方向に並ぶ複数の左インジェクタ16Lのうちの最後端の左インジェクタ16Lとを接続する。各左インジェクタ間パイプ322Lは、前後方向に隣り合う2つの左インジェクタ16L同士を接続する。右連絡パイプ321Rは、燃料ポンプ4と、前後方向に並ぶ複数の右インジェクタ16Rのうちの最後端の右インジェクタ16Rとを接続する。各右インジェクタ間パイプ322Rは、前後方向に隣り合う2つの右インジェクタ16R同士を接続する。
【0033】
流体戻しパイプ33は、余剰の燃料を燃料タンクに戻す流路を構成する。流体戻しパイプ33は、詳細には、左流体戻しパイプ33Lと、右流体戻しパイプ33Rと、共用戻しパイプ33Sとを含む。
【0034】
左流体戻しパイプ33Lは、左シリンダ列15Lを構成する各シリンダ14の上に配置される各ヘッドブロック12(
図1参照)と接続される。また、左流体戻しパイプ33Lは、エンジン100の後方左側に配置される合流部35と接続される。右流体戻しパイプ33Rは、右シリンダ列15Rを構成する各シリンダ14の上に配置される各ヘッドブロック12(
図1参照)と接続される。また、右流体戻しパイプ33Rは、エンジン100の後方左側に配置される合流部35と接続される。共用戻しパイプ33Sは、一端が合流部35と接続される。共用戻しパイプ33Sは、左流体戻しパイプ33Lからの余剰燃料と、右流体戻しパイプ33Rからの余剰燃料とを集約して燃料タンクに戻す。
【0035】
燃料ポンプ4は、燃料タンクから供給された燃料を高圧として、左連絡パイプ321Lおよび右連絡パイプ321Rに向けて燃料を吐出する。左連絡パイプ321Lを通った燃料は、まず最後端(最上流)の左インジェクタ16Lに供給される。その後、各左インジェクタ間パイプ322Lを介して、最前端(最下流)の左インジェクタ16Lへと向けて、前後方向の並び順にしたがって順番に燃料が各左インジェクタ16Lに供給される。また、右連絡パイプ321Rを通った燃料は、まず最後端(最上流)の右インジェクタ16Rに供給される。その後、各右インジェクタ間パイプ322Rを介して、最前端(最下流)の右インジェクタ16Rへと向けて、前後方向の並び順にしたがって順番に燃料が各右インジェクタ16Rに供給される。
【0036】
燃料を供給された各インジェクタ16は、所定のタイミングで燃料を燃焼室に噴射する。左シリンダ列15Lに対応して設けられる各ヘッドブロック12から、燃焼に使用されなかった余剰の燃料が、左流体戻しパイプ33Lに流される。また、右シリンダ列15Rに対応して設けられる各ヘッドブロック12から、燃焼に使用されなかった余剰の燃料が、右流体戻しパイプ33Rに流される。左流体戻しパイプ33Lおよび右流体戻しパイプ33Rに流された燃料は、合流部35で合流し、共用戻しパイプ33Sを介して燃料タンクに戻される。なお、図示は省略されているが、燃料ポンプ4は余剰の燃料を共用戻しパイプ33Sを介して燃料タンクに戻す。
【0037】
補助パイプ34は、メンテナンス等のために燃料供給システム30を分解する必要がある場合の作業性の向上を目的として設けられる。詳細には、補助パイプ34は、エンジン100を停止した後のパイプ内の残圧を抜く作業の作業性を向上することを目的として設けられている。
【0038】
図5に示すように、本実施形態では、左流体供給パイプ32Lと右流体供給パイプ32Rとが、連通路36を介して互いに連通する。すなわち、第1流体供給パイプと第2流体供給パイプとは、連通路36を介して互いに連通する。このために、補助パイプ34は、第1流体供給パイプと第2流体供給パイプとのいずれか一方に接続されればよい。なお、補助パイプ34は、第1流体供給パイプと第2流体供給パイプとを連通しない構成として、両方のパイプにそれぞれ設けられる構成としてもよい。ただし、本実施形態のように、第1流体供給パイプと第2流体供給パイプとのいずれか一方に設ける構成とすることで、残圧を抜く際の作業対象を減らすことができる。この結果、作業性を向上することができる。特に、舶用エンジンのように大型のエンジンにおいて、作業性の向上効果を大きくすることができる。残圧を抜く際の作業については、後述する。
【0039】
本実施形態では、好ましい形態として、左流体供給パイプ32Lと右流体供給パイプ32Rとのうち、左流体供給パイプ32Lに補助パイプ34が接続される。これについて以下に説明する。
【0040】
V型のエンジンでは、V字状に配置される左右一対のシリンダ14は、
図5に示すように、前後方向の位置が若干ずれる。本実施形態では、左側のシリンダ14が、右側のシリンダ14に対して若干後方に配置される。この場合、左シリンダ列15Lの方が、右シリンダ列15Rに比べて、シリンダブロック11の前端から最前端のシリンダ14までの距離が遠くなる。すなわち、シリンダブロック11の前端と、最前端のシリンダ14との間の空間が、左シリンダ列15Lの方が大きくなる。
【0041】
このために、本実施形態のように、補助パイプ34がシリンダブロック11の前端側に設けられる構成では、左シリンダ列15Lに対応して設けられる左流体供給パイプ32Lに補助パイプ34を接続すると、上述の必然的に生じる空間を有効利用することができる。すなわち、補助パイプ34を配置するために追加のスペースを設けることを抑制することができ、エンジン100の大型化を抑制することができる。
【0042】
以上から、次のようなことが言える。第1シリンダ列と第2シリンダ列とが、それぞれ第1方向に延びると共に、互いに第2方向に並んでシリンダブロック11に配置されるとする。また、補助パイプ34が、シリンダブロック11の第1方向の一端側に設けられるとする。この場合、第1流体供給パイプと第2流体供給パイプとのうち補助パイプ34と接続されるパイプは、シリンダブロック11の第1方向の一端からの第1方向の距離が遠い方のシリンダ14を有するシリンダ列15に対応して設けられるパイプであることが好ましい。
【0043】
図6は、
図4の破線DLで囲まれた部分の概略の構成を示す断面図である。なお、
図6に示されるインジェクタ16は、詳細には、6つの左インジェクタ16Lのうち、左流体供給パイプ32Lを流れる燃料が最後に供給されるインジェクタである。すなわち、
図6に示すされるインジェクタ16は、6つの左インジェクタ16Lのうち最下流(最前端)にある左インジェクタである。
【0044】
図6に示すように、最下流の左インジェクタ16Lの、ヘッドカバー13(
図1等参照)から上方に突出する側の端部(上端部)には、燃料の入口である入口開口161、および、燃料を出口である出口開口162が設けられる。入口開口161および出口開口162は、インジェクタ16の側面に互いに対向して配置され、インジェクタ内上部通路163により繋がる。なお、インジェクタ内上部通路163は、燃料が通る通路である。インジェクタ内上部通路163は、不図示の他の内部通路により下端部に設けられる噴射口と繋がる。
【0045】
入口開口161には、流体供給パイプ32が接続される。詳細には、入口開口161には、左流体供給パイプ32Lを構成する左インジェクタ間パイプ322Lが接続される。左インジェクタ間パイプ322Lの内部とインジェクタ内上部通路163とは連通する。なお、左インジェクタ間パイプ322Lは、接続具41により左インジェクタ16Lに強固に固定される。
【0046】
出口開口162には、出口開口を塞ぐシール部37が配置される。上述した補助パイプ34は、一端をシール部37に固定される。補助パイプ34は、流体供給パイプ32にシール部37を介して接続される。より詳細には、補助パイプ34は、左流体供給パイプ32Lを構成する左インジェクタ間パイプ322Lに、シール部37に取り付けられる中継部38、シール部37、および、左インジェクタ16Lを介して接続される。なお、補助パイプ34の他端は、左流体戻しパイプ33Lと接続される。
【0047】
図7は、
図6に示すシール部37と中継部38とを分解して示す分解斜視図である。
図6および
図7に示すように、シール部37は有底筒状である。シール部37は、底壁371を左インジェクタ16Lの出口開口162と対向させて、左インジェクタ16Lの側面に設けられる取付凹部164内に配置される。なお、取付凹部164の底面に出口開口162が形成される。シール部37は、取付凹部164内に配置された状態で、出口開口162が設けられる側と反対側に向けて開口する。
【0048】
シール部37は、取付凹部164内に配置された状態で、底壁371の中央部に出口開口162に向けて突出する凸部372を有する。また、シール部37は、外周面にねじ部373を有する。ねじ部373は、雄ねじであり、これに対応する雌ねじ(不図示)が取付凹部164を構成する内周壁に設けられている。
【0049】
また、シール部37は、出口開口162と対向する側の端部と反対側の端部に、外形六角柱状のヘッド部374を有する。また、シール部37は、ねじ部373とヘッド部374との間の外周面に、溝部375を有する。溝部375には、不図示の環状のシール部材が嵌められる。環状のリール部材は、Oリングであってよい。また、シール部37の底壁371には、当該底壁の外面と内面とを繋ぐ2つの貫通孔376が設けられる。2つの貫通孔376は、凸部372を挟んで対称な位置に設けられる。ただし、貫通孔376の数は1つでも3つ以上でもよい。貫通孔376の配置は適宜決定されてよい。
【0050】
シール部37を取付凹部164内に配置して、ねじ部373を締め付ける方向にシール部37を回転させると、凸部372の先端側が出口開口162内に入り込み、出口開口を塞ぐ。すなわち、シール部37によって、左流体供給パイプ32Lを利用した燃料通路の下流端を塞ぐことができる。なお、右流体供給パイプ32Rを利用した燃料通路の下流端は、6つの右インジェクタ16Rのうちの最下流に配置される右インジェクタ16Rに取り付けられる閉塞部材39(
図4等参照)により塞がれている。閉塞部材39は、例えば螺子であってよい。
【0051】
中継部38は、
図6および
図7に示すように筒状である。詳細には、中継部38は、外径が小さい小径部381と、外径が小径部381に比べて大きい大径部382とを有する。小径部381の外周面には、環状のシール部材(不図示)を嵌め込む溝部383が設けられる。環状のリール部材は、Oリングであってよい。なお、本実施形態では、溝部383の数は3つであるが、これは例示であり、単数でも、3つ以外の複数であってもよい。
【0052】
中継部38は、小径部381がシール部37の内部空間377に嵌め込まれることにより、シール部37に取り付けられる。中継部38の内部空間384は、シール部37に取り付けられた状態で、シール部37の内部空間377と繋がる。大径部382の小径部381が設けられる側と反対側の端面から、中継部38の内部空間384に向けて補助パイプ34の一端が嵌め込まれる。これにより、補助パイプ34が中継部38に取り付けられる。この状態において、中継部38の内部空間384と、補助パイプ34の内部空間341とは繋がる。
【0053】
エンジン100の運転時においては、シール部37は、常時、出口開口162を塞ぐ。エンジン100を停止して燃料供給システム30のメンテナンス等が行われる際に、残圧を抜く作業が必要となる。この残圧を抜く作業時に、シール部37が利用される。残圧を抜く際には、ねじ部373の締め付けを緩める方向にシール部37が回転される。具体例を挙げると、作業員は、工具によってヘッド部374を掴んでシール部37を回転させる。残圧を抜く作業では、ねじ部373の締め付けを緩めればよく、シール部37は、取付凹部164内に取り付けられた状態で維持される。
【0054】
なお、本実施形態では、シール部37と中継部38とが別部材で構成されているために、中継部38の回転を止めてシール部37のみを回転させることができる。このために、補助パイプ34が中継部38に取り付けられた状態で、ねじ部373の締め付けを緩める方向にシール部37を簡単に回転させることができる。
【0055】
ねじ部373の締め付けが緩められると、凸部372によって出口開口162が塞がれた状態が解除される。これにより、出口開口162と、シール部37の内部空間377とが2つの貫通孔376を介して繋がった状態となる。また、シール部37の内部空間377と、補助パイプ34の内部空間341とは、中継部38の内部空間384を介して常時、繋がっている。このために、ねじ部373の締め付けを緩めることによって、流体供給パイプ32内の残圧を補助パイプ34に逃がすことができる。
【0056】
なお、シール部37の外周に設けられる溝部375に、環状のシール部材が嵌められているために、シール部37と左インジェクタ16Lとの間の隙間から燃料が漏れ出すことを防止できる。また、中継部38の外周に設けられる溝部383に、環状のシール部材が嵌められているために、中継部38とシール部37との間の隙間から燃料が漏れ出すことを防止できる。すなわち、本実施形態では、残圧を抜く作業時に燃料が外部に飛散する可能性が低く、ウエス等で押さえながら作業を行う必要がない。
【0057】
以上からわかるように、本実施形態では、シール部37は、流体供給パイプ32と補助パイプ34との連通状態を調節する調節部を有する。シール部37が有する調節部による調節を行うことによって、流体供給パイプ32内の残圧を補助パイプ34に逃がすことができる。残圧を補助パイプ34に逃がすことができるために、ウエス等で作業箇所を押さえながら作業を行う必要がなく、効率良く作業を行うことができる。
【0058】
詳細には、調節部は、非電動式である。すなわち、調節部は、作業員が工具等を用いて手作業により調節を行う構成である。より詳細には、調節部は、ねじ部373である。ねじ部373が調節部とされることにより、複雑な作業を行うことなく、残圧を抜く作業を行うことができる。また、非電動式であるため、エンジン停止中であっても電力供給することなく容易に調節部を操作できる。
【0059】
補助パイプ34は、流体供給パイプ32の一端部に接続される。詳細には、補助パイプ34は、左流体供給パイプ32Lの一端部に接続される。なお、補助パイプ34は、流体供給パイプ32の端部以外の位置に設けられてもよい。ただし、本実施形態のように流体供給パイプ32の一端部に設けた方が、燃料供給システム30を簡素な構成とすることができる。
【0060】
本実施形態では、シール部37が有する貫通孔376は、補助パイプ34の燃料の入口部342(
図6参照)の内径よりも小径である。すなわち、シール部37は、補助パイプ34の流体(燃料)の入口部342の内径よりも小径の貫通孔376を有する。このような構成では、調節部(ねじ部373)を調節して残圧を抜く場合に、小径の貫通孔376を介して補助パイプ34へと流体が流れる。このために、補助パイプ34内の圧力が急激に上昇することを抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では、
図4に示すように、補助パイプ34は曲げ部343を有する。そして、燃料供給システム30は、補助パイプ34の、曲げ部343を基準としてシール部37が設けられる側と反対側の部分を固定する固定部40を備える。固定部40は、補助パイプ34を、エンジン100を構成する他の部材に固定する。固定部40は、詳細には、補助パイプ34を保持する保持部と、エンジン100を構成する部材に当該保持部を留める留め具とで構成されてよい。留め具は、例えば螺子であってよい。
【0062】
補助パイプ34を固定する固定部が曲げ部343よりもシール部37から離れた位置とされることで、シール部37の調節部(ねじ部373)を操作する際に、曲げ部343にバネの役割を持たせることができる。詳細には、ねじ部373の締め付けを緩める作業を行う場合に、曲げ部343がバネの役割を果たすので、スムーズにシール部37を回転させることができる。
【0063】
<3.留意事項等>
本明細書中に開示される種々の技術的特徴は、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。また、本明細書中に示される複数の実施形態および変形例は可能な範囲で組み合わせて実施されてよい。
【0064】
以上に説明した実施形態では、流体供給システムがV型エンジンに適用される構成とした。ただし、これは例示にすぎない。本発明の流体供給システムは、例えば、ピストンが上下方向に往復動する直列型エンジンや、ピストンが水平方向に往復動する水平対向型エンジン等にも適用可能である。また、本発明の流体供給システムは、エンジン以外に適用されてもよい。
【0065】
<4.付記>
本明細書における例示的な流体供給システムは、複数の装置に流体を供給する流体供給システムであって、前記複数の装置を接続する流体供給パイプと、前記流体供給パイプにシール部を介して接続される補助パイプと、を備え、前記シール部は、前記流体供給パイプと前記補助パイプとの連通状態を調節する調節部を有する構成(第1の構成)であってよい。
【0066】
上記第1の構成の流体供給システムにおいて、前記調節部は、非電気式である構成(第2の構成)であってよい。
【0067】
上記第1又は第2の構成の流体供給システムにおいて、前記調節部は、ねじ部である構成(第3の構成)であってよい。
【0068】
上記第1から第3のいずれかの構成の流体供給システムにおいて、前記補助パイプは、前記流体供給パイプの一端部に接続される構成(第4の構成)であってよい。
【0069】
上記第1から第4のいずれかの構成の流体供給システムにおいて、前記シール部は、前記補助パイプの前記流体の入口部の内径よりも小径の貫通孔を有する構成(第5の構成)であってよい。
【0070】
上記第1から第5のいずれかの構成の流体供給システムにおいて、前記補助パイプは、曲げ部を有し、前記補助パイプの、前記曲げ部を基準として前記シール部が設けられる側と反対側の部分を固定する固定部を備える構成(第6の構成)であってよい。
【0071】
上記第1から第6のいずれかの構成の流体供給システムにおいて、当該流体供給システムは、エンジンの燃料供給システムであって、前記複数の装置は、インジェクタである構成(第7の構成)であってよい。
【0072】
上記第7の構成の流体供給システムにおいて、前記エンジンは、第1シリンダ列と第2シリンダ列とを有し、前記流体供給パイプは、前記第1シリンダ列に対応して設けられる複数の前記インジェクタを接続する第1流体供給パイプと、前記第2シリンダ列に対応して設けられる複数の前記インジェクタを接続する第2流体供給パイプと、を有し、前記第1流体供給パイプと前記第2流体供給パイプとは、連通路を介して互いに連通し、前記補助パイプは、前記第1流体供給パイプと前記第2流体供給パイプとのいずれか一方に接続される構成(第8の構成)であってよい。
【0073】
上記第8の構成の流体供給システムにおいて、前記第1シリンダ列と前記第2シリンダ列とは、それぞれ第1方向に延びると共に、互いに第2方向に並んでシリンダブロックに配置され、前記補助パイプは、前記シリンダブロックの前記第1方向の一端側に設けられ、前記第1流体供給パイプと前記第2流体供給パイプとのうち前記補助パイプと接続されるパイプは、前記一端からの前記第1方向の距離が遠い方のシリンダを有するシリンダ列に対応して設けられるパイプである構成(第9の構成)であってよい。
【符号の説明】
【0074】
11・・・シリンダブロック
15・・・シリンダ列
15L・・・左シリンダ列
15R・・・右シリンダ列
16・・・インジェクタ
16L・・・左インジェクタ
16R・・・右インジェクタ
30・・・燃料供給システム(流体供給システム)
32・・・流体供給パイプ
32L・・・左流体供給パイプ
32R・・・右流体供給パイプ
34・・・補助パイプ
36・・・連通路
37・・・シール部
40・・・固定部
100・・・エンジン
342・・・入口部
376・・・貫通孔